JP7299821B2 - 立毛人工皮革及びその製造方法 - Google Patents
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Description
本工程においては、はじめに、溶融紡糸により海島型複合繊維からなるウェブを製造する。海島型複合繊維は、後の適当な段階で海成分を抽出または分解させて除去することにより、島成分からなる繊維束状の極細繊維を形成させる。
ウェブを4~100層程度重ねて絡合させることにより、海島型複合繊維の絡合ウェブを形成する。絡合ウェブは、ニードルパンチや高圧水流処理等の公知の不織布製造方法を用いてウェブに絡合処理を行うことにより形成される。例えば、ニードルパンチによる絡合処理の場合、はじめに、ウェブに針折れ防止油剤、帯電防止油剤、絡合向上油剤などのシリコーン系油剤または鉱物油系油剤を付与する。その後、ニードルパンチにより三次元的に繊維を絡合させる絡合処理を行う。ウェブに絡合処理を行うことにより、繊維密度が高く、繊維の抜けを起こしにくい絡合ウェブが得られる。
次に、絡合ウェブを熱収縮させることにより、絡合ウェブの繊維密度および絡合度合を高めてもよい。熱収縮処理の具体例としては、例えば、絡合ウェブを水蒸気に連続的に接触させる方法や、絡合ウェブに水を付与した後、加熱エアーや赤外線などの電磁波により絡合ウェブに付与した水を加熱する方法等が挙げられる。
絡合ウェブ中の海島型複合繊維は、海成分を溶解除去または分解除去させることにより、繊維束状の極細繊維に変換される。例えば、水溶性のポリビニルアルコール系樹脂を海成分に用いた海島型複合繊維の場合、熱水加熱処理することにより海成分であるポリビニルアルコール系樹脂が溶解除去される。
得られる繊維絡合体の形態安定性や充実感を高める目的で、極細繊維化処理を行う前の絡合ウェブにまたは極細繊維化処理を行った後の繊維絡合体に、高分子弾性体を含浸付与する。高分子弾性体の具体例としては、例えば、ポリウレタン,アクリル系弾性体,ポリアミドエラストマー等のポリアミド系弾性体,ポリエステルエラストマー等のポリエステル系弾性体,ポリスチレン系弾性体,ポリオレフィン系弾性体等が挙げられる。これらの中では、ポリウレタンが柔軟性と充実感に優れる点からとくに好ましい。
このようにして得られた繊維基材は必要に応じて、複数枚にスライスされたり、裏面を研削されて厚さ調整されたりした後、繊維基材の立毛面を形成する面にバフィング処理が施される。
このようにして得られた立毛人工皮革基材は、通常、染色することが好ましい。染色は、分散染料、カチオン染料、反応染料、酸性染料、金属錯塩染料、硫化染料、硫化建染染料などを主体とした染料を繊維の種類に応じて適宜選択し、パッダー、ジッガー、サーキュラー、ウィンスなど繊維の染色に通常用いられる公知の染色機を使用して行われる。例えば、極細繊維がポリエステル系極細繊維の場合には、分散染料を用いて高温高圧染色により染色することが好ましい。また、染色処理している場合には、染色工程の後の何れかの工程の前後で堅牢度を高めるために洗浄する工程を設けることが好ましい。
海成分の熱可塑性樹脂としてエチレン変性ポリビニルアルコール、島成分の熱可塑性樹脂としてイソフタル酸6モル%変性ポリエチレンテレフタレートをそれぞれ個別に溶融させた。DSCによって測定されたイソフタル酸6モル%変性ポリエチレンテレフタレートの軟化温度(融点ピーク)は、135℃であった。
繊度は、立毛人工皮革の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を3000倍で撮影し、繊維の断面をランダムに10個選んで断面積を測定し、その断面積の平均値を算出し、各樹脂の密度から換算して算出した。
軟化温度の測定は、示差走査熱量計において、アルミパンに極細繊維10mgを密閉して収容し、5℃から250℃まで10℃/分で昇温させたときに測定された吸熱ピークのピークトップを融点ピークとした。
立毛人工皮革の立毛面の極細繊維に対してリントブラシをかけて順目に揃えた。そして、立毛方向を揃えた立毛人工皮革の表面を、マイクロスコープを用いて12倍で写真を撮影した。このときの視野は、タテ18mm×ヨコ24mmであった。そして、得られた写真をA4サイズに拡大し、立毛した極細繊維の立毛領域と、膜化領域との境界線を引いた。そして、境界線に沿って立毛領域と膜化領域とを切り離し、各領域の写真片を重量測定して、膜化領域の円換算径及び立毛面における面積割合を算出した。また、拡大写真から選ばれた任意の膜化領域10点(10より少ない場合は全数)の境界間最短距離をノギスで測定し平均値から膜化領域間の平均最短距離を求めた。サンプル5枚×2カ所=計10枚の写真について各値を算出し、それらの平均値を求めた。
立毛面の膜化領域のISO 25178に準じた算術平均高さSaを、非接触式の表面粗さ・形状測定機である「ワンショット3D測定マクロスコープVR-3200」((株)キーエンス製)を用いて測定した。具体的には、立毛調人工皮革の立毛面を順目方向にシールブラシで整毛し、整毛された立毛面の18mm×24mmの範囲を高輝度LEDから照射された構造化照明光により、400万画素モノクロC-MOSカメラで12倍の倍率で歪みの生じた縞投影画像撮影を行い、算術平均高さ(Sa)を求めた。測定は3回行い、その平均値を各数値として採用した。
人工皮革の製造に従事する10人のモニターに表面の外観を確認させ、表面の優美な光沢感を、以下の判定基準に基づいて多数決で判定した。
A:パール感がある
B:わずかにパール感がある
C:パール感がない
人工皮革の製造に従事する10人のモニターに表面の触感を確認させ、以下の判定基準に基づいて触感を多数決で判定した。
A:手に異物感を与えなかった。
B:手にわずかに異物感を与えた。
C:手に顕著に異物感を与えた
実施例1において、バフィング処理の条件を下記条件に変更することにより、表1に示したような表面を形成した以外は実施例1と同様にして立毛人工皮革を得た。そして、同様にして評価した。結果を表1に示す。
バフィングの条件は、バフローラの回転数は800rpm、繊維基材の搬送速度が3m/min、バフローラの負荷電流が15Aであった。
実施例1において、バフィング処理の条件を下記条件に変更することにより、表1に示したような表面を形成した以外は実施例1と同様にして立毛人工皮革を得た。そして、同様にして評価した。結果を表1に示す。
バフィングの条件は、バフローラの回転数は1500rpm、繊維基材の搬送速度が6m/min、バフローラの負荷電流が30Aであった。
実施例1において、バフィング処理の条件を下記条件に変更することにより、表1に示したような表面を形成した以外は実施例1と同様にして立毛人工皮革を得た。そして、同様にして評価した。結果を表1に示す。
バフィングの条件は、#400のサンドペーパを用い、バフローラの回転数は1500rpm、繊維基材の搬送速度が3m/min、バフローラの負荷電流が40Aであった。
実施例1において、バフィング処理の条件を下記条件に変更することにより、表1に示したような表面を形成した以外は実施例1と同様にして立毛人工皮革を得た。そして、同様にして評価した。結果を表1に示す。
バフィングの条件は、#120のサンドペーパを用い、バフローラの回転数は1300rpm、繊維基材の搬送速度が6m/min、バフローラの負荷電流が40Aであった。
極細繊維の繊度が0.1dtexの繊維基材の代わりに、見かけ密度0.49g/cm3であり、不織布/ポリウレタンの質量比は90/10であった。また、繊維絡合体である不織布を形成する極細繊維の繊度が0.5dtexである繊維基材を用いた以外は実施例1と同様にして立毛人工皮革を得た。そして、同様にして評価した。結果を表1に示す。
実施例1において、バフィング処理の条件を下記条件に変更することにより、表1に示したような表面を形成した以外は実施例1と同様にして立毛人工皮革を得た。そして、同様にして評価した。結果を表1に示す。また、比較例1の立毛人工皮革の立毛面をマイクロスコープにて12倍で観察したときの写真の一例を図4に示す。
バフィングの条件は、#120のサンドペーパを用い、バフローラの回転数は1000rpm、繊維基材の搬送速度が6m/min、バフローラの負荷電流が10Aであった。
実施例1において、バフィング処理の条件を下記条件に変更することにより、表1に示したような表面を形成した以外は実施例1と同様にして立毛人工皮革を得た。そして、同様にして評価した。結果を表1に示す。
バフィングの条件は、#120のサンドペーパを用い、バフローラの回転数は1500rpm、繊維基材の搬送速度が6m/min、バフローラの負荷電流が40Aであった。
実施例1において、バフィング処理の条件を下記条件に変更することにより、表1に示したような表面を形成した以外は実施例1と同様にして立毛人工皮革を得た。そして、同様にして評価した。結果を表1に示す。
バフィングの条件は、#600のサンドペーパを用い、バフローラの回転数は1500rpm、繊維基材の搬送速度が6m/min、バフローラの負荷電流が40Aであった。
実施例1において、使用樹脂を未変性タイプに変更した以外は実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
バフィングの条件は、#600のサンドペーパを用い、バフローラの回転数は1500rpm、繊維基材の搬送速度が6m/min、バフローラの負荷電流が40Aであった。
2 複数の膜化領域
10 立毛人工皮革
11 送出ローラ
12 巻取ローラ
13 圧接ローラ
14 バフローラ
15 駆動ローラ
16 研磨ベルト
20 バフィング処理装置
Claims (4)
- 0.5dtex以下の極細繊維の繊維絡合体及び前記繊維絡合体に含浸付与された高分子弾性体を含む繊維基材を含み、
少なくとも一面に、立毛した前記極細繊維を含む立毛面を有し、
前記立毛面において、前記極細繊維を形成する樹脂が膜化された複数の膜化領域を不連続に有し、
前記膜化領域の平均円換算径が0.3~8mmであり、その平均数密度が1~100個/cm2であることを特徴とする立毛人工皮革。 - 前記膜化領域のISO 25178に準じて測定された算術平均高さSaが0~20μmである請求項1に記載の立毛人工皮革。
- 前記膜化領域間の平均最短距離が0.01mm以上である請求項1または2に記載の立毛人工皮革。
- 請求項1に記載の立毛人工皮革の製造方法であって、
前記0.5dtex以下の極細繊維の繊維絡合体及び前記繊維絡合体に含浸付与された高分子弾性体を含む繊維基材を準備する工程と、
前記繊維基材の少なくとも一面をバフィングすることにより、一部の前記極細繊維を形成する樹脂を膜化させながら、その他の前記極細繊維を立毛させることにより、複数の前記膜化領域を含む立毛面を形成する工程と、を含む立毛人工皮革の製造方法。
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