JP2010240960A - ガラス含有射出成形品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 本発明のガラス含有射出成形品は、ガラス粉末と熱可塑性樹脂を含むガラス含有成形用ペレットを用いて射出成形法で成形されてなるガラス含有射出成形品であって、前記ガラス粉末が球状の形状で中実であり、10〜40μmの平均粒径であり、その表面がシラン化合物により全面的に被覆されており、前記熱可塑性樹脂中にガラス配合率40〜70重量%の範囲で含有されており、前記ガラス含有射出成形品の固有の物性値が前記ガラス配合率の増加に伴い方程式上の狭い領域の範囲にあることを特徴とする。
【選択図】 図15B
Description
平成16年の日本のプラスチック生産量は約1408万トンに達しており、プラスチック別の生産量ではポリエチレン樹脂(以下、「PE」と記載する。)が最も多く、次に、ポリプロピレン樹脂(以下、「PP」と記載する。)、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂(以下、「PS」と記載する。)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(以下、「PET」と記載する。)、ABS樹脂の順で続き、プラスチックの中で熱可塑性樹脂の生産量が上位を占めており、プラスチックの生産量の約90%が熱可塑性樹脂である。
地域別では、東アジアの生産の伸びが大きく、日本を含むアジアが35.5%と、ヨーロッパ、北米を抜いて最大の生産地域となっていて、中国の急速な経済発展に伴って今後も大きな伸びが予想されている。このように、生産量の大多数を占める熱可塑性樹脂が今後も伸びることが予想される状況にある。
その一つの解決策とは、石油から合成される熱可塑性樹脂にガラス粉末を大量に配合、例えば、70%のガラス粉末を配合させて押出機で混練し押出して成形用ペレットの製造ができたならば、熱可塑性樹脂、即ち、石油の使用量を70%削減でき、その成形体の焼却で排出される二酸化炭素の排出量を70%削減でき、更に、焼却エネルギーが減少できると共に成形体の焼却で残渣となったガラス粉末を樹脂に含有させて、リサイクルすることができるというものである。
このように、プラスチック成形技術の分野では、熱可塑性樹脂の物性の向上を目的として、押出機で熱可塑性樹脂に大量のガラス粉末を配合して混練すると流動性が急激に低下するために、40重量%以上のガラス粉末を含有する熱可塑性樹脂組成物を製造することは不可能なことと認識されている。
流動性の急激な低下は、固相と液相が混合した半溶融状態が発生すること、上述したガラス粉末にシラン化処理を施す方法として、シラン化合物が0.1重量%程度含まれる水溶液にガラス粉末を30分の間撹拌しながら、浸漬した後に濾過して100℃で乾燥する浸漬法が一般的に行われており、その処理により複数のガラス粉末同士が接触した状態でシラン化合物を被覆するので、ガラス粉末が凝集した状態でフィルター処理されて乾燥されるので、シラン化処理されたガラス粉末の中には凝集した状態のガラス粉末(以下、「凝集ガラス粉末」という。)が存在すること、そして、従来から用いられている熱可塑性樹脂中に配合するガラス粉末は、ガラス繊維を細かく粉砕する等により得ているために、その形状が多角形、長方形等の様々な形状から構成されており、そして、その平均粒径が10〜100μmの広い分布幅にあること、この様々な形状と分布幅の広いこと、更に、ガラスと熱可塑性樹脂の比熱の差が大きいこと、例えば、ガラスの比熱は0.670J/(kg・K)であるのに対して、PETのそれは1.5J/(kg・K)であり、ある一定温度に上げるのにガラスよりPETの方が2.2倍の熱量を必要とすること、この比熱の差が大きいこと、この四つの原因が相互に複雑に作用することで、熱可塑性樹脂中に40重量%以上のガラス粉末を配合して混練すると流動性が急激に低下して、ガラス粉末を含有した成形用組成物が製造できない原因となっていると考え、本発明者はこれらの原因を取り除くことで先願発明を完成するに至った。
射出成形体の成形収縮率を事前に予測する方法に関する発明で、金型の設計製作前に正しい収縮率を求めることができ、これにより金型製作後の試作回数が低減され、射出成形用の非常に高価な金型の低コスト化を可能にするものが知られている(特許文献4参照)。
また、ひけやそりの成形歪を防止するために、キャビティを構成する複数の入駒の周囲に断熱部を設け、これら入駒とこれら入駒を支持する固定型及び可動型との間を断熱化し、キャビティを構成する複数の入駒の金型温度を高精度な一定温度に維持制御できるように構成した射出成形用金型装置が知られている(特許文献5参照)。
即ち、上記課題を解決するために、請求項1に係る発明のガラス含有射出成形品は、ガラス粉末と熱可塑性樹脂を含むガラス含有成形用ペレットを用いて射出成形機で成形されてなるガラス含有射出成形品であって、前記ガラス粉末が球状の形状で中実であり、前記熱可塑性樹脂中にガラス配合率40〜70重量%の範囲で含有されており、該ガラス配合率の増加に伴って、前記ガラス含有射出成形品の成形収縮率改善指標が以下の式(1)に沿って漸増して改善されることを特徴とする。
y=0.0093x+0.9968 (1)
(x:ガラス配合率 ; y:成形収縮率改善指標)
同様に、請求項2に係る発明のガラス含有射出成形品は、前記ガラス配合率の増加に伴って、前記ガラス含有射出成形品の成形収縮率改善指標が1.36から1.63に漸増して改善されることを特徴とする。
請求項3に係る発明のガラス含有射出成形品は、前記熱可塑性樹脂がポリプロピレン樹脂であり、前記ガラス配合率が60重量%以上の前記ガラス含有射出成形品がABS樹脂100重量%の射出成形品の成形収縮率より小さいことを特徴とする。
請求項4に係る発明のガラス含有射出成形品は、前記ガラス含有射出成形品が嵌合の必要な化粧用等の容器に用いられることを特徴とする。
請求項5に係る発明のガラス含有射出成形品は、前記ガラス配合率の増加に伴って、前記ガラス含有射出成形品の熱伝導率改善指標が以下の式(2)に沿って漸増して改善されることを特徴とする。
y=0.0131x+0.994 (2)
(x:ガラス配合率 ; y:熱伝導率改善指標)
請求項6に係る発明のガラス含有射出成形品は、前記ガラス配合率の増加に伴って、前記ガラス含有射出成形品の熱伝導率改善指標が1.52から1.91に漸増して改善されることを特徴とする。
請求項7に係る発明のガラス含有射出成形品は、前記熱可塑性樹脂がポリプロピレン樹脂であり、前記ガラス配合率が50重量%以上のガラス含有射出成形品がABS樹脂100重量%の射出成形品の熱伝導率より大きいことを特徴とする。
このことにより、前記ガラス含有射出成形品を焼却する際に、排出される二酸化炭素の排出量を最大で70%削減することができ、地球規模の課題である二酸化炭素の地球温暖化問題を解決する技術として貢献度が大きく、更に、熱可塑性樹脂、即ち、石油の使用量を最大で70%削減することができ、地球規模の課題である有限な石油資源の枯渇問題を解決する技術として貢献度が大きい。
先願発明を説明するのは、前記ガラス含有射出成形品が前記ガラス含有成形用ペレットを既存の射出成形機に投入して、従来の射出成形法と同じ条件で成形されるものであるから、最初に、大量のガラス粉末が含有されるガラス含有成形用ペレットの成形方法、そして、その組成物が有する物性として、溶融状態にあるポリマーの流動性を示す尺度の一つであるメルトフローレート(以下、このメルトフローレートを「MFR」という。)を説明することで、何故に40〜70重量%のガラス粉末を含有するガラス含有成形用ペレットを既存の射出成形機に投入して、従来の射出成形法と同じ条件で射出成形品が射出できるのか、その理由を理解しやすくするためである。
図1は本発明のガラス含有成形用ペレットを成形し、その組成物を製造する製造方法に用いられる一つの押出機の縦断面図である。前記押出機により40〜70重量%の範囲の球状ガラス粉末と熱可塑性樹脂を混練して押出してガラス含有成形用ペレットが成形される。
図1の押出機に基づいて、40〜70重量%の範囲の球状ガラス粉末と熱可塑性樹脂を混練して押出して、ガラス含有成形用ペレットを成形する工程を説明する。
本発明の実施形態に用いる押出機は、供給材料であるペレットと球状ガラス粉末を投入する2個のホッパーが備えられている。図1に示す押出機のホッパーを左側から順に第1、第2ホッパーと称し、第1ホッパーには熱可塑性樹脂のペレットが投入され、押出機の中間部付近に設けられている第2ホッパーには、球状ガラス粉末が投入される。第2ホッパーの配置位置は、第1ホッパーよりスクリューバレル内に供給されたペレットが、スクリューによる混練搬送に伴って溶融状態になる位置に設けてある。
なお、図1の押出機は、図18の従来の押出機と比べてホッパーの構造を除いて他の構造は同じであるので、図1の押出機の構造を説明することは省略する。
本発明の球状ガラス粉末のガラス質は、SiO2、B2O3、P2O3の1種又は2種以上を骨格成分とする、アルカリガラス、可溶性ガラス、無アルカリガラスが挙げられる。そして、その形状を球状にするには、ガラス繊維を粉砕して球状化する方法を用いることで平均粒径の分布をシャープにすることができる。該球状ガラス粉末のアルカリ分が多いと、熱可塑性樹脂の脆化を招きやすいので、アルカリ分の少ない可溶性ガラスが好ましく、更に、アルカリ分のない無アルカリガラスであるEガラスがより好ましい。
シラン化合物としては、以下の式で表されるものを挙げることができる。
R4-n−Si−(OR’)n
(式中、Rは有機基を表し、R’はメチル基、エチル基又はプロピル基を表し、nは1〜3から選ばれる整数を表す)
図3は前記球状ガラス粉末の1000倍の電子顕微鏡写真である。この写真から球状ガラス粉末は、各々のその形状が球状であり中実であり、大小様々な粒径のものが存在していることが観察できる。
図2の球状Eガラス粉末の平均粒径の分布の頻度を示すグラフとこの図3の写真から、熱可塑性樹脂中の球状ガラス粉末は、その形状が真円の球形であり、大小様々な粒径のものが存在しているが、その平均粒径が10〜40μmであることが示されている。
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリスチレン樹脂(PS)、ABS樹脂、ポリアミド樹脂、を挙げることができる。ポリアミド樹脂には、ナイロン6、ナイロン66等のナイロン樹脂(Ny)がある。
バリア性や寸法安定性から必要に応じて他の樹脂を使用することもできる。他の樹脂には、メタクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリマーアロイ樹脂、共重合樹脂(EAA、EMAA、EEA、EMA、EMMA)を挙げることができる。
熱可塑性樹脂に着色や光沢の付与の目的で、顔料、酸化チタン、アルミナ、タルク、マイカ、シリカ、炭酸マグネシウム、金属ラメを配合することができる。
図4Bは、前記切断部を100倍に拡大して撮影した電子顕微鏡写真である。
図4Cは、前記ペレットの側面を100倍に拡大して撮影した電子顕微鏡写真である。
図4Bのペレットの切断部の写真から、該ペレットはPP中に個々の球状のガラス粉末が凝集することなく独立して分散された状態で配合されていることが観察される。
このことから、前記球状ガラス粉末が噴霧法によりその表面がシラン化合物により全面的に被覆されることで、押出機内で混練し押し出して成形された前記ペレットは樹脂中に球状のガラス粉末が凝集することなく独立して分散された状態で配合されていることが判明した。
なお、16分割線上に球状ガラス粉末がある場合には、1/2として球状ガラス粉末数の計算を行った。
以上のことから、押出機でガラス粉末と熱可塑性樹脂を混練して押出成形されてなる本発明のガラス含有成形用ペレットは、ガラス粉末が、球状の形状で中実であり、10〜40μmの平均粒径であり、その表面がシラン化合物により全面的に被覆されており、熱可塑性樹脂中に40〜70重量%の範囲のガラス配合率で独立して均一に分散されている状態で含有されているものであることが判明した。
図4Cの写真は、ペレットの側面は球形の凸状部で覆われており、その球形凸状部が熱可塑性樹脂で前記球状ガラス粉末を被覆していることを表している。
以下に示す実施例は、6種類のペレット状の熱可塑性樹脂(PE、PP、PET、PS、ABS又はNy)を対象として、上記した噴霧法でシラン化処理した球状Eガラス粉末と6種類のペレット状の樹脂のうち一つの樹脂の重量配合率が40:60、50:50、60:40及び70:30の4種類の水準のものを用いており、その重量配合率におけるMFRが示されている。
前記MFRは、溶融状態にあるポリマーの流動性を示す尺度の一つで、押出式プラストメーターで、一定圧力、一定温度の下に、規定の寸法をもつノズル(オリフィス)から流出する量を測定し、g/10minの単位で表わした指数である。一般にMFRの数値が大きいほど溶融時の流動性や加工性は良好であるとされ、世界的に樹脂の流量状態を表すものとして、このMFRが用いられている。
上記6種類の熱可塑性樹脂のMFRは、実施例として選んだHD−PE(高密度ポリエチレン)(以下、「PE」という。)が0.25で、ABSが30.0のMFRで、MFRが0.25〜30.0の範囲のものを選んでいるが、同じ熱可塑性樹脂であっても分子量に応じてMFRが異なるものである。他の熱可塑性樹脂及び分子量の異なる熱可塑性樹脂のMFRは、上記したMFR0.25〜30.0の範囲に入るものとして6種類の熱可塑性樹脂を選定した。
比較例1及び2の前記浸漬法とは、球状ガラス粉末をγ一グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシランが0.1重量%含まれる水溶液に30分の間撹拌しながら、浸漬した後に濾過して100℃で乾燥したものである。その処理により複数の球状ガラス粉末同士が接触してシラン化合物が被覆されフィルター処理されて乾燥されるので、シラン化処理されたガラス粉末中に凝集した凝集ガラス粉末が存在することになる。
比較例2は第1ホッパーに一つの樹脂のペレットと比較例球体を配合して同時に投入し、比較例球体と一つの樹脂のペレットの重量配合率を20:80、30:70、40:60の3種類の水準のものを用いており、その重量配合率における流動性を示すMFRの実験データが以下の表4、6、8、10、12、14、16、18及び20に示されている。
その測定結果は以下の実施例1〜6に示されている。
実施例1は熱可塑性樹脂としてPEが用いられており、噴霧法でシラン化処理した球状Eガラス粉末とPEの重量配合率が40:60、50:50、60:40、70:30の4種類の水準のものを用いた。
上記した押出機の第1ホッパーよりPEとしてHI−ZEX 5100B(商品名:株式会社プライムポリマー製品)の重量を計量して60重量%を投入し、230℃で溶融状態にした中に、第2ホッパーより上記実施例の球状Eガラス粉末の重量を計量して溶融温度230℃と同じか、それに近似した温度に予熱した40重量%を投入して、230℃、スクリュー回転数200回/分で混練し、3mm径の棒状に押出し、水冷して長さ4mmに切断してペレット状とし実施例1の第1の水準の成形用組成物を得た。予熱温度は溶融温度230℃と同じであることが最も好ましく、(230℃±10%の温度)が好ましい。
以下同様に、HI−ZEX 5100B50重量%、球状Eガラス粉末50重量%の第2の水準の成形用組成物、HI−ZEX 5100B40重量%、球状Eガラス粉末60重量%の第3の水準の成形用組成物、HI−ZEX 5100B30重量%、球状Eガラス粉末70重量%の第4の水準の成形用組成物を得た。
なお、以下に記載する他の5種類の熱可塑性樹脂(PP、PET、PS、ABS又はNy)に関して、前記6項目条件も同様に、項目の「樹脂」及び「第1ホッパー」に対象とする樹脂を記載して他の項目に記載する内容は同じであるので、上記5種類の熱可塑性樹脂ごとに6項目条件を表にして表すことは省略する。
なお、表4における実施例1のPE(HI−ZEX 5100B)の熱可塑性樹脂100%のMFRは、0.25である。
このグラフにおいて□印は実施例1のMFRを、△印は比較例1−1のMFRを、×印は比較例1−2のMFRを示している。そして、これらの実施例1、比較例1−1及び比較例1−2のMFRの各曲線は、熱可塑性樹脂100%のMFR(以下、「100%MFR」という。)である0.25に対して、ガラス粉末の配合率が増加したときに各々のMFRがどの様な低減傾向になるかを示したものである。そして、PEの100%MFR(0.25)が1/2の値(以下、「1/2MFR」という。)である0.125の時のガラス配合率を示すために、各曲線との交点からX軸に向かって垂線が引かれている。
なお、1/2MFRのガラス配合率を求める理由は以下の表17の説明のときに述べる。
実施例2は熱可塑性樹脂としてPPが用いられており、噴霧法でシラン化処理した球状Eガラス粉末とPPの重量配合率が40:60、50:50、60:40及び70:30の4種類の水準のものを用いた。
上記した押出機の第1ホッパーよりPPとしてノバテックPP MA3(商品名:日本ポリプロ株式会社製品)の重量を計量して60重量%を投入し、220℃で溶融状態にした中に、第2ホッパーより上記実施例の球状Eガラス粉末の重量を計量して溶融温度220℃と同じか、それに近似した温度に予熱した40重量%を投入して、220℃、スクリュー回転数200回/分で混練し、3mm径の棒状に押出し、水冷して長さ4mmに切断してペレット状とし実施例2の第1の水準の成形用組成物を得た。予熱温度は溶融温度220℃と同じであることが最も好ましく、(220℃±10%の温度)が好ましい。
以下同様に、ノバテックPP MA3 50重量%、球状Eガラス粉末50重量%の第2の水準の成形用組成物、ノバテックPP MA3 40重量%、球状Eガラス粉末60重量%の第3の水準の成形用組成物、ノバテックPP MA3 30重量%、球状Eガラス粉末70重量%の第4の水準の成形用組成物を得た。
次に、比較例2−1及び比較例2−2は、表2に示した条件で長さ4mmのペレットを得た。用いた樹脂は実施例2の樹脂と同じものである。
なお、表6における実施例2のPP(ノバテックPP MA3)の熱可塑性樹脂100%のMFRは、10.0である。
実施例3は熱可塑性樹脂としてPETが用いられており、噴霧法でシラン化処理した球状Eガラス粉末とPETの重量配合率が40:60、50:50、60:40及び70:30の4種類の水準のものを用いた。
上記した押出機の第1ホッパーよりPETとしてバイロンFN305(商品名;東洋紡株式会社製品)の重量を計量して60重量%を投入し、250℃で溶融状態にした中に、第2ホッパーより上記実施例の球状Eガラス粉末の重量を計量して溶融温度250℃と同じか、それに近似した温度に予熱した40重量%を投入して、250℃、スクリュー回転数200回/分で混練し、3mm径の棒状に押出し、水冷して長さ4mmに切断してペレット状とし実施例3の第1の水準の成形用組成物を得た。予熱温度は溶融温度250℃と同じであることが最も好ましく、(250℃±10%の温度)が好ましい。
以下同様に、バイロンFN305 50重量%、球状Eガラス粉末50重量%の第2の水準の成形用組成物、バイロンFN305 40重量%、球状Eガラス粉末60重量%の第3の水準の成形用組成物、バイロンFN305 30重量%、球状Eガラス粉末70重量%の第4の水準の成形用組成物を得た。
次に、比較例3−1及び比較例3−2は、表2に示した条件で長さ4mmのペレットを得た。用いた樹脂は実施例3の樹脂と同じものである。
上記1/2MFRの時の比較例3−2、比較例3−1及び実施例3のガラス配合率を表9に示す。
実施例4は熱可塑性樹脂としてPSが用いられており、噴霧法でシラン化処理した球状Eガラス粉末とPSの重量配合率が40:60、50:50、60:40及び70:30の4種類の水準のものを用いた。
上記した押出機の第1ホッパーよりPSとしてGPPS HF77(商品名;PSジャパン株式会社製品)の重量を計量して60重量%を投入し、190℃で溶融状態にした中に、第2ホッパーより上記実施例の球状Eガラス粉末の重量を計量して溶融温度190℃と同じか、それに近似した温度に予熱した40重量%を投入して、190℃、スクリュー回転数200回/分で混練し、3mm径の棒状に押出し、水冷して長さ4mmに切断してペレット状とし実施例4の第1の水準の成形用組成物を得た。予熱温度は溶融温度190℃と同じであることが最も好ましく、(190℃±10%の温度)が好ましい。
以下同様に、GPPS HF77 50重量%、球状Eガラス粉末50重量%の第2の水準の成形用組成物、GPPS HF77 40重量%、球状Eガラス粉末60重量%の第3の水準の成形用組成物、GPPS HF77 30重量%、球状Eガラス粉末70重量%の第4の水準の成形用組成物を得た。
次に、比較例4−1及び比較例4−2は、表2に示した条件で長さ4mmのペレットを得た。用いた樹脂は実施例4の樹脂と同じものである。
なお、表10における実施例4のGPPS HF77の熱可塑性樹脂100%のMFRは、7.5である。
上記1/2MFRの時の比較例4−2、比較例4−1及び実施例4のガラス配合率を表11に示す。
実施例5は熱可塑性樹脂としてABSが用いられており、噴霧法でシラン化処理した球状Eガラス粉末とABSの重量配合率が40:60、50:50、60:40及び70:30の4種類の水準のものを用いた。
上記した押出機の第1ホッパーよりABSとしてサンタックUT−61(商品名;日本エイアンドエル株式会社製品)の重量を計量して60重量%を投入し、220℃で溶融状態にした中に、第2ホッパーより上記実施例の球状Eガラス粉末の重量を計量して溶融温度220℃と同じか、それに近似した温度に予熱した40重量%を投入して、220℃、スクリュー回転数200回/分で混練し、3mm径の棒状に押出し、水冷して長さ4mmに切断してペレット状とし実施例5の第1の水準の成形用組成物を得た。予熱温度は溶融温度220℃と同じであることが最も好ましく、(220℃±10%の温度)が好ましい。
以下同様に、サンタックUT−61 50重量%、球状Eガラス粉末50重量%の第2の水準の成形用組成物、サンタックUT−61 40重量%、球状Eガラス粉末60重量%の第3の水準の成形用組成物、サンタックUT−61 30重量%、球状Eガラス粉末70重量%の第4の水準の成形用組成物を得た。
次に、比較例5−1及び比較例5−2は、表2に示した条件で長さ4mmのペレットを得た。用いた樹脂は実施例5の樹脂と同じものである。
なお、表12における実施例5のサンタックUT−61の熱可塑性樹脂100%のMFRは、30.0である。
上記1/2MFRの時の比較例5−2、比較例5−1及び実施例5のガラス配合率を表13に示す。
実施例6は熱可塑性樹脂としてNyが用いられており、噴霧法でシラン化処理した球状Eガラス粉末とNyの重量配合率が40:60、50:50、60:40及び70:30の4種類の水準のものを用いた。
上記した押出機の第1ホッパーよりNyとしてナイロンA1030 BRF(商品名:ユニチカ株式会社製品)の重量を計量して60重量%を投入し、230℃で溶融状態にした中に、第2ホッパーより上記実施例の球状Eガラス粉末の重量を計量して溶融温度230℃と同じか、それに近似した温度に予熱した40重量%を投入して、230℃、スクリュー回転数200回/分で混練し、3mm径の棒状に押出し、水冷して長さ4mmに切断してペレット状とし実施例6の第1の水準の成形用組成物を得た。予熱温度は溶融温度230℃と同じであることが最も好ましく、(230℃±10%の温度)が好ましい。
以下同様に、ナイロンA1030 BRF50重量%、球状Eガラス粉末50重量%の第2の水準の成形用組成物、ナイロンA1030 BRF40重量%、球状Eガラス粉末60重量%の第3の水準の成形用組成物、ナイロンA1030 BRF30重量%、球状Eガラス粉末70重量%の第4の水準の成形用組成物を得た。
次に、比較例6−1及び比較例6−2は、表2に示した条件で長さ4mmのペレットを得た。用いた樹脂は実施例6の樹脂と同じものである。
なお、表14における実施例6のナイロンA1030 BRFの熱可塑性樹脂100%のMFRは、4.3である。
上記1/2MFRの時の比較例6−2、比較例6−1及び実施例6のガラス配合率を表15に示す。
比較例2に関して、ガラス配合率20重量%の比較例球体を用いた比較例1−2〜比較例6−2は、温度が上昇する等の変化は生じなかったが、配合率30、40重量%の比較例球体を用いた比較例1−2〜6−2は、温度が上昇する変化と共に金属音の発生が見られた。特に40重量%の比較例球体の金属音は30重量%と比べてはるかに大きいものであった。
このことから、比較例1及び2の比較例球体は図5〜図13からみて、比較例球体のMFRが樹脂100%の1/2以下になると変化が生じていることが判る。
なお、上記実施例では、押出機内に投入する球状のガラス粉末を溶融温度と同じか、それに近似した温度に予熱する最良の実施形態の例を示したが、本発明はこの例に限定されるものではなく、従来のペレットの成形に用いられている溶融温度(加温、冷却)、スクリュー速度等の制御により成形されたガラス含有成形用ペレットも、本発明のガラス含有成形用ペレットに含まれるものである。
6種類の、球状Eガラス粉末を含有する組成物の実施例、及び、比較例球体を含有する組成物の比較例、この両者のガラス配合率とMFRの関係を図5〜図10のグラフに示したが、この両者のグラフを対比すると、6種類の実施例のグラフは、前記MFRがガラス配合率の増加に伴い100%熱可塑性樹脂のMFRを頂点とする放物線を示しており、100%MFRの1/2の値がガラス配合率50〜60重量の範囲にあるのに対して、6種類の比較例1及び2のグラフは、前記MFRがガラス配合率の増加に伴い100%熱可塑性樹脂のMFRを頂点とする下方へ傾斜するほぼ直線を示しており、比較例1と比較例2の熱可塑性樹脂100%のMFRの1/2の値が、比較例1ではガラス配合率30〜40重量%の範囲にあり、比較例2ではガラス配合率20〜30重量%の範囲にあることを示している。
比較例1は前記MFRがガラス配合率の増加に伴い100%熱可塑性樹脂のMFRを頂点とする下方へ傾斜するほぼ直線を示しており、ガラス配合率30〜40重量%の範囲において、100%MFRの1/2以上の値から1/2以下の値に変わることを示し、比較例2は前記MFRがガラス配合率の増加に伴い100%熱可塑性樹脂のMFRを頂点とする下方へ傾斜するほぼ直線を示しており、ガラス配合率20〜30重量%の範囲において、100%MFRの1/2以上の値から1/2以下の値に変わることを示している。
実施例1〜6のグラフは、比較例のグラフよりガラス配合率の増加に伴うMFRの低下挙動が緩やかであることを示しており、このことは、製造工程で球状ガラス粉末の配合量が仮に変動しても、それに起因するMFRの変動が小さいことが判る。従って、ガラス含有成形用ペレットの製造工程においても品質管理上、有利であることがこれらのグラフで示されている。
表16が示す比較例と実施例のMFRからみて、1/2MFRの時の比較例2のガラス配合率は24〜28重量%の範囲にあり、その時の比較例1のガラス配合率は32〜36重量%の範囲にあり、そして、その時の実施例のガラス配合率は53〜57重量%の範囲にあることから、比較例2は、前記MFRが1/2の値である時に、ガラス配合率24〜28重量%と非常に少ない範囲にあることを示し、比較例1は、その時にガラス配合率32〜36重量%と比較例2より僅かながら多い範囲にあることを示しているが、上記実施例1〜6は、その時に、そのガラス配合率が53〜57重量%と比較例2の約2倍、比較例1の約1.6倍の大量のガラス配合率の範囲にあることを見出した。
上述した前記熱可塑性樹脂の1/2MFRは、ガラス配合率の増加に伴うガラス含有成形用ペレットのMFRの特性を把握するのに有用である。
また、地球温暖化問題及び石油資源の枯渇問題を解決するためには、大量の球状ガラス粉末を配合すればする程効果的であるが、ガラス含有成形用ペレットをブロー成形法、射出成形法、押出成形法等で成形した成形体を大量生産化することを考えると、MFRの低下割合を求めることで如何なる成形法でも成形し易いガラス配合率を検討する必要がある。
そして、ガラス配合率の値とMFRの低下割合との相互の関係が分かれば、選定した熱可塑性樹脂のMFRに応じてガラス配合率を容易に決定することが可能になる。例えば、PEを選定してガラス含有成形用ペレットを成形する場合、PEの100%のメルトフローレートが0.25と小さい値であるから、MFRの低下割合を0.6に抑えて成形するのに、必要なガラス配合率の値を容易に決定できれば便利である。
上述したように、上記実施例1〜6に示した熱可塑性樹脂ごとの1/2MFRの時の比較例2、比較例1及び実施例のガラス配合率を表16に示したが、この熱可塑性樹脂の1/2MFRは、熱可塑性樹脂100%に配合する球状ガラスの増加により、ガラス含有成形用ペレットのMFRが熱可塑性樹脂100%の1/2の値になるガラス配合率を示している。例えば、PEは57重量%、PPは54重量%のガラス配合率の時に熱可塑性樹脂100%の1/2の値を示す。このことから、表17の実施例1〜6のガラス配合率40、50、60、70重量%のMFRを熱可塑性樹脂100%のMFRで割った値、即ち、ガラス配合率の増加により熱可塑性樹脂100%のMFRがどの程度低下しているかを示すMFRの低下割合を意味している。
そこで、表17で示した実施例1〜6のガラス配合率40、50、60、70重量%のMFRを熱可塑性樹脂100%のMFRで割った値を「メルトフローレート低下割合」(以下、「MFR低下割合」という。)と定義してその値を求めた。その求めた結果を表18に示す。表16は1/2MFRの時に示すガラス配合率の値を表しているが、表18はガラス配合率が40、50、60、70重量%の時に示すMFR低下割合の値を表しているために、MFR低下割合がガラス配合率ごとに異なった範囲を示していることに留意されたい。
表19は表18のガラス配合率40重量%、50重量%、60重量%、そして70重量%に対するMFR低下割合の最大値と最小値を示す表である。
表18はガラス配合率40重量%のMFR低下割合が0.65〜0.75の範囲にあることを示している。ガラス配合率40重量%で最大値である実施例3の0.75は3/4であるから、ガラス配合率40重量%のMFR低下割合は実施例3の3/4が最大値で実施例4の0.65が最小値である。また、ガラス配合率50重量%のMFR低下割合が0.52〜0.62の範囲に、そして、ガラス配合率60重量%のMFR低下割合が0.37〜0.48の範囲にある。そして、上記1/2MFRはMFR低下割合が1/2であることと同意であり、上述したようにガラス配合率53〜57重量%の範囲で示す値であるから、その範囲で最小値であるガラス配合率53重量%の実施例は、表16から実施例4(PS)及び実施例6(Ny)がそれに相当しているが、他の実施例である実施例1(PE)、実施例2(PP)、実施例3(PET)及び実施例5(ABS)は、MFR低下割合が1/2以上の値である。
以上のことから、ガラス配合率の増加に伴って漸減するMFRが、ガラス配合率40〜52重量%の範囲でMFR低下割合が3/4〜1/2未満以上の範囲の値を示すといえる。ここで、1/2未満以上は1/2の値が含まれないことに留意されたい。
ところで、実施例1〜6の組成物をブロー成形法、射出成形法、押出成形法等で成形して、成形体を大量生産化することを考えると、MFRの低下割合は少ない方が良いが、地球温暖化問題及び石油資源の枯渇問題を考えると、ガラス配合率が高い方が良いこととなる。この両者のバランスを考えると、MFRの低下割合1/2は、実施例1〜6がガラス配合率53〜57重量%の範囲にあることから、両者のバランスを取るのに最適な値である。
このことから、MFR低下割合は、3/4、1/2(2/4)及び1/4が熱可塑性樹脂100%に配合するガラス配合率40重量%、53〜57重量%及び64重量%に対応していること、そして、これらのガラス配合率が技術的に意味のある値であることを見出した。
最大値の近似曲線は以下に示す式(1)の通りであり、最小値の近似曲線は以下に示す式(2)の通りである。ここで、xはガラス配合率(0.4≦x≦0.7)を、yはMFR低下割合を示している。
y=−1.3418x2−0.0803x+0.9994 (1)
y=−1.3954x2−0.2632x+0.9974 (2)
式(1)及び式(2)は、熱可塑性樹脂100%に配合する各ガラス配合率に対するMFR低下割合の最大値と最小値から得られた放物線を示すもので、ガラス配合率40重量%〜70重量%の範囲における、何れのガラス配合率に対するMFR低下割合は、式(1)及び式(2)で記述される値の範囲内にあることを意味している。
次に、熱可塑性樹脂としてPE、PP、PET、ABS、PS及びNyを用いて球状Eガラス粉末を含有する6種類のガラス含有成形用ペレットを用いて射出成形法でガラス含有射出成形品を製造する製造方法を以下に説明する。なお、前記6種類のガラス含有成形用ペレットは、上述した製造方法で得たものを用いているのでその製造方法を省略する。
(実施例)
熱可塑性樹脂を射出成形法で成形するのに各種の樹脂を使用することができるが、射出成形品に多量に使用されている熱可塑性樹脂としては、PE、PP、PET、PS、ABS及びNyが挙げられる。
以下に示す実施例と比較例の実験データは、PE、PP、PET、PS、ABS及びNyの6種類の樹脂を対象としている。実施例は、上記した噴霧法でシラン化処理した球状Eガラス粉末と3種類の樹脂のうち一つの樹脂の重量配合率が40:60、50:50、60:40、70:30の4種類の水準のものを用いており、その重量配合率における成形収縮率及び熱伝導率の実験データが以下に示されている。
比較例は上記した6種類の熱可塑性樹脂100重量%の射出成形品(以下、「100重量%射出成形品」という。)を用いた。
6種類の熱可塑性樹脂、PE、PP、PET、PS、ABS及びNyを上記実施例1〜6に示したガラス含有成形用ペレットの製造方法で成形して、上記したガラス含有射出成形品の製造方法と同じ方法で、100重量%射出成形品を成形して6種類の比較例を得た。
なお、上記6種類の比較例の有する物性である成形収縮率及び熱伝導率の測定結果は、100重量%射出成形品が0重量%射出成形品と同じ意味であるので、以下に示す表のガラス配合率「0」の欄に記載されている。
実施例11は熱可塑性樹脂としてPEが用いられており、得られたガラス含有成形用ペレットを80℃で2時間乾燥して、射出成形機に投入し240℃で溶融して金型温度80℃、押出圧力を800Kg/cm2、冷却時間を30秒として、幅10mm×長さ170mm×厚さ4mmのダンベル状試験片を射出成形した。
実施例21は熱可塑性樹脂としてPPが用いられており、得られたガラス含有成形用ペレットを80℃で2時間乾燥して、射出成形機に投入し240℃で溶融して金型温度80℃、押出圧力を1000Kg/cm2、冷却時間を30秒として、幅10mm×長さ170mm×厚さ4mmのダンベル状試験片を射出成形した。
実施例31は熱可塑性樹脂としてPETが用いられており、得られたガラス含有成形用ペレットを100℃で5時間乾燥して、射出成形機に投入し250℃で溶融して金型温度80℃、押出圧力を800Kg/cm2、冷却時間を30秒として、幅10mm×長さ170mm×厚さ4mmのダンベル状試験片を射出成形した。
実施例41は熱可塑性樹脂としてPSが用いられており、得られたガラス含有成形用ペレットを110℃で4時間乾燥して、射出成形機に投入し260℃で溶融して金型温度10℃、押出圧力を1000Kg/cm2、押出圧力を1200Kg/cm2、冷却時間を20秒として、幅10mm×長さ170mm×厚さ4mmのダンベル状試験片を射出成形した。
実施例51は熱可塑性樹脂としてABSが用いられており、得られたガラス含有成形用ペレットを80℃で2時問乾燥して、射出成形機に投入し230℃で溶融して金型温度80℃、押出圧力を1200Kg/cm2、冷却時間を30秒として、幅10mm×長さ170mm×厚さ4mmのダンベル状試験片を射出成形した。
実施例61は熱可塑性樹脂としてNyが用いられており、得られたガラス含有成形用ペレットを80℃で2時間乾燥して、射出成形機に投入し230℃で溶融して金型温度80℃、押出圧力を800Kg/cm2、冷却時間を30秒として、幅10mm×長さ170mm×厚さ4mmのダンベル状試験片を射出成形した。
実施例11〜61のガラス含有射出成形品の物性として、上記した物性以外にヤング率、引張強さ、圧縮強さ、曲げ強さ等の物性は重要であるが、上記6種類の熱可塑性樹脂中に球状ガラス粉末を40〜70重量%含有したガラス含有射出成形品の各種の物性を調べて分析した結果、成形収縮率及び熱伝導率は、ガラス配合率が増加するに伴って熱可塑性樹脂100重量%が有する固有の物性と無関係に向上する結果が得られたので、この成形収縮率及び熱伝導率の物性の測定を行った。
幅60mm×長さ80mm×厚さ1.5mmの板状の蓋の内面中央に径50mm、高さ3mmの嵌合部を設け、板状の長さ方向の端より7mmの位置に開閉用切り込みを設けた金型を用いて、溶融状態の熱可塑性樹脂組成物100重量%及びガラス含有成形用ペレットであるペレットを射出して冷却し、その後に金型から冷却された射出成形品を取り出して、上記金型の長さ80mmの寸法に対応する射出成形品の長さの寸法を測定して体積を計測して下記の如く成形収縮率(X)を求めた。
X=(A−B/A)×100(%)
(A;金型の長さ、B;射出成形品の長さ)
幅50mm×長さ100mm×厚さ3mmの試験片を射出成形し、直径50mm、厚さ3mmの円盤状試験片を作成して、ASTM E1530に基づき熱伝導測定装置(GH1;アルパック理工(株)製)を用いて熱伝導率を測定した。
次に、ガラス配合率が0重量%である比較例1〜6の成形収縮率、及び、実施例11〜61の40、50、60及び70重量%の成形収縮率は表20に示す通りである。
図14に示す各印は◇印がPEを、同様に、□印がPPを、×印がPETを、〇印がPSを、*印がABSを、△印がNyを示している。
図14のグラフは、各ガラス含有射出成形品の成形収縮率がガラス配合率の増加に伴って、漸減していることを示しているので、ガラス配合率の増加によって成形収縮率が小さくなり改善されていることが分かる。そして、重なり合っている□印のPPと△印のNyのグラフ、重なり合っている*印のABSと○印のPSのグラフ、◇印のPEのグラフ、そして、X印のPETのグラフは、それぞれの勾配が異なっていることを示している。
x軸のガラス配合率(重量%)に対して前記成形収縮率改善指標をy軸にプロットしてグラフを描いたところ、その描かれた6種類のグラフは、熱可塑性樹脂の種類と無関係に、ほとんど同じ形状のものが描かれた。その描いたグラフが図15Bの直線の近似式である。PEの直線の近似式はy=0.009x+0.9948、PP及びNyの直線の近似式はy=0.0089x+1.0082、PETの直線の近似式はy=0.009x+0.9941、PS及びABSの直線の近似式はy=0.0097x+0.9884であるので、実施例11〜61の式は成形収縮率改善指標の漸増する傾向が同じであることを示している。
y=0.009x+0.997 (4)
ここで、xはガラス配合率の必要量(40≦x≦70)で、yは成形収縮率改善指標である。
上記平均値の式(4)のxにガラス配合率の最小値40、最大値70重量%を代入して計算すれば、ガラス配合率の増加に伴って、成形収縮率改善指標が1.36から1.63(小数点第3位を四捨五入)に漸増されることが分かる。
このことを換言すれば、ガラス配合率の増加に伴って成形収縮率改善指標の示す値が、上記の平均値の式(4)に沿って漸増して改善されることを示している。それ故に、「平均値の式(4)に沿って漸増」の用語は誤差を含めた値と定義して用いるので、該用語は誤差を含めた値を意味していることに注意されたい。
ガラス配合率が0重量%である比較例1〜6の熱伝導率、及び、実施例11〜61の40、50、60及び70重量%の熱伝導率は表22に示す通りである。
この6種類の直線の近似式で表したブラフは、ガラス配合率の増加に伴って熱伝導率が漸増して改善されていることを示している。なお、に示す各印は図14の説明の時に記載した内容と同じであるので省略する。
上記の割って得られた値は、前記各100重量%射出成形品の固有の熱伝導率がガラス配合率の増加により改善される割合を意味しているので、「熱伝導率改善指標」と定義する。従って、比較例1〜6のガラス配合率0重量%(熱可塑性樹脂100重量%)の各熱可塑性樹脂の射出成形品は、その熱伝導率改善指標が1である。
例えば、ABS100重量%の熱伝導率は2.15であるが、それに対して、ガラス配合率50重量%のPPの熱伝導率2.11はABSの熱伝導率に近い値であることを示している。
x軸のガラス配合率(重量%)に対して前記熱伝導率改善指標をy軸にプロットしてグラフを描いたところ、その描かれた6種類のグラフは、熱可塑性樹脂の種類と無関係に、ほとんど同じ形状のものが描かれた。その描いたグラフが図17Aの直線の近似式である。PEの直線の近似式はy=0.0125x+0.9922、PPの直線の近似式はy=0.0133x+0.9905、PETの直線の近似式はy=0.0136x+1.0029、PSの直線の近似式はy=0.0129x+0.9908、ABSの直線の近似式はy=0.0132x+0.9962、そして、Nyの直線の近似式はy=0.0132x+0.991であるので、実施例11〜61の式は熱伝導率改善指標の漸増する傾向が同じであることを示している。
y=0.009x+0.997 (5)
上記平均値の式(5)のxにガラス配合率の最小値40、最大値70重量%を代入して計算すれば、ガラス配合率の増加に伴って、熱伝導率改善指標が1.52から1.91(小数点第3位を四捨五入)に漸増されることが分かる。
このことを換言すれば、ガラス配合率の増加に伴って熱伝導率改善指標の示す値が、上記の平均値の式(5)に沿って漸増して改善されることを示している。それ故に、「平均値の式(5)に沿って漸増」の用語は誤差を含めた値と定義して用いるので、誤差を含めた値を意味していることに注意されたい。
即ち、上記課題を解決するために、請求項1に係る発明のガラス含有射出成形品は、ガラス粉末と熱可塑性樹脂を含むガラス含有成形用ペレットを用いて射出成形機で成形されてなるガラス含有射出成形品であって、前記熱可塑性樹脂が、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂及びポリアミド樹脂からなる群から選ばれる一種の樹脂中に、前記ガラス粉末が、中実の球状ガラス粉末で10〜40μmの平均粒径であり、その表面が噴霧法によりシラン化処理されており、ガラス配合率40〜70重量%の範囲で含有されており、該ガラス配合率の増加に伴って、上記6種の樹脂の何れもガラス含有射出成形品の成形収縮率改善指標が以下の式(1)に沿って漸増して改善されることを特徴とする。y=0.0093x+0.9968 (1)(x:ガラス配合率 ; y:成形収縮率改善指標)
同様に、請求項2に係る発明のガラス含有射出成形品は、前記ガラス配合率の増加に伴って、前記ガラス含有射出成形品の成形収縮率改善指標が1.36から1.63に漸増して改善されることを特徴とする。
請求項3に係る発明のガラス含有射出成形品は、前記熱可塑性樹脂がポリプロピレン樹脂であり、前記ガラス配合率が60重量%以上の前記ガラス含有射出成形品がABS樹脂100重量%の射出成形品の成形収縮率0.6より小さいことを特徴とする。
請求項4に係る発明のガラス含有射出成形品は、前記ガラス含有射出成形品が嵌合の必要な化粧用の容器に用いられることを特徴とする。
請求項5に係る発明のガラス含有射出成形品は、前記ガラス配合率の増加に伴って、前記6種の樹脂の何れもガラス含有射出成形品の熱伝導率改善指標が以下の式(2)に沿って漸増して改善されることを特徴とする。
y=0.0131x+0.994 (2)
(x:ガラス配合率 ; y:熱伝導率改善指標)
請求項6に係る発明のガラス含有射出成形品は、前記ガラス配合率の増加に伴って、前記6種の樹脂の何れもガラス含有射出成形品の熱伝導率改善指標が1.52から1.91に漸増して改善されることを特徴とする。
幅60mm×長さ80mm×厚さ1.5mmの板状の蓋の内面中央に径50mm、高さ3mmの嵌合部を設け、板状の長さ方向の端より7mmの位置に開閉用切り込みを設けた金型を用いて、溶融状態の熱可塑性樹脂組成物100重量%及びガラス含有成形用ペレットであるペレットを射出して冷却し、その後に金型から冷却された射出成形品を取り出して、上記金型の長さ80mmの寸法に対応する射出成形品の長さの寸法を測定して体積を計測して下記の如く成形収縮率(X)を求めた。
X=((A−B)/A)×100(%)
(A;金型の長さ、B;射出成形品の長さ)
即ち、上記課題を解決するために、請求項1に係る発明のガラス含有射出成形品は、ガラス粉末と熱可塑性樹脂を含むガラス含有成形用ペレットを用いて射出成形機で成形されてなるガラス含有射出成形品であって、前記熱可塑性樹脂が、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂及びポリアミド樹脂からなる群から選ばれる一種の樹脂中に、前記ガラス粉末が、中実の球状ガラス粉末で10〜40μmの平均粒径であり、その表面が噴霧法によりシラン化処理されており、ガラス配合率40〜70重量%の範囲で含有されており、該ガラス配合率の増加に伴って、上記6種の樹脂の何れもガラス含有射出成形品の成形収縮率改善指標が以下の式(1)に沿って漸増して改善されることを特徴とする。
y=0.0093x+0.9968 (1)
(x:ガラス配合率 ; y:成形収縮率改善指標)
同様に、請求項2に係る発明のガラス含有射出成形品は、前記ガラス配合率の増加に伴って、前記ガラス含有射出成形品の成形収縮率改善指標が1.36から1.63に漸増して改善されることを特徴とする。
請求項3に係る発明のガラス含有射出成形品は、前記熱可塑性樹脂がポリプロピレン樹脂であり、前記ガラス配合率が60重量%以上の前記ガラス含有射出成形品がABS樹脂100重量%の射出成形品の成形収縮率0.6より小さいことを特徴とする。
請求項4に係る発明のガラス含有射出成形品は、前記ガラス配合率の増加に伴って、前記6種の樹脂の何れもガラス含有射出成形品の熱伝導率改善指標が以下の式(2)に沿って漸増して改善されることを特徴とする。
y=0.0131x+0.994 (2)
(x:ガラス配合率 ; y:熱伝導率改善指標)
請求項5に係る発明のガラス含有射出成形品は、前記ガラス配合率の増加に伴って、前記6種の樹脂の何れもガラス含有射出成形品の熱伝導率改善指標が1.52から1.91に漸増して改善されることを特徴とする。
Claims (7)
- ガラス粉末と熱可塑性樹脂を含むガラス含有成形用ペレットを用いて射出成形機で成形されてなるガラス含有射出成形品であって、
前記ガラス粉末が球状の形状で中実であり、前記熱可塑性樹脂中にガラス配合率40〜70重量%の範囲で含有されており、該ガラス配合率の増加に伴って、前記ガラス含有射出成形品の成形収縮率改善指標が以下の式(1)に沿って漸増して改善されることを特徴とするガラス含有射出成形品。
y=0.0093x+0.9968 (1)
(x:ガラス配合率 ; y:成形収縮率改善指標) - 前記ガラス配合率の増加に伴って、前記ガラス含有射出成形品の成形収縮率改善指標が1.36から1.63に漸増して改善されることを特徴とする請求項1に記載のガラス含有射出成形品。
- 前記熱可塑性樹脂がポリプロピレン樹脂であり、前記ガラス配合率が60重量%以上の前記ガラス含有射出成形品がABS樹脂100重量%の射出成形品の成形収縮率より小さいことを特徴とする請求項1に記載のガラス含有射出成形品。
- 前記ガラス含有射出成形品が嵌合の必要な化粧用等の容器に用いられることを特徴とする請求項3に記載のガラス含有射出成形品。
- 前記ガラス配合率の増加に伴って、前記ガラス含有射出成形品の熱伝導率改善指標が以下の式(2)に沿って漸増して改善されることを特徴とする請求項1に記載のガラス含有射出成形品。
y=0.0131x+0.994 (2)
(x:ガラス配合率 ; y:熱伝導率改善指標) - 前記ガラス配合率の増加に伴って、前記ガラス含有射出成形品の熱伝導率改善指標が1.52から1.91に漸増して改善されることを特徴とする請求項5に記載のガラス含有射出成形品。
- 前記熱可塑性樹脂がポリプロピレン樹脂であり、前記ガラス配合率が50重量%以上のガラス含有射出成形品がABS樹脂100重量%の射出成形品の熱伝導率より大きいことを特徴とする請求項5に記載のガラス含有射出成形品。
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