JP4550151B1 - ガラス含有射出成形品 - Google Patents

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Abstract

【課題】 本発明は熱可塑性樹脂中に球状ガラス粉末40〜70重量%を含有するガラス含有成形用ペレットを用いて、既存の射出成形機を用いて従来の射出成形法と同じ条件でガラス含有射出成形品が射出できることを実証し、そして、その成形されたガラス含有射出成形品の物性の特性を提供する。
【解決手段】 本発明のガラス含有射出成形品は、ガラス粉末と熱可塑性樹脂を含むガラス含有成形用ペレットを用いて射出成形法で成形されてなるガラス含有射出成形品であって、前記ガラス粉末が球状の形状で中実であり、10〜40μmの平均粒径であり、その表面がシラン化合物により全面的に被覆されており、前記熱可塑性樹脂中にガラス配合率40〜70重量%の範囲で含有されており、前記ガラス含有射出成形品の固有の物性値が前記ガラス配合率の増加に伴い方程式上の狭い領域の範囲にあることを特徴とする。
【選択図】 図15B

Description

本発明は、ガラス粉末と熱可塑性樹脂を含むガラス含有成形用ペレットを用いて射出成形機で成形されてなる、優れた物性を有するガラス含有射出成形品に関する。詳しくは、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂及びポリアミド樹脂からなる群から選ばれる一種の樹脂中に、前記ガラス粉末である中実の球状ガラス粉末をガラス配合率40〜70重量%の範囲で含有するガラス含有成形用ペレットを射出成形してなる、成形収縮率の小さいガラス含有射出成形品に関する。
プラスチックは石油から合成された高分子化合物で、金型等による成形が簡単なため、大量生産される各種日用品や医療分野、工業分野の製品等の原材料として用いられている。使用する目的・用途に合わせた性能を有する樹脂を合成することが可能なことから、日本におけるプラスチックの生産量は、ここ数年間約1400万トンの量で推移している。
平成16年の日本のプラスチック生産量は約1408万トンに達しており、プラスチック別の生産量ではポリエチレン樹脂(以下、「PE」と記載する。)が最も多く、次に、ポリプロピレン樹脂(以下、「PP」と記載する。)、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂(以下、「PS」と記載する。)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(以下、「PET」と記載する。)、ABS樹脂の順で続き、プラスチックの中で熱可塑性樹脂の生産量が上位を占めており、プラスチックの生産量の約90%が熱可塑性樹脂である。
平成16年における世界のプラスチック生産量は約224百万トンと推定されており、日本のプラスチック生産量は世界の約6.5%のシェアを占めている。国別では、米国、ドイツに次いで日本は第3位の生産量となっている。
地域別では、東アジアの生産の伸びが大きく、日本を含むアジアが35.5%と、ヨーロッパ、北米を抜いて最大の生産地域となっていて、中国の急速な経済発展に伴って今後も大きな伸びが予想されている。このように、生産量の大多数を占める熱可塑性樹脂が今後も伸びることが予想される状況にある。
ところで、今日の世界的規模の問題である二酸化炭素等の地球温暖化問題、有限な石油資源の枯渇問題が上記したプラスチックの生産量と密接に関係していることはよく知られたことであるが、その地球温暖化及び石油資源の枯渇の問題とプラスチックの生産量の関係を以下に述べる。
本発明者は、今日、全世界が共通の課題として緊急に解決を迫られている、二酸化炭素等の地球温暖化問題、有限な石油資源の枯渇問題を、解決せねばならないとの思いで日々熟慮を重ね続けた結果、一つの解決策を思い至ったものである。
その一つの解決策とは、石油から合成される熱可塑性樹脂にガラス粉末を大量に配合、例えば、70%のガラス粉末を配合させて押出機で混練し押出して成形用ペレットの製造ができたならば、熱可塑性樹脂、即ち、石油の使用量を70%削減でき、その成形体の焼却で排出される二酸化炭素の排出量を70%削減でき、更に、焼却エネルギーが減少できると共に成形体の焼却で残渣となったガラス粉末を樹脂に含有させて、リサイクルすることができるというものである。
そこで、本発明者は、本願出願前に、熱可塑性樹脂に40重量%以上のガラス粉末を配合、例えば、70重量%のガラス粉末を配合させて押出機で混練して押出し、ペレット(ガラス含有成形用ペレット)が成形できるよう鋭意研究に努めた結果、熱可塑性樹脂に中実の球状ガラス粉末が40〜70重量%含有するガラス含有成形用ペレットの完成に至り、PCT/JP2008/68093(特願2009−504515号)(発明の名称「ガラス含有成形用ペレット及びその製造方法」、優先権主張日:H19.10.4、(以下、「先願発明」という。))を特許出願した。
従来から用いられているペレットにガラス粉末を混ぜて成形用組成物を得る製造方法では、最初に混合機でペレットとガラス粉末を計量して均一に混ぜた後にホッパーに投入する。前記ガラス粉末は、投入する前にガラス繊維を粉砕して粉末状にしてシラン化合物を含有した液に浸漬することで、その表面がシラン化合物で被覆、即ち、シラン化処理がなされたものを用いる場合が多い。前記シラン化合物は有機物とケイ素から構成される化合物で、通常では非常に結びつきにくい有機材料と無機材料を結ぶ仲介役としての働きをするものであるから、従来から樹脂に配合するガラス粉末は、シラン化処理されたものを用いている。
このシラン化処理されたガラス粉末をホッパーに投入するが、ホッパーの入り口付近では、ガラス粉末の摩擦抵抗が大きいために、スクリューの剪断力によりガラス粉末が砂を噛むような状態で両材料をダイ側の方向に送り出し、そして、ヒーター・ブロワーの領域に入ると、シリンダーの外筒に設けられたヒーターの加熱により、シリンダーの内筒付近では溶融化されたペレット中にガラス粉末が混合された液相状態で、そして、スクリューの外筒付近では、溶融されていないペレットが固相状態で存在する。しかし、このスクリュー外筒の固相状態のペレットとシリンダー内筒の液相状態のペレットは、高速回転のスクリューにより混練撹拌されて、固相状態のペレットと液相状態のペレットが混合された半溶融状態となる。このように、前記ヒーター・ブロワーの領域の入口付近では、ペレットが半溶融状態のために流動性が低下して、スクリューの剪断力に対向する摩擦抵抗力が急激に増加する。
そして、ペレットに大量のガラス粉末を加えて混練したとすると、上記したペレットが半溶融状態で大量のガラス粉末が存在するために流動性が急激に低下することとなり、前記スクリューに対する摩擦抵抗力がスクリューの剪断力以上に大きくなり、スクリューねじ山等の破損を起こして、混練して圧縮するスクリューの制御が停止等を起こすことは、当業者によく知られたことである。そして、前記押出機は1台当たり2〜3千万する高額な機械であるために、押出機の破損及び停止等による、部品交換費、修繕費及び点検費の高額な損失を恐れて、製造業者はガラス粉末の配合率を最大でも35重量%までしか配合しないのが実情である。
このように、プラスチック成形技術の分野では、熱可塑性樹脂の物性の向上を目的として、押出機で熱可塑性樹脂に大量のガラス粉末を配合して混練すると流動性が急激に低下するために、40重量%以上のガラス粉末を含有する熱可塑性樹脂組成物を製造することは不可能なことと認識されている。
そこで、本発明者は、押出機で熱可塑性樹脂中に大量のガラス粉末を配合して混練すると流動性が急激に低下する原因を解明すべく、熟慮を重ねて検討した結果、以下に述べる4つの原因が相互に関連することで流動性の急激な低下が起きていると推測するに至った。
流動性の急激な低下は、固相と液相が混合した半溶融状態が発生すること、上述したガラス粉末にシラン化処理を施す方法として、シラン化合物が0.1重量%程度含まれる水溶液にガラス粉末を30分の間撹拌しながら、浸漬した後に濾過して100℃で乾燥する浸漬法が一般的に行われており、その処理により複数のガラス粉末同士が接触した状態でシラン化合物を被覆するので、ガラス粉末が凝集した状態でフィルター処理されて乾燥されるので、シラン化処理されたガラス粉末の中には凝集した状態のガラス粉末(以下、「凝集ガラス粉末」という。)が存在すること、そして、従来から用いられている熱可塑性樹脂中に配合するガラス粉末は、ガラス繊維を細かく粉砕する等により得ているために、その形状が多角形、長方形等の様々な形状から構成されており、そして、その平均粒径が10〜100μmの広い分布幅にあること、この様々な形状と分布幅の広いこと、更に、ガラスと熱可塑性樹脂の比熱の差が大きいこと、例えば、ガラスの比熱は0.670J/(kg・K)であるのに対して、PETのそれは1.5J/(kg・K)であり、ある一定温度に上げるのにガラスよりPETの方が2.2倍の熱量を必要とすること、この比熱の差が大きいこと、この四つの原因が相互に複雑に作用することで、熱可塑性樹脂中に40重量%以上のガラス粉末を配合して混練すると流動性が急激に低下して、ガラス粉末を含有した成形用組成物が製造できない原因となっていると考え、本発明者はこれらの原因を取り除くことで先願発明を完成するに至った。
上述した流動性が急激に低下する原因が解明されていなかったために、従来から樹脂ペレットに35重量%程度のガラス粉末を配合した樹脂組成物を製造できるが、該樹脂ペレットに40重量%以上の大量のガラス粉末を混ぜて、押出機で混練して押出してガラス含有の樹脂ペレットを製造することは、樹脂とガラス粉末の配合物の流動性が低下するために不可能なこととして、40重量%以上の大量のガラス粉末を含有した樹脂ペレットの製品化に成功したとする報告はなされていない。
例えば、「本発明では、ポリカーボネート樹脂組成物の上記ガラスフィラーの含有量は、10質量%以上40質量%未満であることを特徴とし、15〜35質量%であることが好ましい。10質量%未満では成形品の機械物性が不充分であり、また、40質量%を超えると、樹脂とガラスフィラーとの接触面積が増大して成形品の透明性が低下し、また、成形性が低下するので好ましくない。」こと(特許文献1の段落[0056]参照)、「本発明の熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、上記リン酸塩系ガラスを0.1〜50質量部含む。0.1質量部未満であると難燃性付与の効果が得られず、50質量部超であると該樹脂組成物の成形流動性が劣る場合があるためである。好ましいリン酸塩系ガラスの量は、0.5〜30質量部である。」(リン酸塩系ガラス50質量部は33.3重量%に相当)こと(特許文献2の段落[0026]参照)、そして、「本発明におけるAg2Oを含有する溶解性リン塩系ガラス粉末の配合量は、0.1〜40重量%である。配合量が0.1重量%未満であると、抗菌性能が発現せず、40重量%を越えると、樹脂自体の粘度が高くなり配合樹脂への均一な分散が得られ難くなる。Ag2Oを含有する溶解性リン塩系ガラス粉末の配合量は、好ましくは0.3〜35重量%であり、より好ましくは0.5〜30重量%である。」こと(特許文献3の段落[0016]参照)が知られている。
ところで、熱可塑性樹脂からなる成形用組成物を用いて射出成形機により成形された射出成形品の成形収縮率に関して、以下の先行技術文献が知られている。
射出成形体の成形収縮率を事前に予測する方法に関する発明で、金型の設計製作前に正しい収縮率を求めることができ、これにより金型製作後の試作回数が低減され、射出成形用の非常に高価な金型の低コスト化を可能にするものが知られている(特許文献4参照)。
また、ひけやそりの成形歪を防止するために、キャビティを構成する複数の入駒の周囲に断熱部を設け、これら入駒とこれら入駒を支持する固定型及び可動型との間を断熱化し、キャビティを構成する複数の入駒の金型温度を高精度な一定温度に維持制御できるように構成した射出成形用金型装置が知られている(特許文献5参照)。
特開2006−022236号公報 特開2004−256787号公報 特開2001−139832号公報 特開2007−083602号公報 特開平06−114885号公報
上記特許文献1〜3に示したように、合成樹脂に35重量%以下のガラス粉末を含有させた樹脂組成物を用いて射出成形機により成形された射出成形品は知られているが、ガラス粉末40〜70重量%を含有する射出成形品は何れの文献にも記載されていないので、ガラス粉末40〜70重量%を含有するガラス含有成形用ペレットを用いて射出成形機で射出成形品の成形が可能なのかどうか、また、可能な場合に熱可塑性樹脂中にガラス粉末40〜70重量%を含有する射出成形品がどの様な物性を有するのか知られていない。
特許文献4及び5が示すように、射出成形法で製造される成形体は、金型に押し出される樹脂がキャビティ部分の温度分布の影響を受けながら冷却固化されるため、キャビティ部分に温度不均一が発生している場合、該樹脂が冷却固化される過程で、樹脂の成形収縮率に相違が生じて成形体にひけやそりの不均一な成形歪が発生することはよく知られている。そのために、現状では前記成形収縮率の相違に伴う不均一な成形歪を防ぐために、成形収縮率を考慮してそりやひけの成形歪が生じにくい精度の良い金型を製作することで、射出成形体の寸法精度を上げているため、精度の良い金型を製作する費用、製作する時間等に多大な負担が必要となっている。
それ故に、本発明は、汎用性のある樹脂中に40重量%以上のガラス粉末を含有させたガラス含有成形用ペレットを用いて、従来の射出成形法と同じ条件でガラスを含有した射出成形品を成形でき、100%樹脂の射出成形品と比べて成形収縮率を小さくでき、そのガラス含有射出成形品のガラス配合率と成形収縮率の関係を示す関係式により成形収縮率の改善される割合の予測ができ、特有の物性を有し、更に、コスト的に安価に製造ができるガラス含有射出成形品を提供することを目的とする。
本発明者は、先願発明の前記ガラス含有成形用ペレットを用いて、射出成形機で成形されたガラス含有射出成形品を得て、そのガラス含有射出成形品の有する優れた物性を鋭意研究することで、本発明のガラス含有射出成形品を完成したものである。
即ち、上記課題を解決するために、請求項1に係る発明のガラス含有射出成形品は、ガラス粉末と熱可塑性樹脂を含むガラス含有成形用ペレットを用いて射出成形機で成形されてなるガラス含有射出成形品であって、前記熱可塑性樹脂が、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂及びポリアミド樹脂からなる群から選ばれる一種の樹脂中に、前記ガラス粉末が、中実の球状ガラス粉末で10〜40μmの平均粒径であり、その表面が噴霧法によりシラン化処理されており、ガラス配合率40〜70重量%の範囲で含有されており、該ガラス配合率の増加に伴って、上記6種の樹脂の何れもガラス含有射出成形品の成形収縮率改善指標が以下の式(1)に沿って漸増して改善されることを特徴とする。
y=0.0093x+0.9968 (1)
(x:ガラス配合率 ; y:成形収縮率改善指標)
同様に、請求項2に係る発明のガラス含有射出成形品は、前記ガラス配合率の増加に伴って、前記ガラス含有射出成形品の成形収縮率改善指標が1.36から1.63に漸増して改善されることを特徴とする。
請求項3に係る発明のガラス含有射出成形品は、前記熱可塑性樹脂がポリプロピレン樹脂であり、前記ガラス配合率が60重量%以上の前記ガラス含有射出成形品がABS樹脂100重量%の射出成形品の成形収縮率0.6より小さいことを特徴とする。
請求項に係る発明のガラス含有射出成形品は、前記ガラス配合率の増加に伴って、前記6種の樹脂の何れもガラス含有射出成形品の熱伝導率改善指標が以下の式(2)に沿って漸増して改善されることを特徴とする。
y=0.0131x+0.994 (2)
(x:ガラス配合率 ; y:熱伝導率改善指標)
請求項に係る発明のガラス含有射出成形品は、前記ガラス配合率の増加に伴って、前記6種の樹脂の何れもガラス含有射出成形品の熱伝導率改善指標が1.52から1.91に漸増して改善されることを特徴とする。
本発明のガラス含有射出成形品は、成形収縮率の減少に伴ってそりやひけ等の成形歪みが小さくなり、製作費用、製作時間等に多大な負担が掛かる精度の良い金型を製作しなくとも、寸法精度の高い射出成形品が製造できるまた、前記球状ガラス粉末の配合率が50重量%以上では、熱可塑性樹脂100重量%の成形収縮率に対して半分に減少させることが可能となった。
熱可塑性樹脂中にガラス配合率40〜70重量%のガラス粉末を含有するガラス含有成形用ペレットを用いて、既存の射出成形機を用いて従来の射出成形法と同じ条件で射出成形品を成形することが可能となった。
このことにより、前記ガラス含有射出成形品を焼却する際に、排出される二酸化炭素の排出量を最大で70%削減することができ、地球規模の課題である二酸化炭素の地球温暖化問題を解決する技術として貢献度が大きく、更に、熱可塑性樹脂、即ち、石油の使用量を最大で70%削減することができ、地球規模の課題である有限な石油資源の枯渇問題を解決する技術として貢献度が大きい。
そして、本発明のガラス含有射出成形品は、前記ガラス含有射出成形品の焼却後に残った最大で70%のガラス粉末を樹脂に含有させて、再度ガラス含有成形用ペレットを成形することで、70%のガラス粉末を何度でもリサイクルすることができ、循環型社会を形成する技術として貢献度が大きく、球状ガラス粉末の原料は日本に豊富にある資源であり、その材料費は低廉であるので、今日の高騰を続ける石油の代替可能な原料として有望である。
本発明のガラス含有射出成形品は、熱可塑性樹脂100重量%の射出成形品の物性である成形収縮率改善指標又は熱伝導率改善指標が、前記熱可塑性樹脂の種類と無関係に、ガラス配合率と成形収縮率及び熱伝導率改善指標の関係式が得られたので、ガラス配合率を決めることで、前記熱可塑性樹脂100重量%の射出成形品の成形収縮率及び/又は熱伝導率を改善できる割合を予測でき、また、その逆に要求する射出成形品の物性を得るのに必要なガラス配合率を予測できるようになった。
本発明のガラス含有射出成形品の製造に用いられるガラス含有成形用ペレットを成形し、その組成物を製造する製造方法に用いられる一つの押出機の縦断面図である。 球状Eガラス粉末の平均粒径の分布を示す分布図である。 球状Eガラス粉末の1000倍の電子顕微鏡写真である。 PPに球状Eガラス粉末50重量%を配合して得られたガラス含有成形用ペレット(ペレット)を側面から垂直に切断した切断部を50倍に拡大した電子顕微鏡写真である。 前記切断部を100倍に拡大して撮影した電子顕微鏡写真である。 前記ペレットの側面を100倍に拡大して撮影した電子顕微鏡写真である。 PEのガラス配合率とMFRの関係を示したグラフである。 PPのガラス配合率とMFRの関係を示したグラフである。 PETのガラス配合率とMFRの関係を示したグラフである。 PSのガラス配合率とMFRの関係を示したグラフである。 ABSのガラス配合率とMFRの関係を示したグラフである。 Nyのガラス配合率とMFRの関係を示したグラフである。 実施例1〜6のガラス含有成形用ペレットにおけるガラス配合率とMFRの関係を示したグラフである。 実施例1〜6のガラス含有成形用ペレットにおけるMFR低下割合とガラス配合率の関係を示したグラフである。 実施例1〜6のガラス含有成形用ペレットにおけるMFR低下割合とガラス配合率の関係において、最大値と最小値を2本の2次曲線で近似したグラフである。 6種類のガラス含有射出成形品のガラス配合率(重量%)をx軸に、成形収縮率をy軸にプロットして得られた5点を基にして直線の近似式で表したブラフである。 ガラス配合率と成形収縮率改善指標の関係を示したグラフである。 ガラス配合率と平均値の成形収縮率改善指標の関係を示したグラフである。 6種類のガラス含有射出成形品のガラス配合率(重量%)をx軸に、熱伝導率をy軸にプロットして得られた5点を基にして直線の近似式で表したグラフである。 ガラス配合率と熱伝導率改善指標の関係を示したグラフである。 ガラス配合率と平均値の熱伝導率改善指標の関係を示したグラフである。 従来から用いられている押出機の一例である単軸押出機の縦断面図である。
最初に、上記した本願出願前に出願した先願発明の「ガラス含有成形用ペレット及びその製造方法」の内容を説明して、その後に、本発明の「ガラス含有射出成形品」を説明する。
先願発明を説明するのは、前記ガラス含有射出成形品が前記ガラス含有成形用ペレットを既存の射出成形機に投入して、従来の射出成形法と同じ条件で成形されるものであるから、最初に、大量のガラス粉末が含有されるガラス含有成形用ペレットの成形方法、そして、その組成物が有する物性として、溶融状態にあるポリマーの流動性を示す尺度の一つであるメルトフローレート(以下、このメルトフローレートを「MFR」という。)を説明することで、何故に40〜70重量%のガラス粉末を含有するガラス含有成形用ペレットを既存の射出成形機に投入して、従来の射出成形法と同じ条件で射出成形品が射出できるのか、その理由を理解しやすくするためである。
(ガラス含有成形用ペレットの成形工程)
図1は本発明のガラス含有成形用ペレットを成形し、その組成物を製造する製造方法に用いられる一つの押出機の縦断面図である。前記押出機により40〜70重量%の範囲の球状ガラス粉末と熱可塑性樹脂を混練して押出してガラス含有成形用ペレットが成形される。
図1の押出機に基づいて、40〜70重量%の範囲の球状ガラス粉末と熱可塑性樹脂を混練して押出して、ガラス含有成形用ペレットを成形する工程を説明する。
本発明の実施形態に用いる押出機は、供給材料であるペレットと球状ガラス粉末を投入する2個のホッパーが備えられている。図1に示す押出機のホッパーを左側から順に第1、第2ホッパーと称し、第1ホッパーには熱可塑性樹脂のペレットが投入され、押出機の中間部付近に設けられている第2ホッパーには、球状ガラス粉末が投入される。第2ホッパーの配置位置は、第1ホッパーよりスクリューバレル内に供給されたペレットが、スクリューによる混練搬送に伴って溶融状態になる位置に設けてある。
なお、図1の押出機は、図18の従来の押出機と比べてホッパーの構造を除いて他の構造は同じであるので、図1の押出機の構造を説明することは省略する。
前記第1及び第2ホッパーが備えられた押出機は、樹脂材料と複数種類の充填剤、顔料等を配合して押出成形するものとして従来から知られているが、本発明の第1及び第2ホッパーと従来のそれとの違いは、従来の第2ホッパーでは、ペレットの配合量に対して充填剤等のその配合率が極めて少ないので小型のホッパーが用いられているが、本発明の第2ホッパーは球状のガラス粉末を大量に投入するので、その第2ホッパーの大きさはペレットの第1ホッパーと同等かそれより大きいものを用いる点、該ホッパーの上方に球状のガラス粉末を予熱する加熱装置(図示せず)が設けられている点が異なる。前記加熱装置は150℃〜350℃の範囲で加熱でき、一定温度に制御できるものであれば、通常用いられている加熱装置を用いることができる。
従来の第2ホッパーに投入する充填剤、顔料等の温度は常温で用いているが、本発明の球状のガラス粉末は、第2ホッパーに投入する前に熱可塑性樹脂の溶融温度と同じか、それに近似した温度に予熱してから投入する。この予熱温度は溶融温度と同じであることが最も好ましく、(該溶融温度±10%の温度)が好ましい。予熱温度が(前記溶融温度−10%の温度)より低い温度であると、溶融状態の熱可塑性樹脂から大量のガラス粉末が熱を奪うために流動性が低下する恐れがあり、予熱温度が(前記溶融温度+10%の温度)より高い温度であると、熱可塑性樹脂の粘性抵抗が下がりすぎて液体状態になりペレット化できない恐れがあるので、ガラス粉末の予熱温度は(溶融温度±10%の温度)の範囲が適切である。
まず、決められた熱可塑性樹脂とガラス配合率にしたがって、供給する熱可塑性樹脂の重量を計量して第1ホッパー内に投入し、スクリューによる混練搬送によって送られた熱可塑性樹脂がヒーターにより溶融状態になる位置、即ち、第2ホッパーが配置されている位置で、供給する重量が計量された球状ガラス粉末を熱可塑性樹脂の溶融温度と同じか、それに近似した温度に予熱して第2ホッパー内に投入する。溶融熱可塑性樹脂中に投入された球状ガラス粉末が、混練されながら押出して棒状にしたものを、その後に切断し、ペレットを得た。
前記ヒーターの温度は使用される熱可塑性樹脂の融点に応じて決められており、例えば、HD−PEが230℃、PPが220℃、PETが250℃等である。そして、押出機のスクリューの回転数は、200回/分で配合物を混練しながら3mmの径のノズルダイから押し出して棒状にしたものを、水で冷やして長さ4mmに切断してペレットを得た。
(球状ガラス粉末)
本発明の球状ガラス粉末のガラス質は、SiO2、B23、P23の1種又は2種以上を骨格成分とする、アルカリガラス、可溶性ガラス、無アルカリガラスが挙げられる。そして、その形状を球状にするには、ガラス繊維を粉砕して球状化する方法を用いることで平均粒径の分布をシャープにすることができる。該球状ガラス粉末のアルカリ分が多いと、熱可塑性樹脂の脆化を招きやすいので、アルカリ分の少ない可溶性ガラスが好ましく、更に、アルカリ分のない無アルカリガラスであるEガラスがより好ましい。
前記球状ガラス粉末は、ガラス繊維の直径が20μmのものを材料として用いている。ガラス繊維はその直径が一定であるから、ガラス繊維の長さが前記直径20μmからばらつかないように粉砕することで、直径20μm、長さ10〜30μmの粉砕物が得られる。この粉砕物を炉の内部に設けた酸素バーナーによる2500〜3000℃の火炎に噴霧して球状化し、噴霧状の球体に炉の下部に設けた水の噴射装置より、γ−グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシランを0.1重量%含む水を噴射して、噴霧状態でシラン化処理を行いバグフィルターで捕集した。この捕集したガラス粉体は球状の平均粒径が10〜40μmの球状のガラス粉末である。このように、上記ガラス繊維の直径が20μmのものを材料として用いることで、平均粒径が10〜40μmの球状のガラス粉末が得られた。得られた球状ガラス粉末は中実であった。上記噴霧状態で行うシラン化処理を行う方法を、以下、「噴霧法」という。
上記球状化したガラス粉末を前記噴霧法でシラン化処理をしたものが前記球状ガラス粉末である。換言すれば、この球状ガラス粉末はその表面がシラン化合物により全体的に覆われていることに特徴がある。
シラン化合物としては、以下の式で表されるものを挙げることができる。
4-n−Si−(OR’)n
(式中、Rは有機基を表し、R’はメチル基、エチル基又はプロピル基を表し、nは1〜3から選ばれる整数を表す)
かかるシラン化合物としては、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン等のエポキシ基を有するシランカップリング剤、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト基を有するシランカップリング剤、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基を有するシランカップリング剤が挙げられる。
従来から用いられているガラス粉末は、その形状が多角形、長方形等の様々な形状から構成されており、そして、その平均粒径が10〜100μmの広い分布幅にあるのに対して、本発明のガラス粉末は形状が球状であり、その平均粒径が10〜40μmの範囲でその幅が非常に小さい。
図2は上述した球状ガラス粉末の製造方法で得られた球状ガラス粉末の平均粒径の分布の頻度を示すグラフである。このグラフの横軸は前記球状ガラス粉末の粒径(μm)で、縦軸は分布の頻度(%)を示している。前記球状Eガラス粉末は、粒径が25μmで最高の分布頻度を示しており、その25μmを中心に正規分布曲線上の10〜40μmの範囲に分布しており、その範囲にある粒径の頻度が高いことがわかる。
図3は前記球状ガラス粉末の1000倍の電子顕微鏡写真である。この写真から球状ガラス粉末は、各々のその形状が球状であり中実であり、大小様々な粒径のものが存在していることが観察できる。
図2の球状Eガラス粉末の平均粒径の分布の頻度を示すグラフとこの図3の写真から、熱可塑性樹脂中の球状ガラス粉末は、その形状が真円の球形であり、大小様々な粒径のものが存在しているが、その平均粒径が10〜40μmであることが示されている。
ところで、溶融熱可塑性樹脂中にガラス粉末を投入して混練する際に、その粒径が10μmより以下になると、微細粒子の割合が多くなり、比表面積の増加に伴い樹脂からガラス粉末が熱量を奪い、そのために樹脂の温度が急に低下することで溶融粘度が上昇し、剪断発熱により混練時の樹脂温度が極端に上昇するため、決められた両材料の配合率を調整することが困難になる。又、熱可塑性樹脂にガラス粉末を配合することで、一般的に、成形体の寸法安定性、機械強度(衝撃強度、曲げ強度等)、ソリ性、透過バリア性等の向上が図られるが、その粒径が10μmより以下になると、特に曲げ強度が低下するので好ましくない。
前記粒径が40μmより大になると巨大粒子の割合が多くなり、混練時の溶融粘度の上昇は少ないが、ガラス含有組成物を一定サイズのペレットに切断する際に、カット刃の摩耗が激しくなり、大量の該ガラス含有組成物を連続して生産することが困難となり、生産上の問題が生じる。又、その粒径が40μmより大になると、特に衝撃強度が低下するので好ましくない。従って、平均粒径は10〜40μmの範囲が好適である。
(熱可塑性樹脂)
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリスチレン樹脂(PS)、ABS樹脂、ポリアミド樹脂、を挙げることができる。ポリアミド樹脂には、ナイロン6、ナイロン66等のナイロン樹脂(Ny)がある。
バリア性や寸法安定性から必要に応じて他の樹脂を使用することもできる。他の樹脂には、メタクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリマーアロイ樹脂、共重合樹脂(EAA、EMAA、EEA、EMA、EMMA)を挙げることができる。
熱可塑性樹脂に着色や光沢の付与の目的で、顔料、酸化チタン、アルミナ、タルク、マイカ、シリカ、炭酸マグネシウム、金属ラメを配合することができる。
PE、PP、PET、PS、ABS、Nyが溶融状態にある中に最大で70重量%の球状ガラス粉末を配合して混練することにより、押出機の吐出口に設けたノズルダイより直径3mmの棒状に押し出して水で冷却してカッターで長さ約4mmに切断して、該熱可塑性樹脂中に球状ガラス粉末が独立して分散したガラス含有成形用ペレットが得られるが、直径及び長さはこれに限定されるものではない。
図4Aは、上述した本発明のガラス含有成形用ペレットの製造方法で製造されたガラス含有成形用ペレット(ペレット)の電子顕微鏡写真である。この電子顕微鏡写真は、PPに球状Eガラス粉末50重量%を配合して得られたペレットを、側面から垂直に切断した切断部を50倍に拡大して撮影したものである。
図4Bは、前記切断部を100倍に拡大して撮影した電子顕微鏡写真である。
図4Cは、前記ペレットの側面を100倍に拡大して撮影した電子顕微鏡写真である。
図4Bのペレットの切断部の写真から、該ペレットはPP中に個々の球状のガラス粉末が凝集することなく独立して分散された状態で配合されていることが観察される。
このことから、前記球状ガラス粉末が噴霧法によりその表面がシラン化合物により全面的に被覆されることで、押出機内で混練し押し出して成形された前記ペレットは樹脂中に球状のガラス粉末が凝集することなく独立して分散された状態で配合されていることが判明した。
そして、図4Aの写真の中点より上下端部の位置まで円を描き、その円を均等に16分割して、16の各区画に配合されている球状ガラス粉末の数を目視して数え、その数えた結果を表1に示す。
なお、16分割線上に球状ガラス粉末がある場合には、1/2として球状ガラス粉末数の計算を行った。
表1の測定結果から、各区画における球状ガラス粉末数は、140±1の範囲にあることから、ペレット中に球状ガラス粉末が均一に分散されていることを示している。
以上のことから、押出機でガラス粉末と熱可塑性樹脂を混練して押出成形されてなる本発明のガラス含有成形用ペレットは、ガラス粉末が、球状の形状で中実であり、10〜40μmの平均粒径であり、その表面がシラン化合物により全面的に被覆されており、熱可塑性樹脂中に40〜70重量%の範囲のガラス配合率で独立して均一に分散されている状態で含有されているものであることが判明した。
図4Cの写真は、ペレットの側面は球形の凸状部で覆われており、その球形凸状部が熱可塑性樹脂で前記球状ガラス粉末を被覆していることを表している。
(実施例と比較例)
以下に示す実施例は、6種類のペレット状の熱可塑性樹脂(PE、PP、PET、PS、ABS又はNy)を対象として、上記した噴霧法でシラン化処理した球状Eガラス粉末と6種類のペレット状の樹脂のうち一つの樹脂の重量配合率が40:60、50:50、60:40及び70:30の4種類の水準のものを用いており、その重量配合率におけるMFRが示されている。
前記MFRは、溶融状態にあるポリマーの流動性を示す尺度の一つで、押出式プラストメーターで、一定圧力、一定温度の下に、規定の寸法をもつノズル(オリフィス)から流出する量を測定し、g/10minの単位で表わした指数である。一般にMFRの数値が大きいほど溶融時の流動性や加工性は良好であるとされ、世界的に樹脂の流量状態を表すものとして、このMFRが用いられている。
上記6種類の熱可塑性樹脂のMFRは、実施例として選んだHD−PE(高密度ポリエチレン)(以下、「PE」という。)が0.25で、ABSが30.0のMFRで、MFRが0.25〜30.0の範囲のものを選んでいるが、同じ熱可塑性樹脂であっても分子量に応じてMFRが異なるものである。他の熱可塑性樹脂及び分子量の異なる熱可塑性樹脂のMFRは、上記したMFR0.25〜30.0の範囲に入るものとして6種類の熱可塑性樹脂を選定した。
比較例1及び2に用いた比較例球体は、Eガラス繊維の粉砕物を球状化したものに浸漬法でシラン化処理したもので、実施例と同じ球状ガラス粉未を用いている。実施例の球状ガラス粉末は噴霧法でシラン化処理されているのに対して、比較例1及び2の球状ガラス粉末が浸漬法でシラン化処理されていることが相違することから、比較例1及び2の球状ガラス粉末は比較例球体と呼んでいる。
比較例1及び2の前記浸漬法とは、球状ガラス粉末をγ一グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシランが0.1重量%含まれる水溶液に30分の間撹拌しながら、浸漬した後に濾過して100℃で乾燥したものである。その処理により複数の球状ガラス粉末同士が接触してシラン化合物が被覆されフィルター処理されて乾燥されるので、シラン化処理されたガラス粉末中に凝集した凝集ガラス粉末が存在することになる。
なお、比較例として従来の各種形状を含むガラス粉末を用いたものを実施例の比較する対象としない理由は、PEのペレットと従来の各種形状を含む40重量%のガラス粉末を第1ホッパーに投入して混練を試みようとしたところ、流動性が急激に低下して、スクリューに対する摩擦抵抗力がスクリューの剪断力以上に大きくなり、スクリューねじ山等が破損を起こしそうになり、組成物を成形することができないために、実施例と対比して溶融熱可塑性樹脂中にガラス粉末を投入する効果、凝集状態にないガラス粉末の効果を明確にするための実験データが得られないことが分かったので、比較例としてEガラス繊維の粉砕物を球状化したものを用いることとした。このことで、前記溶融熱可塑性樹脂中にガラス粉末を投入する効果、凝集状態にないガラス粉末の効果を示す実験データを得ることができた。
比較例1は6種類の樹脂のうちの一つの樹脂と比較例球体を別々に計量して押出機に投入した。第1ホッパーに一つの樹脂のペレットを投入し、第2ホッパーに比較例球体を投入した。比較例球体と一つの樹脂のペレットの重量配合率を20:80、30:70、40:60の3種類の水準のものを用いており、その重量配合率における流動性を示すMFRの実験データが以下の表4、6、8、10、12、14、16、18及び20に示されている。
比較例2は第1ホッパーに一つの樹脂のペレットと比較例球体を配合して同時に投入し、比較例球体と一つの樹脂のペレットの重量配合率を20:80、30:70、40:60の3種類の水準のものを用いており、その重量配合率における流動性を示すMFRの実験データが以下の表4、6、8、10、12、14、16、18及び20に示されている。
上記した実施例、比較例1及び2の3種類の成形組成物を得るための条件を、ガラス粒子、シラン化処理の方法、樹脂の種類、ガラス配合率、第1、第2ホッパーへの投入材料の6項目(以下、この6項目の条件を「6項目条件」という。)に分けて表2に示した。 なお、前記「ガラス配合率」は、熱可塑性樹脂中の球状ガラス粉末の重量%と定義して用いている。そして、「ガラス配合率重量%」を「ガラス配合率%」で示す場合があるが、同じ意味で用いている。
ところで、実施例のガラス含有成形用ペレットは、比較例1及び2の比較例球体成形用組成物と比較してどの様な特性を有するものかを調べるために、上記6項目条件で成形した時の各樹脂を溶融する溶融温度と同じ温度で成形用組成物を溶融して、各樹脂の成形用組成物のMFRを測定した。前記各樹脂を溶融する溶融温度と同じ温度で成形用組成物のMFRを測定すれば、成形用押出機内で樹脂が溶融状態にある領域にガラス粉末を投入して混練している時の流動性の状態を数値化して表すことができ、そのことにより比較例1及び2の比較例球体成形用組成物のMFRと対比することにより、実施例のガラス含有成形用ペレットのMFRの特性が明確化される。
その測定結果は以下の実施例1〜6に示されている。
(実施例1)
実施例1は熱可塑性樹脂としてPEが用いられており、噴霧法でシラン化処理した球状Eガラス粉末とPEの重量配合率が40:60、50:50、60:40、70:30の4種類の水準のものを用いた。
上記した押出機の第1ホッパーよりPEとしてHI−ZEX 5100B(商品名:株式会社プライムポリマー製品)の重量を計量して60重量%を投入し、230℃で溶融状態にした中に、第2ホッパーより上記実施例の球状Eガラス粉末の重量を計量して溶融温度230℃と同じか、それに近似した温度に予熱した40重量%を投入して、230℃、スクリュー回転数200回/分で混練し、3mm径の棒状に押出し、水冷して長さ4mmに切断してペレット状とし実施例1の第1の水準の成形用組成物を得た。予熱温度は溶融温度230℃と同じであることが最も好ましく、(230℃±10%の温度)が好ましい。
以下同様に、HI−ZEX 5100B50重量%、球状Eガラス粉末50重量%の第2の水準の成形用組成物、HI−ZEX 5100B40重量%、球状Eガラス粉末60重量%の第3の水準の成形用組成物、HI−ZEX 5100B30重量%、球状Eガラス粉末70重量%の第4の水準の成形用組成物を得た。
次に、比較例1−1及び比較例1−2は、表2に示した条件で長さ4mmのペレットを得た。用いた樹脂は実施例1の樹脂と同じものである。
なお、以下に記載する他の5種類の熱可塑性樹脂(PP、PET、PS、ABS又はNy)に関して、前記6項目条件も同様に、項目の「樹脂」及び「第1ホッパー」に対象とする樹脂を記載して他の項目に記載する内容は同じであるので、上記5種類の熱可塑性樹脂ごとに6項目条件を表にして表すことは省略する。
ガラス配合率ごとの前記ペレットのMFRを230℃で測定した結果を表4に示す。
なお、表4における実施例1のPE(HI−ZEX 5100B)の熱可塑性樹脂100%のMFRは、0.25である。
図5は表4に示したガラス配合率(重量%)とMFRのデータに基づいて作成した、ガラス配合率とMFRの関係を2次多項式の近似曲線で示したグラフである。
このグラフにおいて□印は実施例1のMFRを、△印は比較例1−1のMFRを、×印は比較例1−2のMFRを示している。そして、これらの実施例1、比較例1−1及び比較例1−2のMFRの各曲線は、熱可塑性樹脂100%のMFR(以下、「100%MFR」という。)である0.25に対して、ガラス粉末の配合率が増加したときに各々のMFRがどの様な低減傾向になるかを示したものである。そして、PEの100%MFR(0.25)が1/2の値(以下、「1/2MFR」という。)である0.125の時のガラス配合率を示すために、各曲線との交点からX軸に向かって垂線が引かれている。
なお、1/2MFRのガラス配合率を求める理由は以下の表17の説明のときに述べる。
なお、以下に示す実施例2〜6、比較例2−1〜6−1及び比較例2−2〜6−2のグラフにおいて、□印は実施例を、△印は比較例1を、×印は比較例2を示しており、また、各曲線は、熱可塑性樹脂100%のMFR(以下、「100%MFR」という。)に対して、ガラス粉末の配合率が増加したときに各々のMFRがどの様な低減傾向になるかを示したものであるので、実施例2以降にはその説明を省略する。それと共に、1/2MFRの時のガラス配合率を示すために、各曲線との交点からX軸に向かって垂線が引かれていることの説明を省略する。
上記1/2MFRの時の比較例1−2、比較例1−1及び実施例1のガラス配合率を表5に示す。
(実施例2)
実施例2は熱可塑性樹脂としてPPが用いられており、噴霧法でシラン化処理した球状Eガラス粉末とPPの重量配合率が40:60、50:50、60:40及び70:30の4種類の水準のものを用いた。
上記した押出機の第1ホッパーよりPPとしてノバテックPP MA3(商品名:日本ポリプロ株式会社製品)の重量を計量して60重量%を投入し、220℃で溶融状態にした中に、第2ホッパーより上記実施例の球状Eガラス粉末の重量を計量して溶融温度220℃と同じか、それに近似した温度に予熱した40重量%を投入して、220℃、スクリュー回転数200回/分で混練し、3mm径の棒状に押出し、水冷して長さ4mmに切断してペレット状とし実施例2の第1の水準の成形用組成物を得た。予熱温度は溶融温度220℃と同じであることが最も好ましく、(220℃±10%の温度)が好ましい。
以下同様に、ノバテックPP MA3 50重量%、球状Eガラス粉末50重量%の第2の水準の成形用組成物、ノバテックPP MA3 40重量%、球状Eガラス粉末60重量%の第3の水準の成形用組成物、ノバテックPP MA3 30重量%、球状Eガラス粉末70重量%の第4の水準の成形用組成物を得た。
次に、比較例2−1及び比較例2−2は、表2に示した条件で長さ4mmのペレットを得た。用いた樹脂は実施例2の樹脂と同じものである。
ガラス配合率ごとの前記PPのペレットのMFRを220℃で測定した結果を表6に示す。
なお、表6における実施例2のPP(ノバテックPP MA3)の熱可塑性樹脂100%のMFRは、10.0である。
図6は表6に示したガラス配合率(重量%)とMFRのデータに基づいて作成した、ガラス配合率とMFRの関係を2次多項式の近似曲線で示したグラフである。
上記1/2MFRの時の比較例2−2、比較例2−1及び実施例2のガラス配合率を表7に示す。
(実施例3)
実施例3は熱可塑性樹脂としてPETが用いられており、噴霧法でシラン化処理した球状Eガラス粉末とPETの重量配合率が40:60、50:50、60:40及び70:30の4種類の水準のものを用いた。
上記した押出機の第1ホッパーよりPETとしてバイロンFN305(商品名;東洋紡株式会社製品)の重量を計量して60重量%を投入し、250℃で溶融状態にした中に、第2ホッパーより上記実施例の球状Eガラス粉末の重量を計量して溶融温度250℃と同じか、それに近似した温度に予熱した40重量%を投入して、250℃、スクリュー回転数200回/分で混練し、3mm径の棒状に押出し、水冷して長さ4mmに切断してペレット状とし実施例3の第1の水準の成形用組成物を得た。予熱温度は溶融温度250℃と同じであることが最も好ましく、(250℃±10%の温度)が好ましい。
以下同様に、バイロンFN305 50重量%、球状Eガラス粉末50重量%の第2の水準の成形用組成物、バイロンFN305 40重量%、球状Eガラス粉末60重量%の第3の水準の成形用組成物、バイロンFN305 30重量%、球状Eガラス粉末70重量%の第4の水準の成形用組成物を得た。
次に、比較例3−1及び比較例3−2は、表2に示した条件で長さ4mmのペレットを得た。用いた樹脂は実施例3の樹脂と同じものである。
ガラス配合率ごとの前記ペレットのMFRを250℃で測定した結果を表8に示す。 なお、表8における実施例3のバイロンFN305の熱可塑性樹脂100%のMFRは、20.0である。
図7は表8に示したガラス配合率(重量%)とMFRのデータに基づいて作成した、ガラス配合率とMFRの関係を2次多項式の近似曲線で示したグラフである。
上記1/2MFRの時の比較例3−2、比較例3−1及び実施例3のガラス配合率を表9に示す。
(実施例4)
実施例4は熱可塑性樹脂としてPSが用いられており、噴霧法でシラン化処理した球状Eガラス粉末とPSの重量配合率が40:60、50:50、60:40及び70:30の4種類の水準のものを用いた。
上記した押出機の第1ホッパーよりPSとしてGPPS HF77(商品名;PSジャパン株式会社製品)の重量を計量して60重量%を投入し、190℃で溶融状態にした中に、第2ホッパーより上記実施例の球状Eガラス粉末の重量を計量して溶融温度190℃と同じか、それに近似した温度に予熱した40重量%を投入して、190℃、スクリュー回転数200回/分で混練し、3mm径の棒状に押出し、水冷して長さ4mmに切断してペレット状とし実施例4の第1の水準の成形用組成物を得た。予熱温度は溶融温度190℃と同じであることが最も好ましく、(190℃±10%の温度)が好ましい。
以下同様に、GPPS HF77 50重量%、球状Eガラス粉末50重量%の第2の水準の成形用組成物、GPPS HF77 40重量%、球状Eガラス粉末60重量%の第3の水準の成形用組成物、GPPS HF77 30重量%、球状Eガラス粉末70重量%の第4の水準の成形用組成物を得た。
次に、比較例4−1及び比較例4−2は、表2に示した条件で長さ4mmのペレットを得た。用いた樹脂は実施例4の樹脂と同じものである。
ガラス配合率ごとの前記ペレットのMFRを190℃で測定した結果を表10に示す。
なお、表10における実施例4のGPPS HF77の熱可塑性樹脂100%のMFRは、7.5である。
図8は表10に示したガラス配合率(重量%)とMFRのデータに基づいて作成した、ガラス配合率とMFRの関係を2次多項式の近似曲線で示したグラフである。
上記1/2MFRの時の比較例4−2、比較例4−1及び実施例4のガラス配合率を表11に示す。
(実施例5)
実施例5は熱可塑性樹脂としてABSが用いられており、噴霧法でシラン化処理した球状Eガラス粉末とABSの重量配合率が40:60、50:50、60:40及び70:30の4種類の水準のものを用いた。
上記した押出機の第1ホッパーよりABSとしてサンタックUT−61(商品名;日本エイアンドエル株式会社製品)の重量を計量して60重量%を投入し、220℃で溶融状態にした中に、第2ホッパーより上記実施例の球状Eガラス粉末の重量を計量して溶融温度220℃と同じか、それに近似した温度に予熱した40重量%を投入して、220℃、スクリュー回転数200回/分で混練し、3mm径の棒状に押出し、水冷して長さ4mmに切断してペレット状とし実施例5の第1の水準の成形用組成物を得た。予熱温度は溶融温度220℃と同じであることが最も好ましく、(220℃±10%の温度)が好ましい。
以下同様に、サンタックUT−61 50重量%、球状Eガラス粉末50重量%の第2の水準の成形用組成物、サンタックUT−61 40重量%、球状Eガラス粉末60重量%の第3の水準の成形用組成物、サンタックUT−61 30重量%、球状Eガラス粉末70重量%の第4の水準の成形用組成物を得た。
次に、比較例5−1及び比較例5−2は、表2に示した条件で長さ4mmのペレットを得た。用いた樹脂は実施例5の樹脂と同じものである。
ガラス配合率ごとの前記ペレットのMFRを220℃で測定した結果を表12に示す。
なお、表12における実施例5のサンタックUT−61の熱可塑性樹脂100%のMFRは、30.0である。
図9は表12に示したガラス配合率(重量%)とMFRのデータに基づいて作成した、ガラス配合率とMFRの関係を2次多項式の近似曲線で示したグラフである。
上記1/2MFRの時の比較例5−2、比較例5−1及び実施例5のガラス配合率を表13に示す。
(実施例6)
実施例6は熱可塑性樹脂としてNyが用いられており、噴霧法でシラン化処理した球状Eガラス粉末とNyの重量配合率が40:60、50:50、60:40及び70:30の4種類の水準のものを用いた。
上記した押出機の第1ホッパーよりNyとしてナイロンA1030 BRF(商品名:ユニチカ株式会社製品)の重量を計量して60重量%を投入し、230℃で溶融状態にした中に、第2ホッパーより上記実施例の球状Eガラス粉末の重量を計量して溶融温度230℃と同じか、それに近似した温度に予熱した40重量%を投入して、230℃、スクリュー回転数200回/分で混練し、3mm径の棒状に押出し、水冷して長さ4mmに切断してペレット状とし実施例6の第1の水準の成形用組成物を得た。予熱温度は溶融温度230℃と同じであることが最も好ましく、(230℃±10%の温度)が好ましい。
以下同様に、ナイロンA1030 BRF50重量%、球状Eガラス粉末50重量%の第2の水準の成形用組成物、ナイロンA1030 BRF40重量%、球状Eガラス粉末60重量%の第3の水準の成形用組成物、ナイロンA1030 BRF30重量%、球状Eガラス粉末70重量%の第4の水準の成形用組成物を得た。
次に、比較例6−1及び比較例6−2は、表2に示した条件で長さ4mmのペレットを得た。用いた樹脂は実施例6の樹脂と同じものである。
ガラス配合率ごとの前記ペレットのMFRを230℃で測定した結果を表14に示す。
なお、表14における実施例6のナイロンA1030 BRFの熱可塑性樹脂100%のMFRは、4.3である。
図13は表14に示したガラス配合率(重量%)とMFRのデータに基づいて作成した、ガラス配合率とMFRの関係を2次多項式の近似曲線で示したグラフである。
上記1/2MFRの時の比較例6−2、比較例6−1及び実施例6のガラス配合率を表15に示す。
比較例1に関して、ガラス配合率20、30重量%の比較例球体を用いた比較例1−1〜6−1は、押出機で各樹脂に応じた最適な温度で混練して押出しを行い、温度が上昇する等の変化は生じなかったが、配合率40重量%の比較例球体を用いた比較例1−1〜比較例6−1は、温度が上昇する変化、例えば、PEでは10〜50℃の範囲で上昇する変化が見られた。
比較例2に関して、ガラス配合率20重量%の比較例球体を用いた比較例1−2〜比較例6−2は、温度が上昇する等の変化は生じなかったが、配合率30、40重量%の比較例球体を用いた比較例1−2〜6−2は、温度が上昇する変化と共に金属音の発生が見られた。特に40重量%の比較例球体の金属音は30重量%と比べてはるかに大きいものであった。
このことから、比較例1及び2の比較例球体は図5〜図13からみて、比較例球体のMFRが樹脂100%の1/2以下になると変化が生じていることが判る。
ところが、ガラス配合率60、70重量%の球状ガラス粉末を用いた実施例1〜6は、そのMFRが樹脂100%の1/2以下であるにも拘わらず、温度の変化も金属音の発生も見られなかった。このMFR1/2以下の実施例と比較例の差は、上述した4つの原因、第1の半溶融状態での流動性の急激な低下、第2の凝集ガラス粉末の存在、第3のガラス粉末の様々な形状とその平均粒径、そして、第4のガラスと熱可塑性樹脂の比熱の差、これらの4つの原因を、実施例は全て取り除くことができたことを実証している。
従って、このことは、4つの原因を取り除くために、第一の原因である固相と液相が混合した半溶融状態の発生に対して、熱可塑性樹脂が溶融状態になる位置に設けられた第2ホッパーからその領域にガラス配合率40〜70重量%の範囲のガラス粉末を投入すること、第二の原因である凝集ガラス粉末の存在に対して、噴霧法で個々のガラス粉末の表面をシラン化合物により全面的に被覆すること、第三の原因であるガラス粉末の様々な形状と分布幅が大きいことに対して、形状が球状であり、10〜40μmの平均粒径の分布幅が小さいガラス粉末を投入すること、そして、第四の原因である比熱の差が大きいことに対して、前記熱可塑性樹脂が溶融状態にある領域に予熱した40〜70重量%の範囲のガラス粉末を投入する、又は、溶融状態のペレットに大量のガラス粉末を投入する際に、従来から用いられている急激な温度低下を生じさせないために熱可塑性樹脂の溶融温度を上げて制御しておくことで、4つの原因を取り除くことができ、ガラス配合率40〜70重量%の範囲のガラス粉末を含有するガラス含有成形用ペレットの成形が可能となったことを示している。
そして、成形された前記ガラス含有成形用ペレットは、そのガラス粉末が、球状の形状であり、10〜40μmの平均粒径であり、その表面がシラン化合物により全面的に被覆されており、該ガラス含有成形用ペレット中に40〜70重量%の範囲のガラス配合率で、独立して均一に分散されている状態で含有されていることを見出した。
更に、上記6種類の実施例で示された製造方法の記載からみて、熱可塑性樹脂中に40〜70重量%の範囲のガラス配合率でガラス粉末を含有するガラス含有成形用ペレットを成形するには、ガラス繊維の粉砕物を高温火炎中に噴霧して球状化し、シラン化合物を含む水を噴射してシラン化合物に被覆された球状ガラス粉末を得て、重量を計量した熱可塑性樹脂を前記押出機内に投入して溶融して、ガラス配合率40〜70重量%の範囲の前記球状ガラス粉末を計量して予熱し、前記熱可塑性樹脂が溶融状態にある領域に、前記予熱した球状ガラス粉末を前記押出機内に投入し混練して押出せばよい。
なお、上記実施例では、押出機内に投入する球状のガラス粉末を溶融温度と同じか、それに近似した温度に予熱する最良の実施形態の例を示したが、本発明はこの例に限定されるものではなく、従来のペレットの成形に用いられている溶融温度(加温、冷却)、スクリュー速度等の制御により成形されたガラス含有成形用ペレットも、本発明のガラス含有成形用ペレットに含まれるものである。
次に、6種類の実施例の有する特性であるMFRについて説明する。
6種類の、球状Eガラス粉末を含有する組成物の実施例、及び、比較例球体を含有する組成物の比較例、この両者のガラス配合率とMFRの関係を図5〜図10のグラフに示したが、この両者のグラフを対比すると、6種類の実施例のグラフは、前記MFRがガラス配合率の増加に伴い100%熱可塑性樹脂のMFRを頂点とする放物線を示しており、100%MFRの1/2の値がガラス配合率50〜60重量の範囲にあるのに対して、6種類の比較例1及び2のグラフは、前記MFRがガラス配合率の増加に伴い100%熱可塑性樹脂のMFRを頂点とする下方へ傾斜するほぼ直線を示しており、比較例1と比較例2の熱可塑性樹脂100%のMFRの1/2の値が、比較例1ではガラス配合率30〜40重量%の範囲にあり、比較例2ではガラス配合率20〜30重量%の範囲にあることを示している。
従って、6種類の実施例は、前記MFRがガラス配合率の増加に伴い100%熱可塑性樹脂のMFRを頂点とする放物線を示しており、ガラス配合率40〜50重量%の範囲において、100%MFRの1/2以上の値であり、ガラス配合率50〜60重量%の範囲において、100%MFRの1/2の値から1/2以下の値に変わることを示している。
比較例1は前記MFRがガラス配合率の増加に伴い100%熱可塑性樹脂のMFRを頂点とする下方へ傾斜するほぼ直線を示しており、ガラス配合率30〜40重量%の範囲において、100%MFRの1/2以上の値から1/2以下の値に変わることを示し、比較例2は前記MFRがガラス配合率の増加に伴い100%熱可塑性樹脂のMFRを頂点とする下方へ傾斜するほぼ直線を示しており、ガラス配合率20〜30重量%の範囲において、100%MFRの1/2以上の値から1/2以下の値に変わることを示している。
実施例1〜6のグラフは、比較例のグラフよりガラス配合率の増加に伴うMFRの低下挙動が緩やかであることを示しており、このことは、製造工程で球状ガラス粉末の配合量が仮に変動しても、それに起因するMFRの変動が小さいことが判る。従って、ガラス含有成形用ペレットの製造工程においても品質管理上、有利であることがこれらのグラフで示されている。
次に、上記実施例1〜6に示した熱可塑性樹脂ごとの1/2MFRの時の比較例2、比較例1及び実施例のガラス配合率を6種類の熱可塑性樹脂の全てをまとめて表16に示す。
表16が示す比較例と実施例のMFRからみて、1/2MFRの時の比較例2のガラス配合率は24〜28重量%の範囲にあり、その時の比較例1のガラス配合率は32〜36重量%の範囲にあり、そして、その時の実施例のガラス配合率は53〜57重量%の範囲にあることから、比較例2は、前記MFRが1/2の値である時に、ガラス配合率24〜28重量%と非常に少ない範囲にあることを示し、比較例1は、その時にガラス配合率32〜36重量%と比較例2より僅かながら多い範囲にあることを示しているが、上記実施例1〜6は、その時に、そのガラス配合率が53〜57重量%と比較例2の約2倍、比較例1の約1.6倍の大量のガラス配合率の範囲にあることを見出した。
上述した前記熱可塑性樹脂の1/2MFRは、ガラス配合率の増加に伴うガラス含有成形用ペレットのMFRの特性を把握するのに有用である。
実施例1〜6の熱可塑性樹脂100%のMFR、ガラス配合率40、50、60、70重量%の5点のMFRを表17に示した。図11は表17の5点のデータに基づいて計算された2次多項式の近似曲線を示し、実施例1〜6のガラス含有成形用ペレットにおけるガラス配合率とMFRの関係を示したグラフである。このグラフはガラス配合率の増加に伴って各熱可塑性樹脂100%のMFRが漸減する傾向を示しているが、そのMFRの大きいABS(30.0)及びPET(20.0)は他の樹脂と比べて放物線を描きながら漸減する傾向が大きく、MFRが10.0であるPPは、放物線を描きながら漸減する傾向がなだらかであることが示されている。MFRが0.25〜7.5の範囲にあるPS、Ny及びPEは、PPより漸減する傾向がよりなだらかである。
実施例1〜6は、図11のグラフからガラス配合率の増加に伴って漸減するMFRが放物線上の値を示していることが判るが、ガラス配合率40、50、60及び70重量%の各増加に伴って、そのMFRが熱可塑性樹脂100%のMFRに対して、どの程度低下しているかを示す定量的な数値としてのMFRの低下割合が、例えば、ガラス配合率70重量%のガラス含有成形用ペレットのMFRの低下割合が求められれば、押出機を長時間に渡って運転し続けた場合、どの程度のMFRの低下割合でスクリューが破損を起こす等のトラブルの発生を防げるかが事前に分かる。
また、地球温暖化問題及び石油資源の枯渇問題を解決するためには、大量の球状ガラス粉末を配合すればする程効果的であるが、ガラス含有成形用ペレットをブロー成形法、射出成形法、押出成形法等で成形した成形体を大量生産化することを考えると、MFRの低下割合を求めることで如何なる成形法でも成形し易いガラス配合率を検討する必要がある。
そして、ガラス配合率の値とMFRの低下割合との相互の関係が分かれば、選定した熱可塑性樹脂のMFRに応じてガラス配合率を容易に決定することが可能になる。例えば、PEを選定してガラス含有成形用ペレットを成形する場合、PEの100%のメルトフローレートが0.25と小さい値であるから、MFRの低下割合を0.6に抑えて成形するのに、必要なガラス配合率の値を容易に決定できれば便利である。
そこで、最初に、熱可塑性樹脂に対してガラス配合率の増加に伴うMFRの低下割合の求め方を説明する。
上述したように、上記実施例1〜6に示した熱可塑性樹脂ごとの1/2MFRの時の比較例2、比較例1及び実施例のガラス配合率を表16に示したが、この熱可塑性樹脂の1/2MFRは、熱可塑性樹脂100%に配合する球状ガラスの増加により、ガラス含有成形用ペレットのMFRが熱可塑性樹脂100%の1/2の値になるガラス配合率を示している。例えば、PEは57重量%、PPは54重量%のガラス配合率の時に熱可塑性樹脂100%の1/2の値を示す。このことから、表17の実施例1〜6のガラス配合率40、50、60、70重量%のMFRを熱可塑性樹脂100%のMFRで割った値、即ち、ガラス配合率の増加により熱可塑性樹脂100%のMFRがどの程度低下しているかを示すMFRの低下割合を意味している。
そこで、表17で示した実施例1〜6のガラス配合率40、50、60、70重量%のMFRを熱可塑性樹脂100%のMFRで割った値を「メルトフローレート低下割合」(以下、「MFR低下割合」という。)と定義してその値を求めた。その求めた結果を表18に示す。表16は1/2MFRの時に示すガラス配合率の値を表しているが、表18はガラス配合率が40、50、60、70重量%の時に示すMFR低下割合の値を表しているために、MFR低下割合がガラス配合率ごとに異なった範囲を示していることに留意されたい。
図12は表18の5点のデータに基づいて計算された6種類の実施例1〜6に関するMFR低下割合の2次多項式の近似曲線、いわゆる放物線を示し、実施例1〜6のガラス含有成形用ペレットにおけるMFR低下割合とガラス配合率の関係を示したグラフである。例えば、ABSはy=−1.9686x+0.136x+0.9982、PPはy=−1.31x−0.2218x+0.9997、そして、PSはy=−0.5147x−0.7046x+1.0017の式で表され、これらの式は放物線を示すものである。 図12のグラフはx軸がガラス配合率(重量%)を、y軸がMFR低下割合を示している。6種類の実施例1〜6は100%時のMFRが6種類の固有の値(0.25〜30.0)を有しているが、何れの実施例1〜6であっても、MFR低下割合が、図12に示すようにガラス配合率の増加に伴って漸減し続けていること、そして、各ガラス配合率に対して示す6種類のMFR低下割合は、分散することなく0.10〜0.17の狭い範囲に集中していることが分かる。具体的には、各ガラス配合率のMFR低下割合の最大値と最小値の差を示すと、ガラス配合率40重量%の最大値が0.75、最小値が0.65であり、その差は0.10、ガラス配合率50重量%の最大値が0.62、最小値が0.52であり、その差は0.10、ガラス配合率60重量%の最大値が0.48、最小値が0.37であり、その差は0.11、そして、ガラス配合率70重量%の最大値が0.28、最小値が0.11であり、その差は0.17の範囲に実験データが存在している。
このMFR低下割合の最大値と最小値の差が上記の狭い範囲内にあることから、ガラス配合率の増加により熱可塑性樹脂の種類に関係なく、例えば、結晶高分子であるPE、PP、PET等、非結晶高分子であるPSの融点、ガラス転移点の相違による弾性率の相違に関係なく、同じような傾向でMFR低下割合が漸減していることを示している。
表19は表18のガラス配合率40重量%、50重量%、60重量%、そして70重量%に対するMFR低下割合の最大値と最小値を示す表である。
次に、上述したどの程度のMFRの低下割合でスクリューが破損を起こす等のトラブルの発生の防止が可能か、また、どの程度のMFRの低下割合で如何なる成形法でも成形し易い成形体が得られるかを説明する。
表18はガラス配合率40重量%のMFR低下割合が0.65〜0.75の範囲にあることを示している。ガラス配合率40重量%で最大値である実施例3の0.75は3/4であるから、ガラス配合率40重量%のMFR低下割合は実施例3の3/4が最大値で実施例4の0.65が最小値である。また、ガラス配合率50重量%のMFR低下割合が0.52〜0.62の範囲に、そして、ガラス配合率60重量%のMFR低下割合が0.37〜0.48の範囲にある。そして、上記1/2MFRはMFR低下割合が1/2であることと同意であり、上述したようにガラス配合率53〜57重量%の範囲で示す値であるから、その範囲で最小値であるガラス配合率53重量%の実施例は、表16から実施例4(PS)及び実施例6(Ny)がそれに相当しているが、他の実施例である実施例1(PE)、実施例2(PP)、実施例3(PET)及び実施例5(ABS)は、MFR低下割合が1/2以上の値である。
以上のことから、ガラス配合率の増加に伴って漸減するMFRが、ガラス配合率40〜52重量%の範囲でMFR低下割合が3/4〜1/2未満以上の範囲の値を示すといえる。ここで、1/2未満以上は1/2の値が含まれないことに留意されたい。
そして、上記したように、実施例1〜6は前記ガラス配合率53〜57重量%の範囲で、MFR低下割合1/2の値を示すが、ガラス配合率53重量%の実施例4(PS)及び実施例6(Ny)はMFR低下割合1/2であるが、他の4種類の実施例、実施例1(PE)及び実施例3(PET)は、ガラス配合率57重量%でMFR低下割合1/2を示し、実施例2(PP)及び実施例5(ABS)は、ガラス配合率54重量%でMFR低下割合1/2を示すことから、前記ガラス配合率53〜57重量%の範囲では、実施例4及び実施例6は1/2の値、1/2以下の値を、実施例2及び実施例6は、1/2の値〜1/2以下の値を、そして、実施例1及び実施例3は1/2以上の値〜1/2の値を示している。このことから、実施例1〜6は前記ガラス配合率53〜57重量%の範囲では、1/2以上の値、1/2の値及び1/2以下の値の内、1/2の値を含む少なくとも二つの値を示しているといえる。
ところで、実施例1〜6の組成物をブロー成形法、射出成形法、押出成形法等で成形して、成形体を大量生産化することを考えると、MFRの低下割合は少ない方が良いが、地球温暖化問題及び石油資源の枯渇問題を考えると、ガラス配合率が高い方が良いこととなる。この両者のバランスを考えると、MFRの低下割合1/2は、実施例1〜6がガラス配合率53〜57重量%の範囲にあることから、両者のバランスを取るのに最適な値である。
ところで、MFR低下割合1/2の半分であるMFR低下割合1/4の値を示すガラス配合率は、ガラス配合率70重量%の実施例3(PET)がそれに相当し、ガラス配合率70重量%の実施例の内で最小の値を示す実施例5(ABS)は、ガラス配合率64重量%の時にMFR低下割合1/4の値を示していることから、他の実施例はガラス配合率64重量%の時にMFR低下割合が1/4以上の値を示すことは明らかである。そして、実施例1〜6はガラス配合率53〜57重量%の範囲では、1/2の値を示すことは既述したとおりである。それ故に、前記ガラス配合率58〜64重量%の範囲では、実施例1〜6は、MFR低下割合が1/2未満以下〜1/4の範囲の値を示すといえる。MFR低下割合1/4は、ガラス配合率70重量%の実施例3(PET)が示す値であるが、実施例3のMFRは、図11が示すように他の樹脂と比べて放物線を描きながら漸減する傾向が大きく、ガラス配合率70重量%以上になるとMFRが極端に低下することから、前記MFR低下割合は、1/4以上の範囲内にあるガラス含有成形用ペレットを用いることが重要である。MFR低下割合1/4以下のガラス含有成形用ペレットを成形する場合にトラブルが発生する虞があり、その組成物を用いて成形体を成形する際にもトラブルが発生する虞がある。従って、1/4以上の範囲内のガラス含有成形用ペレットを用いることで、工業的に長時間に亘る大量生産を行った場合に、スクリューが破損を起こす等のトラブルの発生を未然に防止でき、その組成物で成形体を成形する際にもトラブルの発生の虞がない。
以上のことから、本発明のガラス含有成形用ペレットは、ガラス配合率40重量%で前記熱可塑性樹脂100%のMFR低下割合の3/4の値又は3/4以下の値を示し、ガラス配合率64重量%で1/4の値又は1/4以上の値を示すこと、そして、ガラス配合率40〜52重量%の範囲で3/4〜1/2未満以上の範囲の値を示し、ガラス配合率が53〜57重量%の範囲で1/2の値を示し、ガラス配合率58〜64重量%の範囲で1/2未満以下〜1/4の範囲の値を示すことを見出した。
このことから、MFR低下割合は、3/4、1/2(2/4)及び1/4が熱可塑性樹脂100%に配合するガラス配合率40重量%、53〜57重量%及び64重量%に対応していること、そして、これらのガラス配合率が技術的に意味のある値であることを見出した。
以上のことを換言すれば、本発明のガラス含有成形用ペレットは、ガラス配合率40〜70重量%の範囲において成形することが可能ではあるが、スクリューが破損を起こす等のトラブルの発生を未然に防止することを考えると、MFR低下割合が1/4以上であるガラス配合率64重量%以内で成形することが好ましく、また、ガラス含有成形用ペレット及びそれから成形する成形体を大量生産化すること、及び、地球温暖化問題及び石油資源の枯渇問題を軽減することを考えると、MFR低下割合が1/2(2/4)であるガラス配合率53〜57重量%で成形することがより好ましい。
図13は表19で示した各ガラス配合率に対するMFR低下割合の最大値と最小値の各5点のデータにより得られた第2次多項式の近似曲線で、実施例1〜6のガラス含有成形用ペレットにおけるMFR低下割合とガラス配合率の関係において、最大値と最小値を2本の2次曲線で近似したグラフである。このグラフにおいて○印はMFR低下割合の最大値を、X印はMFR低下割合の最小値を示している。
最大値の近似曲線は以下に示す式(1)の通りであり、最小値の近似曲線は以下に示す式(2)の通りである。ここで、xはガラス配合率(0.4≦x≦0.7)を、yはMFR低下割合を示している。
y=−1.3418x−0.0803x+0.9994 (1)
y=−1.3954x−0.2632x+0.9974 (2)
式(1)及び式(2)は、熱可塑性樹脂100%に配合する各ガラス配合率に対するMFR低下割合の最大値と最小値から得られた放物線を示すもので、ガラス配合率40重量%〜70重量%の範囲における、何れのガラス配合率に対するMFR低下割合は、式(1)及び式(2)で記述される値の範囲内にあることを意味している。
大量の球状ガラス粉末と熱可塑性樹脂を混練して押し出してガラス含有成形用ペレットを製造する工程、そして、そのガラス含有成形用ペレットが有するMFRは、以上述べた通りである。
次に、熱可塑性樹脂としてPE、PP、PET、ABS、PS及びNyを用いて球状Eガラス粉末を含有する6種類のガラス含有成形用ペレットを用いて射出成形法でガラス含有射出成形品を製造する製造方法を以下に説明する。なお、前記6種類のガラス含有成形用ペレットは、上述した製造方法で得たものを用いているのでその製造方法を省略する。
なお、射出成形法は、ペレットを加熱溶融して可塑化したペレットを金型に射出して冷却し、その後に金型から冷却した射出成形品を取り出す方法で、押出すことは押出成形と類型にあるが、押出成形ではスクリューを止めずに連続的に押出すが、射出成形では溶融樹脂の供給と計量が終了するとスクリューの回転が一時的に停止し、スクリューがプランジャとして前後に移動し、金型内に溶融樹脂が射出注入される点が異なり、食品、飲料、液体洗剤、トイレタリー、化粧品、医薬品などの容器の製造に主に適用されているが、工業製品の成形にも使用されている。その主なものとしては、自動車部品の射出成形法が挙げられる。
(ガラス含有射出成形品の製造方法)
(実施例)
熱可塑性樹脂を射出成形法で成形するのに各種の樹脂を使用することができるが、射出成形品に多量に使用されている熱可塑性樹脂としては、PE、PP、PET、PS、ABS及びNyが挙げられる。
以下に示す実施例と比較例の実験データは、PE、PP、PET、PS、ABS及びNyの6種類の樹脂を対象としている。実施例は、上記した噴霧法でシラン化処理した球状Eガラス粉末と3種類の樹脂のうち一つの樹脂の重量配合率が40:60、50:50、60:40、70:30の4種類の水準のものを用いており、その重量配合率における成形収縮率及び熱伝導率の実験データが以下に示されている。
(比較例)
比較例は上記した6種類の熱可塑性樹脂100重量%の射出成形品(以下、「100重量%射出成形品」という。)を用いた。
6種類の熱可塑性樹脂、PE、PP、PET、PS、ABS及びNyを上記実施例1〜6に示したガラス含有成形用ペレットの製造方法で成形して、上記したガラス含有射出成形品の製造方法と同じ方法で、100重量%射出成形品を成形して6種類の比較例を得た。
なお、上記6種類の比較例の有する物性である成形収縮率及び熱伝導率の測定結果は、100重量%射出成形品が0重量%射出成形品と同じ意味であるので、以下に示す表のガラス配合率「0」の欄に記載されている。
(実施例11)
実施例11は熱可塑性樹脂としてPEが用いられており、得られたガラス含有成形用ペレットを80℃で2時間乾燥して、射出成形機に投入し240℃で溶融して金型温度80℃、押出圧力を800Kg/cm、冷却時間を30秒として、幅10mm×長さ170mm×厚さ4mmのダンベル状試験片を射出成形した。
(実施例21)
実施例21は熱可塑性樹脂としてPPが用いられており、得られたガラス含有成形用ペレットを80℃で2時間乾燥して、射出成形機に投入し240℃で溶融して金型温度80℃、押出圧力を1000Kg/cm、冷却時間を30秒として、幅10mm×長さ170mm×厚さ4mmのダンベル状試験片を射出成形した。
(実施例31)
実施例31は熱可塑性樹脂としてPETが用いられており、得られたガラス含有成形用ペレットを100℃で5時間乾燥して、射出成形機に投入し250℃で溶融して金型温度80℃、押出圧力を800Kg/cm、冷却時間を30秒として、幅10mm×長さ170mm×厚さ4mmのダンベル状試験片を射出成形した。
(実施例41)
実施例41は熱可塑性樹脂としてPSが用いられており、得られたガラス含有成形用ペレットを110℃で4時間乾燥して、射出成形機に投入し260℃で溶融して金型温度10℃、押出圧力を1000Kg/cm、押出圧力を1200Kg/cm、冷却時間を20秒として、幅10mm×長さ170mm×厚さ4mmのダンベル状試験片を射出成形した。
(実施例51)
実施例51は熱可塑性樹脂としてABSが用いられており、得られたガラス含有成形用ペレットを80℃で2時問乾燥して、射出成形機に投入し230℃で溶融して金型温度80℃、押出圧力を1200Kg/cm、冷却時間を30秒として、幅10mm×長さ170mm×厚さ4mmのダンベル状試験片を射出成形した。
(実施例61)
実施例61は熱可塑性樹脂としてNyが用いられており、得られたガラス含有成形用ペレットを80℃で2時間乾燥して、射出成形機に投入し230℃で溶融して金型温度80℃、押出圧力を800Kg/cm、冷却時間を30秒として、幅10mm×長さ170mm×厚さ4mmのダンベル状試験片を射出成形した。
次に、該ガラス含有成形用ペレットを用いて射出成形法により得られたガラス含有射出成形品の物性として成形収縮率及び熱伝導率を以下に説明する。
実施例11〜61のガラス含有射出成形品の物性として、上記した物性以外にヤング率、引張強さ、圧縮強さ、曲げ強さ等の物性は重要であるが、上記6種類の熱可塑性樹脂中に球状ガラス粉末を40〜70重量%含有したガラス含有射出成形品の各種の物性を調べて分析した結果、成形収縮率及び熱伝導率は、ガラス配合率が増加するに伴って熱可塑性樹脂100重量%が有する固有の物性と無関係に向上する結果が得られたので、この成形収縮率及び熱伝導率の物性の測定を行った。
上記6種類のガラス含有射出成形品及び100重量%射出成形品の物性として成形収縮率及び熱伝導率の測定は次のようにして行った。
(成形収縮率の測定)
幅60mm×長さ80mm×厚さ1.5mmの板状の蓋の内面中央に径50mm、高さ3mmの嵌合部を設け、板状の長さ方向の端より7mmの位置に開閉用切り込みを設けた金型を用いて、溶融状態の熱可塑性樹脂組成物100重量%及びガラス含有成形用ペレットであるペレットを射出して冷却し、その後に金型から冷却された射出成形品を取り出して、上記金型の長さ80mmの寸法に対応する射出成形品の長さの寸法を測定して体積を計測して下記の如く成形収縮率(X)を求めた。
X=(A−B/A)×100(%)
(A;金型の長さ、B;射出成形品の長さ)
(熱伝導率の測定)
幅50mm×長さ100mm×厚さ3mmの試験片を射出成形し、直径50mm、厚さ3mmの円盤状試験片を作成して、ASTM E1530に基づき熱伝導測定装置(GH1;アルパック理工(株)製)を用いて熱伝導率を測定した。
(成形収縮率の測定結果)
次に、ガラス配合率が0重量%である比較例1〜6の成形収縮率、及び、実施例11〜61の40、50、60及び70重量%の成形収縮率は表20に示す通りである。
図14は表20に示した6種類のガラス含有射出成形品のガラス配合率(重量%)をx軸に、成形収縮率をy軸にプロットして、得られた5点を基にして直線の近似式で表したグラフである。
図14に示す各印は◇印がPEを、同様に、□印がPPを、×印がPETを、〇印がPSを、*印がABSを、△印がNyを示している。
図14のグラフは、各ガラス含有射出成形品の成形収縮率がガラス配合率の増加に伴って、漸減していることを示しているので、ガラス配合率の増加によって成形収縮率が小さくなり改善されていることが分かる。そして、重なり合っている□印のPPと△印のNyのグラフ、重なり合っている*印のABSと○印のPSのグラフ、◇印のPEのグラフ、そして、X印のPETのグラフは、それぞれの勾配が異なっていることを示している。
この勾配の違いは、各熱可塑性樹脂100重量%が本来有する各固有の成形収縮率の値、例えば、ABS及びPSの0.6%、PEの3.0%等の値によって生じていると考え、各100重量%射出成形品が有する固有の成形収縮率から、各ガラス配合率のガラス含有射出成形品の成形収縮率を引いた値を、該固有の成形収縮率で割った値を計算してその値に1を加えた値を求めた。その求めた値を「成形収縮率改善指標」と定義する。
固有の成形収縮率をa、ガラス含有射出成形品の成形収縮率をbとすれば、成形収縮率改善指標を求める式は、1+(a−b)/aである。例えば、PEを例に取れば、PE100重量%の射出成形品の固有の成形収縮率は3.0%であり、ガラス配合率0重量%の射出成形品の成形収縮率も3.0%であるから、その成形収縮率改善指標は1であり、ガラス配合率40重量%の射出成形品の成形収縮率改善指標は、1+(3.0−2.0)/3.0=1.33が得られ、以下同様に、50重量%は1.47が得られ、60重量%は1.53が得られ、70重量%は1.63が得られる。この例から分かるように、PE100重量%の射出成形品の成形収縮率改善指標は1であるので、ガラス配合率40重量%の射出成形品の改善指標の1.33は、成形収縮率3.0%のPE100重量%の射出成形品がガラス配合率40重量%の配合で、成形収縮率が少なくなるように抑制されることにより、本来3.0%の収縮が生じる100重量%の射出成形品が1.33倍に成形収縮率を改善することを意味している。
その得られた結果を表21に示した。
図15Aは表21のデータに基づいてガラス配合率と成形収縮率改善指標の関係を示したグラフである。
x軸のガラス配合率(重量%)に対して前記成形収縮率改善指標をy軸にプロットしてグラフを描いたところ、その描かれた6種類のグラフは、熱可塑性樹脂の種類と無関係に、ほとんど同じ形状のものが描かれた。その描いたグラフが図15Bの直線の近似式である。PEの直線の近似式はy=0.009x+0.9948、PP及びNyの直線の近似式はy=0.0089x+1.0082、PETの直線の近似式はy=0.009x+0.9941、PS及びABSの直線の近似式はy=0.0097x+0.9884であるので、実施例11〜61の式は成形収縮率改善指標の漸増する傾向が同じであることを示している。
そこで、これらの直線の近似式は、実験データが有する誤差を考慮すれば、ガラス配合率の増加に伴って同じ勾配で漸増していると考えられるので、表21に示した各ガラス配合率の成形収縮率改善指標の値を合計して平均値を求め、その求めた5点の平均値から得られた式は、y=0.009x+0.997であった。この式の係数及び常数は小数点第4位を四捨五入して得た式(4)を以下に示す。
y=0.009x+0.997 (4)
ここで、xはガラス配合率の必要量(40≦x≦70)で、yは成形収縮率改善指標である。
図15Bは実施例11〜61のガラス含有射出成形品のガラス配合率と平均値の成形収縮率改善指標の関係を示したグラフで、式(4)(以下、「平均値の式(4)」という。)を表している。この平均値の式(4)は、ガラス含有射出成形品は、PE、PP、PET、PS、ABS及びNyの樹脂に関係なく、ガラス配合率の増加に伴って成形収縮率改善指標が漸増していることを示している。
比較例1〜6の射出成形品は成形収縮率改善指標が1であるので、上記平均値の式(4)は、ガラス配合率の増加に伴ってガラス含有射出成形品が樹脂100%射出成形品と比べて、どの程度の割合で成形収縮率が漸増するか理解できる。換言すれば、図15Bの成形収縮率改善指標を示すグラフは、樹脂100%射出成形品と比べてガラス含有射出成形品のガラス配合率が分かれば、該ガラス含有射出成形品の成形収縮率を、樹脂100%射出成形品と比べて、どの程度の割合で漸増できるかを示すもので、成形収縮率を減少できる割合を容易に決定できる。逆に、製造する製品に要求される成形収縮率が決められている場合には、前記グラフはその決められている成形収縮率から、ガラス含有成形用ペレットの必要なガラス配合率を示すもので、ガラス配合率の必要量が容易に決定できる。
上記平均値の式(4)のxにガラス配合率の最小値40、最大値70重量%を代入して計算すれば、ガラス配合率の増加に伴って、成形収縮率改善指標が1.36から1.63(小数点第3位を四捨五入)に漸増されることが分かる。
そして、表21の実験データから計算された成形収縮率改善指標の値は、実験データが有する誤差のために、上記の平均値の式(4)のxにガラス配合率を代入して得られる成形収縮率改善指標と異なる値が示されているが、この実験データがガラス配合率40、50、60及び70重量%毎にどの位の誤差の範囲にあるか計算を行ってみた。ガラス配合率40重量%で誤差が+1.4〜−2.2%、50重量%で誤差が+3.4〜−0.7%、60重量%で誤差が+5.2〜−0.6%、そして、70重量%で誤差が+2.5〜−1.2%であることから、実験により得られたガラス含有射出成形品の成形収縮率改善指標は、+5.2〜−2.2%の誤差の範囲にあることが判った。
このことを換言すれば、ガラス配合率の増加に伴って成形収縮率改善指標の示す値が、上記の平均値の式(4)に沿って漸増して改善されることを示している。それ故に、「平均値の式(4)に沿って漸増」の用語は誤差を含めた値と定義して用いるので、該用語は誤差を含めた値を意味していることに注意されたい。
熱可塑性樹脂を射出成型法で成形した射出成形品は、従来から各樹脂固有の成形収縮率で生じるひけやそりの成形歪があるために、例えば嵌合が必要な容器である化粧用容器等は成形収縮率の小さいABS100重量%(0.6%)を用いて射出成形品を成形しているが、成形収縮率の大きいPP100重量%(1.3%)にガラス配合率60重量%を含有すれば、成形収縮率がABSと同じ0.6になることから、ガラス含有率60重量%のPPは、この様な用途の製品に代替ができるので、上記化粧用容器等の製品の材料コストの削減や60重量%の樹脂の節減をすることができる。
(熱伝導率)
ガラス配合率が0重量%である比較例1〜6の熱伝導率、及び、実施例11〜61の40、50、60及び70重量%の熱伝導率は表22に示す通りである。
図16は表22に示した6種類のガラス含有射出成形品のガラス配合率(重量%)をx軸に、熱伝導率をy軸にプロットして得られた5点を基にして直線の近似式で表したグラフである。
この6種類の直線の近似式で表したブラフは、ガラス配合率の増加に伴って熱伝導率が漸増して改善されていることを示している。なお、に示す各印は図14の説明の時に記載した内容と同じであるので省略する。
そこで、本発明者は、上述した成形収縮率と同様に、各100重量%射出成形品が有する固有の熱伝導率の値で、各ガラス配合率のガラス含有射出成形品の有する熱伝導率を割って得られた値を計算した。
上記の割って得られた値は、前記各100重量%射出成形品の固有の熱伝導率がガラス配合率の増加により改善される割合を意味しているので、「熱伝導率改善指標」と定義する。従って、比較例1〜6のガラス配合率0重量%(熱可塑性樹脂100重量%)の各熱可塑性樹脂の射出成形品は、その熱伝導率改善指標が1である。
例えば、PSを例にその計算の仕方を説明すれば、PS100重量%の射出成形品の熱伝導率は0.201W/m・Kであるから、ガラス配合率40重量%の固有の熱伝導率は0.301/0.201=1.49が得られ、以下同様に、50重量%は1.64が得られ、60重量%は1.74が得られ、70重量%は1.92が得られる。その得られた値を表23に示す。
表23は100重量%射出成形品の熱伝導率改善指標に対して、ガラス配合率50重量%の射出成形品の熱伝導率改善指標は1.6倍以上に、そして、ガラス配合率70重量%の射出成形品の引張弾性率改善指標は約1.9倍以上に向上することを示している。このことは、汎用性樹脂であるPP、Ny、ABS及びPETで成形された射出成形品は、ガラス配合率を増やすことで、本来の樹脂の性能として有していない熱伝導率を備えることができ、熱可塑性樹脂100重量%の用途の製品が必要とする熱伝導率をガラス配合率の変更によって、それと近似の熱伝導率を有する射出成形品を製造できることが判る。
図17Aは表21のデータに基づいてガラス配合率と熱伝導率改善指標の関係を示したグラフである。
x軸のガラス配合率(重量%)に対して前記熱伝導率改善指標をy軸にプロットしてグラフを描いたところ、その描かれた6種類のグラフは、熱可塑性樹脂の種類と無関係に、ほとんど同じ形状のものが描かれた。その描いたグラフが図17Aの直線の近似式である。PEの直線の近似式はy=0.0125x+0.9922、PPの直線の近似式はy=0.0133x+0.9905、PETの直線の近似式はy=0.0136x+1.0029、PSの直線の近似式はy=0.0129x+0.9908、ABSの直線の近似式はy=0.0132x+0.9962、そして、Nyの直線の近似式はy=0.0132x+0.991であるので、実施例11〜61の式は熱伝導率改善指標の漸増する傾向が同じであることを示している。
そこで、これらの直線の近似式は、実験データが有する誤差を考慮すれば、ガラス配合率の増加に伴って同じ勾配で漸増していると考えられるので、表21に示した各ガラス配合率の熱伝導率改善指標の値を合計して平均値を求め、その求めた5点の平均値から得られた式は、y=0.0131x+0.994であった。ここで、xはガラス配合率の必要量(40≦x≦70)で、yは熱伝導率改善指標である。上記式を式(5)として以下に示す。
y=0.009x+0.997 (5)
図17Bは実施例11〜61のガラス含有射出成形品のガラス配合率と平均値の熱伝導率改善指標の関係を示したグラフで、式(5)(以下、「平均値の式(5)」という。)を表している。この平均値の式(5)は、ガラス含有射出成形品は、PE、PP、PET、PS、ABS及びNyの樹脂に関係なく、ガラス配合率の増加に伴って熱伝導率改善指標が漸増していることを示している。
比較例1〜6の射出成形品は熱伝導率改善指標が1であるので、上記平均値の式(5)は、ガラス配合率の増加に伴ってガラス含有射出成形品が樹脂100%射出成形品と比べて、どの程度の割合で熱伝導率が漸増するか理解できる。換言すれば、図17Bの熱伝導率改善指標を示すグラフは、樹脂100%射出成形品と比べてガラス含有射出成形品のガラス配合率が分かれば、該ガラス含有射出成形品の熱伝導率を、樹脂100%射出成形品と比べて、どの程度の割合で漸増できるかを示すもので、熱伝導率を増加する割合を容易に決定できる。逆に、製造する製品に要求される熱伝導率が決められている場合には、前記グラフはその決められている熱伝導率から、ガラス含有成形用ペレットの必要なガラス配合率を示すもので、ガラス配合率の必要量が容易に決定できる。
上記平均値の式(5)のxにガラス配合率の最小値40、最大値70重量%を代入して計算すれば、ガラス配合率の増加に伴って、熱伝導率改善指標が1.52から1.91(小数点第3位を四捨五入)に漸増されることが分かる。
そして、表21の実験データから計算された熱伝導率改善指標の値は、実験データが有する誤差のために、上記の平均値の式(5)のxにガラス配合率を代入して得られる熱伝導率改善指標と異なる値が示されているが、この実験データがガラス配合率40、50、60及び70重量%毎にどの位の誤差の範囲にあるか計算を行ってみた。ガラス配合率40重量%で誤差が+3.3〜−2.0%、50重量%で誤差が+1.2〜−1.8%、60重量%で誤差が+3.4〜−2.3%、そして、70重量%で誤差が+1.0〜−2.1%であることから、実験により得られたガラス含有射出成形品の熱伝導率改善指標は、+3.4〜−2.3%の誤差の範囲にあることが判った。
このことを換言すれば、ガラス配合率の増加に伴って熱伝導率改善指標の示す値が、上記の平均値の式(5)に沿って漸増して改善されることを示している。それ故に、「平均値の式(5)に沿って漸増」の用語は誤差を含めた値と定義して用いるので、誤差を含めた値を意味していることに注意されたい。
以上述べたように、ガラス配合率の増加に伴って、ガラス含有射出成形品の成形収縮率は漸減し、熱伝導率は漸増するが、図14のガラス配合率と成形収縮率の関係を示したブラフ及び図16のガラス配合率と熱伝導率の関係を示したブラフを対比してみると、PEのグラフが最上位に位置していることは分かるが、他のPP、PET、PS、ABS及びNyのグラフには相互に関連する特徴を見いだせなかった。

Claims (5)

  1. ガラス粉末と熱可塑性樹脂を含むガラス含有成形用ペレットを用いて射出成形機で成形されてなるガラス含有射出成形品であって、
    前記熱可塑性樹脂が、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂及びポリアミド樹脂からなる群から選ばれる一種の樹脂中に、前記ガラス粉末が、中実の球状ガラス粉末で10〜40μmの平均粒径であり、その表面が噴霧法によりシラン化処理されており、ガラス配合率40〜70重量%の範囲で含有されており、該ガラス配合率の増加に伴って、上記6種の樹脂の何れもガラス含有射出成形品の成形収縮率改善指標が以下の式(1)に沿って漸増して改善されることを特徴とするガラス含有射出成形品。
    y=0.0093x+0.9968 (1)
    (x:ガラス配合率 ; y:成形収縮率改善指標)
  2. 前記ガラス配合率の増加に伴って、前記ガラス含有射出成形品の成形収縮率改善指標が1.36から1.63に漸増して改善されることを特徴とする請求項1に記載のガラス含有射出成形品。
  3. 前記熱可塑性樹脂がポリプロピレン樹脂であり、前記ガラス配合率が60重量%以上の前記ガラス含有射出成形品がABS樹脂100重量%の射出成形品の成形収縮率0.6より小さいことを特徴とする請求項1に記載のガラス含有射出成形品。
  4. 前記ガラス配合率の増加に伴って、前記6種の樹脂の何れもガラス含有射出成形品の熱伝導率改善指標が以下の式(2)に沿って漸増して改善されることを特徴とする請求項1に記載のガラス含有射出成形品。
    y=0.0131x+0.994 (2)
    (x:ガラス配合率 ; y:熱伝導率改善指標)
  5. 前記ガラス配合率の増加に伴って、前記6種の樹脂の何れもガラス含有射出成形品の熱伝導率改善指標が1.52から1.91に漸増して改善されることを特徴とする請求項に記載のガラス含有射出成形品。
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