JP5309313B2 - ガラス含有成形用ペレットのメルトフローレート低下割合の予測方法 - Google Patents

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Description

本発明は、熱可塑性樹脂中に40重量%以上のガラス粉末が配合されてなるガラス含有成形用ペレットに関する。詳しくは、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂及びポリカーボネート樹脂からなる群から選ばれる一種の樹脂中に40〜59重量%のガラス粉末が配合されてなるペレットが、従来の押出機で混練して押出しする際にトラブルが発生することなく混練して押出しすることができるガラス含有成形用ペレットに関する。
プラスチックは石油から合成された高分子化合物で、金型等による成形が簡単なため、大量生産される各種日用品や医療分野、工業分野の製品等の原材料として用いられている。
使用する目的・用途に合わせた性能を有する樹脂を合成することが可能なことから、日本におけるプラスチックの生産量は、ここ数年間約1400万トンの量で推移している。 平成16年の日本のプラスチック生産量は約1408万トンに達しており、プラスチック別の生産量ではポリエチレン樹脂(以下、「PE」と記載する。)が最も多く、次に、ポリプロピレン樹脂(以下、「PP」と記載する。)、ポリ塩化ビニル樹脂(以下、「PVC」と記載する。)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(以下、「PET」と記載する。)、ABS樹脂の順で続き、プラスチックの中でこれらの樹脂は、生産量が上位を占める汎用性のあるもので、そして、この汎用性のある熱可塑性樹脂はプラスチックの生産量の約90%を占めている。
平成16年における世界のプラスチック生産量は約224百万トンと推定されており、日本のプラスチック生産量は世界の約6.5%のシェアを占めている。国別では、米国、ドイツに次いで日本は第3位の生産量となっている。
地域別では、東アジアの生産の伸びが大きく、日本を含むアジアが35.5%と、ヨーロッパ、北米を抜いて最大の生産地域となっており、中国の急速な経済発展に伴って今後もプラスチック生産量は大きな伸びが予想されている。このように、プラスチックの生産量の約90%を占める熱可塑性樹脂の生産量は、今後も伸びることが予想される状況にある。
本発明者は、今日、全世界が共通の課題として緊急に解決を迫られている、二酸化炭素等の地球温暖化問題、有限な石油資源の枯渇問題をなんとか解決したいとの思いで日々熟慮を重ね続けた結果、一つの解決策を思い至ったものである。
その一つの解決策とは、熱可塑性樹脂にガラス粉末を大量に配合、例えば、70重量%のガラス粉末を配合させて押出機で混練し押出して成形用ペレットの製造ができ、その組成物で成形される成形体が従来の樹脂成形体の有しない特性を備えるならば、生活を豊かにする新しい製品を提供することができ、そして、熱可塑性樹脂、即ち、石油の使用量を70重量%削減でき、その成形体の焼却で排出される二酸化炭素の排出量を70重量%削減でき、更に、成形体の焼却で残ったガラス粉末を樹脂に含有させて、再度利用するリサイクルが可能になるというものである。
ところが、プラスチックの成形技術の分野では、熱可塑性樹脂に40%以上の大量のガラス粉末を混ぜて押出機で混練して押出されてなる成形用ペレットを製造することは不可能なことと認識されている。
その不可能な理由を説明する前に、最初に、押出機の構造と熱可塑性樹脂に少量のガラス粉末を混ぜて押出機で混練して押出す工程を説明する。
従来から熱可塑性樹脂に充填剤を混ぜて成形用ペレットを得る場合には、混合機で両材料を混ぜて押出機のホッパーに投入して、シリンダー内でヒーターにより溶融した熱可塑性樹脂中に充填剤を混練して、該押出機の先端部に位置するノズルダイから押出して成形用ペレットを得ている。
その従来から用いられている押出機の一例である単軸押出機の構造が図17に示されている。前記単軸押出機で従来の熱可塑性樹脂を押出す工程を説明し、次に、該押出機で熱可塑性樹脂のペレットにガラス粉末を混ぜて混練して押出す工程を説明するが、該ガラス粉末は熱可塑性樹脂の物性を向上させる充填材の一種として、熱可塑性樹脂のペレットに均一に混ぜてホッパーに投入して混練している。そして、熱可塑性樹脂にガラス粉末を混練する際に発生する問題点について図17を参照しながら説明する。
単軸押出機の主要構造は、ホッパー、モーター、減速機、スクリュー、シリンダー、ヒーター・ブロワー(加熱・冷却装置)等から構成されていて、シリンダーの先端にアダプターを介してノズルダイが取り付けられている。従来の熱可塑性樹脂のみの混練、押出工程の場合には、ホッパーに投入された熱可塑性樹脂のペレットがスクリューのねじ山に沿って右側に送り出されていくが、樹脂の種類に応じてヒーター温度が設定されている。樹脂のペレットがホッパーに投入されてその入り口付近の樹脂は固相状態にあるが、右側に送り出された樹脂は、ヒーターにより溶融されることで固相/液相の半溶融状態となり、右に行くに従い液相状態となる。固相、固相/液相、液相の3相状態にある樹脂を前記スクリューで混練し続け、8〜10個の穴が設けられたノズルダイから混練した樹脂をストランド状に押出し、これを冷却水槽に通して冷却した後、カッターでペレット状に切断加工することで、ペレットが得られるものである。(非特許文献1参照)。
図17のシリンダーとスクリューとの間のペレットが入り口付近では点で示されており、固相状態を表している。右に行くにしたがって黒色部分が現れるが、この黒色部分が液相状態を表している。中間領域には点と黒色部分が分離して表記されているが、これは分かり易くするために表記したものであって、実際にはこの中間領域は固相と液相が混ざり合った半溶融状態となっている。
次に、ペレットにガラス粉末を混ぜて成形用ペレットを得る場合には、最初に混合機でペレットとガラス粉末を計量して均一に混ぜた後にホッパーに投入する。前記ガラス粉末は、投入する前にガラス繊維を粉砕して粉末状にしてシラン化合物を含有した液に浸漬することで、その表面がシラン化合物で被覆、即ち、シラン化処理がなされたものを用いる場合が多い。前記シラン化合物は有機物とケイ素から構成される化合物で、通常では非常に結びつきにくい有機材料と無機材料を結ぶ仲介役としての働きをするものであるから、従来から樹脂に配合するガラス粉末は、シラン化処理されたものを用いている。
このシラン化処理されたガラス粉末をホッパーに投入するが、ホッパーの入り口付近では、ガラス粉末の摩擦抵抗が大きいために、スクリューの剪断力によりガラス粉末が砂を噛むような状態で両材料をダイ側の方向に送り出し、そして、ヒーター・ブロワーの領域に入ると、シリンダーの外筒に設けられたヒーターの加熱により、シリンダーの内筒付近では溶融化されたペレット中にガラス粉末が混合された液相状態で、そして、スクリューの外筒付近では、溶融されていないペレットが固相状態で存在する。しかし、このスクリュー外筒の固相状態のペレットとシリンダー内筒の液相状態のペレットは、高速回転のスクリューにより混練撹拌されて、固相状態のペレットと液相状態のペレットが混合された半溶融状態となる。このように、前記ヒーター・ブロワーの領域の入口付近では、ペレットが半溶融状態のために流動性が低下して、スクリューの剪断力に対向する摩擦抵抗力が急激に増加する。
そして、ペレットに大量のガラス粉末を加えて混練したとすると、上記したペレットが半溶融状態で大量のガラス粉末が存在するために流動性が急激に低下することとなり、前記スクリューに対する摩擦抵抗力がスクリューの剪断力以上に大きくなり、スクリューねじ山等の破損を起こして、混練して圧縮するスクリューの制御が停止等を起こすことは、当業者によく知られたことである。そして、前記押出機は1台当たり2〜3千万する高額な機械であるために、押出機の破損及び停止等による、部品交換費、修繕費及び点検費の高額な損失を恐れて、製造業者はガラス粉末の配合率を最大でも35重量%までしか配合しないのが実情である。
このように、プラスチック成形技術の分野では、熱可塑性樹脂の物性の向上を目的として、押出機で熱可塑性樹脂に大量のガラス粉末を配合して混練すると流動性が急激に低下するために、大量のガラス粉末を含有する熱可塑性樹脂のペレットを製造することは不可能なことと認識されている。
そこで、本発明者は、押出機で熱可塑性樹脂中に大量のガラス粉末を配合して混練すると流動性が急激に低下する原因を解明すべく、熟慮を重ねて検討した結果、以下に述べる4つの原因が相互に関連することで流動性の急激な低下が起きていると推測するに至った。
第一の原因として、上述したように、固相と液相が混合した半溶融状態が発生することが考えられる。
第二の原因として、上述したガラス粉末にシラン化処理を施す方法として、0.1重量%程度のシラン化合物が含まれる水溶液にガラス粉末を30分の間撹拌しながら、浸漬した後に濾過して100℃で乾燥する浸漬法が一般的に行われている。その処理により複数のガラス粉末同士が接触した状態でシラン化合物により被覆され、ガラス粉末が凝集した状態でフィルター処理されて乾燥されることで、シラン化処理されたガラス粉末の中には凝集した状態、いわゆる複粒化した状態のガラス粉末(以下、「凝集ガラス粉末」という。)の存在が考えられる。
第三の原因として、従来から用いられている熱可塑性樹脂中に配合するガラス粉末は、ガラス繊維を細かく粉砕する等により得ているために、その形状が多角形、長方形等の様々な形状から構成されており、そして、その平均粒径が10〜100μmの広い分布幅にあること、この様々な形状と分布幅の広いことが考えられる。
更に、第四の原因として、ガラスと熱可塑性樹脂の比熱の差が大きいこと、例えば、ガラスの比熱は0.670J/(kg・K)であるのに対して、PETのそれは1.5J/(kg・K)であり、ある一定温度に上げるのにガラスよりPETの方が2.2倍の熱量を必要とすること、この比熱の差が大きいことが考えられる。
上記した四つの原因が相互に複雑に作用することで、熱可塑性樹脂中に40重量%以上のガラス粉末を配合して混練すると流動性が急激に低下して、ガラス粉末を含有した成形用ペレットが製造できない原因となっていると考えられる。
ところで、従来から樹脂ペレットに35重量%程度のガラス粉末を配合した樹脂組成物を製造できるが、該樹脂ペレットに40重量%以上の大量のガラス粉末を混ぜて、押出機で混練して押出してガラス含有の樹脂ペレットを製造することは、樹脂とガラス粉末の配合物の流動性が低下するために不可能なこととして、40重量%以上の大量のガラス粉末を含有した樹脂ペレットの製品化に成功したとする報告はなされていない。
例えば、「本発明では、ポリカーボネート樹脂組成物の上記ガラスフィラーの含有量は、10質量%以上40質量%未満であることを特徴とし、15〜35質量%であることが好ましい。10質量%未満では成形品の機械物性が不充分であり、また、40質量%を超えると、樹脂とガラスフィラーとの接触面積が増大して成形品の透明性が低下し、また、成形性が低下するので好ましくない。」と特許文献1の段落[0056]に記載されている。
また、「本発明の熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、上記リン酸塩系ガラスを0.1〜50質量部含む。0.1質量部未満であると難燃性付与の効果が得られず、50質量部超であると該樹脂組成物の成形流動性が劣る場合があるためである。好ましいリン酸塩系ガラスの量は、0.5〜30質量部である。」(リン酸塩系ガラス50質量部は33.3重量%に相当)と特許文献2の段落[0026]に記載されており、更に、「本発明におけるAg2Oを含有する溶解性リン塩系ガラス粉末の配合量は、0.1〜40重量%である。配合量が0.1重量%未満であると、抗菌性能が発現せず、40重量%を越えると、樹脂自体の粘度が高くなり配合樹脂への均一な分散が得られ難くなる。Ag2Oを含有する溶解性リン塩系ガラス粉末の配合量は、好ましくは0.3〜35重量%であり、より好ましくは0.5〜30重量%である。」と特許文献3の段落[0016]に記載されている。
特開2006−22236号公報 特開2004−256787号公報 特開2001−139832号公報
「包装技術便覧」、発行者;佐々木春夫、発行所;社団法人日本包装技術協会、1995年7月1日発行、第1062、1078、1079頁
上記したように、熱可塑性樹脂の成形技術の分野では、40重量%未満のガラス粉末が配合されたガラス含有成形用ペレットしか現状では得られていないこと、及び上記特許文献1〜3に記載の事項からすると、押出機で混練して押出して形成されるガラス含有熱可塑性樹脂ペレットに関して、熱可塑性樹脂中にガラス粉末の含有量が40重量%を超えると、成形性の低下が起きることが開示されてはいるが、流動性の急激な低下を防ぐことにより、即ち、上述した流動性が急激に低下する4つの原因を取り除くことにより、該熱可塑性樹脂中に40重量%以上の大量のガラス粉末を混練しても押出できるペレットは知られていない。また、そのペレットを押出機で混練して押出して形成する際に、トラブルが発生することなく、工業的に長時間に亘る大量生産が可能なガラス含有量、そして、そのペレットを用いて各種の成形方法で成形体を成形することができるガラス含有量は知られていない。そして、当然のことながら、40重量%以上の大量のガラス粉末が配合されたペレットの物性も知られていない。
それ故に、本発明は、生産量の多い汎用性熱可塑性樹脂のペレットとガラス粉末を混ぜて投入する場合に、40重量%以上のガラス粉末の投入により起きる流動性の急激な低下の原因を取り除くことにより、熱可塑性樹脂中にガラス配合率40重量%以上のガラス粉末が含有されたガラス含有成形用ペレット、また、そのペレットを押出機で混練して押出して形成するのにトラブルが発生することなく、工業的に長時間に亘る大量生産が可能なガラス含有量、そして、そのペレットを用いて各種の成形方法で成形体を成形することができるガラス含有量を提供すること、更に、そのガラス含有成形用ペレットの物性を提供することを目的とする。その目的を達成することにより、全世界が共通の課題として緊急に解決を迫られている、二酸化炭素等の地球温暖化問題、有限な石油資源の枯渇問題の一つの解決策を提示するものである。
本発明者は、上記した流動性が低下する四つの原因が相互に複雑に作用することで、熱可塑性樹脂に40重量%以上のガラス粉末を配合して混練すると流動性が急激に低下して、ガラスを含有した組成物が製造できない原因となっていると考え、上記四つの流動性が急激に低下する原因を取り除く解決策を鋭意研究して、本発明を達成したものである。
即ち、上記課題を解決するために、請求項1に係る発明のガラス含有成形用ペレットのメルトフローレート低下割合の予測方法は、溶融状態にある熱可塑性樹脂のペレットに大量のガラス粉末を投入して、該ペレットと該ガラス粉末を混練して押出されてなるガラス含有成形用ペレットのメルトフローレート低下割合の予測方法であって、前記熱可塑性樹脂のペレットがポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂及びポリカーボネート樹脂からなる群から選ばれる一種からなるペレットであり、前記ガラス粉末が球状の形状で中実であり、10〜40μmの平均粒径であり、γ−グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシランを0.1重量%含む水を噴霧することによりシラン化合物が該ガラス粉末の表面を全面的に被覆しており、該熱可塑性樹脂中にガラス配合率40〜59重量%の範囲で配合されており、該ガラス配合率xの増加に伴う前記ガラス含有成形用ペレットのメルトフローレート低下割合yが以下に記述される式によるガラス含有成形用ペレットのメルトフローレート低下割合の予測方法。
y=−1.53x2−0.11x+1.00
(x:ガラス配合率、y:メルトフローレート低下割合)
請求項2に係る発明のガラス含有成形用ペレットのメルトフローレート低下割合の予測方法は、該ガラス含有成形用ペレットがブロー成形品、射出成形品、押出成形品、真空成形品、又はプレス成形品のペレットとして用いられることを特徴とする請求項1に記載のガラス含有成形用ペレットのメルトフローレート低下割合の予測方法。
従来の技術では熱可塑性樹脂中に40重量%以上のガラス粉末を配合できないため、40重量%以上のガラス粉末を含有するガラス含有成形用ペレットを得ることが不可能とされていたが、本発明は、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂及びポリカーボネート樹脂からなる群から選ばれる一種の樹脂中に40〜59重量%の範囲のガラス配合率でガラス粉末を含有させたガラス含有成形用ペレットを得ることが可能となった。
そして、前記ペレットは、今まで地球上に存在しない新素材であるから、その新素材から作製される成形体は、従来のものにはない新たな特性を備えた成形体を作製することが可能となった。
ガラス配合率59重量%の配合により、ガラス含有成形用ペレットを用いて成形された成形体を焼却する際に、排出される二酸化炭素の排出量を最大で59%削減することができ、地球規模の課題である地球温暖化問題を解決する技術として貢献度が大きい。
また、本発明のガラス含有成形用ペレットは、熱可塑性樹脂、即ち、石油の使用量を最大で59%削減することができ、地球規模の課題である有限な石油資源の枯渇問題を解決する技術として貢献度が大きい。
そして、本発明のガラス含有成形用ペレットは、成形品の焼却後に残った最大で59%のガラス粉末を樹脂に含有させて、再度ガラス含有成形用ペレットを成形することで、59%のガラス粉末を何度でもリサイクルすることができ、循環型社会を形成する技術としての貢献度も大きい。
更に、球状ガラス粉末の原料は日本に豊富にある資源であり、その材料費は低廉であるので、今日の高騰を続ける石油の代替可能な原料として有望である。
本発明のガラス含有成形用ペレットは、何れの種類の熱可塑性樹脂、何れのメルトフローレートに対しても、40〜59重量%ガラス配合率のガラス粉末を含有させて混練して押出することが可能となり、熱可塑性樹脂が60〜41重量%含有されているので、該ペレットで成形された成形体は、ガラス粉末の融点が1000℃以上であるのに対して、熱可塑性樹脂の融点が300℃程度であるから、焼却する際に、低い焼却発熱量で焼却ができ、焼却炉の負担低減が得られる。
熱可塑性樹脂100%にガラス配合率59重量%までの範囲で球状ガラス粉末を配合すれば、メルトフローレート低下割合が0.30以上のガラス含有成形用ペレットが得られ、スクリューが破損を起こす等のトラブルの発生を未然に防止することができ、工業的に長時間に亘る大量生産が可能となり、また、そのペレットを用いて各種の成形方法で成形体を成形することができる。
また、上記4種類の樹脂であれば、使用する組成物の用途等に応じたMFR低下割合又はガラス配合率の正確な予測値を決定できることが可能となった。
本発明のガラス含有成形用ペレットは、メルトフローレート低下割合の平均値に基づいて得られた放物線の近似式で、メルトフローレート低下割合とガラス配合率の関係を示すことができるので、統一的にガラス含有成形用ペレットの流動特性を把握でき、メルトフローレート低下割合を選定すれば樹脂中に配合すべき球状ガラス粉末のガラス配合率の予測、又は、ガラス配合率を選定すればガラス含有成形用ペレットのメルトフローレート低下割合の予測が可能となり、ガラス含有成形用ペレット及びガラス含有成形体の成形時の操業性の向上を図ることが可能となった。
本発明のガラス含有成形用ペレットを成形し、その組成物を製造する製造方法に用いられる一例の押出機の縦断面図である。 球状ガラス粉末の平均粒径の分布を示す分布図である。 球状ガラス粉末の1000倍の電子顕微鏡写真である。 PPに球状ガラス粉末50重量%を配合して得られた、ペレットを側面から垂直に切断した切断部を50倍に拡大した電子顕微鏡写真である。 前記切断部を100倍に拡大して撮影した電子顕微鏡写真である。 前記ペレットの側面を100倍に拡大して撮影した電子顕微鏡写真である。 PEのガラス配合率とMFRの関係を示したグラフである。 PPのガラス配合率とMFRの関係を示したグラフである。 PETのガラス配合率とMFRの関係を示したグラフである。 PSのガラス配合率とMFRの関係を示したグラフである。 ABSのガラス配合率とMFRの関係を示したグラフである。 PVCのガラス配合率とMFRの関係を示したグラフである。 PCのガラス配合率とMFRの関係を示したグラフである。 PLAのガラス配合率とMFRの関係を示したグラフである。 Nyのガラス配合率とMFRの関係を示したグラフである。 実施例1〜9のガラス含有成形用ペレットにおけるガラス配合率とMFRの関係を示したグラフである。 実施例1〜9のガラス含有成形用ペレットにおけるガラス配合率とMFR低下割合の関係を示したグラフである。 実施例1〜9のガラス含有成形用ペレットにおけるガラス配合率と最大値及び最小値のMFR低下割合の関係を示したグラフである。 実施例2、6、7及び9のガラス含有成形用ペレットにおけるガラス配合率とMFR低下割合の関係を示したグラフである。 実施例2、6、7及び9のガラス配合率と平均値のMFR低下割合の関係を示したグラフである。 従来から用いられている押出機の一例である単軸押出機の縦断面図である。
最初に、最良の実施形態を説明する前に、本発明の発明者が鋭意研究して達成した前記4つの原因を取り除く解決策を述べた後に、最良の実施形態を説明する。
ガラス含有成形用ペレットの成形工程の概要は以下の通りである。
炉の内部に設けた酸素バーナーで高温加熱された火炎にガラス繊維を粉砕した粉砕物を噴霧して球状化し、噴霧状の球体にシラン化合物を含む水を噴射して、シラン化合物が全面的に被覆された球状ガラス粉末を得る第1の工程と、重量を計量した汎用性熱可塑性樹脂(以下、「熱可塑性樹脂」という。)を押出機内に投入して溶融する第2の工程と、前記熱可塑性樹脂が溶融状態にある領域に、重量を計量して予熱した前記球状ガラス粉末を押出機内に投入して混練する第3の工程と、押出してガラス含有成形用ペレットを得る第4の工程を経てガラス配合率40〜70重量%の範囲のガラス含有成形用ペレットが得られる。
この様にして製造するガラス含有成形用ペレットの製造方法は、40〜70重量%の範囲のガラス配合率でガラス粉末を投入するにも拘わらず、熱可塑性樹脂が溶融状態にある領域に、予熱した球状ガラス粉末を投入して混練することでペレットが成形でき、従来の混練工程での複雑な温度制御等が必要なく、簡便で安価に成形できるものである。
前記流動性が急激に低下する第一の原因である固相と液相が混合した半溶融状態の発生に対して、熱可塑性樹脂が溶融状態にある領域に大量のガラス粉末を投入すること(第3の工程が相当)、その大量のガラス粉末を投入する際に、第四の原因である比熱の差が大きいことに対して、予熱した球状ガラス粉末を押出機内に投入する、又は急激な温度低下を生じさせないために熱可塑性樹脂の溶融温度を上げておくこと(第4の工程が相当)、第二の原因である凝集ガラス粉末の存在に対して、個々のガラス粉末の表面がシラン化合物を噴霧法により処理して全面的に被覆すること(第1の工程が相当)、第三の原因であるガラス粉末の様々な形状と分布幅が大きいことに対して、形状が球状で平均粒径の分布幅が小さいガラス粉末を投入すること(第1の工程が相当)で、熱可塑性樹脂のペレットに大量のガラス粉末を投入しても流動性が低下することなく、ガラス配合率40〜70重量%の範囲のガラス含有成形用ペレットを混練して押出することができる。上記第1〜4の工程を具体的に示す最良の実施形態を以下に詳細に説明する。
(ガラス含有成形用ペレットの成形工程)
図1は本発明のガラス含有成形用ペレットを成形し、その組成物を製造する製造方法に用いられる一つの押出機の縦断面図である。前記押出機により40〜70重量%の範囲の球状ガラス粉末と熱可塑性樹脂を混練して押出してガラス含有成形用ペレットが得られる。
図1の押出機に基づいて、40〜70重量%の範囲の球状ガラス粉末と熱可塑性樹脂を混練して押出して、ガラス含有成形用ペレットを得る工程を説明する。
本発明の実施形態に用いる押出機は、供給材料であるペレットと球状ガラス粉末を投入する2個のホッパーが備えられている。図1に示す押出機のホッパーを左側から順に第1、第2ホッパーと称し、第1ホッパーには熱可塑性樹脂のペレットが投入され、押出機の中間部付近に設けられている第2ホッパーには、球状ガラス粉末が投入される。第2ホッパーの配置位置は、第1ホッパーよりスクリューバレル内に供給されたペレットが、スクリューによる混練搬送に伴って溶融状態になる位置に設けてある。
なお、図1の押出機は、図17の従来の押出機と比べてホッパーの構造を除いて他の構造は同じであるので、図1の押出機の構造を説明することは省略する。
前記第1及び第2ホッパーが備えられた押出機は、樹脂材料と複数種類の充填剤、顔料等を配合して押出成形するものとして従来から知られているが、本発明の第1及び第2ホッパーと従来のそれとの違いは、従来の第2ホッパーでは、ペレットの配合量に対して充填剤等のその配合率が極めて少ないので小型のホッパーが用いられているが、本発明の第2ホッパーは球状のガラス粉末を大量に投入するので、その第2ホッパーの大きさはペレットの第1ホッパーと同等かそれより大きいものを用いる点、該ホッパーの上方に球状のガラス粉末を予熱する加熱装置(図示せず)が設けられている点が異なる。前記加熱装置は150℃〜350℃の範囲で加熱でき、一定温度に制御できるものであれば、通常用いられている加熱装置を用いることができる。
従来の第2ホッパーに投入する充填剤、顔料等の温度は常温で用いているが、本発明の球状のガラス粉末は、第2ホッパーに投入する前に熱可塑性樹脂の溶融温度と同じか、それに近似した温度に予熱してから投入する。この予熱温度は溶融温度と同じであることが最も好ましく、(該溶融温度±10%の温度)が好ましい。予熱温度が(前記溶融温度−10%の温度)より低い温度であると、溶融状態の熱可塑性樹脂から大量のガラス粉末が熱を奪うために流動性が低下する恐れがあり、予熱温度が(前記溶融温度+10%の温度)より高い温度であると、熱可塑性樹脂の粘性抵抗が下がりすぎて液体状態になりペレット化できない恐れがあるので、ガラス粉末の予熱温度は(溶融温度±10%の温度)の範囲が適切である。
まず、決められた熱可塑性樹脂のペレットとガラス粉末の配合率にしたがって、供給するペレットの重量を計量して第1ホッパー内に投入し、スクリューによる混練搬送によって送られたペレットがヒーターにより溶融状態になる位置、即ち、第2ホッパーが配置されている位置で、供給する重量が計量された球状ガラス粉末を熱可塑性樹脂の溶融温度と同じか、それに近似した温度に予熱して第2ホッパー内に投入する。溶融熱可塑性樹脂中に投入された球状ガラス粉末が、混練されながら押出されて、その後に切断されてペレットが得られる。
前記ヒーターの温度は使用される熱可塑性樹脂の融点に応じて決められており、例えば、PEが230℃、PPが220℃、PETが250℃等である。そして、押出機のスクリューの回転数は、200回/分で配合物を混練しながら3mmの径のノズルダイから押し出して棒状にしたものを、水で冷やして長さ4mmに切断してペレットを得た。
(中実の球状ガラス粉末)
本発明の中実の球状ガラス粉末(以下、「球状ガラス粉末」という。)のガラス質は、SiO2、B23、P23の1種又は2種以上を骨格成分とする、アルカリガラス、可溶性ガラス、無アルカリガラス、シリカガラス等が挙げられる。そして、その形状を球状にするには、ガラス繊維を粉砕して球状化する方法を用いることで平均粒径の分布をシャープにすることができる。該球状ガラス粉末のアルカリ分が多いと、熱可塑性樹脂の脆化を招きやすいので、アルカリ分の少ない可溶性ガラスが好ましく、更に、アルカリ分のない無アルカリガラスであるEガラスがより好ましい。しかし、何れのガラス質を使用するかはその用途に応じて決まるものであって、本発明の中実の球状ガラス粉末は実施例に限定されるものではない。
前記球状ガラス粉末は、ガラス繊維の直径が20μmのものを材料として用いている。ガラス繊維はその直径が一定であるから、ガラス繊維の長さが前記直径20μmからばらつかないように粉砕することで、直径20μm、長さ10〜30μmの粉砕物が得られる。この粉砕物を炉の内部に設けた酸素バーナーによる2500〜3000℃の火炎に噴霧して球状化し、噴霧状の球体に炉の下部に設けた水の噴射装置より、γ−グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシランを0.1重量%含む水を噴射して、噴霧状態でシラン化処理を行いバグフィルターで捕集した。この捕集したガラス粉体は球状の平均粒径が10〜40μmの球状のガラス粉末である。このように、上記ガラス繊維の直径が20μmのものを材料として用いることで、平均粒径が10〜40μmの球状のガラス粉末が得られた。得られた球状ガラス粉末は中実であった。上記噴霧状態で行うシラン化処理を行う方法を、以下、「噴霧法」という。
上記球状化したガラス粉末を前記噴霧法でシラン化処理をしたものが前記球状ガラス粉末である。換言すれば、この球状ガラス粉末はその表面がシラン化合物により全体的に覆われていることに特徴がある。
シラン化合物としては、以下の式で表されるものを挙げることができる。
4-n−Si−(OR’)n
(式中、Rは有機基を表し、R’はメチル基、エチル基又はプロピル基を表し、nは1〜3から選ばれる整数を表す)
かかるシラン化合物としては、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン等のエポキシ基を有するシランカップリング剤、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト基を有するシランカップリング剤、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基を有するシランカップリング剤が挙げられる。
従来から用いられているガラス粉末は、その形状が多角形、長方形等の様々な形状から構成されており、そして、その平均粒径が10〜100μmの広い分布幅にあるのに対して、本発明のガラス粉末は形状が球状であり、その平均粒径が10〜40μmの範囲でその幅が非常に小さい。
図2は上述した球状ガラス粉末の製造方法で得られた球状ガラス粉末の平均粒径の分布の頻度を示すグラフである。このグラフの横軸は前記球状ガラス粉末の粒径(μm)で、縦軸は分布の頻度(%)を示している。前記球状Eガラス粉末は、粒径が25μmで最高の分布頻度を示しており、その25μmを中心に正規分布曲線上の10〜40μmの範囲に分布しており、その範囲にある粒径の頻度が高いことがわかる。
図3は前記球状ガラス粉末の1000倍の電子顕微鏡写真である。この写真から球状ガラス粉末は、各々のその形状が球状であり中実であり、大小様々な粒径のものが存在していることが観察できる。
図2の球状Eガラス粉末の平均粒径の分布の頻度を示すグラフとこの図3の写真から、熱可塑性樹脂中の球状ガラス粉末は、その形状が真円の球形であり、大小様々な粒径のものが存在しているが、その平均粒径が10〜40μmであることが示されている。
ところで、溶融熱可塑性樹脂中にガラス粉末を投入して混練する際に、その粒径が10μmより以下になると、微細粒子の割合が多くなり、比表面積の増加に伴い樹脂からガラス粉末が熱量を奪い、そのために樹脂の温度が急に低下することで溶融粘度が上昇し、剪断発熱により混練時の樹脂温度が極端に上昇するため、決められた両材料の配合率を調整することが困難になる。又、熱可塑性樹脂にガラス粉末を配合することで、一般的に、成形体の寸法安定性、機械強度(衝撃強度、曲げ強度等)、ソリ性、透過バリア性等の向上が図られるが、その粒径が10μmより以下になると、特に曲げ強度が低下するので好ましくない。
前記粒径が40μmより大になると巨大粒子の割合が多くなり、混練時の溶融粘度の上昇は少ないが、ガラス含有組成物を一定サイズのペレットに切断する際に、カット刃の摩耗が激しくなり、大量の該ガラス含有組成物を連続して生産することが困難となり、生産上の問題が生じる。又、その粒径が40μmより大になると、特に衝撃強度が低下するので好ましくない。従って、平均粒径は10〜40μmの範囲が好適である。
(熱可塑性樹脂)
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアミド樹脂及びポリカーボネート樹脂(以下、「PC」という。)を挙げることができる。ポリエステル樹脂には、PET、PEN、PBT、PTTがあり、ポリアミド樹脂には、ナイロン6、ナイロン66等のナイロン樹脂(Ny)がある。
バリア性や寸法安定性から必要に応じて他の樹脂を使用することもできる。他の樹脂には、メタクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリマーアロイ樹脂、共重合樹脂(EAA、EMAA、EEA、EMA、EMMA)を挙げることができる。
熱可塑性樹脂に着色や光沢の付与の目的で、顔料、酸化チタン、アルミナ、タルク、マイカ、シリカ、炭酸マグネシウム、金属ラメを配合することができる。
溶融状態にある上記熱可塑性樹脂中に最大で70重量%の球状ガラス粉末を配合して混練することにより、押出機の吐出口に設けたノズルダイより直径3mmの棒状に押し出して水で冷却してカッターで長さ約4mmに切断して、該熱可塑性樹脂中に球状ガラス粉末が独立して分散したガラス含有成形用ペレットが得られるが、直径及び長さはこれに限定されるものではない。
図4Aは、上述した本発明のガラス含有成形用ペレットの製造方法で製造されたガラス含有成形用ペレットの電子顕微鏡写真である。この電子顕微鏡写真は、PPに球状Eガラス粉末50重量%を配合して得られたペレットを、側面から垂直に切断した切断部を50倍に拡大して撮影したものである。
図4Bは、前記切断部を100倍に拡大して撮影した電子顕微鏡写真である。
図4Cは、前記ペレットの側面を100倍に拡大して撮影した電子顕微鏡写真である。 図4Bのペレットの切断部の写真から、該ペレットはPP中に個々の球状のガラス粉末が凝集することなく独立して分散された状態で配合されていることが観察される。
このことから、前記球状ガラス粉末が噴霧法によりその表面がシラン化合物により全面的に被覆されることで、押出機内で混練し押し出して成形された前記ペレットは樹脂中に球状のガラス粉末が凝集することなく独立して分散された状態で配合されていることが判明した。
そして、図4Aの写真の中点より上下端部の位置まで円を描き、その円を均等に16分割して、16の各区画に配合されている球状ガラス粉末の数を目視して数え、その数えた結果を表1に示す。
なお、16分割線上に球状ガラス粉末がある場合には、1/2として球状ガラス粉末数の計算を行った。
表1の測定結果から、各区画における球状ガラス粉末数は、140±1の範囲にあることから、ペレット中に球状ガラス粉末が均一に分散されていることを示している。
以上のことから、押出機でガラス粉末と熱可塑性樹脂のペレットを混練して押出されてなる本発明のガラス含有成形用ペレットは、ガラス粉末が、球状の形状で中実であり、10〜40μmの平均粒径であり、その表面がシラン化合物により全面的に被覆されており、熱可塑性樹脂中に40〜70重量%の範囲のガラス配合率で独立して均一に分散されている状態で含有されているものであることが判明した。
図4Cの写真は、ペレットの側面は球形の凸状部で覆われており、その球形凸状部が熱可塑性樹脂で前記球状ガラス粉末を被覆していることを表している。
(実施例と比較例)
以下に示す実施例は、9種類のペレット状の熱可塑性樹脂(PE、PP、PET、PS、ABS、PVC、PC、PLA及びNy)を対象として、上記した噴霧法でシラン化処理した球状Eガラス粉末と9種類のペレット状の樹脂のうち一つの樹脂の重量配合率が40:60、50:50、60:40及び70:30の4種類の水準のものを用いており、その重量配合率における後述する流動性を示すメルトフローレート(以下、このメルトフローレートを「MFR」という。)が示されている。
前記MFRは、溶融状態にあるポリマーの流動性を示す尺度の一つで、押出式プラストメーターで、一定圧力、一定温度の下に、規定の寸法をもつノズル(オリフィス)から流出する量を測定し、g/10minの単位で表わした指数である。一般にMFRの数値が大きいほど溶融時の流動性や加工性は良好であるとされ、世界的に樹脂の流量状態を表すものとして、このMFRが用いられている。
上記9種類の熱可塑性樹脂のMFRは、実施例として選んだPE(PE)が0.25で、ABSが30.0のMFRで、MFRが0.25〜30.0の範囲のものを選んでいるが、同じ熱可塑性樹脂であっても分子量に応じてMFRが異なるものである。他の熱可塑性樹脂及び分子量の異なる熱可塑性樹脂のMFRは、上記したMFR0.25〜30.0の範囲に入るものとして9種類の熱可塑性樹脂を選定した。
そして、PLAは植物起源の素材から合成されたもので、石油から合成された高分子化合物ではないが、生分解性プラスチックとして将来的に有用なものと見込まれて、生産量が増えると推測されるので選定した。
比較例1及び2に用いた比較例球体は、Eガラス繊維の粉砕物を球状化したものに浸漬法でシラン化処理したもので、実施例と同じ球状ガラス粉未を用いている。実施例の球状ガラス粉末は噴霧法でシラン化処理されているのに対して、比較例1及び2の球状ガラス粉末が浸漬法でシラン化処理されていることが相違することから、比較例1及び2の球状ガラス粉末は比較例球体と呼んでいる。
比較例1及び2の前記浸漬法とは、球状ガラス粉末をγ−グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシランが0.1重量%含まれる水溶液に30分の間撹拌しながら、浸漬した後に濾過して100℃で乾燥したものである。その処理により複数の球状ガラス粉末同士が接触してシラン化合物が被覆されフィルター処理されて乾燥されるので、シラン化処理されたガラス粉末中に凝集した球状ガラス粉末(以下、「凝集球状ガラス粉末」という。)が存在することになる。
なお、比較例として従来の各種形状を含むガラス粉末を用いたものを実施例の比較する対象としない理由は、PEのペレットと従来の各種形状を含む40重量%のガラス粉末を第1ホッパーに投入して混練を試みようとしたところ、流動性が急激に低下して、スクリューに対する摩擦抵抗力がスクリューの剪断力以上に大きくなり、スクリューねじ山等が破損を起こしそうになり、ガラス含有成形用ペレットを押出しすることができないために、実施例と対比して溶融熱可塑性樹脂中にガラス粉末を投入する効果、凝集状態にないガラス粉末の効果を明確にするための実験データが得られないことが分かったので、比較例としてEガラス繊維の粉砕物を球状化したものを用いることとした。このことで、前記溶融熱可塑性樹脂中にガラス粉末を投入する効果、凝集状態にないガラス粉末の効果を示す実験データを得ることができた。
比較例1は9種類の樹脂のうちの一つの樹脂と比較例球体を別々に計量して押出機に投入した。第1ホッパーに一つの樹脂のペレットを投入し、第2ホッパーに比較例球体を投入した。比較例球体と一つの樹脂のペレットの重量配合率を20:80、30:70、40:60の3種類の水準のものを用いており、その重量配合率における流動性を示すMFRの実験データが以下の表4、6、8、10、12、14、16、18及び20に示されている。
比較例2は第1ホッパーに一つの樹脂のペレットと比較例球体を配合して同時に投入し、比較例球体と一つの樹脂のペレットの重量配合率を20:80、30:70、40:60の3種類の水準のものを用いており、その重量配合率における流動性を示すMFRの実験データが以下の表4、6、8、10、12、14、16、18及び20に示されている。
上記した実施例、比較例1及び2の3種類の成形組成物を得るための条件を、ガラス粒子、シラン化処理の方法、樹脂の種類、ガラス配合率、第1、第2ホッパーへの投入材料の6項目(以下、この6項目の条件を「6項目条件」という。)に分けて表2に示した。 なお、前記「ガラス配合率」は、熱可塑性樹脂中の球状ガラス粉末の重量%と定義して用いている。そして、「ガラス配合率重量%」を「ガラス配合率%」で示す場合があるが、同じ意味で用いている。
ところで、実施例のガラス含有成形用ペレットは、比較例1及び2の比較例球体成形用ペレットと比較してどの様な特性を有するものかを調べるために、上記6項目条件で成形した時の各樹脂を溶融する溶融温度と同じ温度で成形用ペレットを溶融して、各樹脂の成形用ペレットのMFRを測定した。前記各樹脂を溶融する溶融温度と同じ温度で成形用ペレットのMFRを測定すれば、成形用押出機内で樹脂が溶融状態にある領域にガラス粉末を投入して混練している時の流動性の状態を数値化して表すことができ、そのことにより比較例1及び2の比較例球体成形用ペレットのMFRと対比することにより、実施例のガラス含有成形用ペレットのMFRの特性が明確化される。
その測定結果は以下の実施例1〜9に示されている。
(実施例1)
実施例1は熱可塑性樹脂としてPE(PE)が用いられており、噴霧法でシラン化処理した球状Eガラス粉末とPEの重量配合率が40:60、50:50、60:40、70:30の4種類の水準のものを用いた。
上記した押出機の第1ホッパーよりPE(高密度ポリエチレン)としてHI−ZEX 5100B(商品名:株式会社プライムポリマー製品)の重量を計量して60重量%を投入し、230℃で溶融状態にした中に、第2ホッパーより上記実施例の球状Eガラス粉末の重量を計量して溶融温度230℃と同じか、それに近似した温度に予熱した40重量%を投入して、230℃、スクリュー回転数200回/分で混練し、3mm径の棒状に押出し、水冷して長さ4mmに切断してペレット状とし実施例1の第1の水準の成形用ペレットを得た。予熱温度は溶融温度230℃と同じであることが最も好ましく、(230℃±10%の温度)が好ましい。
以下同様に、HI−ZEX 5100B50重量%、球状Eガラス粉末50重量%の第2の水準の成形用ペレット、HI−ZEX 5100B40重量%、球状Eガラス粉末60重量%の第3の水準の成形用ペレット、HI−ZEX 5100B30重量%、球状Eガラス粉末70重量%の第4の水準の成形用ペレットを得た。
(比較例1−1)
PEと比較例球体を別々に計量して押出機に投入した。第1ホッパーにPEのペレットを投入し、第2ホッパーに比較例球体を投入した。比較例球体とPEのペレットの重量配合率を20:80、30:70、40:60の3種類の水準に設定した。PEとしてHI−ZEX 5100B(商品名;株式会社プライムポリマー製品)を用いた。押出機では230℃、スクリュー回転数200回/分で混練して3mm径の棒状に押出し、水冷して長さ4mmに切断してペレットにした。なお、第2ホッパーに投入した比較例球体は予熱されていない。
(比較例1−2)
第1ホッパーにPEのペレットと比較例球体を配合して同時に投入し、比較例球体とPEのペレットの重量配合率を20:80、30:70、40:60の3種類の水準に設定した。PEとしてHI−ZEX 5100B(商品名;株式会社プライムポリマー製品)を用いた。押出機では230℃、スクリュー回転数200回/分で混練して3mm径の棒状に押出し、水冷して長さ4mmに切断してペレットにした。
なお、比較例1−1の最初の符号1はPEであること、2番目の符号1は上記した比較例1であることを意味し、同様に、比較例1−2の最初の符号1はPEであること、2番目の符号2は上記した比較例2であることを意味している。以下に述べる比較例2−1及び比較例2−2から比較例9−1及び比較例9−2の各符号は、上記したことを意味している。
上記した実施例1、比較例1−1及び1−2の成形組成物を得るための前記6項目条件を表3に示した。上記表1と表3は、6項目条件の項目の「樹脂」及び「第1ホッパー」に対象とする樹脂であるPEを記載している点が相違するだけで、他の項目に記載する内容は同じである。
なお、以下に記載する他の8種類の熱可塑性樹脂(PP、PET、PS、ABS、PVC、PC、PLA及びNy)に関して、前記6項目条件も同様に、項目の「樹脂」及び「第1ホッパー」に対象とする樹脂を記載して他の項目に記載する内容は同じであるので、上記8種類の熱可塑性樹脂ごとに6項目条件を表にして表すことは省略する。
ガラス配合率ごとの前記ペレットのMFRを230℃で測定した結果を表4に示す。 なお、表4における実施例1のPE(HI−ZEX 5100B)の熱可塑性樹脂配合率が100重量%の時のMFRは、0.25である。
図5は表4に示したガラス配合率(重量%)とMFRのデータに基づいて作成した、ガラス配合率とMFRの関係を2次多項式の近似曲線で示したグラフである。
このグラフにおいて□印は実施例1のMFRを、△印は比較例1−1のMFRを、×印は比較例1−2のMFRを示している。そして、これらの実施例1、比較例1−1及び比較例1−2のMFRの各曲線は、熱可塑性樹脂100%のMFR(以下、「100%MFR」という。)である0.25に対して、ガラス粉末の配合率が増加したときに各々のMFRがどの様な低減傾向になるかを示したものである。そして、PEの100%MFR(0.25)が1/2の値(以下、「1/2MFR」という。)である0.125の時のガラス配合率を示すために、各曲線との交点からX軸に向かって垂線が引かれている。
なお、1/2MFRのガラス配合率を求める理由は以下の表23の説明のときに述べる。
上記1/2MFRの時の比較例1−2、比較例1−1及び実施例1のガラス配合率を表5に示す。
実施例1のガラス配合率が50重量%は云うまでもなく70重量%のガラス含有成形用ペレットを用いて、ダイレクトブロー成形により200mlのボトルを成形することができた。
(実施例2)
実施例2は熱可塑性樹脂としてPPが用いられており、噴霧法でシラン化処理した球状Eガラス粉末とPPの重量配合率が40:60、50:50、60:40及び70:30の4種類の水準のものを用いた。
上記した押出機の第1ホッパーよりPPとしてノバテックPP MA3(商品名:日本ポリプロ株式会社製品)の重量を計量して60重量%を投入し、220℃で溶融状態にした中に、第2ホッパーより上記実施例の球状Eガラス粉末の重量を計量して溶融温度220℃と同じか、それに近似した温度に予熱した40重量%を投入して、220℃、スクリュー回転数200回/分で混練し、3mm径の棒状に押出し、水冷して長さ4mmに切断してペレット状とし実施例2の第1の水準の成形用ペレットを得た。予熱温度は溶融温度220℃と同じであることが最も好ましく、(220℃±10%の温度)が好ましい。
以下同様に、ノバテックPP MA3 50重量%、球状Eガラス粉末50重量%の第2の水準の成形用ペレット、ノバテックPP MA3 40重量%、球状Eガラス粉末60重量%の第3の水準の成形用ペレット、ノバテックPP MA3 30重量%、球状Eガラス粉末70重量%の第4の水準の成形用ペレットを得た。
(比較例2−1)
PPと比較例球体を別々に計量して押出機に投入した。第1ホッパーにPPのペレットを投入し、第2ホッパーに比較例球体を投入した。比較例球体とPPのペレットの重量配合率を20:80、30:70、40:60の3種類の水準に設定した。PPとしてノバテックPP MA3を用いた。押出機では220℃、スクリュー回転数200回/分で混練して3mm径の棒状に押出し、水冷して長さ4mmに切断してペレットにした。なお、第2ホッパーに投入した比較例球体は予熱されていない。
(比較例2−2)
第1ホッパーにPPのペレットと比較例球体を配合して同時に投入し、比較例球体とPPのペレットの重量配合率を20:80、30:70、40:60の3種類の水準に設定した。PPとしてノバテックPP MA3を用いた。押出機では220℃、スクリュー回転数200回/分で混練して3mm径の棒状に押出し、水冷して長さ4mmに切断してペレットにした。
ガラス配合率ごとの前記PPのペレットのMFRを220℃で測定した結果を表6に示す。
なお、表6における実施例2のPP(ノバテックPP MA3)の熱可塑性樹脂配合率が100重量%の時のMFRは、10.0である。
図6は表6に示したガラス配合率(重量%)とMFRのデータに基づいて作成した、ガラス配合率とMFRの関係を2次多項式の近似曲線で示したグラフである。
このグラフにおいて□印は実施例2のMFRを、△印は比較例2−1のMFRを、×印は比較例2−2のMFRを示している。そして、これらの実施例2、比較例2−1及び比較例2−2のMFRの各曲線は、100%MFRである10.0に対して、ガラス粉末の配合率が増加したときに各々のMFRがどの様な低減傾向になるかを示したものである。そして、PPの100%MFR(10.0)が1/2MFRである5.0の時のガラス配合率を示すために、各曲線との交点からX軸に向かって垂線が引かれている。
上記1/2MFRの時の比較例2−2、比較例2−1及び実施例2のガラス配合率を表7に示す。
実施例2のガラス配合率が50重量%は云うまでもなく70重量%のガラス含有成形用ペレットを用いて、射出成形によって食器を成形することが出来た。
(実施例3)
実施例3は熱可塑性樹脂としてPETが用いられており、噴霧法でシラン化処理した球状Eガラス粉末とPETの重量配合率が40:60、50:50、60:40及び70:30の4種類の水準のものを用いた。
上記した押出機の第1ホッパーよりPETとしてバイロンFN305(商品名;東洋紡株式会社製品)の重量を計量して60重量%を投入し、250℃で溶融状態にした中に、第2ホッパーより上記実施例の球状Eガラス粉末の重量を計量して溶融温度250℃と同じか、それに近似した温度に予熱した40重量%を投入して、250℃、スクリュー回転数200回/分で混練し、3mm径の棒状に押出し、水冷して長さ4mmに切断してペレット状とし実施例3の第1の水準の成形用ペレットを得た。予熱温度は溶融温度250℃と同じであることが最も好ましく、(250℃±10%の温度)が好ましい。
以下同様に、バイロンFN305 50重量%、球状Eガラス粉末50重量%の第2の水準の成形用ペレット、バイロンFN305 40重量%、球状Eガラス粉末60重量%の第3の水準の成形用ペレット、バイロンFN305 30重量%、球状Eガラス粉末70重量%の第4の水準の成形用ペレットを得た。
(比較例3−1)
PETと比較例球体を別々に計量して押出機に投入した。第1ホッパーにPETのペレットを投入し、第2ホッパーに比較例球体を投入した。比較例球体とPETのペレットの重量配合率を20:80、30:70、40:60の3種類の水準に設定した。PETとしてバイロンFN305を用いた。押出機では250℃、スクリュー回転数200回/分で混練して3mm径の棒状に押出し、水冷して長さ4mmに切断してペレットにした。なお、第2ホッパーに投入した比較例球体は予熱されていない。
(比較例3−2)
第1ホッパーにPETのペレットと比較例球体を配合して同時に投入し、比較例球体とPETのペレットの重量配合率を20:80、30:70、40:60の3種類の水準に設定した。PETとしてバイロンFN305を用いた。押出機では250℃、スクリュー回転数200回/分で混練して3mm径の棒状に押出し、水冷して長さ4mmに切断してペレットにした。
ガラス配合率ごとの前記ペレットのMFRを250℃で測定した結果を表8に示す。 なお、表8における実施例3のバイロンFN305の熱可塑性樹脂配合率が100重量%の時のMFRは、20.0である。
図7は表8に示したガラス配合率(重量%)とMFRのデータに基づいて作成した、ガラス配合率とMFRの関係を2次多項式の近似曲線で示したグラフである。
このグラフにおいて□印は実施例3のMFRを、△印は比較例3−1のMFRを、×印は比較例3−2のMFRを示している。そして、これらの実施例3、比較例3−1及び比較例3−2のMFRの各曲線は、100%MFRである20.0に対して、ガラス粉末の配合率が増加したときに各々のMFRがどの様な低減傾向になるかを示したものである。そして、PETの100%MFR(20.0)が1/2MFRである10.0の時のガラス配合率を示すために、各曲線との交点からX軸に向かって垂線が引かれている。
上記1/2MFRの時の比較例3−2、比較例3−1及び実施例3のガラス配合率を表9に示す。
実施例3のガラス配合率が50重量%は云うまでもなく70重量%のガラス含有成形用ペレットを用いて、インジェクションブロー成形のホットパリソン法によって300mlのボトルを成形することが出来た。
(実施例4)
実施例4は熱可塑性樹脂としてPSが用いられており、噴霧法でシラン化処理した球状Eガラス粉末とPSの重量配合率が40:60、50:50、60:40及び70:30の4種類の水準のものを用いた。
上記した押出機の第1ホッパーよりPSとしてGPPS HF77(商品名;PSジャパン株式会社製品)の重量を計量して60重量%を投入し、190℃で溶融状態にした中に、第2ホッパーより上記実施例の球状Eガラス粉末の重量を計量して溶融温度190℃と同じか、それに近似した温度に予熱した40重量%を投入して、190℃、スクリュー回転数200回/分で混練し、3mm径の棒状に押出し、水冷して長さ4mmに切断してペレット状とし実施例4の第1の水準の成形用ペレットを得た。予熱温度は溶融温度190℃と同じであることが最も好ましく、(190℃±10%の温度)が好ましい。
以下同様に、GPPS HF77 50重量%、球状Eガラス粉末50重量%の第2の水準の成形用ペレット、GPPS HF77 40重量%、球状Eガラス粉末60重量%の第3の水準の成形用ペレット、GPPS HF77 30重量%、球状Eガラス粉末70重量%の第4の水準の成形用ペレットを得た。
(比較例4−1)
PSと比較例球体を別々に計量して押出機に投入した。第1ホッパーにPSのペレットを投入し、第2ホッパーに比較例球体を投入した。比較例球体とPSのペレットの重量配合率を20:80、30:70、40:60の3種類の水準に設定した。PSとしてGPPS HF77を用いた。押出機では190℃、スクリュー回転数200回/分で混練して3mm径の棒状に押出し、水冷して長さ4mmに切断してペレットにした。なお、第2ホッパーに投入した比較例球体は予熱されていない。
(比較例4−2)
第1ホッパーにPSのペレットと比較例球体を配合して同時に投入し、比較例球体とPSのペレットの重量配合率を20:80、30:70、40:60の3種類の水準に設定した。PSとしてGPPS HF77を用いた。押出機では190℃、スクリュー回転数200回/分で混練して3mm径の棒状に押出し、水冷して長さ4mmに切断してペレットにした。
ガラス配合率ごとの前記ペレットのMFRを190℃で測定した結果を表10に示す。 なお、表10における実施例4のGPPS HF77の熱可塑性樹脂配合率が100重量%の時のMFRは、7.5である。
図8は表10に示したガラス配合率(重量%)とMFRのデータに基づいて作成した、ガラス配合率とMFRの関係を2次多項式の近似曲線で示したグラフである。
このグラフにおいて□印は実施例4のMFRを、△印は比較例4−1のMFRを、×印は比較例4−2のMFRを示している。そして、これらの実施例4、比較例4−1及び比較例4−2のMFRの各曲線は、100%MFRである7.5に対して、ガラス粉末の配合率が増加したときに各々のMFRがどの様な低減傾向になるかを示したものである。そして、PSの100%MFR(7.5)が1/2MFRである3.8の時のガラス配合率を示すために、各曲線との交点からX軸に向かって垂線が引かれている。
上記1/2MFRの時の比較例4−2、比較例4−1及び実施例4のガラス配合率を表11に示す。
実施例4のガラス配合率が50重量%は云うまでもなく70重量%のガラス含有成形用ペレットを用いて、T−ダイでシートを成形し更に熱プレス成形を行って食品用トレーを成形することが出来た。
(実施例5)
実施例5は熱可塑性樹脂としてABSが用いられており、噴霧法でシラン化処理した球状Eガラス粉末とABSの重量配合率が40:60、50:50、60:40及び70:30の4種類の水準のものを用いた。
上記した押出機の第1ホッパーよりABSとしてサンタックUT−61(商品名;日本エイアンドエル株式会社製品)の重量を計量して60重量%を投入し、220℃で溶融状態にした中に、第2ホッパーより上記実施例の球状Eガラス粉末の重量を計量して溶融温度220℃と同じか、それに近似した温度に予熱した40重量%を投入して、220℃、スクリュー回転数200回/分で混練し、3mm径の棒状に押出し、水冷して長さ4mmに切断してペレット状とし実施例5の第1の水準の成形用ペレットを得た。予熱温度は溶融温度220℃と同じであることが最も好ましく、(220℃±10%の温度)が好ましい。 以下同様に、サンタックUT−61 50重量%、球状Eガラス粉末50重量%の第2の水準の成形用ペレット、サンタックUT−61 40重量%、球状Eガラス粉末60重量%の第3の水準の成形用ペレット、サンタックUT−61 30重量%、球状Eガラス粉末70重量%の第4の水準の成形用ペレットを得た。
(比較例5−1)
ABSと比較例球体を別々に計量して押出機に投入した。第1ホッパーにABSのペレットを投入し、第2ホッパーに比較例球体を投入した。比較例球体とABSのペレットの重量配合率を20:80、30:70、40:60の3種類の水準に設定した。ABSとしてサンタックUT−61を用いた。押出機では220℃、スクリュー回転数200回/分で混練して3mm径の棒状に押出し、水冷して長さ4mmに切断してペレットにした。なお、第2ホッパーに投入した比較例球体は予熱されていない。
(比較例5−2)
第1ホッパーにABSのペレットと比較例球体を配合して同時に投入し、比較例球体とABSのペレットの重量配合率を20:80、30:70、40:60の3種類の水準に設定した。ABSとしてサンタックUT−61を用いた。押出機では220℃、スクリュー回転数200回/分で混練して3mm径の棒状に押出し、水冷して長さ4mmに切断してペレットにした。
ガラス配合率ごとの前記ペレットのMFRを220℃で測定した結果を表12に示す。 なお、表12における実施例5のサンタックUT−61の熱可塑性樹脂配合率が100重量%の時のMFRは、30.0である。
図9は表12に示したガラス配合率(重量%)とMFRのデータに基づいて作成した、ガラス配合率とMFRの関係を2次多項式の近似曲線で示したグラフである。
このグラフにおいて□印は実施例5のMFRを、△印は比較例5−1のMFRを、×印は比較例5−2のMFRを示している。そして、これらの実施例5、比較例5−1及び比較例5−2のMFRの各曲線は、100%MFRである30.0に対して、ガラス粉末の配合率が増加したときに各々のMFRがどの様な低減傾向になるかを示したものである。そして、ABSの100%MFR(30.0)が1/2MFRである15.0の時のガラス配合率を示すために、各曲線との交点からX軸に向かって垂線が引かれている。
上記1/2MFRの時の比較例5−2、比較例5−1及び実施例5のガラス配合率を表13に示す。
実施例5のガラス配合率が50重量%は云うまでもなく70重量%のガラス含有成形用ペレットを用いて、射出成型により便座を成形することができた。
(実施例6)
実施例6は熱可塑性樹脂としてPVCが用いられており、噴霧法でシラン化処理した球状Eガラス粉末とPVCの重量配合率が40:60、50:50、60:40及び70:30の4種類の水準のものを用いた。
上記した押出機の第1ホッパーよりPVCとしてトリニテイANA 9930T(商品名:リケンテクノス株式会社製品)の重量を計量して60重量%を投入し、230℃で溶融状態にした中に、第2ホッパーより上記実施例の球状Eガラス粉末の重量を計量して溶融温度230℃と同じか、それに近似した温度に予熱した40重量%を投入して、230℃、スクリュー回転数200回/分で混練し、3mm径の棒状に押出し、水冷して長さ4mmに切断してペレット状とし実施例6の第1の水準の成形用ペレットを得た。予熱温度は溶融温度230℃と同じであることが最も好ましく、(230℃±10%の温度)が好ましい。
以下同様に、トリニテイANA 9930T50重量%、球状Eガラス粉末50重量%の第2の水準の成形用ペレット、トリニテイANA 9930T40重量%、球状Eガラス粉末60重量%の第3の水準の成形用ペレット、トリニテイANA 9930T30重量%、球状Eガラス粉末70重量%の第4の水準の成形用ペレットを得た。
(比較例6−1)
PVCと比較例球体を別々に計量して押出機に投入した。第1ホッパーにPVCのペレットを投入し、第2ホッパーに比較例球体を投入した。比較例球体とPVCのペレットの重量配合率を20:80、30:70、40:60の3種類の水準に設定した。PVCとしてトリニテイANA 9930Tを用いた。押出機では230℃、スクリュー回転数200回/分で混練して3mm径の棒状に押出し、水冷して長さ4mmに切断してペレットにした。なお、第2ホッパーに投入した比較例球体は予熱されていない。
(比較例6−2)
第1ホッパーにPVCのペレットと比較例球体を配合して同時に投入し、比較例球体とPVCのペレットの重量配合率を20:80、30:70、40:60の3種類の水準に設定した。PVCとしてトリニテイANA 9930Tを用いた。押出機では230℃、スクリュー回転数200回/分で混練して3mm径の棒状に押出し、水冷して長さ4mmに切断してペレットにした。
ガラス配合率ごとの前記ペレットのMFRを230℃で測定した結果を表14に示す。 なお、表14における実施例6のトリニテイANA 9930Tの熱可塑性樹脂配合率が100重量%の時のMFRは、3.4である。
図10は表14に示したガラス配合率(重量%)とMFRのデータに基づいて作成した、ガラス配合率とMFRの関係を2次多項式の近似曲線で示したグラフである。
このグラフにおいて□印は実施例6のMFRを、△印は比較例6−1のMFRを、×印は比較例6−2のMFRを示している。そして、これらの実施例6、比較例6−1及び比較例6−2のMFRの各曲線は、100%MFRである3.4に対して、ガラス粉末の配合率が増加したときに各々のMFRがどの様な低減傾向になるかを示したものである。そして、PVCの100%MFR(3.4)が1/2MFRである1.7の時のガラス配合率を示すために、各曲線との交点からX軸に向かって垂線が引かれている。
上記1/2MFRの時の比較例6−2、比較例6−1及び実施例6のガラス配合率を表15に示す。
実施例6のガラス配合率が50重量%は云うまでもなく70重量%のガラス含有成形用ペレットを用いて、Tダイによりシートを押出成形することが出来た。
(実施例7)
実施例7は熱可塑性樹脂としてPCが用いられており、噴霧法でシラン化処理した球状Eガラス粉末とPCの重量配合率が40:60、50:50、60:40及び70:30の4種類の水準のものを用いた。
上記した押出機の第1ホッパーよりPCとしてカリバー351−6(商品名:住友ダウ株式会社製品)の重量を計量して60重量%を投入し、300℃で溶融状態にした中に、第2ホッパーより上記実施例の球状Eガラス粉末の重量を計量して溶融温度300℃と同じか、それに近似した温度に予熱した40重量%を投入して、300℃、スクリュー回転数200回/分で混練し、3mm径の棒状に押出し、水冷して長さ4mmに切断してペレット状とし実施例7の第1の水準の成形用ペレットを得た。予熱温度は溶融温度300℃と同じであることが最も好ましく、(300℃±10%の温度)が好ましい。
以下同様に、カリバー351−6 50重量%、球状Eガラス粉末50重量%の第2の水準の成形用ペレット、カリバー351−6 40重量%、球状Eガラス粉末60重量%の第3の水準の成形用ペレット、カリバー351−6 30重量%、球状Eガラス粉末70重量%の第4の水準の成形用ペレットを得た。
(比較例7−1)
PCと比較例球体を別々に計量して押出機に投入した。第1ホッパーにPCのペレットを投入し、第2ホッパーに比較例球体を投入した。比較例球体とPCのペレットの重量配合率を20:80、30:70、40:60の3種類の水準に設定した。PCとしてカリバー351−6を用いた。押出機では300℃、スクリュー回転数200回/分で混練して3mm径の棒状に押出し、水冷して長さ4mmに切断してペレットにした。なお、第2ホッパーに投入した比較例球体は予熱されていない。
(比較例7−2)
第1ホッパーにPCのペレットと比較例球体を配合して同時に投入し、比較例球体とPCのペレットの重量配合率を20:80、30:70、40:60の3種類の水準に設定した。PCとしてカリバー351−6を用いた。押出機では300℃、スクリュー回転数200回/分で混練して3mm径の棒状に押出し、水冷して長さ4mmに切断してペレットにした。
ガラス配合率ごとの前記ペレットのMFRを300℃で測定した結果を表16に示す。 なお、表16における実施例7のカリバー351−6の熱可塑性樹脂配合率が100重量%の時のMFRは、10.0である。
図11は表16に示したガラス配合率(重量%)とMFRのデータに基づいて作成した、ガラス配合率とMFRの関係を2次多項式の近似曲線で示したグラフである。
このグラフにおいて□印は実施例7のMFRを、△印は比較例7−1のMFRを、×印は比較例7−2のMFRを示している。そして、これらの実施例7、比較例7−1及び比較例7−2のMFRの各曲線は、100%MFRである10.0に対して、ガラス粉末の配合率が増加したときに各々のMFRがどの様な低減傾向になるかを示したものである。そして、PCの100%MFR(10.0)が1/2MFRである5.0の時のガラス配合率を示すために、各曲線との交点からX軸に向かって垂線が引かれている。
上記1/2MFRの時の比較例7−2、比較例7−1及び実施例7のガラス配合率を表17に示す。
実施例7のガラス配合率が50重量%は云うまでもなく70重量%のガラス含有成形用ペレットを用いて、射出成型により冷蔵庫用製氷器を成形することができた。
(実施例8)
実施例8は熱可塑性樹脂としてPLAが用いられており、噴霧法でシラン化処理した球状Eガラス粉末とPLAの重量配合率が40:60、50:50、60:40及び70:30の4種類の水準のものを用いた。
上記した押出機の第1ホッパーよりPLAとしてテラマックTP−4030(商品名:ユニチカ株式会社製品)の重量を計量して60重量%を投入し、190℃で溶融状態にした中に、第2ホッパーより上記実施例の球状Eガラス粉末の重量を計量して溶融温度190℃と同じか、それに近似した温度に予熱した40重量%を投入して、190℃、スクリュー回転数200回/分で混練し、3mm径の棒状に押出し、水冷して長さ4mmに切断してペレット状とし実施例8の第1の水準の成形用ペレットを得た。予熱温度は溶融温度190℃と同じであることが最も好ましく、(190℃±10%の温度)が好ましい。
以下同様に、テラマックTP−4030 50重量%、球状Eガラス粉末50重量%の第2の水準の成形用ペレット、テラマックTP−4030 40重量%、球状Eガラス粉末60重量%の第3の水準の成形用ペレット、テラマックTP−4030 30重量%、球状Eガラス粉末70重量%の第4の水準の成形用ペレットを得た。
(比較例8−1)
PLAと比較例球体を別々に計量して押出機に投入した。第1ホッパーにPLAのペレットを投入し、第2ホッパーに比較例球体を投入した。比較例球体とPLAのペレットの重量配合率を20:80、30:70、40:60の3種類の水準に設定した。PLAとしてテラマックTP−4030を用いた。押出機では190℃、スクリュー回転数200回/分で混練して3mm径の棒状に押出し、水冷して長さ4mmに切断してペレットにした。なお、第2ホッパーに投入した比較例球体は予熱されていない。
(比較例8−2)
第1ホッパーにPLAのペレットと比較例球体を配合して同時に投入し、比較例球体とPLAのペレットの重量配合率を20:80、30:70、40:60の3種類の水準に設定した。PLAとしてテラマックTP−4030を用いた。押出機では190℃、スクリュー回転数200回/分で混練して3mm径の棒状に押出し、水冷して長さ4mmに切断してペレットにした。
ガラス配合率ごとの前記ペレットのMFRを190℃で測定した結果を表18に示す。 なお、表18における実施例8のテラマックTP−4030の熱可塑性樹脂配合率が100重量%の時のMFRは、4.0である。
図12は表18に示したガラス配合率(重量%)とMFRのデータに基づいて作成した、ガラス配合率とMFRの関係を2次多項式の近似曲線で示したグラフである。
このグラフにおいて□印は実施例8のMFRを、△印は比較例8−1のMFRを、×印は比較例8−2のMFRを示している。そして、これらの実施例8、比較例8−1及び比較例8−2のMFRの各曲線は、100%MFRである4.0に対して、ガラス粉末の配合率が増加したときに各々のMFRがどの様な低減傾向になるかを示したものである。そして、PLAの100%MFR(4.0)が1/2MFRである2.0の時のガラス配合率を示すために、各曲線との交点からX軸に向かって垂線が引かれている。
上記1/2MFRの時の比較例8−2、比較例8−1及び実施例8のガラス配合率を表19に示す。
実施例8のガラス配合率が50重量%は云うまでもなく70重量%のガラス含有成形用ペレットを用いて、射出成型により化粧用ブラシの持手部を成形することができた。
(実施例9)
実施例9は熱可塑性樹脂としてNyが用いられており、噴霧法でシラン化処理した球状Eガラス粉末とNyの重量配合率が40:60、50:50、60:40及び70:30の4種類の水準のものを用いた。
上記した押出機の第1ホッパーよりNyとしてナイロンA1030 BRF(商品名:ユニチカ株式会社製品)の重量を計量して60重量%を投入し、230℃で溶融状態にした中に、第2ホッパーより上記実施例の球状Eガラス粉末の重量を計量して溶融温度230℃と同じか、それに近似した温度に予熱した40重量%を投入して、230℃、スクリュー回転数200回/分で混練し、3mm径の棒状に押出し、水冷して長さ4mmに切断してペレット状とし実施例9の第1の水準の成形用ペレットを得た。予熱温度は溶融温度230℃と同じであることが最も好ましく、(230℃±10%の温度)が好ましい。
以下同様に、ナイロンA1030 BRF50重量%、球状Eガラス粉末50重量%の第2の水準の成形用ペレット、ナイロンA1030 BRF40重量%、球状Eガラス粉末60重量%の第3の水準の成形用ペレット、ナイロンA1030 BRF30重量%、球状Eガラス粉末70重量%の第4の水準の成形用ペレットを得た。
(比較例9−1)
Nyと比較例球体を別々に計量して押出機に投入した。第1ホッパーにNyのペレットを投入し、第2ホッパーに比較例球体を投入した。比較例球体とNyのペレットの重量配合率を20:80、30:70、40:60の3種類の水準に設定した。NyとしてナイロンA1030 BRFを用いた。押出機では230℃、スクリュー回転数200回/分で混練して3mm径の棒状に押出し、水冷して長さ4mmに切断してペレットにした。なお、第2ホッパーに投入した比較例球体は予熱されていない。
(比較例9−2)
第1ホッパーにNyのペレットと比較例球体を配合して同時に投入し、比較例球体とNyのペレットの重量配合率を20:80、30:70、40:60の3種類の水準に設定した。NyとしてナイロンA1030 BRFを用いた。押出機では230℃、スクリュー回転数200回/分で混練して3mm径の棒状に押出し、水冷して長さ4mmに切断してペレットにした。
ガラス配合率ごとの前記ペレットのMFRを230℃で測定した結果を表20に示す。 なお、表20における実施例9のナイロンA1030 BRFの熱可塑性樹脂配合率が100重量%の時のMFRは、4.3である。
上述したように各種の樹脂でガラス配合率40〜70重量%の範囲の球状ガラス粉末を含有する成形用ペレットを得ることができる。この成形用ペレットを用いて成形体を成形する方法には、ブロー成形法、射出成形法、押出成形法、真空成形法、プレス成形法等を挙げることができる。
図13は表20に示したガラス配合率(重量%)とMFRのデータに基づいて作成した、ガラス配合率とMFRの関係を2次多項式の近似曲線で示したグラフである。
このグラフにおいて□印は実施例9のMFRを、△印は比較例9−1のMFRを、×印は比較例9−2のMFRを示している。そして、これらの実施例9、比較例9−1及び比較例9−2のMFRの各曲線は、100%MFRである4.3に対して、ガラス粉末の配合率が増加したときに各々のMFRがどの様な低減傾向になるかを示したものである。そして、Nyの100%MFR(4.3)が1/2MFRである2.2の時のガラス配合率を示すために、各曲線との交点からX軸に向かって垂線が引かれている。
上記1/2MFRの時の比較例9−2、比較例9−1及び実施例9のガラス配合率を表21に示す。
実施例9のガラス配合率が50重量%は云うまでもなく70重量%のガラス含有成形用ペレットを用いて、モノフィラメント100dtexの紡糸をしてブラシ用素材を成形することができた。
比較例1に関して、ガラス配合率20、30重量%の比較例球体を用いた比較例1−1〜9−1は、押出機で各樹脂に応じた最適な温度で混練して押出しを行い、温度が上昇する等の変化は生じなかったが、配合率40重量%の比較例球体を用いた比較例1−1〜9−1は、温度が上昇する変化、例えば、PEでは10〜50℃の範囲で上昇する変化が見られた。
比較例2に関して、ガラス配合率20重量%の比較例球体を用いた比較例1−2〜9−2は、温度が上昇する等の変化は生じなかったが、配合率30、40重量%の比較例球体を用いた比較例1−2〜9−2は、温度が上昇する変化と共に金属音の発生が見られた。特に40重量%の比較例球体の金属音は30重量%と比べてはるかに大きいものであった。
このことから、比較例1及び2の比較例球体は図5〜図13からみて、比較例球体のMFRが樹脂100の1/2以下になると変化が生じていることが判る。
ところが、ガラス配合率60、70重量%の球状ガラス粉末を用いた実施例1〜9は、そのMFRが樹脂100%の1/2以下であるにも拘わらず、温度の変化も金属音の発生も見られなかった。このMFR1/2以下の実施例と比較例の差は、上述した4つの原因、第1の半溶融状態での流動性の急激な低下、第2の凝集ガラス粉末の存在、第3のガラス粉末の様々な形状とその平均粒径、そして、第4のガラスと熱可塑性樹脂の比熱の差、これらの4つの原因を、実施例は全て取り除くことができたことを実証している。
従って、このことは、4つの原因を取り除くために、第一の原因である固相と液相が混合した半溶融状態の発生に対して、熱可塑性樹脂が溶融状態になる位置に設けられた第2ホッパーからその領域にガラス配合率40〜70重量%の範囲のガラス粉末を投入すること、第二の原因である凝集ガラス粉末の存在に対して、噴霧法で個々のガラス粉末の表面をシラン化合物により全面的に被覆すること、第三の原因であるガラス粉末の様々な形状と分布幅が大きいことに対して、形状が球状であり、10〜40μmの平均粒径の分布幅が小さいガラス粉末を投入すること、そして、第四の原因である比熱の差が大きいことに対して、前記熱可塑性樹脂が溶融状態にある領域に予熱した40〜70重量%の範囲のガラス粉末を投入することで、4つの原因を取り除くことができ、ガラス配合率40〜70重量%の範囲のガラス粉末を含有するガラス含有成形用ペレットを得ることが可能となったことを示している。
そして、成形された前記ガラス含有成形用ペレットは、そのガラス粉末が、球状の形状であり、10〜40μmの平均粒径であり、その表面がシラン化合物により全面的に被覆されており、該ガラス含有成形用ペレット中に40〜70重量%の範囲のガラス配合率で、独立して均一に分散されている状態で含有されていることを見出した。
更に、上記9種類の実施例で示された製造方法の記載からみて、熱可塑性樹脂中に40〜70重量%の範囲のガラス配合率でガラス粉末を含有するガラス含有成形用ペレットを成形するには、ガラス繊維の粉砕物を高温火炎中に噴霧して球状化し、シラン化合物を含む水を噴射してシラン化合物に被覆された球状ガラス粉末を得て、重量を計量した熱可塑性樹脂を前記押出機内に投入して溶融して、ガラス配合率40〜70重量%の範囲の前記球状ガラス粉末を計量して予熱し、前記熱可塑性樹脂が溶融状態にある領域に、前記予熱した球状ガラス粉末を前記押出機内に投入し混練して押出せばよい。
なお、上記実施例では、押出機内に投入する球状のガラス粉末を溶融温度と同じか、それに近似した温度に予熱する最良の実施形態の例を示したが、本発明はこの例に限定されるものではなく、溶融状態のペレットに大量のガラス粉末を投入する際に、急激な温度低下を生じさせないために熱可塑性樹脂の溶融温度を上げて制御しておく等の、従来のペレットの成形に用いられている溶融温度(加温、冷却)、スクリュー速度等の制御により成形されたガラス含有成形用ペレットも、本発明のガラス含有成形用ペレットに含まれるものである。
次に、9種類の実施例の有する特性であるMFRについて説明する。
9種類の、球状Eガラス粉末を含有する組成物の実施例、及び、比較例球体を含有する組成物の比較例、この両者のガラス配合率とMFRの関係を図5〜図13のグラフに示したが、この両者のグラフを対比すると、9種類の実施例のグラフは、前記MFRがガラス配合率の増加に伴い100%熱可塑性樹脂のMFRを頂点とする放物線を示しており、100%MFRの1/2の値がガラス配合率50〜60重量の範囲にあるのに対して、9種類の比較例1及び2のグラフは、前記MFRがガラス配合率の増加に伴い100%熱可塑性樹脂のMFRを頂点とする下方へ傾斜するほぼ直線を示しており、比較例1と比較例2の熱可塑性樹脂100%のMFRの1/2の値が、比較例1ではガラス配合率30〜40重量%の範囲にあり、比較例2ではガラス配合率20〜30重量%の範囲にあることを示している。
従って、9種類の実施例は、前記MFRがガラス配合率の増加に伴い100%熱可塑性樹脂のMFRを頂点とする放物線を示しており、ガラス配合率40〜50重量%の範囲において、100%MFRの1/2以上の値であり、ガラス配合率50〜60重量%の範囲において、100%MFRの1/2の値から1/2以下の値に変わることを示している。 比較例1は前記MFRがガラス配合率の増加に伴い100%熱可塑性樹脂のMFRを頂点とする下方へ傾斜するほぼ直線を示しており、ガラス配合率30〜40重量%の範囲において、100%MFRの1/2以上の値から1/2以下の値に変わることを示し、比較例2は前記MFRがガラス配合率の増加に伴い100%熱可塑性樹脂のMFRを頂点とする下方へ傾斜するほぼ直線を示しており、ガラス配合率20〜30重量%の範囲において、100%MFRの1/2以上の値から1/2以下の値に変わることを示している。
実施例1〜9のグラフは、比較例のグラフよりガラス配合率の増加に伴うMFRの低下挙動が緩やかであることを示しており、このことは、製造工程で球状ガラス粉末の配合量が仮に変動しても、それに起因するMFRの変動が小さいことが判る。従って、ガラス含有成形用ペレットの製造工程においても品質管理上、有利であることがこれらのグラフで示されている。
次に、表5、7、9、11、13、15、17、19及び21に示した9種類の熱可塑性樹脂ごとの1/2MFRに関する、比較例2、比較例1及び実施例のガラス配合率の全てをまとめて表22に示す。
表22が示す比較例と実施例のMFRからみて、1/2MFRの時の比較例2のガラス配合率は24〜28重量%の範囲にあり、その時の比較例1のガラス配合率は31〜36重量%の範囲にあり、そして、その時の実施例のガラス配合率は53〜57重量%の範囲にあることから、比較例2は、前記MFRが1/2の値である時に、ガラス配合率24〜28重量%と非常に少ない範囲にあることを示し、比較例1は、その時にガラス配合率31〜36重量%と比較例2より僅かながら多い範囲にあることを示しているが、上記実施例1〜9は、その時に、そのガラス配合率が53〜57重量%と比較例2の約2倍、比較例1の約1.6倍の大量のガラス配合率の範囲にあることを見出した。
上述した前記熱可塑性樹脂の1/2MFRは、ガラス配合率の増加に伴うガラス含有成形用ペレットのMFRの特性を把握するのに有用である。
実施例1〜9の熱可塑性樹脂100%のMFR、ガラス配合率40、50、60、70重量%の5点のMFRを表23に示した。
図14は表23の5点のデータに基づいて計算された2次多項式の近似曲線を示し、実施例1〜9のガラス含有成形用ペレットにおけるガラス配合率とMFRの関係を示したグラフである。このグラフはガラス配合率の増加に伴って各熱可塑性樹脂100%のMFRが漸減する傾向を示しているが、そのMFRの大きいABS(30.0)及びPET(20.0)は他の樹脂と比べて放物線を描きながら漸減する傾向が大きく、MFRが10.0であるPC、PPは、放物線を描きながら漸減する傾向がなだらかであることが示されている。MFRが0.25〜7.5の範囲にあるPS、Ny、PLA、PVC及びPEは、PC及びPPより漸減する傾向がよりなだらかである。
実施例1〜9は、図14のグラフからガラス配合率の増加に伴って漸減するMFRが放物線上の値を示していることが判るが、ガラス配合率40、50、60及び70重量%の各増加に伴って、そのMFRが熱可塑性樹脂100%のMFRに対して、どの程度低下しているかを示す定量的な数値としてのMFRの低下割合が、例えば、ガラス配合率70重量%のガラス含有成形用ペレットのMFRの低下割合が求められれば、押出機を長時間に渡って運転し続けた場合、どの程度のMFRの低下割合でスクリューが破損を起こす等のトラブルの発生を防げるかが事前に分かる。
また、地球温暖化問題及び石油資源の枯渇問題を解決するためには、大量の球状ガラス粉末を配合すればする程効果的であるが、ガラス含有成形用ペレットをブロー成形法、射出成形法、押出成形法等で成形した成形体を大量生産化することを考えると、MFRの低下割合を求めることで如何なる成形法でも成形し易いガラス配合率を検討する必要がある。
そして、ガラス配合率の値とMFRの低下割合との相互の関係が分かれば、選定した熱可塑性樹脂のMFRに応じてガラス配合率を容易に決定することが可能になる。例えば、PEを選定してガラス含有成形用ペレットを成形する場合、PEの100%のメルトフローレートが0.25と小さい値であるから、MFRの低下割合を0.6に抑えて成形するのに、必要なガラス配合率の値を容易に決定できれば便利である。
そこで、最初に、熱可塑性樹脂に対してガラス配合率の増加に伴うMFRの低下割合の求め方を説明する。
上述したしたように、上記実施例1〜9の9種類の熱可塑性樹脂の1/2MFRに関する、比較例2、比較例1及び実施例のガラス配合率を表22に示したが、この熱可塑性樹脂の1/2MFRは、熱可塑性樹脂100%に配合する球状ガラスの増加により、ガラス含有成形用ペレットのMFRが熱可塑性樹脂100%の1/2の値になるガラス配合率を示している。例えば、PEは57重量%、PPは54重量%のガラス配合率の時に熱可塑性樹脂100%の1/2の値を示す。このことから、表23で示した実施例1〜9のガラス配合率40、50、60、70重量%のMFRを熱可塑性樹脂100%のMFRで割った値、即ち、ガラス配合率の増加により熱可塑性樹脂100%のMFRがどの程度低下しているかを示すMFRの低下割合を意味している。
そこで、表23で示した実施例1〜9のガラス配合率40、50、60、70重量%のMFRを熱可塑性樹脂100%のMFRで割った値を「メルトフローレート低下割合」(以下、「MFR低下割合」という。)と定義してその値を求めた。その求めた結果を表24に示す。表22は1/2MFRの時に示すガラス配合率の値を表しているが、表24はガラス配合率が40、50、60、70重量%の時に示すMFR低下割合を表しているために、MFR低下割合がガラス配合率ごとに異なった範囲を示していることに留意されたい。
図15Aは表24の5点のデータに基づいて計算された9種類の実施例1〜9に関するMFR低下割合の2次多項式の近似曲線、いわゆる放物線を示し、実施例1〜9のガラス含有成形用組成物におけるMFR低下割合とガラス配合率の関係を示したグラフである。例えば、ABSはy=−1.9686x+0.136x+0.9982、PPはy=−1.31x−0.2218x+0.9997、そして、PSはy=−0.5147x−0.7046x+1.0017の式で表され、これらの式は放物線を示すものである。図15のグラフはx軸がガラス配合率(重量%)を、y軸がMFR低下割合を示している。9種類の実施例1〜9は100%時のMFRが9種類の固有の値(0.25〜30.0)を有しているが、何れの実施例1〜9であっても、MFR低下割合が、図15に示すようにガラス配合率の増加に伴って漸減し続けていること、そして、各ガラス配合率に対して示す9種類のMFR低下割合は、分散することなく0.10〜0.17の狭い範囲に集中していることが分かる。具体的には、各ガラス配合率のMFR低下割合の最大値と最小値の差を示すと、ガラス配合率40重量%の最大値が0.75、最小値が0.65であり、その差は0.10、ガラス配合率50重量%の最大値が0.62、最小値が0.55であり、その差は0.12、ガラス配合率60重量%の最大値が0.48、最小値が0.34であり、その差は0.14、そして、ガラス配合率70重量%の最大値が0.28、最小値が0.11であり、その差は0.17の範囲に集中している。
このMFR低下割合の最大値と最小値の差が上記の狭い範囲内にあることから、ガラス配合率の増加により熱可塑性樹脂の種類に関係なく、例えば、結晶高分子であるPE、PP、PET等、非結晶高分子であるPS、PVCの融点、ガラス転移点の相違による弾性率の相違に関係なく、同じような傾向でMFR低下割合が漸減していることを示している。
表25は表24のガラス配合率40重量%、50重量%、60重量%、そして70重量%に対するMFR低下割合の最大値と最小値を示す表である。
図16は表25で示した各ガラス配合率に対するMFR低下割合の最大値と最小値の各5点のデータにより得られた2次多項式の近似曲線で、実施例1〜9のガラス含有成形用ペレットにおけるガラス配合率とMFR低下割合の関係において、最大値と最小値を2本の2次多項式の近似曲線のグラフである。このグラフにおいて○印はMFR低下割合の最大値を、X印はMFR低下割合の最小値を示している。
最大値の近似曲線は以下に示す式(1)の通りであり、最小値の近似曲線は以下に示す式(2)の通りである。ここで、xはガラス配合率(0.40≦x≦0.70)を、yはMFR低下割合を示している。
y = −1.3418x − 0.0803x + 0.9994 (1)
y = −1.4003x − 0.2764x + 0.9985 (2)
式(1)及び式(2)は、熱可塑性樹脂100%に配合する各ガラス配合率に対するMFR低下割合の最大値と最小値から得られた放物線を示すもので、ガラス配合率40〜70重量%の範囲における、何れのガラス配合率に対するMFR低下割合は、式(1)及び式(2)で記述される値の範囲内にあることを意味している。
上記の式はガラス配合率の値とMFR低下割合との相互の関係を示すものであるから、選定した熱可塑性樹脂のメルトフローレートに応じてガラス配合率を容易に決定することが可能になった。ガラス配合率の値とMFR低下割合との相互の関係が分からなければ、例えば、熱可塑性樹脂としてPEを選定して、PEの100%のメルトフローレートが0.25と小さい値であるから、球状ガラス粉末を配合してもMFR低下割合を0.6にしたいとの要求があった場合に、ガラス配合率をどの程度の割合にすれば良いか分からないので、試行錯誤で球状ガラス粉末を配合してMFRを測定しなければならない。しかしながら、必要なガラス配合率の値は、上記式(1)及び式(2)から0.6を取る値が最大で52重量%、最小で45重量%が求まるから、使用する組成物の用途等に応じて任意のガラス配合率を決定できるようになった。逆に、ガラス配合率50重量%の時のMFR低下割合を知りたい場合に、上記式(1)及び式(2)からガラス配合率50重量%の時の最大が0.62で、最小が0.51の範囲内にMFR低下割合があることが分かるから、使用する組成物の用途等に応じて任意のMFR低下割合を決定できるようになった。このように、上記式(1)及び式(2)は、ガラス配合率又はMFR低下割合がどの位の範囲の値にあるかを示唆している。
既述したように、MFR低下割合は、ガラス配合率の増加により、熱可塑性樹脂の種類に関係なく、例えば、結晶高分子であるPE、PP、PET等、非結晶高分子であるPS、PVCの融点、ガラス転移点の相違による弾性率の相違に関係なく、同じ傾向で漸減していることから、統一的にガラス含有成形用ペレットの流動特性を把握でき、MFR低下割合を選定すれば樹脂中に配合すべきガラス配合率がどの位の範囲の値にあるかを予測することが、又は、ガラス配合率を選定すればガラス含有成形用ペレットのMFR低下割合がどの位の範囲の値にあるかを予測することが可能となり、ガラス含有成形用ペレット及びガラス含有成形体の成形時の操業性の向上を図ることが可能となった。
ところで、上記9種類のグラフを詳細に検討してみると、PP、PVC、PC及びNyの4種類のグラフは、近似した放物線が描かれていることを見出したので、この4種類のグラフだけを抜き出して図16Aに示す。
図16Aは表24のPP、PVC、PC及びNyの4種類の実施例2、6、7及び9に関するMFR低下割合の2次多項式の近似曲線、いわゆる放物線を示し、実施例2、6、7及び9のガラス含有成形用ペレットにおけるガラス配合率とMFR低下割合の関係を示したグラフである。PPはy=−1.31x−0.22x+1.00、PVCはy =−1.65x−0.05x+1.00、PCはy=−1.72x−0.03x+1.00、そして、Nyはy=−1.48x−0.14x+1.00の式で表され、これらの式は放物線を示すものである。なお、上記式の係数及び常数は小数点第3位以下を四捨五入して得た値である。
図16Aのグラフはx軸がガラス配合率(重量%)を、y軸がMFR低下割合を示している。そして、図16Aに示すPP、PVC、PC及びNyの4種類のグラフが重なり合っていることから、この4種類のグラフの形状がほぼ同一形状であることが分かる。
そして、表24のガラス配合率が40、50、60、70重量%の時に示すMFR低下割合から、PP、PVC、PC及びNyの4種類のガラス配合率のMFR低下割合の最大値と最小値の差を示すと、ガラス配合率40重量%の最大値が0.73、最小値が0.70であり、その差は0.03、ガラス配合率50重量%の最大値が0.56、最小値が0.55であり、その差は0.01、ガラス配合率60重量%の最大値が0.40、最小値が0.34であり、その差は0.06、そして、ガラス配合率70重量%の最大値が0.20、最小値が0.15であり、その差は0.05の範囲にあり、これらの4種類のグラフの最大値と最小値の差は極めて狭い範囲にあることから、この4種類のガラス配合率(重量%)に対するMFR低下割合は、同じ放物線上に沿って漸減する特性を有することが判った。
そこで、PP、PVC、PC及びNyの4種類のガラス配合率が40、50、60、70重量%の時に示すMFR低下割合の平均値を計算して、その平均値に基づいて近似式のグラフを求めた。図16Bはガラス配合率と平均値のMFR低下割合の関係を示した放物線の平均値の近似式のグラフである(以下、「平均値近似式」という。)。この平均値近似式であるy=−1.53x−0.11x+1.00は、xがガラス配合率で0.40≦x≦0.70の範囲にあり、yがMFR低下割合である。なお、上記式の係数及び常数は小数点第3位以下を四捨五入して得た値である。
ここで、上記平均値近似式を用いて、ガラス配合率が40、50、60、70重量%のMFR低下割合を求めてみると、40重量%が0.71で、50重量%が0.56で、60重量%が0.38で、70重量%が0.17である。40重量%から50重量%に増えることで、MFR低下割合が0.15の減少を示し、50重量%から60重量%に増えることで、MFR低下割合が0.18の減少を示し、60重量%から70重量%に増えることでMFR低下割合が0.21の減少を示すことから、ガラス配合率が60重量%以上に増えるとMFR低下割合が急激に減少することが分かる。
このガラス配合率60重量%以上のMFR低下割合の急激な減少により、MFRの急激な減少が押出機のスクリューを破損させる等のトラブルの発生、そして、如何なる成形方法で成形品を成形させてもトラブルの発生を起こさせないためには、どの程度のMFR低下割合であれば可能なのかを以下に説明する。
そのために、最初に、PP、PVC、PC及びNyの比較例2のMFRを検討する。この比較例2は、従来のガラス粉末を含有したペレットの製造方法で得られたもので、従来の製造方法ではガラス配合率が40重量%を超えると製造が不可能なことは、比較例2のガラス配合率40重量%のペレットを押出機で混練して押し出す際に、押出機のスクリューの回転数が増すにつれて摩擦熱により溶融温度が上昇することが実験によって確かめられた。比較例2のペレットは実施例の比較対象のために少量生産ではあったが、摩擦熱のために長時間に渡ってガラス配合率40重量%のペレットを製造することができないことが分かった。
そこで、従来から用いられているガラス配合率30重量%のペレットを対象にして、そのMFR低下割合を検討することで、どの程度のMFR低下割合のペレットを用いた場合に、トラブルが生じないでブロー容器が得られるかを判断するのに大いに役立つものと考えて、比較例2のPP、PVC、PC及びNyのMFR低下割合を以下に検討する。
30重量%PPの比較例2のMFRは表6に示されており4.0であるから、MFR低下割合は0.40である。同様に、PCの比較例2のMFRは3.5であるから、MFR低下割合は0.35である。また、Nyの比較例2のMFRは1.4であるから、MFR低下割合は0.33である。これらのPP、PVC、PC及びNyのMFR低下割合のうち、最も大きい値である0.40を示すPPのMFR低下割合を用いれば、PE及びPPはその値より小さいMFR低下割合であるので、トラブルの発生の防止ができることは明らかである。
従って、MFR低下割合が0.40より大きい値のガラス含有成形用ペレットを用いれば、トラブルの発生の防止が可能であることを示唆している。そこで、次に、実施例のガラス含有成形用ペレットのMFR低下割合が0.40を示すガラス配合率を、図16Bで示した平均値近似式を用いて求める。平均値近似式にy=0.40を代入することでx=0.59が得られた。このことは、如何なる成形方法で成形品を成形させてもトラブルが生じないで、ガラス含有成形用ペレットを用いて成形品を成形するのに、平均値近似式で記述される値で、そのガラス配合率が40〜59重量%の範囲の値を示し、そして、そのMFR低下割合が0.71〜0.40の範囲の値を示すものを用いれば、トラブルが発生することなく、工業的に長時間に亘る大量生産ができることを意味している。
そこで、MFR低下割合が0.40を示すPPのガラス含有成形用ペレットを用いて大量生産が可能であるか試みた。具体的には、射出成形機で嵌合の必要な化粧用容器を成形して、トラブルが発生することなく工業的に長時間に亘る大量生産ができるか試みた。一週間の間、休業することなく化粧用容器を製造し続けたところ、化粧用容器を成形している最中にトラブルが発生することなく、工業的に長時間に亘る大量生産ができることが判明した。
それ故に、MFR低下割合が0.40以上であれば、成形体を成形する際に、トラブルが発生することなく、工業的に長時間に亘る大量生産ができることが判った。
次に、図16Bの平均値近似式である、y=−1.53x−0.11x+1.00を以下に詳細に検討する。
表24のガラス配合率に対するMFR低下割合は、実験データが有する誤差のために、上記の式のxにガラス配合率を代入して得られるMFR低下割合と異なる値が示されているが、この実験データがガラス配合率40、50、60及び70重量%毎にどの位の誤差の範囲にあるか計算を行ってみた。上記平均値近似式にガラス配合率40、50及び60重量%を代入して得られたMFR低下割合は、上記したように、40重量%が0.71で、50重量%が0.56で、60重量%が0.38である。それに対して、表24に示すPP、PVC、PC及びNyのガラス配合率40重量%での誤差が−1.4%、+4.2%、+2.8%、+1.4%であり、ガラス配合率50重量%での誤差が0.0%、0.0%、−1.8%、0.0%であり、ガラス配合率60重量%での誤差が+5.3%、−7.9%、−10.5%、−2.6%である。ここで、MFR低下割合が0.40以上であることを前提として平均値近似式のグラフの検討を行っているので、ガラス配合率70重量%は省略している。
上記の計算結果から、ガラス配合率における誤差の最大値は+5.3%、最小値は−10.5%であることが判った。このことは、実験により得られたMFR低下割合が誤差を有しているために、上記平均値に基づくグラフの近似式にガラス配合率(x)を代入して得たMFR低下割合(y)は、最大で+5.3%、最小で−10.5%の誤差の範囲にあることを意味している。
それ故に、上記平均値近似式は、ガラス配合率の増加に伴ってMFR低下割合が漸減することを表していると共に、実験により得られたMFR低下割合が最大で+5.3%、最小で−10.5%の誤差の範囲にあることを意味している。このことを換言すれば、ガラス配合率の増加に伴ってMFR低下割合の示す値が、上記平均値近似式に沿って漸減する値を意味している。従って、「平均値近似式に沿って漸減する値」の用語は誤差を含めた値と定義して用いるので、以下に該用語を用いる場合には誤差を含めた値を意味していることに注意されたい。
上記平均値近似式は、ガラス配合率の増加に伴ってガラス含有成形用ペレットのMFR低下割合が、この平均値近似式に沿って漸減する値を取ることを示しているので、換言すれば、この放物線の式で、ガラス配合率とMFR低下割合の関係を示しているので、統一的にガラス含有成形用ペレットの流動特性を把握でき、必要とするMFR低下割合を選定すれば樹脂中に配合すべき球状ガラス粉末のガラス配合率の予測、又は、ガラス配合率を選定すればガラス含有成形用ペレットのメルトフローレート低下割合の予測が可能となり、ガラス含有成形用ペレット及びガラス含有成形品の成形時の操業性の向上を図ることが可能となる。
上記したように、ガラス配合率が59重量%以内のペレットを用いれば、MFR低下割合が0.40以上であることから、このペレットにより各種の成形方法で成形体を成形する際に、トラブルが発生することなく、工業的に長時間に亘る大量生産ができることに、このMFR低下割合0.40の技術的意味がある。
また、表22で示したPP、PVC、PC及びNyの4種類の1/2MFRは、MFR低下割合1/2を意味しているから、前記平均値に基づくグラフの近似式のMFR低下割合(y)に1/2を代入してガラス配合率(x)を計算する。その得られたガラス配合率(x)は0.535であるから、小数点第3位以下を四捨五入して0.54とする。この値は表22で示したPP、PVC、PC及びNyの4種類のガラス配合率である、54、53、53及び53重量%と一致しているといえる。
このMFR低下割合1/2は、ガラス含有成形用ペレット及びそれから成形する成形体を大量生産化すること、及び、地球温暖化問題及び石油資源の枯渇問題を軽減することを考えると、MFR低下割合が1/2であるガラス配合率54重量%で成形することが好ましい。
前記平均値に基づくグラフの近似式は、ガラス配合率の値とMFR低下割合との相互の関係を示すものであるから、選定した熱可塑性樹脂のメルトフローレートに応じてガラス配合率を容易に決定することが可能になった。ガラス配合率の値とMFR低下割合との相互の関係が分からなければ、例えば、熱可塑性樹脂としてPPを選定して、PPの100%のMFRが10.0であるが、球状ガラス粉末を配合してMFRを6.0(MFR低下割合を0.6)にしたいとの要求があった場合に、ガラス配合率をどの程度の割合にすれば良いか分からないので、試行錯誤で球状ガラス粉末を配合してMFRを測定しなければならない。しかしながら、必要なガラス配合率は、上記式からMFR低下割合(y)が0.6を取る値が計算できるので、ガラス配合率(x)が48重量%であることが求められ、使用する組成物の用途等に応じて任意のガラス配合率を決定できるようになった。また、その逆にガラス配合率からMFR低下割合を求めることもできる。
上述した式(1)及び式(2)は、ガラス配合率又はMFR低下割合を選定すれば、ガラス含有成形用ペレットのMFR低下割合が、又は、樹脂中に配合すべきガラス配合率がどの位の範囲の値にあるかを予測することができるが、上記平均値近似式は、PP、PVC、Ny又はPCのガラス含有成形用ペレットであれば、何れの樹脂を選定したとしても、ガラス配合率又はMFR低下割合を決めれば、ガラス含有成形用ペレットのMFR低下割合が、又は、樹脂中に配合すべきガラス配合率が、特定の値として予測ができる。従って、上記4種類の樹脂であれば、使用する組成物の用途等に応じたMFR低下割合又はガラス配合率の正確な予測値を決定できることが可能となった。

Claims (2)

  1. 溶融状態にある熱可塑性樹脂のペレットに大量のガラス粉末を投入して、該ペレットと該ガラス粉末を混練して押出されてなるガラス含有成形用ペレットのメルトフローレート低下割合の予測方法であって、
    前記熱可塑性樹脂のペレットがポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂及びポリカーボネート樹脂からなる群から選ばれる一種からなるペレットであり、前記ガラス粉末が球状の形状で中実であり、10〜40μmの平均粒径であり、γ−グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシランを0.1重量%含む水を噴射することにより、シラン化合物が該ガラス粉末の表面を全面的に被覆しており、該熱可塑性樹脂中にガラス配合率40〜59重量%の範囲で配合されており、該ガラス配合率xの増加に伴う前記ガラス含有成形用ペレットのメルトフローレート低下割合yが以下に記述される式によるガラス含有成形用ペレットのメルトフローレート低下割合の予測方法。
    y=−1.53x2−0.11x+1.00
    (x:ガラス配合率、y:メルトフローレート低下割合)
  2. 前記ガラス含有成形用ペレットがブロー成形品、射出成形品、押出成形品、真空成形品、又はプレス成形品のペレットとして用いられることを特徴とする請求項1に記載のガラス含有成形用ペレットのメルトフローレート低下割合の予測方法。
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