JP2012230953A - 複合硫化物粉体及びその製造方法、化合物半導体、並びに太陽電池 - Google Patents

複合硫化物粉体及びその製造方法、化合物半導体、並びに太陽電池 Download PDF

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Abstract

【課題】
均一性に優れる、Cu、Zn、Sn及びSを含有する化合物半導体の製造中間体として有用な複合硫化物粉体とその製造方法、前記複合硫化物粉体を用いて得られる化合物半導体、及び前記化合物半導体を含む太陽電池を提供する。
【解決手段】
銅原子、亜鉛原子、錫原子及び硫黄原子を含有する複合硫化物の粉体であって、粉末X線回折測定において、最大強度を示すピークのピークトップが26.5〜30.5°の範囲に観測され、前記ピークの半価幅が1〜3°の範囲にあることを特徴とする複合硫化物粉体、その製造方法、前記複合硫化物粉体を用いて得られる化合物半導体、及び前記化合物半導体を含む太陽電池。
【選択図】 図3

Description

本発明は、Cu、Zn、Sn及びSを含有する化合物半導体の製造中間体として有用な複合硫化物粉体とその製造方法、前記複合硫化物粉体を用いて得られる化合物半導体、及び前記化合物半導体を含む太陽電池に関する。
太陽電池は、光エネルギーを直接電力エネルギーに変換することから、近年、環境問題やエネルギー問題の解決手段の一つとして非常に注目されてきている。太陽電池は、その材料によって、シリコン系太陽電池、化合物系太陽電池、有機物系太陽電池等に分類される。これらの太陽電池の中でも、化合物系太陽電池は原材料費を抑えることができるため、大面積化や量産化に向いていると考えられている。
化合物系太陽電池の一種であるCZTS太陽電池は、Cu、Zn、Sn及びSからなる化合物半導体(CuZnSnS)等のCZTS系化合物半導体から形成された薄膜を光吸収層として用いるものであり、比較的入手が容易で、毒性の低い金属を用いて光吸収層を形成することができるため、近年注目されている。
しかしながら、CZTS太陽電池は他の化合物系太陽電池(CIGS太陽電池等)に比べて変換効率が低いという問題があった。このため、変換効率を向上させるべく、これまでに種々の方法が検討されてきた。
特許文献1〜3には、Cu、Zn、Sn、及びSを含む硫化物系化合物半導体が開示されている。そして、特許文献1においては5.0%の変換効率が達成され、特許文献2及び3においてはどちらも6.9%の変換効率が達成されている。
このようにCZTS太陽電池の変換効率は高められてきたものの、実用化を考えると未だ十分な性能とはいえず、さらなる技術開発が必要な状況にある。
特開2009−26891号公報 特開2009−135316号公報 特開2010−45305号公報
本発明はかかる従来技術の実情に鑑みてなされたものであり、均一性に優れる、Cu、Zn、Sn及びSを含有する化合物半導体(以下、「CZTS系化合物半導体」ということがある。)の製造中間体として有用な複合硫化物粉体とその製造方法、前記複合硫化物粉体を用いて得られる化合物半導体、及び、この化合物半導体から形成される光吸収層を具備する太陽電池を提供することを課題とする。
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、粉末X線回折測定において、特定のピークパターンを示す複合硫化物粉体は、CZTS系化合物半導体の製造中間体として有用であり、このものを使用することで、均一性に優れるCZTS系化合物半導体が得られることを見出した。
また、この複合硫化物粉体は、銅(II)イオン、亜鉛(II)イオン及び錫(II)イオンを特定割合で含有する金属イオン含有溶液と硫化物イオン等を含む溶液とを混合し、反応させる共沈法によって、効率よく得られることを見出した。
かくして本発明の第1によれば、下記〔1〕〜〔4〕の複合硫化物粉体が提供される。
〔1〕銅原子、亜鉛原子、錫原子及び硫黄原子を含有する複合硫化物の粉体であって、粉末X線回折測定において、最大強度を示すピークのピークトップが26.5〜30.5°の範囲に観測され、前記ピークの半価幅が1〜3°の範囲にあることを特徴とする複合硫化物粉体。
〔2〕パーティクルアナライザーを用いた測定結果から導かれる、銅の三乗根電圧と亜鉛の三乗根電圧との関係で示される同期分布図において、その分散絶対偏差が0.18以下であり、銅の三乗根電圧と錫の三乗根電圧との関係で示される同期分布図において、その分散絶対偏差が0.18以下であり、亜鉛の三乗根電圧と錫の三乗根電圧との関係で示される同期分布図において、その分散絶対偏差が0.1以下である、〔1〕に記載の複合硫化物粉体。
〔3〕55mm×36mm×5mmの直方体状に、500kgf/cmの加圧力でプレス成形し、次いで、1000kgf/cmの加圧力で1分間プレス成形して得られた成形物を、切削加工により、直径5mm、長さ20mmの円柱状に加工した試料片を用いて、荷重98mNで圧縮しながら、10℃/分の昇温速度で25℃から600℃まで加熱したときの熱収縮率が、2〜15%の範囲にある〔1〕又は〔2〕に記載の複合硫化物粉体。
〔4〕銅(II)イオン、亜鉛(II)イオン及び錫(II)イオンを含み、亜鉛(II)イオンと錫(II)イオンとのモル比(亜鉛(II)イオン:錫(II)イオン)が40:60〜60:40の範囲にあり、銅(II)イオンと、亜鉛(II)イオン及び錫(II)イオンの合計とのモル比〔銅(II)イオン:(亜鉛(II)イオン+錫(II)イオン)〕が40:60〜60:40の範囲にある金属イオン含有溶液と、硫化物イオン及び/又は水硫化物イオンを含有する溶液とを反応させて得られるものである、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の複合硫化物粉体。
本発明の第2によれば、下記〔5〕〜〔9〕の複合硫化物粉体の製造方法が提供される。
〔5〕銅(II)イオン、亜鉛(II)イオン及び錫(II)イオンを含み、亜鉛(II)イオンと錫(II)イオンとのモル比(亜鉛(II)イオン:錫(II)イオン)が40:60〜60:40の範囲にあり、銅(II)イオンと、亜鉛(II)イオン及び錫(II)イオンの合計とのモル比〔銅(II)イオン:(亜鉛(II)イオン+錫(II)イオン)〕が40:60〜60:40の範囲にある金属イオン含有溶液と、硫化物イオン及び/又は水硫化物イオンを含有する溶液とを反応させる工程を有する、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の複合硫化物粉体の製造方法。
〔6〕前記金属イオン含有溶液と、前記硫化物イオン及び/又は水硫化物イオンを含有する溶液とをpH3.5〜6.5で反応させる、〔5〕に記載の複合硫化物粉体の製造方法。
〔7〕前記金属イオン含有溶液と、前記硫化物イオン及び/又は水硫化物イオンを含有する溶液とを、30〜80℃で反応させる、〔5〕又は〔6〕に記載の複合硫化物粉体の製造方法。
〔8〕前記金属イオン含有溶液が、硫酸銅(II)、硫酸亜鉛(II)及び硫酸錫(II)を含む水溶液である〔5〕〜〔7〕のいずれかに記載の複合硫化物粉体の製造方法。
〔9〕前記硫化物イオン及び/又は水硫化物イオンを含有する溶液が、硫化ナトリウム、硫化カリウム及び硫化アンモニウムから選ばれる化合物を少なくとも1つ以上含む水溶液である〔5〕〜〔8〕のいずれかに記載の複合硫化物粉体の製造方法。
本発明の第3によれば、下記〔10〕の化合物半導体が提供される。
〔10〕〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の複合硫化物粉体を焼成して得られる化合物半導体。
本発明の第4によれば、下記〔11〕の太陽電池が提供される。
〔11〕〔10〕に記載の化合物半導体から形成される光吸収層を具備する太陽電池。
本発明の複合硫化物粉体は、CZTS系化合物半導体の製造中間体として有用である。
本発明の複合硫化物粉体を用いて得られるCZTS系化合物半導体は、均一性が高く、太陽電池の光吸収層の形成材料等として好適に用いられる。
さらに、本発明の複合硫化物粉体をCZTS系化合物半導体の製造中間体として用いることで、スパッタ法等の真空プロセスを使用することなく、均一性が高いCZTS系化合物半導体を効率よく製造することができ、太陽電池の量産化や製造コストの削減が期待できる。
パーティクルアナライザーを用いた測定結果から導かれる、銅の三乗根電圧と亜鉛の三乗根電圧との関係で示される同期分布図である。 銅の三乗根電圧と亜鉛の三乗根電圧との分散絶対偏差の算出方法を表す図である。 複合硫化物粉体の製造工程の概略図である。 複合硫化物の製造装置の概略図である。
以下、本発明を、1)複合硫化物粉体、2)複合硫化物粉体の製造方法、3)CZTS系化合物半導体、及び、4)太陽電池、に項分けして説明する。
1)複合硫化物粉体
本発明の複合硫化物粉体は、銅原子、亜鉛原子、錫原子及び硫黄原子を含有する複合硫化物の粉体であって、粉末X線回折測定において、最大強度を示すピークのピークトップが26.5〜30.5°の範囲に観測され、前記ピークの半価幅が1〜3°の範囲にあることを特徴とする。
本発明の複合硫化物粉体を構成する複合硫化物は、銅原子、亜鉛原子、錫原子及び硫黄原子を含有する複合硫化物である。
本発明の複合硫化物粉体は、粉末X線回折測定において、最大強度を示すピークのピークトップが26.5〜30.5°の範囲に観測され、前記ピークの半価幅が1〜3°の範囲にある。
上記のピークパターンを示す本発明の複合硫化物粉体は焼結性に優れるものであり、この複合硫化物粉体を焼成することで、目的とするCZTS系化合物半導体を容易に得ることができる。当該観点から、前記ピークの半価幅が1.5〜2°の範囲にあるものが好ましい。
ここで、「半価幅」とは、粉末X線回折測定によって得られる回折強度曲線のピーク強度の1/2の強度における回折強度曲線の幅をいう。
本発明の複合硫化物粉体は、粒子スケールで均一性が高いことが好ましい。粒子スケールで均一性が高いことで、均一性に優れるCZTS系化合物半導体を得ることができる。粒子スケールでの均一性は、例えば、パーティクルアナライザーによる分析(以下、「粒子分析法」という。)によって、調べることができる。
本発明の複合硫化物粉体は、粒子分析法から導かれる、銅の三乗根電圧と亜鉛の三乗根電圧との関係で示される同期分布図において、その分散絶対偏差が0.18以下であり、銅の三乗根電圧と錫の三乗根電圧との関係で示される同期分布図において、その分散絶対偏差が0.18以下であり、亜鉛の三乗根電圧と錫の三乗根電圧との関係で示される同期分布図において、その分散絶対偏差が0.1以下であることが好ましい。
分散絶対偏差がこの範囲にある複合硫化物粉体は、粒子スケールで均一性が高い。したがって、このような複合硫化物粉体をCZTS系化合物半導体の製造中間体として用いることで、均一性に優れるCZTS系化合物半導体を容易に得ることができる。当該観点から、銅−亜鉛、銅−錫、及び亜鉛−錫の同期分布図における分散絶対偏差は、それぞれ、0.01〜0.17、0.01〜0.17、0.01〜0.1の範囲にあることが好ましい。
以下に、粒子分析法と分散絶対偏差の算出方法について説明する。
粒子分析法においては、Heプラズマ中で、1つの粒子に含まれる原子を励起、発光させて粒子ごとに発光強度を測定するため、粒子ごとに対象原子の存在量や組成に関する情報が得られる。さらに粒子ごとに得られた結果を統計処理することで試料中の各原子の分散性が粒子スケールで分かり、試料の均一性を粒子スケールで評価することができる。
本発明の複合硫化物粉体を構成する複合硫化物粒子をHeプラズマ中に導入して励起、発光させると、銅、亜鉛、錫の各原子に特有の波長の光が検出される。このときの発光強度(検出電圧)から、その粒子に含まれる対象原子の量に関する情報が得られる。また、2種の原子の発光を同時に検出したとき(これを「同期した」という。)は、それらの原子が同じ粒子に含まれていると判定することができる。
したがって、まず粒子ごとに2種の原子の存在量比を求め、次いで、その値のばらつきを数値化することで、複合硫化物粉体の均一性を粒子スケールで評価することができる。
以下に、このばらつきの数値化方法を、図面を用いて説明する。
本発明の複合硫化物粉体について粒子分析を行ったときの、銅原子の三乗根電圧(x軸)と亜鉛原子の三乗根電圧(y軸)との関係により示される同期分布図を図1に示す。図1中の1つの「○」は、1つの粒子についての検出結果を表す。三乗根電圧は、得られた検出電圧の三乗根であり、測定対象原子の合計量を真球粒子に換算したときの粒径に相関する値である。
この同期分布図において、x軸上に表示される○は、その粒子が銅原子を含有するが、検出可能な量の亜鉛原子を含有しない場合を表し、y軸上に表示される○は、その粒子が亜鉛原子を含有するが、検出可能な量の銅原子を含有しない場合を表す。また、これらの軸上以外に表示される○は、その粒子が銅原子と亜鉛原子の両方を含有する場合を表す。
ばらつきの程度は、分散絶対偏差(σ)によって表される。分散絶対偏差の算出方法を表す図を図2に示す。
まず、軸上に分布するものを除く全ての検出結果を使用して、最小二乗法により、銅原子の三乗根電圧(x軸)の値と亜鉛原子の三乗根電圧(y軸)の値との関係を示す近似直線Lを求め、次いで各検出結果の誤差(X)を以下の式から算出する。
Figure 2012230953
式中、dは、各検出結果(同期分布図中の○)から前記近似直線Lに下ろした垂線の長さを表し、Hは、前記近似直線と前記垂線の交点からx軸に下ろした垂線の長さを表す。
次に、誤差(X)の平均値(Xav)を求め、これを用いて下記式に従い、分散絶対偏差(σ)を算出する。
Figure 2012230953
式中、nはデータ数を表す。
分散絶対偏差が小さいときは、同期分布図において近似直線付近に○が集まっている状態である。このような試料は、組成に関して粒子間で差がほとんどなく、粒子スケールで均一性が高い試料であるといえる。
なお、上記は、銅の三乗根電圧と亜鉛の三乗根電圧との関係を例にとって説明したが、銅の三乗根電圧と錫の三乗根電圧との関係、亜鉛の三乗根電圧と錫の三乗根電圧との関係についても同様である。
本発明の複合硫化物粉体においては、熱収縮率が、2〜15%の範囲にあるものがより好ましい。
熱収縮率は、次のようにして測定する。
(a)先ず、粉末試料を成型圧縮機(例えば、前川試験機製作所製 BRIQUETING PRESS TYPE M NO.30)を用いて、500kgf/cmの加圧力で、55mm×36mm×5mmの直方体状にプレス成形して成形物を得る。
(b)次いで、得られた成形物を、冷間静水圧プレス機(例えば、エヌピーエーシステム社製、CPA−80型)を用いて、1000kgf/cmの加圧力で1分間さらにプレス成形してプレス成形物を得る。
(c)さらに、得られたプレス成形物を、切削加工することにより、直径5mm、長さ20mmの円柱状に加工して試料片を得る。
(d)このものを、荷重98mNで圧縮(円柱の長さ方向)しながら、10℃/分の昇温速度で25℃から600℃まで加熱したときの円柱の長さを測定する。
600℃に加熱後の円柱の長さをL(mm)としたとき、熱収縮率α(%)は、
α=(20−L)/20×100で表される。
熱収縮率が前記範囲にある複合硫化物粉体は、CZTS系化合物半導体を形成する際の焼成工程において収縮するため、緻密なCZTS系化合物半導体が得られる。その結果として、特に光吸収層を薄膜化した際にピンホールの少ない膜が得られる。
本発明の複合硫化物粉体を構成する粒子の粒子径は特に制限されず、目的に合わせて適宜決定することができる。複合硫化物粉体を構成する粒子の平均粒子径は、通常、0.1〜100μmである。この平均粒子径は、レーザー回折・散乱法により求めた粒度分布における積算値50%での粒径をいう。粒子径は、通常、粉砕工程や造粒工程等を行うことで目的の範囲に調節することができる。
本発明の複合硫化物粉体に含まれる銅原子、亜鉛原子及び錫原子の割合は、亜鉛原子と錫原子との物質量比(亜鉛:錫)が40:60〜60:40の範囲にあり、銅と、亜鉛及び錫の合計との物質量比(銅:(亜鉛+錫))が40:60〜60:40の範囲にあることが好ましい。複合硫化物粉体に含まれる金属原子の比がこの範囲にあることで、太陽電池の光吸収層用に好適なCZTS系化合物半導体が得られやすくなる。当該観点から、(亜鉛:錫)で表される物質量比は、45:55〜55:45の範囲にあることが好ましく、48:52〜52:48の範囲にあることがより好ましい。また、(銅:(亜鉛+錫))で表される物質量比は、45:55〜55:45の範囲にあることが好ましく、48:52〜52:48の範囲にあることがより好ましい。
本発明の複合硫化物粉体は、上記の特性を有し、かつ、本発明の効果を奏する限り、銅原子、亜鉛原子、錫原子及び硫黄原子を含有する複合硫化物以外の他の化合物を含有していてもよい。前記他の化合物としては、銅、亜鉛及び錫から選ばれる金属の硫化物やこれらの金属の酸化物や水酸化物等が挙げられる。
本発明の複合硫化物粉体は、後述する本発明の製造方法により得られるものであることが好ましい。
2)複合硫化物粉体の製造方法
本発明の複合硫化物粉体の製造方法は、銅(II)イオン、亜鉛(II)イオン及び錫(II)イオンを含み、亜鉛(II)イオンと錫(II)イオンとのモル比(亜鉛(II)イオン:錫(II)イオン)が40:60〜60:40の範囲にあり、銅(II)イオンと、亜鉛(II)イオン及び錫(II)イオンの合計とのモル比〔銅(II)イオン:(亜鉛(II)イオン+錫(II)イオン)〕が40:60〜60:40の範囲にある金属イオン含有溶液と、硫化物イオン及び/又は水硫化物イオンを含有する溶液とを反応させる工程を有することを特徴とする。
前記金属イオン含有溶液中に含まれる金属イオンのモル比が前記範囲にあることで、目的の複合硫化物を容易に得ることができる。当該観点から、(亜鉛イオン:錫イオン)で表されるモル比が、45:55〜55:45の範囲にあることが好ましく、48:52〜52:48の範囲にあることがより好ましい。また、(銅イオン:(亜鉛イオン+錫イオン))で表されるモル比が、45:55〜55:45の範囲にあることが好ましく、48:52〜52:48の範囲にあることがより好ましい。
前記金属イオン含有溶液は、対応する金属イオンを含む化合物の所定量を溶媒に溶解させることで得られる。当該化合物は、水に溶解する化合物が好ましく、水に溶解して酸性を呈する化合物がより好ましい。
銅(II)イオンを含む化合物としては、例えば、硫酸銅、塩化銅、臭化銅、硝酸銅、酢酸銅等が挙げられる。これらの中で、硫黄原子を含み、水に対する溶解度が高いことから硫酸銅が好ましい。
亜鉛(II)イオンを含む化合物としては、例えば、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、臭化亜鉛、硝酸亜鉛、酢酸亜鉛等が挙げられる。これらの中で、硫黄原子を含み、水に対する溶解度が高いことから硫酸亜鉛が好ましい。
錫(II)イオンを含む化合物としては、例えば、硫酸錫、塩化錫、臭化錫、硝酸錫、酢酸錫等が挙げられる。これらの中で、硫黄原子を含み、水に対する溶解度が高いことから硫酸錫が好ましい。
また、金属イオンを含む化合物は、無水物であっても水和物であってもよい。
前記金属イオン含有溶液の溶媒としては水が好ましく用いられるが、本発明の効果に影響しない範囲において有機溶媒が混入していてもよい。
前記硫化物イオン及び/又は水硫化物イオンを含有する溶液(以下、「硫化物イオン等含有溶液」という。)は、硫化物イオンや水硫化物イオンを含む化合物を溶媒に溶解させることで得られる。
硫化物イオンを含む化合物としては、水に溶解するものが好ましく、水に溶解してアルカリ性を呈する化合物がより好ましい。具体例としては、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化アンモニウム等が挙げられる。
水硫化物イオンを含む化合物としては、水に溶解するものが好ましく、水に溶解してアルカリ性を呈する化合物がより好ましい。具体例としては、硫化水素ナトリウム、硫化水素カリウム、硫化水素アンモニウム等が挙げられる。
これらの中でも、入手の容易性等の観点から、硫化物イオンを含む化合物が好ましく、硫化ナトリウムがより好ましい。
前記硫化物イオン等含有溶液の溶媒としては水が好ましく用いられるが、本発明の効果に影響しない範囲において有機溶媒が混入していてもよい。
本発明においては、前記金属イオン含有溶液に含まれる陰イオン(例えば、硫酸イオン)と、前記硫化物イオン等含有溶液に含まれる陽イオン(例えば、ナトリウムイオン)の組合せからなる化合物が、用いる溶媒に溶解するように、金属イオン含有溶液と硫化物イオン等含有溶液を組み合わせて使用することが好ましい。
このような組合せで両溶液を混合することにより、目的の複合硫化物以外の化合物の沈殿を抑制することができる。
前記金属イオン含有溶液と、硫化物イオン及び/又は水硫化物イオンを含有する溶液とを反応させる工程は、前記金属イオン含有溶液と、硫化物イオン及び/又は水硫化物イオンを含有する溶液とを混合し攪拌することにより、複合硫化物を沈殿させる工程である。
この工程において、前記金属イオン含有溶液と前記硫化物イオン等含有溶液とを混合して反応させるときのpHは、3.5〜6.5の範囲が好ましく、4.0〜6.0の範囲がより好ましい。pHがこの範囲内にあることで、収率よく複合硫化物を得ることができる。
前記金属イオン含有溶液と前記硫化物イオン等含有溶液とを反応させる工程において、反応液(懸濁液を含む。)の温度は、30〜80℃の範囲が好ましく、40〜60℃の範囲がより好ましい。温度がこの範囲内にあることで、収率よく複合硫化物を得ることができる。
本発明において、前記金属イオン含有溶液と前記硫化物イオン等含有溶液とを反応させる工程は、より具体的には、予め反応槽内の溶液のpHを所定の値に調整し、次いで、前記金属イオン含有溶液と前記硫化物イオン等含有溶液のどちらか一方の溶液を連続的に反応槽に供給し、もう一方の溶液を、系内のpHを調節しながら、断続的に又は量を調節して連続的に反応槽に供給することで、複合硫化物を沈殿させることによって実施することができる。
なかでも、複合硫化物の沈殿工程における制御が容易であることから、予め反応槽内に一定量の硫化物イオン等含有溶液を存在させておき、そこに金属イオン含有溶液を連続的に供給する一方で、系内のpHを調節しながら、硫化物イオン等含有溶液を供給することにより、反応系のpHを一定範囲に制御する方法が好ましい。
反応槽としては特に制限なく、連続式反応槽やバッチ式反応槽等を用いることができる。
沈殿した複合硫化物を単離する方法としては、ろ過法、デカンテーション法、遠心分離法などが挙げられる。
また、複合硫化物の沈殿物は、フィルタープレス等により脱水処理を行って含水物としてもよく、種々の溶媒に分散させてスラリーとしてもよい。
単離した複合硫化物は極性溶媒で洗浄することが好ましい。極性溶媒としては、水やアルコール等が挙げられ、なかでも水が好ましい。
また、洗浄用の極性溶媒(洗浄液)として、極性溶媒に酸を添加して得られる弱酸性の溶液を用いてもよい。洗浄液の液性によっては、複合硫化物中の硫化物イオンが洗浄液中の水酸化物イオン等と置換するおそれがあるが、弱酸性の洗浄液で洗浄することでこの置換反応を抑制することができる。当該観点から、洗浄液のpHは5〜6.5の範囲が好ましい。
酸の種類については特に制限されないが、CZTS系化合物半導体を形成する際に不純物が混入しにくいことから、硫化水素水や硫酸等が好ましい。
ナトリウムイオン等を含む不純物が残留した複合硫化物粉体を用いてCZTS系化合物半導体を製造すると、CZTS系化合物半導体中に絶縁体部分が生じることがあるが、上記の洗浄操作により前記不純物を複合硫化物粉体から除去することができ、CZTS系化合物半導体を形成する際に絶縁体部分が生じにくい複合硫化物粉体を得ることができる。
また、単離した複合硫化物の沈殿物の乾燥処理を行ってもよい。
この乾燥処理とは、沈殿物中の水分を減少させるための処理をいい、具体的には、加熱処理、真空処理、風乾処理等が挙げられる。
なお、乾燥処理として行う加熱処理とは、当該処理後に粉末X線回折測定を行ったときに、26.5〜30.5°の範囲に観測されるピークの半価幅を1°未満に低下させない範囲で加熱することをいい、この点で後述する焼成処理とは区別される。
乾燥処理として、加熱処理を行う場合、加熱温度は、通常、50〜300℃であり、加熱時間は2〜24時間である。加熱温度が300℃以下であることで、CZTS系化合物半導体を形成する際の焼成工程において熱収縮が起こりやすくなり、緻密なCZTS系化合物半導体が得られ易くなる。
また複合硫化物の分解抑制の観点から乾燥は不活性雰囲気下で行うことがより好ましい。
本発明の複合硫化物粉体は、複合硫化物が粉末状(粒子状)であることを意味する。また、本発明の複合硫化物粉体には、複合硫化物の沈殿物を乾燥させたものに加えて、上記の含水物やスラリーも含まれる。
本発明の製造方法(金属イオン含有溶液と硫化物イオン等含有溶液を用いる共沈方法)によれば、硫酸銅等の原料の使用量や沈殿条件を変えることで、複合硫化物粉体の組成を容易に調節することができる。したがって、CZTS系化合物半導体の組成をわずかに変化させることを目的とした場合において、その製造に適した複合硫化物粉体を容易に得ることができる。
3)化合物半導体
本発明の化合物半導体は、本発明の複合硫化物粉体を焼成して得られるものであることを特徴とする。本発明における焼成処理とは、当該処理後に粉末X線回折測定を行ったときに、26.5〜30.5°の範囲に観測されるピークの半価幅を1°未満に低下させる加熱処理をいう。
本発明の化合物半導体は、Cu、Zn、Sn及びSを含む化合物半導体であり、通常、CZTS系化合物半導体と称されるものである。
前記焼成処理における加熱温度は、通常300〜800℃、好ましくは300〜500℃の範囲であり、加熱時間は、通常2〜24時間の範囲、好ましくは3〜10時間の範囲である。焼成は、酸素濃度の低い雰囲気下で行なうことが好ましく、アルゴンや窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で焼成することが好ましい。また、硫化水素の存在下で焼成してもよい。
焼成する際は、必要に応じて、複合硫化物粉体に硫黄を添加してもよい。焼成条件や原料として用いる複合硫化物粉体に含まれる硫黄量によっては、得られる化合物半導体中に含まれる硫黄濃度が低く、均一性に劣る化合物半導体が形成されてしまう場合があるが、複合硫化物粉体に硫黄を添加して焼成することで、この硫黄濃度の問題を解消することができる。
硫黄の添加量は特に限定されるものではなく、通常、複合硫化物粉体100質量部に対して、0.1〜50質量部、好ましくは、0.1〜10質量部の範囲である。
また、硫黄濃度の問題を解消するために、化学気相輸送法などの方法を利用してもよい。この場合、具体的には、複合硫化物粉体を硫黄と共に石英管に入れた後、石英管内を真空状態にし、これを、電気炉などを用いて高温状態にすることで、目的の化合物半導体を得ることができる。
本発明の化合物半導体の形成に用いられる複合硫化物粉体は焼結性に優れるものであり、また均一性に優れる。したがって、本発明の化合物半導体は均一な組成を有し、均一性に優れる。
また、熱収縮性に優れる複合硫化物粉体を用いることで、本発明の化合物半導体は緻密性に優れるものとなる。
さらに、本発明の化合物半導体は、非真空プロセスにより製造することができるため、本発明によれば、CZTS系化合物半導体の量産化や製造コストの削減が期待できる。
本発明の化合物半導体は、CZTS系化合物半導体であり、その粉末X線回折測定において、(112)面に起因するピークの半価幅が、0.1°以上、1°未満であることが好ましく、0.1〜0.5°の範囲にあることがより好ましい。また、(204)面に起因するピークの半価幅が、0.1〜1°の範囲にあることが好ましく、0.1〜0.5°の範囲にあることがより好ましい。
上記(112)面に起因するピークとは、最大強度を示すピークであって、28°付近に観測されるピークである。また、(204)面に起因するピークとは、2番目の強度を示すピークであって、47°付近に観測されるピークである。
4)太陽電池
本発明の太陽電池は、本発明の化合物半導体から形成される光吸収層を具備するものである。
一般に、CZTS太陽電池は、基板上に、下部電極、光吸収層、バッファ層、窓層及び上部電極がこの順に積層した構造を有する。本発明の太陽電池は、前記光吸収層が、本発明の化合物半導体から形成されたものである。
光吸収層の形成方法としては、例えば、(i)本発明の複合硫化物粉体を溶媒に分散させた塗布液(1)を調製し、これを下部電極が形成された基板上に塗布した後、焼成する方法や、(ii)本発明の化合物半導体を溶媒に分散させた塗布液(2)を調製し、これを下部電極が形成された基板上に塗布した後、加熱乾燥する方法等が挙げられる。
いずれの方法においても、用いる溶媒としては、複合硫化物粉体を分散させることが可能であれば特に制限はない。例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。これらの溶媒は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
また、塗布液(1)又は塗付液(2)には、必要に応じて、顔料、充填剤、分散剤、可塑剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、結合剤、乳化剤、消泡剤、乾燥剤、レベリング剤、腐食防止剤、酸化防止剤、チクソトロピー化剤等の添加剤を加えることができる。
いずれの方法においても、塗布液を塗布する方法については特に制限されず、例えば、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット法、スピンコート法などの既知の塗布方法を用いることができる。
前記(i)の方法における焼成条件としては、本発明の化合物半導体を製造する条件として挙げた条件を使用することができる。
前記(ii)の方法における、塗付液(2)の塗膜を加熱乾燥する条件としては、通常、50〜800℃であり、加熱時間は2〜24時間である。
上記のように、本発明の太陽電池は、均一な組成を有する化合物半導体から形成された光吸収層を具備する。本発明の化合物半導体を光吸収層として使用する太陽電池は、どの部分においても一定の変換効率が得られ、全体の変換効率が低下しないことが期待される。
また、上記のように、熱収縮する複合硫化物粉体を用いて得られる化合物半導体は緻密性に優れるため、本発明の太陽電池は緻密な光吸収層を有するものとなる。したがって、本発明の太陽電池は、従来のものに比べて変換効率が向上することが期待でき、また光吸収層の表面に形成するバッファ層の薄膜化に有利である。
次に、実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
複合硫化物粉体の測定は、以下のようにして行った。
〔粉末X線回折測定〕
粉末X線回析装置(リガク社製、RINT2000、X線源:CuKα線)を用いて、以下の方法により測定を行った。
実施例及び比較例で得られた粉末をサンプルディッシュの窪みにのせ、ガラス板で試料をサンプルディッシュに並行になるように押し付けることで測定用試料を得た。
粉末X線回析装置のX線管球への印加電圧を40kV、印加電流を20mAに設定し、更に走査範囲を2θ=5〜90°、計数時間0.5秒、ステップ幅0.026°、受光スリット幅0.15mmで測定を行った。
〔熱機械分析〕
示差膨張方式熱機械分析装置(リガク社製、TMA8310)を用いて、以下の方法により、熱収縮率挙動を測定した。
実施例及び比較例で得られた粉末を、成型圧縮機(前川試験機製作所製、BRIQUETING PRESS TYPE M NO.30)を用いて、500kgf/cmの加圧力で、55mm×36mm×5mmの直方体にプレス成形し、次いで、冷間静水圧プレス機(エヌピーエーシステム社製 CPA−80型)を用いて、1000kgf/cmの加圧力で1分間プレス成形し、次いで、これを切削加工により直径5mm、長さ20mmの円柱状に加工して測定用試料を得た。
窒素気流中(200mL/分)、昇温速度10℃/分、荷重98mNで圧縮荷重法により25℃から600℃までの温度範囲で測定を行った。熱収縮率は熱印加前後の円柱長の比率から求めた。
〔粒子分析〕
パーティクルアナライザー(堀場製作所社製、DP1000)を用いて、以下の方法により測定を行った。
実施例及び比較例で得られた粉末をスライドグラス上に分散させた後、ローボリュームサンプラ(堀場製作所社製、LS−1000)を用いて前記粉末を吸引し、専用フィルタ上に30μm以下の微粒子を捕集した。この微粒子を1個ずつアスピレータで吸引し、Heマイクロプラズマ中に導入し、発光分光分析を行った。
(実施例1)
複合硫化物粉体を図3に示すフローに従って製造した。製造は、図4に示す反応装置を用いて行った。
攪拌機1を備えた容積5Lの塩化ビニル製円筒型反応槽2に、3Lの水、次いで、pHが6.0になるまで15%硫化ナトリウム水溶液を加え、電熱ヒーター(図示を省略)を用いて温度を45℃に保持した。
その後、硫酸錫(II)、硫酸銅(II)・5水和物及び硫酸亜鉛(II)・7水和物の混合水溶液1L(モル比=銅(II):亜鉛(II):錫(II)=2:1:1、前記硫酸塩に含まれる金属量の合計が90g)を、金属イオン含有溶液調製槽4から配管3を通じて4時間かけて一定速度で前記反応槽2に連続供給した。また、15%硫化ナトリウム水溶液988mLを、硫化物イオン等含有溶液槽5から配管6を通じて断続的に加えることで、前記反応槽2内の溶液のpHを6.0に保持した。なお、溶液のpHを制御するために、pHセンサー7を使用した。
上記の反応操作により、Cu−Zn−Sn複合硫化物が沈殿した。
得られた複合硫化物をデカンテーション法により水洗し、ろ取した後、ろ過物を窒素雰囲気下100℃で一晩熱処理して、複合硫化物粉体を得た。
得られた複合硫化物粉体について、粉末X線回折測定、熱機械分析、粒子分析を行った。また、ろ液については仕込み金属量に対するろ液中の金属割合量を調べた。これらの結果を第1表に示す。
(実施例2)
反応槽2内の溶液のpHを6.0から5.0に変更したことと、15%硫化ナトリウム水溶液の添加量を968mLにしたことを除き、実施例1と同様の方法により、複合硫化物粉体を得た。得られた複合硫化物粉体について、粉末X線回折測定、熱機械分析、粒子分析を行った。また、ろ液について仕込み金属量に対するろ液中の金属割合量を調べた。これらの結果を第1表に示す。
(実施例3)
反応槽2内の溶液のpHを6.0から4.0に変更したことと、15%硫化ナトリウム水溶液の添加量を936mLにしたことを除き、実施例1と同様の方法により、複合硫化物粉体を得た。得られた複合硫化物粉体について、粉末X線回折測定、熱機械分析、粒子分析を行った。また、ろ液について仕込み金属量に対するろ液中の金属割合量を調べた。これらの結果を第1表に示す。
(実施例4)
複合硫化物沈殿をろ過した後に行った100℃で一晩の熱処理に代えて、窒素雰囲気下、300℃で3時間熱処理を行ったことを除き、実施例2と同様の方法により、複合硫化物粉体を得た。得られた複合硫化物粉体について、粉末X線回折測定、熱機械分析、粒子分析を行った。結果を第1表に示す。
(比較例1)
硫化錫(II)、硫化銅(II)及び硫化亜鉛(II)の粉末と純水100mLとを混合した水溶液(モル比=銅(II):亜鉛(II):錫(II)=2:1:1)を、卓上型ボールミル(アサヒ理化製作所社製、AV−2、ボール径0.5φ、アルミナポット使用)を用いて、回転数550rpmで48時間粉砕混合して粉砕スラリーを得た。得られた粉砕スラリーを100℃で一晩熱処理した。得られた硫化物について、粉末X線回折測定、熱機械分析、粒子分析を行った。結果を第1表に示す。
Figure 2012230953
第1表に示されるように、実施例1〜4で得られた複合硫化物粉体は、粉末X線回折測定において最大強度を示すピークのピークトップが26.5〜30.5°の範囲に観測され、前記ピークの半価幅が1〜3°の範囲にある。後述するように、実施例1〜4の複合硫化物粉体は、CZTS系化合物半導体を製造する際の原料として好ましく用いられる。
特に、実施例1〜4で得られた複合硫化物粉体は熱収縮率が大きいことから、緻密なCZTS系化合物半導体が得られることが分かる。
また、実施例1〜4で得られた複合硫化物粉体は粒子分析における分散絶対偏差が小さいことから、均一性に優れていることが分かる。
また、実施例1〜4において、ろ液中の金属量はいずれも極めて低い値である。したがって、用いる金属イオン含有溶液中の金属イオンのモル比が、得られる複合硫化物粉体の組成に反映されていることが分かる。
一方、比較例1の化合物は、28.5°に観測されるピークの半価幅が小さい値である。比較例1の化合物は熱収縮率が小さいことから、緻密なCZTS系化合物半導体を得るには適さないことが分かる。
また、粒子分析における分散絶対偏差が大きいことから、均一性に劣ることが分かる。
(実施例5)
実施例1で得られた複合硫化物粉体10gを、アルミナボートを用いて、窒素雰囲気下、450℃で、3時間加熱してCZTS系化合物半導体を得た。得られたCZTS系化合物半導体について、粉末X線回折測定、熱機械分析、粒子分析を行った。結果を第2表に示す。
(実施例6)
実施例1と同様の方法により、Cu−Zn−Sn複合硫化物の沈殿物を得た。この沈殿物をデカンテーション法により水洗し、ろ取した後、ろ過物を窒素雰囲気下500℃で3時間熱処理して、CZTS系化合物半導体を得た。得られたCZTS系化合物半導体について、粉末X線回折測定、熱機械分析、粒子分析を行った。結果を第2表に示す。
Figure 2012230953
実施例5で得られた焼結体の粉末X線回折測定において、CuZnSnSの(112)面と(204)面に起因するピークが観測されることから、実施例1で得られた複合硫化物粉体を焼成することで、CZTS系化合物半導体が得られることが示される。また、粒子分析結果から、実施例5で得られたCZTS系化合物半導体は、極めて均一性に優れていることが示される。
また、実施例6で得られた化合物は、実施例5で得られたCZTS系化合物半導体と同様の特性を示すことから、実施例6の方法によってもCZTS系化合物半導体が得られることが分かる。
このように、Cu−Zn−Sn複合硫化物の沈殿物を得た後の加熱条件を制御することで、目的に合わせて、複合硫化物粉体(実施例1〜4)とCZTS系化合物半導体(実施例5)とを作り分けることができる。特に、加熱処理を比較的低温で行った場合には、熱収縮性に優れる複合硫化物粉体(実施例1〜4)が得られることが分かる。
1・・・攪拌機
2・・・塩化ビニル製円筒型反応槽
3、6・・・配管
4・・・金属イオン含有溶液調製槽
5・・・硫化物イオン等含有溶液槽
7・・・pHセンサー

Claims (11)

  1. 銅原子、亜鉛原子、錫原子及び硫黄原子を含有する複合硫化物の粉体であって、粉末X線回折測定において、最大強度を示すピークのピークトップが26.5〜30.5°の範囲に観測され、前記ピークの半価幅が1〜3°の範囲にあることを特徴とする複合硫化物粉体。
  2. パーティクルアナライザーを用いた測定結果から導かれる、銅の三乗根電圧と亜鉛の三乗根電圧との関係で示される同期分布図において、その分散絶対偏差が0.18以下であり、銅の三乗根電圧と錫の三乗根電圧との関係で示される同期分布図において、その分散絶対偏差が0.18以下であり、亜鉛の三乗根電圧と錫の三乗根電圧との関係で示される同期分布図において、その分散絶対偏差が0.1以下である、請求項1に記載の複合硫化物粉体。
  3. 55mm×36mm×5mmの直方体状に、500kgf/cmの加圧力でプレス成形し、次いで、1000kgf/cmの加圧力で1分間さらにプレス成形して得られた成形物を、切削加工により、直径5mm、長さ20mmの円柱状に加工した試料片を用いて、荷重98mNで圧縮しながら、10℃/分の昇温速度で25℃から600℃まで加熱したときの熱収縮率が、2〜15%の範囲にある請求項1又は2に記載の複合硫化物粉体。
  4. 銅(II)イオン、亜鉛(II)イオン及び錫(II)イオンを含み、亜鉛(II)イオンと錫(II)イオンとのモル比(亜鉛(II)イオン:錫(II)イオン)が40:60〜60:40の範囲にあり、銅(II)イオンと、亜鉛(II)イオン及び錫(II)イオンの合計とのモル比〔銅(II)イオン:(亜鉛(II)イオン+錫(II)イオン)〕が40:60〜60:40の範囲にある金属イオン含有溶液と、硫化物イオン及び/又は水硫化物イオンを含有する溶液とを反応させて得られるものである、請求項1〜3のいずれかに記載の複合硫化物粉体。
  5. 銅(II)イオン、亜鉛(II)イオン及び錫(II)イオンを含み、亜鉛(II)イオンと錫(II)イオンとのモル比(亜鉛(II)イオン:錫(II)イオン)が40:60〜60:40の範囲にあり、銅(II)イオンと、亜鉛(II)イオン及び錫(II)イオンの合計とのモル比〔銅(II)イオン:(亜鉛(II)イオン+錫(II)イオン)〕が40:60〜60:40の範囲にある金属イオン含有溶液と、硫化物イオン及び/又は水硫化物イオンを含有する溶液とを反応させる工程を有する、請求項1〜3のいずれかに記載の複合硫化物粉体の製造方法。
  6. 前記金属イオン含有溶液と、前記硫化物イオン及び/又は水硫化物イオンを含有する溶液とを、pH3.5〜6.5で反応させる、請求項5に記載の複合硫化物粉体の製造方法。
  7. 前記金属イオン含有溶液と、前記硫化物イオン及び/又は水硫化物イオンを含有する溶液とを、30〜80℃で反応させる、請求項5又は6に記載の複合硫化物粉体の製造方法。
  8. 前記金属イオン含有溶液が、硫酸銅(II)、硫酸亜鉛(II)及び硫酸錫(II)を含む水溶液である請求項5〜7のいずれかに記載の複合硫化物粉体の製造方法。
  9. 前記硫化物イオン及び/又は水硫化物イオンを含有する溶液が、硫化ナトリウム、硫化カリウム及び硫化アンモニウムから選ばれる化合物を少なくとも1つ以上含む水溶液である請求項5〜8のいずれかに記載の複合硫化物粉体の製造方法。
  10. 請求項1〜4のいずれかに記載の複合硫化物粉体を焼成して得られる化合物半導体。
  11. 請求項10に記載の化合物半導体から形成される光吸収層を具備する太陽電池。
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