JP3658155B2 - 溶剤抽出法による非発ガン性芳香族炭化水素油の製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、多環芳香族化合物をほとんど含まない、実質的に非発ガン性の芳香族炭化水素油の製法に関する。特に本発明は、ゴム、インク製品等の製造に使用される石油系芳香族炭化水素油の製法に関し、多環芳香族化合物をほとんど含まない、実質的に非発ガン性の芳香族炭化水素油の製法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に石油系芳香族炭化水素油が、原油の精製に於ける減圧蒸留より得られる沸点範囲260〜650℃の潤滑油製造留分の溶剤抽出精製法において、芳香族炭化水素化合物を豊富に含む留分として製造されている事は当業者によく知られている。従って、原油の種類、抽出精製法の条件によって石油系芳香族炭化水素油は、その性状、化学的組成が異なるものの、基本的に組成成分として芳香族炭化水素化合物を相当量含んでいる事を特徴とする。
【0003】
この石油系芳香族炭化水素油が、タイヤ等に使用される天然ゴムやSBR等のゴム用加工油及び原料SBRの伸展油として有用に使用されている事は当業者によく知られている。即ち、これら石油系芳香族炭化水素油は、上記ゴムへの相溶性を利用して、ゴムの加工に於ける一連の作業性の改善及び加硫後の最終ゴム製品の物理的性質を改善するために添加されている。
【0004】
このゴムとの相溶性を発現するために、これら石油系芳香族炭化水素油は典型的に ASTM D 2140 に規定される組成分析法で、実質的に芳香族化合物含有量を意味する芳香環を形成する炭素含有量(以下芳香族炭素含有量、Ca%という事がある)を27〜55%含んでいる。
【0005】
【発明が解決しようとする問題点】
しかしながら、これら石油系芳香族炭化水素油は、成分として含む芳香族炭化水素化合物の中に、更に成分として15〜28%の多環芳香族化合物(以下PCA(Polycyclic aromatics)ということがある)を含んでいる。近年EU指令により、この多環芳香族化合物を3%以上含む石油製品は発ガン性ありと勧告された事から、世界的に石油製品の多環芳香族化合物低減の努力がなされている。
【0006】
ゴム用プロセス油及び伸展油も例外でなく、多くの提案がなされているが、例えば日本特表平6−50524(GB2252978,US5504135,EP575400)号では、粘度が32〜50cSt.で、ASTM D 2007 に規定されるクレイ−ゲル法による芳香族成分が30〜55重量%、飽和炭化水素成分が40〜65重量%、且つIP346法で測定される多環芳香族化合物即ちPCAが3%未満の石油系炭化水素油を提案しているが、このクレイ−ゲル法による芳香族成分範囲では、ASTM D 2140 に規定される芳香族炭素含有量(Ca%)は26%に達せず、ゴムとの相溶性及び親和性を発現する事ができないため、従来より使用されてきた石油系芳香族炭化水素油の代替としては不適当なものであり、また特にSBRや天然ゴムに対しては全く使用に耐えないものであった。
【0007】
更に、EP04179801号では、クレイ−ゲル法による芳香族含有量50重量%以上、IP346試験法によるPCA含有量3%未満のゴム用プロセスオイルを、石油系潤滑油留分から2段階抽出法で製造する方法、即ち第1段階の抽出で主として芳香族成分を豊富に富む留分(有用なプロセスオイル留分とPCA留分を含む)を抽出し、該抽出油を第2段階の抽出でPCA留分を抽出除去して、抽出残油としてプロセスオイルを製造する方法を提案している。この方法は本発明に類似しているが、以下の点に於いて基本的に異なるものである。
【0008】
一つはこの方法によると、第1段階の抽出で石油系潤滑油留分から有用なプロセスオイル留分とPCA留分の両方を抽出しなければならず、相応量の抽出溶剤を必要とし、且つ第1抽出塔より得られる該抽出油と溶剤の混合物は、第2段階の抽出塔に提供する前に、含まれる溶剤の回収もしくは調整を行う事を必要とする。この事はプロセスとして煩雑になると共に余分なコストを強いられる。
【0009】
本発明は、第1段階でPCAのみを抽出する方法によるため、この段階での抽出溶剤量は少量で済み、且つ第2段階へ供出する抽出残油は極少量の抽出溶剤を含むだけであるから、特別溶剤回収や溶剤量の調整を要しない点、プロセスとして有利である。
【0010】
もう一つはEP04179801号の方法によると、第2段階の抽出でPCAの抽出除去を行っているが、すでに極性の似た芳香族化合物が豊富になった抽出油を対象とすると、溶解抽出に於けるPCAの溶解選択性が減じる事となり、必然的に抽出残油として製造される有用なプロセスオイルの収率が低くなり、プロセスコストを引き上げる事となる。
【0011】
本発明は第1段階でPCAを抽出する工程であるため、PCAの溶解選択性を妨げず、技術的にコスト的に有利にPCA3%以下のプロセスオイルを製造する事ができる。
【0012】
また日本特表平7−501346号では、独自の突然変異誘発性指数と物理的特性の関数的な関係を確立し、それに基づくプロセス条件で、炭化水素常圧蒸留残油フィードストックから非発ガン性のブライトストック抽出物または脱れき油を製造する方法が提案されているが、この発明では実質的にPCA3%未満のEU指令を達しているとは言い難い。
【0013】
他にも、DE4038458号では臨界抽出法による方法、WO9528458号では空気酸化作用による方法など提案されているが、いずれも芳香族含有量が低くてゴムとの親和性を欠き、現行のゴム用プロセスオイルの代替に向かないものや、技術的及びプロセス的にコストがかかり過ぎる等、その性能とEU指令による発ガン性勧告即ちPCA3%以下を同時に満足する、石油系芳香族炭化水素油の技術的にもコスト的にも有利な製造方法は提案されていない。これより非発ガン性の石油系芳香族炭化水素油の簡単且つ経済的な製造に対する強い要求がある。
【0014】
【発明の目的】
よって本発明の目的は、PCAを含む現行の石油系芳香族炭化水素油と、ゴム用プロセスオイルとして同等の性能を有する、非発ガン性の石油系芳香族炭化水素油の新規な製造法を提供する事によって、この要求を満足させる事である。
【0015】
特に本発明の目的は、石油系炭化水素混合物から、2段階のそれぞれ厳密に設計された抽出法を用いて、簡単で且つ経済的に有利な非発ガン性の石油系芳香族炭化水素油の新規な製造法を提供する事である。
【0016】
【問題を解決するための手段】
従来よりゴム用プロセスオイルとして使用されている石油系芳香族炭化水素油と同等の性能を有し、且つ発ガン性を有すIP346試験法による多環芳香族化合物を3%未満に減じた、安全で環境を汚さない新規な石油系芳香族炭化水素油は、厳密に設計された本発明の2段階の抽出工程を経て製造される。
【0017】
本発明に供される原料油は、従来の石油系芳香族炭化水素油を製造する際に使用される、沸点260〜650℃の減圧蒸留後の潤滑油留分が適用される。また、減圧蒸留残さよりプロパン等の軽質炭化水素により、アスファルト物質を除去された脱れき油も、本発明の原料油として好適に用いる事ができる。
【0018】
本発明はこれらの原料油を用いて厳密に設計された2段階の抽出操作を行う事によって達成される。
【0019】
本発明の抽出操作に於ける溶剤は、芳香族化合物を選択的に溶解するフルフラール、フェノールが適用される。これらの溶剤は単独で用いられても良いし、二種の混合溶剤として用いる事もできる。
【0020】
しかしながら、第1段階と第2段階に用いられる溶剤は、これらの溶剤をどのような態様で用いるにしても、同一の溶剤を用いる事が好ましい。これは第1段階の抽出残油を第2段階の抽出操作に供するのに、溶剤回収等何ら余分な操作をしないで移行する事ができるため、プロセスコスト上有利になる。
【0021】
先ず第1段階の抽出工程では、抽出操作は厳密に多環芳香族化合物即ちPCAの選択的抽出条件をもって操作される。即ち一般に使用されている向流接触型の抽出塔が使用でき、その塔頂塔底で規定される抽出温度を制御し、且つ原料流量に対する溶剤の流量即ち溶剤比を抽出温度に対して相関的に制御する事によって達成される。
【0022】
塔頂温度は、45〜70℃の範囲で、より好ましくは45〜60℃の範囲である。
【0023】
塔頂温度は、抽出操作に於ける溶解量並びに溶解する留分の極性即ち溶剤への溶解性を決定する重要な因子で、45℃未満だとIP346試験法に規定される多環芳香族化合物の溶解量が極端に減少し、第2段階へ供出される抽出残油のIP346試験法によるPCA値を1.6重量%未満にする事が難しくなる。また70℃を越えると多環芳香族化合物のみならず芳香族化合物の溶解量も増大し、第2段階へ供出される抽出残油のIP346試験法によるPCA値は1.6重量%より大幅に減じられるものの、含まれる芳香族化合物の減少が大きく、芳香族炭素含有量が12%以下となり、第2段階の抽出操作で有用なプロセスオイルを収率良く製造する事が難しくなる。従って塔頂温度は45〜70℃の範囲、更に好適には45〜60℃の範囲が望ましい。
【0024】
塔底温度は40〜50℃の範囲が望ましく、且つ塔頂温度より低い温度でなければならない。塔底温度は塔頂温度との差を利用して、溶質の内部環流即ち塔頂で溶剤に溶解したものが塔底のより低い温度で溶出し、塔内を環流する事による抽出操作の溶質選択性に重要な因子となっている。
【0025】
この意味では、塔底温度はより低い温度を採用し、塔頂との温度勾配を大きく取る方が有利であるが、温度勾配を大きく取りすぎると内部環流が大きくなりすぎ、フラッディング等の現象を引き起こし抽出操作ができなくなるので問題である。
【0026】
また使用される抽出塔の構造によって差異はあるが、向流接触型の抽出塔では原料油の塔内への投入が塔底より行われるため、原料油の投入温度が塔底温度の実質的な制御を行うが、本発明の原料油では投入温度が40℃未満となると、原料油の流動粘度上昇のため、ポンプアップに多大な動力を要すると共に、抽出塔内での接触効率を上げるための原料油の分散に対する撹拌動力も大きくなり、プロセスコストを引き上げることとなり問題である。また50℃を越えると塔頂との温度差が小さくなり溶質選択性を落とし、抽出残油のPCA値を1.6重量%未満にする事が難しくなる。よって塔底温度は40〜50℃の範囲が望ましく、且つ塔頂温度より低い温度でなければならない。
【0027】
原料流量に対する溶剤流量の比を溶剤比といい、抽出温度と共に抽出溶解量を決定する重要な因子である。即ち溶剤比が大きいと、PCA留分のみならず有用な芳香族化合物をも溶解し、逆に溶剤比が小さすぎると目的のPCA留分の抽出除去が十分にできない。
【0028】
溶剤比は1.2〜3.0が好ましい。3.0を越えるとPCA留分のみならず有用な芳香族化合物も溶解し、第2段階の抽出塔へ供出する抽出残油の ASTM D 2140 に規定される組成分析法による芳香族化合物を形成する炭素含有量が12%以下となり、結果として第2段階の抽出操作で芳香族炭素含有量26%以上の有用な芳香族炭化水素油を得ることができない。1.2未満だと、PCA留分の抽出除去が十分でなく、第2段階の抽出塔へ供出する抽出残油のPCA含有量が1.6%を越えてしまい、結果として第2段階の抽出操作でPCA含有量3%未満の非発ガン性の芳香族炭化水素油を得る事ができない。
【0029】
更に重要な事は、溶剤比は原料PCA含有量及び塔頂温度と相関的に1.2〜3.0の範囲を取る事にあり、即ち原料油のPCA含有量が多ければ、塔頂温度を上げると共に溶剤比も3.0迄の範囲で大きくする。また逆にPCA含有量の少ない原料油を供する時は、塔頂温度も溶剤比も減じる方向で操作条件を相関的に変動させ、得られる抽出残油のPCA含有量1.6%以下で且つ芳香族炭素含有量12%以上となる溶剤比と塔頂温度を相関的に操作する。
【0030】
かくして第2段階へ供出する抽出残油として、芳香族炭素含有量12%以上で且つPCA含有量1.6%未満を得る。
【0031】
この抽出残油の芳香族炭素含有量12%以上は本発明にとって必須の要件であり、12%未満だと第2段階の抽出操作に於いて、有用な芳香族炭素含有量26%以上の芳香族炭化水素油を得る事ができない。
【0032】
この抽出残油のPCA含有量1.6%未満も必須の要件であり、1.6%以上だと第2段階の抽出操作に於いて、PCA含有量3%未満の非発ガン性芳香族炭化水素油を得る事ができない。
【0033】
ここで更に重要な事は、この抽出残油は第1段階の処理溶剤を極少量含むに過ぎないので、第2段階の抽出操作に供するに、溶剤回収や溶剤量調整等の余分な操作を何ら施す事なくそのまま第2抽出塔に投入できる事にある。最初にPCA留分の抽出除去を行う事の優位性がここにあり、この意味に於いて第1第2抽出塔とも同一の溶剤を使用する事が特に好適である。
【0034】
第2段階の抽出操作に於いては、芳香族炭素含有量26%以上で且つPCA含有量3%未満の許される範囲で、収率良く有用な芳香族炭化水素油を得る事を目的とする。
【0035】
第2段階の抽出塔では、塔頂温度は90〜125℃の範囲が好ましい。塔頂温度は第1段階の抽出操作と同様に溶解量と溶質の選択性に関連するが、第2段階の抽出操作ではより多くの芳香族炭化水素油を抽出する事を目的とするため、温度は高い方がより望ましいが、125℃以上になると非芳香族炭化水素化合物も溶解抽出してしまうので、芳香族炭素含有量26%以上の抽出油を得る事が難しくなり問題である。また90℃以下になると溶解量が低くなり、抽出油収率が低くなりプロセスコストを上げると同時に、PCA含有量が3%以上になり、非発ガン性の芳香族炭化水素油を得る事が難しくなる。
【0036】
塔底温度は、塔頂温度との差を利用して、溶質の内部環流即ち塔頂で溶剤に溶解したものが塔底のより低い温度で溶出し、塔内を環流する事による抽出操作の溶質選択性に重要な因子となっている。
【0037】
この意味では塔底温度はより低い温度を採用し、塔頂との温度勾配を大きく取る方が有利であるが、温度勾配を大きく取り過ぎると内部環流が大きくなりすぎ、フラッディング等の現象を引き起こし、抽出操作ができなくなり問題である。
【0038】
本発明の第2段階の抽出操作では、塔頂との温度勾配を30〜40℃に取った時、最も安定的に抽出操作が達成された。よって塔底温度は塔頂温度と相関的に、即ち温度勾配を30〜40℃とする様に、60〜85℃の範囲で適用される事が好ましい。
【0039】
溶剤比は4.5〜5.0が好ましい。溶剤比が4.5より小さいと、芳香族化合物の溶解量が減少し、芳香族炭化水素油の収率を下げプロセスコストを上げると同時に、PCA含有量3%未満の非発ガン性の芳香族炭化水素油を得る事が難しくなる。また溶剤比が5.0を越えると、非芳香族化合物まで溶解抽出し、芳香族炭素含有量26%以上の有用な芳香族炭化水素油を得ることが難しくなると共に、抽出溶剤の回収に余分なコストがかかりプロセスコスト上問題である。
【0040】
かくして得られる本発明の芳香族炭素含有量26%以上で且つPCA含有量3%未満の石油系芳香族炭化水素油は、従来より使用されているゴム用プロセスオイルやインク配合油と同等の性能を有し、且つ安全で環境を汚さない非発ガン性の石油系芳香族炭化水素油となる。
【0041】
特に芳香族炭素含有量26%以上は、26%未満だとゴムとの親和性及び溶解性が不足し、それを使用したゴム製品の物性、特に引張強度の低下と伸びの低下を引き起こし、添加量を増すとブリードするという点に於いて、本発明の芳香族炭化水素油に必須の要件である。
【0042】
以下に本発明の実施例を示す。発明は、発明の一層顕著な特徴を示す操作条件から得られるデータと、比較例として示すデータの、以下の実施例によって更に明解に説明され、完全に理解されるであろう。
しかし本発明はこれらの実施例に何等限定されるものではない。
【0043】
【実施例】
【表1】
表1に本発明で用いた原料油の性状を示す。原料油として用いられる脱れき油及び減圧蒸留後の潤滑油留分は、原油の種類、蒸留精製法の過酷度あるいは脱れき操作の条件によって変動し、その性状はこの3種に限定されないが、概ねそれらを代表するものである。
原料油の性状値は、密度はJIS K 2249(原油及び石油製品−密度試験方法及び密度・質量・容量換算表)の5.振動式密度試験方法、粘度はJIS K 2283(原油及び石油製品−動粘度試験方法及び粘度指数算出方法)、屈折率はJIS C 2101(電気絶縁油試験方法)の14.4アッベ屈折計による場合、アニリン点はJIS K 2256(石油製品アニリン点及び混合アニリン点試験方法)によって測定した。
【0044】
【表2】
表2は本発明による第1段階の抽出処理の結果である。
実施例1は、原料油に脱れき油を用いて、溶剤としてフルフラール、塔頂温度60℃、塔底温度40℃、溶剤比2.3で抽出処理をし、芳香族炭素含有量(Ca)15.0%で且つPCA含有量0.6%の抽出残油を得た。
実施例2は、原料油に潤滑油留分Aを用いて、溶剤としてフルフラール、塔頂温度55℃、塔底温度40℃、溶剤比1.8で抽出処理し、芳香族炭素含有量(Ca)17.0%で且つPCA含有量1.4%の抽出残油を得た。
実施例3は、原料油に潤滑油留分Bを用いて、溶剤としてフェノール、塔頂温度60℃、塔底温度45℃、溶剤比2.8で抽出処理をし、芳香族炭素含有量(Ca)13.0%で且つPCA含有量1.2%の抽出残油を得た。
【0045】
【表3】
表3は本発明によらない第1段階の抽出処理の結果である。
比較例1〜3は本発明による抽出条件、即ち溶剤比1.2〜3.0、塔頂温度45〜70℃の範囲、塔底温度40〜50℃の範囲の条件をはずれると、芳香族炭素含有量12%以上またはPCA含有量1.6%未満のどちらか一方を満足できても、芳香族炭素含有量12%以上で且つPCA含有量1.6%未満の、第2段階抽出操作に供出する中間油を得ることができない。
【0046】
【表4】
表4は本発明による第2段階の抽出操作の結果を示す。
実施例4は、実施例1で得られた抽出残油を用いて、塔頂温度121℃、塔底温度82℃、溶剤比3.2で抽出処理を行った結果、芳香族炭素含有量34.5%で且つPCA含有量2.4%の芳香族炭化水素油を得る事ができた。
実施例5は、実施例2で得られた抽出残油を用いて、塔頂温度115℃、塔底温度78℃、溶剤比2.8で抽出処理を行った結果、芳香族炭素含有量37.0%で且つPCA含有量2.8%の芳香族炭化水素油を得る事ができた。
実施例6は、実施例3で得られた抽出残油を用いて、塔頂温度96℃、塔底温度64℃、溶剤比4.5 で抽出処理を行った結果、芳香族炭素含有量35.5%で且つPCA含有量2.9%の芳香族炭化水素油を得る事ができた。
【0047】
【表5】
表5は本発明によらない第2段階抽出操作の結果を示す。
比較例4〜6は、本発明による抽出操作によって得られた中間油を原料として用い、抽出操作の条件を本発明によらない条件で適用した結果を示す。結果は、本発明による抽出残油を原料としても、本発明による第2段階の抽出操作の条件即ち溶剤比2.0〜5.0、塔頂温度90〜125℃、塔底温度60〜85℃の範囲を外れると、芳香族炭素含有量26%以上で且つPCA含有量3%未満の非発ガン性の有用な芳香族炭化水素油を得られない事を示す。
比較例7〜9は、本発明によらない抽出操作によって得られた中間油を原料として用い、第2段階の抽出操作の条件を本発明の条件で適用した結果を示す。結果は、本発明によらない抽出残油を原料とすると、本発明による第2段階の抽出操作の条件即ち溶剤比2.0〜5.0、塔頂温度90〜125℃、塔底温度60〜85℃の範囲を適用しても、芳香族炭素含有量26%以上で且つPCA含有量3%未満の非発ガン性の有用な芳香族炭化水素油を得られない事を示す。
【0048】
【表6】
【表7】
表6は本発明によって得られた芳香族炭化水素油をゴム用プロセスオイルとして検討した結果を示す。
表7は本発明によらない芳香族炭化水素油と従来より使用されている芳香族系ゴム用プロセスオイルの検討結果を示す。
【0049】
検討に使用したゴム配合は、原料ゴムやカーボンブラック及びプロセスオイル等の配合材料の検討に使われる、JIS K 6383(合成ゴムSBRの試験方法)の標準配合表No.1の非油添ゴム用配合に準じた配合系を使用し、またゴム配合のロールによる混練方法も同試験方法に記載されている方法によって行った。加硫条件は日本合成ゴム製のキュラストメータによって測定した結果より決定し、プレス加硫機によって加硫した。
製品物性の測定は、硬さは JIS K 6301(加硫ゴム物理試験方法)、引張強度と300%引張応力及び伸びは JIS K 6251(加硫ゴムの引張試験方法)、引裂強度は JIS K 6252(加硫ゴムの引裂試験方法)、オイルブリード性については室温で48時間放置後の外観目視検査によって行った。
【0050】
実施例7及び8は、本発明による芳香族炭化水素油の検討結果で、比較例10の市販のプロセスオイルの結果と比較して全く遜色のない製品物性を示す事が確認された。
比較例11は本発明によらない炭化水素油の検討結果で、比較例10の市販のプロセスオイルの結果と比較して、引張強度及び伸びが極端に悪くなり、プロセスオイル配合部数20部でオイルブリードが観察され、使用に耐えないものである事が確認された。
【0051】
【発明の効果】
本発明は、以上に説明したように構成されているので、以下に記載されるような効果を奏する。
本発明は、従来よりゴム用プロセスオイルとして使用されている発ガン性の多環芳香族化合物を含む石油系芳香族炭化水素油と同等の性能を有する、非発ガン性の石油系芳香族炭化水素油を、石油系炭化水素混合物から、2段階のそれぞれ厳密に設計された溶剤抽出法によって、簡単で且つ経済的に有利に製造する方法を提供する。
【0052】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明による工程図である。
【符号の説明】
1 第1段抽出塔溶剤ライン
2 第1段抽出塔原料油ライン
3 第1段抽出塔抽出残油ライン
4 第1段抽出塔抽出油
5 第2段抽出塔溶剤ライン
6 第2段抽出塔抽出残油
7 第2段抽出塔抽出油ライン
8 回収溶剤
9 芳香族炭化水素油
10 熱交換器
11 第1段抽出塔
12 第2段抽出塔
13 溶剤回収塔
Claims (3)
- 先ず第1段階の溶剤抽出で、石油系炭化水素混合物が塔底より塔内へ投入されるとともに溶剤であるフルフラールまたはフェノールが塔頂より塔内へ投入される向流接触型の抽出塔を用い、溶剤比1.2〜3.0、塔頂温度45〜70℃、及び塔底温度40〜50℃の範囲で抽出処理を行うことにより、石油系炭化水素混合物から、ASTM D 2140 に規定される組成分析法による芳香族化合物を形成する炭素含有量12%以上で且つIP346試験法による多環芳香族化合物含有量1.6%未満の抽出残油を得、更に第2段階の溶剤抽出で、第1段階の溶剤抽出で得た抽出残油が塔底より塔内へ投入されるとともに第1段階の溶剤抽出で用いた溶剤と同種の溶剤が塔頂より塔内へ投入される向流接触型の抽出塔を用い、溶剤比4.5〜5.0、塔頂温度90〜125℃、及び塔底温度60〜85℃の範囲で抽出処理を行うことにより、第1段階の溶剤抽出で得た抽出残油から、ASTM D 2140 の芳香族炭素含有量26%以上で且つIP346試験法による多環芳香族化合物含有量3%未満の非発ガン性の石油系芳香族炭化水素油を抽出油として得る製造法。
- 石油系炭化水素混合物が、沸点範囲260〜650℃の潤滑油製造に用いられる留分である特許請求の範囲第1項に記載の製造法。
- 石油系炭化水素混合物が、減圧蒸留残さの脱れき油である特許請求の範囲第1項または第2項に記載の製造法。
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