JP2010254597A - 殺菌防カビ性多層塗膜およびその形成方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】基材上にイソチアゾリン系化合物および/またはピリチオン系化合物を含有する下塗り塗料組成物を塗工し、次いで防カビ剤を含有する上塗り塗料組成物を塗工することによって、イソチアゾリン系化合物および/またはピリチオン系化合物を含有する下塗り層と、該下塗り層と接してまたは中塗り層を介して形成された防カビ剤を含有する上塗り層とを含んでなる殺菌防カビ性多層塗膜を得る。
【選択図】 なし
Description
特許文献5には、イソチアゾロン、第四級アンモニウム化合物、および安定剤を含むコーティング組成物が開示されている。該コーティング組成物は、塗料や下塗り等に使用されることが示されている。
また、カルベンダジン(BCM)、チアベンダゾール(TBZ)、オクチルイソチアゾリン(OIT)などの防カビ剤が配合された上塗り塗料組成物が開発され、市販されている。
本発明は、この知見に基づきさらに検討することによって完成するに至ったものである。
(1) イソチアゾリン系化合物および/またはピリチオン系化合物を含有する下塗り層と、該下塗り層と接してまたは中塗り層を介して形成された防カビ剤を含有する上塗り層とを含んでなる殺菌防カビ性多層塗膜。
(2) 前記下塗り層はアニオン性樹脂をさらに含有する前記(1)に記載の殺菌防カビ性多層塗膜。
(3) 前記上塗り層に含まれる防カビ剤が、イソチアゾリン系化合物、ニトロアルコール系化合物、ニトリル系化合物、ジチオール系化合物、フェノール系化合物、フェニルウレア系化合物、カーバメート系化合物、スルファミド系化合物、フタルイミド系化合物、ピリジン系化合物、ピリチオン系化合物、トリアジン系化合物、グアニジン系化合物、トリアゾール系化合物、チアゾール系化合物、およびベンズイミダゾール系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のものである、前記(1)または(2)に記載の殺菌防カビ性多層塗膜。
(4) 前記上塗り層に含まれる防カビ剤が、イソチアゾリン系化合物および/またはベンズイミダゾール系化合物である、前記(1)または(2)に記載の殺菌防カビ性多層塗膜。
(6) 前記下塗り塗料組成物はアニオン性樹脂をさらに含有する前記(5)に記載の殺菌防カビ性多層塗膜の形成方法。
(7) 前記上塗り塗料組成物に含まれる防カビ剤が、イソチアゾリン系化合物、ニトロアルコール系化合物、ニトリル系化合物、ジチオール系化合物、フェノール系化合物、フェニルウレア系化合物、カーバメート系化合物、スルファミド系化合物、フタルイミド系化合物、ピリジン系化合物、ピリチオン系化合物、トリアジン系化合物、グアニジン系化合物、トリアゾール系化合物、チアゾール系化合物、およびベンズイミダゾール系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のものである前記(5)または(6)に記載の殺菌防カビ性多層塗膜の形成方法。
(8) 前記上塗り塗料組成物に含まれる防カビ剤が、イソチアゾリン系化合物および/またはベンズイミダゾール系化合物である、前記(5)または(6)に記載の殺菌防カビ性多層塗膜の形成方法。
本発明の殺菌防カビ性多層塗膜を用いると、基材に塩素剤やホルマリン剤といった有害な薬品を使用するような養生を行う必要が無くなる。このことから、本発明の殺菌防カビ性多層塗膜を用いると、簡便かつ安全に防カビ塗装ができ、また塗工期間の短縮化に寄与する。しかも、本発明の殺菌防カビ性多層塗膜は、長期間に亘って優れた殺菌防カビ作用を発揮し続ける。
本発明の殺菌防カビ性多層塗膜は、基材上にイソチアゾリン系化合物および/またはピリチオン系化合物を含有する下塗り塗料組成物を塗工することによって下塗り層を形成する工程と、該下塗り層の上にまたは下塗り層の上に形成された中塗り層の上に防カビ剤を含有する上塗り塗料組成物を塗工することによって上塗り層を形成する工程とを含む方法によって容易に形成できる。
[殺菌防カビ性多層塗膜]
本発明の殺菌防カビ性多層塗膜は、イソチアゾリン系化合物および/またはピリチオン系化合物を含有する下塗り層と、該下塗り層と接してまたは中塗り層を介して形成された防カビ剤を含有する上塗り層とを含んでなるものである。
本発明の殺菌防カビ性多層塗膜の下塗り層は、イソチアゾリン系化合物および/またはピリチオン系化合物(これらを総称して活性成分Aということがある。)を含有するものである。イソチアゾリン系化合物およびピリチオン系化合物は防カビ剤の一種である。
アニオン性樹脂は、分子内にアニオン残基を有する樹脂である。アニオン残基としては、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基などが挙げられる。アニオン残基は、塩基で中和することにより負に荷電する性質(アニオン性)と、親水性とを樹脂に付与する。アニオン性樹脂の本体部分(アニオン残基以外の部分)は、特に制限されず、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、などが挙げられる。
アニオン性樹脂として、例えば、塗膜の耐候性、平滑性に優れる点から、カルボキシル基を有するアクリル樹脂またはカルボキシル基を有するポリウレタン樹脂、カルボキシル基および水酸基を有するアクリル樹脂またはカルボキシル基および水酸基を有するポリウレタン樹脂が挙げられる。
下塗り層におけるアニオン性樹脂の含有量は、通常1〜30重量%、好ましくは2〜20重量%である。アニオン性樹脂の含有量が少なすぎると塗膜の強度が不足しがちである。逆にアニオン性樹脂の含有量が多すぎると塗工時の作業性が悪化する傾向がある。
顔料分散剤としては、ベントナイト、金属石けん(アルカリ金属以外の脂肪酸金属塩、たとえばステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、リノレン酸、亜麻仁油脂肪酸、トール油脂肪酸、オクチル酸等の脂肪酸と、Li、Mg、Ca、Ba、Co、Cu、Mn、Pb、Sn、Zn、Zr、Al、Fe、Cr、Ce、Mo、Ni等の金属との組み合わせ)、水添ひまし油ワックス、ジベンジリデンソルビトール等が挙げられる。
造膜助剤としては、金属(コバルト、マンガン、カルシウム等)、金属硫酸化物(硫酸コバルト、硫酸マンガン等)、ナフテン酸、オレイン酸、2−エチルヘキサン酸等が挙げられる。
皮張防止剤としてはメチルエチルケトオキシム、ブチルアルドオキシム、シクロヘキサノンオキシム、フェノール化合物[2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)、カテコール、グアイアコール等]、ジペンテン等が挙げられる。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤[2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)等];硫黄系酸化防止剤[ジラウリル3,3’−チオジプロピオネート(DLTDP)、ジステアリル3,3’−チオジプロピオネート(DSTDP)等];リン系酸化防止剤[トリフェニルホスファイト(TPP)、トリイソデシルホスファイト(TDP)等];アミン系酸化防止剤[オクチル化ジフェニルアミン、N−n−ブチル−p−アミノフェノール、N,N−ジイソプロピル−p−フェニレンジアミン等]等が挙げられる。
下塗り塗料組成物は、塗工作業の容易さや基材への浸透性等の観点から、下塗り塗料組成物中の固形分または不揮発成分の含有量が、3〜30重量%であることが好ましい。固形分または不揮発成分の含有量が少なすぎると塗膜の強度が不足しやすい。固形分または不揮発成分の含有量が多すぎると、塗工時の作業性が低下するおそれがある。下塗り塗料組成物は、その粘度が、好ましくは10〜200mPa・s、より好ましくは10〜100mPa・sである。粘度は公知の粘度計を用いて測定することができる。
塗工後、必要に応じて、下塗り塗料組成物の塗布膜を乾燥(場合によっては、硬化・乾燥)することができる。乾燥は、基材の種類、塗膜の目的等に応じてその条件が異なるが、通常は0〜250℃で1分間〜1日間、好ましくは常温(20℃)〜45℃で10分間〜12時間で行う。
本発明の殺菌防カビ性多層塗膜の上塗り層は、防カビ剤を含有するものである。
上塗り層に含有される防カビ剤は、特に限定されない。例えば、イソチアゾリン系化合物、ニトロアルコール系化合物、ニトリル系化合物、ジチオール系化合物、フェノール系化合物、フェニルウレア系化合物、カーバメート系化合物、スルファミド系化合物、フタルイミド系化合物、ピリジン系化合物、ピリチオン系化合物、トリアジン系化合物、グアニジン系化合物、トリアゾール系化合物、チアゾール系化合物、ベンズイミダゾール系化合物などが挙げられる。
イソチアゾリン系化合物およびピリチオン系化合物としては、下塗り層に含有させる成分として上記に挙げたものが挙げられる。
ニトリル系化合物としては、テトラクロロイソフタロニトリル、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリルなどが挙げられる。
ジチオール系化合物としては、4,5−ジクロロ−1,2−ジチオール−3−オン、4,5−ジブロモ−1,2−ジチオール−3−オンなどが挙げられる。
フェノール系化合物としては、o−フェニル−フェノール、p−クロロメタキシレノールなどが挙げられる。
フェニルウレア系化合物としては、3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチルウレアなどが挙げられる。
スルファミド系化合物としては、N−ジメチルアミノスルホニル−N−トリル−ジクロロフルオロメタンスルファミド(Tolylfluanide)、N−ジメチルアミノスルホニル−N−フェニル−ジクロロフルオロメタンスルファミド(Dichlofluanide)などが挙げられる。
フタルイミド系化合物としては、N−1,1,2,2−テトラクロロエチルチオ−テトラヒドロフタルイミド(Captafol)、N−トリクロロメチルチオ−テトラヒドロフタルイミド(Captan)、N−ジクロロフルオロメチルチオフタルイミド(Fluorfolpet)、N−トリクロロメチルチオフタルイミド(Folpet)などが挙げられる。
トリアジン系化合物としては、ヘキサヒドロ−1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−s−トリアジンなどが挙げられる。
グアニジン系化合物としては、ドデシルグアニジンハイドロクロライド、ドデシルグアニジンハイドロブロマイド、デシルグアニジンハイドロクロライド、1,1’−ヘキサメチレンビス[5−(4−クロロフェニル)ビグアニド]ジハイドロクロライドなどが挙げられる。
チアゾール系化合物としては、2−(4−チオシアノメチルチオ)ベンゾチアゾールなどが挙げられる。
ベンズイミダゾール系化合物としては、メチル−2−ベンズイミダゾールカーバメート(MBC)、2−(4−チアゾリル)ベンズイミダゾールなどが挙げられる。
上塗り層に含有させることができる樹脂としては、フェノール樹脂;アルキド樹脂などのフタル酸樹脂;マレイン酸樹脂;尿素樹脂塗料;メラミン樹脂;酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂などのビニル樹脂;エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、フラン樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ニトロセルロース樹脂、アミノ樹脂、フッ素樹脂などが挙げられる。上塗り層に含有させることができるエラストマーとしては、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、スチレンイソプレンゴム、ニトリルゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴムなどが挙げられる。
ベース塗料としては、例えば、油性塗料、酒精塗料、NAD塗料、電着塗料、粉体塗料、セルロース塗料、合成樹脂塗料、水性塗料、漆系塗料、ゴム系塗料などが挙げられる。これらの中で、合成樹脂塗料、水性塗料が好ましい。
塗工後、必要に応じて、上塗り塗料組成物の塗布膜を乾燥(場合によっては、硬化・乾燥)することができる。乾燥は、基材の種類、塗膜の目的等に応じてその条件が異なるが、通常は0〜250℃で1分間〜1日間、好ましくは常温(20℃)〜45℃で10分間〜12時間で行う。
Aspergillus niger NBRC 6342、Penicillium pinophilum(旧名Penicillium funiculosum) NBRC 6345、Cladosporium cladosporioides NBRC 6348、Aureobasidium pullulans NBRC 6352、Gliocladium virens NBRC 6355、およびRhizopus oryzae ATCC 10404からなる6菌株の胞子懸濁液を定法に従って調製した。
50mm×50mmに裁断した濾紙(型番26、ADVANTEC社製)をアルミ箔で包みオートクレーブ滅菌した。これを、滅菌シャーレに固化されたPDA(potato dextrose agar)培地(「パールコア ポテトデキストロース寒天培地‘栄研’」栄研化学(株)社製)上に置いた。
一般工業製品の防黴試験(JIS−Z−2911 2000年版 かび抵抗性試験方法)の塗料の試験に準じて、前記の胞子懸濁液を培地に接種し、27±1℃の恒温槽に2週間放置することによって前培養を実施した。十分な菌叢の生育および色素産生が見られた濾紙をシャーレから取り出した。金属ヘラを用いて付着した培地と余剰な菌叢を除去した。常温で4時間風乾したものをカビ汚染壁面に見立てた基材サンプルとした。
防カビ剤を含まないアクリルエマルション塗料(「水系 外壁用」防カビ剤抜き、恒和化学社製)100重量部に対して防カビ剤(「バイオカットBM10(有効成分 2−メトキシカルボニルアミノベンツイミダゾールを10(w/w)%含有)」日本曹達社製)0.1重量部を添加しよく混合して、塗料(上塗り塗料組成物)を得た。
下塗り塗料組成物および上塗り塗料組成物に含有させる薬剤を、表1に記載の処方に変えた以外は実施例1と同じ方法で、培養試験用多層塗膜(実施例2〜4)を得た。実施例1と同様にして防カビ効果を調べた。
下塗り塗料組成物および上塗り塗料組成物に含有させる薬剤を、表1に記載の処方に変えた以外は実施例1と同じ方法で、培養試験用多層塗膜(比較例1〜12)を得た。実施例1と同様にして防カビ効果を調べた。塗装膜面にカビが発育し、防カビ効果はみられなかった。
なお、表1中のNAPT40は「ソディウム オマジン 40%」〔有効成分 ナトリウムピリチオン 40(w/w)%含有(アーチ・ケミカルズ・ジャパン社製)〕である。
一方、本発明に従って、イソチアゾリン系化合物および/またはピリチオン系化合物を含有する下塗り層と防カビ剤を含有する上塗り層とを合わせた多層塗膜では、塩素剤やホルマリン剤を用いた養生を行わなくても、防カビ効果が高いことが判る(実施例)。
Claims (8)
- イソチアゾリン系化合物および/またはピリチオン系化合物を含有する下塗り層と、該下塗り層と接してまたは中塗り層を介して形成された防カビ剤を含有する上塗り層とを含んでなる殺菌防カビ性多層塗膜。
- 前記下塗り層はアニオン性樹脂をさらに含有する請求項1に記載の殺菌防カビ性多層塗膜。
- 前記上塗り層に含まれる防カビ剤が、イソチアゾリン系化合物、ニトロアルコール系化合物、ニトリル系化合物、ジチオール系化合物、フェノール系化合物、フェニルウレア系化合物、カーバメート系化合物、スルファミド系化合物、フタルイミド系化合物、ピリジン系化合物、ピリチオン系化合物、トリアジン系化合物、グアニジン系化合物、トリアゾール系化合物、チアゾール系化合物、およびベンズイミダゾール系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のものである、請求項1または2に記載の殺菌防カビ性多層塗膜。
- 前記上塗り層に含まれる防カビ剤が、イソチアゾリン系化合物および/またはベンズイミダゾール系化合物である、請求項1または2に記載の殺菌防カビ性多層塗膜。
- 基材上にイソチアゾリン系化合物および/またはピリチオン系化合物を含有する下塗り塗料組成物を塗工することによって下塗り層を形成する工程と、該下塗り層の上にまたは下塗り層の上に形成された中塗り層の上に防カビ剤を含有する上塗り塗料組成物を塗工することによって上塗り層を形成する工程とを有する殺菌防カビ性多層塗膜の形成方法。
- 前記下塗り塗料組成物はアニオン性樹脂をさらに含有する請求項5に記載の殺菌防カビ性多層塗膜の形成方法。
- 前記上塗り塗料組成物に含まれる防カビ剤が、イソチアゾリン系化合物、ニトロアルコール系化合物、ニトリル系化合物、ジチオール系化合物、フェノール系化合物、フェニルウレア系化合物、カーバメート系化合物、スルファミド系化合物、フタルイミド系化合物、ピリジン系化合物、ピリチオン系化合物、トリアジン系化合物、グアニジン系化合物、トリアゾール系化合物、チアゾール系化合物、およびベンズイミダゾール系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のものである請求項5または6に記載の殺菌防カビ性多層塗膜の形成方法。
- 前記上塗り塗料組成物に含まれる防カビ剤が、イソチアゾリン系化合物および/またはベンズイミダゾール系化合物である、請求項5または6に記載の殺菌防カビ性多層塗膜の形成方法。
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