JP7342462B2 - 浴室の天井部材または壁部材 - Google Patents
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第1の有機系抗菌防カビ剤と第2の有機系抗菌防カビ剤とを含んでなる樹脂フィルムを備え、
前記第1および第2の有機系抗菌防カビ剤は、前記部材の表面に付着する水分に溶出して、前記部材の表面に抗菌防カビ性を付与し、
前記第1の有機系抗菌防カビ剤は、前記浴室の天井部材または壁部材を45℃、240時間の条件で放置した後の、40℃におけるその溶出速度が、前記浴室の天井部材または壁部材を前記条件で放置する前の、40℃におけるその溶出速度と同一であるものであり、
前記第2の有機系抗菌防カビ剤が、10℃および20℃の温度において、前記第1の有機系抗菌防カビ剤よりも溶出速度が常に大きいものである
ことを特徴とする。
図1は、一般的な浴室ユニットおよびその構成部材を示す模式図である。図1に示す態様の浴室ユニット500は、浴槽510、床520、カウンター531、鏡533、シャワー534、壁部材541、542、543、544、および天井部材550を備える。本発明による天井部材または壁部材は、このような浴室ユニットの天井部材550および壁部材541、542、543、544として用いられる。
本発明において、樹脂フィルム10は、主成分としての樹脂と、第1の有機系抗菌防カビ剤および第2の有機系抗菌防カビ剤とを含む樹脂成形体である。ここで、主成分とは、樹脂が樹脂フィルムを好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらにより好ましくは85質量%以上97質量%以下占めることを意味する。樹脂フィルムの樹脂構成量をこのような値とすることで、良好な成形性と外観を有する樹脂フィルムを得ることが可能となる。
樹脂フィルムを構成する樹脂として、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂のいずれを用いてもよい。
本発明において、樹脂フィルムに含まれる第1および第2の有機系抗菌防カビ剤とは、防菌防黴剤辞典-原体編-(日本防菌防黴学会誌,1998,Vol.26)に記載されている、細菌および真菌に対してMIC(最小発育阻止濃度)を有している有機系薬剤を意味する。
抗菌防カビ剤の溶出速度V(g/cm2/h)=樹脂成形体から溶出した抗菌防カビ剤の濃度M(g/ml)×溶媒量L(ml)/(樹脂成形体の面積S(cm2)×溶出時間T(h))
第1の有機系抗菌防カビ剤は、浴室の天井部材または壁部材(以下、単に「部材」ということもある)を45℃に240時間放置(以下、「熱処理(または熱暴露)」ということもある)した場合において、放置後(240時間)の40℃における水への溶出速度が、放置前(0時間)の40℃における水への溶出速度と同一である薬剤である。本発明において、溶出速度が「同一である」とは、放置後(240時間)においても第1の有機系抗菌防カビ剤が安定して溶出されていることを指す。具体的には、下記式で表される熱処理前後における溶出速度の変化率が±100%以下であることを意味する。変化率はより具体的には±70%であり、さらにより具体的には±65%以下である。
変化率(%)=(熱処理した部材の溶出速度-熱処理していない部材の溶出速度)/熱処理していない部材の溶出速度×100
第2の有機系抗菌防カビ剤は、浴室が置かれ得る低温環境において、第1の有機系抗菌防カビ剤よりも溶出速度が常に大きい、つまり水に溶出し易い薬剤である。本発明において、低温環境とは、25℃以下の温度環境、具体的には0℃以上25℃以下の範囲の温度環境、より具体的には10℃以上25℃以下の範囲の温度環境を意味する。第2の有機系抗菌防カビ剤は、低温環境下で水に安定に溶出し、防カビ効果を発揮することができる。
・ ピリジン系のジンクピリチオン(ZPT)およびチアゾリン系のオクチルイソチアゾリノン(OIT)の組み合わせ、
・ イミダゾール系のチアベンダゾール(TBZ)およびチアゾリン系のオクチルイソチアゾリノン(OIT)の組み合わせ、
・ ピリジン系のジンクピリチオン(ZPT)およびチアゾール系のベンゾチアゾールの組み合わせ、
・ エーテル系のトリクロサンおよびチアゾリン系のオクチルイソチアゾリノン(OIT)の組み合わせ、
・ ヨウ素系の3-ヨード-2-プロピニルブチルカルバマート(IPBC)およびチアゾリン系のオクチルイソチアゾリノン(OIT)の組み合わせ、
・ ピリジン系のジンクピリチオン(ZPT)およびチアゾール系のトリシクラゾールの組み合わせ、
・ ピリジン系のジンクピリチオン(ZPT)およびチアゾール系のチオシアノメチルチオベンゾチアゾール(TCMTB)の組み合わせ、
・ ピリジン系のカッパーピリチオン(CPT)およびチアゾリン系のオクチルイソチアゾリノン(OIT)の組み合わせ、
・ ピリジン系のカッパーピリチオン(CPT)およびチアゾール系のベンゾチアゾールの組み合わせ、
・ イミダゾール系のチアベンダゾール(TBZ)およびチアゾール系のベンゾチアゾールの組み合わせ、
・ トリアゾール系のテブコナゾールおよびチアゾリン系のオクチルイソチアゾリノン(OIT)の組み合わせ、
・ トリアゾール系のテブコナゾールおよびチアゾール系のベンゾチアゾールの組み合わせ、
・ ヨウ素系の3-ヨード-2-プロピニルブチルカルバマート(IPBC)およびチアゾール系のベンゾチアゾールの組み合わせ、
・ エーテル系のトリクロサンおよびチアゾール系のベンゾチアゾールの組み合わせ。
有機系抗菌防カビ剤の表面濃度N(g/cm2)=有機系抗菌防カビ剤の溶出速度V(g/cm2/h)×溶出時間T(h))
本発明において、樹脂フィルムは、第1の有機系抗菌防カビ剤および第2の有機系抗菌防カビ剤に加えて、無機系抗菌剤をさらに含んでいてもよい。無機系抗菌剤とは、防菌防黴剤辞典-原体編-(日本防菌防黴学会誌,1998,Vol.26)に記載されている、少なくとも細菌に対してMIC(最小発育阻止濃度)を有している無機系薬剤を意味する。
製造方法
本発明において、樹脂成形体を作製する方法として、下記の方法を用いることができるが、この方法に限定されるものではない。
以下のものを原料として用いた。
・有機系抗菌防カビ剤A:チアゾリン系抗菌防カビ剤であるOIT(2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン)をタルクに1:9の割合で担持させたもの
・有機系抗菌防カビ剤B:ピリジン系抗菌防カビ剤であるZPT(ジンクピリチオン)を無機化合物に1:4の割合で担持させたもの
・有機系抗菌防カビ剤C:チアゾール系抗菌防カビ剤であるベンゾチアゾール
・有機系抗菌防カビ剤D:イミダゾール系抗菌防カビ剤であるTBZ
・有機系抗菌防カビ剤E:エーテル系抗菌防カビ剤であるトリクロサン
・有機系抗菌防カビ剤F:ヨウ素系抗菌防カビ剤であるIPBC
・無機系抗菌剤:銀系抗菌剤(銀イオンと亜鉛イオンを無機化合物に担持させたもの)
・顔料:酸化チタン(表面処理をしたもの。例えば、酸化チタンの表面に、シリカを含有するシリカ層および/またはアルミナを含有するアルミナ層を一種または二種以上備えたもの)
熱可塑性樹脂を加熱溶融し、これに、有機系抗菌防カビ剤Aと、有機系抗菌防カビ剤Bと、無機系抗菌剤とを添加、混合し、ペレット状のマスターバッチを作製した。次に、表1に示すような割合となるように、得られたマスターバッチと、ポリプロピレン樹脂と、顔料とを混合し、カレンダー成形機により厚み145μmの樹脂成形体を作製した。なお、上記熱可塑性樹脂としてポリエチレン樹脂を用いた。
ポリプロピレン樹脂を加熱溶融し、これに、有機系抗菌防カビ剤Aと、有機系抗菌防カビ剤Bと、無機系抗菌剤とを添加、混合し、ペレット状のマスターバッチを作製した。次に、表1に示すような割合となるように、得られたマスターバッチと、ポリプロピレン樹脂と、顔料とを混合し、カレンダー成形機により厚み120μmの樹脂成形体を作製した。
ポリプロピレン樹脂を加熱溶融し、これに、有機系抗菌防カビ剤Aと、有機系抗菌防カビ剤Dを混錬し、圧縮成形して、厚み150μmの樹脂成形体を作製した。
ポリプロピレン樹脂を加熱溶融し、これに、有機系抗菌防カビ剤Cと、有機系抗菌防カビ剤Bを混錬し、圧縮成形して、厚み150μmの樹脂成形体を作製した。
ポリプロピレン樹脂を加熱溶融し、これに、有機系抗菌防カビ剤Aと、有機系抗菌防カビ剤Eを混錬し、圧縮成形して、厚み150μmの樹脂成形体を作製した。
熱可塑性樹脂を加熱溶融し、これに、有機系抗菌防カビ剤Aと、有機系抗菌防カビ剤Bと、無機系抗菌剤を添加、混合し、ペレット状のマスターバッチを作製した。次に、表1に示すような割合となるように、得られたマスターバッチと、ポリプロピレン樹脂と、顔料との混合物、およびポリプロピレン樹脂と顔料との混合物を、押出成形機により共押出しして、厚み40μmの抗菌防カビ剤含有樹脂層、および厚み60μmの抗菌防カビ剤非含有樹脂層が積層された樹脂成形体を作製した。なお、上記熱可塑性樹脂としてポリエチレン樹脂を用いた。また、得られた樹脂成形体の表層は抗菌防カビ剤含有樹脂層である。
熱可塑性樹脂を加熱溶融し、これに、有機系抗菌防カビ剤Aと、有機系抗菌防カビ剤Bと、無機系抗菌剤を添加、混合し、ペレット状のマスターバッチを作製した。次に、表1に示すような割合となるように、ポリプロピレン樹脂と顔料との混合物、および得られたマスターバッチと、ポリプロピレン樹脂と、顔料との混合物を、押出成形機により共押出しして、厚み60μmの抗菌防カビ剤非含有樹脂層、および厚み40μmの抗菌防カビ剤含有樹脂層が積層された樹脂成形体を作製した。なお、上記熱可塑性樹脂としてポリエチレン樹脂を用いた。また、得られた樹脂成形体の表層は抗菌防カビ剤非含有樹脂層である。
ポリプロピレン樹脂を加熱溶融し、これに、有機系抗菌防カビ剤Aと、有機系抗菌防カビ剤Fを混錬し、圧縮成形して、厚み150μmの樹脂成形体を作製した。
熱可塑性樹脂を加熱溶融し、これに、有機系抗菌防カビ剤Bを添加、混合し、ペレット状のマスターバッチを作製した。次に、表1に示すような割合となるように、マスターバッチと、ポリプロピレン樹脂と、顔料とを混合し、カレンダー成形機により厚み120μmの樹脂成形体を作製した。なお、上記熱可塑性樹脂としてポリエチレン樹脂を用いた。
熱可塑性樹脂を加熱溶融し、これに、有機系抗菌防カビ剤Bを添加、混合し、ペレット状のマスターバッチを作製した。次に、表1に示すような割合となるように、マスターバッチと、ポリプロピレン樹脂と、顔料とを混合し、カレンダー成形機により厚み125μmの樹脂成形体を作製した。なお、上記熱可塑性樹脂としてポリエチレン樹脂を用いた。
ポリプロピレン樹脂を加熱溶融し、これに、有機系抗菌防カビ剤Aと、有機系抗菌防カビ剤Cを混錬し、圧縮成形して、厚み150μmの樹脂成形体を作製した。
得られた樹脂成形体を下記の方法により評価した。
樹脂成形体(樹脂フィルム)の厚み
得られた樹脂成形体(実施例1~8および比較例1~3)の厚みは以下の手順で測定した。樹脂成形体において、A4サイズの領域を10個任意に選択した。各領域における、4つの頂点および中心の計5箇所の厚みを、マイクロメーター(精度:0.01mm、日本不二越株式会社製)を用いて測定した。5箇所の厚みの平均値を各領域の厚みとし、10個の領域の厚みの平均値を樹脂成形体の厚みとした。
高温環境(例えば、浴室乾燥機の使用等を想定した場合)における第2の有機系抗菌防カビ剤(OIT)および第1の有機系抗菌防カビ剤(ZPT)の耐熱性および水への溶出性を以下のとおり評価した。
熱劣化サンプルの作製
以下の手順で熱劣化サンプルを作製した。実施例1の樹脂成形体600(2.5cm×2.5cm、厚み145μm)の片面全面に、有機系抗菌防カビ剤を含まずPET樹脂からなる樹脂成形体700(2.5cm×2.5cm、厚み1mm)を、両面テープ(例えば、ナイスタック(ニチバン株式会社製))を用いて接着させ、図3に示すような積層体サンプル800を得た。得られた積層体サンプル800を、有機系抗菌防カビ剤を含む樹脂成形体600が上向き(大気側)になるように樹脂プレート900上に平置きした。積層体サンプル800を載置した樹脂プレート900を45℃の恒温槽の中央に入れ、6日間、10日間、および72日間静置させて、熱劣化サンプルS6、S10およびS72を作製した。一方、積層体サンプル800自体を、非熱処理サンプルS0として使用した。これら熱劣化サンプルS6、S10およびS72並びに非熱処理サンプルS0を用いて下記試験を行った。
ガラス瓶に超純水を5ml入れ、40℃に保温した。熱劣化サンプルS6、S10およびS72並びに非熱処理サンプルS0の有機系抗菌防カビ剤を含む樹脂成形体層側の表面全体(2.5cm×2.5cm)が40℃の温水に接触するように、サンプルを温水面上に浮かせた。蓋をしてガラス瓶を密閉し、サンプルを40℃で1時間静置した。その後、サンプルをガラス瓶から取り出した。次に、ガラス瓶にヘキサン1.5ml(LH)を加えて、蓋をして密閉し、よく撹拌し、水中に溶出したOITをヘキサン中に抽出した。このヘキサン溶液のOITの濃度(OA)をGC/MSにて算出した。なお、ガラス瓶等の実験器具等は、予めアルカリ性洗浄剤(例えば、コンタミノンB 和光純薬工業株式会社製)で清浄化したものを使用した。
VOIT=OS×LH/(S×T)=(OA-OB)×LH/(S×T)
VOIT :樹脂成形体から溶出したOITの溶出速度(g/cm2/h)
OS :樹脂成形体から溶出したOITの濃度(g/ml)=OA-OB
OA :ヘキサン溶液のOITの濃度(g/ml)
OB :操作ブランクのOITの濃度(g/ml)
LH :ヘキサンの量(1.5ml)
S :樹脂成形体面積(2.5×2.5cm2)
T :溶出時間(時間)
熱劣化サンプルS6、S10およびS72並びに非熱処理サンプルS0毎に、ポリプロピレン製のボトルを2本用意し、それぞれに超純水20ml(LW)を入れ、40℃に保温した。サンプル(S6、S10、S0)の有機系抗菌防カビ剤を含む樹脂成形体層側の表面全体(2.5cm×2.5cm)が一方のボトル内の40℃の温水に接触するように、サンプルを温水面上に浮かせた。蓋をして一方のボトルを密閉し、サンプルを40℃で1時間静置した(1回目)。その後、一方のボトルからサンプルを取り出し、1回目に温水に接触させた表面全体が他方のボトル内の40℃の温水に接触するように、サンプルを温水面上に浮かせた。蓋をして他方のボトルを密閉し、サンプルを40℃で1時間静置した(2回目)。その後、サンプルを他方のボトルから取り出し、2回目の接触が行われた他方のボトルに、硝酸の濃度が5vol%となるように超高純度の硝酸を加えた。この硝酸溶液の亜鉛イオンの濃度(ZnA)をICP-MSにて算出した。なお、ポリプロピレン製のボトル等の実験器具等は、予め2mol/L硝酸水溶液で清浄化したものを使用し、更に金属等のコンタミを回避するため、樹脂製ピンセットを使用した。
VZn= ZnS×LW/(S×T)=(ZnA-ZnB)×LW/(S×T)
VZn :樹脂成形体から溶出した亜鉛イオンの溶出速度(g/cm2/h)
ZnS :樹脂成形体から溶出した亜鉛イオンの濃度(g/ml)=ZnA-ZnB
ZnA :硝酸溶液の亜鉛イオンの濃度(g/ml)
ZnB :操作ブランクの亜鉛イオンの濃度(g/ml)
LW :超純水の量(20ml)
S :樹脂成形体面積(2.5×2.5cm2)
T :溶出時間(時間)
VZPT=VZn/Zn原子量×ZPT分子量
実施例1の樹脂成形体を、45℃の雰囲気温度で、6日間、10日間および72日間、熱暴露して得られた熱劣化サンプルにおける、第2の有機系抗菌防カビ剤(OIT)および第1の有機系抗菌防カビ剤(ZPT)の40℃における溶出速度を表2に示す。第2の有機系抗菌防カビ剤(OIT)は、熱処理の前後(例えば、0日目と6日目~10日目との対比)において、溶出速度が約13倍変化した(減少した)。これに対し、第1の有機系抗菌防カビ剤(ZPT)は、熱処理の前後(例えば、0日目と6日目~10日目との対比)において、溶出速度が殆ど変化しなかった。具体的には、溶出速度は僅か約1.05倍~約1.60倍変化した(増加した)。第1の有機系抗菌防カビ剤は、熱処理後も劣化せずつまり、耐熱性を有し、高温環境下で水に安定に溶出することが確認された。
25℃以下の低温環境(例えば、カビの繁殖し易い梅雨時期や秋など)における、第2の有機系抗菌防カビ剤(OIT)および第1の有機系抗菌防カビ剤(ZPT)の水への溶出性を以下のとおり評価した。
ガラス瓶に超純水を5ml入れ、10℃、15℃、20℃または25℃に保温した。第2の有機系抗菌防カビ剤(OIT)のみを含む比較例1の樹脂成形体の片面全体(2.5cm×2.5cm、厚み120μm)が上記の低温水に接触するように、樹脂成形体を低温水面上に浮かせた。蓋をしてガラス瓶を密閉し、樹脂成形体を10℃、15℃、20℃または25℃で、24時間静置した。その後、樹脂成形体をガラス瓶から取り出した。次に、ガラス瓶にヘキサン1.5ml(LH)を加え、蓋をして密閉し、よく撹拌し、水中に溶出したOITをヘキサン中に抽出した。このヘキサン溶液のOITの濃度(OA)をGC/MSにて算出した。なお、ガラス瓶等の実験器具等は、予めアルカリ性洗浄剤(例えば、コンタミノンB 和光純薬工業株式会社製)で清浄化したものを使用した。
VOIT=OS×LH/(S×T)=(OA-OB)×LH/(S×T)
VOIT :樹脂成形体から溶出したOITの溶出速度(g/cm2/h)
OS :樹脂成形体から溶出したOITの濃度(g/ml)=OA-OB
OA :ヘキサン溶液のOITの濃度(g/ml)
OB :操作ブランクのOITの濃度(g/ml)
LH :ヘキサンの量(1.5ml)
S :樹脂成形体面積(2.5×2.5cm2)
T :溶出時間(時間)
ポリプロピレン製のボトルを2本用意し、それぞれに超純水20ml(LW)を入れ、一方のボトルを40℃に、他方のボトルを10℃、15℃、20℃または25℃に保温した。第1の有機系抗菌防カビ剤(ZPT)のみを含む比較例2の樹脂成形体(2.5cm×2.5cm、厚み125μm)の片面全体(2.5cm×2.5cm)が一方のボトル内の40℃の水に接触するように、樹脂成形体を水面上に浮かせた。蓋をして一方のボトルを密閉し、樹脂成形体を40℃で1時間静置した(1回目)。その後、一方のボトルからサンプルを取り出し、1回目に40℃の水に接触させた表面全体が他方のボトル内の10℃、15℃、20℃または25℃に保温した水に接触するように、サンプルを水面上に浮かせた。蓋をして他方のボトルを密閉し、樹脂成形体を10℃、15℃、20℃または25℃で1時間静置した(2回目)。その後、樹脂成形体を他方のボトルから取り出し、2回目の接触が行われた他方のボトルに、硝酸の濃度が5vol%となるように超高純度の硝酸を加えた。この硝酸溶液の亜鉛イオンの濃度(ZnA)をICP-MSにて算出した。
VZn= ZnS×LW/(S×T)=(ZnA-ZnB)×LW/(S×T)
VZn :樹脂成形体から溶出した亜鉛イオンの溶出速度(g/cm2/h)
ZnS :樹脂成形体から溶出した亜鉛イオンの濃度(g/ml)=ZnA-ZnB
ZnA :硝酸溶液の亜鉛イオンの濃度(g/ml)
ZnB :操作ブランクの亜鉛イオンの濃度(g/ml)
LW :超純水の量(20ml)
S :樹脂成形体面積(2.5×2.5cm2)
T :溶出時間(時間)
VZPT=VZn/Zn原子量×ZPT分子量
低温環境下における第2の有機系抗菌防カビ剤(OIT)および第1の有機系抗菌防カビ剤(ZPT)の溶出速度を表3に示す。第1の有機系抗菌防カビ剤(ZPT)は、10℃の水、15℃の水、20℃の水、および25℃の水いずれにも溶出し難く、一方、第2の有機系抗菌防カビ剤(OIT)は、10℃の水、15℃の水、20℃の水、および25℃の水いずれにも溶出することができた。つまり、第2の有機系抗菌防カビ剤(OIT)は、第1の有機系抗菌防カビ剤(ZPT)に比べて、低温環境下(10℃、15℃、20℃、および25℃)において、水への溶出速度が常に大きく、低温水に対してカビの繁殖を抑制可能な量溶出することが確認された。第2の有機系抗菌防カビ剤(OIT)にあっては、例えば、25℃の水への溶出速度は、15℃の水への溶出速度に対して、9倍を超えて大きく、20℃の水への溶出速度は、10℃の水への溶出速度に対して、7倍を超えて大きかった。
試験片
高温環境下での防カビ性を評価するためのサンプルとして、試験1で作製した熱劣化サンプルS6およびS10、さらに45℃の恒温槽に21日間静置して作製した熱劣化サンプルS21並びに非熱処理サンプルS0を用いた。また、実施例2~8の樹脂成形体を用い、試験1と同様の手順で熱劣化サンプルを作製して用いた。さらに、低温環境下での有機系抗菌防カビ剤の溶出性および防カビ性を評価するためのサンプルとして、実施例1~8および比較例1~3の樹脂成形体を用いた。これらサンプルを約1分間、消毒用アルコールに浸漬させ、クリーンベンチ内で30分以上乾燥させ、清浄化処理を行ったものを試験片として用いた。
JIS Z2911プラスチック製品の試験方法Bを参考にして、実施例1~8および比較例1~3の樹脂成形体の高温環境下でのカビ抵抗性について試験を行った。なお、試験に用いるサンプル、備品、試薬等はすべて滅菌済みのものを使用した。
試験カビの前培養および試験胞子液の作製
Cladosporium cladosporioides NBRC6348を、ポテトデキストロース寒天培地の斜面培地に植次ぎ、25℃で7日間培養後、無機塩溶液(JIS Z2911のカビ抵抗性試験法処方)を用いて胞子数を1×106cfu/mlに調整したものを試験胞子液とした。
無機塩溶液に寒天を20g/Lの割合で添加し、更に、D(+)-グルコース(JIS K8824規定)を30±1g/Lの割合で添加し、120±1℃で30分間高圧蒸気滅菌した。その後、必要に応じて、滅菌した0.01mol/L水酸化ナトリウム溶液でpHを6.0~6.5に調整した。ニプロ株式会社製のシャーレに20ml分注し、グルコース添加無機塩寒天培地を作製した。
グルコース添加無機塩寒天培地に試験胞子液を0.1ml滴下し、コンラージで塗り広げた。その上に試験片を載せ、この試験片上に、試験胞子液の液滴を11.1μlずつ等間隔に9滴接種し、温度28℃および相対湿度97%以上の環境で培養した。
試験片上のカビの生育状態を顕微鏡及び目視で下記の判定基準にて判定し、4週間後の判定結果を最終判定結果とした。
判定基準
以下の0~3を合格(表4に○で示した)とし、4および5を不合格(表4に×で示した)とした:
0:肉眼及び顕微鏡でカビの発育が認められない
1:肉眼ではカビの発育が認められないが、顕微鏡ではカビの発育が認められる
2:肉眼でカビの発育が認められ、接種した試験胞子液9滴中3滴未満の液面をカビが覆っている
3:肉眼でカビの発育が認められ、接種した試験胞子液9滴中5滴未満の液面をカビが覆っている
4:菌糸がよく発育し、接種した試験胞子液9滴中5滴以上の液面をカビが覆っている
5:菌糸の発育が激しく、接種した試験胞子液9滴全ての液面をカビが覆っている
試験2と同様に、実施例1~8および比較例1~3の樹脂成形体の低温水への溶出性について試験を行い、以下の基準で評価した。
試験後の樹脂成形体において、少なくとも第二の有機系抗菌防カビ剤の10℃の水への溶出速度が、1×10-10g/cm2/h以上であったものを、低温環境における溶出性の基準1を満たす良好なものと評価し、表4に「○」を付した。さらに、水温が10℃から20℃へ増加するのに伴い、10℃の水への溶出速度に対して20℃の水への溶出速度が2倍以上であったものを、低温環境における溶出性の基準2を満たす良好なものと評価し、表4に「○」を付した。一方、第二の有機系抗菌防カビ剤の10℃の水への溶出速度が、1×10-10g/cm2/h未満であったものを、溶出性基準1を満たさないものと評価し、表4に「×」を付した。また、水温が10℃から20℃へ増加するのに伴い、10℃の水への溶出速度に対して20℃の水への溶出速度が2倍未満であったものを、溶出性基準2を満たさないものと評価し、表4に「×」を付した。
本発明において、少なくとも基準1を満たす樹脂成形体は、低温環境における溶出性試験は合格であり、基準1を満たさないものは、(仮に、基準2を満たしたとしても)不合格である。基準1と基準2を満たした樹脂成形体は、低温環境における溶出性が非常に良好なものと評価した。
Claims (7)
- 樹脂フィルムを備えてなる浴室の天井部材または壁部材であって、
前記樹脂フィルムが、第1の有機系抗菌防カビ剤と第2の有機系抗菌防カビ剤とを含んでなり、
前記第1および第2の有機系抗菌防カビ剤は、前記部材の表面に付着する水分に溶出して、前記部材の表面に抗菌防カビ性を付与し、
前記第1の有機系抗菌防カビ剤は、前記浴室の天井部材または壁部材を45℃、240時間の条件で放置した後の、40℃におけるその溶出速度が、前記浴室の天井部材または壁部材を前記条件で放置する前の、40℃におけるその溶出速度と同一であるものであり、
前記第2の有機系抗菌防カビ剤が、10℃および20℃の温度において、前記第1の有機系抗菌防カビ剤よりも溶出速度が常に大きいものであり、
前記第1および第2の有機系抗菌防カビ剤の組み合わせが、
・ ピリジン系のジンクピリチオン(ZPT)およびチアゾリン系のオクチルイソチアゾリノン(OIT)の組み合わせ、
・ イミダゾール系のチアベンダゾール(TBZ)およびチアゾリン系のオクチルイソチアゾリノン(OIT)の組み合わせ、
・ ピリジン系のジンクピリチオン(ZPT)およびチアゾール系のベンゾチアゾールの組み合わせ、
・ エーテル系のトリクロサンおよびチアゾリン系のオクチルイソチアゾリノン(OIT)の組み合わせ、
・ ヨウ素系の3-ヨード-2-プロピニルブチルカルバマート(IPBC)およびチアゾリン系のオクチルイソチアゾリノン(OIT)の組み合わせ
からなる群から選ばれる少なくとも1種の組み合わせである
ことを特徴とする、浴室の天井部材または壁部材。 - 前記第1および第2の有機系抗菌防カビ剤の組み合わせが、
・ ピリジン系のジンクピリチオン(ZPT)およびチアゾリン系のオクチルイソチアゾリノン(OIT)の組み合わせ、
・ ピリジン系のジンクピリチオン(ZPT)およびチアゾール系のベンゾチアゾールの組み合わせ、
・ エーテル系のトリクロサンおよびチアゾリン系のオクチルイソチアゾリノン(OIT)の組み合わせ、
・ ヨウ素系の3-ヨード-2-プロピニルブチルカルバマート(IPBC)およびチアゾリン系のオクチルイソチアゾリノン(OIT)の組み合わせ
からなる群から選ばれる少なくとも1種の組み合わせである、請求項1に記載の浴室の天井部材または壁部材。 - 前記第1の有機系抗菌防カビ剤および前記第2の有機系抗菌防カビ剤が、それぞれ無機化合物に担持されてなるものである、請求項1または2に記載の浴室の天井部材または壁部材。
- 前記樹脂フィルムが、最表面に配置されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の浴室の天井部材または壁部材。
- 浴室乾燥機をさらに備えてなる浴室の天井部材または壁部材として用いられる、請求項1~4のいずれか一項に記載の浴室の天井部材または壁部材。
- 請求項1~5のいずれか一項に記載の部材を備えてなる、浴室ユニット。
- 浴室乾燥機をさらに備えてなる、請求項6に記載の浴室ユニット。
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