JP2016082120A - 太陽電池用光吸収層およびその製造方法、並びに前記太陽電池用光吸収層を有する太陽電池 - Google Patents

太陽電池用光吸収層およびその製造方法、並びに前記太陽電池用光吸収層を有する太陽電池 Download PDF

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Abstract

【課題】太陽光の光電変換効率が一層高められた新規なCIGS系光吸収層および当該CIGS系光吸収層を備えた太陽電池を提供する。
【解決手段】本発明の太陽電池用光吸収層は、Cu、In、Ga、およびSeを含むスパッタリングターゲットを用いて得られる太陽電池用光吸収層であって、光吸収層はCu、In、Ga、およびSeを含み、且つ、InとGaの合計に対するCuの比が、原子比で0.67以上0.87以下を満足する。
【選択図】なし

Description

本発明は、Cu、In、Ga、およびSeを含む化合物半導体薄膜を太陽電池用光吸収層として用いるCIGS系太陽電池用光吸収層およびその製造方法、並びに上記CIGS系太陽電池用光吸収層を備えたCIGS系太陽電池に関する。
本明細書では、Cu、In、Ga、およびSeを含む化合物半導体薄膜;Cu、In、Ga、およびSeを含む光吸収層;Cu、In、Ga、およびSeを含む光吸収層を備えた太陽電池をそれぞれ、CIGS系半導体薄膜、CIGS系光吸収層、CIGS系太陽電池と略記する場合がある。
Cu、In、Ga、およびSeを含むCIGS系半導体薄膜は、太陽電池の光吸収層として汎用されている。CIGS系の光吸収層は、Cu、In、およびSeを含むCIS系の光吸収層に比べてバンドギャップがやや大きい。また、CIGS系の光吸収層を用いれば、光吸収層に適したカルコパイライト相が安定化する組成範囲が拡大されるため、太陽光の光電変換効率が向上し、発電効率が高い。
CIGS系光吸収層の成膜に当たっては、例えば特許文献1に記載されているように、スパッタリングにより形成されたCu−Ga膜およびIn膜を積層し、得られた積層膜についてSeを含有するガス雰囲気中で熱処理してCu−In−Ga−Se系化合物膜を形成する方法が用いられている。しかし、上記成膜方法では、Cu−Ga二元系合金およびInのそれぞれの成膜用チャンバーとスパッタリングターゲット材が必要であるという問題がある。更に上記成膜方法では、Se雰囲気中で熱処理を行うために熱処理炉も必要であり、製造コストが高いという問題もある。
そこで、CIGS系化合物膜を効率良く成膜するため、セレン化処理を行うことなく光吸収層を形成するための方法が提案されている。このような方法として、例えば、Cu−In−Ga−Se系化合物粉末を用いた印刷法、Cu−In−Ga−Se系化合物を用いた蒸着法などが挙げられる。また、特許文献2に記載のように、Cu−In−Ga−Se四元系合金スパッタリングターゲット材を用いたスパッタリング法も提案されている。特にスパッタリング法は成膜制御性に優れており、大面積基板上に均一で再現性の高い成膜が可能な技術として注目されている。
一方、非特許文献1および非特許文献2には、Cu−In−Ga−Se四元系スパッタリングターゲット材を用いてCIGS系光吸収層を製造する方法が報告されている。このうち非特許文献1では、CIGS系光吸収層の成膜時における基板温度を550℃の高温に設定している。また、非特許文献2では、Cu−In−Ga−Se四元系スパッタリングターゲットを用い、基板温度を室温に設定してCIGS系光吸収層を成膜した後、セレン雰囲気で熱処理を施している。
特許第3249408号公報 特開2008−163367号公報
Photovoltaic Specialists Conference(PVSC),2011 37th IEEE Page(s):000379−000381 Progress in Photovoltaics:Research and Applications,Volume 19,Issue 2,pages 160−164,March 2011
前述したようにCu−In−Ga−Se四元系スパッタリングターゲット材を用いてCIGS系光吸収層を製造する方法はこれまでにも提案されているが、太陽光の光電変換効率が一層高められたCIGS系光吸収層の提供が望まれている。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、太陽光の光電変換効率が一層高められた新規なCIGS系光吸収層および当該CIGS系光吸収層を備えた太陽電池を提供することにある。
本発明の他の目的は、上記CIGS系光吸収層を効率よく製造することのできる製造方法を提供することにある。
上記課題を解決し得た本発明の太陽電池用光吸収層は、Cu、In、Ga、およびSeを含むスパッタリングターゲットを用いて得られる太陽電池用光吸収層であって、前記光吸収層はCu、In、Ga、およびSeを含み、且つ、InとGaの合計に対するCuの比が、原子比で0.67以上0.87以下を満足するところに要旨を有する。
また、上記課題を解決し得た本発明に係る太陽電池用光吸収層の製造方法は、前記InとGaの合計に対するCuの比を満足するようにCu、In、Ga、およびSeを含むスパッタリングターゲットを用意する工程と、基板温度を室温に設定して成膜する工程と、真空雰囲気下で熱処理する工程と、をこの順序で含むところに要旨を有する。
また、上記課題を解決し得た本発明の太陽電池は、上記太陽電池用光吸収層をMo下部電極層の上に有する太陽電池であって、上記Mo下部電極層の抵抗率は50μΩ・cm以上200μΩ・cm以下であるところに要旨を有する。
本発明のCIGS系光吸収層は、成分組成のうちInとGaの合計に対するCuの原子比が適切に制御されているため、光電変換効率が5.0%以上と高い太陽電池が得られる。
また、本発明に係るCIGS系光吸収層の製造方法によれば、基板温度を例えば550℃以上の高温に高めることなく室温で成膜した後、セレンを用いることなく真空雰囲気下で加熱処理しているため、所望とするCIGS系光吸収層を低コスト且つ生産性良く得ることができる。
図1は、CIGS系太陽電池の構成を示す概略説明図である。 図2は、実施例1におけるCIGS系吸収層のCu/(In+Ga)の原子比と、セル変換効率との関係を示すグラフである。 図3は、実施例2におけるMo下部電極層成膜時におけるArガス圧と、Mo下部電極層の抵抗率との関係を示すグラフである。
本発明者らは、太陽電池の光電変換効率を5.0%以上まで向上することが可能な新規のCIGS系光吸収層を提供するため、検討を行った。検討に当たっては、成膜制御性などに優れるスパッタリング法を採用することにし、Cu、In、Ga、およびSnを含む四元系スパッタリングターゲットを用いてCIGS系光吸収層を製造することを第1の前提条件とした。更にスパッタリング法による成膜条件として、基板面内の温度分布を均一にして大面積での成膜を容易にするために基板温度を室温に設定して成膜すること、且つ、その後の加熱処理を、腐食性の毒性物質であるセレンを用いずに行うことを第2の前提条件とした。
なお、Cu−In−Ga−Se四元系スパッタリングターゲット材を用いてCIGS系光吸収層を製造する方法は、例えば前述した非特許文献1および非特許文献2にも記載されている。しかしながら、これらの方法はいずれも、上記第2の前提条件を満足せず、製造コスト、生産性などの点で問題があった。
例えば上記非特許文献1のように基板温度を550℃以上の高温に設定して成膜する方法は、このような高温に耐える部材で成膜装置を構成する必要があり、装置コストが増加する。また、上記方法では、基板面内の温度分布を均一にすることが難しく、大面積での成膜が困難である。基板面内の温度分布を均一にして大面積での成膜を容易にするためには、基板温度を室温に設定して成膜することが望ましい。
これに対して、上記非特許文献2では、基板温度を室温に設定して成膜しているため、上述した問題はない。ところが、上記非特許文献2の方法では、その後に、有毒なセレンを含む雰囲気下で加熱処理しているため、製造時には安全対策が別途必要である。また、セレンは腐食性が強いため、加熱処理炉を腐食耐性の高い部材とする必要があり、設備のコスト増を招く。よって、セレンを用いずに真空雰囲気下で加熱処理することが可能な方法が望まれている。
そして本発明者らは上記の前提条件下、すなわち、Cu、In、Ga、およびSnを含む四元系スパッタリングターゲットを用いるスパッタリング法において、基板温度を室温にして成膜すると共に、その後はセレンを用いずに真空熱処理を行うという前提条件下で製造したとしても、5.0%以上の高い光電変換効率が得られる太陽電池用CIGS系光吸収層を提供するとの観点から、当該CIGS系光吸収層の成分組成を中心に更に検討を行った。その結果、InとGaの合計に対するCuの原子比、すなわち、Cu/(In+Ga)の原子比が0.67以上0.87以下を満足するCIGS系光吸収層を用いれば所期の目的が達成されることを見出した。
更に本発明者らは、上記Cu/(In+Ga)の原子比が0.67以上0.87以下を満足するCIGS系光吸収層を、Cu、In、Ga、およびSnを含む四元系スパッタリングターゲットを用いて製造するためには、上記光吸収層と四元系スパッタリングターゲットとの間の組成ずれを考慮して、当該四元系スパッタリングターゲットの組成を適切に制御しなければならないことも見出した。
すなわち、CIGS四元系スパッタリングターゲットのようにスパッタリングターゲットに複数の元素が含まれている場合、各元素のスパッタ率が異なる。そのため、形成したCIGS系光吸収層における組成比は、スパッタリングターゲットの組成比とずれが生じてしまい(組成比の変動)、所望のバンドギャップが得られないなどの問題が生じて光電変換効率が低下することを見出した。そのため、所望とするCIGS系光吸収層を得るためには、当該光吸収層と同一組成のスパッタリングターゲットを用いるのではなく、スパッタリングターゲット中のCu/(In+Ga)の上記原子比がおおむね、0.49〜0.69の範囲に制御されたものを用いることが好ましいことを突き止めた(詳細は後述する)。
この点について詳しく説明する。例えば、一般的な化学量論組成のCIGS四元系スパッタリングターゲットを用いて成膜すると、上記ターゲットに比べて、CIGS系光吸収層のIn含有量またはGa含有量が減少する。特にGaは、スパッタリング中にイオン化してGa含有量が減少し易い傾向にある。すなわち、Cu/(In+Ga)については、スパッタリングターゲットよりも光吸収層の方が高くなる傾向にある。そのため、本発明で規定するCIGS系光吸収層の上記Cu/(In+Ga)の原子比と同じ組成のスパッタリングターゲットを用いてCIGS系光吸収層を成膜した場合、たとえ成膜条件を適切に制御したとしても、当該CIGS系光吸収層中のCu/(In+Ga)の原子比は、上限値の0.87を超えてしまい、導電性が高い光吸収層しか得られないことが判明した。よって、本発明では、Cu/(In+Ga)の好ましい原子比が上記範囲を満足する組成のスパッタリングターゲットを用いることにした。
例えば前述した特許文献2の実施例には、Cu:27原子%、Se:48原子%、In:20原子%、Ga:5原子%からなる成分組成を有するCu−In−Ga−Se四元系合金スパッタリングターゲットが開示されている。上記ターゲットにおけるCu/(In+Ga)の原子比を算出すると27/(20+5)=1.08であり、上記ターゲットを用いて得られるCIGS系光吸収層におけるCu/(In+Ga)の原子比は、1.08より高くなることが予測される。そのため、上記特許文献2では、高い変換効率は得られないと推察される。
また、前述した非特許文献1に記載のターゲットも上記特許文献2と同様、ターゲット中のCu/(In+Ga)の原子比は1超とCu過剰である。そのため、上記ターゲットを用いて得られるCIGS系光吸収層におけるCu/(In+Ga)の原子比も1超となることが予測されるため、やはり高い変換効率は得られないと考えられる。
また、非特許文献1のTable 1には、KCNエッチング前後のCIGS系光吸収層の成分組成が原子比で記載されており、KCNエッチング後のCIGS系光吸収層における、InとGaの合計に対するCuの原子比は0.97〜0.99である。よって、上記非特許文献1に記載のCIGS系光吸収層は、本発明で規定するCu/(In+Ga)の原子比の上限(0.87以下)を大きく超えるため、高い変換効率が得られないことが大いに予測される。
また、前述した非特許文献2に記載のターゲットは、InとGaの合計に対するCuの原子比が1.0であり、やはり、高い変換効率は得られないと予想される。
以下、本発明のCIGS系光吸収層について詳しく説明する。
まず、本発明を最も特徴付けるInとGaの合計に対するCuの原子比、すなわち、Cu/(In+Ga)の原子比について説明する。
CIGS系光吸収層に含まれる上記Cu/(In+Ga)の原子比は、キャリア導電性に関連する要件である。本発明では、上記の原子比を0.67以上0.87以下とする。この範囲は、低コスト、高生産性、高効率の製造プロセスに適したCIGSの成分組成として、本発明者らによる数多くの基礎実験に基づいて決定されたものである。後記する実施例に示すように、上記原子比が、本発明で規定する上限および下限のいずれを外れたとしても、所望とする高いセル変換効率は得られない。
詳細には、上記Cu/(In+Ga)の原子比が大きくなると、CIGS結晶粒の粒界にCu過剰相が生成し、光吸収層の導電性が高くなり過ぎて太陽電池に適した半導体的性質が失われるため、CIGS系光吸収層を光電変換に適したp型半導体とすることができない。よって、本発明では、上記Cu/(In+Ga)の原子比の上限を0.87以下とする。但し、上記Cu/(In+Ga)の原子比が小さくなり過ぎると、CIGS系光吸収層の結晶構造が、光電変換に適したカルコパイライト型から、光電変換に適さないスタナイト型に変化してしまう。よって、本発明では、上記原子比の下限を0.67以上とする。これにより、CIGS光吸収層の結晶構造をカルコパイライト型の単相とすることができる。
上記Cu/(In+Ga)の原子比の下限は、0.71以上であることが好ましく、0.76以上であることがより好ましい。また、上記原子比の上限は、0.85以下であることが好ましく、0.80以下であることがより好ましい。
本発明のCIGS系光吸収層は、Cu、In、Ga、およびSeを含む。前述したように本発明のCIGS系光吸収層は、Cu/(In+Ga)の原子比を0.67〜0.87の範囲に制御したところに最大の特徴があり、上記範囲を満足する限り、他の組成は特に限定されない。但し、本発明のCIGS系光吸収層は、以下の要件を更に満足することが好ましい。
Ga/(In+Ga)の原子比は、バンドギャップに関係するパラメータであり、本発明では、0.05以上、0.55以下の範囲に制御することが好ましい。Ga/(In+Ga)の原子比の上限が0.55を超えると、バンドギャップが大きくなりすぎる。一方、Ga/(In+Ga)の原子比の下限が0.05を下回ると、バンドギャップが低くなりすぎる。Ga/(In+Ga)の原子比は、より好ましくは0.10以上0.50以下である。
Se/(Cu+In+Ga)の原子比は、吸収層中のセレン欠陥量に関係するパラメータであり、本発明では、0.95以上、1.20以下の範囲に制御することが好ましい。Se/(Cu+In+Ga)の原子比は、より好ましくは0.98以上1.15以下である。上記Se/(Cu+In+Ga)の原子比を上記範囲に定めた理由は以下のとおりである。
CIGS系四元系合金スパッタリングターゲットを用いる場合、スパッタリング時の各元素のスパッタ率が異なっている。特にSeは再蒸発などによりCIGS系光吸収層から離脱し易いため、形成したCIGS系光吸収層のCu、In、Gaの合計に対するSeの比は、スパッタリングターゲットにおけるSeの比よりも減少する傾向にある。光吸収層中のSeが不足すると、吸収層のセレン欠陥が増加すると共に、裏面電極(例えばMo)と光吸収層との界面で形成されるMo−Se化合物層の形成が不十分となり、光吸収層の密着性低下や電気的オーミック特性不良が生じるなどの不具合が発生して光電変換効率が低下する。このような問題を解決するため、光吸収層における上記Se/(Cu+In+Ga)の原子比を上記範囲に設定した。従来では光吸収層を形成した後、例えばSe雰囲気中で400〜600℃程度に加熱し、数時間保持する熱処理によってSeを補充するセレン化処理などによって光吸収層にSeが補充されていた。これに対し、本発明では、後記する組成のスパッタリングターゲットを用いることによって、光吸収層の上記Se/(Cu+In+Ga)の原子比を適切に制御できるため、従来必須であったセレン化工程などを行うことなく、上記問題を解消できる。
更に、光吸収層を構成する各金属元素の原子比(全金属元素の合計量に対する各金属元素の原子比、%)は、以下の要件を満足することが好ましい。
まず、Cu+In+Ga+Seに対するCuの原子比は、19.9〜24.6%であることが好ましい。上記Cuの原子比が19.9%を下回ると、前述したCu/(In+Ga)の原子比が著しく低減し、CIGS光吸収層の結晶構造がカルコパイライト型から、太陽電池の吸収層に適したp型半導体ではないスタナイト型に変化してしまうからである。上記Cuの原子比は、好ましくは20.7%以上、より好ましくは21.7%以上である。一方、上記Cuの原子比が24.6%を超えると、前述したCu/(In+Ga)の原子比が著しく上昇し、CIGS系光吸収層内にCu過剰相が生成されるため、光生成キャリアの再結合が促進されて変換効率の低下を招く。好ましくは23.4%以下、より好ましくは23.0%以下、更に好ましくは22.3%以下である。
また、Cu+In+Ga+Seに対するGaの原子比は、1.5〜15.4%であることが好ましい。上記Gaの原子比が1.5%を下回ると、前述したGa/(In+Ga)の原子比が著しく低下し、CIGS光吸収層のバンドギャップが減少し過ぎるか、或いは、カルコパイライト層の不安定化を招く。好ましくは2.7%以上、より好ましくは4.1%以上である。一方、上記Gaの原子比が15.4%を超えると、前述したGa/(In+Ga)の原子比が著しく増大し、CIGS光吸収層のバンドギャップが増大し過ぎるようになる。好ましくは14.1%以下、より好ましくは12.6%以下である。
また、Cu+In+Ga+Seに対するInの原子比は、前述したGaの原子比と同様の理由により、12.7〜26.5%であることが好ましい。上記Inの原子比は、好ましくは14.1%以上、より好ましくは15.5%以上である。また、上記Inの原子比は、好ましくは25.4%以下、より好ましくは23.8%以下である。
また、Cu+In+Ga+Seに対するSeの原子比は、48.8〜54.5%であることが好ましい。上記Seの原子比が48.8%を下回ると、前述したCIGS光吸収層のSe/(Cu+In+Ga)の原子比が著しく減少し、Se欠陥による光生成キャリアの再結合が促進されて変換効率が低下する。好ましくは49.4%以上、より好ましくは49.9%以上である。一方、上記Seの原子比が54.5%を超えると、製造原料のスパッタリングターゲットが脆くなって、スパッタリングターゲットを製造するための各工程(焼結工程、バッキングプレートへのボンディング工程、スパッタリング成膜工程)のいずれかにおいてスパッタリングターゲットが割れ易くなる。好ましくは53.6%以下、より好ましくは52.5%以下である。
本発明の光吸収層は、Cu、In、Ga、およびSeを含み、残部:不可避的不純物である。上記不可避的不純物としては、製造過程で不可避的に含まれる元素があげられ、例えばS、Oなどが挙げられる。上記不可避的不純物の合計量は少ないほど良く、光吸収層全量に対する比率で、おおむね、0.1原子%以下であることが好ましい。
本発明の光吸収層は、Cu、In、Ga、およびSeを含む四元系スパッタリングターゲットを用いて得られる。所望とする光吸収層が得られる限り、一種類の四元系スパッタリングターゲットを用いても良いし、二種類以上の四元系スパッタリングターゲットを用いてコスパッタを行っても良い。後者の場合、所望とする光吸収層が得られれば、使用する四元系スパッタリングターゲットの組成は特に限定されない。例えば後記する実施例に記載のターゲットAおよびBのように、組成の異なる二種類の四元系スパッタリングターゲットを用いても良い。勿論、これに限定されない。
本発明に用いられる上記スパッタリングターゲットの詳細は、後記する光吸収層の製造方法の欄で詳しく説明する。
次に、本発明に係る太陽電池用光吸収層を製造する方法について説明する。本発明の製造方法は、上記の太陽電池用光吸収層を製造する方法であって、前記InとGaの合計に対するCuの比を満足するようにCu、In、Ga、およびSeを含む四元系スパッタリングターゲットを用意する工程と、基板温度を室温に設定して成膜する工程と、真空雰囲気下で熱処理する工程と、をこの順序で含むところに特徴がある。
まず、Cu、In、Ga、およびSeを含む四元系スパッタリングターゲットを用意する。本発明に用いられるスパッタリングターゲットは、光吸収層におけるCu/(In+Ga)の原子比が0.67以上0.87以下を満足するよう、下記要件を満足することが好ましい。
まず、スパッタリングターゲット中のCu/(In+Ga)の原子比は、0.49以上0.69以下であることが好ましい。上記原子比がこの上限を超えるとCu過剰相が生じ、光生成キャリアの再結合を招く。一方、上記原子比がこの下限を下回ると、吸収層として適さないスタナイト型が生成される。Cu/(In+Ga)の原子比は、より好ましくは0.53以上0.67以下である。
また、スパッタリングターゲット中のGa/(In+Ga)の原子比は、0.05以上0.55以下であることが好ましい。上記原子比がこの上限を超えるとバンドギャップが増大しすぎる。一方、上記原子比がこの下限を下回ると、バンドギャップが低減しすぎる。Ga/(In+Ga)の原子比は、より好ましくは0.10以上0.50以下である。
また、スパッタリングターゲット中のSe/(Cu+In+Ga)の原子比は、0.95以上1.20以下であることが好ましい。上記原子比がこの上限を超えると、ターゲットが脆くなり、製造工程で割れやすくなる。一方、上記原子比がこの下限を下回ると、吸収層においてセレン欠陥が増加しすぎる。Se/(Cu+In+Ga)の原子比は、より好ましくは0.98以上1.15以下である。
更に、スパッタリングターゲットを構成する各金属元素の原子比(全金属元素の合計量に対する各金属元素の原子比、%)は、以下の要件を満足することが好ましい。
まず、Cu+In+Ga+Seに対するCuの原子比は、16.4〜20.3%であることが好ましい。上記Cuの原子比が20.3%を超えると、CIGS系光吸収層に含まれる上記Cu/(In+Ga)の原子比が本発明で規定する上限を超えてしまい、導電性が悪化する。一方、上記Cuの原子比が16.4%を下回ると、スパッタリング時の成膜レートが低下することがある。上記Cuの原子比は、より好ましくは17.3%以上20.0%以下である。
また、Cu+In+Ga+Seに対するInの原子比は、14.2〜29.7%であることが好ましい。上記Inの原子比が29.7%を超えると、CIGS系光吸収層に含まれる上記Ga/(In+Ga)の原子比が本発明で規定する好ましい下限を下回り、バンドギャップが低下することがある。一方、上記Inの原子比が14.2%を下回ると、光吸収層に含まれる上記Ga/(In+Ga)の原子比が高くなり、CIGS膜中の欠陥密度が増加してしまう。上記Inの原子比は、より好ましくは15.6%以上28.2%以下である。
また、Cu+In+Ga+Seに対するGaの原子比は、1.7〜17.2%であることが好ましい。上記Gaの原子比が17.2%を超えると、CIGS膜中の欠陥密度が増加することがある。一方、上記Gaの原子比が1.7%を下回ると、形成した光吸収層のバンドギャップを調整することが難しくなり、光電変換効率が低下する。上記Gaの原子比は、より好ましくは3.0%以上15.6%以下である。
また、Cu+In+Ga+Seに対するSeの原子比は、48.6〜54.6%であることが好ましい。上記Seの原子比が54.6%を超えると、ターゲットが脆くなり、製造工程で割れやすくなる。一方、上記Seの原子比が48.6%を下回ると、吸収層中のセレン欠陥が増加しすぎる。上記Seの原子比は、より好ましくは49.6%以上53.6%以下である。
このような組成を有するCIGS四元系スパッタリングターゲットは、例えば以下のようにして製造できる。但し、上記ターゲットを製造する方法はこれに限定されない。
まず、Cu、InおよびGaの元素を含有するCu−In−Ga系の三元系粉末をアトマイズ法によって予め作製して三元系粉末内にIn相を取りこみ、このCu−In−Ga系粉末とSe粉末を熱処理する。これにより、InとSeの接触面積を減らすことができ、直接接触による急激な発熱反応を抑制して徐々に反応させることができる結果、安全にCu、In、GaおよびSeの元素を含有する反応物が得られる。次いで、これを粉砕すると、Cu、In、GaおよびSeを含有するCu−In−Ga−Se系粉末が得られる。
ここで、Cu−In−Ga系粉末とSe粉末との混合むらを低減し、また最終的に得られるCu−In−Ga−Se系粉末を構成する化合物相を所望の化合物相に調整するためには、Cu−In−Ga系粉末を粉砕、または篩いにかけるなどしてその平均粒子径を約1〜50μmとすることが好ましい。またSe系粉末は、Cu−In−Ga系粉末との混合むらを低減する観点から、その平均粒径を約0.1〜10μmとすることが好ましい。
また、Cu−In−Ga系粉末の好ましい組成は、全金属元素の合計量に対する比で、Cu:16.4〜20.3原子%、In:14.2〜29.7原子%、Ga:1.7〜17.2原子%である。
またCu−In−Ga系粉末と、Se系粉末の混合比は、Cu−In−Ga系粉末中のCu、In、Gaの元素の合計量に対してSe系粉末中のSe/(Cu+In+Ga+Se)の比が48.6〜54.6原子%の割合となるように調整すれば良い。
Cu−In−Ga系粉末とSe系粉末の混合には、各種混合機を用いればよく、例えばV型混合機を用いることができる。混合時間は、通常15分〜2時間である。
Cu−In−Ga系粉末とSe粉末の熱処理条件は特に限定されず、Cu−In−Ga−Se系化合物および/またはCu−In−Se系化合物を含有するCu−In−Ga−Se系反応物が得られる条件で熱処理すればよい。熱処理は例えば電気管状炉を用いて、Arなどの不活性ガス雰囲気下で行うことができる。熱処理のヒートパターンは、400℃以下の温度で30分以上保持した後、昇温速度0.1〜5℃/minで500〜1000℃まで昇温して該温度範囲で10〜240分間保持することが好ましい。このようなヒートパターンで熱処理することによって、所望の化合物相を有するCu−In−Ga−Se系粉末を得ることができる。
このようにして得られたCu−In−Ga−Se系反応物を粉砕してCu−In−Ga−Se系粉末を得る。粉砕には、例えばボールミルを用いることができ、30分〜5時間程度粉砕することで、平均粒径が約500μm以下のCu−In−Ga−Se系粉末を得ることができる。
次いで、上記Cu−In−Ga−Se系粉末を焼結して、Cu、In、GaおよびSeの元素を含有するCu−In−Ga−Se系焼結体を得る。更に上記Cu−In−Ga−Se系焼結体を機械加工すると、Cu、In、GaおよびSeを含有し、残部は不可避的不純物であるCIGS四元系合金スパッタリングターゲットを得ることができる。上記機械加工方法は、スパッタリングターゲットの製造に通常用いられる方法を適用することができる。また、上記焼結方法は公知の方法を採用することができ、例えばホットプレス法を用いることができる。ホットプレス条件は、例えば10MPa以上の圧力下、400〜800℃の温度で15分〜5時間とすれば良い。
このようにして得られる上記スパッタリングターゲットの相対密度は90%以上であることが好ましい。スパッタリングターゲットの相対密度を高くすることにより、ターゲットの連続使用時にエロージョン表面に形成される、ノジュールと呼ばれる突起の発生を抑制することができる。
なお、このようにして得られるCIGS四元系スパッタリングターゲットは、前述したCu−In−Ga−Se系粉末と、化合物の種類およびその含有量について同様である。なぜなら、Cu−In−Ga−Se系焼結体およびスパッタリングターゲットは、上記した通り、好ましくは400〜600℃の温度で焼結されるが、このような温度範囲での焼結では、化合物の種類と含有量にはほとんど影響がないからである。従って、前述したCu−In−Ga−Se系粉末において化合物の種類と含有量を測定しておけば、その測定結果をそのまま、上記粉末を用いて得られるCu−In−Ga−Se系焼結体およびスパッタリングターゲットの化合物の種類と含有量に適用することができる。
次いで、基板温度を室温に設定して成膜する。上述したように本発明では、非特許文献1のように基板温度を加熱せず、室温に設定して成膜する。ここで室温とは、おおむね、23℃±5℃を意味する。
上記以外の成膜条件は、例えば、以下のように設定することが好ましい。
真空到達度:7×10-6torr以下
ガス圧:6〜20mtorr
パワー密度:0.9〜3.7W/cm
(4インチφのスパッタリングターゲットでパワー:75〜300W)
次に、真空雰囲気下で熱処理する。一般に上記成膜後の熱処理は、光吸収層厚の膜質を改善する目的で、選択的に行われる工程であるが、本発明では上記熱処理を必須工程として行う。これにより、CIGS系光吸収層中の結晶粒の成長が促進されてCIGS層中の欠陥密度が減少し、太陽電池の光電変換効率が一層向上する。なお、真空加熱処理を行ってもCIGS系光吸収層のCu/(In+Ga)の原子比は大きく変動しない。
本発明では、非特許文献2のようにセレンを用いずに真空雰囲気下で加熱処理する。ここで真空雰囲気下とは、おおむね、5.0×10-2Pa以下を意味する。
また加熱処理温度は少なくとも結晶粒を成長させることができる500℃以上とすることが好ましく、より好ましくは525℃以上である。一方、加熱温度が高くなりすぎると、基板が変形したり、CIGS吸収層と裏面電極間での剥離が生じたりすることがあるため、好ましくは600℃以下、より好ましくは580℃以下である。
上記加熱温度域での保持時間は、短すぎると結晶粒成長効果が十分に得られないため、好ましくは0.5時間以上、より好ましくは1.0時間以上とする。一方、保持時間が長くなりすぎるとCIGS吸収層と裏面電極間での剥離が生じたりすることがあるため、好ましくは4時間以下、より好ましくは2時間以下である。
本発明には、上述したCIGS系光吸収層をMo下部電極層の上に有する太陽電池であって、Mo下部電極層の抵抗率が50μΩ・cm以上200μΩ・cm以下である太陽電池も含まれる。このようなMo下部電極層を用いれば、セル変換効率の低下を防止することができると共に、Mo下部電極層とCIGS吸収層との界面での剥離を防止することができる。
詳細には、Mo下部電極層の抵抗率が50μΩ・cm未満の場合、前述した真空雰囲気下での熱処理後に、Mo下部電極層とCIGS吸収層との界面で剥離が生じる場合がある。これに対し、抵抗率が50μΩ・cm以上のMo下部電極層を用いると、Mo下部電極層は柱状で密度が低いため、CIGS系光吸収層の応力を緩和する効果を有する。また、表面粗さが大きいため、CIGS吸収層に対してアンカー効果を有するので、当該CIGS吸収層の剥離を抑制することができる。Mo下部電極層の好ましい抵抗率は、52μΩ・cm以上である。但し、Mo下部電極層の抵抗率が200μΩ・cmを超えると、セルの直列抵抗の上昇のため、セル効率の低下を招く。Mo下部電極層の好ましい抵抗率は、180μΩ・cm以下である。
Mo下部電極層の抵抗率は、例えば、Mo下部電極層を成膜するときのガス圧を、おおむね、3〜9mTorrの範囲に制御することによって調整することができる。
上記Mo下部電極層を備えた本発明の太陽電池は、変換効率が高いため、例えば、電卓、腕時計、センサライト、バッテリーチャージャー等の用途に利用することができる。また、近年、無線通信用ICや各種センサの消費電力が大幅に下がったことにより、環境中のエネルギーを電力に変換して配線や電池交換の不要なセンサネットワークを構築し、エネルギー管理、居住環境や健康の管理に役立てることが検討されている。本発明の太陽電池は、このような用途でのエネルギー源としての利用が大いに期待される。
以下、図1を参照しながら本発明に係る太陽電池の製造方法に基づいて説明する。図1に示すように、太陽電池10は、少なくとも基板1上に、裏面電極層2、CIGS系光吸収層3(p型半導体層)、バッファ層4(n型半導体層)、透明導電層5、取り出し電極6、7から構成されている。
基板1としては、例えばソーダライムガラスなどのガラス基板、SUS、Tiなどの金属基板、ポリイミドなどの樹脂基板などを用いることができ、特に限定されない。これらの中でもコストが低いソーダライムガラス基板が望ましい。
基板1上には裏面電極層2が形成される。裏面電極層2としては、Mo,W、Cr、Alなどの公知の電極材料を用いることができる。これらのなかでも導電性、及びCIGS系光吸収層とのオーミック接合に優れているMoが望ましい。裏面電極層2は蒸着法、スパッタリング法、塗布法など公知の方法で形成できる。これらの中でも、均一な膜を容易に形成できるスパッタリング法が望ましい。
次に、裏面電極層2の上にCIGS系光吸収層3を形成する。CIGS系光吸収層3の形成方法は前述したとおりである。
次にCIGS系光吸収層3の上にバッファ層4(n型半導体層)を形成する。バッファ層4としてはCIGS系光吸収層に比べてバンドギャップが大きく長波長の光に対する透過性が高いCdS、ZnS(O,OH)、ZnMgO、In23、ZnSeなどを用いることができる。バッファ層4は、ケミカルバスデポジション法(CBD法)、浸漬塗布法、スパッタ法など公知の方法によって形成することができる。
続いて、バッファ層4の上に励起されたキャリアを収集する透明導電層5を形成する。透明導電層5は光透過性を有し、かつ導電性を有する材料で構成されており、例えばITO、ZnO、Al添加ZnOなどが例示される。透明導電層5は公知の方法で形成すればよく、例えばスパッタリング法、スプレー法、CVD法などが挙げられる。
バッファ層4と透明導電層5の間に図示しないが入射光を透過させる高抵抗窓層として、例えば、ZnOなどをスパッタリング法など公知の方法で設けてもよい。
取り出し電極6は透明導電層5に接続され、透明導電層5で収集されたキャリアを導線8から移送する機能を有している。取り出し電極6としては例えばAl、Ag、Au、Cuなど所望の材料を用いることができる。同様に取り出し電極7も裏面電極層2に接続され、導線9を介してキャリアを移送する機能を有する。
なお、各層の厚みは特に限定されず、一般的に裏面電極層は0.5〜1.0μm程度、光吸収層は0.5〜3.0μm程度、バッファ層は10〜200nm程度、透明導電層は0.05〜0.3μm程度であるが、設計に応じて適宜調整すればよい。
上記CIGS系太陽電池の透明導電層5側から太陽光が照射されると、起電力が生じるため、電極から導線を通じて電流を取り出すことができる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例によって制限されず、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
実施例1
本実施例では、表1に示す二種類のCIGS四元系合金スパッタリングターゲットAおよびBを用いて表2に記載の様々な組成のCIGS系光吸収層を有するNo.1〜10の太陽電池を製造し、各太陽電池のセル変換効率を調べた。
(1)CIGS四元系合金スパッタリングターゲットの製造方法
Cu、In、Ga及び不可避不純物であるCu−In−Ga合金溶湯を、誘導溶解炉で1000℃に加熱した。この溶湯を誘導溶解炉の下部に設けたノズルから流出させ、流出した溶湯に窒素ガスを吹き付けることによってガスアトマイズを行い、Cu−In−Ga系粉末を作製した後、粉砕した。粉砕後のCu−In−Ga系粉末の平均粒子径は45μmであった。次に、このようにして得られたCu−In−Ga系粉末と、平均粒径2μmのSe粉末を、表1のターゲットAおよびターゲットBに示す原子比となるように、V型混合機を用いて混合して混合粉末を得た。この混合粉末を300℃で120分保持した後、5℃/minの昇温速度で800℃まで昇温し、800℃の熱処理温度で30分間保持して反応させることにより、Cu−In−Ga−Se系反応物を得た。得られたCu−In−Ga−Se系反応物をボールミルで30分間粉砕し、平均粒径が150μmのCu−In−Ga−Se系粉末を得た。このCu−In−Ga−Se系粉末を、700℃、50MPaの圧力下、ホットプレスを行って焼結し、直径φ110mm×厚みt10mmのCu−In−Ga−Se系焼結体を得た。このCu−In−Ga−Se系焼結体を機械加工して、直径φ4インチ×厚みt8mmのスパッタリングターゲットを得た。このようにして得られたターゲット中のCu、In、Ga、Seの元素の含有量は、表1のターゲットAおよびターゲットBに示す通りであった。各ターゲットの組成は、島津製作所製ICP−8000型のICP発光分光分析法によって測定した。
(2)セルの作製
ソーダライムガラス基板(セントラル硝子製、20mm角、厚さt0.7mm)の上に、直径φ6インチの純Moスパッタリングターゲットを用いてスパッタリングを行い、膜厚800nm、抵抗率160μΩ・cmのMo下部電極層を成膜した。スパッタリング条件は以下の通りである。
スパッタリング装置:島津製作所製バッチ式スパッタ装置HSR−542
DCマグネトロンスパッタリング方式
ガス:Arガス
ガス圧:6.6mTorr
パワー密度:1.4W/cm2
真空到達度:7×10-6Torr以下
基板温度:23℃
続いて、上記Mo下部電極層の上に、前述した表1のターゲットA、Bのいずれかを単独で用いるか、あるいは、これらを同時放電させることにより、表2のNo.1〜10に示すように組成の異なる種々のCIGS系光吸収層を2μmの厚さで成膜した。
詳細には、表2のNo.4は表1のターゲットAを単独で使用して、以下のスパッタリング条件で成膜した。パワーは200Wとした。
また、表2のNo.8は表1のターゲットBを単独で使用して、以下のスパッタリング条件で成膜した。ここではパワーは150Wとした。
上記以外の表2のNo.1〜3、5〜7、9、10は、表1のターゲットAとターゲットBの両方を用い、これらを同時放電させるこことによって成膜した。スパッタリング条件は以下のとおりであり、成膜パワーをターゲットA、ターゲットBについて、それぞれ以下のように制御することによって原子比の異なる種々のCIGS系光吸収層を得た。
No.1:パワー75W、200W、No.2:パワー50W、200W、No.3:パワー200W、150W、No.5:パワー100W、125W、No.6:パワー25W、200W、No.7:パワー50W、150W、No.9:パワー25W、250W、No.10:パワー25W、225W。
スパッタリング装置:ULVAC製HSR−542型
RFマグネトロンスパッタリング方式
ガス:Arガス
真空到達度:7×10-6Torr以下
基板温度:基板ステージを水冷し、ステージの温度を約23℃(室温)に保持
パワー:膜の組成調整のため、上述したようにターゲットに印加するパワーを250W以下で調整
ガス圧:12mTorr
その後、赤外線ランプ加熱装置(アルバック理工社製:QHC−P610CP)を用いて、真空度1×10−2Paの真空雰囲気下にて温度500℃、保持時間1時間の熱処理を施し、種々のCIGS吸収層を形成した。なお、昇温速度はいずれも5.0℃/分とした。また加熱処理後は10℃/分で50℃以下になるまで冷却してから取り出した。このようにして得られたCIGS吸収層の組成は、蛍光X線分析法により測定した。
続いて、バッファ層として膜厚100nmのCdS層を溶液成長法により形成し、RFスパッタリングによりZnO窓層100nmとITO透明導電層150nm、DCスパッタリングによりAg櫛型電極層1μmをこの順に成膜した。さらにセル面積が6mm×7mmとなるようにスクライブを施してセルを作製した。このようにして得られたセルの変換効率を以下のようにして測定した。
(セルの変換効率の測定方法)
メタルハライドランプを光源とし、アドバンテスト製直流電圧電流発生器R6243を用いてセルの変換効率を測定した。セルに照射する光強度はVLSI Standards.製SRC−1000基準太陽電池セルを用いて調整した。
得られた各セルの変換効率を表2に併記する。更に、上記CIGS吸収層のCu/(In+Ga)の原子比と、変換効率の関係を図2に示す。
その結果、表2のNo.1、2、6,8〜10のように、CIGS吸収層のCu/(In+Ga)の原子比が本発明で規定する0.67以上0.87以下の範囲を満足する例はいずれも、5.0%以上の高いセル変換効率が得られた。
これに対し、表2のNo.3〜5、7はいずれも、上記原子比が本発明の範囲を外れる例であり、変換効率が低下した。なお、Cu/(In+Ga)の原子比が1を超える表2のNo.4の変換効率はゼロであった。この理由は本発明の成膜方法では、CIGS吸収層の結晶粒径が大きくならず、粒界が高密度に存在し、その粒界にCu過剰相が生成するためと推察される。
実施例2
本実施例では、Mo下部電極層成膜時のガス圧とMo下部電極層の抵抗率の関係を調べた。
具体的には、前述した実施例1において、成膜時のガス圧を表3に示すように種々変化させたこと以外は上記実施例1と同様にして、ソーダライムガラス基板の上に膜厚800nmのMo下部電極層を成膜した。このようにして得られたMo下部電極層(単層膜)の抵抗率を、四探針法によって測定した。
得られた結果を表3および図3に示す。
これらの結果より、Mo下部電極層成膜時のガス圧を高くするとMo下部電極層の抵抗率も高くなることがわかった。更に、それぞれのMo下部電極層を備えたセルを前述した実施例1と同様にして作製し、Mo下部電極層とCIGS吸収層の界面における剥離を断面SEM観察で評価した。その結果、本発明で規定するように、Mo下部電極層の抵抗率を50〜200μΩ・cmの範囲に制御すると、上記Mo下部電極層とCIGS吸収層の剥離を防止できることが確認された。
1 基板
2 裏面電極層
3 CIGS系光吸収層
4 バッファ層
5 透明導電層
6、7 取り出し電極
8、9 導線
10 太陽電池

Claims (3)

  1. Cu、In、Ga、およびSeを含むスパッタリングターゲットを用いて得られる太陽電池用光吸収層であって、
    前記光吸収層はCu、In、Ga、およびSeを含み、且つ、InとGaの合計に対するCuの比が、原子比で0.67以上0.87以下を満足することを特徴とする太陽電池用光吸収層。
  2. 請求項1に記載の太陽電池用光吸収層を製造する方法であって、
    前記InとGaの合計に対するCuの比を満足するように、Cu、In、Ga、およびSeを含むスパッタリングターゲットを用意する工程と、
    基板温度を室温に設定して成膜する工程と、
    真空雰囲気下で熱処理する工程と、をこの順序で含むことを特徴とする太陽電池用光吸収層の製造方法。
  3. 請求項1に記載の太陽電池用光吸収層をMo下部電極層の上に有する太陽電池であって、
    前記Mo下部電極層の抵抗率は50μΩ・cm以上200μΩ・cm以下であることを特徴とする太陽電池。
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