JP2010229316A - 芳香族含有基油の製造方法及び芳香族含有基油 - Google Patents

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Abstract

【課題】高引火点でガラス転移点が低く、高い全芳香族分を有しつつ発ガン性物質の含有量が低減された芳香族含有基油を高い収率で製造可能な製造方法を提供すること。
【解決手段】塔底温度30〜90℃、これよりも塔頂温度が高い第1の抽出塔10において、減圧蒸留留分と極性溶剤とを接触させて、第1のラフィネート及びエキストラクトを得る第1の溶剤抽出工程と、第1の抽出塔10よりも、塔底及び塔頂の温度がそれぞれ10℃以上高い第2の抽出塔20において、第1のラフィネートと極性溶剤とを接触させて、第2のラフィネートと密度(15℃)が0.94g/cm以上で且つ全芳香族分が30質量%以上の第2のエキストラクトとを得る第2の溶剤抽出工程とを有し、第2のエキストラクト、第2のラフィネート又はその精製油の少なくとも一部を含み、全芳香族分が30質量%以上である芳香族含有基油の製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、芳香族含有基油の製造方法及び芳香族含有基油に関する。
天然ゴムや合成ゴム等のゴム組成物には、ゴム成分との親和性が高く、ゴム組成物の加工性や軟化性に優れ、また経済性に優れるなどの点から、高芳香族系鉱物油が使用されている。例えば、SBR等の合成ゴムには、その合成時に伸展油(エキステンダーオイル)が配合されている。また、タイヤ等のゴム加工製品には、その加工性やゴム加工製品の品質を改善するために加工油(プロセスオイル)が配合されている。
欧州においては、DMSO抽出分又は特定の発ガン性多環芳香族化合物を特定量以上含有するものを、タイヤ又はタイヤ部品の製造に使用してはならないとの規制が2010年より適用されることとなっている。このため、減圧蒸留留分を極性溶剤で抽出して得られるエキストラクトは、一般に多環芳香族分の含有量が高く、上述の規制に伴い、そのままではゴム配合油として使用できない状況となりつつある。
ところで、減圧蒸留留分を極性溶剤で抽出して得られるラフィネートを精製して得られる潤滑油基油が一般的に製造されている。このようなラフィネートは、エキストラクトの製造条件次第でその収率や芳香族含有量が大きく左右されるが、一般に芳香族の含有量が低くアニリン点が高いため、そのままエキステンダーオイルに使用することは困難である。
このため、非発ガン性のゴム配合油の製造方法としては、例えば製造方法(1)エキストラクトを水素添加処理して多環芳香族を低減する方法、製造方法(2)極性溶剤による抽出工程でエキストラクトの収率を高くして、多環芳香族を希釈する方法、及び製造方法(3)減圧蒸留留分の溶剤抽出を2段階で行う方法(特許文献1)等が知られている。
また、このような芳香族含有基油としては、引火点が250℃以上であると危険物第4石油類の対象外となり、取り扱いが容易となるため、高い引火点を有することも求められている。また、低いガラス転移点を有するゴム配合油も提案されている(例えば、特許文献2、3)。
このうち、特許文献3では、ジエン系ゴムに配合するゴム配合油として、芳香族炭化水素含有量(C)が20〜35重量%、ガラス転移温度Tgが−55℃〜−30℃、動粘度(100℃)が20〜50mm/sでかつ多環芳香族成分量(PCA)が3重量%以下である石油系プロセスオイルを用いることが提案されている。ジエン系ゴムにこの石油系プロセスオイルを配合して得られるゴムをタイヤに用いると、低燃費性とグリップ性を両立でき、耐熱老化性や耐熱摩耗性を向上することができる。
特許第3658155号公報 国際公開第97/35462号
しかしながら、上記製造方法(1)では、水素添加設備を付加することに伴う経済性の悪化とともに、得られる生成物の芳香族含有量が低下する傾向にあり、製造方法(2)では、ラフィネートから得られる潤滑油基油の収率が低下するとともにその芳香族含有量も低下する傾向にある。製造方法(3)においても、密度が0.94g/cm未満であり、多環芳香族が少なく、高芳香族分であるエキストラクトの収率が高くなるものの、ラフィネートの収率が大幅に低いうえにその芳香族含有量も低下する傾向にある。
このように、減圧蒸留留分を原料とする極性溶剤抽出方法で得られるラフィネート及びエキストラクトから、それぞれ、高引火点で低いガラス転移点を有するとともに、全芳香族分が高く、特定の発ガン性多環芳香族化合物が十分に低減された芳香族含有基油を高い収率で製造する方法は知られていない。特に、ゴム配合油又はその基材として有用なエキストラクトから得られる非発ガン性の高芳香族基油を得るとともに、ゴム配合油又はその基材及び潤滑油基油としても有用である、ラフィネートから得られる非発ガン性の芳香族含有基油を高収率で得る方法は知られていない。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、減圧蒸留留分を原料とする極性溶剤抽出方法で得られるラフィネート及びエキストラクトから、高引火点で、ガラス転移点が低く、高い全芳香族分を有しつつ発ガン性物質の含有量が十分に低減された芳香族含有基油を提供することを目的とする。また、このような芳香族含有基油を高い収率で製造することが可能な芳香族含有基油の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、特定の条件による2段階の溶剤抽出工程を特定の条件で行うことにより所望の芳香族含有基油を高い収率で得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明では、塔底温度が30〜90℃、塔頂温度が塔底温度よりも高い第1の抽出塔において、原油の常圧蒸留残渣油の減圧蒸留留分と極性溶剤とを接触させて、第1のラフィネートと第1のエキストラクトとを得る第1の溶剤抽出工程と、第1の抽出塔よりも、塔底温度及び塔頂温度がそれぞれ10℃以上高い第2の抽出塔において、第1のラフィネートと極性溶剤とを接触させて、第2のラフィネートと15℃における密度が0.94g/cm以上で且つ全芳香族分が30質量%以上の第2のエキストラクトとを得る、第2の溶剤抽出工程と、第2のエキストラクト、第2のラフィネート又はその精製油の少なくとも一部を含み、全芳香族分が30質量%以上である芳香族含有基油の製造方法を提供する。
本発明によれば、高引火点で、ガラス転移点が低く、高い全芳香族分を有しつつ特定の発ガン性物質の含有量が十分に低減された芳香族含有基油を高い収率で製造することができる。
本発明は、第2の溶剤抽出工程の後に、第2のラフィネートに脱ろう処理を含む精製処理を施して前記精製油を得る基油調整工程を有し、精製油を含み、流動点が−5℃以下、アニリン点が90℃以上、粘度指数が90以上、及び引火点が250℃以上である芳香族含有基油を製造することが好ましい。
本発明では、第2の溶剤抽出工程の後に、第2のラフィネートに脱ろう処理を含む精製処理を施して精製油を得る基油調整工程を有し、精製油を含み、40℃における動粘度が60〜120mm/s、及びガスクロ蒸留による10%点が400〜460℃、90%点が500〜540℃である芳香族含有基油を製造することが好ましい。
本発明では、第2の溶剤抽出工程の後に、第2のラフィネートに脱ろう処理を含む精製処理を施して精製油を得る基油調整工程を有し、精製油を含み、40℃における動粘度が120〜250mm/s、及びガスクロ蒸留による10%点が450〜520℃、90%点が540〜600℃である芳香族含有基油を製造することが好ましい。
本発明の製造方法によって得られる芳香族含有基油は、第2のエキストラクトの少なくとも一部を含み、40℃における動粘度が200mm/s以上、引火点が250℃以上、流動点が30℃以下、アニリン点が90℃以下、ガラス転移点が−30℃以下であり、且つ流動点とガラス転移点との差が50℃以上であることが好ましい。なお、この芳香族含有基油は、第2のエキストラクトからなるものであってもよい。
本発明の製造方法によって得られる芳香族含有基油は、第2のエキストラクトの少なくとも一部を含み、40℃における動粘度が200mm/s以上で且つ500mm/s未満、及びガラス転移点が−60〜−40℃であることが好ましい。このような芳香族含有基油は、例えば天然ゴム(NR)、各種ブタジエンゴム(BR)、各種スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(BR)及びこれらの任意ブレンドゴム等のジエン系ゴム、特にスチレン−ブタジエン共重合体ゴムを少なくとも1種類含むジエン系ゴムに配合する石油系プロセスオイル又はエキステンダーオイルとして特に好適に用いることができる。なお、この芳香族含有基油は、第2のエキストラクトからなるものであってもよい。
本発明の製造方法によって得られる芳香族含有基油は、第2のエキストラクトの少なくとも一部を含み、40℃における動粘度が500mm/s以上、及びガラス転移点が−50〜−30℃であることが好ましい。このような芳香族含有基油は、例えば上記のようなジエン系ゴムに配合する石油系プロセスオイル又はエキステンダーオイルとして特に好適に用いることができる。なお、この芳香族含有基油は、第2のエキストラクトからなるものであってもよい。
本発明の製造方法によって得られる芳香族含有基油は、ベンゾ(a)ピレンの含有量が1質量ppm以下であり、且つ以下に示す1)〜8)の特定芳香族化合物の合計含有量が10質量ppm以下であることが好ましい。
1)ベンゾ(a)ピレン(BaP)
2)ベンゾ(e)ピレン(BeP)
3)ベンゾ(a)アントラセン(BaA)
4)クリセン(CHR)
5)ベンゾ(b)フルオランセン(BbFA)
6)ベンゾ(j)フルオランセン(BjFA)
7)ベンゾ(k)フルオランセン(BkFA)
8)ジベンゾ(a,h)アントラセン(DBAhA)
このような芳香族含有基油は、特定の発ガン性多環芳香族化合物の含有量が十分に低減されたものであるため、タイヤ等のゴム加工製品の石油系プロセスオイル若しくはエキステンダーオイル又はその基材として、特に好適に用いることができる。
また、本発明は、上述の特徴を有する製造方法によって得られる芳香族含有基油を提供する。この芳香族含有基油は、高引火点で、ガラス転移点が低く、高い全芳香族分を有しつつ発ガン性物質の含有量が十分に低減されており、石油系プロセスオイル若しくはエキステンダーオイル又はその基材として優れた特性を有しつつ安全性にも十分に優れている。
減圧蒸留留分を原料とする極性溶剤抽出方法で得られるラフィネート及びエキストラクトから、高引火点で、ガラス転移点が低く、高い全芳香族分を有しつつ発ガン性物質の含有量が十分に低減された芳香族含有基油を提供することができる。また、このような芳香族含有基油を高い収率で製造することが可能な芳香族含有基油の製造方法を提供することができる。
本発明に係る芳香族含有基油の製造方法の一実施形態が適用される製造装置の概略図である。
以下、場合により図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。
本実施形態の芳香族含有基油の製造方法は、塔底温度が30〜90℃、塔頂温度が塔底温度よりも高い第1の抽出塔において、原油の常圧蒸留残渣油の減圧蒸留留分と極性溶剤とを接触させて、第1のラフィネートと第1のエキストラクトとを得る第1の溶剤抽出工程と、第1の抽出塔よりも、塔底温度及び塔頂温度がそれぞれ10℃以上高い第2の抽出塔において、第1のラフィネートと極性溶剤とを接触させて、第2のラフィネートと15℃における密度が0.94g/cm以上で且つ全芳香族分が30質量%以上の第2のエキストラクトとを得る、第2の溶剤抽出工程を有する。以下、各工程の詳細について説明する。
図1は、本実施形態の芳香族含有基油の製造方法が適用される製造装置の概略図である。
第1の溶剤抽出工程では、まず、塔底温度が30〜90℃、塔頂温度が塔底温度よりも高い第1の抽出塔10において、原料供給配管12を通って第1の抽出塔10に導入される減圧蒸留留分と、配管18を通って第1の抽出塔10に導入される極性溶剤とを接触させる。
減圧蒸留留分とは、通常の原油の常圧蒸留残渣油を減圧蒸留装置に導入して得られる留分である。減圧蒸留留分は、特に限定されるものではなく、軽質潤滑油留分、中質潤滑油留分、重質潤滑油留分、又はこれらの混合物、或いは減圧蒸留留分の全てを使用することができる。最終的に得られる芳香族含有基油の引火点を高くするとともに、粘度が高くなり過ぎず適正な粘度範囲の芳香族含有基油を得る観点から、例えば200N〜1500N、好ましくは250N〜1200N、より好ましくは300N〜600N又は600N〜1200Nの潤滑油留分を用いる。なお、本明細書における「N」とは、減圧蒸留留分から得られるニュートラルオイルであることを意味し、例えば300Nであれば、100°F(37.8℃)における粘度が300セイボルトユニバーサル秒(SUS)であることを意味する。
本実施形態では、後述する第2のラフィネート又はその精製油が、200〜1500N、好ましくは250〜600N又は600〜1200N、より好ましくは300〜450N又は700〜1000Nの粘度となるように、減圧蒸留留分を選択することが好ましい。
第1の溶剤抽出工程で用いる第1の抽出塔10の塔底温度は30〜90℃、好ましくは50〜70℃、より好ましくは55〜65℃である。第1の抽出塔10の塔頂温度は、塔底温度より高く、好ましくは10〜50℃高く、より好ましくは15〜40℃高く、さらに好ましくは25〜35℃高くすることが好ましい。具体的には、塔頂温度は、好ましくは60〜120℃、より好ましくは80〜100℃、さらに好ましくは85〜95℃である。
第1の溶剤抽出工程における溶剤比は、好ましくは0.5〜3、より好ましくは0.7〜2、さらに好ましくは1〜1.5である。なお、本明細書における「溶剤比」とは、原料に対する溶剤の容量比(溶剤容量/原料容量)を意味する。
上述の条件で、第1の抽出塔10の内部において極性溶剤と減圧蒸留留分とが向流接触し、第1の抽出塔10の塔底部から配管16を通って第1のエキストラクトと極性溶剤との混合物が得られ、塔頂部から配管14を通って第1のラフィネートと極性溶剤との混合物が得られる。なお、第1のエキストラクトと極性溶剤との混合物は、図示しない分留塔において、第1のエキストラクトと極性溶剤とに分留される。また、第1のラフィネートと極性溶剤との混合物は、図示しない分留塔において、第1のラフィネートと極性溶剤とに分留されてもよく、分留されずにそのまま第2の抽出塔20に導入されてもよい。
図示しない分留塔において、第1のエキストラクト及び第1のラフィネートと分留された極性溶剤は、回収され再利用される。極性溶剤としては、フルフラール、フェノール、クレゾール、スルフォラン、N−メチルピロリドン、ジメチルスルフォキシド、フォルミルモルフォリン、グリコール系溶剤等の極性溶剤が挙げられるが、本実施形態においては一般的な潤滑油基油の溶剤抽出設備をそのまま利用できる点で、フルフラールを用いることが好ましい。
上述の通り、第1の溶剤抽出工程では、減圧蒸留留分が第1のラフィネートと第1のエキストラクトとに分離されることとなる。第1の溶剤抽出工程で得られる第1のラフィネートの収率は、減圧蒸留留分を基準として、好ましくは50〜90容量%、より好ましくは60〜85容量%、さらに好ましくは70〜80容量%である。第1の溶剤抽出工程で得られる第1のエキストラクトの収率は、減圧蒸留留分を基準として、好ましくは10〜50容量%、より好ましくは15〜40容量%、さらに好ましくは20〜30容量%である。
第1の溶剤抽出工程によって、第1のエキストラクト側に後述する特定芳香族化合物(PAH)が抽出されるため、後段の第2のエキストラクト、第2のラフィネート、及びこれらから得られる芳香族含有基油の特定芳香族化合物(PAH)の含有量を十分に低減することができる。なお、第1のエキストラクトは、特定芳香族化合物(PAH)を含むため、潤滑油基油やゴム配合油に適さない傾向がある。したがって、この第1のエキストラクトの収率を例えば30容量%以下とすることによって、潤滑油基油やゴム配合油又はその基材として有用な第2のラフィネート及び第2エキストラクトを高い収率で得ることができる。例えば、減圧蒸留留分を基準として、第2のラフィネートと第2エキストラクトの合計を70容量%以上とすることも可能であり、本実施形態の芳香族含有基油の製造方法は、資源の有効活用の点からも極めて有用であるといえる。
第2の溶剤抽出工程では、第1の溶剤抽出工程で得られた第1のラフィネート又は第1のラフィネートと極性溶剤との混合物及び極性溶剤を、配管14及び配管28から第2の抽出塔20にそれぞれ導入し、第2の抽出塔20において、第1のラフィネートと極性溶剤とを接触させる。第2の抽出塔20は、第1の抽出塔10よりも、塔底温度及び塔頂温度がそれぞれ10℃以上高くなっている。
第2の溶剤抽出工程に用いられる第2の抽出塔20の塔底温度は、第1の溶剤抽出工程における第1の抽出塔20の塔底温度よりも10℃以上高く、好ましくは10〜50℃高く、より好ましくは15〜40℃高く、さらに好ましくは20〜30℃高くする。具体的には、第2の抽出塔20の塔底温度は、好ましくは40〜140℃、より好ましくは60〜100℃、さらに好ましくは80〜95℃である。
また、第2の抽出塔20の塔頂温度は、塔底温度より好ましくは10〜50℃高く、より好ましくは15〜40℃高く、さらに好ましくは25〜35℃高くする。具体的には、第2の抽出塔20の塔頂温度は、好ましくは50〜150℃、より好ましくは80〜140℃、さらに好ましくは110〜130℃である。
第2の溶剤抽出工程における溶剤比は、好ましくは1〜4、より好ましくは1.3〜3.5、さらに好ましくは1.5〜3.3である。第2の溶剤抽出工程における溶剤比は、第1の溶剤抽出工程における溶剤比の1.5倍以上とすることが好ましい。
上述の条件で、第2の抽出塔20の内部において極性溶剤と第1のラフィネートとが向流接触し、第2の抽出塔20の塔底部から配管26を通って第2のエキストラクトと極性溶剤との混合物が得られ、塔頂部から配管24を通って第2のラフィネートと極性溶剤との混合物が得られる。なお、第2のエキストラクトと極性溶剤との混合物は、図示しない分留塔において、第2のエキストラクトと極性溶剤とに分留される。また、第2のラフィネートと極性溶剤との混合物は、図示しない分留塔において、第2のラフィネートと極性溶剤とに分留される。
図示しない分留塔において、第2のエキストラクト及び第2のラフィネートと分留された極性溶剤は、回収され再利用される。極性溶剤としては、フルフラール、フェノール、クレゾール、スルフォラン、N−メチルピロリドン、ジメチルスルフォキシド、フォルミルモルフォリン、グリコール系溶剤等の極性溶剤が挙げられるが、本実施形態においては一般的な潤滑油基油の溶剤抽出設備をそのまま利用できる点で、フルフラールを用いることが好ましい。
上述の通り、第2の溶剤抽出工程では、第1のラフィネートが第2のラフィネートと第2のエキストラクトとに分離されることとなる。第2の溶剤抽出工程で得られる第2のラフィネートの収率は、第2の抽出塔20に導入される第1のラフィネートを基準として、好ましくは50〜90容量%、より好ましくは60〜85容量%、さらに好ましくは70〜85容量%である。第2の溶剤抽出工程で得られる第2のエキストラクトの収率は、好ましくは10〜50容量%、より好ましくは15〜40容量%、さらに好ましくは15〜30容量%である。
なお、本実施形態において、第1及び第2の抽出塔として別々の抽出塔を用いる必要はなく、第2の抽出塔20の代わりに第1の抽出塔10を用い、上記第2の溶剤抽出工程を行ってもよい。この場合、第1の溶剤抽出工程で得られたラフィネート(極性溶剤を除去したものが好ましい)を一旦タンク等に貯蔵しておき、抽出条件を第2の溶剤抽出工程の条件に調整した第1の抽出塔10に再導入して、第2の溶剤抽出工程を行えばよい。こうすることにより、過剰な設備投資をすることなく本実施形態の芳香族含有基油を得ることができるため、経済性の面で合理的である。
第2の溶剤抽出工程によって、15℃における密度が0.94g/cm以上であり、全芳香族分が30質量%以上である第2のエキストラクトを得ることができる。第2のエキストラクトの15℃における密度が0.94g/cm以上であると、全芳香族分が高く、アニリン点が十分低く、高引火点で、流動点とガラス転移点の差が大きい、ジエン系ゴムを用いたタイヤ等のゴム製品の製造過程における石油系プロセスオイル又はその基材、あるいは、ジエン系ゴム製造過程におけるエキステンダーオイル又はその基材として有用となる。しかも、同時に得られる第2のラフィネートから、全芳香族分が30質量%以上の、潤滑油基油、石油系プロセスオイル、エキステンダーオイル又はその基材としても有用な芳香族含有基油を高収率で得ることが可能となる。第2のエキストラクトの15℃における密度は、好ましくは0.95〜1g/cm、より好ましくは0.95〜0.98g/cmである。また、第2のエキストラクトの全芳香族分は、好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは80〜90質量%である。なお、本明細書における「全芳香族分」は、ASTM D2549に準拠して測定される値である。
また、第2のエキストラクトの、ASTM D2140により測定される%Cは、好ましくは15〜35、より好ましくは20〜33、さらに好ましくは22〜32である。
第2のエキストラクトは、以下の性状を有することが好ましい。
・引火点:250℃以上、好ましくは260℃以上、より好ましくは260〜310℃。
・流動点:30℃以下、好ましくは10〜30℃。
・アニリン点:90℃以下、好ましくは40〜80℃、より好ましくは50〜70℃。
・ガラス転移点:−30℃以下、好ましくは−40℃以下、より好ましくは−60〜―40℃。
・流動点とガラス転移点との差(流動点−ガラス転移点):好ましくは50℃以上、より好ましくは55℃以上であり、通常90℃以下。
・ベンゾ(a)ピレン含有量:1質量ppm以下。
・特定芳香族化合物(PAH)の合計含有量:10質量ppm以下。
本明細書における芳香族含有基油の「ガラス転移点(Tg)」とは、DSC(示差走査熱量計)にて一定の昇温速度(10℃/分)で昇温した際に測定される、ガラス転移領域における熱量変化ピークから得られたガラス転移点を意味する。初期温度は、通常予期ガラス転移点より30℃〜50℃程度又はそれより低い温度とし、当該初期温度で一定時間保持した後、昇温を開始する。本実施形態においては、具体的には、以下の条件で測定することができる。
装置:ティー・エイ・インスツルメント社製熱分析システムDSC Q100
初期温度:−90℃、10分間保持
昇温速度:10℃/分
終了温度:50℃、10分間保持
なお、熱量変化ピークからガラス転移点を算出する方法は、通常JIS K 7121に記載された方法で決定される。
本実施形態の芳香族含有基油の製造方法は、上記第2の溶剤抽出工程の後に、第2のエキストラクト及び第2のラフィネートから選ばれる少なくとも一方を用いて全芳香族分が30質量%以上である芳香族含有基油を得る基油調製工程を有していてもよい。
基油調製工程では、第2のエキストラクト及び第2のラフィネートから選ばれる少なくとも一方を用いて全芳香族分が30質量%以上である芳香族含有基油を得る。また、第2のラフィネートに脱ろう処理を含む精製処理を施して、流動点が−5℃以下、アニリン点が90℃以上、粘度指数が90以上、及び引火点が250℃以上である精製油(脱ろう油)を得て、これを芳香族含有基油としてもよい。精製処理としては、脱ろう処理及び水素化仕上げを行うことが好ましい。これによって、全芳香族分が30質量%以上の芳香族含有基油を容易に得ることができる。上述の精製処理を施して得られる精製油は、潤滑油基油、ゴム配合油又はそれらの基材として好適に使用することができる。
第2のラフィネートから、例えば、200〜1500Nの精製油を得る場合、この粘度に対応する減圧蒸留留分を原料として、上記第1及び第2の溶剤抽出工程を行うと、40℃における動粘度が、好ましくは200mm/s以上、より好ましくは250mm/s以上、さらに好ましくは5000mm/s以下、特に好ましくは2000mm/s以下の第2のエキストラクトを得ることができる。
以上の工程によって、第2のラフィネート及び/又はその精製油から全芳香族分が30質量%以上である芳香族含有基油(以下、「芳香族含有基油a」という。)、及び/又は、第2のエキストラクトから全芳香族分が30質量%以上である芳香族含有基油(以下、「芳香族含有基油b」という。)を得ることができる。
基油調製工程では、第2のラフィネート及び第2のエキストラクトから、適宜蒸留により適宜留分を分取したのち、第2のラフィネートの一部及び第2のエキストラクトの一部をそれぞれ芳香族含有基油a,bとしてもよい。また、基油調製工程を行わずに、第2の溶剤抽出工程で得られた第2のラフィネート及び第2のエキストラクトを、そのまま芳香族含有基油a,bとしてもよい。
原料である減圧蒸留留分を、所望の芳香族含有基油a,bに合わせて適宜選択することによって、所望の性状を有する芳香族含有基油a,bを連産品として得ることが好ましい。例えば、芳香族含有基油aとして300N以上且つ600N未満の潤滑油基油を得る場合には、この留分に対応する減圧蒸留留分を原料とし、上述の第1及び第2の溶剤抽出工程、並びに場合により精製工程を経て、芳香族含有基油aとして300N以上且つ600N未満の潤滑油基油を得るとともに、芳香族含有基油bとして40℃における動粘度が200mm/s以上500mm/s未満、好ましくは250〜350mm/s、より好ましくは250〜300mm/sのものを得ることができる。
また、例えば、芳香族含有基油aとして600〜1200Nの潤滑油基油を得る場合には、この留分に対応する減圧蒸留留分を原料とし、上述の第1及び第2の溶剤抽出工程、並びに場合により精製処理を経て、芳香族含有基油aとして600〜1200Nの潤滑油基油を得るとともに、芳香族含有基油bとして40℃における動粘度が500〜5000mm/s、好ましくは800〜2000mm/s、より好ましくは900〜1500mm/sのものを得ることができる。
本実施形態の芳香族含有基油aは、上述のとおり、第2のラフィネートに脱ろうや水素化仕上げ等を含む精製処理を施すことによって得てもよい。このようにして得られる芳香族含有基油a(潤滑油基油)は、全芳香族分が30質量%以上、好ましくは30〜60質量%である。芳香族含有基油aは、好ましくは200〜1500N、より好ましくは250N以上且つ600N未満又は600〜1200N、さらに好ましくは300〜450N又は700〜1000Nの潤滑油基油として得ることができる。
上述の8種の特定芳香族化合物(PAH)の含有量と低減するとともに、粘度が互いに異なる高引火点の芳香族含有基油a,bを得る観点から、芳香族含有基油aは、300N〜450N又は700〜1000Nであることが特に好ましい。
芳香族含有基油aは、以下の特定性状を有することが好ましい。
・流動点:−5℃以下、好ましくは−10℃以下、より好ましくは−20〜−10℃。
・アニリン点:70℃以上、好ましくは90℃以上、より好ましくは105℃以上、さらに好ましくは105〜120℃。
・粘度指数:90以上、好ましくは95以上、好ましくは120以下、より好ましくは105以下。
・引火点:250℃以上、好ましくは250〜310℃。
・ASTM D 3238による基油組成:%Cが60〜70、%Cが20〜30、%Cが5〜10。
・ベンゾ(a)ピレン含有量:1質量ppm以下。
・特定芳香族化合物(PAH)の合計含有量:10質量ppm以下。
芳香族含有基油aが、300N以上且つ600N未満、好ましくは300〜450Nである場合、上記の特定性状に加え、以下の性状をさらに有していることが好ましい。
・40℃における動粘度:60〜120mm/s、好ましくは65〜90mm/s、より好ましくは70〜80mm/s。
・ガスクロ蒸留による10%点:400〜460℃、好ましくは430〜450℃。
・ガスクロ蒸留による90%点:500〜540℃、好ましくは510〜530℃。
・全芳香族分(ASTM D 2549):30質量%以上、好ましくは30〜50質量%。
なお、本明細書におけるガスクロ蒸留の値は、ASTM D2887に準拠して測定される値である。
芳香族含有基油aが、600〜1200N、好ましくは700〜1000Nである場合、上記の特定性状に加え、以下の性状をさらに有していることが好ましい。
・40℃における動粘度:120〜250mm/s、好ましくは150〜200mm/s。
・ガスクロ蒸留による10%点:450〜520℃、好ましくは460〜500℃。
・ガスクロ蒸留による90%点:540〜600℃、好ましくは560〜590℃。
・全芳香族分(ASTM D 2549):30質量%以上、好ましくは35〜60質量%、より好ましくは40〜50質量%。
本実施形態によれば、特定芳香族化合物(PAH)の含有量が所定量以下の芳香族含有基油a,bを得ることができる。なお、本明細書における「特定芳香族化合物(PAH)」とは、以下に挙げる8種の特定芳香族化合物(PAH)を意味する。本実施形態の芳香族含有基油a,bは、1)のベンゾ(a)ピレン(BaP)の含有量が1質量ppm以下であり、下記1)〜8)の8種類の特定芳香族化合物(PAH)の含有量の合計が10質量ppm以下とすることができる。
1)ベンゾ(a)ピレン(BaP)
2)ベンゾ(e)ピレン(BeP)
3)ベンゾ(a)アントラセン(BaA)
4)クリセン(CHR)
5)ベンゾ(b)フルオランセン(BbFA)
6)ベンゾ(j)フルオランセン(BjFA)
7)ベンゾ(k)フルオランセン(BkFA)
8)ジベンゾ(a,h)アントラセン(DBAhA)
これらの特定芳香族化合物(PAH)は、一般的には、対象成分を分離・濃縮した後、内部標準物質を添加した試料を調製し、GC−MS分析により定量分析することができる。
芳香族含有基油a,bは、潤滑油基油、ゴム配合油又はそれらの基材として好適である。芳香族含有基油aは、特定芳香族化合物(PAH)の含有量が十分に低減されたものであるとともに、引火点が250℃以上、流動点が−5℃以下であるため、潤滑油基油としても好適である。また、全芳香族分が30質量%以上、ガラス転移点が−30℃以下であるため、石油系プロセスオイル若しくはエキステンダーオイル又はその基材として利用することができる。
芳香族含有基油bは、特定芳香族化合物(PAH)の含有量が十分に低減されたものであるとともに、引火点が250℃以上、全芳香族分が30質量%以上、ガラス転移点が−30℃以下であるため、石油系プロセスオイル若しくはエキステンダーオイル又はその基材として利用することができる。
芳香族含有基油a、芳香族含有基油b又はこれらの混合物を用い、例えば、ガラス転移温度を−55〜−30℃、動粘度(100℃)を20〜50mm/sに調製することによって、ジエン系ゴムに配合するのに特に適した石油系プロセスオイル又はエキステンダーオイルとすることができる。このような石油系プロセスオイル又はエキステンダーオイルをジエン系ゴムに配合して製造されたタイヤは、低燃費性とグリップ性を両立でき、耐熱老化性や耐摩耗性を向上することができる。
以上の通り、本実施形態の製造方法によれば、高引火点で、ガラス転移点が低く、高い全芳香族分を有しつつ発ガン性物質の含有量が十分に低減された芳香族含有基油を、高い収率で得ることができる。また、潤滑油基油、石油系プロセスオイル若しくはエキステンダーオイル又はその基材に適した性状を有するとともに、粘度が互いに異なる複数種類の芳香族含有基油を同時に生産することが可能であるため、産業上特に有用である。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。
本発明を、以下の実施例及び比較例を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
原油の常圧蒸留残渣油を通常の減圧蒸留装置を用いて減圧蒸留し、燃料相当留分、150N相当留分以下の留分、350N相当留分及び900N相当留分を分取した。分取した350N相当留分を、塔底温度が塔頂温度よりも低い第1の抽出塔に導入し、極性溶剤(フルフラール)と接触させる第1の溶剤抽出工程を行った。この第1の溶剤抽出工程によって、350N相当留分を、塔頂部分から得られる第1のラフィネートと、塔底部分から得られる第1のエキストラクトとに分取した。
次いで、第1のラフィネートを、塔底温度が塔頂温度よりも低い第2の抽出塔に導入し、極性溶剤(フルフラール)と接触させる第2の溶剤抽出工程を行った。この第2の溶剤抽出工程によって、第1のラフィネートを、塔頂部分から得られる第2のラフィネートと、塔底部分から得られる第2のエキストラクトとに分取した。
第2のラフィネートは、ASTM D2549に準じて測定した全芳香族分が30質量%以上であった。また、第2のエキストラクトは、15℃における密度が0.94g/cm以上であり、ASTM D2549に準じて測定した全芳香族分が30質量%以上であった。
第1の溶剤抽出工程と、第2の溶剤抽出工程の製造条件と収率を表1に示す。
Figure 2010229316
上述の第2のラフィネートについて、流動点が−10℃以下となるようにMEK脱ろう及び水素化仕上げ処理による精製処理を行い、全芳香族分が30質量%以上である芳香族含有基油(潤滑油基油)を得た。これを芳香族含有基油a1とした。また、第2のエキストラクトを芳香族含有基油b1とした。芳香族含有基油a1及びb1の性状を表2に示す。
Figure 2010229316
ベンゾ(a)ピレン及び8種類の特定芳香族化合物(PAH)の合計含有量は、以下の通りにして測定した。まず、それぞれの芳香族含有基油1gを50mlフラスコにてヘキサンに溶解し、2質量%の試料溶液を調製した。この試料溶液を5質量%含水シリカゲルに負荷し、ヘキサンで洗浄後、1体積%アセトン/ヘキサン溶液で対象成分を溶出させた。溶出液を濃縮後、内部標準物質を添加した試料を調製し、一般的なガスクロマトグラフ質量分析計(GC−MS)にて同定・定量した。
(実施例2)
原油の常圧蒸留残渣油を通常の減圧蒸留装置を用いて減圧蒸留し、燃料相当留分、150N相当留分以下の留分、350N相当留分及び900N相当留分を分取した。分取した350N相当留分に代えて900N相当留分を第1の抽出塔に導入したこと、並びに第1及び第2の溶剤抽出工程の製造条件を表3に示す通りに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、第1及び第2のラフィネート、並びに第1及び第2のエキストラクトを得た。
なお、実施例2における第2のラフィネートも、ASTM D2549に準じて測定した全芳香族分が30質量%以上であった。また、第2のエキストラクトは、15℃における密度が0.94g/cm以上であり、ASTM D2549に準じて測定した全芳香族分が30質量%以上であった。
第1の溶剤抽出工程及び第2の溶剤抽出工程の製造条件と収率を表3に示す。また、
Figure 2010229316
上述の第2のラフィネートについて、流動点が−10℃以下となるようにMEK脱ろう及び水素化仕上げ処理による精製処理を行い、全芳香族分が30質量%以上である芳香族含有基油(潤滑油基油)を得た。これを芳香族含有基油a2とした。また、第2のエキストラクトを芳香族含有基油b2とした。芳香族含有基油a2及びb2の性状を表4に示す。
Figure 2010229316
表1及び表3より、本実施例では、ゴム配合油又はその基材として有用である第2ラフィネート及び第2エキストラクトの合計収率は、第1の抽出塔の原料油を基準として、74〜75容量%であった(有用成分の収率)。このように、高い収率でゴム配合油又はその基材として有用である潤滑油基油(芳香族含有基油)を製造できることが確認された。
また、表2及び表4より、本実施例の芳香族含有基油a1、a2、b1及びb2は、いずれも、全芳香族分が30質量%以上で且つ引火点が250℃以上であった。すなわち、本実施例では、減圧蒸留留分全量からこのような優れた性状を有する、粘度の異なる芳香族含有基油を複数製造することができた。
さらに、本実施例の芳香族含有基油は、発ガン性を有するベンゾ(a)ピレンや8種類の特定芳香族化合物(PAH)の合計含有量を十分に低減できることが確認された。
また、実施例1及び2の、芳香族含有基油b1及びb2は、芳香族炭化水素含有量(C)が20〜35質量%と高く、適度なガラス転移温度Tgを有していることから、ゴム組成物に配合すると、引張り強度や耐摩耗性を向上させることができる。
(比較例1)
原油の常圧蒸留残渣油を通常の減圧蒸留装置を用いて減圧蒸留し、燃料相当留分、150N相当留分以下の留分、250N相当留分及びそれ以上の留分(500N相当留分)を分取した。分取した500N相当留分を、塔底温度が塔頂温度よりも低い抽出塔に導入し、ラフィネート収率を高め、得られる潤滑油基油の芳香族分が30質量%以上かつ特定芳香族化合物(PAH)の含有量が10質量ppm未満となるような条件で、極性溶剤(フルフラール)と接触させる溶剤抽出工程を行った。この溶剤抽出工程によって、500N相当留分を、塔頂部分から得られるラフィネートと、塔底部分から得られるエキストラクトとに分取した。溶剤抽出工程の製造条件と収率を表5に示す。
Figure 2010229316
次いで、ラフィネートについて、流動点が−10℃以下となるようにMEK脱ろう及び水素化仕上げ処理による精製処理を行い、全芳香族分が30質量%以上である芳香族含有基油(潤滑油基油)を得た。これを芳香族含有基油a3とした。また、エキストラクトを芳香族含有基油b3とした。芳香族含有基油a3及びb3の性状を表6に示す。
Figure 2010229316
表5に示すとおり、本比較例では、抽出塔に導入した原料を基準とするラフィネートの収率が60容量%、エキストラクトの収率が40容量%であった。また、表6に示すとおり、芳香族含有基油b3の発ガン性の特定芳香族化合物(PAH)の合計含有量は、18質量ppmを超えていた。この芳香族含有基油b3は、そのままではゴム配合油として使用するのは好適でないことから、本比較例では、500N相当の減圧蒸留留分から得られた潤滑油基油、ゴム配合油又はその基材として有用な芳香族含有基油の収率は60容量%に過ぎなかった。
(比較例2)
500N相当留分に代えて、250N相当留分を抽出塔に導入したこと以外は、比較例1と同様にして溶剤抽出工程を行い、ラフィネートとエキストラクトとを得た。次いで、ラフィネートについて、流動点が−10℃以下となるようにMEK脱ろう及び水素化仕上げ処理による精製処理を行った。これによって得られた芳香族含有基油a4は、引火点が250℃未満であった。すなわち、本比較例では、減圧蒸留留分(250N相当留分)全量から、引火点が250℃以上の芳香族含有基油を1種(500N基油)しか得ることができなかった。
10…第1の抽出塔、12…原料供給配管、14,16,18,24,26…配管、20…第2の抽出塔。

Claims (5)

  1. 塔底温度が30〜90℃、塔頂温度が前記塔底温度よりも高い第1の抽出塔において、原油の常圧蒸留残渣油の減圧蒸留留分と極性溶剤とを接触させて、第1のラフィネートと第1のエキストラクトとを得る第1の溶剤抽出工程と、
    前記第1の抽出塔よりも、塔底温度及び塔頂温度がそれぞれ10℃以上高い第2の抽出塔において、前記第1のラフィネートと極性溶剤とを接触させて、第2のラフィネートと15℃における密度が0.94g/cm以上で且つ全芳香族分が30質量%以上の第2のエキストラクトとを得る、第2の溶剤抽出工程と、を有する、前記第2のエキストラクト、前記第2のラフィネート又はその精製油の少なくとも一部を含み、全芳香族分が30質量%以上である芳香族含有基油の製造方法。
  2. 前記第2の溶剤抽出工程の後に、前記第2のラフィネートに脱ろう処理を含む精製処理を施して前記精製油を得る基油調整工程を有し、
    前記精製油を含み、流動点が−5℃以下、アニリン点が90℃以上、粘度指数が90以上、及び引火点が250℃以上である、請求項1記載の芳香族含有基油の製造方法。
  3. 前記第2のエキストラクトの少なくとも一部を含み、
    40℃における動粘度が200mm/s以上、引火点が250℃以上、流動点が30℃以下、アニリン点が90℃以下、ガラス転移点が−30℃以下であり、且つ前記流動点と前記ガラス転移点との差が50℃以上である、請求項1記載の芳香族含有基油の製造方法。
  4. ベンゾ(a)ピレンの含有量が1質量ppm以下であり、且つ下記1)〜8)の特定芳香族化合物の合計含有量が10質量ppm以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の芳香族含有基油の製造方法。
    1)ベンゾ(a)ピレン(BaP)
    2)ベンゾ(e)ピレン(BeP)
    3)ベンゾ(a)アントラセン(BaA)
    4)クリセン(CHR)
    5)ベンゾ(b)フルオランセン(BbFA)
    6)ベンゾ(j)フルオランセン(BjFA)
    7)ベンゾ(k)フルオランセン(BkFA)
    8)ジベンゾ(a,h)アントラセン(DBAhA)
  5. 請求項1〜4の製造方法により得られる芳香族含有基油。
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