以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るブレーキ制御装置20を示す系統図である。同図に示されるブレーキ制御装置20は、車両用の電子制御式ブレーキシステム(ECB)を構成しており、車両に設けられた4つの車輪に付与される制動力を制御する。本実施形態に係るブレーキ制御装置20は、例えば、走行駆動源として電動モータと内燃機関とを備えるハイブリッド車両に搭載される。このようなハイブリッド車両においては、車両の運動エネルギを電気エネルギに回生することによって車両を制動する回生制動と、ブレーキ制御装置20による液圧制動とのそれぞれを車両の制動に用いることができる。本実施形態における車両は、これらの回生制動と液圧制動とを併用して所望の制動力を発生させるブレーキ回生協調制御を実行することができる。
ブレーキ制御装置20は、図1に示されるように、車輪(図示せず)ごとに設けられた制動力付与機構としてのディスクブレーキユニット21FR,21FL、21RRおよび21RLと、マスタシリンダユニット10と、動力液圧源30と、液圧アクチュエータ40とを含む。
ディスクブレーキユニット21FR,21FL、21RRおよび21RLは、車両の右前輪、左前輪、右後輪、および左後輪のそれぞれに制動力を付与する。マニュアル液圧源としてのマスタシリンダユニット10は、ブレーキ操作部材としてのブレーキペダル24の運転者による操作量に応じて加圧されたブレーキフルードをディスクブレーキユニット21FR〜21RLに対して送出する。動力液圧源30は、動力の供給により加圧された作動流体としてのブレーキフルードを、運転者によるブレーキペダル24の操作から独立してディスクブレーキユニット21FR〜21RLに対して送出することが可能である。液圧アクチュエータ40は、動力液圧源30またはマスタシリンダユニット10から供給されたブレーキフルードの液圧を適宜調整してディスクブレーキユニット21FR〜21RLに送出する。これにより、液圧制動による各車輪に対する制動力が調整される。本実施形態においては、動力液圧源30および液圧アクチュエータ40を含んで、ホイールシリンダ圧制御系統が構成される。
ディスクブレーキユニット21FR〜21RL、マスタシリンダユニット10、動力液圧源30、および液圧アクチュエータ40のそれぞれについて以下で更に詳しく説明する。各ディスクブレーキユニット21FR〜21RLは、それぞれブレーキディスク22とブレーキキャリパに内蔵されたホイールシリンダ23FR〜23RLを含む。そして、各ホイールシリンダ23FR〜23RLは、それぞれ異なる流体通路を介して液圧アクチュエータ40に接続されている。なお以下では適宜、ホイールシリンダ23FR〜23RLを総称して「ホイールシリンダ23」という。
ディスクブレーキユニット21FR〜21RLにおいては、ホイールシリンダ23に液圧アクチュエータ40からブレーキフルードが供給されると、車輪と共に回転するブレーキディスク22に摩擦部材としてのブレーキパッドが押し付けられる。これにより、各車輪に制動力が付与される。なお、本実施形態においてはディスクブレーキユニット21FR〜21RLを用いているが、例えばドラムブレーキ等のホイールシリンダ23を含む他の制動力付与機構を用いてもよい。
マスタシリンダユニット10は、本実施形態では液圧ブースタ付きマスタシリンダであり、液圧ブースタ31、マスタシリンダ32、レギュレータ33、およびリザーバ34を含む。液圧ブースタ31は、ブレーキペダル24に連結されており、ブレーキペダル24に加えられたペダル踏力を増幅してマスタシリンダ32に伝達する。動力液圧源30からレギュレータ33を介して液圧ブースタ31にブレーキフルードが供給されることにより、ペダル踏力は増幅される。そして、マスタシリンダ32は、ペダル踏力に対して所定の倍力比を有するマスタシリンダ圧を発生する。
マスタシリンダ32とレギュレータ33との上部には、ブレーキフルードを貯留するリザーバ34が配置されている。マスタシリンダ32は、ブレーキペダル24の踏み込みが解除されているときにリザーバ34と連通する。一方、レギュレータ33は、リザーバ34と動力液圧源30のアキュムレータ35との双方と連通しており、リザーバ34を低圧源とすると共に、アキュムレータ35を高圧源とし、マスタシリンダ圧とほぼ等しい液圧を発生する。レギュレータ33における液圧を以下では適宜、「レギュレータ圧」という。
動力液圧源30は、アキュムレータ35およびポンプ36を含む。アキュムレータ35は、ポンプ36により昇圧されたブレーキフルードの圧力エネルギを窒素等の封入ガスの圧力エネルギ、例えば14〜22MPa程度に変換して蓄えるものである。ポンプ36は、駆動源としてモータ36aを有し、その吸込口がリザーバ34に接続される一方、その吐出口がアキュムレータ35に接続される。また、アキュムレータ35は、マスタシリンダユニット10に設けられたリリーフバルブ35aにも接続されている。アキュムレータ35におけるブレーキフルードの圧力が異常に高まって例えば25MPa程度になると、リリーフバルブ35aが開弁し、高圧のブレーキフルードはリザーバ34へと戻される。
上述のように、ブレーキ制御装置20は、ホイールシリンダ23に対するブレーキフルードの供給源として、マスタシリンダ32、レギュレータ33およびアキュムレータ35を有している。そして、マスタシリンダ32にはマスタ配管37が、レギュレータ33にはレギュレータ配管38が、アキュムレータ35にはアキュムレータ配管39が接続されている。これらのマスタ配管37、レギュレータ配管38およびアキュムレータ配管39は、それぞれ液圧アクチュエータ40に接続される。
液圧アクチュエータ40は、複数の流路が形成されるアクチュエータブロックと、複数の電磁制御弁を含む。アクチュエータブロックに形成された流路には、個別流路41、42,43および44と、主流路45とが含まれる。個別流路41〜44は、それぞれ主流路45から分岐されて、対応するディスクブレーキユニット21FR、21FL,21RR,21RLのホイールシリンダ23FR、23FL,23RR,23RLに接続されている。これにより、各ホイールシリンダ23は主流路45と連通可能となる。
また、個別流路41,42,43および44の中途には、ABS保持弁51,52,53および54が設けられている。各ABS保持弁51〜54は、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングをそれぞれ有しており、何れもソレノイドが非通電状態にある場合に開とされる常開型電磁制御弁である。開状態とされた各ABS保持弁51〜54は、ブレーキフルードを双方向に流通させることができる。つまり、主流路45からホイールシリンダ23へとブレーキフルードを流すことができるとともに、逆にホイールシリンダ23から主流路45へもブレーキフルードを流すことができる。ソレノイドに通電されて各ABS保持弁51〜54が閉弁されると、個別流路41〜44におけるブレーキフルードの流通は遮断される。
更に、ホイールシリンダ23は、個別流路41〜44にそれぞれ接続された減圧用流路46,47,48および49を介してリザーバ流路55に接続されている。減圧用流路46,47,48および49の中途には、ABS減圧弁56,57,58および59が設けられている。各ABS減圧弁56〜59は、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングをそれぞれ有しており、何れもソレノイドが非通電状態にある場合に閉とされる常閉型電磁制御弁である。各ABS減圧弁56〜59が閉状態であるときには、減圧用流路46〜49におけるブレーキフルードの流通は遮断される。ソレノイドに通電されて各ABS減圧弁56〜59が開弁されると、減圧用流路46〜49におけるブレーキフルードの流通が許容され、ブレーキフルードがホイールシリンダ23から減圧用流路46〜49およびリザーバ流路55を介してリザーバ34へと還流する。なお、リザーバ流路55は、リザーバ配管77を介してマスタシリンダユニット10のリザーバ34に接続されている。
主流路45は、中途に分離弁60を有する。この分離弁60により、主流路45は、個別流路41および42と接続される第1流路45aと、個別流路43および44と接続される第2流路45bとに区分けされている。第1流路45aは、個別流路41および42を介して前輪側のホイールシリンダ23FRおよび23FLに接続され、第2流路45bは、個別流路43および44を介して後輪側のホイールシリンダ23RRおよび23RLに接続される。
分離弁60は、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングを有しており、ソレノイドが非通電状態にある場合に閉とされる常閉型電磁制御弁である。分離弁60が閉状態であるときには、主流路45におけるブレーキフルードの流通は遮断される。ソレノイドに通電されて分離弁60が開弁されると、第1流路45aと第2流路45bとの間でブレーキフルードを双方向に流通させることができる。
また、液圧アクチュエータ40においては、主流路45に連通するマスタ流路61およびレギュレータ流路62が形成されている。より詳細には、マスタ流路61は、主流路45の第1流路45aに接続されており、レギュレータ流路62は、主流路45の第2流路45bに接続されている。また、マスタ流路61は、マスタシリンダ32と連通するマスタ配管37に接続される。レギュレータ流路62は、レギュレータ33と連通するレギュレータ配管38に接続される。
マスタ流路61は、中途にマスタカット弁64を有する。マスタカット弁64は、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングを有しており、ソレノイドが非通電状態にある場合に開とされる常開型電磁制御弁である。開状態とされたマスタカット弁64は、マスタシリンダ32と主流路45の第1流路45aとの間でブレーキフルードを双方向に流通させることができる。ソレノイドに通電されてマスタカット弁64が閉弁されると、マスタ流路61におけるブレーキフルードの流通は遮断される。
また、マスタ流路61には、マスタカット弁64よりも上流側において、シミュレータカット弁68を介してストロークシミュレータ69が接続されている。すなわち、シミュレータカット弁68は、マスタシリンダ32とストロークシミュレータ69とを接続する流路に設けられている。シミュレータカット弁68は、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングを有しており、ソレノイドが非通電状態にある場合に閉とされる常閉型電磁制御弁である。シミュレータカット弁68が閉状態であるときには、マスタ流路61とストロークシミュレータ69との間のブレーキフルードの流通は遮断される。ソレノイドに通電されてシミュレータカット弁68が開弁されると、マスタシリンダ32とストロークシミュレータ69との間でブレーキフルードを双方向に流通させることができる。
ストロークシミュレータ69は、複数のピストンやスプリングを含むものであり、シミュレータカット弁68の開放時に運転者によるブレーキペダル24の踏力に応じた反力を創出する。ストロークシミュレータ69としては、運転者によるブレーキ操作のフィーリングを向上させるために、多段のバネ特性を有するものが採用されると好ましく、本実施形態のストロークシミュレータ69は多段のバネ特性を有する。
レギュレータ流路62は、中途にレギュレータカット弁65を有する。レギュレータカット弁65も、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングを有しており、ソレノイドが非通電状態にある場合に開とされる常開型電磁制御弁である。開状態とされたレギュレータカット弁65は、レギュレータ33と主流路45の第2流路45bとの間でブレーキフルードを双方向に流通させることができる。ソレノイドに通電されてレギュレータカット弁65が閉弁されると、レギュレータ流路62におけるブレーキフルードの流通は遮断される。
本実施形態においては上述のように、マスタシリンダユニット10のマスタシリンダ32は、次の各要素を含んで構成される第1の系統により前輪側のホイールシリンダ23FRおよび23FLに連通される。第1の系統は、マスタ配管37、マスタ流路61、マスタカット弁64、主流路45の第1流路45a、個別流路41および42、ABS保持弁51および52を含んで構成される。また、マスタシリンダユニット10の液圧ブースタ31およびレギュレータ33は、次の各要素を含んで構成される第2の系統により後輪側のホイールシリンダ23RRおよび23RLに連通される。第2の系統は、レギュレータ配管38、レギュレータ流路62、レギュレータカット弁65、主流路45の第2流路45b、個別流路43および44、ABS保持弁53および54を含んで構成される。
よって、運転者によるブレーキ操作量に応じて加圧されたマスタシリンダユニット10における液圧は、第1の系統を介して前輪側のホイールシリンダ23FRおよび23FLに伝達される。また、後輪側のホイールシリンダ23RRおよび23RLへは、第2の系統を介してマスタシリンダユニット10における液圧が伝達される。これにより、運転者のブレーキ操作量に応じた制動力を各ホイールシリンダ23に発生させることができる。
液圧アクチュエータには、マスタ流路61およびレギュレータ流路62に加えて、アキュムレータ流路63も形成されている。アキュムレータ流路63の一端は、主流路45の第2流路45bに接続され、他端は、アキュムレータ35と連通するアキュムレータ配管39に接続される。
アキュムレータ流路63は、中途に増圧リニア制御弁66を有する。また、アキュムレータ流路63および主流路45の第2流路45bは、減圧リニア制御弁67を介してリザーバ流路55に接続されている。増圧リニア制御弁66と減圧リニア制御弁67とは、それぞれリニアソレノイドおよびスプリングを有しており、何れもソレノイドが非通電状態にある場合に閉とされる常閉型電磁制御弁である。増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67は、それぞれのソレノイドに供給される電流に比例して弁の開度が調整される。
増圧リニア制御弁66は、各車輪に対応して複数設けられた各ホイールシリンダ23に対して共通の増圧用制御弁として設けられている。また、減圧リニア制御弁67も同様に、各ホイールシリンダ23に対して共通の減圧用制御弁として設けられている。つまり、本実施形態においては、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67は、動力液圧源30から送出される作動流体を各ホイールシリンダ23へ給排制御する1対の共通の制御弁として設けられている。
なお、ここで、増圧リニア制御弁66の出入口間の差圧は、アキュムレータ35におけるブレーキフルードの圧力と主流路45におけるブレーキフルードの圧力との差圧に対応し、減圧リニア制御弁67の出入口間の差圧は、主流路45におけるブレーキフルードの圧力とリザーバ34におけるブレーキフルードの圧力との差圧に対応する。また、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67のリニアソレノイドへの供給電力に応じた電磁駆動力をF1とし、スプリングの付勢力をF2とし、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67の出入口間の差圧に応じた差圧作用力をF3とすると、F1+F3=F2という関係が成立する。従って、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67のリニアソレノイドへの供給電力を連続的に制御することにより、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67の出入口間の差圧を制御することができる。
本実施形態においては、動力液圧源30、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67を含んで圧力制御機構が構成される。圧力制御機構を動作させることによりホイールシリンダ23の液圧が制御される。増圧リニア制御弁66と減圧リニア制御弁67との間に主流路45の第2流路45bが連通されているので、圧力制御機構は、分離弁60の開閉に関わらず後輪側のホイールシリンダ23RRおよび23RLの液圧を制御することができる。分離弁60が開状態であれば、圧力制御機構を動作させることによりすべてのホイールシリンダ23の液圧を制御することができる。
ブレーキ制御装置20において、動力液圧源30および液圧アクチュエータ40は、本実施形態における制御手段としてのブレーキECU70により制御される。ブレーキECU70は、CPUを含むマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に各種プログラムを記憶するROM、データを一時的に記憶するRAM、入出力ポートおよび通信ポート等を備える。そして、ブレーキECU70は、上位のハイブリッドECU(図示せず)などと通信可能であり、ハイブリッドECUからの制御信号や、各種センサからの信号に基づいて動力液圧源30のポンプ36や、液圧アクチュエータ40を構成する電磁制御弁51〜54,56〜59,60,64〜68を制御して、ブレーキ回生協調制御を実行可能である。
また、ブレーキECU70には、レギュレータ圧センサ71、アキュムレータ圧センサ72、および制御圧センサ73が接続される。レギュレータ圧センサ71は、レギュレータカット弁65の上流側でレギュレータ流路62内のブレーキフルードの圧力、すなわちレギュレータ圧を検知し、検知した値を示す信号をブレーキECU70に与える。アキュムレータ圧センサ72は、増圧リニア制御弁66の上流側でアキュムレータ流路63内のブレーキフルードの圧力、すなわちアキュムレータ圧を検知し、検知した値を示す信号をブレーキECU70に与える。制御圧センサ73は、主流路45の第1流路45a内のブレーキフルードの圧力を検知し、検知した値を示す信号をブレーキECU70に与える。各圧力センサ71〜73の検出値は、所定時間おきにブレーキECU70に順次与えられ、ブレーキECU70の所定の記憶領域に所定量ずつ格納保持される。なお、本実施形態においては、各圧力センサ71〜73は自己診断機能を有しており、センサ内部での異常の有無をセンサごとに検出し、ブレーキECU70に異常の有無を示す信号を送信することができる。
分離弁60が開状態とされて主流路45の第1流路45aと第2流路45bとが互いに連通している場合、制御圧センサ73の出力値は、増圧リニア制御弁66の低圧側の液圧を示すと共に減圧リニア制御弁67の高圧側の液圧を示すので、この出力値を増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67の制御に利用することができる。また、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67が閉鎖されていると共に、マスタカット弁64が開状態とされている場合、制御圧センサ73の出力値は、マスタシリンダ圧を示す。更に、分離弁60が開放されて主流路45の第1流路45aと第2流路45bとが互いに連通しており、各ABS保持弁51〜54が開放される一方、各ABS減圧弁56〜59が閉鎖されている場合、制御圧センサの73の出力値は、各ホイールシリンダ23に作用する作動流体圧、すなわちホイールシリンダ圧を示す。
さらに、ブレーキECU70に接続されるセンサには、ブレーキペダル24に設けられたストロークセンサ25も含まれる。ストロークセンサ25は、ブレーキペダル24の操作量としてのペダルストロークを検知し、検知した値を示す信号をブレーキECU70に与える。ストロークセンサ25の出力値も、所定時間おきにブレーキECU70に順次与えられ、ブレーキECU70の所定の記憶領域に所定量ずつ格納保持される。なお、ストロークセンサ25以外のブレーキ操作状態検出手段をストロークセンサ25に加えて、あるいは、ストロークセンサ25に代えて設け、ブレーキECU70に接続してもよい。ブレーキ操作状態検出手段としては、例えば、ブレーキペダル24の操作力を検出するペダル踏力センサや、ブレーキペダル24が踏み込まれたことを検出するブレーキスイッチなどがある。
また、本実施形態においては、車両のドアの開閉を検知するカーテシスイッチ80がブレーキECU70に接続されている。乗員により車両のドアが開閉されると、カーテシスイッチ80からの出力信号がブレーキECU70に入力される。
上述のように構成されたブレーキ制御装置20は、回生協調制御モード、Reg増モード、およびハイドロブースタモードの少なくとも3つの制御状態をとることができる。通常の走行時には回生協調制御モードによりブレーキ制御装置20は制動力を制御する。例えば車両の停車中に各センサの検定を行う場合等には、Reg増モードによりブレーキ制御装置20は制動力を制御する。ブレーキ制御装置20に何らかの異常が検出された場合には、ハイドロブースタモードによりブレーキ制御装置20は制動力を制御する。ハイドロブースタモードにおいては、運転者のブレーキ操作量に応じた液圧がホイールシリンダ23に伝達されて制動力を発生させる。
いずれの場合にも、ブレーキ制御装置20は制動要求を受けて制動を開始する。制動要求は、車両に制動力を付与すべきときに生起される。制動要求は例えば、運転者がブレーキペダル24を操作した場合や、走行中に他の車両との距離を自動制御している際に当該他の車両との距離が所定の距離よりも狭まった場合などに生起される。
図2は、回生協調制御モードにおける制御処理を説明するためのフローチャートである。回生協調制御モードにおいては、ブレーキ回生協調制御が実行される。図2に示される処理は、ブレーキペダル24が操作されて制動要求が発生してから所定の周期、例えば数msec程度ごとに繰り返し実行される。
回生協調制御モードによる制御処理が開始されると、まずブレーキECU70は、随時監視項目に異常があるか否かを判定する(S12)。随時監視項目としては、例えばブレーキ制御装置20の内部の配線の断線やショートの有無や、アキュムレータ圧センサ72の測定値に基づく動力液圧源30における異常の有無などが含まれる。
随時監視項目に異常があると判定された場合には(S12のYes)、ブレーキECU70は、回生協調制御モードからハイドロブースタモードへと制御モードを移行させて、ブレーキ回生協調制御を中止する(S32)。一方、随時監視項目に異常がないと判定された場合には(S12のNo)、ブレーキECU70は、ストロークセンサ25及びレギュレータ圧センサ71による測定値を取得する(S14)。ブレーキペダル24の操作量がストロークセンサ25により検出され、ブレーキペダル24の踏み込みに伴って加圧されたマスタシリンダユニット10内の液圧がレギュレータ圧センサ71により測定される。
次いで、ブレーキECU70は、ストロークセンサ25及びレギュレータ圧センサ71の測定値に基づいて、ストロークセンサ25及びレギュレータ圧センサ71に異常があるか否かを判定する(S16)。本実施形態においては、ストロークセンサ25は並列に2系統設けられており、ブレーキECU70は、この2つのストロークセンサ25の測定値とレギュレータ圧センサ71による測定値とを比較して、異常な測定値を示しているセンサがあるか否かを判定する。他の2つのセンサとは異なる異常な測定値を示しているセンサがある場合には、ブレーキECU70は、その異常な測定値を示すセンサに異常が生じていると判定する。いずれかのセンサに異常があると判定された場合には(S16のYes)、ブレーキECU70は、回生協調制御モードからハイドロブースタモードへと制御モードを移行させて、ブレーキ回生協調制御を中止する(S32)。
ストロークセンサ25及びレギュレータ圧センサ71に異常がないと判定された場合には(S16のNo)、ブレーキECU70は、ホイールシリンダ23の目標液圧を演算する(S18)。このときまず、ブレーキECU70は、要求総制動力から回生による制動力を減じることにより、ブレーキ制御装置20により発生させるべき制動力である要求液圧制動力を算出する。ここで、回生による制動力は、ハイブリッドECUからブレーキ制御装置20に供給される。そして、ブレーキECU70は、算出した要求液圧制動力に基づいてホイールシリンダ23の目標液圧を算出する。
次に、ブレーキECU70は、車両が停車中であるか否かを判定する(S20)。車両が既に停車している場合には(S20のYes)、ブレーキECU70は、回生協調制御モードからReg増モードに制御モードを移行させて(S34)、センサ検定(S36)を行う。センサ検定は、制御圧センサ73、レギュレータ圧センサ71、およびストロークセンサ25のそれぞれの測定値を互いに比較することにより各センサが正常か否かを検定する。
なお、車両が停車している場合に常にReg増モードに移行してセンサ検定処理を行う必要はなく、例えば数回の制動につき1回というように適宜の頻度でセンサ検定処理を行うようにしても良い。センサ検定処理が終了すると図2に示される処理は終了し、次の実行タイミングに到来した段階で再び同様に実行される。
車両が走行中である場合には(S20のNo)、ブレーキECU70は、マスタカット弁64およびレギュレータカット弁65を閉状態とするとともに、分離弁60およびシミュレータカット弁68を開状態とする(S22)。これにより、ホイールシリンダ23は、マスタシリンダユニット10から遮断されるとともに、動力液圧源30からのブレーキフルードの供給を受けることが可能となる。また、運転者のブレーキ操作によりマスタシリンダ32から送出されるブレーキフルードはストロークシミュレータ69へと供給され、運転者によるブレーキペダル24の踏力に応じた反力が創出され、運転者のブレーキ操作のフィーリングは良好に維持される。
この状態で、ブレーキECU70は、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67を目標液圧に応じて制御する(S24)。具体的には両制御弁への供給電流を制御して両制御弁の開度を制御する。その後、ブレーキECU70は、ホイールシリンダ23の液圧が正常に制御されているか否かを判定する制御液圧応答異常判定処理を行う(S26)。制御液圧応答異常判定処理S26の詳細については図3および図4を参照して後述するが、この処理では要するに、ホイールシリンダ圧が正常に制御されているか否かが、制御圧センサ73による測定値に基づいて判定される。制御液圧応答異常判定処理S26が終了すると図2に示される処理は終了し、次の実行タイミングが到来した段階で再び同様に実行される。
図3および図4を参照して、制御液圧応答異常判定処理S26について説明する。制御液圧応答異常判定処理S26は、制動要求後のホイールシリンダ圧の応答が正常であるか否かを判定するための処理である。ホイールシリンダ圧の応答が正常ではない場合には、ブレーキ回生協調制御によっては各車輪に正常に要求制動力を付与することができないおそれがあるので、ブレーキECU70は制御モードをハイドロブースタモードに移行させる。
制御液圧応答異常判定処理S26においては、応答進み異常、応答遅れ異常、および制御不良の3つの異常の有無が判定される。ここで、応答進み異常とは、増圧リニア制御弁66の開故障や漏れ異常、あるいは制御弁の開度をリニアに制御できなくなるといったことを原因として、制御液圧が目標液圧を超えて急激に増大してしまうことをいう。応答遅れ異常とは、増圧リニア制御弁66の閉故障や流量不足などを原因として、制御液圧の立ち上がりが過度に遅れることをいう。制御不良とは、制御液圧が目標液圧に追従していない状態をいい、例えば目標液圧と制御液圧との偏差が基準偏差を超える状態が所定の判定基準時間を超えて継続することをいう。なお、ここで、開故障とは、弁が閉じられるべきときに閉じることができずに開状態となってしまう異常状態をいい、閉故障とは、弁が開かれるべきときに開くことができずに閉状態となってしまう異常状態をいう。
図3は、制動要求後にホイールシリンダに作用する制御液圧を示す図である。縦軸は大気圧との差圧を示し、横軸は制動要求の発生からの時間を示す。図3には、制動要求直後の初期の制御液圧応答が示され、正常な場合の初期応答A1、応答遅れ異常の場合の初期応答A2、および応答進み異常の場合の初期応答A3のそれぞれの一例が示されている。目標液圧は、図3において一点鎖線により示されており、制動要求の発生後に時間とともに増大している。なお、図3において目標液圧は直線状に増大しているが、これは一例に過ぎない。また、応答遅れ判定基準圧力αおよび応答進み判定基準圧力βが点線により示され、応答進み判定基準時間T0、応答遅れ判定基準時間T1および制御不良判定時間T2が、それぞれ2点鎖線により示されている。
正常な初期応答A1は、応答遅れ判定基準時間T1が経過する前に、具体的には制動要求から時間t1が経過したときに応答遅れ判定基準圧力αに達している。そして、正常な初期応答A1は、時間t1以降も引き続き増加して、応答遅れ判定基準時間T1には応答遅れ判定基準圧力αを上回っている。このように、応答遅れ判定基準時間T1が経過する前に制御液圧が応答遅れ判定基準圧力αに達した場合には、応答遅れ異常があるとは判定されない。
ここで、制御液圧は制御圧センサ73により測定される。応答遅れ判定基準圧力αは、制御液圧の立ち上がりを判定するための閾値として予め設定されてブレーキECU70に記憶されている。応答遅れ判定基準圧力αは、本実施形態では例えば0.5〜1.0MPa程度に設定される。また、応答遅れ判定基準時間T1は、制御液圧の応答遅れ異常を判定するための閾値として予め設定され、ブレーキECU70に記憶されている。応答遅れ判定基準時間T1は、制動要求の発生の時点を基準として起算され、後述の制御不良判定時間T2の満了前に満了するように設定される。応答遅れ判定基準時間T1および応答遅れ判定基準圧力αは、実験等により適宜定められることが望ましい。
更に、正常な初期応答A1は、時間t3が経過したときに目標液圧との偏差が基準偏差を下回り、その後は目標液圧に追従していく。すなわち、制御不良判定時間T2が経過したときの正常な初期応答A1の目標値からの偏差は、基準偏差よりも小さい。このように、制御不良判定時間T2が経過する前に目標液圧との偏差が基準偏差を下回った場合には、制御不良が生じているとは判定されない。
ここで、基準偏差は、一定値に設定してもよいし、目標液圧の所定の割合に設定してもよい。本実施形態においては、基準偏差は例えば1MPaと一定値に設定される。制御不良判定時間T2は、制御液圧の制御不良を判定するための閾値として予め設定されてブレーキECU70に記憶されている。
一方、応答遅れ異常の場合の初期応答A2は、制動要求から時間t2が経過したときに応答遅れ判定基準圧力αに達している。時間t2は応答遅れ判定基準時間T1が経過した後であり、初期応答A2は、応答遅れ判定基準時間T1には応答遅れ判定基準圧力αに達していない。このような場合には、応答遅れ異常が発生していると判定される。
また、応答進み異常の場合の初期応答A3は、制動要求から時間t0が経過したときに既に目標液圧を超えて応答進み判定基準圧力βに達し、そのまま制御液圧は増加し続け、応答進み判定基準時間T0においても応答進み判定基準圧力βを上回っている。このように突発的に制御液圧が増加して、応答進み判定基準時間T0に制御液圧が応答進み判定基準圧力βを超えている場合には、応答進み異常が発生していると判定される。
ここで、応答進み判定基準圧力βは、応答進み判定基準時間T0における目標液圧よりも大きな値に設定されることが好ましく、例えば3〜4MPa程度に設定される。制御要求直後においては制御液圧が目標液圧を超えることは希であるため、制御要求直後応答進み判定基準時間T0に制御液圧が目標液圧を超えていれば応答進み異常であると判定してもよいと考えられるからである。応答進み判定基準時間T0は、応答遅れ判定基準時間T1よりも前に設定される。そうすると、制御液圧の応答進み異常のほうが応答遅れ異常よりも先に検出されるので、要求制動力を超えた過度の制動力が生じるのをより迅速に抑制することができる。
図4は、制御液圧応答異常判定処理S26を説明するためのフローチャートである。制御液圧応答異常判定処理S26が開始されると、ブレーキECU70は、まず応答進み異常が生じているか否かを判定する(S40)。すなわち、ブレーキECU70は、制動要求の発生から応答進み判定基準時間T0が経過するまでに制御液圧が応答進み判定基準圧力βを超えているか否かを判定する。制御液圧が応答進み判定基準圧力βに達していないと判定された場合には、ブレーキECU70は、応答進み異常は生じていないと判定し(S40のNo)、応答遅れ異常の判定に移る(S42)。制御液圧が応答進み判定基準圧力βを超えていると判定された場合には、ブレーキECU70は、応答進み異常が発生していると判定する(S40のYes)。応答進み異常が発生している場合には、ブレーキECU70は、ブレーキ回生協調制御を中止してハイドロブースタモードに移行し(S46)、制御液圧応答異常判定処理S26を終了する。
次にブレーキECU70は、応答遅れ異常が生じているか否かを判定する(S42)。すなわち、ブレーキECU70は、制動要求の発生から応答遅れ判定基準時間T1が経過するまでに制御液圧が応答遅れ判定基準圧力αに達するか否かを判定する。応答遅れ判定基準時間T1が経過するまでに制御液圧が応答遅れ判定基準圧力αに達したと判定された場合には、ブレーキECU70は、応答遅れ異常は生じていないと判定し(S42のNo)、制御不良の判定に移る(S44)。応答遅れ判定基準時間T1が経過しても制御液圧が応答遅れ判定基準圧力αに達していないと判定された場合には、ブレーキECU70は、応答遅れ異常が発生していると判定する(S42のYes)。応答遅れ異常が発生している場合には、ブレーキECU70は、ブレーキ回生協調制御を中止してハイドロブースタモードに移行し(S46)、制御液圧応答異常判定処理S26を終了する。
さらにブレーキECU70は、制御不良が生じているか否かを判定する(S44)。すなわち、ブレーキECU70は、制御不良判定時間T2が経過するまでに、目標液圧と制御液圧とから算出された偏差が基準偏差を下回るか否かを判定する。制御不良判定時間T2が経過するまでに基準偏差を下回ったと判定された場合には、ブレーキECU70は、制御不良は生じていないと判定し(S44のNo)、図2に示される処理に戻る。制御不良判定時間T2が経過しても制御液圧の偏差が基準偏差を超えていると判定された場合には、ブレーキECU70は、制御不良が発生していると判定する(S44のYes)。制御不良が発生している場合には、ブレーキECU70は、ブレーキ回生協調制御を中止してハイドロブースタモードに移行し(S46)、制御液圧応答異常判定処理S26を終了する。
本実施形態においては、1対の増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67により各車輪のホイールシリンダ23へのブレーキフルードの給排を制御するというように、各ホイールシリンダ23に対して増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67が共通化されている。このため、ホイールシリンダ23ごとに制御弁を設けるのと比べて、コスト低減という観点からは好ましい。しかし、増圧リニア制御弁66等を共通化すれば供給流量に対して供給対象となる容積が増加するので、制御液圧の立ち上がりの遅れ時間が長くなってしまう。そこで、本実施形態では、上述のような応答遅れ異常および制御不良の判定というように2段階に応答の遅れを判定することとしている。そうすると、増圧リニア制御弁66の閉故障等の異常に起因する過度の応答の遅れを迅速に検出することができる。よって、異常時に速やかにハイドロブースタモードに移行し、制動力が不足する状態を迅速に解消することが可能となる。
以上のように、回生協調制御モードにおいては、動力液圧源30から送出されたブレーキフルードが増圧リニア制御弁66を介してホイールシリンダ23に供給されて車輪に制動力が付与される。また、減圧リニア制御弁67を介してブレーキフルードがホイールシリンダ23から必要に応じて排出され、車輪に付与される制動力が制御される。
これに対して、Reg増モードおよびハイドロブースタモードにおいては、運転者のブレーキ操作量に応じて加圧されたマスタシリンダユニット10における液圧が、ホイールシリンダ23へと伝達される。Reg増モードでは、ブレーキECU70は、レギュレータカット弁65、分離弁60、およびシミュレータカット弁68を開状態とするとともに、マスタカット弁64を閉状態とする。その結果、レギュレータ圧がホイールシリンダ23に伝達されて各車輪に制動力が付与される。このとき、マスタシリンダ32から送出されたブレーキフルードはストロークシミュレータ69へと供給される。
よって、Reg増モードでは、ホイールシリンダ23における液圧の変動は直接マスタシリンダ32には伝達されないので、良好なブレーキフィーリングを得ることができるという点で好ましい。また、制御圧センサ73とレギュレータ圧センサ71とに共通の制御液圧が作用するので、センサの検定をより高い精度で行うことができるという点でも好ましい。
一方、ハイドロブースタモードでは、ブレーキECU70は、マスタカット弁64およびレギュレータカット弁65を開状態とするとともに、分離弁60およびシミュレータカット弁68を閉状態とする。その結果、マスタシリンダ圧が第1の系統を介して前輪側のホイールシリンダ23FR及び23FLへと伝達され、レギュレータ圧が第2の系統を介して後輪側のホイールシリンダ23RR及び23RLへと伝達されて各車輪に制動力が付与される。
本実施形態においては上述のように、異常の発生等の理由によりブレーキ回生協調制御を行わない場合の予備的な制御モードとして、ハイドロブースタモードが用いられている。ハイドロブースタモードでは、分離弁60を閉状態とすることにより第1の系統と第2の系統とが分離される。これは、配管からの液漏れ等の更なる異常がいずれかの系統に仮に生じたとしても、正常な系統により制動力を付与することを可能とするためである。このように分離弁を設けることにより、安全性がより高められるという点で好ましい。
車両の燃費をより向上させるためには、車両の走行駆動源の始動後にすみやかに回生協調制御を開始することが望ましい。しかし、フェイルセーフの観点からは、分離弁60を始めとするブレーキ制御装置20の各要素に異常が無いことを、回生協調制御を開始する前に確認することが望ましい。そこで、本実施形態においては、走行駆動源の始動後の初回制動時からすみやかに回生協調制御を実行することができるように、ブレーキECU70は、車両の走行駆動源の停止中に次の第1異常判定処理を行う。
図5は、本実施形態に係る第1異常判定処理を説明するためのフローチャートである。図5に示される処理は、車両への乗員の乗車に関連する信号(以下適宜「乗車関連信号」という)がブレーキECU70に入力されたことを契機として開始される。ここで、乗員とは、車両に乗車する人員であればよく、運転者には限られない。本実施形態においては、乗車関連信号は、車両のドアの開閉を検知するカーテシスイッチ80から乗員によるドアの開閉に伴って出力され、ブレーキECU70に入力される。
なお、乗車関連信号は、乗員の車両への接近から乗車後の走行駆動源の始動までの間に乗員により行われた所定の操作に起因して出力されるものであればよい。所定の操作としては例えば、ドアのロックの解除、イグニッションキーの挿入、あるいはシートベルトの操作などがある。また、車両のシートに重量センサを設けて乗員の乗車を検出して乗車関連信号を出力するようにしても良いし、乗員の所持する携帯通信機器からの電磁波を受信して乗車関連信号を出力するようにしても良い。
図5に示される第1異常判定処理が開始されると、まずブレーキECU70は、ブレーキ制御装置20内部の電気的結合の確認を行う(S50)。具体的には、例えばブレーキ制御装置20の内部の配線の断線やショートの有無などを確認する。そしてブレーキECU70は、異常判定処理を実行するのに必要な所定の圧力範囲内にアキュムレータ圧があるか否かをアキュムレータ圧センサ72の測定値に基づいて判定する(S52)。ここでのアキュムレータ圧は、異常判定処理を実行可能な程度の圧力であればよく、通常の走行時に必要とされるアキュムレータ圧よりは小さくても良い。
アキュムレータ圧が所定の圧力範囲から外れている場合には(S52のNo)、ポンプ36を駆動してアキュムレータ圧を昇圧する(S54)。アキュムレータ圧が所定の圧力範囲にある場合には(S52のYes)、分離弁漏れ異常判定処理が行われる(S56)。分離弁漏れ異常判定処理S56が終了すると第1異常判定処理は終了する。
続いて分離弁漏れ異常判定処理S56について図6を参照して詳しく説明する。図6は、分離弁漏れ異常判定処理S56を説明するためのフローチャートである。分離弁60に漏れ異常が生じて開故障の状態にあるか否かは、閉状態とされた分離弁60の両側に生じさせた差圧の変化に基づいて判定される。
図6に示されるように、分離弁漏れ異常判定処理S56が開始されると、まずブレーキECU70は、マスタカット弁64、レギュレータカット弁65、および分離弁60のそれぞれに制御電流を供給し、マスタカット弁64およびレギュレータカット弁65を閉弁するとともに分離弁60を開弁する(S60)。次いでブレーキECU70は、予備的異常判定処理を行う(S62)。予備的異常判定処理S62は、分離弁における漏れ異常の有無の判定前に、漏れ異常の検出のための差圧を正常に発生させられるか否かを判定するものであり、図7を参照して後述する。
予備的異常判定処理S62で異常が検出されなかった場合には、ブレーキECU70は、分離弁60への制御電流の供給を停止して、分離弁60を閉弁する(S64)。そして、ブレーキECU70は、増圧リニア制御弁66を制御して後輪側のホイールシリンダ23RR及び23RLを増圧する(S66)。これにより、主流路の第2流路45bの液圧が第1流路45aの液圧よりも増加することとなるので、分離弁60の両側に差圧が生じる。ここで増圧リニア制御弁66が動作しているか否かは、例えばアキュムレータ圧センサ72の測定値の変動から判断することができる。
なお、主流路45の第2流路45bにおける液圧の増加をより確実に検出するためには、主流路45の第2流路45bにおける液圧を測定する圧力センサを更に設けてもよい。しかし、設置されるセンサの数を抑えてコストを低減させるという観点からは、本実施形態のようにアキュムレータ圧センサ72の測定値を用いることが好ましい。
そして、ブレーキECU70は、主流路の第1流路45aにおける液圧、すなわち前輪側ホイールシリンダ23FRおよび23FLの液圧を制御圧センサ73により測定する(S68)。制御圧センサ73により測定された液圧PfrはブレーキECU70に入力される。
ブレーキECU70は、制御圧センサ73の測定値Pfrが、所定の漏れ異常判定時間Taが経過するまでに所定の漏れ異常判定閾値bを超えて上昇するか否かを判定する。具体的には、まず測定値Pfrの上昇値が漏れ異常判定閾値bを超えているか否かを判定する(S70)。測定値Pfrの上昇値が漏れ異常判定閾値bを超えていない場合には(S70のNo)、漏れ異常判定時間Taが経過したか否かを判定する(S76)。漏れ異常判定時間Taが経過していない場合には(S76のNo)、測定値Pfrの上昇値が漏れ異常判定閾値bを超えているか否かを再度判定する(S70)。
漏れ異常判定時間Taが経過するまでに測定値Pfrの上昇値が漏れ異常判定閾値bを超えた場合には(S70のYes)、ブレーキECU70は、分離弁60に漏れ異常が生じていると判定する(S72)。このように分離弁60に漏れ異常が生じている場合には、回生協調制御を行うのは好ましくないので、ブレーキECU70は、制御モードをハイドロブースタモードに移行して(S74)、処理を終了する。なお、漏れ異常判定閾値bは、ホイールシリンダ23の容積等に応じて適宜実験等により定められることが望ましい。
一方、測定値Pfrの上昇値が漏れ異常判定閾値bを超えることなく漏れ異常判定時間Taが経過した場合には(S76のYes)、ブレーキECU70は、漏れ異常判定終了処理を行う(S78)。漏れ異常判定終了処理S78は、図10を参照して後述する。漏れ異常判定終了処理S78が終了したら、ブレーキECU70は、分離弁漏れ異常判定処理S56を終了する。
なお、本実施形態においては、増圧リニア制御弁66を動作させて後輪側を前輪側よりも高圧として分離弁60の両側に差圧を生じさせたが、これに代えて、例えば減圧リニア制御弁67を動作させることにより後輪側を前輪側よりも低圧としてもよい。
また、分離弁60の両側の差圧の変動を検出する際には、ABS保持弁51〜54を閉じた状態で行うようにしても良い。このようにすれば、分離弁60はホイールシリンダ23から遮断され、分離弁60の両側の容積は主流路45等の流路のみとなり小さくなる。よって、分離弁60に漏れが生じたときの差圧変動に対する感度を向上させることができる。
次に、図6に示される予備的異常判定処理S62について、図7を参照して詳しく説明する。図7は、予備的異常判定処理S62を説明するためのフローチャートである。予備的異常判定処理S62によれば、漏れ異常の検出のための差圧を正常に発生させられるか否かが、分離弁60における漏れ異常の有無の判定前に判定される。これにより、分離弁60における漏れ異常とは異なる原因による分離弁60の両側の差圧の変動を、分離弁60における漏れ異常に起因するものであると混同する可能性が低減される。したがって、より確実に分離弁60の漏れ異常の有無を判定することが可能となる。
予備的異常判定処理S62が開始されると、ブレーキECU70は、増圧リニア制御弁66を制御して主流路45に与圧aをかける(S80)。このとき分離弁60は開状態とされているので(図6のS60参照)、与圧aは分離弁60の両側に等しく作用する。与圧aをかける際には、ブレーキECU70は、制御圧センサ73の測定値に基づいてフィードバック制御を行う。主流路45に与圧aをかける際の制御液圧の応答に基づいて、ブレーキECU70は、図4に示される制御液圧応答異常判定処理S26と同様に応答進み異常判定(S82)、応答遅れ異常判定(S84)、および制御不良異常判定(S86)を行う。なお、ここで与圧aをステップ状に付与する場合には、応答進み異常判定は省略しても良い。
応答進み異常が生じていると判定されると(S82のYes)、ブレーキECU70は、増圧リニア制御弁66に開故障が生じていると判定し(S94)、ハイドロブースタモードに移行する(S90)。応答進み異常が生じていない場合には(S82のNo)、ブレーキECU70は、応答遅れ異常が生じているか否かを判定する(S84)。応答遅れ異常が生じていると判定されると(S84のYes)、ブレーキECU70は、予備的故障部位判定処理を行う(S92)。予備的故障部位判定処理S92により、ブレーキ制御装置20のどの要素における異常に起因して応答遅れ異常が発生したのかを判別することができる。予備的故障部位判定処理S92については、図8及び図9を参照して後述する。故障部位が判別されて予備的故障部位判定処理S92が終了すると、ブレーキECU70は、制御モードをハイドロブースタモードに移行する(S90)。
応答遅れ異常が生じていないと判定された場合には(S84のNo)、ブレーキECU70は、制御不良が生じているか否かを判定する(S86)。制御不良が生じており制御液圧の目標液圧からの偏差が基準偏差よりも小さくならない場合には(S86のYes)、ブレーキECU70は、増圧リニア制御弁66からのブレーキフルードの供給流量が低流量であると判定する(S88)。この場合にも、ブレーキECU70は、制御モードをハイドロブースタモードに移行する(S90)。制御不良が生じていないと判定された場合には(S86のNo)、予備的異常判定処理S62は終了し、図6に示される処理に戻る。
図8及び図9は、図7に示される予備的故障部位判定処理S92を説明するためのフローチャートである。予備的故障部位判定処理S92が開始されると、ブレーキECU70は、制御圧センサ73に反応があるか否か、すなわち制御圧センサ73の測定値に何らかの変動があるか否かを判定する(S100)。制御圧センサ73に反応がない場合には(S100のYes)、ブレーキECU70は、制御圧センサ73に自己診断を行わせ、制御圧センサ73に異常が生じているか否かを判定する(S102)。これにより、制御圧センサ73に異常が生じているために制御圧センサ73に反応がないのか、それとも、他の制御弁等の異常により実際に制御液圧が変化していないのかを識別することができる。
制御圧センサ73の自己診断結果が異常の発生を示すものである場合には(S102のYes)、ブレーキECU70は、制御圧センサ73に異常があると判定し(S104)、図7に示される処理に戻る。すなわちハイドロブースタモードに移行する(図7のS90)。制御圧センサ73の自己診断結果が異常の発生を示すものではない場合には(S102のNo)、ブレーキECU70は、増圧リニア制御弁66へ供給される制御電流を最大値とする(S106)。増圧リニア制御弁66への供給電流を最大化すると、増圧リニア制御弁66が正常に機能している場合には増圧リニア制御弁66の開度は最大となるので、増圧リニア制御弁66の上流に設けられたアキュムレータ圧センサ72の測定値は低下する。
増圧リニア制御弁66への供給電流が最大化された後に、ブレーキECU70は、アキュムレータ圧センサ72の測定値に変動があるか否かを判定する(S108)。アキュムレータ圧センサ72の測定値に変動がないと判定された場合には(S108のNo)、ブレーキECU70は、増圧リニア制御弁66に閉故障が生じていると判定する(S112)。増圧リニア制御弁66への供給電流が最大化されたにもかかわらずアキュムレータ圧センサ72の測定値に変動が見られないということは、増圧リニア制御弁66が閉じた状態にあると考えられるからである。その後ブレーキECU70は、図7に示される処理に戻り、ハイドロブースタモードに移行する(図7のS90)。なお、アキュムレータ圧センサ72の測定値に変動がない場合には、アキュムレータ圧センサ72の自己診断機能によりアキュムレータ圧センサ72に異常が生じているか否かを判定するようにしてもよい。
アキュムレータ圧センサ72の測定値に変動があると判定された場合には(S108のYes)、ブレーキECU70は、分離弁60に閉故障が生じていると判定する(S110)。この場合は、増圧リニア制御弁66を介したブレーキフルードの供給が正常に行われ、かつ制御圧センサ73にも異常がないにもかかわらず、制御圧センサ73の測定値に変動がないという場合である。この原因は、増圧リニア制御弁66と制御圧センサ73との間に設けられた分離弁60に閉故障が生じていることであると考えられる。その後ブレーキECU70は、図7に示される処理に戻り、ハイドロブースタモードに移行する(図7のS90)。
一方、制御圧センサ73の測定値Pfrに変動がないとは判定されなかった場合には(S100のNo)、図9に示されるように、ブレーキECU70は、制御圧センサ73の測定値Pfrが上昇しているか否かを判定する(S114)。測定値Pfrが上昇を続けている場合には(S114のYes)、ブレーキECU70は、増圧リニア制御弁66からの供給流量が異常に低くなっていると判定する(S116)。図7に示されるように、予備的故障部位判定処理S92の実行にあたっては、応答遅れ異常が生じていることが前提となっており(図7のS84)、測定値Pfrが上昇を続けているとしてもゆっくりとした上昇となるから、目標液圧への制御液圧Pfrの追従は難しいと考えられるからである。なお、この低流量の判定は、制御不良異常判定(図7のS86)における異常ありとの判定を待ってから確定させるようにしても良い。
再び図9に戻って、制御圧センサ73の測定値Pfrが上昇していない場合には(S114のNo)、制御液圧Pfrは、既に上昇が飽和してしまっている状態にあるものと考えられる。このとき、ブレーキECU70は、マスタカット弁64への制御電流の供給を停止して、マスタカット弁64を開状態とする(S118)。
マスタカット弁64が開状態とされた後に、ブレーキECU70は、制御圧センサ73の測定値Pfrが低下するか否かを判定する(S120)。測定値Pfrが低下しない場合には(S120のNo)、ブレーキECU70は、マスタカット弁64に開故障が生じていると判定する(S122)。マスタカット弁64が正常に開状態とされれば、ブレーキペダル24への操作が行われていないので、ブレーキフルードがマスタシリンダ32へと還流して、制御圧センサ73の測定値Pfrが低下するはずである。ところが、マスタカット弁64を開状態としたにもかかわらず測定値Pfrが低下しないということは、当初からマスタカット弁64が開かれたままであったものと考えられる。その後ブレーキECU70は、図7に示される処理に戻り、ハイドロブースタモードに移行する(図7のS90)。
制御圧センサ73の測定値Pfrが低下した場合には(S120のYes)、ブレーキECU70は、マスタカット弁64を閉弁するとともにレギュレータカット弁65を開状態とする(S124)。次いでブレーキECU70は、制御圧センサ73の測定値Pfrが低下するか否かを判定する(S126)。測定値Pfrが低下しない場合には(S126のNo)、ブレーキECU70は、レギュレータカット弁65に開故障が生じていると判定する(S128)。このような場合にも、上述のマスタカット弁64の開故障と同様の異常がレギュレータカット弁65にも生じていると考えられるからである。その後ブレーキECU70は、図7に示される処理に戻り、ハイドロブースタモードに移行する(図7のS90)。
なお、上述のようにマスタカット弁64またはレギュレータカット弁65に開故障が生じている場合には制御液圧Pfrが安定しないため、この制御液圧Pfrを安定させようとして動力液圧源30のモータ36aが連続して駆動されることが考えられる。よって、マスタカット弁64またはレギュレータカット弁65における開故障が生じているとブレーキECU70が判定するにあたっては、モータ36aに対する連続通電があることを条件に含めてもよい。他の開故障や漏れ異常の判定に際しても同様である。
制御圧センサ73の測定値Pfrが低下した場合には(S126のYes)、ブレーキECU70は、レギュレータカット弁65を閉弁する(S130)。引き続いてブレーキECU70は、ABS減圧弁56〜59等の異常判定を行う。
まずブレーキECU70は、ABS保持弁51〜54のうちの特定の1つ、例えば右前輪用のABS保持弁51を閉弁し(S132)、制御圧センサ73の測定値Pfrが上昇するか否かを判定する(S134)。このとき測定値Pfrに上昇が見られるならば(S134のYes)、ブレーキECU70は、閉弁された右前輪用のABS保持弁51に対応する右前輪用のABS減圧弁56に開故障が生じていると判定する(S138)。なぜなら、測定値Pfrの上昇が飽和した状態で、特定のABS保持弁を閉弁した後に測定値Pfrの上昇が再開されたということは、そのABS保持弁の下流においてブレーキフルードの漏れが生じていると考えられるからである。その後ブレーキECU70は、図7に示される処理に戻り、ハイドロブースタモードに移行する(図7のS90)。
なお、この場合、ABS減圧弁の開故障ではなく、液圧アクチュエータ40とホイールシリンダ23とを接続する配管等からのブレーキフルードの漏れが生じている可能性もある。仮に配管からの漏れが生じている場合には、リザーバ34に還流するブレーキフルードが減少するので、リザーバ34におけるブレーキフルードの蓄積量から判定することができる。よって、ブレーキECU70は、リザーバ34におけるブレーキフルードの蓄積量を検出するリザーバスイッチ等からの信号に基づいて、ABS減圧弁の開故障と配管漏れとを識別するようにしても良い。
ABS保持弁を閉弁した後に制御圧センサ73の測定値Pfrが上昇しなかった場合には(S134のNo)、ブレーキECU70は、すべてのABS減圧弁56〜59の異常の有無が判定されたか否かを判定する(S136)。まだ異常の有無が判定されていないABS減圧弁56〜59が残っている場合には(S136のNo)、ブレーキECU70は、未判定のABS減圧弁に対応するABS保持弁51〜54を閉弁して(S132)、同様の処理を4輪分すべてについて繰り返し実行する。
すべてのABS減圧弁56〜59が判定済みであると判定された場合には(S136のYes)、ブレーキECU70は、減圧リニア制御弁67に開故障が生じていると判定する(S140)。この場合は、いずれのABS保持弁51〜54を閉弁しても制御液圧Pfrの上昇は見られなかった場合であるので、減圧リニア制御弁67からのブレーキフルードの漏れが生じているものと考えられる。その後ブレーキECU70は、図7に示される処理に戻り、ハイドロブースタモードに移行する(図7のS90)。
図10は、図6に示される漏れ異常判定終了処理S78を説明するためのフローチャートである。図6に示されるように、ブレーキECU70は、分離弁60における漏れ異常が検出されずに漏れ異常判定時間Taが経過した場合には(S76のYes)、以下に説明する漏れ異常判定終了処理S78を実行する。
漏れ異常判定終了処理S78が開始されると、まずブレーキECU70は、減圧リニア制御弁67を制御して、後輪側の制御液圧、すなわち主流路45の第2流路45bにおける液圧を与圧a程度にまで減圧する(S150)。このとき、分離弁60は閉状態であるので、制御圧センサ73による測定値Pfrを用いたフィードバック制御により減圧するのではなく、減圧リニア制御弁67に供給される制御電流をフィードフォワード制御することにより減圧する。よって、減圧リニア制御弁67への供給電流のパターンは、円滑な減圧が可能であり、かつ開弁時に振動を不必要に起こさない程度のものを事前に実験等を行うことにより設定しておくことが望ましい。
後輪側の液圧が与圧a程度にまで減圧したら、ブレーキECU70は、分離弁60を開弁する(S152)。分離弁60の開弁後に、ブレーキECU70は、制御圧センサ73により制御液圧Pfrを測定する(S154)。測定された液圧値に基づいて、ブレーキECU70は、減圧リニア制御弁67による与圧aへの減圧が正常に行われたか否かを判定する(S156)。後輪側を与圧a程度に減圧した後に分離弁60を開いているので、正常に後輪側が正常に減圧されていれば、前輪側に設けられた制御圧センサ73の測定値Pfrは与圧a程度に維持されて変動しない。ところが正常に減圧されなければ、後輪側の液圧の影響により測定値Pfrは変動する。よって、制御圧センサ73の測定値Pfrから、与圧aへの減圧が正常に行われたか否かを判定することができる。
減圧されていないと判定された場合には(S156のNo)、ブレーキECU70は、減圧リニア制御弁67に閉故障が生じていると判定する(S160)。減圧リニア制御弁67を開弁することができなかったために減圧されなかったと考えられるためである。その後ブレーキECU70は、ハイドロブースタモードに移行し(S170)、漏れ異常判定終了処理S78は終了する。
正常に減圧されたと判定された場合には(S156のYes)、ブレーキECU70は、さらに減圧リニア制御弁67を制御して、主流路45における液圧を微小圧εまで減圧する(S158)。そしてブレーキECU70は、マスタカット弁64への制御電流の供給を停止して、マスタカット弁64を開状態とする(S162)。この状態で、ブレーキECU70は、制御圧センサ73の測定値Pfrに基づいて、主流路45における液圧が零まで、つまり大気圧まで減圧されたか否かを判定する(S164)。正常にマスタカット弁64が開状態とされれば、マスタカット弁64を介してブレーキフルードがマスタシリンダ32へと還流し、微小圧εから更に減圧されると考えられる。よって、零まで減圧されないと判定された場合には(S164のNo)、ブレーキECU70は、マスタカット弁64に閉故障が生じていると判定する(S168)。その後ブレーキECU70は、ハイドロブースタモードに移行し(S170)、漏れ異常判定終了処理S78は終了する。なお、微小圧εは、マスタシリンダ32へのブレーキフルードの還流により主流路における液圧が零となるような値を予め実験等により定めておくことが望ましい。
液圧が零まで減圧されたと判定されれば(S164のYes)、ブレーキECU70は、レギュレータカット弁65を開状態とするとともに分離弁60を閉状態として(S166)、図6に示される分離弁漏れ異常判定処理S56は終了する。すなわち、各電磁制御弁は図1に示される初期状態に戻されて、図5に示される第1異常判定処理は終了する。
図11は、第1異常判定処理の際の主流路45における液圧と各電磁制御弁の開閉タイミングを示す図である。図11には、図5ないし図10により示される第1異常判定処理により何ら異常が検出されなかった場合の主流路45における液圧と各電磁制御弁の開閉タイミングとが示されている。図11の上部は、前輪側および後輪側のそれぞれにおける圧力の変動が示され、前輪側は一点鎖線により、後輪側は実線により示されている。図11の下部は、カーテシスイッチ80および各電磁制御弁の状態が示されており、上から順に、カーテシスイッチ80、分離弁60、マスタカット弁64、レギュレータカット弁65、増圧リニア制御弁66、および減圧リニア制御弁67のそれぞれの状態が示されている。
乗員により時刻t0に車両のドアが開かれると、カーテシスイッチ80からON信号が出力され、そのON信号はブレーキECU70に入力され、第1異常判定処理が開始されることとなる。ブレーキECU70は、時刻t0から若干遅れて時刻t1に分離弁60、マスタカット弁64、およびレギュレータカット弁65のそれぞれに制御電流を供給し、分離弁60を開弁するとともにマスタカット弁64及びレギュレータカット弁65を閉弁する(図6のS60)。次いでブレーキECU70は、時刻t1から若干遅れて時刻t2に増圧リニア制御弁66への制御電流の供給を開始し、制御圧センサ73により測定される制御液圧Pfrが与圧aとなる時刻t3まで増圧リニア制御弁66を制御する(図7のS80)。本実施形態では、与圧aは例えば2〜3MPa程度とされる。そして、制御液圧Pfrが与圧aとなってから所定の時間内に予備的異常判定処理S62を完了し(図6のS62)、予備的異常判定処理S62の完了後の時刻t4に、ブレーキECU70は、分離弁60を閉状態とする(図6のS64)。
続いてブレーキECU70は、時刻t4から所定の遅れ時間が経過した時刻t5に再度増圧リニア制御弁66を制御することにより後輪側を増圧する(図6のS66)。その後時刻t6に分離弁60の両側の差圧が所定の差圧xに達すると、ブレーキECU70は、増圧リニア制御弁66の制御を中止して増圧リニア制御弁66を閉弁する。そしてブレーキECU70は、漏れ異常判定時間Taをかけて分離弁60の漏れ異常の有無を判定する(図6のS70およびS76)。なお、差圧xを大きくするほうが異常判定の精度を高めることができるが、増圧するのに時間がかかるようになってしまう。このため、実験等により適宜定めることが望ましく、本実施形態においては、例えば2〜3MPa程度に設定される。
このように本実施形態においては、分離弁60の両側に予め与圧aを付加しておき、更に後輪側を増圧して前輪側との間に差圧を生じさせている。与圧のない状態で増圧リニア制御弁66を動作させて増圧する場合には、配管やホイールシリンダ23等における弾性の影響等により、増圧の当初は消費油量の割に液圧が増加しにくい状態となる。そしてある程度増圧されると、消費油量の変化が小さくとも液圧の変動は増圧当初よりも大きくなってくる。よって、本実施形態のように与圧aを付与すると、分離弁60での漏れ異常によるブレーキフルードの流通に伴う差圧の変動をより大きくすることができる。したがって、予め与圧aを付加することにより、分離弁60での漏れ異常をより精度良く判定することが可能となる。
漏れ異常判定時間Taが経過した後に所定の遅れ時間を経て、時刻t7から時刻t8までの間、ブレーキECU70は、減圧リニア制御弁67を制御して後輪側の制御液圧を与圧a程度にまで減圧する(図10のS150)。その後更に、所定の時間遅れを経て時刻t9にブレーキECU70は分離弁60を開状態とする(図10のS152)。
分離弁60の開弁後の所定の時間内にブレーキECU70は、正常に減圧されたか否かを判定する(図10のS156)。次いでブレーキECU70は、正常に減圧されていることを前提として時刻t10に再度減圧リニア制御弁67の制御を開始し、時刻t11にて制御液圧が微小圧εに達したところで、ブレーキECU70はマスタカット弁64を開く(図10のS162)。ブレーキECU70は、マスタカット弁64の開弁に合わせて減圧リニア制御弁67の制御を中止して閉弁する。本実施形態では、圧力εは例えば0.5〜1MPa程度に設定される。更に制御液圧が減圧されて時刻t12に大気圧となった後に所定の時間遅れを経て時刻t13にレギュレータカット弁65を開状態とするとともに分離弁60を閉状態として(図10のS166)、第1異常判定処理は終了する。
本実施形態では、ブレーキECU70は、分離弁60を開弁することにより主流路45における差圧を解消した後に、マスタカット弁64及びレギュレータカット弁65を開弁している。よって、マスタカット弁64、あるいはレギュレータカット弁65の開弁時のペダルショックを低減することができる。
ところで、本実施形態においては、分離弁漏れ異常判定処理S56が完了する前に運転者によるブレーキ操作が検出された場合には、ブレーキECU70は、当該処理を中断する。ブレーキ操作に応じた制動力を発生させるべく各電磁開閉弁の開閉パターンを変更する必要があるからである。
分離弁60の両側に差圧が生じている状態で分離弁漏れ異常判定処理S56を中断する場合には、ブレーキECU70は、差圧を解消した後にマスタカット弁64またはレギュレータカット弁65への制御電流の供給を停止して開状態とすることが望ましい。マスタカット弁64またはレギュレータカット弁65を開弁するときに差圧によりペダルショックが発生することを抑制するためである。差圧を解消するために、ブレーキECU70は分離弁60を開弁する。分離弁60の開弁後に更に、ブレーキECU70は、減圧リニア制御弁67により主流路45における液圧をマスタシリンダ圧程度に減圧するようにしてもよい。あるいは、ブレーキECU70は、単にABS減圧弁56〜59のいずれかを開弁して主流路45における液圧を減圧してもよい。
分離弁60の両側の差圧が解消されたら、ブレーキECU70は、分離弁60への制御電流の供給を停止して閉状態とし、次いで、マスタカット弁64及びレギュレータカット弁65への制御電流の供給を停止して開状態とする。このようにして、ブレーキ制御装置20は図1に示される初期状態に戻される。
また、分離弁漏れ異常判定処理S56を中断する場合には、中断するまでの判定結果をブレーキECU70に記憶することが望ましい。このようにすれば、中断までの判定結果に基づいてハイドロブースタモードに移行する等、その後の処理に活用することができる。加えて、分離弁漏れ異常判定処理S56を再開したときに、未完了の判定のみを更に行うだけで処理を完了させることができる。
本実施形態においては、第1異常判定処理の終了後に運転者が車両の走行駆動源を始動させると、更に第2異常判定処理が実行される。より具体的には、第2異常判定処理は、車両の走行駆動源の始動後であって、車両の走行駆動源の始動に際しての運転者によるブレーキペダル24の踏み込みが継続している間に実行される。言い換えれば、第2異常判定処理は、車両の始動後かつ走行開始前の初回のブレーキペダル踏み込み時に実行される。第2異常判定処理によれば、運転者によるブレーキ操作量に応じて加圧されたブレーキフルードがレギュレータ33から各ホイールシリンダ23へと正常に供給されるか否かが判定される。ブレーキECU70は、車両の走行駆動源の始動とブレーキペダル24の踏み込みを検知して、第2異常判定処理を開始する。
図12は、本実施形態における第2異常判定処理を説明するためのフローチャートである。第2異常判定処理が開始されると、ブレーキECU70は、制御モードをReg増モードに移行させる(S180)。Reg増モードへの移行後に、ブレーキECU70は、制御圧センサ73、レギュレータ圧センサ71、およびストロークセンサ25の各センサからの測定値を取得する(S182)。そして、ブレーキECU70は、取得した各センサからの測定値を比較して、各測定値が正常な範囲内に含まれるか否かを判定する(S184)。
ここで、図13および図14を参照して、S184における判定方法を説明する。図13および図14は、各センサの測定値が正常な範囲にあるか否かを判定するためのグラフである。図13の縦軸はレギュレータ圧センサ71の測定値であり、横軸はストロークセンサ25の測定値である。図14の縦軸は制御圧センサ73の測定値であり、横軸はレギュレータ圧センサ71の測定値である。図13及び図14に示されるグラフは、予め設定されてブレーキECU70に記憶されている。
ブレーキECU70は、S182で取得された各測定値の図13及び図14のグラフ上の位置に基づいて正常か否かを判定する。具体的には、各測定値が、図13及び図14のそれぞれにおいて破線に挟まれた領域であるL1およびM1にあるときに、各測定値は正常であると判定される。それ以外の場合には正常ではないと判定される。
図13に示される領域L1は、図13で実線により示される折れ線lを含むように設定されている。折れ線lは、ブレーキ制御装置20が正常である場合におけるストロークセンサ25の測定値とレギュレータ圧センサ71の測定値との関係に相当する。図13中の破線は、正常か否かを判定するための閾値として折れ線lの両側に折れ線lと所定の間隔を有して設定されている。なお、正常な場合の関係が折れ線状となるのは、ストローク値が小さい増圧当初はブレーキフルード用配管等の弾性変形等により増圧分がある程度吸収されてしまうために比較的増圧されにくいからである。
よって、図13において破線に挟まれた領域として示される領域L1に、測定されたストローク値及びレギュレータ圧が含まれる場合に、ブレーキECU70は、ストローク値とレギュレータ圧との関係は正常であると判定することができる。逆に、ブレーキECU70は、ストローク値及びレギュレータ圧が領域L1に含まれない場合には、ストローク値とレギュレータ圧との関係は正常ではないと判定することができる。
なお、正常ではないと判定される領域を、以下適宜、領域L1の下側については領域L2と称し、領域L1の上側については領域L3と称することとする。領域L2は、レギュレータ圧がストローク値に対して小さすぎる場合であり、領域L3は逆に、レギュレータ圧がストローク値に対して大きすぎる場合である。
また、図14に示される領域M1は、図14で実線により示される直線mを含むように設定されている。直線mは、ブレーキ制御装置20が正常である場合における制御圧センサ73の測定値とレギュレータ圧センサ71の測定値との関係を示す。図14中の破線は、正常か否かを判定するための閾値として直線mの両側に直線mと所定の間隔を有して設定されている。なお、直線mは、制御圧センサ73の測定値とレギュレータ圧センサ71の測定値とが等しくなる点を通る直線である。これは、レギュレータカット弁65および分離弁60が開状態とされるReg増モードでこの判定が行われるために、制御圧センサ73及びレギュレータ圧センサ71には正常な場合であれば等しい液圧が作用するからである。なお、この判定方法は、分離弁60が閉状態とされたハイドロブースタモードにおいても実行可能であり、その場合には、領域M1をより広めに設定することが望ましい。
よって、ブレーキECU70は、図14において破線に挟まれた領域として示される領域M1に制御圧及びレギュレータ圧が含まれる場合には両者の関係は正常であると判定し、そうでなければ両者の関係は正常ではないと判定することができる。なお、正常ではないと判定される領域を、以下適宜、領域M1の下側については領域M2と称し、領域M1の上側については領域M3と称することとする。
再び図12に戻って、第2異常判定処理の説明を続ける。上述の判定方法により各センサの測定値が正常な範囲にあると判定された場合には(S184のYes)、ブレーキECU70は、回生協調制御モードに移行可能であると判定し(S186)、第2異常判定処理を終了する。これにより、車両の走行駆動源の始動後の初回制動時から回生協調制御を実行することが可能となる。一方、各センサの測定値が正常な範囲には無いと判定された場合には(S184のNo)、ブレーキECU70は、異常の発生部位を判別するために始動後故障部位判定処理を実行する(S188)。
始動後故障部位判定処理S188においては、次の2つの場合にセンサ以外の箇所の故障部位の判別を行う。第1の場合は、ストローク値に対してレギュレータ圧及び制御液圧Pfrが小さすぎる場合である。これは、各センサの測定値が領域L2(図13参照)かつ領域M1(図14参照)に含まれる場合である。ストローク値に対して液圧が低いのは、ブレーキフルードの漏れが生じているためであると考えられる。また、第2の場合は、ストローク値とレギュレータ圧との関係は正常範囲にあるにもかかわらず、制御圧センサ73の測定値にほとんど変動が見られない場合である。これは、レギュレータ圧センサ71と制御圧センサ73との間が弁の閉故障により遮断されているためであると考えられる。これらの2つの場合を除けば、各センサに異常が生じているために各測定値が異常な値を示したものと考えられる。
図15及び図16は、本実施形態における始動後故障部位判定処理S188を説明するためのフローチャートである。始動後故障部位判定処理S188が開始されると、ブレーキECU70は、測定されたストローク値及びレギュレータ圧が領域L2(図13参照)にあるか否かを判定する(S200)。領域L2にある場合には(S200のYes)、ブレーキECU70は更に、測定された制御液圧Pfr及びレギュレータ圧が領域M1(図14参照)にあるか否かを判定する(S202)。領域M1には含まれないと判定された場合には(S202のNo)、ブレーキECU70は、いずれかのセンサに異常があるものと判定し(S204)、始動後故障部位判定処理S188を終了する。
制御液圧Pfr及びレギュレータ圧が領域M1には含まれると判定された場合には(S202のYes)、ブレーキECU70は、制御圧センサ73に自己診断を行わせ、制御圧センサ73に異常が生じているか否かを判定する(S206)。制御圧センサ73の自己診断結果が異常の発生を示すものである場合には(S206のYes)、ブレーキECU70は、制御圧センサ73に異常があると判定し(S208)、始動後故障部位判定処理S188を終了する。
制御圧センサ73の自己診断結果が異常の発生を示すものではない場合には(S206のNo)、上述の第1の場合に該当するので、ブレーキECU70は、ブレーキフルードの漏れが生じている部位を判別する処理を更に実行する。この処理は、図9を参照して説明したS132〜S140と同様に実行することができる。ただし、本実施形態では、レギュレータ圧センサ71及び制御圧センサ73には等しい液圧が作用しているので、S134においてレギュレータ圧に基づいて判定するようにしてもよい。ブレーキフルードの漏れが生じている部位が判別されたら、ブレーキECU70は、始動後故障部位判定処理S188を終了する。
一方、ストローク値及びレギュレータ圧が領域L2に含まれない場合には(S200のNo)、図16に示されるように、ブレーキECU70は更に、ストローク値及びレギュレータ圧が領域L1(図13参照)にあるか否かを判定する(S210)。領域L1には含まれないと判定された場合には(S210のNo)、ブレーキECU70は、いずれかのセンサに異常があるものと判定し(S214)、始動後故障部位判定処理S188を終了する。
ストローク値及びレギュレータ圧が領域L1には含まれると判定された場合には(S210のYes)、ブレーキECU70は更に、制御圧センサ73の測定値に変化が見られるか否かを判定する(S212)。制御圧センサ73の測定値に変化がないとは判定されない場合には(S212のNo)、ブレーキECU70は、いずれかのセンサに異常があるものと判定し(S214)、始動後故障部位判定処理S188を終了する。
制御圧センサ73の測定値に変化がないと判定された場合には(S212のYes)、ブレーキECU70は、制御圧センサ73に自己診断を行わせ、制御圧センサ73に異常が生じているか否かを判定する(S216)。制御圧センサ73の自己診断結果が異常の発生を示すものである場合には(S216のYes)、ブレーキECU70は、制御圧センサ73に異常があると判定し(S218)、始動後故障部位判定処理S188を終了する。
制御圧センサ73の自己診断結果が異常の発生を示すものではない場合には(S216のNo)、上述の第2の場合に該当するので、ブレーキECU70は、レギュレータカット弁65または分離弁60に閉故障が生じていると判定し(S220)、始動後故障部位判定処理S188を終了する。
図12に示されるように、始動後故障部位判定処理S188が終了すると、ブレーキECU70は、ハイドロブースタモードに移行し(S190)、第2異常判定処理を終了する。なお、図2に示されるセンサ検定処理S36も、図12〜図16を参照して上述した第2異常判定処理と同様に行うことができる。
ところで、本実施形態においては、始動前の分離弁漏れ異常判定処理S56が中断されている場合には、上述の第2異常判定処理の終了後であってブレーキ操作が続行されている間に当該処理を再開する。この場合、与圧aに代えて、ブレーキ操作による踏み込み圧を用いる。
そして、ブレーキ操作が終了する前に何ら異常が検出されることなく分離弁漏れ異常判定処理S56が完了したら、ブレーキECU70は、制御モードを回生協調制御モードに移行可能であると判定する。異常が検出されることなく処理が再度中断された場合にも、ブレーキECU70は、制御モードを回生協調制御モードに移行可能であると判定する。再度中断された場合には、ブレーキECU70は、回生協調制御モードでの制御中に車両が停止している際に分離弁漏れ異常判定処理S56を再開して完了させる。いずれの場合においても、1つでも異常が検出された場合には、ブレーキECU70はハイドロブースタモードに移行する。
さらに、例えば、車両内で睡眠をとっていた運転者がドアの開閉を行うことなく車両を急に始動させた場合というように、カーテシスイッチの出力信号を契機として第1異常判定処理を実行できない場合もあり得る。このような場合には、ブレーキECU70は、まずは制御モードをReg増モードとする。その上で、車両の始動後のブレーキ操作中にまず第2異常判定処理を実行し、さらに分離弁漏れ異常判定処理S56を実行する。ブレーキ操作の終了等により分離弁漏れ異常判定処理S56が中断された場合には、ブレーキECU70は、次のブレーキ操作の際に、好ましくは停車中に処理を再開する。
なお、カーテシスイッチの出力信号を契機として第1異常判定処理を実行できない場合においては、例えばアキュムレータ圧が充分な蓄圧状態に達していないというように、ブレーキECU70が制御モードをReg増モードとすべきではない場合もあり得る。このような場合には、ブレーキECU70は、まず制御モードをハイドロブースタモードとしてもよい。その後、アキュムレータ圧が所定の圧力まで昇圧されたら、ブレーキECU70は、制御モードをReg増モードに移行させ、上述のように第2異常判定処理および分離弁漏れ異常判定処理S56を実行するようにしてもよい。
以上のように、本実施形態によれば、車両の走行駆動源が始動される前に分離弁60を始めとするブレーキ制御装置20を構成する主な要素における異常が検出される。この異常検出は、ブレーキECU70への乗車関連信号の入力を契機として行われるので、車両の走行駆動源の始動直前に異常を検出することができる。そして、走行駆動源の始動に際してのブレーキ操作時には、レギュレータ圧を各ホイールシリンダ23に伝達するための主な要素における異常が検出される。ブレーキECU70は、異常が検出された場合にはハイドロブースタモードに移行し、異常が検出されなかった場合には回生協調制御モードに移行可能であると判定する。したがって、走行前に異常を検出してフェイルセーフを実現することができるとともに、正常な場合には走行駆動源の始動後の初回制動時からすみやかに回生協調制御モードに移行して回生協調制御が実行することができる。
また、本実施形態においては、分離弁60の漏れ異常を判定する際に、分離弁60の漏れ異常以外の要因で差圧が変動しないようマスタカット弁64およびレギュレータカット弁65を閉状態としている。マスタカット弁64およびレギュレータカット弁65の初期状態は開状態であるので、両者を閉状態とするには制御電流を供給して閉弁しなければならない。そして、漏れ異常判定を終了するときには両弁を開弁する。仮にこのような閉弁動作または開弁動作を運転者のブレーキ操作中に行えば、運転者のペダルフィーリングへの影響が大きい。本実施形態では、これらの開閉が、運転者によるブレーキ操作が無い状態で行われるので、運転者にペダルフィーリングの違和感を感じさせずに異常を検出することができる。更に、中断された分離弁漏れ異常判定処理S56の再開がReg増モードで行われる。これにより、レギュレータカット弁65を開状態のまま維持し、マスタカット弁64を閉状態のまま維持して分離弁漏れ異常判定処理S56が再開される。よって、分離弁漏れ異常判定処理S56を再開する場合もペダルフィーリングへの影響が抑制される。
さらに、本実施形態においては、制動力の制御液圧の制御性の向上等の観点から、ホイールシリンダ23に対して並列に複数の液圧源が設けられている。すなわち、動力液圧源30、マスタシリンダ32およびレギュレータ33がそれぞれ各ホイールシリンダ23に対して並列に設けられている。そして、初期状態においてはマスタシリンダ圧とこれにほぼ等しいレギュレータ圧とが分離弁60の両側にそれぞれ作用する液圧回路が採用され、ブレーキ操作により直ちに分離弁60の両側に差圧は生じない。ところが、本実施形態においては、各電磁開閉弁を上述のような開閉パターンにより動作させ、動力液圧源30に蓄圧された液圧により分離弁60の両側に差圧を作用させている。これにより、ブレーキ操作により直ちに分離弁60の両側に差圧が生じなくとも、分離弁60の漏れ異常を検出することが可能となる。