JP2010222770A - 人工皮革およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】メタリックパウダー顔料等による塗装をしなくても、十分な光沢感を発揮し得る人工皮革、及びこれを効率よく製造する人工皮革の製造方法を提供する。
【解決手段】基体層と該基体層の一方の面に形成されてなる表面層とを有し、前記基体層が極細長繊維を複数本含む繊維束と高分子弾性体とを含み、前記表面層が極細長繊維、又は、極細長繊維と高分子弾性体とからなり、X/Y≧1.5(上記式中、Xは該人工皮革の任意断面における表面から20μmの深さに存在する前記極細長繊維の切断端の数であり、Yは該断面と直交する断面における表面から20μmの深さに存在する前記極細長繊維の切断端の数であり、かつ、X>Yである。)を満たす人工皮革、及びその製造方法である。
【選択図】なし

Description

本発明は、光沢感のある人工皮革およびその製造方法に関する。
繊維質と高分子弾性体とからなる人工皮革は、皮革の代替物として種々の用途に適用されている。例えば、衣料本体材料、衣料部品材料、靴アッパー材、靴副材料、袋物材料などの用途に多く使用され、現在ではこれらの用途には無くてはならない材料となっている。
最近では、これらの用途の中でも嗜好の多様性から付加価値を付与したものが好まれるようになってきており、例えば、光沢感のある高級外観を有する人工皮革が求められるようになってきている。このような人工皮革としては、従来、パール様の人工皮革が知られている。例えば、特許文献1では、メタリックパウダーを有した発泡ポリウレタンのヌバックタイプの人工皮革が提案されている。
特許第3056609号公報
しかし、特許文献1の人工皮革は、表面にメタリックパウダーが塗装されているにすぎないため、長期の使用に伴い当該顔料が脱離してしまい光沢感が低下してしまう問題がある。
以上から、本発明は、メタリックパウダー顔料等による塗装をしなくても、十分な光沢感を発揮し得る人工皮革、及びこれを効率よく製造する人工皮革の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、下記本発明に想到し上記目的を達成した。
すなわち、本発明は、基体層と該基体層の一方の面に形成されてなる表面層とを有し、前記基体層が極細長繊維の繊維束と高分子弾性体とを含み、前記表面層が極細長繊維、又は、極細長繊維と高分子弾性体とからなり、下記条件を満たす人工皮革である。
X/Y≧1.5
(上記式中、Xは該人工皮革の任意断面における表面から20μmの深さに存在する前記極細長繊維の切断端の数であり、Yは該断面と直交する断面における表面から20μmの深さに存在する前記極細長繊維の切断端の数であり、かつ、X>Yである。)
また、本発明は、
(下記工程(1)〜(5)を含む人工皮革の製造方法である。
(1)極細繊維束形成性長繊維からなる長繊維ウエブを製造する工程、
(2)前記長繊維ウエブに絡合処理を施し、絡合ウエブを製造する工程、
(3)前記絡合ウエブ中の極細繊維束形成性長繊維を極細繊維の繊維束に変換し、絡合不織布を製造する工程を順次含み、
(4)前記絡合不織布に高分子弾性体を付与する工程、および
(5)前記絡合不織布の表面に存在する繊維束から極細長繊維を起毛し、起毛した前記極細長繊維を整毛する処理、または、前記絡合不織布の表面に存在する繊維束を整毛し、整毛した繊維束から極細長繊維を起毛する処理を行い、前記極細長繊維、又は、前記極細長繊維及び前記高分子弾性体からなり、かつ、下記条件
X/Y≧1.5
(上記式中、Xは該人工皮革の任意断面における表面から20μmの深さに存在する前記極細長繊維の切断端の数であり、Yは該断面と直交する断面における表面から20μmの深さに存在する前記極細長繊維の切断端の数であり、かつ、X>Yである。)
を満たす表面層を形成する工程。
本発明によれば、メタリックパウダー顔料等による塗装をしなくても、十分な光沢感を発揮する人工皮革、及びこれを効率よく製造する方法を提供することができる。
実施例1の人工皮革の縦方向断面を示す走査型電子顕微鏡写真である。 実施例1の人工皮革の横方向断面を示す走査型電子顕微鏡写真である。 比較例1の人工皮革の縦方向断面を示す走査型電子顕微鏡写真である。 比較例1の人工皮革の横方向断面を示す走査型電子顕微鏡写真である。
[人工皮革]
本発明の人工皮革は、基体層とこの基体層の一方の面に形成されてなる表面層とを有する。基体層は、極細長繊維の繊維束と高分子弾性体とを含み、表面層は、極細長繊維からなるか、又は、極細長繊維と高分子弾性体とからなる。
また、本発明の人工皮革は下記条件を満たす。
X/Y≧1.5
(上記式中、Xは該人工皮革の任意断面における表面から20μmの深さに存在する前記極細長繊維の切断端の数であり、Yは該断面と直交する断面における表面から20μmの深さに存在する前記極細長繊維の切断端の数であり、かつ、X>Yである。)
X/Yがこの範囲にあることで、表面層の極細長繊維の向きが部分的に、もしくは全体的に一定方向に揃う配向性が備わる。その結果、配向した箇所では外光が反射して良好な光沢感が得られる。
X/Yが1.5より小さいと、十分な金属光沢感が得られない。一方、理論的には、上記比が無限大に近づくほど金属光沢感は強くなると予想されるが、50を超えると金属光沢感にはほとんど変化が無く、また生産コストの観点からも処理回数が増加するだけでメリットが無い。実質的には20以下での使用が現実的である。従って、X/Yは、1.5〜50であることが好ましく、1.5〜20であることがより好ましい。
上記比を求めるための切断方法としては、例えば、人工皮革の表面を165℃、400N/cmの条件で熱プレス処理を行い、表面付近の毛羽配向を固定したのち、片刃カミソリを使用し、該繊維配向が崩れないように表面から一気に切断する。そして、切断面の画像をSEMにより撮影し(例えば、300倍で13.5×18cmの写真)、人工皮革の表面から20μmの深さに存在する前記極細長繊維の切断端の数を求める。さらに、上記方向と直交する方向に切断し、同様にして人工皮革の表面から20μmの深さに存在する前記極細長繊維の切断端の数を求める。得られた切断端数の大きい方をX、小さい方をYとして上記比を算出する。
表面層(極細長繊維、又は、極細長繊維と高分子弾性体とからなり、繊維束を実質的に含まない層)の厚みは、5〜500μmであることが好ましく、5〜200μmであることがより好ましい。5〜500μmであることで、良好な金属光沢感と天然皮革調の優美な外観を両立することができる。基体層の厚みは200〜4000μmであることが好ましく、300〜2000μmであることがより好ましい。200〜4000μmであることで、人工皮革材としての十分な強度と天然皮革調のソフト性、充実感を満足することができる。
上記の比の制御方法や極細長繊維をはじめとした本発明の人工皮革の各種材料については、後述する[人工皮革の製造方法]で詳説する。
[人工皮革の製造方法]
本発明の人工皮革は、下記の工程により製造することができる。すなわち、
(1)極細繊維束形成性長繊維からなる長繊維ウエブを製造する工程、
(2)前記長繊維ウエブに絡合処理を施し、絡合ウエブを製造する工程、
(3)前記絡合ウエブ中の極細繊維束形成性長繊維を極細繊維の繊維束に変換し、絡合不織布を製造する工程を順次経て、
(4)前記絡合不織布に高分子弾性体を付与する工程、および
(5)前記絡合不織布の表面に存在する繊維束から極細長繊維を起毛し、起毛した前記極細長繊維を整毛する処理、または、前記絡合不織布の表面に存在する繊維束を整毛し、整毛した繊維束から極細長繊維を起毛する処理を行い、前記極細長繊維、又は、前記極細長繊維及び前記高分子弾性体からなる表面層を形成する工程を経て製造される。
なお、上記(4)及び(5)の工程は(3)の工程の後にこの順に設けられてもよいし、(3)の工程の後に(5)の工程及び(4)の工程がこの順に設けられていてもよい。
以下、(1)〜(5)を順次経る例をもとに各工程について詳述する。
工程(1):
工程(1)では、極細繊維束形成性長繊維からなる長繊維ウエブを製造する。極細繊維束形成性長繊維は、例えば、海島型長繊維を用いて製造することができる。以下、海島型長繊維を用いた例を主として、本発明の製造方法を説明する。
海島型長繊維は少なくとも2種類のポリマーからなる多成分系複合繊維であって、海成分ポリマー中にこれとは異なる種類の島成分ポリマーが分散した断面を有する。海島型長繊維は、絡合不織布構造体に形成した後、高分子弾性体を含浸させる前に海成分ポリマーを抽出または分解して除去することで、残った島成分ポリマーからなる極細長繊維が複数本集まった繊維束に変換される。
島成分ポリマーとしては、特に限定されるものではないが、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエステルエラストマー等のポリエステル系樹脂またはそれらの変性物;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン12、芳香族ポリアミド、半芳香族ポリアミド、ポリアミドエラストマー等のポリアミド系樹脂またはそれらの変性物;ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂;ポリエステル系ポリウレタンなどのポリウレタン系樹脂など、公知の繊維形成性の水不溶性熱可塑性ポリマーが挙げられる。これらの中でも、PET、PTT、PBT、これらの変性ポリエステル等のポリエステル系樹脂は、熱処理により収縮しやすく、充実感のある風合いを有し、耐磨耗性、耐光性、形態安定性などの実用的性能が優れた人工皮革製品が得られる点で特に好ましい。また、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系樹脂はポリエステル系樹脂に比べて吸湿性があってしなやかな極細長繊維が得られるので、膨らみ感のある柔らかな風合いを有し、帯電防止性などの実用的性能が良好な人工皮革製品が得られる点で特に好ましい。
島成分ポリマーの融点は160℃以上であるのが好ましく、融点が180〜330℃であり結晶性であるのがより好ましい。融点は後述する方法で求めた。島成分ポリマーには、着色剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、消臭剤、防かび剤、抗菌剤、各種安定剤などが添加されていてもよい。
海島型長繊維を極細長繊維の繊維束に変換する際に、海成分ポリマーは溶剤または分解剤により抽出または分解除去される。従って、海成分ポリマーは溶剤に対する溶解性または分解剤による分解性が島成分ポリマーよりも大きいことが必要である。海島型長繊維の紡糸安定性の点から島成分ポリマーとの親和性が小さく、かつ、紡糸条件において溶融粘度及び/又は表面張力が島成分ポリマーより小さいことが好ましい。このような条件を満たす限り海成分ポリマーは特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−エチレン共重合体、スチレン−アクリル共重合体、ポリビニルアルコール系樹脂などが好ましく用いられる。有機溶剤を用いることなく人工皮革を製造することができるので、海成分ポリマーに水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール(水溶性PVA)を用いるのが特に好ましい。
水溶性PVAの粘度平均重合度(以下、単に「重合度」と略記する)は200〜500が好ましく、230〜470がより好ましく、250〜450がさらに好ましい。重合度が200以上であると、溶融粘度が適度で島成分ポリマーとの複合化が容易である。重合度が500以下であると、溶融粘度が高すぎて紡糸ノズルから樹脂を吐出することが困難となる問題を避けることができる。重合度500以下のいわゆる低重合度PVAを用いることにより、熱水で溶解するときに溶解速度が速くなるという利点も有る。水溶性PVAの重合度(P)は、JIS−K6726に準じて測定される。すなわち、水溶性PVAを再ケン化し、精製した後、30℃の水中で測定した極限粘度[η]から次式により求められる。
P=([η]103/8.29)(1/0.62)
水溶性PVAのケン化度は90〜99.99モル%が好ましく、93〜99.98モル%がより好ましく、94〜99.97モル%がさらに好ましく、96〜99.96モル%が特に好ましい。ケン化度が90モル%以上であると、熱安定性が良く、熱分解やゲル化することなく満足な溶融紡糸を行うことができ、生分解性も良好である。更に後述する共重合モノマーによって水溶性が低下することがなく、極細化が容易になる。ケン化度が99.99モル%よりも大きい水溶性PVAは安定に製造することが難しい。
水溶性PVAの融点(Tm)は、160〜230℃が好ましく、170〜227℃がより好ましく、175〜224℃がさらに好ましく、180〜220℃が特に好ましい。融点が160℃以上であると、結晶性が低下して繊維強度が低くなることがなく、熱安定性が悪くなり繊維化が困難になることも避けることができる。融点が230℃以下であると、PVAの分解温度より低い温度で溶融紡糸することができ、海島型長繊維を安定に製造することができる。
水溶性PVAは、ビニルエステル単位を主体として有する樹脂をケン化することにより得られる。ビニルエステル単位を形成するためのビニル化合物単量体としては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニルおよびバーサティック酸ビニル等が挙げられ、これらの中でも水溶性PVAを容易に得る点からは酢酸ビニルが好ましい。
水溶性PVAは、ホモPVAであっても共重合単位を導入した変性PVAであってもよいが、溶融紡糸性、水溶性、繊維物性の観点からは、変性PVAを用いることが好ましい。共重合単量体としては、共重合性、溶融紡糸性および繊維の水溶性の観点から、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等の炭素数4以下のα−オレフィン類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類が好ましい。炭素数4以下のα−オレフィン類および/またはビニルエーテル類に由来する単位の量は、変性PVA構成単位の1〜20モル%が好ましく、4〜15モル%がより好ましく、6〜13モル%がさらに好ましい。さらに、共重合単量体がエチレンであると繊維物性が高くなるので、エチレン単位を好ましくは4〜15モル%、より好ましくは6〜13モル%含む変性PVAが好ましい。
水溶性PVAは、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などの公知の方法で製造される。その中でも、無溶媒あるいはアルコールなどの溶媒中で重合する塊状重合法や溶液重合法が好ましい。溶液重合の溶媒としては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコールなどの低級アルコールが挙げられる。共重合に使用される開始剤としては、a、a’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−バレロニトリル)、過酸化ベンゾイル、n−プロピルパーオキシカーボネートなどのアゾ系開始剤または過酸化物系開始剤などの公知の開始剤が挙げられる。重合温度については特に制限はないが、0〜150℃の範囲が適当である。
従来の人工皮革の製造においては、極細繊維束形成性長繊維を任意の繊維長にカットして得たステープルにより繊維ウエブを製造していたが、本発明では、スパンボンド法などにより紡糸した海島型長繊維(極細繊維束形成性長繊維)をカットすることなく長繊維ウエブにする。海島型長繊維は前記の海成分ポリマーと島成分ポリマーを複合紡糸用口金から押出すことにより溶融紡糸する。紡糸温度(口金温度)は180〜350℃が好ましい。口金から吐出した溶融状態の海島型長繊維を冷却装置により冷却した後、エアジェットノズルなどの吸引装置を用いて、目的の繊度となるように1000〜6000m/分の引取り速度に相当する速度の高速気流により牽引細化し、移動式ネットなどの捕集面上に堆積させて実質的に無延伸の長繊維からなるウエブを形成する。必要に応じて、得られた長繊維ウエブをプレス等により部分的に圧着して形態を安定化させてもよい。
本発明では、上記のようにまず長繊維ウエブを製造するが、長繊維ウエブを使用することで、短繊維ウエブでは整毛処理時の繊維のす抜けや十分な配向性が得られないといった欠点を克服し、最終的に表面層の極細長繊維の向きを部分的に、もしくは全体的に一定方向に揃う配向性を付与することができる。
また、このような長繊維ウエブ製造方法は、従来の短繊維を用いる繊維ウエブ製造方法では必須の原綿供給装置、開繊装置、カード機などの一連の大型設備を必要としないので生産上有利である。また、長繊維ウエブおよびそれを用いて得られる人工皮革は連続性の高い長繊維からなるので、従来一般的であった短繊維ウエブおよびそれを用いて製造した人工皮革に比べて、強度などの物性においても優れている。
海島型長繊維の平均断面積は30〜800μm2であるのが好ましい。海島型長繊維の断面において、海成分ポリマーと島成分ポリマーの平均面積比(ポリマー体積比に相当)は5/95〜70/30が好ましい。得られた長繊維ウエブの目付は10〜1000g/m2が好ましい。
本発明において、長繊維とは、繊維長が通常3〜80mm程度である短繊維よりも長い繊維長を有する繊維であり、短繊維のように意図的に切断されていない繊維をいう。例えば、極細化する前の長繊維の繊維長は100mm以上が好ましく、技術的に製造可能であり、かつ、物理的に切れない限り、数m、数百m、数kmあるいはそれ以上の繊維長であってもよい。
工程(2):
工程(2)では、長繊維ウエブに絡合処理を施して絡合ウエブを得る。長繊維ウエブを、必要に応じてクロスラッパー等を用いて複数層重ね合わせた後、両面から同時または交互に少なくとも1つ以上のバーブが貫通する条件でニードルパンチする。パンチング密度は、300〜5000パンチ/cm2の範囲が好ましく、より好ましくは500〜3500パンチ/cm2の範囲である。上記範囲内であると、充分な絡合が得られ、海島型長繊維のニードルによる損傷が少ない。該絡合処理により、海島型長繊維同士が三次元的に絡合し、厚さ方向に平行な断面において海島型長繊維が平均600〜4000個/mm2の密度で存在する、海島型長繊維が極めて緻密に集合した絡合ウエブが得られる。長繊維ウエブにはその製造から絡合処理までのいずれかの段階で油剤を付与してもよい。必要に応じて、70〜150℃の温水に浸漬するなどの収縮処理によって、長繊維ウエブの絡合状態をより緻密にしてもよい。また、熱プレス処理を行なうことで海島型長繊維同士をさらに緻密に集合させ、長繊維ウエブの形態を安定にしてもよい。絡合ウエブの目付は100〜2000g/m2あるのが好ましい。
工程(3):
工程(3)では、海成分ポリマーを除去することにより極細繊維束形成性長繊維(海島型長繊維)を極細化して極細長繊維の繊維束からなる絡合不織布を製造する。海成分ポリマーを除去する方法としては、島成分ポリマーの非溶剤または非分解剤であり、かつ、海成分ポリマーの溶剤または分解剤で絡合ウエブを処理する方法が本発明においては好ましく採用される。島成分ポリマーがポリアミド系樹脂やポリエステル系樹脂である場合、海成分ポリマーがポリエチレンであればトルエン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレンなどの有機溶剤が、海成分ポリマーが水溶性PVAであれば温水、また、海成分ポリマーが易アルカリ分解性の変性ポリエステルであれば水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ性分解剤が使用される。海成分ポリマーの除去は人工皮革分野において従来採用されている方法により行えばよく、特に制限されない。本発明においては、環境負荷が少なく、また、労働衛生上好ましいので、海成分ポリマーとして水溶性PVAを使用し、これを、有機溶媒を使用することなく85〜100℃の熱水中で100〜600秒間処理し、除去率が95質量%以上(100%を含む)になるまで抽出除去し、極細繊維束形成性長繊維を島成分ポリマーからなる極細長繊維の繊維束に変換するのが好ましい。
必要に応じて、極細繊維束形成性長繊維を極細化する前または極細化と同時に、下記式:
[(収縮処理前の面積−収縮処理後の面積)/収縮処理前の面積]×100
で表される面積収縮率が好ましくは30%以上、より好ましくは30〜75%になるように収縮処理を行って高密度化してもよい。収縮処理により形態保持性がより良好になり、起毛時または整毛時の繊維の素抜けも防止される。
極細化前に行う場合、水蒸気雰囲気下で絡合ウエブを収縮処理するのが好ましい。水蒸気による収縮処理は、例えば、絡合ウエブに海成分に対して30〜200質量%の水分を付与し、次いで、相対湿度が70%以上、より好ましくは90%以上、温度が60〜130℃の加熱水蒸気雰囲気下で60〜600秒間加熱処理することが好ましい。上記条件で収縮処理すると、水蒸気で可塑化された海成分ポリマーが島成分ポリマーにより構成される長繊維の収縮力で圧搾・変形するので緻密化が容易になる。次いで、収縮処理した絡合ウエブを85〜100℃、好ましくは90〜100℃の熱水中で100〜600秒間処理して海成分ポリマーを溶解除去する。また、海成分ポリマーの除去率が95質量%以上になるように、水流抽出処理してもよい。水流の温度は80〜98℃が好ましく、水流速度は2〜100m/分が好ましく、処理時間は1〜20分が好ましい。
収縮処理と極細化を同時に行う方法としては、例えば、絡合ウエブを65〜90℃の熱水中に3〜300秒間浸漬した後、引き続き、85〜100℃、好ましくは90〜100℃の熱水中で100〜600秒間処理する方法が挙げられる。前段階で、極細繊維束形成性長繊維が収縮すると同時に海成分ポリマーが圧搾される。圧搾された海成分ポリマーの一部は繊維から溶出する。そのため、海成分ポリマーの除去により形成される空隙がより小さくなるので、より緻密化した絡合不織布が得られる。
任意に行われる収縮処理および海成分ポリマー除去により、好ましくは140〜3000g/m2の目付を有する絡合不織布が得られる。この絡合不織布中の繊維束の平均繊度は0.5〜10dtex、好ましくは0.7〜5dtexである。極細長繊維の平均繊度は0.001〜2dtex、好ましくは0.005〜0.2dtexである。この範囲内であると、得られる人工皮革の緻密性、その表層部の不織布構造の緻密性が向上する。極細長繊維の平均繊度および繊維束の平均繊度が上記範囲内である限り繊維束中の極細長繊維の本数は特に制限されないが、一般的には5〜1000本である。
絡合不織布の湿潤時の剥離強力は4kg/25mm以上であることが好ましく、4〜15kg/25mmであることがより好ましい。剥離強力は極細長繊維の繊維束の三次元絡合の度合いの目安である。上記範囲内であると、絡合不織布および得られる人工皮革の表面摩耗が少なく、形態保持性が良好である。また、充実感に優れた人工皮革が得られる。後述するように、高分子弾性体を付与する前に絡合不織布を分散染料で染色してもよい。湿潤時の剥離強力が上記範囲内であると、染色時の繊維の素抜けやほつれを防止することができる。
工程(4):
工程(4)では、工程(3)を経て製造された絡合不織布に高分子弾性体の水分散体または水溶液を付与し、熱を加えながら高分子弾性体を凝固させて人工皮革を製造する。高分子弾性体としては、人工皮革の製造に従来用いられているポリウレタンエラストマー、アクリロニトリルエラストマー、オレフィンエラストマー、ポリエステルエラストマー、アクリルエラストマーなどから選ばれる少なくとも1種の弾性体を用いることができるが、ポリウレタンエラストマー及び/又はアクリルエラストマーが特に好ましい。
ポリウレタンエラストマーとしては、高分子ポリオール、有機ポリイソシアネート、及び、必要に応じて鎖伸長剤を所望の割合で、溶融重合法、塊状重合法、溶液重合法などにより重合して得られる公知の熱可塑性ポリウレタンが好ましい。
高分子ポリオールは用途や必要性能に応じて公知の高分子ポリオールから選択される。例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリ(メチルテトラメチレングリコール)などのポリエーテル系ポリオール及びその共重合体;ポリブチレンアジペートジオール、ポリブチレンセバケートジオール、ポリヘキサメチレンアジペートジオール、ポリ(3−メチル−1,5−ペンチレンアジペート)ジオール、ポリ(3−メチル−1,5−ペンチレンセバケート)ジオール、ポリカプロラクトンジオールなどのポリエステル系ポリオール及びその共重合体;ポリヘキサメチレンカーボネートジオール、ポリ(3−メチル−1,5−ペンチレンカーボネート)ジオール、ポリペンタメチレンカーボネートジオール、ポリテトラメチレンカーボネートジオールなどのポリカーボネート系ポリオール及びその共重合体;ポリエステルカーボネートポリオールなどが挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
高分子ポリオールの平均分子量は500〜3000であるのが好ましい。得られる人工皮革の耐光堅牢性、耐熱堅牢性、耐NOx黄変性、耐汗性、耐加水分解性などの耐久性をより良好にする場合には、2種以上の高分子ポリオールを使用することが好ましい。
有機ジイソシアネートは用途や必要性能に応じて公知のジイソシアネート化合物から選択すればよい。例えば、芳香環を有しない脂肪族あるいは脂環族ジイソシアネート(無黄変型ジイソシアネート)、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートなどや、芳香環ジイソシアネート、例えば、フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなど挙げることができる。特に、光や熱での黄変が起こりにくいことから、無黄変型ジイソシアネートを使用することが好ましい。
鎖伸長剤は、用途や必要性能に応じて公知のウレタン樹脂の製造に鎖伸長剤として用いられている活性水素原子を2個有する低分子化合物から選択すれば良い。例えば、ヒドラジン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、キシリレンジアミン、イソホロンジアミン、ピペラジンおよびその誘導体、アジピン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジドなどのジアミン類;ジエチレントリアミン等のトリアミン類;トリエチレンテトラミン等のテトラミン類;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−シクロヘキサンジオールなどのジオール類;トリメチロールプロパン等のトリオール類;ペンタエリスリトール等のペンタオール類;アミノエチルアルコール、アミノプロピルアルコールなどのアミノアルコール類などが挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。中でも、ヒドラジン、ピペラジン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミンおよびその誘導体、エチレントリアミンなどのトリアミンの中から2〜4種類を併用することが好ましい。特に、ヒドラジン及びその誘導体は酸化防止効果を有するので、耐久性が向上する。
また、鎖伸長反応時に、鎖伸長剤とともに、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミンなどのモノアミン類;4−アミノブタン酸、6−アミノヘキサン酸などのカルボキシル基含有モノアミン化合物;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのモノオール類を併用してもよい。
熱可塑性ポリウレタンのソフトセグメント(ポリマージオール)の含有量は90〜15質量%であることが好ましい。
アクリルエラストマーとしては、例えば、軟質成分、架橋形成性成分、硬質成分とこれらいずれの成分にも属さないその他の成分からなる水分散性または水溶性のエチレン性不飽和モノマーの重合体が挙げられる。
軟質成分とは、その単独重合体のガラス転移温度(Tg)が−5℃未満、好ましくは−90℃以上で−5℃未満である成分であり、非架橋性(架橋を形成しない)であることが好ましい。軟質成分を形成するモノマーとしては、例えば、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピルなどの(メタ)アクリル酸誘導体などが挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
硬質成分とは、その単独重合体のガラス転移温度(Tg)が50℃を越え、好ましくは50℃を越えて250℃以下である成分であり、非架橋性(架橋を形成しない)であることが好ましい。硬質成分を形成するモノマーとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルなどの(メタ)アクリル酸誘導体;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物;(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミドなどのアクリルアミド類;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸およびそれらの誘導体;ビニルピロリドンなどの複素環式ビニル化合物;塩化ビニル、アクリロニトリル、ビニルエーテル、ビニルケトン、ビニルアミドなどのビニル化合物;エチレン、プロピレンなどで代表されるα−オレフィンなどが挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
架橋形成性成分とは、架橋構造を形成し得る単官能または多官能エチレン性不飽和モノマー単位、または、ポリマー鎖に導入されたエチレン性不飽和モノマー単位と反応して架橋構造を形成し得る化合物(架橋剤)である。単官能または多官能エチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレートなどのジ(メタ)アクリレート類;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどのトリ(メタ)アクリレート類;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等などのテトラ(メタ)アクリレート類;ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼンなどの多官能芳香族ビニル化合物;アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸不飽和エステル類;2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレートとヘキサメチレンジイソシアネートの2:1付加反応物、ペンタエリスリトールトリアクリレートとヘキサメチレンジイソシアネートの2:1付加反応物、グリセリンジメタクリレートとトリレンジイソシアネートの2:1付加反応物などの分子量が1500以下のウレタンアクリレート;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピルなどの水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体;(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミドなどのアクリルアミド類およびそれらの誘導体;グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基を有する(メタ)アクリル酸誘導体;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのカルボキシル基を有するビニル化合物;ビニルアミドなどのアミド基を有するビニル化合物などが挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
架橋剤としては、例えば、オキサゾリン基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物、エポキシ基含有化合物、ヒドラジン誘導体、ヒドラジド誘導体、ポリイソシアネート系化合物、多官能ブロックイソシアネート系化合物などが挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
アクリルエラストマーのその他の成分を形成するモノマーとしては、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、グリシジル(メタ)アクリレート、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルなどの(メタ)アクリル酸誘導体が挙げられる。
高分子弾性体の融点は130〜240℃であるのが好ましく、130℃での熱水膨潤率は10%以上、好ましくは10〜100%である。一般に、熱水膨潤率が大きい程高分子弾性体は柔軟であるが、分子内の凝集力が弱い為、後の工程や製品の使用時に剥落することが多く、バインダーとしての作用が不十分になる。上記範囲内であるとこのような不都合を避けることができる。熱水膨潤率は後述する方法により求めた。
高分子弾性体の損失弾性率のピーク温度は10℃以下、好ましくは−80℃〜10℃である。損失弾性率のピーク温度が10℃を超えると、人工皮革の風合いが堅くなり、また、耐屈曲性等の力学的耐久性が悪化する。損失弾性率は後述する方法で求めた。
高分子弾性体は水溶液または水分散体として前記絡合不織布に含浸させる。水溶液または水分散体中の高分子弾性体含量は0.1〜60質量%が好ましい。本発明で含浸する高分子弾性体は、風合い調節、形態保持性、毛羽落ち防止と、工程(5)での極細繊維束の分繊、配向を容易にする目的で付与するものであり、極細繊維束を拘束するような形態、量で付与するのは好ましくない。この観点から、凝固後の高分子弾性体の含有量は、極細長繊維に対して0.5〜30質量%が好ましく、1〜20質量%がより好ましく、1〜15質量%がさらに好ましい。高分子弾性体の水溶液または水分散体には、得られる人工皮革の性質を損なわない範囲で、浸透剤、消泡剤、滑剤、撥水剤、撥油剤、増粘剤、増量剤、硬化促進剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、蛍光剤、防黴剤、発泡剤、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースなどの水溶性高分子化合物、染料、顔料などを添加してもよい。
高分子弾性体の水溶液または水分散体を絡合不織布に含浸させる方法は特に制限されないが、例えば、浸漬などにより絡合不織布内部に均一に含浸する方法、表面と裏面に塗布する方法などが挙げられる。従来の人工皮革の製造においては、感熱ゲル化剤などを使用して、含浸した高分子弾性体が絡合不織布の表面と裏面に移行(マイグレーション)するのを防止し、高分子弾性体を絡合不織布中で均一に凝固させている。しかし、本発明においては、風合いの硬化を防ぎつつ、毛羽落ち防止(繊維の拘束)と、極細繊維束の分繊・配向といった相反する効果を達成するため、少量の高分子弾性体を有効に利用する必要がある。このため、含浸した高分子弾性体を絡合不織布の表面と裏面に移行(マイグレーション)させ、その後凝固させて、高分子弾性体の存在量を厚み方向に略連続的に勾配させるのが好ましい。すなわち、本発明の人工皮革において、高分子弾性体の存在量は、厚み方向中央部よりも、両表層部近傍で多く存在させるのが好ましい。従って、厚さ方向に5分割した時に、少なくとも一方の表面部分の高分子弾性体含有量が、全高分子弾性体の量の30質量%以上(固形分として)であるのが好ましく、また高分子弾性体の全含有量は上記範囲にすることが好ましい。
このような分布勾配を得るために、本発明では、高分子弾性体の水溶液または水分散体を含浸させた後、マイグレーション防止手段を講じることなく、絡合不織布の表面と裏面を好ましくは110〜150℃で、好ましくは0.5〜30分間加熱する。このような加熱により水分が表面と裏面から蒸散し、それに伴って高分子弾性体を含む水分が両表層部に移行し、高分子弾性体が表面と裏面近傍で凝固する。マイグレーションのための加熱は、乾燥装置中などにおいて熱風を表面および裏面に吹き付けることにより行うのが好ましい。
工程(5)
工程(5)では、絡合不織布の表面に存在する繊維束から極細長繊維を起毛した後、起毛した極細長繊維を一方向に配向するように整毛する、または、極細長繊維束を一方向に配向するように整毛した後、繊維束から極細長繊維を起毛する。この工程により、表面部の繊維束が一方向に配向された極細長繊維に変換され、繊維束を実質的に含まない(約200倍のSEM写真において繊維束が観測されない)表面層が形成される。極細長繊維に変換されない繊維束が表面層に残っていると光沢が不十分である。より具体的には、工程(5)により、下記条件:
X/Y≧1.5
(上記式中、Xは人工皮革の任意断面における表面から20μmの深さに存在する前記極細長繊維の切断端の数であり、Yは該断面と直交する断面における表面から20μmの深さに存在する前記極細長繊維の切断端の数であり、かつ、X>Yである。)
を満たす、極細長繊維からなる表面層、又は、極細長繊維及び高分子弾性体からなる表面層が形成される。表面層の高分子弾性体含有量は人工皮革中に存在する全極細長繊維に対して9質量%以下であるのが好ましい。
繊維束から極細長繊維を起毛し、起毛した極細長繊維を同時に整毛する手段としては、最終的に極細長繊維の全てもしくは部分的に配向するように表面層を形成できるものであれば特に限定されない。例えば、針布、エチケットブラシ(登録商標)等の斜毛ブラシ、及びサンドペーパーなどをブラッシング材として使用すればよい。例えば、ブラッシング材を巻き付けたロールにより絡合不織布の表面をブラッシングする。このとき、絡合不織布を3〜20m/分の速度で引き取りながら、ロールを200〜800rpmの速度で回転させるのが好ましい。ブラッシング材表面の粗さは特に限定されないが、サンドペーパーの粗さは280〜1200メッシュであるのが好ましく、針布および斜毛ブラシの場合はこれに相当する粗さであればよい。
整毛(配向)する方向は縦方向(MD)、横方向(巾方向:TD)のいずれでもよいが、製造効率上MD方向に整毛するのが好ましい。MD方向に整毛した場合、TD方向に沿って得られた断面における切断端の数がX、MD方向に沿って得られた断面における切断端の数がYとなる。
工程(5)の前には、表面処理剤による表面処理を絡合不織布に施す工程を設けてもよい。当該表面処理は、表面処理剤としては、アクリル樹脂やウレタン樹脂、フッ素、シリコンを含む高分子重合体樹脂の水溶液あるいは水分散体といったものを用い、絡合不織布に塗布等して行なう。かかる表面処理剤により、表面処理を行なうことで、表面の抵抗を増やし工程(5)における起毛・整毛の効率を上げることができる。
なお、工程(4)と工程(5)との間、又は工程(3)と工程(4)との間で、分散染料あるいは含金染料等の公知の染料により構成する繊維成分に応じて絡合不織布を構成する繊維を染色する工程を設けても良い。
例えば、構成する繊維がポリエステル系の繊維の場合には、分散染料による染色は過酷な条件(高温、高圧)で行われるため、高分子弾性体を付与する前に染色(先染め)すると極細繊維の破断などが生じる。本発明では極細繊維が長繊維であるので先染めが可能となる。前記した収縮処理により極細長繊維は高収縮して分散染色条件に十分耐える強度を持つので、先染めする場合には予め収縮処理することが好ましい。通常、高分子弾性体を含む絡合不織布を染色した場合、高分子弾性体に付着した分散染料を除去して染色堅牢度を向上させるために強アルカリ条件下での還元洗浄工程と中和工程が必要であった。本発明では、工程(4)(高分子弾性体付与)の前に染色することも可能であるので、これらの工程が不要になる。また、染色中に高分子弾性体が脱落するなどの問題があったが、先染めによりこの問題が回避されると共に高分子弾性体の選択範囲が広がる。先染めした場合、余分な染料は湯や中性洗剤液等を使用した洗浄で除去できる。従って、極めてマイルドな条件で染色の摩擦堅牢度、特に、湿摩擦堅牢度を向上させることができる。また、高分子弾性体が染色されていないので、繊維と高分子弾性体との染料吸尽性の違いに起因する色斑を防止することもできる。
使用する分散染料としては、分子量が200〜800の、モノアゾ系、ジスアゾ系、アントラキノン系、ニトロ系、ナフトキノン系、ジフェニルアミン系、複素環系等のポリエステル染色に通常使用される分散染料が好ましく、用途や色相に応じて単独あるいは配合して使用する。染色濃度は要求される色相に応じて異なるが、30%owfを超える高濃度で染色した場合には湿潤時の摩擦堅牢度が悪化するので、30%owf以下が好ましい。浴比は特に制限はないが、1:30以下の低浴比が、コスト、環境への影響の観点で好ましい。染色温度は、70〜130℃が好ましく、95〜120℃がより好ましい。また、染色時間は30〜90分が好ましく、淡色では30〜60分、濃色では45〜90分がより好ましい。染色後の還元洗浄は染色濃度が10%owf以上の場合は3g/L以下の低濃度の還元剤を使用しても良いが、中性洗剤を使用して40〜60℃の温水で洗浄するのが好ましい。
以上のようにして作製された本発明の人工皮革は、良好な光沢感を有し、かつ天然皮革に匹敵する低反発性と充実感も兼ね備えており、衣料用、靴用、鞄用、インテリア用、車両用、手袋用等広い用途に好適に利用される。
以下、実施例により、本発明を説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。実施例中で記載される部および%は、特にことわりのない限り質量基準である。なお各特性は以下の方法で測定した。
(1)極細長繊維の平均繊度
人工皮革を形成している極細長繊維(20個)の断面積を走査型電子顕微鏡(倍率:数百倍〜数千倍程度)により測定し平均断面積を求めた。この平均断面積と繊維を形成するポリマーの密度から平均繊度を計算した。
(2)繊維束の平均繊度
絡合不織布を形成している繊維束の中から選び出した平均的な繊維束(20個)を走査型電子顕微鏡(倍率:数百倍〜数千倍程度)で観察し、その外接円の半径を測定して平均断面積を求めた。この平均断面積が繊維を形成するポリマーで充填されているとし、該ポリマーの密度から繊維束の平均繊度を計算した。
(3)融点
示差走査熱量計(TA3000、メトラー社製)を用いて、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分で室温からポリマー種類に応じて300〜350℃まで昇温後、直ちに室温まで冷却し、再度直ちに昇温速度10℃/分で300〜350℃まで昇温したときに得られた吸熱ピークのピークトップ温度を求めた。
(4)損失弾性率のピーク温度
厚さ200μmの高分子弾性体フィルムを、130℃で30分間熱処理し、粘弾性測定装置(レオロジ社製FTレオスペクトラー「DVE−V4」)を用いて周波数11Hz、昇温速度3℃/分で測定を行い、損失弾性率のピーク温度を求めた。
(5)130℃での熱水膨潤率
厚さ200μmの高分子弾性体フィルムを加圧下130℃で60分間熱水処理し、50℃に冷却後、ピンセットで取り出した。過剰な水をろ紙でふき取り、重量を測定した。浸漬前の重量に対する増加した重量の割合を熱水膨潤率とした。
(6)湿潤時の剥離強力
たて15cm、幅2.7cm、厚さ4mmのゴム板の表面を240番のサンドペーパーでバフ掛けし、表面を十分に粗くした。溶剤系の接着剤(US−44)と架橋剤(ディスモジュールRE)の100:5の混合液を該ゴム板の粗面とたて(シート長さ方向)25cm、幅2.5cmの試験片の片面に12cmの長さにガラス棒で塗布し、100℃の乾燥機中で4分間乾燥した。その後、ゴム板と試験片の接着剤塗布部分同士を貼り合わせ、プレスローラーで圧着し、20℃で24時間キュアリングした。蒸留水に10分浸漬した後に、ゴム板と試験片の端をそれぞれチャックで挟み、引張試験機で引張速度50mm/分で剥離した。得られた応力−ひずみ曲線(SS曲線)の平坦部分から湿潤時の平均剥離強力を求めた。結果は、試験片3個の平均値で表した。
水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系樹脂の製造
攪拌機、窒素導入口、エチレン導入口および開始剤添加口を備えた100L加圧反応槽に、酢酸ビニル29.0kgおよびメタノール31.0kgを仕込み、60℃に昇温した後30分間窒素バブリングにより系中を窒素置換した。次いで反応槽圧力が5.9kgf/cm2となるようにエチレンを導入した。2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(開始剤)をメタノールに溶解して濃度2.8g/Lの開始剤溶液を調製し、窒素ガスによるバブリングを行って窒素置換した。上記の重合槽内温を60℃に調整した後、上記の開始剤溶液170mLを注入し重合を開始した。重合中、エチレンを導入して反応槽圧力を5.9kgf/cm2に、重合温度を60℃に維持し、上記の開始剤溶液を610mL/hrで連続添加した。10時間後に重合率が70%となったところで冷却して重合を停止した。反応槽を開放して脱エチレンした後、窒素ガスをバブリングして脱エチレンを完全に行った。
次いで、減圧下に未反応酢酸ビニルモノマーを除去しエチレン変性ポリ酢酸ビニル(変性PVAc)のメタノール溶液を得た。該溶液にメタノールを加えて調製した変性PVAcの50%メタノール溶液200gに、NaOHの10%メタノール溶液46.5gを添加してケン化を行った(NaOH/酢酸ビニル単位=0.10/1(モル比))。NaOH添加後約2分で系がゲル化した。ゲル化物を粉砕器にて粉砕し、60℃で1時間放置してケン化を更に進行させた後、酢酸メチル1000gを加えて残存するNaOHを中和した。フェノールフタレイン指示薬を用いて中和したことを確認後、濾別して白色固体を得た。
白色固体にメタノール1000gを加えて室温で3時間放置洗浄した。上記洗浄操作を3回繰り返した後、遠心脱液し、乾燥機中70℃で2日間放置乾燥してエチレン変性ポリビニルアルコール(変性PVA)を得た。得られた変性PVAのケン化度は98.4モル%であった。また該変性PVAを灰化した後、酸に溶解して得た試料を原子吸光光度計により分析した。ナトリウムの含有量は、変性PVA100質量部に対して0.03質量部であった。
また、上記変性PVAcのメタノール溶液に、n−ヘキサンを加え、次いで、アセトンを加える沈殿−溶解操作を3回繰り返した後、80℃で3日間減圧乾燥を行って精製変性PVAcを得た。該変性PVAcをd6−DMSO(重水素化ジメチルスルホオキサイド)に溶解し、80℃で500MHzプロトンNMR(JEOL GX−500)を用いて分析したところ、エチレン単位の含有量は10モル%であった。上記の変性PVAcをケン化した後(NaOH/酢酸ビニル単位=0.5(モル比))、粉砕し、60℃で5時間放置して更にケン化を進行させた。ケン化物を3日間メタノールソックスレー抽出し、抽出物を80℃で3日間減圧乾燥を行って精製変性PVAを得た。該変性PVAの平均重合度をJIS K6726に準じて測定したところ330であった。該精製変性PVAを5000MHzプロトンNMR(JEOL GX−500)により分析したところ、1,2−グリコール結合量は1.50モル%および3連鎖水酸基の含有量は83%であった。さらに該精製変性PVAの5%水溶液から厚み10μmのキャストフィルムを作成した。該フィルムを80℃で1日間減圧乾燥した後に、前述の方法により融点を測定したところ206℃であった。
実施例1
上記変性PVA(水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール:海成分)と、変性度6モル%のイソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレ−ト(島成分)を、海成分/島成分が25/75(質量比)となるように260℃で溶融複合紡糸用口金(島数:25島/繊維)より吐出した。紡糸速度が3700m/minとなるようにエジェクター圧力を調整し、繊維束の平均繊度が2.1デシテックスの海島型長繊維をネット上に捕集した。ついで、表面温度42℃の金属ロールでネット上の海島型長繊維シートを軽く押さえ、表面の毛羽立ちを抑えてネットから剥離し、表面温度55℃の金属ロール(格子柄)とバックロール間で200N/mmの線圧で熱プレスして表面繊維が格子状に仮融着した目付31g/m2の長繊維ウエブを得た(工程(1))。
上記長繊維ウエブに油剤および帯電防止剤を付与し、クロスラッピングにより8枚重ねて総目付が250g/m2の重ね合わせウエブを作製し、更に針折れ防止油剤をスプレーした。次いで、針先端から第1バーブまでの距離が3.2mmの6バーブ針を用い、針深度8.3mmにて両面から交互に3300パンチ/cm2でニードルパンチした(工程(2))。このニードルパンチ処理による面積収縮率は68%であり、ニードルパンチ後の絡合ウエブの目付は320g/m2であった。
絡合ウエブを巻き取りライン速度10m/分で70℃熱水中に14秒間浸漬して面積収縮を生じさせた。ついで95℃の熱水中で繰り返しディップニップ処理を実施して変性PVAを溶解除去し、極細長繊維を25本含む、平均繊度2.5デシテックスの繊維束が3次元的に交絡した絡合不織布を作製した(工程(3))。乾燥後に測定した面積収縮率は52%であり、目付は480g/m2、見掛け密度は0.52g/cm3、剥離強力は、4.2kg/25mmであった。
該絡合不織布をバフィングにより厚みを0.82mmに調整後、ソフトセグメントがポリへキシレンカーボネートジオールとポリメチルペンタンジオールの70:30の混合物からなり、ハードセグメントが主として水添メチレンジイソシアネートからなるポリウレタン(融点が180〜190℃、損失弾性率のピーク温度が−15℃、130℃での熱水膨潤率が35%の高分子弾性体)の分散液(固形分比率0.4%)を含浸・乾燥してポリウレタンを極細長繊維に対して0.2質量%の比率(表面層を形成することになる表面部分の高分子弾性体含有量は、極細長繊維に対して0.06質量%)で付与し(工程(4))、5%owfの分散染料により茶色に染色した。工程通過性(染色時の繊維の素抜けやほつれ、バフィング時の繊維の抜け等がない)は良好で、発色の良好な極細長繊維からなる絡合不織布を得た。
上記で得られた染色された極細長繊維からなる絡合不織布の表面を、斜毛ブラシを巻きつけた回転数400rpmのロールで速度7m/分の引き取り速度で毛玉を除去し、進行方向に極細繊維束が配向するように整毛した。次いで回転数400rpmで粒度400メッシュのサンドペーパーで絡合不織布の表面を構成して進行方向に配向した極細繊維束を内部から引き出しつつ極細繊維束を個々の極細長繊維に分離し、実質的に最表面には繊維束が存在しない、極細繊維が束状に存在しない状態で配向した金属光沢を有するスェード調の人工皮革を得た(工程(5))。当該人工皮革の表面層の厚みは、70μmであり、基体層の厚みは700μmであった。
得られたスェード調の人工皮革の表面を165℃、400N/cmの条件で熱プレス処理を行い、表面付近の起毛繊維の配向を固定したのち、該繊維配向が崩れないように、片刃カミゾリを使用してTD方向に平行な方向で表面から裏面まで一気に切断した。そして、切断面の画像を300倍のSEMにより撮影し、当該画像(13.5×18cmのSEM写真)をもとに表面から20μmの深さに存在する前記極細長繊維の切断端の数(X)を求め、上記方向と直交する方向(MD方向に平行な方向)に切断し、同様にして切断端の数(Y)を求めた。X/Yは3.2であった。
得られた人工皮革の縦方向断面と横方向断面の電子顕微鏡写真(300倍)を図1と2に示す。
実施例2
粒度400メッシュのサンドペーパーに変えて600メッシュのサンドペーパーにより回転数600rpmで処理した以外は、実施例1と同様にして、スェード調の人工皮革を得た。当該人工皮革も、実質的に最表面には繊維束が存在せず、極細繊維が束状に存在しない状態で配向しており、表面に金属光沢を有していた。
実施例1と同様にしてX/Yを求めたところ、1.5であった。
実施例3
染色された極細長繊維からなる絡合不織布を、さらに表面処理剤としてフッ素系撥水剤(アクリル樹脂とC815単位のランダム共重合体)の2%水分散液に含浸、ピックアップ率64%で絞液し、120℃で2分乾燥させて表面に存在させた絡合不織布を使用した以外は、実施例1と同様にして、スェード調の人工皮革を得た。当該人工皮革も、実質的に最表面には繊維束が存在せず、極細繊維が束状に存在しない状態で配向しており、表面に金属光沢を有していた。
実施例1と同様にしてX/Yを求めたところ、20であった。
比較例1
工程(3)、(4)の順序を入れ替え、かつ付与するエマルジョンの濃度を50%にして付着量を35%にした以外は、実施例1と同様にして、スェード調の人工皮革を得た。当該人工皮革の表面層の厚みは50μm、基体層の厚みは800μmであったが、極細繊維束の周りが高分子弾性体で囲まれている為、整毛工程では高分子弾性体を傷つけるのみで繊維束を極細長繊維に分繊することが出来ず、また、一方向に配向させることも出来なかった。実施例1と同様にしてX/Yを求めたところ、1.2であった。得られた人工皮革の縦方向断面と横方向断面の電子顕微鏡写真を図3と4に示す。
比較例1の人工皮革は短毛のスェード調の外観は有しているものの、金属光沢は全く見られなかった。
比較例2
実施例1の海島型長繊維を25〜51mmに切断してステープルを得た。このステープルを用いる以外は実施例1と同様にして絡合不織布を得、この絡合不織布にポリウレタンを付与し、染色した。得られた染色絡合不織布を実施例1と同様に整毛、起毛しようとしたが表面部分のポリウレタン量が少ないためステープルのす抜けが激しく、整毛、起毛処理を十分に行うことができなかった。
す抜けを防止するために、ポルウレタン付与量を極細長繊維に対して32質量%(固形分基準)に増やして実施例1と同様に整毛、起毛した。しかし、表面部分のポリウレタン量が多過ぎて、極細繊維が十分に配向せず、X/Yは1.15であった。

Claims (5)

  1. 基体層と該基体層の一方の面に形成されてなる表面層とを有し、
    前記基体層が極細長繊維の繊維束と高分子弾性体とを含み、
    前記表面層が極細長繊維、又は、極細長繊維と高分子弾性体とからなり、
    下記条件を満たす人工皮革。
    X/Y≧1.5
    (上記式中、Xは該人工皮革の任意断面における表面から20μmの深さに存在する前記極細長繊維の切断端の数であり、Yは該断面と直交する断面における表面から20μmの深さに存在する前記極細長繊維の切断端の数であり、かつ、X>Yである。)
  2. 前記表面層が極細長繊維の繊維束を実質的に含まない請求項1に記載の人工皮革。
  3. 前記表面層の高分子弾性体含有量が、人工皮革中の全極細長繊維に対して9質量%以下である請求項1または2に記載の人工皮革。
  4. 下記工程(1)〜(5)を含む人工皮革の製造方法。
    (1)極細繊維束形成性長繊維からなる長繊維ウエブを製造する工程、
    (2)前記長繊維ウエブに絡合処理を施し、絡合ウエブを製造する工程、
    (3)前記絡合ウエブ中の極細繊維束形成性長繊維を極細繊維の繊維束に変換し、絡合不織布を製造する工程を順次含み、
    (4)前記絡合不織布に高分子弾性体を付与する工程、および
    (5)前記絡合不織布の表面に存在する繊維束から極細長繊維を起毛し、起毛した前記極細長繊維を整毛する処理、または、前記絡合不織布の表面に存在する繊維束を整毛し、整毛した繊維束から極細長繊維を起毛する処理を行い、前記極細長繊維、又は、前記極細長繊維及び前記高分子弾性体からなり、かつ、下記条件
    X/Y≧1.5
    (上記式中、Xは該人工皮革の任意断面における表面から20μmの深さに存在する前記極細長繊維の切断端の数であり、Yは該断面と直交する断面における表面から20μmの深さに存在する前記極細長繊維の切断端の数であり、かつ、X>Yである。)
    を満たす表面層を形成する工程。
  5. 前記工程(4)と(5)との間に、表面処理剤による表面処理を前記絡合不織布に施す工程を含む請求項4に記載の人工皮革の製造方法。
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