JP5641846B2 - 発泡性ポリスチレン系樹脂粒子とその製造方法、ポリスチレン系樹脂予備発泡粒子及びポリスチレン系樹脂発泡成形体 - Google Patents
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Description
一般に、回収された魚使用済みの魚函や食品トレーなどの容器類は、加熱減容されて回収インゴットとし、さらに、必要に応じて該インゴットを押出機に投入してペレット状に成形している。
しかし、この使用済みの魚函や食品トレーなどの容器類の場合、魚臭などの強い臭気が残留していることが多く、前記インゴットやペレットなどのリサイクル原料を用いて発泡成形体製造用の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を製造し、これを型内発泡成形して製造した発泡成形体にその臭気が残留してしまう可能性があることから、使用済みの魚函や食品トレーなどの容器類から得られたリサイクル原料の使用が制限されてしまう問題がある。
また、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の表面に消臭剤をコーティングするだけでは、強い臭気を持つポリスチレン系樹脂を原料に製造した発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に対しては、消臭効果が不十分である。特に、消臭剤をコーティングした発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造及び搬送時に該コーティングが剥離したり、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を蒸気加熱して予備発泡する際に、蒸気や凝集水によって該コーティングが剥離してしまうことから、強い臭気を持つポリスチレン系樹脂を原料に製造した発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を無臭化することは困難であった。
さらに、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の表面に消臭剤をコーティングする場合、消臭剤の量が多いと、該樹脂粒子を用い型内発泡成形により得られた発泡成形体は、発泡粒子同士の融着が悪くなって、発泡成形体の機械強度の低下や外観の悪化を招いてしまう問題がある。
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法によれば、臭気成分を含むポリスチレン系樹脂を用い、使用時に臭気が問題とならないレベルの発泡成形体を製造可能な発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を効率よく製造することができる。
(発泡性ポリスチレン系樹脂粒子)
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、ポリスチレン系樹脂を樹脂供給装置内で加熱溶融し、発泡剤と混合してダイの小孔から水中に押出し、切断して得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子であって、ポリスチレン系樹脂100質量部に対し、消臭剤としてシリカ0.05〜5.0質量部が該樹脂粒子中に分散された状態で含まれていることを特徴としている。
また、前記シリカは、各種の臭気成分を選択的に吸着可能なように、多孔質構造の表面に、水酸基、アミノ基、カルボキシル基などの官能基を含有させたシリカを用いることもできる。さらに、異なる官能基を持った複数種類のシリカを適宜混合して、複数の臭気成分の吸収力を高めたものを用いることもできる。
前記シリカをポリスチレン系樹脂に添加する際、樹脂中にシリカを予め均一に分散させた状態のマスターバッチを添加すると、シリカの樹脂粒子内での分散性が向上し、同量の粉末シリカを樹脂に直接添加した場合よりも消臭性能を向上させることができるので、前記マスターバッチを使用することが好ましい。
図1は、本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法に用いられる製造装置の一例を示す構成図であり、本例の製造装置は、樹脂供給装置としての押出機1と、押出機1の先端に取り付けられた多数の小孔を有するダイ2と、押出機1内に樹脂原料等を投入する原料供給ホッパー3と、押出機1内の溶融樹脂に発泡剤供給口5を通して発泡剤を圧入する高圧ポンプ4と、ダイ2の小孔が穿設された樹脂吐出面に冷却水を接触させるように設けられ、室内に冷却水が循環供給されるカッティング室7と、ダイ2の小孔から押し出された樹脂を切断できるようにカッティング室7内に回転可能に設けられたカッター6と、カッティング室7から冷却水の流れに同伴して運ばれる発泡性樹脂粒子を冷却水と分離すると共に脱水乾燥して発泡性樹脂粒子を得る固液分離機能付き脱水乾燥機10と、固液分離機能付き脱水乾燥機10にて分離された冷却水を溜める水槽8と、この水槽8内の冷却水をカッティング室7に送る高圧ポンプ9と、固液分離機能付き脱水乾燥機10にて脱水乾燥された発泡性樹脂粒子を貯留する貯留容器11とを備えて構成されている。
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、発泡樹脂成形体の製造分野において周知の装置及び手法を用い、水蒸気加熱等により加熱して予備発泡し、ポリスチレン系樹脂予備発泡粒子(以下、予備発泡粒子と記す)とする。この予備発泡粒子は、製造するべき発泡成形体の密度と同等の嵩密度となるように予備発泡される。本発明において、その嵩密度は限定されないが、通常は0.010〜0.10g/cm3の範囲内とし、0.015〜0.050g/cm3の範囲内とするのが好ましい。
<予備発泡粒子の嵩密度>
先ず、予備発泡粒子を測定試料としてWg採取し、この測定試料をメスシリンダー内に自然落下させ、メスシリンダー内に落下させた測定試料の体積Vcm3をJIS K6911に準拠した見掛け密度測定器を用いて測定し、下記式に基づいて予備発泡粒子の嵩密度を測定する。
嵩密度(g/cm3)=測定試料の質量(W)/測定試料の体積(V)
また、予備発泡粒子の嵩発泡倍数は、次式により算出される数値である。
嵩発泡倍数=1/嵩密度(g/cm3)
本発明の発泡成形体の密度は特に限定されないが、通常は0.010〜0.10g/cm3の範囲内とし、0.015〜0.050g/cm3の範囲内とするのが好ましい。
<発泡成形体の密度>
50cm3以上(半硬質および軟質材料の場合は100cm3以上)の試験片を材料の元のセル構造を変えない様に切断し、その質量を測定し、次式により算出した。
密度(g/cm3)=試験片質量(g)/試験片体積(cm3)
試験片状態調節、測定用試験片は、成形後72時間以上経過した試料から切り取り、23℃±2℃×50%±5%または27℃±2℃×65%±5%の雰囲気条件に16時間以上放置したものである。
また、発泡成形体の発泡倍数は次式により算出される数値である。
発泡倍数=1/密度(g/cm3)
(発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造)
まず、ポリスチレン系樹脂(商品名「HRM−10N」、東洋スチレン社製)及びシリカ(商品名「ケスモンNS−100」、東亞合成社製)を、シリンダ温度が200〜220℃に保持された二軸押出機(口径:30mm、L/D=35)に供給して溶融混練し、二軸押出機の先端に取り付けられたダイ(直径3mm、孔数:4個)から押出量10kg/hにてストランド状に押し出して、シリカが10質量%含有されたマスターバッチを得た。
次に、魚函回収インゴットから得られた再生ペレット100質量部(分子量約24万)に対し、微粉末タルク0.3質量部と前記シリカマスターバッチ(シリカ0.2質量部相当分を添加)を加え、これらを口径90mmの単軸押出機に、時間当たり130kgで連続供給した。押出機内温度としては、最高温度210℃に設定し、樹脂を溶解させた後、発泡剤として樹脂100質量部に対して5質量部のペンタン(イソペンタン:ノルマルペンタン=20:80(質量比))を押出機の途中から圧入した。押出機内で樹脂と発泡剤を混練するとともに冷却し、押出機先端部での樹脂温度を170℃、ダイの樹脂導入部の圧力を15MPaに保持して、直径0.6mmでランド長さが3.0mmの小孔が200個配置されたダイより、このダイの吐出側に連結され30℃の水が循環するカッティング室に、発泡剤含有溶融樹脂を押し出すと同時に、10枚の刃を有する高速回転カッターにて押出物を切断した。切断した粒子を循環水で冷却しながら、粒子分離器に搬送し、粒子を循環水と分離した。さらに、捕集した粒子を脱水・乾燥してペンタン含有発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得た。得られたペンタン含有発泡性ポリスチレン系樹脂粒子(分子量23万)は、変形、ヒゲ等の発生もなく、ほぼ完全な球体であり、平均粒径は約1.1mmであった。
得られたペンタン含有発泡性ポリスチレン系樹脂粒子100質量部に対して、ポリエチレングリコール0.03質量部、ステアリン酸亜鉛0.15質量部、ステアリン酸モノグリセライド0.05質量部、ヒドロキシステアリン酸トリグリセライド0.05質量部を該樹脂粒子の表面全面に均一に被覆した。
この発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を15℃の保冷庫中に入れ、72時間に亘って放置した。その後、円筒型バッチ式予備発泡機に供給して、吹き込み圧0.05MPaの水蒸気により加熱し、予備発泡粒子を得た。得られた予備発泡粒子は、嵩密度0.020g/cm3(嵩発泡倍数50倍)であった。
続いて、得られた予備発泡粒子を室温雰囲気下、24時間にわたって放置した後、長さ400mm×幅300mm×高さ50mmの長方形状のキャビティを有する成形型内に予備発泡粒子を充填し、その後、成形型のキャビティ内を水蒸気でゲージ圧0.08MPaの圧力で10秒間に亘って加熱し、その後、成形型のキャビティ内の圧力が0.01MPaになるまで冷却し、その後成形型を開き、長さ400mm×幅300mm×高さ50mmの長方形状の発泡成形体を取り出した。
得られた発泡成形体は、密度0.020g/cm3(発泡倍数50倍)であった。
前述した通り製造した実施例1の発泡成形体について、以下の成形品外観、成形サイクル及び臭気判定試験を行った。また、原料樹脂及びペンタン含有発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の質量平均分子量Mwの測定方法も以下に記す。
結果を表1に記す。
押出機に投入する原料となるポリスチレン系樹脂、及び溶融押出法によって作製した発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を構成するポリスチレン系樹脂について、それぞれの樹脂約4mgをTHF(テトラヒドロフラン)4mLに溶解し、非水系0.45μmクロマトディスクで濾過後、東ソー社製 HLC−8320GPC(RI検出器内臓)を用いてポリスチレン換算分子量を測定した。
その測定条件はカラムが東ソー社製TOSOH TSKgel SuperMultiporeHZ−H(φ4.6×150mm)2本、ガードカラムが東ソー社製TOSOH TSKguardSuperMP(HZ)−H(φ4.6×20mm)1本を用い、カラム温度(40℃)、移動相(THF)、移動相流量(0.2ml/min)、ポンプ温度・検出器(40℃)、検出(RI)、注入量(20μl)、検量線用標準PS(昭和電工社製(Shodex)分子量Mwが5,620,000と3,120,000と1,250,000と442,000と131,000と54,000と20,000と7,590と3,450と1,320)とした。
発泡成形体(長さ400mm×幅300mm×高さ50mm)の長さ方向の中心に沿って、カッターナイフで深さ約5mmの切り込み線を入れた後、この切り込み線に沿って発泡成形体を手で二分割し(長さ200mm×幅300mm×高さ50mm)、その破断面における発泡粒子について、100〜150個の任意の範囲について、発泡粒子内で破断している粒子の数(a)と発泡粒子同士の界面で破断している粒子の数(b)とを数え、式[(a)/((a)+(b))]×100に代入して得られた値を融着率(%)とし、次の判断基準で成形品外観を評価した。
良好(○)…融着率が70%以上
不良(×)…融着率が70%未満
長さ400mm×幅300mm×高さ50mmの長方形状のキャビティを有する成形型内に予備発泡粒子を充填し、その後、成形型のキャビティ内を水蒸気でゲージ圧0.08MPaの圧力で10秒間に亘って加熱し、その後、成形型のキャビティ内の圧力が0.01MPaになるまでの冷却時間を測定し、以下の判断基準で成形サイクルを評価した。
良好(○)…冷却時間が360秒未満
不良(×)…冷却時間が360秒以上
発泡成形体を100mm×100mm×50mmの寸法にカットしてサンプルとし、このサンプルを臭気判定試験用缶に入れ、60℃のオーブンに入れ、1時間加熱し、30分間室温に放置後、臭気試験を実施した。10名のパネラーがサンプルの臭いを嗅ぎ、以下の臭気評価基準に基づいて臭気強度を評価、採点(無臭(0点)〜強烈な臭い(5点))した。10名のパネラーの採点結果の平均値を算出し、その値の小数点1桁を四捨五入し、臭気強度とした。
5…強烈な臭い
4…強い臭い
3…楽に感知できる臭い
2…何の臭いかがわかる弱い臭い
1…やっと感知できる臭い
0…無臭
ポリスチレン系樹脂100質量部に対するシリカ量を1.0質量部としたこと以外は、実施例1と同様にして発泡成形体を製造し、臭気判定試験を行った。その結果を表1に記す。
ポリスチレン系樹脂100質量部に対するシリカ量を4.0質量部としたこと以外は、実施例1と同様にして発泡成形体を製造し、臭気判定試験を行った。その結果を表1に記す。
シリカを粉末のままポリスチレン系樹脂に添加(シリカ量は0.2質量部)したこと以外は、実施例1と同様にして発泡成形体を製造し、臭気判定試験を行った。その結果を表1に記す。
シリカ0.2質量部と、リン酸ジルコニウム0.2質量部とをポリスチレン系樹脂に添加したこと以外は、実施例1と同様にして発泡成形体を製造し、臭気判定試験を行った。その結果を表1に記す。
ポリスチレン系樹脂100質量部に対するシリカ量を0.1質量部としたこと以外は、実施例1と同様にして発泡成形体を製造し、臭気判定試験を行った。その結果を表1に記す。
シリカを添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして発泡成形体を製造し、臭気判定試験を行った。その結果を表1に記す。
ポリスチレン系樹脂100質量部に対するシリカ量を0.03質量部としたこと以外は、実施例1と同様にして発泡成形体を製造し、臭気判定試験を行った。その結果を表1に記す。
ポリスチレン系樹脂100質量部に対するシリカ量を7.0質量部としたこと以外は、実施例1と同様にして発泡成形体を製造し、臭気判定試験を行った。その結果を表1に記す。
また実施例1〜6は、発泡成形体の外観は良好であり、シリカの添加効果により成形サイクルも短縮することができた。
ポリスチレン系樹脂100質量部に対しシリカを0.03質量部添加した比較例2の発泡成形体は、臭気強度4(強い臭い)となり、シリカによる消臭効果が不十分であった。また、成形サイクルの短縮化は不良(×)であった。
ポリスチレン系樹脂100質量部に対しシリカを7.0質量部添加した比較例3の発泡成形体は、臭気強度0(無臭)となったものの、得られた発泡成形体の発泡粒子同士が十分に融着せず、融着率が70%未満となり、外観不良(×)となった。
Claims (10)
- ポリスチレン系樹脂を樹脂供給装置内で加熱溶融し、発泡剤と混合してダイの小孔から水中に押出し、切断して得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子であって、
タルクと、消臭剤としてシリカとを併有し、
ポリスチレン系樹脂100質量部に対し、前記シリカ0.05〜5.0質量部が該樹脂粒子中に分散された状態で含まれていることを特徴とする発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。 - 前記ポリスチレン系樹脂が、ポリスチレン系樹脂発泡成形体回収樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
- 前記ポリスチレン系樹脂が臭気成分を含有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
- 前記ポリスチレン系樹脂の質量平均分子量Mwが12〜28万の範囲であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
- ポリスチレン系樹脂を樹脂供給装置内で加熱溶融し、前記ポリスチレン系樹脂に、発泡剤と、タルクと、消臭剤としてポリスチレン系樹脂100質量部に対しシリカ0.05〜5.0質量部とを混合してダイの小孔から水中に押出し、切断して発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得ることを特徴とする発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法。
- 前記ポリスチレン系樹脂が、ポリスチレン系樹脂発泡成形体回収樹脂であることを特徴とする請求項5に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法。
- 前記ポリスチレン系樹脂が臭気成分を含有していることを特徴とする請求項5又は6に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法。
- 前記ポリスチレン系樹脂の質量平均分子量Mwが12〜28万の範囲であることを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を加熱して予備発泡して得られたポリスチレン系樹脂予備発泡粒子。
- 請求項9に記載のポリスチレン系樹脂予備発泡粒子を成形型のキャビティ内に充填し加熱して型内発泡成形して得られたポリスチレン系樹脂発泡成形体。
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