JP2011032416A - 蛍光体とその製造方法 - Google Patents

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義仁 鈴木
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聡子 手束
Yuji Takatsuka
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Abstract

【課題】波長400〜500nmの近紫外線から可視領域の光で励起され、従来の蛍光灯用蛍光体よりも高輝度に発光する新しい蛍光体、および蛍光体の変換効率を容易に高めることのできる蛍光体の製造方法の提供。
【解決手段】アルカリ土類金属元素から選択される少なくとも1種の元素A、ガリウム、珪素、酸素、硫黄、およびルミネセンス特性を付与する希土類元素を基材とする化合物であって、前記化合物は、AGa24型結晶相およびSiO結晶相で構成される複合粒子であることを特徴とする蛍光体。
【選択図】図1

Description

本発明は、紫外から可視領域の光励起により、高輝度な発光を示す新規な蛍光体およびその製造方法に関するものである。
紫外から可視領域の光を吸収して高輝度発光を示す蛍光体は、様々な照明・表示装置などで使用されている。最近、波長350〜500nmの近紫外から可視光を放出する発光ダイオードを励起光源にして高効率に発光する照明が注目され、特に、高効率の青色発光ダイオードとその青色光により励起される蛍光体を組み合わせることで白色光をつくる照明に注目が集まり、それに適した高効率の蛍光体の開発が進められている。
このような可視光で励起可能な蛍光体を用いた白色LEDはエネルギー変換効率が高く、省エネルギーに有利である。また赤外線や紫外線を発しないことから冷凍食品の展示用照明などに幅広く使用され始めている。
これまでに、例えば青色蛍光体のBaMgAl1017:Eu2+(BAM)、Sr10(POl2:Eu2+(SCA)、緑色蛍光体のBaMgAl1017:Eu2+,Mn3+(BAM:Mn)やCaScSi12:Ce3+、SrGa:Eu2+や(Ba、Sr)SiO:Eu2+が開発されている(非特許文献1、特許文献1参照)。
一方、赤色蛍光体としては、YS:Eu3+やCaAlSiN:Eu2+、BaZnS:Eu2+が、また黄色蛍光体としては、YAl12:Ce3+(YAG:Ce)やEu賦活Ca−αサイアロン、CaGa:Eu2+やSrSiO:Eu2+などが開発されてきている(例えば、非特許文献2、3、特許文献2参照)。特に青色LEDとYAG:Ceを用いた白色LEDは高いエネルギー変換効率を示している。
さらには高効率照明やディスプレイへの応用を考えた場合、視感度の高い緑色で高輝度、高エネルギー変換効率の蛍光体も必要とされる(例えば非特許文献4)。この中でSrGa:Eu2+は530nm、CaGa:Eu2+は発光波長が558nmと視感度のピーク波長555nmに近く、高効率のLED励起型発光素子や白色LEDに適した蛍光体である(例えば特許文献3)。
このSrGa:Eu2+に透明な被覆層を含むことが有効であることが知られている(特許文献4)。さらにSrGa:Eu2+合成時に数%Gaが過剰な組成で作成すると輝度が高くなることも知られている(例えば特許文献5)。
この蛍光体の耐熱性の改善には、軟化点800℃以下、かつSn成分含有量が50質量%以下であるガラス粉末と、一般式XY24:Z(Z:発光中心)(式中、X=Ca,Ba,SrまたはZn、Y=GaまたはAl、Z=Eu2+,Ce3+またはMn2+)で表される構造を有する硫化物蛍光体粉末材料で、ガラス粉末と硫化物蛍光体粉末を、質量分率で0.01〜30%含有する材料を焼成して製造することが有効であることも知られている(例えば、特許文献6参照)。なお、多数の元素を含む酸化物合成法として錯体重合法が有効であることが知られている(例えば、特許文献7参照)。
WO2003/032407 特開昭63−000995号公報 特表2004−505167号公報 特開平04−279693号公報 特許第3983734号公報 特開2008−143978 特開平06−115934号公報
日本学術振興会 光電相互変換第125委員会編、「発光と受光の物理と応用」、培風館、2008、p158 「発光デバイスの動向」、東レリサーチ刊、2006、p.230−239 広崎他、「窒化物蛍光体の開発」、マテリアルインテグレーション、2007、第20巻、第2号、p17−22 五十嵐、「広色域白色LEDに要求される蛍光体特性」、第326回蛍光体同学会予稿集
このように、さまざまな発光色の蛍光体が開発、提案されている中で、これからのLED照明の実用化には、従来の蛍光灯のエネルギー変換効率よりはるかに高い変換効率が必要となり、そのためには蛍光灯用蛍光体よりも変換効率の高い蛍光体が要求された。
また、従来の蛍光体の製造方法の中で、従来水溶性の塩を含んだ水溶液にテトラエトキシシランなどのアルコキシドを加えると水への溶解性が悪いため層分離を起こして均一な組成の液を作製することが難しく、そのため100μm以下で均一に混合した複合粒子を作製できず、変換効率を高めることが困難でもあった。
そこで、本発明は波長400〜500nmの近紫外線から可視領域の光で励起され、従来の蛍光灯用蛍光体よりも高輝度に発光する新しい蛍光体の提供、さらには、その蛍光体の変換効率を容易に高めることのできる蛍光体の製造方法の提供を目的とするものである。
本発明に係る蛍光体は、アルカリ土類金属元素から選択される少なくとも1種の元素A、ガリウム、珪素、酸素、硫黄、およびルミネセンス特性を付与する希土類元素を基材とする化合物であって、この化合物はAGa24型結晶相およびSiO結晶相で構成される複合粒子で、元素Aがカルシウム、ストロンチウムから選択される少なくとも一種からなり、希土類金属がEuであり、その濃度が一般式A1−xEuGaにおける変数xが0.001以上、0.1以下の蛍光体である。
次に、本発明に係る蛍光体の製造方法は、アルカリ土類金属元素から選択される少なくとも1種の元素A、ガリウム、珪素、酸素、硫黄、およびルミネセンス特性を付与する希土類元素のEuを基材とするAGa24型結晶相とSiO結晶相とからなる複合粒子である蛍光体の製造方法であって、Euが均一に分散した前駆体であり、アルカリ土類金属ガリウム複合酸化物および珪素酸化物からなる前駆体、若しくはアルカリ土類金属の炭酸塩、ガリウム酸化物および珪素酸化物からなる前駆体、を合成する第1の工程と、前記第1の工程で得られる前駆体を、二硫化炭素を含む不活性ガス中で熱処理して還元硫化する第2の工程とからなる蛍光体の製造方法である。
この第1の工程は、希土類金属の硝酸塩、アルカリ土類金属の塩、硝酸ガリウムおよび珪素化合物を水に溶解し、オキシカルボン酸を加えて70〜90℃で溶解し、グリコールを加え、更に100〜150℃に加熱してゲルを得た後に、そのゲルを400〜500℃で熱処理し、次に700〜850℃の温度による熱処理を施して前駆体を合成する工程で、前駆体作製時のアルカリ土類金属元素Aとガリウムとの割合がモル比で、A:Gaが1:2.0〜1:2.2、且つアルカリ土類金属元素Aと珪素の割合がモル比で、A:Siが1:2〜1:9であることが望ましい。
第2の工程は、第1の工程で得られた前駆体を、二硫化炭素を含んだ不活性ガス雰囲気下、900〜1100℃の温度による熱処理によって還元硫化してAGa24型結晶相とSiO結晶相とからなる複合粒子の蛍光体を作製する工程である。
さらに、本発明に係る製造方法で用いる珪素化合物は、水溶性珪素化合物であることが望ましい。
本発明は、波長300〜500nmの近紫外線領域から可視領域の光で励起して高輝度に発光する新規な蛍光体およびその製造方法で、本発明に係る蛍光体は、紫外光で励起するランプや近紫外や可視光を放射する発光ダイオードと組み合わせて、高輝度な黄色や緑色の発光・表示素子、または青色発光ダイオードや他の蛍光体などと組み合わせて白色や色々な色の発光・表示素子の形成を容易にするものである。
実施例1で作製したSi/Ca=2.5のCaGa24型結晶相とSiO結晶相からなる複合粒子蛍光体のSEM観察結果であり、図1(a)はSEM像を示し、(b)は図1(a)の破線白丸領域の拡大SEM像、(c)は図1(b)の実線黒丸領域のEDX分析結果を示すものである。 実施例2で作製したSi/Sr=2.5のSrGa24型結晶相とSiO結晶相との複合粒子蛍光体のSEM観察結果であり、図2(a)はSEM像を示し、(b)は図2(a)の実線黒丸領域のEDX分析結果を示すものである。 実施例3で作製したCaGa24型結晶相とSiO結晶相からなる複合粒子蛍光体のX線回折パターンである。 実施例3で作製したSi/Ca=8のCaGa24型結晶相とSiO結晶相からなる複合粒子蛍光体のSEM観察結果であり、(a)はSEM像、(b)はSEM像の黒丸数字の領域に対応するEDX分析による各領域における各元素の濃度を示すものである。 実施例3で作製したSi/Ca=0、1、6、8、10の蛍光スペクトル測定結果を示す図である。 不活性ガス中に二硫化炭素(CS)を含ませる方法を示す図である。
本発明の蛍光体は、アルカリ土類金属から選択される少なくとも1種の元素Aと、ガリウム、珪素、酸素、硫黄とルミネセンス特性を付与することができる希土類金属とを基材とする化合物においてAGa24型結晶相とSiO結晶相とからなる複合粒子で構成されている。
ここで本発明における複合粒子とは、図1および図2に示す粒子径が0.5μmから20μmのAGa24型結晶の粒子をコアとして、その外周部にSiO結晶相を有する粒子径が3μmから100μmの蛍光体粒子である。
この複合粒子の成分を構成する元素Aは、アルカリ土類金属元素であって、特に発光波長が530nmから560nmである緑色とするにはカルシウム(Ca)またはストロンチウム(Sr)を用いる。
ルミネセンス特性を付与する希土類金属としては、ユーロピウム(Eu)を用い、その濃度は、一般式A1−xEuGaで表され、この一般式中の変数xは、Eu濃度を示すもので、Euが少ない場合や、まったく含まれていない場合には黄色や緑色の蛍光を示さず、またxが0.1を超えると濃度消光により輝度が低下することから、このxの範囲は0.001以上、0.10以下であることが必要であり、より好ましいxの範囲は0.002を超え、0.08以下とする。
本発明の蛍光体は、X線回折レベルにおいてはAGa型結晶相とSiO結晶相(ICSDの100346)として観察される。A元素がCaの場合のX線回折パターンを図3に示す。
図3からは、この蛍光体がCaGa型結晶相とSiO結晶相からなることが分かる。また賦活剤として添加しているEuは、X線回折パターンでEu化合物を示すパターンが無く、Eu2+の蛍光が得られることからCaサイトを置換したと思われる。
次に、本発明の蛍光体の製造方法について説明する。
AGa24型結晶相とSiO結晶相とからなる複合粒子である蛍光体の製造方法は、まず、第1の工程として、希土類元素のEuが均一に分散した前駆体で、アルカリ土類金属ガリウム複合酸化物および珪素酸化物からなる前駆体、若しくはアルカリ土類金属の炭酸塩、ガリウム酸化物、珪素酸化物からなる前駆体を合成し、次いで第2の工程において、第1の工程で合成した前駆体を、二硫化炭素を含む不活性ガス中で熱処理し、還元硫化するという製造方法である。
[第1の工程]
・希土類元素のEuが均一に分散した前駆体を合成する工程
希土類元素が均一に分散した前駆体の合成は、いわゆる錯体重合法と呼ばれるもので、以下の3工程、(1)金属錯体溶液の作製、(2)金属錯体重合体ゲルの作製、(3)ゲルの熱処理の各工程を経て合成される。
(1)金属錯体溶液の作製工程
先ず、原料物質として、前駆体合成の原料の一つである珪素化合物である、水溶性珪素化合物を使用する場合について説明する。水溶性珪素化合物は、具体的に次に示す方法で作製する。原料のテトラエトキシシラン(TEOS)とプロピレングリコールを同量秤量し、80℃で48時間混合し、この混合液に塩酸を少量(混合液の0.2%程度)加えて1時間攪拌する。この攪拌液に蒸留水を加えることで、濃度1Mの水溶性珪素化合物を作製する。
次に、所定量の水溶性珪素化合物、希土類の硝酸塩、アルカリ土類金属元素の塩、および硝酸ガリウムを水に溶解し、更にオキシカルボン酸を加えた溶液を70〜90℃で溶解して金属錯体溶液を得る。
用いるアルカリ土類金属元素の塩としては、酢酸Ca、酢酸Srなどの水溶性のアルカリ土類金属塩、ユーロピウム源には硝酸Euや酢酸Euなどの水溶性の塩を用いることができる。なお硝酸Caは強力な酸化剤であるため、使用する際に安全上注意して用いる。
そのアルカリ土類金属元素AとGaの割合は、モル比で元素A:Gaが1:2.0〜1:2.2が好ましい。GaはGaSが生成すると900℃程度で揮発するため、AGa相を形成するにはA:Gaが当量となる1:2.0以上であることが望ましい。また1:2.2を超えると異相であるGa相が出来て蛍光体への励起光や発光を吸収するため好ましくない。
一方、アルカリ土類金属元素AとSiの割合は、モル比で元素A:Siが1:2より小さい場合はSiOの結晶相が現れない。またモル比が1:9より大きい場合にはAGa相が現れなくなり輝度も低下するため好ましくない。
(2)金属錯体重合体ゲルの作製工程
先の工程で作製した金属錯体溶液に、オキシカルボン酸を加え、更にグリコールを加えて加熱し、重合化することにより金属錯体重合体ゲルを作製する。
加えるオキシカルボン酸としては、具体的にはクエン酸、酒石酸、リンゴ酸、タルトロン酸、グリセリン酸、オキシ酪酸、ヒドロアクリル酸、乳酸、グリコール酸などが好ましく用いられる。このうち、クエン酸は特に好ましい。
次にグリコールを加えて100〜150℃に加熱して錯体重合体ゲルを生成するが、ここで加えるグリコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等が好ましく用いられる。このうち、エチレングリコールやプロピレングリコールは特に好ましい。
加えるグリコールの量は、金属元素の全モル数に対して、2〜200倍のモル数、望ましくは3〜10倍が好ましい。グリコールが2倍モルより少ない場合は、重合化反応が起こりにくく錯体重合体を形成しないおそれがあるので好ましくない。200倍モルより多くなる場合は、それ以上グリコール添加の効果が増大せず、コストが増大するので好ましくない。
この重合反応は、金属錯体の溶液にグリコールを加えて攪拌・加熱することにより溶媒を蒸発、除去してエステル化することで行なわれる。
このときの温度は、40〜300℃、望ましくは100〜150℃程度がある。その温度が40℃より低い場合は、溶媒の蒸発、除去に要する時間が長くなるので好ましくない。また、この温度が300℃より高い場合は、エステル化反応が局部的に進行して、不均一になるおそれがあるので好ましくない。
なお、この温度が100℃より低い場合は、エステル化反応の進行が遅く、反応が進みにくい恐れがあるため、100℃以上の温度とすることがより好ましい。
重合反応時間は、10から30時間が好ましい。10時間未満では重合反応が不十分な恐れがあり、30時間以上加熱処理しても重合反応は進まないため30時間を越える加熱処理は必要ない。
(3)ゲルの熱処理工程
上記工程により金属錯体重合体ゲルを得た後に、このゲルを250〜900℃、さらに望ましくは400〜850℃で熱処理してゲルを熱分解して希土類元素のEuが均一に分散した前駆体を合成する。
温度が250℃より低い場合、完全には熱分解が進まないおそれがあるので好ましくない。なお、本発明の第1の工程で得られる前駆体中の不必要な炭素を減らすには600℃以上の熱処理が望ましい。また900℃を超える場合は、ゲルの熱分解が不均一な状態で急激に進行し、一部が焼結してしまい、前駆体の一部において単相化しないおそれがあるので好ましくない。
このような現象を防止するためにも、熱分解は温度を変えて数段階で行ってもよい。熱処理時間は2時間から30時間で行うことが出来る。熱処理時間は、2時間未満では熱分解が不十分であるおそれがあり、30時間を越えると焼結が進行するおそれがあるので好ましくない。
[第2の工程]
・希土類元素のEuが均一に分散した前駆体を、硫化ならびに複合粒子化する工程
前記第1の工程で得られた前駆体を、二硫化炭素を含んだ不活性ガス雰囲気下で熱処理することにより前駆体を還元硫化する、AGa型結晶相とSiO結晶相との複合粒子蛍光体の作製は、以下の手順で行う。
即ち、第1の工程で作製した前駆体を、セラミックスの容器に入れて二硫化炭素を含んだ不活性ガス雰囲気下900℃〜1090℃で、10分から10時間熱処理して還元硫化するともにAGa型結晶相とSiO結晶相との複合粒子蛍光体を作製する。
このときの熱処理の温度は、900〜1090℃であることが好ましく、900℃未満では還元硫化が不充分となり、硫化珪素の融点である1090℃を超えると、部分的な融解が発生する可能性があり、融解した液体が移動することによって焼成物が不均一になるため1090℃以下が良い。一般に高温では硫黄蒸気圧が高くなり硫化物表面から硫黄が揮発するために、より低温で合成することが好ましい。
なお、合成に使用する容器は、グラファイト、ジルコニア、アルミナ等の酸化物や窒化ホウ素(BN)等の耐熱容器を用いることが可能であるが、高温ではアルミナが還元され、不純物が多くなるのでグラファイトやジルコニア製の容器を用いると良い。
ここで用いる不活性ガスとしては、アルゴンガスに代表される不活性ガスが好ましい。
この不活性ガス中に二硫化炭素(CS)を含ませる方法としては、図6に示すような、不活性ガスを液体の二硫化炭素中に通す方法が利用できる。
二硫化炭素および不活性ガスの温度は、15℃以上46℃未満、特に20℃〜25℃が好ましい。15℃未満では不活性ガスに含まれる二硫化炭素の濃度が低くなり還元硫化が進まない。また46℃以上では二硫化炭素の沸点以上となって蒸発量の制御が難しく、均一な還元硫化が難しくなるため好ましくない。なお、不活性ガスとしてはアルゴンガスのほか窒素を用いることが可能であるが、高温で窒素を用いることは、窒化物が形成されることがあるためにあまり好ましくはない。
以下に実施例を用いて本発明を更に詳細に説明する。
[第1の工程]
・Euが均一に分散した前駆体の合成
水溶性珪素化合物は、テトラエトキシシラン:TEOS(関東化学株式会社製)とプロピレングリコール(関東化学株式会社製99%)を22.4ml秤量し、80℃で48時間混合した。更に混合液に塩酸を100μl加えて室温で1時間攪拌した。この攪拌液に蒸留水を加えて100mlに定溶して1Mの水溶性珪素化合物の水溶液を作製した。
次に、酢酸ユーロピウム0.003g、酢酸カルシウム0.17g、硝酸ガリウム(Ga(NO)0.50g、水溶性珪素化合物の水溶液を加え、金属元素の4倍モルのクエン酸(和光純薬株式会社製98%)を加えて、液温を80℃にして2時間攪拌して完全に溶解させた。このときに水溶性珪素化合物の水溶液量を変えてSi/Caの比が1と2.5の2つの液を作製した。このときに加えた水溶性珪素化合物の水溶液量は、それぞれ1mlと2.5mlである。
続いて、これらの液に全金属元素モル数の4倍になるようにプロピレングリコールを加えて混合液の液温を120℃に高めて、24時間攪拌して重合させて金属錯体重合体ゲルを作製した。攪拌後、このゲルをボックス炉を用いて450℃で2時間、その後550℃で5時間、800℃で12時間加熱してゲルを熱分解させてEuが均一に分散した前駆体粉末を作製した。
・硫化と複合粒子化
このようにして得たEuが均一に分散した前駆体を、図6に示す方法で液体の二硫化炭素中を通したアルゴンガスを流通しながら1000℃で2時間熱処理し、還元硫化を行ない、CaGa型結晶相とSiO結晶相とからなる複合粒子蛍光体を作製した。
アルゴンガス流量は、熱処理開始から10分間は50ml/min、その後温度が1000℃に達するまで10ml/min、1000℃に達した時から流量を50ml/minにそれぞれ調整した。
1000℃、2時間の熱処理を終えて炉の温度が800℃になるまでのアルゴンガス流量を50ml/minとし、800℃以下で流量を10ml/minにし、炉が室温になるまでアルゴンガスを流しつづけた。ガス流量の制御はデジタル流量計(Kofloc社製、Model8300)を用いて行った。
なお、二硫化炭素とアルゴンガスの温度は室温で行なった。
このようにして作製した複合粒子蛍光体に365nmの紫外線をあてて蛍光特性を評価した。その結果を表1に示す。
さらに、Si/Ca=2.5で作製した蛍光体粒子のSEM観察結果を図1に示す。図1(a)はSEM像を示し、(b)は図1(a)の破線白丸領域の拡大SEM像、(c)は図1(b)の実線黒丸領域のEDX分析結果を示している。
図1(c)のEDX分析結果からCaGa相とSiO相からなる複合粒子が形成されていることが分かる。
CaをSrにした以外は、実施例1と同様の方法で複合粒子蛍光体を作製した。
この作製した蛍光体に、365nmの紫外線をあてて蛍光特性を評価した。その結果を表1に示す。
次に、Si/Sr=2.5で作製した蛍光体粒子のSEM観察結果を図2に示す。図2(a)はSEM像を示し、(b)は図2(a)の実線黒丸領域のEDX分析結果を示している。
図2(b)のEDX分析結果からSrGa相とSiO相による複合粒子が形成されていることが分かる。
Si/Caの比を0から10まで1ずつ変えて11種類の複合粒子蛍光体を実施例1と同じ方法で作製した。この複合粒子蛍光体のX線回折測定を行った結果を図3に示す。
図3から分かるように、Si/Caが0或いは1では結晶SiO相(ICSDの100346番)は現れず、CaGa相(ICSDの46017番)が明瞭に現れている。
Si/Caが2以上になると結晶SiO相が多く現れ、Si/Caの増加とともにピーク強度が大きくなっている。Si/Caが9を超えるとCaGa相の割合が小さくなっていることが分かる。
図4は、Si/Caが8のときの複合粒子蛍光体のSEM観察結果を示すもので、(a)はSEM像、(b)はSEM像の黒丸数字の領域に対応するEDX分析による各領域における各元素の濃度を示している。
Si/Caが8であることから黒丸数字の各数字に対応する領域には、SiおよびOが含まれているが、黒丸数字3の領域が主相のCaGa結晶相で、他の領域がSiO結晶相領域であると考えられる。
さらに蛍光スペクトル測定を行った結果を図5に示す。
輝度の評価は、PDP用の黄色蛍光体として良く知られているYAl12:Ce3+(YAG:Ce)(P46:化成オプト製)を基準にして比較した。
図5から輝度の強さは、Si/Caが、1、6、8の場合では、基準としたYAG:Ceのピーク強度よりも強く、Si/Caが、0および10の時には、YAG:Ceより強度が弱くなることが分かる。
(比較例1)
実施例1と同様の方法で前駆体を作製し、その前駆体を黒鉛坩堝に入れて、管状炉で1200℃、2時間の熱処理を行って酸化物の蛍光体を作製した。
この酸化物の蛍光体に365nmの紫外線をあてて蛍光を評価し、その結果を表1に示す。
(比較例2)
実施例2と同様の方法で前駆体を作製し、その前駆体を黒鉛坩堝に入れて、管状炉で1200℃、2時間の熱処理を行ない、酸化物の蛍光体を作製した。
この酸化物の蛍光体に365nmの紫外線をあてて蛍光を評価し、その結果を表1に示す。
比較例1、2のいずれも第2の工程が本発明と異なる条件であるため、良好な発光特性を示さなかった。

Claims (8)

  1. アルカリ土類金属元素から選択される少なくとも1種の元素A、ガリウム、珪素、酸素、硫黄、およびルミネセンス特性を付与する希土類元素を基材とする化合物であって、
    前記化合物は、AGa24型結晶相およびSiO結晶相で構成される複合粒子であることを特徴とする蛍光体。
  2. 前記元素Aが、カルシウム、ストロンチウムから選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項1記載の蛍光体。
  3. 前記希土類金属が、ユーロピウム(Eu)であり、前記ユーロピウム(Eu)の濃度が、一般式A1−xEuGaにおける変数xが0.001以上、0.1以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の蛍光体。
  4. アルカリ土類金属元素から選択される少なくとも1種の元素A、ガリウム、珪素、酸素、硫黄、およびルミネセンス特性を付与する希土類元素のEuを基材とするAGa24型結晶相とSiO結晶相とからなる複合粒子である蛍光体の製造方法であって、
    前記希土類元素のEuが均一に分散した前駆体であり、アルカリ土類金属ガリウム複合酸化物および珪素酸化物からなる前駆体、若しくはアルカリ土類金属の炭酸塩、ガリウム酸化物および珪素酸化物からなる前駆体、を合成する第1の工程と、
    前記第1の工程で得られる前駆体を、二硫化炭素を含む不活性ガス中で熱処理し、還元硫化する第2の工程とからなることを特徴とする蛍光体の製造方法。
  5. 前記第1の工程が、希土類金属の硝酸塩、アルカリ土類金属の塩、硝酸ガリウムおよび珪素化合物を水に溶解し、オキシカルボン酸を加えて70〜90℃で溶解し、グリコールを加え、更に100〜150℃に加熱してゲルを得た後に、前記ゲルを400〜500℃で熱処理し、次に700〜850℃の温度による熱処理を施すことを特徴とする請求項4に記載の蛍光体の製造方法。
  6. 前記第2の工程が、前記第1の工程で得られた前駆体を、二硫化炭素を含んだ不活性ガス雰囲気下、900〜1100℃の温度による熱処理によって還元硫化することを特徴とする請求項4に記載の蛍光体の製造方法。
  7. 前記珪素化合物が、水溶性珪素化合物であることを特徴とする請求項5又は6に記載の蛍光体の製造方法。
  8. 前記第1の工程において、前駆体作製時のアルカリ土類金属元素Aとガリウムとの割合がモル比で、A:Gaが1:2.0〜1:2.2、且つアルカリ土類金属元素Aと珪素の割合がモル比で、A:Siが1:2〜1:9であることを特徴とする請求項5から7のいずれか1項に記載の蛍光体の製造方法。
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