JP2011128397A - 液晶表示装置 - Google Patents

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Takashi Miyai
孝 宮井
Yorihiro Maeda
順啓 前田
Yoshiyuki Shioya
佳之 塩谷
Keiko Izumi
啓子 泉
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Abstract

【課題】広範囲にわたり高いコントラスト比を有し、カラーシフトが軽減された液晶表示装置を提供する。
【解決手段】少なくとも2枚の位相差フィルムを備える液晶表示装置であって、1枚の位相差フィルム(X)は、(I)面内位相差Reが100〜300nmであり、(II)少なくとも可視光領域において、波長が短くなるほど複屈折が小さくなる波長分散性を示し、且つ、(III)特定の分子構造または複素芳香族基を有する樹脂(A)を含む、光学的に一軸性を有する位相差フィルムであり、もう1枚の位相差フィルム(Y)は、面内位相差Reが10nm以下、厚み方向位相差Rthが120nm〜300nmであり、光学的に法線方向に一軸性を有する位相差フィルムである、液晶表示装置である。
【選択図】図1

Description

本発明は、位相差フィルムを備える液晶表示装置に関する。
液晶表示装置は、消費電力の小さい省スペースの画像表示装置として年々その用途が広がってきており、時計、電卓などのような小型のものからモニター、テレビといった大型のものまで用いられ、特に大型テレビ等の高品位の画像が要求される市場でも液晶表示装置の需要が急速に拡大しつつある。従来、画像の視野角依存性が大きいことが液晶表示装置の大きな欠点であったが、高視野角液晶モードの開発が進み、画質の改善が行われてきた。特に、VAモードの液晶表示装置はパネル法線方向においてはほぼ完全な黒色表示が実現でき、さらには、コントラストが高く、比較的製造の歩留まりが高いことから、TV用の液晶表示装置として量産されている。
しかしながら、高視野角液晶モードの液晶表示装置においても、色調や視野角の補償が必要となる。この問題を解決するための光学部材としては、画像表示装置に組み込まれる位相差板が知られており、例えば、反射型の液晶表示装置(LCD)では、複屈折により生じた位相差に基づく光路長差(リターデーション)が波長の1/4である位相差板(λ/4板)が使用される。また、有機ELディスプレイ(OLED)では、外光の反射防止を目的として、偏光板とλ/4板とを組み合わせた反射防止板が用いられることがある(特許文献1を参照)。これら位相差板は今後のさらなる用途拡大が期待される。
位相差板としては、高分子の配向により生じる複屈折を利用した位相差板(位相差フィルム)が知られており、従来、光学部材には、ポリカーボネート、シクロオレフィンが主に用いられてきたが、これら一般的な高分子は、光の波長が短くなるほど複屈折が大きくなる(即ち、位相差が増大する)波長分散性を示す。表示特性に優れる画像表示装置とするためには、これとは逆に、光の波長が短くなるほど複屈折が小さくなる(即ち、位相差が減少する)波長分散性を示す光学部材が望まれる。なお、本明細書では、少なくとも可視光領域において光の波長が短くなるほど複屈折が小さくなる波長分散性を、一般的な高分子ならびに当該高分子により形成された光学部材が示す波長分散性とは逆であることに基づいて、「逆波長分散性」と呼ぶ。
これまで、光の波長が短くなるほど複屈折が大きくなる波長分散性を改善するために、位相差が異なる2種の光学部材を積層したり(特許文献2)、λ/4板とλ/2板とを積層したり(特許文献3)することが試みられている。
一方、特許文献4に、正の固有複屈折を有する重合体と、負の固有複屈折を有する重合体とを含む樹脂組成物からなる位相差板が開示されている。また、特許文献5に、正の固有複屈折を有する分子鎖と、負の固有複屈折を有する分子鎖とを有する共重合体からなる位相差板が開示されており、これらの位相差板は、単層でありながら逆波長分散性を示す。しかし、特許文献4、5に開示の位相差板では、固有複屈折の符号が互いに異なる重合体(分子鎖)間の相容性、ならびに位相差板としての成形性、耐熱性などの諸特性を考慮しながら樹脂組成物(共重合体)の組成を定める必要があり、事実上、樹脂組成物(共重合体)がとりうる組成範囲が限定される。このため、特許文献4、5に開示の位相差板は、その光学的な設計の自由度が必ずしも十分ではない。なお、特許文献4には、正の固有複屈折を有する重合体としてポリノルボルネンが、負の固有複屈折を有する重合体としてスチレン系重合体が例示されている。特許文献5には、正の固有複屈折を有する分子鎖としてノルボルネン鎖が、負の固有複屈折を有する分子鎖としてスチレン鎖などのスチレン系の分子鎖が例示されている。
特開2007−273275号公報 特開平5−27118号公報 特開平10−68816号公報 特開2001−337222号公報 特開2001−235622号公報
しかしながら、従来の位相差板を備えた表示装置では斜め方向からパネルを観察すると光漏れが発生し、画質が低下するという問題が十分解決できておらず、特に、VAモードの黒表示をして斜めから観察すると、青色や赤色に着色するいわゆるカラーシフトの問題が解決されなかった。本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、広範囲の波長における光学補償が可能で、カラーシフトが軽減された液晶表示装置の提供を目的とする。
本発明は、少なくとも2枚の位相差フィルムを備える液晶表示装置であって、1枚の位相差フィルム(X)は、(I)測定波長589nmにおける面内位相差Reが100〜300nmであり、(II)少なくとも可視光領域において、波長が短くなるほど複屈折が小さくなる波長分散性を示し、且つ、(III)以下の式(1)、(2)もしくは(3)に示される分子構造または複素芳香族基を有する樹脂(A)を含む、光学的に一軸性を有する位相差フィルムであり、もう1枚の位相差フィルム(Y)は、測定波長589nmにおける面内位相差Reが10nm以下、厚み方向位相差Rthが120nm〜300nmであり、光学的に法線方向に一軸性を有する位相差フィルムである、液晶表示装置である。
Figure 2011128397
Figure 2011128397
Figure 2011128397
(前記式(1)において、nは1〜4の範囲の自然数、R1およびR2は、互いに独立して、水素原子またはメチル基である。)
本発明によれば、広範囲の波長における光学補償が可能で、カラーシフトが軽減された液晶表示装置が提供できる。
本明細書における「樹脂」は「重合体」よりも広い概念である。樹脂は、例えば1種または2種以上の重合体からなってもよいし、必要に応じて、重合体以外の材料、例えば紫外線吸収剤、酸化防止剤、フィラーなどの添加剤、相溶化剤、安定化剤などを含んでいてもよい。
[樹脂(A)]
本発明の液晶表示装置は、少なくとも2枚の位相差フィルムを備えており、その内の1枚の位相差フィルム(X)は樹脂(A)を含む。
本発明に係る樹脂(A)の構成は、前記式(1)、(2)もしくは(3)に示される分子構造または複素芳香族基を有する限り特に限定されない。式(1)、(2)、(3)に示される分子構造および複素芳香族基を分子構造Xとすると、例えば、樹脂(A)は、分子構造Xが結合した構成単位(繰り返し単位)を有する重合体を含む。 樹脂(A)は、2種以上の分子構造Xを有していてもよい。
樹脂(A)は、例えばアクリル樹脂またはシクロオレフィン樹脂である。アクリル樹脂およびシクロオレフィン樹脂は、高い透明性および機械的特性を有しており、このような樹脂(A)からなる層を有する光学フィルムは、液晶表示装置(LCD)などの画像表示装置に用いる光学フィルムとして好適である。
アクリル樹脂は、アクリル重合体を50重量%以上、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上含む樹脂である。シクロオレフィン樹脂は、シクロオレフィン重合体を50重量%以上、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上含む樹脂である。
分子構造Xが結合した構成単位を有する重合体の一例は、以下の式(4)、(5)または(6)に示される単位もしくは複素芳香族基を有するα,β−不飽和単量体単位を構成単位として有する重合体(B−1)である。換言すれば、樹脂(A)は、以下の式(4)、(5)または(6)に示される単位もしくは複素芳香族基を有するα,β−不飽和単量体単位を構成単位として有する重合体(B−1)を含んでいてもよい。
Figure 2011128397
Figure 2011128397
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式(4)において、nは1〜4の範囲の自然数、R1およびR2は、互いに独立して、水素原子またはメチル基である。
以下、式(4)、(5)、(6)に示される単位および複素芳香族基を有するα,β−不飽和単量体単位を、構成単位Yと呼ぶ。また、複素芳香族基を有するα,β−不飽和単量体単位を、単に、不飽和単量体単位と記載する。
構成単位Yのうち式(4)、(5)、(6)に示される単位は、各々、式(1)、(2)、(3)に示される分子構造に、重合性基であるビニル基またはメチレン基が結合した単量体の重合により形成される構成単位である。また、不飽和単量体単位は、典型的には、複素芳香族基に重合性基であるビニル基またはメチレン基が結合した単量体の重合により形成される構成単位である。
構成単位Yは、重合体(B−1)に負の固有複屈折を与える作用を有する。構成単位Yが有するこの作用により、本発明に係る位相差フィルム(X)は逆波長分散性を示す。
重合体に負(あるいは正)の固有複屈折を与える作用を有する構成単位とは、当該単位のホモポリマーを形成したときに、形成したホモポリマーの固有複屈折が負(あるいは正)となる構成単位をいう。重合体自体の固有複屈折の正負は、当該単位によって生じる複屈折と、重合体が有するその他の構成単位によって生じる複屈折との兼ね合いにより決定される。
重合体の固有複屈折の正負は、重合体の分子鎖が一軸配向した層(例えば、シートあるいはフィルム)において、当該層の主面に垂直に入射した光のうち、当該層における分子鎖が配向する方向(配向軸)に平行な振動成分に対する層の屈折率n1から、配向軸に垂直な振動成分に対する層の屈折率n2を引いた値「n1−n2」に基づいて判断できる。固有複屈折の値は、各々の重合体について、その分子構造に基づく計算により求めることができる。
樹脂の固有複屈折の正負は、当該樹脂に含まれる各重合体によって生じる複屈折の兼ね合いにより決定される。
重合体(B−1)は、式(4)または(5)に示される単位もしくは不飽和単量体単位を有することが好ましく、式(4)に示される単位または不飽和単量体単位を有することがより好ましい。
式(4)に示される単位は、式(1)に示されるラクタム構造に、重合性基であるビニル基が結合した単量体(ビニルラクタム)の重合により形成される。式(4)に示される単位は、例えばN−ビニル−2−ピロリドン単位、N−ビニル−ε−カプロラクタム単位、N−ビニル−2−ピペリドン単位、N−ビニル−4−メチル−2−ピロリドン単位、N−ビニル−5−メチル−2−ピロリドン単位およびN−ビニル−ω−ヘプタラクタム単位から選ばれる少なくとも1種である。
式(5)に示される単位は、ビニルアントラセン単位である。当該単位は、式(2)に示されるアントラセン構造に、重合性基であるビニル基が結合した単量体(ビニルアントラセン)の重合により形成される。なお、式(5)に示す環上の水素原子の一部が、後述の式(8)における有機残基として例示した基によって置換されていてもよい。
式(6)に示される単位は、ジベンゾフルベン単位である。当該単位は、式(3)に示されるフルオレン構造に、重合性基であるメチレン基が結合した単量体(ジベンゾフルベン)の重合により形成される。なお、式(6)に示す環上の水素原子の一部が、後述の式(8)における有機残基として例示した基によって置換されていてもよい。
不飽和単量体単位は特に限定されず、例えば、当該単位が有する複素芳香族基は特に限定されない。複素芳香族基におけるヘテロ原子は、典型的には酸素原子、硫黄原子または窒素原子であるが、重合体(B−1)における複屈折の波長分散性を増大させる作用に優れることから、窒素原子が好ましい。重合体(B−1)における複屈折の波長分散性が増大すると、構成によっては強い逆波長分散性が得られるなど、本発明に係る位相差フィルム(X)における逆波長分散性の制御の自由度が向上する。
複素芳香族基は、例えばカルバゾール基、ピリジン基、イミダゾール基およびチオフェン基から選ばれる少なくとも1種である。
不飽和単量体単位は、例えばビニルカルバゾール単位、ビニルピリジン単位、ビニルイミダゾール単位およびビニルチオフェン単位から選ばれる少なくとも1種である。
ビニルカルバゾール単位を、以下の式(7)に示す。なお、式(7)に示す環上の水素原子の一部が、後述の式(8)における有機残基として例示した基によって置換されていてもよい。
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重合体(B−1)における複屈折の波長分散性を増大させる作用に特に優れることから、不飽和単量体単位は、ビニルカルバゾール単位およびビニルピリジン単位から選ばれる少なくとも1種が好ましく、ビニルカルバゾール単位がより好ましい。
重合体(B−1)は2種以上の構成単位Yを有してもよく、逆波長分散性を示す偏光子保護フィルムが得られる限り、構成単位Y以外の構成単位を有してもよい。
樹脂(A)が重合体(B−1)を含むとき、逆波長分散性を示す偏光子保護フィルムが得られる限り、樹脂(A)は重合体(B−1)以外の重合体を含んでもよい。
分子構造Xが結合した構成単位を有する重合体の別の一例は、少なくとも一部の分子構造あるいは官能基が、分子構造Xによって変性された構成単位を有する重合体である。
当該重合体は、例えば、水酸基またはアセチル基が分子構造Xによって変性された繰り返し単位を有する、トリアセチルセルロース(TAC)などのセルロース誘導体である。分子構造Xの結合により、セルロース誘導体の繰り返し単位の少なくとも一部が、当該誘導体に負の固有複屈折を与える作用を有するようになる。分子構造Xによる変性に基づくこの作用により、本発明に係る位相差フィルム(X)は逆波長分散性を示す。
[位相差フィルム(X)]
本発明の液晶表示装置は、少なくとも2枚の位相差フィルムを備えており、その内の1枚が位相差フィルム(X)である。以下、本発明に係る位相差フィルム(X)について説明する。
本発明に係る位相差フィルム(X)は、(I)測定波長589nmにおける面内位相差Reが100〜300nmであり、(II)少なくとも可視光領域において、波長が短くなるほど複屈折が小さくなる波長分散性を示し、且つ、(III)以下の式(1)、(2)もしくは(3)に示される分子構造または複素芳香族基を有する樹脂(A)を含む、光学的に一軸性を有する位相差フィルム(X)である。
本発明に係る位相差フィルム(X)は、(I)測定波長589nmにおける面内位相差Reが100〜300nmである。好ましくは120〜280nmであり、より好ましくは130〜160nmである。面内位相差Reが前記の値をとることにより、特にVAモードの液晶表示装置において画質が向上する。
本発明に係る位相差フィルム(X)は、可視光領域において波長が短くなるほど複屈折率が小さくなる。フィルムの波長分散性は、異なる波長でフィルムの位相差を測定することで評価が可能であり、例えば測定波長が589nmにおける位相差値を基準(R0)として、その他の波長における位相差Rとの比(R/R0)が589nm以下では1未満の場合で、かつ、589nmを超える波長では1を超える場合に、可視光領域において波長が短くなるほど複屈折率が小さくなっており、すなわち、逆波長分散となる。R/R0は447nm/589nmでは0.6以上1未満が好ましく、より好ましくは0.7以上0.95未満、さらに好ましくは0.75以上0.93未満であり、750nm/589nmでは1.0を超えて1.4以下が好ましく、より好ましくは1.02を超えて1.3以下である。
なお、「位相差」はレターデーション値ともいう。ここでいう面内位相差Reは、
Re=(nx−ny)×d
で、厚さ方向位相差(Rth)は、
Rth=[(nx+ny)/2−nz]×d
で、定義される。なお、nxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率、nyはフィルム面内でnxと垂直方向の屈折率、nzはフィルム厚み方向の屈折率、dはフィルムの厚さ(nm)を表す。遅相軸方向は、フィルム面内の屈折率が最大となる方向とする。また、延伸方向の屈折率が大きくなるものを正の複屈折性があると言い、フィルム面内で延伸方向と垂直方向の屈折率が大きくなるものを負の複屈折性があると言う。
本発明に係る位相差フィルム(X)は、前記樹脂(A)を含む。偏光子保護フィルムにおける樹脂(A)の含有割合は30重量%以上が好ましく、50重量%以上がより好ましく、80%以上が更に好ましく、95%以上が特に好ましく、100重量%であることが最も好ましい。
本発明に係る位相差フィルム(X)は、光学的に一軸性を有する。一軸性とは、前記フィルムの3種類の屈折率(nx、ny、nz)の内、2種類の屈折率がほぼ同一であり、もう一種類の屈折率が異なることである。位相差フィルム(X)は、光学的にフィルム面内に一軸性を有すること、すなわち、屈折率nxとnzがほぼ同一でnyが異なる(nx≒nz≠ny)か、またはnyとnzがほぼ同一でnxが異なる(ny≒nz≠nx)ことが好ましい。また、位相差フィルム(X)は、フィルム面内に光学的に正の一軸性を有することが好ましい。フィルム面内に光学的に正の一軸性を有するとは、nyとnzがほぼ同一であり、且つnxがnyとnzより大きいという関係(nx>ny≒nz)を満たすことである。光学的にフィルム面内に正の一軸性を有するフィルムはポジティブAフィルムとも呼ばれる。
本発明に係る位相差フィルム(X)の光弾性係数は、10×10−12/Pa未満が好ましい。より好ましくは、5×10−12/Pa未満であり、更に好ましくは、3×10−12/Paである。光弾性係数が10×10−12/Pa以上では、外力による位相差の変化が大きくなり、画像むらが発生する。
本発明に係る位相差フィルム(X)の厚さは、5〜350μmが好ましく、より好ましくは20〜200μm、さらに好ましくは30〜150μmである。膜厚が5μmより薄いと強度に乏しく、また、所望の位相差(レターデーション値)を得ることが困難となる。膜厚が350μmより厚いと液晶表示装置の薄型化に不利となる。フィルムの厚さは、例えばデジマチックマイクロメーター(ミツトヨ社製)などの市販の測定機器を用いて測定することができる。
本発明に係る位相差フィルム(X)は、ガラス転移温度(Tg)が110℃〜200℃であることが好ましい。より好ましくは115℃〜200℃、さらに好ましくは120℃〜200℃である。110℃未満であると、厳しくなる使用環境に対して耐熱性が不足し、フィルムが変形して位相差のムラが発生しやすくなることがあるため好ましくない。また、200℃を超えると、超高耐熱性のフィルムとなるが、前記フィルムを得るための成形加工性が悪かったり、フィルムの可撓性が大きく低下する場合があるため好ましくない。
本発明に係る位相差フィルム(X)は、全光線透過率が85%以上であることが好ましい。より好ましくは90%以上、さらに好ましくは91%である。全光線透過率は、透明性の目安であり、85%未満であると透明性が低下し、位相差フィルム(X)として適さない。
本発明に係る位相差フィルム(X)は、ヘイズが5%以下であることが好ましい。より好ましくは3%以下、さらに好ましくは1%以下である。ヘイズが5%を超えると透明性が低下し、位相差フィルム(X)として適さない。
本発明に係る位相差フィルム(X)は、公知の添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤;酸化防止剤;位相差上昇剤、位相差低減剤などの位相差調整剤;耐光安定剤、耐候安定剤、位相差安定剤、熱安定剤などの安定剤;ガラス繊維、炭素繊維などの補強材;近赤外線吸収剤;トリス(ジブロモプロピル)ホスフェート、トリアリルホスフェート、酸化アンチモンなどの難燃剤;アニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤に代表される帯電防止剤;無機顔料、有機顔料、染料などの着色剤;有機フィラー、無機フィラー;樹脂改質剤;アンチブロッキング剤;マット剤;酸補足剤;金属不活性化剤;可塑剤;滑剤;難燃剤などである。添加剤の添加量は、例えば0.01〜20%であり、好ましくは0.1〜5%であり、より好ましくは0.1〜2%である。
本発明に係る位相差フィルム(X)は、前記樹脂(A)以外のその他の熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。これらのその他の熱可塑性樹脂は、特に種類は問わないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン重合体、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)等のオレフィン系ポリマー;塩化ビニル、塩素化ビニル樹脂等の含ハロゲン系ポリマー;ポリメタクリル酸メチル等のアクリルポリマー;ポリスチレン、スチレン−メタクリル酸メチル重合体、スチレン−アクリロニトリル重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンブロック重合体等のスチレン系樹脂、すなわち、芳香族ビニル系単量体由来の構造単位を含む樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610等のポリアミド;ポリアセタール:ポリカーボネート;ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド:ポリエーテルエーテルケトン;ポリサルホン;ポリエーテルサルホン:ポリオキシペンジレン;ポリアミドイミド;ポリブタジエン系ゴム、アクリルゴムを配合したABSやASA等のゴム質重合体;などが挙げられる。
その他の熱可塑性樹脂は、前記樹脂(A)と熱力学的に相溶する樹脂の方が、透明性や機械強度を向上させる点において好ましい。熱力学的に相溶する樹脂としては例えば、シアン化ビニル系単量体単位と芳香族ビニル系単量体単位とを含む共重合体やポリ塩化ビニル樹脂、メタクリル酸エステル類を50重量%以上含有する重合体を用いるとよい。なお、前記樹脂(A)とその他の熱可塑性樹脂とが熱力学的に相溶することは、これらを混合して得られた位相差フィルムのガラス転移点を測定することによって確認することができる。具体的には、示差走査熱量測定器により測定されるガラス転移点が主鎖に環構造を有する熱可塑性熱可塑性アクリル系重合体とその他の熱可塑性樹脂との混合物について1点のみ観測されることによって、熱力学的に相溶していると言える。
その他の熱可塑性樹脂がゴム質重合体を含む場合、フィルムの耐折り曲げ性の向上が期待できる。ゴム質量体を含む場合、位相差フィルム中のゴム質重合体の含有割合は、好ましくは30%未満、より好ましくは20%以下、さらに好ましくは15%以下、特に好ましくは10%以下である。ゴム質重合体としては、シアン化ビニル系単量体単位体と芳香族ビニル系単量体単位とを含む樹脂であるABSやASAが好ましい。ABSやASAは主鎖に環構造を有する熱可塑性アクリル系樹脂と相溶し得る組成のグラフト部を有しているため、ゴム質量体が位相差フィルム中に均一に分散することが可能となる。また、ゴム質重合体の平均粒子径は、フィルムとした際の透明性向上の観点から、300nm以下である事が好ましく、150nm以下である事が更に好ましい。
本発明に係る位相差フィルム(X)は、外観欠点が少ないことが好ましい。外観欠点は、樹脂などの原料由来や製造工程で混入する異物、成形時の気泡や成形時のダイやロール部分でのダイラインやキズなどに起因し、ポリマーフィルタなどによる原料のろ過、製造工程のクリーン化、成形条件の最適化などによる対策が考えられる。前記位相差フィルム(X)中の欠点の数は、具体的には、粒子径が20μm以上の欠点が1000個/m以下であることが好ましく、500個/m以下であることがより好ましく、200個/m以下であることがさらに好ましく、理想的には0個/mである。
本発明に係る位相差フィルム(X)を成形する方法は特に限定されず、公知の手法に従えばよい。フィルム成形の方法としては、溶液キャスト法(溶液流延法)、溶融押出法、カレンダー法、圧縮成形法など、公知のフィルム成形方法が挙げられる。これらの中でも、溶液キャスト法(溶液流延法)、溶融押出法が好ましい。
溶液キャスト法(溶液流延法)に用いられる溶媒としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタンなどの塩素系溶媒;トルエン、キシレン、ベンゼン、およびこれらの混合溶媒などの芳香族系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−ブタノールなどのアルコール系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルフォキシド、ジオキサン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、アセトン、酢酸エチル、ジエチルエーテル;などが挙げられる。これら溶媒は1種のみ用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
溶液キャスト法(溶液流延法)を行うための装置としては、例えば、ドラム式キャスティングマシン、バンド式キャスティングマシン、スピンコーターなどが挙げられる。
溶融押出法としては、Tダイ法、インフレーション法などが挙げられ、その際の、フィルムの成形温度は、好ましくは150〜350℃、より好ましくは200〜300℃である。
本発明に係る位相差フィルム(X)を得るための延伸方法としては、位相差フィルム(X)に光学的に一軸性を付与できる限り、従来公知の延伸方法が適用できる。必要な面内位相差Reと厚さ方向位相差Rthを発現させるという面からは、自由端一軸延伸が好ましい。また、フィルム面内の任意の直交する二方向に対する耐折れ曲げ性が向上するという点で、逐次二軸延伸も好ましい形態のひとつである。面内の任意の直交する二方向としては、例えば、フィルム面内の遅相軸と平行方向およびフィルム面内の遅相軸と垂直な方向が挙げられる。なお、所望の位相差、所望の耐折れ曲げ性に応じて、延伸倍率、延伸温度、延伸速度等の延伸条件を適宜設定すればよく、特に限定はされない。
延伸等を行う装置としては、例えば、ロール延伸機、テンター型延伸機、オーブン延伸機、小型の実験用延伸装置として引張試験機、一軸延伸機、逐次二軸延伸機等が挙げられ、これら何れの装置を用いても、本発明に係る位相差フィルム(X)を得ることができる。
延伸温度としては、フィルム原料の重合体、若しくは延伸前のフィルムのガラス転移温度近辺で行うことが好ましい。具体的には、(ガラス転移温度−30)℃〜(ガラス転移温度+50)℃で行うことが好ましく、より好ましくは(ガラス転移温度−20)℃〜(ガラス転移温度+20)℃、さらに好ましくは(ガラス転移温度−10)℃〜(ガラス転移温度+10)℃である。(ガラス転移温度−30)℃よりも低いと、十分な延伸倍率が得られないために好ましくない。(ガラス転移温度+50)℃よりも高いと、樹脂の流動(フロー)が起こり安定な延伸が行えなくなるために好ましくない。
面積比で定義した延伸倍率は、好ましくは1.1〜25倍の範囲、より好ましくは1.2〜10倍の範囲、さらに好ましくは1.3〜5倍の範囲で行われる。1.1倍よりも小さいと、延伸に伴う位相差性能の発現や靭性の向上につながらないために好ましくない。25倍よりも大きいと、延伸倍率を上げるだけの効果が認められない。
ある方向に延伸する場合、その一方向に対する延伸倍率は、好ましくは1.05〜10倍の範囲、より好ましくは1.1〜5倍の範囲、さらに好ましくは1.2〜3倍の範囲で行われる。1.05倍よりも小さいと、所望の位相差が得られない場合があり好ましくない。10倍よりも大きいと、延伸倍率を上げるだけの効果が認められず、また延伸中にフィルムの破断が起こる場合があり好ましくない。
延伸速度(一方向)としては、好ましくは10〜20000%/分の範囲、より好ましくは100〜10000%/分の範囲である。10%/分よりも遅いと、十分な延伸倍率を得るために時間がかかり、製造コストが高くなるために好ましくない。20000%/分よりも早いと、延伸フィルムの破断等が起こるおそれがあるために好ましくない。
本発明に係る位相差フィルム(X)は偏光子保護フィルムとして使用することも可能である。偏光子保護フィルムは、偏光子の片面または両面に接合された状態で使用される。偏光子は、典型的には、ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素または二色性染料などの二色性物質により染色して形成されるが、染色に水溶液を使用するため、偏光子に接合される偏光子保護フィルムは、本来、水透過性を有することが好ましい。偏光子と偏光子保護フィルムとの接合に水系の接着剤が使用されることも、水透過性を有する偏光子保護フィルムが好ましい理由の一つである。例えば、シクロオレフィン重合体からなるフィルムは、当該重合体の疎水性が強いために水透過性をほとんど示さず、偏光子保護フィルムとして必ずしも適しているとはいえない。これに対して、式(1)に示される分子構造は高い親水性を有する。このため、樹脂(A)における当該構造の含有率など、具体的な構成にもよるが、当該構造を有する樹脂(A)からなる層を有する本発明のフィルムは、高い水透過性を示し、偏光子保護フィルムとして好適となる。
本発明に係る位相差フィルム(X)を偏光子保護フィルムとして使用する場合、例えば、ポリビニルアルコール系脂フィルムを二色性物質(ヨウ素や二色性染料など)で染色して一軸延伸した偏光子の片面あるいは両面に、接着剤層あるいはアンカー層を介して位相差フィルム(X)を接着できる。
偏光子としては、特定の振動方向をもつ光のみを透過する機能を有する偏光子であれば如何なるものでもよく、例えばポリビニルアルコール系フィルム等を延伸し、ヨウ素や二色性染料などで染色したポリビニルアルコール系偏光子;ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン系偏光子;多層積層体あるいはコレステリック液晶を用いた反射型偏光子;薄膜結晶フィルム系偏光子;等が挙げられ、これらのなかでもポリビニルアルコール系脂フィルムを二色性物質で染色して一軸延伸した偏光子が好適に用いられる。これら偏光子の厚さは特に制限されず、一般的に、5〜100μm程度である。
本発明に係る位相差フィルム(X)は前記偏光子に接着剤層を介して接着されてなることが好ましい。好ましい接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂の接着剤、紫外線や電子線などの活性エネルギー線で硬化する接着剤やアクリル系、シリコン系、ゴム系等の粘着剤が挙げられる。尚、偏光子の偏光機能が低下しない条件で加熱圧着してもよいことはいうまでもなく、その場合は、ゆるやかな加熱圧着条件で接着することができる。
前記の接着剤を用いて接着する方法は、特に限定されず、例えば、キスコート、スピンコート、ロールコート、ディップコート、カーテンコート、バーコート、ドクターブレードコート、ナイフコート、エアナイフコート、ダイコート、グラビアコート、マイクログラビアコート、オフセットグラビアコート、リップコート、スプレーコート、コンマコートなどの各種の方法を用い、偏光フィルム及び/又は接合されるフィルムの接着面に接着剤を塗布し、両者を重ね合わせる方法などが可能である。接着剤を塗布した後、偏光フィルムとそれに接合されるフィルムをニップロールなどにより挟んで、貼り合わせる。貼り合せる場合は、前記位相差フィルム(X)の光軸と偏光子の吸収軸を直交または平行に配置することが好ましい。
本発明に係る位相差フィルム(X)は、偏光子と接する面に接着性向上のために易接着処理を施すことができる。易接着処理としては、プラズマ処理、コロナ処理、紫外線照射処理、フレーム(火炎)処理、ケン化処理やアンカー層を形成する方法が挙げられ、これらを併用することもできる。これらの中でも、コロナ処理、アンカー層を形成する方法、およびこれらを併用する方法が好ましい。アンカー層としては、特に限定されず、公知のアンカー層が使用され、アクリル系、セルロース系、ポリウレタン系、シリコーン系、ポリエステル系、ポリエチレンイミン系や分子中にアミノ基を含んだポリマー等が使用される。これらのアンカー層は、単独で用いても2種以上を併用・積層してもよい。
アンカー層の厚さは、乾燥・硬化または乾燥後の厚さで、例えば、好ましくは0.01〜10μm、より好ましくは0.05〜3μm、さらに好ましくは0.1〜1μmである。アンカー層の厚さが0.01μm未満であると、偏光子とフィルムとの接着強度が不充分になることがある。逆に、アンカー層の厚さが10μmを超えると、耐水性または耐湿性試験において、偏光板の色抜けや変色が起こりやすくなることがある。
本発明に係る位相差フィルム(X)の偏光子と対向する面にアンカー層コーティング組成物を塗布する方法は、バーコーター、ロールコーター、グラビアコーターなどを用いた通常のコーティング技術を採用すればよく、特に限定されるものではない。また、塗布したアンカー層コーティング組成物を乾燥させる方法や条件は、特に限定されるものではないが、例えば、熱風乾燥機や赤外線乾燥機を用いて、好ましくは50〜130℃、より好ましくは75〜110℃の温度で、乾燥させればよい。また、アンカー層コーティング組成物のウレタン結合生成反応および/または硬化に関して、養生工程を設けても何ら問題ない。養生工程が必要な場合、養生温度は、例えば、好ましくは20〜100℃、より好ましくは20〜50℃であるが、前記組成物の乾燥に使用した熱である程度は進行し、接着剤を用いた偏光子と位相差フィルム(X)との接着工程でさらに進行するので、常温養生でも充分な物性が得られる。
なお、表面の濡れ張力を調整するために、アンカー層を設けたフィルムの前記アンカー層の表面には、後の接着工程の前に、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン吹き付け、紫外線照射、火炎処理、化学薬品処理、その他の従来公知の表面処理を施すことができる。
位相差フィルム(X)は、最外層の少なくとも一方として粘着剤層を有していても良い。他の光学フィルムや液晶セル等の他部材と接着するための粘着剤層を設けることができる。粘着剤層を形成する粘着剤は、特に限定されないが、例えばアクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系やゴム系などのポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。
前記粘着剤層の付設は、適宜な方式で行いうる。その例としては、例えばトルエンや酢酸エチル等の適宜な溶剤の単独物又は混合物からなる溶媒にベースポリマーまたはその組成物を溶解又は分散させた10〜40重量%程度の粘着剤溶液を調製し、それを流延方式や塗工方式等の適宜な展開方式でフィルム上に直接付設する方式、あるいは前記に準じセパレータ上に粘着剤層を形成してそれをフィルム面に移着する方式などがあげられる
本発明に係る位相差フィルム(X)は積層体であることも可能であり、前記した延伸の前後に積層させることもできる。積層方法としては共押出や粘・接着層を介した貼り合せなどの公知の方法が可能である。
本発明に係る位相差フィルム(X)は逆波長分散性を示す。即ち、本発明に係る位相差フィルム(X)は、少なくとも可視光領域において、波長が短くなるほど複屈折(あるいは位相差もしくはリターデーション)が小さくなる光学特性を示す。このような広帯域の位相差フィルム(X)を用いることによって、表示特性に優れる画像表示装置を構築できる。
本発明に係る位相差フィルム(X)は、実施形態や用途に応じて、他の光学部材と組み合わせて用いてもよい。また、粘接着剤層、接着層、アンカー層、必要に応じて、紫外線遮蔽層、熱線遮蔽層、反射防止層、防眩(ノングレア)層、ハードコート層、帯電防止層、光触媒層などの防汚層、電磁波遮蔽層、ガスバリヤー性等の種々の機能性コーティング層を各々積層塗工したり、各々の単独の機能性コーティング層が塗工された部材を粘着剤や接着剤を介して積層させてもよい。なお、各層の積層順序は特に限定されるものではなく、積層方法も特に限定されない。
(位相差フィルムの形態A)
本形態の位相差フィルム(XA)は構成単位Yを有する重合体(B−1)を含む樹脂(A)を含む。本形態において、重合体(B−1)の固有複屈折は負であり、樹脂(A)は、正の固有複屈折を有する重合体(B−2)をさらに含む。樹脂(A)は、重合体(B−1)と(B−2)とを含む組成物である。
樹脂(A)は、固有複屈折が負の重合体(B−1)と固有複屈折が正の重合体(B−2)とを含むが、双方の重合体に対して同一方向に配向が加えられた場合、各々の重合体の遅相軸(あるいは進相軸)が直交するために、互いの複屈折が打ち消しあう。ここで、複屈折が打ち消し合う程度が波長によって異なるために、複屈折、例えば位相差、の逆波長分散性が生じる。
位相差フィルム(XA)は、単層でありながら逆波長分散性を示す。このため、薄膜化しながら望む光学特性を得ることができ、位相差フィルム(XA)を備える画像表示装置のさらなる小型化、軽量化などの実現が可能となる。また、位相差フィルム(XA)は、複数の層の積層により逆波長分散性を実現したフィルムに比べて、各層の接合角度の調整が不要であるため生産性が高い。
重合体(B−1)、(B−2)の配向に着目すると、位相差フィルム(XA)は、重合体(B−1)および(B−2)を含む樹脂(A)に配向を与えて形成した部材である。樹脂(A)に配向を与えるには、フィルムに成形した樹脂(A)を延伸すればよい。
重合体(B−2)は、正の固有複屈折を有する限り特に限定されない。
重合体(B−2)は、主鎖に環構造を有することが好ましい。主鎖に環構造を有することにより、重合体(B−2)および当該重合体を含む樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)が上昇し、高い耐熱性を有する位相差フィルム(XA)となる。このような高耐熱性の位相差フィルム(XA)は、例えば画像表示装置において、光源などの発熱部に近接して配置できる。また、後加工(例えばコーティングなどの表面処理)時の加工温度を高くできるため、位相差フィルム(XA)の生産性が高くなる。
主鎖に環構造を有する重合体(B−2)ならびに当該重合体を含む樹脂(A)のTgは、例えば110℃以上である。環構造の種類、重合体(B−2)における環構造の含有率および樹脂(A)における重合体(B−2)の含有率によっては、当該Tgは、115℃以上、120℃以上、さらには130℃以上となる。Tgは、JIS K7121に準拠して求めることができる。
主鎖に環構造を有する重合体(B−2)は特に限定されず、例えばシクロオレフィン重合体およびセルロース誘導体から選ばれる少なくとも1種である。
重合体(B−2)は、(メタ)アクリル重合体であってもよく、この場合、光学特性ならびに機械的強度、成形加工性および表面強度などの諸特性が向上した位相差フィルム(XA)となる。
(メタ)アクリル重合体は、(メタ)アクリル酸エステル単位を、全構成単位の50モル%以上、好ましくは60モル%以上、より好ましくは70モル%以上有する重合体である。(メタ)アクリル重合体は、(メタ)アクリル酸エステル単位の誘導体である環構造を含んでいてもよく、この場合、(メタ)アクリル酸エステル単位および環構造の合計が全構成単位の50モル%以上であれば、(メタ)アクリル重合体とする。
重合体(B−2)が(メタ)アクリル重合体である場合、位相差フィルム(XA)における逆波長分散性の制御の自由度が向上する。構成単位Yを主鎖に有する重合体(B−1)が示す複屈折の波長分散性は、(メタ)アクリル重合体である重合体(B−2)が示す複屈折の波長分散性に比べて、かなり大きい。このように、複屈折の波長分散性が大きく異なる重合体(B−1)および(B−2)を組み合わせることで、逆波長分散性の制御の自由度が向上する。
重合体(B−2)は、主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル重合体であってもよい。上述したように、主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル重合体とすることにより、重合体(B−2)および当該重合体を含む樹脂(A)のTgが上昇し、高い耐熱性を有する位相差フィルム(XA)となる。
(メタ)アクリル重合体が主鎖に有する環構造は、例えば、エステル基、イミド基または酸無水物基を有する環構造である。
より具体的な環構造の例は、ラクトン環構造、グルタルイミド構造、無水グルタル酸構造、N−置換マレイミド構造および無水マレイン酸構造から選ばれる少なくとも1種である。これらの環構造を主鎖に有する重合体(B−2)は、配向によって大きな正の固有複屈折を示すため、重合体(B−1)との組み合わせにより、逆波長分散性の制御の自由度がより向上する。
環構造は、ラクトン環構造およびグルタルイミド構造から選ばれる少なくとも1種が好ましく、ラクトン環構造がより好ましい。ラクトン環構造またはグルタルイミド構造、特にラクトン環構造、を主鎖に有する重合体(B−2)は、複屈折の波長分散性が非常に小さい。このため、重合体(B−1)との組み合わせにより、逆波長分散性の制御の自由度がさらに向上する。
重合体(B−2)が有していてもよい具体的なラクトン環構造は特に限定されないが、例えば、以下の式(8)により示される構造である。
Figure 2011128397

式(8)において、R3、R4およびR5は、互いに独立して、水素原子または炭素数1〜20の範囲の有機残基である。当該有機残基は酸素原子を含んでもよい。
有機残基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などの炭素数が1〜20の範囲のアルキル基;エテニル基、プロペニル基などの炭素数が1〜20の範囲の不飽和脂肪族炭化水素基;フェニル基、ナフチル基などの炭素数が1〜20の範囲の芳香族炭化水素基;前記アルキル基、前記不飽和脂肪族炭化水素基および前記芳香族炭化水素基において、水素原子の一つ以上が水酸基、カルボキシル基、エーテル基およびエステル基から選ばれる少なくとも1種の基により置換された基;である。
式(8)に示すラクトン環構造は、例えば、メタクリル酸メチル(MMA)と2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)とを含む単量体群を共重合した後、得られた共重合体における隣り合ったMMA単位とMHMA単位とを脱アルコール環化縮合させて形成できる。このとき、R3はH、R4およびR5はCH3である。
以下の式(9)に、グルタルイミド構造および無水グルタル酸構造を示す。
Figure 2011128397
式(9)におけるR6およびR7は、互いに独立して、水素原子またはメチル基であり、X1は、酸素原子または窒素原子である。X1が酸素原子のときR8は存在せず、X1が窒素原子のとき、R8は、水素原子、炭素数1〜6の直鎖アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基またはフェニル基である。
1が窒素原子のとき、式(9)に示される環構造はグルタルイミド構造となる。グルタルイミド構造は、例えば、(メタ)アクリル酸エステル重合体をメチルアミンなどのイミド化剤によりイミド化して形成できる。
1が酸素原子のとき、式(9)に示される環構造は無水グルタル酸構造となる。無水グルタル酸構造は、例えば、(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸との共重合体を、分子内で脱アルコール環化縮合させて形成できる。
以下の式(10)に、N−置換マレイミド構造および無水マレイン酸構造を示す。
Figure 2011128397
式(10)におけるR9およびR10は、互いに独立して、水素原子またはメチル基であり、X2は、酸素原子または窒素原子である。X2が酸素原子のときR11は存在せず、X2が窒素原子のとき、R11は、水素原子、炭素数1〜6の直鎖アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基またはフェニル基である。
2が窒素原子のとき、式(10)に示される環構造はN−置換マレイミド構造となる。N−置換マレイミド構造を主鎖に有するアクリル樹脂は、例えば、N−置換マレイミドと(メタ)アクリル酸エステルとを共重合して形成できる。
2が酸素原子のとき、式(10)に示される環構造は無水マレイン酸構造となる。無水マレイン酸構造を主鎖に有するアクリル樹脂は、例えば、無水マレイン酸と(メタ)アクリル酸エステルとを共重合して形成できる。
重合体(B−2)が主鎖に環構造を有する場合、重合体(B−2)における環構造の含有率は特に限定されないが、通常5〜90重量%であり、20〜90重量%が好ましい。当該含有率は、30〜90重量%、35〜90重量%、40〜80重量%および45〜75重量%になるほど、さらに好ましい。環構造の含有率は、特開2001−151814号公報に記載の方法により求めることができる。
重合体(B−2)は、固有複屈折が正である限り、任意の構成単位を有していてもよい。例えば重合体(B−2)が構成単位Yを有していてもよく、この場合、重合体(B−1)と(B−2)との相溶性が向上し、透明性に優れる位相差フィルム(XA)となる。
重合体(B−2)は公知の方法により製造できる。
一例として、主鎖にラクトン環構造を有する重合体(B−2)は、分子鎖内に水酸基とエステル基とを有する重合体(a)を任意の触媒存在下で加熱し、脱アルコールを伴うラクトン環化縮合反応を進行させて、得ることができる。
重合体(a)は、例えば、以下の式(11)に示される単量体を含む単量体群の重合により形成できる。
Figure 2011128397
式(11)において、R12およびR13は、互いに独立して、水素原子または式(8)における有機残基として例示した基である。
式(11)に示される単量体の具体的な例は、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸イソプロピル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸ノルマルブチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸t−ブチルである。なかでも、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチルが好ましく、高い透明性および耐熱性を有する位相差フィルム(XA)が得られる。
なお、これらの単量体の重合により形成された構成単位は、環化により、当該単位を有する重合体に対して正の固有複屈折を与える作用を有する。
重合体(a)の形成に用いる単量体群は、式(11)に示される単量体を2種以上含んでもよい。
重合体(a)の形成に用いる単量体群は、式(11)に示される単量体以外の単量体を含んでもよい。このような単量体は、式(11)に示される単量体と共重合可能な単量体である限り特に限定されず、例えば、式(11)に示される単量体以外の(メタ)アクリル酸エステルである。
前記(メタ)アクリル酸エステルは、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジルなどのアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジルなどのメタクリル酸エステル;である。なかでも、高い透明性および耐熱性を有する位相差フィルム(XA)が得られることから、メタクリル酸メチル(MMA)が好ましい。
重合体(a)の形成に用いる単量体群は、これら(メタ)アクリル酸エステルを2種以上含んでもよい。
重合体(a)の形成に用いる単量体群は、その他、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、メチルビニルケトン、エチレン、プロピレン、酢酸ビニルなどの単量体を、1種または2種以上含んでもよい。
構成単位Yを有する重合体(B−2)は、上述した(メタ)アクリル酸エステル単量体と、重合により構成単位Yとなる単量体とを含む単量体群を重合して形成できる。単量体群が含む(メタ)アクリル酸エステルの種類を選択し、形成した重合体を環化縮合させることによって、構成単位Yを有するとともに、主鎖に環構造を有する重合体(B−2)としてもよい。
重合体(B−1)は、構成単位Yを有するとともに、負の固有複屈折を有する限り特に限定されない。
構成単位Yは、当該単位を主鎖に有する重合体(B−1)における複屈折の波長分散性を大きく増加させる作用を有する(本願実施例の表6、表12、表16、表27を参照)。このため、重合体(B−1)と(B−2)との組み合わせによって、逆波長分散性の制御の自由度が向上する。重合体(B−2)が(メタ)アクリル重合体、特にラクトン環構造またはグルタルイミド構造を主鎖に有する(メタ)アクリル重合体(上述したように、これらの重合体は複屈折の波長分散性が非常に小さい)である場合、位相差フィルム(XA)の逆波長分散性の制御の自由度がさらに高くなる。
なお、特開2001−337222号公報に例示されている樹脂の組み合わせでは、両樹脂における複屈折の波長分散性の差はそれほど大きくないため、本発明に係る位相差フィルム(XA)のような効果を得ることができない。
構成単位Yが重合体(B−1)における複屈折の波長分散性を大きく増加させる作用を有することから、重合体(B−1)の全構成単位に占める構成単位Yの割合が低い場合にも、重合体(B−1)は大きな複屈折の波長分散性を示す。なお、ポリカーボネート、ポリスチレンなど、従来の光学部材に用いられている重合体は、ホモポリマーであったとしても、本願実施例に示す可視光領域内のR/R0値にして、およそ0.95〜1.15程度の範囲に入る波長分散性しか示さない。
構成単位Yが、重合体における複屈折の波長分散性を大きく増加させる理由について、本発明者らは、波長域300〜450nmにおける構成単位Yの吸収スペクトルの状態が大きく寄与していると推察する。
複屈折は、重合体の屈折率特性、具体的には屈折率の異方性、により生じる。重合体の屈折率特性は、当該重合体を構成する構成単位の屈折率特性により支配される。例えば、重合体が2種以上の構成単位を有する場合、各々の構成単位が有する屈折率特性の兼ね合いによって、重合体の屈折率特性が決定される。
ここで、ある波長域の光に対する構成単位の屈折率特性の変化は、当該波長域の光に対する構成単位の吸収スペクトルの変化と相関があると考えられる。具体的に言えば、ある波長域における構成単位の吸収スペクトルの変化が大きい場合、当該波長域における構成単位の屈折率特性の変化が大きくなり、当該構成単位における複屈折の波長分散性が増大する。このことは、
Figure 2011128397
ところで、逆波長分散性は、少なくとも可視光域(およそ380〜750nmの波長域)において、光の波長が短くなるほど複屈折が小さくなる特性である。即ち、構成単位における複屈折の波長分散性が大きいとは、可視光域における当該構成単位の屈折率特性の変化が大きいことに対応する。
重合体の構成単位は、一般に、紫外域に吸収ピークを有する。可視光域から十分に離れた所に吸収ピークを有する場合、可視光域では当該ピークの影響を受けることなく、構成単位の吸収スペクトルはほぼ一定となるはずである。即ち、この場合、可視光域における構成単位の屈折率特性がほぼ一定となり、当該単位を含む重合体の屈折率特性の変化が小さくなって、複屈折の波長分散性が小さくなる。一方、可視光域に近い所あるいは可視光域であっても非常に短波長の領域に吸収ピークを有する場合、可視光域に当該ピークの裾野が入り込むため、構成単位の吸収スペクトルは可視光域で大きく変化する。即ち、この場合、可視光域における構成単位の屈折率特性が大きく変化し、当該単位を含む重合体の屈折率特性の変化が大きくなって、複屈折の波長分散性が大きくなる。
300〜450nmの波長域における構成単位の吸収スペクトルの状態は、このような、可視光域における構成単位の屈折率特性の変化に強く影響する。具体的には、450nm以上の可視光域に吸収スペクトルの最大ピークが存在しない必要があるが、300〜450nmの波長域におけるモル吸光係数の最大値がある程度以上の値であれば、このような吸収スペクトルを有する構成単位は、当該単位を含む重合体の複屈折の波長分散性を大きく増加させると考えられる(ただし、モル吸光係数の最大値が具体的にどの程度以上の値であればよいかは、今後の検討事項である)。
波長域300〜450nmにおける構成単位の吸収スペクトルの最大値は、当該構成単位からなる重合体の紫外−可視吸収スペクトルを紫外可視分光光度計を用いて測定するか、あるいは当該構成単位もしくは重合によって当該構成単位となる単量体に対して、分子軌道法を用いた予測計算を行うことによって、求めることができる。
重合によってビニルカルバゾール単位、ビニルアントラセン単位およびジベンゾフルベン単位となる各単量体(ビニルカルバゾール、ビニルアントラセン、ジベンゾフルベン)に対して、分子軌道法を用いたモル吸光係数の予測計算を行ったところ、いずれの単量体についても450nm以上の可視光域に吸収スペクトルのピークが存在せず、波長域300〜450nmにおけるモル吸光係数の最大値は全て3000(mol/cm)以上であった。また、重合体の複屈折の波長分散性をほとんど増加させない構成単位であるスチレンに対して同様の計算を行ったところ、波長域300〜450nmにおけるモル吸光係数の最大値は100(mol/cm)以下であった。
なお、予測計算は、以下の手順で行った。最初に、対象となる単量体について、Accelrys Software Inc.製のソフトウェアであるMaterials studioのビルダーを用いてモデル化合物を作成し、密度凡関数分子軌道計算ソフトウェアDMol3を用いて最安定構造を探索した。最安定構造を探索するにあたっては、計算条件として、GGA/BLPYをファンクショナルに規定した。次に、得られた最安定構造を用いて、紫外−可視吸収スペクトルの計算を半経験分子軌道計算ソフトウェアにより行った。スペクトルの計算は、ソフトウェアにAccelrys Software Inc.製VAMPを用い、ハミルトニアンにZINDO/INDO/1を指定して行った。
構成単位Yによって重合体の複屈折の波長分散性が大きく増加する理由に関する前記説明は、同様の分子構造を有する分子構造Xについても、あてはめることができると考えられる。
芳香環は、当該環を含む重合体の光弾性係数を上昇させる。従って、光学特性に優れるフィルム、特に画像表示装置に好適なフィルム、を得るためには、当該フィルムにおける芳香環の含有量をできるだけ小さくすることが望まれる。構成単位Yの種類によっては、その分子構造内に芳香環を有する。しかし、構成単位Yを有する重合体(B−1)では、当該重合体における構成単位Yの含有率が小さい場合にも大きな波長分散性が得られることから、重合体(B−1)における芳香環の含有量を抑えながら、逆波長分散性の制御の自由度が高いフィルムが得られる。即ち、構成単位Y(分子構造X)を含む本発明に係る位相差フィルム(XA)は、複屈折に関する優れた光学特性を有しながら光弾性係数の上昇が抑制されており、当該フィルムは画像表示装置への使用に好適である。
また、式(4)に示される構成単位Yは芳香環を含まないため、当該構成単位Yを有する重合体(B−1)とすることにより、フィルムにおける光弾性係数の上昇をより抑制できる。なお、構成単位Y(分子構造X)によってフィルムの光弾性係数の上昇が抑制される効果は、位相差フィルムの形態B以降に示す位相差フィルム(XB)、21、31においても同様である。
重合体(B−1)は、固有複屈折が負である限り、構成単位Y以外の構成単位を含んでもよい。即ち、重合体(B−1)は、重合により構成単位Yとなる単量体と、その他の単量体との共重合体であってもよい。このとき、重合体(B−1)における構成単位Yの含有率は、20重量%以上が好ましく、30重量%以上がより好ましい。
例えば重合体(B−1)は、構成単位Yと(メタ)アクリル酸エステル単位とを構成単位として有してもよい。この場合、(メタ)アクリル重合体である重合体(B−2)との相溶性が向上し、透明性に優れる位相差フィルム(XA)となる。
重合体(B−1)は、上述した環構造を主鎖に有してもよい。この場合、より耐熱性に優れる位相差フィルム(XA)となる。
具体的な例として、重合体(B−1)は以下の単量体の重合により形成された構成単位を有してもよい:アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸アルキルエステル(例えばメチルアクリルレート、エチルアクリレート、カルバゾイルエチルアクリレート)、メタクリル酸アルキルエステル(例えばメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、カルバゾイルエチルメタクリレート)、アクリル酸アミノアルキルエステル(例えばジエチルアミノエチルアクリレート)、メタクリル酸アミノアルキルエステル、アクリル酸とグリコールとのモノエステル、メタクリル酸とグリコールとのモノエステル(例えばヒドロキシエチルメタクリレート)、アクリル酸のアルカリ金属塩、メタクリル酸のアルカリ金属塩、アクリル酸のアンモニウム塩、メタクリル酸のアンモニウム塩、アクリル酸アミノアルキルエステルの第4級アンモニウム誘導体、メタクリル酸アミノアルキルエステルの第4級アンモニウム誘導体、ジエチルアミノエチルアクリレートとメチルサルフェートとの第4級アンモニウム化合物、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルスルホン酸のアルカリ金属塩、ビニルスルホン酸のアンモニウム塩、スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸塩、アリルスルホン酸、アリルスルホン酸塩、メタリルスルホン酸、メタリルスルホン酸塩、酢酸ビニル、ビニルステアレート、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−アルキルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N,N−メチレンビスアクリルアミド、グリコールジアクリレート、グリコールジメタクリレート、ジビニルベンゼン、グリコールジアリルエーテル。
重合体(B−1)は、構成単位Yの種類によっては(より具体的には、式(4)に示される構成単位の種類によっては)水溶性となることがある。
重合体(B−1)が非水溶性である場合、その重量平均分子量は、例えば5万〜150万であり、8万〜120万が好ましく、10万〜90万がより好ましい。
重合体(B−1)が水溶性である場合、その分子量の指標となるK値は、例えば10〜120であり、25〜95が好ましく、30〜85がより好ましい。K値は、フィケンチャー法により測定した値である。
重合体(B−1)の製造方法は特に限定されず、公知の方法により製造できる。例えば、重合により構成単位Yとなる単量体を含む単量体群を、公知の方法により重合すればよい。
重合により構成単位Yとなる単量体は、例えば、以下の式(12)〜(15)に示す単量体である。
Figure 2011128397
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式(12)に示す単量体はビニルラクタムであり、nは1〜4の範囲の自然数、R1およびR2は、互いに独立して、水素原子またはメチル基である。
式(13)に示す単量体はビニルアントラセン、式(14)に示す単量体はジベンゾフルベン、式(15)に示す単量体はビニルカルバゾールである。式(12)、(13)、(15)に示す単量体は、分子構造Xに、重合性基であるビニル基が結合している。式(14)に示す単量体は、分子構造Xに、重合性基であるメチレン基が結合している。
重合体(B−1)の重合時には、重合開始剤として、過酸化水素と金属塩との混合物、アゾ化合物および有機過酸化物から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
アゾ化合物は、例えば、2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル、4,4'−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2'−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]水和物、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二硫酸塩二水和物、1,1'−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)である。重合開始剤として2種以上のアゾ化合物を用いてもよい。
これらのアゾ化合物のうち、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2'−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル、2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩が好ましい。
有機過酸化物は、例えば、ベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,1'−ジ−t−ブチルペルオキシ−3,3,5−トリメチレンシクロヘキサン、1,3−ジ−(t−ブチルペルオキシ)−ジイソプロピルベンゼン、ジ−t−ブチルペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシピバレート、t−アミルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルヒドロペルオキシドである。重合開始剤として2種以上の有機過酸化物を用いてもよい。
これらの有機過酸化物のうち、t−ブチルヒドロペルオキシド、t−アミルペルオキシ−2−エチルヘキサノエートが好ましく、t−アミルペルオキシ−2−エチルヘキサノエートが特に好ましい。
重合体(B−1)の重合系における重合開始剤の濃度は、重合する単量体の種類、濃度に応じて調整すればよく特に限定されないが、例えば、単量体100重量部に対して0.001重量部〜3重量部であり、0.005重量部〜2重量部が好ましい。
重合系には、必要に応じ、連鎖移動剤、pH調整剤、緩衝材などを添加できる。
重合溶媒は特に限定されず、例えば、ケトン含有溶媒(アセトンとトルエンとの混合溶媒など)、エステル系溶媒(酢酸エチル、酢酸ブチルなど)およびこれらの混合溶媒である。水溶性の重合体(B−1)を重合する場合には、水あるいは低級アルコール(メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ジエチレングリコールなど)を重合溶媒として用いてもよい。
重合温度は、重合する単量体の種類に応じて調整すればよく特に限定されないが、例えば40℃〜100℃であり、50℃〜95℃が好ましく、60℃〜90℃がより好ましい。
樹脂(A)における重合体(B−1)と重合体(B−2)との混合比は、各重合体の固有複屈折の絶対値、あるいは位相差フィルム(XA)として望まれる逆波長分散性の程度などに応じて異なるために一概に述べることができないが、例えば重量比にして、(B−1):(B−2)=1:99〜99:1の範囲であり、(B−1):(B−2)=10:90〜90:10の範囲が好ましく、(B−1):(B−2)=20:80〜80:20の範囲がより好ましい。この範囲において逆波長分散性の制御の自由度を向上でき、用途に応じた良好な逆波長分散性を有する位相差フィルム(XA)とすることができる。
本形態における樹脂(A)は、2種以上の重合体(B−1)あるいは2種以上の重合体(B−2)を含んでもよい。
重合体(B−2)が(メタ)アクリル重合体である場合、樹脂(A)における(メタ)アクリル重合体の含有率の合計は、50重量%以上であることが好ましい。
本形態における樹脂(A)は、逆波長分散性を示す位相差フィルム(XA)が得られる限り、重合体(B−1)、(B−2)以外の任意の重合体を含んでもよい。
構成単位Yは、その種類によっては非常に強い吸湿性を示す。このため樹脂(A)は、重合体(B−1)が有する構成単位Yの種類、重合体(B−1)における構成単位Yの含有率、および樹脂(A)における重合体(B−1)の含有率によっては、単独で層を形成しづらいことがある。この場合、樹脂(A)は、構成単位Yを有する重合体(B−1)のバインダーとなる重合体(バインダー重合体)を含んでもよい。なお、バインダー重合体は、固有複屈折が0に近い、即ち、延伸によってほとんど複屈折を示さない重合体が好ましく、この場合、位相差フィルム(XA)の光学特性の制御が容易となる。
樹脂(A)がバインダー重合体を含む場合、樹脂(A)における重合体(B−1)とバインダー重合体との混合比は、例えば重量比にして、(B−1):バインダー重合体=10:90〜70:30の範囲であり、(B−1):バインダー重合体=20:80〜60:40の範囲が好ましい。
樹脂(A)に含まれる重合体の含有率ならびに重合体における構成単位の含有率は、公知の手法、例えば1H核磁気共鳴(1H−NMR)または赤外線分光分析(IR)により求めることができる。
位相差フィルム(XA)は、必要に応じ、層2以外の任意の層を有してもよい。
位相差フィルム(XA)の製造方法は特に限定されず、公知の手法に従えばよい。例えば、重合体(B−1)および(B−2)を含む樹脂(A)をフィルムに成形し、得られたフィルムを所定の方向に延伸(典型的には逐次二軸延伸)することで、樹脂(A)が含む重合体の分子鎖を配向させて層2を形成し、位相差フィルム(XA)とすればよい。
樹脂(A)は、キャスト法、溶融成形法(例えば溶融押出成形、プレス成形)などの公知の手法により、フィルムに成形できる。
(位相差フィルムの形態B)
本形態の位相差フィルム(XB)は、構成単位Yを有する重合体(B−1)を含む樹脂(A)からなる。本形態における重合体(B−1)は、当該重合体に負の固有複屈折を与える作用を有する構成単位として構成単位Yを有するとともに、当該重合体に正の固有複屈折を与える作用を有する構成単位Zをさらに有する。本形態における重合体(B−1)を、以下、重合体(B−3)と記載する。
重合体(B−3)に配向が加えられると、構成単位YおよびZの各々に由来して生じた複屈折が互いに打ち消しあう。ここで、複屈折が打ち消しあう程度が波長によって異なるために、複屈折、例えば位相差、の逆波長分散性が生じる。
位相差フィルム(XB)は、単層でありながら逆波長分散性を示す。このため、薄膜化しながら望む光学特性を得ることができ、位相差フィルム(XB)を備える画像表示装置のさらなる小型化、軽量化などの実現が可能となる。また、位相差フィルム(XB)は、複数の層の積層により逆波長分散性を実現した位相差フィルムに比べて、各層の接合角度の調整が不要であるため生産性が高い。
重合体(B−3)の配向に着目すると、位相差フィルム(XB)は、重合体(B−3)を含む樹脂(A)に配向を与えて形成した部材である。樹脂(A)に配向を与えるにはフィルムに成形した樹脂(A)を延伸すればよい。
重合体(B−3)は、構成単位YおよびZを有する限り特に限定されない。
構成単位Zは、重合体(B−3)に正の固有複屈折を与える作用を有する限り特に限定されない。構成単位Zは、例えば、(メタ)アクリル酸エステル単位、(メタ)アクリル酸エステル単位の誘導体である環構造、およびシクロオレフィン単位から選ばれる少なくとも1種である。構成単位Zは、(メタ)アクリル酸エステル単位および当該単位の誘導体である環構造から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、この場合、位相差フィルム(XB)における逆波長分散性の制御の自由度が向上する。
構成単位Yは、重合体(B−3)における複屈折の波長分散性を増大させる強い作用を有する。これに対して、(メタ)アクリル酸エステル単位および当該単位の誘導体である環構造は、重合体(B−3)における複屈折の波長分散性を増大させる作用はそれほど強くない。このように、重合体(B−3)の波長分散性を増大させる程度が異なる構成単位を組み合わせることにより、逆波長分散性の制御の自由度が向上する。
なお、特開2001−235622号公報に開示されている分子鎖の組み合わせでは、両者の波長分散性の差はそれほど大きくないため、構成単位Yを有する重合体(B−3)を用いた本発明に係る位相差フィルム(X)のような効果を得ることができない。
環構造は、例えば、位相差フィルムの形態Aにおいて重合体(B−2)を説明するために例示した環構造である。この例示した環構造を、以下、単に「環構造」という。
重合体(B−3)における(メタ)アクリル酸エステル単位および環構造の含有率の合計が50重量%以上である場合、重合体(B−3)は(メタ)アクリル重合体となる。このとき、光学特性ならびに機械的強度、成形加工性および表面硬度などの諸特性に優れる位相差フィルム(XB)となる。
重合体(B−3)は、構成単位Zとして、(メタ)アクリル酸エステル単位および環構造の双方を有することが好ましい。即ち、重合体(B−3)は、主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル重合体であることが好ましい。環構造を含む構成単位は、当該単位を有する重合体(B−3)に対して、その配向時に大きな正の固有複屈折を与える作用を有する。このため、構成単位Yとの組み合わせによって、位相差フィルム(XB)における逆波長分散性の制御の自由度が向上する。
また、重合体(B−3)が主鎖に環構造を有することにより、重合体(B−3)および当該重合体を含む樹脂(A)のTgが上昇し、高耐熱性の位相差フィルム(XB)となる。
主鎖に環構造を有する重合体(B−3)および当該重合体を含む樹脂(A)のTgは、例えば110℃以上である。環構造の種類、重合体(B−3)における環構造の含有率ならびに樹脂(A)における重合体(B−3)の含有率によっては、当該Tgは、115℃以上、120℃以上、さらには130℃以上となる。
環構造は、位相差フィルムの形態Aで説明したように、ラクトン環構造およびグルタルイミド構造から選ばれる少なくとも1種が好ましく、ラクトン環構造がより好ましい。これらの環構造は、重合体(B−3)に正の固有複屈折を与える作用を有するが、その波長分散性が非常に小さい。このため、構成単位Yとの組み合わせによって、位相差フィルム(XB)の逆波長分散性の制御の自由度がさらに向上する。
構成単位Yは特に限定されないが、式(4)に示される単位または不飽和単量体単位が好ましい。換言すれば、重合体(B−3)が、当該重合体に負の固有複屈折を与える作用を有する構成単位として、式(4)に示される単位または不飽和単量体単位を有することが好ましい。
重合体(B−3)は、構成単位YおよびZが主鎖にランダムに配置されたランダム共重合体であってもよいし、構成単位Yからなるブロックと構成単位Zからなるブロックとが存在するブロック共重合体であってもよい。また、構成単位YおよびZから選ばれる一方の構成単位(例えば構成単位Y)を有する主鎖に、他方の構成単位(例えば構成単位Z)を有する側鎖が結合したグラフト共重合体であってもよい。
重合体(B−3)は、2種以上の構成単位Yを有してもよい。
重合体(B−3)は、逆波長分散性を示す位相差フィルム(XB)が得られる限り、構成単位YおよびZ以外の任意の構成単位を有してもよい。
重合体(B−3)は、公知の方法により製造できる。
重合体(B−3)における構成単位YおよびZの含有率の比は、重合体(B−3)の固有複屈折に対して各構成単位が作用する程度、あるいは位相差フィルム(XB)として望まれる逆波長分散性の程度などに応じて異なるために一概に述べることができないが、例えば重量比にして、構成単位Y:構成単位Z=1:99〜38:62の範囲である。この範囲において、逆波長分散性の制御の自由度を向上でき、用途に応じた良好な波長分散性を有する位相差フィルム(XB)が得られる。
樹脂(A)における重合体(B−3)の含有率は特に限定されないが、本発明の効果が確実に得られることから、通常50重量%以上であり、60重量%以上が好ましく、70重量%以上がより好ましい。
本形態における樹脂(A)は、2種以上の重合体(B−3)を含んでもよい。
位相差フィルム(XB)は、必要に応じ、層12以外の任意の層を有してもよい。
位相差フィルム(XB)の製造方法は特に限定されず、公知の手法に従えばよい。例えば、重合体(B−3)を含む樹脂(A)をフィルムに成形し、得られたフィルムを所定の方向に延伸(典型的には逐次二軸延伸)することで、樹脂(A)が含む重合体の分子鎖を配向させて層12を形成し、位相差フィルム(XB)とすればよい。
樹脂(A)は、キャスト法、溶融成形法(例えば溶融押出成形、プレス成形)などの公知の手法により、フィルムに成形できる。
(位相差フィルムの形態C)
本形態の位相差フィルム(XC)は、2つの層(層31および層32)が積層された構造を有する。層31は構成単位Yを有する重合体(B−1)を含む樹脂(A)からなり、樹脂(A)の固有複屈折は負である。層32は、正の固有複屈折を有する樹脂(C)からなる。
位相差フィルム(XC)は、固有複屈折の符号が互いに異なる2種類の層(層31および層32)が積層された構造を有するが、このような積層構造では、入射した光に対する両層の複屈折が互いに打ち消しあう現象が生じる。ここで、複屈折が打ち消しあう程度が波長によって異なるために、位相差フィルム(XC)は逆波長分散性を示す。
また、位相差フィルム(XC)では、層31および層32が各々独立して配置されており、固有複屈折の符号が互いに異なる重合体間の相容性、あるいは重合体に与える固有複屈折の符号が互いに異なる構成単位間の相溶性を考慮する必要がないため、それぞれの層がとりうる組成範囲が広い。これにより、逆波長分散性の制御の自由度をはじめとする光学的な設計の自由度が高い光学部材となる。
層31、層32では、当該層に含まれる重合体の配向により複屈折が生じる。この観点からは、層31は、樹脂(A)に配向を与えて形成した層であり、層32は、樹脂(C)に配向を与えて形成した層である。樹脂(A)、(C)に配向を与えるには、フィルムに成形した樹脂(A)、(C)を延伸すればよい。
樹脂(C)は、正の固有複屈折を有する限り特に限定されず、例えば正の固有複屈折を有する重合体を含めばよい。正の固有複屈折を有する重合体の一例は、上述した重合体(B−2)である。
重合体(B−2)は(メタ)アクリル重合体であることが好ましく、この場合、位相差フィルム(XC)における逆波長分散性の制御の自由度が向上する。層31は、構成単位Yを有する重合体(B−1)を含む樹脂(A)からなるが、このような層が示す複屈折の波長分散性は、(メタ)アクリル重合体である重合体(B−2)を含む樹脂(C)からなる層32が示す複屈折の波長分散性に比べてかなり大きい。このように、複屈折の波長分散性が大きく異なる2種類の独立した層を組み合わせることで、位相差フィルム(XC)における逆波長分散性の制御の自由度が向上する。
なお、特開2001−337222号公報に例示されている樹脂の組み合わせに基づいて層31、層32を形成したとしても(例えば、層32をポリノルボルネンにより形成し、層31をスチレン系重合体により形成したとしても)、それぞれの層が示す複屈折の波長分散性の差がそれほど大きくないために、(メタ)アクリル重合体である重合体(B−2)を含む樹脂(C)からなる層32と、重合体(B−1)を含む樹脂(A)からなる層31とを組み合わせたときのような効果を得ることができない。
重合体(B−2)は、主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル重合体であることが好ましい。重合体(B−2)が主鎖に環構造を有することにより、層32の固有複屈折の絶対値が大きくなる。このため、層31との組み合わせによって、位相差フィルム(XC)における逆波長分散性の制御の自由度が向上する。
また、位相差フィルムの形態Aで説明したように、重合体(B−2)が主鎖に環構造を有することによって、重合体(B−2)および当該重合体を含む樹脂(C)のTgが上昇し、層32および位相差フィルム(XC)の耐熱性が向上する。環構造によってTgが高くなる程度は、上述したとおりである。
環構造は、位相差フィルムの形態Aで説明したように、ラクトン環構造およびグルタルイミド構造から選ばれる少なくとも1種が好ましく、ラクトン環構造がより好ましい。これらの環構造は、重合体(B−2)に正の固有複屈折を与える作用を有するが、その波長分散性が非常に小さい。このため、重合体(B−1)を含む層31との組み合わせにより、位相差フィルム(XC)の逆波長分散性の制御の自由度がさらに向上する。
重合体(B−2)のその他の好ましい条件は、位相差フィルムの形態Aにおいて説明した重合体(B−2)の好ましい条件と同じである。
重合体(B−2)を含む樹脂(C)は、正の固有複屈折を有する限り、重合体(B−2)以外の重合体を含んでもよい。
本形態における重合体(B−1)は、位相差フィルムの形態Aにおいて説明した重合体(B−1)と同様である。
本形態における樹脂(A)は、構成単位Yを有する重合体(B−1)を含み、負の固有複屈折を有する限り特に限定されず、例えば重合体(B−1)以外の重合体を含んでもよい。
なお、構成単位Yは、その種類によっては非常に強い吸湿性を示す。このため重合体(B−1)は、当該重合体が有する構成単位Yの種類、および当該重合体における構成単位Yの含有率によっては、単独で層を形成しづらいことがある。この場合、樹脂(A)は、重合体(B−1)のバインダ−となる重合体(バインダー重合体)を含んでもよい。バインダー重合体は、固有複屈折が0に近い、即ち、延伸によって複屈折を示さない重合体が好ましく、この場合、層31の光学特性の制御が容易となる。
位相差フィルム(XC)の形成方法は特に限定されない。形成方法の一例は、個別に作成した層31および層32を互いに接合する方法である。例えば、重合体(B−1)を含む樹脂(A)をフィルムとし、得られたフィルムを所定の方向に延伸(典型的には一軸延伸または逐次二軸延伸)することで、樹脂(A)が含む重合体の分子鎖を配向させて層31を形成する。これとは別に、重合体(B−2)を含む樹脂(C)をフィルムとし、得られたフィルムを所定の方向に延伸することで、樹脂(C)が含む重合体の分子鎖を配向させて層32を形成する。次に、形成した双方の層を積層して、図3に示す位相差フィルム(XC)を形成できる。層31と層32との接合は公知の手法に従えばよく、双方の層は、アクリル系接着剤などにより互いに接着してもよい。樹脂(A)、(C)は、キャスト法、溶融成形法(例えば溶融押出成形、プレス成形)などの公知の手法により、フィルムに成形できる。
形成方法の別の一例は、層31の前駆体となる延伸前のフィルム(未延伸フィルムあるいは暫定的に延伸を加えたフィルム)と、層32の前駆体となる延伸前のフィルムとの積層体を所定の方向に延伸する方法である。当該延伸によって、それぞれの前駆体に含まれる重合体(B−1)、(B−2)の分子鎖が配向し、層31と層32との積層体である位相差フィルム(XC)となる。前駆体の積層体は、例えば、樹脂(A)からなるフィルムと樹脂(C)からなるフィルムとの積層によって形成してもよいし、樹脂(A)と樹脂(C)とを共押出成形することで形成してもよい。また、層31または層32の一方の層の前駆体であるフィルムに、他方の層の前駆体となる樹脂が溶解した溶液を塗布し、塗布膜を乾燥させて形成してもよい。具体的な例として、(メタ)アクリル重合体、シクロオレフィン重合体またはセルロース誘導体からなるベースフィルム上に、構成単位Yを有する重合体(B−1)を含む溶液を塗布した後に全体を乾燥させ、得られた積層体を所定の方向に延伸する方法がある。
層31、層32の積層状態(例えば、層31、層32の積層パターンあるいは位相差フィルム(XC)の表面に垂直な方向から見た、層31の配向軸と層32の配向軸とがなす角度など)は特に限定されず、光学的な設計事項に合わせて適宜選択できる。なお、層31、層32を、それぞれの延伸方向がほぼ一致するように積層した場合に、位相差フィルム(XC)が示す逆波長分散性が最も強くなる。
位相差フィルム(XC)が有する層31、層32の数は特に限定されない。また、層31と層32とは接していてもいなくてもよい。
位相差フィルム(XC)は、必要に応じ、層31、層32以外の層を有していてもよい。
(位相差フィルムの形態D)
本形態の位相差フィルム(XD)は、分子構造Xにより変性された構成単位を有する重合体(B−4)を含む樹脂(A)からなる。
重合体(B−4)に配向が加えられると、分子構造Xにより変性される程度が構成単位間で異なるために、各々の構成単位に由来して生じた複屈折が互いに打ち消しあう。ここで、複屈折が打ち消しあう程度が波長によって異なるために、複屈折、例えば位相差、の波長分散性が生じる。
重合体(B−4)は公知の手法により形成できる。例えば、変性の対象である構成単位と結合可能な結合基を分子構造Xに結合させた化合物を、当該構成単位を有する重合体と反応させればよい。重合体がTACなどのセルロース誘導体である場合、当該結合基は、例えば水酸基である。分子構造Xが式(1)に示される構造である場合、前記化合物は、例えば5−オキソピロリジン−2−カルボン酸の酸塩化物である。酸塩化物の形成には、塩化チオニルを使用できる。
位相差フィルム(XD)は、必要に応じ、層32以外の層を有していてもよい。
位相差フィルム(XD)の製造方法は特に限定されず、公知の手法に従えばよい。例えば、重合体(B−4)を含む樹脂(A)をフィルムとし、得られたフィルムを所定の方向に延伸(典型的には一軸延伸または逐次二軸延伸)することで、樹脂(A)が含む重合体の分子鎖を配向させて層32を形成し、位相差フィルム(XD)とすればよい。
樹脂(A)は、キャスト法、溶融成形法(例えば溶融押出成形、プレス成形)などの公知の手法により、フィルムに成形できる。
[位相差フィルム(Y)]
以下、本発明に係る位相差フィルム(Y)の具体例について説明する。本発明の液晶表示装置は、少なくとも2枚の位相差フィルムを備えており、その1枚が前記位相差フィルム(X)、もう1枚が位相差フィルム(Y)である。
位相差フィルム(Y)は、面内位相差Reが10nm以下、厚み方向位相差Rthが120nm〜400nmであり、光学的に法線方向に一軸性を有する位相差フィルムである
位相差フィルム(Y)は、面内位相差Reが10nm以下、厚み方向位相差Rthが120nm〜400nmであり、より好ましくは面内位相差Reが5nm以下、厚み方向位相差Rthが150nm〜300nmである。面内位相差Reと厚み方向位相差Rthが前記の値をとることにより、特にVAモードの液晶表示装置において画質が向上する。
位相差フィルム(Y)は、光学的に法線方向に一軸性を有する。言い換えれば、フィルムの3種類の屈折率(nx、ny、nz)の内、nxとnyがほぼ同一でnzが異なる(nx≒ny≠nz)。位相差フィルム(Y)は、光学的に法線方向に負の一軸性を有することが好ましい。すなわち、nxとnyがほぼ同一であり、且つnzがnxとnyより小さいという関係(nx≒ny>nz)を満たすことである。光学的に法線方向に負の一軸性を有するフィルムはネガティブCフィルムとも呼ばれる。
位相差フィルム(Y)は、公知の熱可塑性樹脂(D)からなることが好ましい。例えば、トリアセチルセルロースなどのセルロース系、ポリカーボネート、環状ポリオレフィン、(メタ)アクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリナフタレンテレフタレート、あるいは、これらの樹脂に液晶性化合物を積層したもの等が挙げられる。光学特性や偏光板のカールが抑制できる点から、(メタ)アクリル系樹脂が好ましい。また、(メタ)アクリル系樹脂の中でも、逐次二軸延伸や同時二軸延伸により光学的に法線方向に負の一軸性を有するフィルムが得られる正の固有複屈折性を有することから主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂が特に好ましい。
(メタ)アクリル樹脂が主鎖に有する環構造は、例えば、エステル基、イミド基または酸無水物基を有する環構造である。より具体的な環構造の例は、ラクトン環構造、グルタルイミド構造、無水グルタル酸構造およびN−置換マレイミドや無水マレイン酸由来の構造から選ばれる少なくとも1種である。その中でも光学特性と耐熱性からは、ラクトン環構造およびグルタルイミド構造から選ばれる少なくとも1種が好ましく、ラクトン環構造がより好ましい。具体的なラクトン環構造は特に限定されないが、前記の式(8)により示される構造である。
本発明に係る位相差フィルム(Y)は、ガラス転移温度(Tg)が110℃〜200℃であることが好ましい。より好ましくは115℃〜200℃、さらに好ましくは120℃〜200℃、特に好ましくは125℃〜190℃、最も好ましくは130℃〜180℃である。110℃未満であると、厳しくなる使用環境に対して耐熱性が不足し、フィルムが変形して位相差のムラが発生しやすくなることがあるため好ましくない。また、200℃を超えると、超高耐熱性のフィルムとなるが、前記フィルムを得るための成形加工性が悪かったり、フィルムの可撓性が大きく低下する場合があるため好ましくない。
本発明に係る位相差フィルム(Y)は、全光線透過率が85%以上であることが好ましい。より好ましくは90%以上、さらに好ましくは91%である。全光線透過率は、透明性の目安であり、85%未満であると透明性が低下し、位相差フィルム(Y)として適さない。
本発明に係る位相差フィルム(Y)は、ヘイズが5%以下であることが好ましい。より好ましくは3%以下、さらに好ましくは1%以下である。ヘイズが5%を超えると透明性が低下し、位相差フィルム(Y)として適さない。
本発明に係る位相差フィルム(Y)は、外観欠点が少ないことが好ましい。外観欠点は、樹脂などの原料由来や製造工程で混入する異物、成形時の気泡や成形時のダイやロール部分でのダイラインやキズなどに起因し、ポリマーフィルタなどによる原料のろ過、製造工程のクリーン化、成形条件の最適化などによる対策が考えられる。前記位相差フィルム(Y)中の欠点の数は、具体的には、粒子径が20μm以上の欠点が1000個/m以下であることが好ましく、500個/m以下であることがより好ましく、200個/m以下であることがさらに好ましく、理想的には0個/mである。
本発明に係る位相差フィルム(Y)は、公知の添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤;酸化防止剤;位相差上昇剤、位相差低減剤などの位相差調整剤;耐光安定剤、耐候安定剤、位相差安定剤、熱安定剤などの安定剤;ガラス繊維、炭素繊維などの補強材;近赤外線吸収剤;トリス(ジブロモプロピル)ホスフェート、トリアリルホスフェート、酸化アンチモンなどの難燃剤;アニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤に代表される帯電防止剤;無機顔料、有機顔料、染料などの着色剤;有機フィラー、無機フィラー;樹脂改質剤;アンチブロッキング剤;マット剤;酸補足剤;金属不活性化剤;可塑剤;滑剤;難燃剤などである。添加剤の添加量は、例えば0.01〜20%であり、好ましくは0.1〜5%であり、より好ましくは0.1〜2%である。
本発明に係る位相差フィルム(Y)は、前記樹脂(D)以外のその他の熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。これらのその他の熱可塑性樹脂は、特に種類は問わないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン重合体、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)等のオレフィン系ポリマー;塩化ビニル、塩素化ビニル樹脂等の含ハロゲン系ポリマー;ポリメタクリル酸メチル等のアクリルポリマー;ポリスチレン、スチレン−メタクリル酸メチル重合体、スチレン−アクリロニトリル重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンブロック重合体等のスチレン系樹脂、すなわち、芳香族ビニル系単量体由来の構造単位を含む樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610等のポリアミド;ポリアセタール:ポリカーボネート;ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド:ポリエーテルエーテルケトン;ポリサルホン;ポリエーテルサルホン:ポリオキシペンジレン;ポリアミドイミド;ポリブタジエン系ゴム、アクリルゴムを配合したABSやASA等のゴム質重合体;などが挙げられる。
その他の熱可塑性樹脂は、前記樹脂(D)と熱力学的に相溶する樹脂の方が、透明性や機械強度を向上させる点において好ましい。熱力学的に相溶する樹脂としては例えば、シアン化ビニル系単量体単位と芳香族ビニル系単量体単位とを含む共重合体やポリ塩化ビニル樹脂、メタクリル酸エステル類を50重量%以上含有する重合体を用いるとよい。なお、前記樹脂(D)とその他の熱可塑性樹脂とが熱力学的に相溶することは、これらを混合して得られた位相差フィルムのガラス転移点を測定することによって確認することができる。具体的には、示差走査熱量測定器により測定されるガラス転移点が主鎖に環構造を有する熱可塑性熱可塑性アクリル系重合体とその他の熱可塑性樹脂との混合物について1点のみ観測されることによって、熱力学的に相溶していると言える。
その他の熱可塑性樹脂がゴム質重合体を含む場合、フィルムの耐折り曲げ性の向上が期待できる。ゴム質量体を含む場合、位相差フィルム中のゴム質重合体の含有割合は、好ましくは30%未満、より好ましくは20%以下、さらに好ましくは15%以下、特に好ましくは10%以下である。ゴム質重合体としては、シアン化ビニル系単量体単位体と芳香族ビニル系単量体単位とを含む樹脂であるABSやASAが好ましい。ABSやASAは主鎖に環構造を有する熱可塑性アクリル系樹脂と相溶し得る組成のグラフト部を有しているため、ゴム質量体が位相差フィルム中に均一に分散することが可能となる。また、ゴム質重合体の平均粒子径は、フィルムとした際の透明性向上の観点から、300nm以下である事が好ましく、150nm以下である事が更に好ましい。
本発明に係る位相差フィルム(Y)を成形する方法は特に限定されず、公知の手法に従えばよい。フィルム成形の方法としては、溶液キャスト法(溶液流延法)、溶融押出法、カレンダー法、圧縮成形法など、公知のフィルム成形方法が挙げられる。これらの中でも、溶液キャスト法(溶液流延法)、溶融押出法が好ましい。
溶液キャスト法(溶液流延法)に用いられる溶媒としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタンなどの塩素系溶媒;トルエン、キシレン、ベンゼン、およびこれらの混合溶媒などの芳香族系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−ブタノールなどのアルコール系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルフォキシド、ジオキサン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、アセトン、酢酸エチル、ジエチルエーテル;などが挙げられる。これら溶媒は1種のみ用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
溶液キャスト法(溶液流延法)を行うための装置としては、例えば、ドラム式キャスティングマシン、バンド式キャスティングマシン、スピンコーターなどが挙げられる。
溶融押出法としては、Tダイ法、インフレーション法などが挙げられ、その際の、フィルムの成形温度は、好ましくは150〜350℃、より好ましくは200〜300℃である。
本発明に係る位相差フィルム(Y)を得るための延伸方法としては、位相差フィルム(Y)に光学的に法線方向に一軸性を付与できる限り、従来公知の延伸方法が適用できる。必要な面内位相差Reと厚さ方向位相差Rthを発現させるという面からは、逐次二軸延伸や同時二軸延伸が好ましい。なお、所望の位相差、所望の耐折れ曲げ性に応じて、延伸倍率、延伸温度、延伸速度等の延伸条件を適宜設定すればよく、特に限定はされない。
延伸等を行う装置としては、例えば、ロール延伸機、テンター型延伸機、オーブン延伸機、小型の実験用延伸装置として引張試験機、一軸延伸機、逐次二軸延伸機等が挙げられ、これら何れの装置を用いても、本発明に係る位相差フィルム(X)を得ることができる。
延伸温度としては、フィルム原料の重合体、若しくは延伸前のフィルムのガラス転移温度近辺で行うことが好ましい。具体的には、(ガラス転移温度−30)℃〜(ガラス転移温度+50)℃で行うことが好ましく、より好ましくは(ガラス転移温度−20)℃〜(ガラス転移温度+20)℃、さらに好ましくは(ガラス転移温度−10)℃〜(ガラス転移温度+10)℃である。(ガラス転移温度−30)℃よりも低いと、十分な延伸倍率が得られないために好ましくない。(ガラス転移温度+50)℃よりも高いと、樹脂の流動(フロー)が起こり安定な延伸が行えなくなるために好ましくない。
面積比で定義した延伸倍率は、好ましくは1.1〜25倍の範囲、より好ましくは1.2〜10倍の範囲、さらに好ましくは1.3〜5倍の範囲で行われる。1.1倍よりも小さいと、延伸に伴う位相差性能の発現や靭性の向上につながらないために好ましくない。25倍よりも大きいと、延伸倍率を上げるだけの効果が認められない。
ある方向に延伸する場合、その一方向に対する延伸倍率は、好ましくは1.05〜10倍の範囲、より好ましくは1.1〜5倍の範囲、さらに好ましくは1.2〜3倍の範囲で行われる。1.05倍よりも小さいと、所望の位相差が得られない場合があり好ましくない。10倍よりも大きいと、延伸倍率を上げるだけの効果が認められず、また延伸中にフィルムの破断が起こる場合があり好ましくない。
延伸速度(一方向)としては、好ましくは10〜20000%/分の範囲、より好ましくは100〜10000%/分の範囲である。10%/分よりも遅いと、十分な延伸倍率を得るために時間がかかり、製造コストが高くなるために好ましくない。20000%/分よりも早いと、延伸フィルムの破断等が起こるおそれがあるために好ましくない。
本発明に係る位相差フィルム(Y)は偏光子保護フィルムとして使用することも可能である。その場合、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂の接着剤、紫外線や電子線などの活性エネルギー線で硬化する接着剤やアクリル系、シリコン系、ゴム系等の粘着剤など公知の接着剤層を介して偏光子と接着されることが好ましい。前記の接着剤を用いて接着する方法は、特に限定されず、例えば、キスコート、スピンコート、ロールコート、ディップコート、カーテンコート、バーコート、ドクターブレードコート、ナイフコート、エアナイフコート、ダイコート、グラビアコート、マイクログラビアコート、オフセットグラビアコート、リップコート、スプレーコート、コンマコートなどの各種の方法を用い、偏光フィルム及び/又は接合されるフィルムの接着面に接着剤を塗布し、両者を重ね合わせる方法などが可能である。接着剤を塗布した後、偏光フィルムとそれに接合されるフィルムをニップロールなどにより挟んで、貼り合わせる。貼り合せる場合は、前記位相差フィルム(Y)の光軸と偏光子の吸収軸を直交または平行に配置することが好ましい。
本発明に係る位相差フィルム(Y)は、偏光子と接する面に接着性向上のために易接着処理を施すことができる。易接着処理としては、プラズマ処理、コロナ処理、紫外線照射処理、フレーム(火炎)処理、ケン化処理やアンカー層を形成する方法が挙げられ、これらを併用することもできる。これらの中でも、コロナ処理、アンカー層を形成する方法、およびこれらを併用する方法が好ましい。アンカー層としては、特に限定されず、公知のアンカー層が使用され、アクリル系、セルロース系、ポリウレタン系、シリコーン系、ポリエステル系、ポリエチレンイミン系や分子中にアミノ基を含んだポリマー等が使用される。これらのアンカー層は、単独で用いても2種以上を併用・積層してもよい。
アンカー層の厚さは、乾燥・硬化または乾燥後の厚さで、例えば、好ましくは0.01〜10μm、より好ましくは0.05〜3μm、さらに好ましくは0.1〜1μmである。アンカー層の厚さが0.01μm未満であると、偏光子とフィルムとの接着強度が不充分になることがある。逆に、アンカー層の厚さが10μmを超えると、耐水性または耐湿性試験において、偏光板の色抜けや変色が起こりやすくなることがある。
本発明に係る位相差フィルム(Y)の偏光子と対向する面にアンカー層コーティング組成物を塗布する方法は、バーコーター、ロールコーター、グラビアコーターなどを用いた通常のコーティング技術を採用すればよく、特に限定されるものではない。また、塗布したアンカー層コーティング組成物を乾燥させる方法や条件は、特に限定されるものではないが、例えば、熱風乾燥機や赤外線乾燥機を用いて、好ましくは50〜130℃、より好ましくは75〜110℃の温度で、乾燥させればよい。また、アンカー層コーティング組成物のウレタン結合生成反応および/または硬化に関して、養生工程を設けても何ら問題ない。養生工程が必要な場合、養生温度は、例えば、好ましくは20〜100℃、より好ましくは20〜50℃であるが、前記組成物の乾燥に使用した熱である程度は進行し、接着剤を用いた偏光子と位相差フィルム(Y)との接着工程でさらに進行するので、常温養生でも充分な物性が得られる。
なお、表面の濡れ張力を調整するために、アンカー層を設けたフィルムの前記アンカー層の表面には、後の接着工程の前に、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン吹き付け、紫外線照射、火炎処理、化学薬品処理、その他の従来公知の表面処理を施すことができる。
位相差フィルム(Y)は、最外層の少なくとも一方として粘着剤層を有していても良い。他の光学フィルムや液晶セル等の他部材と接着するための粘着剤層を設けることができる。粘着剤層を形成する粘着剤は、特に限定されないが、例えばアクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系やゴム系などのポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。
前記粘着剤層の付設は、適宜な方式で行いうる。その例としては、例えばトルエンや酢酸エチル等の適宜な溶剤の単独物又は混合物からなる溶媒にベースポリマーまたはその組成物を溶解又は分散させた10〜40重量%程度の粘着剤溶液を調製し、それを流延方式や塗工方式等の適宜な展開方式でフィルム上に直接付設する方式、あるいは前記に準じセパレータ上に粘着剤層を形成してそれをフィルム面に移着する方式などがあげられる
本発明に係る位相差フィルム(Y)は積層体であることも可能であり、前記した延伸の前後に積層させることもできる。積層方法としては共押出や粘・接着層を介した貼り合せなどの公知の方法が可能である。 本発明に係る位相差フィルム(Y)は、実施形態や用途に応じて、他の光学部材と組み合わせて用いてもよい。また、粘接着剤層、接着層、アンカー層、必要に応じて、紫外線遮蔽層、熱線遮蔽層、反射防止層、防眩(ノングレア)層、ハードコート層、帯電防止層、光触媒層などの防汚層、電磁波遮蔽層、ガスバリヤー性等の種々の機能性コーティング層を各々積層塗工したり、各々の単独の機能性コーティング層が塗工された部材を粘着剤や接着剤を介して積層させてもよい。なお、各層の積層順序は特に限定されるものではなく、積層方法も特に限定されない。
[液晶表示装置]
本発明の液晶表示装置は、少なくとも2枚の位相差フィルムを備える。図1は、液晶表示装置の画像表示面の概略断面図の一例である。液晶表示装置は、主な構成としては、液晶セル4(液晶層、ガラス基板、透明電極、配向膜、等を含む)と、液晶セル4を挟んで配置された偏光板9、10と、バックライト部8(光源、反射シート、導光板、拡散板、拡散シート、プリズムシート、輝度向上フィルム、等を含む)を備える。偏光板9、10は、偏光子2及び偏光子6と、偏光子を挟んで配置された偏光子保護フィルム1、3,5,7を備える。第1の偏光子(偏光子2)と第2の偏光子(偏光子6)は液晶セルの両側に配置され、偏光軸が互いに直交することが好ましい。
本発明の液晶表示装置において、本発明に係る少なくとも2枚の位相差フィルムは、液晶セルの両側に配置された偏光軸が互いに直交する第1の偏光子及び第2の偏光子の間、すなわち、図1における偏光子2及び偏光子6の間に位置することが好ましい。特に限定はされないが、液晶セル4と偏光板9の間および/または液晶セル4と偏光板10の間に位置することは好ましい形態のひとつである。さらには、本発明の液晶表示装置において、本発明に係る位相差フィルムを偏光子保護フィルムとして使用することが可能であり、その場合、偏光子保護フィルム3および/または5が本発明に係る位相差フィルムとなる。
液晶セル4と偏光板9の間および/または液晶セル4と偏光板10の間に本発明に係る位相差フィルムが位置する場合、具体的には、液晶セル4と偏光板9の間に位相差フィルム(X)が位置し、液晶セル4と偏光板10の間に位相差フィルム(Y)が位置することが可能である。また、液晶セル4と偏光板10の間に位相差フィルム(X)が位置し、液晶セル4と偏光板9の間に位相差フィルム(Y)が位置することも可能である。さらには、液晶セル4と偏光板9の間または液晶セル4と偏光板10の間のどちらか一方のみに位相差フィルム(X)と位相差フィルム(Y)の2枚ともが位置することも可能である。さらに、必要に応じて、偏光板9と偏光板10の間に、別の光学フィルムや光学補償層などを設置し組み合わせることが出来る。
本発明の液晶表示装置において、本発明に係る位相差フィルムを偏光子保護フィルムとして使用する場合、偏光子保護フィルム3および/または5が本発明に係る位相差フィルムであることは好ましい形態のひとつである。具体的には、偏光子保護フィルム3が位相差フィルム(X)であり、偏光子保護フィルム5が位相差フィルム(Y)でありことが可能である。逆に、偏光子保護フィルム5が位相差フィルム(X)であり、偏光子保護フィルム3が位相差フィルム(Y)でありことも可能である。また、偏光子保護フィルム3または5のいずれかが位相差フィルム(X)であり、液晶セル4と偏光板9の間または液晶セル4と偏光板10の間のどちらか一方に位相差フィルム(Y)が位置することも可能である。逆に、偏光子保護フィルム3または5が位相差フィルム(Y)であり、液晶セル4と偏光板9の間または液晶セル4と偏光板10の間のどちらか一方に位相差フィルム(Y)が位置することも考えられる。また、必要に応じて、偏光板9と偏光板10の間に、別の光学フィルムや光学補償層などを設置し組み合わせることが出来る。
本発明に係る位相差フィルム以外の偏光子保護フィルムとしては公知の樹脂を採用することが可能であり、例えばトリアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂、ポリカーボネートム、環状ポリオレフィン、(メタ)アクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリナフタレンテレフタレート、等が挙げられる。光学特性や偏光板のカールが抑制できる点から、(メタ)アクリル系樹脂が好ましい。
(メタ)アクリル系樹脂フィルムとしては、耐熱性からは主鎖に環構造を有する、(メタ)アクリル系樹脂フィルムが特に好ましい。(メタ)アクリル樹脂が主鎖に有する環構造は、例えば、エステル基、イミド基または酸無水物基を有する環構造である。より具体的な環構造の例は、ラクトン環構造、グルタルイミド構造、無水グルタル酸構造およびN−置換マレイミドや無水マレイン酸由来の構造から選ばれる少なくとも1種である。その中でも光学特性と耐熱性からは、ラクトン環構造およびグルタルイミド構造から選ばれる少なくとも1種が好ましく、ラクトン環構造がより好ましい。具体的なラクトン環構造は特に限定されないが、前記の式(8)により示される構造である。
偏光子保護フィルムには公知の機能性を付与することが可能である。例えば、偏光子保護フィルム1と7には紫外線吸収剤を含有させて紫外線吸収能を付与したり、最表面となる偏光子保護フィルム1にハードコート処理および/または反射防止、低反射処理など公知の防眩処理を行うこともできる。
本発明の液晶表示装置の具体例としては、特に限定されず、反射型、透過型、半透過型LCDあるいはTN型、STN型、OCB型、HAN型、VA型、IPS型等の各種駆動方式の液晶表示装置(LCD)で用いられ、また、エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ、プラズマディスプレイ(PD)、電界放出ディスプレイ(FED:Field Emission Display)の各種画像表示装置にも好ましく用いられる。この中で、VAモードの液晶表示装置であることが好ましく、本発明に係る位相差フィルムを備えることにより、特にコントラストが高く高品位の画像の表示が可能となる。
なお、発明を実施するための最良の形態の項においてなした具体的な実施態様および以下の実施例は、あくまでも、本発明の技術内容を明らかにするものであって、そのような具体例にのみ限定して狭義に解釈されるべきものではなく、当業者は、本発明の精神および添付の特許請求の範囲内で変更して実施することができる。
以下に、実施例および比較例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
以下、実施例により、本発明をより詳細に説明する。本発明は、以下に示す実施例に限定されない。
[重量平均分子量]
共重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、ポリスチレン換算により求めた。測定に用いた装置及び測定条件は以下の通りである。
システム:東ソー社製
カラム:TSK−GEL superHZM−M 6.0×150 2本直列
TSK−GEL superHZ−L 4.6×35 1本
リファレンスカラム:TSK−GEL superH−RC 6.0×150 2本直列
溶離液:クロロホルム 流量 0.6mL/分
カラム温度:40℃
[ガラス転移温度]
共重合体のガラス転移温度(Tg)は、JIS K7121に準拠して求めた。具体的には、示差操作熱量計(リガク社製、DSC−8230)を用い、窒素ガス雰囲気下、約10mgのサンプルを常温から200℃まで昇温(昇温速度20℃/分)して得られたDSC曲線から、始点法により評価した。リファレンスには、α−アルミナを用いた。
[面内位相差Re]
フィルムの測定波長589nmにおける面内位相差は、全自動複屈折計(王子計測機器社製、KOBRA−WR)を用いて評価した。
[厚さ方向の位相差Rth]
フィルムの測定波長589nmにおける厚さ方向の位相差は、全自動複屈折計(王子計測機器社製、KOBRA−WR)を用いて評価した。
[光弾性係数]
延伸フィルムの光弾性係数は、エリプソメーター(日本分光社製、M−150)を用いて評価した。
(製造例1)
攪拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管を備えた反応装置に、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)26重量部、メタクリル酸メチル(MMA)24.5重量部、メタクリル酸エチル(EMA)45重量部、ビニルカルバゾール4.5重量部、トルエン90重量部、メタノール重量部を仕込んだ。この反応容器に窒素ガスを導入しながら、95℃まで昇温し、還流開始したところで重合開始剤として、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(ルペロックス575、アルケマ吉富社製)0.01重量部を添加すると同時に、トルエン10重量部にt−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(ルペロックス575、アルケマ吉富社製)0.10重量部を溶解した溶液を8時間かけて滴下しながら、還流下、約90℃〜100℃で溶液重合を行い、さらに12時間加温し続けた。
得られた重合体溶液に、リン酸オクチル/ジオクチル混合物0.2重量部を添加し、80℃〜100℃の還流下で2時間環化縮合反応を行った。さらに、オートクレーブ中で240℃、90分間加熱した後、得られた重合体溶液を減圧下240℃で1時間乾燥し、主鎖にラクトン環構造を有する(メタ)アクリル重合体の透明な固体(A−1)を得た。重合体(A−1)の重量平均分子量は17万であり、ガラス転移温度は122℃であった。
(製造例2)
攪拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管を備えた反応装置に、MHMA15重量部、MMA35重量部、トルエン50重量部を仕込んだ。この反応容器に窒素ガスを導入しながら、105℃まで昇温し、還流開始したところで重合開始剤として、t−アミルパーオキシイソノナノエート(ルペロックス570、アルケマ吉富社製)0.03重量部を添加すると同時に、トルエン3.34重量部にt−アミルパーオキシイソノナノエート(ルペロックス570、アルケマ吉富社製)0.06重量部を溶解した溶液を3時間かけて滴下しながら、還流下、約105℃〜110℃で溶液重合を行い、さらに4時間加温し続けた。
得られた重合体溶液に、リン酸オクチル/ジオクチル混合物0.045重量部を添加し、80℃〜105℃の還流下で2時間環化縮合反応を行った。さらに、オートクレーブ中で240℃、90分間加熱した後、得られた重合体溶液を減圧下240℃で1時間乾燥し、主鎖にラクトン環構造を有する(メタ)アクリル重合体の透明な固体(D−1)を得た。重合体(D−1)の重量平均分子量は10万であり、ガラス転移温度は141℃であった。
(製造例3:偏光子の製造)
ケン化度99%、厚み75μmのポリビニルアルコール未延伸フィルムを室温の水で洗浄した後、縦一軸に5倍延伸を行った。このフィルムをヨウ素0.5重量%、ヨウ化カリウム5重量%からなる水溶液に浸漬し二色性色素を吸着させた。更に、ホウ酸10重量%とヨウ化カリウム10重量%からなる50℃の水溶液で5分間、架橋処理し偏光子を得た。
(製造例4:有機微粒子の製造)
冷却器と攪拌機とを備えた重合容器に、脱イオン水710重量部、ラウリル硫酸ナトリウム1.5重量部を投入して溶解し、内温を70℃に昇温した。そして、ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート(SFS)0.93重量部、硫酸第一鉄0.001重量部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(EDTA)0.003重量部、脱イオン水20重量部の混合液を上記重合容器中に一括投入し、重合容器内を窒素ガスで十分置換した。モノマー混合液(M−1)(アクリル酸ブチル(BA)7.1重量部、スチレン(St)2.9重量部、ジメタクリル酸1,4−ブタンジオール(BDMA)0.02重量部、メタクリル酸アリル(AMA)0.02重量部)と重合開始剤溶液(t−ブチルハイドロパーオキサイド(PBH)0.13重量部、脱イオン水10.0重量部)とを上記重合容器の中に一括添加し、60分間重合反応を行った。続いて、モノマー混合液(M−2)(BA63.9重量部、St25.2重量部、AMA0.9重量部)と重合開始剤溶液(PBH0.246重量部、脱イオン水20.0重量部)とを別々に90分間かけて連続滴下しながら重合を行った。滴下終了後さらに60分間重合を継続させた。これにより、有機微粒子のコア・シェル構造のコアとなる部分を得た。続いて、モノマー混合液(M−3)(St73.0重量部、アクリロニトリル(AN)27.0重量部)と重合開始剤溶液(PBH0.27部、脱イオン水20.0重量部)とを別々に100分間かけて連続滴下しながら重合を行い、滴下終了後内温を80℃に昇温して120分間重合を継続させた。次に内温が40℃になるまで冷却した後に300メッシュ金網を通過させて有機微粒子の乳化重合液を得た。得られた有機微粒子の乳化重合液を塩化カルシウムで塩析、凝固し、水洗、乾燥して、粉体状の有機微粒子(G1、平均粒子径0.105μm)を得た。なお、有機微粒子の平均粒子径の測定には、NICOMP社製粒度分布測定装置(SubmicronParticle Sizer NICOMP380)を用いた。
(実施例1)
(位相差フィルムX−1の調製)
製造例1で作製した重合体(A−1)を、プレス成形機により250℃でプレス成形して厚さ約120μmのフィルムとした。次に、作製したフィルムを、オーブン延伸装置により延伸倍率が2.2倍となるように延伸温度127℃で自由端一軸延伸して、厚さ80μmの延伸フィルム(X−1)を得た。得られた延伸フィルム(X−1)における面内位相差Reおよび、面内位相差Reの波長分散性を、全自動複屈折計(王子計測機器社製、KOBRA−WR)を用いて評価した。波長分散性の評価結果を以下の表1に示す。また、延伸フィルム(X−1)の光弾性係数は、−1.4×10−12/Paであった。なお、表1では、測定波長を589nmとしたときの位相差を基準(R0)として、その他の波長における位相差RとR0との比(R/R0)を併せて示す。
Figure 2011128397

Figure 2011128397
表1に示すように、延伸フィルム(X−1)は、光の波長が短くなるほど位相差が小さくなる逆波長分散性を示し、その変化は大きかった。
(位相差フィルムYの調製)
これとは別に、製造例2で作製した重合体(D−1)を、プレス成形機により250℃でプレス成形して厚さ約400μmのフィルムとした。次に、作製したフィルムを、オーブン延伸装置により、延伸倍率が2.0倍となるように延伸温度146℃で二軸延伸し、厚さ100μmの延伸フィルム(Y)を得た。得られた延伸フィルム(Y)における面内位相差Reおよび、厚み方向位相差Rthを、全自動複屈折計(王子計測機器社製、KOBRA−WR)を用いて評価した。波長分散性の評価結果を以下の表2に示す。
Figure 2011128397
(液晶表示素子の調製)
次に、製造例3で作製した偏光子の両面に、偏光子保護フィルムとして延伸フィルム(X−1)を、接着剤としてポリビニルアルコールの7.5重量%水溶液を用いて、ウェットラミネーションにより貼り合わせた。貼合した積層体を熱風乾燥機で60℃、10分間乾燥させて、偏光板(PX―1)を作成し、さらに、アクリル系粘着剤を塗布・乾燥した後、セパレータフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム)を貼り合わせて、セパレータ付き偏光板(PXS−1)を作成した。延伸フィルム(Y)についても同様にして貼り合わせ、セパレータ付き偏光板(PYS−1)を作成した。SONY製KDL−32V2000の液晶パネルの両面に予め貼合されていた二対の偏光板を剥がし、偏光板(PXS−1)のセパレータを剥離してから、吸収軸を予め貼合されていた偏光板の吸収軸と同じ方向になるよう貼合し、偏光板(PYS−1)についても同様にセパレータを剥離してから、液晶パネルに貼合し、VAモード液晶表示装置を作製した。作製した表示装置を黒表示させ、方位角45°から目視にて光漏れを確認したところ、黒く表示されていることを確認した。
(実施例2)
(位相差フィルムX−2の調製)
製造例1で作製した重合体(A−1)95重量部に対し、製造例4で作製した有機微粒子(G1)5重量部をラボプラストミル(東洋精機製作所製)を用い混錬した樹脂組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして、厚さ120μmの延伸フィルム(X−2)を得た。得られた延伸フィルム(X−2)における面内位相差Reおよび、面内位相差Reの波長分散性を、全自動複屈折計(王子計測機器社製、KOBRA−WR)を用いて評価した。波長分散性の評価結果を以下の表3に示す。また、延伸フィルム(X−2)の光弾性係数は、−0.2×10−12/Paであった。なお、表3では、測定波長を589nmとしたときの位相差を基準(R0)として、その他の波長における位相差RとR0との比(R/R0)を併せて示す。
Figure 2011128397
表3に示すように、延伸フィルム(X−2)は、光の波長が短くなるほど位相差が小さくなる逆波長分散性を示し、その変化は大きかった。
次に、延伸フィルム(X−1)の代わりに延伸フィルム(X−2)を用いた以外は、実施例1と同様にして、両面に偏光子保護フィルムを有する偏光板(PX−2)、続いて、セパレータ付き偏光板(PXS−2)を得た。
(液晶表示素子の調製)
さらに、偏光板(PXS−1)の代わりに偏光板(PXS−2)を用いた以外は、実施例1と同様にVAモード液晶表示装置を作製した。作製した表示装置を黒表示させ、方位角45°から目視にて光漏れを確認したところ、黒く表示されていることを確認した。
(比較例1)
(位相差フィルムZの調製)
製造例2で作製した重合体(D−1)を、プレス成形機により250℃でプレスし成形して厚さ約75μmのフィルムとした。次に、作製したフィルムを、オーブン延伸装置により延伸倍率が2.2倍となるように延伸温度149℃で自由端一軸延伸して、厚さ50μmの延伸フィルム(Z)を得た。得られた延伸フィルム(Z)における面内位相差Reおよび、面内位相差Reの波長分散性を、全自動複屈折計(王子計測機器社製、KOBRA−WR)を用いて評価した。波長分散性の評価結果を以下の表4に示す。なお、表4では、測定波長を589nmとしたときの位相差を基準(R0)として、その他の波長における位相差RとR0との比(R/R0)を併せて示す。
Figure 2011128397
表4に示すように、延伸フィルム(Z)は、光の波長が短くなるほど位相差が大きくなり、逆波長分散性を示さなかった。
次に、延伸フィルム(X−1)の代わりに延伸フィルム(Z)を用いた以外は、実施例1と同様にして、両面に偏光子保護フィルムを有する偏光板(PZ−1)、続いて、セパレータ付き偏光板(PZS−1)を得た。
(液晶表示素子の調製)
さらに、偏光板(PXS−1)の代わりに偏光板(PZS−1)を用いた以外は、実施例1と同様にVAモード液晶表示装置を作製した。作製した表示装置を黒表示させ、方位角45°から目視にて光漏れを確認したところ、青紫色に表示されていることを確認した。
本発明の画像表示装置は、高品位の画像が要求される液晶表示装置、特に、VAモードの液晶表示装置として利用することが出来る。
液晶表示装置の画像表示面の概略断面図の一例である。
液晶セル4(液晶層、ガラス基板、透明電極、配向膜、等を含む)
液晶セル4を挟んで配置された偏光板9、10
バックライト部8(光源、反射シート、導光板、拡散板、拡散シート、プリズムシート、輝度向上フィルム、等を含む)
偏光子2、6
偏光子を挟んで配置された偏光子保護フィルム1、3,5,7

Claims (17)

  1. 少なくとも2枚の位相差フィルムを備える液晶表示装置であって、
    1枚の位相差フィルム(X)は、(I)測定波長589nmにおける面内位相差Reが100〜300nmであり、(II)少なくとも可視光領域において、波長が短くなるほど複屈折が小さくなる波長分散性を示し、且つ、(III)以下の式(1)、(2)もしくは(3)に示される分子構造または複素芳香族基を有する樹脂(A)を含む、光学的に一軸性を有する位相差フィルムであり、
    もう1枚の位相差フィルム(Y)は、測定波長589nmにおける面内位相差Reが10nm以下、厚み方向位相差Rthが120nm〜300nmであり、光学的に法線方向に一軸性を有する位相差フィルムである、液晶表示装置。

    Figure 2011128397
    Figure 2011128397
    Figure 2011128397
    (前記式(1)において、nは1〜4の範囲の自然数、R1およびR2は、互いに独立して、水素原子またはメチル基である。)
  2. 前記樹脂(A)がアクリル樹脂またはシクロオレフィン樹脂である請求項1に記載の液晶表示装置。
  3. 前記樹脂(A)が、前記式(1)に示される分子構造を有する請求項1に記載の液晶表示装置。
  4. 前記樹脂(A)が、以下の式(4)、(5)もしくは(6)に示される単位または複素芳香族基を有するα,β−不飽和単量体単位を構成単位として有する重合体(B−1)を含む請求項1に記載の液晶表示装置。
    Figure 2011128397
    Figure 2011128397
    Figure 2011128397
    前記式(4)において、nは1〜4の範囲の自然数、RおよびRは、互いに独立して、水素原子またはメチル基である。
  5. 前記重合体(B−1)が、前記式(4)に示される単位または複素芳香族基を有するα,β−不飽和単量体単位を構成単位として有する請求項4に記載の液晶表示装置。
  6. 前記式(4)に示される単位が、N−ビニル−2−ピロリドン単位、N−ビニル−ε−カプロラクタム単位、N−ビニル−2−ピペリドン単位、N−ビニル−4−メチル−2−ピロリドン単位、N−ビニル−5−メチル−2−ピロリドン単位およびN−ビニル−ω−ヘプタラクタム単位から選ばれる少なくとも1種である請求項4に記載の液晶表示装置。
  7. 前記α,β−不飽和単量体単位が、ビニルカルバゾール単位、ビニルピリジン単位、ビニルイミダゾール単位、およびビニルチオフェン単位から選ばれる少なくとも1種である請求項4に記載の液晶表示装置。
  8. 前記重合体(B−1)の固有複屈折が負であり、
    前記樹脂(A)が、正の固有複屈折を有する重合体(B−2)をさらに含む請求項4に記載の液晶表示装置。
  9. 前記重合体(B−2)が、主鎖に環構造を有する請求項8に記載の液晶表示装置。
  10. 前記重合体(B−2)が、シクロオレフィン重合体およびセルロース誘導体から選ばれる少なくとも1種である請求項9に記載の液晶表示装置。
  11. 前記重合体(B−2)が、主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル重合体である請求項9に記載の液晶表示装置。
  12. 前記環構造が、ラクトン環構造およびグルタルイミド構造から選ばれる少なくとも1種である請求項11に記載の液晶表示装置。
  13. 前記樹脂(A)の固有複屈折が負であり、
    正の固有複屈折を有する樹脂(C)からなる層をさらに有し、
    前記樹脂(A)からなる層と、前記樹脂(C)からなる層とを含む積層構造を有する請求項4に記載の液晶表示装置。
  14. 前記樹脂(C)が、正の固有複屈折を有する重合体(B−2)を含む請求項13に記載の液晶表示装置。
  15. 前記重合体(B−1)が、当該重合体に負の固有複屈折を与える作用を有する構成単位として、前記式(4)、(5)または(6)に示される単位もしくは複素芳香族基を有するα,β−不飽和単量体単位を有するとともに、当該重合体に正の固有複屈折を与える作用を有する構成単位をさらに有する請求項4に記載の液晶表示装置。
  16. 前記重合体(B−1)に正の固有複屈折を与える作用を有する構成単位が、(メタ)アクリル酸エステル単位、および(メタ)アクリル酸エステル単位の誘導体である環構造から選ばれる少なくとも1種である請求項15に記載の液晶表示装置。
  17. 請求項1〜16のいずれかに記載の液晶表示装置であって、さらにVAモード液晶セルを備える、VAモード液晶表示装置。
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