特許文献1に記載の制御装置では、ビジーシフトを防止するために、アクセル開度の変化量が少ない場合に第2の変速マップに基づいて変速を行うため、以下のような現象が発生する。(1)特許文献1に記載の制御装置では、通常の1段のアップシフトが禁止されるので、アップシフト側の飛び越し変速点に到達するまではエンジンの回転数が高くなり、燃費の悪化が懸念される。(2)特許文献1に記載の制御装置では、通常の1段のダウンシフトが禁止されるので、ダウンシフト側の飛び越し変速点に到達するのに変速のタイムラグが長くなり、エンジン振動が運転者に伝達、又は急制動時のエンストが懸念される。(3)自動変速機においては、通常、トルクコンバータを有するとともに、トルクコンバータにおいて入力軸と出力軸と機械的に結合させるロックアップクラッチを有するところ、特許文献1に記載の制御装置では、ロックアップクラッチの制御について特に記述がない。仮に、特許文献1に記載の制御装置において、アップシフト側の飛び越し変速中にロックアップクラッチを開放するとエンジン回転数が急激に上昇するとともにショックが発生する可能性があり、変速後のロックアップクラッチの再係合時にロックアップクラッチの摩擦材の摩耗が大きくロックアップクラッチの寿命を縮めるおそれがある。上記(1)〜(3)の現象は、特に、大型バスや大型トラックのように常用のエンジン回転数が比較的低い車両で顕著に現れることが予想される。大型車両は、エンジン回転数の変化に対して、燃料消費量の変化及びトルク変化が大きく、車両感度も高いからである。
特許文献2に記載の車両制御装置では、コーナー出口で運転者がアクセルを戻した場合に限定してオフアップを禁止しているが、例えば、下り坂の直線が続いている状況でアクセルを戻したことによるオフアップを防止する記述がない。大型トラックのように重量のある車両では、ドライバに減速意思があってもオフアップしてしまうと、アクセルを全開にしているけれども意図に反し加速するという現象になるため、ドラビリ(Driveability)が悪い。また、大型車両に荷物をフル積載している場合は、常に制動力が不足しがちであるため、フットブレーキ以外にも排気ブレーキやリターダ、マニュアルシフト操作等を併用する結果、ドライバの意図しないオフアップに起因して、運転操作が煩雑になる可能性がある。
本発明の主な課題は、ドラビリ要求を満たせる車両制御装置を提供することである。
本発明の一視点においては、自動変速機を制御するとともに、原動機と前記自動変速機との間の動力伝達経路上に配設されたトルクコンバータにおける前記原動機の回転軸と前記自動変速機の入力軸とを機械的に結合させるロックアップクラッチ機構を制御する車両制御装置であって、所定の車両状態に基づいて、前記ロックアップクラッチ機構において係合/開放の切り替えが頻繁に行われそうな状況であると判定したときに、前記ロックアップクラッチ機構を制御するためのロックアップ作動領域マップの使用を禁止することを特徴とする。
本発明の前記車両制御装置においては、前記ロックアップクラッチ機構において係合/開放の切り替えが頻繁に行われそうな状況であるかの判定は、前記原動機の出力が不足、又は前記自動変速機における変速段が不適切であるかを判断することにより行われ、前記原動機の出力が不足、又は前記自動変速機における変速段が不適切と判定されたときに、前記ロックアップ作動領域マップ、及び前記自動変速機を制御するための変速線マップの使用を禁止することが好ましい。
本発明の前記車両制御装置において、前記原動機の出力が不足、又は前記自動変速機における変速段が不適切であるかの判定は、アクセル開度が安定し、かつ、車速の低下が連続しているかを判断することにより行われることが好ましい。
本発明の前記車両制御装置においては、前記ロックアップクラッチ機構において係合/開放の切り替えが頻繁に行われそうな状況であるかの判定は、車両が緩加速又は緩減速であるかを判断することにより行われ、車両が緩加速又は緩減速であると判定されたときに、前記ロックアップ作動領域マップ、及び前記自動変速機を制御するための変速線マップの使用を禁止することが好ましい。
本発明の前記車両制御装置においては、前記車両が緩加速又は緩減速であるかの判定は、アクセル開度が安定するとともに、前記原動機における燃料噴射量の安定が連続し、かつ、車速の低下が連続しているかを判断することにより行われることが好ましい。
本発明の前記車両制御装置においては、前記変速線マップ及び前記ロックアップ作動領域マップの使用を禁止する際、前記自動変速機においてシフトダウンを実施するように制御し、かつ、前記ロックアップクラッチ機構の開放を禁止することが好ましい。
本発明の前記車両制御装置においては、前記変速線マップ及び前記ロックアップ作動領域マップの使用を禁止するとともに、前記自動変速機においてシフトダウンを実施するように制御し、かつ、前記ロックアップクラッチ機構の開放を禁止した後において、前記原動機の出力が不足、又は前記自動変速機における変速段が不適切と判定されたときに、前記ロックアップクラッチ機構の開放を実施するように制御することが好ましい。
本発明の前記車両制御装置においては、前記原動機の出力が不足、又は前記自動変速機における変速段が不適切であるかの判定は、アクセル開度が安定し、かつ、車速の低下が連続しているかを判断することにより行われることが好ましい。
本発明の前記車両制御装置においては、前記ロックアップクラッチ機構において係合/開放の切り替えが頻繁に行われそうな状況であるかの判定は、車両が坂路を走行しているかを判断することにより行われ、前記車両が坂路を走行していると判定されたときに、前記ロックアップ作動領域マップの使用を禁止することが好ましい。
本発明の前記車両制御装置においては、前記車両が坂路を走行しているかの判定は、ナビゲーションシステムからの標高データに基づいて、坂路の走行が連続しているかを判断することにより行われることが好ましい。
本発明の前記車両制御装置においては、前記ロックアップ作動領域マップの使用を禁止した後、前記入力軸の回転数に応じて前記ロックアップクラッチ機構における係合/開放の切り替えを行うように制御することが好ましい。
本発明の前記車両制御装置においては、前記ロックアップ作動領域マップの使用を禁止し、かつ、前記ロックアップクラッチ機構を係合しているときに、前記入力軸の振動が連続しているかを判断し、前記入力軸の振動が連続しているときに前記ロックアップクラッチ機構を開放するように制御することが好ましい。
本発明の前記車両制御装置においては、前記ロックアップ作動領域マップの使用を禁止し、かつ、前記ロックアップクラッチ機構を係合しているときに、前記自動変速機において変速中であるかを判断し、変速中でないときに前記入力軸の振動が連続しているかを判断することが好ましい。
本発明によれば、ロックアップクラッチ機構における係合/開放の切り替えが頻繁に起こりそうな状況でのロックアップ作動領域マップの使用を禁止することで、ロックアップクラッチ機構における係合/開放の頻繁な切り替えが回避され、原動機の回転数の急激な変動が抑えることができ、ロックアップクラッチ機構の開放ショックによるドラビリの悪化を防止することができる。また、ロックアップクラッチ機構における摩擦材の劣化を抑制することができる。さらに、エンジンブレーキの効き及び燃費を改善することができる。
本発明の実施形態に係る車両制御装置では、自動変速機(図1の40)を制御するとともに、原動機(図1の10)と前記自動変速機との間の動力伝達経路上に配設されたトルクコンバータ(図1の20)における前記原動機の回転軸(図1の12)と前記自動変速機の入力軸(図1の41)とを機械的に結合させるロックアップクラッチ機構(図1の26)を制御する車両制御装置(図1の50)であって、所定の車両状態に基づいて、前記ロックアップクラッチ機構において係合/開放の切り替えが頻繁に行われそうな状況であると判定したときに、前記ロックアップクラッチ機構を制御するためのロックアップ作動領域マップの使用を禁止する。
本発明の実施例1に係るロックアップクラッチの制御装置について図面を用いて説明する。図1は、本発明の実施例1に係るロックアップクラッチの制御装置を含む車両の構成を模式的に示した概略図である。
図1を参照すると、車両は、原動機10と、トルクコンバータ20と、自動変速機40と、油圧制御回路45と、電子制御装置50と、を備える。
原動機10は、エンジン、モータ等の回転動力を出力する機械・装置である。原動機10の出力は、アクセルペダル11の操作によって増減され、回転軸12及びトルクコンバータ20を介して自動変速機40へと伝達され、さらに、差動装置(図示せず)を介して駆動輪(図示せず)へ伝達される。
トルクコンバータ20は、流体の力学的作用を利用して、入力側のポンプインペラ21と出力側のタービンランナ22との回転差によりトルクの増幅作用を発生させる流体伝動装置である。トルクコンバータ20は、原動機10の回転軸12と自動変速機40の入力軸41との間の動力伝達経路上に配設されている。トルクコンバータ20は、大きく分けて、流体式伝達機構と、ロックアップクラッチ機構とからなる。流体式伝達機構は、ポンプインペラ21と、タービンランナ22と、ステータインペラ25と、を有する。ポンプインペラ21は、トルクコンバータ20のフロントカバー等を含むシェル13を介して原動機10の回転軸12に連結されている。タービンランナ22は、自動変速機40の入力軸41に固定されるとともにポンプインペラ21からの油圧を受けて回転する。タービンランナ22には、リベット(図2の31)によってロックアップクラッチ機構の第1ドリブンプレート28aが取付固定されている。ステータインペラ25は、ワンウェイクラッチ23を介してハウジング24に固定される。ロックアップクラッチ機構は、動力伝達経路上、流体式伝達機構と並列に連結されている。ロックアップクラッチ機構の詳細は、後述する。
自動変速機40は、入力軸41から入力された回転動力を変速して出力軸42に出力する機構である。自動変速機40では、原動機10から出力された回転動力が、トルクコンバータ20を介して遊星歯車機構(複数の遊星歯車機構が組み合わさったもの)に入力され、当該遊星歯車機構で変速されて差動装置(図示せず)に出力される。自動変速機40は、入力軸41と出力軸42を備え、複数の摩擦係合要素(図示せず;クラッチ、ブレーキ)の係合・非係合の組合せに応じて複数の変速段を構成する。出力軸42は、差動装置(図示せず)を介して駆動輪(図示せず)に連結されている。
油圧制御回路45は、自動変速機40並びにロックアップクラッチ機構に供給する油圧を制御する回路である。油圧制御回路45は、電子制御装置50からの信号によりON−OFF駆動される第1電磁弁46、第2電磁弁47、第3電磁弁48を備えている。第1電磁弁46、第2電磁弁47は、自動変速機40の摩擦係合要素の係合及び開放(非係合)を制御するためのものである。第3電磁弁48は、ロックアップクラッチ26の係合及び開放(非係合)を制御するためのものであり、係合側油室R1及び開放側油室R2に供給される油圧Pon、Poffを調整するためのものである。第3電磁弁48には、例えば、電子制御装置50からの信号によりON時間とOFF時間との比率(デューティ比)が制御されるソレノイド駆動型の電磁弁等を用いることができる。第3電磁弁48は、ロックアップ圧制御弁を介してライン圧を制御し、制御油圧を係合側油室R1に供給する。また、第3電磁弁48は、電子制御装置50により制御されているときに油圧制御回路45から開放側油室R2に一定油圧を供給し、電子制御装置50により制御されていないときに油圧制御回路45から開放側油室R2にドレン圧を供給することで、ロックアップクラッチ26の係合圧の調整を行う。
電子制御装置50は、油圧制御回路45を介して自動変速機40及びロックアップクラッチ26の動作を制御するコンピュータである。電子制御装置50は、アクセル開度センサ61、原動機回転数センサ62、入力軸回転数センサ63、出力軸回転数センサ64、シフトポジションセンサ65、及び車速センサ66と通信可能に接続されている。アクセル開度センサ61は、アクセルペダル11のアクセル開度Apを検出する。原動機回転数センサ62は、原動機10の回転数Neを検出する。入力軸回転数センサ63は、自動変速機40の入力軸41の回転数Ntを検出する。出力軸回転数センサ64は、自動変速機40の出力軸42の回転数Noを検出する。シフトポジションセンサ65は、Lレンジ、Rレンジなどのシフトポジションを検出する。車速センサ66は、車両の速度を検出する。電子制御装置50には、インターフェース54を介して、アクセル開度Apを表す信号、原動機回転数Ne(ポンプインペラ21の回転数に相当)を表す信号、入力軸回転数Nt(タービンランナ22の回転数に相当)を表す信号、出力軸回転数Noを表す信号シフトポジションを表す信号、及び車速を表す信号が入力される。
電子制御装置50は、CPU51、ROM52、RAM53及びインターフェース54、55を有する。
CPU51は、各種センサの検出信号、各種アクチュエータ(電磁弁を含む)の制御信号に基づく車両状態(アクセル開度、車速、原動機回転数、出力軸回転数、入力軸回転数、原動機トルク、シフトポジション等)を検出する。CPU51は、各種センサの検出信号に基づく車両状態に応じて、ROM52に記憶されたプログラム、データベース(マップ)に基づいて、RAM53を適宜利用して、自動変速機40の変速制御及びロックアップクラッチ26の係合制御を実行すべく、インターフェース55を介して第1〜第3電磁弁46、47、48を駆動制御する制御信号を送出する。ROM52には、背圧マップ、ロックアップクラッチ機構のロックアップ作動領域マップ、その他伝達容量を求めるためのマップ(変速中のロックアップ圧マップ、スリップ制御開始時のロックアップ圧マップ)が格納されている。なお、電子制御装置50は、ロックアップクラッチの制御装置となるものである。ここで、ロックアップクラッチ作動領域マップは、車両の自動変速機の変速段、車両の車速、アクセル開度等をパラメータとして予め決められており、車両において積極的にロックアップクラッチをONとすることで、エンジンブレーキを利用できるように定められている。したがって、車両の状態はこのロックアップクラッチ作動領域マップ上において、ON領域とOFF領域を遷移することとなる。
次に、ロックアップクラッチ機構の構成について説明する。図2は、ロックアップクラッチ機構の構造を模式的に表した断面図である。
図2を参照すると、ロックアップクラッチ機構は、ポンプインペラ21とタービンランナ22との回転数差が小さいときに、それらを直結して原動機(図1の10)の回転軸(図1の12)と自動変速機(図1の40)の入力軸41の回転数差をなくすクラッチ機構である。ロックアップクラッチ機構は、ロックアップクラッチ26と、ドライブプレート27と、クラッチ対向部13aと、第1ドリブンプレート28aと、第2ドリブンプレート28bと、ロックアップピストン29と、コイルスプリング32とから構成されている。
ロックアップクラッチ26は、両面に摩擦材が設けられたリング状プレートであり、軸方向に移動可能に保持されている。ドライブプレート27は、ロックアップクラッチ26の径方向内側に固定されたリング状のプレートであり、第1ドリブンプレート28aと第2ドリブンプレート28bの間にて軸方向に移動可能に配されている。クラッチ対向部13aは、ロックアップクラッチ26の片側の面に対向するように、シェル13と一体的に構成された部分である。第1ドリブンプレート28aは、自動変速機(図1の40)の入力軸41と一体的に回転するように、リベット31により入力軸41に固定されたプレートである。第2ドリブンプレート28bは、リベット30により第1ドリブンプレート28aに固定されたリング状のプレートである。コイルスプリング32は、第1ドリブンプレート28a及び第2ドリブンプレート28bとドライブプレート27との間の振動を吸収するダンパ機構を構成するものである。コイルスプリング32は、第1、第2ドリブンプレート28a、28bの適宜の箇所に円周方向に沿って形成された窓部内に収容され、ドライブプレート27(ロックアップクラッチ26)と第1ドリブンプレート28a(第2ドリブンプレート28b)との間に捩じれ角が発生したとき、ドライブプレート27と第1ドリブンプレート28aの間に弾発力を付与する。
ロックアップピストン29は、ロックアップクラッチ26をクラッチ対向部13aに押圧するためのリング状のピストンであり、係合側油室R1の油圧により軸方向に移動可能である。ロックアップピストン29は、ロックアップピストン29とシェル13とにより画定される係合側油室R1内の油圧がロックアップクラッチ26とクラッチ対向部13aと第1ドリブンプレート28a等とにより画定される開放側油室R2内の油圧よりも高められたとき、ロックアップクラッチ26をクラッチ対向部13aに向けて押圧し、ロックアップクラッチ26をクラッチ対向部13aに係合させる。これに対し、ロックアップピストン29は、係合側油室R1よりも開放側油室R2内の油圧が高められたとき、ロックアップクラッチ26をクラッチ対向部13aから離間させ、ロックアップクラッチ26とクラッチ対向部13aとを非係合状態にする。
次に、本発明の実施例1に係るロックアップクラッチの制御装置の動作について図面を用いて説明する。図3は、本発明の実施例1に係るロックアップクラッチの制御装置の動作を模式的に示したフローチャートである。図4は、本発明の実施例1に係るロックアップクラッチの制御装置の動作の一例を模式的に示したタイムチャートである。図5は、比較例1に係るロックアップクラッチの制御装置の動作の一例を模式的に示したタイムチャートである。
まず、電子制御装置50は、アクセル開度Ap(スロットル開度)が安定しているか否かを判断する(ステップA1)。ここで、アクセル開度Apが安定しているか否かは、所定時刻(例えば図4のT1)のアクセル開度Apを基準として、予め設定された閾値を用いて上限及び下限を設定し、新たなアクセル開度Apが上限及び下限の範囲内にあるか否かを判断することで行われ、新たなアクセル開度Apが上限及び下限の範囲内にあれば安定と判定され、新たなアクセル開度Apが上限及び下限の範囲内になければ非安定と判定される。アクセル開度Apの基準値は、安定し始めた時点のアクセル開度Apの値が用いられ、安定性がなくなった時点で新たなアクセル開度Apの値に更新される。アクセル開度Apが安定していない場合(ステップA1のNO)は、終了し、その後、スタートに戻る。
アクセル開度Apが安定している場合(ステップA1のYES)、電子制御装置50は、アクセル開度Apが安定してから、予め設定された所定時間(例えば、図4のta)を経過したか否かを判断する(ステップA2)。ここで、所定時間を経過したか否かは、アクセル開度Apが安定し始めた時点の時刻を始点に所定時間経過したか否かが判断され、安定性がなくなった時点で始点が新たなアクセル開度Apの時刻に更新される。アクセル開度Apが安定してから所定時間経過していない場合(ステップA2のNO)は、終了し、その後、スタートに戻る。
アクセル開度Apが安定してから所定時間経過した場合(ステップA2のYES)、電子制御装置50は、車速が低下しているか否かを判断する(ステップA3)。ここで、車速が低下しているか否かは、所定時刻(例えば、図4のT1)の車速よりも、新たな車速が低いか否かを判断することで行われ、新たな車速が低ければ車速低下と判定され、新たな車速が低くなければ車速非低下と判定される。車速の基準値は、アクセル開度Apが安定し始めた時点の車速が用いられ、アクセル開度Apの安定性がなくなった時点で新たな車速に更新される。車速が低下していない場合(ステップA3のNO)は、終了し、その後、スタートに戻る。
車速が低下している場合(ステップA3のYES)、電子制御装置50は、車速が低下してから、連続して、予め設定された所定時間(例えば、図4のtb(>ta))を経過したか否かを判断する(ステップA4)。ここで、所定時間を経過したか否かは、アクセル開度Apが安定し始めた時点の時刻を始点に所定時間経過したか否かが判断され、安定性がなくなった時点で始点が新たなアクセル開度Apの時刻に更新される。車速が低下してから所定時間経過していない場合(ステップA4のNO)は、終了し、その後、スタートに戻る。
車速が低下してから所定時間経過した場合(ステップA4のYES)、電子制御装置50は、原動機10のパワー不足、又は自動変速機40の変速段が不適切と判定する(ステップA5)。
ステップA5の後、電子制御装置50は、変速線マップ及びロックアップ作動領域マップ(LU領域マップ)の使用を禁止する(ステップA6)。
ステップA6の後、電子制御装置50は、自動変速機40におけるシフトアップを禁止し、ロックアップクラッチ(LU)の開放(OFF)を禁止し、自動変速機40におけるシフトダウンを実施するように制御する(ステップA7)。
ステップA7の後、電子制御装置50は、アクセル開度Ap(スロットル開度)が安定しているか否かを判断する(ステップA8)。ここで、アクセル開度Apが安定しているか否かは、変速段をシフトダウンした時点(例えば、図4のT3)のアクセル開度Apを基準として、予め設定された閾値を用いて上限及び下限を設定し、新たなアクセル開度Apが上限及び下限の範囲内にあるか否かを判断することで行われ、新たなアクセル開度Apが上限及び下限の範囲内にあれば安定と判定され、新たなアクセル開度Apが上限及び下限の範囲内になければ非安定と判定される。アクセル開度Apが安定していない場合(ステップA8のNO)は、終了し、その後、スタートに戻る。
アクセル開度Apが安定している場合(ステップA8のYES)、電子制御装置50は、アクセル開度Apが安定してから、予め設定された所定時間(例えば、図4のtc)を経過したか否かを判断する(ステップA9)。ここで、所定時間を経過したか否かは、変速段をシフトダウンした時点の時刻を始点に所定時間経過したか否かが判断される。アクセル開度Apが安定してから所定時間経過していない場合(ステップA9のNO)は、終了し、その後、スタートに戻る。
アクセル開度Apが安定してから所定時間経過した場合(ステップA9のNO)、電子制御装置50は、車速が低下しているか否かを判断する(ステップA10)。ここで、車速が低下しているか否かは、変速段をシフトダウンした時点(例えば、図4のT3)の車速よりも、新たな車速が低いか否かを判断することで行われ、新たな車速が低ければ車速低下と判定され、新たな車速が低くなければ車速非低下と判定される。車速が低下していない場合(ステップA10のNO)は、終了し、その後、スタートに戻る。
車速が低下している場合(ステップA10のYES)、電子制御装置50は、車速が低下してから、予め設定された所定時間(例えば、図4のtc)を経過したか否かを判断する(ステップA11)。ここで、所定時間を経過したか否かは、変速段をシフトダウンした時点の時刻を始点に所定時間経過したか否かが判断される。車速が低下してから所定時間経過していない場合(ステップA11のNO)は、終了し、その後、スタートに戻る。
車速が低下してから所定時間経過した場合(ステップA11のYES)、電子制御装置50は、ロックアップクラッチ(LU)を開放(OFF)させるように制御し(ステップA12)、終了し、その後、スタートに戻る。つまり、ステップA12では、ロックアップクラッチ(LU)の開放(OFF)を禁止し、かつ、自動変速機40においてシフトダウンを実施しても、原動機10のパワー不足、又は自動変速機40の変速段が不適切と判定された状態にあるので、ロックアップクラッチ(LU)を開放(OFF)させている。
実施例1によれば、ビジーシフトを回避しつつ車速の低下を防止することができる。例えば、重積載で登板を走行している時、原動機10のパワー不足または不適切な変速ギヤ段の選択により、運転者の意図に反し車速が低下したり、ビジーシフトが起きる場合がある(図5参照)。このような事態を回避するために、実施例1では、変速線マップ、及びロックアップクラッチ作動領域マップ(LU領域マップ)の使用を禁止し(図3のステップA6)、シフトダウンを実施するとともに、ロックアップクラッチ(LU)の開放(OFF)を禁止(制限)する制御(図3のステップA7)を行っている。つまり、変速線マップ、及びロックアップクラッチ作動領域マップ(LU領域マップ)の使用を禁止し、かつ、ダウンシフトすることでビジーシフトを回避することができ、ロックアップクラッチの開放を制限することで、これに起因したエンジン回転数の急激な上昇が発生せず、ロックアップクラッチにおける摩擦材の摩耗が抑えられ、開放ショックによるドラビリの悪化を回避することができる。
本発明の実施例2に係るロックアップクラッチの制御装置について図面を用いて説明する。図6は、本発明の実施例2に係るロックアップクラッチの制御装置の動作を模式的に示したフローチャートである。図7は、本発明の実施例2に係るロックアップクラッチの制御装置の動作の一例を模式的に示したタイムチャートである。
実施例2では、緩加速(減速)時に、変速段の切り替えやロックアップクラッチ(LU;図1の26)のON/OFFがビジーとなりドラビリが悪化することに着目して、変速線マップ、及びロックアップクラッチ作動領域マップ(LU領域マップ)の使用を禁止し(図6のステップB9)、ダウンシフトを実施するとともに、ロックアップクラッチ(LU;図1の26)の開放(OFF)を禁止(制限)する制御(図6のステップB10)を行うようにしたものである。実施例2では、ロックアップクラッチの制御装置を含む車両の構成は、実施例1と同様であり、電子制御装置(図1の50)における制御動作(情報処理)の仕方が異なる。
まず、電子制御装置(図1の50)は、アクセル開度Ap(スロットル開度)が安定しているか否かを判断する(ステップB1)。なお、ステップB1は、ステップA1と同様である。アクセル開度Apが安定していない場合(ステップB1のNO)は、終了し、その後、スタートに戻る。
アクセル開度Apが安定している場合(ステップB1のYES)、電子制御装置50は、アクセル開度Apが安定してから、予め設定された所定時間(例えば、図7のtd)を経過したか否かを判断する(ステップB2)。なお、ステップB2は、ステップA2と同様である。アクセル開度Apが安定してから所定時間経過していない場合(ステップB2のNO)は、終了し、その後、スタートに戻る。
アクセル開度Apが安定してから所定時間経過した場合(ステップB2のYES)、電子制御装置50は、原動機(図1の10)における燃料噴射量が安定しているか否かを判断する(ステップB3)。ここで、燃料噴射量が安定しているか否かは、所定時刻(例えば図7のT1)の燃料噴射量を基準として、予め設定された閾値を用いて上限及び下限を設定し、新たな燃料噴射量が上限及び下限の範囲内にあるか否かを判断することで行われ、新たな燃料噴射量が上限及び下限の範囲内にあれば安定と判定され、新たな燃料噴射量が上限及び下限の範囲内になければ非安定と判定される。燃料噴射量の基準値は、安定し始めた時点の燃料噴射量の値が用いられ、安定性がなくなった時点で新たな燃料噴射量の値に更新される。燃料噴射量が安定していない場合(ステップB3のNO)は、終了し、その後、スタートに戻る。
燃料噴射量が安定している場合(ステップB3のYES)、電子制御装置50は、燃料噴射量が安定してから、予め設定された所定時間(例えば、図7のte)を経過したか否かを判断する(ステップB4)。ここで、所定時間を経過したか否かは、アクセル開度Apが安定し始めた時点の時刻を始点に所定時間経過したか否かが判断され、安定性がなくなった時点で始点が新たなアクセル開度Apの時刻に更新される。燃料噴射量が安定してから所定時間経過していない場合(ステップB4のNO)は、終了し、その後、スタートに戻る。
燃料噴射量が安定してから所定時間経過した場合(ステップB4のYES)、電子制御装置50は、車速が安定しているか否かを判断する(ステップB5)。ここで、車速が安定しているか否かは、所定時刻(例えば図7のT1)の車速を基準として、予め設定された閾値を用いて上限及び下限を設定し、新たな車速が上限及び下限の範囲内にあるか否かを判断することで行われ、新たな車速が上限及び下限の範囲内にあれば安定と判定され、新たな車速が上限及び下限の範囲内になければ非安定と判定される。車速の基準値は、アクセル開度Apが安定し始めた時点の車速が用いられ、アクセル開度Apの安定性がなくなった時点で新たな車速に更新される。車速が安定していない場合(ステップB5のNO)は、終了し、その後、スタートに戻る。
車速が安定している場合(ステップB5のYES)、電子制御装置50は、車速が安定してから、連続して、予め設定された所定時間(例えば、図7のtf(>td))を経過したか否かを判断する(ステップB6)。ここで、所定時間を経過したか否かは、アクセル開度Apが安定し始めた時点の時刻を始点に所定時間経過したか否かが判断され、安定性がなくなった時点で始点が新たなアクセル開度Apの時刻に更新される。車速が安定してから所定時間経過していない場合(ステップB6のNO)は、終了し、その後、スタートに戻る。
車速が安定してから所定時間経過した場合(ステップB6のYES)、電子制御装置50は、車両が緩加速(又は緩減速)と判定する(ステップB7)。
ステップB7の後、電子制御装置50は、原動機(図1の10)のパワー不足、又は自動変速機40の変速段が不適切と判定する(ステップB8)。なお、ステップB8は、ステップA5と同様である。
ステップB8の後、電子制御装置50は、変速線マップ及びロックアップ作動領域マップ(LU領域マップ)の使用を禁止する(ステップB9)。なお、ステップB9は、ステップA6と同様である。
ステップB9の後、電子制御装置50は、自動変速機40におけるシフトアップを禁止し、ロックアップクラッチ(LU)の開放(OFF)を禁止し、自動変速機40におけるシフトダウンを実施するように制御する(ステップB10)。なお、ステップB10は、ステップA7と同様である。
ステップB10の後、電子制御装置50は、アクセル開度Ap(スロットル開度)が安定しているか否かを判断する(ステップB11)。なお、ステップB11は、ステップA8と同様である。アクセル開度Apが安定していない場合(ステップB11のNO)は、終了し、その後、スタートに戻る。
アクセル開度Apが安定している場合(ステップB11のYES)、電子制御装置50は、アクセル開度Apが安定してから、予め設定された所定時間を経過したか否かを判断する(ステップB12)。なお、ステップB12は、ステップA9と同様である。アクセル開度Apが安定してから所定時間経過していない場合(ステップB12のNO)は、終了し、その後、スタートに戻る。
アクセル開度Apが安定してから所定時間経過した場合(ステップB12のYES)、電子制御装置50は、車速が低下しているか否かを判断する(ステップB13)。なお、ステップB13は、ステップA10と同様である。車速が低下していない場合(ステップB13のNO)は、終了し、その後、スタートに戻る。
車速が低下している場合(ステップB13のYES)、電子制御装置50は、車速が低下してから、予め設定された所定時間を経過したか否かを判断する(ステップB14)。なお、ステップB14は、ステップA11と同様である。車速が低下してから所定時間経過していない場合(ステップB14のNO)は、終了し、その後、スタートに戻る。
車速が低下してから所定時間経過した場合(ステップB14のYES)、電子制御装置50は、ロックアップクラッチ(LU)を開放(OFF)させるように制御し(ステップB15)、終了し、その後、スタートに戻る。なお、ステップB15は、ステップA12と同様である。
実施例2によれば、緩加速(減速)の状態を検知し、ドライバが意図しない車速低下時において、速やかにダウンシフトを実施するとともに、ロックアップを開放しないことで、運転者が運転操作に対する失速感を感じるのを防止する。例えば、車両が緩やかに加速している状態で、路面勾配がきつい側へ変換した場合、車速が低下していくことがある。この時運転操作と車両現象のアンマッチとなることが懸念される。そのため、実施例2では、緩加速(減速)の時にシフトダウンを行い、車速変化を加速側へ戻せるようにしている。
本発明の実施例3に係るロックアップクラッチの制御装置について図面を用いて説明する。図8は、本発明の実施例3に係るロックアップクラッチの制御装置を含む車両の構成を模式的に示した概略図である。図9は、本発明の実施例3に係るロックアップクラッチの制御装置の動作を模式的に示したフローチャートである。図10は、本発明の実施例3に係るロックアップクラッチの制御装置の動作の一例(パターン1)を模式的に示したタイムチャートである。図11は、本発明の実施例3に係るロックアップクラッチの制御装置の動作の一例(パターン2)を模式的に示したタイムチャートである。図12は、比較例2に係るロックアップクラッチの制御装置の動作の一例(図10のパターン1に対する比較例)を模式的に示したタイムチャートである。図13は、比較例3に係るロックアップクラッチの制御装置の動作の一例(図11のパターン2に対する比較例)を模式的に示したタイムチャートである。
実施例3では、エンジンブレーキの効き及び燃費を改善するとともに、ロックアップクラッチ(LU;図1の26)のON/OFFビジーを改善するために、ナビゲーションシステムに記憶されている道路情報(例えば、標高、等高線)に基づき、アップダウンが連続するような場所では通常のロックアップクラッチの領域マップを使用せず、自動変速機(図1の40)の入力軸回転数Nt(ダービン回転数)の閾値により締結、開放を決定するようにしたものである。また、自動変速機(図1の40)のにおける入力軸(図1の41)の振動を検知することにより、この振動が発生した時点でロックアップクラッチ(図1の26)を開放(OFF)するようにしたものである。実施例3では、ロックアップクラッチの制御装置を含む車両の構成は、実施例1と同様であるが、ナビゲーションシステム67を搭載している点が異なる。
ナビゲーションシステム67は、GPS(Global Positioning System)、車速パルス、ジャイロなどの自律航法装置を利用して、運転者に対して、ディスプレイ画面上に自車の現在位置や目的地への走行経路案内を行なうシステムである(図8参照)。ナビゲーションシステム67は、自車の現在位置に係る標高を検出する機能を有し、検出された標高データを電子制御装置50に向けて出力する。電子制御装置50は、ナビゲーションシステム67と通信可能に接続されており、インターフェース54を介して標高データが入力される。電子制御装置50におけるCPU51は、標高データに基づいて自車が登坂/降坂を走行しているか否かを判断し、登坂/降坂を走行している場合にはロックアップクラッチ作動領域マップ(LU領域マップ)の使用を禁止する。なお、電子制御装置50の詳細な動作は以下の通りである。
図9を参照すると、まず、電子制御装置50は、ナビゲーションシステム67から自車の現在位置に係る標高データを取得する(ステップC1)。
ステップC1の後、電子制御装置50は、標高データに基づいて自車が登坂/降坂を走行しているか否かを判断する(ステップC2)。ここで、自車が登坂/降坂を走行しているか否かは、前回に取得した標高データを基準として、予め設定された閾値を用いて上限及び下限を設定し、新たな標高データが上限及び下限の範囲外にあるか否かを判断することで行われ、新たな標高データが上限及び下限の範囲外にあれば登坂/降坂を走行中と判定され、新たな標高データが上限及び下限の範囲外になければ平地を走行中と判定される。なお、新たな標高データが上限を超えていれば登坂を走行中と判断され、新たな標高データが下限未満であれば降坂を走行中と判断される。登坂/降坂を走行していない場合(ステップC2のNO)は、終了し、その後、スタートに戻る。
登坂/降坂を走行している場合(ステップC2のYES)、電子制御装置50は、登坂/降坂を走行して連続して、予め設定された所定時間(例えば、図10のtg)を経過したか否かを判断する(ステップC3)。ここで、所定時間を経過したか否かは、登坂/降坂を走行し始めた時点の時刻(例えば、図10のT1)を始点に所定時間経過したか否かが判断され、登坂/降坂でなくなった時点で始点が新たな時刻に更新される。登坂/降坂を走行して連続して所定時間を経過していない場合(ステップC3のNO)は、終了し、その後、スタートに戻る。
登坂/降坂を走行して連続して所定時間を経過した場合(ステップC3のYES)、電子制御装置50は、ロックアップ作動領域マップ(LU領域マップ)の使用を禁止する(ステップC4)。したがって、ロックアップ作動領域マップ(LU領域マップ)が開放(OFF)になっても、ロックアップクラッチ26の状態(LU状態)は係合(ON)のままである(図10のT2−T3間参照)。
ステップC4の後、電子制御装置50は、入力軸41の回転数Ntが、予め設定された所定回転数(ここでは800rpm)以下であるか否かを判断する(ステップC5)。入力軸回転数Ntが所定回転数以下でない場合(ステップC5のNO)、ステップC7に進む。
入力軸回転数Ntが所定回転数以下である場合(ステップC5のYES、図10のT3参照)、又は、ステップC12の後(図11のT4参照)、電子制御装置50は、ロックアップクラッチ26(LU)を開放(OFF)させ(ステップC6)、その後、終了し、その後、スタートに戻る。ロックアップクラッチ26(LU)を開放することで、車両を加速させることができる。
入力軸回転数Ntが所定回転数以下でない場合(ステップC5のNO)、電子制御装置50は、入力軸41の回転数Ntが、予め設定された所定回転数(ここでは900rpm)以上であるか否かを判断する(ステップC7)。なお、ステップC7の所定回転数は、ステップC5の所定回転数よりも大きい。入力軸回転数Ntが所定回転数以上でない場合(ステップC7のNO)は、終了し、その後、スタートに戻る。
入力軸回転数Ntが所定回転数以上である場合(ステップC7のYES、図10のT4参照)、電子制御装置50は、ロックアップクラッチ26(LU)を係合させる(ステップC8)。
ステップC8の後、電子制御装置50は、自動変速機40において変速中であるか否かを判断する(ステップC9)。変速中である場合(ステップC9のYES)は、終了し、その後、スタートに戻る。
変速中でない場合(ステップC9のNO)、電子制御装置50は、入力軸41が振動しているか否かを判断する(ステップC10)。ここで、入力軸41が振動しているか否かは、前回に取得した入力軸41の回転数Ntを基準として、予め設定された閾値を用いて上限及び下限を設定し、新たな入力軸41の回転数Ntが上限及び下限の範囲外にあるか否かを判断することで行われ、新たな入力軸41の回転数Ntが上限及び下限の範囲外にあれば入力軸41が振動と判定され、新たな入力軸41の回転数Ntが上限及び下限の範囲外になければ入力軸41が非振動と判定される。入力軸41が振動していない場合(ステップC10のNO)は、終了し、その後、スタートに戻る。
入力軸41が振動している場合(ステップC10のYES)、電子制御装置50は、入力軸41が振動してから連続して、予め設定された所定時間(図11のth)を経過したか否かを判断する(ステップC11)。ここで、所定時間を経過したか否かは、入力軸41の振動が開始した時点の時刻を始点に所定時間経過したか否かが判断され、振動がなくなった時点で始点が新たな時刻に更新される。入力軸41の振動が連続して所定時間を経過していない場合(ステップC11のNO)は、終了し、その後、スタートに戻る。
入力軸41の振動が連続して所定時間を経過した場合(ステップC11のYES)、電子制御装置50は、入力軸41が振動していると判定し(ステップC12)、その後、ステップC6に進んで、ロックアップクラッチ26(LU)を開放(OFF)することになる。
実施例3によれば、ナビゲーションシステム67の道路情報(標高データ)を利用して車両が走行している道路が坂路であると判断したときに、ロックアップ作動領域マップ(LU領域マップ)の使用を禁止し、入力軸41の回転数Ntに応じてロックアップクラッチ26における係合/開放を制御することで、ロックアップクラッチ26における係合/開放を頻繁に行う(ON/OFFビジー)ことを回避することができ、エンジンブレーキの効き及び燃費を改善することができる。なお、大型車両では登降坂路では車速が高くならず、加速するために、ロックアップクラッチにおいて係合/開放が頻繁に行われている可能性があり、自動変速機におけるATF(オートマチックトランスミッションフルード)が高温になったり、燃費が悪いことが懸念される(図12参照)。また、コースト走行時にエンジンブレーキが利かず、トラックやバスなどの商用車では特に制動力が不足することが懸念される。さらに、ロックアップ作動領域マップ(LU領域マップ)は、路面勾配や車両重量に応じて最適なマップを選択するようにすることが望ましいが、路面勾配及び車両重量の推定には複雑なロジック構成が必要となり、電子制御装置のROM容量を圧迫し、定数の適合に莫大な工数が必要であり、実用に不向きである。実施例3によれば、これらの現象を回避することができる。
また、実施例3によれば、ロックアップ作動領域マップ(LU領域マップ)の使用を禁止しているときにおいて変速中でなく、かつ、入力軸41が振動したときに、ロックアップクラッチ26(LU)を開放(OFF)することで、ロックアップを開放する車速が限界まで低速化され、燃費及びエンジンブレーキの効きを向上させることができ、ロックアップクラッチ26における係合/開放を頻繁に行う(ON/OFFビジー)ことを回避することができる。なお、従来、ロックアップの開放領域は、ロックアップ作動領域マップ(LUマップ)に従っており(図13参照)、緩い加速でスロットル低開度一定で走行している場合とスロットル高開度で急加速している場合とでは、エンジン振動が伝達する入力軸の回転数は異なり、エンジンの負荷やタービン回転数に関係してエンジン振動がドライバに伝達するという現象がある。このような現象を回避するために、複数のマップを用いることが考えられるが、そうするとバラツキ等でマージンを取るため、最適化は困難である。そこで、実施例3では、入力軸41の振動を検知することにより、ロックアップクラッチ26を開放することで、開放(OFF)領域を最適化することができる。また、急制動時のエンストも防止することができる。