JP2010257989A - リチウム二次電池及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract


【課題】 ケイ素及び/またはケイ素合金を含む活物質粒子を含む負極を用いたリチウム二次電池において、充放電容量が大きく、サイクル特性に優れ、充放電による活物質粒子の多孔質化を抑制することができ、充放電後の電極の厚みの増加を少なくすることができるリチウム二次電池を得る。

【解決手段】 ケイ素及び/またはケイ素合金を含む活物質粒子とバインダーとを含む合剤層を導電性金属箔からなる集電体の表面上で焼結して配置した負極と、正極と、非水電解質とを備え、非水電解質に二酸化炭素を溶解させたことを特徴としている。

【選択図】 図1

Description

本発明は、リチウム二次電池及びその製造方法に関するものである。
近年、高出力及び高エネルギー密度の新型二次電池の1つとして、非水電解液を用い、リチウムイオンを正極と負極との間で移動させて充放電を行うリチウム二次電池が利用されている。
このようなリチウム二次電池用負極として、リチウムと合金化する材料を負極活物質として用いたものが検討されている。リチウムと合金化する材料としては、例えばケイ素材料が検討されている。しかしながら、ケイ素材料等のリチウムと合金化する材料は、リチウムを吸蔵・放出する際に、活物質の体積が膨張・収縮するため、充放電に伴い活物質が微粉化したり、活物質が集電体から脱離する。このため、電極内の集電性が低下し、充放電サイクル特性が悪くなるという問題があった。
本出願人は、このような問題を解決するリチウム二次電池用負極として、ケイ素及び/またはケイ素合金を含む活物質粒子とバインダーとを含む合剤層を集電体の表面上に配置した後、焼結して得られるリチウム二次電池用負極を提案している(特許文献1)。
一方、炭素材料または金属リチウムなどを負極活物質としたリチウム二次電池においては、非水電解質に二酸化炭素を溶解させること、または電池缶内に二酸化炭素を封入することが提案されている(特許文献2〜12)。
国際公開第02/21616号パンフレット 米国特許第4853304号明細書 特開平6−150975号公報 特開平6−124700号公報 特開平7−176323号公報 特開平7−249431号公報 特開平8−64246号公報 特開平9−63649号公報 特開平10−40958号公報 特開2001−307771号公報 特開2002−329502号公報 特開2003−86243号公報
本出願人が提案している上記リチウム二次電池は、充放電容量が大きく、サイクル特性に優れる電池であるが、充放電の繰り返しにより負極の活物質粒子が多孔質化し、負極の厚みが増加するという問題があった。
本発明の目的は、ケイ素及び/またはケイ素合金を含む活物質粒子を含む負極を用いたリチウム二次電池であって、充放電容量が大きく、サイクル特性に優れ、充放電による活物質粒子の多孔質化を抑制することができ、充放電後の電極の厚みの増加を少なくすることができるリチウム二次電池及びその製造方法を提供することにある。
本発明のリチウム二次電池は、ケイ素及び/またはケイ素合金を含む活物質粒子とバインダーとを含む合剤層を導電性金属箔からなる集電体の表面上で焼結して配置した負極と、正極と、非水電解質とを備えるリチウム二次電池であり、非水電解質に二酸化炭素を溶解させたことを特徴としている。
本発明における非水電解質への二酸化炭素の溶解は、意図的に非水電解質に二酸化炭素を溶解させることを意味している。すなわち、通常のリチウム二次電池の製造工程において、不可避的に非水電解質に溶解される二酸化炭素の溶解は含まれない。二酸化炭素は、一般に非水電解質の溶媒に溶解される。従って、溶質を溶解した非水電解質に二酸化炭素を溶解させてもよいし、予め二酸化炭素を溶解させた溶媒に溶質を溶解して非水電解質を調製してもよい。
非水電解質に二酸化炭素を溶解させることにより、充放電反応に伴って生じる活物質粒子の多孔質化を抑制することができる。従って、充放電による活物質粒子の層の厚み増加を少なくすることができ、リチウム二次電池の体積エネルギー密度を高めることができる。
ケイ素及び/またはケイ素合金を含む活物質粒子とバインダーとを含む合剤層を導電性金属箔からなる集電体の表面上で焼結して得られる負極は、充放電容量が大きく、充放電サイクル特性に優れている。本発明者らは、このような負極において、充放電反応を繰り返すと、活物質粒子の表面からその内部に向かって、徐々に多孔質化が生じることを見出した。このような多孔質化により、電極の厚みが増加し、体積エネルギー密度が低下する。このような活物質における多孔質化は、活物質であるケイ素の不可逆反応により、ケイ素が変質することによって生じるものであると考えられる。
本発明に従い、非水電解質に二酸化炭素を溶解させておくことにより、活物質粒子の多孔質化を抑制することができる。このため、電極の厚みの増加を少なくすることができ、体積エネルギー密度を高めることができる。非水電解質に二酸化炭素を溶解させておくことにより、活物質粒子の多孔質化を抑制できる理由の詳細は明らかでないが、粒子の表面に、リチウムイオン伝導性の高い安定な膜が形成されるためであると考えられる。
本発明において、負極の焼結は、非酸化性雰囲気下で行うことが好ましい。
本発明において、非水電解質に二酸化炭素を溶解させる量は、0.001重量%以上であることが好ましく、さらに好ましくは0.01重量%以上であり、さらに好ましくは0.05重量%以上であり、さらに好ましくは0.1重量%以上である。通常は、非水電解質に二酸化炭素を飽和するまで溶解させることが好ましい。ここで、二酸化炭素の溶解量には、不可避的に非水電解質に溶解されている二酸化炭素は含まれない。すなわち、通常の製造工程で非水電解質中に溶解する二酸化炭素は含まれない。従って、上記二酸化炭素の溶解量は、例えば、二酸化炭素を溶解させた後の非水電解質の重量と、二酸化炭素を溶解させる前の非水電解質の重量を測定することにより求めることができる。具体的には、以下の式により求めることができる。
非水電解質中の二酸化炭素の溶解量(重量%)=〔(二酸化炭素を溶解させた後の非水電解質の重量)−(二酸化炭素を溶解させる前の非水電解質の重量)〕/(二酸化炭素を溶解させた後の非水電解質の重量)×100
本発明においては、電池内部の空隙に二酸化炭素が含まれていることが好ましい。電池内部の空隙は、例えばセパレータを介して正極と負極とを対向させて形成した電極体と、電池外装体との間に形成される。この空隙には、例えば電池を組み立てる際に二酸化炭素雰囲気下で行うことにより、あるいは電解質中に溶解した二酸化炭素が電解質から放出されることにより二酸化炭素を含ませることができる。充放電に伴い電解質内の二酸化炭素が消費された場合には、この空隙中の二酸化炭素が電解質に溶解し、電解質内の二酸化炭素を補給することができる。
本発明においては、非水電解質にフッ素を含有する化合物が含まれていることが好ましい。このような化合物が非水電解質中に含有されることにより、サイクル特性をさらに向上させることができる。
フッ素を含有する化合物としては、フッ素含有リチウム塩及びフッ素含有溶媒などを挙げることができる。
フッ素含有リチウム塩としては、LiPF6、LiBF4、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2、LiN(C25SO2)2、LiN(CF3SO2)(C49SO2)、LiC(CF3SO2)3、LiC(C25SO2)3、LiAsF6、LiXFy(式中、XはP、As、Sb、B、Bi、Al、Ga、またはInであり、XがP、AsまたはSbのときyは6であり、XがB、Bi、Al、Ga、またはInのときyは4である)、リチウムペルフルオロアルキルスルホン酸イミドLiN(Cm2m+1SO2)(Cn2n+1SO2)(式中、m及びnはそれぞれ独立して1〜4の整数である)、及びリチウムペルフルオロアルキルスルホン酸メチドLiC(Cp2p+1SO2)(Cq2q+1SO2)(Cr2r+1SO2)(式中、p、q及びrはそれぞれ独立して1〜4の整数である)などが挙げられる。
フッ素含有溶媒としては、ブチレンカーボネート及びプロピレンカーボネートなどの環状カーボネート、並びにジメチルカーボネート及びジエチルカーボネートなどの鎖状カーボネートの水素原子をフッ素原子に置換した化合物が挙げられる。例えば、プロピレンカーボネートの水素原子をフッ素原子で置換したトリフルオロメチル化プロピレンカーボネート、1,1,1−トリフルオロジエチルカーボネート(CF3CH2OCOOCH2CH3)、トリフルオロエチルメチルカーボネート(CF3CH2OCOOCH3)などが挙げられる。また、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタンなどのエーテル系溶媒や、γ−ブチロラクトンなどの環状エステル等の水素原子をフッ素原子で置換した化合物を用いてもよい。このようなものとして、例えば、ビス1,2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エタン(CF3CH2OCH2CH2OCH2CF3)などが挙げられる。
非水電解質の溶質としてフッ素含有リチウム塩を用いる場合、フッ素含有リチウム塩は、非水電解質に対して0.1〜2モル/リットルの濃度となるように添加することが好ましい。また、リチウム塩の総量は0.5〜2モル/リットルであることが好ましい。濃度が0.1モル/リットル未満である場合には、フッ素を含有することによる効果が十分に得られないため好ましくない。また、リチウム塩の総量が0.5モル/リットル未満の場合は、非水電解質のリチウムイオン伝導性が十分に得られないため好ましくない。また、濃度が2モル/リットルを超える場合には、非水電解質の粘度が上がり、非水電解質のイオン伝導性が低くなるため、また低温時において塩が析出するため好ましくない。
非水電解質の溶媒にフッ素含有化合物を用いる場合には、全溶媒中において1体積%以上用いることが好ましい。濃度が1体積%未満である場合には、フッ素を含有することによる効果が十分に得られない場合がある。
また、本発明においては、電解液に対し難溶性であるフッ素含有化合物を、予めセパレータに含有させておいてもよい。また、負極合剤層中に、フッ素含有化合物を予め添加しておいてもよい。このようなフッ素含有化合物としては、例えばフッ化リチウムなどが挙げられる。
負極合剤層中にフッ素含有化合物を添加する場合には、フッ素含有化合物を全合剤量に対し0.05〜5重量%添加することが好ましい。0.05重量%よりも少ないと、フッ素を含有することによる効果が十分に得られない場合がある。また、5重量%よりも多いと、活物質層内の抵抗が大きくなるため好ましくない。
本発明において用いる活物質粒子としては、ケイ素及び/またはケイ素合金の粒子が挙げられる。ケイ素合金としては、ケイ素と他の1種以上の元素との固溶体、ケイ素と他の1種以上の元素との金属間化合物、ケイ素と他の1種以上の元素との共晶合金などが挙げられる。合金の作製方法としては、アーク溶解法、液体急冷法、メカニカルアロイング法、スパッタリング法、化学気相成長法、焼成法などが挙げられる。特に、液体急冷法としては、単ロール急冷法、双ロール急冷法、及びガスアトマイズ法、水アトマイズ法、ディスクアトマイズ法などの各種アトマイズ法が挙げられる。
また、本発明において用いる活物質粒子としては、ケイ素及び/またはケイ素合金の粒子表面を金属等で被覆したものを用いてもよい。被覆方法としては、無電解めっき法、電解めっき法、化学還元法、蒸着法、スパッタリング法、化学気相成長法などが挙げられる。粒子表面を被覆する金属としては、集電体として用いる金属箔と同じ金属であることが好ましい。金属箔と同じ金属を被覆することにより、焼結の際の集電体との結合性が大きく向上し、さらに優れた充放電サイクル特性を得ることができる。
本発明において用いる活物質粒子には、リチウムと合金化する材料からなる粒子が含まれていてもよい。リチウムを合金化する材料としては、ゲルマニウム、錫、鉛、亜鉛、マグネシウム、ナトリウム、アルミニウム、ガリウム、インジウム及びこれらの合金などが挙げられる。
本発明において用いる活物質粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、効果的な焼結を行うためには、100μm以下であることが好ましく、さらに好ましくは50μm以下、最も好ましくは10μm以下である。活物質粒子の粒子径が小さいほど、良好なサイクル特性が得られる傾向にある。また、合剤層に添加して用いる導電性粉末の平均粒子径も、特に限定されるものではないが、100μm以下であることが好ましく、さらに好ましくは50μm以下であり、最も好ましくは10μm以下である。
平均粒子径の小さい活物質粒子を用いることにより、充放電反応でのリチウムの吸蔵・放出に伴う活物質粒子の体積の膨張・収縮の絶対量が小さくなるため、充放電反応時の電極内での活物質粒子間の歪みの絶対量も小さくなるので、バインダーの破壊が生じず、電極内の集電性の低下を抑制することができ、良好な充放電特性を得ることができる。
また、上述のように、本発明においては、非水電解質に二酸化炭素を溶解させておくことにより、活物質粒子の表面に、リチウムイオン伝導性の高い安定な膜が形成されると思われるが、平均粒子径の小さい活物質粒子を用いることにより、このリチウムイオン伝導性の高い膜が合剤層中に緻密に存在することになる。従って、緻密なリチウムイオン伝導経路が合剤層中に形成されるため、電極内の充放電反応の分布の均一性がさらに向上すると考えられる。このため、活物質内でのリチウムの吸蔵・放出に伴う体積変化量の偏りにより発生する歪みによる活物質の割れが抑制されるので、活物質粒子における新生面の発生も抑制され、充放電特性をさらに向上させることができる。
また、活物質粒子の粒度分布は、できる限り狭いことが好ましい。幅広い粒度分布であると、粒度が大きく異なる活物質粒子間において、リチウムの吸蔵・放出に伴う体積の膨張・収縮の絶対量に大きな差が存在することになるため、合剤層内で歪みが生じ、バインダーの破壊が生じる。このため、電極内の集電性が低下し、充放電サイクル特性が低下する。
本発明における集電体は、その表面の算術平均粗さRaが、0.2μm以上であることが好ましい。このような算術平均粗さRaの表面を有する集電体を用いることにより、合剤層と集電体との接触面積を大きくすることができ、合剤層と集電体との密着性を向上させることができる。このため、電極内の集電性をさらに向上させることができる。集電体の両面に合剤層を配置する場合には、集電体の両面の算術平均粗さRaが0.2μm以上であることが好ましい。
算術平均粗さRaは、日本工業規格(JIS B 0601−1994)に定められている。算術平均粗さRaは、例えば、表面粗さ計により測定することができる。
本発明において、集電体の厚みは特に限定されるものではないが、10〜100μmの範囲であることが好ましい。
本発明において、集電体表面の算術平均粗さRaの上限は、特に限定されるものではないが、集電体の厚みが10〜100μmの範囲であることが好ましいので、集電体表面の算術平均粗さRaの上限は実質的には10μm以下であることが好ましい。
本発明における集電体は、導電性金属箔からなる。このような導電性金属箔としては、例えば、銅、ニッケル、鉄、チタン、コバルト等の金属またはこれらの組み合わせからなる合金のものを挙げることができる。特に、活物質材料中に拡散しやすい金属元素を含有するものが好ましい。このようなものとして、銅元素を含む金属箔、特に銅箔または銅合金箔が挙げられる。銅は、熱処理によって活物質であるケイ素材料中に拡散しやすいため、集電体と活物質材料との密着性が焼結により向上することが期待できる。また、このような焼結による集電体と活物質材料の密着性の向上を目的とする場合、活物質と接する集電体表面に銅元素を含む層が存在する金属箔を集電体として用いればよい。従って、銅以外の金属元素からなる金属箔を用いる場合には、その表面に銅または銅合金層を形成することが好ましい。
銅合金箔としては、耐熱性銅合金箔を用いることが好ましい。ここで、耐熱性銅合金とは、200℃1時間の焼鈍後の引張強度が300MPa以上である銅合金を意味している。このような耐熱性銅合金としては、例えば、表1に挙げたものを使用することができる。
Figure 2010257989
上述のように、本発明において用いる集電体は、その表面に大きな凹凸を有することが好ましい。このため、耐熱性銅合金箔表面の算術平均粗さRaが十分に大きくない場合には、その箔表面に電解銅または電解銅合金を設けることにより、その表面に大きな凹凸を設けてもよい。電解銅層及び電解銅合金層は、電解法により形成することができる。
また、本発明においては、集電体の表面に大きな凹凸を形成するため、粗面化処理を施してもよい。このような粗面化処理としては、気相成長法、エッチング法、及び研磨法などが挙げられる。気相成長法としては、スパッタリング法、CVD法、蒸着法などが挙げられる。エッチング法としては、物理的エッチングや化学的エッチングによる方法が挙げられる。研磨法としては、サンドペーパーによる研磨やブラスト法による研磨などが挙げられる。
本発明において、合剤層の厚みXは、集電体の厚みY及びその表面の算術平均粗さRaと、5Y≧X、及び250Ra≧Xの関係を有することが好ましい。合剤層の厚みXが、5Yまたは250Raを超える場合、合剤層が、集電体から剥離する場合がある。
合剤層の厚みXは、特に限定されるものではないが、1000μm以下が好ましく、さらに好ましくは10μm〜100μmである。
本発明においては、合剤層に導電性粉末を混合することができる。導電性粉末を添加することにより、活物質粒子の周囲に導電性粉末による導電性ネットワークが形成されるので、電極内の集電性をさらに向上させることができる。導電性粉末としては、上記集電体と同様の材質のものを好ましく用いることができる。具体的には、銅、ニッケル、鉄、チタン、コバルト等の金属またはこれらの組み合わせからなる合金または混合物である。特に、金属粉末としては銅粉末が好ましく用いられる。また、導電性カーボン粉末も好ましく用いることができる。
合剤層への導電性粉末の添加量は、活物質粒子との合計重量の50重量%以下であることが好ましい。導電性粉末の添加量が多過ぎると活物質粒子の混合割合が相対的に少なくなるので、電極の充放電容量が小さくなる。
本発明において用いるバインダーは、焼結のための熱処理後も完全に分解せずに残存しているものが好ましい。熱処理後もバインダーが分解せずに残存していることにより、焼結による活物質粒子と集電体間及び活物質粒子間の密着性の向上に加え、バインダーによる結着力も加わり、密着性をさらに高めることができる。また、算術平均粗さRaが0.2μm以上の金属箔を集電体として用いる場合、集電体の表面の凹凸部分にバインダーが入り込むことにより、バインダーと集電体の間にアンカー効果が発現し、さらに密着性が向上する。このため、リチウムの吸蔵・放出の際の活物質の体積の膨張・収縮による集電体からの活物質層の脱離を抑制することができ、良好な充放電サイクル特性を得ることができる。
本発明におけるバインダーとしては、ポリイミドが好ましく用いられる。ポリイミドとしては、熱可塑性ポリイミド、熱硬化性ポリイミドが挙げられる。なお、ポリイミドは、ポリアミド酸を熱処理することによっても得ることができる。
ポリアミド酸の熱処理により得られるポリイミドは、ポリアミド酸が熱処理により脱水縮合してポリイミドとなるものである。ポリイミドのイミド化率は80%以上のものが好ましい。イミド化率とは、ポリイミド前駆体(ポリアミド酸)に対する生成したポリイミドのモル%である。イミド化率80%以上のものは、例えば、ポリアミド酸のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶液を100〜400℃の温度で1時間以上熱処理することにより得ることができる。例えば、350℃で熱処理する場合、熱処理時間が約1時間でイミド化率80%となり、約3時間でイミド化率は100%となる。
本発明においては、焼結のための熱処理後もバインダーは完全に分解せずに残存していることが好ましいので、バインダーとしてポリイミドを用いる場合は、ポリイミドが完全に分解しない600℃以下で焼結処理を行うことが好ましい。
本発明において、合剤層中のバインダーの量は、合剤層の総重量の5重量%以上であることが好ましい。また、バインダーの占める体積は、合剤層の総体積の5%以上であることが好ましい。合剤層におけるバインダー量が少な過ぎると、バインダーによる電極内の密着性が不十分となる場合がある。また、合剤層中のバインダー量が多過ぎると、電極内の抵抗が増加するため、初期の充電が困難になる場合がある。従って、合剤層中のバインダー量は総重量の50重量%以下であることが好ましく、バインダーの占める体積は、合剤層の総体積の50%以下であることが好ましい。
本発明の他の局面に従うリチウム二次電池は、充放電により表面から内部に向かって多孔質化が進行する活物質粒子とバインダーとを含む合剤層を導電性金属箔からなる集電体の表面上に配置した負極と、正極と、非水電解質とを備えるリチウム二次電池であり、非水電解質に二酸化炭素を溶解させたことを特徴としている。
充放電により表面から内部に向かって多孔質化が進行する活物質粒子としては、ケイ素粒子、ケイ素合金粒子などが挙げられる。非水電解質に二酸化炭素を溶解させることにより、充放電による活物質粒子の多孔質化を抑制することができ、充放電による電極の厚みの増加を抑制することができる。このため、電池の体積エネルギー密度を高めることができる。
本発明のリチウム二次電池に用いる非水電解質の溶媒は、特に限定されるものではないが、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネートなどの環状カーボネートや、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどの鎖状カーボネートが挙げられる。非水電解質の溶媒中に環状カーボネートが存在する場合、活物質粒子の表面において、リチウムイオン導電性に優れた良質の被膜が特に形成されやすいため、環状カーボネートが好ましく用いられる。特に、エチレンカーボネート及びプロピレンカーボネートが好ましく用いられる。また、環状カーボネートと鎖状カーボネートの混合溶媒を好ましく用いることができる。このような混合溶媒としては、エチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネートとジエチルカーボネートとを含んでいることが特に好ましい。
また、上記環状カーボネートと、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタンなどのエーテル系溶媒や、γ−ブチロラクトン、スルホラン、酢酸メチル等の鎖状エステル等との混合溶媒も例示される。
また、非水電解質の溶質としては、LiPF6、LiBF4、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2、LiN(C25SO2)2、LiN(CF3SO2)(C49SO2)、LiC(CF3SO2)3、LiC(C25SO2)3、LiAsF6、LiClO4、Li210Cl10、Li212Cl12など及びそれらの混合物が例示される。特に、LiXFy(式中、XはP、As、Sb、B、Bi、Al、Ga、またはInであり、XがP、AsまたはSbのときyは6であり、XがB、Bi、Al、Ga、またはInのときyは4である)と、リチウムペルフルオロアルキルスルホン酸イミドLiN(Cm2m+1SO2)(Cn2n+1SO2)(式中、m及びnはそれぞれ独立して1〜4の整数である)またはリチウムペルフルオロアルキルスルホン酸メチドLiC(Cp2p+1SO2)(Cq2q+1SO2)(Cr2r+1SO2)(式中、p、q及びrはそれぞれ独立して1〜4の整数である)との混合溶質が好ましく用いられる。これらの中でも、LiPF6が特に好ましく用いられる。
さらに電解質として、ポリエチレンオキシド、ポリアクリロニトリルなどのポリマー電解質に電解液を含浸したゲル状ポリマー電解質や、LiI、Li3Nなどの無機固体電解質が例示される。本発明のリチウム二次電池の電解質は、イオン導電性を発現させる溶質としてのリチウム化合物とこれを溶解・保持する溶媒が電池の充電時や放電時あるいは保存時の電圧で分解しない限り、制約なく用いることができる。
本発明のリチウム二次電池の正極材料としては、LiCoO2、LiNiO2、LiMn24、LiMnO2、LiCo0.5Ni0.52、LiNi0.7Co0.2Mn0.12などのリチウム含有遷移金属酸化物や、MnO2などのリチウムを含有していない金属酸化物が例示される。また、この他にも、リチウムを電気化学的に挿入、脱離する物質であれば、制限なく用いることができる。
本発明の製造方法は、上記本発明のリチウム二次電池を製造することができる方法であり、ケイ素及び/またはケイ素合金を含む活物質粒子とバインダーとを含む合剤層を導電性金属箔からなる集電体の表面上に配置し、焼結して負極を作製する工程と、非水電解質に二酸化炭素を溶解させる工程と、負極、正極、及び非水電解質を用いてリチウム二次電池を組み立てる工程とを備えることを特徴としている。
本発明の製造方法においては、負極の焼結を、非酸化性雰囲気下で行うことが好ましい。
非水電解質に二酸化炭素を溶解させる方法としては、非水電解質に二酸化炭素を接触させることにより二酸化炭素を溶解させる方法が挙げられる。このような方法としては、非水電解質に気体状の二酸化炭素を吹き込む方法が挙げられる。この方法により、効率的に容易に二酸化炭素を溶解した非水電解質を得ることができる。その他の方法としては、二酸化炭素中で非水電解質を撹拌する方法、高圧の二酸化炭素を非水電解質に接触させるなどの方法が挙げられる。また、二酸化炭素を発生する物質を非水電解質に添加することにより、非水電解質に二酸化炭素を溶解させてもよい。二酸化炭素を発生する物質としては、例えば、重炭酸塩及び炭酸塩などが挙げられる。また、ドライアイスなどを用いてもよい。
また、二酸化炭素を溶解させた非水電解質を用いて、リチウム二次電池を製造する際、非水電解質中における二酸化炭素の溶解量が安定して制御されていることが好ましい。このため、二酸化炭素を含む雰囲気下でリチウム二次電池を組み立てることが好ましい。例えば、二酸化炭素を溶解させた非水電解質を電池内に注入する工程、及びその後の工程を二酸化炭素を含む雰囲気下で行うことが好ましい。また、二酸化炭素を溶解させた非水電解質を電池内に注入した後に、高圧の二酸化炭素雰囲気下にさらすことによって、二酸化炭素の溶解量を安定させることが好ましい。二酸化炭素の飽和溶解量は、非水電解質の温度によって変化するため、製造工程においては、できるだけリチウム二次電池の温度が変化しないように制御されていることが好ましい。
また、本発明のリチウム二次電池の製造を、二酸化炭素を含む雰囲気下で行うことにより、非水電解質中に二酸化炭素を溶解させてもよい。例えば、封口前の電池を二酸化炭素を含む雰囲気下に放置し、所定時間経過した後封口を行うことにより、非水電解質中に二酸化炭素を溶解させてもよい。
本発明において、合剤層は、活物質粒子をバインダーの溶液中に分散させたスラリーを金属箔集電体の表面上に塗布することにより、金属箔集電体の表面上に配置することができる。
また、本発明の製造方法においては、金属箔集電体の表面上に合剤層を形成した後、焼結する前に、合剤層を金属箔集電体とともに圧延することが好ましい。このような圧延により、合剤層における充填密度が高まり、活物質粒子間の密着性及び合剤層と集電体との密着性を高めることができる。このため、さらに良好な充放電サイクル特性を得ることができる。
本発明における焼結は非酸化性雰囲気下で行われることが好ましく、例えば、真空下または窒素雰囲気下またはアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で行うことができる。また、水素雰囲気などの還元性雰囲気下で行ってもよい。焼結する際の熱処理温度は、金属箔集電体及び活物質粒子の融点以下の温度であることが好ましい。例えば、金属箔集電体として銅箔を用いた場合には、銅の融点である1083℃以下であることが好ましく、さらに好ましくは200〜500℃の範囲内であり、さらに好ましくは300〜450℃の範囲内である。焼結する方法としては、放電プラズマ焼結法や、ホットプレス法を用いてもよい。
本発明によれば、充放電容量が大きく、サイクル特性に優れ、充放電による活物質粒子の多孔質化を抑制することができ、充放電後の電極の厚みの増加を少なくすることができるリチウム二次電池とすることができる。
本発明に従うリチウム二次電池A1の負極の断面のFIB−SIM像を示す図。 本発明に従うリチウム二次電池A1の負極の断面のFIB−SIM像を示す図。 比較電池B1の負極の断面のFIB−SIM像を示す図。 比較電池B1の負極の断面のFIB−SIM像を示す図。 負極のTOF−SIMSによる表面分析結果(正イオン)を示す図。 負極のTOF−SIMSによる表面分析結果(負イオン)を示す図。 本発明に従う実施例において作製したリチウム二次電池を示す平面図。 図7に示すリチウム二次電池の断面を示す断面図。 電解液中の二酸化炭素の溶解量とサイクル寿命との関係を示す図。
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能なものである。
(実験1)
〔負極の作製〕
活物質粒子としての平均粒子径3μmのケイ素粉末(純度99.9%)81.8重量部を、バインダーとしてのポリイミド18.2重量部を含む8.6重量%のN−メチルピロリドン溶液に混合して、負極合剤スラリーとした。
この負極合剤スラリーを、表面の算術平均粗さRaが0.5μmである電解銅箔(厚み35μm)(集電体a1)の片面(粗面)に塗布し乾燥した。得られたものを25mm×30mmの長方形状に切り抜き、圧延した後、アルゴン雰囲気下で400℃30時間熱処理し、焼結して負極とした。焼結体の厚み(集電体を含む)は50μmであった。従って、合剤層の厚みは15μmであり、合剤層の厚み/銅箔表面の算術平均粗さは30であり、合剤層の厚み/銅箔厚みは0.43であった。
また、この負極において、ポリイミドの密度は1.1g/cm3であり、ポリイミドの占める体積は、合剤層の総体積の31.8%であった。
〔正極の作製〕
出発原料として、Li2CO3及びCoCO3を用いて、Li:Coの原子比が1:1となるように秤量して乳鉢で混合し、これを直径17mmの金型でプレスし、加圧成形した後、空気中において800℃24時間焼成し、LiCoO2の焼成体を得た。これを乳鉢で粉砕し、平均粒子径20μmに調製した。
得られたLiCoO2粉末90重量部と、導電剤としての人工黒鉛粉末5重量部を、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン5重量部を含む5重量%のN−メチルピロリドン(NMP)溶液に混合し、正極合剤スラリーを調製した。
この正極合剤スラリーを、集電体であるアルミニウム箔の上に塗布し、乾燥した後、圧延した。得られたものを20mm×20mmの正方形に切り抜き、正極とした。
〔電解液の作製〕
電解液として、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを体積比3:7で混合した溶媒に対し、LiPF6を1モル/リットル溶解して電解液xを作製した。この電解液xを5℃まで冷却し、二酸化炭素雰囲気下で、二酸化炭素ガスを300ml/分の流量でこの電解液xに、電解液の重量が変化しなくなるまで約30分間吹き込んだ。これを25℃まで昇温し、電解液a1とした。
二酸化炭素ガス吹き込み前の電解液の重量と、二酸化炭素ガス吹き込み後の電解液の重量を測定し、電解液a1における二酸化炭素の溶解量を測定したところ、0.37重量%であった。なお、二酸化炭素吹き込み後の電解液の重量は二酸化炭素ガス雰囲気下で測定した。
〔電池の作製〕
上記の正極、負極、及び電解液を、アルミニウムラミネートの外装体内に挿入し、リチウム二次電池A1を作製した。なお、リチウム二次電池は、常温、常圧の二酸化炭素ガス雰囲気下で作製した。
図7は、作製したリチウム二次電池を示す正面図である。図8は、図7のA−A線に沿う断面図である。正極及び負極は、ポリエチレン製多孔質体からなるセパレータを介して対向するように配置され、電極体5として、図8に示すようにアルミニウムラミネートからなる外装体1内に挿入されている。正極にはアルミニウムからなる正極集電タブ3が取り付けられ、負極にはニッケルからなる負極集電タブ4が取り付けられ、これらは外装体1から外部に引き出されている。図7及び図8に示すように、外装体1の周辺は、ヒートシールにより閉口部2が形成されている。
(実験2)
実験1における電解液xに、二酸化炭素ガスを吹き込まずに、5重量%のビニレンカーボネートを添加し電解液b1を作製した。この電解液b1を用い、電池の作製をアルゴン雰囲気下で行ったこと以外は、実験1と同様にして、電池B1を作製した。
〔充放電サイクル特性の評価〕
上記の電池A1及びB1について、充放電サイクル特性を評価した。各電池を、25℃において、電流値14mAで4.2Vまで定電流充電後、電圧4.2Vで電流値0.7mAまで定電圧充電を行った後、電流値14mAで2.75Vまで放電し、これを1サイクルの充放電とした。1サイクル目の放電容量の80%に達するまでのサイクル数を測定し、サイクル寿命とした。結果を表2に示す。なお、各電池のサイクル寿命は、電池A1のサイクル寿命を100とした指数である。
Figure 2010257989
表2から明らかなように、二酸化炭素を溶解させた電解液a1を用いた電池A1は、二酸化炭素を溶解させていない電解液b1を用いた電池B1に比べ、サイクル寿命が長くなっていることがわかる。なお、電解液b1において、ビニレンカーボネートを添加しているのは、二酸化炭素ガスを吹き込まず、かつビニレンカーボネートを添加していない電解液を用いると、サイクル寿命が非常に短くなるため、活物質の多孔質化が観察しにくくなることを考慮したものである。
〔FIB−SIM観察〕
上記の充放電サイクル試験後、電池A1及びB1から負極をそれぞれ取り出し、それぞれの負極の断面を、FIB−SIMで観察した。FIB−SIM観察とは、収束イオンビーム(FIB)で断面が露出するように加工し、この断面を走査イオン顕微鏡(SIM)で観察することを意味している。
図1及び図2は、電池A1の負極のSIM像である。図2は、図1を拡大して示している。図3及び図4は、電池B1の負極のSIM像である。図4は、図3を拡大して示している。なお、断面に対して45度の角度から観察しているので、各図における縦方向の実際の長さは、各図のスケール(図1及び図3は10μm、図2及び図4は1μm)で測定した長さの√2倍になる。従って、電池A1の負極(図1)では、合剤層の厚みが約25μmであり、電池B1の負極(図3)では、合剤層の厚みが約42μmであることがわかる。
図1において、合剤層中の黒い部分は、活物質粒子の多孔質化していない部分であり、白い部分が多孔質化している部分である。従って、電池A1においては、活物質粒子の表面の部分のみが多孔質化していることがわかる。
これに対し、図3に示すように、電池B1の負極においては、黒い部分が少なくなっており、白い部分が多くなっている。従って、電池B1の負極においては、多くの部分が多孔質化していることがわかる。
また、上述のように、電池B1の合剤層の厚みは、電池A1の合剤層の厚みよりも厚くなっており、電池B1の負極においては、活物質粒子が多孔質化することにより、合剤層の厚みが増加していることがわかる。
以上のことから、本発明に従い二酸化炭素を溶解した電解液を用いることにより、活物質粒子の多孔質化を抑制することができ、電極の厚みの増加を抑制できることがわかる。従って、本発明によれば、充放電サイクル後の電池の厚みの増加を抑制することができ、体積エネルギー密度の高い電池とすることができる。
本発明に従い二酸化炭素を溶解した非水電解質を用いることにより、活物質粒子の多孔質化を抑制できる詳細な理由については明らかでないが、二酸化炭素を溶解した非水電解質を用いることにより、活物質粒子の表面に、リチウムイオン伝導性に優れた被膜が形成され、これによって充放電反応に伴う活物質粒子の不可逆的な変質が抑制され、多孔質化を抑制できるものと思われる。
(実験3)
ここでは、サイクル特性に与えるケイ素粉末の平均粒子径の影響について検討した。
実験1において、平均粒子径20μmのケイ素粉末を用いたこと以外は実験1と同様にして電池A2を作製した。また、実験2において、平均粒子径20μmのケイ素粉末を用いたこと以外は実験2と同様にして電池B2を作製した。
これらの電池について、実験2と同様にサイクル特性を評価した。なお、サイクル寿命は、電池A1のサイクル寿命を100とした指数である。表3には、電池A1及びB1のサイクル寿命も併せて示す。
Figure 2010257989
表3から明らかなように、平均粒子径10μm以下であるケイ素粉末を活物質として用いた電池A1は、電池A2に比べ、優れたサイクル特性を示していることがわかる。従って、平均粒子径10μm以下の活物質粉末を用いた場合に、二酸化炭素を溶解した非水電解質を用いることによる充放電特性向上の効果が、より顕著に得られることがわかる。
(実験4)
ここでは、集電体表面の算術平均粗さRaがサイクル特性に与える影響について検討した。
実験1において、集電体a1の代わりに、算術平均粗さRaが異なる電解銅箔を集電体として用いた。具体的には、算術平均粗さRaが0.2μmである電解銅箔、及び算術平均粗さRaが0.17μmである電解銅箔を用いた。これらの集電体を用い、実験1と同様にして、電池A3及びA4を作製した。
上記の各電池について、上記と同様にしてサイクル特性を評価した。なお、サイクル寿命は、電池A1のサイクル寿命を100とした指数である。表4には、電池A1のサイクル寿命も併せて示す。
Figure 2010257989
表4から明らかなように、算術平均粗さRaが0.2μm以上である集電体を用いた電池A1及びA3は、算術平均粗さRaが0.2μm未満である集電体を用いた電池A4に比べ、優れたサイクル特性を示している。これは、算術平均粗さRaが0.2μm以上の集電体を用いることにより、活物質粒子と集電体表面との接触面積が大きくなり、焼結が効果的に起こり、活物質粒子と集電体との密着性が向上したことによるためと考えられる。また、集電体表面に対するバインダーによるアンカー効果がより大きく得られるため、合剤層と集電体間の密着性がさらに向上し、電極内の集電性が向上したためであると考えられる。
(実験5)
ここでは、電極の焼結条件がサイクル特性に与える影響について検討した。
実験1において、電極の熱処理を600℃10時間としたこと以外は、実験1と同様にして電池A5を作製した。
この電池について、上記と同様にサイクル特性を評価した。なお、サイクル寿命は電池A1のサイクル寿命を100とした指数である。表5には、電池A1のサイクル寿命も併せて示す。
Figure 2010257989
表5から明らかなように、600℃100時間で熱処理を行った電池A5は、400℃30時間で熱処理を行った電池A1に比べ、サイクル特性が大きく低下していることがわかる。これは、600℃の熱処理では、バインダーが分解されるためバインダーによる電極内の密着性が大きく低下し、集電性が低下したためであると考えられる。
(実験6)
ここでは、合剤層に添加した導電性粉末がサイクル特性に与える影響について検討した。
合剤層中に、平均粒子径3μmのニッケル粉末をケイ素粉末との合計に対して20重量%となるように添加した以外は、実験1と同様にして電池A6を作製した。
この電池について、上記と同様にサイクル特性を評価した。なお、サイクル寿命は電池A1のサイクル寿命を100とした指数である。表6には、電池A1のサイクル寿命も併せて示す。
Figure 2010257989
表6から明らかなように、合剤層にニッケル粉末を添加した電池A6の方が、合剤層に導電性粉末を添加していない電池A1に比べ、サイクル特性が向上していることがわかる。これは、導電性粉末が、活物質粒子の周りで導電性ネットワークを形成することにより、合剤層内の集電性が向上したためと考えられる。
上記の実施例においては、負極の集電体の片面のみに合剤層を設けているが、集電体の両面に合剤層を設けてもよい。この場合、集電体の両面に本発明に従う凸部が形成されていることが好ましい。
〔TOF−SIMS観察〕
本出願人は、導電性金属箔からなる集電体の上にスパッタリング法により非晶質シリコン薄膜を堆積して得られる負極においても、充放電サイクルにより、活物質の多孔質化が生じること及びこのような多孔質化が二酸化炭素を溶解した非水電解質を用いることにより抑制されることを見出している。このようなシリコン薄膜の電極を負極として用い、電池X1、電池Y1及び電池Y2を作製した。電池X1は、二酸化炭素を溶解させた非水電解質を用いており、電池Y1は、二酸化炭素を溶解させていない非水電解質を用いており、電池Y2は、二酸化炭素を溶解させず、ビニレンカーボネート(VC)を20重量%添加した非水電解質を用いている。初期充電後の電池X1、Y1及びY2について、TOF−SIMS(飛行時間型二次イオン質量分析)により、負極の表面分析を行った。
図5は正イオンのTOF−SIMSスペクトルであり、図6は負イオンのTOF−SIMSスペクトルである。図5及び図6において、「LiPF6+CO2」は、電池X1のスペクトルを示しており、「LiPF6」は電池Y1のスペクトルを示しており、「LiPF6+VC20wt%」は電池Y2のスペクトルを示している。
図5及び図6から明らかなように、電池X1における負極の表面は、電池Y1及び電池Y2のものに比べ、Siイオン及びSiを含むイオンが大幅に減少し、Li2+イオンが増加していることがわかる。このことから、二酸化炭素を溶解させた非水電解質を用いることにより、ケイ素の表面におけるSiの濃度が大幅に減少していることがわかる。これは、活物質であるケイ素の表面にSiを含まない被膜が形成されたことによるものと思われる。この被膜は、リチウムイオン伝導性に優れた安定な被膜であり、このような被膜がケイ素表面に形成されることにより、リチウムイオンがケイ素に吸蔵・放出される充放電の過程において、ケイ素の変質化を抑制し、ケイ素粒子が多孔質化するのを抑制することができるものと考えられる。
また、電池Y1及び電池Y2の負極においては、活物質であるSiを含む被膜が形成されているものと思われる。また、このような被膜の生成が、活物質表面における多孔質化の原因になっているものと推測される。二酸化炭素を溶解させた非水電解質を用いると、このような被膜が形成されないため、活物質の多孔質化が抑制されているものと考えられる。
本発明においても、上記と同様に、活物質粒子の表面にリチウムイオン伝導性に優れた安定な被膜が形成され、これによってリチウムイオンが活物質粒子に吸蔵・放出される充放電の過程において、活物質粒子の変質化を抑制し、活物質粒子における多孔質化を抑制することができるものと思われる。
(実験7)
ここでは、電解液中の二酸化炭素の溶解量がサイクル特性に与える影響について検討した。
〔正極及び負極の作製〕
実験1と同様にして正極及び負極を作製した。
〔電解液の作製〕
実験1と同様にして、電解液xを作製し、この電解液xに実験1と同様にして二酸化炭素ガスを吹き込み、電解液a1を作製した。
アルゴンガス雰囲気下で、電解液xと電解液a1とを、表7に示す体積比で混合し、電解液a2、a3及びa4を作製した。
Figure 2010257989
〔電池の作製〕
実験1と同様にして、電解液a1を用いたリチウム二次電池A1を作製した。
電解液a2を用いた電池A7、電解液a3を用いた電池A8、電解液a4を用いた電池A9、及び電解液xを用いた電池B3については、常圧のアルゴンガス雰囲気下で作製する以外は、実験1と同様にして作製した。
〔充放電サイクル特性の評価〕
上記各電池について、上記と同様にサイクル特性を評価した。評価結果を表8に示す。
なお、サイクル寿命は、電池A1のサイクル寿命を100とした指数である。表8には、電池A1のサイクル寿命も併せて示す。
また、図9には、各電池を用いた電解液中の二酸化炭素溶解量とサイクル寿命との関係を示す。
Figure 2010257989
表8及び図9から明らかなように、二酸化炭素が0.01重量%以上溶解している電解液を用いた電池A1及びA7〜A9は、二酸化炭素が溶解していない電解液xを用いた電池B3に比べ、サイクル寿命が長くなっていることがわかる。また、電解液中の二酸化炭素の溶解量が0.05重量%以上になると、サイクル寿命がその飽和値のほぼ80%を超えることがわかる。さらに、電解液中の二酸化炭素の溶解量が0.1重量%になると、サイクル寿命がその飽和値にほぼ近づくことがわかる。
以上のことから、電解液中の二酸化炭素の溶解量は、0.01重量%以上であることが好ましく、0.05重量%以上であることがさらに好ましく、0.1重量%以上であることがさらに好ましいことがわかる。
(実験8)
ここでは、非水電解質にフッ素を含有することがサイクル特性に与える影響について検討した。
〔電解液の作製〕
エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを体積比3:7の割合で混合した溶媒に、LiPF6を1モル/リットル溶解したものを作製した。これを電解液P0とする。この電解液P0を5℃まで冷却し、二酸化炭素雰囲気下で、300ml/分となるように二酸化炭素ガスをこの電解液に吹き込んだ。電解液の重量が変化しなくなるまで(約30分間)吹き込んだ。これを25℃まで昇温し、電解液P1とした。二酸化炭素ガス吹き込み後の電解液の重量を二酸化炭素ガス雰囲気下で測定し、電解液の重量変化を調べることにより、電解液に溶解している二酸化炭素ガス量を測定したところ、0.37重量%であった。
電解液P0のリチウム塩LiPF6の代わりにLiBF4を用いる以外は、電解液P0と同様に電解液を作製し、電解液B0とした。この電解液B0に電解液P1と同じ方法で二酸化炭素ガスを吹き込み、電解液B1とした。
電解液P0のリチウム塩LiPF6の代わりにLiN(C25SO22を用いる以外は、電解液P0と同様にして電解液を作製し、これを電解液N0とした。この電解液N0に電解液P1と同じ方法で二酸化炭素ガスを吹き込み、電解液N1とした。
電解液P0のリチウム塩LiPF6の代わりにLiClO4を用いる以外は、電解液P0と同様にして電解液を作製し、電解液C0とした。この電解液C0に電解液P1と同じ方法で二酸化炭素ガスを吹き込み、電解液C1とした。
〔電池の作製〕
実験1と同様の正極、負極、及び電解液P1、B1、N1、及びC1を用い、常温及び常圧の二酸化炭素ガス雰囲気下で、リチウム二次電池AP1、AB1、AN1、及びAC1を作製した。
実験1と同様の正極、負極、及び電解液P0、B0、N0、及びC0を用い、常温及び常圧のアルゴンガス雰囲気下で、リチウム二次電池AP0、AB0、AN0、及びAC0を作製した。
〔充放電サイクル特性の評価〕
上記各電池について、充放電サイクル特性を評価した。電池AP1、AB1、AC1、AP0、AB0、及びAC0を、25℃において、電流値14mAで4.2Vまで定電流充電した後、電圧4.2Vで電流値0.7mAまで定電圧充電を行い、その後、電流値14mAで2.75Vまで放電し、これを1サイクルの充放電とした。
定電流充電を4.0Vまで行ったこと以外は上記の充放電と同様にして、電池AN1及びAN0の充放電を行った。
1サイクル目の放電容量の80%に達するまでのサイクル数を測定し、サイクル寿命とした。結果を表9に示す。
なお、表9においてサイクル寿命Aは、電池AP1のサイクル寿命を100とした指数である。また、サイクル寿命Bは、それぞれの電池において電解液に二酸化炭素を含有させた電池のサイクル寿命を100とした指数である。
Figure 2010257989
表9から明らかなように、二酸化炭素が溶解している電解液を用いた電池AP1、AB1、AN1、及びAC1は、二酸化炭素が溶解していない電解液を用いた電池AP0、AB0、AN0、及びAC0に比べ、サイクル寿命が長いことがわかる。特に、フッ素含有リチウム塩を用いた電池AP1、AB1、及びAN1は、フッ素を含有していないリチウム塩を用いた電池AC1に比べ、サイクル寿命向上の割合が大きくなっていることがわかる。このことから、フッ素含有リチウム塩を含むことにより、二酸化炭素による良質な被膜の形成を促進することができるか、あるいは二酸化炭素による被膜をさらに良質な被膜にすることができるものと思われる。これは、充放電に伴うフッ素含有リチウム塩の分解により、フッ化水素などが生成され、これが二酸化炭素に影響を及ぼして良質な被膜が形成されるものと考えられる。このような被膜により、充放電反応に伴う活物質の割合により生じる新生面での被膜の形成に消費されるリチウムイオンの量が減るため、充放電効率の低下が抑制されると考えられる。また、活物質粒子表面で形成される被膜は、リチウムイオン伝導性に優れた被膜であるため、活物質内の充放電反応分布の均一性が向上されると考えられる。このため、活物質内でのリチウムの吸蔵・放出に伴う体積変化の偏りにより発生する歪みが抑制され、充放電効率が向上すると考えられる。
なお、上記各実施例においては、負極集電体の片面にのみ凹凸を有したものを用い、その凹凸面の上に活物質層を配置しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、両面に凹凸を有する集電体を用い、その両面の上に活物質層を配置した負極を用いてもよい。
(実験9)
〔電解液の作製〕
エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)を体積比3:7で混合した溶媒に、LiPF6を1モル/リットル溶解したものを作製した。この電解液をED0とする。
電解液ED0を5℃まで冷却し、二酸化炭素の雰囲気下で、二酸化炭素ガスを300ml/分の流量で、電解液の重量が変化しなくなるまで電解液中に吹き込んだ(30分)。これを25℃まで昇温し電解液ED1とした。二酸化炭素ガス吹き込み後の電解液の重量を二酸化炭素ガス雰囲気下で測定し、二酸化炭素ガス吹き込み前後における電解液の重量変化を調べることにより、電解液に溶解している二酸化炭素のガス量を算出したところ、0.37重量%であった。
電解液中の環状カーボネートとしてプロピレンカーボネート(PC)を用い、鎖状カーボネートとしてジエチルカーボネート(DEC)を用い、それ以外は電解液ED1と同様にして二酸化炭素を溶解させ、電解液PD1を作製した。
電解液中の環状カーボネートとしてプロピレンカーボネート(PC)を用い、鎖状カーボネートとしてメチルエチルカーボネート(MEC)を用い、それ以外は電解液ED1と同様にして二酸化炭素を溶解させ、電解液PM1を作製した。
電解液中の環状カーボネートとしてエチレンカーボネート(EC)を用い、鎖状カーボネートとしてメチルエチルカーボネート(MEC)を用い、それ以外は電解液ED1と同様にして二酸化炭素を溶解させ、電解液EM1を作製した。
電解液中の環状カーボネートとしてエチレンカーボネート(EC)を用い、鎖状カーボネートとしてジメチルカーボネート(DMC)を用い、これらを体積比1:1で混合した溶媒に、上記電解液ED1と同様にしてLiPF6及び二酸化炭素を溶解させ、電解液EDM1を作製した。
電解液PD1、PM1、EM1及びEDM1中に溶解している二酸化炭素のガス量は、それぞれ0.36重量%、0.64重量%、0.54重量%及び0.46重量%であった。
〔電池の作製〕
実験1と同様の正極及び負極を用い、電解液として上記のED0、ED1、PD1、PM1、EM1及びEDM1を用い、実験1と同様にして、リチウム二次電池を作製した。二酸化炭素を溶解させた電解液ED1、PD1、PM1、EM1及びEDM1を用いて電池を作製する場合には、常温及び常圧の二酸化炭素ガス雰囲気下で、正極、負極及び電解液をアルミニウムラミネート外装体内に挿入して作製した。
また、二酸化炭素を溶解していない電解液ED0を用いる場合には、常温及び常圧のアルゴンガス雰囲気下で、アルミニウムラミネート外装体内に正極、負極、及び電解液を挿入して作製した。
電解液ED0を用いた電池をAED0、電解液ED1を用いた電池をAED1、電解液PD1を用いた電池をAPD1、電解液PM1を用いた電池をAPM1、電解液EM1を用いた電池をAEM1、電解液EDM1を用いた電池をAEDM1とした。
以上のようにして作製した各電池の電解液及び二酸化炭素の溶解のあり及びなしを以下の表にまとめて示す。
Figure 2010257989
〔充放電サイクル特性の評価〕
実験1と同様にして、上記の各電池について、充放電サイクル特性を評価した。なお、各電池のサイクル寿命は、電池AED1のサイクル寿命を100とした指数である。結果を表11に示す。
Figure 2010257989
表11に示す結果から明らかなように、環状カーボネートとしてプロピレンカーボネートを用い、鎖状カーボネートとしてジエチルカーボネートを用いた電池APD1が、環状カーボネートとしてエチレンカーボネートを用い、鎖状カーボネートとしてジエチルカーボネートを用いた電池AED1よりも優れたサイクル特性を示している。プロピレンカーボネートは、黒鉛負極の場合には一般に用いられないが、上記のようにケイ素負極を用いる場合には良好な結果を示すことがわかった。これは、プロピレンカーボネートを用いた場合、電解液の粘度が低くなり、電極内に含浸されやすくなるため、ケイ素表面に均質な被膜が形成され、サイクル初期の容量の低下を抑制することができるためであると考えられる。
また、その他の電池APM1、AEM1、及びAEDM1においても、電解液に二酸化炭素を溶解することによりサイクル寿命が改善される効果が認められている。
(参考実験)
〔炭素負極の作製〕
増粘剤であるカルボキシメチルセルロースを水に溶かした水溶液中に、負極活物質として人造黒鉛と、結着剤としてのスチレン−ブタジエンゴムとを、活物質と結着剤と増粘剤の重量比が95:3:2の比率になるようにして加えた後に混練して、負極スラリーを作製した。作製したスラリーを集電体としての銅箔上に塗布した後、乾燥し、その後圧延ローラーを用いて圧延し、集電タブを取り付けることで、負極を作製した。
〔正極の作製〕
LiCoO2粉末90重量部、及び導電剤としての人造黒鉛粉末5重量部を、結着剤としてのポリテトラフルオロエチレン5重量部を含む5重量%のN−メチルピロリドン水溶液に混合し、正極合剤スラリーとした。このスラリーをドクターブレード法により、正極集電体であるアルミニウム箔に塗布した後乾燥し、正極活物質層を形成した。正極活物質を塗布しなかったアルミニウム箔の領域の上に正極タブを取り付け、正極を作製した。
〔非水電解質の作製〕
エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを3:7の体積比で混合した溶液に、LiPF6を1モル/リットルとなるように溶解した液を調製した。
この液にビニレンカーボネートを2重量%添加し、非水電解質c2とした。
非水電解質c2に25℃の温度で30分間二酸化炭素を吹き込み、二酸化炭素の飽和量となるまで溶解させ、これを非水電解質c1とした。二酸化炭素の溶解量は、0.37重量%であった。
非水電解質c1及びc2は、以下の通りである。
非水電解質c1:CO2を溶解させた非水電解質
非水電解質c2:CO2を溶解させていない非水電解質
〔電池の作製〕
上記負極、正極、及び非水電解質を用いて、リチウム二次電池を作製した。
上記の正極、及び負極の間に多孔質ポリエチレンからなるセパレータを挟んで巻回した電極群、及び上記非水電解質を、アルミニウムラミネートからなる外装体内に挿入し、正極集電タブ及び負極集電タブが外に出るように外装体の周囲をヒートシールして、電池を完成させた。
作製した電池の仕様は、表12に示す通りである。
Figure 2010257989
非水電解質c1を用いて作製した電池を電池C1とし、非水電解質c2を用いて作製した電池を電池C2とした。なお、電池C1は、高純度の二酸化炭素ガスの雰囲気中で作製した。
〔充放電サイクル試験〕
上記のようにして作製したリチウム二次電池C1及びC2について、充放電サイクル試験を行った。充放電の条件は、25℃において、電流値600mAで4.2Vまで定電流充電した後、30mAまで4.2Vで定電圧充電を行い、電流値600mAで2.75Vまで放電し、これを1サイクルの充放電とした。500サイクル目の放電容量を1サイクル目の放電容量で割った容量維持率を、表13に示す。また、表13には、500サイクル後の電池の厚みの増加量及びこの量から求めた電極一層当りの活物質の厚みの増加量を示す。
Figure 2010257989
表13に示す結果から明らかなように、炭素材料を負極活物質とする場合には、非水電解質に二酸化炭素を溶解させることによるサイクル劣化の抑制及び電池厚み増加の抑制の効果は、ほとんど得られないことがわかる。
1…外装体
2…閉口部
3…正極集電タブ
4…負極集電タブ
5…電極体

Claims (18)

  1. 充放電により表面から内部に向かって多孔質化が進行するケイ素及び/またはケイ素合金を含む活物質粒子とバインダーとを含む合剤層を導電性金属箔からなる集電体の表面に配置後、焼結された負極と、正極と、非水電解質とを備えるリチウム二次電池において、
    前記非水電解質に二酸化炭素を0.037重量%以上溶解させたことを特徴とするリチウム二次電池。
  2. 前記負極の焼結が、非酸化性雰囲気下で行われることを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池。
  3. 電池内部の空隙に二酸化炭素が含まれていることを特徴とする請求項1または2に記載のリチウム二次電池。
  4. 前記非水電解質が、環状カーボネートを含むことを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のリチウム二次電池。
  5. 前記非水電解質にフッ素を含有する化合物が含まれていることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のリチウム二次電池。
  6. 前記フッ素を含有する化合物が、フッ素含有リチウム塩であることを特徴とする請求項に記載のリチウム二次電池。
  7. 前記フッ素含有リチウム塩が、LiXF(式中、XはP、As、Sb、B、Bi、Al、Ga、またはInであり、XがP、AsまたはSbのときyは6であり、XがB、Bi、Al、Ga、またはInのときyは4である)、またはLiN(C2m+1SO)(C2n+1SO)(式中、m及びnはそれぞれ独立して1〜4の整数である)であることを特徴とする請求項に記載のリチウム二次電池。
  8. 前記活物質粒子の平均粒子径が、10μm以下であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のリチウム二次電池。
  9. 前記集電体表面の算術平均粗さRaが、0.2μm以上であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のリチウム二次電池。
  10. 前記集電体が、銅箔もしくは銅合金箔、または表面に銅層もしくは銅合金層を設けた金属箔であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のリチウム二次電池。
  11. 前記バインダーが、焼結のための熱処理後にも残存していることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のリチウム二次電池。
  12. 前記バインダーが、ポリイミドであることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載のリチウム二次電池。
  13. 前記活物質粒子が、ケイ素粒子であることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載のリチウム二次電池。
  14. 前記合剤層に導電性粉末が混合されていることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載のリチウム二次電池。
  15. 請求項1〜14のいずれか1項に記載のリチウム二次電池を製造する方法であって、
    ケイ素及び/またはケイ素合金を含む活物質粒子とバインダーとを含む合剤層を導電性金属箔からなる集電体の表面上に配置し、焼結して前記負極を作製する工程と、
    前記非水電解質に二酸化炭素を溶解させる工程と、
    前記負極、前記正極、及び前記非水電解質を用いてリチウム二次電池を組み立てる工程とを備えることを特徴とするリチウム二次電池の製造方法。
  16. 前記負極の焼結を、非酸化性雰囲気下で行うことを特徴とする請求項15に記載のリチウム二次電池の製造方法。
  17. 前記非水電解質に二酸化炭素を溶解させる工程が、前記非水電解質に気体状の二酸化炭素を吹き込む工程を含むことを特徴とする請求項15または16に記載のリチウム二次電池の製造方法。
  18. 前記リチウム二次電池を組み立てる工程が、二酸化炭素雰囲気下で前記リチウム二次電池を組み立てる工程を含むことを特徴とする請求項1517のいずれか1項に記載のリチウム二次電池の製造方法。
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