JP2010215520A - 水抽出コンドロイチンおよびミルク香料を含む経口製剤 - Google Patents

水抽出コンドロイチンおよびミルク香料を含む経口製剤 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の課題は、ケルセチン配糖体に由来する香味を抑制する方法、および、ケルセチン配糖体に由来する香味が抑制された経口用固形製剤を提供することである。
【解決手段】本発明により、水抽出コンドロイチンとミルク香料を含んでなる、ケルセチン配糖体含有の経口投与用固形製剤が提供される。
【選択図】なし

Description

本発明は、水抽出コンドロイチンとケルセチン配糖体とミルク香料を含有する経口投与用固形製剤に関する。特に本発明は、ケルセチン配糖体に起因する異味が改善された経口投与用固形製剤に関する。また、本発明は、ケルセチン配糖体の異味を改善する方法に関する。
フラボノイドの一種でタマネギやソバなどの植物に多く含まれるケルセチンは、さまざまな生理作用を示すことが知られている。ケルセチンおよびその配糖体に関して、これまで、抗炎症作用、抗酸化作用、血管収縮作用、毛細血管壁を強くする作用などが報告されており、食品、医薬品、化粧品などの用途において使用されている。さらに、ケルセチンおよびその配糖体は細胞増殖などに関わるいくつかの酵素を阻害することが報告されている。そのため、ケルセチン配糖体は炎症の改善や血液循環促進等の効果を目的とした健康食品などに利用されている。
しかしながら、ケルセチン配糖体には独特の香味、特に苦味があり、経口での摂取においてはその香味や嗜好性がしばしば問題となる。特にサプリメントなどの機能性食品として日常的にケルセチン配糖体を経口摂取しようとする場合、ケルセチン配糖体に特有の香味を抑制することによって継続的な摂取や長期的な摂取が容易になるため、ケルセチン配糖体に起因する香味が抑制された経口投与用製剤の開発が求められている。
一方、関節症は、ヒトだけでなく、イヌやネコなどの愛玩動物(ペット動物)においても、老化や肥満の増加によって増加傾向にある。関節症による跛行・関節痛・関節不安定等などの症状は、飼い主にも精神的および/または肉体的な負担をもたらすため、愛玩動物だけでなく、飼い主にとっても大きな問題である。従って、炎症の改善や血液循環促進等の効果を目的としたケルセチン配糖体を含む健康食品は、愛玩動物への適応が期待できる。
特許文献1には、サメの軟骨を原料とする飼料配合物が開示されており、サメ軟骨に軟化処理、粉砕処理、またはフレーク状加工処理を施すことによって、主に食感の観点からイヌおよびネコが容易に摂取できるように改善した飼料配合物が記載されている。
特許文献2には、動物が好む香料が表面にコーティングされたペット嗜好性製剤が記載されており、香料のコーティングにより嗜好性を改善することが開示されている。
特開2005−58191号公報 特開2004−194514号公報
以上のような状況に鑑み、本発明の課題は、ケルセチン配糖体に由来する香味を抑制する方法、および、ケルセチン配糖体に由来する香味が抑制された経口用固形製剤を提供することである。
本発明者らは、上記課題について鋭意研究を行った結果、水抽出コンドロイチンとミルク香料によってケルセチン配糖体の苦味を効果的にマスキングできることを見出し、本発明を完成させた。
1つの観点からは、本発明は、水抽出コンドロイチンとケルセチン配糖体とミルク香料を含んでなる経口投与用固形製剤である。特に、サプリメントなどの食品用途においては日常的に経口で摂取できることが求められるところ、本発明の経口投与用固形製剤はケルセチン配糖体の香味が効果的に抑制されており、好適である。
別の観点からは、本発明は、ケルセチン配糖体を含有する経口投与用固形製剤の製造方法であり、この方法は、水抽出コンドロイチンとケルセチン配糖体とミルク香料を配合する工程を含んでなる。
また別の観点からは、本発明は、ケルセチン配糖体を含有する組成物の香味改善方法であり、この方法は、水抽出コンドロイチンとミルク香料を配合することを含んでなる。
特に、イヌやネコなどの愛玩動物用のケルセチン配糖体含有組成物においては、ペットが口内で製剤を噛んでしまうことから、コーティングなどの方法によらずに嗜好性を改善することが求められていたところ、本件発明の経口投与用固形製剤はチュアブル錠などの剤形で使用してもケルセチン配糖体の異味を改善することができるため、愛玩動物用として特に望ましい。
すなわち、本発明によれば、これに限定されるものではないが、以下の発明が提供される。
1.ケルセチン配糖体、水抽出コンドロイチンおよびミルク香料を含んでなる経口投与用固形製剤。
2.前記固形製剤が錠剤である、上記1に記載の経口投与用固形製剤。
3.前記錠剤がチュアブル錠である、上記2に記載の経口投与用固形製剤。
4.愛玩動物用である、上記1〜3のいずれか1項に記載の経口投与用固形製剤。
5.前記ケルセチン配糖体が酵素処理ルチンである、上記1〜4のいずれか1項に記載の経口投与用固形製剤。
6.グルコサミン類をさらに含んでなる、上記1〜5のいずれか1項に記載の経口投与用固形製剤。
7.前記愛玩動物がイヌである、上記6に記載の経口投与用固形製剤。
8.水抽出コンドロイチンとミルク香料を配合することを特徴とする、ケルセチン配糖体を含有する経口投与用固形製剤の製造方法。
9.水抽出コンドロイチンとミルク香料を配合することを特徴とする、ケルセチン配糖体を含有する経口投与用固形製剤の香味改善方法。
本発明にしたがって水抽出コンドロイチン及びミルク香料を配合することによって、ケルセチン配糖体に特有の異味を効果的に抑制することが可能になる。また、本発明の経口投与用固形製剤は、ケルセチン配糖体に起因する異味が抑制されているため、継続的な摂取が容易になる。
本発明の経口投与用固形製剤は、水抽出コンドロイチン、ケルセチン配糖体およびミルク香料を含んでなり、獣医薬用途を含む医薬用途、サプリメントを含む食品用途、化粧・美容用途などに用いることができる。
(ケルセチン配糖体)
本発明の固形製剤は、ケルセチン配糖体を含んでなる。本発明においてケルセチン配糖体とは、フラボノイドの一種であるケルセチン(クエルセチンともよばれる)の配糖体であり、例えば、ルチン、クエルシトリン、イソクエルシトリン、モリン、ミリシトリン、ヘスペリジン、ナリンギン、タンゲリジンなどを挙げることができ、こういったケルセチン配糖体の酵素処理物も包含される。
本発明で使用するケルセチン配糖体はさまざまな生理作用を示すことが知られており、抗炎症作用、抗酸化作用、血管収縮作用、毛細血管の透過抑制作用、毛細血管壁を強くする効果、さらに細胞増殖などに関わるいくつかの酵素を阻害することが報告されている。しかしながら、ケルセチン配糖体は独特の香味、特に苦味を有しており、食品として日常的に経口摂取しにくいものであった。そこで、本発明の経口投与用固形製剤においては、ケルセチン配糖体に加えて、上記した水抽出コンドロイチンを添加することにより、香味が改善された経口投与用固形製剤を得ている。
本発明で使用するケルセチン配糖体としては、ルチンまたはその類縁体が好ましい。ルチン類は、フラボノイドの一種であり、ビタミン様の働きがあることからビタミン様物質とされる。一般に、ミカン科の植物に限らずマメ科のエンジュやタデ科のソバなどからも得ることができる。
本発明で使用するケルセチン配糖体は、その由来、製法については特に制限はない。例えば、ケルセチンを多く含む植物として、ケッパー、リンゴ、茶、タマネギ、ブドウ、ブロッコリー、モロヘイヤ、ラズベリー、コケモモ、クランベリー、オプンティア、葉菜類、柑橘類などが知られており、これらの植物からケルセチン配糖体を得ることができる。
本発明の好ましい態様においては、ケルセチン配糖体として、ケルセチン配糖体を糖転移酵素などで処理して糖転移させたものを使用することができる。ルチンなどのケルセチン配糖体は水に難溶性のため使用しにくい場合があるが、ケルセチン配糖体を酵素処理物は糖転移により水溶性が高められているため、本件発明の固形製剤に使用するのに好適である。
本発明の特に好ましい態様においては、ケルセチン配糖体として、ルチンの酵素処理物(以下、酵素処理ルチンという)を使用する。酵素処理ルチンとは、酵素処理イソクエルシトリンや糖転移ルチンなどとも呼ばれ、ルチンおよびその類縁体を酵素処理して糖転移させたα−グリコシルイソクエルシトリンを主成分とするものをいう。一般に、ルチンには抗酸化作用があることが知られていたものの、水に難溶性のため使用用途は限られていたが、酵素処理ルチンとして糖転移を図ることにより水溶性を高めることができ、好適である。酵素処理ルチンは強力な抗酸化活性の他、血小板の凝集抑制および接着抑制作用、血管拡張作用、抗ガン作用等、多彩な生理機能をもつことが知られており、炎症の改善や血液循環促進等の効果を目的とした健康食品に利用されている。酵素処理ルチンについては、例えば、エンジュ、ソバなどの抽出物を糖転移酵素で処理して得ることができる。詳細には特開平7−10898に記載の方法で得ることができる。
本件発明の固形製剤へのケルセチン配糖体の配合量は、酵素処理ルチンの摂取量が一個体あたり、1日1〜500mg、好ましくは5〜300mgとなることを目安として、決めることができる。また、体重1kgあたりの摂取量は、例えば0.015〜8.5mg/kg、より好ましくは0.080〜5.0mg/kgとすることができる。さらに、錠剤へのケルセチン配糖体の配合割合は、錠剤全体に対して、0.1〜95重量%、好ましくは1〜80重量%とすることができる。
本件発明の固形製剤において、水抽出コンドロイチンとケルセチン配糖体との重量比は、1:30〜100:1が好ましく、1:10〜50:1がさらに好ましい。
(コンドロイチン)
本発明の固形製剤は水抽出されたコンドロイチンを含んでなる。コンドロイチンは、コンドロイチン硫酸として人体にも広く分布しており、特に、関節部の軟骨や皮膚に多く含まれることから、変形性関節症の改善や皮膚の美容等の効果を目的とした健康食品に利用されている。当技術分野において理解されているように、本発明において単にコンドロイチンとした場合、コンドロイチン硫酸またはその塩をも包含する意味である。コンドロイチン硫酸は軟骨や皮膚に含まれているが、特に、軟骨には高濃度で含まれている。
一般に、コンドロイチンは、酸性ムコ多糖の代表的な物質で生体物質として人体においても様々な組織に広く存在しており、コラーゲンと共に軟骨の主成分としてその機能を果たしている。また、コンドロイチンは、水分を保持し組織にとどめる機能や組織から物質を運搬する機能を有しており、粘性や保湿を担う重要な物質である。特に、加齢にともなって体内のコンドロイチンは減少するとされ、体内の通常の代謝で不足する分は種々の方法で体外から補充する必要がある。
本発明に関してコンドロイチンは、上述したように、コンドロイチン硫酸やその塩を含み、また、各種のコンドロイチンを含む。コンドロイチンは、D−グルクロン酸(ウロン酸)とN−アセチル−D−ガラクトサミンが結合した構造を有し、これに硫酸基が結合してコンドロイチン硫酸となる。コンドロイチン硫酸は硫酸基の結合位置により、A,B,C、D,E,Kなど複数のタイプに分類され、コンドロイチン硫酸BはL−イズロン酸が構成糖となっている。本発明で使用するコンドロイチンは、これら各タイプのコンドロイチン硫酸であってよい。また、本発明においては、上記した各種のコンドロイチンを複数組み合わせて使用しても、1種類のみを使用してもよい。
本発明に用いるコンドロイチンは、水抽出により得たものであればよく、その原料は特に制限されない。本発明において、コンドロイチンは、軟骨・皮膚などに多く存在し、例えば、サメ、イカ、サケ、カニ、ウシ、ブタ、トリなどから得ることができる。一般に、コンドロイチン硫酸Aはウシ・ブタなどの高等な脊椎動物に多く含まれ、コンドロイチン硫酸Cは下等な脊椎動物に多く含まれるとされる。また、サメなどの軟骨魚類は、軟骨の比率が高く、ヒレや中骨などの軟骨からコンドロイチン硫酸A,C,Dなどが多く得られるため、本発明のコンドロイチンの原料として好ましい。さらに、コンドロイチン硫酸Eはイカ、コンドロイチン硫酸Kはカブトガニに多く存在するとされる。本発明においては、用途に応じてコンドロイチンの原料を選択することができる。
本発明においては、コンドロイチンを高濃度で含むことからサメ軟骨を原料とすることが好ましく、サメ軟骨由来のコンドロイチンの主要成分は分子量10万から数10万程度の多糖類であるコンドロイチン硫酸ナトリウムである。ここで、本発明のコンドロイチンの原料とするサメの種類について制限はなく、例えばアブラツノザメ、ヨシキリザメが挙げることができる。さらに軟骨の由来部位についても制限はなく、例えば頭部、ヒレなどが挙げられる。
本発明においては、水抽出により得たコンドロイチンを使用する。本発明の水抽出コンドロイチンとは、原料から水系の溶媒を用いて抽出されたコンドロイチンを意味する。後で述べるように、ケルセチン配糖体は独特の苦味があるところ、本発明者らは、特に水抽出のコンドロイチン及びミルク香料を配合するとケルセチン配糖体の異味を効果的に抑制されることを見出し、本発明を完成させた。本発明において、水抽出のコンドロイチンがケルセチン配糖体の異味を効果的に抑制できるメカニズムは明らかでなく、また、本発明は以下の推論に拘束されるものではないが、水抽出工程を経たコンドロイチンは、サメ軟骨などの原料を単に粉砕しただけの粉砕品と比較して、吸湿性や水への分散速度、吸着特性などが高くなっており、このような特性により水抽出コンドロイチンはケルセチン配糖体由来の異味を効果的に抑制できるものと推論される。
一般に、コンドロイチンは、原料を直接粉砕して得た粉砕物と原料から抽出して得た抽出物があるところ、本発明においては水を利用して抽出したコンドロイチンを使用する。本発明において水抽出コンドロイチンとは、原料から水系溶媒を利用して抽出されたコンドロイチンであれば特に制限されず、種々のコンドロイチンを使用することができる。例えば、本発明の水抽出コンドロイチンは、サメ軟骨などの軟骨を細断し適当な大きさにした後、水系溶媒中で抽出処理を行い、吸着や濾過などの方法で精製し、デキストリン等の賦形剤を加えてスプレー乾燥などの方法により粉末状とすることで得ることができる。水抽出の際に蛋白分解酵素などを添加することもでき、また、溶媒として熱水を使用することもできる。
本発明においては、コンドロイチンとして、コンドロイチンとタンパク質とが複合体を形成しているものを使用してもよく、タンパク質が除去されたコンドロイチンを使用してもよい。一般に、コンドロイチン硫酸は生体組織内においてタンパク質などと大きな複合体を形成して、いわゆるプロテオグリカンやグリコサミノグリカン構造を有し、分子量数百万の高分子として存在している。食品用途には、この生体内での構造をある程度維持されたコンドロイチン硫酸・タンパク質複合体が使用され、医薬品・化粧品用途には、この複合体のタンパク質を除去して精製したコンドロイチン硫酸ナトリウムが使用される。
本発明の固形製剤において、コンドロイチンの配合量は、一個体あたり、好ましくは1日10〜3000mg、より好ましくは50〜1000mgとなることを目安として決めることができる。また、体重1kgあたりの摂取量が、例えば0.15〜50.0mg/kg、より好ましくは0.80〜20.0mg/kgとすることができる。さらに1錠剤あたりの配合量としては、錠剤全体に対して、0.1〜95重量%が好ましく、5〜80重量%がより好ましい。
(ミルク香料)
本発明の固形製剤は、ミルク香料を含んでなり、ケルセチン配糖体に特有の異味が改善されている。本発明におけるミルク香料とは、ミルク様の香味、すなわち、ミルク、バター、チーズ、ヨーグルトに類するような香味を有する食品香料(フレーバー)を意味する。本発明においては、本発明に効果を阻害しない限り、ミルク香料の種類に特に制限はなく、天然香料と合成香料のいずれも使用することができる。本発明におけるミルク香料(ミルクフレーバー)は、香りだけでなく、食物が口中に入って嚥下されるまでに感じる総合的な口中感覚に影響を与え、ケルセチン配糖体含有固形製剤の香味を改善することができる。
香料の添加方法としては特に限定されないが、例えば、粉末香料を混合する方法、あるいは、バインダー液中に含有させて噴霧する方法などを挙げることができる。ミルク香料の固形製剤中の配合量は、ケルセチン配糖体由来の香味が緩和される範囲で適宜設定することができる。例えば、錠剤中の配合割合として、0.1〜10重量%、好ましくは1〜5重量%を採用することができる。
本発明の固形製剤において、ケルセチン配糖体とミルク香料の配合比は、ケルセチン配糖体由来の香味が緩和される範囲で適宜設定することができる。中でも、500:1〜1:10、好ましくは100:1〜1:2の範囲であることが望ましい。
(グルコサミン)
好ましい態様において、本発明の固形製剤はグルコサミンを含有する。グルコサミンはコンドロイチンと配合すると良いとされており(G.C.Reyes, et al., Progress in Drug Res., 55, pp.83-103, 2000)、本発明の固形製剤にグルコサミンを配合することが好ましい。また、グルコサミン由来の異味はミルク香料によって緩和されることから、本発明においてグルコサミンを用いることは好適である。グルコサミンは、グルコースの2位の水酸基がアミノ基に置換した2−アミノグルコースであり、生体成分である糖蛋白質、糖脂質、ムコ多糖などの構成糖分子として自然界に幅広く分布する天然アミノ糖である。工業的にはカニ、エビ、オキアミなどの甲殻類やイカの軟骨などに含まれるキチンを酸又は酵素により加水分解し、分離、精製することによって得ることができる。
近年、グルコサミンは、生体成分の基本構成分子としての重要性のみならず、その摂取による様々な有効性が確認され、関節痛や変形性関節症の治療・予防、美容等の効果を目的とした健康食品に広く利用されている。グルコサミンをさらに本発明に使用することによって、コンドロイチンと相まって、関節痛や関節症に対する効果をさらに期待することができる。
本発明に使用できるグルコサミンは、その由来、製法等について特に制限はない。また、グルコサミンを、塩や種々の誘導体として使用することもでき、それら種類についても特に制限はなく、本発明において単にグルコサミンとした場合、塩や誘導体も包含される。グルコサミンの塩や誘導体としては、例えば、グルコサミン塩酸塩、グルコサミン硫酸塩、グルコサミン乳酸塩、N−アセチルグルコサミン等が挙げられる。
グルコサミンの固形製剤への配合量は、グルコサミンの摂取量が一個体あたり、1日100〜5000mg、好ましくは300〜2000mgとなることを目安として決めることができる。また、体重1kgあたりの摂取量は、例えば1.5〜85.0mg/kg、より好ましくは5.0〜60.0mg/kgとすることができる。例えば、錠剤へのグルコサミンの配合割合は、錠剤全体に対して、0.1〜95重量%、好ましくは10〜80重量%とすることができる。
(その他の成分)
本発明の固形製剤は、水抽出コンドロイチンおよびケルセチン配糖体およびミルク香料に加えて、その他の生体内機能性を有する素材、例えば、グルコサミン、コラーゲン、ヒアルロン酸、ビタミンなどを含んでもよい。さらに、食品や医薬品に一般に使用される添加剤や補助成分を含んでいてもよく、例えば、甘味料、酸味料、賦形剤、滑沢剤、香味料、デンプン、デキストリンなどを含んでいてもよい。
(製剤)
本発明は固形製剤であり、水抽出コンドロイチンとミルク香料によってケルセチン配糖体に起因する異味が抑制されるため、特に経口投与用の固形製剤として適する。本発明の固形製剤は、経口投与に適した形態、例えば、錠剤、カプセル、顆粒、粉末またはロゼンジの形態をとることが好ましい。中でも、本発明の固形製剤は、異味成分であるケルセチン配糖体を含有することから、錠剤であることが好ましい。
本発明の固形製剤の投与対象は、特に制限されず、ヒトであっても、ヒト以外の動物であってもよい。投与対象に応じて製剤の剤形を適宜選択することができ、例えば、ヒトを対象とする場合、関節炎発症のリスクが高い中高年層においては錠剤の嚥下が困難な場合があるため、本発明の固形製剤を顆粒剤、チュアブル錠とすることが特に好ましい。また、子供などを投与対象とする場合、本発明の固形製剤を糖衣錠などにしてもよい。さらに、ヒトを除く動物においては、嗜好性が投与の容易性に大きな影響を与えるため、ケルセチン配糖体の異味が改善された本件発明の固形製剤は動物投与に好適である。例えば、口中で錠剤を噛んでしまう傾向がある愛玩動物(特に、イヌやネコ)に対しては、剤形としてチュアブル錠を選択することが特に好ましい。本発明は、ケルセチン配糖体に起因する苦味を配合面から改善するものであり、固形製剤自体に特殊な構造(多層構造など)を要求するものではない。したがって、口中で錠剤を噛んでしまうため、錠剤を単に糖衣錠とするだけでは嗜好性を向上させることのできない愛玩動物においても、本発明の固形製剤の嗜好性は高く、極めて有用である。
本発明の固形製剤は、食品、医薬品、化粧品、食品用添加物として使用することができる。本発明の固形製剤は、ケルセチン配糖体に起因する苦味が抑制されるため無理なく日常的に摂取することができ、いわゆる機能性食品などの食品として使用することに適する。また、本発明の固形製剤を食品として使用する場合には、コンドロイチンとしてコンドロイチン硫酸ナトリウムを用いることが好ましく、医薬品、化粧品、食品用添加物として使用する場合には、コンドロイチンとしてコンドロイチン硫酸・タンパク質複合体を使用することが好ましい。
(方法)
別の観点からは、本発明は、水抽出コンドロイチンとミルク香料を含んでなる、ケルセチン配糖体を含有する経口投与用固形製剤の製造方法と評価することができる。さらに他の観点からは、本発明は、水抽出コンドロイチンとミルク香料を含んでなる、ケルセチン配糖体を含有する経口投与用固形製剤の香味改善方法と理解することもできる。
また別の観点からは、本発明は、ケルセチン配糖体、水抽出コンドロイチンおよびミルク香料を含んでなる固形製剤を経口投与することを含んでなる治療方法である。ここで、本発明における治療とは、狭義の治療だけでなく、予防や緩和などを包含する概念である。本発明の方法の対象は哺乳動物一般であるが、本発明の固形製剤は、イヌやネコなどの愛玩動物における嗜好性を著しく改善することから、本発明の治療方法の対象を愛玩動物とすると、本発明の効果を十分に享受することができるため好ましい。また、本発明の治療方法の適応用途としては、ケルセチン配糖体の抗炎症作用、抗酸化作用、血管収縮作用、毛細血管の透過抑制作用、毛細血管壁の強化作用、細胞増殖に関する酵素の阻害作用による、抗炎症用途や血液循環促進用途など、コンドロイチンやグルコサミンに起因する関節痛用途や関節症用途などがある。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断らない限り、本明細書において、部および%などは重量基準であり、数値範囲はその端点を含むものとして記載される。
実施例1
ケルセチン配糖体を含有する組成物において、ケルセチン配糖体の異味を好適にマスキングする組成について検討を行った。具体的には、ケルセチン配糖体の異味をマスキングするための成分として、水抽出コンドロイチンとミルク香料(サンプル1〜2、4〜5)、水抽出コンドロイチン(サンプル3)、粉砕コンドロイチンとミルク香料(サンプル6〜9)、デキストリン(サンプル10〜13)を試験した。
(材料)
使用した材料は以下のとおりである。
・ケルセチン配糖体:サンエミックP15(三栄源エフエフアイ製、ケルセチン配糖体15%含有、酵素処理ルチン)
・水抽出コンドロイチン:SCP(マルハニチロ食品製、コンドロイチン硫酸20%含有、サメ軟骨の熱水抽出物にデキストリンを加え、スプレードライにより粉末化した製品、タンパク複合品)
・ミルク香料:ミルクフレーバーパウダーSAB−10162(長谷川香料製)
・粉砕コンドロイチン:サメ軟骨粉末KSCP−S(ニッスイ製、コンドロイチン硫酸20%含有、サメ軟骨の粉砕粉末)
・デキストリン:サンデック#250(三和澱粉工業製)
(評価方法)
ケルセチン配糖体と各種マスキング成分を表1に示す組成で配合した混合粉末を調製した。調製した混合粉末1gを6名のパネラー(ヒト)が水とともに経口摂取し、ケルセチン配糖体由来の苦味の強さを以下の基準にしたがって評価した。
3点:ほとんど苦味を感じない
2点:弱い苦味を感じる
1点:やや苦い
0点:苦い
6名のパネラーの評価を集計し、スコアの平均が3点以下2点超を○、2点以下1点超を△、1点以下0点を×とした。結果を表1に示す。
Figure 2010215520
表1の結果から明らかなように、水抽出コンドロイチン、あるいは、水抽出コンドロイチン硫酸とミルク香料を配合することによって、ケルセチン配糖体の苦味を効果的にマスキングすることができた。特に水抽出コンドロイチンとミルク香料を配合することによって、ケルセチン配糖体の苦味を効果的にマスキングすることができた。また、単にデキストリンを添加しただけではケルセチンに起因する苦味を十分にマスキングすることができなかったことから(サンプル10〜13)、水抽出コンドロイチン硫酸を配合したことによるマスキング効果は、水抽出コンドロイチン硫酸製品(SCP:マルハニチロ食品製)に含まれるデキストリンに起因するものでなく、水抽出コンドロイチン硫酸に起因するものと考えられた。
実施例2
ケルセチン配糖体と各種マスキング成分を含有する組成物を錠剤化し、ケルセチン配糖体の異味のマスキング効果を評価した。
表2に示す配合にしたがって、原料粉末を混合し、混合粉末約3kgを調製した。各成分の混合は、原料粉末を混合機(寿ミックスウェルV-100、徳寿工作所製)に投入し、22 rpmで5分間混合した。得られた混合粉末を、臼杵(HT-AP15SS-II、畑鉄工所製)を用いて打圧約2000 kgf、回転速度約20 rpm、直径10 mmの条件で、1錠あたり475 mgとなるように直接打錠し、錠剤を得た。
なお、使用した材料の詳細は以下のとおりである。
・グルコサミン塩酸塩:F−50(プロテインケミカル製)
・セルロース(旭化成ケミカルズ製)
・酸化ケイ素(DSLジャパン製)
・ショ糖脂肪酸エステル(三菱化学フーズ製)
錠剤を6名のパネラー(ヒト)に1錠経口摂取してもらい、ケルセチン配糖体に起因する苦味を評価した。具体的には、錠剤を10秒間口腔内に含んだ後に飲み込んで摂取した際の香味について、以下の基準にしたがって評価した。
3点:ほとんど苦味を感じない
2点:弱い苦味を感じる
1点:やや苦い
0点:苦い
6名のパネラーの評価を集計し、スコアの平均が3点以下2点超を○、2点以下1点超を△、1点以下0点を×とした。結果を表2に示す。
Figure 2010215520
表2に示すとおり、水抽出コンドロイチンとミルク香料を配合した本発明の錠剤(サンプル1)は、ケルセチン配糖体に起因する苦味が良好にマスキングされており、ヒトが経口摂取しやすいことが確認された。一方、水抽出コンドロイチンに代えて粉砕コンドロイチンを用いた錠剤(サンプル2)では、ケルセチン配糖体に起因する苦味を十分にマスキングできなかった。
実施例3
ケルセチン配糖体含有組成物を錠剤化し、イヌの嗜好性を評価した。実施例2で示した配合および製造法にしたがって調製した錠剤を床に置き、11頭のイヌに自由に摂食させた。錠剤の嗜好性については、以下の評価基準にしたがって、飼い主が評価した。
3点:よく食べた
2点:普通に食べた
1点:食べやすそうではないが食べた
0点:食べなかった
11頭の評価結果を集計し、スコアの平均が3点以下2点超を○、2点以下1点超を△、1点以下0点を×とした。
Figure 2010215520
本実験においては、全てのイヌが錠剤を噛み砕いて摂取した。また、表3に示すとおり、水抽出コンドロイチンとミルク香料を配合したチュアブル錠(サンプル1)とすることによって、ケルセチン配糖体含有組成物のイヌにおける嗜好性が向上した。一方、水抽出コンドロイチンに代えて粉砕コンドロイチンを用いた錠剤(サンプル2)では、嗜好性を十分に改善することができなかった。特に、本発明の錠剤(サンプル1)はイヌに対する嗜好性が極めて良好で、モニターのイヌの多くが本発明の錠剤をよく食べた。

Claims (9)

  1. ケルセチン配糖体、水抽出コンドロイチンおよびミルク香料を含んでなる経口投与用固形製剤。
  2. 前記固形製剤が錠剤である、請求項1に記載の経口投与用固形製剤。
  3. 前記錠剤がチュアブル錠である、請求項2に記載の経口投与用固形製剤。
  4. 愛玩動物用である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の経口投与用固形製剤。
  5. 前記ケルセチン配糖体が酵素処理ルチンである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の経口投与用固形製剤。
  6. グルコサミン類をさらに含んでなる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の経口投与用固形製剤。
  7. 前記愛玩動物がイヌである、請求項6に記載の経口投与用固形製剤。
  8. 水抽出コンドロイチンとミルク香料を配合することを含む、ケルセチン配糖体を含有する経口投与用固形製剤の製造方法。
  9. 水抽出コンドロイチンとミルク香料を配合することを含む、ケルセチン配糖体を含有する経口投与用固形製剤の香味改善方法。
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