JP2011032416A - 蛍光体とその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】アルカリ土類金属元素から選択される少なくとも1種の元素A、ガリウム、珪素、酸素、硫黄、およびルミネセンス特性を付与する希土類元素を基材とする化合物であって、前記化合物は、AGa2S4型結晶相およびSiO2結晶相で構成される複合粒子であることを特徴とする蛍光体。
【選択図】図1
Description
この蛍光体の耐熱性の改善には、軟化点800℃以下、かつSn成分含有量が50質量%以下であるガラス粉末と、一般式XY2S4:Z(Z:発光中心)(式中、X=Ca,Ba,SrまたはZn、Y=GaまたはAl、Z=Eu2+,Ce3+またはMn2+)で表される構造を有する硫化物蛍光体粉末材料で、ガラス粉末と硫化物蛍光体粉末を、質量分率で0.01〜30%含有する材料を焼成して製造することが有効であることも知られている(例えば、特許文献6参照)。なお、多数の元素を含む酸化物合成法として錯体重合法が有効であることが知られている(例えば、特許文献7参照)。
ここで本発明における複合粒子とは、図1および図2に示す粒子径が0.5μmから20μmのAGa2S4型結晶の粒子をコアとして、その外周部にSiO2結晶相を有する粒子径が3μmから100μmの蛍光体粒子である。
図3からは、この蛍光体がCaGa2S4型結晶相とSiO2結晶相からなることが分かる。また賦活剤として添加しているEuは、X線回折パターンでEu化合物を示すパターンが無く、Eu2+の蛍光が得られることからCaサイトを置換したと思われる。
AGa2S4型結晶相とSiO2結晶相とからなる複合粒子である蛍光体の製造方法は、まず、第1の工程として、希土類元素のEuが均一に分散した前駆体で、アルカリ土類金属ガリウム複合酸化物および珪素酸化物からなる前駆体、若しくはアルカリ土類金属の炭酸塩、ガリウム酸化物、珪素酸化物からなる前駆体を合成し、次いで第2の工程において、第1の工程で合成した前駆体を、二硫化炭素を含む不活性ガス中で熱処理し、還元硫化するという製造方法である。
・希土類元素のEuが均一に分散した前駆体を合成する工程
希土類元素が均一に分散した前駆体の合成は、いわゆる錯体重合法と呼ばれるもので、以下の3工程、(1)金属錯体溶液の作製、(2)金属錯体重合体ゲルの作製、(3)ゲルの熱処理の各工程を経て合成される。
先ず、原料物質として、前駆体合成の原料の一つである珪素化合物である、水溶性珪素化合物を使用する場合について説明する。水溶性珪素化合物は、具体的に次に示す方法で作製する。原料のテトラエトキシシラン(TEOS)とプロピレングリコールを同量秤量し、80℃で48時間混合し、この混合液に塩酸を少量(混合液の0.2%程度)加えて1時間攪拌する。この攪拌液に蒸留水を加えることで、濃度1Mの水溶性珪素化合物を作製する。
用いるアルカリ土類金属元素の塩としては、酢酸Ca、酢酸Srなどの水溶性のアルカリ土類金属塩、ユーロピウム源には硝酸Euや酢酸Euなどの水溶性の塩を用いることができる。なお硝酸Caは強力な酸化剤であるため、使用する際に安全上注意して用いる。
先の工程で作製した金属錯体溶液に、オキシカルボン酸を加え、更にグリコールを加えて加熱し、重合化することにより金属錯体重合体ゲルを作製する。
このときの温度は、40〜300℃、望ましくは100〜150℃程度がある。その温度が40℃より低い場合は、溶媒の蒸発、除去に要する時間が長くなるので好ましくない。また、この温度が300℃より高い場合は、エステル化反応が局部的に進行して、不均一になるおそれがあるので好ましくない。
なお、この温度が100℃より低い場合は、エステル化反応の進行が遅く、反応が進みにくい恐れがあるため、100℃以上の温度とすることがより好ましい。
上記工程により金属錯体重合体ゲルを得た後に、このゲルを250〜900℃、さらに望ましくは400〜850℃で熱処理してゲルを熱分解して希土類元素のEuが均一に分散した前駆体を合成する。
・希土類元素のEuが均一に分散した前駆体を、硫化ならびに複合粒子化する工程
前記第1の工程で得られた前駆体を、二硫化炭素を含んだ不活性ガス雰囲気下で熱処理することにより前駆体を還元硫化する、AGa2S4型結晶相とSiO2結晶相との複合粒子蛍光体の作製は、以下の手順で行う。
この不活性ガス中に二硫化炭素(CS2)を含ませる方法としては、図6に示すような、不活性ガスを液体の二硫化炭素中に通す方法が利用できる。
以下に実施例を用いて本発明を更に詳細に説明する。
・Euが均一に分散した前駆体の合成
水溶性珪素化合物は、テトラエトキシシラン:TEOS(関東化学株式会社製)とプロピレングリコール(関東化学株式会社製99%)を22.4ml秤量し、80℃で48時間混合した。更に混合液に塩酸を100μl加えて室温で1時間攪拌した。この攪拌液に蒸留水を加えて100mlに定溶して1Mの水溶性珪素化合物の水溶液を作製した。
このようにして得たEuが均一に分散した前駆体を、図6に示す方法で液体の二硫化炭素中を通したアルゴンガスを流通しながら1000℃で2時間熱処理し、還元硫化を行ない、CaGa2S4型結晶相とSiO2結晶相とからなる複合粒子蛍光体を作製した。
1000℃、2時間の熱処理を終えて炉の温度が800℃になるまでのアルゴンガス流量を50ml/minとし、800℃以下で流量を10ml/minにし、炉が室温になるまでアルゴンガスを流しつづけた。ガス流量の制御はデジタル流量計(Kofloc社製、Model8300)を用いて行った。
なお、二硫化炭素とアルゴンガスの温度は室温で行なった。
図1(c)のEDX分析結果からCaGa2S4相とSiO2相からなる複合粒子が形成されていることが分かる。
この作製した蛍光体に、365nmの紫外線をあてて蛍光特性を評価した。その結果を表1に示す。
図2(b)のEDX分析結果からSrGa2S4相とSiO2相による複合粒子が形成されていることが分かる。
図3から分かるように、Si/Caが0或いは1では結晶SiO2相(ICSDの100346番)は現れず、CaGa2S4相(ICSDの46017番)が明瞭に現れている。
Si/Caが2以上になると結晶SiO2相が多く現れ、Si/Caの増加とともにピーク強度が大きくなっている。Si/Caが9を超えるとCaGa2S4相の割合が小さくなっていることが分かる。
Si/Caが8であることから黒丸数字の各数字に対応する領域には、SiおよびOが含まれているが、黒丸数字3の領域が主相のCaGa2S4結晶相で、他の領域がSiO2結晶相領域であると考えられる。
輝度の評価は、PDP用の黄色蛍光体として良く知られているY3Al5O12:Ce3+(YAG:Ce)(P46:化成オプト製)を基準にして比較した。
図5から輝度の強さは、Si/Caが、1、6、8の場合では、基準としたYAG:Ceのピーク強度よりも強く、Si/Caが、0および10の時には、YAG:Ceより強度が弱くなることが分かる。
(比較例1)
この酸化物の蛍光体に365nmの紫外線をあてて蛍光を評価し、その結果を表1に示す。
(比較例2)
この酸化物の蛍光体に365nmの紫外線をあてて蛍光を評価し、その結果を表1に示す。
Claims (8)
- アルカリ土類金属元素から選択される少なくとも1種の元素A、ガリウム、珪素、酸素、硫黄、およびルミネセンス特性を付与する希土類元素を基材とする化合物であって、
前記化合物は、AGa2S4型結晶相およびSiO2結晶相で構成される複合粒子であることを特徴とする蛍光体。 - 前記元素Aが、カルシウム、ストロンチウムから選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項1記載の蛍光体。
- 前記希土類金属が、ユーロピウム(Eu)であり、前記ユーロピウム(Eu)の濃度が、一般式A1−xEuxGa2S4における変数xが0.001以上、0.1以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の蛍光体。
- アルカリ土類金属元素から選択される少なくとも1種の元素A、ガリウム、珪素、酸素、硫黄、およびルミネセンス特性を付与する希土類元素のEuを基材とするAGa2S4型結晶相とSiO2結晶相とからなる複合粒子である蛍光体の製造方法であって、
前記希土類元素のEuが均一に分散した前駆体であり、アルカリ土類金属ガリウム複合酸化物および珪素酸化物からなる前駆体、若しくはアルカリ土類金属の炭酸塩、ガリウム酸化物および珪素酸化物からなる前駆体、を合成する第1の工程と、
前記第1の工程で得られる前駆体を、二硫化炭素を含む不活性ガス中で熱処理し、還元硫化する第2の工程とからなることを特徴とする蛍光体の製造方法。 - 前記第1の工程が、希土類金属の硝酸塩、アルカリ土類金属の塩、硝酸ガリウムおよび珪素化合物を水に溶解し、オキシカルボン酸を加えて70〜90℃で溶解し、グリコールを加え、更に100〜150℃に加熱してゲルを得た後に、前記ゲルを400〜500℃で熱処理し、次に700〜850℃の温度による熱処理を施すことを特徴とする請求項4に記載の蛍光体の製造方法。
- 前記第2の工程が、前記第1の工程で得られた前駆体を、二硫化炭素を含んだ不活性ガス雰囲気下、900〜1100℃の温度による熱処理によって還元硫化することを特徴とする請求項4に記載の蛍光体の製造方法。
- 前記珪素化合物が、水溶性珪素化合物であることを特徴とする請求項5又は6に記載の蛍光体の製造方法。
- 前記第1の工程において、前駆体作製時のアルカリ土類金属元素Aとガリウムとの割合がモル比で、A:Gaが1:2.0〜1:2.2、且つアルカリ土類金属元素Aと珪素の割合がモル比で、A:Siが1:2〜1:9であることを特徴とする請求項5から7のいずれか1項に記載の蛍光体の製造方法。
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