JP2010174193A - ポリスチレン系樹脂発泡体及びポリスチレン系樹脂発泡体の製造方法 - Google Patents

ポリスチレン系樹脂発泡体及びポリスチレン系樹脂発泡体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 比較的簡便に製造されてなり、平均気泡径が比較的小さく且つ発泡倍率が比較的大きいポリスチレン系樹脂発泡体を提供することを課題とする。また、平均気泡径が比較的小さく且つ発泡倍率が比較的大きいポリスチレン系樹脂発泡体を比較的簡便に製造できるポリスチレン系樹脂発泡体の製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】 ポリスチレン系樹脂成分と不活性ガスとを含むポリスチレン系樹脂組成物が押出発泡成形されてなるポリスチレン系樹脂発泡体であって、前記ポリスチレン系樹脂成分が、加熱溶融された後に冷却固化された熱履歴ポリスチレン系樹脂を含有しているポリスチレン系樹脂発泡体を提供する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、ポリスチレン系樹脂発泡体及びポリスチレン系樹脂発泡体の製造方法に関する。
従来、ポリスチレン系樹脂成分と不活性ガスとを含むポリスチレン系樹脂組成物が押出発泡成形されてなるポリスチレン系樹脂発泡体は、例えば断熱材や緩衝材などに用いられている。斯かる従来のポリスチレン系樹脂発泡体は、気泡を含んでいるため比較的軽量であるものの、気泡の大きさが比較的大きいことに起因して、強度などの特性が比較的低いものとなりやすい。
一方、比較的軽量でありながら強度などの特性がより高いポリスチレン系樹脂発泡体とすべく、含まれている気泡径が比較的小さい微細な気泡を含んだポリスチレン系樹脂発泡体が知られている。
この種のポリスチレン系樹脂発泡体としては、例えば、超臨界状態の液体を発泡剤として含む熱可塑性樹脂組成物を押出成形してなる樹脂発泡体が知られている(特許文献1)。また、例えば、不活性ガスを発泡剤として含む熱可塑性樹脂組成物を押出成形してなる樹脂発泡体が知られている(特許文献2)。また、不活性ガスが連続的に供給されてなる熱可塑性樹脂組成物を、整列状態で配置された複数の通過孔が設けられた金型を用いて押出成形してなる樹脂発泡体が知られている(特許文献3)。
しかしながら、特許文献1のごとく、超臨界状態の液体を含む熱可塑性樹脂組成物を押出成形してなる樹脂発泡体においては、超臨界状態の液体が非常に高い圧力下で取り扱われることから、その圧力に耐え得る設備等を必要とし、製造時に複雑で大規模な設備を要するという問題がある。また、特許文献2のごとく、不活性ガスを含む熱可塑性樹脂組成物を押出成形してなる樹脂発泡体は、押出発泡時の温度が比較的低くされて気泡成長が抑制されていることにより平均気泡径は比較的小さいものの、一方で発泡倍率が比較的小さくなっており軽量化が十分になされていないという問題がある。また、特許文献3のごとく、整列状態で配置された複数の通過孔が設けられた金型を用いて押出成形された樹脂発泡体においても同様に、平均気泡径が比較的小さいものの発泡倍率が比較的小さく軽量化が十分になされていないという問題がある。
そこで、比較的簡便に製造されてなり、平均気泡径が比較的小さい微細気泡を含んでなり且つ発泡倍率が比較的大きいポリスチレン系樹脂発泡体が要望されている。
特許第2625576号公報 特許第3655436号公報 特許第4125705号公報
本発明は、上記の問題点、要望点等に鑑み、比較的簡便に製造されてなり、平均気泡径が比較的小さく且つ発泡倍率が比較的大きいポリスチレン系樹脂発泡体を提供することを課題とする。また、平均気泡径が比較的小さく且つ発泡倍率が比較的大きいポリスチレン系樹脂発泡体を比較的簡便に製造できるポリスチレン系樹脂発泡体の製造方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決すべく、本発明に係るポリスチレン系樹脂発泡体は、ポリスチレン系樹脂成分と不活性ガスとを含むポリスチレン系樹脂組成物が押出発泡成形されてなるポリスチレン系樹脂発泡体であって、
前記ポリスチレン系樹脂成分が、加熱溶融された後に冷却固化された熱履歴ポリスチレン系樹脂を含有していることを特徴とするものである。
上記構成からなるポリスチレン系樹脂発泡体によれば、作用原理が完全に解明されているわけではないが、前記ポリスチレン系樹脂成分が前記熱履歴ポリスチレン系樹脂を含有していることにより、前記ポリスチレン系樹脂組成物の押出時において前記熱履歴ポリスチレン系樹脂が不活性ガスの発泡を促すものとして作用し得ると考えられる。即ち、前記熱履歴ポリスチレン系樹脂には、一端加熱されることにより生じた比較的低分子の熱分解生成物が含まれ得ることから、斯かる熱分解生成物を核として不活性ガスが発泡を起こしやすいものと考えられる。しかも、斯かる熱分解生成物は、前記ポリスチレン系樹脂組成物中において分子レベルで分散し得るものであることから、これを核とした発泡によって生じる気泡の径が微細なものとなり得る。
従って、前記ポリスチレン系樹脂発泡体には、比較的小さい微細な気泡が含まれ得る。
本発明に係るポリスチレン系樹脂発泡体は、平均気泡径が0.005〜0.030mmであり、見掛け密度が20〜100kg/m3であることが好ましい。
前記平均気泡径が、0.005mm以上であることにより、気泡を形成している膜がより厚くなり、押出発泡成形性がより良好となってポリスチレン系樹脂発泡体の外観がより優れたものになり得るという利点がある。また、0.030mm以下であることにより、ポリスチレン系樹脂発泡体の柔軟性がより高くなり得るという利点がある。
前記熱履歴ポリスチレン系樹脂は、前記ポリスチレン系樹脂成分に30〜100重量%含有されていることが好ましい。前記熱履歴ポリスチレン系樹脂が前記ポリスチレン系樹脂成分に30重量%以上含まれていることにより、比較的小さい気泡を含んだポリスチレン系樹脂発泡体によりなりやすいという利点がある。
前記不活性ガスは、二酸化炭素であることが好ましい。前記不活性ガスが二酸化炭素であることにより、押出時における発泡性がより良好となり、気泡がより微細化し得るという利点がある。
前記熱履歴ポリスチレン系樹脂は、押出機を用いて調製されていることが好ましい。前記熱履歴ポリスチレン系樹脂が押出機を用いて調製されていることにより、ポリスチレン系樹脂に対して、熱だけでなく圧力も加えられ、前記熱分解生成物がより生じやすいという利点がある。
前記熱履歴ポリスチレン系樹脂は、少なくともリサイクルされたポリスチレン系樹脂でなることが好ましい。前記熱履歴ポリスチレン系樹脂がリサイクルされたポリスチレン系樹脂を採用していることにより、製造工程を減らすことができ、前記ポリスチレン系樹脂発泡体がより簡便に製造されてなるという利点がある。
本発明に係るポリスチレン系樹脂発泡体の製造方法は、ポリスチレン系樹脂成分と不活性ガスとを含むポリスチレン系樹脂組成物を押出発泡成形するポリスチレン系樹脂発泡体の製造方法であって、
加熱溶融された後に冷却固化された熱履歴ポリスチレン系樹脂を含有した前記ポリスチレン系樹脂成分を用いることを特徴とするものである。
本発明のポリスチレン系樹脂発泡体においては、前記熱分解生成物がポリスチレン系樹脂組成物において分子レベルで分散し得るものであり、斯かる熱分解生成物が核となって不活性ガスの発泡を促すものとして作用し、発泡により生じた気泡の径が比較的小さい微細なものとなり得る。
また、前記熱履歴ポリスチレン系樹脂を配合することによって、前記ポリスチレン系樹脂発泡体に含まれる気泡が比較的小さくなることから、気泡が小さくなる分、押出発泡時の温度を下げて気泡成長を抑制する必要性が低くなり、押出発泡時の温度を比較的高く設定することができる。そして、押出発泡時の温度を比較的高くすることもできることから、発泡倍率を比較的高いものにできる。また、これに伴い、適正な押出発泡をさせるべく設定する押出発泡時の温度範囲が広がり、押出時の温度制御が簡便となり得る。
従って、本発明のポリスチレン系樹脂発泡体は、比較的簡便に製造されてなり、平均気泡径が比較的小さくされてなり且つ発泡倍率が比較的大きいという効果を奏する。
本実施形態のポリスチレン系樹脂発泡体は、ポリスチレン系樹脂成分と不活性ガスとを含むポリスチレン系樹脂組成物が押出発泡成形されてなるポリスチレン系樹脂発泡体であって、前記ポリスチレン系樹脂が、加熱溶融された後に冷却固化された熱履歴ポリスチレン系樹脂を含有している。
前記ポリスチレン系樹脂発泡体は、形状が特に限定されるものではなく、斯かる形状としては、例えば、直方体状、シート状、ストランド状、円筒状などが挙げられる。
前記ポリスチレン系樹脂組成物は、ポリスチレン系樹脂成分、及び不活性ガスの他、気泡核剤などの添加剤等が含まれ得るものである。また、前記ポリスチレン系樹脂成分には、ポリスチレン系樹脂が含まれ、該ポリスチレン系樹脂としては、前記熱履歴ポリスチレン系樹脂、該熱履歴ポリスチレン系樹脂以外の他のポリスチレン系樹脂が挙げられる。前記ポリスチレン系樹脂成分には、少なくとも前記熱履歴ポリスチレン系樹脂が含まれ、必要に応じて前記他のポリスチレン系樹脂が含まれ得る。
前記ポリスチレン系樹脂組成物は、前記ポリスチレン系樹脂を85重量%以上含んでいることが好ましく、90重量%以上含んでいることがより好ましい。前記ポリスチレン系樹脂を85重量%以上含んでいることにより、前記ポリスチレン系樹脂発泡体が、ポリスチレン系樹脂に起因する優れた機械的特性や成形加工性をより備え得るという利点がある。
前記ポリスチレン系樹脂成分には、前記熱履歴ポリスチレン系樹脂が30〜100重量%含有されていることが好ましく、50〜100重量%含まれていることがより好ましく、70〜100重量%含まれていることがさらに好ましい。前記熱履歴ポリスチレン系樹脂が前記ポリスチレン系樹脂成分に30重量%以上含まれていることにより、比較的微細な気泡を含んだポリスチレン系樹脂発泡体によりなりやすいという利点がある。
前記ポリスチレン系樹脂成分には、前記熱履歴ポリスチレン系樹脂以外の他のポリスチレン系樹脂が含まれ得る。他のポリスチレン系樹脂としては、加熱溶融された後に冷却固化されていないポリスチレン系樹脂が挙げられる。なお、加熱溶融された後に冷却固化されていないポリスチレン系樹脂は、具体的には、例えば、製造された後に使用されておらず、製造後に加熱溶融されず且つ冷却固化されていないものを意味する。以下、加熱溶融された後に冷却固化されていないポリスチレン系樹脂を“非熱履歴ポリスチレン系樹脂”ともいう。
前記ポリスチレン系樹脂としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、ブロモスチレン、i−プロピルスチレン、t−ブチルスチレン、又はジメチルスチレンなどのスチレン系単量体が重合されてなるものが挙げられる。具体的には、これらスチレン系単量体の単独重合体、又はこれらスチレン系単量体が組み合わされて重合されてなる共重合体などが挙げられる。
また、前記ポリスチレン系樹脂は、前記スチレン系単量体と他の単量体との共重合体であってもよい。他の単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、マレイミド、アクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、マレイン酸、塩化ビニル、無水マレイン酸等が挙げられる。
また、前記ポリスチレン系樹脂は、重合性不飽和結合を有するゴム質重合体の存在下で前記スチレン系単量体が重合され、ゴム成分がグラフト重合されたグラフト重合体であってもよい。前記ゴム質重合体としては、スチレン−ブタジエン共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、ブタジエン−アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。
前記ポリスチレン系樹脂は、前記スチレン系単量体の単独重合体、各スチレン系単量体が組み合わされて重合されてなる共重合体、スチレン系単量体と他の単量体との共重合体、又は前記グラフト重合体のそれぞれが組み合わされた混合物であってもよい。斯かる場合、前記ポリスチレン系樹脂においては、スチレン重合体由来の優れた機械的特性や成形加工性などをより前記ポリスチレン系樹脂に付与できる点で、スチレン系単量体換算でのスチレン系単量体の含有量が60重量%以上であることが好ましい。
前記ポリスチレン系樹脂は、JIS K7210に定められたメルトフローレート(MFR)が好ましくは0.05〜50、より好ましくは0.1〜30、さらに好ましくは0.2〜20、特に好ましくは1.0〜3.0の範囲にあることが好ましい。MFRが0.05以上であることにより、溶融時の前記ポリスチレン系樹脂組成物の粘度がより低くなり、押出成形機の負荷がより抑えられ、押出成形加工がより容易となり、ポリスチレン系樹脂発泡体の生産性がより高くなり得る。また、MFRが50以下であることにより、ポリスチレン系樹脂組成物が発泡時のガス圧に耐えるだけの粘度をより保持できることとなり、発泡後の破泡がより生じにくく、微細な気泡をより生成しやすくなり得る。また、押出成形機の金型内でより発泡しにくくなり、製造されたポリスチレン系樹脂発泡体の表面がより平滑なものとなり得る。
前記熱履歴ポリスチレン系樹脂は、前記ポリスチレン系樹脂が加熱溶融された後に冷却固化されたものであれば特に限定されず、熱履歴ポリスチレン系樹脂としては、具体的には例えば、押出機を用いて調製されたもの、リサイクルされたもの等が挙げられる。
前記熱履歴ポリスチレン系樹脂は、押出機を用いて調製されていることにより、熱だけでなく圧力も加えられていることから、前記熱分解生成物がより多く含まれ得る。従って、熱履歴ポリスチレン系樹脂が押出機を用いて調製されていることにより、比較的小さい気泡を含んだポリスチレン系樹脂発泡体となることがより促進され得るという利点がある。
また、前記熱履歴ポリスチレン系樹脂は、加熱溶融された後に冷却固化される熱履歴を与えられていない、いわゆるバージンのポリスチレン系樹脂を用いて、押出機により調製されたものであることが好ましい。熱履歴を与えられていないポリスチレン系樹脂は、含まれる不純物等が比較的少ないことから、斯かるポリスチレン系樹脂に熱履歴を与えた熱履歴ポリスチレン系樹脂に含まれる不純物等も比較的少ない。従って、斯かる熱履歴ポリスチレン系樹脂を用いることにより、ポリスチレン系樹脂発泡体においては、意図しない着色、強度低下などがより起こりにくいという利点がある。
なお、押出機を用いて調製された熱履歴ポリスチレン系樹脂、及びその調製方法の詳細については、後述するポリスチレン系樹脂発泡体の製造方法の説明において詳しく説明する。
リサイクルされたポリスチレン系樹脂としては、様々な用途で用いられた後に回収されたポリスチレン系樹脂成形品を用いたものが挙げられる。回収され得るポリスチレン系樹脂成形品としては、色々な形態で用いられていた、例えば、魚箱、家電製品の緩衝包装材、食品トレー、発泡体製造時に発生した端材やスクラップなどのポリスチレン系樹脂発泡成形品、又は、テレビやエアコン等の家電製品の部品、ファクスや複写機等の事務用機器の部品などのポリスチレン系樹脂非発泡成形品が挙げられる。
前記熱履歴ポリスチレン系樹脂としてリサイクルされたポリスチレン系樹脂が用いられていることにより、ポリスチレン系樹脂を加熱溶融した後に固化する操作が必ずしも必要でなくなることから、前記ポリスチレン系樹脂発泡体がより簡便に製造されてなるという利点がある。
前記不活性ガスは、大気圧下室温においてガス状をなす無機物である。また、他成分との反応性が比較的低いものである。前記不活性ガスとしては、例えば、窒素(N2)、二酸化炭素(CO2)、アルゴンなどが挙げられる。前記不活性ガスは、前記ポリスチレン系樹脂組成物において押出成形の際に発泡する発泡剤として用いられるものである。
本発明においては、発泡剤として従来の炭化水素系やフロン系の発泡剤を採用しても、平均気泡径が比較的小さく且つ発泡倍率が比較的大きいポリスチレン系樹脂発泡体とならない。即ち、発泡剤として不活性ガスを用いることにより、特異的にポリスチレン系樹脂発泡体の平均気泡径が比較的小さくなり且つ発泡倍率が比較的大きくなる。
前記不活性ガスとしては、発泡性及び気泡をより微細化し得る性能の双方に優れていることから二酸化炭素が好ましい。
前記不活性ガスの量は、ポリスチレン系樹脂発泡体の発泡倍率に応じて適宜、調整され得る。前記不活性ガスの量は、前記ポリスチレン系樹脂組成物100重量部に対して1〜15重量部が好ましく、2〜12重量部がより好ましく、3〜10重量部が特に好ましい。前記不活性ガスの量が前記ポリスチレン系樹脂組成物100重量部に対して1重量部以上であることにより、ポリスチレン系樹脂発泡体における発泡倍率がより高くなり、軽量性及び断熱性がより低下しにくいという利点がある。また、15重量部以下であることにより、押出機の金型内においてより発泡が生じにくくなり、また、発泡時における破泡がより起こりにくくなり、ポリスチレン系樹脂発泡体中に意図しない大きな空隙が生じる可能性がより低くなるという利点がある。
前記ポリスチレン系樹脂組成物には、気泡の大きさをより均一化させ得る気泡核剤の他、任意成分として発泡成形に通常用いられる各種添加剤が含まれ得る。前記添加剤としては、例えば、前記気泡核剤、分散剤、顔料、染料、難燃剤、可塑剤、滑剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤等が挙げられる。
前記気泡核剤は、前記ポリスチレン系樹脂組成物において気泡が形成される際に気泡の核の生成を促すものであり、気泡を微細化し気泡の大きさをより均一なものとし得るものである。
前記気泡核剤としては、例えばタルク、マイカ、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カリウム、硫酸バリウム、ガラスビーズなどの無機化合物、ポリテトラフルオロエチレン、アゾジカルボンアミド、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素ナトリウムとクエン酸の混合物などの有機化合物などが挙げられ、なかでも特にタルクが好ましい。なお、気泡核剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
前記分散剤は、無機充填剤の分散性を向上させ得るものであり、前記分散剤としては、例えば高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド等が挙げられる。
前記添加剤の添加量は、通常の熱可塑性樹脂の成形に用いられる量を採用でき、気泡の形成や発泡体を製造する際の妨げとならず、かつ製造される発泡体の特性に影響を及ぼさない範囲で適宜選択できる。
前記ポリスチレン系樹脂発泡体の平均気泡径は、0.005〜0.030mmであることが好ましく、より好ましくは0.007〜0.025mm、更に好ましくは0.009〜0.200mmである。
前記平均気泡径が、0.005mm以上であることにより、気泡を形成している膜がより厚くなり、押出発泡成形性がより良好となり、ポリスチレン系樹脂発泡体の外観がより優れたものになり得るという利点がある。また、0.030mm以下であることにより、より柔軟性が高くなり、印刷性がより高くなり得る。
前記平均気泡径は、次の方法によって算出する。具体的には、まず、ポリスチレン系樹脂発泡体をMD方向(押出方向)及びTD方向(押出方向に直交する方向)に沿って切断し、それぞれの切断面の中央部を走査型電子顕微鏡(日立製作所製 商品名「S−3000N」)で20倍(場合により100倍)に拡大して撮影する。次に、撮影した画像をA4用紙上に印刷し、画像上に長さ60mmの直線を一本描く。なお、MD方向に切断した切断面についてはMD方向に平行に、TD方向に切断した切断面についてはTD方向に平行に直線を描く。上記直線上に存在する気泡数から気泡の平均弦長(t)を下記式により算出する。さらに、押出方向に沿って切断した切断面の拡大写真及び押出方向に直交する方向に沿って切断した切断面の拡大写真の双方において、VD方向(厚み方向)に平行な長さ60mmの直線をそれぞれ一本描き、これらの直線上の存在する気泡数を数え、各切断面毎に下記式に基づいて厚み方向の平均弦長(t)を算出して、これらの平均弦長(t)の相加平均値を算出し、この平均値を厚み方向の平均弦長とする。
平均弦長(t)=60/(気泡数×写真の倍率)
なお、直線を描くにあたっては、できるだけ直線が気泡に点接触することなく貫通した状態となるようにする。また、一部の気泡が直線に点接触してします場合には、この気泡も気泡数に含め、さらに、直線の両端部が気泡を貫通することなく、気泡内に位置した状態となる場合には、直線の両端部が位置している気泡も気泡数に含める。そして、算出された各方向における平均弦長(t)に基づいて次式により各方向の平均気泡径を算出する。
平均気泡径(mm)=(tMD+tTD+tVD)/3
前記ポリスチレン系樹脂発泡体の見掛け密度は、20〜100kg/m3であることが好ましく、より好ましくは30〜80kg/m3、更に好ましくは40〜60kg/m3である。
前記見掛け密度が20kg/m3以上であることにより、押出発泡時に発生するコルゲートをより取りやすくなり、ポリスチレン系樹脂発泡体が押出方向にスジが入った外観の悪いものに、よりなりにくくなり得るという利点がある。また、見掛け密度が100kg/m3以下であることにより、ポリスチレン系樹脂発泡体がより軽量になるという利点がある。
前記見かけ密度は、JIS K 7222−1999記載の方法に準拠した方法により測定される。具体的には、元のセル構造を変えないように切断した10cm3以上(半硬質及び軟質材料の場合は100cm3以上)の試験片について、その重量を測定し、次式により算出する。
見かけ密度(kg/m3)=試験片重量(g)/試験片体積(cm3)×103
なお、前記見かけ密度は、ストランド金型により押出発泡させたポリスチレン系樹脂発泡体の場合、JIS K7112:1999記載の方法に準じて測定する。即ち、試験体を電子天秤にて秤量し、次に試験体を専用容器(内径76mm×高さ30mmの透明アクリル円筒の開口部に16メッシュステンレス金網と天秤に吊るすフックとを取付けたもの。蒸留水に浮く場合はおもりを加える)に入れ、23℃の蒸留水中に、試験体付着の気泡を取除いて浸せきさせ、電子天秤にて試験体(専用容器を含む)の重量を測定する。試験体の見かけ密度ρは、次式で算出する。
見掛け密度ρ(kg/m3)=m1/(m1−(m2−Δm))
1: 試験体の重量(g)
2: 浸せき液中で測定した試験体の未補正重量(g)
Δm: 液中浸せきした専用容器とおもりの見掛けの重量減少(g)
前記ポリスチレン系樹脂発泡体は、スライス加工によってスライスされたものが好ましい。スライス加工によりポリスチレン系樹脂発泡体の厚みをより小さくすることができ、所望の厚みのポリスチレン系樹脂発泡体となり得る。また、前記ポリスチレン系樹脂発泡体においては、スライス加工により、スライス加工された後に表面となった面が露出して新たな表面となる。前記ポリスチレン系樹脂発泡体においては、含まれている気泡が比較的小さいことから、該気泡がスライス加工によって表面に露出しても該表面において平滑性が比較的高い。
また、前記ポリスチレン系樹脂発泡体においては、スライス加工により気泡が表面へ露出し、該表面が顔料や染料インクとの親和性をより高めることにより、該表面の印刷性がより高まり得る。従って、前記ポリスチレン系樹脂発泡体は、スライス加工により印刷性がより高いものとなり得る。
スライス加工の方法としては、バンドナイフによる方法、ベルトサンダーによる方法などが挙げられ、スライス加工後の表面平滑性により優れるという点で、バンドナイフによる方法が好ましい。
スライス加工した後のポリスチレン系樹脂発泡体の厚みは、特に制限されないが、0.1mm以上であることにより、より安定したスライス加工が可能となり、スライス加工後の樹脂発泡体の強度や断熱性がより低下しにくいという利点がある。
スライス加工時の速度としては2〜20m/分が好ましく、5〜15m/分がさらに好ましい。スライス加工時の速度が2m/分以上であることにより、より生産性が高まるという利点があり、20m/分以下であることにより、加工後に現れた表面の平滑性がより高いものとなり得るという利点がある。
次に、本実施形態のポリスチレン系樹脂発泡体の製造方法について説明する。
本実施形態のポリスチレン系樹脂発泡体の製造方法は、ポリスチレン系樹脂成分と不活性ガスとを含むポリスチレン系樹脂組成物を押出発泡成形するポリスチレン系樹脂発泡体の製造方法であって、加熱溶融された後に冷却固化された熱履歴ポリスチレン系樹脂を含有した前記ポリスチレン系樹脂成分を用いるものである。
詳しくは、本実施形態のポリスチレン系樹脂発泡体の製造方法は、ポリスチレン系樹脂成分と不活性ガスとを含むポリスチレン系樹脂組成物を押出発泡成形するポリスチレン系樹脂発泡体の製造方法であって、加熱溶融された後に冷却固化された熱履歴ポリスチレン系樹脂を含有した前記ポリスチレン系樹脂成分を用い、前記熱履歴ポリスチレン系樹脂を押出機を用いて調製するものである。
本実施形態のポリスチレン系樹脂発泡体の製造方法においては、従来公知の一般的な押出機を用いることができる。具体的には、例えば、適宜適当な金型を備えた押出機を用いて押出発泡成形を実施することができる。
前記ポリスチレン系樹脂発泡体の製造方法において用いられる押出機としては、例えば、単軸押出機、二軸押出機、又はタンデム型押出機のいずれの押出機を用いることができる。前記押出機としては、ポリスチレン系樹脂発泡体の製造条件が調整しやすいという点で、タンデム型押出機が好ましい。
前記ポリスチレン系樹脂発泡体の製造方法において用いられる金型としては、フラット金型、サーキュラー金型、ストランド金型等を用いることができ、斯かる金型は、製造して得られる発泡体の形状に合わせて適宜選択することができる。前記金型のうち、サーキュラー金型は、フラット金型のように製品幅と同じかそれ以上の幅を必要とせず、得られるシート状発泡体の幅が冷却用のマンドレルの直径で決まることから、広幅のシートを容易に製造できる点において好適である。また、シート状発泡体を得るために用いるサーキュラー金型やフラット金型は、金型のスリットクリアランスが最も狭くなっている箇所よりも先端側に、発泡シートの形状を制御するための矩形部を有しているものが好ましい。該矩形部のクリアランスは、発泡シートの厚みや外観を鑑みて任意に調整することができる。
ここで、前記熱履歴ポリスチレン系樹脂の調製方法について説明する。前記熱履歴ポリスチレン系樹脂は、例えば、以下の方法によって調製できる。
即ち、押出機にポリスチレン系樹脂を投入し、押出機内でポリスチレン系樹脂を溶融させ、その後吐出させて冷却固化させることにより熱履歴ポリスチレン系樹脂を調製することができる。
前記押出機としては、ポリスチレン系樹脂を加熱溶融させるべく十分な熱を与えることができるものであれば特に限定されず、例えば上述した押出機が挙げられる。
前記熱履歴ポリスチレン系樹脂を調製する際の加熱溶融する温度としては、ポリスチレン系樹脂が溶融する温度であれば特に限定されるものではないが、好ましくは150℃〜350℃、より好ましくは170℃〜330℃、特に好ましくは190℃〜310℃が好適である。
斯かる温度が150℃以上であることにより、ポリスチレン系樹脂が熱分解して生成する比較的低分子の分解生成物がより生じやすくなり、斯かる分解生成物によって発泡が促されて生成した微細な気泡がよりポリスチレン系樹脂発泡体に含まれやすいという利点がある。
斯かる温度が330℃以下であることにより、ポリスチレン系樹脂が過度に熱分解することによって、製造されたポリスチレン系樹脂発泡体の機械的特性が低下することなどがより抑制され得るという利点がある。また、上述した押出機を用いて熱履歴ポリスチレン系樹脂を調製する場合において、ポリスチレン系樹脂が熱分解することにより生じた油状物が押出機の金型から噴出するおそれがより低減し、作業時の安全性がより高まり得るという利点がある。
前記熱履歴ポリスチレン系樹脂又は非熱履歴ポリスチレン系樹脂は、押出機において溶融された後に金型から押出されて熱履歴ポリスチレン系樹脂となり、該熱履歴ポリスチレン系樹脂は、ポリスチレン系樹脂発泡体の製造において押出機に供給され得る。従って、熱履歴ポリスチレン系樹脂を調製する押出機においては、ポリスチレン系樹脂発泡体の製造において該熱履歴ポリスチレン系樹脂を押出発泡用の押出機に容易に供給すべく、熱履歴ポリスチレン系樹脂をペレット状とし得る金型を用いることが好ましい。斯かる金型としては、具体的には例えば、(マルチ)ノズル金型、Tダイ金型などが挙げられ、効率よくペレット状の熱履歴ポリスチレン系樹脂を調製できるという点で、(マルチ)ノズル金型がより好適である。
前記熱履歴ポリスチレン系樹脂の調製において、例えばノズル金型を用いる場合は、ノズル金型から押出された押出物を切断してペレット状の熱履歴ポリスチレン系樹脂とすることができる。斯かる場合、ノズル金型から押出されたひも状の押出物を水槽で冷却した後、ペレタイザーで切断する方法、又は、金型に近接(接触含む)したカッター刃でノズル金型から押出物が押出された直後に切断するホットカット方法を採用することができる。
また、前記熱履歴ポリスチレン系樹脂の調製において、例えばTダイ金型を用いる場合は、シート状に押出された押出物を溝の入ったロールで挟み込んでシート状押出物の流れ方向に平行に切断(シート状態から紐状態に切断)し、紐状の押出物を冷却した後、ペレタイザーで切断してペレットの熱履歴ポリスチレン系樹脂とすることができる。
押出機を用いて熱履歴ポリスチレン系樹脂を調製する方法においては、非熱履歴ポリスチレン系樹脂の押出回数が1回〜3回であることが好ましく、1回〜2回であることが特に好ましい。斯かる押出回数が増えることにより、熱履歴ポリスチレン系樹脂によってポリスチレン系樹脂発泡体の気泡がより微細化し得るが、ポリスチレン系樹脂が熱分解によって過度に分解することを抑制する点で、斯かる押出回数は、3回以下であることが好ましい。
前記リサイクルされたポリスチレン系樹脂を用いる場合、原料となるポリスチレン系樹脂成形品は、ポリスチレン系樹脂以外に金属、ガラスその他の異物を含み得ることから、異物を除いたものを用いることが好適である。
なお、発泡してなるポリスチレン系樹脂成形品は、加熱して気泡を潰して容積を減少させることができ、このようにして容積を減らしたものは、粉砕機により粉砕したり、押出機により溶融させた後にノズル金型あるいはTダイ金型から押出してペレタイザーにてリペレットにしたりすることにより、リサイクルされたポリスチレン系樹脂として用いることができる。
本発明は、上記例示のポリスチレン系樹脂発泡体、又はポリスチレン系樹脂発泡体の製造方法に限定されるものではない。また、本発明では、一般のポリスチレン系樹脂発泡体、又はポリスチレン系樹脂発泡体の製造方法において採用される種々の形態を、本発明の効果を損ねない範囲で採用することができる。
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに詳細に説明する。
(熱履歴ポリスチレン系樹脂の調製)
口径が50mmの第一押出機の先端に口径65mmの第二押出機を接続してなるタンデム押出機の第一押出機に、非熱履歴ポリスチレン系樹脂:D(PSジャパン社製、商品名「G9305」:MFR=1.5g/10分 スチレン単独重合体)を投入し、温度220℃にて溶融させ、第二押出機の先端に取り付けた口径1.0mm、ランド7mm、孔数15個のダイスから30kg/時間の吐出量でストランド状に押出した。ついで、長さ2mの冷却水槽中の30℃の水にストランドを通して冷却し、ファンカッター式のペレタイザーにてストランドをカットし、熱履歴を1回与えた熱履歴ポリスチレン系樹脂:Aを得た。
熱履歴ポリスチレン系樹脂:Aを再度同じように押出機に投入して押出し、冷却固化、カットの工程を経て熱履歴を2回与えた熱履歴ポリスチレン系樹脂:Bを得た。
上記方法と同様の方法によって、非熱履歴ポリスチレン系樹脂:E(東洋スチレン社製、商品名「HRM48N」:MFR=2.3g/10分 スチレン単独重合体)を用いて、熱履歴を2回与えた熱履歴ポリスチレン系樹脂:Cを得た。
(実施例1)
以下のようにして、ストランド状のポリスチレン系樹脂発泡体を製造した。
口径が50mmの第一押出機の先端に口径65mmの第二押出機を接続してなるタンデム押出機の第一押出機に、熱履歴ポリスチレン系樹脂A:100重量部を供給し、第一押出機内に発泡剤として液体状態の二酸化炭素(不活性ガス)を熱履歴ポリスチレン系樹脂A100重量部に対して7.5重量部(ポリスチレン系樹脂組成物において7重量%)となるよう計量して圧入し、溶融状態の熱履歴ポリスチレン系樹脂Aと二酸化炭素とを混合混練した上で、このポリスチレン系樹脂組成物を第二押出機に連続的に供給して、溶融混練させつつ発泡に適した樹脂温度(130℃)に冷却した後、第二押出機の先端に取り付けた口径2.3mm、ランド7mmのダイスから10kg/時間の吐出量でストランド状に押出発泡し、ポリスチレン系樹脂発泡体を製造した。
(実施例2)
熱履歴ポリスチレン系樹脂:Aに代えて熱履歴ポリスチレン系樹脂:Bを用いた点以外は、実施例1と同様にしてポリスチレン系樹脂発泡体を製造した。
(実施例3)
熱履歴ポリスチレン系樹脂:Aに代えて熱履歴ポリスチレン系樹脂:Cを用いた点以外は、実施例1と同様にしてポリスチレン系樹脂発泡体を製造した。
(実施例4)
熱履歴ポリスチレン系樹脂:Aに代えて、50重量部の非熱履歴ポリスチレン系樹脂:Dと、50重量部の熱履歴ポリスチレン系樹脂:Bをあらかじめタンブラーにて均一に混合したものを用いた点以外は、実施例1と同様にしてポリスチレン系樹脂発泡体を製造した。
(比較例1)
熱履歴ポリスチレン系樹脂:Aに代えて非熱履歴ポリスチレン系樹脂:Dを用いた点以外は、実施例1と同様にしてポリスチレン系樹脂発泡体を製造した。
(比較例2)
熱履歴ポリスチレン系樹脂:Aに代えて非熱履歴ポリスチレン系樹脂:Dを用い、斯かるポリスチレン系樹脂:Dと、気泡核剤としてのタルク0.5重量部をあらかじめタンブラーにて均一に混合したものを用いた点以外は、実施例1と同様にしてポリスチレン系樹脂発泡体を製造した。
(比較例3)
熱履歴ポリスチレン系樹脂:Aに代えて非熱履歴ポリスチレン系樹脂:Eを用いた点以外は、実施例1と同様にしてポリスチレン系樹脂発泡体を製造した。
<ポリスチレン系樹脂発泡体の見かけ密度及び平均気泡径の評価>
各実施例、各比較例におけるポリスチレン系樹脂発泡体の見かけ密度及び平均気泡径を測定した結果を表1に示す。なお、見かけ密度及び平均気泡径の評価は、上述した方法によって行った。
Figure 2010174193
(実施例5)
以下のようにして、シート状のポリスチレン系樹脂発泡体を製造した。
まず、口径が65mmの第一押出機の先端に口径が75mmの第二押出機を接続してなるタンデム型押出機を用意した。該タンデム型押出機の第一押出機に、100重量部の熱履歴ポリスチレン系樹脂:Aを供給して溶融混錬し、第一押出機の流路の途中から発泡剤としての二酸化炭素を5.3重量部(ポリスチレン系樹脂組成物において5重量%)圧入して、溶融状態のポリスチレン系樹脂と二酸化炭素とを均一に混合混練した上で、ポリスチレン系樹脂組成物を第二押出機に連続的に供給して溶融混練しつつ発泡に適した温度(138℃)に冷却した。その後、第二押出機の先端に取り付けた金型口径φ60mm、間隔0.3mmのサーキュラー金型からポリスチレン系樹脂組成物を吐出量30kg/hで押出発泡させ、得られた円筒状のポリスチレン系樹脂発泡体をマンドレルに添わせて冷却し、マンドレル上の一点で、カッターにより円筒状のポリスチレン系樹脂発泡体を切開して、シート状のポリスチレン系樹脂発泡体を得た。
(実施例6)
熱履歴ポリスチレン系樹脂:Aに代えて熱履歴ポリスチレン系樹脂:Bを用いた点以外は、実施例5と同様にしてシート状のポリスチレン系樹脂発泡体を製造した。
(実施例7)
熱履歴ポリスチレン系樹脂:Aに代えて、50重量部の非熱履歴ポリスチレン系樹脂:Dと50重量部の熱履歴ポリスチレン系樹脂:Bをあらかじめタンブラーにて均一に混合したものを用いた点以外は、実施例5と同様にしてシート状のポリスチレン系樹脂発泡体を製造した。
(比較例4)
熱履歴ポリスチレン系樹脂:Aに代えて非熱履歴ポリスチレン系樹脂:Dを用いた点以外は、実施例5と同様にしてシート状のポリスチレン系樹脂発泡体を製造した。
(比較例5)
熱履歴ポリスチレン系樹脂:Aに代えて熱履歴ポリスチレン系樹脂:Bを用いた点、気泡核剤としてのタルクを0.5重量部用いた点、発泡剤としてのブタンを5.3重量部(ポリスチレン系樹脂組成物において5重量%)圧入した点以外は、実施例5と同様にしてシート状のポリスチレン系樹脂発泡体を製造した。
<断熱性評価>
各実施例、各比較例で製造したシート状ポリスチレン系樹脂発泡体の断熱性を以下のようにして評価した。
即ち、ポリスチレン系樹脂発泡体の表皮をスプリッティングマシン(フォーチュナー社製 「AB−320D」)によりスライス加工して除去し、両面がスライス面とされた厚み0.5mmのスライスシートを得た。
得られた断熱性シートを紙コップ容器の形状に切り取り、紙コップ容器表面に巻きつけ、紙コップ容器内に85℃の温水を注いで蓋をし、容器内水温をデジタル温度計(鶴賀電気社製、「3527A」)により測定した。放射温度計(堀場製作所社製、「IT−550L」)を用いて、容器内水温が80℃になった時点での容器壁面温度について測定した。また、30分後の容器内水温の温度を測定した。スライス加工された断熱性シートの断熱性については、以下の基準により優劣を判断した。
○・・・容器内温度が55℃以上且つ容器壁面温度が65℃未満
×・・・容器内温度が55℃未満且つ容器壁面温度が65℃以上
<印刷性評価>
上記の方法と同様にしてスライス加工した厚み0.5mmのスライスシートの表面にフォントサイズの異なる文字を印刷し、以下の基準により優劣を判断した。
○・・・文字が読み取れ、印刷ムラがない
△・・・文字は読み取れるが、印刷ムラがある
×・・・一部読み取れない文字がある
Figure 2010174193
本発明のポリスチレン系樹脂発泡体は、断熱材、緩衝材などの材料として好適に用いられ得る。また、印刷性、柔軟性などにも優れることから、例えば、容器、包装、生活雑貨などの用途に好適である。

Claims (7)

  1. ポリスチレン系樹脂成分と不活性ガスとを含むポリスチレン系樹脂組成物が押出発泡成形されてなるポリスチレン系樹脂発泡体であって、
    前記ポリスチレン系樹脂成分が、加熱溶融された後に冷却固化された熱履歴ポリスチレン系樹脂を含有していることを特徴とするポリスチレン系樹脂発泡体。
  2. 平均気泡径が0.005〜0.030mmであり、見掛け密度が20〜100kg/m3であることを特徴とする請求項1記載のポリスチレン系樹脂発泡体。
  3. 前記熱履歴ポリスチレン系樹脂が前記ポリスチレン系樹脂成分に30〜100重量%含有されていることを特徴とする請求項1又は2記載のポリスチレン系樹脂発泡体。
  4. 前記不活性ガスが二酸化炭素であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリスチレン系樹脂発泡体。
  5. 前記熱履歴ポリスチレン系樹脂が、押出機を用いて調製されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリスチレン系樹脂発泡体。
  6. 前記熱履歴ポリスチレン系樹脂が、少なくともリサイクルされたポリスチレン系樹脂でなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリスチレン系樹脂発泡体。
  7. ポリスチレン系樹脂成分と不活性ガスとを含むポリスチレン系樹脂組成物を押出発泡成形するポリスチレン系樹脂発泡体の製造方法であって、
    加熱溶融された後に冷却固化された熱履歴ポリスチレン系樹脂を含有した前記ポリスチレン系樹脂成分を用いることを特徴とするポリスチレン系樹脂発泡体の製造方法。
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