JP2021010324A - 腸溶性被覆食品粉体集合体及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】腸溶性であるために、胃では溶出し難く腸で溶出し易いため、腸で有効成分が放出される腸溶性被覆食品粉体集合体を提供することにあり、また、それを含有する健康食品を提供すること。【解決手段】有効成分を含有する直径1μm以上1mm以下の食品核が可食性被覆材層によって被覆されてなる腸溶性被覆食品粉体の集合体であって、1粒子の食品核が実質的に被覆の単位であり、該1粒子の食品核の表面が個々に該可食性被覆材層で被覆されており、該可食性被覆材層は可食性タンパク質を含有するものであり、試験開始から2時間までを溶出試験第1液を用い、試験開始2時間から24時間までを溶出試験第2液を用いた際に、試験開始から2時間後の溶出率が20質量%以下であり、試験開始から6時間後の溶出率が50質量%以上である腸溶性被覆食品粉体集合体、及び、それを含有する健康食品。【選択図】図3

Description

本発明は腸溶性被覆食品粉体集合体及びその製造方法に関するものであり、更に詳しくは、可食性タンパク質を含有する可食性被覆材層によって被覆されて腸溶性になっている腸溶性被覆食品粉体集合体、その製造方法、及び、該腸溶性被覆食品粉体集合体を含有する健康食品に関するものである。
医薬品の製薬分野においては、腸溶性の付与のために、カプセルや錠剤の表面を腸溶性物質で被覆することは知られている。また、タンパク質の溶液を塗布・乾燥させたものも知られている。
特許文献1には、生理活性を有する粉末又は顆粒の表面を被覆した製剤が記載されており、特許文献2には、粒径20μm〜200μmの粉体の表面をゼイン等で被覆する際に、中鎖トリグリセリドとエタノールの混合液を噴霧する被覆粉体の製造方法が記載されている。
しかしながら、上記技術を含め公知の技術は、殆ど医薬・薬剤を対象としたものであり、健康食品や一般食品を主な対象としたものではなかった。すなわち、医療用医薬品等の薬剤粉末を対象としたものであり、粉体状の食品を対象としたものではなかった。
粉体状の食品を対象としたものとして、特許文献3等には、牡蠣肉エキス粉末を脂質粉末でコーティングすることにより、経時的にガス発生をなくし、牡蠣独自の生臭さを軽減させた牡蠣肉エキス粉末が開示されている。
しかしながら、この技術は、油脂コーティング(溶融造粒)技術であるため、被覆材が極めて限定されているため、口腔内で溶解しない被覆材しか使用できないし、粉体の表面すなわち食品核の表面を個々に被覆することもできないし腸溶性にもならない。
特許文献4には、流動層造粒法を用いて、ポリフェノールを水溶性セルロース誘導体でコーティングすることにより、ポリフェノール顆粒が得られることが開示されている。
しかしながら、該流動層造粒法では、被覆と同時に造粒(顆粒化)まで1段で行ってしまうため、個々の粉体の表面が被覆材で被覆されず、該顆粒が保存中等に割れたときには、新たな破断面が露出してしまう。また、該流動層造粒法では、大量の被覆材を必要とする(厚塗りが必要である)ため、低濃度で均一に個々の粉末の表面が被覆されない。
そのため、特許文献4では、食品核を被覆の単位とし該1粒子の食品核の表面を個々に可食性被覆材層で被覆されていない。また、腸溶性にもなっていない。
特許文献5には、腸溶性を持たせた多層被覆製剤が記載されていて、食品にも適用できるとしているが、特許文献6の技術は、カプセル剤又は錠剤の表面に腸溶性層を形成する技術であり、食品核を被覆の単位とし該1粒子の食品核の表面を個々に可食性被覆材層で被覆するものではなかった。
このように、薬剤では、胃で吸収させず(剤型を崩壊させず)、腸に来て初めて有効成分を吸収させる(剤型を崩壊させる)と有効である場合が多いが、健康食品や一般食品では、このような性質は、あまり重要視されていなかった。
一般に、健康食品や一般食品は、健常人や未病人が摂取し、常用的に(習慣的に)比較的多く摂取する傾向があるため、腸において初めて溶解・崩壊するもの(剤等)が重要になる場合があると考えられるが、前記したような公知技術では、その目的達成は不十分であった。
更に、健康食品や一般食品では、その最終形態に多様性が要求され、食品粉体の集合体を、錠剤状、顆粒状等に加工してから供給することが多いが、前記したような食品に関する公知技術では、消化器内に入った後の腸溶性については考慮されておらず、また、被覆された後の製剤加工(における問題点解消)までは考慮されていない。
このように、健康食品や一般食品では、医薬品とは異なった特性が要求されるにもかかわらず、被覆対象である食品核を健康食品や一般食品に特化し、食品としてその効果を発揮する技術が殆どなかった。また、かかる技術を開発しようとする課題も設定されていなかった。
特開2005−239737号公報 特開2007−089519号公報 特開2012−034614号公報 特開2010−154769号公報 特開2019−052101号公報
本発明は上記背景技術に鑑みてなされたものであり、その課題は、胃では溶出し難く腸で溶出し易いため、腸で有効成分が放出される腸溶性被覆食品粉体集合体を提供することにあり、また、それを含有する健康食品を提供することにある。
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、食品核を被覆材で被覆するに当たり、該被覆の単位を個々の食品粉体(食品核)とし、その表面を、特定の溶出条件、特に好ましくは特定の粒径分布条件を満たすように、可食性タンパク質で被覆することによって、該食品が胃液に溶出され難くなると共に、腸液に溶出し易くなり、健康食品や一般食品としての効果をより一層発揮できることを見出した。
更に、個々の食品核の表面を、特定の条件を満たすように可食性タンパク質で被覆することによって、健康食品では特に重要な「その後の造粒(顆粒化)や錠剤化等の加工」によっても、腸溶性の効果が喪失しないようにできることを見出して本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、有効成分を含有する直径1μm以上1mm以下の食品核が可食性被覆材層によって被覆されてなる腸溶性被覆食品粉体の集合体であって、
1粒子の食品核が実質的に被覆の単位であり、該1粒子の食品核の表面が個々に該可食性被覆材層で被覆されており、
該可食性被覆材層は可食性タンパク質を含有するものであり、
日本薬局方の回転バスケット式溶出試験法において、試験開始から2時間までを溶出試験第1液を用い、試験開始2時間から24時間までを溶出試験第2液を用いた際に、該食品核の成分全体に対して、試験開始から2時間後の食品核の成分の溶出率が20質量%以下であり、試験開始から6時間後の食品核の成分の溶出率が50質量%以上であることを特徴とする腸溶性被覆食品粉体集合体を提供するものである。
また、本発明は、日本薬局方の回転バスケット式溶出試験法において、試験開始から24時間まで溶出試験第1液を用いた際に、上記食品核の成分全体に対して、試験開始から6時間後の食品核の成分の溶出率が50質量%以下である請求項1又は請求項2に記載の腸溶性被覆食品粉体集合体を提供するものである。
また、本発明は、日本薬局方の回転バスケット式溶出試験法において、試験開始から24時間までイオン交換水を用いた際に、上記食品核の成分全体に対して、試験開始から2時間後の食品核の成分の溶出率が65質量%以上である請求項1ないし請求項3の何れかの請求項に記載の腸溶性被覆食品粉体集合体を提供するものである。
また、本発明は、レーザー散乱型粒度分布計を用いて測定し、可食性被覆材層によって被覆する前の食品核の最大径をMAX0、最小径をmin0、体積ピーク径の頻度(%)をV0とし、可食性被覆材層によって被覆した後の粉体の最大径をMAXt、最小径をmint、体積ピーク径の頻度(%)をVtとしたとき、下記の式(1)を満たすように、該1粒子の食品核の表面が個々に可食性被覆材層によって被覆されているものである上記の腸溶性被覆食品粉体集合体を提供するものである。
0.5≦[Vt/(MAXt−mint)]
/[V0/(MAX0−min0)]≦1.5 ・・・・(1)
また、本発明は、転動流動層型、側方スプレー式流動層型、ワースター式流動層型、又は、ボトム式流動層型のコーティング装置によって、1粒子の食品核の表面が個々に可食性被覆材層によって被覆されたものである上記の腸溶性被覆食品粉体集合体を提供するものである。
また、本発明は、「上記の腸溶性被覆食品粉体集合体」の製造方法であって、
転動流動層型、側方スプレー式流動層型、ワースター式流動層型、又は、ボトム式流動層型のコーティング装置によって、上記の腸溶性被覆食品粉体集合体の特定要件を満たすように、給気温度、ローター回転数、及び、スプレーの送風量を調整することによって、1粒子の食品核の表面を、個々に可食性被覆材層によって被覆することを特徴とする腸溶性被覆食品粉体集合体の製造方法を提供するものである。
また、本発明は、上記の腸溶性被覆食品粉体集合体を含有する健康食品であって、
その剤型が、粉剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、又は、固形剤であることを特徴とする健康食品を提供するものである。
本発明によれば、前記問題点と上記課題を解決し、一般食品又は健康食品を摂取したときに、胃での溶出を抑制させて、腸での溶出率を高くさせて、該有効成分の有する効果を好適に奏させることができる。
上記溶出条件は、個々の食品核の表面に被覆された可食性被覆材層中の可食性タンパク質の種類、及び/又は、被覆量(単位表面積に対する可食性タンパク質の質量や、可食性被覆材層の厚さ等)によって調節可能である。
食品核中の有効成分が溶出される場所である消化器官(胃、小腸(十二指腸、空腸、回腸)、大腸等)について、胃では健康食品中の機能性成分の効果が発揮されずに、腸でその効果が発揮される場合に有効である。胃で効果が発揮されない場合とは、胃で有効成分が分解される、胃で溶出すると胃壁を痛める、等が挙げられる。
「腸溶性」、すなわち、胃において溶解・放出しない性質を、本発明では好適に奏させることができる。食品分野における食品粉末自体の(食品粉末ごとの)の「腸溶性付与」については、そのような課題すら殆どなかったので、本発明のような技術思想は知られていなかった。
本発明の腸溶性被覆食品粉体集合体によれば、可食性タンパク質を含有する可食性被覆材層で1粒子の食品核をそれぞれ被覆することによって、胃を通過して腸で溶解させることができる。
医薬では、有効成分の胃酸による分解や、有効成分の胃壁への障害が、致命的な問題となる場合が多い。
しかしながら、(健康)食品では、医薬ほど厳密である必要がないと考えられ、むしろコストアップが問題になる場合があるため、腸溶性は重要視されてこなかった。
医薬における「腸溶性」の公知の技術思想は、食品として利用できないものが多く、食品の開発においては参考にならない。
また、本発明によれば、腸溶性が得られると共に、食品粉体の有する味及び/又は臭いをマスキングして、摂取し易く(食べ易く)することもできる。
健康食品には不味いものが多く、また、天然物(に含有されている特定の成分)であったりするため、医療用医薬品に比較して大量に摂取する必要がある場合も多い。
本発明によれば、食品粉体の味や臭いを殆ど感じなくさせる程度にまで低減させることができるので、誰でも嫌な思いをせずに摂取でき、また、大量に又は継続して摂取しなければならない健康食品に特に好適である。
また、本発明によれば、胃で崩壊して既に溶解した有効成分が腸に溶液として入り込まないので、腸内で初めて崩壊・溶出し、腸で徐々に吸収されることによって、医薬ではなく食品に要求される独特の性質である、食間の空腹感や、食後血糖値スパイク等も抑制・防止できる。
食品は、一般に摂取する量が多いことに加え、その形態に多様性がある。本発明は、食品のかかる多くの形態に適応することが可能である。
医薬品の場合、極言すれば病人は剤型についての好みを言える立場ではないので、多くは病人が摂取できる形態でありさえすればよい。従って、医薬品における公知の技術思想は、食品には応用が効き難い。
本発明は、前記した「発明が解決しようとする課題」等を見出したことにより初めてなされたとも言える。
本発明の被覆粉体食品においては、被覆装置・被覆方法が極めて重要である。食品粉体に対して、例えば、転動流動層法、側方スプレー式流動層法、解砕整粒機構付流動層法、ワースター式流動層法、ボトム式流動層法等、限定された特定の装置を用いることによって、粉体単位で被覆でき、粉体の質量に対して被覆材の質量を低く抑えることが可能となり、腸溶性が好適に達成される。また、粉体一つ一つが均一に被覆されると共に、被覆時に凝集や造粒が起らないので、凝集や造粒に無駄に使われる可食性被覆材が少なくなるため、食品粉体自体の特徴を生かすことができる。
本発明の被覆粉体食品は、転動流動層型、側方スプレー式流動層型、ワースター式流動層型、又は、ボトム式流動層型の装置を用いて、粉体一つ一つの表面を可食性被覆材で被覆させることが、上記効果を得るために特に好ましい。
すなわち、これらの装置を用いると、本発明における「腸溶性」が好適に実現され、更に、該被覆粉体食品の保存中の衝撃や、該被覆粉体食品を打錠して錠剤にする際の衝撃に対しても、被覆されていない新たな粉体表面や粉体破損断面が露出することがなく、「腸溶性」や「味や臭いのマスキング効果」が減少することがない。
例えば、被覆と同時に造粒して顆粒状にまでしてしまうような装置・方法では、粉体の表面が個々に被覆されていないので、顆粒が崩れたときに、粉体の表面が直接露出する場合がある。
例えば撹拌造粒方式等で食品核(食品粉体)の表面を可食性被覆材で被覆した場合、1段の操作で造粒されたり顆粒状になったりする。そして、このように被覆してなる被覆粒体は、好適な腸溶性が得られず、また、該顆粒が崩れて食品粉体(食品核)が露出し、腸溶性やマスキング性が低下する。
本発明の腸溶性被覆食品粉体集合体においては、被覆の単位である食品核が「微粉体が強く凝集した二次粉体」であることはあっても、実質的に一つの「食品粉体(食品核)」の表面が被覆材で被覆されているために好適な腸溶性が得られる。
更に、打錠、運搬・保存時の衝撃に対しても、腸溶性が維持される。なお、本発明の腸溶性被覆食品粉体集合体を一旦得て、それを含有する顆粒剤では、打錠、衝撃等で該顆粒が崩れても、個々には被覆されているので腸溶性が維持される。
本発明によれば、その剤型が、粉剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、又は、固形剤である健康食品において、上記した効果を特に発揮する。
本発明においては、主食、副食、間食、調味料等の種々の「一般食品」と、健康の保持増進に資する食品として販売・利用される、粉剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、固形剤等の「健康食品」とを総合して、単に「食品」と略記することがある。また、飼料やペット用餌も「食品」に含まれる。
食品(健康食品、一般食品)には、栄養機能、嗜好性機能及び生体調節機能がある。これまで、日本では、生体調節機能が公に認められていなかったが、機能性表示食品制度が施行され、1300件以上が受理されており、生体調節機能に係る機能性関与成分が重要視されている。
しかしながら、機能を発揮する十分な量の有効成分の配合、保存期間中の減衰を見越した増量配合等を優先した食品形態とすると、上記した嗜好性機能の低下は勿論、種々の問題が生じる場合が多かった。
このことから、食品(健康食品、一般食品)においては、腸溶性やマスキング技術の開発が重要である。一方、医薬品では、嗜好性は全く必要がないので、これは食品特有の課題である。そのため、少なくとも食品独特の発明の(顕著な)効果を得るに当たっては、医薬品における従来の技術は利用できない。
食品(健康食品、一般食品)は、幼児から老人まで、健常人を含め一般に広く摂取(使用)されるものであり、種々の態様・剤型が望まれているが、本発明によれば、かかる課題を解決することができる。
本発明によれば、腸溶性被覆食品粉体集合体を含有させて、粉剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、固形剤等としたときにも腸溶性を発揮し、被覆が剥げず造粒部分で割れることもないので、上記腸溶性の効果を好適に発揮させることができる。
本発明の腸溶性被覆食品粉体集合体における1粒子の被覆粉体の概略拡大断面図である。 本発明の腸溶性被覆食品粉体集合体における1粒子の被覆粉体の拡大断面写真である。 本発明の腸溶性被覆食品粉体集合体の概略拡大断面図である。 (a)個々に被覆後も凝集がない場合 (b)個々に被覆後に凝集した場合 本発明の腸溶性被覆食品粉体集合体の拡大断面写真である。 可食性被覆材で被覆中に凝集(すなわち凝集・造粒と共に被覆がなされる)等して、粉体間に可食性被覆材が入り込み顆粒状になった形態、又は、食品核(食品粉体)1粒子が可食性被覆材層で被覆できなかった場合の拡大断面写真である。 実施例1の腸溶性被覆食品粉体集合体の溶出率の溶出時間ごとの推移を示すグラフである。 比較例1の食品粉体集合体の溶出率の溶出時間ごとの推移を示すグラフである。 比較例2の被覆食品粉体集合体の溶出率の溶出時間ごとの推移を示すグラフである。 比較例3の被覆食品粉体集合体の溶出率の溶出時間ごとの推移を示すグラフである。 横軸に粉体の径を縦軸に粉体集合体の体積頻度をとったときの、被覆前の食品核と被覆後の被覆粉体の変化を示す概念図である。 (a)0.5≦[被覆前後のシャープ度比]≦1.5の場合 (b)[被覆前後のシャープ度比]<0.5の場合 (c)1.5<[被覆前後のシャープ度比]の場合 可食性被覆材層で被覆していない比較例1の食品粉体集合体の粒度分布に対する、可食性被覆材層で被覆した実施例・比較例の被覆食品粉体集合体の粒度分布の変化を示す図である。
以下、本発明について説明するが、本発明は、以下の具体的形態に限定されるものではなく、技術的思想の範囲内で任意に変形することができる。
本発明における腸溶性被覆食品粉体は、有効成分を含有する直径1μm以上1mm以下の食品核が可食性被覆材層によって被覆されてなるものであり、1粒子の食品核が実質的に被覆の単位であり、該1粒子の食品核の表面が個々に可食性被覆材層で被覆されていることが必須である。
以下、可食性被覆材層を構成する材料・組成物を「可食性被覆材」と記載することがある。また、「食品核」を、すなわち被覆前の腸溶性被覆食品粉体を、「食品粉体」と記載することがある。
<食品核・食品粉体>
本発明における食品核は、可食性被覆材(層)によって被覆する前の粉体であり、可食性であり、かつ、前記した「食品」の概念に含まれるものの粉体を言い、医療用医薬品の粉体は含まれない。「食品核」には、一般食品の粉体が含まれる他に、機能性表示食品、栄養機能食品、特定保健用食品等、通常「健康食品」と言われているものの粉体が含まれる。従って、本発明における食品核は、「医療用医薬品粉体を除く健康食品粉体」又は「一般食品粉体」である。
ここで、被覆前の食品核の質量平均粒径(体積平均粒径)は、1mm以下が必須であるが、0.5mm以下が好ましく、0.3mm以下がより好ましく、0.1mm以下が特に好ましい。また、1μm以上が必須であるが、3μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましく、30μm以上が特に好ましい。
上限が上記以下であると、小さい単位で可食性被覆材層が設けられているので、後記する溶出率の条件を満たし易い;本発明の腸溶性の効果を好適に得易い;打錠や保存中等に食品核が割れることがない;ハンドリングが容易である;等の効果を奏する。
一方、下限が上記以上であると、コーティング装置によって被覆し易い;被覆中等にダマになり難い;食品粉体に加工し易い;食品粉体として入手し易い;等の効果を奏する。
食品核としては、医療用医薬品以外の可食性の粉体であれば、特に限定はなく、食品核の有効成分としては、単一物質、混合物、抽出物、「天然物若しくはその一部の乾燥物」等が挙げられる。
なお、実施例と比較例では、食品核として、ビタミンB2(リボフラビン)とカテキンの粉体で詳細に検討しているが、食品核(食品粉体)としては、「溶出率に関する原理」からして何でもよく、本発明は、実施例に記載の粉体のみに限定されないことは言うまでもない。
<<単一物質の粉体>>
該単一物質は、天然から取り出したものも、合成したものも、天然から取り出してから化学反応等を加えて合成や変性したものが含まれる。また、該単一物質としては、種々の分子量体の集合や、置換基等が異なる誘導体の集合等であって、一括して同一名称が付けられているものも含まれる(ここでの「単一」の概念に含まれる)。
上記単一物質としては、特に限定はなく、あらゆるものが挙げられるが、具体的には、例えば、アミノ酸、タンパク質若しくはペプチド、又は、それらの誘導体、分解物若しくは重合物;単糖、オリゴ糖若しくは多糖、又は、それらの誘導体若しくは分解物;ビタミン又はその誘導体;有機酸又はその塩;天然物から単離した単一物質、又は、それらの分解物;等が挙げられる。
<<<アミノ酸、タンパク質若しくはペプチド、又は、それらの誘導体、分解物若しくは重合物>>>
このうち、上記アミノ酸としては、アミノ基とカルボキシル基の両方の官能基を持つ有機化合物であれば特に限定はないが、9種の必須アミノ酸を含む22種の「タンパク質を構成するアミノ酸」;カルニチン、γ−アミノ酪酸(以下、「GABA」と記載することがある)、L−ドーパ(レボドパ)、ヒドロキシプロリン、セレノメチオニン、β−アラニン、サルコシン、オルニチン、シトルリン、クレアチン、オパイン、トリメチルグリシン、テアニン、トリコロミン、カイニン酸等の「タンパク質を構成しないアミノ酸」等が挙げられる。
また、シスチン、システイン、ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリシン、サイロキシン、O−ホスホセリン、デスモシン等の「修飾されたアミノ酸」等も挙げられる。
また、分岐鎖のないアミノ酸;ロイシン、イソロイシン、バリン等の必須分岐鎖アミノ酸や必須ではないものも含む分岐鎖アミノ酸(BCAA);等が挙げられる。
上記「アミノ酸の誘導体」としては、グルコサミン、ガラクトサミン、マンノサミン、ムラミン酸、ノイラミン酸等のアミノ糖;N−アセチルグルコサミン、N−アセチルガラクトサミン等の「アミノ糖のアセチル化物」;上記アミノ酸若しくはアミノ糖のアミノ基のHがグリコリル基(−COCHOH)で置換された「グリコリル化物」;クレアチン(リン酸エステル);等が挙げられる。
また、3−ヒドロキシ吉草酸(HMB)、3−ヒドロキシ吉草酸カルシウム(HMB−Ca)等の「アミノ酸の脱アミノ体(の塩)」;等が挙げられる。HMBは、ロイシンの脱アミノ体であり、一般に脱アミノ体はアミノ基を持たないが、ここでは、アミノ酸の脱アミノ体も、「アミノ酸の誘導体」とする。
上記「アミノ酸、タンパク質若しくはペプチドの分解物若しくは重合物」としては、上記アミノ酸の誘導体が(共)重合したもの、該重合物の誘導体等が挙げられる。なお、かかる食品核としてのタンパク質は、可食性被覆材層を構成する可食性タンパク質とは区別される。
<<<単糖、オリゴ糖若しくは多糖、又は、それらの誘導体若しくは分解物>>>
上記「単糖、オリゴ糖若しくは多糖、又は、それらの誘導体若しくは分解物」としては、グルコース(ブドウ糖)、マンノース、ガラクトース、フルクトース(果糖)、プシコース、ソルボース、タガトース、アロース、グルコン酸、シアル酸、リボース等の単糖;スクロース(ショ糖)、マルトース(麦芽糖)、ラクトース(乳糖)、メリビオース、アラビノース、マルトース、トレハロース、ガラクトオリゴ糖等の二糖やオリゴ糖;デキストリン、難消化性デキストリン、イソマルトデキストリン、シクロデキストリン、澱粉、加工澱粉、ガム、カラギーナン、アルギン酸、アルギン酸塩、ペクチン、セルロース、寒天、プルラン、カードラン、ヒアルロン酸、デルマタン硫酸、コンドロイチン硫酸、フコイダン等の多糖;それらの誘導体若しくは分解物;等が挙げられる。
特に、上記「糖の誘導体」としては、アルドン酸、ウロン酸等の糖にカルボキシル基が導入された化合物;糖アルコール;アミノ糖;糖の水酸基が水素に置換した化合物;キチン;キトサン;等が挙げられる。
<<<ビタミン>>>
上記「ビタミン」としては、ビタミンC、ビタミンB1、ビタミンB2(リボフラビン)、ビタミンB6、ビタミンB12、ナイアシン、ビオチン、パントテン酸、葉酸等の水溶性ビタミン;ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE等の脂溶性ビタミン;等が挙げられる。
<<<有機酸又はその塩>>>
上記「有機酸又はその塩」としては、可食性の有機酸(塩)が挙げられ、具体的には、クエン酸、コハク酸、酒石酸、乳酸、フマル酸、リンゴ酸等の有機酸;それらのナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩等の塩;等が挙げられる。
<<<天然物から単離した単一物質、又は、それらの分解物>>>
単一物質のうち、「天然物から単離した単一物質又はそれらの誘導体」としては、縮合型タンニン;没食子酸エステル等の加水分解性タンニン;キチン、キトサン等の多糖;カプサイシン;プロテアーゼ、リパーゼ、オキシゲナーゼ、アミラーゼ、セルラーゼ、イソメラーゼ等の食品工業で使用される各種酵素;カテキン等のフラボノイド;ルンブロキナーゼ等のキナーゼ;前記した有機酸若しくはその塩;ポリフェノール、テアニン等の植物抽出物からの単離した物質;等が挙げられる。
上記タンニンには、エピカテキン、カテキンガレート、エピガロカテキン、ガロカテキンガレート等のカテキン若しくは該カテキンの酸化重合物;茶、ブドウ、ワイン、柿等に含有されるタンニン;等が含まれる。
上記した「単一物質」には、それらの塩も含まれる。該塩としては、特に限定はされないが、例えば、「アミノ酸、アミノ糖、それらのアセチル化物及び/又はそれらのグリコリル化物」のアミノ基が塩酸塩等になったもの;カルボキシル基がナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等になったもの;ビタミンの塩;等が挙げられる。
<<天然物若しくはその一部の乾燥物の粉体>>
「天然物若しくはその一部の乾燥物の粉体」としては、大麦若葉、ケール、ホウレンソウ、長命草(ボタンボウフウ)、明日葉、オリーブ葉、クマザサ、沈香葉(ジンコウヨウ)、桑葉、イグサ(トウシントウ)、ゴーヤー(ニガウリ)、甘藷若葉、等の「植物若しくはその一部」(例えば青汁の原料となる粉体);等の粉体が挙げられる。
また、牡蠣、シジミ、アサリ等の貝;イワシ、サンマ、カツオ等の魚;花、葉、種子、果実等の植物(の部位);(筋)肉、内臓、卵等の動物(の部位);各種キノコ;イナゴ、ハチ・ハチミツ等の昆虫(成虫、蛹、幼虫、卵)若しくは昆虫由来物;各種海藻;各種プランクトン;ミドリムシ等の原生動物;各種菌等の乾燥物;等の粉体が挙げられる。
<<抽出物又は発酵物の粉体>>
「抽出物の粉体」としては、上記した「天然物若しくはその一部」からの抽出物の乾燥物等が挙げられる。また、植物エキス、肉エキス、魚介エキス等の各種エキスの粉体も挙げられる。
また、これらを原料とした発酵物からの抽出物の乾燥物等も挙げられる。該発酵物としては、それ以外に、例えば、γ−ポリグルタミン酸(γ−PGA)、納豆菌分泌物(納豆のネバネバ)等が挙げられる。
<<食品核に含有される有効成分以外の物質>>
食品核には、上記した有効成分以外の物質が含有されていてもよい。該物質としては、具体的には、例えば、粉体を形成させるための結着剤;添加物;着色剤若しくは遮光剤;芳香性若しくは呈味性物質;防腐剤;増量剤等が挙げられる。
<可食性被覆材>
本発明における腸溶性被覆食品粉体は、可食性被覆材によって食品粉体(食品核)の一個一個が被覆されており、該被覆によって該食品粉体の成分が腸溶性になっている。
可食性被覆材層は可食性タンパク質を含有するものであり、該可食性被覆材は可食性タンパク質であることが必須である。可食性タンパク質以外の物質であると、溶出率に関して本発明の何れかの要件を満たさない場合が多く、そのために本発明における「腸溶性」にならない場合がある。
該可食性被覆材としては、酸性水に溶解し難く、中性水に溶解し易いものが好ましい。また、酸性水に触れたときに酸性水に溶解し難くなり、中性水には溶解するものが特に好ましい。
ここで、上記「タンパク質」には「ペプチド」も含まれ、「ペプチド」にはオリゴペプチドやポリペプチドが含まれる。
また、「可食性タンパク質」には、リン酸が結合したリンタンパク質(リン酸化タンパク質)等の、単なる「アミノ酸の結合物」であるタンパク質に、リン酸等と言った基が結合したものも含まれる。
また、少なくとも一部のアミノ酸が、ナトリウム塩、カルシウム塩等の塩になっているものも含まれる。
上記タンパク質としては、例えば、「牛乳等の乳に含有される乳清タンパク質、カゼイン若しくはカゼインの塩等」の乳タンパク質;トウモロコシ等に含有されるゼイン(ツェイン);カゼイン、カゼインの塩等のリンタンパク質;ゼラチン;哺乳類、爬虫類、鳥類等の脊椎動物等に含有されるコラーゲン;卵白加水分解物;エラスチン;等が挙げられる。また、これらの(部分)分解物、誘導体、(一部)塩等が挙げられる。
上記可食性被覆材は、前記した物質を単独で用いてもよいが、腸溶性、被覆性、マスキング性等を調整又は向上させる点から、前記した物質の2種以上を被覆液に同時に溶解して、食品核を被覆することもできる。
なお、可食性被覆材層には、特に必須ではないが、目的に合わせて、更に、カラメル、食用香料等の芳香性物質;甘味料、酸味料、調味料等の呈味性物質;二酸化チタン等の着色剤若しくは遮光剤;カラメル、各種食用色素等の着色物質;グリセリン等の可塑剤;酸素遮断物質;防湿剤;紫外線遮断物質;防腐剤;等を含有させることもできる。
「可食性タンパク質」を可食性被覆材として用い、可食性被覆材層の(付着)量等を調整することによって、下記する溶出率が達成され、後記式(1)を満たすようにでき、前記した本発明の効果を得ることが可能である。カゼインの塩等の特定のタンパク質では、可食性被覆材中にpH調整剤を含有させなくても腸溶性を示すようにできる。
<1粒子の食品核の表面が個々に可食性被覆材層で被覆されていること>
本発明においては、1粒子の食品核が実質的に被覆の単位であり、該1粒子の食品核の表面が個々に該可食性被覆材層で被覆されていることが必須である。図1ないし図4に、食品核(食品粉体)の表面が個々に可食性被覆材層で被覆されている状態の、模式図と実際の写真を示す。
図1、2は、本発明の腸溶性被覆食品粉体集合体における1粒子の被覆食品粉体の典型的な態様を示すものである。食品核の周りが全て可食性被覆材層によって被覆されている。
図3、4は、本発明の腸溶性被覆食品粉体集合体の典型的な態様を示すものであり、図3(a)のように、個々の被覆食品粉体がバラバラの状態でもよいし、個々に被覆されて被覆直後はバラバラであったものが、図3(b)のように、複数個が寄り集まった状態のものでもよい(本発明に含まれる)。
一方、可食性被覆材で被覆しつつ顆粒状等にしたような形態、すなわち、1段で造粒(顆粒状化)と被覆とを行ったような形態は、1粒子の食品核が被覆の単位になっておらず、複数個がまとまって可食性被覆材層で被覆されているので本発明には含まれない。このような態様は、複数の食品核の隙間に可食性被覆材が入り込み、例えば、図5に示したような態様となっている。
かかる形態では、被覆の単位である食品核一つ一つが個々に被覆されていないので、好適な腸溶性を示さず、保存中の衝撃や打錠する際の衝撃等によって該顆粒が割れ、食品粉体の新たな破断面が露出して腸溶性を確保できない場合等がある。
ただし、食品核(食品粉体)を個々に被覆した後に、あらためて、(好ましくは結合剤等を加えて)顆粒状にしたような形態は、前記した本発明の効果(腸溶性)を奏するので本発明に含まれる(図3(b)参照)。
後述するが、このように食品核を個々に被覆することに特に適した装置としては、転動流動層型のコーティング装置、側方スプレー式流動層型のコーティング装置、ワースター式流動層型のコーティング装置、ボトム式流動層型のコーティング装置等が挙げられる。
<溶出率>
<<日本薬局方の溶出試験液を使用>>
本発明の腸溶性被覆食品粉体集合体は、日本薬局方の回転バスケット式溶出試験法において、試験開始から2時間までを溶出試験第1液を用い、試験開始2時間から24時間までを溶出試験第2液を用いた際に、該食品核の成分全体に対して、試験開始から2時間後の食品核の成分の溶出率が20質量%以下であり、試験開始から6時間後の食品核の成分の溶出率が50質量%以上であることを特徴とする。
溶出率(%)の算出は実施例に記載の方法で行われ、本発明の「溶出率(%)」はそのような方法で測定されたものとして定義される。
溶出率は、食品核の成分やそこに含まれる有効成分の、各液への溶解性にも依存するが、食品核の成分の如何によらず、上記又は下記する溶出率(の範囲)が好ましい。
試験開始から2時間までの溶出試験第1液への溶出率は、20質量%以下が必須であるが、16質量%以下が好ましく、1質量%以上13質量%以下がより好ましく、2質量%以上10質量%以下が更に好ましい。
上限が上記以下であると、前記した効果が好適に奏される。有効成分が胃で吸収されない、胃酸で分解する、胃壁を侵す等の場合に、有効成分が胃液に放出し難いので好適である。
一方、下限が上記以上であると、コーティング装置で被覆し易く、初期の溶出量の過度の抑制のために不必要に可食性被覆材を使用しないで済む。
また、試験開始から6時間後の食品核の成分の溶出率、すなわち、「試験開始から2時間までの溶出試験第1液への溶出量と、試験開始から2時間から6時間までの溶出試験第2液への溶出量との和から求めた溶出率」は、50質量%以上が必須であるが、55質量%以上が好ましく、75質量%以上がより好ましく、95質量%以上が更に好ましく、100%が特に好ましい。
下限が上記以上であると、胃から腸に入ったところで溶出することになるので、例えば有効成分が腸で吸収されるようなものの場合には(すなわち殆どの場合に)好適である。
溶出率の時間依存性について、本発明の腸溶性被覆食品粉体集合体は、上記2時間と6時間の溶出率の要件を満たした上で、試験開始から24時間後の食品核の成分の溶出率、すなわち、試験開始から2時間までの溶出試験第1液への溶出量と、試験開始から2時間から24時間までの溶出試験第2液への溶出量との和から求めた溶出率が、98質量%以上であることが好ましく、99質量%以上100質量%以下がより好ましく、100質量%が特に好ましい。
上限は100質量%が特に好ましいが、実施例にも示したように、溶解残渣がある場合があり、実際の好適範囲は上記である。
<<日本薬局方の溶出試験第1液を使用>>
本発明の腸溶性被覆食品粉体集合体は、前記した溶出率の要件を満たした上で、更に、溶出試験第1液だけを継続して用いた際に(すなわち、2時間後から後、24時間後まで溶出試験第1液を用い続けた際に)、試験開始から6時間後の食品核の成分の溶出率に上限があることが好ましい。すなわち、pH1.2の溶出試験第1液には、試験開始から2時間を過ぎてもずっと溶出し難いものであることが好ましい。
すなわち、本発明の腸溶性被覆食品粉体集合体は、前記した「日本薬局方の溶出試験1液と2液を用いたときの溶出率の要件」を満たした上で、日本薬局方の回転バスケット式溶出試験法において、試験開始から24時間まで溶出試験第1液を用いた際に、上記食品核の成分全体に対して、試験開始から6時間後の食品核の成分の溶出率が50質量%以下であることが好ましい。更に、40質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることが更に好ましく、20質量%以下であることが特に好ましい。
上記値を超える場合は、pH1.2の液であっても、そこにやや溶け易いことを意味するので、腸溶性(胃で溶出しない性質)に劣る場合がある。
試験開始から24時間まで溶出試験第1液を用いた際に、24時間後の溶出率は、70質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましく、50質量%以下であることが特に好ましい。
24時間後の溶出率が上記を超える場合は、pH1.2の液であっても、そこにやや溶け易いことを意味するので、腸溶性(胃で溶出しない性質)に劣る場合がある。
<<イオン交換水を使用>>
本発明の腸溶性被覆食品粉体集合体は、日本薬局方の回転バスケット式溶出試験法において、試験開始から24時間までイオン交換水を用いた際に、上記食品核の成分全体に対して、試験開始から2時間後の食品核の成分の溶出率が65質量%以上であることが好ましく、75質量%以上がより好ましく、85質量%以上が更に好ましく、95質量%以上が特に好ましく、100質量%が最も好ましい。
2時間後のイオン交換水への溶出率が上記より小さい場合は、そもそも溶解し難い可食性被覆材に過ぎない場合があり、腸溶性(胃で溶出しないで腸で溶出する性質)に劣る場合がある。
そもそも、中性水にも溶出し難い可食性被覆材の場合には、溶出試験第1液で2時間後に溶出し難くはなるが(溶出率20質量%以下にはなるが)、腸でも溶出し難く腸溶性を示すとは限らない。例えば、比較例3、4、7、8は、中性水にも溶出し難いので、腸溶性は示さない。
モデル液(評価液)としてイオン交換水を用いたときのパラメーターとしての溶出率も、前記した溶出率と組み合わせて特許要件とすることによって、好適な範囲の腸溶性被覆食品粉体集合体を更に厳密に特定できた。
これまでに、食品分野では、イオン交換水への溶出率を組み合わせて、食品の腸溶性が奏される範囲を規定したものはない。本発明において、イオン交換水への溶出率をパラメーターとすることで、消化器内での腸溶性をより好適に規定することができた。
<被覆層の割合>
本発明の腸溶性被覆食品粉体集合体は、上記食品核の質量と上記可食性被覆材層の質量の比が、[5:5]〜[9.5:0.5]の範囲に入るように、1粒子の食品核の表面が個々に該可食性被覆材層で被覆されていることが好ましい。
より好ましくは、[6:4]〜[9:1]の範囲であり、特に好ましくは、[7:3]〜[8:2]の範囲である。
上記可食性被覆材層が薄過ぎると、時間ごとの溶出率が大きくなり過ぎる場合、個々の食品核の被覆層の割合にバラツキが出る場合、被覆層に孔が存在してしまう場合、pH差による溶出性に変化が出難く腸溶性を示し難くなる場合、等がある。
一方、上記可食性被覆材層が厚過ぎると、時間ごとの溶出率が小さくなり過ぎる場合、有効成分に対する可食性被覆材が多くなって食品としての性能に劣る場合、可食性被覆材が無駄になる場合等がある。
上記範囲であると、食品核が可食性被覆材層により均一に被覆された状態になり易く、腸溶性の効果をより発揮する。
<被覆前後の粒度分布>
本発明の腸溶性被覆食品粉体集合体は、レーザー散乱型粒度分布計を用いて測定し、可食性被覆材層によって被覆する前の食品核の最大径をMAX0、最小径をmin0、体積ピーク径の頻度(%)をV0とし、可食性被覆材層によって被覆した後の粉体の最大径をMAXt、最小径をmint、体積ピーク径の頻度(%)をVtとしたとき、下記の式(1)を満たすように、該1粒子の食品核の表面が個々に可食性被覆材層によって被覆されているものであることが好ましい。
0.5≦[Vt/(MAXt−mint)]
/[V0/(MAX0−min0)]≦1.5 ・・・・(1)
本発明においては、上記式(1)の、[Vt/(MAXt−mint)]/[V0/(MAX0−min0)]を、「被覆前後のシャープ度比」又は「シャープ度比」と略記する場合がある。
被覆前後の最大径、最小径、体積平均径等は、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置で測定して、図10に示したように、横軸に径を、縦軸に体積頻度をとって求めたものであり、更に詳しくは、実施例の装置を用いて測定され、そのように測定された数値として定義される。なお、上記定義によって測定された数値範囲であれば、実際の測定機種は限定されず、どのような装置で測定してもよい。
ここで、「最小径」とは、粒度分布の全体積を100%として累積カーブを求めた時の2.5%の値であり、「最大径」とは、粒度分布の全体積を100%として累積カーブを求めた時の97.5%の値である。
被覆前後の粒度分布から算出されるシャープ度比は、0.5以上1.5以下が好ましいが、より好ましくは0.6以上1.4以下であり、特に好ましくは0.7以上1.3以下である。
シャープ度比が、上記範囲であると、食品核が個々に可食性被覆材層によって被覆され、前記した「時間毎の溶出量」(溶出量の時間変化)が達成され易い。また、逆に、前記した「時間毎の溶出量」(溶出量の時間変化)になるように、食品核が被覆されると、被覆前後のシャープ度比は、上記範囲に収まる。「被覆前後のシャープ度比」は、本発明の腸溶性に関する前記効果を奏するか否かの優れたパラメーターである。
図10(a)が、本発明における「被覆前後のシャープ度比」の典型例であるが、例えば図10(b)のように、シャープ度比が小さ過ぎる場合、すなわち、被覆により粒度分布がブロードになり過ぎる場合は、好適に被覆がなされておらず、前記した「時間毎の溶出量」(溶出量の時間変化)が達成されない場合があり、本発明の腸溶性に関する前記効果が得られない場合がある。
逆に、例えば、図10(c)のように、シャープ度比が大き過ぎる場合、すなわち、被覆により粒度分布がシャープになる場合であっても、好適に被覆がなされておらず、前記した「時間毎の溶出量」(溶出量の時間変化)が達成されない場合があり、本発明の腸溶性に関する前記効果が得られない場合がある。
タンパク質以外の可食性被覆材の場合は、シャープ度比が上記範囲に入らない場合がある(例えば、図5)。また、1粒子の食品核の表面が個々に被覆されていない場合、被覆と同時に造粒して顆粒状になる場合やそのような装置で被覆した場合等は、シャープ度比が上記範囲に入らない場合や、むしろシャープ度比が大きくなり過ぎる場合がある。
<他の層>
本発明は、限定はされないが、上記可食性被覆材層の外側に、更に機能性を付与するために他の層が設けられていてもよい。
かかる「他の層」としては、保存性向上層、防湿層、遮光層、着色層、香味呈味層等が挙げられる。
<腸溶性被覆食品粉体集合体の製造方法>
腸溶性被覆食品粉体集合体の製造方法、すなわち、本発明における食品核(食品粉体)の被覆方法は、食品核が可食性被覆材層によって被覆され、1粒子の食品核が実質的に被覆の単位であり、該1粒子の食品核の表面が個々に該可食性被覆材層で被覆されるように被覆できれば特に限定はないが、転動流動層型、側方スプレー式流動層型、ワースター式流動層型、ボトム式流動層型等のコーティング装置によって、給気温度、ローター回転数、スプレーの送風量等を調整することによって被覆することが好ましい。
中でもより好ましいコーティング装置は、転動流動層型、側方スプレー式流動層型、又は、ワースター式流動層型のコーティング装置であり、これらの装置を用いると、上記した、時間毎の溶出量についての要件、好適な被覆率、被覆前後のシャープ度比(粒度分布の変化)等が得られ、本発明の前記効果が得られる。
その他の装置であると、いくらコーティング条件を調節しても、上記要件を満たしたものができず、本発明の前記効果が得られない場合がある。特に、造粒装置、顆粒製造装置等を用いてコーティングを行うと、コーティング条件をいくら調節しても、例えば図1〜4に示したようなものが全体としてできず、上記種々の要件を満たしたものができず、本発明の前記効果が得られない。
上記被覆方法に用いる具体的装置としては、特に限定はなく、市販のものも好適に用いられる。
転動流動層法に用いられる具体的装置としては、以下に限定はされないが、好ましくは、例えば、(株)パウレック製のMP、フロイント産業(株)製のスパイラルフロー等が挙げられ、側方スプレー式流動層法に用いられる装置としては、フロイント産業(株)製のFL等が挙げられ、ワースター式流動層法に用いられる装置としては、(株)パウレック製のGPCG等が挙げられ、ボトム式流動層法に用いられる装置としては、フロイント産業(株)製のFL−1等が挙げられる。
本発明において、上記被覆方法では、可食性被覆材層を湿式法で設けるので、被覆に先立って被覆液を調製する。可食性被覆材である可食性タンパク質を溶解又は微分散する溶媒・分散媒は、該可食性被覆材が溶解及び/又は分散し、食に適しているものであればどのようなものでもよいが、純水、pH調整水等の水;エタノール;それらの混合溶媒等を用いることが好ましい。
すなわち、被覆粉体食品の製造方法は、前記可食性被覆材を、水及び/又はエタノールを主成分とする可食性溶媒に溶解又は微分散して被覆液を調製し、前記粉体に該被覆液を付与することによって、該粉体の表面を可食性被覆材で被覆することが好ましい。
<製造方法による特定>
本発明は、転動流動層型、側方スプレー式流動層型、ワースター式流動層型、又は、ボトム式流動層型のコーティング装置によって、1粒子の食品核の表面が個々に可食性被覆材層によって被覆されたものである前記の腸溶性被覆食品粉体集合体であることが、前記理由から好ましい。
なお、本発明の「腸溶性被覆食品粉体集合体」における個々の被覆食品粉体の「物」としての被覆態様は、図1及び図3に極めて概略の模式図を示したが、実際は極めて複雑で、転動流動層型、側方スプレー式流動層型、ワースター式流動層型、又は、ボトム式流動層型のコーティング装置によって被覆して得られる形態を、層の寸法、層厚のバラツキ、物性パラメーター等で特定することは、不可能であるか又はおよそ実際的でない(「不可能・非実際的事情」がある)。従って、本発明の「腸溶性被覆食品粉体集合体」の特に好ましい態様については、コーティング装置や被覆方法(製造方法)で特定する以外に方法がない。
<一般食品、健康食品>
本発明は、前記の腸溶性被覆食品粉体集合体を含有する健康食品であって、その剤型が、粉剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、又は、固形剤であることを特徴とする健康食品でもある。
本発明の腸溶性被覆食品粉体集合体を含有させて健康食品とする場合には、該腸溶性被覆食品粉体集合体を単に混合させてもよいが、形成剤・賦形剤・結合剤を併用することができる。特に、顆粒剤、錠剤、固形剤等の剤型のときは、それを形成させるための形成剤・賦形剤・結合剤を併用することが好ましい。
また、一般食品や健康食品としての「他の有効成分(粉体)」、芳香性物質、呈味性物質、着色剤若しくは遮光剤、着色物質、防腐剤、増量剤等を混合させることもできる。
本発明の腸溶性被覆食品粉体集合体を含有させて錠剤とする場合には、好ましくは、有機又は無機の賦形剤、要すればその他の有効成分等と共に、圧縮成形、打錠等により一定の形(錠剤状)にする。なお、チュアブル錠も錠剤状食品に含まれる。
本発明の腸溶性被覆食品粉体集合体を含有させて顆粒剤とする場合には、好ましくは、顆粒形成に必要な有機又は無機の結合剤、要すればその他の有効成分等と共に顆粒状とする。前記した通り、被覆しつつ顆粒状にすると、前記した溶出率(の時間変化)や(被覆前後の)シャープ度比が得られないが、本発明の前記効果は、一旦本発明の腸溶性被覆食品粉体集合体を得た後ならば、その腸溶性被覆食品粉体集合体を顆粒状に加工しても本発明の前記効果は維持される。
粉剤、カプセル剤、固形剤等も、本発明の腸溶性被覆食品粉体集合体を含有させて、公知の方法で得ることができる。
本発明の健康食品は、そこに含有される食品核の一つ一つが可食性被覆材で個々に被覆されているので、前記した腸溶性被覆食品粉体(集合体)と同様の腸溶性等の効果が得られる。
また、錠剤、顆粒剤、固形剤は、それらの製造中や保存中に機械的な衝撃で崩れても、該「崩れ」による剥離は、結合剤・賦形剤等の内部や、結合剤・賦形剤と可食性被覆材との界面で生じ、食品核の内部や、食品核と可食性被覆材との界面では生じ難い。
以下に、製造例及び評価例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限りこれらの製造例及び評価例に限定されるものではない。
実施例中の「%」は、それが質量に関するものは「質量%」を意味する。
実施例1
有効成分としてリボフラビン400gからなる食品核を、転動流動層型コーティング装置(MP−01、株式会社パウレック製)に入れ、インペラー回転数300rpm、吸気温度80℃、吸気量0.6m/minに設定し、水1530mL中にカゼインナトリウム170gを含む被覆液を噴霧しながら被覆(表面コート)を行った。有効成分:表面コートの比が7:3となるようにした。
実施例2
有効成分としてカテキン400gからなる食品核を、転動流動層型コーティング装置(MP−01、株式会社パウレック製)に入れ、インペラー回転数300rpm、吸気温度80℃、吸気量0.6m/minに設定し、水1530mL中にカゼインナトリウム170gを含む被覆液を噴霧しながら被覆(表面コート)を行った。有効成分:表面コートの比が7:3となるようにした。
実施例3
有効成分としてリボフラビン400gからなる食品核を、ワースター式流動層型コーティング装置(MP−01、株式会社パウレック製)に入れ、吸気温度80℃、吸気量0.6m/minに設定し、水1530mL中にカゼインナトリウム170gを含む被覆液を噴霧しながら被覆(表面コート)を行った。有効成分:表面コートの比が7:3となるようにした。
実施例4
有効成分としてリボフラビン400gからなる食品核を、ボトム式流動層型のコーティング装置(FL−1、株式会社フロイント製)に入れ、吸気温度80℃、吸気量0.6m/minに設定し、水1530mL中にカゼインナトリウム170gを含む被覆液を噴霧しながら被覆(表面コート)を行った。有効成分:表面コートの比が7:3となるようにした。
実施例5
有効成分としてカテキン400gからなる食品核を、ワースター式流動層型コーティング装置(MP−01、株式会社パウレック製)に入れ、吸気温度80℃、吸気量0.6m/minに設定し、水1530mL中にカゼインナトリウム170gを含む被覆液を噴霧しながら被覆(表面コート)を行った。有効成分:表面コートの比が7:3となるようにした。
実施例6
有効成分としてカテキン400gからなる食品核を、ボトム式流動層型のコーティング装置(FL−1、株式会社フロイント製)に入れ、吸気温度80℃、吸気量0.6m/minに設定し、水1530mL中にカゼインナトリウム170gを含む被覆液を噴霧しながら被覆(表面コート)を行った。有効成分:表面コートの比が7:3となるようにした。
比較例1
実施例1に対して、被覆を行わない(可食性被覆材層を形成させず)リボフラビンからなる食品核(食品粉体)を準備した。
比較例2
有効成分としてリボフラビン400gからなる食品核を、転動流動層型コーティング装置(MP−01、株式会社パウレック製)に入れ、インペラー回転数300rpm、吸気温度80℃、吸気量0.6m/minに設定し、水1530mL中にヒドロキシプロピルセルロース( HPC)170gを含む被覆液を噴霧しながら被覆(表面コート)を行った。有効成分:表面コートの比が7:3となるようにした。
比較例3
有効成分としてリボフラビン400gからなる食品核を、転動流動層型コーティング装置(MP−01、株式会社パウレック製)に入れ、インペラー回転数300rpm、吸気温度80℃、吸気量0.6m/minに設定し、水1530mL中に卵タンパク170gを含む被覆液を噴霧しながら被覆(表面コート)を行った。有効成分:表面コートの比が7:3となるようにした。
比較例4
有効成分としてリボフラビン400gからなる食品核を、転動流動層型コーティング装置(MP−01、株式会社パウレック製)に入れ、インペラー回転数300rpm、吸気温度80℃、吸気量0.6m/minに設定し、水3230mL中に大豆タンパク170gを含む被覆液を噴霧しながら被覆(表面コート)を行った。有効成分:表面コートの比が7:3となるようにした。
比較例5
実施例2に対して、被覆化を行わない(可食性被覆材層を形成させず)カテキンからなる食品核(食品粉体)を準備した。
比較例6
有効成分としてカテキン400gからなる食品核を、転動流動層型コーティング装置(MP−01、株式会社パウレック製)に入れ、インペラー回転数300rpm、吸気温度80℃、吸気量0.6m/minに設定し、水1530mL中にヒドロキシプロピルセルロース(HPC)170gを含む被覆液を噴霧しながら被覆(表面コート)を行った。有効成分:表面コートの比が7:3となるようにした。
比較例7
有効成分としてカテキン400gからなる食品核を、転動流動層型コーティング装置(MP−01、株式会社パウレック製)に入れ、インペラー回転数300rpm、吸気温度80℃、吸気量0.6m/minに設定し、水3230mL中に卵タンパク170gを含む被覆液を噴霧しながら被覆(表面コート)を行った。有効成分:表面コートの比が7:3となるようにした。
比較例8
有効成分としてカテキン400gからなる食品核を、転動流動層型コーティング装置(MP−01、株式会社パウレック製)に入れ、インペラー回転数300rpm、吸気温度80℃、吸気量0.6m/minに設定し、水1530mL中に大豆タンパク170gを含む被覆液を噴霧しながら被覆(表面コート)を行った。有効成分:表面コートの比が7:3となるようにした。
評価例1
<溶出試験液による溶出試験>
上記の実施例1〜2、比較例1〜8で得られた食品粉体を、回転バスケット方式を用いて溶出試験を行った。
具体的には、食品粉体1gを溶出試験機(Agilent Technologies, Inc. 708DS型溶出試験装置)の回転式バスケットに入れ、ベッセル中の37℃の溶出試験第1液(pH1.2)900mLにバスケットを浸漬し、2時間の溶出試験を行い、「2時間後の溶出率(%)」を算出した。
溶出試験2時間後、ベッセル中からバスケットを取り出し、予め37℃に加温した溶出試験第2液(pH6.8)900mLに当該バスケットを浸漬し、更に、22時間の溶出試験を行った。
試験開始から24時間後、上記バスケット内に残渣があった場合は、該残渣に対して900mLの「残渣測定用イオン交換水」を加え、よく溶解させた後、吸光度を測定した。
溶出試験第1液による溶出試験2時間後の溶出試験第1液の吸光度、その後の、溶出試験第2液による溶出試験2時間後から22時間後までの溶出試験第2液の吸光度、及び、残渣の吸光度を足し合わせて、全体で割って、「24時間後の溶出率(%)」とした。
「溶出率」を算出するために、一定時間毎にベッセル中の溶液を採取し、フィルターろ過(0.45μm)し、リボフラビンは265nm、カテキンは280nmにおける吸光度を測定した。「溶出率」の算出には下記の式を用い、時間t(h)における溶出率を算出した。特に、「2時間後の溶出率(%)」及び「6時間後の溶出率(%)」の溶出率について表1に記載した。
<「2時間後の溶出率(%)」の定義>
溶出試験第1液による、0時間(試験開始)から2時間後までに溶出したものの吸光度を測定(溶出試験第1液の吸光度を測定)する。
[2時間後までの溶出率(%)]=100×At/(A2+A24+Ar)
<「6時間後の溶出率(%)」と「24時間後の溶出率(%)」の定義>
溶出試験第1液による上記吸光度と、溶出試験第2液による、試験開始2時間後から24時間後までに溶出したものの吸光度を測定(溶出試験第2液の吸光度を測定)し、それらの和をとる。
[2時間後から24時間後までの溶出率(%)]
=100×[A2/(A2+A24+Ar)+At/(A2+A24+Ar)]
At :時間tにおけるそのときの溶出試験液での吸光度
A2 :溶出開始2時間における溶出試験第1液の吸光度
A24:溶出開始24時間における溶出試験第2液の吸光度
Ar :残渣の吸光度であり、「残渣測定用イオン交換水」の吸光度
評価例2
<溶出試験第1液による溶出試験>
上記の実施例1〜2、比較例1〜8で得られた食品粉体を、回転バスケット方式を用いて溶出試験を行った。 具体的には、食品粉体1gを溶出試験機(Agilent Technologies, Inc. 708DS型溶出試験装置)の回転式バスケットに入れ、ベッセル中の37℃の溶出試験第1液900mLにバスケットを浸漬し、24時間の溶出試験を行い、「2時間後の溶出率(%)」と「6時間後の溶出率(%)」を下記の式を用いて算出して表1に記載した。
溶出試験第1液による、0時間(試験開始)から24時間後までの吸光度を測定(溶出試験第1液の吸光度を測定)
[24時間後までの溶出率(%)]=100×At/(A24+Ar)
At :時間tにおける溶出試験第1液での吸光度
A24:溶出開始24時間における溶出試験第1液の吸光度
Ar :残渣の吸光度であり、「残渣測定用イオン交換水」の吸光度
評価例3
<イオン交換水による溶出試験>
上記の実施例1〜2、比較例1〜8で得られた食品粉体を、回転バスケット方式を用いて溶出試験を行った。
具体的には、(被覆)食品粉体1gを溶出試験機(Agilent Technologies, Inc. 708DS型溶出試験装置)の回転式バスケットに入れ、ベッセル中の37℃のイオン交換水900mLに、該バスケットを浸漬し、24時間の溶出試験を行い、時間t(h)における溶出率を測定・算出し、特に、「2時間後の溶出率(%)」と「6時間後の溶出率(%)」を表1に記載した。
イオン交換水による、0時間(試験開始)から24時間後までの吸光度を測定(イオン交換水の吸光度を測定)
[24時間後までの溶出率(%)]=100×At/(A24+Ar)
At :時間tにおけるイオン交換水での吸光度
A24:溶出開始24時間におけるイオン交換水の吸光度
Ar :残渣の吸光度であり、「残渣測定用イオン交換水」の吸光度
結果を表1及び図6〜9に示す。
評価例1と評価例2では、試験開始から2時間後の溶出試験第1液への溶出率が20%以下であって合格したものだけ、6時間後の溶出率を測定した。測定に至らなかった「6時間後の溶出率(%)」の欄は「−」を付した。
表1の評価例1の結果が、試験開始から2時間後の溶出試験第1液への溶出率が20%以下であり、かつ、試験開始から6時間後の溶出率が50%以上の場合を合格とした。
<評価例1の結果>
表1の評価例1から分かる通り、有効成分(であり食品核)のリボフラビン、カテキンに対して、可食性被覆材としてカゼインナトリウムを用いた実施例1、2では、胃液を模した溶出試験第1液(pH1.2)中で、溶出開始2時間において溶出率は20%以下だったが、溶出試験第2液(pH6.8)に切り替え、小腸内に達すると予想される6時間後では、溶出量は50%以上であった。
また、表1の評価例2から分かる通り、有効成分(であり食品核)のリボフラビン、カテキンに対して、可食性被覆材層として、カゼインナトリウムを用いた実施例1、2では、胃液を模した溶出試験第1液(pH1.2)中で、溶出開始2時間において溶出率は20%以下であったが、6時間後においても溶出率が50%以下であった。
また、表1の評価例3から分かる通り、有効成分(であり食品核)のリボフラビン、カテキンに対して、可食性被覆材層として、カゼインナトリウムを用いた実施例1、2では、イオン交換水中で、溶出開始2時間において溶出率は65%以上であり、6時間後において溶出率が95%以上であった(表示せず)。
カゼインナトリウムは、胃液の低pH下でその立体構造が密となり、核物質をまきとる構造となることが予想される。これらのことから、カゼインナトリウムは、pH変化による食品核の溶出制御能を示したと考えられる。
一方、比較例1〜2、比較例5〜6では、評価例1〜3において、溶出開始2時間における有効成分のリボフラビン、カテキンの溶出率は20%以上となり、pH変化による食品核の溶出制御能を示さなかった。
また、比較例3〜4、比較例7〜8では、評価例1〜3において、溶出開始2時間における有効成分のリボフラビン、カテキンの溶出率は20%以下〜25%以下ではあったが、溶出開始6時間における溶出率も低く、溶出率は50%未満であった。そのため、pH変化による食品核の溶出制御能を示さなかった。
このことから、可食性被覆材層として、タンパク質以外、又は、カゼインナトリウム以外のタンパク質を用いた場合には、pH変化による食品核の溶出コントロールが困難であることを示している(pH変化による溶出制御能を示さなかった)。
実施例1、2の転動流動層型コーティング装置に代えて、ワースター式流動層型コーティング装置、ボトム式流動層型のコーティング装置を用いて被覆した実施例3〜6でも、表1の記載及び上記した結果とほぼ同様の結果が得られた。
評価例4
<SEM観察>
上記の実施例1〜2、比較例1〜8で得られた食品粉体を、卓上走査型電子顕微鏡(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製 Pro)を用いて観察した結果、図1〜4に示したような単粒子コーティング粉体が得られた。すなわち、1粒子の食品核が実質的に被覆の単位であり、該1粒子の食品核の表面が個々に該可食性被覆材層で被覆されていた。
それに対して、可食性被覆材として多糖類を使用した場合は、図5のようになってしまい、良好な単粒子コーティング粉体が得られなかった。
上記実施例1、2の転動流動層型コーティング装置に代えて、ワースター式流動層型コーティング装置、ボトム式流動層型のコーティング装置を用いて被覆した実施例3〜6でも、図1〜4に示したような単粒子コーティング粉体が得られた。すなわち、1粒子の食品核が実質的に被覆の単位であり、該1粒子の食品核の表面が個々に該可食性被覆材層で被覆されていた。
一方、撹拌造粒方式、顆粒製造方式等で食品核(食品粉体)の表面を可食性被覆材で被覆した場合は、複数個の食品核が被覆の単位となっており、図1〜4に示したように1粒子の食品核の表面が個々に該可食性被覆材層で被覆されておらず、単粒子コーティング粉体が得られなかった。
評価例5
<シャープ度比の測定>
上記の実施例1〜2、比較例1〜8で得られた食品粉体を、レーザー散乱式粒度分布計(マイクロトラック・ベル社製 MT−3300EXII)を用いて、該装置の説明書の通りにして粒度分布を測定・解析した。
被覆を行っていない比較例1、5を除いて、被覆前後で全て、シャープ度比は、以下の式(1)を満たしていた。
0.5≦[Vt/(MAXt−mint)]
/[V0/(MAX0−min0)]≦1.5 ・・・・(1)
上記実施例・比較例のシャープ度比の測定・算出結果を、以下に記載する。
No. シャープ度比
実施例1 1.28
実施例2 1.33
比較例1 ――――
比較例2 0.85
比較例3 0.95
比較例4 1.25
比較例5 ――――
比較例6 0.77
比較例7 0.84
比較例8 1.19
被覆していない比較例1に対して、被覆後にシャープ度比がどうなったかの一例を図11に示す。図11では、被覆によって、シャープ度比が上がる場合を示したが、何れもシャープ度比は1.5以下であり、上記式(1)を満たしていた。
一方、撹拌造粒方式、顆粒製造方式等で食品核(食品粉体)の表面を可食性被覆材で被覆した場合は、被覆後にシャープ度比が1.5より大きくなった。実際には、2.0以上となった(図示せず)。
実施例7
<(健康)食品>
得られた腸溶性被覆食品粉体集合体を用いて、常法に従って、粉剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、固形剤を製造した。
何れも好適に製造することができ、何れも好適な腸溶性を示した。
本発明の腸溶性被覆食品粉体集合体は、食品としては今までになかった技術思想を有するので、健康食品、一般食品等の、製造分野、製剤分野、食品販売分野を始め、健康管理業分野等に幅広く利用されるものである。
11 腸溶性被覆食品粉体
12 食品核(食品粒体)
13 可食性被覆材層

Claims (10)

  1. 有効成分を含有する直径1μm以上1mm以下の食品原料粉末である食品核が可食性被覆材層によって被覆されてなる腸溶性被覆食品粉体の集合体であって、
    該食品核の1粒子が実質的に被覆の単位であり、該粒子の表面が個々に該可食性被覆材層で被覆されており、
    該可食性被覆材層は可食性タンパク質を含有するものであり、
    日本薬局方の回転バスケット式溶出試験法において、試験開始から2時間までを溶出試験第1液を用い、試験開始2時間から24時間までを溶出試験第2液を用いた際に、該食品核の成分全体に対して、試験開始から2時間後の食品核の成分の溶出率が20質量%以下であり、試験開始から6時間後の食品核の成分の溶出率が50質量%以上であることを特徴とする腸溶性被覆食品粉体集合体。
  2. 試験開始から24時間後の食品核の成分の溶出率が98質量%以上である請求項1に記載の腸溶性被覆食品粉体集合体。
  3. 日本薬局方の回転バスケット式溶出試験法において、試験開始から24時間まで溶出試験第1液を用いた際に、上記食品核の成分全体に対して、試験開始から6時間後の食品核の成分の溶出率が50質量%以下である請求項1又は請求項2に記載の腸溶性被覆食品粉体集合体。
  4. 日本薬局方の回転バスケット式溶出試験法において、試験開始から24時間までイオン交換水を用いた際に、上記食品核の成分全体に対して、試験開始から2時間後の食品核の成分の溶出率が65質量%以上である請求項1ないし請求項3の何れかの請求項に記載の腸溶性被覆食品粉体集合体。
  5. 上記食品核の質量と上記可食性被覆材層の質量の比が、[5:5]〜[9.5:0.5]の範囲に入るように、1粒子の食品核の表面が個々に該可食性被覆材層で被覆されている請求項1ないし請求項4の何れかの請求項に記載の腸溶性被覆食品粉体集合体。
  6. レーザー散乱型粒度分布計を用いて測定し、可食性被覆材層によって被覆する前の食品核の最大径をMAX0、最小径をmin0、体積ピーク径の頻度(%)をV0とし、可食性被覆材層によって被覆した後の粉体の最大径をMAXt、最小径をmint、体積ピーク径の頻度(%)をVtとしたとき、下記の式(1)を満たすように、該1粒子の食品核の表面が個々に可食性被覆材層によって被覆されているものである請求項1ないし請求項5の何れかの請求項に記載の腸溶性被覆食品粉体集合体。
    0.5≦[Vt/(MAXt−mint)]
    /[V0/(MAX0−min0)]≦1.5 ・・・・(1)
  7. 転動流動層型、側方スプレー式流動層型、ワースター式流動層型、又は、ボトム式流動層型のコーティング装置によって、1粒子の食品核の表面が個々に可食性被覆材層によって被覆されたものである請求項1ないし請求項6の何れかの請求項に記載の腸溶性被覆食品粉体集合体。
  8. 上記可食性タンパク質が、カゼインナトリウムである請求項1ないし請求項7の何れかの請求項に記載の腸溶性被覆食品粉体集合体。
  9. 請求項1ないし請求項8の何れかの請求項に記載の腸溶性被覆食品粉体集合体の製造方法であって、
    転動流動層型、側方スプレー式流動層型、ワースター式流動層型、又は、ボトム式流動層型のコーティング装置によって、請求項1ないし請求項8の何れかの請求項に記載の腸溶性被覆食品粉体集合体の特定要件を満たすように、給気温度、ローター回転数、及び、スプレーの送風量を調整することによって、1粒子の食品核の表面を、個々に可食性被覆材層によって被覆することを特徴とする腸溶性被覆食品粉体集合体の製造方法。
  10. 請求項1ないし請求項8の何れかの請求項に記載の腸溶性被覆食品粉体集合体を含有する健康食品であって、
    その剤型が、粉剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、又は、固形剤であることを特徴とする健康食品。

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