JP2010235455A - 農薬含有組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】優れた農薬効力を発揮する農薬含有組成物の提供。
【解決手段】ヒドロキシプロピルセルロース、農薬、25℃における飽和蒸気圧50mmHg以上の有機溶剤、および水を含む農薬含有組成物であり、前記組成物全体を100重量%とする場合、前記有機溶剤の含有量が、0.02〜1重量%であり、前記ヒドロキシプロピルセルロースと前記有機溶剤との重量比(ヒドロキシプロピルセルロース/有機溶剤)が、0.1〜2である。
【選択図】なし

Description

本発明は、農薬の効力を増強する農薬含有組成物に関する。
殺虫剤、殺菌剤、除草剤、殺ダニ剤、植物成長調節剤をはじめとする農薬は、乳剤、水和剤、粒剤、粉剤、フロアブル剤、液剤等の剤型にて使用されている。その際、農薬の効果を十分引き出すために、製剤物性上様々な工夫がなされている。
従来、農薬の効果を十分引き出すために、農薬含有組成物に各種界面活性剤が利用されている。例えば、陰イオン界面活性剤とキレート剤とを組み合わせることでビピリジニウム系除草剤に効果の高い農薬含有組成物が得られることが知られている(例えば特許文献1参照)。また、陽イオン界面活性剤にキレート剤を配合し、更に別の界面活性剤を添加することで効果の高い農薬含有組成物が得られることも知られている(例えば特許文献2参照)。
また、アミンオキサイドを農薬含有組成物に使用することも知られている(例えば、特許文献3参照)。
また、N−ホスホノメチルグリシンの塩が溶解した水連続相を用いることにより、常温で固体の水難溶性農薬活性成分の効力増強と貯蔵安定性を得ている(例えば特許文献4参照)。
国際公開第95/31903号パンフレット 国際公開第95/17817号パンフレット 特開平1−268605号公報 特開2007−277215号公報
しかし、近年、市場の要求特性が高まる中、より優れた農薬含有組成物が望まれている。
本発明の課題は、農薬の効力を向上させるための農薬含有組成物を提供することである。
本発明者らは、特定なセルロース誘導体と特定な有機溶剤とを農薬と組み合わせると、農薬の効力を向上させる効果があることを見出し、本発明を完成した。
本発明は、ヒドロキシプロピルセルロース、農薬、25℃における飽和蒸気圧50mmHg以上の有機溶剤および水を含む農薬含有組成物であって、前記組成物全体を100重量%とする場合、前記有機溶剤の含有量が、0.02〜1重量%であり、前記ヒドロキシプロピルセルロースと前記有機溶剤との重量比(ヒドロキシプロピルセルロース/有機溶剤)が、0.1〜2である。
また、本発明は、前記本発明の農薬含有組成物を植物に施す工程を含む植物品質を向上させる方法である。
本発明によれば、農薬の効力を増強させることができる。
本発明のメカニズムは明らかではないが、推測可能なメカニズムの一つとして、以下のメカニズムが考えられる。農薬を含む組成物の溶剤として、特定な有機溶剤、具体的には、25℃における飽和蒸気圧50mmHg以上の有機溶剤を選択することにより、溶剤として水のみを用いる場合と比較して、組成物を植物に施した場合、組成物から溶剤が蒸発する速度が高くなる。その結果、そのような特定な有機溶剤を用いる組成物は、施された植物の表面上で粘度が迅速に上昇し、従って、植物の表面に農薬が固着しやすくなるという効果を奏する。また、農薬を含む組成物にヒドロキシプロピルセルロースを含むことにより、ヒドロキシプロピルセルロースの界面活性能力と皮膜形成能力が発揮され、施された植物の表面上で農薬を含む膜が形成されやすくなり、従って、植物の表面に農薬が固着しやすくなるという効果を奏する。これらの効果が合わさり、本発明の農薬含有組成物は農薬の効力を向上させる効果を奏すると考えられる。
[ヒドロキシプロピルセルロース]
ヒドロキシプロピルセルロースは、以下の式で表わされる。
Figure 2010235455
式中、R=Hまたは−(CH2CH(CH3)−O)mH(式中、mは0または1〜5の整数を示す。ただし、式(I)中のRの全てが同時にm=0ではない。)
ヒドロキシプロピルセルロースの重合度(n)は、例えば、30〜1,500であり、農薬の効力を増強させる観点から、40〜1,200であるのが好ましく、70〜500であるのがより好ましい。また、2重量%濃度、20℃において測定した粘度が、例えば、1.0〜10,000mPa・s、農薬の増強を向上させる観点から、好ましくは2.0〜4,000mPa・s、より好ましくは3.0〜1,000mPa・sである。なお、ヒドロキシプロピルセルロースは、文献公知の方法により製造してもよいし、市販のものを入手してもよい。
[農薬]
本発明の農薬含有組成物に用いられる農薬は、公知のものが使用でき、(B1)殺菌剤、(B2)殺虫剤、(B3)殺ダニ剤、並びに(B4)グリホサート剤及びビアラホス剤から選ばれる除草剤からなる群から選ばれる農薬が好ましく、例えば「農薬ハンドブック1998年版」(第10版、平成10年12月15日、社団法人日本植物防疫協会発行)に記載されたものが挙げられる。
(B1)殺菌剤としては、有機硫黄殺菌剤として、ジネブ剤、マンネブ剤、チウラム剤、マンゼブ剤、ポリカーバメート剤、プロピネブ剤等、ベンズイミダゾール系殺菌剤としてはベノミル剤、チオファネートメチル剤等、ジカルボン酸系殺菌剤としてはイプロジオン剤、プロシミドン剤等、その他の合成殺菌剤としてはトリアジン剤、イミノクタジン三酢酸塩剤、イソプロチオラン剤、TPN剤、プロベナゾール剤、キャプタン剤、フルオルイミド剤、DPC剤、イミノクタジンアルベシル酸等、ステロール生合成阻害剤としては、トリフミゾール剤、ビテルタノール剤、ピリフェノックス剤、フェナリモル剤、トリホリン剤、トリアジメホン剤、ミクロブタニル剤、ジフェノコナゾール剤、イミベンコナゾール剤等、酸アミド系殺菌剤としては、メタラキシル剤、メプロニル剤等、銅殺菌剤としては、無機銅剤剤、有機銅剤等、抗生物質殺菌剤としては、ストレプトマイシン剤、ポリオキシン剤、ブラストサイジンS剤、カスガマイシン剤、バリダマイシン、オキシテトラサイクリン剤等、土壌殺菌剤としては、エクロメゾール剤、ヒメキサゾール剤等、メラミン生合成阻害剤としては、フサライド剤、カルプロパミド剤、有機リン系殺菌剤としては、IBP剤、EDDP剤、ホセチル剤等、無機殺菌剤としては、無機硫黄剤、炭酸水素塩剤等、メトキシアクリレート系殺菌剤としては、アゾキシストロビン、クレソキシムメチル剤等、アニリノピリミジン系殺菌剤としては、メパニピリム剤等、合成抗細菌剤としては、オキソリニック酸剤等、天然物殺菌剤としては大豆レシチン等、生物由来の殺菌剤としては、対抗菌剤等が挙げられる。
(B2)殺虫剤の場合、ピレスロイド系殺虫剤としては、フェンバレレート剤、シフルトリン剤、ペルメトリン剤、フルシトリネート、エトフェンプロックス剤等、有機リン系殺虫剤としては、DDVP剤、MEP剤、マラソン剤、ジメトエート剤、PAP剤、MPP剤、DMTP剤、EPN剤等、カーバメート系殺虫剤としては、BPMC剤、NAC剤、メソミル剤等、ネライストキシン系殺虫剤としては、カルタップ剤等、天然物系殺虫剤としては、除虫菊由来のピレトリン剤、ピペロニルブトキシド剤、マメ科のかん木デリス由来のロテノン剤、ニコチン剤、大豆レシチン剤、デンプン剤等が挙げられる。昆虫成長制御剤(IGR剤)としては、ジフルベンズロン剤、テフルベンズロン剤、クロルフルアズロン剤、ブプロフェジン剤、イソプロチオラン剤、フルフェノクスロン剤等が挙げられる。
また(B3)殺ダニ剤としては、ケルセン剤、BPPS剤、酸化フェンブタスズ剤、ヘキシチアゾクス剤、アミトラズ剤、フェンピロキシメート剤、テブフェンピラド剤、ハルフェンプロックス剤、ビアラホス剤等、クロロニコチニル系殺虫剤としては、イミダクロプリド剤等、その他の合成殺虫剤としては、オレイン酸ナトリウム剤、オレイン酸カリウム液剤等、殺線虫剤としては、D−D剤、タゾメット剤、ベノミル剤等、生物由来の殺虫剤としてはBT剤等が挙げられる。
(B4)除草剤としては、酸アミド系除草剤としては、DCPA剤、アラクロール剤、アシュラム剤等、尿素系除草剤として、DCMU剤、リニューロン剤等が挙げられる。ビピリジリウム系除草剤としては、例えばパラコート剤、ジクワット剤等が挙げられる。ダイアジン系除草剤としては、例えばブロマシル剤、レナシル剤等が挙げられる。S−トリアジン系除草剤としては、例えばCAT剤、シメトリン剤等が挙げられる。その他の有機除草剤としては、例えばDBN剤等のニトリル系除草剤、セトキシジム剤、クレトジム剤等が挙げられる。ジニトロアニリン系除草剤としては、例えばトリフルラリン剤、ペンディメタリン剤等が挙げられる。カーバメート系除草剤としては、チオベンカルブ剤等が挙げられる。芳香族カルボン酸系除草剤としては、例えばMDBA剤等が挙げられる。フェノキシ酸系除草剤としては、2,4−PA剤、シハロホップブチル剤等が挙げられる。有機リン系除草剤としては、ピペロホス剤、ブタミホス剤等が挙げられる。アミノ酸系除草剤としては、グリホサート剤、例えば、グリホサートとして入手可能なアンモニウム=N−(ホスホノメチル)グリシナート、ラウンドアップとして入手可能なイソプロピルアンモニウム=N−(ホスホノメチル)グリシナート、タッチダウンとして入手可能なトリメチルスルホニウム=N−(ホスホノメチル)グリシナート、及びインパルスとして入手可能なナトリウム=N−(ホスホノメチル)グリシナート、ビアラホス剤、例えばハービエースとして入手可能なL−2−アミン−4−[(ヒドロキシ)(メチル)ホスフィノイル]−ブチリル−L−アラニル−L−アラニン等が挙げられる。脂肪酸系除草剤としては、ペラルゴン酸剤、DPA剤等が挙げられる。スルホニル尿素系除草剤としては、チフェンスルフロンメチル剤、フラザルスルフロン剤、ベンスルフロンメチル剤等が挙げられる。ピリミジルオキシ安息香酸系除草剤としては、ビスピリバックナトリウム塩等が挙げられる。ダイアゾール系除草剤としては、ピラゾレート剤等が挙げられる。
これらの除草剤のうち、農薬の増強、すなわち殺草力を向上させる観点から、酸アミド系除草剤、ダイアジン系除草剤、ニトリル系除草剤、ジニトロアニリン系除草剤、芳香族カルボン酸系除草剤及びアミノ酸系除草剤が好ましい。
農薬の含有量は、組成物全体を100重量%とした場合、農薬の増強を向上させる観点から、0.02〜1重量%が好ましく、0.03〜1重量%がより好ましく、0.04〜1重量%が更に好ましい。
[有機溶剤]
有機溶剤は、前記のとおり、25℃における飽和蒸気圧50mmHg以上の有機溶剤である。有機溶剤の飽和蒸気圧とは、純物質である有機溶剤の液体と気体とが平衡状態にあるときの気体の圧力を意味する。この飽和蒸気圧は、U字管水銀圧力計による直接法により測定することができる。このような有機溶剤を使用することで、溶剤として水のみを用いる場合と比較して、組成物を植物に施した場合、組成物から溶剤が蒸発する速度が高くなる。その結果、そのような特定な有機溶剤を用いる組成物は、施された植物の表面上で粘度が迅速に上昇し、従って、植物の表面に農薬が固着しやすくなるという効果を奏する。
25℃における飽和蒸気圧50mmHg以上の有機溶剤としては、例えば、エタノール(59mmHg)、トリフルオロエタノール(75mmHg)、ジクロロエタン(83mmHg)、アセトニトリル(88mmHg)、メチルエチルケトン(91mmHg)、酢酸エチル(95mmHg)、シクロヘキサン(98mmHg)、トリフルオロ酢酸(108mmHg)、メタノール(127mmHg)、ジイソプロピルエーテル(149mmHg)、テトラヒドロフラン(162mmHg)、クロロホルム(195mmHg)、アセトン(231mmHg)、ジクロロメタン(436mmHg)、ジエチルエーテル(537mmHg)等が挙げられ、中でもメタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトンおよび酢酸エチルが好ましい(括弧内は25℃におけるその溶剤の飽和蒸気圧を示す)。または、この有機溶剤としては、農薬の増強を向上させる観点から、25℃における飽和蒸気圧55mmHg以上の有機溶剤が好ましく、70mmHg以上の有機溶剤がより好ましく、90mmHg以上の有機溶剤がさらに好ましく、100mmHg以上の有機溶剤がよりさらに好ましい。
有機溶剤の含有量は、組成物全体を100重量%とした場合、0.02〜1重量%であるが、農薬の増強を向上させる観点から、0.03〜1重量%が好ましく、0.03〜0.8重量%以上がより好ましく、0.03〜0.1重量%がさらに好ましい。
また、本発明の農薬含有組成物において、ヒドロピシプロピルセルロースと前記有機溶剤との重量比(ヒドロピシプロピルセルロース/有機溶剤)は、農薬含有組成物の安定性、及び溶剤の蒸発とヒドロピシプロピルセルロースの皮膜形成により農薬の固着をさせる観点から、0.1〜2であり、農薬効力増強の観点から、好ましくは0.2〜1.7であり、より好ましくは0.5〜1.0である。
<水>
本発明の農薬含有組成物は、水を含むのであるが、その含有量は、農薬効力増強の観点から、組成物全体を100重量%とした場合、95重量%以上が好ましく、97重量%以上がより好ましく、98重量%以上がさらに好ましい。
[その他の添加剤]
本発明の農薬含有組成物は、界面活性剤、キレート剤、pH調整剤、無機塩類、増粘剤、植物成長調整剤、肥料、防腐剤等をさらに含んでもよい。
<界面活性剤>
本発明の農薬含有組成物では、ヒドロキシプロピルセルロースに、さらに界面活性剤を併用することにより、ヒドロキシプロピルセルロースの農薬の効力増強効果を維持したまま、ヒドロキシプロピルセルロースの使用量の低減化を計ることができる。前記界面活性剤としては、非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤及び両性界面活性剤、或いはそれらの混合物を用いることができる。
非イオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(例えばポリオキシエチレンオレイルエーテル)等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノール等のポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテルホルムアルデヒド縮合物、ポリオキシアルキレンアリールエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルソルビトールエステル、ポリオキシアルキレンソルビタンエステル、ポリオキシアルキレンアルキルグリセロールエステル、ポリオキシアルキレンブロック共重合体(例えばポリオキシプロピレン基を含むもの)、ポリオキシアルキレンブロック共重合体アルキルグリセロールエステル、ポリオキシアルキレンアルキルスルホンアミド、ポリオキシアルキレンロジンエステル、アルキルグリコシド、アルキルポリグリコシド、ポリオキシアルキレンアルキルポリグリコシドなど、及びこれらのうちの2種以上の混合物などが挙げられる。
陽イオン界面活性剤の例としては、モノアルキルジ低級アルキルアミン、ジアルキルモノ低級アルキルアミン、アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、アルキルアミンプロピレンオキサイド付加物、例えばタローアミンエチレンオキサイド付加物、オレイルアミンエチレンオキサイド付加物、ソイアミンエチレンオキサイド付加物、ココアミンエチレンオキサイド付加物、合成アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、オクチルアミンエチレンオキサイド付加物など及びそれらの4級化物(例えばメチルクロライド、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、ベンジルクロライド等による4級化物)及びそれらの混合物がある。
陰イオン界面活性剤のうち、典型的なものは、水溶液或いは固体状態で入手され得るが、その例としては、モノ−及びジ−アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、アルファ−オレフィンスルホン酸ナトリウム、アルカンスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホコハク酸塩、アルキル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンスチリルフェニルエーテル硫酸塩、モノ−及びジ−アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホネートのホルムアルデヒド縮合物、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩、オレフィニックスルホン酸塩、モノ及びジアルキルリン酸塩、ポリオキシアルキレンモノ及びジアルキルリン酸塩、ポリオキシアルキレンモノ及びジフェニルエーテルリン酸塩、ポリオキシアルキレンモノ及びジアルキルフェニルエーテルリン酸塩、ポリカルボン酸塩、直鎖及び分岐アルキルアミドポリオキシアルキレンエーテルカルボン酸又はその塩、アルキルポリオキシアルキレンエーテルカルボン酸塩、アルケニルポリオキシアルキレンエーテルカルボン酸塩、脂肪酸又はその塩、例えばカプリル酸及びその塩、ラウリン酸及びその塩、ステアリン酸及びその塩、オレイン酸及びその塩、N−メチル脂肪酸タウリド(taurides)、これらのうちの2種以上の混合物など(ナトリウム、カリウム、アンモニウム及びアミン塩を含む)がある。
また、適当な両性界面活性剤の例としては、アルモックス(Armox)C/12、モナテリックス(Monaterics)、ミラノール(Miranols)、ベタイン、ロンザイン(Lonzaines)、これらの混合物などがある。
これらの界面活性剤のうち、農薬の効力を増強させる観点から、特に好ましいのは、非イオン型界面活性剤であり、なかでもポリオキシアルキレンアルキルエーテル(特にポリオキシエチレンアルキルエーテル)、ポリオキシアルキレンソルビタンエステル(特にポリオキシエチレンソルビタンエステル)が好ましい。
本発明の組成物が界面活性剤をさらに含む場合、ヒドロキシプロピルセルロースと界面活性剤との好ましい併用割合は、農薬の効力を増強させる観点から、その重量比(ヒドロキシプロピルセルロース/界面活性剤)は0.01〜50であり、より好ましくは0.1〜50であり、さらに好ましくは0.1〜30であり、更により好ましくは0.2〜10である。
<キレート剤>
本発明の農薬含有組成物は、農薬の効力を増強させる観点から、キレート剤をさらに含んでもよい。キレート剤は、金属イオンをキレートする能力を有するものであれば特に制限されない。本発明に用いられるキレートの例としては、アミノポリカルボン酸系キレート剤、芳香族及び脂肪族カルボン酸系キレート剤、アミノ酸系キレート剤、エーテルポリカルボン酸系キレート剤、イミノジメチルホスホン酸(IDP)、アルキルジホスホン酸(ADPA)等のホスホン酸系キレート剤、ヒドロキシカルボン酸系キレート剤、リン酸系キレート剤、高分子電解質(オリゴマー電解質を含む)系キレート剤及びジメチルグリオキシム(DG)が挙げられる。これらのキレート剤は、それぞれフリーの酸型であっても、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等の塩の形であってもよい。替わりに、それらは、加水分解可能なそれらのエステル誘導体の形であってもよい。
アミノポリカルボン酸系キレート剤の具体例としては、
a) 化学式 RNY2で表される化合物、
b) 化学式 NY3で表される化合物、
c) 化学式 R−NY−CH2CH2−NY−Rで表される化合物、
d) 化学式 R−NY−CH2CH2−NY2で表される化合物、
e) 化学式 Y2N−R’−NY2で表される化合物、及び、
f) e)の化合物に類似する化合物で、Yを4以上含む化合物、例えば式:
Figure 2010235455
で表される化合物が挙げられる。
前記式中、Yは−CH2COOH又は−CH2CH2COOHを表し、Rは、水素原子、アルキル基、水酸基、ヒドロキシアルキル基といったこの種の公知のキレート剤を構成する基を表し、R’は、アルキレン基、シクロアルキレン基といったこの種の公知のキレート剤を構成する基を表す。
アミノポリカルボン酸系キレート剤の代表例としては、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、シクロヘキサンジアミンテトラ酢酸(CDTA)、ニトリロトリ酢酸(NTA)、イミノジ酢酸(IDA)、N−(2−ヒドロキシエチル)イミノジ酢酸(HIMDA)、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)、N−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミントリ酢酸(EDTA−OH)及びグリコールエーテルジアミンテトラ酢酸(GEDTA)、並びにこれらの塩類が挙げられる。
芳香族及び脂肪族カルボン酸系キレート剤の例としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタール酸、アジピン酸、イタコン酸、アコニット酸、ピルビン酸、サリチル酸、アセチルサリチル酸、ヒドロキシ安息香酸、アミノ安息香酸(アントラニル酸を含む)、フタル酸、トリメリット酸及び没食子酸、並びにこれらの塩類、メチルエステル類及びエチルエステル類が挙げられる。また、アミノ酸系キレート剤の例としては、グリシン、セリン、アラニン、リジン、シスチン、システイン、エチオニン、チロシン、メチオニン及びこれらの塩類及び誘導体が挙げられる。
更に、エーテルポリカルボン酸系キレート剤の例としては、ジグリコール酸、次式で表される化合物、その類似化合物及びその塩(例えばナトリウム塩)類が挙げられる。
Figure 2010235455
式中、Y1は、水素原子、−CH2COOH又は−COOHを表し、Z1は、水素原子、−CH2COOH又は
Figure 2010235455
を表す。
ヒドロキシカルボン酸系キレート剤の例としては、リンゴ酸、クエン酸、グリコール酸、グルコン酸、ヘプトン酸、酒石酸、乳酸及びこれらの塩類が挙げられる。
リン酸系キレート剤の例としては、オルトリン酸、ピロリン酸、トリリン酸及びポリリン酸が挙げられる。
高分子電解質(オリゴマー電解質を含む)系キレート剤の例としては、アクリル酸重合体、無水マレイン酸重合体、α−ヒドロキシアクリル酸重合体、イタコン酸重合体、これらの重合体の構成モノマー二種以上からなる共重合体及びエポキシコハク酸重合体が挙げられる。
加えて、本発明では、アスコルビン酸、チオグリコール酸、フィチン酸、グリオキシル酸及びグリオキサール酸、並びにそれらの塩類も、キレート剤として好適に用いることができる。
本発明の組成物がキレート剤をさらに含む場合、農薬の効力を増強させる観点から、ヒドロキシプロピルセルロースの総量1モルに対し、0.05〜15倍モルの割合でキレート剤が配合されるのが好ましい。
<pH調整剤>
本発明において使用し得るpH調整剤としては公知のものが使用できる。
本発明の組成物がpH調整剤をさらに含む場合、農薬の効力を増強させる観点から、その重量比は、好ましくは、ヒドロキシプロピルセルロース/pH調整剤=0.01〜50であり、より好ましくは0.1〜50であり、さらに好ましくは0.1〜30であり、更により好ましくは0.2〜10である。
<無機塩類>
本発明において使用し得る無機塩類としては、無機鉱物塩として例えば無機塩クレー、タルク、ベントナイト、ゼオライト、炭酸カルシウム、ケイソウ土、ホワイトカーボン等が挙げられ、無機アンモニウム塩として例えば硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、チオシアン酸アンモニウム、塩化アンモニウム、スルファミン酸アンモニウム等が挙げられる。
本発明の組成物が無機塩類をさらに含む場合、農薬の効力を増強させる観点から、その重量比は、好ましくは、ヒドロキシプロピルセルロース/無機塩類=0.01〜50であり、より好ましくは0.1〜50であり、さらに好ましくは0.1〜30であり、更により好ましくは0.2〜10である。
<植物成長調節剤>
更に植物成長調節剤としては、オーキシン拮抗剤としては、マレイン酸ヒドラジド剤、ウニコナゾール剤等、オーキシン剤としては、インドール酪酸剤、1−ナフチルアセトアミド剤、4−CPA剤等、サイトカイニン剤としては、ホルクロルフェニュロン剤等、ジベレリン剤としてはジベレリン剤等、その他のわい化剤としては、ダミノジット剤等、蒸散抑制剤としては、パラフィン剤等、その他の植物成長調整剤としては、コリン剤等、生物由来の植物成長調整剤としては、クロレラ抽出物剤等、エチレン剤としては、エテホン剤等が挙げられる。
本発明の組成物が植物成長調節剤をさらに含む場合、農薬の効力を増強させる観点から、その重量比は、好ましくは、ヒドロキシプロピルセルロース/植物成長調節剤=0.01〜50であり、より好ましくは0.1〜50であり、更に好ましくは0.1〜30であり、更により好ましくは0.2〜10である。
[農薬含有組成物]
また、本発明の農薬含有組成物の製剤型は、乳剤、フロアブル製剤、液剤等いずれでもよく、製剤型は問わない。従って、その製剤型に応じた他の添加剤、例えば乳化剤、分散剤、担体等を含有するものであってもよい。本発明に係わる農薬含有組成物の使用方法は、農薬含有組成物を含有する前記各種剤型の農薬含有組成物を使用する方法により、本発明の目的とする効力増強作用が得られる。
[植物の品質を向上させる方法]
前記のように、本発明の植物品質を向上させる方法は、本発明の農薬含有組成物を植物に施す工程を含む。本発明の植物品質を向上させる方法によれば、農薬が例えば除草剤である場合、畑地、休耕地、水田の畦、果樹園、牧草地、芝生地、森林、非農耕地用において、植物に対して除草剤の効果を向上させることができる。また、本発明の植物品質を向上させる方法によれば、農薬が例えば殺虫剤または殺菌剤である場合、畑地、休耕地、水田の畦、果樹園、牧草地、芝生地、森林、非農耕地用において、植物に対して殺虫剤または殺菌剤の効果をそれぞれ向上させることができる。
本発明の農薬含有組成物の植物への供給方法としては色々な手段を使うことができる。例えば、本発明の農薬含有組成物を葉面、茎、果実等直接植物に散布したり、水耕栽培やロックウールのように根に接触している水耕液や供給水に希釈混合して根表面等に供給(塗布)する方法が挙げられる。本発明の農薬含有組成物が植物の表面に農薬が迅速に固着するという驚くべき効果を有しているため、本発明の農薬含有組成物の植物への供給方法としては、植物の地上部に散布する方法が好ましく、葉面に散布する方法がより好ましく用いられる。その際、植物を、本発明の農薬含有組成物を含む容器に植物を浸漬させてもよい。
[実施例]
表3〜表6に用いたヒドロピシプロピルセルロースおよび有機溶剤の略語の意味は以下のとおりである。また、有機溶剤についてはそれぞれの25℃における飽和蒸気圧も示した。
<ヒドロピシプロピルセルロース>
Figure 2010235455
<セルロース誘導体>
Figure 2010235455
<有機溶剤>
MeOH: メタノール 25℃飽和蒸気圧 127mmHg
アセトン 25℃飽和蒸気圧 231mmHg
酢酸エチル 25℃飽和蒸気圧 95mmHg
MEK:メチルエチルケトン 25℃飽和蒸気圧 91mmHg
トリフルオロエタノール 25℃飽和蒸気圧 75mmHg
EtOH:エタノール 25℃飽和蒸気圧 59mmHg
トリクロロエチレン 25℃飽和蒸気圧 47mmHg
1−ブタノール 25℃飽和蒸気圧 6.8mmHg。
[殺菌試験]
殺菌剤抵抗性菌であるキュウリ灰色カビ病菌(Botrytis cinerea)の胞子懸濁液(107個/ml)をキュウリの幼苗(本葉3葉展開中)に1ポットあたり10mlずつ散布した。その後25℃、90%相対湿度下に静置した。
その後、水1リットルにベンレート水和剤(ベノミルとして有効分50重量%、市販品、殺菌剤)を0.5gと、表3に示す量のヒドロキシプロピルセルロース(表中では(A)セルロース誘導体)と(C)有機溶剤とを混合し、農薬含有組成物を製造した。1ポットあたり5mlずつの農薬含有組成物を散布した。その後、ポットを25℃、85%相対湿度下に静置し、病斑数を数え、以下の式を用いて無処理区に対する防除価を算出した。防除価の数値が高いほど、農薬効力が高いことを示す。
Figure 2010235455
Figure 2010235455
表3の結果から、本発明の農薬含有組成物は、その殺菌効果を向上することが確認できた。
[殺虫試験]
ウンカの3齢幼虫をイネ苗で培養し、1区10頭、3連制にてディッピング法にて殺虫剤の効力検定を行った。水1リットルにスミチオン乳剤(MEPとして有効分50重量%、市販品、殺虫剤)、トレボン乳剤(エトフェンプロックスとして有効分20重量%、市販品、殺虫剤)の各々について0.3gと、表4に示す量のヒドロキシプロピルセルロース(表中では(A)セルロース誘導体)と(C)有機溶剤とを混合し、農薬含有組成物を製造した。殺虫率は下記式を用いて算出した。殺虫率の数値が高いほど、農薬効力が高いことを示す。
Figure 2010235455
Figure 2010235455
表4の結果から、本発明の農薬含有組成物は、その殺虫効果を向上することが確認できた。
[殺ダニ試験]
殺ダニ剤としては水1リットルにニッソラン水和剤(ヘキシチアゾクスとして有効分10重量%)、オサダン水和剤25(酸化フェンブタスズとして有効分25重量%)の各々について0.3gと、表5に示す量のヒドロキシプロピルセルロース(表中では(A)セルロース誘導体)と(C)有機溶剤とを混合し、農薬含有組成物を製造した。カンザワハダニメス成虫をインゲンのリーフディスクに1区30匹、3反復にてうえつけた後、24時間、25℃にて培養した。その後リーフディスク全体を試験液に5秒間浸漬させ、試験液から取り出して25℃で48時間放置後に観察し、殺ダニ率を無処理の場合を基準にして下記式を用いて算出した。殺ダニ率の数値が高いほど、農薬効力が高いことを示す。
Figure 2010235455
Figure 2010235455
表5の結果から、本発明の農薬含有組成物は、その殺ダニ効果を向上することが確認できた。
[殺草試験]
ポットにメヒシバを発芽させた。ポット間の均一性を高めるため、発育が異常なポットは廃棄した。草丈が18cm程度に生長したポットを試験に用いた。タッチダウン液剤(グリホサートトリメシウム塩として有効分38重量%、市販品)、ラウンドアップ液剤(グリホサートイソプロピルアミン塩として有効分41重量%、市販品)それぞれを水1リットルに対してタッチダウン液剤は10g、ラウンドアップ液剤は3.7gを添加しさらに、表6に示す量のヒドロキシプロピルセルロース(表中では(A)セルロース誘導体)と(C)有機溶剤とを混合し、農薬含有組成物を製造した。各試験液はメヒシバ全体にかかるように噴霧し殺草効力を評価した。殺草効力の評価は地上部重量を散布後14日目に量り、無処理区の地上部生重量を基準とした殺草率を下記式に基づき算出した。殺草率の数値が高いほど、農薬効力が高いことを示す。
Figure 2010235455
Figure 2010235455
Figure 2010235455
表6の結果から、本発明の農薬含有組成物は、その殺草効果を向上することが確認できた。
本発明の農薬含有組成物は、例えば殺菌剤、植物成長剤、殺ダニ剤、除草剤として有用である。

Claims (4)

  1. ヒドロキシプロピルセルロース、農薬、25℃における飽和蒸気圧50mmHg以上の有機溶剤、および水を含む農薬含有組成物であり、
    前記組成物全体を100重量%とする場合、前記有機溶剤の含有量が、0.02〜1重量%であり、
    前記ヒドロキシプロピルセルロースと前記有機溶剤との重量比(ヒドロキシプロピルセルロース/有機溶剤)が、0.1〜2である農薬含有組成物。
  2. 前記農薬が、除草剤である請求項1に記載の農薬含有組成物。
  3. 前記有機溶剤が、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトンおよび酢酸エチルからなる群から選択される1以上である請求項1または2に記載の農薬含有組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の農薬含有組成物を植物に施す工程を含む植物品質を向上させる方法。
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