JP2009107437A - ブレーキ制御装置およびブレーキ制御方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】液圧ブレーキ装置においてハイドロブースタモードが選択されているとき、減圧弁からの液漏れを検出する。
【解決手段】異常検出部82は、減圧弁が閉弁された状態でマスタ流路とレギュレータ流路の二系統から複数のホイールシリンダに作動液が供給される制御モードにおいて、レギュレータ圧センサで検出される作動液圧と、ストロークセンサの検出値に基づき算出される作動液圧とが一致しないとき、レギュレータ圧センサの故障または減圧弁からの液漏れのいずれかの異常が生じていると判定する。アキュムレータ状態判定部84は、異常が生じていると判定されたとき、レギュレータから複数のホイールシリンダに作動液が供給されている間にアキュムレータが一定状態を維持しているか否かを判定する。液漏れ特定部86は、アキュムレータが一定状態を維持していない場合、減圧弁から液漏れが生じていると判定する。
【選択図】図2
【解決手段】異常検出部82は、減圧弁が閉弁された状態でマスタ流路とレギュレータ流路の二系統から複数のホイールシリンダに作動液が供給される制御モードにおいて、レギュレータ圧センサで検出される作動液圧と、ストロークセンサの検出値に基づき算出される作動液圧とが一致しないとき、レギュレータ圧センサの故障または減圧弁からの液漏れのいずれかの異常が生じていると判定する。アキュムレータ状態判定部84は、異常が生じていると判定されたとき、レギュレータから複数のホイールシリンダに作動液が供給されている間にアキュムレータが一定状態を維持しているか否かを判定する。液漏れ特定部86は、アキュムレータが一定状態を維持していない場合、減圧弁から液漏れが生じていると判定する。
【選択図】図2
Description
本発明は、車両に設けられ車輪に付与される制動力を制御するブレーキ制御装置およびブレーキ制御方法に関する。
従来から、加圧源と液圧制御部とにより各ホイールシリンダに付与する液圧を調整して制動力を制御可能な電子制御式のブレーキ装置が知られている。例えば、特許文献1には、液圧ブースタとマスタシリンダと動力液圧源と複数のブレーキシリンダとを含む液圧ブレーキ装置が記載されている。この液圧ブレーキ装置によれば、簡単な回路で、複数のブレーキシリンダと液圧ブースタ、マスタシリンダおよび動力液圧源とを選択的に連通可能とし、制御性を向上させることができる。システムが正常な場合には、動力液圧源からブレーキシリンダに作動液が供給される。異常が検出された場合には、正常時とは異なる他の制御モードに切り替えられる。例えばマスタシリンダからホイールシリンダに作動液を供給する系統と液圧ブースタから残りのホイールシリンダに作動液を供給する系統とに分離するハイドロブースタモードに移行する。ハイドロブースタモードでは、制御系の異常により各電磁制御弁への通電がない場合であっても液圧ブースタを利用して制動力を発生させることができる。したがって、このモードはフェイルセーフ性に優れている。
特開2006−123889号公報
ところで、上記特許文献1のような液圧ブレーキ装置では、車両の車輪毎に増圧制御弁と減圧制御弁を設ける代わりに、全ての車輪のホイールシリンダを一組の増圧制御弁と減圧制御弁で制御している。このように制御弁の設置数を減らすことによって、コストが低減する。しかしながら、このような液圧ブレーキ装置において、上述のハイドロブースタモードが選択されレギュレータ流路を経由してホイールシリンダにブレーキ液が供給されている間、レギュレータセンサの検出値に基づきブレーキ装置に異常が生じたとみなされる場合に、レギュレータセンサの異常と減圧制御弁からの液漏れとを切り分けすることができない。そのため、故障箇所の特定ができなくなり、メンテナンス時の作業性が低下するという問題がある。
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、液圧ブレーキ装置においてハイドロブースタモードが選択されているとき、減圧弁からの液漏れを検知する技術を提供することにある。
本発明のある態様は、ブレーキ制御装置である。この装置は、作動液圧に応じて複数の車輪のそれぞれに制動力を付与する複数のホイールシリンダと、ブレーキペダルの操作に応じて作動液を供給可能なマスタシリンダと、ブレーキペダルの操作量を検出するストロークセンサと、ポンプ駆動により作動液をアキュムレータに蓄圧する動力液圧源を高圧源としてマスタシリンダの作動液圧に合わせて作動液を調圧するレギュレータと、前記複数のホイールシリンダから排出される作動液を回収するリザーバと、前記マスタシリンダと前記複数のホイールシリンダとを接続するマスタ流路と、前記レギュレータと前記複数のホイールシリンダとを接続するレギュレータ流路と、前記レギュレータ流路に配設されるレギュレータカット弁と、前記レギュレータ流路と前記リザーバとを連通する流路に配設される減圧弁と、前記レギュレータカット弁よりレギュレータ側で前記レギュレータ流路の作動液圧を検出するレギュレータ圧センサと、前記減圧弁が閉弁された状態で前記マスタ流路と前記レギュレータ流路の二系統から前記複数のホイールシリンダに作動液が供給される制御モードにおいて、前記レギュレータ圧センサで検出される作動液圧と、前記ストロークセンサの検出値に基づき算出される作動液圧とが一致しないとき、前記レギュレータ圧センサの故障または前記減圧弁からの液漏れのいずれかの異常が生じていると判定する異常検出部と、異常が生じていると判定されたとき、前記レギュレータから前記複数のホイールシリンダに作動液が供給されている間に前記アキュムレータが一定状態を維持しているか否かを判定するアキュムレータ状態判定部と、前記アキュムレータが一定状態を維持していない場合、前記減圧弁から液漏れが生じていると判定する液漏れ特定部と、を備える。
この態様によると、マスタ流路とレギュレータ流路の二系統からホイールシリンダにブレーキフルードが供給されるハイドロブースタモードにおいて、アキュムレータの状態に基づいて減圧弁からの液漏れを検出するようにした。これにより、レギュレータ圧センサとストロークセンサの検出値が一致しない場合に、センサ故障と減圧弁からの液漏れとを区別することが可能となる。
前記アキュムレータ状態判定部は、前記アキュムレータの圧力が一定値を維持しているか否かを判定してもよい。アキュムレータはレギュレータを介してレギュレータ流路と接続されているので、減圧弁からの液漏れがなければ、アキュムレータの圧力が一定値を維持すると考えられる。したがって、アキュムレータ圧を監視することで、減圧弁からの液漏れを特定することができる。
前記アキュムレータ状態判定部は、前記ポンプが予め定められたしきい値を越える頻度で駆動されているか否かを判定してもよい。アキュムレータはレギュレータを介してレギュレータ流路と接続されているので、減圧弁からの液漏れがなければ、アキュムレータのポンプの作動頻度は所定の頻度以下に収まると考えられる。したがって、ポンプの作動頻度を監視することで、減圧弁からの液漏れを特定することができる。
前記減圧弁から液漏れが生じていると判定されたとき、判定時点と異なる制御モードへの移行を禁止する移行禁止部をさらに備えてもよい。マスタ流路とレギュレータ流路の二系統からホイールシリンダにブレーキ液が供給されるハイドロブースタモードを維持することで、車両の全輪で制動力を維持することができる。
本発明によれば、液圧ブレーキ装置において特定の制御モードが選択されているとき、減圧弁からの液漏れを検出することができる。
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
実施の形態1.
図1は、本発明の一実施形態に係るブレーキ制御装置20を示す系統図である。同図に示されるブレーキ制御装置20は、車両用の電子制御式ブレーキシステム(ECB)を構成しており、車両に設けられた4つの車輪に付与される制動力を制御する。本実施形態に係るブレーキ制御装置20は、例えば、走行駆動源として電動モータと内燃機関とを備えるハイブリッド車両に搭載される。このようなハイブリッド車両においては、車両の運動エネルギを電気エネルギに回生することによって車両を制動する回生制動と、ブレーキ制御装置20による液圧制動とのそれぞれを車両の制動に用いることができる。本実施形態における車両は、これらの回生制動と液圧制動とを併用して所望の制動力を発生させるブレーキ回生協調制御を実行することができる。
図1は、本発明の一実施形態に係るブレーキ制御装置20を示す系統図である。同図に示されるブレーキ制御装置20は、車両用の電子制御式ブレーキシステム(ECB)を構成しており、車両に設けられた4つの車輪に付与される制動力を制御する。本実施形態に係るブレーキ制御装置20は、例えば、走行駆動源として電動モータと内燃機関とを備えるハイブリッド車両に搭載される。このようなハイブリッド車両においては、車両の運動エネルギを電気エネルギに回生することによって車両を制動する回生制動と、ブレーキ制御装置20による液圧制動とのそれぞれを車両の制動に用いることができる。本実施形態における車両は、これらの回生制動と液圧制動とを併用して所望の制動力を発生させるブレーキ回生協調制御を実行することができる。
ブレーキ制御装置20は、図1に示されるように、各車輪に対応して設けられたディスクブレーキユニット21FR、21FL、21RRおよび21RLと、マスタシリンダユニット27と、動力液圧源30と、液圧アクチュエータ40とを含む。
ディスクブレーキユニット21FR、21FL、21RRおよび21RLは、車両の右前輪、左前輪、右後輪、および左後輪のそれぞれに制動力を付与する。本実施形態におけるマニュアル液圧源としてのマスタシリンダユニット27は、ブレーキ操作部材としてのブレーキペダル24の運転者による操作量に応じて加圧されたブレーキフルードをディスクブレーキユニット21FR〜21RLに対して送出する。動力液圧源30は、動力の供給により加圧された作動流体としてのブレーキフルードを、運転者によるブレーキペダル24の操作から独立してディスクブレーキユニット21FR〜21RLに対して送出することが可能である。液圧アクチュエータ40は、動力液圧源30またはマスタシリンダユニット27から供給されたブレーキフルードの液圧を適宜調整してディスクブレーキユニット21FR〜21RLに送出する。これにより、液圧制動による各車輪に対する制動力が調整される。
ディスクブレーキユニット21FR〜21RL、マスタシリンダユニット27、動力液圧源30、および液圧アクチュエータ40のそれぞれについて以下でさらに詳しく説明する。各ディスクブレーキユニット21FR〜21RLは、それぞれブレーキディスク22とブレーキキャリパに内蔵されたホイールシリンダ23FR〜23RLを含む。そして、各ホイールシリンダ23FR〜23RLは、それぞれ異なる流体通路を介して液圧アクチュエータ40に接続されている。なお以下では適宜、ホイールシリンダ23FR〜23RLを総称して「ホイールシリンダ23」という。
ディスクブレーキユニット21FR〜21RLにおいては、ホイールシリンダ23に液圧アクチュエータ40からブレーキフルードが供給されると、車輪と共に回転するブレーキディスク22に摩擦部材としてのブレーキパッドが押し付けられる。これにより、各車輪に制動力が付与される。なお、本実施形態においてはディスクブレーキユニット21FR〜21RLを用いているが、例えばドラムブレーキ等のホイールシリンダ23を含む他の制動力付与機構を用いてもよい。
マスタシリンダユニット27は、本実施形態では液圧ブースタ付きマスタシリンダであり、液圧ブースタ31、マスタシリンダ32、レギュレータ33、およびリザーバ34を含む。液圧ブースタ31は、ブレーキペダル24に連結されており、ブレーキペダル24に加えられたペダル踏力を増幅してマスタシリンダ32に伝達する。動力液圧源30からレギュレータ33を介して液圧ブースタ31にブレーキフルードが供給されることにより、ペダル踏力は増幅される。そして、マスタシリンダ32は、ペダル踏力に対して所定の倍力比を有するマスタシリンダ圧を発生する。
マスタシリンダ32とレギュレータ33との上部には、ブレーキフルードを貯留するリザーバ34が配置されている。マスタシリンダ32は、ブレーキペダル24の踏み込みが解除されているときにリザーバ34と連通する。一方、レギュレータ33は、リザーバ34と動力液圧源30のアキュムレータ35との双方と連通しており、リザーバ34を低圧源とすると共に、アキュムレータ35を高圧源とし、マスタシリンダ圧とほぼ等しい液圧を発生する。レギュレータ33における液圧を以下では適宜、「レギュレータ圧」という。なお、マスタシリンダ圧とレギュレータ圧とは厳密に同一圧にされる必要はなく、例えばレギュレータ圧のほうが若干高圧となるようにマスタシリンダユニット27を設計することも可能である。
動力液圧源30は、アキュムレータ35およびポンプ36を含む。アキュムレータ35は、ポンプ36により昇圧されたブレーキフルードの圧力エネルギを窒素等の封入ガスの圧力エネルギ、例えば14〜22MPa程度に変換して蓄えるものである。ポンプ36は、駆動源としてモータ36aを有し、その吸込口がリザーバ34に接続される一方、その吐出口がアキュムレータ35に接続される。また、アキュムレータ35は、マスタシリンダユニット27に設けられたリリーフバルブ35aにも接続されている。アキュムレータ35におけるブレーキフルードの圧力が異常に高まって例えば25MPa程度になると、リリーフバルブ35aが開弁し、高圧のブレーキフルードはリザーバ34へと戻される。
上述のように、ブレーキ制御装置20は、ホイールシリンダ23に対するブレーキフルードの供給源として、マスタシリンダ32、レギュレータ33およびアキュムレータ35を有している。そして、マスタシリンダ32にはマスタ配管37が、レギュレータ33にはレギュレータ配管38が、アキュムレータ35にはアキュムレータ配管39が接続されている。これらのマスタ配管37、レギュレータ配管38およびアキュムレータ配管39は、それぞれ液圧アクチュエータ40に接続される。
液圧アクチュエータ40は、複数の流路が形成されるアクチュエータブロックと、複数の電磁制御弁を含む。アクチュエータブロックに形成された流路には、個別流路41、42、43および44と、主流路45とが含まれる。個別流路41〜44は、それぞれ主流路45から分岐されて、対応するディスクブレーキユニット21FR、21FL、21RR、21RLのホイールシリンダ23FR、23FL、23RR、23RLに接続されている。これにより、各ホイールシリンダ23は主流路45と連通可能となる。
また、個別流路41、42、43および44の中途には、ABS保持弁51、52、53および54が設けられている。各ABS保持弁51〜54は、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングをそれぞれ有しており、いずれもソレノイドが非通電状態にある場合に開とされる常開型電磁制御弁である。開状態とされた各ABS保持弁51〜54は、ブレーキフルードを双方向に流通させることができる。つまり、主流路45からホイールシリンダ23へとブレーキフルードを流すことができるとともに、逆にホイールシリンダ23から主流路45へもブレーキフルードを流すことができる。ソレノイドに通電されて各ABS保持弁51〜54が閉弁されると、個別流路41〜44におけるブレーキフルードの流通は遮断される。
さらに、ホイールシリンダ23は、個別流路41〜44にそれぞれ接続された減圧用流路46、47、48および49を介してリザーバ流路55に接続されている。減圧用流路46、47、48および49の中途には、ABS減圧弁56、57、58および59が設けられている。各ABS減圧弁56〜59は、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングをそれぞれ有しており、いずれもソレノイドが非通電状態にある場合に閉とされる常閉型電磁制御弁である。各ABS減圧弁56〜59が閉状態であるときには、減圧用流路46〜49におけるブレーキフルードの流通は遮断される。ソレノイドに通電されて各ABS減圧弁56〜59が開弁されると、減圧用流路46〜49におけるブレーキフルードの流通が許容され、ブレーキフルードがホイールシリンダ23から減圧用流路46〜49およびリザーバ流路55を介してリザーバ34へと還流する。なお、リザーバ流路55は、リザーバ配管77を介してマスタシリンダユニット27のリザーバ34に接続されている。
主流路45は、中途に分離弁60を有する。この分離弁60により、主流路45は、個別流路41および42と接続される第1流路45aと、個別流路43および44と接続される第2流路45bとに区分けされている。第1流路45aは、個別流路41および42を介して前輪用のホイールシリンダ23FRおよび23FLに接続され、第2流路45bは、個別流路43および44を介して後輪用のホイールシリンダ23RRおよび23RLに接続される。
分離弁60は、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングを有しており、ソレノイドが非通電状態にある場合に閉弁される常閉型電磁制御弁である。分離弁60が閉状態であるときには、主流路45におけるブレーキフルードの流通は遮断される。ソレノイドに通電されて分離弁60が開弁されると、第1流路45aと第2流路45bとの間でブレーキフルードを双方向に流通させることができる。
また、液圧アクチュエータ40においては、主流路45に連通するマスタ流路61およびレギュレータ流路62が形成されている。より詳細には、マスタ流路61は、主流路45の第1流路45aに接続されており、レギュレータ流路62は、主流路45の第2流路45bに接続されている。また、マスタ流路61は、マスタシリンダ32と連通するマスタ配管37に接続される。レギュレータ流路62は、レギュレータ33と連通するレギュレータ配管38に接続される。
マスタ流路61は、中途にマスタカット弁64を有する。マスタカット弁64は、マスタシリンダ32から各ホイールシリンダ23へのブレーキフルードの供給経路上に設けられている。マスタカット弁64は、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングを有しており、規定の制御電流の供給を受けてソレノイドが発生させる電磁力により閉弁状態が保証され、ソレノイドが非通電状態にある場合に開とされる常開型電磁制御弁である。開状態とされたマスタカット弁64は、マスタシリンダ32と主流路45の第1流路45aとの間でブレーキフルードを双方向に流通させることができる。ソレノイドに規定の制御電流が通電されてマスタカット弁64が閉弁されると、マスタ流路61におけるブレーキフルードの流通は遮断される。
また、マスタ流路61には、マスタカット弁64よりも上流側において、シミュレータカット弁68を介してストロークシミュレータ69が接続されている。すなわち、シミュレータカット弁68は、マスタシリンダ32とストロークシミュレータ69とを接続する流路に設けられている。シミュレータカット弁68は、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングを有しており、規定の制御電流の供給を受けてソレノイドが発生させる電磁力により開弁状態が保証され、ソレノイドが非通電状態にある場合に閉弁される常閉型電磁制御弁である。シミュレータカット弁68が閉状態であるときには、マスタ流路61とストロークシミュレータ69との間のブレーキフルードの流通は遮断される。ソレノイドに通電されてシミュレータカット弁68が開弁されると、マスタシリンダ32とストロークシミュレータ69との間でブレーキフルードを双方向に流通させることができる。
ストロークシミュレータ69は、複数のピストンやスプリングを含むものであり、シミュレータカット弁68の開放時に運転者によるブレーキペダル24の踏力に応じた反力を創出する。ストロークシミュレータ69としては、運転者によるブレーキ操作のフィーリングを向上させるために、多段のバネ特性を有するものが採用されると好ましい。
レギュレータ流路62は、中途にレギュレータカット弁65を有する。レギュレータカット弁65は、レギュレータ33から各ホイールシリンダ23へのブレーキフルードの供給経路上に設けられている。レギュレータカット弁65も、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングを有しており、規定の制御電流の供給を受けてソレノイドが発生させる電磁力により閉弁状態が保証され、ソレノイドが非通電状態にある場合に開とされる常開型電磁制御弁である。開状態とされたレギュレータカット弁65は、レギュレータ33と主流路45の第2流路45bとの間でブレーキフルードを双方向に流通させることができる。ソレノイドに通電されてレギュレータカット弁65が閉弁されると、レギュレータ流路62におけるブレーキフルードの流通は遮断される。
液圧アクチュエータ40には、マスタ流路61およびレギュレータ流路62に加えて、アキュムレータ流路63も形成されている。アキュムレータ流路63の一端は、主流路45の第2流路45bに接続され、他端は、アキュムレータ35と連通するアキュムレータ配管39に接続される。
アキュムレータ流路63は、中途に増圧リニア制御弁66を有する。また、アキュムレータ流路63および主流路45の第2流路45bは、減圧リニア制御弁67を介してリザーバ流路55に接続されている。増圧リニア制御弁66と減圧リニア制御弁67とは、それぞれリニアソレノイドおよびスプリングを有しており、いずれもソレノイドが非通電状態にある場合に閉弁される常閉型電磁制御弁である。増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67は、それぞれのソレノイドに供給される電流に比例して弁の開度が調整される。
増圧リニア制御弁66は、各車輪に対応して複数設けられた各ホイールシリンダ23に対して共通の増圧用制御弁として設けられている。また、減圧リニア制御弁67も同様に、各ホイールシリンダ23に対して共通の減圧用制御弁として設けられている。つまり、本実施形態においては、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67は、動力液圧源30から送出される作動流体を各ホイールシリンダ23へ給排制御する1対の共通の制御弁として設けられている。このように増圧リニア制御弁66等を各ホイールシリンダ23に対して共通化すれば、ホイールシリンダ23毎にリニア制御弁を設けるのと比べて、コストの観点からは好ましい。
なお、ここで、増圧リニア制御弁66の出入口間の差圧は、アキュムレータ35におけるブレーキフルードの圧力と主流路45におけるブレーキフルードの圧力との差圧に対応し、減圧リニア制御弁67の出入口間の差圧は、主流路45におけるブレーキフルードの圧力とリザーバ34におけるブレーキフルードの圧力との差圧に対応する。また、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67のリニアソレノイドへの供給電力に応じた電磁駆動力をF1とし、スプリングの付勢力をF2とし、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67の出入口間の差圧に応じた差圧作用力をF3とすると、F1+F3=F2という関係が成立する。したがって、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67のリニアソレノイドへの供給電力を連続的に制御することにより、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67の出入口間の差圧を制御することができる。
ブレーキ制御装置20において、動力液圧源30および液圧アクチュエータ40は、本実施形態における制御部としてのブレーキECU70により制御される。ブレーキECU70は、CPUを含むマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に各種プログラムを記憶するROM、データを一時的に記憶するRAM、入出力ポートおよび通信ポート等を備える。そして、ブレーキECU70は、上位のハイブリッドECU(図示せず)などと通信可能であり、ハイブリッドECUからの制御信号や、各種センサからの信号に基づいて動力液圧源30のポンプ36や、液圧アクチュエータ40を構成する電磁制御弁51〜54、56〜59、60、64〜68を制御する。
また、ブレーキECU70には、レギュレータ圧センサ71、アキュムレータ圧センサ72、および制御圧センサ73が接続される。レギュレータ圧センサ71は、レギュレータカット弁65の上流側でレギュレータ流路62内のブレーキフルードの圧力、すなわちレギュレータ圧を検知し、検知した値を示す信号をブレーキECU70に与える。アキュムレータ圧センサ72は、増圧リニア制御弁66の上流側でアキュムレータ流路63内のブレーキフルードの圧力、すなわちアキュムレータ圧を検知し、検知した値を示す信号をブレーキECU70に与える。制御圧センサ73は、主流路45の第1流路45a内のブレーキフルードの圧力を検知し、検知した値を示す信号をブレーキECU70に与える。各圧力センサ71〜73の検出値は、所定時間おきにブレーキECU70に順次与えられ、ブレーキECU70の所定の記憶領域に所定量ずつ格納保持される。
分離弁60が開状態とされて主流路45の第1流路45aと第2流路45bとが互いに連通している場合、制御圧センサ73の出力値は、増圧リニア制御弁66の低圧側の液圧を示すと共に減圧リニア制御弁67の高圧側の液圧を示すので、この出力値を増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67の制御に利用することができる。また、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67が閉鎖されていると共に、マスタカット弁64が開状態とされている場合、制御圧センサ73の出力値は、マスタシリンダ圧を示す。さらに、分離弁60が開放されて主流路45の第1流路45aと第2流路45bとが互いに連通しており、各ABS保持弁51〜54が開放される一方、各ABS減圧弁56〜59が閉鎖されている場合、制御圧センサの73の出力値は、各ホイールシリンダ23に作用する作動流体圧、すなわちホイールシリンダ圧を示す。
さらに、ブレーキECU70に接続されるセンサには、ブレーキペダル24に設けられたストロークセンサ25も含まれる。ストロークセンサ25は、ブレーキペダル24の操作量としてのペダルストロークを検知し、検知した値を示す信号をブレーキECU70に与える。ストロークセンサ25の出力値も、所定時間おきにブレーキECU70に順次与えられ、ブレーキECU70の所定の記憶領域に所定量ずつ格納保持される。
上述のように構成されたブレーキ制御装置20は、ブレーキ回生協調制御を実行することができる。ブレーキ制御装置20は制動要求を受けて制動を開始する。制動要求は、例えば運転者がブレーキペダル24を操作した場合など、車両に制動力を付与すべきときに生起される。制動要求を受けてブレーキECU70は要求制動力を演算し、要求制動力から回生による制動力を減じることによりブレーキ制御装置20により発生させるべき制動力である要求液圧制動力を算出する。ここで、回生による制動力は、ハイブリッドECUからブレーキ制御装置20に供給される。そして、ブレーキECU70は、算出した要求液圧制動力に基づいて各ホイールシリンダ23FR〜23RLの目標液圧を算出する。ブレーキECU70は、ホイールシリンダ圧が目標液圧となるように、フィードバック制御則により増圧リニア制御弁66や減圧リニア制御弁67に供給する制御電流の値を決定する。
その結果、ブレーキ制御装置20においては、ブレーキフルードが動力液圧源30から増圧リニア制御弁66を介して各ホイールシリンダ23に供給され、車輪に制動力が付与される。また、各ホイールシリンダ23からブレーキフルードが減圧リニア制御弁67を介して必要に応じて排出され、車輪に付与される制動力が調整される。本実施形態においては、動力液圧源30、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67等を含んでホイールシリンダ圧制御系統が構成されている。ホイールシリンダ圧制御系統によりいわゆるブレーキバイワイヤ方式の制動力制御が行われる。ホイールシリンダ圧制御系統は、マスタシリンダユニット27からホイールシリンダ23へのブレーキフルードの供給経路に並列に設けられている。
このとき、ブレーキECU70は、レギュレータカット弁65を閉状態とし、レギュレータ33から送出されるブレーキフルードがホイールシリンダ23へ供給されないようにする。さらにブレーキECU70は、マスタカット弁64を閉状態とするとともにシミュレータカット弁68を開状態とする。これは、運転者によるブレーキペダル24の操作に伴ってマスタシリンダ32から送出されるブレーキフルードがホイールシリンダ23ではなくストロークシミュレータ69へと供給されるようにするためである。ブレーキ回生協調制御中は、レギュレータカット弁65およびマスタカット弁64の上下流間には、回生制動力の大きさに対応する差圧が作用する。
なお、本実施形態に係るブレーキ制御装置20は、回生制動力を利用せずに液圧制動力だけで要求制動力をまかなう場合にも、当然ホイールシリンダ圧制御系統により制動力を制御することができる。ブレーキ回生協調制御を実行しているか否かにかかわらず、ホイールシリンダ圧制御系統により制動力を制御する制御モードを以下では適宜「リニア制御モード」と称する。あるいは、ブレーキバイワイヤによる制御と呼ぶ場合もある。
リニア制御モードにおいて要求制動力を液圧制動力のみにより発生させる場合には、ブレーキECU70はレギュレータ圧あるいはマスタシリンダ圧をホイールシリンダ圧の目標圧として制御する。よって、この場合は必ずしもホイールシリンダ圧制御系統によってホイールシリンダ23にブレーキフルードを供給しなくてもよい。運転者によるブレーキペダルの操作に応じて加圧されたマスタシリンダ圧あるいはレギュレータ圧をホイールシリンダにそのまま導入すれば自然に要求制動力を発生させることができるからである。
このため、ブレーキ制御装置20は、例えば停車中のように回生制動力を使用しないときに、レギュレータ33から各ホイールシリンダ23にブレーキフルードを供給するようにしてもよい。レギュレータ33から各ホイールシリンダ23にブレーキフルードを供給する制御モードを以下ではレギュレータモード(REGモード)と称する。つまりブレーキECU70は、停車中においてリニア制御モードからレギュレータモードに切り替えて制動力を発生させるようにしてもよい。車両の停止とともに制御モードを切り替えるようにすれば比較的簡易な制御で制御モードの切り替えを実行することができるという点で好ましい。あるいは、より実際的には、ブレーキECU70は制動により車速が充分に低下したために回生制動を中止するときにリニア制御モードからレギュレータモードに制御モードを切り替えてもよい。
レギュレータモードにおいては、ブレーキECU70は、レギュレータカット弁65および分離弁60を開弁し、マスタカット弁64を閉弁する。増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67は、制御が停止され閉弁される。シミュレータカット弁68は開弁される。その結果、レギュレータ33から各ホイールシリンダ23にブレーキフルードが供給されることとなり、レギュレータ圧によって各車輪に制動力が付与される。レギュレータ33には動力液圧源30が高圧側として接続されているので、動力液圧源30における蓄圧を活用して制動力を発生させることができるという点で好ましい。
このようにレギュレータモードにおいては、ブレーキECU70は、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67への制御電流の供給を停止して閉弁し、両リニア制御弁を休止させている。このため、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67の動作頻度を低減させることが可能となり、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67を長期間にわたって使用することができるようになる。すなわち、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67の耐久性を向上することができる。
リニア制御モードでの制御中に、例えばいずれの箇所からの作動液の漏れ等の異常の発生によりホイールシリンダ圧が目標液圧から乖離してしまう場合がある。ブレーキECU70は、例えば制御圧センサ73の測定値に基づいてホイールシリンダ圧の応答異常の有無を周期的に判定している。ブレーキECU70は、例えばホイールシリンダ圧測定値の目標液圧からの乖離量が基準を超える場合にホイールシリンダ圧の制御応答に異常があると判定する。ホイールシリンダ圧の制御応答に異常があると判定された場合には、ブレーキECU70は、リニア制御モードを中止してマニュアルブレーキモードに制御モードを切り替える。また同様にレギュレータモードにおいてもブレーキECU70は異常が検出された場合にマニュアルブレーキモードに制御モードを切り替える。マニュアルブレーキモードにおいては、運転者のブレーキペダル24への入力が液圧に変換され機械的にホイールシリンダ23に伝達されて車輪に制動力が付与される。マニュアルブレーキモードは、フェイルセーフの観点からリニア制御モードのバックアップ用の制御モードとしての役割を有する。
ブレーキECU70は、液圧源および液圧源からホイールシリンダ23への供給経路を異ならせることによりマニュアルブレーキモードとして複数のモードのうちの一つを選択することができる。本実施形態では、一例としてハイドロブースタモードへの移行を説明する。ハイドロブースタモードにおいては、ブレーキECU70は、全ての電磁制御弁への制御電流の供給を停止する。よって、常開型のマスタカット弁64およびレギュレータカット弁65は開弁され、常閉型の分離弁60およびシミュレータカット弁68は閉弁される。増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67は、制御が停止され閉弁される。
その結果、ブレーキフルードの供給経路はマスタシリンダ側とレギュレータ側との二系統に分離される。マスタシリンダ圧が前輪用のホイールシリンダ23FRおよび23FLへと伝達され、レギュレータ圧が後輪用のホイールシリンダ23RRおよび23RLへと伝達される。マスタシリンダ32からの作動流体の送出先は、ストロークシミュレータ69から前輪用のホイールシリンダ23FRおよび23FLに切り替えられる。また、液圧ブースタ31は機械的にペダル踏力を増幅する機構であるため、ハイドロブースタモードに移行して各電磁制御弁への制御電流が停止されても継続して機能する。ハイドロブースタモードによれば、制御系の異常により各電磁制御弁への通電がない場合であっても液圧ブースタを利用して制動力を発生させることができるという点でフェイルセーフ性に優れている。
なお便宜上、以下では適宜、ハイドロブースタモードでのマスタシリンダ側の系統をマスタ系統と称し、レギュレータ側の系統をレギュレータ系統と称する。本実施形態ではハイドロブースタモードにおいてマスタ系統により前輪側に、またレギュレータ系統により後輪側に作動液が供給されるので、マスタ系統およびレギュレータ系統をそれぞれフロント系統およびリヤ系統と以下では称する場合もある。なお、ハイドロブースタモードにおいてマスタ系統が前輪側に、またレギュレータ系統が後輪側に作動液を供給することは必須ではない。マスタ系統が例えば右前輪および左後輪へ作動液を供給し、レギュレータ系統が例えば左前輪および右後輪へ作動液を供給するというように、左右輪がそれぞれ別々の系統に接続されるいわゆるX配管型のブレーキ制御装置であってもよい。
上述したように、ハイドロブースタモードは、通常はホイールシリンダ圧の制御応答に異常があると判定された後にしか実施されないが、ECUの電源が入っていない状態で運転者によりブレーキペダルが踏まれた場合には、異常がなくてもハイドロブースタモードに切り替わってしまうことがある(これを「ラピッドモード」ともいう)。このような場合、ハイドロブースタモードへの移行後に液圧アクチュエータ40に異常があるか否かを確認する必要が生じる。
ハイドロブースタモードが選択されレギュレータ流路を経由してホイールシリンダにブレーキ液が供給されている間、レギュレータセンサの検出値に基づきブレーキ装置に異常が生じたとみなされた場合、レギュレータセンサの異常と減圧制御弁からの液漏れとを切り分けすることができない。そのため、故障箇所の特定ができなくなり、メンテナンス時の作業性が低下するという問題がある。
そこで、本実施形態では、異常発生の確定前にハイドロブースタモードが選択されている場合に、減圧リニア制御弁からの液漏れを確実に検出できるようにした。
図2は、ブレーキECU70のうち、本実施形態に係る減圧リニア制御弁からの液漏れ検出に関与する部分の構成を示す。ここに示す各ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのCPUやメモリをはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックとして描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
異常検出部82は、ハイドロブースタモードが選択されているとき、レギュレータ圧センサ71で検出される作動液圧と、ストロークセンサ25の検出値に基づき算出される作動液圧とが一致しているか否かを判定する。異常がなければ、両者は同一の作動液圧を示すはずである。両者が一致しない場合、レギュレータ圧センサ71の故障か、または減圧リニア制御弁67からの液漏れのいずれかが生じていると考えられる。なお、本実施形態では、減圧リニア制御弁67以外の制御弁からの液漏れ等は、制動に与える影響が比較的少ないとして、考慮しないこととする。
アキュムレータ状態判定部84は、異常検出部82により上記いずれかの異常が生じていると判定されたとき、アキュムレータ35の状態が一定の範囲に収まっているか否かを判定する。アキュムレータ配管39はレギュレータ33、レギュレータ流路62を介して主流路45と連通しているので、減圧リニア制御弁67からの液漏れがなければ、アキュムレータ圧が時間とともに低下することはないはずである。そこで、アキュムレータ35の状態が変化する場合は、減圧リニア制御弁67からの液漏れがあると判定することができる。
アキュムレータ35の状態を判定するための一方法は、アキュムレータ圧センサ72の検出値が一定値を保っているか否かを確認することである。具体的には、ストロークセンサ25の検出値STKから推定されるアキュムレータ圧と、アキュムレータ圧センサ72で検出される実際のアキュムレータ圧との誤差が所定値以下であるか否かを判定してもよい。あるいは、アキュムレータ圧センサ72の検出値を所定のサンプリングタイムで記録しておき、初期値に対する検出値の低下が所定値以下に収まっているか否かを判定するようにしてもよい。
アキュムレータ35の状態を判定するための別の方法は、アキュムレータ35に蓄圧するためのポンプ36、またはポンプを駆動するモータ36aの作動頻度が、通常想定される頻度に対して所定値以上増加していないか否かを確認することである。具体的には、ポンプ36またはモータ36aの非故障時の平均作動頻度を予め設定しておき、その作動頻度よりも所定の割合以上、ポンプ36またはモータ36aの作動頻度が増加したか否かを判定するようにすればよい。平均作動頻度は、単位時間当りのポンプまたはモータ作動回数でもよいし、ブレーキペダルが所定回数踏まれたときのポンプまたはモータ作動回数でもよい。例えば、ブレーキペダルが三回踏まれたとき、ポンプまたはモータの作動回数は通常一回である、というように設定してもよい。
アキュムレータ状態判定部84によってアキュムレータが一定状態を維持していないと判定された場合、液漏れ特定部86は、減圧リニア制御弁67から液漏れが生じていると判定する。アキュムレータ状態判定部84によってアキュムレータが一定状態を維持していると判定された場合、液漏れ特定部86は、液漏れは生じておらず、異常検出部82で検出された異常は、レギュレータ圧センサ71が故障しているためと判定する。
図3は、本実施形態に係る液漏れ検出プロセスのフローチャートである。図3に示す処理は、ブレーキECU70により一定周期で実行される。
まず、ブレーキECU70は、ホイールシリンダ圧の制御応答の異常が確定する前にハイドロブースタ(HB)モードに移行しているか否かを判定する(S10)。ハイドロブースタモードに移行していない場合(S10のN)、このフローチャートを終了する。ハイドロブースタモードに移行している場合(S10のY)、異常検出部82は、ストロークセンサ25で検出されるストロークSTKと、レギュレータ圧センサ71の検出値Pregとを取得し、ストロークSTKから推定されるブレーキ圧とPregとを比較する(S12)。ハイドロブースタモードの実施時には、運転者によるブレーキペダルの操作に応じて加圧されたレギュレータ圧が後輪のホイールシリンダ23RR、23RLに供給されるので、ストロークSTKから推定されるブレーキ圧とレギュレータ圧センサの検出値Pregとは一致するはずである。そこで、異常検出部82はこれらが一致するか否かを判定する(S14)。一致する場合(S14のY)、減圧リニア制御弁67からのブレーキフルード漏れはなく、正常であると判定できるので(S24)、このフローチャートを終了する。
STKから推定されるブレーキ圧とレギュレータ圧とが一致しない場合(S14のN)、異常検出部82は、ハイドロブースタモード実施時には閉弁している減圧リニア制御弁67から液漏れが生じているか、またはレギュレータ圧センサ71が故障しているかのいずれかの異常が生じていると判定する(S16)。
アキュムレータ状態判定部84は、ハイドロブースタモードの実施中に、アキュムレータの状態が安定しているか否かを判定する(S18)。具体的には、アキュムレータ圧センサ72で検出されるアキュムレータ圧が低下しているか否か、または、ポンプ36またはモータ36aの作動頻度が通常時より増加しているか否かを判定する。
S18で、アキュムレータ圧が低下している場合、または、ポンプ36かモータ36aの作動頻度が増加している場合(S18のY)、液漏れ特定部86は、減圧リニア制御弁67からの液漏れが生じていると判定する(S20)。S18において、いずれにも当てはまらない場合(S18のN)、液漏れ特定部86は、減圧リニア制御弁67からの液漏れはなく、レギュレータ圧センサ71が故障していると判定する(S22)。
減圧リニア制御弁67からの液漏れが検出された場合、ブレーキECU70は、ハイドロブースタモードから他の制御モード、例えばレギュレータモードやリニア制御モードへの切り替えを禁止するように構成してもよい。ハイドロブースタモードを継続する限り、減圧リニア制御弁から液漏れがあっても一定の制動力を確保することができる。
また、図3のS22において、レギュレータ圧センサが異常であると判定された場合、代わりにストロークセンサの検出値から算出される作動液圧を使用して必要なブレーキ制御を継続するように構成してもよい。
以上説明したように、本実施形態によれば、レギュレータ圧センサの検出値とペダルストロークセンサ検出値との比較結果に基づいて、ハイドロブースタモード実施時の異常を検出することができる。さらに、アキュムレータが一定状態を維持しているか否かをアキュムレータ圧またはポンプ作動頻度に基づいて判定することで、レギュレータ圧センサの故障と減圧リニア制御弁からの液漏れとを区別することができる。
分離弁60を一時的に開弁し、レギュレータ圧センサ71の検出値と制御圧センサ73の検出値を比較することによって、ブレーキ配管からの液漏れの有無を判定することも考えられる。しかしながら、ハイドロブースタモードの実施時に分離弁を開弁すると、それまでレギュレータ流路62とマスタ流路61の二系統に分離されていた供給経路が一系統になり全てのホイールシリンダから液漏れしてしまう。これに対し、本実施形態では、ハイドロブースタモードの実施時に、分離弁を閉弁したままでブレーキ配管からの液漏れを検出できるという利点がある。
本実施形態のような構成のブレーキ制御装置20では、コスト低減の観点から全輪共通の減圧リニア制御弁を設けられている。このような構成を採用すると、減圧リニア制御弁の故障時に全てのホイールシリンダからブレーキフルードが流出するおそれがある。本実施形態によれば、減圧リニア制御弁からの液漏れを確実に検出できるので、その後の対策につなげることが可能となる。
以上、本発明をいくつかの実施の形態をもとに説明した。これらの実施の形態はあくまで例示であり、実施の形態どうしの任意の組合せ、実施の形態の各構成要素や各処理プロセスの任意の組合せなどの変形例もまた、本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
本発明は、上述の各実施形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を加えることも可能である。各図に示す構成は、一例を説明するためのもので、同様な機能を達成できる構成であれば、適宜変更可能である。
実施の形態では、ブレーキペダルの操作量としてペダルストロークを検知するストロークセンサを用いることを述べたが、別のブレーキ操作量検出手段を用いてもよい。例えば、ブレーキペダルの操作量として操作力を検出するペダル踏力センサを用いてもよい。
20 ブレーキ制御装置、 23 ホイールシリンダ、 27 マスタシリンダユニット、 31 液圧ブースタ、 32 マスタシリンダ、 33 レギュレータ、 34 リザーバ、 51〜54 ABS保持弁、 56〜59 ABS減圧弁、 60 分離弁、 64 マスタカット弁、 65 レギュレータカット弁、 66 増圧リニア制御弁、 67 減圧リニア制御弁、 70 ブレーキECU、 71 レギュレータ圧センサ、 72 アキュムレータ圧センサ、 73 制御圧センサ、 82 異常検出部、 84 アキュムレータ状態判定部、 86 液漏れ特定部。
Claims (5)
- 作動液圧に応じて複数の車輪のそれぞれに制動力を付与する複数のホイールシリンダと、
ブレーキペダルの操作に応じて作動液を供給可能なマスタシリンダと、
ブレーキペダルの操作量を検出するストロークセンサと、
ポンプ駆動により作動液をアキュムレータに蓄圧する動力液圧源を高圧源としてマスタシリンダの作動液圧に合わせて作動液を調圧するレギュレータと、
前記複数のホイールシリンダから排出される作動液を回収するリザーバと、
前記マスタシリンダと前記複数のホイールシリンダとを接続するマスタ流路と、
前記レギュレータと前記複数のホイールシリンダとを接続するレギュレータ流路と、
前記レギュレータ流路に配設されるレギュレータカット弁と、
前記レギュレータ流路と前記リザーバとを連通する流路に配設される減圧弁と、
前記レギュレータカット弁よりレギュレータ側で前記レギュレータ流路の作動液圧を検出するレギュレータ圧センサと、
前記減圧弁が閉弁された状態で前記マスタ流路と前記レギュレータ流路の二系統から前記複数のホイールシリンダに作動液が供給される制御モードにおいて、前記レギュレータ圧センサで検出される作動液圧と、前記ストロークセンサの検出値に基づき算出される作動液圧とが一致しないとき、前記レギュレータ圧センサの故障または前記減圧弁からの液漏れのいずれかの異常が生じていると判定する異常検出部と、
異常が生じていると判定されたとき、前記レギュレータから前記複数のホイールシリンダに作動液が供給されている間に前記アキュムレータが一定状態を維持しているか否かを判定するアキュムレータ状態判定部と、
前記アキュムレータが一定状態を維持していない場合、前記減圧弁から液漏れが生じていると判定する液漏れ特定部と、
を備えることを特徴とするブレーキ制御装置。 - 前記アキュムレータ状態判定部は、前記アキュムレータの圧力が一定値を維持しているか否かを判定することを特徴とする請求項1に記載のブレーキ制御装置。
- 前記アキュムレータ状態判定部は、前記ポンプが予め定められたしきい値を越える頻度で駆動されているか否かを判定することを特徴とする請求項1に記載のブレーキ制御装置。
- 前記減圧弁から液漏れが生じていると判定されたとき、判定時点と異なる制御モードへの移行を禁止する移行禁止部をさらに備えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のブレーキ制御装置。
- 作動液圧に応じて複数の車輪のそれぞれに制動力を付与する複数のホイールシリンダと、
ブレーキペダルの操作に応じて作動液を供給可能なマスタシリンダと、
ブレーキペダルの操作量を検出するストロークセンサと、
ポンプ駆動により作動液をアキュムレータに蓄圧する動力液圧源を高圧源としてマスタシリンダの作動液圧に合わせて作動液を調圧するレギュレータと、
前記複数のホイールシリンダから排出される作動液を回収するリザーバと、
前記マスタシリンダと前記複数のホイールシリンダとを接続するマスタ流路と、
前記レギュレータと前記複数のホイールシリンダとを接続するレギュレータ流路と、
前記レギュレータ流路に配設されるレギュレータカット弁と、
前記レギュレータ流路と前記リザーバとを連通する流路に配設される減圧弁と、
前記レギュレータカット弁よりレギュレータ側で前記レギュレータ流路の作動液圧を検出するレギュレータ圧センサと、
を備えるブレーキ制御装置において、
前記減圧弁が閉弁された状態で前記マスタ流路と前記レギュレータ流路の二系統から前記複数のホイールシリンダに作動液が供給される制御モードにおいて、前記レギュレータ圧センサで検出される作動液圧と、前記ストロークセンサの検出値に基づき算出される作動液圧とを比較する工程と、
作動液圧が一致しない場合、前記レギュレータ圧センサの故障または前記減圧弁からの液漏れのいずれかの異常が生じていると判定する工程と、
異常が生じている場合、前記レギュレータから前記複数のホイールシリンダに作動液が供給されている間に前記アキュムレータが一定状態を維持しているか否かを判定する工程と、
前記アキュムレータが一定状態を維持していない場合、前記減圧弁から液漏れが生じていると判定する工程と、
を含むことを特徴とするブレーキ制御方法。
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JP2010280258A (ja) * | 2009-06-03 | 2010-12-16 | Toyota Motor Corp | ブレーキ異常検出装置 |
CN112879389A (zh) * | 2021-02-04 | 2021-06-01 | 中铁工程装备集团有限公司 | 一种液压系统的非正常泄漏检测系统 |
CN114604216A (zh) * | 2022-05-10 | 2022-06-10 | 浙江亚太机电股份有限公司 | 一种底盘集成制动系统 |
-
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