JP2010246354A - 回転電機用固定子の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】周方向に離散して配置された磁極片に対して効率良く連続して導体を巻き付けることができ、高速化により生産性を高めることが可能な回転電機用固定子の製造方法を提供する。
【解決手段】回転位置決め機構8とフライヤ9とを備えた装置を適用し、回転位置決め機構8に2個1組の磁極片3の2組分を取り付ける。その際、2個1組の磁極片3のティース部32同士がV字形を呈する様に配置した後、回転位置決め機構8による各磁極片3のフライヤ9の正対位置までの回転移動と、フライヤ9による導体4の巻き付けとを、導体4を切断することなく交互に繰り返す。各磁極片3への導体巻付完了後は、2個1組の磁極片3をそれぞれV字形から円弧形に変形した後、4個の磁極片を1組として、これを3の倍数組並べて環状に組み立てて固定子とする。
【選択図】図10

Description

本発明は、回転電機を構成する固定子の製造方法に関する。
回転電機の固定子には、プレス等で打ち抜かれた薄板状の珪素鋼板を複数枚積層して、カシメや溶接等により一体化した構造の積層鉄心が使用されている。そして、この積層鉄心を使用した固定子に導体を高密度に巻くことで、回転電機の高効率化や大容量化、さらに小形化を図ることができる。このような固定子に導体を高密度に巻く場合の作業性を向上させるため、従来より固定子を構成する磁極片を周方向に分割する分割コア構造が考案されている。
例えば、下記の特許文献1では、巻線を施す際に、固定子を構成する複数の分割コアをティースが平行となるように一列に配列した状態とすることや、隣接する分割コア同士を互いに回動可能に連結すると共にティースが外側となるように円環状に配置した状態とすることで、隣接するティース間の空間を広くし、作業性を高め、整列性の高い巻線を施せるとしている。また、渡り線を施すことで生産性の高い電動機の固定子を提供できるとしている。
特開2002−176753号公報
上記の特許文献1に記載されているように、固定子を構成する複数の分割コアをティースが平行となるように一列に配列した状態で各ティースにコイルを巻回する場合、渡り線を施すことで、結線作業を簡略化できる。しかし、隣接する分割コア同士は、互いに間隔を空けて配置されることから、その間隔の分だけ渡り線は長くなってしまう。渡り線の長さが長くなると、その分だけ渡り線における抵抗が大きくなることから巻線抵抗の増加を招いてしまう。
さらにティースの導体供給側への移動と巻線の巻回動作を一つの機構に同時に組み込む場合には、機構が複雑になって故障が発生し易くなり、また巻線の巻回時に振動やたわみが発生して巻線の整列性が悪化するなどの問題が生じる。
また、隣接する分割コア同士を互いに回動可能に連結すると共にティースが外側となるように円環状に配置した状態で、各ティースにコイルを巻回する場合、分割コアを一列に配列する場合よりもティースの両側の空間が広くなり、巻線作業が容易化されるが、各ティースの両側には、隣接する分割コアのティースが角度θを持って配置されることになる。このような状態で高密度な巻線を施す場合には、隣接する分割コアやこれに巻装された巻線と、ノズルが干渉しないとはいい難く、さらに巻線の整列化や高速化を望む場合には、特別な処置が必要となる。
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたもので、巻線の整列化や高速化ができ、さらに同相内の巻線を連続に巻装することで渡り線を施し、生産性を高めることが可能な回転電機用固定子の製造方法を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するため、本発明は、薄板を積層した積層鉄心からなる磁極片の複数個を備え、上記各磁極片はバックヨーク部とバックヨーク部から突出したティース部とを有し、同一相に含まれる各磁極片については、各ティース部に導体が巻き付けられるとともに、各磁極片間の途中の導体は切断されることなく引き回されている構成の回転電機用固定子の製造方法であって、上記磁極片の積層方向に回転軸を持つ回転位置決め機構と、上記回転位置決め機構の回転軸と直交する方向に配置された回転軸を中心に旋回しつつ導体を供給する導体供給巻付用のフライヤとを備えた装置を適用し、上記回転位置決め機構に2個1組の磁極片を取り付け、その際、上記バックヨーク部の周方向端面同士が互いに隣接し、かつ上記フライヤによる導体巻付の作業を行っていない磁極片に対して干渉しないように各ティース部同士がV字形を呈する様に配置した後、上記2個1組の磁極片の内の一方の磁極片のティース部に上記フライヤにより導体を巻き付ける工程と、上記導体を切断することなく上記回転位置決め機構の回転によって他方の磁極片をフライヤに対向させる工程と、他方の磁極片のティース部に上記フライヤにより導体を巻き付ける工程と、上記2個1組の磁極片を上記V字形から円弧形状に変形する工程とを備え、上記各工程を経た2個1組の磁極片を3の倍数組並べて環状に組み立てて固定子とすることを特徴としている。
本発明の回転電機用固定子の製造方法によれば、各磁極片を位置決めする回転位置決め機構と、導体の供給巻付用のフライヤとは分離独立した機構なので、ティースの導体供給側への移動と巻線の巻回動作を一つの機構に同時に組み込む場合に比べて、装置の構成が簡素化される結果、装置の故障発生が少なく、また、導体の巻き付けのためにフライヤを回転させるが、磁極片自体は高速回転しないので、振動やたわみ等により巻き付けた導体の整列性が悪化するなどの不都合は生じない。このため、作業時間が早くなり、単位時間当たりの生産量を増やすことができる。さらに、巻線を施す際に、隣接する磁極片とフライヤとの干渉を避けることができるので、巻線の整列性を高めることができる。しかも、離散した位置に存在する磁極片に対しても連続して渡り線を施すことが可能であるため、生産性を高めることができる。
本発明の実施の形態1において、回転電機用固定子を構成するための一つの磁極片の斜視図である。 同磁極片を組み合わせて構成された固定子の断面図である。 同固定子の断面における各磁極片の結線状態を示す結線図である。 同固定子を構成する全ての磁極片を直線状に並べて、結線の状態を模式的に表した結線略図である。 各磁極片に装着される絶縁用ボビンを固定子の径方向外方側から見た場合の斜視図である。 同絶縁用ボビンを固定子の径方向内方から見た場合の斜視図である。 同絶縁用ボビンを図5の符号A方向から見た平面図である。 同絶縁用ボビンを図5の符号B方向から見た正面図である。 同絶縁用ボビンを図5の符号C方向から見た側面図である。 回転電機用固定子を製造する場合に使用される自動巻線機の概略構成図である。 3相交流の1相分(ここではV相)に対応する4個の磁極片に対して連続して導体を巻き付けた状態を示す説明図である。 3相交流の1相分(ここではU相)に対応する4個の磁極片に対して連続して導体を巻き付けた状態を示す説明図である。 2個1組の磁極片が2組ある場合の各組相互間を渡り線で接続する場合の変形例を示す説明図である。 本発明の実施の形態2において、2個1組の磁極片同士が薄肉部からなる連結手段を介して連結されている状態を示す斜視図である。 本発明の実施の形態3において、2個1組の磁極片同士が凸部と凹部を有する連結手段を介して連結されている状態を示す平面図である。 本発明の実施の形態3において、2個1組の磁極片同士を凸部と凹部を有する連結手段で連結した構成を示す断面図である。 本発明の実施の形態4において、2個1組の磁極片同士を連結する連結手段を絶縁用ボビンに設けた場合の正面図である。 同絶縁用ボビンの平面図である。 同絶縁用ボビンを連結手段で互いに連結した状態を示す平面図である。
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1における回転電機用固定子を構成するための一つの磁極片の斜視図、図2は同磁極片を組み合わせて構成された固定子の断面図、図3は固定子断面における結線状態を示す結線図、図4は固定子を構成する全ての磁極片を直線状に並べて、結線の状態を模式的に表した結線略図である。なお、図4では磁極片は簡略化して表しティース部に巻かれる導体や絶縁用ボビンは省略している。
この実施の形態1の回転電機用固定子1は、10極12ティースの3相DCブラシレスモータ用のものであって、回転出力軸方向(図2で紙面に直交する方向)に沿って薄板を複数枚積み重ねてカシメや溶接等により固定されてなる積層鉄心で構成された複数個(本例では12個)の磁極片3を備える。各磁極片3は、バックヨーク部31と、このバックヨーク部31から突出したティース部32とを有し、各バックヨーク部31には、固定子1の製造に際して後述の鉄心保持治具81に磁極片3を取り付けるための取付穴34が形成されている。
また、各磁極片3のティース部32には、回転出力軸方向の前後から合成樹脂等で成形された一対の絶縁用ボビン7が装着され、この絶縁用ボビン7が装着された互いに隣接する2個の磁極片3を1組として、その2組分(計4個)に連続して銅線等からなる導体4が巻き付けられている。これによって、4個の磁極片3が3相交流のそれぞれの相U,V,Wの内の1相分に対応している。
そして、この導体4が巻き付けられた4個の磁極片3の内、2個1組の磁極片3同士が互いに円の中心Oを挟む点対称位置に対向配置されるように、2個1組の磁極片3を周方向に沿って各相交互になるように順次配置して円環状に配置し、こうして円環状に配置した各磁極片3のバックヨーク部31の突き合わせ端部同士を溶接や接着により一体結合することにより、10極12ティースの3相DCブラシレスモータ用の固定子1が構成されている。
なお、図2ないし図4において、各磁極片3に対して付された符号U,V,Wは3相交流のそれぞれの相に対応しており、Nは中性点である。また、各相U,V,Wに対する添え字は、それぞれの隣接する2つの各磁極片3に巻き付けられた各巻線4を区別するために示しており、U1とU1’の違いは、巻回方向が左右反対であることを示す。例えば、図3においてバックヨーク部31側から見てU1が左回り、U1’が右回りを示す。またU1とU2との違いは、U1が2個1組となった磁極片の第1組目に巻き付けられる巻線であり、U2が2個1組となった磁極片の第2組目に巻き付けられる巻線であることを示す。
この実施の形態1では、図4に示したように、同相内で連続して導体4を巻き付ける場合、U,V,Wの各相のいずれについても、4個の磁極片3を1単位として、その単位内で互いに隣接する2個1組の磁極片3間を結ぶ渡り線44や、2個1組の磁極片3の各組相互間を結ぶ渡り線41を経由して連続して導体4を巻き付ければよいので、巻線端末部の接続回数を削減でき、安価に製造できるので有利である。
図5は絶縁用ボビン7を固定子の径方向外方側から見た場合の斜視図、図6は絶縁用ボビン7を固定子の径方向内方から見た場合の斜視図、図7は絶縁用ボビンを図5の符号Aで示す方向から見た平面図、図8は絶縁用ボビンを図5の符号B方向から見た正面図、図9は絶縁用ボビンを図5の符号C方向から見た側面図である。
この絶縁用ボビン7は、各磁極片3のティース部32に嵌合されるティース嵌合部71と、バックヨーク部31に嵌合されるバックヨーク嵌合部72とを有する。
そして、ティース嵌合部71には、導体4をティース部32に整列して巻き付けるための巻線整列溝74が形成され、また、ティース嵌合部71とバックヨーク嵌合部72との境界部分には、導体4の巻き始め部分がそれ以降に巻かれる部分と干渉することを避けるために、その左右の位置に導体4の巻始め部分を外側に逃すための巻始め線逃がし溝75が形成されている。さらに、バックヨーク嵌合部72には、その左右に各相の導体4の巻き始め部分や巻き終わり部分、また前述の各渡り線41,44(以下、これらを総称して巻線端末部と称する)を収納するための巻線端末部収納溝76が形成され、さらに、巻線端末部収納溝76に収納された巻線端末部を保持するために紐や結束バンド等を差し込むための巻線固定孔77が形成されている。
図10は上記構成の回転電機用固定子1を形成する場合に使用される自動巻線機の概略構成図である。
この自動巻線機は、各磁極片3を位置決めするための回転位置決め機構8と、導体供給巻付用のフライヤ9とを備える。
回転位置決め機構8は、各磁極片3を固定する円盤状の鉄心保持治具81を有し、この鉄心保持治具8は、その周方向に沿って各磁極片3に形成された取付穴34に差し込まれる取付ピン82が複数設けられるとともに、導体4の巻き始め箇所を固定するための巻始線固定用ピン83が設けられている。そして、この鉄心保持治具8は、その中心O1を回転中心として回転するように構成されている。
一方、フライヤ9は、導体4を供給しつつ、各磁極片3のティース部32に導体4を巻き付けるためのもので、旋回軸91の軸端に取り付けられたアーム部92が旋回軸91の中心O2を中心として矢印θで示すように正逆転方向にそれぞれ旋回可能に設けられるとともに、整列巻きを行うために旋回動作と同期して旋回軸91が軸方向(符号Z方向)へスライドするように構成されている。そして、供給される導体4は、フライヤ9のアーム部92の基端側からアーム部92の内部を通って先端部分まで繋がっている。
図11は3相交流の1相分(ここではV相)に対応する4個の磁極片に対して連続して導体を巻き付けた状態を示す説明図、図12は3相交流の残りの2相分(ここでは一例としてU相)に対応する4個の各磁極片に対して連続して導体を巻き付けた状態を示す説明図であり、各ティース部に巻き付けられる導体の部分は省略している。なお、U相、W相の場合は、V相の場合と導体が巻き付けられる方向、および巻き始め部分および巻き終わり部分の位置が逆になっている。また、これとは逆に図11をU相、W相、図12をV相とすることでも10極12ティースの固定子を構成することができる。
次に、図10および図11を参照して、1相分(ここではV相)を構成する4個の磁極片3の各ティース部32に導体4を巻き付ける方法について説明する。なお、ここでの説明は、便宜上各磁極片が区別できるように、これらに個々別々の符号を付す。
まず、2個1組の磁極片3a,3bと2個1組の磁極片3c,3dとの2組が互いに鉄心保持治具81の中心O1を挟む略点対称位置となるように配置した上で、互いに隣接する2個1組の磁極片3a,3bおよび3c,3dそれぞれについて、各ティース部32が外側に位置するように鉄心保持治具81の取付ピン82をバックヨーク部31に形成された取付穴34に挿入するなどして固定し、互いに隣接する2個1組の磁極片3a,3bおよび3c,3dのティース部32相互間の距離を広くする。そして、鉄心保持治具81を回転してまず一つの磁極片3aをフライヤ9の正面位置に移動させる。
次に、フライヤ9のアーム部92の先端から出ている導体4の端末部分を鉄心保持治具81に設置されている巻始線固定用ピン83等に固定した後、導体4を巻始め線逃がし溝75に沿わせてから、フライヤ9を旋回(ここではバックヨーク部31側から見て右回り旋回)するとともに、これに同期して旋回軸91を軸方向(Z方向)に沿ってスライドさせながらこの磁極片3aのティース部32に導体4を巻き付ける。
その際、2個1組の磁極片3a,3bの内、導体4の巻付作業を行っていない他方の磁極片3bが常にフライヤ9の旋回先端の回転面Qよりも外側(図10では符号P1で示す箇所)に位置するように各磁極片3の配置位置を設定して巻付作業を行う。このようにすれば、一方の磁極片3aに導体4を巻き付ける際、これに隣接する他方の磁極片3bにフライヤ9が干渉することを確実に避けることができるので都合が良い。また、2個1組の磁極片3a,3bの内、導体4の巻付作業を行っていない他方の磁極片3bとは反対側の位置(図10では符号P2で示す箇所)でフライヤ9をZ方向にスライドさせる。これは、導体4を長い距離移動させる必要がある場合でも、他方の磁極片3bにフライヤ9が干渉することを確実に避けることができるので都合が良い。
次に、鉄心保持治具81を回転し、他方の磁極片3bをフライヤ9の正面位置(図10で磁極片3aが元あった位置)に移動させる。このとき、先の磁極片3aに巻き付けた導体4の巻き終わり部分を切断することなくこれを渡り線44として、絶縁用ボビン7の巻線端末部収納溝76を通した後、磁極片3bの絶縁用ボビン7の巻始め線逃がし溝75に沿わせ、続いて、この磁極片3bのティース部32に対して先の磁極片3aに巻いた方向とは逆方向(この例ではバックヨーク部31側から見て左回り)に導体4を巻き付ける。
その際、導体4の巻付作業を行っていない他方の磁極片3aが常にフライヤ9の旋回先端の回転面Qよりも外側(図10では符号P2で示す箇所)に位置するように磁極片3aの配置位置を設定して巻線作業を行うことで、他方の磁極片3aにフライヤ9が干渉することを確実に避けることができる。また、導体4の巻付作業を行っていない他方の磁極片3aとは反対側の位置(図10では符号P1で示す箇所)でフライヤ9をZ方向にスライドさせる。これは、導体4を長い距離移動させる必要がある場合でも、他方の磁極片3aにフライヤ9が干渉することを確実に避けることができるので都合が良い。
次に、鉄心保持治具81を回転し、磁極片3cをフライヤ9の正面位置(図10で磁極片3aが元あった位置)に移動させる。このとき、先の磁極片3bに巻き付けた導体4の巻き終わり部分を切断することなく、磁極片3cに至るだけの所定長さ分を渡り線41として確保した後、この磁極片3cに対して、導体4を巻始め線逃がし溝75に沿わせてから、先の磁極片3bと同じ方向(バックヨーク部31側から見て左回り)に導体4を巻き付ける。
その際、2個1組の磁極片3c,3dの内、導体4の巻付作業を行っていない他方の磁極片3dが常にフライヤ9の旋回先端の回転面Qよりも外側(図10では符号P3で示す箇所)に位置するように磁極片3dの配置位置を設定して巻線作業を行うことで、他方の磁極片3dにフライヤ9が干渉することを確実に避けることができる。また、導体4の巻付作業を行っていない他方の磁極片3dとは反対側の位置(図10では符号P4で示す箇所)でフライヤ9をZ方向にスライドさせる。これは、導体4を長い距離移動させる必要がある場合でも、他方の磁極片3dにフライヤ9が干渉することを確実に避けることができるので都合が良い。
最後に、鉄心保持治具81を回転し、磁極片3dをフライヤ9の正面位置(図10で磁極片3aが元あった位置)に移動させる。このとき、先の磁極片3cに巻き付けた導体4の巻き終わり部分44を切断することなくこれを渡り線44として、絶縁用ボビン7の巻線端末部収納溝76を通した後、この磁極片3dの絶縁用ボビン7の巻始め線逃がし溝75に沿わせ、続いて、この磁極片3dのティース部32に対して先の磁極片3cに巻いた方向とは逆方向(この例ではバックヨーク部31側から見て左右回り)に導体4を巻き付ける。
その際、導体4の巻付作業を行っていない他方の磁極片3cが常にフライヤ9の旋回先端の回転面Qよりも外側(図10では符号P4で示す箇所)に位置するように磁極片3cの配置位置を設定して巻線作業を行うことで、他方の磁極片3cにフライヤ9が干渉することを確実に避けることができる。また、導体4の巻付作業を行っていない他方の磁極片3cとは反対側の位置(図10では符号P3で示す箇所)でフライヤ9をZ方向にスライドさせる。これは、巻線4を長い距離移動させる必要がある場合でも、他方の磁極片3cにフライヤ9が干渉することを確実に避けることができるので都合が良い。
こうして、各々の磁極片3a,3b,3c,3dのティース部32に導体4の巻き付けを行った後、これらの各磁極片3a,3b,3c,3dを鉄心保持治具81から取り外し、図11に示すように、2個1組の磁極片3a,3bおよび3c,3dのそれぞれのティース部32を逆反り状態から両者が円弧状となるように元に戻すことで、V相に対応する4個の磁極片3a,3b,3c,3dに対して連続して導体4が巻き付けられる。
以下、同様にしてU相およびW相に対応する4個の各磁極片3に対しても導体4の巻付作業を実施し、これら各相4個分の各磁極片3の内、互いに隣接配置された2個1組の磁極片3を、図2に示したように周方向に沿って各相交互に順次配置して円環状にする。そして、各磁極片3の互いに隣接する端面同士を、溶接や接着、あるいは嵌合等により一体結合することで一体化する。続いて、図3、図4に示した結線状態となるように結線処理を行い、また、巻線端末部収納溝76に巻線端末部を収納し(図示せず)、紐や結束バンド等を巻線固定孔77に挿入して巻線端末部を固定する。これにより、10極12ティースの3相DCブラシレスモータ用の固定子1が構成される。
なお、先の図11,図12に示した例では、互いに隣接する2個1組の磁極片3の各組相互間を結ぶ渡り線41は、固定子1の外周に沿わせているが、全ての磁極片3を円環状に結合する工程時に渡り線41が各磁極片3に干渉するのを避けることができる態様ならばどのように引き回すかについては特別な制約はなく、例えば、円環状に配置される各磁極片3の径方向の内方側に位置させたり、あるいは径方向の外方側に位置させることができる。特に、図13に示すように、渡り線41を各磁極片3の内径方向に配置させる場合には、全ての磁極片3を円環状に結合する際、渡り線41が各磁極片3に干渉するのを避けることができ、かつ、渡り線41の長さを固定子1の外径方向に確保する場合に比べて短くできるので都合が良い。
以上のように、この実施の形態1の固定子1の製造方法においては、自動巻線機Gとして、各磁極片3を位置決めするための回転位置決め機構8と、導体4の供給巻付用のフライヤ9とを備えた構成のものを適用することで、回転位置決め機構8に取り付けた磁極片3を回転させるだけでフライヤ9に正対する位置まで順次移動させることができる。そして、磁極片3が所定の位置まで移動した後は、磁極片3の位置は固定したままでフライヤ9を回転せることで導体4を巻き付けることができる。つまり、回転位置決め機構8とフライヤ9とは分離独立しているため、磁極片3の導体供給側への移動と導体巻付とを一つの機構に同時に組み込む場合に比べて、装置の構成が簡素化され故障が少なくかつ装置を安価に製作することができる。
しかも、フライヤ9を回転させることで導体4の巻き付けを実施する構成であり、磁極片3自体は高速回転しないので、導体4の巻き付け時に振動やたわみが発生して巻き付けた導体4の整列性が悪化するなどの不都合は生じず、このため、作業時間が早くなり、単位時間当たりの生産量を増やすことができる。
また、鉄心保持治具81に固定する磁極片3の数が多い場合と比較して、2個1組の磁極片3を鉄心保持治具81に取り付ける場合、これらの磁極片3をV字形を呈するように所望の間隔で取り付けた上で回転位置決め機構8を回転するだけで各磁極片3をフライヤ9に対向させることができるので、隣接する磁極片3の角度が狭くなって導体4を巻き付ける際の邪魔になったり、渡り線44の長さを自由に設定できないなどの不具合発生を無くすことができる。
しかも、この実施の形態1では、2個1組の磁極片3をV字形を呈する状態から円弧状に変形する際、互いに隣接する磁極片3間を結ぶ渡り線44の起点の距離の変化が少ないので、絶縁用ボビン7の巻線端末収納溝76に渡り線44を固定しておいても、円弧状に磁極片3を変形した際に渡り線44が短すぎて突っ張ったり、長すぎて外形側に膨れて結線用の部品と干渉して絶縁不良を生じるなどの問題が生じない。
また、回転電機用固定子1を構成する上では、2個1組の磁極片3を周方向に沿って各相交互に順次配置して円環状にすることが多いが、その場合、2個1組の磁極片3の各組相互間を結ぶ渡り線41の距離は長くなるが、回転位置決め機構8を回転させるだけで順次巻付作業を行う箇所に各磁極片3を位置させることができるので、渡り線41の長さを自由に設定することができる。さらに、巻線を施す際に、隣接する磁極片とフライヤ9との干渉を避けることができ、巻線の整列性を高めることができる。しかも、離散した位置に存在する磁極片に対しても渡り線を施すことが可能であるため、生産性を高めることができる。
実施の形態2.
図14は本発明の実施の形態2において、2個1組の磁極片同士が薄肉部を介して一体連結されている状態を示す斜視図であり、図1に示した構成と対応する部分には同一の符号を付す。
この実施の形態2の特徴は、2個1組の磁極片3について、その各磁極片3のバックヨーク部31の周方向端部において各薄板の厚さを薄肉に形成することにより薄肉部33が形成されており、この薄肉部33によって一対の磁極片3を折り曲げ可能に連結する連結手段が構成されている。
上記の実施の形態1で示したように、2個1組の磁極片3が個々ばらばらであると、各磁極片3を位置決め機構8にセットして導体4を巻き付けたり、導体巻付後の各磁極片3を環状に組み立てる際の取り扱いに手間がかかる。これに対して、この実施の形態2では、2個1組の磁極片3が連結手段としての薄肉部33を介して折り曲げ可能に連結されているので、一対の磁極片3を位置決め機構8にV字形を呈するようにセットして導体4を巻き付けたり、導体巻付後の各磁極片3を環状に組み立てる際の取り扱いが容易になり、さらに生産性の向上を図ることができる。また、折り曲げ可能な連結手段として単純な薄肉部33を形成するだけで済むために製造が容易である。
なお、回転電機用固定子の製造方法の手順は、実施の形態1の場合と基本的に同じであるのでここでは詳しい説明は省略する。
実施の形態3.
図15は本発明の実施の形態3において2個1組の磁極片同士が凸部と凹部を有する連結手段を介して連結されている状態を示す平面図、図16は同連結手段の連結部分を示す断面図であり、図1に示した構成と対応する部分には同一の符号を付す。
この実施の形態3の特徴は、2個1組の磁極片3について、その各磁極片3のバックヨーク部31の周方向端部において各薄板の積層方向に向けて凸部37と凹部38とを設け、この凸部37と凹部38とを積層方向において互いにカシメ止めして一対の磁極片3を折り曲げ可能に連結する連結手段が構成されている。
この実施の形態3の場合も、2個1組の磁極片3が連結手段としての凸部37と凹部38とを嵌合することで折り曲げ可能に連結されているので、この2個1組の磁極片3を位置決め機構8にV字形を呈するようにセットして導体4を巻き付けたり、導体巻付後の各磁極片3を環状に組み立てる際の取り扱いが容易になり、さらに生産性の向上を図ることができる。また、機械的に高精度を得ることができ、複数回折り曲げても薄肉部ではないために亀裂が生じたり、その結果、磁気抵抗が高くなって磁気特性を低下させるなどの不具合が生じるのを防止することができる。
なお、回転電機用固定子の製造方法の手順は、実施の形態1の場合と基本的に同じであるのでここでは詳しい説明は省略する。
一対の磁極片3を折り曲げ可能に連結する連結手段として、上記の実施の形態2では薄肉部33を形成し、また実施の形態3では、凸部37と凹部38とを積層方向において互いにカシメ止めして構成しているが、連結手段としては、これに限らず、例えば互いに隣接する2個1組の磁極片3について、バックヨーク部31同士をピン結合によって回転可能に連結する構成とすることも可能である。
実施の形態4.
図17は本発明の実施の形態4において、2個1組の磁極片同士を連結する連結手段を絶縁用ボビンに設けた場合の正面図、図18は同絶縁用ボビンの平面図、図19は同絶縁用ボビンを連結手段で互いに連結した状態を示す平面図である。なお、これらの図において、実施の形態1の図5ないし図9に示した絶縁用ボビンの構成と対応する部分には同一の符号を付す。
この実施の形態4の特徴は、互いに隣接する2個1組の磁極片3に連結手段を設けるのではなく、個々分離して設けられた各磁極片3に装着される絶縁用ボビン7に、磁極片3同士を連結する連結手段が設けられていることである。すなわち、この実施の形態4では、個々分離して設けられている各磁極片3に装着される絶縁用ボビン7のバックヨーク嵌合部72の周方向端部の互いに突き合わされる箇所を互いに嵌合することにより、一対の磁極片3を折り曲げ可能に連結する連結手段が構成されている。
具体的な構成としては、絶縁用ボビン7のバックヨーク嵌合部72の周方向の一端部には、バックヨーク嵌合部72の厚さの半分の厚さで略円形の上部連結部78がバックヨーク嵌合部72の上面と面一となるように形成され、この上部連結部22aの略中央の底部には下方に突出する略楕円形状の連結突起78aが形成されている。また、バックヨーク嵌合部72の周方向の他端部には、バックヨーク嵌合部72の厚さ半分の厚さで略円形の下部連結部79がバックヨーク嵌合部72の下面と面一となるように形成されて、この下部連結部79には厚さ方向に貫通した略楕円形状の連結孔79aが形成されている。この場合、連結突起78aの外周形状は、連結孔79aの口径よりも若干小さくて遊嵌可能となるように予め設定されている。
したがって、互いに隣接する2個1組の磁極片3のそれぞれに絶縁用ボビン7を装着した後、互いに突き合わされる上部連結部78と下部連結部79とを重ね合わせて連結突起78aを連結孔79a内に嵌合することで、一対の磁極片3が連結される。この場合、各絶縁用ボビン7が直線状に配列された状態では、連結突起78aと連結孔79aとの間には僅かに隙間があるが、この状態から各絶縁用ボビン7を回動して環状に配列した状態にすると、両者78a,79a間の隙間が次第に減少して両者78a,79aは楕円軸直交方向において点接触し、これによってその位置が固定される。
このように、この実施の形態4では、個々分離して設けられた各磁極片3に装着される絶縁用ボビン7に、2個1組の磁極片3を回動可能に連結する連結手段を設けた構成としたので、一対の磁極片3を連結するために各磁極片3自体を加工する必要がない。このため、各磁極片3の加工劣化が少なく、また、絶縁用ボビン7の成形は、磁極片3を加工するよりも容易であるから、固定子1の生産性を高めることができる。
なお、回転電機用固定子の製造方法の手順は、実施の形態1の場合と基本的に同じであるのでここでは詳しい説明は省略する。
上記の各実施の形態1〜4では、10極12ティースの3相DCブラシレスモータ用の固定子1を製造する場合を例にとって説明したが、本発明はこのような構成に限定されるものではなく、隣接する2つのティース(第1ティース、第2ティース)に巻装された巻線が同相の巻線であり、また、これらから電気角で360度離れた位置に同様の2ティース(隣接する2つのティースに巻装された巻線が同相であるもの。第3ティース、第4ティース)が設けられる固定子に適応できる。例えば、16極18ティース、20極24ティース、・・・等の固定子を製造する場合にも適用することが可能である。
1 回転電機用固定子、3 磁極片、31 バックヨーク部、32 ティース部、
33 薄肉部、37 凸部、38 凹部、4 巻線、41,44 渡り線、
7 絶縁用ボビン、G 自動巻線機、8 回転位置決め機構、9 フライヤ、
Q 回転面。

Claims (8)

  1. 薄板を積層した積層鉄心からなる磁極片の複数個を備え、上記各磁極片はバックヨーク部とバックヨーク部から突出したティース部とを有し、同一相に含まれる各磁極片については、各ティース部に導体が巻き付けられるとともに、各磁極片間の途中の導体は切断されることなく引き回されている構成の回転電機用固定子の製造方法であって、
    上記磁極片の積層方向に回転軸を持つ回転位置決め機構と、上記回転位置決め機構の回転軸と直交する方向に配置された回転軸を中心に旋回しつつ導体を供給する導体供給巻付用のフライヤとを備えた装置を適用し、上記回転位置決め機構に2個1組の磁極片を取り付け、その際、上記バックヨーク部の周方向端面同士が互いに隣接し、かつ上記フライヤによる導体巻付の作業を行っていない磁極片に対して干渉しないように各ティース部同士がV字形を呈する様に配置した後、上記2個1組の磁極片の内の一方の磁極片のティース部に上記フライヤにより導体を巻き付ける工程と、上記導体を切断することなく上記回転位置決め機構の回転によって他方の磁極片をフライヤに対向させる工程と、他方の磁極片のティース部に上記フライヤにより導体を巻き付ける工程と、上記2個1組の磁極片を上記V字形から円弧形状に変形する工程とを備え、上記各工程を経た2個1組の磁極片を3の倍数組並べて環状に組み立てて固定子とすることを特徴とする回転電機用固定子の製造方法。
  2. 薄板を積層した積層鉄心からなる磁極片の複数個を備え、上記各磁極片はバックヨーク部とバックヨーク部から突出したティース部とを有し、同一相に含まれる各磁極片については、各ティース部に導体が巻き付けられるとともに、各磁極片間の途中の導体は切断されることなく引き回されている構成の回転電機用固定子の製造方法であって、
    上記磁極片の積層方向に回転軸を持つ回転位置決め機構と、上記回転位置決め機構の回転軸と直交する方向に配置された回転軸を中心に旋回しつつ導体を供給する導体供給巻付用のフライヤとを備えた装置を適用し、上記回転位置決め機構に第1、第2の2個1組の
    磁極片と、第3、第4の2個1組の計4個の磁極片を取り付け、その際、第1、第2の磁極片については、上記バックヨーク部の周方向端面同士が互いに隣接し、かつ上記フライヤによる導体巻付の作業を行っていない磁極片に対して干渉しないように各ティース部同士がV字形を呈する様に配置し、また第3、第4の磁極片については、第1、第2の磁極片に対して回転位置決め機構の回転軸を中心とした周方向に離間させた位置において、上記バックヨーク部の周方向端面同士が互いに隣接し、かつ上記フライヤによる導体巻付の作業を行っていない磁極片に対して干渉しないように各ティース部同士がV字形を呈する様に配置した後、第1の磁極片のティース部に上記フライヤにより導体を巻き付ける工程と、上記導体を切断することなく上記回転位置決め機構の回転によって第2の磁極片をフライヤに対向させる工程と、第2の磁極片のティース部に上記フライヤにより導体を巻き付ける工程と、上記導体を切断することなく上記回転位置決め機構の回転によって第3の磁極片をフライヤに対向させる工程と、第3の磁極片のティース部に上記フライヤにより導体を巻き付ける工程と、上記導体を切断することなく上記回転位置決め機構の回転によって第4の磁極片をフライヤに対向させる工程と、第4の磁極片のティース部に上記フライヤにより導体を巻き付ける工程と、互いに隣接する2個1組の各磁極片を上記V字形から円弧形状に変形する工程とを備え、上記各工程を経た4個の磁極片を1組として、これを3の倍数組並べて環状に組み立てることを特徴とする回転電機用固定子の製造方法。
  3. 上記2個1組の磁極片は、折り曲げ可能な連結手段を介して互いに連結されたものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の回転電機用固定子の製造方法。
  4. 上記連結手段は、上記磁極片の互いに隣接するバックヨーク部の周方向端部において上記各薄板の厚さを薄肉に形成することにより折り曲げ可能に構成されていることを特徴とする請求項3に記載の回転電機用固定子の製造方法。
  5. 上記連結手段は、上記磁極片の互いに隣接するバックヨーク部の周方向端部において上記各薄板に凸部と凹部とを設け、この凸部と凹部とを積層方向において互いに嵌合することにより折り曲げ可能に構成されていることを特徴とする請求項3に記載の回転電機用固定子の製造方法。
  6. 上記連結手段は、上記各磁極片に装着される絶縁用ボビンの周方向端部同士を互いに嵌合することにより折り曲げ可能に構成されていることを特徴とする請求項3に記載の回転電機用固定子の製造方法。
  7. 上記フライヤが上記2個1組の磁極片の内の一方の磁極片のティース部に導体を巻き付けるとともに、ティース部の延長方向に沿ってスライドされる際、上記フライヤの旋回先端の回転面に対して、導体巻付作業を行っていない他方の磁極片が常に外側に位置するように各磁極片の位置を設定して巻付作業を行うことを特徴とする請求項1記載ないし請求項6のいずれか1項に記載の回転電機用固定子の製造方法。
  8. 上記フライヤが上記2個1組の磁極片の内の一方の磁極片のティース部に導体を巻回するとともに、ティース部の延長方向に沿ってスライドされる際、上記フライヤがスライドする位置を、導体巻付作業を行っていない他方の磁極片とは反対側の位置に設定することを特徴とする請求項1記載ないし請求項7のいずれか1項に記載の回転電機用固定子の製造方法。
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