JP2010168476A - 油脂の結晶成長抑制剤およびそれを含んでなる可塑性油脂組成物 - Google Patents

油脂の結晶成長抑制剤およびそれを含んでなる可塑性油脂組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】油脂結晶の粗大化が抑制された可塑性油脂組成物を提供する。
【解決手段】エステル化率15%以上40%未満のトリグリセリン脂肪酸エステルを含むことを特徴とする油脂の結晶成長抑制剤を油脂に添加し、可塑性油脂組成物を調製する。
【選択図】なし

Description

本発明は、油脂の結晶成長抑制剤およびそれを含んでなる可塑性油脂組成物に関する。
加工油脂の品質劣化、特に油脂結晶の粗大化による物性の悪化は、その商品価値を著しく損なわせる。そのため、油脂結晶の成長を抑制することは、加工油脂の製造において最も重要な課題の一つである。とりわけ、パーム油は粗大結晶を生成し易い油脂として知られており、パーム油を配合したマーガリン、ショートニングなどの可塑性油脂組成物では、従来問題となっていた。
この問題を解決する手段の一つとして乳化剤の添加があり、例えば、HLBが3以下であって、構成脂肪酸が、炭素数12〜22の飽和脂肪酸20〜80重量%及び炭素数16〜22の不飽和脂肪酸80〜20重量%からなる多価アルコール脂肪酸エステルを有効成分とする油脂の結晶成長抑制剤(特許文献1参照)、成分(A)パーム油を50重量%以上と、成分(B)ポリグリセリン脂肪酸エステルを0.05〜5重量%とを含有する油脂組成物であって、該成分(B)のエステル化率が50%以上、該成分(B)の構成脂肪酸の80重量%以上がオレイン酸とパルミチン酸からなり、オレイン酸とパルミチン酸とのモル比が90:10〜10:90であることを特徴とする油脂組成物(特許文献2参照)、原料油脂としてパーム油を30%以上配合し、乳化剤中にポリグリセリン脂肪酸エステルであって、ポリグリセリン部分の組成が、0〜89%のジ-からペンタグリセロール、11%以上のヘキサグリセロールより高重合物から成り、脂肪酸残基はC14〜C20の脂肪酸から成り、エステル化度が50%以上である組成物を、油脂に対して0.05〜5%用いることを特徴とするパーム油を主原料とした加工油脂の製造法(特許文献3参照)などが提案されている。
しかし、上記の技術は、実用上必ずしも満足できるものではない。
特開平5−199838号公報 特開平9−176680号公報 特開昭59−166562号公報
本発明は、油脂結晶の粗大化が抑制された可塑性油脂組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、パーム油を配合した可塑性油脂組成物の製造の際、エステル化率15%以上40%未満のトリグリセリン脂肪酸エステルを添加することにより油脂結晶の粗大化が著しく抑制されることを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、
(1)エステル化率15%以上40%未満のトリグリセリン脂肪酸エステルを含むことを特徴とする油脂の結晶成長抑制剤、
(2)上記(1)に記載の油脂の結晶成長抑制剤を含んでなる可塑性油脂組成物、
からなっている。
本発明の油脂の結晶成長抑制剤は、とりわけパーム油を配合した可塑性油脂組成物の粗大結晶の生成抑制に有効である。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
本発明で油脂の結晶成長抑制剤として用いられるトリグリセリン脂肪酸エステルは、トリグリセリンと脂肪酸とのエステル化生成物であり、エステル化反応など自体公知の方法で製造される。
トリグリセリン脂肪酸エステルの原料として用いられるトリグリセリンとしては、通常グリセリンに少量の酸またはアルカリを触媒として添加し、窒素または二酸化炭素などの任意の不活性ガス雰囲気下で、例えば約180℃以上の温度で加熱し、重縮合反応させて得られるグリセリンの平均重合度が約2.5〜3.4、好ましくは平均重合度が約3.0のトリグリセリン混合物が挙げられる。また、トリグリセリンはグリシドールまたはエピクロルヒドリンなどを原料として得られるものであっても良い。反応終了後、必要であれば中和、脱塩、脱色などの処理を行ってよい。さらに、上記トリグリセリン混合物を、例えば蒸留またはカラムクロマトグラフィーなど自体公知の方法を用いて精製し、グリセリン3分子からなるトリグリセリンを約50%以上、好ましくは約85%以上に高濃度化した高純度トリグリセリンが、好ましく用いられる。
トリグリセリン脂肪酸エステルの原料として用いられる脂肪酸としては、食用可能な動植物油脂を起源とする脂肪酸であれば特に制限はないが、好ましくは炭素数14〜24の直鎖の飽和脂肪酸(例えば、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸など)であり、とりわけパルミチン酸および/またはステアリン酸を約90%以上含有する飽和脂肪酸が一層好ましい。
トリグリセリン脂肪酸エステルの製法の概略は以下の通りである。
例えば、攪拌機、加熱用のジャケット、邪魔板などを備えた通常の反応容器に、トリグリセリンと脂肪酸を仕込み、通常触媒として水酸化ナトリウムを加えて攪拌混合し、窒素ガス雰囲気下で、エステル化反応により生成する水を系外に除去しながら、所定温度で加熱する。反応温度は通常、約180〜260℃の範囲、好ましくは約200〜250℃の範囲である。また、反応圧力条件は減圧下または常圧下で、反応時間は約0.5〜15時間、好ましくは約1〜3時間である。反応の終点は、通常反応液の酸価1以下を目安にして決められる。
得られた反応液は、未反応の脂肪酸、未反応のトリグリセリン、トリグリセリンモノ脂肪酸エステル、トリグリセリンジ脂肪酸エステル、トリグリセリントリ脂肪酸エステル、トリグリセリンテトラ脂肪酸エステルおよびトリグリセリンペンタ脂肪酸エステルなどを含む混合物である。
エステル化反応終了後、反応液中に残存する触媒を中和するのが好ましい。中和処理は反応液の温度が200℃以下で行われるのが好ましい。触媒の中和は、例えば、触媒として水酸化ナトリウムを使用した場合、リン酸(85%)を反応液に添加して、良く混合することにより行われる。中和後、その温度で好ましくは約0.5時間以上、更に好ましくは約1〜10時間放置し、未反応のトリグリセリンなどを含むポリオールが下層に分離した場合はそれを除去するのが好ましい。
本発明で用いられるトリグリセリン脂肪酸エステルは、そのエステル化率が15%以上40%未満の範囲であることが好ましい。エステル化率(%)は下式により算出される。ここでエステル価および水酸基価は、「基準油脂分析試験法(I)」(社団法人 日本油化学会編)の[2.3.3-1996 エステル価]および[2.3.6-1996 ヒドロキシル価]に準じて測定される。
Figure 2010168476
本発明の可塑性油脂組成物としては、例えば油中水型乳化物であるマーガリン、ファットスプレッド、および水分をほとんど含まないショートニングのような製品形態のものが挙げられる。ここでマーガリンは、油脂組成物中に占める油脂含有率が80%以上のものをいい、ファットスプレッドは80%未満のものをいう。
可塑性油脂組成物の原料として用いられる食用油脂としては、食用可能な動植物油脂であれば特に制限はなく、例えばオリーブ油、キャノーラ油、米ぬか油、サフラワー油、大豆油、コーン油、なたね油、パーム油、パーム核油、ひまわり油、綿実油、やし油および落花生油などの植物油脂、牛脂、豚脂、魚油および乳脂などの動物油脂、これらの動植物油脂を分別処理したもの(例えばパームオレイン、パームステアリンなど)、部分水素添加または完全水素添加処理したもの、さらにこれらの動植物油脂単独または二種類以上を任意に組み合わせてエステル交換処理したものなどが挙げられる。これらの油脂は、一種類で用いても良いし、二種類以上を任意に組み合わせて用いても良い。
本発明の可塑性油脂組成物の製造方法に特に制限はなく、自体公知の方法を用いることができる。
以下に、マーガリンの製造方法を例示する。
例えば、食用油脂およびエステル化率15%以上40%未満のトリグリセリン脂肪酸エステルを混合し、約50〜80℃、好ましくは約60〜70℃に加熱して溶解し、所望により酸化防止剤(例えば抽出トコフェロールなど)、着色料(例えばβ−カロテンなど)、香料(例えばミルクフレーバーなど)、乳化剤(例えばレシチンなど)などを添加して油相とする。食用油脂100質量部に対するエステル化率15%以上40%未満のトリグリセリン脂肪酸エステルの配合量は、好ましくは約0.01〜0.25質量部であり、とりわけ約0.05〜0.15質量部であるのがより好ましい。一方、精製水に、所望により乳または乳製品(例えば全粉乳、脱脂粉乳など)、食塩、砂糖類、酸味料(例えばクエン酸など)などを加え、約50〜60℃に加熱して溶解し水相とする。次に、油相と水相を通常の攪拌・混合槽を用いて混合し、得られた混合液を送液ポンプで急冷捏和装置に送液し、油脂の結晶化と練捏を連続的に行い可塑性油脂組成物を得る。また乳化工程をとらず、油相と水相をそれぞれ定量ポンプで急冷捏和装置に送液し、以下同様に処理し可塑性油脂組成物を得ることもできる。
またショートニングの製造方法を以下に例示する。
例えば、食用油脂およびエステル化率15%以上40%未満のトリグリセリン脂肪酸エステルを混合し、約50〜80℃、好ましくは約60〜70℃に加熱して溶解し、所望により酸化防止剤(例えば抽出トコフェロールなど)、着色料(例えばβ−カロテンなど)、香料(例えばミルクフレーバーなど)、乳化剤(例えばレシチンなど)を添加する。食用油脂100質量部に対するエステル化率15%以上40%未満のトリグリセリン脂肪酸エステルの配合量は、好ましくは約0.01〜0.25質量部であり、とりわけ約0.05〜0.15質量部であるのがより好ましい。得られた溶液を、組成物100g中約10〜15mlとなるよう窒素ガスまたは空気を吹き込みながら、送液ポンプで予冷器を通して急冷捏和装置に送液し、油脂の結晶化と練捏を連続的に行い可塑性油脂組成物を得る。得られた油脂組成物は、更に、約25〜30℃で24〜48時間テンパリングされるのが好ましい。
急冷捏和装置としては、例えばボテーター(ケメトロン社製)、パーフェクター(ゲルステンベルグ社製)、コンビネーター(シュローダー社製)、オンレーター(櫻製作所社製)などが挙げられる。該装置は一般にAユニットとBユニットから構成され、Aユニットは管型の掻き取り式熱交換機からなっている。Bユニットは製品の種類、目的により構造の異なる管が用いられ、マーガリン、ファットスプレッドでは例えば中空管または内部に金網を設けた管などが、またショートニングでは管の内壁およびシャフトにピンを設けた混練機(ピンチューブ)などが用いられる。
本発明の可塑性油脂組成物(マーガリン)には、食品添加物として、上記の酸化防止剤、着色料、香料、乳化剤、酸味料の他に、乳化安定剤(例えばカゼインナトリウム、ポリリン酸ナトリウムなど)、調味料(例えばL−グルタミン酸ナトリウムなど)、糊料(例えばカラギナン、キサンタンガムなど)、保存料(例えばソルビン酸カリウムなど)、強化剤(例えばビタミンA脂肪酸エステルなど)などを含有させることができる。
また可塑性油脂組成物(ショートニング)には、食品添加物として、上記の酸化防止剤、着色料、香料、乳化剤の他に、酸化防止助剤(例えばクエン酸など)などを含有させることができる。
実施例2および実施例3に係る、トリグリセリン脂肪酸エステル(試作品1〜5)について説明する。
[製造例1]
攪拌機、温度計、ガス吹込管および水分離器を取り付けた反応釜にグリセリン20kgを仕込み、触媒として水酸化ナトリウム20%水溶液100mlを加え、窒素ガス気流中250℃で4時間グリセリン縮合反応を行った。得られた反応生成物を約90℃まで冷却し、リン酸(85%)約20gを添加して中和した後ろ過し、ろ液を160℃、250Paの条件下で減圧蒸留してグリセリンを除き、続いて200℃、20Paの高真空条件下で分子蒸留してジグリセリンを回収し、更に蒸留残液を、240℃、20Paの高真空条件下で分子蒸留し、グリセリン0.2%、ジグリセリン5%、トリグリセリン88%およびテトラグリセリン6%、環状グリセリン0.8%を含む留分約1.5kgを得た。次に、該留分に対して1%の活性炭を加え、減圧下にて脱色処理した後ろ過した。得られた高純度トリグリセリンの水酸基価は約1170で、その平均重合度は約3.0であった。
[製造例2]
撹拌機、温度計、ガス吹込管および水分離器を取り付けた1Lの四つ口フラスコに、製造例1で得た高純度トリグリセリン510.4g(約2.1モル)、およびパルミチン酸(商品名:パルミチン酸98;ミヨシ油脂社製)69.6g(約0.3モル)、ステアリン酸(商品名:ステアリン酸65;ミヨシ油脂社製)220.0g(C16・C18混合脂肪酸として約0.8モルに相当)を仕込み、触媒として水酸化ナトリウム1.5gを加え、窒素ガス気流中240℃で約3時間エステル化反応を行った。反応液の酸価が1以下であることを確認した後、反応液を約180℃まで冷却し、リン酸(85%)3.5gを添加して触媒を中和した。その温度で約1時間放置し、分離した未反応のトリグリセリンを含むポリオールを除去し、トリグリセリン脂肪酸エステル(試作品1)を得た。該トリグリセリン脂肪酸エステル(試作品1)のエステル化率は約16%であった。
[製造例3]
撹拌機、温度計、ガス吹込管および水分離器を取り付けた1Lの四つ口フラスコに、製造例1で得た高純度トリグリセリン339.2g(約1.4モル)、およびパルミチン酸(商品名:パルミチン酸98;ミヨシ油脂社製)110.4g(約0.4モル)、ステアリン酸(商品名:ステアリン酸65;ミヨシ油脂社製)350.4g(C16・C18混合脂肪酸として約1.3モルに相当)を仕込み、触媒として水酸化ナトリウム1.5gを加え、窒素ガス気流中240℃で約3時間エステル化反応を行った。反応液の酸価が1以下であることを確認した後、反応液を約180℃まで冷却し、リン酸(85%)3.5gを添加して触媒を中和した。その温度で約1時間放置し、分離した未反応のトリグリセリンを含むポリオールを除去し、トリグリセリン脂肪酸エステル(試作品2)を得た。該トリグリセリン脂肪酸エステル(試作品2)のエステル化率は約28%であった。
[製造例4]
撹拌機、温度計、ガス吹込管および水分離器を取り付けた1Lの四つ口フラスコに、製造例1で得た高純度トリグリセリン268.0g(約1.1モル)、およびパルミチン酸(商品名:パルミチン酸98;ミヨシ油脂社製)127.2g(約0.5モル)、ステアリン酸(商品名:ステアリン酸65;ミヨシ油脂社製)404.8g(C16・C18混合脂肪酸として約1.5モルに相当)を仕込み、触媒として水酸化ナトリウム1.5gを加え、窒素ガス気流中240℃で約3時間エステル化反応を行った。反応液の酸価が1以下であることを確認した後、反応液を約180℃まで冷却し、リン酸(85%)3.5gを添加して触媒を中和した。その温度で約1時間放置し、分離した未反応のトリグリセリンを含むポリオールを除去し、トリグリセリン脂肪酸エステル(試作品3)を得た。該トリグリセリン脂肪酸エステル(試作品3)のエステル化率は約38%であった。
[製造例5]
撹拌機、温度計、ガス吹込管および水分離器を取り付けた1Lの四つ口フラスコに、製造例1で得た高純度トリグリセリン550.4g(約2.3モル)、およびパルミチン酸(商品名:パルミチン酸98;ミヨシ油脂社製)60.0g(約0.2モル)、ステアリン酸(商品名:ステアリン酸65;ミヨシ油脂社製)189.6g(C16・C18混合脂肪酸として約0.7モルに相当)を仕込み、触媒として水酸化ナトリウム1.5gを加え、窒素ガス気流中240℃で約3時間エステル化反応を行った。反応液の酸価が1以下であることを確認した後、反応液を約180℃まで冷却し、その温度で放置した。約1時間後、分離した未反応のトリグリセリンを含むポリオールを除去し、トリグリセリン脂肪酸エステル(試作品4)を得た。該トリグリセリン脂肪酸エステル(試作品4)のエステル化率は約13%であった。
[製造例6]
撹拌機、温度計、ガス吹込管および水分離器を取り付けた1Lの四つ口フラスコに、製造例1で得た高純度トリグリセリン208.8g(約0.9モル)、およびパルミチン酸(商品名:パルミチン酸98;ミヨシ油脂社製)141.6g(約0.5モル)、ステアリン酸(商品名:ステアリン酸65;ミヨシ油脂社製)449.6g(C16・C18混合脂肪酸として約1.7モルに相当)を仕込み、触媒として水酸化ナトリウム1.5gを加え、窒素ガス気流中240℃で約3時間エステル化反応を行った。反応液の酸価が1以下であることを確認した後、反応液を約180℃まで冷却し、リン酸(85%)3.5gを添加して触媒を中和した。その温度で約1時間放置し、分離した未反応のトリグリセリンを含むポリオールを除去し、トリグリセリン脂肪酸エステル(試作品5)を得た。該トリグリセリン脂肪酸エステル(試作品5)のエステル化率は約52%であった。
製造例2〜6で得た、トリグリセリン脂肪酸エステル(試作品1〜5)のエステル化率を表1にまとめて示す。
Figure 2010168476
パーム油にトリグリセリン脂肪酸エステル(試作品1〜5)を添加して、油脂の粗大結晶の生成を抑制する作用について試験した結果を説明する。
[試験例1]
パーム油(商品名:RPO;植田製油社製)99.95gにトリグリセリン脂肪酸エステル(試作品1〜5)0.05gを加え、80℃に加熱して溶解した。その1滴を顕微鏡用スライドガラスに採り、カバーグラスを被せた後、ペルチェ式加熱・冷却装置(型式:10021;ジャパンハイテック社製)を用いて、約20℃/分の速度で再度80℃まで加熱し、その状態を3分間保持した。次に、約10℃/分の速度で20℃まで急冷して油脂組成物を固化させ、測定用試料とした。各試料を10℃および20℃の恒温器内に保存し、保存開始日より起算して10日、20日および30日後に、偏光顕微鏡にて結晶の状態を観察し、結晶の大きさ(最長部の長さ)を測定した。同時に対照として、乳化剤無添加のものも試験した。測定は、偏光顕微鏡のモニター用データ表示装置(型式:VOT−232;ジャパンハイテック社製)の二点間距離測定機能を用いて行った。結果を表2に示す。
Figure 2010168476
表中記号の説明
◎:タテ180μm、ヨコ250μmの視野中、ほとんどの結晶の大きさが2μm未満
○:タテ180μm、ヨコ250μmの視野中、全体の3/4以上が2μm以上〜5μm未満の結晶
△:タテ180μm、ヨコ250μmの視野中、全体の3/4以上が5μm以上〜20μm未満の結晶
×:タテ180μm、ヨコ250μmの視野中、ほとんどの結晶の大きさが20μm以上
トリグリセリン脂肪酸エステル(試作品1〜5)を配合したマーガリン(試料No.1〜5)を作り、対照のマーガリン(試料No.6)と合わせて、その品質を試験した結果を説明する。
[マーガリン(試料No.1〜5)の作製]
(1)精製水16質量部に食塩1質量部および脱脂粉乳2質量部を加えて溶解し、約40℃に加温して水相とする。
(2)パーム油(商品名:RPO;植田製油社製)80質量%、なたね油(日清オイリオG社製)15質量%およびパームステアリン(不二製油社製)5質量%からなる配合油100質量部に対してトリグリセリン脂肪酸エステル(試作品1〜5)0.1質量部、レシチン(商品名:SLPペースト;辻製油社製)0.1質量部を加えて溶解し、約60℃に加温して油相とする。
(3)(1)の水相をTKホモミキサー(型式:MARKII;プライミクス社製)で低速で攪拌しながら、(2)で調製した油相81質量部を徐々に加えた。乳化液は始めはO/W型を呈しているが途中で転相し、最終的にはW/O型となった。
(4)得られた乳化液を常法により急冷捏和し、マーガリン(試料No.1〜5)を得た。
[マーガリン(試料No.6)の作製]
(1)精製水16質量部に食塩1質量部および脱脂粉乳2質量部を加えて溶解し、約40℃に加温して水相とする。
(2)パーム油(商品名:RPO;植田製油社製)80質量%、なたね油(日清オイリオG社製)15質量%およびパームステアリン(不二製油社製)5質量%からなる配合油100質量部に対してレシチン(商品名:SLPペースト;辻製油社製)0.1質量部を加えて溶解し、約60℃に加温して油相とする。
(3)(1)の水相をTKホモミキサー(型式:MARKII;プライミクス社製)で低速で攪拌しながら、(2)で調製した油相81質量部を徐々に加えた。乳化液は始めはO/W型を呈しているが途中で転相し、最終的にはW/O型となった。
(4)得られた乳化液を常法により急冷捏和し、マーガリン(試料No.6)を得た。
[試験例2]
得られたマーガリン(試料No.1〜6)を5℃で30日間保存した後、各試料10gを切り取り、約20℃の環境下でバターナイフを用いてパンの表面に塗布した。さらに塗布したパンを試食し、伸展性と食感を表3に示す評価基準に従い評価した。官能試験は10名のパネラーで行い、結果は10名の評点の平均値として求め、以下の基準に従って記号化した。結果を表4に示す。

Figure 2010168476
Figure 2010168476
Figure 2010168476
表4から、実施例のマーガリンは比較例および対照のマーガリンに比べて、伸展性および食感のいずれにおいても良好であるのが明らかである。
本発明の可塑性油脂組成物は、食パン、バターケーキ、デニッシュ、パイ、クッキーなどのベーカリー製品用油脂、トッピングクリーム、サンドクリームなどのクリーム用油脂として、さらに家庭用マーガリン、学校給食用マーガリンなどとしても有用である。

Claims (2)

  1. エステル化率15%以上40%未満のトリグリセリン脂肪酸エステルを含むことを特徴とする油脂の結晶成長抑制剤。
  2. 請求項1に記載の油脂の結晶成長抑制剤を含んでなる可塑性油脂組成物。
JP2009012523A 2009-01-23 2009-01-23 油脂の結晶成長抑制剤およびそれを含んでなる可塑性油脂組成物 Active JP5430954B2 (ja)

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