JP2011157484A - 黄色蛍光体とその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】これからのLED照明のさらなる実用化を考えた場合には、要求される励起波長が近紫外光から可視光、すなわち波長300〜500nmの範囲において、より高効率の高輝度に発光する黄色蛍光体、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】EuSiSと同じ単斜晶系の結晶構造を有し、組成式(Ca1−ySr2−xEuSiSで表され、Eu濃度xは、0<x≦0.2の範囲であり、Sr濃度yは、0<y≦0.6である近紫外線から可視領域の光で励起される黄色蛍光体。
【選択図】図6

Description

本発明は、紫外から可視領域の光励起により、高輝度な黄色発光を示す新規な黄色蛍光体およびその製造方法に関するものである。
紫外から可視領域の光を吸収して高輝度発光を示す蛍光体は、様々な照明・表示装置などで使用されており、最近、波長300〜500nmの近紫外から可視光を放出する発光ダイオードを励起光源にして高効率に発光する照明が注目されている。特に、高効率の青色発光ダイオードとその青色光により励起される蛍光体を組み合わせることで白色光をつくる照明に注目があつまり、それに適した高効率の蛍光体の開発が進められている。
このような可視光で励起可能な蛍光体を用いた白色LEDはエネルギー変換効率が高く、省エネルギーに有利である。また赤外線や紫外線を発しないことから冷凍食品の展示用照明などに幅広く使用され始めている。
これまでに、例えば青色蛍光体のBaMgAl1017:Eu2+(BAM)、Sr10(POCl:Eu(SCA)、緑色蛍光体のBaMgAl1017:Eu,Mn(BAM:Mn)やCaScSi12:Ce、SrGa:Euが開発され、ZnSとSrS、CeFを同時スパッタリングして得られるSrS薄膜のSrの一部をZnで置換した緑色のEL発光を示す薄膜も提案されている。
また、赤色蛍光体のYS:Eu3+やCaAlSiN:Eu、BaZnS:Euが開発され、また黄色蛍光体としては、YAl12:Ce3(YAG:Ce)やEu賦活Ca−αサイアロンやSrSiO:Euなども開発されている(例えば、非特許文献1、2、および特許文献1参照)。
さらには、BaSiS:Eu2+蛍光体は青緑色の蛍光(非特許文献3参照)を示し、CaSiS:Eu2+蛍光体は黄色と赤色、EuSiSは赤色の蛍光を示すことが知られている(非特許文献4参照)。
一方、青色LEDと蛍光体を組み合わせた白色LEDでは、青色LEDと蛍光体の発光の配光が異なるため色の滲みが発生する。すなわち、LEDの発光が見えるため点状の強い発光が見にくいとの指摘があり、近紫外LEDと蛍光体を組み合わせた白色LEDの開発も進められている。しかし近紫外線LEDで励起可能な高効率蛍光体は少なく新規蛍光体が求められている(非特許文献5、6参照)。
特開昭63−000995号公報
「発光デバイスの動向」、東レリサーチ、2006、p.230−239 広崎他、「窒化物蛍光体の開発」、マテリアルインテグレーション、2007、第20巻、第2号、p17−22 大観、大橋、「白色LED用青色蛍光体Ba2SiS4:CeにおけるAl添加による発光特性の改善」、第321回蛍光体同学会講演会講演集、2008 P F Smet、N Avci、B Loos、J E Van Haecke、D Poelman、Journal Physics Condensed:Matter、2007、19、246223 田口常正編、「白色LED照明技術のすべて」、工業調査会、2009 大長、榎本、佐々木、四ノ宮、 「近紫外(nUV)励起の新規蛍光体を用いた白色LED」、第330回蛍光体同学会講演会講演集、2009
このように、さまざまな発光色の蛍光体が開発、提案されている中で、これからのLED照明のさらなる実用化を考えた場合には、励起波長が近紫外光から可視光(波長300〜500nm)でより高効率の黄色蛍光体も望まれている。
そこで、本発明は波長300〜500nmの近紫外線から可視領域の光で励起され、高輝度に発光する新規な黄色蛍光体およびその製造方法の提供を目的とする。
このような状況の中、本発明者らはCaSiS:Eu2+蛍光体とSrSiS:Eu2+の複合硫化物を検討し、化学式CaSrSiSの化合物が合成できること、そして、この化合物を母体としてEuを賦活剤として添加した場合に、波長300〜500nmの励起光で560nm付近にピークを持つ黄色の高輝度発光を示す新規な黄色蛍光体が得られることを見出した。さらにCaとSrの組成を検討した結果、前記CaSrSiSの結晶相を主成分として含み、組成式(Ca1−ySr2−xEuSiSで表され、0<x≦0.2、0<y≦0.6であれば高輝度な蛍光体が得られることを見出して本発明に至ったものである。
本発明の第一の発明は、近紫外線から可視領域の光で励起される黄色蛍光体であって、EuSiSと同じ単斜晶系の結晶構造を有し、Eu濃度をxとする場合の組成式(Ca1−ySr2−xEuSiSで表される黄色蛍光体であることを特徴とし、この場合において、Eu濃度xは、0<x≦0.2の範囲であり、Sr濃度yは、0<y≦0.6の範囲である。
すなわち、EuSiSと同じ単斜晶系の結晶構造を有する(Ca0.5Sr0.52−xEuSiS結晶の単一相からなり、組成式(Ca1−ySr2−xEuSiSで表される黄色蛍光体で、この場合においてEu濃度xは、0<x≦0.2の範囲で、Sr濃度yは0<y≦0.6の範囲であることを特徴とする。
この黄色蛍光体の製造方法である第二の発明は、Euが均一に分散するEu添加(Ca1−ySr粉末、Si粉末およびS粉末を、Eu濃度をxとする場合の組成式(Ca1−ySr2−xEuSiSとなるように混合した混合物を、石英アンプルに真空封入し、前記石英アンプルを900℃以上1000℃以下の温度で焼成することで、Eu濃度xが0<x≦0.2の範囲、Sr濃度yが0<y≦0.6の範囲である組成式(Ca1−ySr2−xEuSiSで表される黄色蛍光体を作製することを特徴とする。
さらには、第三の発明として、Euが均一に分散するEu添加(Ca1−ySr粉末が、まず第一の工程として、酸化Euを酸で溶解した溶解液を乾燥して得られた乾燥物を水に溶解し、次いでグリコール、オキシカルボン酸、炭酸Sr、炭酸Caを順次加えた溶解液を作製し、この作製した溶解液を加熱してゲル化させて、そのゲルを熱分解、大気焼成することによりEuが均一に分散するEu添加Ca1−ySrCOを作製する工程、ついで、第二の工程として、第1工程で得られたEuが均一に分散するEu添加Ca1−ySrCOを、硫化水素雰囲気下で硫化してEuが均一に分散するEu添加(Ca1−ySr粉末を作製する工程、によって作製される黄色蛍光体の製造方法で、本発明に係る黄色蛍光体は、前記第一の工程および第二の工程の工程とから製造されるEuが均一に分散するEu添加(Ca1−ySr粉末を用いることにより優れた特性が得られものである。
本発明は、波長300〜500nmの近紫外線領域から可視領域の光で励起して高輝度に発光する新規な黄色蛍光体およびその製造方法である。
本発明に係る黄色蛍光体は、紫外光で励起するランプや近紫外や可視光を放射する発光ダイオードと組み合わせて、高輝度な黄色発光・表示素子、または他の蛍光体などと組み合わせて白色や色々な色の発光・表示素子の形成を容易にするものである。
本発明のEu添加CaSrSiS蛍光体のX線回折パターンを示す図である。 Eu濃度xが0.02の時のCa/Srの異なる(Ca1−ySr2−xEuSiSのX線回折パターンを比較した図である。 Eu濃度xが0.02の時の(Ca1−ySr1.98Eu0.02SiSの発光を示す図で、(a)はy=0、(b)はy=0.25、(c)はy=0.5、(d)はy=0.75、(e)はy=1.0の場合である。 実施例1のEu添加CaSrSiS蛍光体のX線回折パターンを示す図である。 実施例1、2および比較例1で作製したEu濃度xが0.02の時のCa/Srの異なる(Ca1−ySr2−xEuSiSのX線回折パターンを比較した図である。 実施例1のEu添加CaSrSiS蛍光体の蛍光強度測定結果を示す図である。 実施例1のEu添加CaSrSiS蛍光体の蛍光強度とEu濃度の相関を示す図である。 比較例1のy=0の組成で作製したCa1.98Eu0.02SiSの励起スペクトルと発光スペクトルをYAG:Ceと比較した図である。 実施例2のy=0.25の組成で作製した(Ca0.75Sr0.251.98Eu0.02SiSの励起スペクトルと発光スペクトルをYAG:Ceと比較した図である。 実施例1のy=0.5の組成で作製した(Ca0.5Sr0.51.98Eu0.02SiSの励起スペクトルと発光スペクトルをYAG:Ceと比較した図である。 比較例1のy=0.75の組成で作製した(Ca0.25Sr0.751.98Eu0.02SiSの励起スペクトルと発光スペクトルをYAG:Ceと比較した図である。 比較例1のy=1の組成で作製したSr1.98Eu0.02SiSの励起スペクトルと発光スペクトルをYAG:Ceと比較した図である。
本発明の黄色蛍光体は、組成式(Ca1−ySr2−xEuSiS(0<x≦0.2、0<y≦0.6)で表され、X線回折レベルにおいては、EuSiSと同じ単斜晶系の結晶構造を有するほぼ単一相で構成されている。
この組成式中の変数xはEu濃度を示すもので、Euが含まれていない場合には黄色の蛍光を示さず、xが0.2を超えると濃度消光により輝度が低下することから、このxの範囲は0<x≦0.2であることが必要であり、より好ましいxの範囲は0.001<x≦0.09である。また、この組成式中の変数yはSr濃度を示すものであるが、本発明においては、0<y≦0.6の範囲であることが必要であり、より好ましくは0.2≦y≦0.6の範囲である。
さらに、図1に示す本発明の黄色蛍光体のX線回折パターンからは、本発明の黄色蛍光体はX線回折レベルにおいて、ほぼ単一相であり、この黄色蛍光体が単一相の結晶構造を有し、賦活剤としてCaまたはSrの一部をEuで置換したものであることがわかる。
また、Eu濃度xが0,02の場合の組成式(Ca1−ySr2−xEuSiSにおいて、yを0.0、0.25、0.5、0.75、1.0と変化させた時のX線回折パターンを図2、その発光の様子を図3に示すが、本発明の黄色蛍光体のX線回折パターン(図2(b)、(c))は、図2(a)のCaSiS或いは図2(e)のSrSiSとは異なっているものであることがわかる。
次に、本発明の黄色蛍光体の製造方法について説明する。
本発明の組成式(Ca1−ySr2−xEuSiS(0<x≦0.2、0<y≦0.6)で表される黄色蛍光体の製造は、Euが均一に分散するEu添加(Ca1−ySr粉末、Si粉末およびS粉末を、所定のEu濃度(x)を持つ(Ca1−ySr2−x0Eux0SiSとなるように所定量を混合した後、石英アンプルに真空封入し、900℃以上1000℃以下の温度で焼成して合成する製造方法で行なわれる。なお、S粉末は高温で蒸気になるため所定量よりも過剰に添加しても良い。
この組成式(Ca1−ySr2−xEuSiS(0<x≦0.2、0<y≦0.6)で表される粉末の合成は、不活性ガス中でも可能であるが、ガスに酸素や水分が混入すると硫酸塩や酸化物が形成されることから、得られる蛍光体の蛍光特性は、その再現性に欠けて不安定となるため、焼成に際しては、酸素や水分の混入を極力防止して焼成する必要があり、混合した粉末原料を真空封入して焼成を行うことが望ましい。
また、この真空封入して焼成する以外の方法としては、例えば真空引き後にArガス置換しホットプレスして合成する方法を用いることも可能であるが、Arガス置換時には、乾燥Arガスや高純度Arガスなどを使用して酸素や水の混入を防止すると良い。
なお、組成式(Ca1−ySr2−xEuSiS(0<x≦0.2、0<y≦0.6)を作製する他の製造方法として、まずCa2−xEuSiSおよびSr2−xEuSiSを合成し、これらを混合し、その混合物を石英アンプルに真空封入し、900℃以上1000℃以下の温度で焼成する方法、或いは原料としてSrS、CaS、SiおよびEu源としてのEuS、EuF、Euから選ばれる少なくとも一種とを、それぞれ所定量混合し、その混合物を硫化水素フロー中で、850℃以上1000℃以下の温度で焼成する固相反応法でも合成可能である。
しかしながら、前段落の方法で合成した場合には、(Ca1−ySr2−xEuSiSの単一相にはならない。また固相反応法ではEuが均一にならないという問題もあるため、本発明の高輝度な黄色発光を示す黄色蛍光体を得ることができない。
さらに、Siが過剰に含まれていると、SiSは融点が1090℃で蒸気圧も高いために、高温では高温相としてSiSが生成するとみられ、このSiSはSiSより融点が低いために、SiSが生成する場合は1000℃程度で液相が出現する可能性を有し、蛍光体の作製を阻害する恐れがあり、従って組成式(Ca1−ySr2−xEuSiSを合成するにはSiSが生成しないように硫黄雰囲気で合成するなどの対応が必要である。
次に、本発明の黄色蛍光体の製造に用いるEuが均一に分散するEu添加(Ca1−ySr粉末の製造方法を説明する、が本発明の特徴とするところは、溶液法を用いてCa、Ba、Euが均一に拡散した中間生成物を経て、Eu添加CaSrSが作製されることにある。
本発明は第一の工程として、酸化Euを酸で溶解した溶解液を乾燥して得られる乾燥物を水に溶解し、グリコールとオキシカルボン酸、炭酸Srと炭酸Caを順次加えて溶解し、その溶解液を加熱してゲル化させ、そのゲルを熱分解、大気焼成することによりEuが均一に分散するEu添加(Ca1−ySr)CO(上記中間生成物)を作製し、続いて第二の工程として、第一の工程で作製したEuが均一に分散するEu添加Ca1−ySrCOを、硫化水素雰囲気下で硫化してEuが均一に分散するEu添加CaSrS粉末を作製するものである。
より詳細な本発明の製造方法を、濃度yが0.5の場合を用いて以下に説明する。
第一の工程として、最初に原料の酸化Eu(Eu)を酸で溶解して溶解液を得るには、濃度40〜60質量%の硝酸、または酢酸に溶解するのが好ましい。なお、硫酸や塩酸は酸化Euの溶解には使用できるが、硫酸痕や塩素が残留するとSrやCaの完全溶解が困難なため好ましくない。この原料の酸化Eu(Eu)を完全に溶解させるには1時間程度の攪拌を行うと良い。
次に酸化Euの溶解液を乾燥により、過剰の硝酸を蒸発させて乾燥物を得る。このようにして得られる乾燥物を純水に溶解し、次いでオキシカルボン酸とグリコールを加える。
加えるオキシカルボン酸としてはクエン酸、リンゴ酸、酒石酸などが使用でき、クエン酸は特に好ましい。グリコールとしてはプロピレングリコールやエチレングリコール、ポリビニルアルコールなどが使用できる。特にはプロピレングリコールが好ましい。
次に、オキシカルボン酸としてクエン酸、グリコールとしてプロピレングリコールを加えた場合では、クエン酸が完全に溶解してから、液温を35〜45℃まで上昇させ同モル量の炭酸ストロンチウムと炭酸カルシウムを加えて40〜85℃に保持して完全に溶解するまで攪拌する。その際には、難溶性の炭酸塩を完全に溶解するため8時間以上攪拌するのが好ましい。クエン酸は金属元素のモル数の4〜6倍、プロピレングリコールは8〜12倍加えることが望ましい。
また、難溶性の炭酸塩や酸化物ではなく酢酸塩などのストロンチウム、バリウムやカルシウムの金属元素が溶解した水溶液を混合し、クエン酸溶液などの錯形成材を含む溶液に混合して錯化してもよい。
この炭酸塩を完全に溶解した後、重合させるため液温を120〜250℃、より好ましくは180〜220℃にして粘性を有するゲル状になるまで攪拌する。これによりEuを均一に含んだゲルが得られる。
続いて、得られたゲルを400〜500℃、より好ましくは440〜460℃に加熱し、ゲルを熱分解させて前駆体粉末を作製する。前駆体粉末の熱分解が不十分な場合は更に500℃〜550℃で2〜4時間の熱処理を加えても良い。その後、得られた前駆体粉末を軽く粉砕し炭酸塩化するためアニールを行なう。アニール処理条件としては、アニール温度は650〜1000℃、より好ましくは750〜900℃であり、アニール時間は1〜24時間、より好ましくは2〜10時間である。このようにして第一の工程によるEuが均一に分散するEu添加Ca0.5Sr0.5COが得られる。なお炭酸カルシウムは比較的低温で分解し、酸化カルシウムになる。酸化カルシウムは大気中の水分と反応して水酸化カルシウムを形成することがある。従って焼成条件によっては酸化カルシウムや水酸化カルシウムが混ざった炭酸塩になるがEuは均一に分散しており、酸化カルシウムや水酸カルシウムでも問題なく硫化できる。
次の第二の工程では、第一の工程で作製したEuが均一に分散するEu添加Ca0.5Sr0.5COを硫化水素雰囲気下で硫化してEuが均一に分散するEu添加CaSrS粉末を作製する。
具体的には、第一の工程で作製したEu添加Ca0.5Sr0.5CO粉末を、10%硫化水素を含んだ窒素、または10%硫化水素を含んだアルゴンガス中で加熱し、850〜1100℃、より好ましくは900〜1000℃の温度で7〜12時間アニール処理を施してEuが均一に分散するEu添加CaSrS粉末を得ることができる。
なお、本発明ではCaとSrの濃度比を変化させる、すなわち(Ca1−ySrとする場合のSr濃度yを0<y≦0.6の範囲で変化させることもでき、所定量の炭酸Ca、炭酸Srを使用することで、所望のCaとSrの濃度比の(Ca1−ySr粉末を得ることができる。
このようにして得られる粉末は、X線回折によればSrSとCaSに一致するXRDパターンを示す。なお、アニール処理中は、硫化水素を含むガスが必要であり、また反応終了後の冷却中、ガス中に硫化水素が無いと硫酸塩が生成することがあるため、冷却が完了し室温になるまで硫化水素を流入させることが好ましい。
また、硫酸塩を含む場合は粉末が黄色を示す場合がある。そのような場合は、真空中でアニール処理を行うことで硫化物に還元することができる。その条件としては真空度を0.1〜5Pa程度で、アニール温度920〜1000℃で7〜12時間行うと硫酸塩を硫化物へ還元することができる。
以下に実施例を用いて、本発明を詳細に説明する。
1.Eu添加(Ca1−ySr粉末の製造:y=0.5
[第一の工程]
まず、第一の工程で作製する炭酸塩のEu濃度xが0.02になるように、酸化ユーロピウム(フルウチ化学株式会社製 3N)0.143gを濃度60%の硝酸(関東化学株式会社製 60%)1mlに溶解し、次いで5分後に純水5mlを加え、更に完全に溶解させるため1時間攪拌した。攪拌後、この液に純水50ml、プロピレングリコール(関東化学株式会社製99%)30.75mlとクエン酸(和光純薬株式会社製 98%)31.09gを加え、クエン酸が完全に溶解した後、液温を40℃にしてさらに炭酸ストロンチウム(SrCO)2.95gと炭酸カルシウム(CaCO)2.00gを加え、8時間攪拌して炭酸塩を完全に溶解させた。続いて、溶解した混合液の液温を200℃に高めて、粘性を有するゲル状になるまで攪拌した。攪拌後、得られたゲルをマントルヒーターで450℃に加熱し、ゲルを熱分解させて前駆体粉末を作製し、この前駆体粉末をメノウ乳鉢で軽く粉砕した後アルミナの坩堝に入れて管状炉により800℃、2時間のアニールを行って炭酸塩を作製した。
得られた粉末のX線回折を行ったところ、炭酸ストロンチウム(SrCO)と炭酸カルシウム(CaCO)に一致するXRDパターンのみが得られ、Euが均一に分散したEu添加Ca0.5Sr0.5CO粉末が得られたことを確認した。
[第二の工程]
第二の工程は、第一の工程で作製したEuが均一に分散したEu添加Ca0.5Sr0.5CO粉末1.0gを、硫化水素濃度が10%のアルゴン−硫化水素混合ガス中で加熱して、950℃、5時間のアニールを行いEu添加CaSrS粉末を得た。その粉末のX線回折を行ったところCaSとSrSに一致するXRDパターンのみが観察された。
2.(Ca1−ySr2−xEuSiS(x=0.02、y=0.5)の製造
次に、組成式(Ca0.5Sr0.51.98Eu0.02SiS(x=0.02、y=0.5)となるように、このEu添加CaSrS粉末0.195g、fumed Si(Wako製 98%)0.028gおよびS粉末(関東化学製99.5%)0.065gを秤量し、これらをメノウ乳鉢で20分混合し、この混合物をハンドプレスで2MPaまで加圧して作製した成型体(ペレット)を石英アンプルに真空封入し、この石英アンプルを950℃まで加熱し24時間保持した熱処理を行った。
得られた試料のX線回折パターンを図4、および図5の(c)に示す。
図4、図5の(c)から明らかなように、得られた組成式(Ca0.5Sr0.51.98Eu0.02SiSで示されるEu添加CaSrSiS粉末は、CaSrSiSのほぼ単相であることがわかる。
組成式(Ca0.75Sr0.251.98Eu0.02SiS(x=0.02、y=0.25)になるように炭酸ストロンチウム、炭酸カルシウムと酸化ユーロピウムを秤量して加えた以外は実施例1と同様の方法で蛍光体を合成した。
得られた試料のX線回折パターンを図5の(b)に示す。
組成式(Ca0.5Sr0.52−xEuSiSで、xが0.01、0.02、0.04、0.06、0.10、0.20となるように炭酸ストロンチウム、炭酸カルシウムと酸化ユーロピウムを秤量して加えた以外は実施例1と同様の方法で蛍光体を合成した。x=0.06と0.10は2つの試料を作成した。その蛍光強度の測定結果を図7に示す。図7において、横軸はEu濃度(×1/100)、縦軸は蛍光強度で、YAG:Ceの蛍光強度を1とした場合の相対強度で示している。
図6よりEu濃度は、0.01の微量添加においてもYAG:Ceの30%程度の蛍光強度有し、Eu濃度が0.02から0.06近傍まで蛍光強度は50%程度のピーク値を有していることがわかる。
(比較例1)
比較例1として、Euの含有量xが0.02である化学式(Ca1−ySr1.98Eu0.02SiSで示される化合物において、y=0、0.75、1.0となるように炭酸ストロンチウム、炭酸カルシウムと酸化ユーロピウムを秤量して加えた以外は実施例1と同様の方法で蛍光体を合成した。
その得られた試料のX線回折パターンを図5に示す。図5において、y=0は(a)、y=0.75は(d)、y=1.0は(e)で示している。
[結晶相評価]
以上の実施例1、2および比較例1の試料から得られたXRDパターンから結晶相を評価した結果をまとめて表1に示す。
[蛍光輝度の評価]
次に、実施例1、2および比較例1で作製した蛍光体の蛍光測定を行い、その輝度を比較した。
蛍光測定の結果は、従来の黄色蛍光体であるYAl12:Ce3+(YAG:Ce、化成オプトニクス株式会社製)と比較している。図6に実施例1で作製した組成式(Ca0.5Sr0.51.98Eu0.02SiSで示されるEu添加CaSrSiS粉末の蛍光測定結果と発光の様子を示し、図8から図12に実施例1、2と比較例1の蛍光特性と励起特性を示す。図8から図12中の点線は比較としたYAG:Ceの結果である。
図6からは、400nmから500nmの近紫外線領域でも励起可能であり、YAG:Ce蛍光体よりもピーク波長の強度が大きいことがわかる。また400nm付近の波長で励起するとYAG:Ce蛍光体では発光しないが、実施例1の蛍光体はピーク輝度と同程度の発光を示すことが判る。
また、図9(実施例2)、および図10(実施例1)からは、励起波長300nmから450nmで輝度変化が少なくYAG:Ceの輝度を上回っていることが分かる。また発光特性も590nmをピークとする黄色である。一方、比較例1に対応する図8、11、12では、近紫外で励起特性の変化は少ないがYAG:Ceの340nmの励起と比べる輝度は同程度か、小さく、さらに発光ピークは、図8(CaSiS)では660nmで、Srの比率が0.6より多くなる図10、図11では短波長側に移動して緑色となっている。
図9、図10および表1からも明らかなように本発明による黄色蛍光体は、紫外から可視領域の光励起により高輝度発光を示す黄色蛍光体であり、特に紫外光で励起するランプや近紫外や可視光を放射する発光ダイオードと組み合わせて、高輝度な燈色発光・表示素子、または他の蛍光体などと組み合わせて白色を含むさまざまな色の発光・表示素子などに利用可能である。

Claims (4)

  1. 近紫外線から可視領域の光で励起される黄色蛍光体であって、
    EuSiSと同じ単斜晶系の結晶構造を有し、組成式(Ca1−ySr2−xEuSiSで表され、
    Eu濃度xは、0<x≦0.2の範囲、
    Sr濃度yは、0<y≦0.6の範囲であることを特徴とする黄色蛍光体。
  2. 近紫外線から可視領域の光で励起される黄色蛍光体であって、
    EuSiSと同じ単斜晶系の結晶構造を有する(Ca0.5Sr0.52−xEuSiS結晶の単一相からなり、かつ組成式(Ca1−ySr2−xEuSiSで表され、Eu濃度xは0<x≦0.2、Sr濃度yは0<y≦0.6の範囲であることを特徴とする黄色蛍光体。
  3. Euが均一に分散するEu添加(Ca1−ySr粉末、Si粉末およびS粉末を、Eu濃度をxとする場合の組成式(Ca1−ySr2−xEuSiSとなるように混合した混合物を、石英アンプルに真空封入し、前記石英アンプルを900℃以上1000℃以下の温度で焼成することで組成式(Ca1−ySr2−xEuSiS(Eu濃度xは0<x≦0.2、Sr濃度yは0<y≦0.6)で表される黄色蛍光体を作製することを特徴とする黄色蛍光体の製造方法。
  4. 前記Euが均一に分散するEu添加(Ca1−ySr粉末が、第一の工程である酸化Euを酸で溶解した溶解液を乾燥して得られた乾燥物を水に溶解し、次いでグリコール、オキシカルボン酸、炭酸Sr、炭酸Caを順次加えた溶解液を作製し、前記作製した溶解液を加熱してゲル化させ、前記ゲルを熱分解、大気焼成することによりEuが均一に分散するEu添加Ca1−ySrCOを作製する工程、ついで、第二の工程である前記Euが均一に分散するEu添加Ca1−ySrCOを、硫化水素雰囲気下で硫化してEuが均一に分散するEu添加(Ca1−ySr粉末を作製する工程によって作製されることを特徴とする請求項3記載の黄色蛍光体の製造方法。
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