JP2002235136A - Ni基耐熱合金とその溶接継手 - Google Patents
Ni基耐熱合金とその溶接継手Info
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Abstract
分解炉管および改質炉管に用いるのに好適なNi基耐熱合
金とその溶接継手を提供する。 【解決手段】C:0.1%以下、Si:2%以下、Mn:2%以
下、P:0.025%以下、S:0.005%以下、N:0.04%以
下、Cr:10〜30%、Al:2.1〜4.5%未満、並びにMo:2.
5〜15%もしくはW:2.5〜9%またはその両者を合計で2.
5〜15%含み、下記の(1)式を満たすNi基耐熱合金であ
る。 (104Si+1980P+1980S+9Al+15Ti+11Nb+1.8W+11600B) ≦{1.1(240−20000S−1900P−30Al−10Ti−9W+17000B)}・・(1) 本発明の溶接継手は、母材、溶接金属とも上記の組成の
合金で、下記の(2)式または(3)式で算出される溶接金属
のST値が母材のST値よりも大きく、その差が3以上
である。 Ti≦4Cの場合 ST=Mo+1.5W+100Ti ・・(2) Ti>4Cの場合 ST=Mo+1.5W+400C ・・(3)
Description
性および耐浸炭性に優れた高温強度の高いNi基耐熱合金
およびその溶接継手に関する。特に、エチレンプラント
用分解炉および改質炉に使用される溶接構造を前提とす
る管、板材等の素材となるNi基耐熱合金とその溶接継手
に関する。エチレンプラント用分解炉および改質炉と
は、ナフサ、プロパン、エタン、ガスオイル等の炭化水
素原料を800℃以上の高温で分解または改質し、エチレ
ン、プロピレン等の石油化学基礎製品を製造する炉であ
る。
の使用温度は、エチレン等の収率向上の観点から高温化
の傾向が強くなってきている。
としては、内面が浸炭雰囲気に曝されるため、高温強度
と耐浸炭性に優れた耐熱性が要求される。また、一方で
は、操業中にコーキングと称される管の内表面に炭素が
析出する現象が現れ、その析出量の増加に伴い管内圧力
の上昇や加熱効率の低下などの操業上の弊害が生じる。
空気や水蒸気で析出した炭素を除去する、いわゆるデコ
ーキング作業がおこなわれているが、その間の操業停止
や作業の工数などが大きな問題になる。このようなコー
キングとそれに伴う諸問題は、管のサイズが収率向上に
有利な小径管になるほど深刻になる。
ては、例えば、特開平2−8336号公報に示されるよう
に、合金中に28質量%以上のCrを含有させて合金表面に
強固で安定なCr2O3皮膜を形成させ、炭素析出を促進
する触媒元素であるFeおよびNiの表面への露出を防止し
てコーキングを抑制するようにした技術がある。
ば、特開昭57−23050号公報に示されるように、合金中
のSi含有量を高めるのが有効なことが知られている。
ような問題点がある。
6号公報に提案されるような高Cr合金を高温強度部材と
して適用する場合には、合金中のNi量を高めて金属組織
をオーステナイトにする必要がある。しかし、単にオー
ステナイト組織にするだけでは、高温強度が従来合金に
比べて低いので単独では高温強度部材として適用するこ
とは難しい。なお、特開平2−8336号公報には、他の高
温強度部材と組み合わせて二重管とし使用することが示
されているが、二重管は製造コストや信頼性の点で問題
が多い。
ように、合金中のSi含有量を高めた場合には、溶接割れ
感受性が高くなり、溶接構造物としての実用に耐えない
という問題がある。
同5−239577号公報、同5−33092号公報および同6−20
7235号公報に示されるように、合金中のAl量を高めてメ
タル表面に強固で緻密なAl2O3皮膜を生成させるよう
にした合金は、従来の合金に比較して耐浸炭性および耐
コーキング性が著しく向上する。また、このような高Al
合金では、Ni量を高めることにより高温での使用中に
γ’相がマトリックス中に微細に析出し、クリープ破断
強度も大幅に向上する。すなわち、これらの公報に示さ
れる合金は、高温での耐浸炭性、耐コーキング性に優
れ、しかもクリープ強度が高いことが特徴で、エチレン
プラント用分解炉および改質炉管として好適である。
接性、特に耐溶接割れ性に対する成分設計面での配慮が
十分になされていないだけでなく、溶接継手を構成する
溶接金属自体の成分設計についても十分な配慮がなされ
ていなかった。Al量の高いNi基合金では、溶接時の溶接
熱影響部(Heat Affected Zone;以下、HAZともい
う)および溶接金属で割れを生じやすいのみならず、溶
接金属では母材に比べて高温クリープ強度が低くなりや
すい。
理を受けた状態ではなく、凝固組織のままで使用される
ため、高温クリープ強度が低くなりやすい。したがっ
て、実用に有益な材料とするには、母材および溶接金属
の成分設計において溶接時の割れ感受性の低減と溶接継
手のクリープ強度の低下防止を織り込んでおくことが重
要な課題となる。
レンプラント用分解炉および改質炉の管がおかれる環
境、すなわち浸炭、酸化および温度変動が繰り返される
環境下において優れた耐浸炭性と耐コーキング性を有
し、かつ優れた溶接性と高温強度を有するNi基耐熱合金
とその溶接継手を提供することにある。
(1)のNi基耐熱合金および下記(2)のその溶接継手に
ある。以下、成分の含有量に関する%は質量%を意味す
る。 (1)C:0.1%以下、Si:2%以下、Mn:2%以下、P:
0.025%以下、S:0.005%以下、N:0.04%以下、Cr:
10〜30%、Al:2.1〜4.5%未満、並びにMo:2.5〜15%
もしくはW:2.5〜9%またはMoとWの両方を合計で2.5〜
15%含み、さらにTi:0〜3%、Nb:0〜1%、V:0〜1
%、Ta:0〜2%、Zr:0〜0.2%、Hf:0〜0.8%、B:0
〜0.03%、Mg:0〜0.01%、Ca:0〜0.01%、Fe:0〜10
%、La:0〜0.1%、Ce:0〜0.1%、Nd:0〜0.1%、Y:
0〜0.1%、Cu:0〜5%、Co:0〜10%を含み、残部が実
質的にNiよりなり、かつ下記の(1) 式を満足するNi基耐
熱合金。
素の含有率(質量%)を意味する。
ことが望ましい。 (2)母材および溶接金属が、C:0.1%以下、Si:2%
以下、Mn:2%以下、P:0.025%以下、S:0.005%以
下、N:0.04%以下、Cr:10〜30%、Al:2.1〜4.5%未
満、並びにMo:2.5〜15%もしくはW:2.5〜9%またはMo
とWの両方を合計で2.5〜15%含み、さらにTi:0〜3
%、Nb:0〜1%、V:0〜1%、Ta:0〜2%、Zr:0〜0.2
%、Hf:0〜0.8%、B:0〜0.03%、Mg:0〜0.01%、C
a:0〜0.01%、Fe:0〜10%、La:0〜0.1%、Ce:0〜0.
1%、Nd:0〜0.1%、Y:0〜0.1%、Cu:0〜5%、Co:0
〜10%を含み、残部が実質的にNiよりなり、かつ下記の
(1) 式を満足するとともに、下記の(2)式または(3)式で
求められる溶接金属のST値が母材のST値よりも大き
く、その差が3以上であるNi基耐熱合金からなる溶接継
手。
属中に含まれる各元素の含有率(質量%)を意味する。
ることが望ましい。
および改質炉の管として用いるのに好適である。また、
その溶接継手は、上記の本発明の溶接継手であることが
望ましい。
するため、Cr含有量が10〜30%、Al含有量が2.1から4.5
%未満で、かつ2.5〜15%のMoおよび2.5〜9%のWのう
ちの一方または両方(但し、両方を含む場合は合計で2.
5〜15%)を含むNi基合金を対象に、実験、研究を重ね
た結果、次のことを知見し、本発明を完成させた。
た際に溶接金属との境界に近い高温に加熱された母材の
粒界が、一部溶融した母材部位を起点として割れ、この
割れが粒界脆化を生じたより低温側のHAZに伝播する
ことにより生じる。すなわち、HAZでの溶接割れは、
溶接熱応力が上記のようにして低下した粒界の固着力を
上回ることにより発生する。
側で生じる粒界脆化に及ぼす合金元素の影響を定量的に
評価し、抵抗力を定量評価することを試みた。
量BIの部材から亀裂が生じた際のエネルギ−開放率A
が、下記の(4) 式を満足すれば、たとえ粒界が部分的に
溶融しても割れは生じないことがわかった。
IとDIは合金の化学組成に依存する。即ち、BIは粒
界溶融を生じさせやすい元素(例えば、Si、P、Al、T
i、Nb、W、B)の含有率が多いほど大きくなり、DI
は粒界脆化を生じさせやすい元素(例えば、S、P、A
l、Ti、W)の含有率が多いほど小さくなる。従って、
粒界脆化を生じさせやすい元素の含有量が増えると、
(4) 式を満足させることが難しくなる。
元素iに対し、平衡状態図における元素1%当たりの液
相線温度の低下度をmi、固液相分配係数をki、粒界
偏析量をbi、各元素の含有率をXiとした場合、下記
の(5) 式により求められるが、実験の結果、下記の(6)
式で求められる値とすればよいことがわかった。
ぼす各元素の影響を高温での破壊テストにより定量する
実験の結果、下記の(7) 式で求められる値とすればよい
ことがわかった。
形状寸法、特に板厚や肉厚の影響を受けるが、TIG溶
接を主とするNi基耐熱合金では、入熱量で高々20 kJ/c
m程度であり、その程度の入熱量の影響は大きくない。
大きく、溶接熱応力Rは、板厚10mmまでは板厚の増加と
ともに急激に増大する。このため、溶接構造物として考
えられる厚さの上限に近い板厚25mmにて、最も厳しい完
全拘束条件下で模擬溶接実験を行って割れ発生の有無を
調査した。
が(7) 式で求められるDI値の1.1倍以下、つまり前述
した(1)式を満足するように成分調整すれば、溶接時に
HAZで割れが生じないことがわかった。
分調整された母材を前提に、溶接割れ感受性が低く、か
つ母材と同等のクリープ強度を有する溶接継手が得られ
る溶接金属の開発に努めた。
下するのは、母材ではマトリックス中に固溶して強化に
有効に寄与していたMoおよび/またはWが溶接金属では
凝固偏析により母材ほど有効には寄与しないことによ
る。したがって、溶接金属には母材よりも多くのMoおよ
び/またはWを含有させる必要がある。
び/またはWを有している場合、溶接金属にさらに多く
のMoおよび/またはWを含有させることは困難である。
溶接金属に多量のMoおよび/またはWを含有させるため
には、溶接材料のMoおよび/またはWの含有量を高めな
ければならず、そうすると、溶接材料に加工する際の熱
間加工性が低下するからである。
よび/またはWを含有させなくてもそのクリープ強度が
母材よりも低くならない条件を探求した。その結果、溶
接金属の粒界に適量のTiCを分散させるのが有効なこと
がわかった。具体的に説明すると、母材または溶接金属
中に含まれるTi含有量に応じて前述した(2)式または(3)
式で求められるST値が、母材よりも溶接金属の方が大
きく、その差が3以上になるように母材と溶接金属のM
o、W、CおよびTi含有量を調整すれば、凝固組織であ
る溶接金属のクリープ強度が母材のクリープ強度とほぼ
同じになることがわかった。
よってHAZと同じ熱サイクルを受け、母材のHAZ割
れと同様の割れを生じる。しかし、溶接金属が前述した
(1)式を満足する場合には、母材と同様に、溶接割れは
生じないことがわかった。
本発明者等は、高温での耐浸炭性、耐コーキング性を低
下させることなく、前述の溶接性に加え実用量産合金と
して必要不可欠な熱間加工性を満足させる観点から、種
々の化学組成の合金を溶製して実験、検討を重ねた結
果、以下の知見を得た。
は、Al系窒化物を形成しやすく、この窒化物系析出物を
起点にAl2O3を主体とするAl系酸化物皮膜の保護性が
失われる。
るCrを10%以上含有させる一方、Nを低減すれば、Nは
十分に固溶してAlNが合金表面に析出しない。従って、
Alが1%以上であっても、合金表面のアルミナ主体の酸
化皮膜の保護性が損なわれず、良好な耐浸炭性と耐コー
キング性が確保でき、しかも高温強度が向上する。
間加工性と溶接性は向上するが、その熱間加工性は、一
般のFe−Cr−Ni系やNi−Cr系合金と比較すると、量産化
を考慮した場合十分とは言えない。すなわち、熱間加工
時にNi−Al系金属間化合物が析出し、結晶粒内が著しく
強化されるために相対的に粒界が弱くなる。粒内が強化
されると加工の際に大きな力を加えなければならず、そ
うすると相対的に弱い粒界が破壊しやすく、熱間加工性
が低下する。そこで、熱間加工性を改善するためには、
粒内の強化と同等に粒界も強化する必要がある。
粒界そのものが弱化している。この弱化の主要因のひと
つがSである。従って、粒界の弱化を防ぐにはSを0.00
5%以下に制限することが極めて重要であり、0.003%以
下に制限すればなお一層の改善効果が期待できる。
重要である。多量のAlを含有するNi基合金では、前述し
たように鋼中のNがAl系窒化物を形成しやすく、この窒
化物系析出物が熱間加工性を著しく低下させるからであ
る。
合力を高めるため、粒界の強化に効果を発揮するので、
熱間加工性の低下防止にはこれらの元素の1種以上を含
有させるのがよい。
上記のように定めた理由について詳細に説明する。この
Ni基合金は、溶接継手においては母材となるものであ
る。以下の各元素の説明等は、特に断らない限り、Ni基
耐熱合金および溶接継手を構成する溶接金属に共通であ
る。
を構成する母材(前記のNi基耐熱合金)と溶接金属は、
いずれも、下記の(1) 式を満足する必要がある。
金属のそれぞれに含まれる各元素の含有率(質量%)を
意味する。
止のために必須の条件である。(1)式の意味は次のとお
りである。前述したように、溶接により融点直下となっ
た領域での粒界の部分的な溶融量に依存して生じる局部
的な破壊応力が、隣接した粒界の脆化域での破壊抵抗を
上回らない範囲内に成分の組み合わせを選択することを
意味し、(1)式を満足する場合に限って溶接割れが発生
するのを防ぐことが可能となる。
ければならない。
のST値を下記の(2) 式または(3)式で求めたとき、溶接
金属のST値が母材のST値よりも大きく、その差が3
以上であることである。この場合に限って固溶強化とTi
C分散による強化の相乗効果により、凝固組織である溶
接金属のクリープ強度が母材のクリープ強度と同等にな
ってバランスする。
囲内において満足する必要がある。このことは、後述す
る実施例の結果からも明らかである。
やクリープ破断強度を向上させるためには有効な元素で
あるから、0.01%以上含有されることが望ましい。しか
し、その含有量が0.1%を超えると合金の延性および靭
性の低下が大きくなるばかりでなく、Alを多く含むNi基
合金においてはアルミナ皮膜形成を阻害する。このた
め、C含有量は0.1%以下とした。好ましい上限は0.09
%、より好ましい上限は0.07%である。
耐浸炭性改善にも寄与する元素であるが、Alを多く含有
するNi基合金においては耐酸化性や耐浸炭性の改善効果
が比較的小さい反面、熱間加工性や溶接性を低下させる
作用が強い。このため、製造上、特に熱間加工性が重視
される場合には低い方がよいが、耐酸化性や耐浸炭性の
改善作用を得る必要がある場合もあることを考慮して2
%以下とする。好ましい上限は1.5%、より好まし上限
は1%である。なお、耐酸化性や耐浸炭性の改善作用
は、0.2%以上で顕著になる。
ング性の劣化要因となるスピネル型酸化物の皮膜形成を
促進することから2%以下に抑える必要がある。好まし
い上限は1.5%、より好ましい上限は1%である。Mn含有
量は不純物レベルでもよいが、脱酸効果を確実にするた
めには、0.1%以上含有させるのが望ましい。
劣化させる極めて有害な元素であり、上限値の規制が極
めて重要である。特に、Alを多く含むNi基合金では粒界
強化が重要となるため、S含有量は極力低減するのが好
ましい。また、溶接性を改善するためには少なくとも0.
005%以下とする必要があることからその上限を0.005%
とした。
に、粒界の融点を下げ、高温HAZ(溶融境界に接する
母材部分)での粒界の部分溶融を促進して溶接割れを生
じさせる有害な元素であり、その含有量は低ければ低い
ほど望ましいが、0.025%までであれば特に問題ないこ
とから、その上限を0.025%とした。
強度を高めるのに有効で積極的に用いられているが、Al
を多く含むNi基合金では、AlN等の窒化物として析出す
るために固溶強化が期待できないばかりか熱間加工性、
溶接性を著しく阻害する。さらに、窒化物を起点として
保護性皮膜を破壊し耐浸炭性を低下させる。したがっ
て、N含有量は低ければ低いほどよいが、0.04%までで
あれば特に問題ないことと、過度な低減はコスト上昇と
歩留まり低下を招くことからその上限を0.04%とした。
なお、好ましい上限は0.03%、より好ましい上限は0.02
%である。
あり、アルミナ皮膜の生成初期においてアルミナ皮膜を
均一に生成させる作用がある。また、炭化物を形成しク
リープ破断強度の向上にも寄与する。さらに、本発明で
規定する成分系においてはCrは熱間加工性の向上にも寄
与する。これらの効果を得るためには最低でも10%以上
が必要がある。一方、Crを過剰に含有させると靭性、加
工性といった機械的性質を阻害することになる。このた
め、Cr含有量は10〜30%とした。好ましい範囲は12〜25
%、より好ましい範囲は12〜23%である。
高温強度の向上に極めて有効な元素であるが、その効果
を得るにはコランダム型のアルミナ酸化皮膜を均一に生
成させる必要がある。また、Alはγ’相[Ni3 (Al、T
i)の金属間化合物]を形成して析出強化作用を発揮す
る。これらの効果を得るためには最低でも2.1%以上が
必要である。一方、4.5%以上になると溶接割れ感受性
が極端に増大する。したがって、Al含有量は2.1から4.5
%未満とした。好ましい範囲は2.1〜4%、より好ましい
範囲は2.1〜3.5%である。
を含む場合は合計で2.5〜15% これらの元素は、いずれも、主として固溶強化元素とし
て有効であり、基地のオーステナイト相を強化すること
によりクリープ破断強度を上昇させる。その効果を得る
にはそれぞれ2.5%以上、2種の合計含有量でも2.5%以
上が必要である。しかし、過剰に含有させると靭性低下
の要因となる金属間化合物が析出するだけでなく、耐浸
炭性や耐コーキング性も劣化する。上限はMoとWの合計
で15%以下に抑えるべきである。ただし、Moに比べてW
は金属間化合物析出による熱間加工性および溶接性低下
が大きいため、MoよりもWの上限を低く制限する必要が
ある。このため、これら元素の含有量は、Moで15%以
下、Wで9%以下の範囲内で、合計でも15%以下とし
た。合計量の好ましい範囲は4〜13%、より好ましい範
囲は6〜13%である。
ば、粒界を強化する作用があり、溶接割れ感受性の低減
に寄与する。このため、この効果を得たい場合に添加す
ることができ、その効果は含有量0.001%以上で顕著に
なる。しかし、Bの含有量が0.03%を超えると、かえっ
て溶接割れ感受性が高くなる。したがって、添加する場
合のB含有量は0.001〜0.03%とするのがよい。
ば、γ’相の析出を促進してクリープ破断強度の向上に
寄与する他、TiCとして析出して粒界を強化し、溶接金
属のクリープ破断強度の向上にも寄与する。このため、
これらの効果を得たい場合に添加することができ、その
効果は含有量0.005%以上で顕著になる。しかし、3%を
超えて含有させると、γ’相が過剰に析出して溶接性が
著しく劣化する。したがって、添加する場合のTi含有量
は0.005〜3%とするのがよい。なお、好ましい上限は1
%である。
い。添加すれば、いずれの元素も、粒界に偏析して粒界
すべりを抑えることによってクリープ強度の向上に寄与
する。このため、この効果を得たい場合には1種以上を
添加することができ、その効果は、いずれの元素も、0.
01%以上で顕著になる。しかし、Zrが0.2%を超える場
合、Hfが0.8%を超える場合、いずれも、かえってクリ
ープ破断強度が低下する。したがって、添加する場合の
Zr含有量は0.01〜0.2%、Hf含有量は0.01〜0.8%とする
のがよい。
い。添加すれば、いずれの元素も、主として熱間加工性
に有害なSを硫化物として固定して粒界強度を高め、熱
間加工性の改善に寄与する。このため、この効果を得た
い場合には1種以上を添加することができ、その効果
は、いずれの元素も含有量0.0005%以上で顕著になる
が、0.01%を超えると、固溶状態で合金中に存在し、逆
に熱間加工性および溶接性を低下させる。したがって、
添加する場合これら元素の含有量は、いずれも0.0005〜
0.01%とするのがよい。なお、これらの元素を添加する
際のMgとCaの含有量は、式「(1.178Mg+Ca)/S」で
求まる値が0.5〜3の範囲内に入るように含有させるのが
望ましく、この場合には熱間加工性の改善効果が一段と
向上する。
ば、クリープ延性を改善し、クリープ破断強度の向上に
寄与する他、熱間加工性や常温加工性の改善にも寄与す
る。このため、この効果を得たい場合には添加すること
ができ、その効果は含有量0.1%以上で顕著になる。し
かし、10%を超えると、逆にクリープ破断強度、熱間加
工性とも低下する。したがって、添加する場合のFe含有
量は0.1〜10%とするのがよい。
もよい。添加すれば、いずれの元素も、オーステナイト
相に固溶して基地を強化する他、炭化物を形成してクリ
ープ破断強度の向上に寄与する。このため、この効果を
得たい場合には1種以上を添加することができ、その効
果は、いずれの元素も含有量0.01%以上で顕著になる
が、NbとVはそれぞれ1%を超えると、また、Taは2%を
超えると、靭性低下を招く。したがって、添加する場合
のNbとVの含有量は0.01〜1%、Taの含有量は0.01〜2%
とするのがよい。なお、NbとVの好ましい上限は0.8
%、Taの好ましい上限は1.8%であり、2種以上を複合添
加する場合の望ましい合計含有量の上限は3%である。
くてもよい。添加すれば、いずれの元素も、主として熱
サイクル条件下でのアルミナ皮膜の剥離を防止し、温度
が変動する環境下での使用においても耐浸炭性および耐
コーキング性を向上させる効果がある。したがって、そ
の効果を得たい場合には1種以上を添加することがで
き、その効果は、いずれの元素も、含有量0.002%以上
で顕著になる。しかし、いずれの元素も、0.1%を超え
ると、アルミナ皮膜の剥離防止効果が飽和するばかりで
なく、加工性が悪化する。したがって、添加する場合の
これら元素の含有量は、いずれの元素も、0.002〜0.1%
とするのがよい。
い。添加すれば、いずれの元素も、主としてオーステナ
イト相の安定化に寄与する他、Coは固溶強化によりクリ
ープ強度の向上にも寄与する。このため、これらの効果
を得たい場合には1種以上を添加することができ、その
効果は、いずれの元素も、含有量0.01%以上で顕著にな
る。しかし、Cuは5%、Coは10%をそれぞれ超えると、
靭性および加工性が損なわれる。したがって、添加する
場合のCu含有量は0.01〜5%、Co含有量は0.01〜10%と
するのがよい。なお、Cu含有量の好ましい上限は3%、
より好ましい上限は1.5%であり、Co含有量の好ましい
上限は8%、より好ましい上限は5%である。
び精錬工程で溶製した後、鋳造することにより得られ、
鋳造のままでも用いることができる。通常、鋳造後に鍛
造、熱間加工、冷間加工等の各加工工程を経て管などの
製品にして用いる。なお、粉末冶金法で製品にしてもよ
い。熱処理は組織の均一化を促進し、本発明合金の性能
向上に寄与する。熱処理としては、1100〜1300℃での均
一化処理が好ましいが、鋳造あるいは加工のままでの使
用も可能である。
の溶接材料として使用することもでき、これを用いてT
IG溶接等により溶接継手が得られる。その際の溶接金
属は、使用性能、溶接割れ防止の観点から前記の組成と
する。その組成範囲内で前記の(2)式または(3)式で求め
られる溶接金属のST値が母材のST値よりも大きく、
その差が3以上になるようにする必要がある。それによ
って、母材と同等のクリープ強度を有する溶接金属が得
られる。
混合して形成される。従って、溶接金属の組成は、母材
組成と希釈率を考慮して溶接材料の組成を選ぶことによ
って調整することができる。
と、表2に示す化学組成を有する9種類の溶接材料を準備
した。なお、母材および溶接材料は、いずれも、容量50
kgの高周波真空溶解炉を用いて溶製し、得られたインゴ
ットを熱間鍛造して板厚25mmの板材とし、1250℃で固溶
化熱処理を施したものを母材とした。また、上記のイン
ゴットを熱間鍛造、熱間圧延、冷間引抜きの工程を経て
外径2mmの線材に加工して溶接材料とした。
記要領による溶接継手の作製試験を行った。
の一方に半角20゜のV開先加工を施した2枚の試験片を
採取した。この2枚の試験片は、V開先加工を施した長
辺同士を突き合わせ、厚さ50mm、幅150mm、長さ250mmの
鋼板上に載置してその4辺全周を被覆アーク溶接(3パ
ス)して完全に拘束した。次いで、突き合わせたV開先
部分をTIG溶接法にて多層溶接した。溶接条件は溶接電
流130A、溶接電圧12V、溶接速度15cm/minとした。準
備した母材と溶接材料とを種々組合せ、表3に示す化学
組成の溶接金属をもつ23種類の溶接継手を作製した。
た各溶接継手から、長手方向が溶接線と直交する方向
で、長手方向の中央に溶接金属の幅方向中央が位置する
厚さ15mm、幅10mm、長さ200mmの側曲げ試験片を各5個採
取し、曲げ半径20mmで180度曲げを行って曲げ部の表面
を50倍の拡大視野にて検鏡し、HAZおよび溶接金属で
の割れの発生の有無を調べ、試験片5個ともに割れの発
生が認められなかったものを耐溶接割れ性が良好
「○」、試験片1個にでも割れの発生が認められたもの
を耐溶接割れ性が不良「×」として評価した。
継手については、長手方向が溶接線と直交する方向で、
長手方向の中央部に外径6mm、長さ30mmの平行部を有
し、この平行部の中央に溶接金属が位置するクリープ破
断試験片を採取し、温度1150℃、負荷応力7MPaの条件に
よるクリープ破断試験を行って溶接金属の破断時間を調
べた。
採取して行った上記と同じ条件のクリープ破断試験によ
り得られた破断時間と対比し、破断時間が母材の破断時
間の90%以上であったものをクリープ強度が良好
「○」、90%未満であったものをクリープ強度が不十分
「×」として評価した。以上の結果を、母材と溶接材料
の組合せと併せて表4に示した。
属ともに本発明で規定する条件を満足し、かつ母材と溶
接金属との関係も本発明で規定する条件を満足する代符
AJ0〜AJ14の溶接継手は、HAZおよび溶接金属ともに
割れは発せず、溶接金属のクリープ破断時間が母材の90
%以上で、クリープ強度は良好である。
各元素の含有量は本発明で規定する範囲内ではあるが、
母材が本発明で規定する(1)式を満足しない溶接継手、
すなわち、(BI/DI)値が1.1を超える代符BJ1〜BJ5の
溶接継手は、いずれもHAZで溶接割れが発生し、溶接
性が不良である。
成は本発明で規定する条件を満足するものの、溶接金属
のST値と母材のST値との関係が本発明で規定する条
件を満足しない代符BJ6〜BJ8の溶接継手は、溶接割れは
生じないものの、溶接金属のクリープ破断時間が母材の
90%未満で、溶接継手全体としてのクリープ強度は不十
分である。
優れている。また、本発明の溶接継手は溶接部に溶接割
れ欠陥がなく、しかも溶接部のクリープ強度が高い。こ
のため、エチレンプラント用分解炉および改質炉の管の
ように、浸炭および酸化がおきる雰囲気でしかも温度変
動が繰り返される使用環境下において優れた特性を発揮
する。従って、本発明の合金の製品は、より高温での使
用および連続操業時間の延長が可能であり、さらには耐
久性の向上により新材との取り替え間隔を長くすること
ができる。
Claims (6)
- 【請求項1】質量%で、C:0.1%以下、Si:2%以下、
Mn:2%以下、P:0.025%以下、S:0.005%以下、
N:0.04%以下、Cr:10〜30%、Al:2.1〜4.5%未満、
並びにMo:2.5〜15%もしくはW:2.5〜9%またはMoと
Wを合計で2.5〜15%含み、さらに、Ti:0〜3%、Nb:0
〜1%、V:0〜1%、Ta:0〜2%、Zr:0〜0.2%、Hf:0
〜0.8%、B:0〜0.03%、Mg:0〜0.01%、Ca:0〜0.01
%、Fe:0〜10%、La:0〜0.1%、Ce:0〜0.1%、Nd:0
〜0.1%、Y:0〜0.1%、Cu:0〜5%、Co:0〜10%を含
み、残部が実質的にNiよりなり、かつ下記の(1) 式を満
足するNi基耐熱合金。 (104Si+1980P+1980S+9Al+15Ti+11Nb+1.8W+11600B) ≦{1.1(240−20000S−1900P−30Al−10Ti−9W+17000B)}・・・(1) ここで、(1)式中の元素記号は、合金中に含まれる各元
素の含有率(質量%)を意味する。 - 【請求項2】Tiが1.5%未満である請求項1に記載のNi
基耐熱合金。 - 【請求項3】母材および溶接金属がいずれも質量%で、
C:0.1%以下、Si:2%以下、Mn:2%以下、P:0.025
%以下、S:0.005%以下、N:0.04%以下、Cr:10〜3
0%、Al:2.1〜4.5%未満、並びにMo:2.5〜15%もしく
はW:2.5〜9%またはMoとWを合計で2.5〜15%含み、
さらに、Ti:0〜3%、Nb:0〜1%、V:0〜1%、Ta:0
〜2%、Zr:0〜0.2%、Hf:0〜0.8%、B:0〜0.03%、
Mg:0〜0.01%、Ca:0〜0.01%、Fe:0〜10%、La:0〜
0.1%、Ce:0〜0.1%、Nd:0〜0.1%、Y:0〜0.1%、C
u:0〜5%、Co:0〜10%を含み、残部が実質的にNiより
なり、かつ下記の(1)式を満足するとともに、下記の(2)
式または(3)式で求められる溶接金属のST値が母材の
ST値よりも大きく、その差が3以上であるNi基耐熱合
金からなる溶接継手。 (104Si+1980P+1980S+9Al+15Ti+11Nb+1.8W+11600B) ≦{1.1(240−20000S−1900P−30Al−10Ti−9W+17000B)}・・・(1) Ti≦4Cの場合;ST=Mo+1.5W+100Ti ・・・ (2) Ti>4Cの場合;ST=Mo+1.5W+400C ・・・ (3) ここで、(1)〜(3)式中の元素記号は、母材または溶接金
属中に含まれる各元素の含有率(質量%)を意味する。 - 【請求項4】Tiが0.005〜1.0%である請求項3の溶接継
手。 - 【請求項5】請求項1または2に記載のNi基合金で作ら
れたエチレン分解炉管または改質炉管。 - 【請求項6】請求項3または4に記載の溶接継手を有す
るエチレン分解炉管または改質炉管。
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