JP2010227955A - 溶接金属および溶接材料 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】C:0.06〜0.18%、Si:0.5%以下、Mn:2.0%以下、Ni:50〜68%、Cr:20〜30%、Al:2.0〜7.0%、Nb:0.55〜1.50%およびN:0.04〜0.15%を含み、残部がFeおよび不純物からなり、かつ、不純物中のO、PおよびSがそれぞれ、O:0.02%以下、P:0.01%以下およびS:0.01%以下である溶接金属。この溶接金属のビッカース硬さは320以上であることが好ましい。
【選択図】なし
Description
<7>上述した観点から、CおよびNbの含有量を特定の範囲、つまり、質量%で、C:0.06〜0.18%およびNb:0.55〜1.50%の範囲に調整する必要がある。
Cは、Al、Nbとともに本発明の根幹に係る元素で、凝固割れおよび延性低下割れを防止する作用を有する。すなわち、Cは、凝固中にNbと結合して、溶接金属が凝固する際に共晶炭化物を生成して、液相の消失を早めるとともに、最終凝固部の組織をNbCとオーステナイトのラメラ状組織とする。その結果、液相の残存形態を面状から点状に変化するとともに、特定面への応力集中が抑制され、また、不純物の偏析サイトとなる最終凝固界面積が増大するので、凝固割れおよび延性低下割れを防止することができる。
Siは、脱酸剤として添加される。しかしながら、Siの含有量が多くなって0.5%を超えると、溶接金属の凝固時に柱状晶粒界に偏析し、液相の融点を下げ、凝固割れ感受性を増大させる。そのため、Siの含有量を0.5%以下とする。Si含有量は、望ましくは、0.4%以下で、さらに望ましくは、0.3%以下である。
Mnは、Siと同様、脱酸剤として添加される。しかしながら、Mnの含有量が多くなって2.0%を超えると、延性および靱性の低下を招く。そのため、Mnの含有量を2.0%以下とする。Mn含有量は、望ましくは、1.8%以下で、さらに望ましくは、1.6%以下である。
Niは、安定なオーステナイト組織を得るために必須の元素であるばかりでなく、Ni3(Al、Nb)として微細に分散し、溶接金属の強度を大きく向上させる作用を有する。上記の効果を十分に得るためには、50%以上のNi含有量が必要である。しかしながら、Niは高価な元素であるため多量の添加はコストの増大を招き、特に、Niの含有量が68%を超えると、コストの増大が著しくなる。したがって、Niの含有量を50〜68%とする。なお、Ni含有量の望ましい下限は55%であり、望ましい上限は65%である。
Crは、使用環境下での耐食性を確保するために必須の元素であり、その効果を十分得るためには、20%以上の含有量が必要である。しかしながら、Crの含有量が過剰になって30%を超えると、オーステナイト組織を不安定とするとともに、接ガス環境の種類によっては脆化を招く。したがって、Crの含有量は20〜30%とする。なお、Cr含有量の望ましい下限は22%であり、望ましい上限は28%である。
Alは、Nb等とともに本発明の根幹に係る元素である。すなわち、AlはNiと結合し、微細な析出相として析出し、溶接金属の強度を増大させるのに必須の元素である。その効果を短時間の溶接後熱処理で得るためには、Nbと複合して含有させるとともに、少なくとも2.0%以上の含有量とする必要がある。しかしながら、Alの含有量が過剰になって7.0%を超えると、溶接中に酸化スラグとして浮上してしまうため、その効果は飽和するばかりか、溶接ビードの美観や溶接作業性を損なうことになる。そのため、Alの含有量は2.0〜7.0%とする。なお、Al含有量の望ましい下限は3.0%であり、望ましい上限は6.0%である。
Nbは、CおよびAlとともに本発明の根幹に係る元素である。すなわち、NbはNi3Al中にAlと置換して固溶し、Ni3(Al、Nb)となることで、その析出の駆動力を大きくし、短時間の溶接後熱処理で溶接金属の強度を増大させる作用を有する元素である。Nbは、微細な炭窒化物として粒内に析出することによっても、溶接金属の強化に少なからず寄与する。加えて、Cと複合して含有させることにより、凝固時にCと共晶炭化物を形成し、凝固時の液相の消失を早め、しかも、最終凝固部の組織をNbCとオーステナイトのラメラ状組織とすることによって、液相の残存形態を変化させるとともに偏析サイトを増大させ、凝固割れおよび延性低下割れの防止を可能にする。
Nは、マトリックスに固溶するとともに微細な窒化物を形成し、溶接金属の強度を確保するのに有効な元素である。この効果を十分に得るためにはNの含有量を0.04%以上とする必要がある。しかしながら、Nの含有量が過剰になって0.15%を超えると、AlNとして析出し、高強度化に必要なNi3(Al、Nb)の析出を抑制してしまうとともに脆化の原因となる。したがって、Nの含有量を0.04〜0.15%とする。
Oは、不純物として存在し、多量に含まれると、溶接材料の加工性や溶接金属の延性を劣化させる。そのため、Oの含有量は可能な限り低減することが好ましいが、0.02%以下であれば、本発明の溶接金属や溶接材料の特性に顕著な劣化は認められない。したがって、Oの含有量を0.02%以下とする。
Pは、不純物として含まれ、溶接金属の凝固時に最終凝固部の融点を低下させ、凝固割れ感受性を著しく増大させてしまう。さらに、結晶粒界に偏析して延性低下割れ感受性をも高めてしまう。そのため、Pの含有量は可能な限り低減することが好ましいが、P含有量の極度の低減は製鋼コストの増大を招くし、0.01%以下であれば、本発明の溶接金属や溶接材料の特性に顕著な劣化は認められない。したがって、Pの含有量を0.01%以下とする。
Sは、Pと同様に不純物として含まれ、溶接金属の凝固時に最終凝固部の融点を低下させ、凝固割れ感受性を著しく増大させてしまう。さらに、結晶粒界に偏析して延性低下割れ感受性をも高めてしまう。そのため、Sの含有量は可能な限り低減することが好ましいが、Pの場合と同様に、S含有量の極度の低減は製鋼コストの増大を招くし、0.01%以下であれば、本発明の溶接金属や溶接材料の特性に顕著な劣化は認められない。したがって、Sの含有量を0.01%以下とする。
Claims (3)
- 質量%で、C:0.06〜0.18%、Si:0.5%以下、Mn:2.0%以下、Ni:50〜68%、Cr:20〜30%、Al:2.0〜7.0%、Nb:0.55〜1.50%およびN:0.04〜0.15%を含み、残部がFeおよび不純物からなり、かつ、不純物中のO、PおよびSがそれぞれ、O:0.02%以下、P:0.01%以下およびS:0.01%以下であることを特徴とする溶接金属。
- ビッカース硬さが320以上であることを特徴とする請求項1に記載の溶接金属。
- 質量%で、C:0.06〜0.18%、Si:0.5%以下、Mn:2.0%以下、Ni:50〜68%、Cr:20〜30%、Al:2.0〜7.0%、Nb:0.55〜1.50%およびN:0.04〜0.15%を含み、残部がFeおよび不純物からなり、かつ、不純物中のO、PおよびSがそれぞれ、O:0.02%以下、P:0.01%以下およびS:0.01%以下であることを特徴とする溶接材料。
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