JP2010196626A - 車両用暖機システム、これに用いる蓄熱器及び暖機用熱交換器 - Google Patents
車両用暖機システム、これに用いる蓄熱器及び暖機用熱交換器 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】装置を小型・軽量化できるとともに、短時間に大量の熱を取り出して、車両各部の暖機を行うことができ、また、暖機対象部位までの配管等を容易に設けることができる車両用暖機システムを提供する。
【解決手段】蓄熱器7を備えて構成される車両用暖機システム1であって、車両内の熱源で発生した熱を上記蓄熱器に蓄積する蓄熱行程と、上記蓄熱器に蓄積した熱を、気体熱媒体を介して暖機対象部材2に移動させて暖機を行う暖機行程とを含み、上記蓄熱器は、熱伝導性構造体の空隙に固体蓄熱物質を保持させて構成されているとともに通気性を有する蓄熱構造体を備え、上記気体熱媒体は上記蓄熱構造体の内部を流動させられて熱交換を行うように構成されている。
【選択図】図1
【解決手段】蓄熱器7を備えて構成される車両用暖機システム1であって、車両内の熱源で発生した熱を上記蓄熱器に蓄積する蓄熱行程と、上記蓄熱器に蓄積した熱を、気体熱媒体を介して暖機対象部材2に移動させて暖機を行う暖機行程とを含み、上記蓄熱器は、熱伝導性構造体の空隙に固体蓄熱物質を保持させて構成されているとともに通気性を有する蓄熱構造体を備え、上記気体熱媒体は上記蓄熱構造体の内部を流動させられて熱交換を行うように構成されている。
【選択図】図1
Description
本願発明は、車両用暖機システムに関する。詳しくは、駆動部等の車両内の熱源で生じた熱を蓄熱するとともに、気体熱媒体を介して車両各部を暖機できる車両用暖機システム、これに用いる蓄熱器及び暖機用熱交換器に関する。
車両始動時に、エンジン等の暖機運転を行うことにより、エンジンオイル等の温度を上昇させて粘度を低下させ、駆動抵抗を減少させることができる。この結果、燃費の向上を期待することができるとともに、各部の摩耗等を減少させることができる。また、始動時のエンジンでは、低温で燃料が燃焼させられるため、排気に有害物質が多量に含まれる。このため、できるだけ速やかに暖機運転を行うのが好ましい。暖機運転を促進するため、蓄熱装置を備えた内燃機関が提供されている。
上記特許文献1に記載されている内燃機関では、機関運転中に加熱された機関冷却水を利用して蓄熱装置に排熱を蓄熱するとともに、暖機運転時に上記蓄熱した熱を、上記機関冷却水を介して駆動装置のATFウォーマへ供給し、ATF(Automatic transmission Fluid)を加熱できるように構成されている。
上記蓄熱装置を設けることにより、内燃機関の暖機運転を促進して、短時間にATFの温度を上昇させることができる。この結果、始動時の燃費の向上を期待することができる。
一方、ハイブリッド自動車や燃料電池自動車においても、始動時に駆動系のオイルや電池等の温度を上昇させるのが好ましい。特にハイブリッド自動車においては、モータによる走行時にアイドリングストップした状態となることが多く、エンジンオイル等の温度が低下しやすい。このため、走行中の暖機運転を行うことにより、エンジンオイル等を所定温度以上に保持して、燃費を向上させることができる。
特許文献2には、燃料電池及び電力消費機器の排熱を蓄熱槽に蓄熱し、燃料電池用の熱交換器等に循環させることにより暖機を行う電気自動車が開示されている。
暖機運転は、始動の際の短時間に、蓄熱装置から大量の熱を取り出して対象部材に移動させ、投入しなければならない。このため、上記特許文献1では、加熱されて高温になった上記機関冷却水を、蓄熱装置の保温容器に貯溜し、暖機運転時にこの冷却水をパイプ等介してATFウォーマへ供給するように構成している。
ところが、加熱した上記機関冷却水を一定量貯溜するための保温容器を設けなければならない。したがって、蓄熱装置が大型化し、車両によっては、設置スペースを確保するのが困難な場合がある。また、その分車両重量が増加するため、燃費の改善効果はあまり期待できない。
しかも、大量の機関冷却水を高温で長時間保持するのは困難である。このため、車両を長時間運転しない場合には、上記機関冷却水の温度が低下して、十分な暖機運転を行えない恐れもある。
また、熱媒体として冷却水を利用しているため、上記ATFウォーマに到る配管に水密性と断熱性が要求される。このため、装置が複雑になるとともに、製造コストも増加する。
さらに、効果的な暖機運転を行うには、短時間に、大量の熱を、上記機関冷却水を介してATF等に投入する必要がある。このため、蓄熱器や暖機部材の熱交換器に高い熱交換性能が求められる。熱交換性能を高めるには、大きな熱交換面積を確保し、あるいは、大きな流速で上記機関冷却水を循環させなければならない。ところが、大きな熱交換面積を確保すると装置が大型化する。一方、機関冷却水の循環速度を高めるには、大きなポンプが必要になり、さらに配管の水密性も高める必要が生じる。したがって、製造コストが増加する。
特許文献2に記載されている燃料電池車においても、上記特許文献1と同様に、水やオイルを熱媒体として用いており、上記特許文献1に記載された発明と同様の問題が発生する。また、水やオイルを熱媒体と採用する場合、蓄熱器からの配管に水密性及び断熱性が要求されるため、暖機できる部材が限定されるという問題もある。特に、電池を暖機する場合、液状の熱媒体が漏れ出ると、システムが停止する恐れがあるため、高い水密性が要求される。
本願発明は、装置を小型化できるとともに、短時間に大量の熱を取り出して、車両各部の暖機を行うことができるとともに、暖機対象部材までの配管等を容易に設けることができる車両用暖機システムを提供することを課題とする。
本願の請求項1に記載した発明は、蓄熱器を備えて構成される車両用暖機システムであって、車両内の熱源で発生した熱を上記蓄熱器に蓄積する蓄熱行程と、上記蓄熱器に蓄積した熱を、気体熱媒体を介して暖機対象部材に移動させて暖機を行う暖機行程とを含み、上記蓄熱器は、熱伝導性構造体の空隙に固体蓄熱物質が保持されているとともに通気性を有する蓄熱構造体を備え、上記気体熱媒体は上記蓄熱構造体の内部を流動させられて熱交換を行うように構成されている。
本願発明に係る車両用暖機システムにおいては、車両内の熱源で発生した熱を上記蓄熱器に蓄熱する蓄熱行程が行われる。車両内の熱源は特に限定されることはない。請求項8に記載した発明のように、上記熱源が車両の駆動部であり、上記駆動部を冷却する熱媒体を介して、上記蓄熱器に熱が蓄熱されるように構成することができる。たとえば、内燃機関を駆動源とする車両においては、エンジン、トランスミッション等から出る排熱を、熱源として利用できるとともに、上記部材を冷却する熱媒体を介して蓄熱器に蓄熱することができる。
ハイブリッド車や電気自動車においては、駆動用モータやパワーモジュール等から生じる排熱を上記熱源として利用できる。これら、部材は、過熱するのを防止するために熱媒体を用いて冷却するように構成されており、上記熱媒体を介して冷却部材から出る排熱を上記蓄熱器に蓄熱することができる。
なお、熱源は駆動部の排熱に限定されることはない。たとえば、請求項9に記載した発明のように、上記熱源として電気ヒータを採用し、上記電気ヒータで上記蓄熱構造体を直接加熱し、又は熱媒体を介して蓄熱構造体を加熱することにより蓄熱を行うように構成することもできる。また、回生ブレーキ等で発生した余剰の電力を熱エネルギの形で蓄えることもできる。
本願発明では、上記蓄熱器に蓄熱された熱を、気体熱媒体を介して暖機対象部材に移動させて暖機を行う。上記気体熱媒体として、空気を採用することができる。また、チッソ等の不活性ガスを採用することもできる。
気体熱媒体を採用することにより、水等の液状熱媒体を採用する場合に比べて装置の重量を格段に低減させることができる。また、上記気体熱媒体が配管等から漏れ出た場合にも、液状熱媒体のように重大な事態が発生することはなく、配管等に高い気密性が要求されることもない。
また、気体熱媒体は、液状熱媒体に比べて流動抵抗が格段に小さい。このため、狭い流路を高い速度で通過させることができる。したがって、熱交換用のフィン等の密度を大きく設定することが可能となり、大きな熱交換面積を備える蓄熱器や熱交換器を構成できる。これにより、短時間に大量の熱を交換することが可能となる。
さらに、本願発明に係る上記蓄熱器は、熱伝導性構造体の空隙に固体蓄熱物質を保持させて構成されているとともに通気性を有する蓄熱構造体を備える。例えば、多孔質体構造体、ハニカム構造体、複数のフィン構造体等の熱伝導性構造体の空隙に固体蓄熱物質を保持させた蓄熱構造体を構成できる。
上記熱伝導性構造体は、上記固体蓄熱物質に比べて、熱伝導率が高い。これら熱伝導性構造体を一体的に構成することにより、蓄熱物質だけの場合に比べて蓄熱構造体内部の熱伝導率は格段に大きくなる。したがって、入熱時や放熱時において、蓄熱構造体内部の熱移動が格段に速くなり、蓄熱構造体内部の温度差も小さくなる。しかも、本願発明では、上記蓄熱構造体が通気性を有するように構成されているため、上記気体熱媒体と蓄熱構造体との間で直接熱交換させることが可能となる。すなわち、熱媒体が流動するパイプを介することなく、熱媒体と蓄熱構造体との間で熱交換を行わせることが可能となる。これにより、短時間に大量の熱を蓄熱し、かつ放熱することが可能となる。
たとえば、請求項2に記載した発明のように、上記蓄熱器を、連続気孔を有する熱伝導性多孔質体に上記固体蓄熱物質を保持させて構成された蓄熱構造体を備えて構成することができる。
上記構成における蓄熱構造体は、上記固体蓄熱物質を一部に保持させることにより、蓄熱構造体自体を、連続気孔を有する多孔質状に形成し、この連続気孔内に気体熱媒体を流動させるように構成することができる。また、蓄熱物質を多孔質体の全体に充填して、他の部分に気体熱媒体を流動させる構造を設けて構成することもできる。この構成によって、蓄熱構造体の内部に、直接気体熱媒体を流動させて、上記蓄熱構造体と上記気体熱媒体との間で熱交換させることが可能となる。これにより、気体熱媒体と蓄熱構造体とを、非常に大きな熱交換面を介して、しかも直接熱交換させることが可能となり、短時間に大量の熱を交換することが可能となる。しかも、空気等の気体熱媒体は粘度が低いため、蓄熱構造体内部の連続気孔中を流動する場合の抵抗も小さく、蓄熱構造体の内部に大量の気体熱媒体を流動させることが可能となる。
通気性を備えるとともに、上記固体蓄熱物質を保持できれば、種々の熱伝導性多孔質体を採用できる。たとえば、銅、ニッケルやクロム合金等の金属多孔質体を採用できる。これら金属多孔質体は、固体蓄熱物質に比べて熱伝導率が高く、蓄熱構造体内部において熱移動が迅速に行われる。
上記金属多孔質体の形態及び製造手法も特に限定されることはない。たとえば、発泡により内部に連続気孔を形成した金属多孔質体を採用できる。また、特許第268600号公報に記載されているような、3次元網状構造を備える金属多孔質体の空隙部に固体蓄熱物質を保持させることにより、蓄熱構造体を形成することができる。
上記多孔質体として、70%以上の空隙率を備えるものを採用するのが好ましい。さらに、90%以上の空隙率を備えるものを採用するのがより好ましい。空隙率が大きくなるほど、上記多孔質体に保持させることができる固体蓄熱物質の量が増加し、蓄熱構造体の熱容量が大きくなる。また、気体熱媒体が通過する際の流動抵抗を小さくすることができる。
必要な通気性を確保できれば、上記熱伝導性多孔質体における上記固体蓄熱物質の保持量や保持形態も特に限定されることはない。たとえば、上記熱伝導性多孔質体の上記空隙の全表面に上記蓄熱物質を積層保持させて蓄熱構造体を構成することができる。この場合、多孔質体の全表面が蓄熱物質で覆われた構造を備えるため、熱容量の大きい蓄熱構造体を構成できる。
固体蓄熱物質を保持させた状態での蓄熱構造体の空隙率は、必要な熱容量、熱媒体の流動速度等によって設定することができる。空気を熱媒体として利用する場合、蓄熱構造体の空隙率を50%以下に設定するのが好ましい。これにより、熱容量及び通気性を確保しながら、放熱効果を実現することができる。一方、空隙率を5%以上に設定するのが好ましい。5%以下の場合、蓄熱構造体中に連続気孔を形成しにくく、蓄熱構造体中に熱媒体の通路を確保するのが困難になる。
上記固体蓄熱物質を、上記多孔質体の内部に均一に分散保持させることができる。また、多孔質体の所定の領域において蓄熱物質を保持させる一方、蓄熱物質を保持させない部分あるいは、保持量を小さく設定して空隙率を大きく設定した部分を設けて蓄熱構造体を構成できる。たとえば、請求項3に記載した発明のように、固体蓄熱物質を保持した蓄熱部と、上記気体熱媒体を流動させる熱交換部とを備えて上記蓄熱構造体を構成できる。この構成を採用することにより、蓄熱部に大量の熱を蓄熱できるとともに、熱伝導率の大きな上記多孔質体の空隙表面を利用して気体熱媒体と熱交換させることができる。
一体の多孔質体の所定の領域に蓄熱物質を充填する手法として、重力や遠心力を利用した手法を採用できる。なお、上記蓄熱部は、通気性がない程度に固体蓄熱物質を充填することもできるし、通気性を持たせて構成することもできる。また、所要の通気性を確保できれば、上記熱交換部に上記固体蓄熱物質を保持させることもできる。
上記固体蓄熱物質として、固体形状を保持したまま潜熱を蓄熱できる樹脂蓄熱物質を採用するのが好ましい。たとえば、三菱電線工業株式会社製の潜熱蓄熱構造体(登録商標MHSシリーズ)を採用することができる。
上記潜熱蓄熱構造体は、蓄熱温度32℃〜80℃の所定の温度において、蓄熱することが可能であり、固体のままで175〜180kJ/kgの潜熱量を有している。このため、少ないスペースに、大量の熱を蓄熱することが可能となる。
本願発明に係る暖機システムにおいては、加熱した気体熱媒体を暖機部材に直接吹きかけて作用させたり、請求項4に記載した発明のように、暖機対象部材に上記気体熱媒体との熱交換を行う暖機用の熱交換器を設けたりすることができる。たとえば、エンジンの吸気部や燃料噴射部に、上記蓄熱機において加熱した空気を供給し、これら部位を暖機して燃料の気化を促進させることができる。さらに、吸気ポートに上記加熱空気を供給して燃料混合気を調製することにより、燃焼室の温度が低い場合でも燃料を十分気化させることが可能となる。これにより、低温始動時における不完全燃焼や燃費の低下を防止することができる。また、不完全燃焼による有害物質の発生を低減させることも可能となる。
上記熱交換器の構成も特に限定されることはない。たとえば、暖機対象部材の周囲に加熱した気体熱媒体を流動させる配管を接合等して、上記配管を介して熱を伝導させることができる。また、請求項5に記載した発明のように、上記熱交換器を、上記気体熱媒体が流動させられる連続気孔を有する熱伝導性の多孔質熱交換部材を備えて構成することができる。
上記熱伝導性の多孔質熱交換部材として、上記蓄熱器の蓄熱構造体を構成する熱伝導性多孔質体を採用することができる。上記気体熱媒体を流動させる上記多孔質熱交換部材を暖機対象物に直接接合して熱交換器を構成できる。たとえば、トランスミッションケースの外壁に上記多孔質熱交換部材を接合して、上記気体熱媒体を通過させるように構成することができる。また、気体熱媒体が流動させられる上記多孔質熱交換部材の内部に、トランスミッションオイル等を流動させる配管を設けて、熱交換器を構成できる。
また、請求項6に記載した発明のように、上記熱交換器を、気体が流動させられる領域の表面に上記気体熱媒体との熱交換を行う凹凸加工を備えて構成することができる。また、請求項7に記載した発明のように、上記気体熱媒体との熱交換を行うフィンを備えて構成することもできる。なお、上記フィンを、上記暖機対象物に直接設けて熱交換器を構成することができる。また、上記フィンを、トランスミッションオイル等を循環させる配管等に設けて熱交換器を構成できる。
請求項8に記載した発明は、上記熱源として車両の駆動部を採用したものである。駆動部を熱源とする場合、上記駆動部を冷却する熱媒体を介して、上記蓄熱器に熱を蓄熱することができる。
たとえば、内燃機関を駆動源とする車両においては、エンジンやトランスミッション等の駆動部において生じた排熱を、冷却液を介してラジエータに移動させ、放熱させるように構成する場合が多い。このような構成の車両では、高温の冷却液を上記蓄熱器内に流動させることにより、駆動部の排熱を蓄熱することができる。
また、ハイブリッド自動車や電気自動車では、駆動部であるモータやパワーモジュールの排熱を、冷却液を介して蓄熱器内に流動させて蓄熱することができる。
請求項10に記載した発明は、上記暖機対象部材として、エンジン、トランスミンション、パワートレインを構成する部材及び/又はこれら部材に供給される潤滑油を採用したものである。これら部材を始動時に暖機することにより、フリクションを減少させ、摺動部等の摩耗を低減させることができるとともに、燃費の向上を期待できる。また、排気中の有害物質の減少を期待できる。
請求項11に記載した発明は、上記暖機対象部材として、バッテリー、燃料電池を構成する部材を採用したものである。電気自動車や燃料電池自動車において、これら部材を暖機することにより、エネルギ効率を向上させることができる。たとえば、電気自動車の電池ケースのまわりに、上記気体熱媒体を流動させることができる。
また、燃料電池車では、燃料電池のセルに供給する空気や燃料ガスを加熱することにより、 低温始動性(例えば、始動時のエネルギ発生効率)を向上させることができる。また、発生した水分が凝固するのを抑制するために上記気体熱媒体を用いることができる。
請求項12に記載した発明は、上記暖機対象部材として、室内空気、座席シート、窓ガラス、ウォシャータンク及びウォシャー液パイプを採用したものである。
寒冷地においては、これら部材が凍り付く場合がある。これら部材の暖機を行うことにより、短時間で安全に走行できる状態とすることが可能となる。たとえば、熱媒体として空気を採用し、上記蓄熱器からデフロスターに到る暖機回路を設けるとともに、始動時に窓ガラスや室内に加熱空気を吹き出すように構成することができる。また、停車時に座席内に加熱空気が循環する配管を設けることもできる。
請求項13に記載した発明は、気体熱媒体を介して車両各部の暖機を行う車両用暖機システムを構成する蓄熱器であって、熱伝導性構造体の空隙に固体蓄熱物質が保持されているとともに通気性を有する蓄熱構造体を備え、上記気体熱媒体は上記蓄熱構造体の内部を流動させられて熱交換を行うように構成したものである。
請求項14に記載した発明は、上記熱交換器を、連続気孔を有する熱伝導性多孔質体に上記固体蓄熱物質を保持させて構成された蓄熱構造体を備えたものである。
請求項15に記載した発明は、上記蓄熱構造体を、上記熱伝導性構造体に蓄熱物質を保持して構成される蓄熱部と、気体熱媒体を流動させる熱交換部とを備えて構成し、上記気体熱媒体を、上記熱交換部に流動させることにより熱交換を行うように構成したものである。
請求項16に記載した発明は、上記固体蓄熱物質として、固体形状を保持したまま潜熱を蓄熱できる蓄熱物質を採用したものである。
請求項17に記載した発明は、気体熱媒体を介して車両各部の暖機を行う車両用暖機システムを構成する暖機用熱交換器であって、気体熱媒体を流動させる連続気孔を設けた熱伝導性多孔質体を備えて構成したものである。請求項18に記載した発明は、気体熱媒体を介して車両各部の暖機を行う車両暖機システムを構成する暖機用熱交換器であって、暖機対象物に、直接又は取付部材を介して接合されているとともに、気体が流動させられる領域の表面に上記気体熱媒体との熱交換を行う凹凸部を備えて構成されたものである。また、請求項19に記載した発明は、気体熱媒体を介して車両各部の暖機を行う車両用暖機システムを構成する暖機用熱交換器であって、暖機対象物に、直接又は取付部材を介して接合されているとともに、上記気体熱媒体を熱交換を行うフィンを備えるものである。
連続気孔を有する熱伝導性構造体の空隙に固体蓄熱物質を保持されているとともに通気性を有する蓄熱構造体を採用し、この上記蓄熱構造体と熱交換させられる気体熱媒体を介して暖機を行うことにより、装置を小型化できる。また、短時間に大量の熱を取り出して、車両各部の暖機を行うことができる。
以下、本願発明の実施形態を図に基づいて具体的に説明する。
図1から図6に、第1の実施形態に係る暖機システムを示す。第1の実施形態は、本願発明を電気自動車に適用したものである。
図1に、システム構成の概略図を示す。本実施形態に係る車両は、駆動装置としてのモータ2及びパワーモジュール3を備える。上記パワーモジュール3は、たとえば、直流電流から3相交流電流へ変換するためのインバータと、直流電圧を昇圧させるコンバータとを含んで構成される。なお、上記モータ2の種類や上記パワーモジュール3の構成は、特に限定されることはない。
本実施形態に係る電気自動車は、上記モータ2及びパワーモジュール3を冷却するためのラジエータ4を備え、上記モータ2及びパワーモジュール3と上記ラジエータ4とを直列状につなぐようにして、冷却配管5が設けられている。ポンプ6によって、冷却液が上記冷却配管5内を循環させられることにより、上記モータ2及び上記パワーモジュール3で生じた排熱を、冷却液を介して上記ラジエータ4に移動させて放熱させるように構成されている。
本実施形態に係る暖機システム1では、上記モータ2とラジエータ4との間の冷却配管から、3方弁12,13を介して蓄熱器7内を貫通する蓄熱用のバイパス回路18を設け、上記モータ2及び上記パワーモジュール3で発生した排熱を、上記冷却液を介して上記蓄熱器7に蓄熱できるように構成している。
上記暖機システム1は、上記蓄熱器7と、上記モータ2に付属するトランスミッション10に設けられた熱交換器9と、気体熱媒体を流動させるファン11と、これら機器の間に気体熱媒体を循環させる暖機配管8とを備えて構成される。なお、必要に応じて、パワーモジュールを冷却するための第2の熱交換器を設けることができる。
作動している上記モータ2から排出される冷却液の温度は、約80℃であり、本実施形態では、上記冷却液の温度を利用して、上記蓄熱器7に熱を蓄熱する。モータ3から排出される冷却液を上記蓄熱器7に向かうように一方の3方弁12を操作するとともに、蓄熱器7から排出される冷却液をラジエータ4側に向かうように他方の3方弁13を操作することにより、上記蓄熱器7内に高温の冷却液が流動させられる。これにより、蓄熱行程が行われる。
本実施形態では、上記蓄熱器7に蓄熱された熱を、気体熱媒体を介して暖機対象部材に移動させて暖機を行う。上記気体熱媒体として、空気を採用することができる。また、チッソ等の不活性ガスを採用することもできる。
気体熱媒体を採用することにより、水等の液状熱媒体を採用する場合に比べて装置の重量を格段に低減させることができる。また、上記気体熱媒体が配管等から漏れ出た場合にも、液状熱媒体のように重大な事態が発生することはなく、配管等に高い気密性が要求されることはない。
また、気体熱媒体は、液状熱媒体に比べて流動抵抗が格段に小さい。このため、狭い流路を高い速度で通過させることができる。したがって、熱交換用のフィン等の密度を大きく設定することが可能となり、大きな熱交換面積を備える蓄熱器や熱交換器を構成できる。これにより、短時間に大量の熱を交換することが可能となる。
暖機運転を行わない時には、冷却液が上記モータ2からラジエータ4に流れるように、上記3方弁12,13を操作する。また、蓄熱器の両側に設けた弁14,15を閉じることにより、熱媒体の流動を停止させて、蓄熱器内を保温することができる。これにより、従来と同様にモータ2から排出された冷却液は、上記ラジエータ4に流入して上記冷却配管5を循環させられ、上記モータ2及びパワーモジュール3を冷却する。
図2に、第1の実施形態に係る上記蓄熱器7の軸断面図を示す。上記蓄熱器7は、断熱性を有する円筒状の蓄熱容器16内に蓄熱構造体17を充填するとともに、銅等の熱伝導率の高い金属材料から形成されたパイプ18aを貫通させて、入熱用のバイパス回路18を設けている。上記バイパス回路18には、上記冷却液が流動させられる。本実施形態では、上記パイプ18aを略U字状に曲折して形成することにより、図面下方から冷却液を蓄熱器7内に導入するとともに、下方に排出できるように構成している。これにより、上記ポンプ6で冷却配管5を循環流動させられる冷却液が上記蓄熱器内7に導入させられ、モータ2等で発生した排熱を蓄熱できるように構成している。
本実施形態における上記蓄熱構造体17は、連続気孔を備える熱伝導性の多孔質体19の空隙に、固体状の樹脂蓄熱物質を保持させて構成されている。
図4に、上記蓄熱構造体17を構成する熱伝導性多孔質体19の外観形態及び製造手法の一例を示す。本実施形態では、樹脂蓄熱物質20を、容器21内で融点以上に加熱して溶融させ、これに上記金属多孔質体19を浸漬する。これにより、溶融状態にある上記樹脂蓄熱物質20が、上記金属多孔質体19の空隙部に充填される。
上記金属多孔質体19は、通気性を有する3次元網状構造を備える。本実施形態では、空隙率が90%以上のニッケル金属多孔質体を採用している。
上記金属多孔質体19は、種々の手法を用いて製造されたものを採用することができる。たとえば、発泡させた多孔質樹脂支持体に、無電解メッキ、真空蒸着、スパッタリング等の方法で、カーボンや金属を被覆して導電性を付与する。この導電性を付与した多孔質樹脂支持体をメッキ浴中で給電ブスバーを兼ねた回転軸の周りに回転する陰極体の表面に密着させることにより、陽極から金属を上記多孔質体に電気メッキする。その後、上記多孔質樹脂支持体を除去することにより、図4に示すような、三角柱状の骨格が3次元に連なった連続気孔をもつ金属多孔質体19を得ることができる。
本実施形態に係る蓄熱物質20は、パラフィン、樹脂、その他添加材を含んで構成される固体状の樹脂蓄熱物質である。蓄熱温度は、約30〜80℃であり、約2.5kJ/kg・Kの比熱、0.21〜0.22W/mKの熱伝導率を有している。また、固体形状を保持したまま、175〜180kJ/kgの潜熱量を有している。また、融点は100℃以上である。たとえば、三菱電線工業に係る潜熱蓄熱構造体(登録商標MHSシリーズ)を採用することができる。
図5に、上記蓄熱構造体17の断面を模式的に示す。この図に示すように、金属多孔質体19の空隙22に樹脂蓄熱物質20が充填保持されている。
本実施形態では、金属多孔質体19の上記空隙内の表面に、上記樹脂蓄熱物質20が均等に積層されて保持されるとともに、蓄熱構造体17の全体が通気性を備えるように上記浸漬作業が行われる。本実施形態では、上記多孔質金属体19の空隙率が20%となるように、上記蓄熱樹脂20が充填される。
本実施形態に係る上記蓄熱構造体17は、一体的につながる3次元編目状の金属多孔質体19の空隙22に、樹脂蓄熱物質20を保持させた形態を備える。また、上記金属多孔質体19の熱伝導率は、上記樹脂蓄熱物質20より大きい。このため、上記蓄熱構造体17の内部では、主として上記金属多孔質体19を介して熱が移動させられ、上記蓄熱構造体17内部における熱移動の速度が速い。したがって、上記金属パイプ18aから入熱された熱を、上記蓄熱構造体17の全域に移動させて蓄熱することができる。したがって、上記蓄熱構造体17を採用することにより、短時間に大量の熱を上記パイプ18から蓄熱できる。
また、上記蓄熱構造体17は、上記金属多孔質体19の空隙表面に、通気性を確保した形態で上記樹脂蓄熱物質20が保持されている。このため、図5の矢印で示すように、連続した空隙22に、気体や液体を流動させることができる。したがって、上記蓄熱構造体17の内部に空気等の気体熱媒体を通過させることにより、上記樹脂蓄熱物質20や金属多孔質体19と、上記熱媒体との間で、直接熱交換を行わせることができる。
しかも、上記蓄熱構造体17の内部表面積は極めて大きい。したがって、上記空隙22内で熱媒体を流動させることにより、熱媒体と蓄熱構造体17とを非常に大きな熱交換面を介して熱交換させることが可能となる。これにより、上記空隙22を通過する気体熱媒体に短時間に大量の熱を移動させ、所定の暖機部材に移動させて暖機運転を行うことができる。特に、粘度の低い空気等の気体を熱媒体として利用することにより、上記蓄熱構造体17の内部を流動する抵抗も小さくなり、大量の熱媒体を蓄熱器内に導入することができる。
また、上記蓄熱構造体17の金属多孔質体19は、上記パイプ18aの外周に接合されている。これにより、冷却液から上記固体蓄熱物質20に熱を迅速に移動させて蓄熱を行うことができる。上記金属多孔質体19を上記パイプ18aに接合する方法は特に限定されることはなく、圧接の外、ロウ付けや溶接等を利用して接合することができる。
上記暖機対象部材である、トランスミッション10には、上記気体熱媒体から熱を受け取り、ATFを暖機するための熱交換器9が設けられている。
図6は、上記熱交換器9の一例を示す断面図である。上記熱交換器9は、断熱性の容器25内に、上記気体熱媒体が流動させられる連続気孔を有する熱伝導性の多孔質熱交換部材19aを充填して構成されている。上記多孔質熱交換部材19aとして、上記蓄熱構造体17を構成する熱伝導性多孔質体19を採用することができる。
上記容器25は、上記トランスミッション10のケーシング24に気密性をもって取り付けられる。また、上記容器25は、上記ケーシング24に向けて開口するように形成されているとともに、上記ケーシング24の外面と上記容器25内面との間に上記多孔質熱交換部材19aが充填されている。上記容器24には、蓄熱器7から排出される気体熱媒体を導入する導入口26と排出口27とが設けられており、上記導入口26から加熱された気体熱媒体が導入される。
上記多孔質熱交換部材19aを採用することにより、気体熱媒体から短時間で大量の熱を上記ケーシング24の外面に伝導させることが可能となる。このため、極めて効率よく、上記部材の暖機を行うことができる。熱交換性能を高めるため、上記多孔質熱交換部材19aを、上記ケーシング表面に溶接等によって接合するのが望ましい。また、上記ケーシングの表面に、熱伝導性を高めるためのフィン状の熱交換部を設けることもできる。なお、本実施形態では、多孔質熱交換部材19aを利用した熱交換器9を採用したが、ATFウォーマ等の従来の暖機用熱交換器を採用して、トランスミッション10の内部に充填された潤滑油を暖機するように構成することもできる。
上記構成の上記蓄熱器7と上記熱交換器9とを備える蓄熱システム1を採用することにより、車両始動時の暖機運転を促進することが可能となる。また、燃費の向上を期待できる。
図7及び図8に、第2の実施形態に係る蓄熱器107を示す。
蓄熱器107は、第1の実施形態と同様に、断熱性を有する円筒状の蓄熱容器116内に蓄熱構造体117を充填するとともに、銅等の熱伝導率の高い材料から形成された金属パイプ118aを、上記蓄熱容器116の軸方向に貫通させて構成されている。上記パイプ118aは、第1の実施形態と同様に、上述したバイパス回路118を構成し、冷却管路に3方弁を介して接続される。
本実施形態における上記蓄熱構造体117は、連続気孔を備える熱伝導性の多孔質体の空隙に、固体状の樹脂蓄熱物質を充填して形成された蓄熱部127と、これら蓄熱部127を保持する板状の熱伝導部材106と、気体熱媒体が流れる熱交換部111とを備えて構成される。なお、上記蓄熱構造体117の製造手法は、第1の実施形態と同様であるので説明は省略する。
また、上記熱伝導部材106は、図8に示すように、上記パイプ118aの外周部の母線に沿って放射状に延びるように複数設けられている。また、上記熱伝導部材106は、上記蓄熱容器116の内周壁まで延出させられており、上記パイプ118aの外周部と上記蓄熱容器116の内周壁との間に形成された円筒状の空間を、8つの領域に区画している。上記熱伝導部材106は、銅等の高い熱伝導率を備える材料から形成されている。
上記熱伝導部材106によって区画された8の領域のうち、一つおきに形成された領域に、上記樹脂蓄熱物質を充填した多孔質体が充填されて蓄熱部127が形成されている。上記蓄熱容器116の左右の軸方向壁には、気体熱媒体を導入する導入口122と排出口123とがそれぞれ設けられている。上記樹脂蓄熱物質を充填した多孔質体が充填されていない領域は、気体熱媒体が流れる熱交換部111としている。上記熱交換部に、上記導入口122を介して、気体熱媒体が導入されるとともに、上記排出口123から加熱された気体熱媒体が排出される。
上記蓄熱構造体117と上記蓄熱容器116の軸方向壁の間には、上記各熱交換部111に連通する通気用の隙間112及び113が設けられており、上記導入口122から導入された気体熱媒体は、導入口側の隙間112を介して、上記4つの熱交換部111に分かれて軸方向に流動させられる。また、上記排出口側の隙間113を介して熱交換を終えた気体熱媒体が集合させられ、上記排出口123から暖機配管8へ排出される。
上記蓄熱部127と上記熱交換部111には、上記熱伝導部材106から延出するフィン状の熱交換部材114,115がそれぞれ延出形成されている。上記熱交換部材114,115も、上記熱伝導部材106と同様に、銅、アルミ、アルミ合金等の高い熱伝導率を備える板状部材から形成されている。
上記構成の蓄熱器107においては、上記パイプ118内を流動する冷却液から上記パイプ118aの周壁を介して、モータからの排熱が蓄熱器107内に入熱される。上記パイプ118aの周壁において交換された熱は、上記熱伝導部材106を介して、上記蓄熱容器116の内部を半径方向外方に移動させられる。上記熱伝導部材106は、中間部に樹脂蓄熱物質を充填した多孔質体が充填されているため、上記熱伝導部材106の壁部及び上記多孔質体を介して上記樹脂蓄熱物質に熱が蓄熱される。さらに、本実施形態では、熱伝導部材106から上記樹脂蓄熱物質を充填した多孔質体の内部に入り混む熱交換部材114が延出形成されている。したがって、上記熱伝導部材106及び上記パイプ118aから離れた部材に充填された上記蓄熱物質にも効率よく熱を移動させて蓄熱させることができる。
また、上記構成を採用することにより、上記パイプ118aから入った熱が、上記蓄熱構造体117の内部まで迅速に移動させられる。このため、短時間に大量の熱を、上記蓄熱構造体117に蓄熱することが可能となる。
上記熱交換部111にも、上記熱伝導部材106の表面から、フィン状の熱交換部材115が延出させられている。本実施形態に係る上記熱交換部材115は、気体熱媒体の流れに沿うように配置されている。なお、熱交換部材を気体熱媒体の流れを一部阻害するように配置することより、気体熱媒体と熱交換部材115との接触量を増加させて、熱交換量を増大させることもできる。
上記蓄熱部側の熱交換部材114と上記熱伝導部材106と上記熱交換部側の熱交換部材115は、熱伝導性の高い金属で形成されているため、上記蓄熱物質から上記熱交換部111まで、蓄積した熱を迅速に移動させることができる。したがって、第1の実施形態と同様に、上記熱交換部111において、気体熱媒体に大量の熱を短時間で放熱することができる。
図9に、第3の実施形態に係る蓄熱器207を示す。
この実施形態においては、第1の実施形態と同様の金属多孔質体219に、樹脂蓄熱物質220を保持させた蓄熱部217aと、樹脂蓄熱物質220を保持させない通気部217bとを設けて蓄熱構造体217を構成し、これを断熱性のある容器216内に収容して蓄熱器207を構成している。上記蓄熱部217aは、金属多孔質体219の空隙部の全体に蓄熱樹脂220を充填して構成されており、通気性を有していない。一方、上記通気部217bは、上記樹脂蓄熱物質220が充填されていないため、高い通気性能を備える。上記蓄熱部217a及び上記通気部217bは、第1の実施形態に係る図4において、樹脂蓄熱物質220を溶融保持した容器21に、金属多孔質体219を所定の深さまで浸漬することにより、容易に製作することができる。
上記蓄熱器207の一方の軸方向壁に気体熱媒体を導入する導入口222が設けられるとともに、他方の軸方向壁に空気排出口223が設けられている。上記空気導入口222から、蓄熱器207内に気体熱媒体を導入すると、上記通気部217b内を流動して熱交換が行われる。
上記通気部217bは、樹脂蓄熱物質が充填されていないため通気性が高い。したがって、空気の流動抵抗が少なく、大量の空気を流動させることができる。
一方、上記蓄熱部217aは、金属多孔質体219の空隙部に大量の樹脂蓄熱物質220を保持させている。このため、通気性はないものの熱容量を大きく設定することができる。上記蓄熱部217aと、上記通気部217bとは、熱伝導率の高い金属多孔質体219を介して一体的に形成されている。このため、上記蓄熱部217aから上記通気部217bに、上記金属多孔質体219を介して、熱が迅速に移動させられる。したがって、上記通気部217bを流動する気体熱媒体に、効率よく熱を移動させることができる。
上記蓄熱部217aと上記通気部217bの形態は、上記実施形態に限定されることはない。本実施形態では、重力を利用して、上記蓄熱部217aと上記通気部217bとを設けたが、遠心力等を利用することにより、金属多孔質体219の所望部材に蓄熱樹脂を充填して蓄熱部を形成することができる。
さらに、本実施形態では、上記蓄熱部217aを貫通するように、上述したバイパス回路218を構成するパイプ218aを設けるとともに、上記蓄熱部217aに埋め込み状に熱伝導部材212を設けている。
上記熱伝導部材212は、銅等の熱伝導性の高い金属板から形成されている。また、複数の上記熱伝導部材212が、上記パイプ218の軸方向に略平行に配列されるとともに、上記パイプ218aの外周部に接合されている。
上記構成を採用することにより、上記パイプ218a内を流れる入熱側の冷却液から、上記パイプ218aを介して上記熱伝導部材212に熱が入熱される。上記熱伝導部材212には、上記金属多孔質体219が接合されている。このため、上記蓄熱部217aの隅々に迅速に熱を移動させることができるとともに、上記金属多孔質体219に保持された樹脂蓄熱物質220に迅速に蓄熱することができる。したがって、蓄熱効率を大幅に高めることができる。
一方、上記通気部217bも、熱伝導性及び通気性の高い金属多孔質体から形成されているため、気体熱媒体に大量の熱を短時間で移動させることができる。
図10に、第4の実施形態に係る熱交換器309を示す。
本実施形態に係る熱交換器309は、図6に示す実施形態と同様に、断熱性の容器325内に、気体熱媒体が流動させられる連続気孔を有する熱伝導性の多孔質熱交換部材319aが充填されている。上記容器325の左右壁部には、気体熱媒体を導入する導入口326と排出口327とが設けられており、蓄熱器から排出された気体熱媒体が上記多孔質熱交換部材319aの空隙321内を流動させられて、熱交換を行えるように構成されている。
一方、上記容器325には、トランスミッションオイル等の潤滑剤が流動させられる略U字状のパイプ328が貫通して配置されている。上記多孔質熱交換部材319aは、上記容器325内で上記パイプ328の外周部を取り囲むように接合されている。上記容器325は、トランスミッション等の外壁324に取り付けられるとともに、上記外壁の内部から上記パイプ328を介して潤滑油が上記熱交換器内に流動させられる。
上記構成を採用することにより、気体熱媒体から上記多孔質熱交換部材321aへ短時間に大量の熱を移動させるとともに、この熱を上記パイプ328の外周部に作用させることができる。したがって、上記パイプ328内を流れる潤滑油等を短時間に昇温させることができる。
図11に、第5の実施形態に係る熱交換器409を示す。本実施形態は、電気自動車等の駆動用電池402を暖機するものである。
上記熱交換器409は、電池402を所定の隙間419をあけて収容できるケース425を備えて構成される。電池402は、電極420を上記ケース425の外側へ引き出した状態で上記ケース425に保持されている。
上記ケース425には、気体熱媒体を導入する導入口426及び排出口427が設けられており、気体熱媒体が上記隙間419を介して上記電池402の外周部に沿って流動させられる。
上記構成の熱交換器419を採用することにより、電気自動車等の電池を暖機することが可能となり、電池のエネルギ効率を高めることができる。
図12に、第6の実施形態に係る暖機システムの概略図を示す。この実施形態は、内燃機関を駆動源とする車両のトランスミッション及びエンジンを暖機するシステムに本願発明を適用したものである。
本実施形態は、駆動装置としてのエンジン502と、エンジンによって駆動させられるトラスミッション524と、ラジエータ503と、上記エンジン502と上記ラジエータ503との間で冷却用熱媒体を流動させる高温側冷却管路504及び低温側冷却管路505から構成される駆動部冷却配管506とを備える自動車に、本願発明に係る暖機システム501を適用したものである。
上記駆動部冷却配管506では、エンジン502を冷却した熱媒体が、上記高温側冷却管路504を介して上記ラジエータ503に送られる。ラジエータ503では、水や外気を利用して熱媒体から熱を放熱させる。そして、放熱されて温度が下がった熱媒体が、上記低温側冷却管路505を介して上記エンジン502に戻される。上記熱媒体として不凍液(LLC)が用いられている。上記熱媒体は、上記低温側冷却管路505中に設けられた循環ポンプP1よって、エンジン稼働中に上記冷却回路内を循環流動させられて、エンジン502の過熱を防止している。
本実施形態に係る暖機システム501では、上記高温側冷却管路504を流れる熱媒体から蓄熱する蓄熱器507を設け、この蓄熱器507に蓄熱された熱を利用して暖機が行われる。上記蓄熱器507を設けるために、上記高温側冷却管路504の中間部から分岐して延出するとともに、蓄熱器507に接続される蓄熱器入熱管路508と、上記蓄熱器507から延出して上記低温側冷却管路505に接続される蓄熱器戻り管路509とを有する蓄熱配管510が設けられる。
エンジン502の稼働中に、上記高温側冷却管路504を流れる熱媒体の温度は110℃〜120℃であり、上記低温側冷却流路では90℃〜80℃まで温度が低下する。本実施形態では、上記エンジン冷却用の熱媒体を利用して、上記蓄熱器507に熱を蓄熱する。
上記蓄熱回路510に上記熱媒体を導入するため、上記高温側冷却管路504から上記蓄熱器入熱流路508が分岐する分岐点に、第1の3方弁Aが設けられている。上記3方弁Aは、熱媒体の流路を、上記ラジエータ503側と上記蓄熱器507側に向けて切り替えることができるとともに、高温側冷却管路504を閉止できるように構成されている。
一方、上記蓄熱器戻り管路509には、上記蓄熱器507で放熱させられた熱媒体を上記低温側冷却管路505に戻すための第2の3方弁Bが設けられる。本実施形態では、上記第2の3方弁Bは、上記蓄熱器戻り管路509の中間部に設けられているとともに、エンジン暖機用の暖機管路511と上記低温側冷却管路505とに流路を切り替えることができるように構成されている。また、上記第2の3方弁Bは、蓄熱回路510を閉止することもできるように構成されている。
上記高温側冷却管路504と上記蓄熱器入熱管路508とを連通させるように上記第1の3方弁Aを制御するとともに、上記蓄熱戻り管路509を上記低温側冷却管路505に連通させるように上記第2の弁Bを制御することにより、上記高温側冷却管路504から上記蓄熱回路510に第1の熱媒体を導入して蓄熱行程を行うことができる。また、上記蓄熱器入熱管路508と上記蓄熱戻り管路509を閉止することにより、上記蓄熱器507を上記冷却回路506から切り離すことができるように構成している。
本実施形態においては、エンジン502によって駆動させられるトランスミッション524の暖機を行うシステムに、本願発明を適用したものである。なお、本実施形態に係る蓄熱器507は、上述した実施形態と同様の構成を備え、上記冷却用の熱媒体と、気体熱媒体との間で熱交換を行えるように構成されている。
暖機行程を行うために、トランスミッション524にATFウォーマ529が取り付けられている。上記ATFウォーマ529は、上記トランスミッション524内の潤滑油を循環させて暖機する一種の熱交換器であり、既知の構成のものを採用することができる。
上記蓄熱器507において加熱された気体熱媒体を上記蓄熱器507から上記ATFウォーマ529に送る暖機入熱管路512と、上記ATFウォーマ529において放熱させた上記気体熱媒体を上記蓄熱器507に戻す暖機戻り管路513とを有する暖機配管514が設けられている。本実施形態では、上記気体熱媒体として空気が用いられており、上記暖機戻り管路513内に循環ファンFが設けられている。また、上記蓄熱機507の両側に、暖機管路514を閉止して蓄熱機内の熱が流出しないようにする弁D、Eがそれぞれ設けられている。
さらに、本実施形態では、上記蓄熱器507を利用して上記エンジン502の暖機運転を行うようにも構成されている。エンジン502の上記暖機運転を行うために、上記第2の弁Bから延出してエンジン502の近傍の上記低温側冷却管路505に接続されたエンジン暖機管路511が設けられている。上記エンジン暖機管路511は、上記蓄熱器507で加熱されたれ熱媒体を流動させるために設けられたものであり、断熱処理が施されている。
また、本実施形態では、上記高温側冷却管路504における上記第1の弁Aの上流側と、上記低温側冷却管路505とをつなぐバイパス回路517を設けている。上記バイパス回路517と上記低温側冷却管路505の接続部には、第3の弁Cが設けられている。上記弁Cには、サーモスタット付の3方弁が採用されている。エンジン暖機運転時に、上記第3の弁Cと上記第1の弁Aによって、上記高温側冷却管路504を閉止するとともに、上記低温側冷却管路505と上記バイパス回路517を連通させることにより、上記バイパス回路517を介して上記冷却用の熱媒体が循環するように構成している。
上記3方弁Cは、上記バイパスを流れる媒体の温度によって弁の開度を変更するように構成されており、バイパス回路517を流れる熱媒体の温度が所定以上に達すると、上記バイパス回路517を閉じるように構成されている。
本実施形態では、上記各弁A,B,D,E,ポンプP1,ファンF、温度計測装置T1,T2,T3を、図示しない蓄熱器コントロールユニットを用いて制御するように構成している。
始動時に、トランスミッション524の暖機を行うには、上記弁D及び弁Eを開くとともに、ファンFを作動させて、暖機回路内に空気を流動させる。また、エンジン502の暖機を行う場合には、上記弁Aを熱媒体が蓄熱器507に流れるように制御するとともに、上記弁Bを熱媒体がエンジン暖機管路511に流れるように制御する。なお、上記トランスミッション524の暖機と上記エンジン502の暖機とを同時に行うこともできるし、必要に応じて一方のみを行うこともできる。たとえば、ハイブリッド車両では、モータで走行している場合には、エンジンが停止されることが多い。このため、走行時等において、冷却用の熱媒体の温度が低下した場合等に、エンジンのみ暖機するように構成することが可能となる。
上記構成を採用することにより、エンジンとトランスミッションとを同時に、あるいは一方のみ暖機できるシステムを構成できる。しかも、本実施形態では、トランスミッション用の暖機システム501の熱媒体に空気を採用しているため、暖機システムの重量増加を最低限に押さえることができる。また、空気を採用しているため、配管等を容易に設置することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
蓄熱器を利用して駆動部等の暖機を行うことにより、フリクションを低減させて燃費を向上させることができる。
1 暖機システム
2 モータ(熱源、暖機対象部材)
3 パワーモジュール(熱源、暖機対象部材)
7 蓄熱器
2 モータ(熱源、暖機対象部材)
3 パワーモジュール(熱源、暖機対象部材)
7 蓄熱器
Claims (19)
- 蓄熱器を備えて構成される車両用暖機システムであって、
車両内の熱源で発生した熱を上記蓄熱器に蓄積する蓄熱行程と、
上記蓄熱器に蓄積した熱を、気体熱媒体を介して暖機対象部材に移動させて暖機を行う暖機行程とを含み、
上記蓄熱器は、熱伝導性構造体の空隙に固体蓄熱物質が保持されているとともに通気性を有する蓄熱構造体を備え、
上記気体熱媒体は上記蓄熱構造体の内部を流動させられて熱交換を行うように構成されている、車両用暖機システム。 - 連続気孔を有する熱伝導性多孔質体に上記固体蓄熱物質を保持させて構成された蓄熱構造体を備える、請求項1に記載の車両用暖機システム。
- 上記蓄熱構造体は、固体蓄熱物質を保持した蓄熱部と、上記気体熱媒体を流動させる熱交換部とを備え、
上記気体熱媒体を、上記熱交換部に流動させることにより熱交換が行われる、請求項1又は請求項2のいずれかに記載の車両用暖機システム。 - 上記暖機対象部材に、上記気体熱媒体との熱交換を行う熱交換器を設けた、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載した車両用暖機システム。
- 上記熱交換器は、上記気体熱媒体が流動させられる連続気孔を有する熱伝導性の多孔質熱交換部材を備えて構成される、請求項4に記載の車両用暖機システム。
- 上記熱交換器は、気体が流動させられる領域の表面に上記気体熱媒体との熱交換を行う凹凸部を備えて構成される、請求項4又は請求項5のいずれか1項に記載の車両用暖機システム。
- 上記熱交換器は、上記気体熱媒体との熱交換を行うフィンを備えて構成される、請求項4又は請求項5のいずれか1項に記載の車両用暖機システム。
- 上記熱源が車両の駆動部であり、上記駆動部を冷却する熱媒体を介して、上記蓄熱器に熱が蓄熱される、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の車両用暖機システム。
- 上記熱源が電気ヒータであり、上記電気ヒータで上記蓄熱構造体を直接加熱し、又は熱媒体を介して加熱することにより蓄熱を行う、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の車両用暖機システム。
- 上記暖機対象部材が、エンジン、トランスミンション、パワートレインを構成する部材及び/又はこれら部材に供給される潤滑油である、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の車両用暖機システム。
- 上記暖機対象部材が、バッテリー、燃料電池を構成する部材である、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の車両用暖機システム。
- 上記暖機対象部材が、室内空気、座席シート、窓ガラス、ウォシャータンク及びウォシャー液パイプである、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の車両用暖機システム。
- 気体熱媒体を介して車両各部の暖機を行う車両用暖機システムを構成する蓄熱器であって、
熱伝導性構造体の空隙に固体蓄熱物質が保持されているとともに通気性を有する蓄熱構造体を備え、
上記気体熱媒体は上記蓄熱構造体の内部を流動させられて熱交換を行うように構成されている、蓄熱器。 - 連続気孔を有する熱伝導性多孔質体に上記固体蓄熱物質を保持させて構成された蓄熱構造体を備える、請求項13に記載の蓄熱器。
- 上記蓄熱構造体は、上記熱伝導性構造体に蓄熱物質を保持して構成される蓄熱部と、気体熱媒体を流動させる熱交換部とを備え、
上記気体熱媒体を、上記熱交換部に流動させることにより熱交換を行うように構成されている、請求項13又は請求項14のいずれか1項に記載の車両暖機用蓄熱器。 - 上記固体蓄熱物質は、固体形状を保持したまま潜熱を蓄熱できる蓄熱物質である、請求項13から請求項15のいずれか1項に記載の蓄熱器。
- 気体熱媒体を介して車両各部の暖機を行う車両暖機システムを構成する暖機用熱交換器であって、
気体熱媒体を流動させる連続気孔を設けた熱伝導性多孔質体を備える、暖機用熱交換器。 - 気体熱媒体を介して車両各部の暖機を行う車両暖機システムを構成する暖機用熱交換器であって、
暖機対象物に、直接又は取付部材を介して接合されているとともに、
気体が流動させられる領域の表面に上記気体熱媒体との熱交換を行う凹凸部を備えて構成される、暖機用熱交換器。 - 気体熱媒体を介して車両各部の暖機を行う車両暖機システムを構成する暖機用熱交換器であって、
暖機対象物に、直接又は取付部材を介して接合されているとともに、上記気体熱媒体と熱交換を行うフィンを備える、暖機用熱交換器。
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