JP2010243097A - 吸収式冷凍機 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】高温再生器(14)に連通する吸収溶液ライン(L1,L2)に第3の再生器(SG1)を介装し、太陽熱集熱器(42)で加熱された熱媒が循環する循環系(40)が第3の再生器(SG1)に設けられた熱交換器(Lh3ex)とバイパス可能に連通しており、第3の再生器(SG1)で再生した冷媒が流れる配管(Lg1,Lg3)は低温再生器(16)を介して蒸発器(18)に連通している。
【選択図】図1
Description
しかし、係る従来技術(特許文献1、特許文献2)は、何れも、太陽熱は吸収式冷凍機を一重効用サイクルで駆動する(一重効用運転を行なう)のに適用されている。そのため、太陽熱(太陽エネルギー)から冷熱への変換効率が高くない、という問題を有している。
そして、その様な技術(特許文献3)と吸収式冷凍機とを組み合わせて、太陽熱により二重効用サイクルを駆動するシステムを構築した場合には、日射が不十分で、二重効用サイクルに必要な温度(例えば150℃)まで太陽熱を集熱出来ない場合には、太陽熱を吸収式冷凍機で適用することが出来なくなる。そのため、年間を通じての太陽熱利用量は小さくなる。
上述した従来の二重効用サイクル駆動をするシステムでは、一重効用サイクルに必要な温度レベルまでは集熱可能な場合でも、太陽熱が全く利用することが出来ない。そのため、二重効用サイクル駆動をするシステムにおいて、一重効用サイクルのみ稼動出来る低い温度レベルで太陽熱を利用する運転を行ないたいという要請が存在しているが、係る要請に応えることが出来る従来技術は提案されていない。
しかし、膨張タンクに密閉型隔膜式膨張タンクを用いた場合には、従来技術では、二重効用サイクルが可能な温度レベルの高温水が循環すると、高温水が保有する熱量によって、膨張タンクの隔膜が損傷してしまう。
そのため、従来技術では安価な密閉型隔膜式膨張タンクを使用することが不可能であり、二重効用サイクルが可能な温度レベルの高温水が循環しても、高温水の保有する熱による損傷を生じないような膨張タンク、例えば加圧窒素ボンベと膨張タンクとを組み合わせたものを用いる必要があった。その様なタンクは非常に高価であり、複雑な構成を必要とするため、結局、システム全体を複雑且つ高価にしてしまうという問題を有している。
また、吸収溶液を太陽熱集熱器で直接加熱する技術も提案されている(特許文献5参照)。しかし、この技術(特許文献5)では、太陽熱集熱器及びそれに連通する配管は真空を保持する必要があり、外気にさらされることによる腐食可能性が増大し、腐食による真空破壊時には、吸収冷凍機自体も運転不可能となる。また、フラッシング再生器を別途設置する必要があり、導入コストの増大や、設備の複雑化を招いてしまう。
この場合、太陽熱集熱器(42)の出口温度(T1)が、第3の再生器(SG1)内の吸収溶液温度(T4)に余裕代(ΔTH1,ΔTH2)を加えた温度よりも高温であれば、太陽熱集熱器(42)で加熱された熱媒が循環する循環系(40)が第3の再生器(SG1)に設けられた熱交換器(Lh3ex)と連通し、太陽熱集熱器(42)の出口温度(T1)が、第3の再生器(SG1)内の吸収溶液温度(T4)に余裕代(ΔTH1,ΔTH2)を加えた温度以下であれば、太陽熱集熱器(42)で加熱された熱媒が循環する循環系(40)は第3の再生器(SG1)に設けられた熱交換器(Lh3ex)をバイパスする。
一方、太陽熱集熱器(42)の出口温度(T1)が、第4の再生器(SG2)内の吸収溶液温度(T5)に余裕代(ΔTL1,ΔTL2)を加えた温度以下であるか、或いは、吸収器(12)から送り出された吸収溶液の液温(T6)に余裕代(ΔTS1,ΔTS2)を加えた温度以下であれば、太陽熱集熱器(42)で加熱された熱媒が循環する循環系(40)は第4の再生器(SG2)に設けられた熱交換器(Lh6ex)及び前記熱交換器(太陽熱熱交換器SHex)をバイパスする。
ここで、二重効用サイクルで駆動する場合にはCOP=1.5であり、太陽エネルギーから冷熱の変換効率は、太陽熱集熱器(42)における太陽熱集熱効率に当該COPを蒸散した数値(太陽熱集熱器42における太陽熱集熱効率を40%と仮定すれば、 0.4×1.5=0.6)となる。係る効率は、同一の太陽熱集熱器(42)を用いた場合における一重効用サイクル(COP=0.8)の場合における太陽エネルギーから冷熱の変換効率(0.4×0.8=0.32)に比較して、2倍近い高効率となる。
その結果、太陽熱で加熱された熱媒の温度レベルが比較的低くても(例えば90℃程度)、太陽熱を吸収式冷凍機(10)で有効利用することが出来るので、年間を通して吸収式冷凍機(10)で太陽熱を利用する頻度が上昇し、太陽熱の利用が有効に行なわれる。そして、高温再生器(14)に供給する蒸気や高質燃料等の使用量を節約出来る。
すなわち、膨張タンク(44)の隔膜がダメージを受ける可能性があれば、熱媒の保有する熱量を第3の再生器(SG1)内の吸収溶液の加熱及び冷媒の再生に用いた後に、さらに第4の再生器(SG2)内の吸収溶液の加熱及び冷媒の再生に用いて、熱媒の温度を降温させる。熱媒温度が降温することにより、膨張タンク(44)の隔膜がダメージを受けることが防止される。
その結果、安価な隔膜式の膨張タンク(44)を用いることが可能となり、その分だけ製造コストを低下することが出来る。
その結果、太陽熱で加熱された熱媒の温度レベルが比較的低くても(例えば90℃程度)、太陽熱を吸収式冷凍機(10)で有効利用することが出来る。そのため、年間を通して吸収式冷凍機(10)で太陽熱を利用する頻度が上昇し、太陽熱の有効利用が実現出来る。
これにより、熱媒温度が降温して、膨張タンク(44)の隔膜がダメージを受けることが防止される。そのため、安価な隔膜式の膨張タンク(44)を選択して、各種コストを低減することが出来る。
また、熱媒循環系(40)における膨張タンク(44)が介装された領域の熱媒温度が高くても、第3の再生器(SG1)内の吸収溶液の加熱及び冷媒の再生に用いた熱媒を、前記第4の再生器(SG2)と吸収器(12)から送り出された吸収溶液が流れる吸収溶液ライン(L1)に介装された前記熱交換器(SHex)の何れかに供給することにより、熱媒温度がさらに降温するので、隔膜式膨張タンク(44)の隔膜が十分に保護される。
また、本発明では、太陽熱集熱器(42)で加熱された熱媒が循環する循環系(40)と吸収式冷凍機(10)の吸収溶液循環系とは、第3の再生器(SG1)、第4の再生器(SG2熱交換器(SHex)を介して熱量の授受を行なうのみであるため、太陽熱集熱器(42)で加熱された熱媒が循環する循環系(40)が破損しても、吸収式冷凍機(10)を運転して、冷房負荷を賄うことが出来る。
図示の実施形態に係るシステムは、図1において、全体を符号100で示されている。
システム100は、全体を符号10で示す吸収式冷凍機と、全体を符号40で示す太陽熱循環系統とを備えている。
ここで、太陽熱高温再生器SG1及び太陽熱低温再生器SG2は、太陽熱循環系統40と熱的に連通しており、太陽熱循環系統40により集熱した太陽熱が投入されるように構成されている。そして、太陽熱高温再生器SG1には温度レベルが高い太陽熱(例えば、145℃以上)が投入され、太陽熱低温再生器SG2には温度レベルが低い太陽熱(例えば、90℃程度)が投入される。
ここで、吸収溶液循環系統は、吸収器12と太陽熱高温再生器SG1を連通する吸収溶液ラインL1(希溶液ライン)と、太陽熱高温再生器SG1と高温再生器14を連通する吸収溶液ラインL2と、高温再生器14と太陽熱低温再生器SG2を連通する吸収溶液ラインL3と、太陽熱低温再生器SG2と低温再生器16を連通する吸収溶液ラインL4と、低温再生器16と吸収器12を連通する吸収溶液ラインL5とを含んでいる。
そして、希溶液ラインL1の吸収器12側の領域には、吸収溶液循環用の吸収溶液ポンプ22が介装されている。
また、希溶液ラインL1と溶液ラインL3には高温溶液熱交換器26が介装されており、高温再生器14で加熱された高温の吸収溶液が保有する熱量を、希溶液ラインL1を流れる希溶液に投入している。
太陽熱溶液熱交換器SHexは、図1の例では希溶液ラインL1の低温溶液熱交換器24と高温溶液熱交換器26の間の領域に介装されている。図示はされていないが、太陽熱循環系統を流れる熱媒の温度レベル如何によっては、希溶液ラインL1の低温溶液熱交換器24よりも吸収器12側の領域に介装することも可能であるし、或いは、希溶液ラインL1の高温溶液熱交換器26よりも太陽熱高温再生器SG1側の領域に介装することも可能である。
太陽熱低温再生器SG2で再生した冷媒蒸気は冷媒ラインLg4を流れ、冷媒ラインLg4は、低温再生器16で再生した冷媒蒸気が流れる冷媒ラインLg5と合流点GW2で合流して冷媒ラインLg6となり、冷媒ラインLg6は低温再生器16を介して凝縮器18に連通する。
凝縮器18で凝縮した液相冷媒は、冷媒ラインLg7を流れて蒸発器20に流入する。蒸発器20において、液相冷媒は、図示しない冷房負荷に連通する冷水ラインLcを流れる冷水から気化熱を奪って冷水の温度を高温せしめ、冷媒蒸気となって冷媒ラインLg8に流入して、吸収器12内で吸収溶液に吸収される。
なお、実機では、吸収器12と蒸発器18とは一体に構成されており、冷媒ラインLg8は図示しない仕切りと開口部で構成される。
そして太陽熱低温再生器SG2には温度センサST5が介装されており、太陽熱低温再生器SG2内の吸収溶液温度T5を計測している。
希溶液ラインL1の低温溶液熱交換器24と太陽熱溶液熱交換器SHexとの間の領域には温度センサST6が介装されており、当該個所を流れる吸収溶液(希溶液)温度T6を計測している。
しかし、図示はされていないが、吸収式冷凍機吸収器12からの希溶液が流れるラインが、高温再生器SG1、14側に連通するラインと低温再生器SG2、16側に分岐するラインとに分岐する「パラレルフロー」タイプや、吸収器12からの希溶液が低温再生器SG2、16を経由してから高温再生器SG1、14側に向かう「リバースフロー」タイプに構成することも可能である。
太陽熱循環系統40を循環する熱媒は、例えば、純水である。ここで、熱媒は上水(水道水)や各種溶液であっても良く、純水に限定される訳ではない。ただし、熱媒は液体である。
太陽熱循環系統40内では、例えば、一般的な二重効用吸収式冷凍機における高温再生器内部程度の温度、圧力を想定している。
太陽熱集熱器42の出口は、熱媒ラインLh2に連通している。
ここで、太陽熱集熱器42出口における熱媒温度T1を計測するため、温度センサST1が設けられている。
太陽熱高温再生器SG1では、熱交換器Lh3exを介して、熱媒ラインLh3を流れる熱媒が保有する熱量が、太陽熱高温再生器SG1内の吸収溶液に投入される。
太陽熱高温再生器SG1を介装する熱媒ラインLh3と、太陽熱高温再生器SG1をバイパスする熱媒ラインLh4とは、合流して熱媒ラインLh5となる。熱媒ラインLh3とLh4との合流個所には、三方弁V1が設けられている。
熱媒ラインLh6は太陽熱低温再生器SG2に連通しており、熱交換器Lh6exを介して、太陽熱低温再生器SG2内の吸収溶液に熱媒ラインLh6を流れる熱媒が保有する熱量を投入している。
熱媒ラインLh7は太陽熱溶液熱交換器SHexに連通しており、図示しない熱交換器を介して、熱媒ラインLh7を流れる熱媒が保有する熱量が、吸収式冷凍機10の希溶液ラインL1を流れる吸収溶液(希溶液)に投入される。
熱媒ラインLh6,Lh7は合流点G1で合流して熱媒ラインLh9となり、熱媒ラインLh9は三方弁V2に連通する。
図1の実施形態において、図2〜図4で示す様に太陽熱循環系統40内を流れる熱媒を吸収式冷凍機1に流す際に、後述の間欠運転を行なうのであれば、熱媒ラインLh8に熱媒が流れる場合には、熱媒ラインLh6,Lh7には熱媒は流れない。一方、熱媒ラインLh6、Lh7に熱媒が流れる場合には、熱媒ラインLh8には熱媒は流れない。これに対して、図2〜図4で示す様に太陽熱循環系統40内を流れる熱媒を吸収式冷凍機1に流す際に、後述の連続運転を行なうのであれば、ラインLh6、Lh7に熱媒が流れる場合に、ラインLh8にも熱媒が流れることがある。
図1において、熱媒ラインLh6,Lh7の何れか一方に熱媒が流れて、他方には熱媒が流れない、という事態は生じない様に構成されている。
換言すれば、三方弁V2は、熱媒ラインLh8に連通するポートが開放されている場合には、熱媒ラインLh6,Lh7が合流した熱媒ラインLh9に連通するポートは閉鎖されており、熱媒ラインLh9に連通するポートが開放されている場合には、熱媒ラインLh8に連通するポートは閉鎖されている。
分岐ラインLh10には、膨張タンク44に流入する熱媒温度T3を計測する温度センサST3が介装されている。
熱媒ラインLh11には第4の分岐点B4が設けられ、分岐点B4から分岐ラインLh12を介して、熱媒を冷却する冷却塔46に連通している。
冷却塔46は、戻りラインLh13を介して三方弁V3に連通している。換言すれば、三方弁V3は、冷却塔46で冷却された熱媒が流れる熱媒ラインLh13と、熱媒ラインLh11との合流点に配置されている。
また、熱媒温度が昇温し過ぎて太陽熱集熱器42が破損しないように、図11を参照して後述するように、三方弁V3の開閉制御や冷却塔46のON−OFF制御が行なわれる。
それと共に、ポンプP1のON−OFF、あるいは吐出流量制御も行なう。さらに、三方弁V1〜V3の開度制御を行なう場合もある。
これ等の制御は、図示しない制御装置で行なわれる。図5以下で後述するように、図示の実施形態に係る制御事態は新規で且つ進歩性を有するが、制御装置自体は市販品で構成することが可能である。
なお、添付図面において、制御装置の図示を省略したことに伴い、各種センサ(例えば、温度センサT1、T3〜T6等)や制御対象(例えば、ポンプP1、冷却塔46、三方弁V1〜V3等)における信号伝達ラインの図示も省略している。
最初に図2を参照して、二重効用サイクルで駆動する場合における基本的な形態について説明する。
図2において、太陽熱循環系統40では、三方弁V1は「開」状態、すなわち図示の実施形態では太陽熱循環系統40を流れる熱媒が、太陽熱高温再生器SG1を経由する様に開閉制御された状態である。そして、三方弁V2は「閉」状態、すなわち太陽熱循環系統40を流れる熱媒が太陽熱低温再生器SG2及び太陽熱溶液熱交換器SHexを経由せずに、太陽熱集熱器42側に向かう様に開閉制御された状態となっている。
図2において、太陽熱循環系統40内を熱媒が流れる経路が、太い実線により示されている。
図2で示す場合において、後述の間欠運転を行なうのであれば、太陽熱循環系統40内を流れる熱媒は、太陽熱集熱器42で加熱され、熱媒ラインLh2を流れ、第1の分岐点B1で全量がラインLh3を流れる。これに対して、図2で示す場合において、後述の連続運転を行なうのであれば、ラインLh3及びラインLh4に熱媒が流れることがある。
熱媒の保有する熱量は、熱交換器Lh3exにより、太陽熱高温再生器SG1内の吸収溶液に投入され、冷媒蒸気を再生する。
太陽熱高温再生器SG1で再生された冷媒蒸気は、冷媒ラインLg1、Lg3を流れて凝縮器18に向かう。ここで、ラインLg3を流れる冷媒蒸気が保有する熱量は、低温再生器16内の吸収溶液に投入されて、低温再生器16内でも冷媒蒸気が再生される。低温再生器16で再生した冷媒蒸気は、ラインLg5、Lg6を介して、凝縮器18に向かう。
ここで三方弁V2は、上述した通り、「閉」状態、すなわち太陽熱循環系統40を流れる熱媒が太陽熱低温再生器SG2及び太陽熱溶液熱交換器SHexを経由せずに、太陽熱集熱器42側に向かう様に開閉制御されているので、熱媒ラインLh3を流れる熱媒は、第2の分岐点B2において、ラインLh6及びLh7を流れずに、ラインLh8を流れるのである。そして、三方弁V2では、ラインLh11に連通するポートに熱媒が流れる。
熱媒ラインLh11を流れる熱媒は、ポンプP1に吸い込まれ、加圧して吐出されて、ラインLh1を流れて、太陽熱集熱器42で太陽熱により加熱される。
それに対して、図2で示すような二重効用サイクルで駆動する場合には、COP=1.5なので、上記のように太陽熱集熱器42における太陽熱集熱効率を40%と仮定すれば、
0.4×1.5=0.6(60%)
が、二重効用サイクルにおける太陽エネルギーから冷熱の変換効率となる。
両者を比較すれば明らかな様に、二重効用サイクルで駆動した場合における太陽エネルギーから冷熱の変換効率は、一重効用サイクルで駆動した場合の2倍近い数値となる。
そのため、太陽エネルギー(或いは、太陽熱)有効利用の見地からも、二重効用サイクルで駆動することが望ましい。
しかし、実際には、図2で示す状態で、太陽熱集熱器42で加熱された熱媒から、熱伝導により、ラインLh6を介して、膨張タンク44に熱を伝達してしまうことがある。或いは、三方弁V2において、ラインLh8を流れる熱媒が、ラインLh9に連通するポートからラインLh9側に漏れ出してしまう場合も存在する。その結果、ラインLh9に存在する熱媒の温度T3が上昇して、膨張タンク44の隔膜にダメージを与えてしまう恐れがある。
図3は、二重効用サイクルで駆動する場合において、太陽熱循環系統40を流れる熱媒が保有する熱量を、太陽熱低温再生器SG2及び太陽熱熱交換器SHexで、吸収式冷凍機10の吸収溶液側に投入して、熱媒温度T3を低下させる態様を示している。
図3においても、太陽熱循環系統40内を熱媒が流れる経路が、太い実線により示されている。
太陽熱循環系統40内を流れる熱媒が、太陽熱集熱器42で加熱され、加熱された熱媒が保有する熱量により、太陽熱高温再生器SG1内の吸収溶液が加熱されて冷媒蒸気を再生し、太陽熱高温再生器SG1内で再生された冷媒蒸気により、低温再生器16内で冷媒蒸気が再生されるのは、図2と同様である。
そして、太陽熱高温再生器SG1で冷媒蒸気を再生した熱媒が、熱媒ラインLh3、三方弁V1、熱媒ラインLh5を経由して第2の分岐点B2に到達するのも、図2と同様である。
ここで、熱媒ラインLh6とLh7を流れる熱媒の流量比は、吸収式冷凍機10の吸収溶液温度や熱媒温度その他により、ケース・バイ・ケースで異なる。
太陽熱低温再生器SG2で再生された冷媒蒸気は、冷媒ラインLg4、Lg6を流れて凝縮器18に向かう。ここで冷媒ラインLg4は、合流点GW2において、低温再生器16で再生した冷媒蒸気が流れる冷媒ラインLg5と合流して、ラインLg6となって凝縮器18に連通している。
熱媒ラインLh7を流れる熱媒は、太陽熱溶液熱交換器SHexにおいて、吸収式冷凍機10の希溶液ラインL1を流れる吸収溶液(希溶液)と熱交換を行なう。換言すれば、熱媒ラインLh7を流れる熱媒を流れる熱媒が保有する熱量は、太陽熱溶液熱交換器SHexにより、希溶液液ラインL1の低温溶液熱交換器24と高温溶液熱交換器26の間の領域を流れる希溶液に対して投入され、当該希溶液を加熱する。
太陽熱低温再生器SG2で保有する熱量を吸収溶液に投入した熱媒は熱媒ラインLh6を流れ、太陽熱溶液熱交換器SHexで保有する熱量を希溶液に投入した熱媒は熱媒ラインLh7を流れ、合流点G1で合流する。
そのため、熱媒ラインLh9を流れる熱媒温度T3は、膨張タンク44の隔膜を熱により破損する程度(例えば、100℃)までは昇温しない。
すなわち、太陽熱高温再生器SG1内の吸収溶液に熱量を投入した(太陽熱循環系統40を流れる)熱媒を、太陽熱低温再生器SG2或いは太陽熱溶液熱交換器SHexに流すことにより、熱媒ラインLh9を流れる熱媒温度T3は降温し、以って、膨張タンク44の隔膜は熱媒が保有する熱から保護されるのである。
熱媒ラインLh9〜ポンプP1については、図2で説明したのと同様である。
図4の一重効用サイクルでは、太陽熱循環系統40の熱媒(が保有する熱量)は太陽熱高温再生器SG1には投入されないので、三方弁V1は「閉」状態、すなわち図示の実施形態では太陽熱循環系統40を流れる熱媒が、太陽熱高温再生器SG1をバイパスする様に開閉制御された状態となる。
一方、三方弁V2は図3で示すのと同様な「閉」状態、すなわち太陽熱循環系統40を流れる熱媒が太陽熱低温再生器SG2及び太陽熱溶液熱交換器SHexを経由して、膨張タンク44を回想した熱媒ラインLh9を流れる様に開閉制御された状態となっている。
図4においても、太陽熱循環系統40内を熱媒が流れる経路が、太い実線により示されている。
ここで、後述の間欠運転を行なう場合には、熱媒ラインLh5を流れる熱媒は、その全量が、第2の分岐点B2において熱媒ラインLh6及びLh7を流れる。一方、後述の連続運転を行なう場合には、熱媒ラインLh5を流れる熱媒は、熱媒ラインLh6及びLh7のみならず、熱媒ラインLh8を流れることがある。
図3の場合と同様に、熱媒ラインLh6とLh7を流れる熱媒の流量比は、吸収式冷凍機10の吸収溶液温度や熱媒温度その他により、ケース・バイ・ケースで異なる。
そして、熱媒ラインLh6と熱媒ラインLh7とは合流点G1で合流する。
太陽熱低温再生器SG2で再生された冷媒蒸気の流れについては、図3で説明したのと同様である。
熱媒ラインLh9〜ポンプP1については、図2、図3で説明したのと同様である。
すなわち、太陽熱の温度レベルが低くても、太陽熱を吸収式冷凍機10で有効に用いることが出来るのである。
ここで、図示の実施形態では、「間欠運転」を行なう場合と、「連続運転」を行なう場合とが存在する。
ここで「間欠運転」は、太陽熱集熱器42の出口における熱媒温度T1が所定温度(例えば、二重効用サイクルであれば145℃、一重効用サイクルであれば85℃)以上の場合だけ、ポンプP1を駆動する運転態様である。
一方「連続運転」は、太陽熱集熱器42の出口における熱媒温度T1が前記所定温度(例えば、二重効用サイクルであれば145℃、一重効用サイクルであれば85℃)以下でもポンプP1は駆動するが、太陽熱高温再生器SG1や太陽熱低温再生器SG2に熱媒を連通させず、或いは、連通する熱媒の流量を絞る運転態様である。この場合、連続運転で熱媒流量を絞る手法としては、例えば、三方弁V1,V2の該当するポートにおける開度を小さくする、或いは、ポンプP1の出力を低下させる等がある。
間欠運転と連続運転とは、運転の態様である。
図5において、制御を開始したならば、ステップS1において、吸収式冷凍機10が運転中であるか否かを判断する。吸収式冷凍機10が運転されていなければ(ステップS1がN)、ステップS2に進み、太陽熱集熱器42の出口における熱媒温度T1が許容最高温度T1maxよりも高温であるか否かを判断する。許容最高温度T1maxは、ケース・バイ・ケースで予め設定されている。
太陽熱集熱器42の出口における熱媒温度T1が許容最高温度T1maxよりも高温である場合(ステップS2がY)、太陽熱集熱器42を保護するため、ステップS3において、図11を参照して後述する過加熱防止運転を行なう(過加熱防止モード)。そしてステップS1に戻る。
太陽熱集熱器42の出口における熱媒温度T1が許容最高温度T1max以下であれば(ステップS2がN)、ステップS1に戻る。
ステップS4の状態となったならば、ステップS5に進む。
先ずステップS5では、太陽熱集熱器42の出口における熱媒温度T1が、太陽熱低温再生器SG2内の吸収溶液温度T5に余裕代ΔTL1(ケース・バイ・ケースで予め設定される温度差:例えば、5℃)を加えた温度(T5+ΔTL1)よりも高温であるか否かを判断する。
熱媒温度T1が、吸収溶液温度T5に余裕代ΔTL1を加えた温度よりも高温であれば(T1>T5+ΔTL1:ステップS5がY)、太陽熱集熱器42で加熱された熱媒を太陽熱低温再生器SG2に供給可能である、換言すれば、太陽熱低温再生器SG2内の吸収溶液から「熱の逆流」が生じることはないと判断して、ステップS6に進む。
熱媒温度T1が、吸収溶液温度T5に余裕代ΔTL1を加えた温度以下であれば(T1≦T5+ΔTL1:ステップS5がN)、太陽熱集熱器42で加熱された熱媒は太陽熱低温再生器SG2に供給不能であると判断して、時間t1(ステップS8,S9を参照して後述)の計時結果をリセットし(ステップS7)、ステップS5に戻る。
熱媒温度T1が、吸収溶液温度T6に余裕代ΔTS1を加えた温度よりも高温であれば(T1>T6+ΔTS1:ステップS6がY)、太陽熱集熱器42で加熱された熱媒を太陽熱溶液熱交換器SHexに供給可能である、換言すれば、溶液ラインL1を流れる希溶液から「熱の逆流」が生じることはないと判断して、ステップS8に進む。
熱媒温度T1が、吸収溶液温度T6に余裕代ΔTS1を加えた温度以下であれば(T1≦T6+ΔTS1:ステップS6がN)、太陽熱集熱器42で加熱された熱媒は太陽熱溶液熱交換器SHexに供給不能であると判断して、時間t1の計時結果をリセットして(ステップS7)、ステップS5に戻る。
ステップS5とステップS6の順序を入れ替えることが可能であるし、同時に(いわゆる「パラレル」に)実行することも可能である。
ここで、一重効用サイクルで駆動する場合には、太陽熱集熱器42で加熱された熱媒が一重効用サイクルが可能な温度レベルまで昇温した状態が、所定の時間以上連続している必要がある。太陽熱は天候に左右される程度が大きく、日射量が急激に変動する場合を考慮するためである。
その様な「所定の時間」、すなわち太陽熱集熱器42で加熱された熱媒が一重効用サイクルが可能な温度レベルまで昇温した状態が連続している時間の所定値を、ステップS8以降では時間t1として表現している。
図示しない計時装置(タイマ)により、時間t1の計測が既に開始されていれば(ステップS8がY)、ステップS10に進み、太陽熱集熱器42の出口における熱媒温度T1が、太陽熱高温再生器SG1内の吸収溶液温度T4に余裕代ΔTH1(ケース・バイ・ケースで予め設定される温度差)を加えた温度(T4+ΔTH1)よりも高温であるか否かを判断する。
熱媒温度T1が、吸収溶液温度T4に余裕代ΔTH1を加えた温度よりも高温であれば(T1>T4+ΔTH1:ステップS10がY)、太陽熱集熱器42で加熱された熱媒が保有する熱量を太陽熱高温再生器SG1に投入可能である、すなわち吸収式冷凍機10を二重効用サイクルで駆動することが可能であると判断して、ステップS11に進む。そして時間t1をリセットして(ステップS11)、図9を参照して後述する二重効用サイクルを開始する(ステップS12)。
熱媒温度T1が、吸収溶液温度T4に余裕代ΔTH1を加えた温度以下であれば(T1≦T4+ΔTH1:ステップS10がN)、太陽熱集熱器42で加熱された熱媒が保有する熱量は太陽熱高温再生器SG1に投入できず、二重効用サイクルは出来ないと判断して、ステップS13に進む。
時間t1が一定時間経過したならば(ステップS13がY)、一重効用サイクルが可能であると判断して、ステップS14に進む。そして時間t1をリセットして(ステップS14)、図7を参照して説明する一重効用サイクルを開始する(ステップS15)。
一方、時間t1が一定時間経過していなければ(ステップS13がN)、ステップS5に戻る。
図7で示す一重効用サイクルの制御は、図5におけるステップS15の状態から開始される。図5のステップS15の状態では、太陽熱集熱器42で加熱された熱媒が一重効用サイクル可能な温度レベルまで昇温しているので、図7のステップS21では、ポンプP1を駆動する。
そして三方弁V1を「閉」の状態(太陽熱循環系統40が太陽熱高温再生器SG1をバイパスする状態)として、三方弁V2は「開」の状態(太陽熱循環系統40が、太陽熱低温再生器SG2及び太陽熱溶液熱交換器SHexに連通する状態)とせしめる。すなわち、図7のステップS21では、太陽熱循環系統40は、図4で示す様に吸収式冷凍機10側に連通する。
一重効用サイクルを一定時間連続することは、太陽熱集熱器42で一定の日射量が確保できた状態が一定時間連続していることなので、より効率が高い二重効用サイクルに移行出来る可能性が高い。そのため、図7及び図8で示す制御では、符号「t2」で示す時間を計時して、一重効用サイクルを連続して二重効用サイクルに移行出来る可能性が高くなる時間が経過したか否かを判断しているのである。
より詳細に述べると、一重効用サイクルから二重効用サイクルに移行できるか否かを判断する場合には、後述する通り、ポンプP1を一旦停止する(ステップS30)。そして、時間t2は、一重効用サイクルの際にポンプP1を一旦停止するか否かを判断するパラメータである。
ステップS22において、時間t2の計測が既に行なわれていれば(ステップS22がY)、ステップS23をバイパスしてステップS24に進む。
ステップS24では、太陽熱集熱器42の出口における熱媒温度T1が許容最高温度T1maxよりも低温であるか否かを判断する。太陽熱集熱器42の出口における熱媒温度T1が許容最高温度T1max以上の高温であれば(T1≧T1max:ステップS24がN)、ステップS25において、図11の過加熱防止運転(過加熱防止モード)を行ない、ステップS26に進む。
太陽熱集熱器42の出口における熱媒温度T1が許容最高温度T1maxよりも低温であれば(T1<T1max:ステップS24がY)、ステップS25をバイパスして、ステップS26に進む。
先ずステップS26では、太陽熱集熱器42の出口における熱媒温度T1が、太陽熱低温再生器SG2内の吸収溶液温度T5に余裕代ΔTL2(ケース・バイ・ケースで予め設定される温度差)を加えた温度(T5+ΔTL2)よりも高温であるか否かを判断する。
ここで、ステップS26における余裕代ΔTL2は、図5、図6のステップS5における余裕代ΔTL1とは必ずしも一致しない。図5、図6の起動スタンバイ状態ではポンプP1は駆動していないのに対して、図7の一重効用サイクルではポンプP1が駆動しており、熱媒が循環しているからである。
熱媒温度T1が、吸収溶液温度T5に余裕代ΔTL2を加えた温度以下であれば(T1≦T5+ΔTL2:ステップS26がN)、太陽熱集熱器42で加熱された熱媒を太陽熱低温再生器SG2に供給出来る状態ではなくなったと判断して、ステップS35に進む。
熱媒温度T1が、吸収溶液温度T6に余裕代ΔTS2を加えた温度よりも高温であれば(T1>T6+ΔTS2:ステップS27がY)、太陽熱集熱器42で加熱された熱媒を太陽熱溶液熱交換器SHexに供給可能な状態が継続していると判断して、ステップS28に進む。
熱媒温度T1が、吸収溶液温度T6に余裕代ΔTS2を加えた温度以下であれば(T1≦T6+ΔTS2:ステップS27がN)、太陽熱集熱器42で加熱された熱媒を太陽熱溶液熱交換器SHexに供給可能な状態ではなくなったと判断して、ステップS35に進む。
そのため、時間t2が一定時間(一重効用サイクルを継続している時間であって、二重効用サイクルに移行出来る可能性が高くなる時間)を経過したか否かを判断し(ステップS28)、一定時間を経過していれば(ステップS28がY)、時間t2をリセットして(ステップS29)、ステップS30に進む。
ステップ30では、図5の起動スタンバイ状態(図5のステップS4)と同様に、ポンプP1を停止し、三方弁V1を「閉」状態(太陽熱循環系統40が太陽熱高温再生器SG1をバイパスする状態)として、三方弁V2も「閉」状態(太陽熱低温再生器SG2及び太陽熱溶液熱交換器SHexをバイパスする状態)とする。
ここで、ステップS30の状態において、二重効用サイクルに移行出来るか否かを判断するのに十分な時間として、符号「t4」で示す様な時間を制御に導入し、係る時間t4が経過するまでに、二重効用サイクルに移行出来るか、一重効用サイクルを続行するかを判断する。
太陽熱循環系統40をステップS30の状態に制御した後、当該時間t4の計時を開始して(ステップS31)、ステップS32に進む。
ここで、ステップS32の時点ではポンプP1が停止しているので、余裕代ΔTH1は図5のステップS5における余裕代と同一である。
太陽熱集熱器42の出口における熱媒温度T1が吸収溶液温度T4に余裕代ΔTH1を加えた温度(T4+ΔTH1)よりも高温であれば(T1>T4+ΔTH1:ステップS32がY)、二重効用サイクルに移行することが可能であると判断して、計時された時間t4をリセットし(ステップS33)、図9で示す二重効用サイクルに移行する(ステップS34)。
太陽熱集熱器42の出口における熱媒温度T1が吸収溶液温度T4に余裕代ΔTH1を加えた温度(T4+ΔTH1)以下であれば(T1≦T4+ΔTH1:ステップS32がN)、ステップS44に進む。
ここで時間t3は、日射量の回復等に起因して、太陽熱集熱器42で加熱された熱媒温度T1が一重効用サイクルが可能な温度レベルまで復帰するのに十分な時間が経過したか否かを判断するために制御に導入された時間である。
ステップS37では、熱媒温度T1が、太陽熱低温再生器SG2内の吸収溶液温度T5に余裕代ΔTL1(ケース・バイ・ケースで予め設定される温度差)を加えた温度(T5+ΔTL1)よりも高温であるか否かを判断する。
ここで、ステップS37ではポンプP1が停止しているので、図5、図6のステップS5における余裕代ΔTL1と同一の余裕代を用いている。
熱媒温度T1が、吸収溶液温度T5に余裕代ΔTL1を加えた温度よりも高温であれば(T1>T5+ΔTL1:ステップS37がY)、熱媒温度T1が太陽熱低温再生器SG2に供給出来る温度レベルまで復帰したと判断して、ステップS38に進む。
熱媒温度T1が、吸収溶液温度T5に余裕代ΔTL1を加えた温度以下であれば(T1≦T5+ΔTL1:ステップS37がN)、熱媒温度T1が太陽熱低温再生器SG2に供給出来る温度レベルには復帰していないと判断して、ステップS41に進む。
熱媒温度T1が、吸収溶液温度T6に余裕代ΔTS1を加えた温度よりも高温であれば(T1>T6+ΔTS1:ステップS38がY)、熱媒温度T1が太陽熱溶液熱交換器SHexに供給可能な温度レベルに復帰したと判断して、ステップS39に進む。
熱媒温度T1が、吸収溶液温度T6に余裕代ΔTS1を加えた温度以下であれば(T1≦T6+ΔTS1:ステップS38がN)、熱媒温度T1は太陽熱溶液熱交換器SHexに供給可能な温度レベルには復帰していないと判断して、ステップS41に進む。
一方、ステップS41では、熱媒温度T1は太陽熱低温再生器SG2及び/又は太陽熱溶液熱交換器SHexに供給可能な温度レベルに復帰していないので、熱媒温度T1は一重効用サイクルが可能な温度レベルに復帰していないと判断して、時間t3が一定時間を経過したか否かを判断する。時間t3が一定時間(太陽熱集熱器42で加熱された熱媒温度T1が一重効用サイクル可能な温度レベルまで復帰するのに十分な時間)を経過していれば(ステップS41がY)、一重効用サイクルに復帰することは困難であると判断して、時間t2,t3をリセットして(ステップS42)、図5で示す起動スタンバイ状態に移行する(ステップS43)。
時間t4が一定時間を経過していなければ(ステップS44がN)、ステップS32に戻る。
時間t4が一定時間を経過していれば(ステップS44がY)、二重効用サイクルに移行することは困難であると判断して、時間t4をリセットし(ステップS45)、ステップS21に戻り、一重効用サイクルを実行する(ステップS46)。
図8で示す一重効用サイクルの制御は、図7で示す制御と似通っている個所が多いので、以下において、図7で説明したのとは異なっている部分を主に説明する。
図8の連続運転の場合は、ポンプP1は常時駆動されており、一重効用サイクルが所定時間継続した場合には、直ちに二重効用サイクルに移行している。
また、図8では、一重効用サイクルが連続することが出来ない状態になった場合には、復帰するか否かを判断することなく、直ちに図6の起動スタンバイ状態に移行している。
そのため、一重効用サイクルを開始したならば(ステップS21)、図示しない計時装置(タイマ)により、直ちに時間t2の計時を開始する(ステップS23)。
ステップS51では、太陽熱低温再生器SG2内の吸収溶液温度T5に余裕代ΔTL1を加えた温度(T5+ΔTL1)が、太陽熱溶液熱交換器SHexを流れる吸収溶液(吸収式冷凍機10の溶液ラインL1を流れる希溶液)の液温T6に余裕代ΔTS1を加えた温度(T6+ΔTS1)よりも高温であるか否かを判断する。
これにより、太陽熱低温再生器SG2或いは太陽熱溶液熱交換器SHexにおいて、吸収式冷凍機10内の吸収溶液から、太陽熱循環系統40の熱媒側に「熱の逆流」が生じることを防止することが出来る。
なお、ステップS51〜S53で示す制御は、図示の実施形態のように、太陽熱低温再生器SG2と太陽熱溶液熱交換器SHexとを有している構成の場合のみに行なわれる。
太陽熱低温再生器SG2或いは太陽熱溶液熱交換器SHexの何れか一方のみを設けているのであれば、ステップS51で示す制御は不要であり、ステップS52或いはステップS53で示す何れかの制御を行なう。
一方、太陽熱低温再生器SG2内の吸収溶液温度T5に余裕代ΔTL1を加えた温度(T5+ΔTL1)が、太陽熱溶液熱交換器SHexを流れる吸収溶液温度T6に余裕代ΔTS1を加えた温度(T6+ΔTS1)以下の温度であれば(T5+ΔTL1≦T6+ΔTS1:ステップS51がN)、ステップS53に進み、熱媒温度T1が吸収溶液温度T6に余裕代ΔTS1を加えた温度(T6+ΔTS1)となる様に、ポンプP1におけるインバータ制御、或いは、三方弁V2の開度制御の目標値を設定する。そしてステップS26に進む。
以って、高効率の二重効用サイクル(COP=1.5)を優先的に実行することになる。
また、一重効用サイクルが連続することが出来ない状態になったと判断された場合には(ステップS26,S27の何れかがN)、図7のステップS36〜S43に相当する工程(一重効用サイクルに復帰するか否かを、t3一定時間経過まで待機した後に判断する一連の工程)を実行することなく、時間t2をリセットして(ステップS42)、直ちに図6の起動スタンバイ状態に移行する(ステップS43)。
その他については、図8の制御は図7の制御と同様である。
図9の制御は、図5の起動スタンバイ状態或いは図7の一重効用サイクルから、図9の二重効用サイクルに移行した際に開始される。
ステップS61では、ポンプP1を駆動し、三方弁V1を「開」の状態(太陽熱循環系統40が太陽熱高温再生器SG1に連通する状態)にして、三方弁V2を「閉」の状態(太陽熱循環系統40が、太陽熱低温再生器SG2及び太陽熱溶液熱交換器SHexをバイパスする状態)とせしめる。すなわち、図9のステップS61では、太陽熱循環系統40は、図2で示す様に吸収式冷凍機10側に連通する。
太陽熱集熱器42の出口における熱媒温度T1が許容最高温度T1max以下であれば(ステップS62がY)、太陽熱集熱器42保護のための過加熱防止運転を行なう必要が無いと判断して、ステップS63に進む。
太陽熱集熱器42の出口における熱媒温度T1が許容最高温度T1maxよりも高温である場合(ステップS62がN)、太陽熱集熱器42保護のため、図11を参照して後述する過加熱防止運転を行ない(ステップS64:過加熱防止モード)、ステップS63に進む。
ここで、許容最高温度T3maxは膨張タンク44の隔膜が熱媒温度T3により損傷を受けるか否かという観点で決定される温度であり、膨張タンク44の仕様により決定される(例えば、100℃)。
熱媒温度T3が許容最高温度T3max以下の低温であれば(ステップS63がN)、膨張タンク44の隔膜が熱媒の熱(温度T3)によりダメージを受けることはないと判断して、ステップS65に進む。
熱媒温度T3が許容最高温度T3maxよりも高温であれば(ステップS63がY)、膨張タンク44の隔膜が熱媒の保有する熱量によりダメージを受ける恐れがあると判断して、図13を参照して後述する膨張タンク44を保護するための運転を行ない(ステップS66:膨張タンク保護モード)、ステップS65に進む。
ここで、図9で示す二重効用サイクルでは、図5で示す起動スタンバイ状態とは異なり、ポンプP1が駆動しており、熱媒が循環している。そのため、余裕代ΔTH2は、必ずしも図5のステップS10における余裕代ΔTH1と同一ではない。
熱媒温度T1が吸収溶液温度T4に余裕代ΔTH2を加えた温度よりも高温であれば(T1>T4+ΔTH2:ステップS65がY)、太陽熱集熱器42で加熱された熱媒が二重効用サイクルを継続可能な温度レベルを保持しているので、効率の高い二重効用サイクルを優先して継続するべく、ステップS62に戻る。
熱媒温度T1が吸収溶液温度T4に余裕代ΔTH2を加えた温度以下であれば(T1≦T4+ΔTH2:ステップS65がN)、太陽熱集熱器42で加熱された熱媒が二重効用サイクルを継続可能な温度レベルよりも降温したので、ステップS67に進む。
ここで、時間t5は、太陽熱集熱器42で加熱された熱媒が二重効用サイクルを継続可能な温度レベルよりも降温した際に、日射量の回復等により、再び二重効用サイクルが可能な温度レベルまで熱媒温度T1が復帰するか否かを判断するのに十分な時間の経過を判断するために、図9の制御において導入されている。
ステップS68で時間t5の計時を開始したならば、太陽熱循環系統40における熱媒ラインLh9の熱媒温度T3が、許容最高温度T3maxよりも高温であるか否かを判断する(ステップS69)。
熱媒温度T3が許容最高温度T3max以下の低温であれば(ステップS69がN)、膨張タンク44の隔膜が熱媒の熱(温度T3)によりダメージを受けることはないと判断して、ステップS70に進む。
熱媒温度T3が許容最高温度T3maxよりも高温であれば(ステップS69がY)、膨張タンク44の隔膜が熱媒により熱的なダメージを受ける恐れがあると判断して、三方弁V1を「閉」の状態(太陽熱降温再生器SG1をバイパスする状態)にせしめ(ステップS71)、図13を参照して後述する膨張タンク44を保護するための運転を行ない(ステップS72:膨張タンク保護モード)、ステップS70に進む。
ステップS70ではポンプP1が停止しているので(ステップS67)、図5のステップS10における余裕代ΔTH1と同一の余裕代を用いている。
熱媒温度T1が吸収溶液温度T4に余裕代ΔTH1を加えた温度よりも高温であれば(T1>T4+ΔTH1:ステップS70がY)、太陽熱集熱器42で加熱された熱媒が二重効用サイクルを継続可能な温度レベルに復帰したと判断し、時間t5をリセットして(ステップS76)、効率の高い二重効用サイクルで駆動するべく、ステップS61に戻る(ステップS77)。
熱媒温度T1が吸収溶液温度T4に余裕代ΔTH1を加えた温度以下であれば(T1≦T4+ΔTH1:ステップS70がN)、時間t5が一定時間(二重効用サイクルが可能な温度レベルまで熱媒温度T1が復帰するか否かを判断するのに十分な時間)を越えたか否かを判断する(ステップS73)。
二重効用サイクルが可能な温度レベルまで熱媒温度T1が復帰するか否かを判断するのに十分な時間を経過したならば(ステップS73がY)、二重効用サイクルが可能なまでに熱媒温度T1が昇温するのは難しいと判断して、時間t5をリセットして(ステップS74)、図7で示す一重効用サイクルを行なう(ステップS75)。
図10で示す二重効用サイクルの制御は、図9で示す制御と似通っている個所が多いので、以下において、図9で説明したのとは異なっている部分を主に説明する。
図10において、太陽熱集熱器42の出口における熱媒温度T1が許容最高温度T1maxよりも高温であるか否かを判断(ステップS62)した後、太陽熱循環系統40における熱媒ラインLh9を流れる熱媒温度T3が、許容最高温度T3maxよりも高温であるか否かを判断(ステップS63)する前の段階(ステップS80)で、太陽熱集熱器42出口における熱媒温度T1が、太陽熱高温再生器SG1内の吸収溶液温度T4に余裕代ΔTH1(図5のステップS10における余裕代ΔTH1と同一)を加えた数値(T1=T4+ΔTH1)となる様に、ポンプP1におけるインバータ制御、或いは、三方弁V1の開度制御の目標値を設定している。
換言すれば、効率の高い二重効用サイクルを続行するように、ポンプP1におけるインバータ制御、或いは、三方弁V2の開度制御の目標値を設定しているのである。
それに加えて、図10の制御では、ステップS75で移行する一重効用サイクルが図8で示されている点が、図9の制御とは異なっている。
それ以外については、図10の制御は図9の制御と同様である。
ここで、図11の制御については、間欠運転の場合も連続運転の場合も同様である。
図11において、ステップS91では、冷却塔46からの戻りラインLh13と熱媒ラインLh11との分岐点に設けられている三方弁V3は「閉」の状態(冷却塔46をバイパスする状態)であり、冷却塔46は作動していない。
この状態からステップS92に進み、ポンプP1を作動して(或いは、ポンプP1が作動していることを確認して)、三方弁V3を「開」の状態、すなわち太陽熱循環系統40を循環する熱媒が冷却塔46に流入する状態に切り替える。そして、冷却塔46を駆動する(ステップS93)。
ここで、過加熱防止運転における許容最低温度T1minは、ケース・バイ・ケースで設定することが出来る。ただし、効率の高い二重効用サイクルを優先する趣旨から、許容最低温度T1minを二重効用サイクルが出来ない温度レベル(例えば、120℃)に設定することは妥当ではない。
太陽熱集熱器42の出口における熱媒温度T1が許容最低温度T1minよりも低温になれば(ステップS94がY)、冷却塔46による冷却は不必要であると判断して、三方弁V3を「閉」の状態にして、熱媒が冷却塔46をバイパスするようにせしめる(ステップS95)。そしてステップS96に進む。
吸収式冷凍機10が作動中であれば(ステップS96がY)、冷却塔46の運転を停止する(ステップS97)。この場合(ステップS96がY)、ポンプP1は停止せず、太陽熱循環系統40内を熱媒が循環する状態は保持される。
一方、吸収式冷凍機10が停止して入れば(ステップS96がN)、太陽熱を吸収式冷凍機10に供給する必要がないので、ポンプP1を停止(ステップS98)した後、冷却塔46の運転を停止する(ステップS97)。
これにより、過加熱防止運転は終了する。
日射量が十分にあり、二重効用サイクルを行なう場合には、図2を参照して説明した様に、三方弁V2は「閉」状態であり、熱媒はラインLh9を流れない。しかし、上述した様に、太陽熱集熱器42で加熱された熱媒が、第2の分岐点B2からラインLh6を流れ、或いは、三方弁V2において、ラインLh8を流れる熱媒が、ラインLh9に連通するポートからラインLh9側に漏れ出してしまう場合が存在する。その様な場合、ラインLh9に存在する熱媒の温度T3が上昇して、膨張タンク44の隔膜にダメージを与えてしまう恐れがある。
図12の制御(膨張タンク保護モード)では、その様な場合に、三方弁V2を「開」状態にして(ステップS100)、太陽熱集熱器42で加熱された熱媒を太陽熱高温再生器SG1で熱交換させた後に、太陽熱低温再生器SG2或いは太陽熱溶液熱交換器SHexでさらに熱交換させて、膨張タンク44の隔膜がダメージを受けない程度まで降温し、ラインLh9に流す。もちろん、ステップS100では、ポンプP1を作動して(或いは、ポンプP1が作動していることを確認して)いる。そしてステップS101に進む。
ステップS100を実行することにより、太陽熱循環系統40は、図3で示す態様にて、吸収式冷凍機10と熱的に連通することになる。
この最低温度T3minは、膨張タンク44の隔膜がダメージを受ける熱媒温度の下限値として設定される。すなわち、熱媒温度T3が最低温度T3minよりも低温であれば、膨張タンク44の隔膜が熱媒の保有する熱量によりダメージを受けることがない。
そして、膨張タンク44における熱媒温度T3が最低温度T3min以上であれば(ステップS101がN)、未だに熱媒温度T3が高温であり、膨張タンク44の隔膜がダメージを受ける恐れがあると判断して、ステップS101を繰り返し(ステップS101がNのループ)、三方弁V2を「開」状態にして、図3に示す態様で太陽熱循環系統40を吸収式冷凍機10と連通した状態を継続する。
膨張タンク44における熱媒温度T3が最低温度T3minよりも低温であれば(ステップS101がY)、膨張タンク44の隔膜が熱媒が保有する熱量によりダメージを受ける恐れはないと判断して、ステップS102に進む。
係る制御(図9、図10におけるステップS68〜ステップS74の制御)を実行している場合(ステップS102がY)には、図9、図10で上述した様に、ポンプP1の運転を停止するので、ステップS103でポンプP1の運転を停止して、図12の制御(膨張タンク保護モード)を終了する。
図9、図10におけるステップS68〜ステップS74の制御を実行していない場合(ステップS102がN)には、そのまま、図12の制御(膨張タンク保護モード)を終了する。
一方、例えば曇天等の様に日射が不十分であり、二重効用サイクルが可能な程度まで太陽熱が集熱できない場合においても、低温でも活用が可能な一重効用サイクル(図4、図7、図8)を行なうことが出来る。すなわち、天候や日射が良好ではなくても、吸収式冷凍機10で太陽熱を活用することが出来るので、年間を通じて太陽熱を有効利用して、高温再生器14に供給する高圧蒸気や燃料の削減率が向上する。
換言すれば、図示の実施形態によれば、太陽熱のような再生可能エネルギーを、有効に且つ広範囲に活用することが出来る。
そのため、太陽熱循環系統40に介装するべき膨張タンクとして、密閉型隔膜式膨張タンク44を選択することが出来て、膨張タンク設置に多大なコストを費やしてしまうことがない。
或いは、太陽熱低温再生器SG2及びそれに連通する熱媒ラインLh6を、省略して構成することも可能である。
さらに、太陽熱低温再生器SG2、熱媒ラインLh6、太陽熱溶液熱交換器SHex、熱媒ラインLh7を省略して構成することも可能である。この場合、太陽熱循環系統40に連通するのは太陽熱高温再生器SG1のみになる。しかしながら、太陽熱循環系統40に連通するのは太陽熱高温再生器SG1のみであっても、太陽熱循環系統40を介して、吸収式冷凍機10の(太陽熱高温再生器SG1内の)吸収溶液に投入される太陽熱により、太陽熱高温再生器SG1で再生した冷媒蒸気が低温再生器16で冷媒蒸気を再生するので、二重効用にて冷媒蒸気(水蒸気)が再生され、太陽熱の利用効率を向上するという作用効果を奏することが出来る。
10・・・吸収式冷凍機
40・・・太陽熱循環系統
12・・・吸収器
14・・・高温再生器
16・・・低温再生器
18・・・凝縮器
20・・・蒸発器
SG1・・・太陽熱高温再生器
SG2・・・太陽熱低温再生器
L1〜L5・・・吸収溶液ライン
22・・・吸収溶液ポンプ
24・・・低温溶液熱交換器
26・・・高温溶液熱交換器
SHex・・・太陽熱溶液熱交換器
Lg1〜Lg8・・・冷媒ライン
Lw・・・冷却水ライン
Lc・・・冷水ライン
ST1〜ST6・・・温度センサ
42・・・太陽熱集熱器
Lh1〜Lh13・・・熱媒ライン
P1・・・インバータポンプ
B1〜B4・・・分岐点
G1・・・合流点
Lh3ex、Lh6ex・・・熱交換器
V1〜V3・・・三方弁
44・・・密閉型隔膜式膨張タンク
46・・・冷却塔
Claims (3)
- 吸収溶液循環系統に高温再生器と低温再生器とを備えており、高温再生器に連通する吸収溶液ラインに第3の再生器が介装されており、太陽熱集熱器で加熱された熱媒が循環する循環系が第3の再生器に設けられた熱交換器と連通しており、第3の再生器で再生した冷媒が流れる配管は低温再生器を介して蒸発器に連通していることを特徴とする吸収式冷凍機。
- 低温再生器に連通する吸収溶液ラインに第4の再生器が介装されており、太陽熱集熱器で加熱された熱媒が循環する循環系における第3の再生器に連通する領域よりも太陽熱集熱器の出口から遠い側の領域が、第4の再生器に設けられた熱交換器と連通している請求項1の吸収式冷凍機。
- 太陽熱集熱器で加熱された熱媒が循環する循環系における第3の再生器に連通する領域よりも太陽熱集熱器の出口から遠い側の領域が、吸収器から送り出された吸収溶液が流れる吸収溶液ラインに介装された熱交換器と連通している請求項1、2の何れかの吸収式冷凍機。
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