JP2010245238A - 光電変換装置およびその製造方法ならびに硫化物焼結体ターゲットの製造方法 - Google Patents

光電変換装置およびその製造方法ならびに硫化物焼結体ターゲットの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高品質なCZTS半導体光吸収層を用いた光電変換素子を250℃以下でかつ硫化水素などの有毒ガスを用いることなく、安定、安全かつ安価に実現する。
【解決手段】基材上にn型半導体透明導電膜と金属電極とに挟まれてp型半導体光吸収層が積層されており、前記p型半導体光吸収層は銅、亜鉛、錫および硫黄を含み、かつ銅/(亜鉛+錫)の組成比が70原子%以上100原子%未満であり、さらに前記基材の軟化点または融点が350℃以下とする。
【選択図】図7

Description

本発明は、光電変換装置およびその製造方法ならびに硫化物焼結体ターゲットの製造方法に関する。
金属の硫黄、セレンまたはテルルとの化合物は、直接遷移型の半導体であり、光電変換素子用材料として有用である。特に銅、インジウム、ガリウム、セレンからなるCIGSと呼ばれるカルコパイライト型の材料は太陽電池や受光素子として実用化が進められており、15%以上の高い光電変換効率を達成できることが知られている。しかし、CIGSは希少金属のインジウムを用いるため、原料調達やコスト削減の点で問題が残る。また、毒性の強いセレンを用いるため、製造時および廃棄時の安全管理および環境保全の点でも問題が残る。
一方、CIGSの材料的な問題に対応すべく、銅、亜鉛、錫、硫黄からなるCZTSと呼ばれる材料が注目され、太陽電池などへの応用が試みられている。しかし、硫黄はセレンや他の金属元素と比較して蒸気圧が高いため、真空中で100℃程度の熱を受けると蒸発してしまい、蒸着法やスパッタ法の原材料の一つとして用いるには困難な材料である。また、一旦蒸発した蒸気は常温の真空装置内壁に接すると凝着してしまい、成膜雰囲気に反応ガスとして滞在させることも困難である。
これに対し、例えば、特許文献1および非特許文献1では、Cu、ZnS、SnSを原料として用いてCZTS前駆体を作成し、これを硫化水素20%雰囲気中580℃で2時間加熱処理して硫化処理した膜を用いて6.7%の光電変換効率を実現している。この方法では有毒な硫化水素を用いるため安全および環境負荷に対するリスクが高いことが問題となる。また、熱処理温度が高いために樹脂基材などのフレキシブルで軽量かつ割れない基材を用いることが極めて困難である。また、現在実用化されている酸化錫系、酸化インジウム系、酸化亜鉛系などの透明導電膜は500℃以上では導電性や光線透過率が劣化してしまうため、透明導電膜付き基材の上にこの方法でCZTS膜を形成することは困難である。更に、前駆体の作成と硫化処理の2段階プロセスであるため、設備的および工程的に複雑になり、生産性やコスト面で不利である。更に、硫化処理により前駆体が多結晶に成長する際に結晶粒が凹凸上に成長し、pn界面の接合性に悪影響を及ぼしていると考えられている。また、硫化処理時に前駆体が体積膨張するため、CZTS膜内部に圧縮応力が発生し易くなることや膜剥がれが起き易くなることも問題である。
また、非特許文献2では、粉末材料を化学量論的組成比(Cu:Zn:Sn:S=2:1:1:4)になるように調合したものを真空中1050℃で48時間加熱した後室温まで冷却し、これを粉末にしてアルミ製の皿にプレスして敷き詰めたものをターゲットとして、原子ビームスパッタ法によりCZTS膜を作成している。この方法では、スパッタターゲットとして原理的に化学量論的組成比の材料しか用意できないためCZTS膜の組成比を調整することは基本的にできない問題がある。CZTS膜をp型半導体として調製するためには、銅の組成比を化学両論的組成比よりも積極的に少なくすることにより、CZTS結晶中に銅空孔を形成する手段が有効であるが、非特許文献2の方法ではこの手段を使えないため、光電変換装置に必要なpn接合特性を十分に発現させることが困難である。また、ターゲットが粉砕した結晶粉末であるため、焼結させることが困難であり、量産向けの大型ターゲットを作成することが困難であるという問題もある。また、粉末ターゲットは大気中の水分等を吸着し易いため、スパッタプロセス開始時にアウトガスを生じたり、分解した水と硫黄が反応して硫化水素を発生させたりする恐れがあるなどの問題がある。
一方、CZTS膜用のスパッタターゲットとして銅、亜鉛、錫の各金属粉末と硫黄粉末を化学量論比で調合したものを用いると、スパッタ時にプラズマの影響により硫黄が選択的に蒸発してしまい、所望の組成比の膜を得ることは極めて困難である。これは硫黄の融点および沸点が123℃および445℃と低いことに起因する。また、硫化第二銅、硫化亜鉛、硫化第二錫を用いた場合は、プラズマの影響により硫化第二銅(CuS)が分解して硫黄が選択的に蒸発してしまう問題がある。これは硫化第二銅が220℃以上で硫化第一銅と硫黄に分解することに起因している。これに対し、融点が1000度以上ある硫化第一銅(CuS)を用いると熱的には安定させることができるが、銅に対して不足する硫黄を硫黄粉末で補うと、やはりプラズマの熱により硫黄が選択的に蒸発してしまう。また、硫黄粉末の替わりに硫化第一錫(SnS)の一部または全てを硫化第二錫(SnS)に替えて硫黄を補うとしても、やはり十分に安定にスパッタは行えない。これも、硫化第二錫が600度付近で硫化第一錫と硫黄に分解することに起因している。
なお、硫化物材料を原料に用いて硫化物半導体薄膜を作成する方法としては、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、レーザーアブレーション法などの熱蒸発作用を用いた方法も知られているが、本発明に係る多元硫化物薄膜を作成する場合には、硫黄と各金属原子との結合エネルギーや生成エネルギーが異なるため、加熱、(溶融)、蒸発の蒸発過程において蒸気圧の大きな硫黄が金属原子と分離して選択的に蒸発してしまい、安定な成膜ができないといった問題があった。
以上のように、CZTS系硫化物薄膜を吸収層として用いた光電素子を低温基板上に安定にかつ制御性よく作成することは困難なこととであった。
特開2009−26891号公報
Hironori Katagiri,Kazuo Jimbo, Satoru Yamada, Tsuyoshi Kamimura, Win Shwe Maw, Tatsuo Fukano,Tadashi Ito, and Tomoyoshi Motohiro"Enhanced Conversion Efficiencies ofCu2ZnSnS4-Based Thin Film Solar Cells by Using Preferential EtchingTechnique"Appl. Phys. Express 1 (2008) 041201 (2 pages) Kentaro Itoand Tatsuo Nakazawa"Electrical and Optical Properties of Stannite-Type QuaternarySemiconductor Thin Films"Jpn. J. Appl. Phys 27 (1988)2094.
発明者らが解決しようとする課題は、高品質なCZTS系p型半導体光吸収層を用いた光電変換素子を安定、安全かつ安価に実現することであり、そのためのCZTS膜製造方法、CZTS膜製造装置ならびにCZTS焼結体ターゲットを提供することである。さらには、低耐熱性の基材にロール・ツー・ロール法などによりCZTS膜を容易に製造できる技術を提供することである。上記課題を解決するために発明者らが鋭意研究を重ねた結果、十分に化合した単相多結晶CZTS焼結体をスパッタターゲットとして用いることにより、硫化水素ガスを用いることなく良好なCZTS半導体薄膜を250℃以下の温度の基板上に作成できることを見出した。そして、ターゲットの組成比を制御することにより、CZTS薄膜の組成比を制御できることも見出した。また、スパッタ成膜時に膜厚が100nmに達する前に真空中で150℃以下のアニールを行い、これを複数回繰り返すことで、更に低温基板上に良好なCZTS半導体薄膜を作成できることを見出した。また、金属硫化物の熱的挙動を詳細に研究した結果、硫化第二銅(CuS)から220℃付近で解離される活性硫黄がCZTSの焼結に極めて有効であることを見出した。そして、硫化第二銅(CuS)、硫化亜鉛および硫化第一錫(SnS)をおおよそ2:1:1の範囲で調合してホットプレス法で焼結すると単相多結晶のCuZnSnSを得られることを見出すと共に、十分に安定なスパッタプロセスを実現できることを確認して本発明を完成した。
上記課題は、以下に記載する本発明によって解決される。
即ち、本発明に係る光電変換装置は、基材の上にn型半導体透明導電膜と金属電極とに挟まれてp型半導体光吸収層が積層されており、前記p型半導体光吸収層は銅、亜鉛、錫および硫黄を含み、かつ銅/(亜鉛+錫)の組成比が70原子%以上100原子%未満であり、さらに前記基材の軟化点または融点を350℃以下とすることができる。ここで、基材はp型半導体光吸収層に対してn型半導体透明導電膜側に配置されてもよいし、金属電極側に配置されてもよい。また、n型半導体透明導電膜とp型半導体光吸収層の間にはn型半導体透明導電膜よりも電子濃度の少ないn型またはi型の透明半導体を挿入してもよい。p型半導体光吸収層は吸収端が1.2eV〜1.8eVの範囲にあると、太陽光に対して高い光電変換効率を得易いのでよい。また、銅/(亜鉛+錫)の組成比が70原子%以上あると硫化物薄膜がカルコパイライト構造を構成し、良好な半導体特性を得易いのでよい。一方、銅/(亜鉛+錫)の組成比を100原子%未満とすると銅空孔が正孔を生成し、良好なp型導電性を得易いのでよい。軟化点または融点が350℃以下基材の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、アラミド、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体、ポリカーボネート、アクリルなどの樹脂が挙げられる。軟化点または融点を350℃以下の基材は板状やフレキシブルなフィルム状に成形し易く、ガラスなどの無機物と比較して割れにくく、しかも低比重で軽量なものを得易いため、大面積の光電変換装置向けの基材として適している。また、大面積で光電変換装置を作成した後で所望の面積あるいは形状に分割する際に、基材の軟化点または融点を350℃以下としておくことで超音波カッターなどを用いて容易に加工できるのでよい。
また、本発明に係る光電変換装置は、基材が透明であり、前記基材に接してn型半導体透明導電膜が形成されている構成とすることができる。ここでの透明とは、波長380nm〜1200nmの範囲における平均透過率が75%以上あるものをいう。また、n型半導体透明導電膜としては、例えば酸化インジウム錫、酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタン、あるいはこれらの複合化合物が挙げられる。また、電子密度を高めるためにドナー不純物が適宜添加されているものが好ましい。
また、本発明に係る硫化物焼結体ターゲットは、銅、亜鉛、錫および硫黄を含み、結晶構造が単相多結晶とすることができる。単相多結晶の具体的結晶構造の例としては、銅:亜鉛:錫:硫黄の原子数比が2:1:1:4付近で成り立つカルコパイライト構造が挙げられる。なお、カルコパイライト構造には結晶構造の酷似したケステライト構造とスタナイト構造が含まれるが、ここいう単相ではケステライト構造とスタナイト構造を区別せずカルコパイライト構造とする。また、単相多結晶構造を維持する範囲であればスパッタターゲットとしてスパッタリング中でも十分安定な状態を維持できるので、組成比は必ずしも化学量論的組成比と一致していなくてもよく、銅、亜鉛、錫、硫黄以外の元素が焼結助剤やp型導電性を高めるアクセプタなどの目的で適宜添加されていてもよい。
また、本発明に係る硫化物焼結体ターゲットは、銅、亜鉛、錫および硫黄を含み、硫黄の組成比が48.0原子%〜52.0原子%の範囲にあり、単相多結晶かつp型伝導性とすることができる。硫黄は硫化物の結晶構造を支配する重要な原子であるが、金属原子に対して組成比が48原子%以下となると硫化物焼結体がたとえ単相多結晶構造をとったとしても硫黄原子が欠落すると硫黄空孔部分の電子がドナー電子として作用し、良好なp型半導体特性を得にくくなるので好ましくない。また、硫黄組成比が52.0原子%以上となると、過剰な硫黄が結晶内部や粒界部分に留まることができず、スパッタリング時の熱エネルギーにより揮発し、安定なスパッタ成膜を行えなくなるので好ましくない。
また、本発明に係る硫化物焼結体ターゲットは、銅/(亜鉛+錫)の組成比が70原子%以上とすることができる。銅/(亜鉛+錫)の組成比が100原子%の場合は化学量論的組成比のカルコパイライト構造が成立し得るが、正孔濃度が低くなり、良好なp型導電性半導体特性を得ることが困難となるが、70原子%以上とすると銅原子空孔が正孔として作用するのでよい。ただし、70原子%以下とすると結晶性が悪化し、正孔密度および正孔移動度が共に低下し、良好なp型導電性半導体特性を得にくくなるので好ましくない。銅/(亜鉛+錫)の組成比は好ましくは、80原子%以上95%以下の範囲が好ましい。
また、本発明に係る光電変換装置の製造方法は、本発明に係る硫化物焼結体ターゲットをターゲットとして用いて、基材上に基材温度250℃以下でスパッタリング法によりp型半導体光吸収層を形成する工程を含むことができる。本発明に係る硫化物焼結体ターゲットは単相多結晶であるため、熱的に不安定な硫化銅、硫化錫、硫黄各々単体を含まないため、スパッタリング時にアルゴン等のプラズマにさらされても硫黄等の蒸気圧の高い原子が選択的に揮発することがなく、安定に化合物薄膜を作成できるのでよい。また、ターゲットの金属組成比を調製することでスパッタ成膜される膜中の金属組成比を制御し、膜の光学的特性や電気的特性を制御できるので良い。また、ターゲットは焼結され十分堅牢なため、顆粒を敷き詰めたものや粉体をコールドプレスしたものと比較して取り扱い易いのでよい。また、焼結されていることにより熱伝達係数が顆粒を敷き詰めたものや粉体をコールドプレスしたものと比較して高くできるため、被スパッタ面の裏面側から冷却することで、ターゲット表面まで冷却することが容易となり、熱的に硫黄が蒸発することをさらに抑制できるのでよい。また、スパッタ成膜時の基材温度は特に加熱しなくてもスパッタ粒子の運動エネルギーにより膜の結晶化エネルギーを供給することは可能であるが、250℃以下の範囲で加熱すると結晶性を改善し易いのでよい。なお、スパッタ成膜時の基材温度を250℃以上とすると基材またはスパッタ被膜に付着しようとする硫黄粒子が再蒸発し易くなり、結果として膜中の硫黄成分が欠乏し結晶性の低下ならびに光学的および電気的特性が悪化するのでよくない。
また、本発明に係る光電変換装置の製造方法は、基材を本発明に係る硫化物焼結体ターゲットに対して移動させながら、前記基材上にp型半導体光吸収層を形成する工程と、前記工程に引き続き前記p型半導体光吸収層を250℃以下で熱処理する工程を有することができる。基材を硫化物焼結体ターゲットに対して移動させるには、基材と硫化物焼結体ターゲットとの最短距離を一定に保ったまま一定速さで移動させると、均一かつ均質な膜質を安定に作成し易いのでよい。また、基材が複数の硫化物焼結体ターゲットの近傍を通過する場合は、各硫化物焼結体ターゲットと基材との最短距離は必ずしも同一にする必要はない。また、基材が硫化物焼結体ターゲット近傍を往復させて移動させてもよい。この様に基材を結体ターゲットに対して移動させながら基材上にp型半導体光吸収層を形成する方法としてはインライン方式スパッタやロール・ツー・ロール方式スパッタが挙げられる。また、p型半導体光吸収層を形成する工程に引き続きp型半導体光吸収層を250℃以下で熱処理する場合は、両工程の間でp型半導体光吸収層を空気や大気に暴露しないこととする。これによりp型半導体光吸収層への不純物の混入や表面の酸化等の劣化を抑制できるのでよい。p型半導体光吸収層のスパッタ工程と熱処理工程の間の時間間隔には特に制限は無いが、できるだけ短い方が時効効果や時硬効果あるいは拡散効果などによりスパッタされた膜が好ましくない状態で安定化してしまう前に熱処理の効果を発現し易いのでよい。また、熱処理雰囲気圧力はスパッタ工程と同程度の圧力にすると、両工程を行う空間を連通させ、基材を搬送し易くなるのでよい。熱処理の効果としては、主に結晶性の改善による光学的および電気的特性の改善が挙げられる。成膜後の熱処理効果はスパッタ成膜時の基板加熱効果とは異なり、膜中に既に硫黄が所望の組成で取り込まれているため、膜中の硫黄は再蒸発する前に周りの金属原子と化合するため結晶性が改善される。ただし、熱処理を250℃以上で行うと熱処理雰囲気が真空の場合は膜中の硫黄が選択的に蒸発して欠乏し易くなるので好ましくない。逆に、熱処理温度250℃以下では良好な熱処理効果を得られるため、p型半導体光吸収層のスパッタ工程における基材温度を150℃以下としてスパッタ成膜時の硫黄の欠乏を抑制しておき、後の熱処理で特性改善できるのでよい。
また、本発明に係る光電変換装置の製造方法は、基材上に、1回あたり膜厚150nm以下のp型半導体光吸収層を形成した後、真空中で熱処理を行う工程を複数回行うことによって、500nm以下の膜厚のp型半導体光吸収層を形成する工程を有することができる。p型半導体光吸収層のスパッタ成膜において所望の時間内で1回あたりに膜厚150nmを超える膜を作成するためにスパッタ放電電力を大きくすると、プラズマからの輻射熱、プラズマ粒子による衝突エネルギーおよびスパッタ膜の凝集潜熱などにより基材温度が250℃を超えてしまい、膜中の硫黄が蒸発して欠乏したり、基材に熱的損傷を与えたりするので好ましくない。また、基材温度250℃以下で1回あたりに膜厚150nmを超える膜を作成するために成膜時間を長くすると、著しく時間がかかり生産性を望めないので好ましくない。これに対し、1回あたり膜厚150nm以下で成膜することで所望の組成比を得ることが容易となり、続く真空中での熱処理により結晶性を改善することができるのでよい。また、p型半導体光吸収層の形成とこれに続く真空中での熱処理を複数回行う場合には、熱処理とp型半導体光吸収層の形成の間に基材およびp型半導体光吸収層を冷却する工程を行うと、基材およびp型半導体光吸収層への蓄熱を抑制でき、良好な光電変換装置を作成し易くなるのでよい。なお、基材およびp型半導体光吸収層を冷却する工程の具体例としては基材の裏面に冷却可能なホルダーを配置し、このホルダーにできるだけ基材を密接させる方法が挙げられる。
また、本発明に係る光電変換装置の製造方法は、基材がn型半導体透明導電膜付き基材とすることができる。n型半導体透明導電膜としては、例えば酸化インジウム錫、酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタン、あるいはこれらの複合化合物が挙げられる。また、電子密度を高めるためにドナー不純物が適宜添加されているものが好ましい。また、透明導電膜がn型半導体とすることで、p型半導体光吸収層との界面にpn接合を形成し光電変換装置を実現できるのでよい。なお、光電変換装置の製造方法としては、光吸収層を形成した後に透明導電膜を形成する方法、透明導電膜を形成した後に光吸収層を形成する方法、および光吸収層と透明導電膜を別々に形成した後両者を接合する方法が挙げられるが、光吸収層が硫化物である場合にはこの上に透明導電膜をスパッタ法などで積層すると、光吸収層表面の酸化や硫黄の蒸発あるいは結晶性の乱れが生じるので好ましくない、逆に、透明導電膜の上に本発明によりp型半導体光吸収層を形成する場合には基板温度および/または熱処理温度を250℃以下にできるため、通常300℃程度の耐熱性のある酸化物透明導電膜では特性が劣化することを回避できるのでよい。また、基材が有機物である場合には、その表面にスパッタ加工を行う際に基材表面から水やオリゴマーなどが放出され、成膜雰囲気の汚染や基材と膜の界面特性を劣化させ易くなるので好ましくない。一方、基材がn型半導体透明導電膜付き基材の場合には、本発明によりp型半導体光吸収層を形成する際にn型半導体透明導電膜が基材表面のバリア層としても機能するため、良好なp型半導体光吸収層を形成し易くなるのでよい。なお、n型半導体透明導電膜には領域分割のためのスクライブ加工により溝が形成されていたとしても、基材面積全に対して少ない面積であり、またスクライブ溝上に形成されるp型半導体光吸収層とはpn接合を形成する必要がないので問題にはならない。
また、本発明に係る硫化物焼結体ターゲットの製造方法は、第二硫化銅、硫化亜鉛および硫化錫の粉体を混合した後、ホットプレス法にて10MPa以上かつ700℃以上で1時間以上焼結することができる。第二硫化銅、硫化亜鉛および硫化錫はできるだけ細かい粒径でかつ粒度分布の少ない粉体を用いると、焼結前に組成分布をある程度均一化できるだけでなく、プレス時の粉体間の空間を少なくできるため、粉体間の焼結や焼結のための熱が伝達され易くなり、結果として硫黄成分の表面拡散や蒸発を抑制できるのでよい。また、コールドプレスにより成形したものを常圧または真空雰囲気で焼結すると、粉体間の隙間から硫黄が蒸発してしまうため所望の焼結体を得ることは極めて困難である。一方、本発明ではホットプレス法を用いることで硫黄の蒸気圧に対してプレス圧により蒸発を抑制し、かつ粉体が軟化し始めた時点でプレス圧により粉体間距離が狭められるので、硫黄が蒸発する前に焼結を促進できるのでよい。なお、プレス圧はできるだけ高いことが望ましいが、焼結温度700℃以上で10MPa以上とすると単相多結晶の硫化物を得易くなるのでよい。ただし、焼結温度を1100℃以上でプレス圧力を50MPa以上とすると軟化した硫化物がダイスから漏れ出す恐れがあるので好ましくない。また、第二硫化銅、硫化亜鉛および硫化錫の各粉体をボールミル等で粉砕混合する場合は粉体の温度が200℃を超えないようにすると、粉体同士の融着や硫黄の脱離を抑制し易いのでよい。また、混合された粉体はホットプレスを行う前に80℃以下で真空乾燥すると、焼結時に水と硫化物が反応して硫化水素が発生することを防ぐことができるのでよい。また、焼結助剤として硫黄粉末を適宜添加すると焼結を促進できるのでよい。また、プレス加圧は上下両方から同時に行うと、焼結体表裏で焼結が進むことにより、未反応の硫黄成分が内部に閉じ込められて焼結が行われるのでよい。また、焼結時間は10MPa以上かつ700℃以上の場合1時間以上行うことで単相多結晶の焼結体が得られるのでよい。
本発明の光電変換装置は、耐熱性の低いフレキシブルな基材の上に形成されているため、太陽電池として適用すると曲面に合わせて据え付けることが容易になるという利点がある。また、光吸収層が硫化物であるため、有機材料や色素を用いるものと比較して耐光性が高く、屋外で用いても長寿命である利点がある。
また、本発明の光電変換装置の製造方法は、硫化物からなるp型半導体光吸収層を250℃以下の低温で作成できるため、ロール・ツー・ロール方式などを用いて安価に量産することができる利点がある。また、透明導電膜付き基材に光吸収層を形成できるため、透明基材側から光を取り込むスーパーストレート構造の光電変換装置を作成できる利点がある。
また、本発明の硫化物焼結体ターゲットは、単相多結晶であるため安定なスパッタ成膜を実施することができる利点がある。また、金属原子の組成比を適宜調節できるため電気的特性と光学的特性を制御して良好なp型光吸収層を作成できる利点がある。
また、本発明の硫化物焼結体ターゲットの製造方法は、第二硫化銅、硫化亜鉛および硫化錫の粉体を用いるため、金属粉末や硫黄粉末を用いなくても金属と硫黄の組成比を1:1としながら金属の組成比を調製できる利点がある。また、220℃で分解し活性な硫黄を生成する第二硫化銅を用いることでカルコパイライト型のp型導電性単相多結晶焼結体を容易に製造できる利点がある。
図1は本発明による硫化物焼結体ターゲットの密度、導電型および表面シート抵抗の説明図である。(実施例1) 図2は本発明による硫化物焼結体ターゲットの組成比の説明図である。(実施例1) 図3は本発明による硫化物焼結体ターゲットの結晶構造を説明する図である。(実施例1) 図4は本発明によるp型半導体光吸収層の組成比の関係を説明する図である。(実施例2) 図5は本発明によるp型半導体光吸収層の組成比の関係を説明する図である。(実施例2) 図6は本発明によるp型半導体光吸収層の組成比の関係を説明する図である。(実施例2) 図7は本発明によるp型半導体光吸収層の結晶構造を説明する図である。(実施例2) 図8は本発明によるp型半導体光吸収層の光吸収特性を説明する図である。(実施例3) 図9は本発明による光電変換装置のpn特性を説明する図である。(実施例4) 図10は本発明によるp型半導体光吸収層の成膜方法を説明する図である。(実施例4)
低耐熱性基材にCZTS薄膜を光吸収層に用いた光電変換装置を再現性よく作成するという目的を、高温プロセスや有毒ガスを用いずに実現した。
先ず、硫化物焼結体ターゲットの作成を行った。以下にその手順を示す。第二硫化銅(和光純薬(株)製)、硫化亜鉛(和光純薬(株)製)および硫化錫(Alfa Aesar製)を異なるモル比で調合したものを3種類用意し、それぞれ乳鉢で均一に混ぜ合わせた。次に、直径20mmのカーボンダイス内に乳鉢内の混合粉末を充填し、Ar-5%H雰囲気中700℃11MPaで1時間焼結した。焼結体は離型用のカーボン紙で包まれているため、研磨を行い表面のカーボンを除去した。焼結体はいずれも直径30mmで厚み2.2mmであった。
次に、焼結した3種類の焼結体の密度、導電型および表面シート抵抗を測定した。なお、比重は、音響式体積計(リオン(株)製)と電子天秤((株)島津製作所製AUW120D)を用いて測定した体積と質量から求めた。また、導電型はサーモプロープ法によりpn判定を行った。具体的には、作成した焼結体にデジタルマルチメータ(Keithley社2001)のプローブを接触させ、陽極側のプローブを半田ゴテで加熱した時に生じる電圧の極性を調べ、負電圧の場合はp型、正電圧の場合はn型とした。また、表面のシート抵抗は四探針測定器((株)三菱化学製MCP−T600)を用いて測定した。
図1に、各硫化物焼結体の密度、導電型および表面シート抵抗を示す。密度は0.485〜4.574であり、ICCD(The International Centre for Diffraction Data)のCuZnSnS単結晶の密度データ4.567と比較して89.4%以上である。すなわち、スパッタ用焼結体ターゲットとして使用できる程度に緻密に焼結できていることを確認した。また、導電型はいずれもp型であることを確認できた。更に、表面シート抵抗は45.3Ω/□〜680Ω/□の範囲であり、p型半導体であることを確認した。
次に、各焼結体の組成比を電子プローブマイクロ分析(Electron Probe Micro Analyzer:
EPMA)((株)日立ハイテクノロジース製 S−4100)を用いて調べた。測定位置は,試料の中心を通るように横1列5箇所選び、走査型顕微鏡により35倍に拡大した。約1mmの範囲に加速電子を当て、そこから発生するX線を測定した。得られた信号を装置内部の標準試料で補正し組成比を得た。
図2に、各焼結体の組成比を示す。化学量論的組成比のCuZnSnSの場合は、銅25原子%、亜鉛12.5原子%、錫12.5原子%、硫黄50原子%であるが、本発明によるp型半導体硫化物焼結体はおおよそその範囲となっていた。特に硫黄を48.5原子%〜51.3原子%の範囲にあり、硫黄が極端に過不足無く取り込まれていることが確認できる。また、各焼結体で銅/(亜鉛+錫)の比率を43原子%〜112原子%の範囲で調製できていることを確認した。
次に、各焼結体の結晶構造をX線回折装置((株)リガク製 RINT2200)を用いて行った。なお、試料はそのまま試料台に貼り付けて測定を行った。また、X線の加速電圧は40kV、管電流は40mAとし、Cuターゲットに衝突させて得られるKα線(波長0.154050nm)を用いた。強度の強いKα1線を光源とし、Kα2線は後に解析処理にて除去を行った。図3に各焼結体のX線回折ピークと共にICCD(The International Centre for Diffraction Data)のデータによるCuZnSnS、CuS、CuS、ZnS、SnS、およびSnSの回折ピークを示す。この様に、焼結体1〜3のいずれもCuZnSnSの(112)、(220)および(312)に起因するピークを示し、かつ原料粉末やその他のピークは示していない。すなわち、本発明による硫化物焼結体はカルコパイライト型の単相多結晶であることを確認できた。
次に、実施例1で説明した焼結体をターゲットに用いてスパッタ法によりポリエチレンテレフタレート(東レ(株)製ルミラー(登録商標)T60
厚み50μm)上にp型半導体光吸収層を作成した。スパッタ装置はNEVA社製マグネトロンスパッタ装置(FP−21B高周波二極スパッター装置)を用いたが、直径30mmの焼結体の上でマグネトロンプラズマを形成するためにカソードの磁場ヨークを改造して使用した。このカソードの中央に焼結体を置き、焼結体周辺では不要なプラズマが生成しないように接地シールドを配置した。ポリエチレンテレフタレートフィルムは26mm×75mmサイズに切り取り、26mm×76mmサイズ同サイズの白板スライドガラス(厚み1mm)にクリップで固定した。これをターゲット直上に平行に配置し、ターゲットとポリエチレンテレフタレートフィルムとの距離は100mmとした。なお、フィルム幅をガラス幅よりも1mm狭くすることでガラス上にも膜を堆積させ、フィルムでマスクされた部分との段差を膜厚として測定した。
次に、チャンバー内をターボポンプとロータリーポンプを用いて3×10−3Paまで排気した後、アルゴンガス(純度99.9999%以上)を10SCCM導入した。この状態で排気速度を調節してチャンバー内圧力を1.0Paに保った。にお、カソードヘッドには15℃の冷水を循環させ焼結体を裏面から冷却した。次に、ターゲットとポリエチレンテレフタレートフィルムの間にあるシャッターを閉めた状態で13.56MHz、50Wの高周波電力をカソードに印加しプラズマを生成した。このまま15分間のプレスパッタを行い、ターゲット表面の清浄化と安定化を行った。このときプラズマ点灯に伴う圧力上昇は観測できなかった。プレスパッタ後シャッターを開けて成膜を開始し、60分後に放電を停止した。その後チャンバーを大気開放し、成膜されたポリエチレンテレフタレートフィルムを取り出した。同様に焼結体2および3を用いた場合についても同一条件でそれぞれ3回ずつ成膜を行った。
取り出したフィルムにはいずれも熱的な変形は見られなかった。すなわち、スパッタ成膜中にポリエチレンテレフタレート基材は(東レ(株)製ルミラーT60)のビカット軟化点温度である240℃に達していないと判断できる。また、スパッタ膜の応力によるカールも見られず、密着力は良好であった。膜の色は光沢のある濃い褐色であり、強い光を通して見ると少し透過して見え、各焼結体を用いて作成した計9枚の膜についてはいずれも目視では区別できる違いは見られなかった。なお、これら9枚のガラス基板に付着した膜厚を触針式表面荒さ測定器((株)アルバック Dektak(登録商標)
6M)を用いて測定したところ中心付近の最も厚い部分で840nm〜880nmの範囲であった。すなわち、いずれの焼結体も50Wの電力で延べ180分以上スパッタしたにもかかわらず安定に成膜できることを確認した。また、各膜のシート抵抗を四探針法により測定したところ、5MΩ/□〜10MΩ/□の範囲であった。また、膜の導電型をサーモプローブ法により確認したところいずれもp型であった。
次に、ポリエチレンフィルム上に作成した膜の組成比をEPMAにより測定した。図4に焼結体1、図5に焼結体2、図6に焼結体3を用いて作成した膜の組成比データを示す。なお、図の横軸の10mmの一が膜の中央位置である。この様にいずれの膜にも硫黄が50%以上導入できていることがわかる。また、銅、亜鉛、錫の比率はターゲットの比率とよい相関を示しており、ターゲットの組成比により膜の金属元素の組成比を制御できていることがわかる。
図7に焼結体1〜3を用いて作成した膜の結晶構造をX線回折ピークにより調べた結果を示す。また、ICCD(The International Centre for Diffraction Data)のデータによるCuZnSnS、CuS、CuS、ZnS、SnS、およびSnSの回折ピークを示す。この様に、240℃以下の低温で成膜したにもかかわらずCuZnSnSの(112)、(220)および(312)に起因するピークを示し、かつ原料粉末やその他のピークは示していない。図3の焼結体のX線回折データと比較するとピーク幅が広く結晶性が低いものの、本発明によるp型光吸収層はカルコパイライト型の単相多結晶構造を持つといえる。
次に、焼結体1〜3を用いてポリエチレンテレフタレートフィルム上に作成した膜の吸収係数から求めた。吸収係数は紫外可視分光光度計((株)島津製作所製UV−1600PC)を用い、リファレンスには基材に用いたものと同じポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製ルミラーT60)を用いた。この測定により得られた膜の吸収係数αとプランク定数hおよび光の振動数νから図8に示す(αhν)対hνのグラフを作成した。この様に、曲線から(αhν)=0に対して外挿した直線より求められる吸収端(バンドギャップ)は、焼結体1を用いた場合で約1eV、焼結体2と3を用いた場合は約1.8eVであった。この様に、本発明により作成されたp型半導体光吸収層は可視光に対して十分な吸収係数を持ちかつ太陽光に対して有効な吸収端を有することが確認できた。
次に、実施例2で用いたものと同じスパッタ装置を用いてポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製ルミラーT60
厚み50μm)上に光電変換装置を作成した。先ず、スパッタターゲットとして酸化亜鉛に酸化アルミを2.0重量%添加された焼結体ターゲット(フルウチ化学(株)製)をカソードヘッドに配置した。ターゲットのサイズは直径76mm、厚み5mmである。ターゲット材料以外は実施例に2と同様の条件で透明導電膜をスパッタ成膜した。ただし、成膜時間は40分とした。成膜されたフィルム基材を取り出し、表面シート抵抗を四探針測定器((株)三菱化学製MCP−T600)を用いて測定したところ40Ω/□であった。また、サーモプローブ法により導電型を調べたところn型であった。同様に計3枚の透明導電膜付きフィルムを作成した。スライドガラスに付着した膜の厚みを触針式表面荒さ測定器((株)アルバック Dektak
6M)を用いて測定したところ520nmであった。
次に、透明導電膜を作成したフィルムの透明導電膜面に、実施例2と同様の条件で焼結体1〜3をターゲットとして用いてCuZnSnSp型半導体光吸収層を形成した。作成された膜の密着力は良好で光沢のある濃い褐色であった。
次に、n型半導体透明導電膜にp型半導体光吸収層が積層された部分の一部にモリブデン金属をスパッタ法により作成した。予め、アルミ箔に直径5mmの円形の穴を10mm間隔で3カ所設けたものをマスクとしてp型半導体光吸収層面に被覆した。次にターゲットを直径76mm厚み5mmのモリブデン(フルウチ化学製 純度99.99%)をカソードヘッドに配置した。その後実施例2と同じセッティングを行いスパッタ成膜した。ただし、プラズマ放電には直流電源を用い定電流モードで300mAとし、成膜時間は15分とした。成膜後スライドガラスに付着した膜の厚みを触針式表面荒さ測定器((株)アルバック Dektak
6M)を用いて測定したところ350nmであった。また、マスクを外したところ良好にモリブデン膜が形成されていた。同様に、焼結体1〜3を用いて作成した資料について同様にモリブデン電極を形成した。
次に、作成した光電変換装置の透明電極露出部とモリブデン電極部にそれぞれ銀ペーストにより導線を接続しpn特性を測定した。図9に焼結体3を用いて作成した場合のpn特性の一例を示す。
次に、本発明によるp型半導体光吸収層の作成後に熱処理を行う効果を確認した。スパッタ装置としてカルーセル型マグネトロンスパッタ装置(アネルバ社製SPC−350)を用いた。装置の構成を図10に示す。真空チャンバー1の内部に回転可能な基板ホルダー2が備えられており、その周辺にカソード3−1〜3−4が配置されている。また、カソード3−1〜3−4の間にハロゲンランプ4−1〜4をホルダーに向かって配置するように改造を施してある。なお、ホルダーの平面部がターゲット面に正対した場合の距離は100mmとした。
先ず、カソード3−1を直径30mmの焼結体の上でマグネトロンプラズマを形成できるようにするためにカソードの磁場ヨークを改造した。また、このカソードの中央に焼結体3を配置し、焼結体周辺では不要なプラズマが生成しないように接地シールドを配置した。なお、カソード3−2〜3−4には使用しなかった。
次に、ホルダー2の1つの面に50mm×50mmのポリエチレンテレフタレート基材(東レ(株)製ルミラーT60)をポリイミド製の耐熱テープで固定した。また、フィルム基材を装着したホルダー面の隣の面に膜厚測定用に一部マスクを施した白板スライドガラスをポリイミド製耐熱テープで固定した。その後、チャンバー内を3×10−3Pa以下に排気し、引き続きアルゴンガス(純度99.9999%以上)を10SCCM導入し、排気速度を調節してチャンバー内圧力を1.0Paに保った。次に、フィルムを装着したホルダー面をカソード3−3に対向する位置に止め、ホルダー2とカソード3−1間にあるシャッターを閉じた状態でプレスパッタを15分行った。放電は13.56MHzの高周波電力50Wとした。プレスパッタ終了後、ホルダー2を一定速度2.6回/分で回転させた。このとき、ホルダー2に装着されたフィルムがターゲット前を移動する速度は約5.0m/分である。次に、ハロゲンランプ4−1を150Wで点灯し5分間安定させた。その他のハロゲンランプ4−2〜4−4は使用しなかった。その後、シャッターを開けてフィルム上に成膜を行った。成膜時間は480分とした。
成膜後、フィルムと膜厚測定用スライドガラスを取り出した。膜の色は光沢のある濃い褐色であった。また、フィルムは変形や収縮およびカールなど熱による影響は見られなかった。また、スライドガラス上の膜厚を触針式表面荒さ測定器((株)アルバック Dektak
6M)を用いて測定したところ、中央部の最も厚い部分で820nmであった。また、膜のシート抵抗を四探針法により測定したところ55kΩ/□であった。また、サーモプローブ法により導電型を確認したところp型であった。また、X線回折装置((株)リガク製 RINT2200)を用いて膜の結集構造を確認したところ、CuZnSnSの(112)、(220)および(312)に起因するピークのみを示しカルコパイライト型の単相多結晶であることを確認できた。なお、このときの(112)ピークの半値幅は、実施例2図7の焼結体3を用いた場合の(112)ピークと比較して約半分に担っており、ハロゲンランプによるアニール効果により結晶性が改善したものと考えられる。
本発明は太陽電池などの光電変換装置の分野に利用できる。特に、250℃以下の温度で光吸収層を作成できるため、樹脂基材等の軽量および/またはフレキシブルな基材上に形成された光電変換装置を実現できる。
1 チャンバー
2 ホルダー
3 カソード
4 ハロゲンランプ














Claims (10)

  1. 基材の上にn型半導体透明導電膜と金属電極とに挟まれてp型半導体光吸収層が積層されており、前記p型半導体光吸収層は銅、亜鉛、錫および硫黄を含み、かつ銅/(亜鉛+錫)の組成比が70原子%以上100原子%未満であり、さらに前記基材の軟化点または融点が350℃以下であることを特徴とする、光電変換装置。
  2. 基材が透明であり、前記基材に接してn型半導体透明導電膜が形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の光電変換装置。
  3. 銅、亜鉛、錫および硫黄を含み、結晶構造が単相多結晶であることを特徴とする、硫化物焼結体ターゲット。
  4. 銅、亜鉛、錫および硫黄を含み、硫黄の組成比が48.0原子%〜52.0原子%の範囲にあり、かつp型伝導性であることを特徴とする、請求項3に記載の硫化物焼結体ターゲット。
  5. 銅/(亜鉛+錫)の組成比が70原子%以上であることを特徴とする、請求項3または4に記載の硫化物焼結体ターゲット。
  6. 請求項3〜5のいずれかに記載の硫化物焼結体をターゲットとして用いて、基材上に基材温度250℃以下でスパッタリング法によりp型半導体光吸収層を形成する工程を含むことを特徴とする、光電変換装置の製造方法。
  7. 基材を請求項3〜5のいずれかに記載の硫化物焼結体ターゲットに対して移動させながら、前記基材上にp型半導体光吸収層を形成する工程と、前記工程に引き続き前記p型半導体光吸収層を250℃以下で熱処理する工程を有することを特徴とする、請求項6に記載の光電変換装置の製造方法。
  8. 基材上に、1回あたり膜厚150nm以下のp型半導体光吸収層を形成した後、真空中で熱処理を行う工程を複数回行うことによって、500nm以下の膜厚のp型半導体光吸収層を形成する工程を有することを特徴とする、請求項6または7に記載の光電変換装置の製造方法。
  9. 基材がn型半導体透明導電膜付き基材であることを特徴とする、請求項6〜8のいずれかに記載の光電変換装置の製造方法。
  10. 第二硫化銅、硫化亜鉛および硫化錫の粉体を混合した後、ホットプレス法にて10MPa以上かつ700℃以上で1時間以上焼結したことを特徴とする、硫化物焼結体ターゲットの製造方法。
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