JP2009280693A - ガラス含有フィルム及びシート - Google Patents

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【課題】本発明は、ガラス配合率40〜70重量%で球状ガラス粉末が含有されているガラス含有成形用組成物を用いて、押出成形法で作製されたガラス含有フィルム及びシートの構造とその光学的特性を提供することを目的とする。
【解決手段】熱可塑性樹脂中に球状ガラス粉末が含有されているガラス含有成形用組成物を用いて押出成形法で作製されてなるガラス含有フィルム及びシートであって、
前記ガラス含有フィルム及びシートの球状ガラス粉末が、40〜70重量%のガラス配合率で含有しており、その表面が前記熱可塑性樹脂からなる平坦部と、その熱可塑性樹脂に被覆された多数の球状ガラス粉末により形成される球状凸部とからなり、この平坦部及び球状凸部が表面粗さを形成していることを特徴とする。
【選択図】 図11B

Description

本発明は、熱可塑性樹脂中に球状ガラス粉末が配合されているガラス含有成形用組成物を用いて押出成型法で作製されるガラス含有フィルム及びシートに関する。更に詳しくは、熱可塑性樹脂中にガラス配合率40〜70重量%の球状ガラス粉末が配合されているガラス含有成形用組成物を用いて押出成型法で作製されるガラス含有フィルム及びシートに関する。
我が国におけるフィルム・シート、容器、機械器具・部品、板等のプラスチック製品の生産実績は、平成14年が約583万トンで平成18年が約639万トンであり、過去5年間の間に9.6%の増加を示しており、平均で毎年1.9%ずつ増加し続けている。
上記プラスチック成形体のうち、特に容器は平成14年が約64万トン(全生産量の11%)で平成18年が約82万トン(全生産量の13%)であり、過去5年間の間に28.1%の増加を示し、平均で毎年5.6%ずつ増加し続けている。
ところで、平成16年の日本のプラスチック生産量は約1408万トンに達しており、プラスチックの中で熱可塑性樹脂の生産量が上位を占めており、プラスチックの生産量の約90%が熱可塑性樹脂であり、その生産量が今後も伸びることが予想される状況にある。
本発明者は、今日、地球規模の課題として喫緊に解決を迫られている、二酸化炭素等の地球温暖化問題、有限な石油資源の枯渇問題等をなんとか解決したいとの思いで日々熟慮を重ね続けた結果、一つの解決策として、熱可塑性樹脂にガラス粉末を大量に配合、例えば、70重量%のガラス粉末を配合させて押出機で混練し押出して成形用組成物が成形できるならば、熱可塑性樹脂の使用量が70%削減でき、そして、二酸化炭素の排出量が70%削減できるということに思い至ったものである。
そこで、本発明者は、本出願前に、発明の名称「ガラス含有成形用組成物及びその製造方法」の発明を特願2008−129263号として特許出願した。従来の成形技術では熱可塑性樹脂中に35重量%のガラス配合率までが限度で、40重量%以上のガラス配合率で球状ガラス粉末を含有させた成形用組成物を成形することができなかった。そこで、前記発明の目的は、熱可塑性樹脂中にガラス粉末の配合率の増加により起きる、流動性の急激な低下の原因を取り除くことにより、熱可塑性樹脂中にガラス配合率40〜70重量%のガラス粉末を配合しても成形を可能とする成形用組成物及びその製造方法、そして、その成形用組成物の有する特性を提供すること、そして、地球規模の課題として緊急に解決を迫られている、二酸化炭素等の地球温暖化問題、有限な石油資源の枯渇問題の一つの解決策を提供することを目的としたものであり、前記発明により熱可塑性樹脂中にガラス配合率40〜70重量%で球状ガラス粉末を含有させた成形用組成物の成形が可能となった。
上記したように、従来の成形技術では熱可塑性樹脂中に40重量%以上のガラス配合率で球状ガラス粉末を含有させた成形用組成物を成形することができなかったので、該ガラス含有成形用組成物を用いて押出成型法で作製されたガラス含有フィルム及びシートは当然ながら知られていない。
そこで、本発明者は、前記ガラス含有成形用組成物を成形して、その成形用組成物を用いて押出成形法でガラス含有フィルム及びシートを作製し、そのフィルム及びシートの構造の特徴と光学的特性を調べたところ、従来のフィルム及びシートにはない新規な構造の特徴と光学的特性があることが分かり、本発明を完成したものである。
それ故に、本発明は、前記ガラス配合率40〜70重量%で球状ガラス粉末が含有されているガラス含有成形用組成物を用いて、押出成形法で作製されたガラス含有フィルム及びシートの構造とその光学的特性を提供することを目的とする。
そこで、本発明者は、先願発明の前記ガラス含有成形用組成物を用いて、押出成形法で成形するガラス含有フィルム及びシート、そして、そのガラス含有中空成形体の有する特性や物性を鋭意研究することで、本発明のガラス含有フィルム及びシートを完成したものである。
請求項1に係る発明のガラス含有フィルム及びシートは、熱可塑性樹脂中に球状ガラス粉末が含有されているガラス含有成形用組成物を用いて押出成形法で作製されてなるガラス含有フィルム及びシートであって、前記ガラス含有フィルム及びシートの球状ガラス粉末が、40〜70重量%のガラス配合率で含有されており、その表面が前記熱可塑性樹脂からなる平坦部と、その熱可塑性樹脂に被覆された多数の球状ガラス粉末により形成される球状凸部とからなり、この平坦部及び球状凸部が表面粗さを形成していることを特徴とする。
請求項2に係る発明のガラス含有フィルム及びシートは、前記球状ガラス粉末が前記熱可塑性樹脂中に独立して無秩序に分布していることを特徴とする。
請求項3に係る発明のガラス含有フィルム及びシートは、100%熱可塑性樹脂の表面粗さを1とした場合、前記ガラス配合率の表面粗さの割合が直線的に1.8倍から3.1倍に増加することを特徴とする。
請求項4に係る発明のガラス含有フィルム及びシートは、前記ガラス含有率が増加するに従って、紫外線、可視光線及び赤外線の光透過率を低減させる特性を有することを特徴とする。
請求項5に係る発明のガラス含有フィルム及びシートは、前記ガラス含有フィルム及びシートが優れた光の遮蔽作用を奏する特性を有することを特徴とする。
請求項6に係る発明のガラス含有フィルム及びシートは、厚さ280μmの前記ガラス含有フィルム及びシートが透かし効果を奏する特性を有する。
請求項7に係る発明のガラス含有フィルム及びシートは、前記ガラス含有フィルム及びシートの外観が和紙の表出する柔らかさ、暖かさを有する和紙調外観であることを特徴とする。
従来の技術では熱可塑性樹脂中に40重量%以上のガラス粉末を配合させて成形することが不可能とされていたガラス含有成形用組成物が、40〜70重量%のガラス配合率のガラス粉末を含有させて成形することが可能となり、その組成物を用いた押出成形法で作製した成形体であるガラス含有フィルム及びシートを得ることが可能となった。
そのことにより、前記成形体を焼却する際に、排出される二酸化炭素の排出量を最大で70%削減することができ、地球規模の課題である二酸化炭素による地球温暖化問題を解決する技術として貢献度が大きい。
また、本発明のガラス含有フィルム及びシートは、熱可塑性樹脂、即ち、石油の使用量を最大で70%削減することができ、地球規模の課題である有限な石油資源の枯渇問題を解決する技術として貢献度が大きい。
そして、本発明のガラス含有フィルム及びシートは、前記成形体の焼却後に残った最大で70%のガラス粉末を樹脂に含有させて、再度ガラス含有成形用組成物を成形することで、70%のガラス粉末を何度でもリサイクルすることができ、循環型社会を形成する技術として貢献度が大きい。
更に、球状ガラス粉末の原料は日本に豊富にある資源であり、その材料費は低廉であるので、今日の高騰を続ける石油の代替可能な原料として有望である。
本発明のガラス含有フィルム及びシートは、220nm−3200nmの広い波長領域の光、即ち、紫外線、可視光線、赤外線の遮蔽作用を奏する機能を有しているので、例えば、本発明のガラス含有シートをブラインドとして作製した場合、夏は外からの赤外線を遮蔽して涼しく、紫外線も遮蔽するので家具類等の日焼けを防止し、冬は内部の赤外線が外部に透過するのを遮蔽するので暖かさを保ち、紫外線も遮蔽するので家具類等の日焼けを防止する効果がある。また、例えば、本発明のガラス含有フィルムを紫外線防止フィルムとして作製して、そのフィルムをガラスの表面に貼着した場合、上記ブラインドで記載した同様の効果が得られる。
更に、本発明のガラス含有フィルムを化粧品等の包装ケースの表面に貼着した場合、又は、本発明のガラス含有シートを該包装ケースとして作製した場合、その包装ケース内の製品の存在が確認でき、外部からの紫外線を遮蔽するので製品の日焼けを防止し、外部から赤外線を遮蔽するので製品の温度上昇による劣化を防止する効果がある。
最初に、上記した本出願前に出願した特願2008−129263号(発明の名称「ガラス含有成形用組成物及びその製造方法」(以下、「先願発明」という。)の内容を説明して、その後に、本発明の「ガラス含有フィルム及びシート」を説明する。前記ガラス含有成形用組成物の内容を説明するのは、前記「ガラス含有フィルム及びシート」が前記ガラス含有成形用組成物を用いて押出成形法で作製されるものなので、該ガラス含有成形用組成物をどの様にして成形するのか説明することで、ガラス含有率40〜70重量%のガラス粉末及び熱可塑性樹脂の素材から、ガラス含有成形用組成物が成形できることを理解しやすくするためである。
(前記ガラス含有成形用組成物)
図1は先願発明のガラス含有成形用組成物を成形し、その組成物を製造する製造方法に用いられる押出機の一例である単軸押出機の縦断面図である。前記押出機によりガラス配合率40〜70重量%の球状ガラス粉末と熱可塑性樹脂を混練して押出してガラス含有成形用組成物が成形される。
図1の単軸押出機を参照しながら、40〜70重量%の球状ガラス粉末と熱可塑性樹脂を混練して押出して、ガラス含有成形用組成物を成形する工程を説明する。
先願発明の実施形態に用いる単軸押出機の主要構造は、ホッパー、モーター、減速機、スクリュー、シリンダー、ヒーター・ブロワー(加熱・冷却装置)等から構成されていて、シリンダーの先端にアダプターを介してノズルダイが取り付けられている。従来の熱可塑性樹脂のみの混練、押出工程の場合には、ホッパーに投入された熱可塑性樹脂の成形材料(以下、「ペレット」という。)がスクリューのねじ山に沿って右側に送り出されていくが、樹脂の種類に応じてヒーター温度が設定されている。
前記単軸押出機は、供給材料であるペレットと球状ガラス粉末を投入する2個のホッパーが備えられている。図1に示す押出機のホッパーを左側から順に第1、第2ホッパーと称し、第1ホッパーには熱可塑性樹脂のペレットが投入され、押出機の中間部付近に設けられている第2ホッパーには、球状ガラス粉末が投入される。第2ホッパーの配置位置は、第1ホッパーよりスクリューバレル内に供給されたペレットが、スクリューによる混練搬送に伴って溶融状態になる位置に設けてある。
前記第1及び第2ホッパーが備えられた押出機は、樹脂材料と複数種類の充填剤、顔料等を配合して押出成形するものとして従来から知られているが、先願発明の第1及び第2ホッパーと従来のそれとの違いは、従来の第2ホッパーでは、ペレットの配合量に対して充填剤等のその配合率が極めて少ないので小型のホッパーが用いられているが、先願発明の第2ホッパーは球状のガラス粉末を大量に投入するので、その第2ホッパーの大きさはペレットの第1ホッパーと同等かそれより大きいものを用いる点、該ホッパーの上方に球状のガラス粉末を予熱する加熱装置(図示せず)が設けられている点が異なる。前記加熱装置は150℃〜350℃の範囲で加熱でき、一定温度に制御できるものであれば、通常用いられている加熱装置を用いることができる。
従来の第2ホッパーに投入する充填剤、顔料等の温度は常温で用いているが、先願発明の球状のガラス粉末は、第2ホッパーに投入する前に熱可塑性樹脂の溶融温度と同じか、それに近似した温度に予熱してから投入する。この予熱温度は溶融温度と同じであることが最も好ましく、(該溶融温度±10%の温度)が好ましい。予熱温度が(前記溶融温度−10%の温度)より低い温度であると、溶融状態の熱可塑性樹脂から大量のガラス粉末が熱を奪うために流動性が低下する恐れがあり、予熱温度が(前記溶融温度+10%の温度)より高い温度であると、熱可塑性樹脂の粘性抵抗が下がりすぎて液体状態になりペレット化できない恐れがあるので、ガラス粉末の予熱温度は(溶融温度±10%の温度)の範囲が適切である。
まず、決められた熱可塑性樹脂とガラス配合率にしたがって、供給するペレットの重量を計量して第1ホッパー内に投入し、スクリューによる混練搬送によって送られたペレットがヒーターにより溶融状態になる位置、即ち、第2ホッパーが配置されている位置で、供給する重量が計量された球状ガラス粉末を熱可塑性樹脂の溶融温度と同じか、それに近似した温度に予熱して第2ホッパー内に投入する。溶融熱可塑性樹脂中に投入された球状ガラス粉末が、混練されながら押出されてガラス含有成形用組成物が形成されて、その後に切断されてペレットが得られる。
前記ヒーターの温度は使用される熱可塑性樹脂の融点に応じて決められており、例えば、HD−PEが230℃、PPが220℃、PETが250℃等である。そして、押出機のスクリューの回転数は、200回/分で配合物を混練しながら3mmの径のノズルダイから押し出して棒状にしたものを、水で冷やして長さ4mmに切断してペレットを得た。
(球状ガラス粉末)
先願発明の球状ガラス粉末のガラス質は、SiO2、B23、P23の1種又は2種以上を網形成物とする、アルカリガラス、可溶性ガラス、無アルカリガラスが挙げられる。そして、その形状を球状にするには、ガラス繊維を粉砕して球状化する方法を用いることで平均粒径の分布をシャープにすることができる。該球状ガラス粉末のアルカリ分が多いと、熱可塑性樹脂の脆化を招きやすいので、アルカリ分の少ない可溶性ガラスが好ましく、更に、アルカリ分のない無アルカリガラスがより好ましい。
前記球状ガラス粉末は、ガラス繊維の直径が20μmのものを材料として用いている。ガラス繊維はその直径が一定であるから、ガラス繊維の長さが前記直径20μmからばらつかないように粉砕することで、直径20μm、長さ10〜30μmの粉砕物が得られる。この粉砕物を炉の内部に設けた酸素バーナーによる2500〜3000℃の火炎に噴霧して球状化し、噴霧状の球体に炉の下部に設けた水の噴射装置より、γ−グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシランを0.1重量%含む水を噴射して、噴霧状態でシラン化処理を行いバグフィルターで捕集した。この捕集したガラス粉体は球状の平均粒径が10〜40μmの球状のガラス粉末である。このように、上記ガラス繊維の直径が20μmのものを材料として用いることで、平均粒径が10〜40μmの球状のガラス粉末が得られる。上記噴霧状態で行うシラン化処理を行う方法を、以下、「噴霧法」という。
上記球状化したガラス粉末を前記噴霧法でシラン化処理をしたものが前記球状ガラス粉末である。換言すれば、この球状ガラス粉末はその表面がシラン化合物により全体的に覆われていることに特徴がある。
シラン化合物としては、以下の式で表されるものを挙げることができる。
4-n−Si−(OR’)n
(式中、Rは有機基を表し、R’はメチル基、エチル基又はプロピル基を表し、nは1〜3から選ばれる整数を表す)
かかるシラン化合物としては、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン等のエポキシ基を有するシランカップリング剤、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト基を有するシランカップリング剤、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基を有するシランカップリング剤が挙げられる。
従来から用いられているガラス粉末は、その形状が多角形、長方形等の様々な形状から構成されており、そして、その平均粒径が10〜100μmの広い分布幅にあるのに対して、先願発明のガラス粉末は形状が球状であり、その平均粒径が10〜40μmの範囲でその幅が非常に小さい。
図2は上述した球状ガラス粉末の製造方法で得られた球状ガラス粉末の平均粒径の分布の頻度を示すグラフである。このグラフの横軸は前記球状ガラス粉末の粒径(μm)で、縦軸は分布の頻度(%)を示している。前記球状Eガラス粉末は、粒径が25μmで最高の分布頻度を示しており、その25μmを中心に正規分布曲線上の10〜40μmの範囲に分布しており、その範囲にある粒径の頻度が高いことがわかる。
図3は前記球状ガラス粉末の1000倍の電子顕微鏡写真である。この写真から球状ガラス粉末は、各々のその形状が球状であり、大小様々な粒径のものが存在していることが観察できる。
図2の球状Eガラス粉末の平均粒径の分布の頻度を示すグラフとこの図3の写真から、熱可塑性樹脂中の球状ガラス粉末は、その形状が真円の球形であり、大小様々な粒径のものが存在しているが、その平均粒径が10〜40μmであることが示されている。
ところで、溶融熱可塑性樹脂中にガラス粉末を投入して混練する際に、その粒径が10μmより以下になると、微細粒子の割合が多くなり、比表面積の増加に伴い樹脂からガラス粉末が熱量を奪い、そのために樹脂の温度が急に低下することで溶融粘度が上昇し、剪断発熱により混練時の樹脂温度が極端に上昇するため、決められた両材料の配合率を調整することが困難になる。又、熱可塑性樹脂にガラス粉末を配合することで、一般的に、成形体の寸法安定性、機械強度(衝撃強度、曲げ強度等)、ソリ性、透過バリア性等の向上が図られるが、その粒径が10μmより以下になると、特に曲げ強度が低下するので好ましくない。
前記粒径が40μmより大になると巨大粒子の割合が多くなり、混練時の溶融粘度の上昇は少ないが、ガラス含有組成物を一定サイズのペレットに切断する際に、カット刃の摩耗が激しくなり、大量の該ガラス含有組成物を連続して生産することが困難となり、生産上の問題が生じる。又、その粒径が40μmより大になると、特に衝撃強度が低下するので好ましくない。従って、平均粒径は10〜40μmの範囲が好適である。
(熱可塑性樹脂)
熱可塑性樹脂としては、PE、PP、PET、PS、ABS、PVC、ポリカーボネート(以下、「PC」という。)、ポリ乳酸(以下、「PLA」という。)又はナイロン(以下、「Ny」という。)を挙げることができる。他にメタクリル樹脂、ポリアセタール、PBT、PTTの熱可塑性樹脂であれば使用することができる。
溶融状態にある熱可塑性樹脂中に最大で70重量%の球状ガラス粉末を配合して混練することにより、押出機の吐出口に設けたノズルダイより直径3mmの棒状に押し出して水で冷却してカッターで長さ約4mmに切断して、該熱可塑性樹脂中に球状ガラス粉末が独立して分散したペレット状のガラス含有成形用組成物が得られるが、直径及び長さはこれに限定されるものではない。
図4Aは、上述したガラス含有成形用組成物の製造方法で製造されたガラス含有成形用組成物(ペレット)の電子顕微鏡写真である。この電子顕微鏡写真は、PPに球状Eガラス粉末50重量%を配合して得られた、ペレットを側面から垂直に切断した切断部を50倍に拡大して撮影したものである。
図4Bは、前記切断部を100倍に拡大して撮影した電子顕微鏡写真である。
図4Cは、前記ペレットの側面を100倍に拡大して撮影した電子顕微鏡写真である。
図4Bのペレットの切断部の写真から、該ペレットはPP中に個々の球状のガラス粉末が凝集することなく独立して分散された状態で配合されていることが観察される。
このことから、前記球状ガラス粉末が噴霧法によりその表面がシラン化合物により全面的に被覆されることで、押出機内で混練し押し出して成形された前記ペレットが樹脂中に球状のガラス粉末が凝集することなく独立して分散された状態で配合されていることが判明した。
そして、図4Aの写真の中点より上下端部の近い位置まで円を描き、その円を均等に16分割して、16の各区画に配合されている球状ガラス粉末の数を目視して数え、その数えた結果を表1に示す。
なお、16分割線上に球状ガラス粉末がある場合には、1/2として球状ガラス粉末数の計算を行った。
表1の測定結果から、各区画における球状ガラス粉末数は、140±1の範囲にあることから、ペレット中に球状ガラス粉末が均一に分散されていることを示している。
以上のことから、先願発明のガラス含有成形用組成物は、ガラス粉末が、球状の形状であり、10〜40μmの平均粒径であり、その表面がシラン化合物により全面的に被覆されており、熱可塑性樹脂中に投入された球状のガラス粉末のガラス配合率で、独立して均一に分散されている状態で含有されているものであることが判明した。
ガラス含有成形用組成物の構造及びその製造方法を詳述したが、その方法を簡潔明瞭に述べるならば、該製造方法は、最初に、高温加熱された噴霧状態下で、シラン化合物が全面的に被覆された前記球状ガラス粉末を得て、重量を計量した熱可塑性樹脂を押出機内に投入して溶融して、前記熱可塑性樹脂が溶融状態にある領域に、重量を計量して予熱したガラス配合率40〜70重量%の前記球状ガラス粉末を押出機内に投入して、溶融状態にある熱可塑性樹脂中に前記投入された球状のガラス粉末を混練し押出すことで、ガラス含有成形用組成物を成形できる。
なお、上記の製造方法では、押出機内に投入する球状のガラス粉末を溶融温度と同じか、それに近似した温度に予熱する最良の実施形態の例を示したが、この例に限定されるものではなく、従来のペレットの成形に用いられている溶融温度(加温、冷却)、スクリュー速度等を制御する製造方法で成形されるガラス含有成形用組成物も、先願発明のガラス含有成形用組成物に含まれるものである。
次に、前記ガラス含有成形用組成物を用いて押出成形法により作製されてなるガラス含有フィルム及びシートを以下に説明する。
(ガラス含有フィルム及びシート)
押出成形法は、押出成形機のスクリューを止めずに溶融樹脂を連続的に押出し成形して、断面が同一の形状である製品を連続的に作製する加工法で、フィルム、シート、チューブ等を製造する方法であり、ビニールシート・包装用のフィルム、パイプなど、代表的な製品には日用品や生活用品、文房具などポピュラーなものが多い。
「ガラス含有フィルム及びシート」の用語は、その厚さが500μm以下のフィルム及びシートを意味するものであって、以下に記載される「ガラス含有フィルム及びシート」の用語はその意味で用いている。
本発明に使用する熱可塑性樹脂は、その種類を特定するものではないが、柔軟性を有するフィルム及びシート等の延伸製品には、低密度ポリエチレン(以下、「LDPE」という。)、直鎖状低密度ポリエチレン(以下、「LLDPE」という。)の単独又は配合のものを用いることが好ましい。
(製造方法)
上述したように、高温加熱された噴霧状態下で、シラン化合物が全面的に被覆された前記球状ガラス粉末を得て、重量を計量した熱可塑性樹脂を押出機内に投入して溶融して、前記熱可塑性樹脂が溶融状態にある領域に、重量を計量して予熱したガラス配合率40〜70重量%の前記球状ガラス粉末を押出機内に投入して、溶融状態にある熱可塑性樹脂中に前記投入された球状のガラス粉末を混練し押出すことで、ガラス含有成形用組成物(ペレット)を成形する。次に、前記成形されたペレットを押出成形機に投入して、前記熱可塑性樹脂に対応したシリンダー温度、ヘッド温度、スクリュー回転数により押し出してガラス含有フィルム及びシートを作製する。
(測定方法)
押出成形体の特性として、表面粗さ、光透過率及び透かし効果の測定を行った。
以下にその測定方法について説明をする。
(表面粗さ測定)
ガラス含有フィルム及びシートの表面は、熱可塑性樹脂中に40〜70重量%の球状ガラス粉末を配合することによりその表面に凹凸が生じていることが判明した。そこで、その表面の凹凸が球状ガラス粉末の増加に伴いどの程度の表面の粗さを示しているかをJIS B 0601(1982)の規格に基づき測定を行った。この規格では最大高さ(以下、「Rm」という。)、十点平均粗さ(以下、「Rz」という。)、中心線平均粗さ(以下、「Ra」という。)の3通りの表示法を定めているが、RmとRzの測定を行った。
Rmは、断面曲線から基準長さだけ抜き取った部分の最大の山と最深の谷を平均線に平行な2直線ではさみその間隔を縦倍率で割った値をμm単位で表わす。Rzは、断面曲線から基準長さだけ抜き取った部分の平均線に平行な直線のうち高い方から3番目の山と深い方から3番目の谷底を通るものを選びこの2直線の間隔を縦倍率で割った値をμm単位で表わす。Raは、粗さ曲線から、その中心線の方向に測定長さLの部分を抜き取りこの抜き取り部分の中心線をx軸、縦倍率の方向をy軸として、粗さ曲線をy=f(x)で表わした時、次の式で与えられた値をμm単位で表わす。
(測定条件)
成形体の表面の測定条件は、表側の面の時は縦倍率が500倍で、裏側の面の時は縦倍率が200倍で、横倍率が50倍で測定した。基準長さを2.5mmとし、カットオフ値を0.8mmとした。測定機器は3次元粗さ測定器(MODEL 3FK、小坂研究所製)の0.002mmRのダイヤモンド蝕針を用いて3次元粗さの測定を行った。検出器はPU−DJ2、0.7mN、0.002mmR(ダイヤモンド製)を用いた。
(光透過率の測定)
光透過率は機種名V−560の分光光度計を用いて全光線透過率をJIS K7361−1に準拠して、データ取込間隔が0.5nm、操作速度が400nm/minの条件で測定した。
(透かし効果の測定)
実施例として厚さ70μmのガラス配合率50重量%のフィルムを用いた。比較例として100%LDPEのフィルムを用意し、実施例の場合には、最初に印刷物上に1枚を載せ、次に2枚、4枚、最後に8枚のフィルムを載せて、垂直方向から印刷物に記載された文字を撮影した。比較例の場合も実施例と同様に最初に印刷物上に1枚を載せ、次に2枚のフィルムを載せて、垂直方向から印刷物に記載された文字を撮影し、撮影した写真上の文字を視認して、1枚の100%LDPEを基準としてその撮影された文字の状態を対比した。
また、前記フィルムを印刷物から3mm、6mm、そして9mm離した位置で垂直方向から印刷物に記載された文字を撮影し、撮影した写真上の文字を視認して、1枚の100%LDPEを基準としてその撮影された文字の状態を対比した。
(実施例1)
実施例1は、上記した押出機の第1ホッパーよりLDPE(LJ802:日本ポリエチレン株式会社製品)を投入して、230℃で溶融した中に、第2ホッパーに噴霧法でシラン化処理した平均粒径20μmの予熱した球状ガラス粉末を投入して、230℃でスクリュー回転数200回/分で混練を行い、球状ガラス粉末とPEの重量配合比が、50:50、60:40、70:30の3種類を水準とし、表25に示す配合条件でペレットを成形した。
前記ペレットを押出成形機に投入して、シリンダー温度180℃、ヘッド温度160℃、スクリュー回転数120rpmにより押し出してインフレーションにより実測厚さ85μmの延伸フィルムを作製した。
(比較例1)
球状ガラスを含有しない100%LDPEのみを用いて、実施例1の如く押出成形機の成形条件で厚さ実測100μmのフィルムを作成した。
(表面粗さの測定結果)
JIS B 0610−1982に基づき、3次元粗さ測定器(MODEL 3FK,小坂研究所製)により表面粗さを測定した実施例1の結果を図5〜図8に示す。
図5はガラス配合率50重量%のフィルムの表面粗さのグラフを、図6はガラス配合率60重量%のフィルムの表面粗さのグラフを、図7はガラス配合率70重量%のフィルムの表面粗さのグラフである。図8は比較例1の100%LDPEのフィルムの表面粗さのグラフである。
図5の表面粗さのグラフは、ガラス配合率50重量%のフィルムが、十点平均粗さ(Rz)で16.5μmであり、最大高さ(Rt)で19.5μmであることを示している。
図6の表面粗さのグラフは、ガラス配合率60重量%のフィルムが、十点平均粗さ(Rz)で22.5μmであり、最大高さ(Rt)が26.0μmであることを示している。
図7の表面粗さのグラフは、ガラス配合率70重量%のフィルムが、十点平均粗さ(Rz)で27.5μmであり、最大高さ(Rt)41.5μmであることを示している。
図8の表面粗さのグラフは、100%LDPEのフィルムが、十点平均祖さ(Rz)で02.5μmであり、最大高さ(Rt)が08.5μmであることを示している。
前記ガラス配合率50重量%のフィルムは、最大高さ19.5μmの表面粗さを有する。このことは両面の厚さが39μmとなり、フィルムの実測した厚さが100μmであるから、両面の厚さ分を引いた61μmがフィルムの肉厚に相当する。この表面粗さの測定値(両面の厚さ、39μm)と肉厚(61μm)が相違することが判明した。
上記の測定結果より、ガラス含有率を横軸に、表面粗さを縦軸にして、ガラス含有率と表面粗さの関係を図9Aに示した。□は最大高さを、△は十点平均祖さを表している。
図9Aのグラフから、表面粗さはガラス含有率が増えるに従って、最大高さ及び十点平均粗さが共に近似した割合で増えている傾向を示している。
最大高さに関して、100%LDPEが8.5μmであるのに対して、ガラス含有率50重量%が19.5μm、60重量%が22.5μm、70重量%が26.0であるから、100%LDPEの最大高さに対して、2.3倍、2.6倍、3.1倍に増えている。
十点平均粗さに関して、100%LDPEが7.5μmであるのに対して、ガラス含有率50重量%が16.5μm、60重量%が19.5μm、70重量%が22.5であるから、100%LDPEの十点平均粗さに対して、2.2倍、2.6倍、3.0倍に増えている。
図9Bは、上記した100%熱可塑性樹脂の表面粗さ(最大高さ及び十点平均粗さ)を1とした場合の、前記ガラス配合率とその表面粗さの割合の関係を2次多項式の近似曲線で示したグラフである。
この図9Bのグラフは、ガラス含有率が40重量%(表面粗さの割合は1.8である。)から70重量%(表面粗さの割合は3.1である。)に増加するに従って、表面粗さの割合が直線的に増加していることを示している。このことは、100%熱可塑性樹脂の表面粗さを1とした場合、前記ガラス配合率の表面粗さの割合が直線的に1.8倍から3.1倍に増加することを意味している。
(実施例2)
実施例2は、上記した押出機の第1ホッパーよりLDPE(低密度ポリエチレン)(LJ802:日本ポリエチレン株式会社製品)を投入して、230℃で溶融した中に、第2ホッパーに噴霧法でシラン化処理した平均粒径20μmの予熱した球状ガラス粉末を投入して、230℃でスクリュー回転数200回/分で混練を行い、球状ガラス粉末とPEの重量配合比が、40:60、50:50、60:40の3種類の水準とし、表25に示す配合条件でペレットを成形した。
実施例1と同様に、前記ペレットを押出成形機に投入して、シリンダー温度180℃、ヘッド温度160℃、スクリュー回転数120rpmにより押し出してインフレーションにより実測厚さ85μmの延伸フィルムを作製した。
実施例2のインフレーション・フィルムについて、JIS K 7015 1981に基づき光透過率を測定した。機種はV−560を用いて測定し、波長の測定範囲は200〜800nmである。実施例1のフィルムの光透過率の測定結果を表2に示す。
表2の100%LDPEフィルム(ガラス配合率0%)は、波長250nmから波長800nmの光透過率の全領域において、波長が大きくなるに従って光透過率も増えている。紫外線(220〜400nm)の領域では、光透過率は34%から52%であり、可視光線(400〜800nm)の領域では、光透過率は50%から80%である。
図10は、表2に示した各ガラス含有率と各波長に対する光透過率の関係を折れ線グラフで示したものである。図10は、前記100%LDPEフィルムの光透過率と比べると、ガラス配合率40重量%のフィルムが紫外線領域において光透過率が0.7%以下であることを示し、ガラス配合率50重量%のフィルムが前記全領域において光透過率が1%以下であり、紫外線領域において光透過率が0.6%以下であることを示している。
このことは、ガラス配合率40〜70重量%の球状ガラス粉末を含有するフィルムは、ガラス含有率が増加するに従って、前記全領域において光透過率を低減させる機能を有しており、換言すれば、優れた光の遮蔽作用を奏する特性を有している。また、前記フィルムは優れた光の遮蔽作用を奏する特性を有している。このフィルムの光遮蔽作用は、含有されている球状ガラス粉末の球面が、フィルムに入ってきた光を散乱させることで起きているものと考えられる。
(実施例3)
上記した押出機の第1ホッパーよりLDPEのLJ802(日本ポリエチレン株式会社製品)90部とLLDPEのGA802(住友化学株式会社製品)10部を投入して、230°Cで溶融した中に、第2ホッパーに噴霧法でシラン化処理した平均粒径20μmの予熱した球状ガラス粉末を投入して、230℃でスクリュー回転数200回/分で混練を行い、球状ガラス粉末とPEの重量配合比が、50:50でペレットを成形した。
前記ペレットを押出成形機(インフレーション法)により、シリンダー温度180℃、ヘッド温度160℃、スクリュー回転数120rpmにより押出してインフレーションにより厚さ実測70μmの2軸延伸のフィルムを作製した。このフィルムの厚さは70μmであった。なお、前記インフレーションは延伸倍率が10倍である。
実施例3のフィルムについて、光透過率をJIS K−7105 1981に基づき、光透過率を測定した。測定器は島津製作所UV―3100B,紫外可視分光光度計、測定範囲を220nm〜3200nmとした。紫外線は220〜400nm,可視光線は400〜800nm,赤外線は800〜3200nmの範囲で測定される。
作製した70μmのフィルムの表面構造及び内部構造をミクロンオーダーで観察するために、電子顕微鏡写真の撮影を行った。
図11Aは、LDPE50重量%フィルムを垂直方向から撮影した表面構造を100倍に拡大して撮影した電子顕微鏡写真である。図11Bは、前記フィルムを傾斜45°の方向から撮影した表面構造を100倍に拡大して撮影した電子顕微鏡写真である。図11Cは、前記フィルムを垂直に切断した切断部を300倍に拡大して撮影した電子顕微鏡写真である。
図11Aの写真は、前記フィルムの表面が多数の球状部で覆われていることを示している。
図11Bの写真は、前記球状部がフィルムの表面から上方に突出した多数の球状凸部であることを示し、該球状凸部以外の領域が熱可塑性樹脂からなる平坦部からなることを示している。
そして、図11Cの写真は、球状ガラス粉末がフィルム内に存在しない部分の厚さが小さく、存在する部分の厚さが大きいこと、そして、前記球状凸部が球状ガラス粉末を熱可塑性樹脂で被覆されており、該球状ガラス粉末が熱可塑性樹脂中に独立して無秩序に分布していることを示している。
図11A、11B及び図11Cの写真の上記したことによれば、前記フィルムは、球状ガラス粉末が50重量%のガラス配合率で含有されており、その表面が前記熱可塑性樹脂からなる平坦部、そして、その熱可塑性樹脂に被覆された多数の球状ガラス粉末により形成される球状凸部からなり、その両平坦部及び球状凸部で表面粗さを形成しているものである。
次に、上記した光遮蔽性について考察する。
図12は、図11Aの表面構造の写真を参照して描いた、球状ガラス粉末の分布を示す模式図である。この模式図より球状ガラス粉末の分布密度を測定すると、高さ0.93mm、幅1.25mmの1.1625mmの面積に349個の球状ガラス粉末があることが測定され、分布密度が300個/mmであることが分かった。この分布密度300個/mmは図11Aの写真に示された上面のものだけであるので、他の中央部、下面の球状ガラス粉末の分布を求めると、1mm3当たり300×3=900個の球状ガラス粉末が分布している。
上述したように100%LDPEとガラス配合率50重量%の透過率を比べると、可視光線(400〜800nm)の領域では、100%LDPEの透過率ガラスが50%から80%であるのに対して、ガラス配合率50重量%の光透過率は1%以下である。
前記ガラス配合率50重量%のフィルムは、前記球状ガラス粉末が900個/mmの超高密度の分布状態で含有されていることから、フィルムに入った光は、必ず球状ガラス粉末の表面に当たり、その球面に当たった光が散乱することで光遮蔽性を奏しているものと考えられる。
(光透過率)
実施例3のフィルムを1枚、そして、2枚、4枚又は8枚重ねにして波長220nm〜3200nmの領域の波長の光透過率を測定して、その光透過率のグラフを図13〜図18に示す。
図13は1枚の厚さ70μmのフィルム(100%LDPE)の光透過率のグラフである。
図14は2枚重ねの厚さ140μmのフィルム(100%LDPE)の光透過率のグラフである。
図15は1枚の厚さ70μmのフィルム(ガラス配合率50重量%)の光透過率のグラフである。
図16は2枚重ねの厚さ140μmのフィルム(ガラス配合率50重量%)の光透過率のグラフである。
図17は4枚重ねの厚さ280μmのフィルム(ガラス配合率50重量%)の光透過率のグラフである。
図18は8枚重ねの厚さ560μmのフィルム(ガラス配合率50重量%)のフィルムの光透過率のグラフである。
(透かし効果)
図19は、前記ガラス配合率50重量%のフィルム、1枚、そして、2枚、4枚又は8枚重ねのフィルムを印刷物上に載せ、垂直方向から印刷物に記載された文字を撮影した写真と、印刷物と距離を隔てそれらのフィルムの垂直方向から印刷物に記載された文字を撮影した写真である。
基準となる1枚の100%LDPEのフィルムは、左上欄に示されている。前記100%LDPEのフィルムは、3mm、6mm、9mmと距離が離れても、又、フィルムを2枚重ねにしても文字が鮮明に見えるが、1枚のガラス配合率50重量%のフィルムは、距離が0mmの場合には、基準フィルムと比べるとやや不鮮明ではあるが文字が読み取れる。距離が離れる程、又、重ねる枚数が増える程、見え方が薄くなることを示している。4枚重ねの280μmのフィルムは、文字が何とか読み取れる。
図12の模式図を参照して、前記フィルムが優れた光の遮蔽作用を奏するものであることを説明したが、該フィルムは光の遮蔽作用を有するにも拘わらず、距離が0mmの場合で厚さ280μmのフィルムであれば文字が読み取れることから、印刷物上に厚さ280μmのフィルムを貼着しても印刷された文字が読み取れることが分かった。前記フィルムは光遮蔽性を有するにも拘わらず、この様に文字が読み取れる効果を「透かし効果」という。
図13〜図18のグラフから、1枚の厚さ70μmのガラス配合率50重量%のフィルム、その2枚重ねの厚さ140μmのフィルム、その4枚重ねの厚さ280μmのフィルム、そして、その8枚重ねの厚さ560μmのフィルムと、波長が320nm(紫外線)の光透過率、波長が518nm(可視光線)の光透過率、波長が1720nm(赤外線)の光透過率との関係を表3に示す。
球状ガラス粉末50重量%以上の配合で、紫外線の光透過率が7.8%以下に、可視光線の光透過率が8.0%以下に、赤外線の光透過率が12.0%低減することが分かる。
(風合)
実施例1〜3のフィルムの表面は、平均粒径が約20μmの球状ガラス粉末が突出部を形成することで、多数の凹凸の形状を示し、その触った感じは100%熱可塑性樹脂の成形体と比べて滑りにくい特性がある。しかし、実用面でその滑りにくさが問題となることはない。そして、その表面の外観は前記突出部の形成が従来の100%熱可塑性樹脂から成形される成形体の透明性と異なるものであり、従来の押出成形体の外観と全く異なるもので、和紙が表出する柔らかさ、暖かさを有する和紙調外観である。
先願発明のガラス含有中空成形体の製造に用いられるガラス含有成形用組成物を成形し、その組成物を製造する製造方法に用いられる一つの押出機の縦断面図である。 球状Eガラス粉末の平均粒径の分布の頻度を示す対数グラフである。 球状Eガラス粉末の1000倍の電子顕微鏡写真である。 ガラス含有成形用組成物の製造方法で製造されたガラス含有成形用組成物(ペレット)を側面から垂直に切断した切断部を50倍に拡大して撮影した電子顕微鏡写真である。 前記ペレットを側面から垂直に切断した切断部を100倍に拡大して撮影した電子顕微鏡写真である。 前記ペレットの側面を100倍に拡大して撮影した電子顕微鏡写真である。 ガラス配合率50重量%のフィルムの表面粗さのグラフである。 ガラス配合率60重量%のフィルムの表面粗さのグラフである。 ガラス配合率70重量%のフィルムの表面粗さのグラフである。 比較例1の100%LDPEのフィルムの表面粗さのグラフである。 ガラス含有率と表面粗さの関係を示すグラフである。 100%熱可塑性樹脂の表面粗さ(最大高さ及び十点平均粗さ)を1とした場合の、前記ガラス配合率とその表面粗さの割合の関係を2次多項式の近似曲線で示したグラフである。 各ガラス含有率と各波長に対する光透過率の関係を折れ線グラフで示したものである。 LDPE50重量%フィルムを垂直方向から撮影した表面構造を100倍に拡大して撮影した電子顕微鏡写真である。 LDPE50重量%フィルムを傾斜45°の方向から撮影した表面構造を100倍に拡大して撮影した電子顕微鏡写真である。 LDPE50重量%フィルムを垂直に切断した切断部を300倍に拡大して撮影した電子顕微鏡写真である。 図10Aの表面構造の写真を参照して描いた、球状ガラス粉末の分布を示す模式図である。 1枚の厚さ70μmのフィルム(100%LDPE)の光透過率のグラフである。 2枚重ねの厚さ140μmのフィルム(100%LDPE)の光透過率のグラフである。 1枚の厚さ70μmのフィルム(ガラス配合率50重量%)の光透過率のグラフである。 2枚重ねの厚さ140μmのフィルム(ガラス配合率50重量%)の光透過率のグラフである。 4枚重ねの厚さ280μmのフィルム(ガラス配合率50重量%)の光透過率のグラフである。 8枚重ねの厚さ560μmのフィルム(ガラス配合率50重量%)のフィルムの光透過率のグラフである。 1枚、そして、2枚、4枚又は8枚重ねのフィルムを印刷物上に載せ、垂直方向から印刷物に記載された文字を撮影した写真と、印刷物と距離を隔てそれらのフィルムの垂直方向から印刷物に記載された文字を撮影した写真である。

Claims (7)

  1. 熱可塑性樹脂中に球状ガラス粉末が含有されているガラス含有成形用組成物を用いて押出成形法で作製されてなるガラス含有フィルム及びシートであって、
    前記ガラス含有フィルム及びシートの球状ガラス粉末が、40〜70重量%のガラス配合率で含有されており、その表面が前記熱可塑性樹脂からなる平坦部と、その熱可塑性樹脂に被覆された多数の球状ガラス粉末により形成される球状凸部とからなり、この平坦部及び球状凸部が表面粗さを形成していることを特徴とするガラス含有フィルム及びシート。
  2. 前記球状ガラス粉末が前記熱可塑性樹脂中に独立して無秩序に分布していることを特徴とする請求項1に記載のガラス含有フィルム及びシート。
  3. 100%熱可塑性樹脂の表面粗さを1とした場合、前記ガラス配合率の表面粗さの割合が直線的に1.8倍から3.1倍に増加することを特徴とする請求項1に記載のガラス含有フィルム及びシート。
  4. 前記ガラス含有率が増加するに従って、紫外線、可視光線及び赤外線の光透過率を低減させる特性を有することを特徴とする請求項1に記載のガラス含有フィルム及びシート。
  5. 前記ガラス含有フィルム及びシートが優れた光の遮蔽作用を奏する特性を有することを特徴とする請求項1に記載のガラス含有フィルム及びシート。
  6. 厚さ280μmの前記ガラス含有フィルム及びシートが透かし効果を奏する特性を有することを特徴とする請求項1に記載のガラス含有フィルム及びシート。
  7. 前記ガラス含有フィルム及びシートの外観が和紙の表出する柔らかさ、暖かさを有する和紙調外観であることを特徴とする請求項1に記載のガラス含有フィルム及びシート。
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