JP2010224500A - 光学フィルムおよびそれを備える画像表示装置 - Google Patents

光学フィルムおよびそれを備える画像表示装置 Download PDF

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Abstract

【課題】逆波長分散性を示す新規な光学フィルムを提供する。
【解決手段】正の固有複屈折を与え、主鎖に脂肪族環構造を含む繰り返し単位(A)と、負の固有複屈折を与え、芳香環および/または複素環を含み、分子軌道計算により求まる紫外可視スペクトルの300nm〜450nmの波長範囲において、振動子強度の最大値が0.01以上かつモル吸光係数の最大値が2000L/mol・cm以上である繰り返し単位(B)とを含む樹脂層を有する光学フィルムとする。あるいは、正の固有複屈折を与える前記繰り返し単位(A)を含む樹脂層と、負の固有複屈折を与える前記繰り返し単位(B)を含む樹脂層とを有する光学フィルムとする。
【選択図】図1

Description

本発明は、少なくとも可視光領域において、波長が短くなるほど複屈折が小さくなる波長分散性(逆波長分散性)を示す光学フィルムと、この光学フィルムを備える画像表示装置とに関する。
高分子の配向により生じる複屈折を利用した光学部材が、画像表示分野において幅広く使用されている。このような光学部材の一つに、色調の補償、視野角の補償などを目的として画像表示装置に組み込まれる位相差板(位相差フィルム)がある。例えば、反射型の液晶表示装置(LCD)では、複屈折により生じた位相差に基づく光路長差(リターデーション)が波長の1/4である位相差板(λ/4板)が使用される。有機ELディスプレイ(OLED)では、外光の反射防止を目的として、偏光板とλ/4板とを組み合わせた反射防止板が用いられることがある(特許文献1参照)。これら複屈折性を示す光学部材は、今後のさらなる用途拡大が期待される。
従来、光学部材には、ポリカーボネート、ポリシクロオレフィンが主に用いられてきたが、これら一般的な高分子は、光の波長が短くなるほど複屈折が大きくなる(即ち、位相差が増大する)波長分散性を示す。表示特性に優れる画像表示装置とするためには、これとは逆に、光の波長が短くなるほど複屈折が小さくなる(即ち、位相差が減少する)波長分散性を示す光学部材が望まれる。本明細書では、少なくとも可視光領域において光の波長が短くなるほど複屈折が小さくなる波長分散性を、一般的な高分子ならびに当該高分子により形成された光学部材が示す波長分散性とは逆であることに基づいて、「逆波長分散性」と呼ぶ。
一方、特許文献2に、正の固有複屈折を有する重合体と、負の固有複屈折を有する重合体とを含む樹脂組成物からなる位相差板が開示されている。また、特許文献3に、正の固有複屈折を有する分子鎖と、負の固有複屈折を有する分子鎖とを有する共重合体からなる位相差板が開示されており、これらの位相差板は、単層でありながら逆波長分散性を示す。なお、特許文献2には、正の固有複屈折を有する重合体としてポリノルボルネンが、負の固有複屈折を有する重合体としてスチレン系重合体が例示されている。特許文献3には、正の固有複屈折を有する分子鎖としてノルボルネン鎖が、負の固有複屈折を有する分子鎖としてスチレン鎖などのスチレン系の分子鎖が例示されている。
特開2007−273275号公報 特開2001−337222号公報 特開2001−235622号公報
本発明は、逆波長分散性を示す新規な光学フィルムを提供することを目的とする。
本発明の第一の光学フィルムは、正の固有複屈折を与え、主鎖に脂肪族環構造を含む繰り返し単位(A)と、
負の固有複屈折を与え、芳香環および/または複素環を含み、分子軌道計算により求まる紫外可視スペクトルの300nm〜450nmの波長範囲において、振動子強度の最大値が0.01以上かつモル吸光係数の最大値が2000L/mol・cm以上である繰り返し単位(B)と
を含む樹脂層を有する光学フィルムである。
本発明の第二の光学フィルムは、正の固有複屈折を与え、主鎖に脂肪族環構造を含む繰り返し単位(A)を含む樹脂層と、
負の固有複屈折を与え、芳香環および/または複素環を含み、分子軌道計算により求まる紫外可視スペクトルの300nm〜450nmの波長範囲において、振動子強度の最大値が0.01以上かつモル吸光係数の最大値が2000L/mol・cm以上である繰り返し単位(B)を含む樹脂層と
を有する光学フィルムである。
本発明はまた、上記の光学フィルムを備える画像表示装置である。
本発明によれば、逆波長分散性を示す光学フィルムが提供される。
実施例1で算出した紫外可視スペクトルである(縦軸:振動子強度、横軸:波長)。 実施例1で算出した紫外可視スペクトルである(縦軸:モル吸光係数、横軸:波長)。 実施例2で算出した紫外可視スペクトルである(縦軸:振動子強度、横軸:波長)。 実施例2で算出した紫外可視スペクトルである(縦軸:モル吸光係数、横軸:波長)。 実施例7で算出した紫外可視スペクトルである(縦軸:振動子強度、横軸:波長)。 実施例7で算出した紫外可視スペクトルである(縦軸:モル吸光係数、横軸:波長)。 比較例2で算出した紫外可視スペクトルである(縦軸:振動子強度、横軸:波長)。 比較例2で算出した紫外可視スペクトルである(縦軸:モル吸光係数、横軸:波長)。 比較例4で算出した紫外可視スペクトルである(縦軸:振動子強度、横軸:波長)。 比較例4で算出した紫外可視スペクトルである(縦軸:モル吸光係数、横軸:波長)。
本発明者等が鋭意検討した結果、屈折率は、振動子強度およびモル吸光係数と相関があり、半経験分子軌道計算より求められる振動子強度およびモル吸光係数によって、逆位相分散性を示す光学フィルムが得られる樹脂の構成成分を規定できることを見出した。
具体的には、正の固有複屈折を与える繰り返し単位(A)と負の固有複屈折を与える繰り返し単位(B)を同一方向に配向させた場合、繰り返し単位(A)および繰り返し単位(B)の各々に由来して生じた複屈折が互いに打ち消しあう。ここで、複屈折が打ち消しあう程度が波長によって異なるために、位相差の逆波長分散性が生じる。
ここで位相差(Re)は、Re=d(nx−ny)(d:厚さ、n:屈折率)で表されるように、屈折率の異方性から求めることができるが、屈折率nは、マックスウェルの電磁方程式より、比誘電率(εe)と相関する。すなわち、マックスウェルの電磁方程式を基にして考えると、屈折率は、透磁率と誘電率を用いて、n=√(με/μ0ε0)(μ:透磁率、μ0:真空の透磁率、ε:誘電率、ε0:真空の誘電率)で表され、比誘電率(εe=ε/ε0)は、屈折率の2乗(n2)に比例する。一方で、比誘電率は、電気感受率(χ)とは、εe=1+χの関係にある。電気感受率は、χ=P/ε0E(P:分極、E:電場)で表されるものであり、分極Pは、単位体積あたりの双極子モーメントで定義される。双極子モーメントの2乗は、振動子強度(オシレーターストレングス)に比例しており、また、バンド全体のモル吸光係数の和は、振動子強度に比例する。従って、モル吸光係数および振動子強度は、屈折率と相関があり、また、これらは、半経験分子軌道計算による紫外可視スペクトルから求めることができるファクターである。よって、繰り返し単位(B)の紫外可視スペクトルを算出し、モル吸光係数および振動子強度の変化を確認することにより、繰り返し単位(B)に由来する位相差の波長依存性を確認することができる。その結果、正の固有複屈折を与える脂肪族環構造を含む繰り返し単位(A)との組み合わせを考慮して、繰り返し単位(A)および(B)を組み合わせた光学フィルムにおいて、逆波長分散性を有するかどうかを判断することができる。
その結果、本発明者らは、正の固有複屈折を与え、主鎖に脂肪族環構造を含む繰り返し単位(A)と、負の固有複屈折を与え、芳香環および/または複素環を含み、分子軌道計算により求まる紫外可視スペクトルの300nm〜450nmの波長範囲において、振動子強度の最大値が0.01以上かつモル吸光係数の最大値が2000L/mol・cm以上である繰り返し単位(B)とを組み合わせた光学フィルムが、逆波長分散性を示すことを見出した。
〔繰り返し単位(A)〕
繰り返し単位(A)は、正の固有複屈折を与え、主鎖に脂肪族環構造を含む。繰り返し単位が正の固有複屈折を与えるとは、繰り返し単位が重合体中で適切に配向した場合に、重合体が正の固有複屈折を示すことをいう。
繰り返し単位(A)がその主鎖に含む脂肪族環構造の例としては、シクロアルカン構造、環状エーテル構造、ラクトン環構造、ラクタム環構造、環状イミド構造、環状無水酸構造などが挙げられる。これらの環構造を含む繰り返し単位(A)は、配向によって大きな正の固有複屈折を示すため、繰り返し単位(B)と組み合わせることによって、逆波長分散性の制御の自由度がより向上し、例えば、用途に応じた良好な逆波長分散性の実現が可能となる。脂肪族環構造は、ラクトン環構造、グルタルイミド構造、無水グルタル酸構造、N−置換マレイミド構造および無水マレイン酸構造が好ましく、ラクトン環構造およびグルタルイミド構造がより好ましく、ラクトン環構造が最も好ましい。
ラクトン環構造の好適な例としては、下記式(1)で表される構造が挙げられる。
Figure 2010224500
上記式において、R1、R2およびR3は、互いに独立して、水素原子または炭素数1〜20の有機残基である。当該有機残基は酸素原子を含んでもよい。
有機残基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などの炭素数が1〜20のアルキル基;エテニル基、プロペニル基などの炭素数が1〜20の不飽和脂肪族炭化水素基;フェニル基、ナフチル基などの炭素数が1〜20の芳香族炭化水素基;上記アルキル基、上記不飽和脂肪族炭化水素基および上記芳香族炭化水素基において、水素原子の一つ以上が水酸基、カルボキシル基、エーテル基およびエステル基から選ばれる少なくとも1種の基により置換された基;である。
式(1)で表されるラクトン環構造は、例えば(メタ)アクリル酸エステルと、下記式(2)で表される水酸基を含む単量体とを含む単量体群を共重合した後、得られた共重合体における隣り合うこれらの単量体単位間で、脱アルコール環化縮合させることにより形成できる。
Figure 2010224500
(メタ)アクリル酸エステルの具体的な例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジルなどのアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジルなどのメタクリル酸エステル;が挙げられる。なかでも、高い透明性および耐熱性を有する光学フィルムが得られることから、メタクリル酸メチル(MMA)が好ましい。
式(2)で表される水酸基を含む単量体の具体的な例は、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸イソプロピル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸ノルマルブチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸t−ブチルである。なかでも、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチルが好ましく、高い透明性および耐熱性を有する光学フィルムが得られることから、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)が特に好ましい。
一例として、メタクリル酸メチル(MMA)と2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)とを用いた場合には、R1がH、R2がCH3、R3がCH3であるラクトン環構造が得られる。
ラクトン環構造は、R1がH、R2がCH3またはCH2CH3、R3がCH3であることが好ましく、R1がH、R2がCH3、R3がCH3であることがより好ましい。
グルタルイミド構造および無水グルタル酸構造の好適な例としては、下記式(3)で表される構造が挙げられる。
Figure 2010224500
上記式(3)におけるR4およびR5は、互いに独立して、水素原子またはメチル基であり、X1は、酸素原子または窒素原子である。X1が酸素原子のときR6は存在せず、X1が窒素原子のとき、R6は、水素原子、炭素数1〜6の直鎖アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基またはフェニル基である。
1が窒素原子のとき、式(3)で表される環構造はグルタルイミド構造となる。グルタルイミド構造は、例えば、(メタ)アクリル酸エステルの重合体をメチルアミンなどのイミド化剤によりイミド化することにより形成できる。
1が酸素原子のとき、式(3)で表される環構造は無水グルタル酸構造となる。無水グルタル酸構造は、例えば、(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸との共重合体を、分子内で脱アルコール環化縮合させることにより形成できる。
N−置換マレイミド構造および無水マレイン酸構造の好適な例としては、下記式(4)で表される構造が挙げられる。
Figure 2010224500
上記式(4)におけるR7およびR8は、互いに独立して、水素原子またはメチル基であり、X2は、酸素原子または窒素原子である。X2が酸素原子のときR9は存在せず、X2が窒素原子のとき、R9は、水素原子、炭素数1〜6の直鎖アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基またはフェニル基である。
2が窒素原子のとき、式(4)で表される環構造はN−置換マレイミド構造となる。N−置換マレイミド構造は、例えば、N−置換マレイミドを単量体に用いて重合を行うことにより形成できる。
2が酸素原子のとき、式(4)で表される環構造は無水マレイン酸構造となる。無水マレイン酸構造は、例えば、無水マレイン酸を単量体に用いて重合を行うことにより形成できる。
〔繰り返し単位(B)〕
繰り返し単位(B)は、負の固有複屈折を与え、芳香環および/または複素環を含み、分子軌道計算により求まる紫外可視スペクトルの300nm〜450nmの波長範囲において、振動子強度の最大値が0.01以上かつモル吸光係数の最大値が2000L/mol・cm以上である。繰り返し単位が負の固有複屈折を与えるとは、繰り返し単位が重合体中で適切に配向した場合に、重合体が負の固有複屈折を示すことをいう。
上述のように、位相差は、振動子強度およびモル吸光係数と相関があり、これらは、波長に対して値を求めることができるファクターである。分子軌道計算により求まる紫外可視スペクトルにおいて、繰り返し単位(B)が芳香環および/または複素環を含むことにより、まず波長200nm前後に、極大(通常最大)の吸収ピークを有するが、300nm〜450nmの波長範囲において、計算上、振動子強度が0.01以上となる変化と、モル吸光係数が2000L/mol・cm以上となる変化があれば、実際は、これらの変化が極大ピークにより現される芳香環および/または複素環の大きな吸収と重なり、300nm〜450nmの波長範囲において、振動子強度およびモル吸光係数の値が、波長が大きくなるにつれ減少していく波長依存性が見られる(これは実際に繰り返し単位(B)を含む重合体の紫外可視スペクトル測定によって確認できる)。従って、計算上、上記のような振動子強度およびモル吸光係数の変化があることによって、実際には、正の固有複屈折を与える脂肪族環構造を含む繰り返し単位(A)との組み合わせにより、少なくとも可視光領域において、逆波長分散性が得られる。なお、分子軌道計算により求まる紫外可視スペクトルにおいて、光学フィルムとしての特性を考慮すれば、450nmより大きい波長範囲に、大きな吸収ピークが存在しない必要があり、450nmより大きい波長範囲に吸収ピーク自体が存在しないことが好ましいが、通常は450nmより大きい波長範囲に、吸収ピークが現れることはない。
芳香環は、ベンゼン環であってよく、アントラセン環のような縮合環であってもよい。複素環としては、芳香族複素環が好ましい。
上記振動子強度の最大値としては、0.03以上が好ましく、0.04〜1.50がより好ましい。上記モル吸光係数の最大値としては、2000L/mol・cm以上であり、2000〜20000L/mol・cmが好ましい。
振動子強度およびモル吸光係数は、例えば、半経験分子軌道計算により以下の手順で求めることができる。
まず、繰り返し単位(B)のモデルとして、モノマーの二重結合を一重結合に変更したモデル化合物の最安定構造を探索する。具体的には、Accelrys Software Inc.製のMaterials studioのビルダーを用いてモデル化合物を作成し、密度汎関数分子軌道計算ソフトDMol3を用いて最安定構造を探索する。分子軌道計算に当たっては、計算条件として、GGA/BLPYをファンクショナルに指定した上で最安定構造を探索する。次に、得られた最安定構造を用いて、紫外可視スペクトルの計算を半経験分子軌道計算ソフトで行う。半経験分子軌道計算には、ソフトウェアにVAMPを用い、ハミルトニアンにZINDO/INDO/1を指定して、エネルギー計算を行う。計算スペクトルの横軸を波長、縦軸を振動子強度またはモル吸光係数とすることにより、振動子強度またはモル吸光係数を求めることができる。
繰り返し単位(B)の具体的な構造の例を、以下に示す。
Figure 2010224500
上記のうち、ビニルカルバゾールに由来する繰り返し単位、およびビニルアントラセンに由来する繰り返し単位が、入手の容易さの観点から好適であり、ビニルカルバゾールに由来する繰り返し単位が最適である。
〔光学フィルムの形態〕
本発明のフィルムの形態としては、光学フィルムが、繰り返し単位(A)および繰り返し単位(B)の両方を含む樹脂層を有する、樹脂層が単層タイプの形態と、光学フィルムが、繰り返し単位(A)を含む樹脂層と繰り返し単位(B)を含む樹脂層とを有する、樹脂層が複層タイプの形態とが可能である。
樹脂層が単層タイプの形態は、樹脂層の樹脂が、繰り返し単位(A)を含む重合体(以下、重合体(A)ともいう)と、繰り返し単位(B)を含む重合体(以下、重合体(B)ともいう)とを含む形態と、樹脂層の樹脂が、繰り返し単位(A)と繰り返し単位(B)とを含む共重合体を含む形態とに分かれる。
以下、樹脂層が単層タイプであり、樹脂層の樹脂が、重合体(A)と、重合体(B)とを含む形態の光学フィルムを光学フィルム1とし、樹脂層が単層タイプであり、樹脂層の樹脂が繰り返し単位(A)と繰り返し単位(B)とを含む共重合体を含む形態の光学フィルムを光学フィルム2とし、樹脂層が複層タイプである光学フィルムを光学フィルム3として、具体的に説明する。
〔光学フィルム1〕
光学フィルム1の樹脂層を構成する樹脂は、固有複屈折が正の重合体(A)と固有複屈折が負の重合体(B)とを含むが、双方の重合体に対して同一方向に配向が加えられている場合、各々の重合体の遅相軸(あるいは進相軸)が直交するために、互いの複屈折が打ち消しあう。ここで、複屈折が打ち消し合う程度が波長によって異なるために、複屈折、例えば位相差、の逆波長分散性が生じる。
光学フィルム1は、単層でありながら逆波長分散性を示す。このため、薄膜化しながら望む光学特性を得ることができ、光学フィルムを備える画像表示装置のさらなる小型化、軽量化などの実現が可能となる。また、光学フィルム1は、複数の層の積層により逆波長分散性を実現した光学フィルムに比べて、各層の接合角度の調整が不要であるため生産性が高い。
重合体(A)および重合体(B)の配向に着目すると、光学フィルム1は、重合体(A)および重合体(B)を含む樹脂に配向を与えて形成した部材であるともいえる。樹脂に配向を与えるには、フィルム状に成形した樹脂を延伸すればよい。
重合体(A)は、繰り返し単位(A)を含み、かつ正の固有複屈折を有する限り特に限定されず、好適には、(メタ)アクリル重合体、ポリシクロオレフィンおよびセルロース誘導体から選ばれる少なくとも1種である。なかでも、光学フィルム1としての光学特性ならびに機械的強度、成形加工性および表面硬度などの諸特性を向上できることから、重合体(A)は(メタ)アクリル重合体であることが好ましい。
本明細書において(メタ)アクリル重合体とは、(メタ)アクリル酸エステル単位を、全構成単位の50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、有する重合体をいう。ここで、(メタ)アクリル酸エステル単位の誘導体である環構造も、(メタ)アクリル酸エステル単位として考える。例えば、式(1)および(3)で表される環構造は、(メタ)アクリル酸エステル単位が2つと考える。
重合体(A)が(メタ)アクリル重合体である場合、光学フィルム1における逆波長分散性の制御の自由度が向上する。繰り返し単位(B)を含む重合体(B)が示す複屈折の波長分散性は、(メタ)アクリル重合体である重合体(A)が示す複屈折の波長分散性に比べて、かなり大きい。このように、複屈折の波長分散性が大きく異なる重合体(A)および重合体(B)を組み合わせることで、逆波長分散性の制御の自由度が向上する。
また、重合体(A)が、主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル重合体であることにより、重合体(A)および当該重合体を含む樹脂のガラス転移温度(Tg)が高くなり、高い耐熱性を有する光学フィルム1が得られる。このような光学フィルム1は、例えば画像表示装置において、光源などの発熱部に近接した配置が可能となる。また、耐熱性の向上により、後加工(例えばコーティングなどの表面処理)時の加工温度を上げられるため、光学フィルム1の生産性が高くなる。
主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル重合体である重合体(A)、および当該重合体を含む樹脂のTgは、例えば110℃以上である。環構造の種類、重合体(A)における環構造の含有率および樹脂における重合体(A)の含有率によっては、当該Tgは、115℃以上、120℃以上、さらには130℃以上となる。なお、Tgは、JIS K7121に準拠して求めることができる。
重合体(A)における繰り返し単位(A)の含有率は、通常5〜90重量%であり、20〜90重量%が好ましい。当該含有率は、30〜90重量%、35〜90重量%、40〜80重量%および45〜75重量%になるほど、さらに好ましい。繰り返し単位(A)の含有率は、公知の手法、例えば1H核磁気共鳴(1H−NMR)、赤外線分光分析(IR)等により求めることができる。また、繰り返し単位(A)が、式(1)で表されるラクトン環構造を有する場合には、環化反応前後の重量を測定することにより、ラクトン環構造の生成量を計算することができる(特開2001−151814号公報参照)。
重合体(A)は、固有複屈折が正である限り、任意の構成単位を含むことができる。例えば重合体(A)は、繰り返し単位(B)を含んでもよく、この場合、重合体(A)と重合体(B)との相溶性が向上し、透明性に優れる光学フィルム1となる。
重合体(A)は、2種以上の繰り返し単位(A)を含んでいてもよい。
重合体(A)は公知の方法により製造できる。例えば、繰り返し単位(A)がラクトン環構造であった場合には、重合体(A)は、(メタ)アクリル酸エステルと、上記の式(2)で表される水酸基を含む単量体と共重合した後、得られた共重合体を、任意の触媒存在下で加熱し、脱アルコールを伴うラクトン環化縮合反応を進行させて、得ることができる。
例えば、繰り返し単位(A)がグルタルイミド構造であった場合には、重合体(A)は、(メタ)アクリル酸エステルの重合体を、メチルアミンなどのイミド化剤によりイミド化することにより得ることができる。例えば、繰り返し単位(A)が無水グルタル酸構造であった場合には、重合体(A)は、(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸との共重合体を、分子内で脱アルコール環化縮合させることにより得ることができる。
例えば、繰り返し単位(A)がN−置換マレイミド構造または無水マレイン酸構造であった場合には、重合体(A)は、N−置換マレイミドまたは無水マレイン酸と(メタ)アクリル酸エステルとを共重合させることにより得ることができる。
重合体(B)は、繰り返し単位(B)を含み、かつ負の固有複屈折を有する限り特に限定されない。繰り返し単位(B)は、当該単位を主鎖に含む重合体(B)の波長分散性を大きく増加させる作用を有する。このため、重合体(A)との組み合わせによって、逆波長分散性の制御の自由度が向上する。重合体(A)が(メタ)アクリル重合体、特にラクトン環構造またはグルタルイミド構造を主鎖に有する(メタ)アクリル重合体(上述したように、これらの重合体は波長分散性が非常に小さい)である場合、光学フィルム1の逆波長分散性の制御の自由度がさらに高くなる。
なお、特許文献2(特開2001−337222号公報)に例示されている重合体の組み合わせでは、両者の波長分散性の差はそれほど大きくないため、本発明の光学フィルムのような効果を得ることができない。
また、繰り返し単位(B)が重合体(B)の波長分散性を大きく増加させる作用を有することから、重合体(B)の全構成単位に占める繰り返し単位(B)の割合が低い場合でも、重合体(B)は大きな波長分散性を示す。なお、ポリカーボネート、ポリスチレンなど、従来の光学部材に用いられている重合体は、ホモポリマーの場合においても、本願実施例に示す可視光領域内のR/R0値にして、およそ0.95〜1.15程度の範囲に入る波長分散性しか示さない。
重合体(B)は、固有複屈折が負である限り、繰り返し単位(B)以外の構成単位を含んでもよい。即ち、重合体(B)は、重合により繰り返し単位(B)となる単量体と、その他の単量体との共重合体であってもよい。このとき、重合体(B)における繰り返し単位(B)の含有率は、20重量%以上が好ましく、30重量%以上がより好ましい。
例えば重合体(B)は、繰り返し単位(B)と(メタ)アクリル酸エステル単位とを構成単位として有してもよい。この場合、(メタ)アクリル重合体である重合体(A)との相溶性が向上し、透明性に優れる光学フィルム1となる。このような重合体(B)は、例えば、ビニルカルバゾールと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体である。
また、重合体(B)は、繰り返し単位(A)を有してもよい。この場合、主鎖に環構造が導入されるため、より耐熱性に優れる光学フィルム1となる。
具体的な例として、重合体(B)は以下の単量体に由来する構成単位を有してもよい:アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸アルキルエステル(例えばメチルアクリルレート、エチルアクリレート、カルバゾイルエチルアクリレート)、メタクリル酸アルキルエステル(例えばメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、カルバゾイルエチルメタクリレート)、アクリル酸アミノアルキルエステル(例えばジエチルアミノエチルアクリレート)、メタクリル酸アミノアルキルエステル、アクリル酸とグリコールとのモノエステル、メタクリル酸とグリコールとのモノエステル(例えばヒドロキシエチルメタクリレート)、アクリル酸のアルカリ金属塩、メタクリル酸のアルカリ金属塩、アクリル酸のアンモニウム塩、メタクリル酸のアンモニウム塩、アクリル酸アミノアルキルエステルの第4級アンモニウム誘導体、メタクリル酸アミノアルキルエステルの第4級アンモニウム誘導体、ジエチルアミノエチルアクリレートとメチルサルフェートとの第4級アンモニウム化合物、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルスルホン酸のアルカリ金属塩、ビニルスルホン酸のアンモニウム塩、スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸塩、アリルスルホン酸、アリルスルホン酸塩、メタリルスルホン酸、メタリルスルホン酸塩、酢酸ビニル、ビニルステアレート、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルカルバゾール、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−アルキルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N,N−メチレンビスアクリルアミド、グリコールジアクリレート、グリコールジメタクリレート、ジビニルベンゼン、グリコールジアリルエーテル。
重合体(B)の重量平均分子量は、例えば5万〜150万であり、8万〜120万が好ましく、10万〜90万がより好ましい。
重合体(B)は、2種以上の繰り返し単位(B)を含んでいてもよい。
重合体(B)の製造方法は特に限定されず、公知の方法により製造できる。その際、重合開始剤として、過酸化水素と金属塩との混合物、アゾ化合物および有機過酸化物から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
アゾ化合物は、例えば、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]水和物、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二硫酸塩二水和物、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)である。重合開始剤として、2種以上のアゾ化合物を用いてもよい。
これらのアゾ化合物のうち、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩が好ましい。
有機過酸化物は、例えば、ベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,1’−ジ−t−ブチルペルオキシ−3,3,5−トリメチレンシクロヘキサン、1,3−ジ−(t−ブチルペルオキシ)−ジイソプロピルベンゼン、ジ−t−ブチルペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシピバレート、t−アミルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルヒドロペルオキシドである。重合開始剤として、2種以上の有機過酸化物を用いてもよい。
これらの有機過酸化物のうち、t−ブチルヒドロペルオキシド、t−アミルペルオキシ−2−エチルヘキサノエートが好ましく、t−アミルペルオキシ−2−エチルヘキサノエートが特に好ましい。
重合体(B)の重合系における重合開始剤の濃度は、重合する単量体の種類、濃度に応じて調整すればよく特に限定されないが、例えば、単量体100重量部に対して0.001重量部〜3重量部であり、0.005重量部〜2重量部が好ましい。
重合系には、必要に応じ、連鎖移動剤、pH調整剤、緩衝材などを添加できる。
重合溶媒は特に限定されず、例えば、水、低級アルコール(メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ジエチレングリコールなど)、ケトン含有溶媒(アセトンとトルエンとの混合溶媒など)、エステル系溶媒(酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、およびこれらの混合溶媒である。
重合温度は、重合する単量体の種類に応じて調整すればよく特に限定されないが、例えば40℃〜100℃であり、50℃〜95℃が好ましく、60℃〜90℃がより好ましい。
樹脂における重合体(A)と重合体(B)との混合比は、各重合体の固有複屈折の絶対値、あるいは光学フィルム1として望まれる逆波長分散性の程度などに応じて異なるために一概に述べることができないが、例えば重量比にして、(A):(B)=1:99〜99:1の範囲であり、(A):(B)=10:90〜90:10の範囲が好ましく、(A):(B)=20:80〜80:20の範囲がより好ましい。この範囲において逆波長分散性の制御の自由度を向上でき、用途に応じた良好な逆波長分散性を有する光学フィルム1とすることができる。
本実施形態における樹脂は、2以上の異なる重合体(A)あるいは2以上の異なる重合体(B)を含んでもよい。また、本実施形態における樹脂は、本発明の効果が得られる限り、重合体(A)、および重合体(B)以外の任意の重合体を含んでもよい。さらに樹脂は、任意の添加剤を含んでいてもよい。
重合体(A)が(メタ)アクリル重合体である場合、樹脂における(メタ)アクリル重合体の含有率の合計は、50重量%以上であることが好ましい。
繰り返し単位(B)は、その種類によっては非常に強い吸湿性を示す。このため樹脂は、重合体(B)が有する繰り返し単位(B)の種類、重合体(B)における繰り返し単位(B)の含有率、および樹脂における重合体(B)の含有率によっては、単独で層を形成しづらいことがある。この場合、樹脂は、繰り返し単位(B)を有する重合体(B)のバインダーとなる重合体(バインダー重合体)を含んでもよい。なお、バインダー重合体は、固有複屈折が0に近い、即ち、延伸によってほとんど複屈折を示さない重合体が好ましく、この場合、光学フィルム1の光学特性の制御が容易となる。
樹脂がバインダー重合体を含む場合、樹脂における重合体(B)とバインダー重合体との混合比は、例えば重量比にして、(B):バインダー重合体=10:90〜70:30の範囲であり、(B):バインダー重合体=20:80〜60:40の範囲が好ましい。
樹脂に含まれる重合体の含有率は、公知の手法、例えば1H核磁気共鳴(1H−NMR)または赤外線分光分析(IR)により求めることができる。
光学フィルム1は、必要に応じ、上記の樹脂層以外の任意の層を有してもよい。
光学フィルム1の製造方法は特に限定されず、公知の手法に従えばよい。例えば、重合体(A)および重合体(B)を含む樹脂をフィルムとし、得られたフィルムを所定の方向に延伸(典型的には一軸延伸または逐次二軸延伸)することで、樹脂が含む重合体の分子鎖を配向させて樹脂層を形成し、光学フィルム1とすればよい。
樹脂は、キャスト法、溶融成形法(例えば溶融押出成形、プレス成形)などの公知の手法により、フィルム状に成形できる。
〔光学フィルム2〕
光学フィルム2の樹脂層を構成する樹脂は、正の固有複屈折を与える繰り返し単位(A)と、負の固有複屈折を与える繰り返し単位(B)を含む共重合体を含む。このような共重合体に配向が加えられると、繰り返し単位(A)および繰り返し単位(B)の各々に由来して生じた複屈折が互いに打ち消しあう。ここで、複屈折が打ち消しあう程度が波長によって異なるために、複屈折、例えば位相差、の逆波長分散性が生じる。
光学フィルム2は、単層でありながら逆波長分散性を示す。このため、薄膜化しながら望む光学特性を得ることができ、光学フィルムを備える画像表示装置のさらなる小型化、軽量化などの実現が可能となる。また、光学フィルム2は、複数の層の積層により逆波長分散性を実現した光学フィルムに比べて、各層の接合角度の調整が不要であるため生産性が高い。
共重合体の配向に着目すると、光学フィルム2は、共重合体を含む樹脂に配向を与えて形成した部材であるともいえる。樹脂に配向を与えるにはフィルム状に成形した樹脂を延伸すればよい。
共重合体は、繰り返し単位(A)と繰り返し単位(B)とを含む限り特に限定されない。よって、本発明の効果が得られる限り、繰り返し単位(A)および繰り返し単位(B)以外の任意の構成単位を有してもよい。好適には、共重合体は、繰り返し単位(A)として(メタ)アクリル酸エステル単位の誘導体である環構造を含む単位、および/または(メタ)アクリル酸エステル単位を含み、この場合、光学フィルム2における逆波長分散性の制御の自由度が向上する。繰り返し単位(B)は、共重合体における複屈折の波長分散性を増大させる強い作用を有する。これに対して、(メタ)アクリル酸エステル単位および当該単位の誘導体である環構造は、共重合体における複屈折の波長分散性を増大させる作用はそれほど強くない。このように、共重合体の波長分散性を増大させる程度が異なる構成単位を組み合わせることにより、逆波長分散性の制御の自由度が向上する。
なお、特許文献3(特開2001−235622号公報)に開示されている構成単位の組み合わせでは、両者の波長分散性の差はそれほど大きくない。このため、繰り返し単位(B)と、(メタ)アクリル酸エステル単位および/または当該単位の誘導体である環構造を含む繰り返し単位(A)とを組み合わせたときのような効果を得ることができない。
共重合体は、繰り返し単位(A)として(メタ)アクリル酸エステル単位の誘導体である環構造を含む単位と、任意の単位として(メタ)アクリル酸エステル単位を含むことが好ましい。そして、共重合体における(メタ)アクリル酸エステル単位の誘導体である環構造を含む単位と(メタ)アクリル酸エステル単位の合計の含有率が50重量%以上である場合には、共重合体は(メタ)アクリル重合体となる。このとき、光学特性ならびに機械的強度、成形加工性および表面硬度などの諸特性に優れる光学フィルム2が得られ、また、繰り返し単位(B)との組み合わせによって、光学フィルム2における逆波長分散性の制御の自由度が向上する。よって、共重合体は、(メタ)アクリル酸エステル単位の誘導体である環構造を含む単位と(メタ)アクリル酸エステル単位の合計の含有率が50重量%以上であることが好ましい。
また、共重合体は、繰り返し単位(A)によって主鎖に環構造を有するため、共重合体および当該共重合体を含む樹脂のガラス転移温度(Tg)が高く、高い耐熱性を有する光学フィルム2が得られる。
共重合体および当該共重合体を含む樹脂のTgは、例えば110℃以上である。繰り返し単位(A)の種類、共重合体における繰り返し単位(A)の含有率ならびに樹脂における共重合体の含有率によっては、当該Tgは、115℃以上、120℃以上、さらには130℃以上となる。
共重合体は、繰り返し単位(A)および繰り返し単位(B)が主鎖にランダムに配置されたランダム共重合体であってもよいし、繰り返し単位(A)からなるブロックと繰り返し単位(B)からなるブロックとが存在するブロック共重合体であってもよい。また、繰り返し単位(A)および繰り返し単位(B)から選ばれる一方の構成単位(例えば繰り返し単位(A))を有する主鎖に、他方の構成単位(例えば繰り返し単位(B))を有する側鎖が結合したグラフト共重合体であってもよい。
共重合体は、2種以上の繰り返し単位(A)を含んでいてもよい。同様に、共重合体は、2種以上の繰り返し単位(B)を含んでいてもよい。
共重合体における繰り返し単位(A)および繰り返し単位(B)の含有率の比は、共重合体の固有複屈折に対して各構成単位が作用する程度、あるいは光学フィルム2として望まれる逆波長分散性の程度などに応じて異なるために一概に述べることができないが、例えば重量比にして、繰り返し単位(A):繰り返し単位(B)=62:38〜92:8の範囲である。この範囲において、逆波長分散性の制御の自由度を向上でき、用途に応じた良好な波長分散性を有する光学フィルム2が得られる。
重合体を構成する各繰り返し単位の含有率は、公知の手法、例えば1H核磁気共鳴(1H−NMR)あるいは赤外線分光分析(IR)により求めることができる。
共重合体は、公知の方法により製造できる。例えば、所定の(メタ)アクリル酸エステル類と繰り返し単位(B)のもととなる単量体(例、ビニルカルバゾール等)を共重合し、上述のようにして(メタ)アクリル酸エステル単位を環化させることにより製造できる。また、繰り返し単位(A)のもととなる単量体(例、無水マレイン酸等)と繰り返し単位(B)のもととなる単量体を共重合させることによっても製造できる。
本実施形態における樹脂は2種以上の異なる共重合体を含んでもよい。また、樹脂は、繰り返し単位(A)および繰り返し単位(B)を含む共重合体以外の重合体を含んでいてもよく、樹脂における共重合体の含有率は特に限定されないが、本発明の効果が確実に得られることから、通常50重量%以上であり、60重量%以上が好ましく、70重量%以上がより好ましい。さらに樹脂は、任意の添加剤を含んでいてもよい。
光学フィルム2は、必要に応じ、上記樹脂層以外の任意の層を有してもよい。
光学フィルム2の製造方法は特に限定されず、公知の手法に従えばよい。例えば、共重合体を含む樹脂をフィルムとし、得られたフィルムを所定の方向に延伸(典型的には一軸延伸または逐次二軸延伸)することで、樹脂が含む共重合体の分子鎖を配向させて樹脂層を形成し、光学フィルム2とすればよい。
樹脂は、キャスト法、溶融成形法(例えば溶融押出成形、プレス成形)などの公知の手法により、フィルム状に成形できる。
〔光学フィルム3〕
光学フィルム3は、2つの樹脂層からなり、一方が正の固有複屈折を与える繰り返し単位(A)を含み、他方が負の固有複屈折を与える繰り返し単位(B)を含む。従って、光学フィルム3は、固有複屈折の符号が互いに異なる2種類の樹脂層が積層された構造を有するが、このような積層構造では、入射した光に対する両層の複屈折が互いに打ち消しあう現象が生じる。ここで、複屈折が打ち消しあう程度が波長によって異なるために、光学フィルム3は逆波長分散性を示す。
また、光学フィルム3では、2つの樹脂層が各々独立して配置されており、固有複屈折の符号が互いに異なる重合体間の相容性、あるいは重合体に与える固有複屈折の符号が互いに異なる構成単位間の相溶性を考慮する必要がないため、それぞれの樹脂層がとりうる組成範囲が広い。これにより、逆波長分散性の制御の自由度をはじめとする光学的な設計の自由度が高い光学部材となる。
光学フィルム3では、2つの樹脂層に含まれる重合体の配向により複屈折が生じる。この観点からは、繰り返し単位(A)を含む樹脂層(以下、樹脂層(A)ともいう)は、繰り返し単位(A)を含む樹脂(以下、樹脂(A)ともいう)に配向を与えて形成した層であるともいえる。また、繰り返し単位(B)を含む樹脂層(以下、樹脂層(B)ともいう)は、繰り返し単位(B)を含む樹脂(以下、樹脂(B)ともいう)に配向を与えて形成した層であるともいえる。樹脂(A)および(B)に配向を与えるには、フィルム状に成形した樹脂(A)および(B)を延伸すればよい。
樹脂(A)が繰り返し単位(A)を含むためには、樹脂(A)が繰り返し単位(A)を含む重合体(重合体(A))を含めばよい。同様に、樹脂(B)が繰り返し単位(B)を含むためには、樹脂(B)が繰り返し単位(B)を含む重合体(重合体(B))を含めばよい。重合体(A)は(メタ)アクリル重合体であることが好ましく、この場合、光学フィルム3における逆波長分散性の制御の自由度が向上する。樹脂層(B)は、繰り返し単位(B)を有する重合体(B)を含む樹脂(B)からなるが、このような層が示す複屈折の波長分散性は、(メタ)アクリル重合体である重合体(A)を含む樹脂(A)からなる層が示す複屈折の波長分散性に比べてかなり大きい。このように、複屈折の波長分散性が大きく異なる2種類の独立した層を組み合わせることで、光学フィルム3における逆波長分散性の制御の自由度が向上する。
なお、特許文献2(特開2001−337222号公報)に例示されている樹脂の組み合わせに基づいて2つの樹脂層を形成したとしても(例えば、一方の層をポリノルボルネンにより形成し、他方の層をスチレン系重合体により形成する)、それぞれの層が示す複屈折の波長分散性の差がそれほど大きくないために、(メタ)アクリル重合体である重合体(A)を含む樹脂(A)からなる樹脂層(A)と、重合体(B)を含む樹脂(B)からなる樹脂層(B)とを組み合わせたときのような効果を得ることができない。
また、上述したように、重合体(A)が、繰り返し単位(A)により、主鎖に環構造を有することによって、重合体(A)および当該重合体を含む樹脂(A)のTgが高くなり、樹脂層(A)および光学フィルム3の耐熱性が向上する。Tgが高くなる程度は、上述したとおりである。
重合体(A)については、光学フィルム1において説明した重合体(A)と同様である。重合体(B)についても、光学フィルム1において説明した重合体(B)と同様である。
樹脂(A)は、正の固有複屈折を有する限り、重合体(A)以外の任意の重合体を含んでもよい。樹脂(B)も、負の固有複屈折を有する限り、重合体(B)以外の任意の重合体を含んでもよい。また、これらの樹脂は、任意の添加剤を含んでいてもよい。
なお、繰り返し単位(B)は、その種類によっては非常に強い吸湿性を示す。このため重合体(B)は、当該重合体が有する繰り返し単位(B)の種類、および当該重合体における繰り返し単位(B)の含有率によっては、単独で層を形成しづらいことがある。この場合、樹脂(B)は、重合体(B)のバインダ−となる重合体(バインダー重合体)を含んでもよい。バインダー重合体は、固有複屈折が0に近い、即ち、延伸によって複屈折を示さない重合体が好ましく、この場合、樹脂層(B)の光学特性の制御が容易となる。
光学フィルム3の形成方法は特に限定されず、例えば、予め個別に作製した樹脂層(A)および(B)を互いに接合すればよい。樹脂層(A)、(B)の作製方法ならびに樹脂層(A)と樹脂層(B)との接合方法は、公知の手法に従えばよい。
また、樹脂層(A)および樹脂層(B)から選ばれる一方の層を予め作製した後に、他方の層を構成する樹脂が溶解した溶液を上記作製した層に塗布、乾燥させて、光学フィルム3を形成してもよい。例えば、(メタ)アクリル重合体、ポリシクロオレフィンまたはセルロース誘導体からなるベースフィルム(当該ベースフィルムは樹脂層(A)に対応する)上に、繰り返し単位(B)を有する重合体(B)を含む溶液を塗布した後に全体を乾燥させることで、ベースフィルム上に重合体(B)を含む樹脂層(B)を形成し、光学フィルム3としてもよい。
光学フィルム3は、必要に応じ、樹脂層(A)および(B)以外の任意の層を有してもよい。
光学フィルム3が有する樹脂層(A)、(B)の数は特に限定されない。また、樹脂層(A)と樹脂層(B)とは必ずしも接していなくてもよく、それぞれの層の間に任意の層が配置されていてもよい。
樹脂層(A)および(B)の積層状態(例えば、樹脂層(A)および(B)の積層パターン、あるいは光学フィルム3の表面に垂直な方向から見た、樹脂層(A)の配向軸と樹脂層(B)の配向軸とがなす角度など)は特に限定されず、光学的な設計事項に合わせて適宜選択、調整できる。なお、樹脂層(A)および(B)を、それぞれの延伸方向がほぼ一致するように積層した場合に、光学フィルム3が示す逆波長分散性が最も強くなる。
光学フィルム3の製造方法は特に限定されず、公知の手法に従えばよい。例えば、重合体(B)を含む樹脂(B)をフィルムとし、得られたフィルムを所定の方向に延伸(典型的には一軸延伸または逐次二軸延伸)することで、樹脂(B)が含む重合体の分子鎖を配向させて樹脂層(B)を形成する。これとは別に、重合体(A)を含む樹脂(A)をフィルムとし、得られたフィルムを所定の方向に延伸することで、樹脂(A)が含む重合体の分子鎖を配向させて樹脂層(A)を形成する。次に、形成した双方の層を積層して、光学フィルム3を形成できる。あるいは、重合体(A)を含む樹脂(A)または重合体(B)を含む樹脂(B)の一方をフィルムとし、これを一軸延伸して重合体の分子鎖が配向した樹脂層を作製する。これとは別に、フィルム化に用いなかった他方の樹脂の溶液を調製し、当該溶液を前記の作製した樹脂層に塗布し、乾燥後、先に形成していた樹脂層の延伸方向とは垂直な方向に一軸延伸することによって光学フィルム3を形成できる。この光学フィルム3では、一方の樹脂層が二軸延伸されており、他方の樹脂層が一軸延伸されていることになる。
樹脂(A)、(B)は、キャスト法、溶融成形法(例えば溶融押出成形、プレス成形)などの公知の手法により、フィルム状に成形できる。
形成した樹脂層(A)、(B)は、公知の手法により積層すればよく、その際、アクリル系の接着剤などにより両層を接着してもよい。
〔光学フィルムの用途〕
本発明の光学フィルムは逆波長分散性を示す。即ち、本発明の光学フィルムは、少なくとも可視光領域において、波長が短くなるほど複屈折(あるいは位相差もしくはリターデーション)が小さくなる光学特性を示す。このような広帯域の光学フィルムを用いることによって、表示特性に優れる画像表示装置を構築できる。
本発明の光学フィルムは、例えば、位相差板としてもよいし、得られる位相差に基づくリターデーションを光の波長の1/4とすることで、位相差板の一種であるλ/4板としてもよい。また、本発明の光学フィルムを、偏光板などの他の光学部材と組み合わせて、反射防止板とすることもできる。
本発明の光学フィルムは、用途に応じて、他の光学部材と組み合わせて用いてもよい。
本発明の光学フィルムの用途は特に限定されず、従来の光学部材と同様の用途(例えば、LCD、OLEDなどの画像表示装置)に使用が可能である。
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例1〜7および比較例1〜7
14種のモノマー化合物について、二重結合を一重結合に変更してモデル化合物化し、上述の計算方法により、紫外可視スペクトルを算出し、振動子強度およびモル吸光係数を求めた。
Figure 2010224500
(光学フィルム1の構成例)
メタクリル酸メチルと2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルとを公知方法によりラジカル共重合させる。得られた共重合体について、公知方法により脱アルコール縮合反応を行い、減圧乾燥および脱揮して式(1)で表される環構造(ラクトン環構造)を有する繰り返し単位(A)を有する重合体(A)を作製する。一方で、上記表1の実施例1〜7のモデル化合物のもとになるモノマー化合物(例えばビニルカルバゾール)とメタクリル酸メチルとを公知方法によりラジカル共重合させ、繰り返し単位(B)を有する重合体(B)を作製する。重合体(A)および重合体(B)を、メチルエチルケトン等の溶媒中で混合した後、減圧乾燥および脱揮して得られた樹脂をプレス成形によりによりフィルム状に成形する。得られたフィルムを延伸することにより、逆波長分散性を示す光学フィルムが得られる。
(光学フィルム2の構成例)
メタクリル酸メチル、および上記表1の実施例1〜7のモデル化合物のもとになるモノマー化合物を公知方法によりラジカル共重合させる。得られた共重合体について、公知方法によりメチルアミンを用いてイミド化を行い、式(2)で表される環構造(グルタルイミド構造)を有する繰り返し単位(A)、および繰り返し単位(B)を有する共重合体を作製する。この共重合体をそのまま樹脂として用い、プレス成形によりフィルム状に成形する。得られたフィルムを延伸することにより、逆波長分散性を示す光学フィルムが得られる。
(光学フィルム3の構成例1)
光学フィルム1と同様にして重合体(A)および重合体(B)を作製する。重合体(A)をそのまま樹脂として用い、プレス成形によりフィルム状に成形し、得られたフィルムを延伸する。重合体(B)についてもそのまま樹脂として用い、プレス成形によりフィルム状に成形し、得られたフィルムを延伸する。これらのフィルムを公知方法により延伸方向が一致するようにして接合することで逆波長分散性を示す光学フィルムが得られる。
(光学フィルム3の構成例2)
光学フィルム1と同様にして重合体(A)および重合体(B)を作製する。重合体(A)をそのまま樹脂として用い、プレス成形によりフィルム状に成形し、得られたフィルムを一軸方向に延伸する。重合体(B)を溶媒に溶解させて溶液化し、当該溶液を、重合体(A)の延伸フィルムの片面上に塗布し、乾燥する。得られた積層フィルムを重合体(A)のフィルムの延伸方向と90°異なる方向に延伸することで逆波長分散性を示す光学フィルムが得られる。
これらとは逆に、上記表1の比較例1〜7のモデル化合物のもとになるモノマー化合物を用いて光学フィルムを作製した場合には、当該光学フィルムは、逆波長分散性を示さない。
以上の方法により得られる、繰り返し単位(A)および繰り返し単位(B)を含む光学フィルムが、実際に逆波長分散性を示すことを示す確認実験を、実施例1および7ならびに比較例2および4の化合物について行った。
実施例1の確認実験
攪拌装置、温度センサー、冷却管、および窒素導入管を備えた反応装置に、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)25重量部、メタクリル酸メチル(MMA)68重量部、ビニルカルバゾール7重量部、およびトルエン90重量部を仕込んだ。この反応装置に窒素ガスを導入しながら、105℃まで昇温し、還流が開始したところで重合開始剤としてt−アミルパーオキシイソノナノエート(ルペロックス570、アルケマ吉富社製)0.04重量部を添加すると同時に、トルエン10重量部にt−アミルパーオキシイソノナノエート(ルペロックス570、アルケマ吉富社製)0.08重量部を溶解した溶液を3時間かけて滴下しながら、還流下、約105〜110℃で溶液重合を行い、さらに4時間加熱し続けた。
得られた重合体溶液に、リン酸オクチル/ジオクチル混合物0.9重量部を添加し、80〜105℃の還流下で2時間環化縮合反応を行った。さらに、オートクレーブ中で240℃で90分間加熱した後、得られた重合体溶液を減圧下240℃で1時間乾燥し、主鎖にラクトン環構造を有する透明な重合体の固体(A−1)を得た。
作製した重合体(A−1)を、プレス成形機により250℃でプレス成形して厚さ約190μmのフィルムとした。次に、作製したフィルムを、延伸倍率が2倍となるように自由端一軸延伸して、厚さ130μmの延伸フィルム(FA−1)を得た。得られた延伸フィルム(FA−1)における位相差(面内位相差Re)の波長分散性を、全自動複屈折計(KOBRA−21ADH、王子計測機器社製)を用いて評価した。波長分散性の評価結果を以下の表2に示す。なお、表2以降の各表では、測定波長を590nmとしたときの位相差を基準(R0)として、その他の波長における位相差RとR0との比(R/R0)を併せて示す。各表に示す位相差は、フィルム厚100μmあたりに換算した値である。
Figure 2010224500
表2に示すように、延伸フィルム(FA−1)は、光の波長が短くなるほど位相差が小さくなる逆波長分散性を示し、その変化は大きかった。
実施例7の確認実験
攪拌装置、温度センサー、冷却管、および窒素導入管を備えた反応装置に、MHMA25重量部、MMA72重量部、ビニルアントラセン3重量部、およびトルエン90重量部を仕込んだ。この反応装置に窒素ガスを導入しながら、105℃まで昇温し、還流が開始したところで重合開始剤としてt−アミルパーオキシイソノナノエート(ルペロックス570、アルケマ吉富社製)0.04重量部を添加すると同時に、トルエン10重量部にt−アミルパーオキシイソノナノエート(ルペロックス570、アルケマ吉富社製)0.08重量部を溶解した溶液を3時間かけて滴下しながら、還流下、約105〜110℃で溶液重合を行い、さらに4時間加熱し続けた。
得られた重合体溶液に、リン酸オクチル/ジオクチル混合物0.9重量部を添加し、80〜105℃の還流下で2時間環化縮合反応を行った。さらに、オートクレーブ中で240℃で90分間加熱した後、得られた重合体溶液を減圧下240℃で1時間乾燥し、主鎖にラクトン環構造を有する透明な重合体の固体(B−1)を得た。
作製した重合体(B−1)を、プレス成形機により250℃でプレス成形して厚さ約130μmのフィルムとした。次に、作製したフィルムを、延伸倍率が2倍となるように延伸温度148℃で自由端一軸延伸して、厚さ90μmの延伸フィルム(FB−1)を得た。得られた延伸フィルム(FB−1)における位相差(面内位相差Re)の波長分散性を、全自動複屈折計(KOBRA−WR、王子計測機器社製)を用いて評価した。波長分散性の評価結果を以下の表3に示す。
Figure 2010224500
表3に示すように、延伸フィルム(FB−1)は、光の波長が短くなるほど位相差が小さくなる逆波長分散性を示し、その変化は大きかった。
比較例2の確認実験
攪拌装置、温度センサー、冷却管、および窒素導入管を備えた反応装置に、MHMA15重量部、MMA35重量部、およびトルエン50重量部を仕込んだ。この反応装置に窒素ガスを導入しながら、105℃まで昇温し、還流が開始したところで重合開始剤としてt−アミルパーオキシイソノナノエート(ルペロックス570、アルケマ吉富社製)0.03重量部を添加すると同時に、トルエン3.3重量部にt−アミルパーオキシイソノナノエート(ルペロックス570、アルケマ吉富社製)0.06重量部を溶解した溶液を2時間かけて滴下しながら、還流下、約105〜110℃で溶液重合を行い、さらに4時間加熱し続けた。
得られた重合体溶液に、リン酸オクチル/ジオクチル混合物0.1重量部を添加し、80〜105℃の還流下で2時間環化縮合反応を行った。さらに、オートクレーブ中で240℃で90分間加熱した後、得られた重合体溶液を減圧下240℃で1時間乾燥し、主鎖にラクトン環構造を有する透明な重合体の固体(C−1)を得た。
作製した重合体(C−1)を、プレス成形機により250℃でプレス成形して厚さ約90μmのフィルムとした。次に、作製したフィルムを、延伸倍率が2倍となるように自由端一軸延伸して、厚さ60μmの延伸フィルム(FC−1)を得た。得られた延伸フィルム(FC−1)における位相差(面内位相差Re)の波長分散性を、全自動複屈折計(KOBRA−21ADH、王子計測機器社製)を用いて評価した。波長分散性の評価結果を以下の表4に示す。
Figure 2010224500
表4に示すように、延伸フィルム(FC−1)は、光の波長が短くなるほど位相差が大きくなり、逆波長分散性を示さなかった。
比較例4の確認実験
攪拌装置、温度センサー、冷却管、および窒素導入管を備えた反応装置に、MHMA10重量部、MMA35重量部、スチレン5重量部、およびトルエン50重量部を仕込んだ。この反応装置に窒素ガスを導入しながら、105℃まで昇温し、還流が開始したところで重合開始剤としてt−アミルパーオキシイソノナノエート(ルペロックス570、アルケマ吉富社製)0.03重量部を添加すると同時に、トルエン3.3重量部にt−アミルパーオキシイソノナノエート(ルペロックス570、アルケマ吉富社製)0.06重量部を溶解した溶液を2時間かけて滴下しながら、還流下、約105〜110℃で溶液重合を行い、さらに4時間加熱し続けた。
得られた重合体溶液に、リン酸オクチル/ジオクチル混合物0.1重量部を添加し、80〜105℃の還流下で2時間環化縮合反応を行った。さらに、オートクレーブ中で240℃で90分間加熱した後、得られた重合体溶液を減圧下240℃で1時間乾燥し、主鎖にラクトン環構造を有する透明な重合体の固体(D−1)を得た。
作製した重合体(D−1)を、プレス成形機により250℃でプレス成形して厚さ約90μmのフィルムとした。次に、作製したフィルムを、延伸倍率が2倍となるように自由端一軸延伸して、厚さ60μmの延伸フィルム(FD−1)を得た。得られた延伸フィルム(FD−1)における位相差(面内位相差Re)の波長分散性を、全自動複屈折計(KOBRA−21ADH、王子計測機器社製)を用いて評価した。波長分散性の評価結果を以下の表5に示す。
Figure 2010224500
表5に示すように、延伸フィルム(FD−1)は、光の波長が短くなるほど位相差が大きくなり、逆波長分散性を示さなかった。
本発明の光学部材は、従来の複屈折性を有する光学部材と同様に、液晶表示装置(LCD)、有機ELディスプレイ(OLED)をはじめとする画像表示装置に広く使用でき、本発明の光学部材の使用により、画像表示装置の表示特性を向上できる。

Claims (6)

  1. 正の固有複屈折を与え、主鎖に脂肪族環構造を含む繰り返し単位(A)と、
    負の固有複屈折を与え、芳香環および/または複素環を含み、分子軌道計算により求まる紫外可視スペクトルの300nm〜450nmの波長範囲において、振動子強度の最大値が0.01以上かつモル吸光係数の最大値が2000L/mol・cm以上である繰り返し単位(B)と
    を含む樹脂層を有する光学フィルム。
  2. 前記樹脂層の樹脂が、前記繰り返し単位(A)を含む重合体と、前記繰り返し単位(B)を含む重合体とを含む請求項1に記載の光学フィルム。
  3. 前記樹脂層の樹脂が、前記繰り返し単位(A)と前記繰り返し単位(B)とを含む共重合体を含む請求項1に記載の光学フィルム。
  4. 正の固有複屈折を与え、主鎖に脂肪族環構造を含む繰り返し単位(A)を含む樹脂層と、
    負の固有複屈折を与え、芳香環および/または複素環を含み、分子軌道計算により求まる紫外可視スペクトルの300nm〜450nmの波長範囲において、振動子強度の最大値が0.01以上かつモル吸光係数の最大値が2000L/mol・cm以上である繰り返し単位(B)を含む樹脂層と
    を有する光学フィルム。
  5. 前記繰り返し単位(A)の脂肪族環構造が、シクロアルカン構造、環状エーテル構造、ラクトン環構造、ラクタム環構造、環状イミド構造、および環状無水酸構造から選ばれる環構造である請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学フィルム。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学フィルムを備える画像表示装置。
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