JP7114922B2 - バイオフィルム生成抑制用組成物 - Google Patents
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Description
本発明は、バイオフィルムの付着が低減された成形体を与えることのできるバイオフィルム生成抑制用組成物を提供することを目的とする。
[1] 熱可塑性樹脂(A)と
イソチアゾロン系抗菌・防カビ剤、イミダゾール・チアゾール系抗菌・防カビ剤、アルコール・フェノール系抗菌・防カビ剤、ピリジン・キノリン系抗菌剤およびニトリル系抗菌・防カビ剤からなる群より選ばれる一種以上の抗菌・防カビ剤(B)と
を含み、
前記抗菌・防カビ剤(B)の25℃の水に対する溶解度の常用対数logSが-0.6より小さいバイオフィルム生成抑制用組成物。
[2] [1]に記載のバイオフィルム生成抑制用組成物を含有する成形体。
[3] 熱可塑性樹脂(A)と
イソチアゾロン系抗菌・防カビ剤、イミダゾール・チアゾール系抗菌・防カビ剤、アルコール・フェノール系抗菌・防カビ剤、ピリジン・キノリン系抗菌剤およびニトリル系抗菌・防カビ剤からなる群より選ばれる一種以上の抗菌・防カビ剤(B)とを含み、
前記抗菌・防カビ剤(B)の25℃の水に対する溶解度の常用対数logSが-0.6より小さい組成物のバイオフィルム生成抑制のための使用。
イソチアゾロン系抗菌・防カビ剤、イミダゾール・チアゾール系抗菌・防カビ剤、アルコール・フェノール系抗菌・防カビ剤、ピリジン・キノリン系抗菌剤およびニトリル系抗菌・防カビ剤からなる群より選ばれる一種以上の抗菌・防カビ剤(B)と
を含み、
前記抗菌・防カビ剤(B)の25℃の水に対する溶解度の常用対数logSが-0.6より小さいバイオフィルム生成抑制用組成物である。
熱可塑性樹脂(A)としては、例えば、
ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン;
メチル(メタ)アクリレート重合体、エチル(メタ)アクリレート重合体などのアクリル系・メタクリル系樹脂;
ポリスチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂、アクリロニトリル-アクリルゴム-スチレン樹脂、アクリロニトリル-エチレンゴム-スチレン樹脂、(メタ)アクリル酸エステル-スチレン樹脂、スチレン-ブタジエン-スチレン樹脂、スチレン-ブタジエン共重合体などのスチレン系樹脂;
ナイロン等のポリアミド;
ポリカーボネート;
ポリエステル;
ポリフェニレンオキサイド;
ポリアセタール;
ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどの塩素樹脂;
ポリ酢酸ビニル、エチレン-酢酸ビニル樹脂などの酢酸ビニル系樹脂;
エチレン-(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エチル共重合体などのエチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体およびそのアイオノマー樹脂;
エチレン-(メタ)アクリル酸樹脂およびそのアイオノマー樹脂;
ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール樹脂などのビニルアルコール系樹脂;
セルロース樹脂;
塩化ビニル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー等の熱可塑性エラストマー;
ポリフェニレンサルファイド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトンなどのエンジニアリングプラスチック;
が挙げられる。
本発明に係るバイオフィルム生成抑制用組成物は、熱可塑性樹脂(A)を一種のみ含んでもよく、2種類以上含んでもよい。
本発明に係る組成物中の抗菌・防カビ剤(B)は、25℃の水に対する溶解度の常用対数logSが-0.6よりも小さい抗菌・防カビ剤である。抗菌・防カビ剤(B)のlogSは、好ましくは-1以下であり、より好ましくは-1.5以下である。
logSは、温度25℃、pH6~8である水100gに対して抗菌・防カビ剤(B)が溶解する量(溶解度)S(g/100g)の常用対数であり、logSの数値が小さいほど水に溶解しにくいことを示す。
なおlogSは、コンピュータソフトウェアHansen Solubility Parameter in Practice(HSPiP)を用いることにより、文献値等が知られていない抗菌・防カビ剤(B)に関しても、その化学構造から簡便に推算することができる。本発明における抗菌・防カビ剤(B)のlogSは、HSPiP ver5.0.04によって算出された値を用いた。
エチル-2,4-ジヒドロキシ-6-メチルベンゾエート、メチル-2,4-ジヒドロキシ-3,6-ジメチルベンゾエート、イソプロピル-2,4-ジヒドロキシ-6-メチルベンゾエート、3-メトキシ-5-メチルフェニル-2,4-ジヒドロキシ-6-メチルベンゾエート、エチル-2,4-ジヒドロキシ-3,6-ジメチルベンゾエート、エチル-3-ホルミル-2,4-ジヒドロキシ-6-メチルベンゾエート、イソプロピル-3-ホルミル-2,4-ジヒドロキシ-6-メチルベンゾエート、3-ヒドロキシ-5-メチルフェニル-2,4-ジヒドロキシ-6-メチルベンゾエート、3-ヒドロキシ-5-メチルフェニル-2-ジヒドロキシ-4-メトキシ-6-メチルベンゾエート、3-メトキシ-5-メチルフェニル-2-ヒドロキシ-4-メトキシ-6-メチルベンゾエート、3-クロロ-2,6-ジヒドロキシ-4-メチルベンゾエート、ベンジルパラベンなどのアルコール・フェノール系抗菌・防カビ剤;
1,2-ベンズイソチアゾリン-3オン、2-メチル-5-クロロ-4-イソチアゾロン錯体、オクチルイソチアゾリノン、ジクロロオクチルイソチアゾリノン、エンズイソチアゾリノン、などのイソチアゾロン系抗菌・防カビ剤;
ナリジクス酸、ピリチオン銅、ピリチオン亜鉛などのピリジン・キノリン系抗菌・防カビ剤;
モノあるいはジブロモシアノアセトアミド、などのニトリル系抗菌・防カビ剤;
チアベンダゾール、2-ベンズイミダゾールカルバミン酸メチル、1-(ブチルカルバモイル)-2-ベンズイミダゾールカルバミン酸メチルなどのイミダゾール・チアゾール系抗菌・防カビ剤;
等が挙げられる。
担体としては、例えば、
ゼオライト;
モンモリオナイト;
活性炭;
ハイドロキシアパタイトなどのリン酸カルシウム系化合物;
酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化ジルコニウムなどの酸化物;
窒化ケイ素、窒化チタン、窒化アルミニウム、窒化ジルコニウムなどの窒化物;
炭化ケイ素などの非酸化物セラミックス;
珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、珪藻土などの珪酸塩;
カオリナイト、ベントナイト、軽石、長石、石英などのアルミナ-シリカ系化合物;
などが挙げられる。
本発明に係るバイオフィルム生成抑制用組成物は、抗菌・防カビ剤(B)を一種のみ含有してもよく、2種類以上含有してもよい。
本発明に係る組成物は、さらにクオラムセンシング阻害剤(C)を含有してもよい。
クオラムセンシングの阻害性はクオラムセンシングを誘発する物質により色素を産出する菌や生物発光を示す菌などを用いたバイオアッセイによって測定することができる(例えば、Sensors2013,13,5117-5129)。例えば、C. violaceum CV026などのレポーター株に、クオラムセンシングを誘発するN-ヘキサノイルホモセリンラクトンを添加したプレートに対して、さらに、クオラムセンシング阻害剤であるカフェインを添加した後、保温して菌を培養し、生産された紫色色素(violacein)の量が、カフェインを添加しない場合の紫色色素(violacein)の量に比べ、少ないため、カフェインはクオラムセンシング阻害性を有する、と前記文献に記載されている。クオラムセンシング阻害剤は、例えば、Sensors2013,13,5117-5129に記載の方法に基づき、C. violaceum CV026(レポーター株)に、N-ヘキサノイルホモセリンラクトンを添加したプレートに対して、さらに、当該クオラムセンシング阻害剤を添加した後、保温して菌を培養し、生産された紫色色素(violacein)の量が85%以下である(ただし、クオラムセンシング阻害剤を添加することなく、保温して菌を培養し、生産された紫色色素の量を100%とする)クオラムセンシング阻害剤が好ましい。
オイゲノール、メチルオイゲノール、シンナムアルデヒド、けい皮酸、バニリン、イソバニリン、フェルラ酸、クロロゲン酸、カフェ酸、P-クマル酸、けい皮アルデヒド、けい皮酸メチル、フェニルプロピオン酸、2-メトキシけい皮酸、3-メトキシけい皮酸、4-メトキシけい皮酸、3-ブロモけい皮酸、3-フルオロけい皮酸、3-メチルけい皮酸、4-アセトキシけい皮酸、4-ブロモけい皮酸、4-エトキシけい皮酸、4-フルオロけい皮酸、3,4-ジメトキシけい皮酸、2,3-ジメトキシけい皮酸、2,5-ジメトキシけい皮酸、2,3,4-トリメトキシけい皮酸、3,4,5-トリメトキシけい皮酸、リグニンなどのフェニルプロパノイド;
サリチル酸、バニリン酸、没食子酸、エラグ酸、などの安息香酸類縁体;
1,2,3,4,6-ペンタガロイルグルコース、プニカラギン、ハマメリタンニン、タンニン酸などのタンニン類;
レスベラトール、プテロスチルベンなどのスチルベン類縁体;
クエルセチン、(-)-カテキン、(-)-エピカテキン、(-)-ガロカテキン、(-)-エピガロカテキン、(-)-没食子酸カテキン、(-)-没食子酸エピカテキン、(-)-没食子酸ガロカテキン、(-)-没食子酸エピガロカテキン、ナリンゲニン、フラボン、アピゲニン、クリシン、アカセチン、フラボノール、ケムフェノール、ケルセチン、クェルシトリン、フラバノン、イソサクラネチン、ピノストロビン、エリオジクチオール、シアニジン、マルビジンなどのフラボノイド;
クルクミン、などのジアリールヘプタノイド;
カルバクロール、サルビピソン、アカントスペルモリド、イソリモニン酸、イチャンギン、ベツリン酸、ウルソール酸、ギムネマ酸、プロトアネモニン、オバクノン、デアセチルノミリン酸グルコシド、フィトール、などのテルペノイド;
アリシン、アホエン、スルフォラファン、アリルイソチオシアネート、イベリン、チアゾリジンジオン、などの硫黄含有化合物;
ウンベリフェロン、スコポレチン、などのクマリン誘導体;
クリソファノール、エモジン、シコニン、プルプリン、エンベリン、などのキノン誘導体;
ベルベリン、ケレリトリン、サンギナリン、レセルピン、カフェイン、オロイジン、ピペリン、などのアルカロイド;
アシル化シクロペンチルアミド、などのホモセリンラクトン構造類似体;
ピロガロール、マラバリコンC、タキシフォリン、ロスマリン酸などのフェノール、ポリフェノール類;
ラムノリピッド、トレハロリピッド、ソホロリピッド、セロビオピッド、ビスコシン、サーファクチン、エマルザンなどのクオラムセンシング阻害能を有する界面活性剤;
ピオシアニンなどのフェナジン類;
ピエリシジンA、グルコピエリシジンA、などのユビキノン類縁体;
などが挙げられる。
HSP2=(δD)2+(δP)2+(δH)2 ・・・(1)
δD:London分散力項
δP:分子分極項(双極子間力項)
δH:水素結合項
δD、δP、δHは、例えば、コンピュータソフトウェアHansen Solubility Parameters in Practice(HSPiP)を用いることによって、その化学式から計算することができる。本発明においては、HSPiP ver.5.0.04による計算によって得られた値を使用することができる。
ここで、熱可塑性樹脂(A)、クオラムセンシング阻害剤(C)が2種類以上の構造単位からなる共重合体である場合、上述のプログラムではハンセン溶解度パラメータを直接算出することはできない。そのため、かかる場合には、各構造単位からなる単独重合体のハンセン溶解度パラメータをそれぞれ算出し、得られた複数の単独重合体のハンセン溶解度パラメータを、共重合体中に含まれる構造単位の体積比で平均した値を共重合体のハンセン溶解度パラメータとした。なおここで、「体積比で平均した値」とは、それぞれの構造単位からなる単独重合体のハンセン溶解度パラメータ、δD、δP、δHのそれぞれに、その構造単位の体積分率を乗じた値を、δD、δP、δHのそれぞれについて合計したものをいう。また、ここで、ある構造単位の「体積分率」とは、(当該構造単位の体積)/(共重合体中の構造単位の総体積)を意味する。
HSPAとHSPDとの距離Ra2は、二つの物質のハンセン溶解度パラメータ(HSP)の距離を示す。前記Ra2は、両物質の親和性を表す指標であって、その値が小さいほど、両物質の親和性が高いと言える。
二つの物質αおよびβのそれぞれのハンセン溶解度パラメータHSPαおよびHSPβを、
HSPα=(δDα、δPα、δHα)
HSPβ=(δDβ、δPβ、δHβ)
と仮定すれば、HSPαとHSPβとの距離(Ra)は、次式(2)により計算することができる。
Ra=[4×(δDα-δDβ)2+(δPα-δPβ)2+(δHα-δHβ)2]1/2
・・・(2)
クオラムセンシング阻害剤(C)の担体としては、抗菌・防カビ剤(B)の担体として例示したものが挙げられる。
有機酸類としては、乳酸、コハク酸、リンゴ酸、クエン酸、マレイン酸、マロン酸、エチレンジアミンポリ酢酸、アルカン-1,2-ジカルボン酸、アルケン-1,2-ジカルボン酸、シクロアルカン-1,2-ジカルボン酸、シクロアルケン-1,2-ジカルボン酸、ナフタレンスルホン酸等が挙げられる。
脂肪酸金属類としては、ウンデシレン酸亜鉛、2-エチルヘキサン酸亜鉛、リシノール酸亜鉛等が挙げられる。
金属化合物としては、酸化鉄、硫酸鉄、酸化亜鉛、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、酸化銀、酸化鋼、金属(鉄、銅等)クロロフィリンナトリウム、金属(鉄、銅、コバルト等)フタロシアニン、金属(鉄、銅、コバルト等)テトラスルホン酸フタロシアニン、二酸化チタン、可視光応答型二酸化チタン(窒素ドープ型など)等が挙げられる。
シクロデキストリン類としては、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、そのメチル誘導体、ヒドロキシプロピル誘導体、グルコシル誘導体、マルトシル誘導体等が挙げられる。
多孔質体を構成する成分としては、ポリ不飽和カルボン酸、芳香族系ポリマー、キチン、キトサン、活性炭、シリカゲル、活性アルミナ、ゼオライト、セラミック等が挙げられる。
ポリ不飽和カルボン酸としては、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸が挙げられる。
芳香族系ポリマーとしては、ポリジビニルベンゼン、スチレン-ジビニルベンゼン-ビニルピリジン共重合体、ジビニルベンゼン-ビニルピリジン共重合体が挙げられる。
カチオン界面活性剤としては、4級アンモニウム塩、第1級アミン塩、第2級アミン塩、第3級アミン塩、第4級アミン塩、ピリジン誘導体等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、ベタイン型界面活性剤、カルボン酸誘導体、イミダゾリン誘導体等が挙げられる。
アニオン界面活性剤としては、リン酸アルキル型界面活性剤、硫酸化油、石鹸、硫酸化エステル油、硫酸化アミド油、オレフィンの硫酸化エステル塩類、脂肪アルコール硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩、脂肪酸エチルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、琉拍酸エステルスルホン酸塩、燐酸エステル塩等が挙げられる。
ノニオン界面活性剤としては、多価アルコールの部分的脂肪酸エステル、脂肪アルコールのエチレンオキサイド付加物、脂肪酸のエチレンオキサイド付加物、脂肪アミノ又は脂肪酸アミドのエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールのエチレンオキサイド付加物、多価アルコールの部分的脂肪酸エステルのエチレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
熱可塑性樹脂(A)および抗菌・防カビ剤(B)、並びに必要によりクオラムセンシング阻害剤(C)、およびその他の添加剤を溶融混練した後、冷却することによって得てもよく、溶融混練した後にペレタイザーにてペレットとして調製してもよい。
また、予め熱可塑性樹脂(A)と抗菌・防カビ剤(B)、並びに必要によりクオラムセンシング阻害剤(C)、およびその他の添加剤を溶融混練し、比較的高濃度のマスターバッチを製造した後、さらに熱可塑性樹脂(A)を加えて加熱溶融混練して製造することもできる。
上記の方法で得られた組成物を原料として、成形体とすることができる。
成形体を得る方法は特に限定されず、例えば射出成形法、押出成形法、真空成型法、圧空成形法、プレス成形法などの成形方法が挙げられる。
成形体としては、射出成形体、押出成形体、真空成型体、圧空成形体、プレス成形体、フィルム等が挙げられる。成形体は、単層構造でもよく、多層構造でもよい。
本発明に係る組成物を含有する成形体は、本発明に係るバイオフィルム生成抑制用組成物からなる層と、該層とは異なる層との多層構造体でもよい。多層構造体の場合、本発明に係るバイオフィルム生成抑制用組成物からなる層が、該多層構造体の少なくとも一方の表層である。本発明に係るバイオフィルム生成抑制用組成物からなる層とは異なる層を構成する材料としては、本発明に係るバイオフィルム生成抑制用組成物とは異なる樹脂、金属、紙、皮革等が挙げられる。多層構造体は、本発明に係るバイオフィルム生成抑制用組成物からなる層と、該層とは異なる層とを張り合わせて得ることが可能である。
イソチアゾリン系抗菌・防カビ剤、イミダゾール・チアゾール系抗菌・防カビ剤、アルコール・フェノール系抗菌・防カビ剤、ピリジン・キノリン系抗菌剤およびニトリル系抗菌・防カビ剤からなる群より選ばれる一種以上の抗菌・防カビ剤(B)とを含み、
前記抗菌・防カビ剤(B)の25℃の水に対する溶解度の常用対数logSが-0.6より小さい組成物は、上述のとおり、成形体とし、該成形体を後述のような物品または該物品の部品として使用することにより、該成形体の表面にバイオフィルムが生成することを抑制できる。
食器、各種調理器具、保存容器、浄水ポッド、浄水器、排水口、三角コーナー、シンクの各種部品、貯水ポッド、断熱ポッド、ラップ、キッチンフード、などの台所用部材および台所用品、
洗面台、洗面器、排水栓、ヘアキャッチャー、排水トラップなどの洗面用部材、
浴室壁、浴槽、蛇口、鏡、などの浴室用部材、
トイレ用部材、洗濯用部材、
便座、便座のフタ、便器、トイレ用部材
各種配管、各種パッキン、
貯水タンク、貯水槽、太陽熱温水器、水槽、プール、などの各種貯水物品・設備、
食品用包材、化粧品用包材などの各種包装材料、
換気扇、窓枠、網戸、サッシ、人工大理石などの各種屋内設備、
送電線、アンテナ、屋根材、住宅外壁、窓ガラス、などの屋外設備
エアコン、エアコンドレンパン、各種ホース、空調設備の熱交換器、加湿装置、乾燥器、冷蔵庫、食洗機、食器乾燥機、洗濯機、掃除機、ドリンクサーバー、コーヒーサーバー、電子レンジ、アイロン、スチーマー、アロマディフューザー、ホームクリーニング機、高圧洗浄機、ポット、ウェアラブルデバイス、などの各種電気機器およびその付属する物品、
鼻腔栄養チューブ、創傷接触層、カテーテル、チューブステント、ペースメーカーシェル、心臓弁、整形外科用インプラント、歯周インプラント、歯列矯正器、他の歯列矯正器具、入れ歯、歯冠、フェイスマスク、コンタクトレンズ、眼内レンズ、軟組織インプラント、外科用器具、縫合糸、蝸牛インプラント、鼓室形成チューブ、シャント、術後廃液チューブ、廃液デバイス、気管内チューブ、心臓弁、絆創膏、創傷包帯、他のインプラント可能デバイス、並びに他の留置デバイス、人工皮膚、人工筋肉、などの各種医療用物品、
船舶、ロープ、漁網、漁具、浮き子、ブイ等の漁業部材、火力・原子力発電所の給排水口等の水中構造物、海水ポンプ等の海水利用機器類、メガフロート、湾岸道路、海底トンネル、などの発電設備および港湾・湾岸設備、
運河・水路等の各種海洋土木工事の汚泥拡散防止膜、などの土木設備、
橋梁、道路鏡、看板、交通標識、各種表示装置、広告塔、防音壁、橋梁、ガードレール、トンネル、などの屋外設備
植物ポッド、土壌、灌水チューブ、配管、ビニールハウス、などの農業資材、
テレビ、スマートフォン、タブレットPC、パソコン、タッチパネルディスプレイなどの表示装置、
などが挙げられる。
本実施形態の素材に付着したバイオフィルムの量を測定する方法は、素材にバイオフィルムを形成させる工程、形成したバイオフィルムを定量する工程で構成される。
固体の表面自由エネルギーは、表面自由エネルギーが既知の複数の液体の静的接触角を測定することにより求めることができる。
協和界面科学社製DM-501を用いて、液滴量2ml、θ/2法にて、成形体の接触角を測定した。接触角の測定液体として純水、ヘキサデカン、ジヨードエタンを用いた。各々の液体に対する接触角から、前記の北崎・畑の方法を用いて、表面自由エネルギーを算出した。
25℃の水100gに溶解する量S(g/100g)の常用対数logSは、コンピュータソフトウェアHansen Solubility Parameter in Practice(HSPiP)ver5.0.04を用いて算出した値を用いた。
ハンセン溶解度パラメータは、A User’s Handbook,Second Edition,C.M.Hansen(2007),Taylor and Francis Group,LLC(HSPiPマニュアル)に記載されている式によるハンセン溶解度パラメータであり、コンピュータソフトウェアHansen Solubility Parameters in Practice(HSPiP)ver5.0.04により算出された溶解度パラメータのLondon分散力項δD、分子分極項δP、水素結合項δHを用いて、成分αのハンセン溶解度パラメータHSPαと成分βのハンセン溶解度パラメータHSPβとの距離Raを以下の式にて算出した。
Ra=[4×(δDα-δDβ)2+(δPα-δPβ)2+(δHα-δHβ)2]1/2
[バイオフィルム付着量測定用凍結保存菌株の調製]
バイオフィルム付着量の測定に用いる菌株は、ATCCよりスタフィロコッカス・エピデルミディス(Staphylococcus epidermidis)ATCC35984を入手した。菌株は凍結乾燥アンプルとして提供されるが、継代培養を繰り返すとバイオフィルム形成能が低下する可能性があるため、アンプルから一度液体培養して、そこからグリセロールを凍害防止剤とした凍結保存菌株を多数作製し、1回の測定で凍結保存菌株を使い切りとした。
・前培養用培地(NBRC802培地)
ハイポリペプトン(日本製薬株式会社製)10g、酵母エキス(DIFCO社製)2g、MgSO4・7H2O(ナカライテスク株式会社製)1gを1000mL容メディウム瓶に入れ、次いで超純水1000mLを入れて、各成分を溶解した。pHを7.0に調整した後、オートクレーブを用いて121℃で20分間滅菌し、前培養用培地とした。
・本培養用培地(R2A培地)
R2A培地(日本製薬株式会社製)3.2gを1000mL容メディウム瓶に入れ、次いで超純水1000mLを入れて溶解した。オートクレーブを用いて121℃で20分間滅菌し、バイオフィルム形成用培地とした。
・バイオフィルム染色液(0.2質量%クリスタルバイオレット溶液:CV溶液)
クリスタルバイオレット(ナカライテスク株式会社製)2gを1000mL容メディウム瓶に入れ、次いで超純水1000mLを入れて溶解し、バイオフィルム染色液とした。
・染色バイオフィルム溶出液(2.0質量%ドデシル硫酸ナトリウム溶液:SDS溶液)
ドデシル硫酸ナトリウム(ナカライテスク株式会社製)20gを1000mL容メディウム瓶に入れ、次いで超純水1000mLを入れて溶解し染色バイオフィルム溶出液とした。
オートクレーブ(121℃、20分)で滅菌済みの培養用プラスチックキャップを装着した18φ試験管に前培養用培地を3mL分注した。これに凍結保存菌株を0.03mL接種した。振とう培養機に接種済み試験管を装着し、温度30℃、振とう数200回/分で3日間培養して、前培養液とした。
前培養液の波長660nmでの濁度を分光光度計UV-1800(島津製作所社製:以下、分光光度計)を用いて測定した。本培養用培地1000mLに、濁度が0.01となる液量の前培養液を接種して混合し、本培養液とした。
熱可塑性樹脂(A)からなるシートと、各実施例の組成物からなるシートについて、それぞれ下記バイオフィルム付着試験を行った。それぞれ、20mm×20mm×1mm厚さの試験片を用いて測定を行った。試験片は、表面の汚れを除くために薄めた中性洗剤で洗浄し、表面の雑菌を死滅させるためにエタノールに数秒間浸漬して殺菌した。
滅菌済み50mL容ポリプロピレン製遠沈管(以下、遠沈管)に殺菌済み試験片を入れ、接種済み本培養用培地15mLを分注した。これをエアージャケット式インキュベーター内に設置して30℃で3日間静置培養した。培養後、遠沈管から試験片をピンセットで取り出し、余分な培養液をペーパータオルで吸い取らせた。100mLビーカーに純水を50mL程度入れ、取り出した試験片を純水に浸漬して軽く揺すり、試験片を洗浄した。試験片を取り出し、余分な水分をペーパータオルで吸い取らせた。
「バイオフィルム低減率」が大きいほど、下記TPEまたは下記ABSからなるシートへのバイオフィルム付着量に対し、組成物からなるシートのバイオフィルム付着量が少ないことを意味する。
熱可塑性樹脂(A)としてオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPE、住友化学株式会社製、エスポレックス 4272)を、抗菌・防カビ剤(B)としてチアベンダゾールを用いた。前記TPE99.5重量%とチアベンダゾール 0.5重量%とを、ラボプラストミル(株式会社東洋精機製作所製、R100)を用いて200℃で溶融混練することで樹脂組成物を得た。
溶融混練した組成物を縦150mm×横150mm×厚み1mmで枠形状を有するスペーサーの枠内に入れ、スペーサーと溶融混練した組成物を、スペーサーよりも大きい0.5mm厚のアルミニウム板でサンドウィッチにして挟み、それを更にアルミニウム板より大きい2mm厚のステンレス板で挟んだものを、プレス板の設定を210℃とした熱プレス成形機中に入れ、5分間予熱後、10MPaまで昇圧し5分間保圧した後、30℃、10MPaで5分間冷却して、厚さ1mmのシートを作製した。
該シートに含有される抗菌・防カビ剤(B)の25℃の水への溶解度の常用対数logSおよびRa1を表1に示す。また、該シートのバイオフィルム付着試験後のA(成形体)とA(TPE)から算出したバイオフィルム低減率を表2に示す。
抗菌・防カビ剤(B)として、FK-C(主成分:ジンクピリチオン、住化エンバイロメンタルサイエンス株式会社)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして組成物及びシートを得た。
該シートに含有される抗菌・防カビ剤(B)の25℃の水への溶解度の常用対数logSを表1に示す。また、該シートのバイオフィルム付着試験後のA(成形体)とA(TPE)から算出したバイオフィルム低減率を表2に示す。
抗菌・防カビ剤(B)として、ベンジルパラベン(東京化成工業株式会社製)を用い、TPE 97重量%、ベンジルパラベン 3重量%としたこと以外は、実施例1と同様にして組成物及びシートを得た。
該シートに含有される抗菌・防カビ剤(B)の25℃の水への溶解度の常用対数logSおよびRa1を表1に示す。また、該シートのバイオフィルム付着試験後のA(成形体)とA(TPE)から算出したバイオフィルム低減率を表2に示す。
抗菌・防カビ剤(B)として、テトラクロロフタロニトリル(東京化成工業株式会社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして組成物及びシートを得た。
該シートに含有される抗菌・防カビ剤(B)の25℃の水への溶解度の常用対数logSおよびRa1を表1に示す。また、該シートのバイオフィルム付着試験後のA(成形体)とA(TPE)から算出したバイオフィルム低減率を表2に示す。
抗菌・防カビ剤(B)として、ベンズイソチアゾリノン(東京化成工業株式会社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして組成物及びシートを得た。
該シートに含有される抗菌・防カビ剤(B)の25℃の水への溶解度の常用対数logSおよびRa1を表1に示す。また、該シートのバイオフィルム付着試験後のA(成形体)とA(TPE)から算出したバイオフィルム低減率を表2に示す。
抗菌・防カビ剤(B)として、メチルパラベン(東京化成工業株式会社製)を用いたこと以外は、実施例3と同様にして組成物及びシートを得た。
該シートに含有される抗菌・防カビ剤(B)の25℃の水への溶解度の常用対数logSおよびRa1を表1に示す。また、該シートのバイオフィルム付着試験後のA(成形体)とA(TPE)から算出したバイオフィルム低減率を表3に示す。
抗菌・防カビ剤(B)として、4’―ヒドロキシアセトアニリド(東京化成工業株式会社製)を用いたこと以外は、実施例3と同様にして組成物及びシートを得た。
該シートに含有される抗菌・防カビ剤(B)の25℃の水への溶解度の常用対数logSおよびRa1を表1に示す。また、該シートのバイオフィルム付着試験後のA(成形体)とA(TPE)から算出したバイオフィルム低減率を表3に示す。
抗菌・防カビ剤(B)として、ビフェニル(東京化成工業株式会社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして組成物及びシートを得た。
該シートに含有される抗菌・防カビ剤(B)の25℃の水への溶解度の常用対数logSおよびRa1を表1に示す。また、該シートのバイオフィルム付着試験後のA(成形体)とA(TPE)から算出したバイオフィルム低減率を表3に示す。
抗菌・防カビ剤(B)として、バクテキラー BM-102TG(富士ケミカル株式会社製)を用い、前記TPEの量を99.5重量%、バクテキラー BM-102TGの量を0.5重量%としたこと以外は、実施例1と同様にして組成物及びシートを得た。
該シートのバイオフィルム付着試験後のA(成形体)とA(TPE)から算出したバイオフィルム低減率を表3に示す。
Claims (7)
- 熱可塑性樹脂(A)と
イソチアゾロン系抗菌・防カビ剤、イミダゾール・チアゾール系抗菌・防カビ剤、アルコール・フェノール系抗菌・防カビ剤、ピリジン・キノリン系抗菌・防カビ剤およびニトリル系抗菌・防カビ剤からなる群より選ばれる一種以上の抗菌・防カビ剤(B)と
を含み、
熱可塑性樹脂(A)と抗菌・防カビ剤(B)の合計量を100重量%として、抗菌・防カビ剤(B)の含有量が3重量%以下であり、
ピリジン・キノリン系抗菌・防カビ剤が、ナリジクス酸およびピリチオン銅からなる群より選ばれる一種以上であり、
前記抗菌・防カビ剤(B)の25℃の水に対する溶解度の常用対数logSが-0.6より小さく、
熱可塑性樹脂(A)のハンセン溶解度パラメータと抗菌・防カビ剤(B)のハンセン溶解度パラメータとの距離Ra 1 が12.7MPa 1/2 以上16.9MPa 1/2 以下であるバイオフィルム生成抑制用組成物。 - 前記抗菌・防カビ剤(B)の25℃の水に対する溶解度の常用対数logSが-4.1以上である請求項1に記載のバイオフィルム生成抑制用組成物。
- 熱可塑性樹脂(A)と抗菌・防カビ剤(B)の合計量を100重量%として、抗菌・防カビ剤(B)の含有量が0.01重量%以上3重量%以下である請求項1または2に記載のバイオフィルム生成抑制用組成物。
- 請求項1~3のいずれか一項に記載のバイオフィルム生成抑制用組成物を含有する成形体。
- 熱可塑性樹脂(A)と
イソチアゾロン系抗菌・防カビ剤、イミダゾール・チアゾール系抗菌・防カビ剤、アルコール・フェノール系抗菌・防カビ剤、ピリジン・キノリン系抗菌・防カビ剤およびニトリル系抗菌・防カビ剤からなる群より選ばれる一種以上の抗菌・防カビ剤(B)とを含み、
熱可塑性樹脂(A)と抗菌・防カビ剤(B)の合計量を100重量%として、抗菌・防カビ剤(B)の含有量が3重量%以下であり、
ピリジン・キノリン系抗菌・防カビ剤が、ナリジクス酸およびピリチオン銅からなる群より選ばれる一種以上であり、
前記抗菌・防カビ剤(B)の25℃の水に対する溶解度の常用対数logSが-0.6より小さく、
熱可塑性樹脂(A)のハンセン溶解度パラメータと抗菌・防カビ剤(B)のハンセン溶解度パラメータとの距離Ra 1 が12.7MPa 1/2 以上16.9MPa 1/2 以下である組成物のバイオフィルム生成抑制のための使用。 - 前記抗菌・防カビ剤(B)の25℃の水に対する溶解度の常用対数logSが-4.1以上である請求項5に記載の組成物のバイオフィルム生成抑制のための使用。
- 熱可塑性樹脂(A)と抗菌・防カビ剤(B)の合計量を100重量%として、抗菌・防カビ剤(B)の含有量が0.01重量%以上3重量%以下である請求項5または6に記載の組成物のバイオフィルム生成抑制のための使用。
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