JP2010215728A - 橙色蛍光体とその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】近紫外線から可視領域の光で励起される橙色蛍光体であって、Eu2SiS4と同じ単斜晶系の結晶構造を有し、Eu濃度をxとする場合の一般式(CaBa)1−xEuxSiS4で表されることを特徴とする橙色蛍光体。
【選択図】図6
Description
このような可視光で励起可能な蛍光体を用いた白色LEDはエネルギー変換効率が高く、省エネルギーに有利である。また赤外線や紫外線を発しないことから冷凍食品の展示用照明などに幅広く使用され始めている。
そこで、本発明は波長400〜500nmの近紫外線から可視領域の光で励起され、高輝度に発光する新しい橙色蛍光体およびその製造方法の提供を目的とする。
本発明に係る橙色蛍光体は、第一の工程および第二の工程の2工程からなる製造方法によって形成されるのが望ましい。
本発明に係る橙色蛍光体は、紫外光で励起するランプや近紫外や可視光を放射する発光ダイオードと組み合わせて、高輝度な橙色発光・表示素子、または他の蛍光体などと組み合わせて白色や色々な色の発光・表示素子の形成を容易にするものである。
この一般式中の変数xはEu濃度を示すもので、Euが含まれていない場合には橙色の蛍光を示さず、xが0.2を超えると濃度消光により輝度が低下することから、このxの範囲は0<x≦0.20であることが必要であり、より好ましいxの範囲は0.001<x≦0.09である。
この橙色蛍光体が、単一相の結晶構造を有し、賦活剤としてCa又はBaの一部をEuで置換したものであることが図1よりわかる。
本発明の一般式(CaBa)1−xEuxSiS4(0<x≦0.20)で表される橙色蛍光体の製造は、Euが均一に分散するEu添加CaBaS2粉末又はEu添加CaSとEu添加BaSの混合粉末、Si粉末およびS粉末を、所定のEu濃度x0を持つ(CaBa)1−x0Eux0SiS4となるように所定量を混合した後、石英アンプルに真空封入し、900℃以上1000℃以下の温度で焼成して合成する製造方法で行なわれる。なお、S粉末は高温で蒸気になるため所定量よりも過剰に添加しても良い。
また、この真空封入して焼成する以外の方法としては、例えば真空引き後にArガス置換しホットプレスして合成する方法を用いることも可能であるが、Arガス置換時には、乾燥Arガスや高純度Arガスなどを使用して酸素や水の混入を防止すると良い。
第一の工程として、酸化Euを酸で溶解した溶解液を乾燥して得られる乾燥物を水に溶解し、グリコールとオキシカルボン酸、炭酸Baと炭酸Caを順次加えて溶解し、その溶解液を加熱してゲル化させ、そのゲルを熱分解、大気焼成することによりEuが均一に分散するEu添加Ca0.5Ba0.5CO3を作製する。
加えるオキシカルボン酸としてはクエン酸、リンゴ酸、酒石酸などが使用でき、クエン酸は特に好ましい。グリコールとしてはプロピレングリコールやエチレングリコール、ポリビニルアルコールなどが使用できる。特にはプロピレングリコールが好ましい。
続いて、得られたゲルを400〜500℃、より好ましくは440〜460℃に加熱し、ゲルを熱分解させて前駆体粉末を作製する。その後、得られた前駆体粉末を軽く粉砕し炭酸塩化するためアニールを行なう。アニール処理条件としては、アニール温度は650〜1000℃、より好ましくは750〜900℃であり、アニール時間は1〜24時間、より好ましくは2〜10時間である。このようにして第一の工程によるEuが均一に分散するEu添加Ca0.5Ba0.5CO3が得られる。
また、硫酸塩を含む場合は粉末が黄色を示す場合がある。そのような場合は、真空中でアニール処理を行うことで硫化物に還元することができる。その条件としては真空度を0.1〜5Pa程度で、アニール温度920〜1000℃で7〜12時間行うと硫酸塩を硫化物へ還元することができる。
以下に実施例を用いて、本発明を詳細に説明する。
まず、第一の工程で作製する炭酸塩のEu濃度xが0.01になるように、酸化ユーロピウム(フルウチ化学株式会社製 3N)0.1174gを濃度15%の硝酸(関東化学株式会社製 60%)1mlに溶解し、次いで5分後に純水5mlを加え、更に完全に溶解させるため1時間攪拌した。攪拌後、この液にプロピレングリコール(関東化学株式会社製 99%)25.5mlとクエン酸(和光純薬株式会社製 98%)25.7354gを加え、このクエン酸が完全に溶解した後、液温を40℃にしてさらに炭酸バリウム(BaCO3)3.2708gと炭酸カルシウム(CaCO3)1.6571gを加え、8時間攪拌して炭酸塩を完全に溶解させた。続いて、炭酸塩が完全に溶解した混合液の液温を200℃に高めて、粘性を有するゲル状になるまで攪拌した。攪拌後、得られたゲルをマントルヒーターで450℃に加熱し、ゲルを熱分解させて前駆体粉末を作製し、この前駆体粉末をメノウ乳鉢で軽く粉砕した後アルミナの坩堝に入れて管状炉により800℃、2時間のアニールを行って炭酸塩を作製した。
第二の工程は、第一の工程で作製したEuが均一に分散したEu添加Ca0.5Ba0.5CO3粉末1.0gを、硫化水素濃度が10%のアルゴン−硫化水素混合ガス中で加熱して、950℃、10時間のアニールを行いEu添加CaBaS2粉末又はEu添加CaSとEu添加BaSの混合粉末を得る。その粉末のX線回折を行ったところCaSとBaSに一致するXRDパターンのみが観察された。
図1から明らかなように、得られたEu添加CaBaSiS4粉末には、CaSの弱いピークがあるがCaBaSiS4のほぼ単相であることを確認した。
比較例1として、化学式Ca0.99Ba0.99Eu0.02SiS4を得るために、まずBa1.99Eu0.01SiS4とCa1.99Eu0.01SiS4を合成し、これらを混合、ハンドプレスでペレットを作製し、そのペレットを石英アンプルに真空封入し、900℃以上1000℃以下の温度で焼成する製造方法による試料を作製して評価を行った。
酸化ユーロピウム(フルウチ化学株式会社製 3N)0.0893gを濃度15%の硝酸(関東化学株式会社製 60%)1.0mlに溶解し、次いで5分後に純水75mlを加え、更に完全に溶解させるため1時間攪拌した。攪拌後、この液にプロピレングリコール(関東化学株式会社製 99%)19mlとクエン酸(和光純薬株式会社製 98%)19.4432mlを加え、このクエン酸が完全に溶解した後、液温を40℃にしてさらに炭酸バリウム(BaCO3)4.9448gを加え、8時間攪拌して炭酸塩を完全に溶解させた。続いて、炭酸塩が完全に溶解した混合液の液温を200℃に高めて、粘性を有するゲル状になるまで攪拌した。攪拌後、得られたゲルをマントルヒーターで450℃に加熱し、ゲルを熱分解させて前駆体粉末を作製し、この前駆体粉末をメノウ乳鉢で軽く粉砕した後にアルミナの坩堝に入れてボックス炉により800℃、2時間のアニールを行って炭酸塩を作製した。Euの濃度は、化学式Ba1.99Eu0.01SiS4となるように添加している。
酸化ユーロピウム(フルウチ化学株式会社製 3N)0.1741gを濃度15%の硝酸(関東化学株式会社製 60%)1mlに溶解し、次いで5分後に純水5mlを加え、更に完全に溶解させるため1時間攪拌した。攪拌後、この液にプロピレングリコール(関東化学株式会社製 99%)37mlとクエン酸(和光純薬株式会社製 98%)37.6066gを加え、このクエン酸が完全に溶解した後、液温を40℃にしてさらに炭酸カルシウム(CaCO3)4.9002gを加え、8時間攪拌して炭酸塩を完全に溶解させた。続いて、炭酸塩が完全に溶解した混合液の液温を200℃に高めて、粘性を有するゲル状になるまで攪拌した。攪拌後、得られたゲルをマントルヒーターで450℃に加熱し、ゲルを熱分解させて前駆体粉末を作製し、この前駆体粉末をメノウ乳鉢で軽く粉砕した後にアルミナの坩堝に入れて管状炉により800℃、2時間のアニールを行って炭酸塩を作製した。Euの濃度は、化学式Ca1.99Eu0.01SiS4となるように添加している。
化学式(CaBa)0.99Eu0.01SiS4となるように、先に作製したEu添加Ba2SiS40.2161gおよびEu添加Ca2SiS40.1186gを秤量し、これらを混合し、メノウ乳鉢で20分混合し、この混合物をハンドプレスで2MPaまで加圧して、成型体(ペレット)を4個作製した。次に、このペレットを真空封入して4個の石英アンプルを作製し、その石英アンプルを、900℃、950℃、975℃、1000℃まで加熱し24時間保持による熱処理を行なって比較例1の供試材を作製した。
図4から明らかなように、1000℃で焼成した試料は部分的に溶解が起こり、石英アンプルに接した試料はアンプル面に沿った形状に変化した。975℃も1000℃と同様に部分的に溶融が見られた。950℃では溶解は起こっていなかった。
これらの試料のX線回折結果を図5に示す。図5から焼成物からはCaBaSiS4とCa2SiS4とCaSのピークが見られ、溶解した試料では異相であるCa2SiS4とCaSのピークが大きいことがわかる。
比較例2として、石英アンプル加熱温度を1000℃にした以外は比較例1と同様な方法で化学式Ca1.98Eu0.02SiS4粉末を作成した。
実施例1および比較例1と2で作製した蛍光体の蛍光測定を行い、その輝度を比較した。
蛍光測定の結果は、従来からの黄色蛍光体であるY3Al5O12:Ce3+(YAG:Ce,化成オプトニクス株式会社製)と比較した。図6に実施例1の結果を示し、図7に比較例1の結果を示す。
尚、図6、図7において、長波長側にピークを示す曲線が発光波長範囲を示し、短波長側にピークを持つ曲線が励起波長範囲を示している。
また、図7からは、比較例1の製造方法では焼成温度と共に輝度が大きくなるが、1000℃でもYAG:Ce蛍光体よりも輝度が低い。1000℃焼成では510nmにサブピークが現れた。これはX線回折で現れたBa2SiS4に対応したEu添加Ba2SiS4の蛍光と思われる。
Claims (5)
- 近紫外線から可視領域の光で励起される橙色蛍光体であって、
Eu2SiS4と同じ単斜晶系の結晶構造を有し、Eu濃度をxとする場合の一般式(CaBa)1−xEuxSiS4で表されることを特徴とする橙色蛍光体。 - 前記Eu濃度xが、0<x≦0.2の範囲であることを特徴とする請求項1記載の橙色蛍光体。
- Euが均一に分散するEu添加CaBaS2粉末又はEu添加CaSとEu添加BaSの混合粉末、Si粉末およびS粉末を、Eu濃度をxとする場合の一般式(CaBa)1−xEuxSiS4となるように所定量を混合した混合物を、石英アンプルに真空封入し、前記石英アンプルを900℃以上1000℃以下の温度で焼成することで一般式(CaBa)1−xEuxSiS4で表される橙色蛍光体を作製することを特徴とする橙色蛍光体の製造方法。
- 前記Eu濃度xが、0<x≦0.2の範囲であることを特徴とする請求項3記載の橙色蛍光体の製造方法。
- 前記Euが均一に分散するEu添加CaBaS2粉末又はEu添加CaSとEu添加BaSの混合粉末が、第一の工程である酸化Euを酸で溶解した溶解液を乾燥して得られた乾燥物を水に溶解し、次いでグリコール、オキシカルボン酸、炭酸Ba、炭酸Caを順次加えた溶解液を作製し、前記作製した溶解液を加熱してゲル化させ、前記ゲルを熱分解、大気焼成することによりEuが均一に分散するEu添加Ca0.5Ba0.5CO3を作製する工程、ついで、第二の工程である前記Euが均一に分散するEu添加Ca0.5Ba0.5CO3を、硫化水素雰囲気下で硫化してEuが均一に分散するEu添加CaBaS2粉末又はEu添加CaSとEu添加BaSの混合粉末を作製する工程によって作製されることを特徴とする請求項3記載の橙色蛍光体の製造方法。
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