図1は、本発明が適用された車両の駆動装置10の概略構成およびその車両に設けられた制御系統の要部を示す図である。図1において、駆動装置10は、車両を駆動させるための動力を発生する機関(発動機)としてよく知られた内燃機関で構成されるエンジン12と、そのエンジン12から出力された動力を駆動輪としての一対の前輪14および一対の後輪16にそれぞれ伝達する動力伝達装置18とを備えている。
上記動力伝達装置18は、エンジン12から入力された動力を流体を介して伝達する流体式動力伝達装置18としてのトルクコンバータ20と、そのトルクコンバータ20から伝達された回転速度を変速しつつ伝達する変速装置としての自動変速機22と、その自動変速機22から伝達された動力を前輪14および後輪16に分配するための動力分配装置としてのトランスファ24とを備えている。そして、動力伝達装置18は、トランスファ24から前輪14に至る動力伝達経路において、トランスファ24に連結された推進軸(プロペラシャフト)26と一対の前輪14にそれぞれ連結された一対の駆動車軸28との間に設けられ、トランスファ24から推進軸26を介して伝達された回転速度を減速するとともに、一対の前輪14の回転差を許容しつつその一対の前輪14をそれぞれ回転駆動する前輪用差動歯車装置30を備えている。また、動力伝達装置18は、トランスファ24から後輪16に至る動力伝達経路において、トランスファ24に連結された推進軸(プロペラシャフト)32と一対の後輪16にそれぞれ連結された一対の駆動車軸34との間に設けられ、トランスファ24から推進軸32を介して伝達された回転速度を減速するとともに、一対の後輪16の回転差を許容しつつその一対の後輪16をそれぞれ回転駆動する後輪用差動歯車装置36を備えている。
図2は、動力伝達装置18のうちトルクコンバータ20および自動変速機22の構成を説明する骨子図である。図2において、トルクコンバータ20は、エンジン12のクランク軸38に連結され、エンジン12から回転駆動されることによってトルクコンバータ20内の作動油の流動による流体流を発生させるポンプ翼車40と、自動変速機22の入力軸42に連結され、ポンプ翼車40からの流体流を受けて回転させられるタービン翼車44と、そのタービン翼車44からポンプ翼車40への流体流中において、一方向クラッチ48によりタービン翼車44の回転方向と同じ方向へ回転可能に配設されたステータ翼車48とを備えており、作動油を介して動力伝達を行うようになっている。
自動変速機22は、ダブルピニオン型の第1遊星歯車装置50と、シングルピニオン型の第2遊星歯車装置52および第3遊星歯車装置54とを備える遊星歯車式の変速機である。第1遊星歯車装置50のサンギヤS1は、クラッチC3を介して入力軸42に選択的に連結されるとともに、一方向クラッチF2およびブレーキB3を介してハウジング56に選択的に連結されるようになっている。上記一方向クラッチF2は、入力軸42の回転方向と同じ方向の回転を許容し、入力軸42の回転方向とは反対の方向の回転を阻止するものである。第1遊星歯車装置50のキャリアCA1は、ブレーキB1を介してハウジング56に選択的に連結されるとともに、そのブレーキB1と並列に設けられた一方向クラッチF1により、入力軸42の回転方向とは反対の方向の回転が阻止されるようになっている。第1遊星歯車装置50のリングギヤR1は、第2遊星歯車装置52のリングギヤR2と一体的に連結されており、ブレーキB2を介してハウジング56に選択的に連結されるようになっている。第2遊星歯車装置52のサンギヤS2は、第3遊星歯車装置54のサンギヤS3と一体的に連結されており、クラッチC4を介して入力軸42に選択的に連結されるとともに、一方向クラッチF0およびクラッチC1を介して入力軸42に選択的に連結されるようになっている。上記一方向クラッチF0は、入力軸42の回転方向と同じ方向の回転を許容し、入力軸42の回転方向とは反対の方向の回転を阻止するものである。第2遊星歯車装置52のキャリアCA2は、第3遊星歯車装置54のリングギヤR3と一体的に連結されており、クラッチC2を介して入力軸42に選択的に連結されるとともに、ブレーキB4を介してハウジング56に選択的に連結されるようになっており、さらにブレーキB4と並列に設けられた一方向クラッチF3により、入力軸42の回転方向とは反対の方向の回転が阻止されるようになっている。第3遊星歯車装置54のキャリアCA3は、出力軸58に一体的に連結されている。
上記クラッチC1〜C4、およびブレーキB1〜B4(以下、特に区別しない場合は単にクラッチCおよびブレーキBという)は、従来の車両用自動変速機22においてもよく用いられている係合要素としての油圧式摩擦係合装置である。これらは、互いに重ねられた複数枚の摩擦板が油圧アクチュエータにより押圧される湿式多板型や、回転するドラムの外周面に巻き付けられた複数本のバンドの一端が油圧アクチュエータによって引き締められるバンドブレーキ型などにより構成されており、これらが介挿されている両側の部材を選択的に連結するためのものである。これらクラッチCおよびブレーキBは、図1に示す油圧制御回路60からクラッチCおよびブレーキBにそれぞれ設けられた上記各油圧アクチュエータに供給される油圧が個別に調整されることにより、係合度合いが調整されるようになっており、それぞれが介挿されている両側の部材間の係合状態、スリップ状態、或いは解放状態を制御するようになっている。そして、本実施例の自動変速機22においては、図3に示すように、上記各係合装置すなわちクラッチCおよびブレーキBの係合状態或いは解放状態が選択的に切り換えられることにより、ギヤ比(=自動変速機22の入力軸回転速度NIN/自動変速機22の出力軸回転速度NOUT)が異なる第1速ギヤ比乃至第6速ギヤ比にそれぞれ設定された第1速ギヤ段「1st」乃至第6速ギヤ段「6th」を含む複数の前進ギヤ段および後進ギヤ段「Rev」のうちいずれか1のギヤ段が成立するか、或いは動力伝達経路が遮断されるニュートラル「N」が成立するようになっている。図3は、自動変速機22において各ギヤ段を成立させる際のクラッチCおよびブレーキBの作動状態を説明する係合作動表であり、「○」は係合状態を、「(○)」はエンジンブレーキ時のみの係合状態を、空欄は解放状態を、「●」は動力伝達に関与しない係合状態をそれぞれ表している。なお、上記各ギヤ段において設定されているギヤ比は、第1遊星歯車装置50、第2遊星歯車装置52、および第3遊星歯車装置54の各ギヤ比によって適宜定められ、第1速ギヤ段「1st」から第6速ギヤ段「6th」に向かうに従ってギヤ比が小さくなるように設定されている。
ここで、上記第1速ギヤ段「1st」が本発明における最低速ギヤ段に相当し、この第1速ギヤ段「1st」において設定されている第1速ギヤ比が最も高いギヤ比である最低速側ギヤ比に相当する。また、上記第2速ギヤ段「2nd」が、本発明における最低速ギヤ段の次に高ギヤ比すなわち低速側に設定されたギヤ段に相当する。また、上記第2速ギヤ段乃至第6速ギヤ段「6th」において設定されている第2ギヤ比乃至第6ギヤ比が、本発明における最低速側ギヤ比よりも低ギヤ比すなわち高速側のギヤ比に相当する。
図1に戻って、本実施例のホイールブレーキ62は、よく知られたディスクブレーキから構成される。具体的には、ホイールブレーキ62は、一対の前輪14および後輪16にそれぞれ連結された駆動車軸28および34と一体的に回転するディスク(回転体)64と、非回転部材としての例えばサスペンションを構成する部材等に配設され、ディスク64に対して摩擦材としてのブレーキパッドを押し付ける油圧シリンダを有するキャリパー66とを備え、その油圧シリンダに供給されるブレーキ油圧の大きさに応じて生じるディスク64とブレーキパッドとの間の摩擦によって駆動輪の回転を制動する制動力を発生させるものである。上記ブレーキ油圧は、運転者により踏み込み操作されるブレーキペダル68の踏力或いは踏込量に応じてマスターシリンダー70で発生させられた油圧がブレーキアクチュエータ72にて増圧、保持、または減圧されて各キャリパー66へ供給される油圧である。上記ブレーキアクチュエータ72は、図示しない油圧ポンプやアキュムレータ、および各ホイールブレーキ62への油路に設けられた例えばリニアソレノイドバルブ等の電磁弁などを備え、後述の電子制御装置74からの指令に従って上記油圧ポンプおよび電磁弁が作動させられることにより、各ホイールブレーキ62へ供給されるブレーキ油圧を個別に調圧制御するものである。本実施例では、上述のようにブレーキペダル68の踏力に応じてマスターシリンダー70で発生させられた油圧の他、ブレーキアクチュエータ72の油圧ポンプで単独に発生させられた油圧が供給されることによっても所定の制動力が発生するようになっている。すなわち、ブレーキペダル68が非操作時であっても、電子制御装置74の指令によってブレーキアクチュエータ72からブレーキ油圧が供給されるとともにそのブレーキ油圧が調圧制御されることにより、車両の制動力を制御することができるようになっている。
図1の電子制御装置74は、車両の走行制御装置としても機能するものであって、CPU、ROM、RAM、および入出力インターフェースなどから成る所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、エンジン12の出力制御(駆動輪の駆動力制御)や自動変速機22の自動変速制御、或いはホイールブレーキ62の制動力制御(駆動輪の制動力制御)などを実行するようになっており、必要に応じて上記出力制御用や自動変速制御用、或いは制動力制御用などに分けて構成される。
アクセルペダル76は、運転者の駆動力要求量に応じて踏み込み操作されるものであり、電子制御装置74には、アクセル開度センサ78からアクセルペダル76の操作量としてのアクセル開度Accを表す信号が供給されるようになっている。
ブレーキペダル68は、運転者の制動力要求量に応じて踏み込み操作されるものであり、電子制御装置74には、ブレーキセンサ80からブレーキペダル68が踏み込み操作されたことを表す信号が供給されるようになっている。
車輪速センサ82は、各車輪すなわち前輪14および後輪16の回転速度を検出するものであり、電子制御装置74には、その車輪速センサ82から各車輪の回転速度を表す信号が供給されるようになっている。
スロットルアクチュエータ84は、エンジン12の吸気配管86に設けられたスロットル弁88の開度すなわちスロットル開度θTHを調整するものであり、電子制御装置74には、スロットル開度センサ90からスロットル開度θTHを表す信号が供給されるようになっている。
走行ポジション切換装置(走行状態切換装置)92は、運転者により手動操作されるシフトレバー94の操作位置PSHにしたがって自動変速機22の走行状態すなわち走行ポジションを切り換えるためのものである。図4は、そのシフトレバー94の操作経路を例示する図である。ここで、上記自動変速機22の走行ポジションには、自動変速機22の動力伝達経路が遮断され且つ図示しないメカニカルパーキング機構によって機械的に出力軸58の回転が固定(ロック)される駐車ポジションと、自動変速機22のギヤ段が後進ギヤ段に変速される後進走行ポジションと、自動変速機22の動力伝達経路が遮断されてニュートラルとされる中立ポジションと、全ての前進ギヤ段を含むDレンジが用いられ、自動変速機22のギヤ段をそのDレンジのいずれか1のギヤ段に自動的に変速する自動変速制御が実行される前進走行ポジションと、前進ギヤ段の変速範囲のうち上限ギヤ段を制限した複数のレンジすなわち1レンジ乃至5レンジを含む、1レンジ乃至Dレンジが用いられ、自動変速機22の走行レンジが所定の手動操作に応答して上記1レンジ乃至Dレンジのいずれか1に切り換わる手動変速ポジションとが、設定されている。そして、上記シフトレバー94は、自動変速機22の走行ポジションを上記駐車ポジションに切り換えるための駐車指令位置「P(パーキング)」と、上記後進走行ポジションに切り換えるための後進走行指令位置「R(リバース)」と、上記中立ポジションに切り換えるための中立指令位置(中立位置)「N(ニュートラル)」と、上記前進走行ポジションに切り換えるための自動変速走行指令位置「D(ドライブ)」と、上記手動変速ポジションに切り換えるための手動変速走行指令位置「M(マニュアル)」とへ手動操作されるように設けられている。電子制御装置74には、シフトレバーポジションセンサ96からシフトレバー94の操作位置PSHを表す信号が供給されるようになっている。
オフロード走行選択スイッチ98は、車両のオフロード走行を補助するオフロード走行制御(オフロードガイダンス制御)の走行路面モード(走行モード)を切り換えるためのものである。本実施例では、例えば圧雪路や凍結路等において好適に実施され、自動変速機22のギヤ比を第1速ギヤ段よりも高速側のギヤ段すなわち第2速ギヤ段乃至第6速ギヤ段に切り換えるとともに、スロットル開度θTHを通常よりも抑えて走行するスノー路面モード走行制御を実行するスノー路面モードと、そのスノー路面モード走行制御を実行しない通常の走行制御を実行する通常路面モードとを、切り換えるためのものである。このオフロード走行選択スイッチ98は、例えば、図5に示すようなダイヤル式スイッチとして運転席付近に設けられ、上記通常路面モードが行われる操作位置である「NORMAL」と上記スノー路面モード走行制御が実行される操作位置である「SNOW」とへ操作されるようになっている。電子制御装置74には、オフロード走行選択スイッチセンサ100から上記「NORMAL」または「SNOW」が選択されたことを表す信号が供給されるようになっている。なお、本実施例において、上記走行路面モードは、車両の走行路面状況に応じてその走行路面状況に適した走行制御を行うために選択されるものであり、また、オフロード走行選択スイッチ98は、上記走行路面状況を入力するためのものである。
微低速走行選択スイッチ102は、自動変速機22のギヤ比を例えば第1速ギヤ段に固定するとともに車速Vが予め設定された微低速目標車速Vmに維持されるように駆動輪の駆動力および制動力を制御する微低速走行制御(クロール制御)の実行状態を切り換えるためのものである。本実施例では、例えば、図6に示すようなダイヤル式スイッチとして運転席付近に設けられ、微低速走行制御の実行状態の切り換え、および微低速走行制御を実行する場合の微低速目標車速Vmを設定できるようになっている。本実施例では、上記微低速目標車速Vmは、1km/h、3km/h、および5km/hのいずれか1に設定できるようになっている。電子制御装置74には、微低速走行選択スイッチセンサ104から上記微低速走行制御が選択されたこと、および微低速目標車速Vmを表す信号が供給されるようになっている。
2速発進選択スイッチ106は、車両の前進方向の発進に際して、自動変速機22の発進時のギヤ段を第2速ギヤ段に切り換える2速発進走行制御の実行状態を手動操作で切り換えるためのものである。本実施例では、例えば、図7に示すようなシーソー式スイッチとして運転席付近に設けられている。電子制御装置74には、2速発進選択スイッチセンサ108から上記2速発進走行制御が選択されたことを表す信号が供給されるようになっている。
上記の他、電子制御装置74には、エンジン回転速度センサ110からエンジン回転速度NEを表す信号、タービン回転速度センサ112から入力軸回転速度NINに対応するタービン回転速度NTを表す信号、車速センサ114から出力軸回転速度NOUTに対応する車速Vを表す信号、吸入空気量センサ116から吸入空気量QAを表す信号、吸入空気温度センサ118から吸入空気温度TAを表す信号、冷却水温センサ120から冷却水温TWを表す信号、油温センサ122から油圧制御回路60の作動油の油温TOILを表す信号などが供給されるようになっている。
また、電子制御装置74からは、スロットル弁88のスロットル開度θTHを制御するスロットルアクチュエータ84へのスロットル信号、エンジン12の各気筒内への燃料噴射量Fを制御する燃料噴射装置124への燃料噴射量信号、エンジン12の点火時期を制御する点火装置126への点火時期信号、自動変速機22の各油圧式摩擦係合装置の係合状態を制御する油圧制御回路60に設けられた電磁弁へのバルブ駆動信号、ホイールブレーキ62のブレーキ油圧すなわち制動力を制御するブレーキアクチュエータ72の電磁弁および油圧ポンプへの駆動信号などがそれぞれ出力されるようになっている。
前記エンジン12の出力制御は、スロットルアクチュエータ84によりスロットル弁88が開閉制御される他、エンジン12の各気筒内への燃料噴射量Fが制御され、また点火装置126によりエンジン12の点火時期が制御されること等により行われる。上記スロットル弁88の開閉制御は、例えば図8に示すようなアクセル開度軸とスロットル開度軸との二次元座標内において予め設定された関係(マップ)から、実際のアクセル開度Accに基づいて決定された要求スロットル開度θTH *に従ってスロットルアクチュエータ84を駆動することにより行われる。すなわち、アクセル開度Accが増加するほど要求スロットル開度θTH *が増加される。なお、図8において、実線は、前記スノー路面モード走行制御を実行しない通常の走行制御が行われる通常路面モード時のものである。また、1点鎖線は、上記スノー路面モード走行制御が実行されるスノー路面モード走行制御時のものである。
また、前記自動変速機22の自動変速制御は、例えば図9に示すような車速軸とスロットル開度軸またはアクセル開度軸との二次元座標内において設定された複数本の変速線から構成される予め記憶された変速線図(変速マップ)から、実際のスロットル開度θTHまたはアクセル開度Accおよび車速Vに基づいて自動変速機22の変速すべきギヤ段が決定され、その決定されたギヤ段を成立させるために図3に示す係合作動表に従って油圧制御回路60によりクラッチCおよびブレーキBの係合状態が切り換えられることにより行われる。この係合状態の切り換えは、駆動力変化などの変速ショックが発生したり摩擦材の耐久性が損なわれたりすることを防止するために、各クラッチCおよびブレーキBの係合圧が連続的に制御されることにより行われる。
ここで、図9において、実線で示す変速線(5→6変速線、4→5変速線、3→4変速線、2→3変速線、1→2変速線)は、アップシフトが判断されるためのアップ変速線であって、高車速側への変速タイミングを規定するものである。また、点線で示す変速線(5←6変速線、4←5変速線、3←4変速線、2←3変速線、1←2変速線)は、ダウンシフトが判断されるためのダウン変速線であって、低車速側への変速タイミングを規定するものである。なお、上記自動変速制御は、スロットル開度θTHまたはアクセル開度Accの他に、吸入空気量QA、路面勾配などに基づいて行われる等、種々の態様が可能である。
また、前記ホイールブレーキ62の制動力制御は、ブレーキペダル68の踏力に応じてマスターシリンダー70で発生させられた油圧がブレーキアクチュエータ72により各キャリパー66へ供給される他、制動時の前輪14および後輪16のスリップを防止するABS制御やVSC制御などを行うために、ブレーキアクチュエータ72の油圧ポンプや電磁弁等によりブレーキペダル68の踏力に応じてマスターシリンダー70で発生させられた油圧が適宜増圧或いは減圧されて各キャリパー66へ供給されることにより行われる。
図10は、走行制御装置として機能する電子制御装置74の制御機能の要部すなわちオフロード走行制御および微低速走行制御を実行するための制御機能を説明する機能ブロック線図である。
図10において、エンジン出力制御手段130は、エンジン12の出力制御の為に、例えばスロットル信号や燃料噴射量信号や点火時期信号をそれぞれスロットルアクチュエータ84や燃料噴射装置124や点火装置126へ出力する。例えば、エンジン出力制御手段130は、例えば図8に示すようなアクセル開度Accとスロットル開度θTHとの予め設定された関係から、実際のアクセル開度Accに基づいて決定された要求スロットル開度θTH *に従ってスロットル弁88を開閉するためのスロットル信号をスロットルアクチュエータ84へ出力すると共に、上記決定された要求スロットル開度θTH *に対応する吸入空気量QAおよび燃料噴射量F(すなわち空燃比QA/F)を得るための燃料噴射量信号を燃料噴射装置124へ出力して、エンジントルクを制御する。
変速制御手段132は、シフトレバー94の操作位置PSHが自動変速走行指令位置「D」であるときには、例えば図9に示すような予め記憶された変速線図から車速Vおよびスロットル開度θTHに基づいて変速判断を行い、自動変速機22のギヤ段をDレンジ内で自動的に切り換える自動変速制御を行う。
具体的には、図9の変速線図において、例えば実際の車速Vとスロットル開度θTHとで特定される車両走行状態を示す位置が5→6変速線を相対的に高車速側へ横切ると、変速制御手段132は、第5速ギヤ段「5th」から第6速ギヤ段「6th」へ変速すべきであると判断し、ギヤ段を第6速ギヤ段「6th」へ切り換えるための変速指令を油圧制御回路60に対して出力する。なお、上記車両走行状態を示す位置が、1→2変速線、2→3変速線、3→4変速線、または4→5変速線を高車速側へ横切ると、変速制御手段132は、第2速ギヤ段「2th」、第3速ギヤ段「3th」、第4速ギヤ段「4th」、または第5速ギヤ段「5th」へ変速すべきであると判断し、それぞれ判断されたギヤ段へ切り換えるための変速指令を油圧制御回路60に対して出力する。
また、図9の変速線図において、例えば実際の車速Vとスロットル開度θTHとで特定される車両走行状態を示す位置が6→5変速線を相対的に低車速側へ横切ると、変速制御手段132は、第6速ギヤ段「6th」から第5速ギヤ段「5th」へ変速すべきであると判断し、ギヤ段を第5速ギヤ段「5th」へ切り換えるための変速指令を油圧制御回路60に対して出力する。なお、上記車両走行状態を示す位置が、2→1変速線、3→2変速線、4→3変速線、または5→4変速線を相対的に低車速側へ横切ると、変速制御手段132は、第1速ギヤ段「1st」、第2速ギヤ段「2th」、第3速ギヤ段「3th」、または第4速ギヤ段「4th」へ変速すべきであると判断し、それぞれ判断されたギヤ段へ切り換えるための変速指令を油圧制御回路60に対して出力する。
また、変速制御手段132は、シフトレバー94の操作位置PSHが手動変速走行指令位置「M」であるときには、シフトレバー94の所定の手動変速操作毎に複数のレンジすなわち1レンジ〜Dレンジに1つずつ切り換える。すなわち、本実施例における手動変速モードは、所定の手動変速操作毎に自動変速機22の変速レンジが変速範囲の上限を制限した複数のレンジに切り換えられる所謂変速レンジホールドタイプのものである。
具体的には、例えばDレンジで走行中において、シフトレバー94の操作位置PSHが手動変速走行指令位置「M」から車両後方側に配置されたダウンレンジ指令位置「−」へ操作されたことがシフトレバーポジションセンサ96により検出されたときには、変速制御手段132は、Dレンジから5レンジへのダウンレンジを実行する。それに伴って、そのダウンレンジ前にDレンジの最上位ギヤ段である第6速ギヤ段「6th」で走行していた場合には、変速制御手段132は、ギヤ段を5レンジの最上位ギヤ段である第5速ギヤ段「5th」へ切り換えるための変速指令を油圧制御回路60に対して出力する。なお、5レンジ、4レンジ、3レンジ、または2レンジにて走行中において、シフトレバー94の操作位置PSHがダウンレンジ指令位置「−」へ操作されたことが検出されたときには、変速制御手段132は、4レンジ、3レンジ、2レンジ、または1レンジへダウンレンジを実行する。そして、そのダウンレンジの前に最上位ギヤ段で走行していた場合には、変速制御手段132は、ギヤ段をダウンレンジ後の最上位ギヤ段へ切り換えるための変速指令を油圧制御回路60に対して出力する。
また、例えば5レンジで走行中において、シフトレバー94の操作位置PSHが手動変速走行指令位置「M」から車両前方側に配置されたアップレンジ指令位置「+」へ操作されたことがシフトレバーポジションセンサ96により検出されたときには、変速制御手段132は、5レンジからDレンジへのアップレンジを実行する。それに伴って、そのアップレンジの前に、変速線図上において、実際の車速Vとスロットル開度θTHとで特定される車両走行状態を示す位置が5→6変速線よりも高車速側に位置する場合には、変速制御手段132は、ギヤ段を第5速ギヤ段「5th」から第6速ギヤ段「6th」へ切り換えるための変速指令を油圧制御回路60に対して出力する。なお、4レンジ、3レンジ、2レンジ、または1レンジにて走行中において、シフトレバー94の操作位置PSHがアップレンジ指令位置「+」へ操作されたことが検出されたときには、変速制御手段132は、5レンジ、4レンジ、3レンジ、または2レンジへのダウンレンジを実行する。そして、そのアップレンジの前に、変速線図上において、上記車両走行状態を示す位置が4→5変速線、3→4変速線、2→3変速線、1→2変速線よりも高車速側に位置する場合には、変速制御手段132は、アップレンジ後の最上位ギヤ段へ切り換えるための変速指令を油圧制御回路60に対して出力する。
ホイールブレーキ制御手段134は、ブレーキアクチュエータ72から各ホイールブレーキ62へ供給されるブレーキ油圧をそれぞれ調圧することにより、各駆動輪の制動力制御を行うものである。例えば、ホイールブレーキ制御手段134は、ブレーキペダル68の踏力に応じてマスターシリンダー70で発生させられた油圧がブレーキアクチュエータ72を介して各キャリパー66へ供給されるようにブレーキアクチュエータ72を作動させる。また、ホイールブレーキ制御手段134は、低摩擦係数路面などにおける発進走行時や制動時、旋回時の車両の安定性を高めるために、TRC(トラクションコントロール)制御やABS(アンチロックブレーキシステム)制御、あるいはVSC(ヴィークルスタビリティコントロール)制御などを実行する。なお、ホイールブレーキ制御手段134には、上記各種制御に必要な車両状態値を表す信号、例えば各駆動輪の回転速度や車両の前後加速度G、或いはヨーレートを表す信号などが適宜供給されるようになっている。
オフロード走行制御手段136は、路面状況の選択をするだけで初心者でもアクセル操作やブレーキ操作に応じて悪路を走破できるように、少なくとも2つの走行路面モードすなわちスノー路面(低μ路面)モード(高速側ギヤ比発進走行モード)および通常路面モードを備えており、オフロード走行選択スイッチ98の操作に基づいて選択された走行路面モードに基づいて、その選択された走行路面モードに対応する走行制御を実行する。
例えばスノー路面モードが選択されたときには、オフロード走行制御手段136は、駆動輪の駆動力を抑制させて走行時における駆動輪のスリップ防止を図るために、自動変速機22のギヤ段を第1速ギヤ段よりも高速側のギヤ段すなわち第2速ギヤ段乃至第6速ギヤ段に切り換えて走行するように変速制御手段132に対して指令を行い、また、スロットル開度θTHを通常路面モードよりも抑えることによりスリップ率の増大を防止するために、エンジン出力制御手段130における要求スロットル開度θTH *の算出に際しては、図8に示すアクセル開度Accとスロットル開度θTHとの予め設定された関係のうち1点鎖線で示すスノー路面モード時の方を用いるようにエンジン出力制御手段130に対して指令を行う。なお、図8において、アクセル開度Accの増加量に対するスロットル開度θTHの増加量は、通常路面モード時よりもスノー路面モード時の方が小さく設定されている。
また、例えばスノー路面モードが選択されたときには、オフロード走行制御手段136は、前輪に一定の間隔で自動的に強くブレーキをかけてタイヤを敢えてロックさせることにより、前輪を雪や土などの軟らかい路面にめり込ませて制動停止距離の短縮を図るオフロード用ABS制御を実行したり、駆動輪の路面に対するスリップ率が所定値を超えた場合に、そのスリップ率を予め設定された目標スリップ率に近づけるように駆動輪の駆動力を制御することにより、駆動輪のスリップ率の増大防止を図る所謂トラクション制御を実行したり、アクセルペダル76を踏んだときのエンジン12のスロットル弁88が開く速度を遅らせることにより、車速Vのコントロール性向上を図るスロットル開速度遅延制御を実行したり、或いは、傾斜センサ等により一定以上の傾斜が検知されるとブレーキペダル68が踏み戻されてから数秒間の間は制動状態を保持することにより、上り坂での発進時においてブレーキペダル68からアクセルペダル76に踏み換える際の突然の後退防止を図る登坂発進補助制御を実行したりする。
したがって、オフロード走行制御手段136では、自動変速機22のギヤ段を第1速ギヤ段よりも高速側のギヤ段すなわち第2速ギヤ段乃至第6速ギヤ段に切り換えて走行するスノー路面モードが選択されているときには、車両の前進方向の発進に際して、自動変速機22のギヤ段を複数の前進ギヤ段のうち第1速ギヤ段よりも高速側のギヤ段たとえば第1速ギヤ段の次に低速側に設定された第2速ギヤ段に切り換えるようになっている。すなわち、オフロード走行制御手段136は、スノー路面モードが選択されているときには、自動変速機22のギヤ段を第2速ギヤ段に切り換えた後に車両を発進させる2速発進走行制御を行うものである。
また、例えば通常路面モードが選択されたときには、オフロード走行制御手段136は、自動変速機22のギヤ段を全ての前進ギヤ段すなわち第1速ギヤ段乃至第6速ギヤ段を用いて自動変速を行うように変速制御手段132に対して指令を行い、また、エンジン出力制御手段130における要求スロットル開度θTH *の算出に際しては、図8に示すアクセル開度Accと要求スロットル開度θTH *との予め設定された関係のうち実線で示す通常路面モード時の方を用いるようにエンジン出力制御手段130に対して指令を行う。
なお、オフロード走行制御手段136は、オフロード走行選択スイッチセンサ100から供給される前記オフロード走行選択スイッチ98において「NORMAL」または「SNOW」が選択されたことを表す信号に基づいて、スノー路面モードおよび通常路面モードのどちらが選択されているかを判定する。
2速発進走行制御手段138は、2速発進選択スイッチ106の作動状態においては、発進時の運転者によるアクセル操作に応答して発生する駆動トルクを低減させるために、車両の前進方向の発進に際して自動変速機22のギヤ段を第2速ギヤ段に切り換えるように変速制御手段132に対して指令を行う。なお、2速発進走行制御手段138においては、オフロード走行制御手段136においてオフロード走行制御が実行されていないと判定されたとき、すなわち通常路面モードが選択されてスノー路面モードが選択されていないと判定されたときに、2速発進選択スイッチ106により2速発進走行制御が選択され得るようになっており、また、第2発進走行制御の実行中にオフロード走行制御手段136においてスノー路面モードが選択されたと判定されたときには、第2発進走行制御の実行が終了させられるようになっている。
なお、2速発進走行制御手段138は、2速発進選択スイッチセンサ108から供給される上記2速発進走行制御が選択されたことを表す信号に基づいて、2速発進走行制御が選択されているか否かを判定する。
微低速走行制御手段140は、微低速走行選択スイッチ102の操作に基づいて作動状態が切り換えられるものであり、例えば、オフロード走行制御手段136により通常路面モードが選択されていると判定され、車速Vを表す信号に基づいて車両が停止状態であると判定され、シフトレバー94の操作位置PSHを表す信号に基づいてそのシフトレバー94の操作位置PSHが自動変速走行指令位置「D」或いは手動変速走行指令位置「M」であると判定されたときなどの微低速走行制御開始条件が成立すると、自動変速機22のギヤ段を第1速ギヤ段に固定するように変速制御手段132に対して指令を行い、また、車速Vが微低速走行選択スイッチ102によりたとえば1km/h乃至5km/h程度に設定された微低速目標車速Vmとなるように駆動輪の駆動力および制動力を制御するための指令をエンジン制御手段132およびホイールブレーキ制御手段134に対して行う。このとき、エンジン制御手段132およびホイールブレーキ制御手段134においては、車速Vと微低速目標車速Vmとの差に応じてスロットル開度θTHおよびホイールブレーキ62のブレーキ油圧を調整するフィードバック制御が行われるので、運転者によるアクセル操作がなくても、微低速で車両が走行させられる。
また、微低速走行制御手段140は、微低速走行選択スイッチ102の操作により作動状態とされたときに、例えば、オフロード走行制御手段136によりスノー路面モードが選択されていると判定され、車速Vを表す信号に基づいて車両が停止状態であると判定され、シフトレバー94の操作位置PSHを表す信号に基づいてそのシフトレバー94の操作位置PSHが自動変速走行指令位置「D」或いは手動変速走行指令位置「M」であるときなどの微低速走行制御開始条件が成立すると、自動変速機22のギヤ段を第1速ギヤ段よりも高速側のギヤ段、たとえば第2速ギヤ段に固定するように変速制御手段132に対して指令を行い、また、車速Vが微低速目標車速Vmとなるようにエンジン制御手段132およびホイールブレーキ制御手段134に対して指令を行う。また、微低速走行制御手段140は、微低速走行制御の実行により自動変速機22のギヤ段を第1速ギヤ段に固定しているときにオフロード走行制御手段136においてスノー路面モードが選択されたと判定されたときには、自動変速機22のギヤ段を第2速ギヤ段に固定するように変速制御手段132に対して指令を行う。
なお、微低速走行制御手段140は、微低速走行選択スイッチセンサ104から供給される上記微低速走行制御が選択されたことを表す信号に基づいて、微低速走行制御が選択されたか否かを判定し、また、微低速走行選択スイッチセンサ104から供給される微低速目標車速Vmを表す信号に基づいて、微低速目標車速Vmの設定値を取得する。
図11および図12は、電子制御装置82の信号処理によって実行される制御作動の要部を説明するフローチャートである。これらのフローチャートは、オフロード走行制御および微低速走行制御を統合的に実行するための統合制御の一連の手順、およびクロール制御の一連の手順を示したフローチャートであって、たとえば数msec〜数十msecの所定の周期ごとにそれぞれのルーチンが同時並行にて繰り返し実行される。
先ず、図11について説明する。図11において、先ず、オフロード走行制御手段136に対応するステップS1(以下、ステップを省略する)では、オフロード走行選択スイッチセンサ100からの信号に基づいて、オフロードガイダンスが作動中であるか否か、すなわちオフロード走行制御が実行中であるか否かが判定される。
S1の判定が否定される場合には、本ルーチンが終了させられるが、肯定される場合には、2速発進走行制御手段138に対応するS2において、2速発進走行制御の実行状態を切り換えるための2速発進選択スイッチ106が無効とされる。
次いで、オフロード走行制御手段136に対応するS3では、オフロード走行選択スイッチセンサ100からの信号に基づいて、オフロード走行選択スイッチ98において選択されている走行路面モードが、車両発進時において自動変速機22のギヤ段を第2速ギヤ段に切り換える2速発進走行制御を行うものであるか否か、すなわち自動変速機22のギヤ段を第2速ギ段乃至第6速ギヤ段を用いて自動変速制御を行うように指令する走行路面モードとしてスノー路面モードが選択されているか否かが判定される。
S3の判定が肯定される場合には、微低速走行制御手段140に対応するS4において、微低速走行選択スイッチセンサ104から供給される上記微低速走行制御が選択されたことを表す信号に基づいて微低速走行制御が選択されたと判定され、且つ微低速走行制御開始条件が成立したと判定された場合には、微低速走行制御の実行が許可されて自動変速機22のギヤ段が第2速ギヤ段に切り換えられて、本ルーチンが終了させられる。本実施例では、例えば、車速Vを表す信号に基づいて車両が停止状態であると判定され、シフトレバー94の操作位置PSHを表す信号に基づいてそのシフトレバー94の操作位置PSHが自動変速走行指令位置「D」或いは手動変速走行指令位置「M」であると判定されたときに、微低速走行制御開始条件が成立していると判定される。
S3の判定が否定される場合には、微低速走行制御手段140に対応するS5において、微低速走行選択スイッチセンサ104から供給される上記微低速走行制御が選択されたことを表す信号に基づいて微低速走行制御が選択されたと判定され、且つ微低速走行制御開始条件が成立したと判定された場合には、微低速走行制御の実行が許可されて自動変速機22のギヤ段が第1速ギヤ段に切り換えられて、本ルーチンが終了させられる。
続いて、図12について説明する。図12において、先ず、微低速走行制御手段140に対応するS10では、微低速走行選択スイッチセンサ104からの信号に基づいて、微低速走行制御が作動中であるか否か、すなわち微低速走行選択スイッチ102がオン状態であるか否かが判定される。
S10の判定が肯定される場合には、本ルーチンが終了させられるが、肯定される場合には、微低速走行制御手段140に対応するステップS11において、微低速走行制御開始条件が成立しているか否かが判定される。
S11の判定が否定される場合には、本ルーチンが終了させられるが、肯定される場合には、微低速走行制御手段140に対応するS12において、車速Vが微低速走行選択スイッチ102により設定された微低速目標車速Vmとなり且つその微低速目標車速Vmに維持されるように、車速Vと微低速目標車速Vmとの差に応じてスロットル開度θTHおよびホイールブレーキ62のブレーキ油圧を調整するフィードバック制御が行われて、本ルーチンが終了させられる。
上述のように、本実施例の車両の走行制御装置によれば、自動変速機22のギヤ比を最も高いギヤ比としての第1速ギヤ比(最低速側ギヤ比)に固定するとともに、車速Vが予め設定された微低速目標車速Vmに維持されるように駆動輪の駆動力および制動力を制御する微低速走行制御手段140を備えた車両の走行制御装置であって、オフロード走行選択スイッチ98の操作に基づいて設定され、自動変速機22のギヤ比を第1速ギヤ比よりも低いギヤ比(高速側のギヤ比)に切り換えて発進走行するスノー路面モード(高速側ギヤ比発進走行モード)を少なくとも有し、路面状況に応じた走行モードを選択するオフロード走行制御手段136を備え、スノー路面モードの実行中においては、微低速走行制御手段140による微低速走行制御を、自動変速機22のギヤ比を第1速ギヤ比よりも低いギヤ比(高速側のギヤ比)として実行させることから、車速Vを予め設定された微低速目標車速Vmに維持する微低速走行制御と、自動変速機22のギヤ比を第1速ギヤ比よりも低いギヤ比に切り換えて発進走行するスノー路面モードを有するオフロード走行制御とを、同時に実行することができる。すなわち、例えば低摩擦路の岩石路や急勾配坂道などにおいて、駆動輪のスリップを防止しつつ微妙な速度調整を行いながら走行することができ、アクセル操作およびブレーキ操作から解放されて運転が容易化される。
また、走行路面モードが実行される場面すなわち低摩擦路の路面状況においては、自動変速機22のギヤ比が第2速ギヤ段であっても充分な駆動を得ることができ、また、微低速走行制御中において、一定の微低速を維持するための駆動力よりも運転者のアクセルペダル操作からの要求駆動力の方が大きくなった場合に、車両の飛び出し感が発生することを防止することができる。
また、本実施例の車両の走行制御装置によれば、走行路面モードの実行中でない場合は、微低速走行制御手段140による第1速ギヤ比への切り換え要求が許可されることから、駆動輪のスリップを防止する必要がない路面状況においては自動変速機22を第1速ギヤ比に切り換えることにより充分に駆動力を引き出すことができるので、例えば急斜面や起伏の激しい路面であっても車速Vを予め設定された微低速目標車速Vmに維持しつつ走行することができる。
また、本実施例の車両の走行制御装置によれば、自動変速機22は、最も高いギヤ比に設定された第1速ギヤ段を含む第1速ギヤ段乃至第6速ギヤ段(複数の前進ギヤ段)を有する有段式自動変速機であって、オフロード走行制御手段136は、走行路面モードが選択されているときには、車両の前進方向の発進に際して、その自動変速機22のギヤ段を第1速ギヤ段乃至第6速ギヤ段のうち第1速ギヤ段の次に高いギヤ比(低速側)に設定された第2速ギヤ段に切り換えるものであることから、最も高いギヤ比に設定された第1速ギヤ段ではなく第2速ギヤ段に切り換えて発進する2速発進走行制御が行われるので、低摩擦路の発進時における駆動輪のスリップを防止することができる。
また、本実施例の車両の走行制御装置によれば、車両発進時の自動変速機22のギヤ段を第2速ギヤ段とする2速発進選択スイッチ106を備え、オフロード走行選択スイッチ98によってオフロード走行制御手段136の作動が選択された場合には、2速発進選択スイッチ106が無効化されることから、例えば微低速走行制御とオフロード走行制御の走行路面モードとが実行中であって自動変速機22が第2速ギヤ段に固定されているときに、2速発進選択スイッチ106の操作により第2速ギヤ段の固定が解除されて自動変速機22が第1速ギヤ段に切り換えられることがないので、運転者の意図しない車両の飛び出し感の発生を防止することができる。
また、本実施例の車両の走行制御装置によれば、2速発進選択スイッチ106が操作されている場合には、微低速走行制御手段140による第1速ギヤ段への切り換え要求に拘わらず、自動変速機22のギヤ段が第2速ギヤ段とされることから、2速発進選択スイッチ106により車両発進時の自動変速機22のギヤ段を第2速ギヤ段とする2速発進走行制御が実行されているときには、その2速発進走行制御が微低速走行制御よりも優先して実行されるので、運転者の意図しない車両の飛び出し感の発生を防止することができる。
以上、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明したが、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、別の態様でも実施され得る。
例えば、前述の実施例において、自動変速機22は、有段式自動変速機とされたが、これに限られず、例えば、有段変速モードを有する無段式自動変速機であってもよい。また、その無段式自動変速機はベルト式など機械的に実現されるものであってもよいし、電動機によって電気的に実現されるものであっても良い。
また、前述の実施例において、自動変速機22のギヤ段は、微低速走行制御手段140によって最も高いギヤ比(最低速ギヤ比)に設定された第1速ギヤ段に固定されたが、自動変速機22が前記無段式自動変速機であるなどの場合において、必ずしも最も高いギヤ比のギヤ段に固定される必要はなく、最低速側のギヤ比に設定されたギヤ段であればよい。
また、前述の実施例において、オフロード走行制御手段136は、車両のオフロード走行を補助するオフロード走行制御を行う走行モードとして、路面状況が圧雪路や凍結路などの低摩擦路(低μ路)である場合に好適に選択されるスノー路面モードを備えていたが、これに限らず、その他の走行モードとして、例えば砂地モードや泥地モード、或いは岩石路モードなどが設けられてもよい。そして、これらの走行モードにおいては、例えば、車両の前進走行時において自動変速機22のギヤ比を第1速ギヤ比よりも低いギヤ比に切り換えることにより、駆動輪の駆動力を抑制させて走行時における駆動輪のスリップ防止を図るスノー路面モード走行制御を実行させたり、砂利道などの路面状況が悪い道や急な下り坂などを低速で走行中、前輪に一定の間隔で自動的に強くブレーキをかけてタイヤを敢えてロックさせることにより、前輪を砂利や土などの軟らかい路面にめり込ませて制動停止距離の短縮を図るオフロード用ABSを実行させたり、駆動輪の路面に対するスリップ率が所定値を超えた場合に、そのスリップ率を予め設定された目標スリップ率に近づけるように駆動輪の駆動力を制御することにより、駆動輪のスリップ率の増大防止を図る所謂トラクション制御を実行したり、アクセルペダル76を踏んだときのエンジン12のスロットル弁88が開く速度を遅らせることにより、車速Vのコントロール性向上を図るスロットル開速度遅延制御を実行させたり、或いは、傾斜センサ等により一定以上の傾斜が検知されるとブレーキペダルが踏み戻されてから数秒間の間は制動状態を保持することにより、上り坂での発進時においてブレーキペダル68からアクセルペダル76に踏み換える際の突然の後退防止を図るヒルスタートアシスト制御を実行させたりすることが考えられる。この際、微低速走行制御手段140においては、上記他の走行モードが自動変速機22のギヤ比を第1速ギヤ比よりも低いギヤ比に切り換えて走行する走行モードである場合、スノー路面モードと同様に、オフロード走行制御の実行中に上記他の走行モードが選択されているときに微低速走行制御の実行が選択された際や、或いは微低速走行制御の実行中においてオフロード走行制御が実行されて上記他の走行モードが選択された際には、自動変速機22のギヤ段が第1速ギヤ段よりも高速側の第2速ギヤ段に固定される。
また、前述の実施例において、オフロード走行制御手段136は、悪路走行を補助するための例えばスノー路面モードが実行されていないときに実行される通常路面モードを備えていたが、たとえば、スノー路面モードのみ、或いはそのスノー路面モードに加えて悪路走行を補助するための上述の砂地モード等の他の走行路面モードが備えられ、オフロード走行制御を実施しないときには非作動となるように構成されていてもよい。そして、走行路面モードを選択するスイッチに加えて、オフロード走行制御手段136の作動状態を切り換えるオンオフスイッチが設けられてもよい。
また、前述の実施例においては、オフロード走行選択スイッチ98や微低速走行選択スイッチ102としてダイヤル式スイッチが用いられ、2速発進選択スイッチ106としてシーソー式スイッチが用いられたが、これに限られず、例えば押しボタン式のスイッチ、択一的にのみ押した状態が保持可能な2つの押しボタン式のスイッチ、レバー式スイッチ、スライド式スイッチ等の少なくとも複数の操作位置に択一的に切り換えられるスイッチであればよい。また、前記スノー路面モードおよび通常路面モードに相当する走行モードに加えて、他の走行モードを有する場合には、前記スイッチによってそれら複数の走行モードが切り換えられるようにしてもよい。また、スイッチに替えて或いは加えて、手動操作に因らず運転者の音声や足の操作に反応して走行モードが択一的に切り換えられる装置等が設けられてもよい。あるいは、車両に設けられたマルチインフォメーションディスプレイ等の画面上に設けられたスイッチをタッチパネル等によって操作するものであってもよい。
また、前述の実施例において、図11の統合制御ルーチンは、変速走行制御手段132、オフロード走行制御手段136、微低速走行制御手段140などのいずれの手段の中に設けられていてもよいし、独立した手段として設けられてもよい。
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、その他一々例示はしないが、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づいて種々変更、改良を加えた態様で実施することができる。