JP5704831B2 - 気泡含有発泡性ポリスチレン系樹脂粒子とその製造方法、ポリスチレン系樹脂予備発泡粒子及びポリスチレン系樹脂発泡成形体の製造方法 - Google Patents
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Description
従来、溶融押出法により発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を製造する方法に関して、例えば、特許文献1、2に開示された技術が提案されている。
特許文献1の製造方法は、セル径の大きな予備発泡粒子を得るための方法である。しかし、予備発泡粒子の気泡構造にけるセル径が大きくなると、該予備発泡粒子を型内発泡成形して得られた発泡成形体の強度が低下したり、熱伝導率が高くなって断熱性能が悪化するなどの問題があった。
気泡含有発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の中心を通る断面の粒子表面から200μmを除く断面に存在する気泡数をn個/mm2、嵩密度をρg/cm3とするとき、式(1)
N=n÷(1/ρ) ・・・(1)
で算出されるN値が400以上であることを特徴とする気泡含有発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を提供する。
発泡性ポリスチレン系樹脂粒子が冷却固化する前に該粒子内で微発泡させ、樹脂粒子の中心を通る断面の粒子表面から200μmを除く断面に存在する気泡数をn個/mm2、嵩密度をρg/cm3とするとき、式(1)
N=n÷(1/ρ) ・・・(1)
で算出されるN値が400以上である気泡含有発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得ることを特徴とする気泡含有発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法を提供する。
また、発泡性樹脂粒子がすでに発泡しているため、気泡含有発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を成形型のキャビティ内に直接充填して型内発泡成形して発泡成形体を得ることができ、その結果、発泡成形体の製造工程を削減でき、コストダウンが可能であると共に、エネルギー消費量が削減できるので環境への負荷低減を図ることができる。
N=n÷(1/ρ) ・・・(1)
で算出されるN値が400以上であることを特徴とする。
なお、本明細書及び特許請求の範囲において「気泡」とは、気泡含有発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の断面を走査型電子顕微鏡などで拡大観察した際に樹脂粒子内部に存在している直径5μm以上の気泡のことを指す。
また、発泡性樹脂粒子がすでに発泡しているため、気泡含有発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を成形型のキャビティ内に直接充填して型内発泡成形して発泡成形体を得ることができ、その結果、発泡成形体の製造工程を削減でき、コストダウンが可能であると共に、エネルギー消費量が削減できるので環境への負荷低減を図ることができる。
なお、本発明において、気泡含有発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の嵩密度とは、JIS K6911:1995年「熱硬化性プラスチック一般試験方法」に準拠して測定した値を言う。
<気泡含有発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の嵩密度の測定方法>
メスシリンダに気泡含有発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を500cm3の目盛りまで充填する。但し、メスシリンダを水平方向から目視し、気泡含有発泡性ポリスチレン系樹脂粒子が一粒でも500cm3の目盛りに達していれば、充填を終了する。次に、メスシリンダ内に充填した気泡含有発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の質量を小数点以下2位の有効数字で秤量し、その質量をW(g)とする。次式により気泡含有発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の嵩密度を算出する。
嵩密度 (g/cm3)=W/500
この発泡剤の添加量は、ポリスチレン系樹脂100質量部に対し2〜15質量部の範囲が好ましく、3〜8質量部の範囲がより好ましく、4〜7質量部の範囲が特に好ましい。
図1は、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法に用いられる製造装置の一例を示す構成図であり、本例の製造装置は、樹脂供給装置としての押出機1と、押出機1の先端に取り付けられた多数の小孔を有するダイ2と、押出機1内に樹脂原料等を投入する原料供給ホッパー3と、押出機1内の溶融樹脂に発泡剤供給口5を通して発泡剤を圧入する高圧ポンプ4と、ダイ2の小孔が穿設された樹脂吐出面に冷却水を接触させるように設けられ、室内に冷却水が循環供給されるカッティング室7と、ダイ2の小孔から押し出された樹脂を切断できるようにカッティング室7内に回転可能に設けられたカッター6と、カッティング室7から冷却水の流れに同伴して運ばれる発泡性樹脂粒子を冷却水と分離すると共に脱水乾燥して発泡性樹脂粒子を得る固液分離機能付き脱水乾燥機10と、固液分離機能付き脱水乾燥機10にて分離された冷却水を溜める水槽8と、この水槽8内の冷却水をカッティング室7に送る高圧ポンプ9と、固液分離機能付き脱水乾燥機10にて脱水乾燥された発泡性樹脂粒子を貯留する貯留容器11とを備えて構成されている。
<予備発泡粒子の嵩密度>
メスシリンダに予備発泡粒子を500cm3の目盛りまで充填する。但し、メスシリンダを水平方向から目視し、予備発泡粒子が一粒でも500cm3の目盛りに達していれば、充填を終了する。次に、メスシリンダ内に充填した予備発泡粒子の質量を小数点以下2位の有効数字で秤量し、その質量をW(g)とする。次式により予備発泡粒子の嵩密度を算出する。
嵩密度(g/cm3)=W/500
また、予備発泡粒子の嵩発泡倍数は、次式により算出される数値である。
嵩発泡倍数=1/嵩密度(g/cm3)
本発明の発泡成形体の密度は特に限定されないが、通常は0.010〜0.10g/cm3の範囲内とし、0.015〜0.050g/cm3の範囲内とするのが好ましい。
<発泡成形体の密度>
50cm3以上(半硬質および軟質材料の場合は100cm3以上)の試験片を材料の元のセル構造を変えない様に切断し、その質量を測定し、次式により算出した。
密度(g/cm3)=試験片質量(g)/試験片体積(cm3)
試験片状態調節、測定用試験片は、成形後72時間以上経過した試料から切り取り、23℃±2℃×50%±5%または27℃±2℃×65%±5%の雰囲気条件に16時間以上放置したものである。
また、発泡成形体の発泡倍数は次式により算出される数値である。
発泡倍数=1/密度(g/cm3)
(気泡含有発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造)
基材樹脂としてポリスチレン樹脂(東洋スチレン社製、商品名「HRM−10N」)100質量部に対して、タルクマスターバッチ(ポリスチレン樹脂54質量%、タルク40質量%、ステアリン酸マグネシウム3質量%、ステアリン酸モノグリセライド3質量%の混合物)1.0質量部を、予めタンブラーミキサーにて均一に混合したものを、時間当たり160kg/hrの割合で口径90mmの単軸押出機押出機内へ供給し、樹脂を加熱溶融させた後、発泡剤として樹脂100質量部に対して6質量部のイソペンタンを押出機途中より圧入した。そして、押出機内で樹脂と発泡剤を混練しつつ、押出機先端部での樹脂温度が190℃となるように冷却しながら、押出機に連接しヒーターにより320℃に保持した、直径0.6mm、ランド長さ3.0mmのノズルを200個有する造粒用ダイスを通して、水圧1.0MPa、40℃の冷却水が循環するチャンバー内に押し出すと同時に、円周方向に10枚の刃を有する高速回転カッターをダイスに密着させて、毎分3000回転で切断し、脱水乾燥して球形の気泡含有発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得た。得られた気泡含有発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は変形、ヒゲ等の発生もなく、平均粒径1.1mmであった。
得られた気泡含有発泡性ポリスチレン系樹脂粒子100質量部に対して、ポリエチレングリコール0.03質量部、ステアリン酸亜鉛0.15質量部、ステアリン酸モノグリセライド0.05質量部、ヒドロキシステアリン酸トリグリセライド0.05質量部を樹脂粒子の表面全面に均一に被覆した。
前記の通り製造した気泡含有発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、15℃の保冷庫中に入れ、72時間に亘って放置した後、円筒型バッチ式予備発泡機に供給して、吹き込み圧0.05MPaの水蒸気により加熱し、予備発泡発泡粒子を得た。得られた予備発泡粒子は、嵩密度0.02g/cm3(嵩発泡倍数50倍)であった。続いて、得られた予備発泡粒子を室温雰囲気下、24時間に亘って放置した後、長さ400mm×幅300mm×高さ50mmの長方形状のキャビティを有する成形型内に予備発泡粒子を充填し、その後、成形型のキャビティ内を水蒸気でゲージ圧0.08MPaの圧力で20秒間に亘って加熱し、その後、成形型のキャビティ内の圧力が0.01MPaになるまで冷却し、その後成形型を開き、長さ400mm×幅300mm×高さ50mmの長方形状の発泡成形体を取り出した。得られた発泡成形体は、密度0.02g/cm3(発泡倍数50倍)であった。
前述した通り製造した実施例1の気泡含有発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、予備発泡粒子及び発泡成形体について、以下の評価試験を行った。なお、気泡含有発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の嵩密度及び発泡成形体の発泡倍数は、前述したそれぞれの測定方法に従って求めた。
気泡含有発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の中心付近を通る断面を走査型電子顕微鏡で観察し、70倍に拡大した写真を撮る。この写真に写った気泡含有発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の粒子表面から200μmを除く断面に、0.2mm×0.2mmの範囲をできるだけ重ならないように5箇所取り、それぞれの範囲に存在する気泡数を全て数え(気泡の一部でも含まれている場合もカウントする)、5箇所の気泡数の平均を算出し、さらに1mm2当りの値に換算して求めた。
前記<1mm2当りの気泡数>により算出した気泡含有発泡性ポリスチレン系樹脂粒子1mm2当りの気泡数nと、嵩密度ρを用いた下記の式(1)で計算することによりN値を算出した。
N=n÷(1/ρ) ・・・(1)
発泡成形体の気泡径(平均気泡径)は、ASTM D−2842−69に準拠し、以下の条件で測定した。
走査型電子顕微鏡として日立製作所社製 S−3000Nを用い、発泡成形体断面の写真撮影(撮影倍数:100倍)を行い、写真上にて切断面の一直線(60mm)上にかかる気泡数から平均弦長(t)を測定し、気泡の直径(d)は次式により算出した。
平均弦長(t)=60/(気泡数×撮影倍数)
平均気泡径(d)=t/0.616
得られた発泡成形体について、JIS A9511:2006「発泡プラスチックス保温材」記載の方法に準じて曲げ強度を測定した。 即ち、テンシロン万能試験機UCT−10T(オリエンテック社製)を用い、試験体サイズは75mm×300mm×30mmとし、圧縮速度を10mm/min、先端治具は加圧くさび10R、支持台10Rで、支点間距離200mmの条件として測定し、次式にて曲げ強度を算出した。試験片の数は3個としその平均値を求めた。 曲げ強度(MPa)=3FL/2bh2
(ここで、Fは曲げ最大荷重(N)を表し、Lは支点間距離(mm)、bは試験片の幅(mm)、hは試験片の厚み(mm)を表す。)
発泡成形体を縦50mm、厚さ2.5mmに切断して試験片とし、JIS Z0234に準拠して圧縮強度を測定した。
得られた発泡成形体の落球値をJIS K7211:1976に準拠して測定した。即ち、発泡成形体を縦200mm、横40mm、厚さ25mmに切断して試験片とし、この試験片に質量255gの剛球を垂直に落下させ、発泡成形体の50%が破壊したところの落下高さとして求めた。
使用する発泡核剤を2.0質量部として用いたこと以外は、実施例1と同様にして発泡成形体を製造した。
使用する発泡核剤を永和化成工業社製、商品名「ポリスレンES275」として0.85部用い、水圧0.7MPaとしたこと以外は、実施例1と同様にして発泡成形体を製造した。
使用する発泡核剤を4.0質量部として用いたこと以外は、実施例1と同様にして発泡成形体を製造した。
使用する発泡核剤を5.0質量部として用いたこと以外は、実施例1と同様にして発泡成形体を製造した。
被覆剤を使用しない以外は、実施例1と同様にして気泡含有発泡性樹脂粒子を製造した。その後、この気泡含有発泡性樹脂粒子を成形機にセットした成形型のキャビティ(長さ400mm×幅300mm×厚み50mm)に充填し、0.08MPaの水蒸気で35秒加熱し、冷却して、密度0.641g/cm3、発泡倍数1.6倍、寸法400mm×300mm×50mmの低倍発泡成形体を得た。
使用する発泡核剤を微粉末タルクとして0.3部用い、水圧0.3MPaとしたこと以外は、実施例1と同様にして発泡成形体を製造した。
使用する発泡核剤を微粉末タルクとして0.3部用い、水圧1.0MPaとしたこと以外は、実施例1と同様にして発泡成形体を製造した。
また、実施例6は、気泡含有発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を直接型内発泡成形して低倍発泡成形体を製造した場合であり、少ない工程且つ短時間で低倍発泡成形品を得ることができた。
また、実施例5は、N値が2000以上であり、実施例1〜4の発泡成形体と比べて若干強度が低下していた。かかる点から、N値の上限は、2000以下とすることが望ましいことが分かる。
Claims (6)
- ポリスチレン系樹脂粒子中に発泡剤と気泡とを含む気泡含有発泡性ポリスチレン系樹脂粒子であって、
気泡含有発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の中心を通る断面の粒子表面から200μmを除く断面に存在する気泡数をn個/mm2、嵩密度をρg/cm3とするとき、式(1)
N=n÷(1/ρ) ・・・(1)
で算出されるN値が400〜2000の範囲内であり、かつ嵩密度ρが0.4g/cm 3 以上であることを特徴とする気泡含有発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。 - 樹脂供給装置内でポリスチレン系樹脂に発泡剤と発泡核剤を添加、混練し、発泡剤含有溶融樹脂を樹脂供給装置先端に付設されたダイの小孔から冷却用液体中に押し出し、押し出すと同時に押出物を切断するとともに、押出物を液体との接触により冷却固化して発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得る方法において、
発泡性ポリスチレン系樹脂粒子が冷却固化する前に該粒子内で微発泡させ、樹脂粒子の中心を通る断面の粒子表面から200μmを除く断面に存在する気泡数をn個/mm2、嵩密度をρg/cm3とするとき、式(1)
N=n÷(1/ρ) ・・・(1)
で算出されるN値が400〜2000の範囲内であり、かつ嵩密度ρが0.4g/cm 3 以上である気泡含有発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得ることを特徴とする気泡含有発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法。 - 前記発泡核剤として、無機粉末又は化学発泡剤をベース樹脂中に均一に分散させたマスターバッチ型発泡核剤を用いる請求項2に記載の気泡含有発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法。
- 請求項2又は3に記載の気泡含有発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法により気泡含有発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得る工程と、次いで、前記気泡含有発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を加熱してポリスチレン系樹脂予備発泡粒子を得る工程と、を有することを特徴とするポリスチレン系樹脂予備発泡粒子の製造方法。
- 請求項2又は3に記載の気泡含有発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法により気泡含有発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得る工程と、次いで、前記気泡含有発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を加熱してポリスチレン系樹脂予備発泡粒子を得る工程と、次いで、前記ポリスチレン系樹脂予備発泡粒子を成形型のキャビティ内に充填し加熱し型内発泡成形してポリスチレン系樹脂発泡成形体を得る工程と、を有することを特徴とするポリスチレン系樹脂発泡成形体の製造方法。
- 請求項2又は3に記載の気泡含有発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法により気泡含有発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得る工程と、次いで、前記気泡含有発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を成形型のキャビティ内に充填し加熱し型内発泡成形してポリスチレン系樹脂発泡成形体を得る工程と、を有することを特徴とするポリスチレン系樹脂発泡成形体の製造方法。
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