JP2010202859A - インク、インクジェット記録方法、インクカートリッジ、及びインクジェット記録装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】少なくとも、顔料を含有するインクであって、前記顔料が、C.I.ピグメントレッド282であり、前記顔料の一次粒子径D(nm)と前記顔料の粒子径分布の50%累積値D50(nm)とが、D×0.95≦D50≦150の関係を満たし、かつ、前記顔料の粒子径分布の90%累積値D90(nm)と前記D50(nm)とが、1.5≦D90/D50≦2.5の関係を満たすことを特徴とするインク。
【選択図】なし
Description
本発明者らは、マゼンタインクにより記録した画像の彩度や光沢性を高めることを主たる目的として、インクジェット用のインクに使用する顔料として一般的なキナクリドン系の顔料について、検討を行った。その結果、顔料としてC.I.ピグメントレッド282を用いることで、優れた彩度や光沢性を有する画像を得ることが可能となるという知見を得た。しかし、一般的なマゼンタ顔料と比較して、C.I.ピグメントレッド282はその分散状態を安定に保つことが難しい場合がある。
以下、本発明のインクを構成する成分などについて詳細に説明する。
本発明のインクに使用する顔料は、C.I.ピグメントレッド282である。該顔料の一次粒子径D(nm)は、50nm以上130nm以下であることが好ましい。一次粒子径Dが50nm未満であると、顔料そのものの耐光性が低いため、画像の耐光性も十分に得られない場合や、分散安定性を保つために多くの樹脂が必要となる場合があるので好ましくない。このように樹脂を多く含有すると記録画像の平滑性が損なわれ、彩度や光沢性が十分に得られない場合がある。一方、一次粒子径Dが130nmよりも大きいと、顔料の平均粒子径が非常に大きくなり、記録した画像の彩度や光沢性を十分に満足することができない場合があるので好ましくない。
本発明のインクは、顔料に加えて樹脂を含有してなるものであることが好ましく、前記した特定の顔料と樹脂とを含有してなる顔料分散体を用いて調製することができる。本発明においては、その技術課題から、特に、光沢紙に記録した画像の耐擦過性などを考慮し、樹脂により顔料が良好な状態に分散されてなる顔料分散体であることが好ましい。なお、本発明における「樹脂により分散された顔料」とは、顔料粒子の表面に樹脂が物理的に吸着してなる樹脂分散型顔料は勿論のこと、その他にも以下のようなものが挙げられる。具体的には、高分子の構造を少なくとも有する有機基(樹脂)が顔料粒子の表面に化学的に結合してなる樹脂結合型自己分散顔料や、有機高分子などで顔料を被覆してなるマイクロカプセル型顔料が挙げられる。本発明者らの検討の結果、樹脂分散顔料が最も好ましく、それ以外のものの中では、本発明の目的を達成するのに好ましい顔料分散体は、樹脂結合型自己分散顔料であることがわかった。これは、樹脂が顔料粒子の表面に化学的に結合しているため、樹脂がより安定に分散されるためであると考えられる。
本発明のインクは、顔料及び樹脂の他、水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒である水性媒体を含有してなるものであることが好ましい。水としては、イオン交換水や純水などの脱イオン水を用いることが好ましい。インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、50.0質量%以上95.0質量%以下であることが好ましい。
インクには、保湿性などの維持のために、上記した成分の他に、尿素、尿素誘導体、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンなどの保湿性を有する常温で固体の化合物を含有させてよい。インク中のこのような化合物の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上20.0質量%以下、さらには3.0質量%以上10.0質量%以下であることが好ましい。
本発明のインクジェット記録方法は、インクジェット方式の記録ヘッドにより上記で説明した本発明のインクを吐出して、記録媒体に画像を記録する方法である。また、本発明のインクジェット記録装置は、インクを収容してなるインク収容部と、インクを吐出するための記録ヘッドとを備え、前記インク収容部に収容されたインクが上記で説明した本発明のインクであることを特徴とする。特に、本発明のインクは、インクジェット方式の中でもバブルジェット(登録商標)方式の記録ヘッドやインクジェット記録装置において、優れた効果をもたらす。本発明のインクを用いること以外、インクジェット記録方法の工程やインクジェット記録装置の構成は公知のものとすればよい。なお、本発明における「記録」とは、光沢紙や普通紙などの記録媒体に対して本発明のインクを用いて記録する態様、ガラス、プラスチック、フィルムなどの非吸液性の基材に対して本発明のインクを用いてプリントを行う態様を含む。
以下、本発明のインクを調製する場合に用いることができる顔料分散体の製造方法について説明する。本発明においては、下記に述べるような顔料分散体の製造方法により得られた顔料分散体を使用してインクを調製することで、本発明で規定する粒子径の特性を有する特定の顔料を含有するインクを容易に得ることができる。
樹脂、中和剤、有機溶剤、及び水などを含有する乳化組成物と、顔料とを混合して、不揮発成分の含有量が30質量%以上50質量%以下で、25℃における粘度が50mPa・s以上1,000mPa・s以下である混合物を得る工程。
(第2工程)
前記第1工程で得られた混合物を用い、25℃における粘度が50mPa・s以上500mPa・s以下である予備分散体を得る工程。すなわち、第1工程で得られた混合物を、高圧ホモジナイザーなどのメディアレス分散機を用いて、混合物1kg当りに与えられる正味の積算動力が0.50kWh/kg以上10.00kWh/kg以下の範囲で処理を行って、上記予備分散体を得る。
(第3工程)
前記第2工程で得られた予備分散体を分散処理する工程。
(顔料分散体1)
顔料として、10部(固形分)のC.I.ピグメントレッド282を摩砕し、常法により有機溶剤処理による顔料化を行って得られた一次粒子径Dが110nmの顔料Aを用いた。また、樹脂(分散剤)としては、スチレン50部、n−ブチルアクリレート39部、及びメタクリル酸30部を原料として常法により合成して得られた下記の樹脂Aを用いた。該樹脂Aは、酸価195mgKOH/g、重量平均分子量9,000のランダムポリマーを、酸価と当量の水酸化カリウム水溶液で中和して得られたものである。上記の顔料Aと樹脂Aとを用い、下記の第1〜3工程によって顔料分散体1を得た。なお、後述する他の顔料分散体の製造における第1〜3工程は、顔料分散体1の製造における各工程を意味する。また、各顔料分散体の製造条件と、得られた各顔料分散体における顔料の特性を、表1−1〜1−4にまとめて示した。
顔料A:180部、樹脂A:90部、イオン交換水:330部を、ホモミクサー(プライミクス製)を用いて混合し、粘度が200mPa・sのスラリー(混合物)を得た。
前記第1工程で得られたスラリーを、循環式ホモジナイザー(製品名:クレアミックス(表中、CLMと略す);エム・テクニック製)を用いて1時間撹拌し、予備分散体を得た。スラリーに与えられた正味の積算動力は0.75kWh/kg、得られた予備分散体の粘度は100mPa・sであった。
前記第2工程で得られた予備分散体を、循環式のビーズミル(表中、BMと略す)を用いて、0.1mm径のジルコニアビーズの充填率を85%、周速8m/秒の条件で115分間分散して、顔料分散体1を得た。ビーズミルには、MiniCer(製品名;アシザワ・ファインテック製)を用いた。得られた顔料分散体1は、Dの値が110nm、D50の値が112nm、D90の値が194nm、D90/D50の値が1.7であり、顔料の含有量が30.0%、樹脂の含有量が15.0%であった。
第3工程において使用したジルコニアビーズの径を0.2mm、分散時間を100分とした以外は顔料分散体1と同様にして、顔料分散体2を得た。得られた顔料分散体2は、Dの値が110nm、D50の値が148nm、D90の値が220nm、D90/D50の値が1.5であり、顔料の含有量が30.0%、樹脂の含有量が15.0%であった。
第3工程において使用したジルコニアビーズ径を0.05mm、分散時間を110分とした以外は顔料分散体1と同様にして、顔料分散体3を得た。得られた顔料分散体3は、Dの値が110nm、D50の値が110nm、D90の値が273nm、D90/D50の値が2.5であり、顔料の含有量が30.0%、樹脂の含有量が15.0%であった。
第2工程においてスラリーに与えられた正味の積算動力を1.50kWh/kgとし、第3工程において使用したジルコニアビーズ径を0.05mm、分散時間を130分とした以外は顔料分散体1と同様にして、顔料分散体4を得た。得られた顔料分散体4は、Dの値が110nm、D50の値が109nm、D90の値が162nm、D90/D50の値が1.5であり、顔料の含有量が30.0%、樹脂の含有量が15.0%であった。
第2工程においてスラリーに与えられた正味の積算動力を0.50kWh/kgとし、第3工程において使用したジルコニアビーズ径を0.2mm、ビーズミルの方式を多パス方式とした以外は顔料分散体1と同様にして、顔料分散体5を得た。得られた顔料分散体5は、Dの値が110nm、D50の値が145nm、D90の値が360nm、D90/D50の値が2.5であり、顔料の含有量が30.0%、樹脂の含有量が15.0%であった。
第2工程においてスラリーに与えられた正味の積算動力を1.00kWh/kgとし、第3工程において使用したジルコニアビーズ径を0.05mmとした以外は顔料分散体1と同様にして、顔料分散体6を得た。得られた顔料分散体6は、Dの値が110nm、D50の値が109nm、D90の値が216nm、D90/D50の値が2.0であり、顔料の含有量が30.0%、樹脂の含有量が15.0%であった。
第2工程においてスラリーに与えられた正味の積算動力を0.60kWh/kgとし、第3工程において使用したジルコニアビーズ径を0.2mmとした以外は顔料分散体1と同様にして、顔料分散体7を得た。得られた顔料分散体7は、Dの値が110nm、D50の値が150nm、D90の値が295nm、D90/D50の値が2.0であり、顔料の含有量が30.0%、樹脂の含有量が15.0%であった。
顔料分散体1の製造の際の第1工程において使用した顔料Aを、10部(固形分)のC.I.ピグメントレッド282のプレスケーキを摩砕し、常法により有機溶剤処理による顔料化を行って得られた一次粒子径Dが53nmの顔料Bに代えた。さらに、顔料分散体1の製造の際の第3工程における分散時間を110分とした以外は顔料分散体1と同様にして、顔料分散体8を得た。得られた顔料分散体8は、Dの値が53nm、D50の値が82nm、D90の値が165nm、D90/D50の値が2.0であり、顔料の含有量が30.0%、樹脂の含有量が15.0%であった。
顔料分散体1の製造の際の第1工程において使用した顔料Aを、10部(固形分)のC.I.ピグメントレッド282のプレスケーキを摩砕し、常法により有機溶剤処理による顔料化を行って得られた一次粒子径Dが125nmの顔料Cに代えた。さらに、顔料分散体1の製造の際の第3工程における分散時間を175分とした以外は顔料分散体1と同様にして、顔料分散体9を得た。得られた顔料分散体9は、Dの値が125nm、D50の値が137nm、D90の値が212nm、D90/D50の値が1.5であり、顔料の含有量が30.0%、樹脂の含有量が15.0%であった。
顔料分散体1の製造の際の第1工程において使用した顔料Aを、10部(固形分)のC.I.ピグメントレッド282のプレスケーキを摩砕し、常法により有機溶剤処理による顔料化を行って得られた一次粒子径Dが135nmの顔料Dに代えた。さらに、顔料分散体1の製造の際の第3工程における分散時間を190分とした以外は顔料分散体1と同様にして、顔料分散体10を得た。得られた顔料分散体10は、Dの値が135nm、D50の値が145nm、D90の値が246nm、D90/D50の値が1.7であり、顔料の含有量が30.0%、樹脂の含有量が15.0%であった。
顔料分散体1の製造の際の第1工程において使用した顔料Aを、10部(固形分)のC.I.ピグメントレッド282のプレスケーキを摩砕し、常法により有機溶剤処理による顔料化を行って得られた一次粒子径Dが45nmの顔料Eに代えた。さらに、顔料分散体1の製造の際の第3工程において分散時間を100分とした以外は顔料分散体1と同様にして、顔料分散体11を得た。得られた顔料分散体11は、Dの値が45nm、D50の値が73nm、D90の値が146nm、D90/D50の値が2.0であり、顔料の含有量が30.0%、樹脂の含有量が15.0%であった。
第1工程において使用した樹脂Aを樹脂Bに代え、第3工程において分散時間を110分とした以外は顔料分散体1と同様にして、顔料分散体12を得た。樹脂Bには、スチレン40部、n−ブチルアクリレート52.3部、及びメタクリル酸7.7部を原料として常法により合成し、中和したものを用いた。具体的には、上記で合成した、酸価50mgKOH/g、重量平均分子量8,800のランダムポリマーを、酸価と当量の水酸化カリウム水溶液で中和して得られた樹脂Bを用いた。得られた顔料分散体12は、Dの値が110nm、D50の値が120nm、D90の値が226nm、D90/D50の値が1.9であり、顔料の含有量が30.0%、樹脂の含有量が15.0%であった。
第1工程において使用した樹脂Aを樹脂Cに代え、第3工程において分散時間を100分とした以外は顔料分散体1と同様にして、顔料分散体13を得た。樹脂Cには、スチレン40部、n−ブチルアクリレート17部、及びメタクリル酸43部を原料として常法により合成し、中和したものを用いた。具体的には、上記で合成した酸価280mgKOH/g、重量平均分子量9,100のランダムポリマーを、酸価と当量の水酸化カリウム水溶液で中和して得られた樹脂Cを用いた。得られた顔料分散体13は、Dの値が110nm、D50の値が108nm、D90の値が194nm、D90/D50の値が1.8であり、顔料の含有量が30.0%、樹脂の含有量が15.0%であった。
第1工程において使用した樹脂Aを樹脂Dに代え、第3工程において分散時間を100分とした以外は顔料分散体1と同様にして、顔料分散体14を得た。樹脂Dには、スチレン40部、n−ブチルアクリレート15部、メタクリル酸25部、及びポリエチレングリコールモノメタクリレート20部を原料として常法により合成し、中和したものを用いた。具体的には、上記で合成した酸価160mgKOH/g、重量平均分子量8,600のランダムポリマーを、酸価と当量の水酸化カリウム水溶液で中和して得られた樹脂Cを用いた。得られた顔料分散体14は、Dの値が110nm、D50の値が112nm、D90の値が212nm、D90/D50の値が1.9であり、顔料の含有量が30.0%、樹脂の含有量が15.0%であった。
第1工程において使用した樹脂Aを樹脂Eに代えて粘度が300mPa・sのスラリーを得た。そして、このスラリーを用いて第2工程で粘度が130mPa・sの予備分散体を得た。さらに、第3工程において分散時間を110分とした以外は顔料分散体1と同様にして、顔料分散体15を得た。樹脂Eには、スチレン40部、n−ブチルアクリレート53.1部、及びメタクリル酸6.9部を原料として常法により合成し、中和したものを用いた。具体的には、上記で合成した酸価45mgKOH/g、重量平均分子量8,600のランダムポリマーを、酸価と当量の水酸化カリウム水溶液で中和して得られた樹脂を用いた。得られた顔料分散体15は、Dの値が110nm、D50の値が145nm、D90の値が293nm、D90/D50の値が2.0であり、顔料の含有量が30.0%、樹脂の含有量が15.0%であった。
第1工程において使用した樹脂Aを樹脂Fに代えて粘度が180mPa・sのスラリーを得た。そして、このスラリーを用いて第2工程で粘度が90mPa・sの予備分散体を得た。さらに、第3工程において分散時間を100分とした以外は顔料分散体1と同様にして、顔料分散体16を得た。前記樹脂Fには、スチレン40部、n−ブチルアクリレート11.6部、及びメタクリル酸48.4部を原料として常法により合成し、中和したものを用いた。具体的には、上記で合成した酸価315mgKOH/g、重量平均分子量9,200のランダムポリマーを、酸価と当量の水酸化カリウム水溶液で中和して得られた樹脂を用いた。得られた顔料分散体16は、Dの値が110nm、D50の値が115nm、D90の値が173nm、D90/D50の値が1.5であり、顔料の含有量が30.0%、樹脂の含有量が15.0%であった。
第1工程において使用した成分を、樹脂A54部、顔料A180部、及びイオン交換水366部として、粘度が150mPa・sのスラリーを得た。そして、このスラリーを用いて第2工程で粘度が80mPa・sの予備分散体を得たこと以外は顔料分散体1と同様にして、顔料分散体17を得た。得られた顔料分散体17は、Dの値が110nm、D50の値が128nm、D90の値が250nm、D90/D50の値が2.0であり、顔料の含有量が30.0%、樹脂の含有量が9.0%であった。
第1工程において使用した成分を、樹脂A270部、顔料A90部、及びイオン交換水240部として、粘度が250mPa・sのスラリーを得た。そして、このスラリーを用いて第2工程で粘度が150mPa・sの予備分散体を得たこと以外は顔料分散体1と同様にして、顔料分散体18を得た。得られた顔料分散体18は、Dの値が110nm、D50の値が118nm、D90の値が190nm、D90/D50の値が1.6であり、顔料の含有量が15.0%、樹脂の含有量が45.0%であった。
第1工程において使用した成分を、樹脂A315部、顔料A90部、及びイオン交換水195部として、粘度が280mPa・sのスラリーを得た。そして、このスラリーを用いて第2工程で粘度が160mPa・sの予備分散体を得たこと以外は顔料分散体1と同様にして、顔料分散体19を得た。得られた顔料分散体19は、Dの値が110nm、D50の値が132nm、D90の値が243nm、D90/D50の値が1.8であり、顔料の含有量が15.0%、樹脂の含有量が52.5%であった。
顔料に、下記の方法で表面に樹脂を連結した改質顔料を用いた。具体的には、常法により合成した、スチレン/n−ブチルアクリレート/メタクリル酸共重合体からなる高分子鎖とが結合してなる末端にアミノフェニル基を有するポリマーを、予め4−アミノ安息香酸により改質した顔料Aにさらに連結して改質を行った。すなわち、先ず、4−アミノ安息香酸で改質した顔料Aを200部と、上記で得た結合ポリマーの5%水溶液1,000部とを反応器に投入し、55℃に保温し、回転数300rpmで20分間撹拌した。この後、25%の亜硝酸ナトリウム30部を15分間滴下し、さらにイオン交換水100部を加えた。この後、60℃に保温しながら、2時間反応させた。そしてさらに撹拌しながら、1.0規定の水酸化カリウム水溶液を添加し、pHを10〜11に調整し、その後、脱塩、精製、さらに、粗大粒子を除去して、2種類の原子団が化学的に結合してなる改質顔料Aを得た。得られた改質顔料Aを用い、樹脂を使用せず、表1−3に示した条件としたこと以外は顔料分散体1と同様にして顔料分散体20を得た。なお、表1−3中の、顔料分散体20についての配合量は、顔料100部に対する、顔料に結合した樹脂の割合のことを示す。得られた顔料分散体20は、Dの値が110nm、D50の値が115nm、D90の値が217nm、D90/D50の値が1.9であり、顔料の含有量が10.0%であった。
第1工程において使用した成分を、樹脂A9部、顔料A180部、及びイオン交換水411部として、粘度が110mPa・sのスラリーを得た。そして、このスラリーを用いて第2工程で粘度が55mPa・sの予備分散体を得たこと以外は顔料分散体1と同様にして、顔料分散体21を得た。得られた顔料分散体21は、Dの値が110nm、D50の値が140nm、D90の値が278nm、D90/D50の値が2.0であり、顔料の含有量が30.0%、樹脂の含有量が3.0%であった。
第1工程において使用した成分を、樹脂A8.64部、顔料A180部、及びイオン交換水411.36部として、粘度が100mPa・sのスラリーを得た。そして、このスラリーを用いて第2工程で粘度が50mPa・sの予備分散体を得たこと以外は顔料分散体1と同様にして、顔料分散体22を得た。得られた顔料分散体22は、Dの値が110nm、D50の値が140nm、D90の値が293nm、D90/D50の値が2.1であり、顔料の含有量が30.0%、樹脂の含有量が2.9%であった。
顔料分散体1の製造の際の第1工程において使用した成分を、樹脂A30部、顔料A60部、及びイオン交換水510部として、粘度が200mPa・sのスラリーとし、第2工程においてスラリーに与えられた正味の積算動力を0.30kWh/kgとした。そして、粘度が10mPa・sの予備分散体とし、さらに、第3工程において使用したジルコニアビーズ径を0.2mm、ビーズミルの方式を多パス方式とした以外は顔料分散体1と同様にして、顔料分散体23を得た。得られた顔料分散体23は、Dの値が110nm、D50の値が155nm、D90の値が377nm、D90/D50の値が2.4であり、顔料の含有量が10.0%、樹脂の含有量が5.0%であった。
第3工程において使用したジルコニアビーズ径を0.1mmとした以外は顔料分散体23と同様にして、顔料分散体24を得た。得られた顔料分散体24は、Dの値が110nm、D50の値が115nm、D90の値が308nm、D90/D50の値が2.7であり、顔料の含有量が10.0%、樹脂の含有量が5.0%であった。
第2工程においてスラリーに与えられた正味の積算動力を1.50kWh/kgとし、第3工程において使用したジルコニアビーズ径を0.05mmとした以外は顔料分散体23と同様にして、顔料分散体25を得た。得られた顔料分散体25は、Dの値が110nm、D50の値が98nm、D90の値が194nm、D90/D50の値が2.0であり、顔料の含有量が10.0%、樹脂の含有量が5.0%であった。
第3工程を行わなかった以外は顔料分散体1と同様にして、顔料分散体26を得た。得られた顔料分散体26は、Dの値が110nm、D50の値が300nm、D90の値が1,000nm、D90/D50の値が3.3であり、顔料の含有量が10.0%、樹脂の含有量が5.0%であった。
上記で得られた各顔料分散体を用い、下記表2に示す各成分を混合して十分に撹拌した後、ポアサイズ1.0μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧ろ過することにより、各インクを調製した。
上記で得られた各インクをそれぞれインクカートリッジに充填し、熱エネルギーの作用によりインクを吐出するインクジェット記録装置BJ F900(キヤノン製)に前記インクカートリッジを搭載した。そして、前記インクジェット記録装置を用いて、光沢性を有する記録媒体(スーパーフォトペーパーSP−101:キヤノン製)に、記録デューティを10%刻みで10%から200%まで変化させたベタ部分を含む記録物を作製した。この際のプリンタドライバは、プロフォトペーパーモードを選択した。プロフォトペーパーモードの設定は以下の通りである。
・用紙の種類:プロフォトペーパー
・印刷品質:きれい
・色調整:自動
上記で得られた各インクをそれぞれショット瓶に入れて密栓し、温度60℃のオーブンで2週間保存した。この保存前後のインクの粘度をそれぞれE型粘度計(RE80L;東洋精機製)を用いて測定し、保存前のインクの粘度と比較した粘度の変化率を求め、保存安定性の評価を行った。保存安定性の評価基準は下記の通りである。評価結果を表3に示す。本発明においては、下記の評価基準でB以上を許容できるレベル、Aが優れているレベルとし、Cを許容できないレベルとした。
A:粘度の変化率が15%未満であった。
B:粘度の変化率が15%以上30%未満であった。
C:粘度の変化率が30%以上であった。
記録物を作製した1日後に、マゼンタの画像における彩度を、Spectrolino(Gretag Macbeth製)を用いて測定し、彩度の評価を行った。なお、彩度はc*={(a*)2+(b*)2}1/2の式により求めることができる。彩度の評価基準は下記の通りである。評価結果を表3に示す。本発明においては、下記の評価基準でB以上を許容できるレベル、Aが優れているレベル、AAが特に優れているレベルとし、Cを許容できないレベルとした。
AA:c*が84以上であった。
A:c*が82以上84未満であった。
B:c*が80以上82未満であった。
C:c*が80未満であった。
上記で得られた記録物について、microhazemater(BYK Gardner製)を用いてGLOSS値(20°光沢性)を測定し、各記録デューティの画像における平均値を用いて光沢性の評価を行った。光沢性の評価基準は下記の通りである。評価結果を表3に示す。本発明においては、下記の評価基準でB以上を許容できるレベル、Aが優れているレベル、AAが特に優れているレベルとし、Cを許容できないレベルとした。
AA:GLOSS値(20°光沢性)が60以上であった。
A:GLOSS値(20°光沢性)が50以上60未満であった。
B:GLOSS値(20°光沢性)が40以上50未満であった。
C:GLOSS値(20°光沢性)が40未満であった。
Claims (10)
- 少なくとも、顔料を含有するインクであって、
前記顔料が、C.I.ピグメントレッド282であり、
前記顔料の一次粒子径D(nm)と前記顔料の粒子径分布の50%累積値D50(nm)とが、D×0.95≦D50≦150の関係を満たし、かつ、前記顔料の粒子径分布の90%累積値D90(nm)と前記D50(nm)とが、1.5≦D90/D50≦2.5の関係を満たすことを特徴とするインク。 - 前記D(nm)が、50nm以上130nm以下である請求項1に記載のインク。
- 前記D90(nm)と前記D50(nm)とが、1.5≦D90/D50≦2.0の関係を満たす請求項1又は2に記載のインク。
- 前記インクがさらに樹脂を含有し、前記樹脂の酸価が50mgKOH/g以上300mgKOH/g以下である請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインク。
- 前記樹脂が、ノニオン性ユニットを有する請求項4に記載のインク。
- 前記インク中における、インク全質量を基準とした前記顔料の含有量(質量%)が、インク全質量を基準とした樹脂の含有量(質量%)に対して、0.30倍以上10.0倍以下である請求項4又は5に記載のインク。
- 前記顔料が、顔料粒子の表面に樹脂を結合してなる請求項1乃至6のいずれか1項に記載のインク。
- インクをインクジェット方式で吐出して記録媒体に記録を行うインクジェット記録方法であって、前記インクが、請求項1乃至7のいずれか1項に記載のインクであることを特徴とするインクジェット記録方法。
- インクを収容してなるインク収容部を備えたインクカートリッジであって、前記インクが、請求項1乃至7のいずれか1項に記載のインクであることを特徴とするインクカートリッジ。
- インクを収容してなるインク収容部と、インクを吐出するための記録ヘッドとを備えたインクジェット記録装置であって、前記インクが、請求項1乃至7のいずれか1項に記載のインクであることを特徴とするインクジェット記録装置。
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