JP2010163638A - 熱交換器用ブレージングシート及び熱交換器 - Google Patents

熱交換器用ブレージングシート及び熱交換器 Download PDF

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Abstract

【課題】高温環境下での機械的強度および外部耐食性に優れる熱交換器用ブレージングシートを提供する。
【解決手段】0.5%以上1.2%以下(質量%、以下同様)のSiと、0.01%以上1.0%未満のMnと、0.1%以上1.0%以下のCuと、0.1%以上0.5%以下のMgとを含有するアルミニウム合金からなる芯材2aと、芯材2aの片面または両面に設けられ、Znと、Siとを含有するアルミニウム合金からなるろう材層2bとを有し、ろう付後の基材の実態温度が150℃の時の引張強度が80MPa以上であり、ろう材層2bの初晶と共晶のα相との固溶Si濃度の差が、0.05質量%以下であり、ろう材層2bの電位勾配が、最表面の電位が最も卑であり最表面から厚み方向に0.5mV/μm以上貴であることを特徴とする熱交換器用ブレージングシート2を採用する。
【選択図】図2

Description

本発明は、熱交換器用ブレージングシート及び熱交換器の改良に関するものである。
従来から、自動車用の熱交換器として、アルミニウム製のものが知られている。このような熱交換器には、例えばフィン、チューブ、ヘッダープレート、サイドサポートなどの部材が使用されている。また、自動車用の熱交換器は、一般に、フッ化物系フラックスを用い、600℃前後の温度で行なわれるろう付処理によって、上記の各部材が一度に接合されて製品とされている。
また、熱交換器用の部材として用いられるチューブやヘッダープレートには、ブレージングシートが用いられている。このようなブレージングシートとしては、例えばAl−Mn−Cu系合金からなる芯材の片面または両面に、Al−Si系合金からなるろう材を貼り合せてなるものや、Al−Mn−Cu系合金からなる芯材の一方の面に、Al−Si系合金からなるろう材を貼り合わせ、他方の面に、Al−Zn系合金からなる犠牲材を貼り合せてなるものなどがある。ブレージングシートの芯材として、Al−Mn−Cu系合金からなるものを用いることで、高い強度と優れた耐食性とを有するブレージングシートが得られる。
また、耐食性に優れたブレージングシートとしては、ろう付け加熱後のブレージングシート内部のCu濃度勾配と最大Cu濃度位置とを適切に定めたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、ブレージングシートを加工してなるチューブを、高強度、高熱伝導性であり、Znを適量含有するフィン材と組み合わせてろう付けすることにより、耐食性に優れた熱交換器を製造する技術も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
ところで、一般の自動車用の各種熱交換器では、使用時の熱交換器の実態温度が80〜100℃程度になり、過給機用のインタークーラでは、100〜150℃程度になり、アルミニウム材料には苛酷な環境下で使用される。
特開平10−140278号公報 特開2000−160271号公報
しかしながら、従来の熱交換器用ブレージングシートを用いた熱交換器は、例えば熱交換器の実態温度が100〜150℃程度になる高温環境下で使用すると、ブレージングシートの機械的強度が低下するという問題や、ブレージングシートの芯材の粒界腐食感受性が高まることにより、外部側から貫通孔が発生しやすくなり、熱交換器が短寿命となるという問題があった。
このため、近年、熱交換器用ブレージングシートの高温環境下における機械的強度および外部耐食性を一層向上させることが要求されている。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、高温環境下での機械的強度および外部耐食性に優れる熱交換器用ブレージングシートを提供することを課題としている。
また、本発明は、本発明の熱交換器用ブレージングシートが用いられてなる高温環境下での使用に好適な熱交換器を提供することを課題としている。
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意研究した結果、本発明を見出した。
まず、本発明者らは、以下に示すように、高温環境下での熱交換器用ブレージングシートの外部耐食性低下のメカニズムについて検討した。
芯材は、加熱ロウ付けされて製品とされた後に、ブレージングシートに基材の実態温度が100〜150℃程度になる高熱が負荷された場合、比較的初期の段階では、Cu系化合物が結晶粒界に優先的に析出する。この結晶粒界へのCu系化合物の析出によって、結晶粒界の近傍に、Cu濃度が希薄で電位的に卑な相(PFZ)が形成されてしまうため、芯材の粒界腐食感受性が高まってしまう。
また、加熱ろう付けされて製品とされた後のブレージングシートのろう材層は、Si粒子とα相とを有する共晶と、初晶とから構成されるものとなる。このような加熱ろう付け後のろう材層では、共晶のα相と初晶とのSi固溶濃度が異なることによって、α相の電位が初晶よりも卑となる。このことによって、ろう材層の共晶のα相では、腐食が優先的に進行するので、ろう材層の共晶のα相を起点とする腐食は、比較的早期に芯材にまで到達してしまう。ろう材層の腐食により芯材が露出すると、ろう材層の犠牲陽極効果が期待できなくなるばかりか、芯材のCu析出に伴う粒界腐食によって、比較的早期にブレージングシートの貫通孔に至ってしまう。
ろう材層を構成する共晶のα相の優先的な腐食は、加熱ろう付け後のブレージングシートに基材の実態温度が150℃程度になる高熱を負荷することで抑制されることが知られている。すなわち、加熱ろう付け後のブレージングシートに使用環境でもある基材の実態温度が100〜150℃程度になる高熱が負荷されると、ろう材層を構成する共晶のα相および初晶に固溶するSiが、いずれも微細且つ密に析出する。このことにより、共晶のα相と初晶とのSi固溶濃度の差を小さくすることが可能となり、共晶のα相と初晶の電位を同等とすることができるので、ろう材層を構成する共晶のα相の優先的な腐食を抑制することができる。
しかし、使用環境下でブレージングシートに基材の実態温度が100〜150℃程度になる高熱が負荷されることで、共晶のα相の優先的な腐食が抑制された場合であっても、ろう材層の腐食形態が孔食(局部腐食)型であるため、局部的な腐食が比較的早期に芯材にまで到達してしまうので、高温環境下での外部耐食性が十分に得られなかった。
そこで、本発明者らは、高温環境下でのろう材層の腐食形態と、ろう材層の電位勾配との関係に着目して鋭意研究を重ねた。
その結果、本発明者らは、共晶のα相と初晶とのSi固溶濃度の差を所定の範囲とし、電位を卑にする効果が高く、且つ高温環境下においても析出が進まないZnをろう材層に添加して、ろう材層に所定の電位勾配を設けさせることで、ろう材層の腐食形態を局部腐食型でなく全面腐食型とすることができ、高温環境下での外部耐食性を向上させることができることを見出した。
なお、従来から、ブレージングシートのろう材層にZnを添加して、ろう材層の電位を芯材よりも卑とする手法は、一般的に行われている。しかしこの場合、ろう材層には固溶して電位を貴にする効果の高いSiと、電位を卑にする効果の高いZnとが共存するため、互いの効果が相殺されてしまい、ろう材層に耐食性上有効な電位勾配を形成できないという問題があった。
しかし、ブレージングシートに事前に基材の実態温度が170〜250℃程度になる高熱を負荷することによって、ろう材層を構成する共晶のα相および初晶に固溶するSiの微細且つ密な析出が十分に促進されて、共晶のα相と初晶とのSi固溶濃度の差が十分に小さくなった状態とされている場合には、ろう材層の電位に及ぼすSiの効果は小さくなる。したがって、例えば不純物の少ない純アルミニウムにZnが添加されているのと同様に、ろう材層に添加されているZnを効果的に機能させることができる。よって、ろう材層にZnを添加することにより、Znを芯材に拡散させて、ろう材層の最表面の電位が最も卑であり最表面から厚み方向に進むにつれて電位が貴になる電位勾配が得られるようになる。
さらに、本発明者らは、ろう材層の電位勾配とろう材層の腐食形態との関係を詳細に調査した。
その結果、ろう材層の電位勾配が、最表面が最も卑で、最表面から厚み方向に0.5mV/μm以上貴となっている場合には、ろう材層の腐食形態が局部腐食型でなく全面腐食型となり、ろう材層の深さ方向への腐食の進行を抑制することができ、ブレージングシートの外部耐食性を大幅に向上させることができることを見出した。
なお、上述したように、Al−Mn−Cu系合金では、加熱ろう付けされて製品となった後のブレージングシートに基材の実態温度が100〜150℃程度になる高熱が負荷された場合、初期の段階では結晶粒界へのCu系化合物の析出により、芯材の粒界腐食感受性が高まる。
しかし、芯材を構成するアルミニウム合金にSiとMgとが含有されていると、高熱が負荷されてから極々初期の段階で、MgSiなどの金属間化合物が析出してサイトとなることにより、Cu化合物の析出が、粒界のみならず粒内においても促進される。したがって、芯材を構成するアルミニウム合金にSiとMgとを含有させることにより、高熱が負荷されてから極々初期の段階において、粒界近傍にCu濃度の希薄な相が形成されてしまうことに起因する粒界腐食感受性を低下させることができ、耐食性を向上させることができる。
また、事前にブレージングシートの実態温度が170〜250℃程度になる高熱を負荷することにより、ろう材層を構成する共晶のα相と初晶とのSi固溶濃度の差が十分に小さくなり、ろう材層が所定の電位勾配を有するものとなり、ろう材層の腐食形態が全面腐食型となった段階では、ろう材層の深さ方向への腐食の進行が抑制されて、腐食の進行がろう材層内で留められるようになるため、ブレージングシートの高い外部耐食性を確保することができる。
また、高熱の負荷される時間が長時間になると、Cu化合物の析出が粒界のみならず、粒内においてもより一層促進されるため、粒界近傍にCu濃度の希薄な相が形成されてしまうことに起因する粒界腐食感受性がより一層低下する。したがって、例えば、ブレージングシートの用いられた熱交換器において、熱交換器の実態温度が100〜150℃程度である高温環境下での使用期間が長期間となって、ブレージングシートのろう材層が腐食して芯材が露出したとしても、芯材が露出した時点で芯材の粒界腐食感受性が既に低下していれば、十分に高い耐食性が得られる。しかも、芯材が露出した時点では、ろう材層から拡散したZnの濃度勾配によって、ろう材層の腐食形態だけでなく、芯材の腐食形態も全面腐食型となっている。このため、芯材が露出したとしても、容易にブレージングシートの貫通孔に至ることはなく、ブレージングシートの外部耐食性を長期間確保できる。
このように、加熱ろう付け後のブレージングシートに事前にブレージングシートの実態温度が170〜250℃程度になる高熱を負荷することにより、ろう材層および芯材の腐食形態が全面腐食型の理想的な状態となるブレージングシートとすることで、高温環境下での外部耐食性に優れたブレージングシートとすることができる。
また、本発明者らは、以下に示すように、高温環境下での熱交換器用ブレージングシートの強度について検討した。
例えば、過給機用のインタークーラでは、エア圧縮力が高まると、エアの温度が上昇する。しかし、アルミニウム材料の機械的特性は、温度の上昇に伴って低下していく。このため、従来のアルミニウム材料を用いた熱交換器では、高温環境下で強度が低下すると、高圧力のエアなどから受けるダメージにより、耐圧強度が大きく低下する。この問題を解決するためには、高温環境下でも一定以上の強度を維持できるアルミニウム材料を用いる必要がある。
すなわち、芯材として、Siと、Mnと、Cuと、Mgとを含有するアルミニウム合金を用いたブレージングシートでは、加熱ろう付け後に100℃以下の温度まで冷却する冷却工程を行なうことにより、微細なAl−Mn−Si系化合物の析出が促進される。さらに、冷却工程後に、ブレージングシートの実態温度が170〜250℃で1時間以上保持される加熱工程を行なうことで、CuAl、MgSi等の金属間化合物の析出が促進される。そして、冷却工程および加熱工程で析出する金属間化合物による強度向上効果によって、Siと、Mnと、Cuと、Mgとを含有し、各元素の含有量が調整されたアルミニウム合金を用いたブレージングシートは、150℃での強度が80MPa以上である高温での強度面で実用に十分耐え得るブレージングシートとなる。また好適には、ろう付後の基材実態温度が150℃の時の引張強度が100MPa以上であることが、より好ましい。
そして、本発明者らは、さらに鋭意研究した結果、芯材として、Siと、Mnと、Cuと、Mgとを含有するアルミニウム合金を用い、芯材を構成するAl、Mn、Cu、Si、Mgの各元素の含有量を以下に示す範囲となるようにすることで、ブレージングシートの高温での強度特性を大幅に向上させることができることを見出し、以下に示す本発明を想到した。
本発明の熱交換器用ブレージングシートは、0.5%以上1.2%以下(質量%、以下同様)のSiと、0.01%以上1.0%未満のMnと、0.1%以上1.0%以下のCuと、0.1%以上0.5%以下のMgとを含有するアルミニウム合金からなる芯材と、前記芯材の片面または両面に設けられ、Znと、Siとを含有するアルミニウム合金からなるろう材層とを有し、ろう付後の基材の実態温度が150℃の時の引張強度が80MPa以上であり、前記ろう材層の初晶と共晶のα相との固溶Si濃度の差が、0.05質量%以下であり、前記ろう材層の電位勾配が、最表面の電位が最も卑であり最表面から厚み方向に0.5mV/μm以上貴であることを特徴とする。
本発明の熱交換器用ブレージングシートにおいては、前記芯材が、0.05%以上1.0%以下のFeと、0.05%以上1.0%以下のNiと、0.1%以上0.3%以下のTiと、0.1%以上0.3%以下のZrとから選ばれる少なくとも1種をさらに含有するものであることが好ましい。
また、本発明の熱交換器用ブレージングシートにおいては、前記ろう材層が、0.5%以上3.0%以下のZnを含有するものであることが好ましい。
また、本発明の熱交換器は、上記のいずれかの熱交換器用ブレージングシートが用いられていることを特徴とする。
本発明の熱交換器用ブレージングシートは、0.5%以上1.2%以下のSiと、0.01%以上1.0%未満のMnと、0.1%以上1.0%以下のCuと、0.1%以上0.5%以下のMgとを含有するアルミニウム合金からなる芯材と、この芯材の片面または両面に設けられ、Znと、Siとを含有するアルミニウム合金からなるろう材層とを有し、ろう付後の基材の実態温度が150℃の時の引張強度が80MPa以上であり、ろう材層の初晶と共晶のα相との固溶Si濃度の差が、0.05質量%以下であり、ろう材層の電位勾配が、最表面の電位が最も卑であり最表面から厚み方向に0.5mV/μm以上貴であるので、高温環境下での機械的強度および外部耐食性に優れたものとなる。
また、本発明の熱交換器は、本発明の熱交換器用ブレージングシートが用いられてなるものであるので、機械的強度および外部耐食性に優れ、高温環境下での使用に好適なものとなる。
図1は、本発明の熱交換器の一例を示した図である。 図2は、図1に示す熱交換器の一部を拡大して示した拡大図であって、図1に示す熱交換器に用いられている熱交換器用ブレージングシートを示した断面図である。
以下、本発明について例を挙げて詳細に説明する。
図1は、本発明の熱交換器の一例を示した図であり、図2は、図1に示す熱交換器の一部を拡大して示した拡大図であって、図1に示す熱交換器に用いられている熱交換器用ブレージングシートを示した断面図である。
図1に示す熱交換器1は、チューブ10と、ヘッダー21と、フィン22と、サイドサポート23とから概略構成されている。
図1に示す熱交換器1において、チューブ10は、図2に示す熱交換器用ブレージングシート2からなるものである。熱交換器1を構成するヘッダー21とチューブ10とは、ヘッダー21の下面に複数整列形成されたスロット(差込孔)21aに各チューブ10の端部を差し込み、差込部分の周りに配置したろう材を用いて両者を相互にろう付することで組み立てられている。また、チューブ10とフィン22は、チューブ10を構成する熱交換器用ブレージングシート2に設けられたろう材層2bを用いて、両者を相互にろう付けすることで組み立てられている。
図1に示す熱交換器1に用いられている熱交換器用ブレージングシート2は、図2に示すように、芯材2aと、芯材2aの両面に設けられたろう材層2bとからなる。後述するように、芯材2aは、Siと、Mnと、Cuと、Mgとを含有するアルミニウム合金からなり、ろう材層2bは、Znと、Siとを含有するアルミニウム合金からなる。
図2に示す熱交換器用ブレージングシート2は、150℃での強度が60MPa以上のものである。したがって、図2に示す熱交換器用ブレージングシート2は、高温での強度面で実用に十分耐え得るものである。
また、図2に示す熱交換器用ブレージングシート2は、ろう材層2bの初晶と共晶のα相との固溶Si濃度の差が、0.05質量%以下であるものである。ろう材層2bの初晶と共晶のα相との固溶Si濃度の差が上記範囲を超えると、ろう材層2bを構成する共晶のα相の優先的な腐食を十分に抑制することができない恐れがある。また、ろう材層2bの初晶と共晶のα相との固溶Si濃度の差が上記範囲を超えると、ろう材層2bの電位に及ぼすSiの効果が大きくなって、ろう材層2bにZnを添加することによって得られるろう材層2bの電位勾配の制御効果が十分に得られず、ろう材層2bの電位勾配が、最表面の電位が最も卑であり最表面から厚み方向に0.5mV/μm以上貴であるものとならない場合がある。
また、図2に示す熱交換器用ブレージングシート2は、ろう材層2bの電位勾配が、最表面の電位が最も卑であり最表面から厚み方向に0.5mV/μm以上貴であるものである。ろう材層2bが上記の電位勾配を有するものである場合、ろう材層2bの腐食形態が全面腐食となり、腐食の深さ方向への進行を抑制することができるので、熱交換器用ブレージングシート2の外部耐食性を大幅に向上させることができる。但し、電位勾配が大きすぎると、ろう材層の自己腐食が大きくなる恐れがあるため、好適には0.5〜2.5mV/μmである。
[芯材]
芯材2aは、Siと、Mnと、Cuと、Mgと、を少なくとも含有するアルミニウム合金からなる。
Siは、基材の実態温度を170〜250℃に保持することにより、MgとともにMgSi等の金属間化合物を生成する。上記金属間化合物がサイトを形成して析出硬化することによって、粒内におけるCu化合物の析出を促進させ、熱交換器用ブレージングシート2の強度を向上させるとともに、粒界腐食感受性を低下させる。さらに、SiはMnと微細なAl−Mn−Si系化合物を形成して、強度向上に寄与する。芯材2aに添加されるSiの含有量は0.5%以上1.2%以下(質量%、以下同様)とすることが好ましく、0.7%以上1.0%以下とすることがより好ましく、0.8%以上0.9%以下とすることが特に好ましい。Siの含有量が0.5%未満であると、Siを添加することによる強度向上の効果や、粒界腐食感受性を低下させる効果が十分に得られない恐れがある。また、Siの含有量が1.2%を超えると、固相線温度の低下により、600℃前後で行なわれる加熱ろう付け処理において、局部的な溶融を招く虞がある。
Mnは、熱交換器用ブレージングシート2の強度を向上させるために用いられる。すなわち、上述したようにMnは、Siと微細なAl−Mn−Si系化合物を形成して、強度向上に寄与する。一方で上述したようにSiはMgとも金属間化合物(MgSi)を生成し、強度向上に寄与する。ここでAl−Mn−Si系化合物とMgSi等の金属間化合物との強度向上への寄与度を比較した場合、後者の方が、強度向上の効果が大きいことが確認された。したがって、芯材2aに添加されるMnの含有量は0.01%以上1.0%未満とすることが好ましく、0.2%以上0.8%以下とすることがより好ましく、0.4%以上0.6%以下とすることが特に好ましい。Mnの含有量が0.01%未満であると、Mnを添加することによる強度向上の効果が十分に得られない恐れがある。また、融点との関係からSiの含有量は上記範囲とされているため、Mnの含有量が1.0%以上であると、Al−Mn−Si系化合物が増え、MgとSiとの金属間化合物は相対的に少なくなり、強度向上の効果が充分に得られない。これに対してMnの含有量が上記範囲内であれば、強度向上効果の大きいMgとSiとの金属間化合物の生成が阻害されずに、より促進されるため、より高い強度が得られる。
Cuは、熱交換器用ブレージングシート2の強度を向上させるために用いられる。Cuは、基材の実態温度を170〜250℃に保持することによりCuAl等の金属間化合物を生成して析出硬化する。芯材2aに添加されるCuの含有量は、0.1%以上1.0%以下とすることが好ましく、0.2%以上0.8%以下とすることがより好ましく、0.4%以上0.6%以下とすることが特に好ましい。Cuの含有量が0.1%未満であると、Cuを添加することによる強度向上の効果や、電位貴化の効果が十分に得られない恐れがある。また、Cuの含有量が1.0%を超えると、固相線温度の低下により、600℃前後で行なわれる加熱ろう付け処理において、局部的な溶融を招く虞がある。また、Cuの含有量が上記範囲を超えると、芯材2aの自己耐食性が低下する恐れがある。
Mgは、基材の実態温度を170〜250℃に保持することによりSiとともにMgSi等の金属間化合物を生成してサイトを形成して析出硬化することによって、粒内におけるCu化合物の析出を促進させ、熱交換器用ブレージングシート2の強度を向上させるとともに、粒界腐食感受性を低下させる。芯材2aに添加されるMgの含有量は、0.1%以上0.5%以下とすることが好ましく、0.15%以上0.45%以下とすることがより好ましく、0.2%以上0.3%以下とすることが特に好ましい。Mgの含有量が0.1%未満であると、Mgを添加することによる強度向上の効果や、粒界腐食感受性を低下させる効果が十分に得られない恐れがある。また、Mgの含有量が0.5%を超えると、加熱ろう付け処理におけるろう付け性が著しく低下する。
また、芯材2aは、0.05%以上1.0%以下のFeと、0.05%以上1.0%以下のNiと、0.1%以上0.3%以下のTiと、0.1%以上0.3%以下のZrとから選ばれる少なくとも1種をさらに含有するものであることが好ましい。
Fe,Ni,Ti,Zrは、熱交換器用ブレージングシート2の強度を向上させるために用いられる。これらの各成分は、含有量が上記範囲未満であると、強度向上の効果が十分に得られない恐れがある。また、含有量が上記範囲を超えると、熱交換器用ブレージングシート2の製造における圧延性および耐食性が著しく低下する。
[ろう材層]
ろう材層2bは、Znと、Siとを含有するアルミニウム合金からなるものである。
Znは、電位を卑化させるために用いられる。特に、基材の実態温度を170〜250℃に保持することにより、ろう材層2bへのSiの析出が促進されるため、Znによる電位を卑にする効果が有効に働く。このため、170〜250℃の保持を行った熱交換器用ブレージングシート2では、ろう材層2bに添加されるZnが少量であっても、所望の電位勾配を得ることができる。ろう材層2bに添加されるZnの含有量は、0.5%以上3.0%以下とすることが好ましく、1.0%以上2.5%以下とすることがより好ましく、1.5%以上2.0%以下とすることが特に好ましい。Znの含有量が0.5%未満であると、所望の電位勾配が得られない恐れがある。また、Znの含有量が3.0%を超えると、ろう材層2bの自己腐食速度が増加するため好ましくない。特に、Znの含有量が上記範囲を超えると、ろう付接合部に形成されたフィレットの腐食速度が大きく増加する。
Siは、他部材とのろう付のために用いられる。ろう材層2bに含まれるSi量に特に制限はないが、一般的にはJISに規定された4343合金(Si:6.8〜8.2質量%)や4045合金(Si:9.0〜11.0質量%)に相当するSi量が最適である。
次に、図1に示す熱交換器1の製造方法を、例を挙げて説明する。
まず、熱交換器用ブレージングシート2を製造する。熱交換器用ブレージングシート2は、0.5%以上1.2%以下のSiと、0.01%以上1.0%未満のMnと、0.1%以上1.0%以下のCuと、0.1%以上0.5%以下のMgとを含有するアルミニウム合金からなる芯材2aの両面に、ろう材層2bを所定のクラッド率で貼り合わせることにより、Znと、Siとを含有するアルミニウム合金からなるろう材層2bを形成することによって得られる。
次いで、このようにして得られた熱交換器用ブレージングシートを用いて、図1に示すチューブ10及びフィン22を形成する。
なお、ここで用いられる熱交換器用ブレージングシート2は、150℃での強度が80MPa以上であり、ろう材層2bの初晶と共晶のα相との固溶Si濃度の差が、0.05質量%以下であり、ろう材層2bの電位勾配が、最表面の電位が最も卑であり最表面から厚み方向に0.5mV/μm以上貴であるものではなく、後述する加熱ろう付け、冷却工程、加熱工程を行うことにより、上記の強度、固溶Si濃度の差、電位勾配を有する図2に示す本実施形態の熱交換器用ブレージングシート2とされる。
その後、以下に示すようにして、図1に示す熱交換器1の組立てを行う。すなわち、図1に示すヘッダー21に、ろう材層2bが表面に設けられた熱交換器用ブレージングシート2からなるチューブ10及びフィン22を組み付けた後、窒素雰囲気中等の適当な雰囲気中で580℃〜610℃程度の温度で、1分〜10分間加熱してろう材層2bを溶解させる加熱ろう付けを行なう。加熱ろう付け時の温度が580℃未満であると、熱交換器用ブレージングシート2のろう材層2b及び芯材2aの一部溶解が進まず、良好なろう付を行うことが困難になる場合がある。また、加熱ろう付け時の温度が610℃を超えると、著しい侵食が生じる虞がある。
続いて、加熱ろう付け後の熱交換器1を、一旦100℃以下の温度となるまで冷却(冷却工程)する。この冷却工程を行なうことにより、ブレージングシート2の芯材2aにおける微細なAl−Mn−Si系化合物の析出が促進される。加熱ろう付け後の冷却工程において、100℃まで冷却することなく、その後の加熱工程に移行した場合、前記の析出状態が不安定となり、ブレージングシート2の高温での強度が不十分なものとなり、150℃での強度が80MPa以上である本実施形態のブレージングシート2が得られない恐れがある。
また、冷却工程後の熱交換器1は、170〜250℃で1時間以上保持される(加熱工程)。加熱工程における保持温度が170℃未満であったり、加熱時間が1時間未満であったりすると、ろう材層2bへのSiの析出が十分に進まず、ろう材層2bの初晶と共晶α相との固溶Si濃度の差を0.05質量%以下にすることができない恐れや、ろう材層2bの電位勾配が、最表面の電位が最も卑であり最表面から厚み方向に0.5mV/μm以上貴であるものとならない恐れがある。また、MgSi等の金属間化合物の析出が不十分となり、ブレージングシート2の高温での強度が不十分なものとなり、150℃での強度が80MPa以上である本実施形態のブレージングシート2が得られない恐れがある。一方、加熱工程における保持温度が250℃を超えると、CuAl等の金属間化合物の析出が不十分となり、ブレージングシート2の強度が著しく低下して実用に耐えられなくなる場合がある。
このような加熱工程後の熱交換器1を構成する熱交換器用ブレージングシート2は、150℃での強度が80MPa以上であり、ろう材層2bの初晶と共晶のα相との固溶Si濃度の差が、0.05質量%以下であり、ろう材層2bの電位勾配が、最表面の電位が最も卑であり最表面から厚み方向に0.5mV/μm以上貴であるものとなる。
図2に示す本実施形態の熱交換器用ブレージングシート2は、0.5%以上1.2%以下(質量%、以下同様)のSiと、0.01%以上1.0%未満のMnと、0.1%以上1.0%以下のCuと、0.1%以上0.5%以下のMgとを含有するアルミニウム合金からなる芯材2aと、芯材2aの両面に設けられ、Znと、Siとを含有するアルミニウム合金からなるろう材層2bとを有し、ろう付後の基材の実態温度が150℃の時の引張強度が80MPa以上であり、ろう材層2bの初晶と共晶の相との固溶Si濃度の差が、0.05質量%以下であり、ろう材層2bの電位勾配が、最表面の電位が最も卑であり最表面から厚み方向に0.5mV/μm以上貴であるものであるので、今後予想される熱交換器1の苛酷な高温環境下での使用条件を考慮しても、実用に十分耐え得る機械的強度および外部耐食性に優れたものとなる。
また、図1に示す本実施形態の熱交換器1は、本実施形態の熱交換器用ブレージングシート2が用いられてなるものであるので、高温環境下での機械的強度および外部耐食性に優れ、高温環境下での使用に好適なものとなる。
また、本実施形態の熱交換器1の製造方法は、0.5%以上1.2%以下のSiと、0.01%以上1.0%未満のMnと、0.1%以上1.0%以下のCuと、0.1%以上0.5%以下のMgとを含有するアルミニウム合金からなる芯材2aと、芯材2aの両面に設けられ、Znと、Siとを含有するアルミニウム合金からなるろう材層2bとを有する熱交換器用ブレージングシート2を、加熱ろう付けすることにより組立て、加熱ろう付け後に、100℃以下の温度まで冷却する冷却工程と、冷却工程後に、170〜250℃で1時間以上保持する加熱工程とを有しているので、高温環境下での機械的強度および外部耐食性に優れた本実施形態の熱交換器用ブレージングシートの用いられた、高温環境下での使用に好適な熱交換器1を容易に製造できる。
なお、ろう材層2bへのSiの析出を促進させる方法としては、加熱工程に代えて、例えば、加熱ろう付け後の冷却速度を制御する方法が考えられる。しかしながら、この場合、ろう材層2bへのSiの析出が均一且つ微細とならない場合がある。これに対し、本実施形態においては、加熱ろう付け後に冷却工程と加熱工程とを行うので、ろう材層2bへのSiの析出が均一且つ微細に促進される。このため、本実施形態によれば、ろう材層2bの初晶と共晶のα相との固溶Si濃度の差が0.05質量%以下である熱交換器用ブレージングシート2を安定して歩留まりよく製造できる。
また、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。
例えば、上述した実施形態では、熱交換器用ブレージングシート2として、芯材2aの両面にろう材層2bを有するものを例に挙げて説明したが、芯材2aの片面にろう材層を有する熱交換器用ブレージングシートであってもよい。
「実施例1〜実施例25、比較例1〜比較例12」
以下、本発明の実施例および比較例について説明する。
表1に示す成分を含有するアルミニウム合金からなる芯材の両面に、表1に示す成分を含有するアルミニウム合金からなるろう材層を形成することによって、表1に示す合金成分の総厚みが0.5mm、ろう材の片面クラッド率が10%の熱交換器用ブレージングシートを形成した。
続いて、得られた熱交換器用ブレージングシートを窒素雰囲気中で600℃の温度で5分間加熱してろう材層を溶解させることにより、加熱ろう付けと同様の熱処理を行なった。
その後、熱処理後の熱交換器用ブレージングシートに、表2に示す条件で、冷却工程、加熱工程を行うことにより、実施例1〜実施例25の熱交換器用ブレージングシートを得た。同様に、表3に示す条件で、冷却工程、加熱工程を行うことにより、比較例1〜比較例12の熱交換器用ブレージングシートを得た。
Figure 2010163638
Figure 2010163638
Figure 2010163638
次いで、このようにして得られた実施例1〜実施例25、比較例1〜比較例12の熱交換器用ブレージングシートの固溶Si濃度の差、電位勾配、高温強度、耐食性、耐圧強度を以下に示すようにして調べた。
その結果をそれぞれ表2及び表3に示す。
「固溶Si濃度の差」
実施例1〜実施例25、比較例1〜比較例12の熱交換器用ブレージングシートを用いて、EPMA(Electron Probe Micro Analyzed)分析により、ろう材層2bの初晶と共晶のα相との固溶Si濃度の差(表2及び表3中には、「初晶と共晶のSi濃度差(%)」と記す)を調べた。
「電位勾配」
実施例1〜実施例25、比較例1〜比較例12の熱交換器用ブレージングシートを用いて、アノード分極測定を実施し、ろう材層2bの電位分布から電位勾配を測定した(表2及び表3中には、「ろう材層の電位勾配(mV/μm)」と記す)。アノード分極には飽和カロメル電極を用い、窒素ガスの吹き込みにより脱気した40℃の2.67%AlCl溶液中で電位掃引速度0.5mV/sで測定した。孔食電位分布は、50℃の5%NaOH水溶液中に浸漬して表面から所定の厚さを溶解除去した後に測定した。
「高温強度」
実施例1〜実施例25、比較例1〜比較例12の熱交換器用ブレージングシートを用いて、JIS H 4000に基づいて引張試験片を作製し、これら試験片を用いて高温槽中で引張試験を行うことにより、基材の実態温度が150℃の時の高温強度を測定した(表2及び表3中には、「高温強度(MPa)」と記す)。
「耐食性」
実施例1〜実施例25、比較例1〜比較例12の熱交換器用ブレージングシートに対し、SWAAT(Sea Water Acetic Acid Test、人工海水噴霧試験)試験を行なった(表2及び表3中には、「耐食性」と記す)。
試験方法は、ASTM(G85−85)規格に則り、以下の条件で(1)および(2)を2サイクル行い実施した。
(1)人工海水(pH=3)噴霧:50℃、0.5時間(2)湿潤:50℃、1.5時間
そして、SWAAT試験による貫通寿命が30日以上である場合を「◎」とし、20日以上30日未満である場合を「○」とし、20日未満を「×」として評価した。
「熱交換器の耐圧強度」
実施例1〜実施例25、比較例1〜比較例12の熱交換器用ブレージングシートをチューブ材およびヘッダープレート材に用いて作製した熱交換器において、熱交換器内部に2秒毎に300kPaの圧力を繰り返し負荷する耐圧試験を実施し、熱交換器の破壊寿命を測定した(表2及び表3中には、「熱交換機の耐圧強度」と記す)。
そして、破壊寿命が10万回以上を「◎」とし、5万回以上10万回未満を「○」とし、5万回未満を「×」として評価した。
表2に示すように、実施例1〜実施例25の熱交換器用ブレージングシートは、いずれも150℃での強度が80MPa以上であり、ろう材層2bの初晶と共晶のα相との固溶Si濃度の差が、0.05質量%以下であり、ろう材層2bの電位勾配が、最表面の電位が最も卑であり最表面から厚み方向に0.5mV/μm以上貴であるものであり、SWAAT貫通日数が20日を超える高い耐食性を有し、熱交換器の耐圧強度が5万回以上で優れていることが確認できた。
これに対し、比較例1の熱交換器用ブレージングシートでは、表1中に示す合金番号21において芯材成分であるSiの含有量が0.1%と本発明で規定する下限を下回っており、高温強度が80MPa未満(78MPa)となり、強度不十分であった。また、熱交換器の耐圧強度も不十分であった。
また、比較例2の熱交換器用ブレージングシートでは、表1中に示す合金番号22において芯材成分であるMnの含有量が0.001%と本発明で規定する下限を下回っており、高温強度が80MPa未満(77MPa)となり、強度不十分であった。また、熱交換器の耐圧強度も不十分であった。
また、比較例3の熱交換器用ブレージングシートでは、表1中に示す合金番号23において芯材成分であるCuの含有量が0.01%と本発明で規定する下限を下回っており、高温強度が80MPa未満(74MPa)となり、強度不十分であった。また、熱交換器の耐圧強度も不十分であった。
また、比較例4の熱交換器用ブレージングシートでは、表1中に示す合金番号24において芯材成分であるMgの含有量が0.01%と本発明で規定する下限を下回っており、高温強度が80MPa未満(62MPa)となり、強度不十分であった。また、熱交換器の耐圧強度も不十分であった。
また、比較例5の熱交換器用ブレージングシートでは、表1中に示す合金番号25においてろう材成分であるZnが含有されていない。このため、最表面から厚み方向に0.5mV/μm以上貴とすることができず(0.2mV/μm)、ブレージングシートの耐食性が不十分であった。
また、比較例6の熱交換器用ブレージングシートでは、表1中に示す合金番号27において芯材成分であるSiの含有量が0.1%、Mnの含有量が0.001%、Mgの含有量が0.01%と本発明で規定する下限を下回っており、高温強度が80MPa未満(65MPa)となり、強度不十分であった。また、熱交換器の耐圧強度も不十分であった。
また、比較例7の熱交換器用ブレージングシートでは、表1中に示す合金番号28において芯材成分であるMnの含有量が0.002%、Cuの含有量が0.02%、Mgの含有量が0.01%と本発明で規定する下限を下回っており、高温強度が80MPa未満(63MPa)となり、強度不十分であった。また、熱交換器の耐圧強度も不十分であった。
また、比較例8の熱交換器用ブレージングシートでは、芯材及びろう材において各成分の組成が本発明の規定範囲内となっているものの、ろう付後の冷却温度が250℃であり、100℃以下の温度まで冷却する冷却工程を行なっていない。このため、微細なAl−Mn−Si系化合物の析出が充分ではなく、高温強度が80MPa未満(58MPa)となり、強度不十分であった。また、熱交換器の耐圧強度も不十分であった。
また、比較例9の熱交換器用ブレージングシートでは、芯材及びろう材において各成分の組成が本発明の規定範囲内となっているものの、ろう付後の加熱工程での温度が130℃であり、170〜250℃程度の高熱が負荷されていない。このため、ろう材層を構成する共晶のα相と初晶とのSi固溶濃度の差が本発明で規定する上限を上回ると共に、ろう材層の電位勾配が本発明で規定する下限を下回ってしまい、ブレージングシートの耐食性が不十分であった。
また、比較例10の熱交換器用ブレージングシートでは、芯材及びろう材において各成分の組成が本発明の規定範囲内となっているものの、ろう付後の加熱工程での温度が350℃であり、170〜250℃の範囲を大きく超えた。このため、強度に寄与する金属間化合物の析出が十分ではなく、高温強度が80MPa未満(61MPa)となり、強度不十分であった。また、熱交換器の耐圧強度も不十分であった。
また、比較例11の熱交換器用ブレージングシートでは、芯材及びろう材において各成分の組成が本発明の規定範囲内となっているものの、ろう付後の加熱工程での加熱時間が1時間未満であった。このため、ろう材層を構成する共晶のα相と初晶とのSi固溶濃度の差が本発明で規定する上限を上回ってしまい、ブレージングシートの耐食性が不十分であった。
また、比較例12の熱交換器用ブレージングシートでは、芯材及びろう材において各成分の組成が本発明の規定範囲内となっているものの、ろう付後の加熱工程が設けられなかった。このため、ろう材層を構成する共晶のα相と初晶とのSi固溶濃度の差が本発明で規定する上限を大きく上回ってしまい、ブレージングシートの耐食性が不十分であった。
上記結果により、本発明で規定する成分組成を有するアルミニウム合金芯材及びアルミニウム合金ろう材からなる熱交換器用ブレージングシートが、高温環境下での機械的強度および外部耐食性に優れたものとなることが明らかである。
1…熱交換器、2…熱交換器用ブレージングシート、2a…芯材、2b…ろう材層、10…チューブ、21…ヘッダー、22…フィン、23…サイドサポート。

Claims (4)

  1. 0.5%以上1.2%以下(質量%、以下同様)のSiと、0.01%以上1.0%未満のMnと、0.1%以上1.0%以下のCuと、0.1%以上0.5%以下のMgとを含有するアルミニウム合金からなる芯材と、前記芯材の片面または両面に設けられ、Znと、Siとを含有するアルミニウム合金からなるろう材層とを有し、
    ろう付後の基材の実態温度が150℃の時の引張強度が80MPa以上であり、
    前記ろう材層の初晶と共晶のα相との固溶Si濃度の差が、0.05質量%以下であり、
    前記ろう材層の電位勾配が、最表面の電位が最も卑であり最表面から厚み方向に0.5mV/μm以上貴であることを特徴とする熱交換器用ブレージングシート。
  2. 前記芯材が、0.05%以上1.0%以下のFeと、0.05%以上1.0%以下のNiと、0.1%以上0.3%以下のTiと、0.1%以上0.3%以下のZrとから選ばれる少なくとも1種をさらに含有するものであることを特徴とする請求項1に記載の熱交換器用ブレージングシート。
  3. 前記ろう材層が、0.5%以上3.0%以下のZnを含有するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱交換器用ブレージングシート。
  4. 請求項1乃至3のいずれか一項に記載の熱交換器用ブレージングシートが用いられていることを特徴とする熱交換器。
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