JP2010151419A - 蓄熱材、蓄熱器及び蓄熱器における熱交換方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】蓄熱材内部の熱移動がスムーズであり、また、蓄熱材と熱媒体との熱交換を効率よく行うことができる蓄熱材及びこの蓄熱材を用いた蓄熱器を提供する。
【解決手段】蓄熱材3は、連続気孔を有する熱伝導性多孔質体1の空隙4の一部に、固体蓄熱物質2が保持されており、上記蓄熱材の内部に熱媒体を流動させることにより、熱媒体との間における高い熱交換効率を得ることができる。上記固体蓄熱物質に比べて熱伝導性多孔質体の熱伝導率は高く、一体的につながっているため、固体蓄熱物質だけの場合に比べて蓄熱材の熱伝導率が格段に大きくなる。
【選択図】図2
【解決手段】蓄熱材3は、連続気孔を有する熱伝導性多孔質体1の空隙4の一部に、固体蓄熱物質2が保持されており、上記蓄熱材の内部に熱媒体を流動させることにより、熱媒体との間における高い熱交換効率を得ることができる。上記固体蓄熱物質に比べて熱伝導性多孔質体の熱伝導率は高く、一体的につながっているため、固体蓄熱物質だけの場合に比べて蓄熱材の熱伝導率が格段に大きくなる。
【選択図】図2
Description
本願発明は、蓄熱材及びこれを用いた蓄熱器に関する。詳しくは、蓄熱容量が大きいとともに、熱媒体との熱交換効率が高く、また、空気等の熱媒体を蓄熱材に直接作用させることのできる蓄熱材及び蓄熱器に関する。
自動車の車室の暖房を行うために、ヒートポンプ式の空調装置が用いられることが多い。一般的な車両用のヒートポンプ式空調装置は、エンジンの回転を取り出してコンプレッサを作動させ、外気から室内へ熱を移動させるように構成されている。このため、エンジンの燃費が低下するといった問題が生じる。また、エンジンが作動していなければ空調装置を利用することはできない。
また、電気自動車に上記従来の空調装置を適用する場合、コンプレッサを作動させるための電力も必要となり、消費電力が大きくなる。このため、バッテリーの消耗が早まるといった問題が生じる。
上記問題を緩和するため、エンジンやモータ等で発生した排熱を蓄熱器に蓄熱して空調に利用するシステムが提案されている。
上記特許文献1には、蓄熱を利用して車両内の空調を行う車両用蓄熱空調装置が開示されている。上記特許文献1に記載されている車両用蓄熱空調装置では、熱媒体が流動するパイプを、蓄熱材を充填した蓄熱容器内に配置して蓄熱器を構成し、エンジン等の駆動源を含む入熱回路から上記蓄熱器に熱を蓄積するように構成している。一方、車室内に設けた空調装置を含む放熱回路を介して上記蓄熱器に蓄積した熱を車室内に移動して放熱させ、室内の暖房を行うように構成している。
上記特許文献1に記載されている蓄熱空調装置では、蓄熱材として水が用いられている。しかしながら、水の比熱は小さく、また、充分な熱量を得るには、大量の水を保持させた蓄熱器を採用しなければならない。このため、蓄熱器が大型化するとともに、重量も増大するという問題が発生する。また、水の比熱を利用して蓄熱するものであるため、熱容量が小さく、また、放熱するにしたがって、蓄熱材の温度が変化する。このため、安定した温度で空調を行うのは困難である。
上記不都合を解決するこめ、特許文献2に記載されているような樹脂製の蓄熱物質及びこの蓄熱物質を用いた蓄熱器が提供されている。
従来の蓄熱器は、液体あるいは固体の蓄熱材を充填した蓄熱容器内にパイプを通し、このパイプの周壁を介して熱媒体と蓄熱材との熱交換を行うように構成されている。
ところが、上記パイプの周壁を介して熱交換を行う場合、蓄熱材と上記パイプとの接触面積が限られる。このため、蓄熱器から短時間に大きな熱量を取り出し、あるいは蓄熱材に入熱することは困難である。また、蓄熱材と上記パイプとの接触面積を大きくするには、蓄熱器内に長い配管を設ける必要があり、蓄熱器が大型化するといった問題が生じる。
上述したような固体状態の樹脂蓄熱材は比熱が水より大きい。このため、水を利用した蓄熱材より大量の熱を蓄熱することができる。しかしながら、上記パイプを介して蓄熱あるいは放熱させる場合、上記従来と同様の問題が生じる。また、固体の蓄熱材を採用した場合、水等の液体蓄熱材のような対流現象は生じず、蓄熱材内部を熱伝導によって熱が移動する。したがって、蓄熱材内部での熱移動がスムーズに行われず、蓄熱材各部の温度差が大きくなる。したがって、熱媒体との熱交換効率も悪くなる。
また、自動車エンジン等の暖機運転を行うことにより燃費を向上させることができる。ところが、暖機運転を行うには、短時間に大量の熱をエンジン等に投入する必要がある。上記従来の蓄熱材及び蓄熱器は、熱容量が小さく、また、短時間に大量の熱を取り出すのは困難である。このため、従来の蓄熱材を用いて暖機運転を行うことは困難であった。
本願発明は、上記問題を解決し、蓄熱容量が大きく、蓄熱材内部の熱移動がスムーズであり、また、蓄熱材と熱媒体との熱交換を効率よく行うことができるとともに、大量の熱を短時間で入熱あるいは放熱させることができる蓄熱材及びこの蓄熱材を用いた蓄熱器を提供することを課題としている。
請求項1に記載した発明は、連続気孔を有する熱伝導性多孔質体の空隙の一部に、固体蓄熱物質を保持して蓄熱材を構成したものである。
本願発明に係る蓄熱材においては、連続気孔を有する熱伝導性多孔質体の空隙に固体蓄熱物質を保持させている。上記蓄熱物質に比べて上記多孔質体の熱伝導率は高い。しかも、上記多孔質体は、一体的につながっているため、蓄熱物質だけの場合に比べて蓄熱材の熱伝導率が格段に大きくなる。したがって、入熱時や放熱時において、蓄熱材内部での熱移動が従来に比べて格段に速くなり、蓄熱材各部の温度差も小さくなる。また、短時間に大量の熱を蓄熱し、かつ放熱することが可能となる。
また、本願発明では、連続気孔を有する上記多孔質体の空隙の一部に固体蓄熱物質を保持させることにより、蓄熱材自体に通気性を付与している。すなわち、本願発明に係る蓄熱材自体が、連続気孔を有する多孔質体を構成している。この構成によって、蓄熱材の内部に、流体状の熱媒体を流動させて、上記蓄熱材と上記熱媒体との間で直接熱交換させることが可能となる。
これにより、熱媒体と蓄熱材とを、非常に大きな熱交換面を介して熱交換させることが可能となり、短時間に大量の熱を交換することが可能となる。特に、粘度の低い空気等の気体を熱媒体として利用すると、上記蓄熱材間を通過する抵抗も小さくなり、大量の空気等と熱交換をすることも可能となる。
また、蓄熱器から短時間に大量の熱を取り出すことができるため、本願発明に係る蓄熱材を自動車に適用する場合、空調用途のみならず、自動車の種々の部位における暖機運転に利用することも可能となる。
通気性を備えるとともに上記固体蓄熱物質を保持できれば、種々の熱伝導性多孔質体を採用できる。たとえば、請求項5に記載した発明のように、銅、ニッケルやニッケルクロム合金等の金属多孔質体を採用できる。これら金属多孔質体は、固体蓄熱物質に比べて熱伝導率が高く、蓄熱材内部での熱移動が迅速に行われる。
上記金属多孔質体の形態及び製造手法も特に限定されることはない。たとえば、発泡により内部に連続気孔を形成した金属多孔質体を採用できる。また、特許第2628600号公報に記載されているような、3次元編状構造を備える金属多孔質体の空隙部に固体蓄熱物質を保持させることにより蓄熱材を形成することができる。
上記多孔質体として、70%以上の空隙率を備えるものを採用するのが好ましい。さらに、90%以上の空隙率を備えるものを採用するのがより好ましい。空隙率が大きくなるほど、上記多孔質体に保持させることができる固体蓄熱物質の量が増加し、蓄熱材の熱容量が大きくなる。また、熱媒体が通過する際の流動抵抗を小さくすることができる。
必要な通気性を確保できれば、上記多孔質体における上記固体蓄熱物質の保持量や保持形態も特に限定されることはない。たとえば、請求項3に記載した発明のように、上記熱伝導性多孔質体の上記空隙の全表面に上記蓄熱物質を積層保持させて蓄熱材を構成することができる。この場合、多孔質体の全表面が蓄熱物質で覆われた構造を備えるため、熱容量の大きい蓄熱材を構成できる。
固体蓄熱物質を保持させた状態での蓄熱材の空隙率は、必要な熱容量、作用させる熱媒体等によって設定することができる。たとえば、空気を熱媒体として利用する場合、蓄熱材の空隙率を50%以下に設定するのが好ましい。これにより、熱容量及び通気性を確保しながら、放熱効果を実現することができる。一方、空隙率を5%以上に設定するのが好ましい。5%以下の場合、蓄熱材中に連続気孔を形成しにくく、蓄熱材中に熱媒体の通路を確保するのが困難になる。
上記固体蓄熱物質を、上記多孔質体の内部に均一に分散保持させることもできるし、多孔質体の所定の領域において蓄熱物質を保持させる一方、蓄熱物質を保持させない部分あるいは、保持量を小さく設定して空隙率を大きく設定した部分を設けることができる。たとえば、請求項4に記載した発明のように、上記熱伝導性多孔質体に上記蓄熱物質を保持して構成される蓄熱部と、上記蓄熱物質を保持させない通気部とを備えて構成することができる。この構成を採用することにより、蓄熱部に大量の熱を蓄熱できるとともに、通気部に熱媒体を通過させて、熱伝導率の大きな上記多孔質体の空隙表面を利用して熱媒体と熱交換させることができる。
一体の多孔質体の所定の領域に蓄熱物質を充填する手法として、重力や遠心力を利用した手法を採用できる。なお、上記蓄熱部は、通気性がない程度に固体蓄熱物質を充填することもできるし、通気性を持たせて構成することもできる。また、所要の通気性を確保できれば、通気部に上記固体蓄熱材料を保持させることもできる。
請求項2に記載した発明のように、上記蓄熱物質として、固体形状を保持したまま潜熱を蓄熱できる樹脂蓄熱物質を採用するのが好ましい。たとえば、三菱電線工業株式会社製の潜熱蓄熱材(登録商標MHSシリーズ)を採用することができる。
上記潜熱蓄熱材は、蓄熱温度32℃〜80℃の所定の温度において、蓄熱することが可能であり、固体のままで175〜180kJ/kgの潜熱量を有している。このため、少ないスペースに、大量の熱を蓄熱することが可能となる。
請求項6に記載した発明は、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の蓄熱材を備えるとともに、熱媒体を上記蓄熱材の空隙に通過させて熱交換するように構成された蓄熱器に関するものである。
本願発明に係る蓄熱器においては、同一の回路から入熱及び放熱を行うように構成することもできるし、入熱側回路と放熱側回路とを別途設定することもできる。入熱側回路と放熱側回路とを別途に設ける場合には、一方の回路を流れる熱媒体を、上記蓄熱材内部に流動させるように構成するとともに、他方の回路を流れる熱媒体を、パイプ等を介して蓄熱材との間で熱交換させるように構成することができる。さらに、蓄熱材内部に通気性のない仕切壁を設けることにより、一体の蓄熱材内部を、異なる回路を流れる熱媒体を流動させるように構成することもできる。
請求項7に記載した発明のように、上記蓄熱器内に他の熱媒体を通すパイプを設け、上記パイプの外周面に上記多孔質体を接合することができる。上記多孔質体は、上記固体蓄熱物質より大きな熱伝導率を有している。また、上記多孔質体の空隙内に固体蓄熱物質が保持されている。したがって、この多孔質体をパイプの外周部に接合することにより、パイプ外周部と上記蓄熱物質の間の熱移動を円滑に行うことが可能となり、蓄熱材の隅々の部分と迅速な熱交換が可能となる。これにより、上記蓄熱材の空隙を通過する熱媒体と、上記パイプ内を流れる他の熱媒体との間で、短時間に大量の熱を交換させることができる。なお、上記パイプを設置する形態は特に限定されることはない。蓄熱容器の一方の壁部から他方の壁部へ貫通するように設けることもできるし、一方の壁部から蓄熱器内部へ入るとともに同じ壁部から延出するように貫通させることもできる。
上記多孔質体を上記パイプの外周に接合する手法は特に限定されることはない。たとえば、圧着やロウ付け等によって上記パイプの外周に上記多孔質体を接合することができる。
さらに、請求項8に記載したように、上記蓄熱材の内部に、上記パイプの外周部に接合された熱伝導部材を設けることができる。上記熱伝導部材として、アルミや銅の熱伝導率の高い材料から形成されたフィン状の金属を採用するのが好ましい。上記熱伝導部材は、蓄熱材に埋め込むように配置するのが好ましい。上記多孔質体と上記熱伝導部材とを接合することにより、蓄熱物質から上記多孔質体へ熱が移動させられるとともに、上記多孔質体から上記熱伝導部材に熱が移動させられ、この熱伝導部材から上記パイプに熱が移動させられる。このため、蓄熱材との熱交換効率をさらに向上させることができる。
請求項9に記載した発明は、蓄熱容器内に収容された上記蓄熱材の内部において、空隙内を流れる熱媒体を所定の経路に沿って流動させる規制手段を設けたものである。
たとえば、蓄熱材を収容する蓄熱容器内に、通気性のない板状部材を配置することにより、上記蓄熱材の内部を流動する熱媒体の流路を設定したり、規制したりすることができる。これにより、蓄熱容器内の蓄熱材の広い領域に熱媒体を直接作用させることが可能となり、熱媒体と蓄熱材との間で大量の熱を交換することができる。また、蓄熱材の各部の放熱量や温度の差も小さくなり、安定した放熱及び蓄熱を行うことができる。
請求項10に記載した発明は、蓄熱器内に保持された通気性のある多孔質蓄熱材の空隙内部に熱媒体を通過させることにより熱交換を行う、蓄熱器における熱交換方法に係るものである。蓄熱材に熱媒体を直接作用させることができるため、高い熱交換効率を得ることができる。
蓄熱容量が大きく、また、熱交換効率の高い蓄熱材及び蓄熱器を構成することができる。
以下、本願発明の実施形態を図に基づいて具体的に説明する。
図1に本願発明に係る蓄熱材を構成する多孔質体の外観形態及び製造手法の一例を示す。本実施形態では、金属多孔質体1を、浸漬槽20内で溶融状態にある樹脂蓄熱物資2に浸漬し、上記蓄熱物質2を上記金属多孔質体1の空隙に充填する。
上記金属多孔質体は、通気性を有する3次元網状構造を備える。本実施形態では、空隙率が90%以上のニッケル金属多孔質体を採用している。
上記金属多孔質体1は、種々の手法を用いて製造されたものを採用することができる。たとえば、発泡させた多孔質樹脂支持体に、無電解メッキ、真空蒸着、スパッタリング等の方法で、カーボンや金属を被覆して導電性を付与する。この導電性を付与した多孔質樹脂支持体をメッキ浴中で給電ブスバーを兼ねた回転軸の周りに回転する陰極体の表面に密着させることにより、陽極から金属を上記多孔質体に電気メッキする。その後、上記多孔質樹脂支持体を除去することにより、図1に示すような、三角柱状の骨格が3次元に連なった連続気孔をもつ金属多孔質体を得ることができる。
本実施形態に係る蓄熱物質は、パラフィン、樹脂、その他添加材を含んで構成される固体状の樹脂蓄熱物質である。蓄熱温度は、約80℃であり、約2.5kJ/kg・Kの比熱、0.21〜0.22W/mKの熱伝導率を有している。また、固体形状を保持したまま、175〜180kJ/kgの潜熱量を有している。また、融点は100℃以上である。上記蓄熱樹脂として、たとえば、三菱電線工業製の潜熱蓄熱材(登録商標MHSシリーズ)を採用することができる。
本実施形態では、金属多孔質体1の上記空隙の全体に、上記樹脂蓄熱物質2が均等に分散して保持されるとともに、蓄熱材の全体が通気性を備えるように上記浸漬工程が行われる。本実施形態では、上記多孔質金属体1の空隙率が20%となるように、上記蓄熱樹脂2が充填される。
図2は、上記蓄熱材料3の断面を模式的に示す図である。この図に示すように、金属多孔質体1の各空隙4の表面に樹脂蓄熱物質2が積層状態で保持されている。
本実施形態に係る上記蓄熱材3は、一体的につながる3次元編目状の金属多孔質体1の空隙4に、樹脂蓄熱物質2を保持させた形態を備える。また、上記金属多孔質体1の熱伝導率は、上記樹脂蓄熱物質2より大きい。このため、上記蓄熱材3の内部では、主として上記金属多孔質体1を介して熱が移動させられ、上記蓄熱材3の内部における熱移動の速度が速い。したがって、蓄熱材3の一部から入熱された熱を、上記蓄熱材3の全域に移動させて蓄熱することができる。また、上記蓄熱材3の全域から放熱部位に熱を移動させて、短時間に大量の熱を放熱させることもできる。
このため、本実施形態に係る蓄熱材料は、暖房等の空調用に利用できるばかりでなく、自動車の駆動系を暖機運転するために用いることも可能となる。
また、上記蓄熱材3は、上記金属多孔質体の空隙表面に、通気性を確保した形態で上記樹脂蓄熱物質2が充填保持されている。このため、図2の矢印に示すように、連続した空隙4に、気体や液体を流動させることができる。したがって、上記蓄熱材3の内部に空気等の熱媒体を通過させることにより、上記樹脂蓄熱物質2や金属多孔質体1と、上記熱媒体との間で、直接熱交換を行わせることができる。
上記蓄熱材3の内部表面積は極めて大きい。したがって、上記空隙4内で熱媒体を流動させることにより、熱媒体と蓄熱材3とを非常に大きな熱交換面を介して熱交換させることが可能となる。これにより、短時間に大量の熱を交換することが可能となる。特に、粘度の低い空気等の気体を熱媒体として利用すると、上記蓄熱材3の内部を流動する抵抗も小さくなり、大量の空気等と熱交換をすることができる。
上記空隙4の大きさは、採用する熱媒体の種類や、所要の流量等によって設定することができる。粘度の高い熱媒体を通過させるには、空隙のサイズを大きく設定するのが好ましい。
図3及び図4に、上述した蓄熱材3を用いて構成した蓄熱器の第1の実施形態を示す。本実施形態は、自動車の暖房等に用いる蓄熱器11に本願発明を適用したものである。
この実施形態では、断熱性を有する円筒状の蓄熱容器10内に蓄熱材3を充填するとともに、銅等の熱伝導率の高い材料から形成された入熱用の金属パイプ5を、上記蓄熱容器10の軸方向に貫通させて蓄熱器11を構成している。上記入熱用のパイプ5は、エンジンもしくはモータやインバータの冷却回路につながっており、図示しないポンプ等によってエンジンもしくはモータやインバータで加熱された冷却媒体9が流動させられる。
上記蓄熱材3を構成する金属多孔質体1は、上記パイプ5の外周面に圧接されている。このため、上記パイプ5の外周面から上記金属多孔質体1に熱が放熱されるとともに、上記金属多孔質体1を介して蓄熱材3の隅々まで熱が移動させられて、樹脂蓄熱物質2に蓄熱が行われる。上記金属多孔質体1を上記パイプ5の外周面に接合する方法は特に限定されることはなく、上記圧接の外、ロウ付けや溶接等を利用して接合することができる。
一方、本実施形態では、蓄熱器11内に放熱用のパイプは設けられておらず、一方の軸方向壁に、熱媒体としての空気8を導入する空気導入口6を設けるとともに、他方の軸方向壁に加熱した空気を排出できる空気排出口7を設けている。
本実施形態に係る蓄熱材3は、高い通気性を備えているため、上記空気導入口6から導入された空気8は、上記蓄熱材3の空隙内を矢印のように流れて、上記蓄熱材3から直接熱を受け取ることができる。しかも、蓄熱材3の空隙内を通過して熱交換を行わせるため、非常に広い熱交換面積を介して熱が移動させられる。このため、大量の空気を上記樹脂蓄熱物質2の温度まで上昇させることができる。
図5に、本願発明の第2の実施形態に係る蓄熱器111を示す。
この実施形態では、上記第1の実施形態と同様に、円筒状の蓄熱容器110内に、第1の実施形態と同様の蓄熱材103を充填するとともに、軸方向に入熱用のパイプ105を貫通させて蓄熱器111を構成している。
また、上記蓄熱容器110の一方の軸方向壁に、熱媒体としての空気108を上記蓄熱容器110内へ導入する空気導入口106を設けるとともに、他方の軸方向壁に、加熱した空気を排出する空気排出口107を設けている。
さらに、本実施形態では、上記蓄熱容器110の内部に、この蓄熱容器110の内周面の上下方向から所定間隔を開けて交互に延出する流路規制板121を設けている。
上記流路規制板121は、通気性がないものを採用している。このため、上記空気導入口106から導入された空気は、上記流路規制板121に沿って、上記蓄熱材103の内部を上下に方向を変えながら流動させられる。
すなわち、上記流路規制板121を設けることにより、上記蓄熱材3の内部における空気の流路が設定される。本実施形態では、上記空気を蓄熱材3の内部で上下に流動させることにより、この空気を上記蓄熱材103内部のほぼ全域にくまなく流動させて熱交換を行わせることが可能となる。このため、熱交換効率が格段に向上する。上記流路規制板の形態や配置位置は、上述した実施形態に限定されることはない。蓄熱容器の形態や、熱媒体の特性に応じて種々の流路規制手段を設けることができる。
図6に、本願発明に係る蓄熱器の第3の実施形態を示す。この実施形態に係る蓄熱器211においても、上述した第1の実施形態と同様に、円筒状の蓄熱容器210内に、第1の実施形態と同様の蓄熱材203を充填するとともに、軸方向に入熱用のパイプ205を貫通させて、蓄熱器を構成している。
本実施形態では、蓄熱容器210の一方の軸方向壁に、空気導入口206と空気排出口207の双方を設け、軸方向の同じ側から空気208を蓄熱器211に導入し、また、取り出すことができるように構成している。
上記空気導入口206には、上記蓄熱容器210の内部を上記空気導入口206と軸方向の反対側まで延びるパイプが採用されており、上記空気208は、上記パイプの先端部の吐出口206aから蓄熱容器210の内部に吐出される。
上記構成の蓄熱器211においては、上記空気は、上記空気導入口206及び上記空気排出口207を設けた側と反対側から、上記空気排出口207に向けて蓄熱材203の内部を流動させられる。したがって、第1の実施形態と同様に、空気を蓄熱材203のすみずみに流動させて熱交換を行わせることができる。
図7に、本願発明に係る蓄熱器の第4の実施形態を示す。
この実施形態においては、金属多孔質体301に、樹脂蓄熱物質302を保持させた蓄熱部303aと、樹脂蓄熱物質302を保持させない通気部303bとを設けて蓄熱材303を構成している。上記蓄熱部303aは、金属多孔質体301の空隙部の全体に蓄熱樹脂302を充填して構成されており、通気性を有していない。一方、上記通気部303bは、上記樹脂蓄熱物質302が充填されていないため、高い通気性能を備える。上記蓄熱部303a及び上記通気部303bは、樹脂蓄熱物質302を溶融保持した浸漬槽に、金属多孔質体を所定の深さまで浸漬することにより、容易に製作することができる。
上記蓄熱器311の一方の軸方向壁に空気導入口306が設けられるとともに、他方の軸方向壁に空気排出口307が設けられている。上記空気導入口306から、蓄熱器内に空気308を導入すると、上記通気部303b内を通気が流動して熱交換が行われる。
上記通気部303bは、樹脂蓄熱物質が充填されていないため通気性が高い。したがって、空気の流動抵抗が少なく、大量の空気を流動させることができる。
一方、上記蓄熱部303aは、金属多孔質体301の空隙部に大量の樹脂蓄熱物質302を保持させている。このため、通気性はないものの熱容量を大きく設定することができる。上記蓄熱部303aと、上記通気部303bとは、熱伝導率の高い金属多孔質体301を介して一体的に形成されている。このため、上記蓄熱部303aから上記通気部303bに、上記金属多孔質体301を介して、熱が迅速に移動させられる。したがって、上記通気部303bを流動する空気に、効率よく熱を移動させることができる。
上記蓄熱部303aと上記通気部303bの形態は、上記実施形態に限定されることはない。本実施形態では、重力を利用して、上記蓄熱部303aと上記通気部303bとを設けたが、遠心力等を利用することにより、金属多孔質体301の所望部位に蓄熱樹脂を充填して蓄熱部を形成することができる。
さらに、本実施形態では、上記蓄熱部303aを貫通するように入熱側パイプ305を設けるとともに、上記蓄熱部303aに埋め込み状に熱伝導部材312を設けている。
上記熱伝導部材312は、銅等の熱伝導性の高い金属板から形成されている。また、複数の上記熱伝導部材312が、上記パイプ305の軸方向に略平行に配列されるとともに、上記パイプ305の外周部に接合されている。
上記構成を採用することにより、上記パイプ305内を流れる入熱側の熱媒体309から、上記パイプ305を介して上記熱伝導部材312に熱が入熱される。上記熱伝導部材312には、上記蓄熱材303を構成する金属多孔質体301が接合されている。このため、上記熱伝導部材312を介して上記蓄熱部303aの隅々に迅速に熱を移動させることができるとともに、上記金属多孔質体301に保持された蓄熱樹脂302に迅速に蓄熱することができる。したがって、蓄熱効率を大幅に高めることができる。
図8及び図9に、本願発明の第5の実施形態を示す。この実施形態は、図6に示す第3の実施形態において、入熱用のパイプ405を一方の側から配管して構成したものである。
上記第5の実施形態に係る蓄熱器411においても、上述した第3の実施形態と同様に、円筒状の蓄熱容器410内に、蓄熱材403を充填するとともに、蓄熱容器410の一方の軸方向壁に、空気導入口406と空気排出口407の双方を設け、軸方向の同じ側から空気408を蓄熱器411に導入し、また、取り出すことができるように構成している。
一方、上記パイプ405は、蓄熱容器410の周壁の上方から上記蓄熱容器410内に貫入させられるとともに、蓄熱容器410の内部でコ字状に屈曲させられて方向が転換させられ、上記貫入させられた側と同じ側の周壁から延出させられている。
上記構成を採用することにより、入熱側と放熱側の配管を、蓄熱器411の同じ側から設けることが可能となる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
熱媒体との熱交換効率が高い蓄熱材及び蓄熱器を形成できる。
1 熱伝導性多孔質体
2 蓄熱物質
3 蓄熱材
2 蓄熱物質
3 蓄熱材
Claims (10)
- 連続気孔を有する熱伝導性多孔質体の空隙の一部に固体蓄熱物質が保持されている、蓄熱材。
- 上記固体蓄熱物質材は、固体形状を保持したまま潜熱を蓄熱できる蓄熱物質である、請求項1に記載の蓄熱材。
- 上記熱伝導性多孔質体の上記空隙の全表面に上記蓄熱物質が積層保持されている、請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載の蓄熱材。
- 上記蓄熱材は、上記熱伝導性多孔質体に上記蓄熱物質を保持して構成される蓄熱部と、上記蓄熱物質を保持させない通気部とを備える、請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載の蓄熱材。
- 上記熱伝導性多孔質体が、金属多孔質体である、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の蓄熱材。
- 請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の蓄熱材を備えるとともに、熱媒体を上記蓄熱材の空隙に通過させて熱交換するように構成された、蓄熱器。
- 上記蓄熱器内に他の熱媒体を通すパイプを備え、上記パイプの外周面に上記多孔質体が接合されている、請求項6に記載の蓄熱器。
- 上記蓄熱材の内部に、上記パイプの外周部に接合された熱伝導部材を設けた、請求項7に記載の蓄熱器。
- 蓄熱容器内に収容された上記蓄熱材の内部に、上記空隙内を流れる熱媒体を所定の経路に沿って流動させる規制手段を設けた、請求項6から請求項8のいずれか1項に記載の蓄熱器。
- 蓄熱器内に保持された通気性のある多孔質蓄熱材の空隙内部に熱媒体を通過させることにより熱交換を行う、蓄熱器における熱交換方法。
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JPWO2018042640A1 (ja) * | 2016-09-02 | 2019-06-24 | 日立化成株式会社 | 複合部材及びその製造方法、蓄熱材及びその製造方法、蓄熱式空調装置、並びに蓄熱型ヒートパイプ式給油設備 |
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