JP2010163638A - 熱交換器用ブレージングシート及び熱交換器 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】0.5%以上1.2%以下(質量%、以下同様)のSiと、0.01%以上1.0%未満のMnと、0.1%以上1.0%以下のCuと、0.1%以上0.5%以下のMgとを含有するアルミニウム合金からなる芯材2aと、芯材2aの片面または両面に設けられ、Znと、Siとを含有するアルミニウム合金からなるろう材層2bとを有し、ろう付後の基材の実態温度が150℃の時の引張強度が80MPa以上であり、ろう材層2bの初晶と共晶のα相との固溶Si濃度の差が、0.05質量%以下であり、ろう材層2bの電位勾配が、最表面の電位が最も卑であり最表面から厚み方向に0.5mV/μm以上貴であることを特徴とする熱交換器用ブレージングシート2を採用する。
【選択図】図2
Description
また、ブレージングシートを加工してなるチューブを、高強度、高熱伝導性であり、Znを適量含有するフィン材と組み合わせてろう付けすることにより、耐食性に優れた熱交換器を製造する技術も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
このため、近年、熱交換器用ブレージングシートの高温環境下における機械的強度および外部耐食性を一層向上させることが要求されている。
また、本発明は、本発明の熱交換器用ブレージングシートが用いられてなる高温環境下での使用に好適な熱交換器を提供することを課題としている。
まず、本発明者らは、以下に示すように、高温環境下での熱交換器用ブレージングシートの外部耐食性低下のメカニズムについて検討した。
その結果、本発明者らは、共晶のα相と初晶とのSi固溶濃度の差を所定の範囲とし、電位を卑にする効果が高く、且つ高温環境下においても析出が進まないZnをろう材層に添加して、ろう材層に所定の電位勾配を設けさせることで、ろう材層の腐食形態を局部腐食型でなく全面腐食型とすることができ、高温環境下での外部耐食性を向上させることができることを見出した。
その結果、ろう材層の電位勾配が、最表面が最も卑で、最表面から厚み方向に0.5mV/μm以上貴となっている場合には、ろう材層の腐食形態が局部腐食型でなく全面腐食型となり、ろう材層の深さ方向への腐食の進行を抑制することができ、ブレージングシートの外部耐食性を大幅に向上させることができることを見出した。
しかし、芯材を構成するアルミニウム合金にSiとMgとが含有されていると、高熱が負荷されてから極々初期の段階で、Mg2Siなどの金属間化合物が析出してサイトとなることにより、Cu化合物の析出が、粒界のみならず粒内においても促進される。したがって、芯材を構成するアルミニウム合金にSiとMgとを含有させることにより、高熱が負荷されてから極々初期の段階において、粒界近傍にCu濃度の希薄な相が形成されてしまうことに起因する粒界腐食感受性を低下させることができ、耐食性を向上させることができる。
例えば、過給機用のインタークーラでは、エア圧縮力が高まると、エアの温度が上昇する。しかし、アルミニウム材料の機械的特性は、温度の上昇に伴って低下していく。このため、従来のアルミニウム材料を用いた熱交換器では、高温環境下で強度が低下すると、高圧力のエアなどから受けるダメージにより、耐圧強度が大きく低下する。この問題を解決するためには、高温環境下でも一定以上の強度を維持できるアルミニウム材料を用いる必要がある。
すなわち、芯材として、Siと、Mnと、Cuと、Mgとを含有するアルミニウム合金を用いたブレージングシートでは、加熱ろう付け後に100℃以下の温度まで冷却する冷却工程を行なうことにより、微細なAl−Mn−Si系化合物の析出が促進される。さらに、冷却工程後に、ブレージングシートの実態温度が170〜250℃で1時間以上保持される加熱工程を行なうことで、CuAl2、Mg2Si等の金属間化合物の析出が促進される。そして、冷却工程および加熱工程で析出する金属間化合物による強度向上効果によって、Siと、Mnと、Cuと、Mgとを含有し、各元素の含有量が調整されたアルミニウム合金を用いたブレージングシートは、150℃での強度が80MPa以上である高温での強度面で実用に十分耐え得るブレージングシートとなる。また好適には、ろう付後の基材実態温度が150℃の時の引張強度が100MPa以上であることが、より好ましい。
また、本発明の熱交換器は、本発明の熱交換器用ブレージングシートが用いられてなるものであるので、機械的強度および外部耐食性に優れ、高温環境下での使用に好適なものとなる。
図1は、本発明の熱交換器の一例を示した図であり、図2は、図1に示す熱交換器の一部を拡大して示した拡大図であって、図1に示す熱交換器に用いられている熱交換器用ブレージングシートを示した断面図である。
図1に示す熱交換器1は、チューブ10と、ヘッダー21と、フィン22と、サイドサポート23とから概略構成されている。
図2に示す熱交換器用ブレージングシート2は、150℃での強度が60MPa以上のものである。したがって、図2に示す熱交換器用ブレージングシート2は、高温での強度面で実用に十分耐え得るものである。
芯材2aは、Siと、Mnと、Cuと、Mgと、を少なくとも含有するアルミニウム合金からなる。
Siは、基材の実態温度を170〜250℃に保持することにより、MgとともにMg2Si等の金属間化合物を生成する。上記金属間化合物がサイトを形成して析出硬化することによって、粒内におけるCu化合物の析出を促進させ、熱交換器用ブレージングシート2の強度を向上させるとともに、粒界腐食感受性を低下させる。さらに、SiはMnと微細なAl−Mn−Si系化合物を形成して、強度向上に寄与する。芯材2aに添加されるSiの含有量は0.5%以上1.2%以下(質量%、以下同様)とすることが好ましく、0.7%以上1.0%以下とすることがより好ましく、0.8%以上0.9%以下とすることが特に好ましい。Siの含有量が0.5%未満であると、Siを添加することによる強度向上の効果や、粒界腐食感受性を低下させる効果が十分に得られない恐れがある。また、Siの含有量が1.2%を超えると、固相線温度の低下により、600℃前後で行なわれる加熱ろう付け処理において、局部的な溶融を招く虞がある。
Fe,Ni,Ti,Zrは、熱交換器用ブレージングシート2の強度を向上させるために用いられる。これらの各成分は、含有量が上記範囲未満であると、強度向上の効果が十分に得られない恐れがある。また、含有量が上記範囲を超えると、熱交換器用ブレージングシート2の製造における圧延性および耐食性が著しく低下する。
ろう材層2bは、Znと、Siとを含有するアルミニウム合金からなるものである。
Znは、電位を卑化させるために用いられる。特に、基材の実態温度を170〜250℃に保持することにより、ろう材層2bへのSiの析出が促進されるため、Znによる電位を卑にする効果が有効に働く。このため、170〜250℃の保持を行った熱交換器用ブレージングシート2では、ろう材層2bに添加されるZnが少量であっても、所望の電位勾配を得ることができる。ろう材層2bに添加されるZnの含有量は、0.5%以上3.0%以下とすることが好ましく、1.0%以上2.5%以下とすることがより好ましく、1.5%以上2.0%以下とすることが特に好ましい。Znの含有量が0.5%未満であると、所望の電位勾配が得られない恐れがある。また、Znの含有量が3.0%を超えると、ろう材層2bの自己腐食速度が増加するため好ましくない。特に、Znの含有量が上記範囲を超えると、ろう付接合部に形成されたフィレットの腐食速度が大きく増加する。
まず、熱交換器用ブレージングシート2を製造する。熱交換器用ブレージングシート2は、0.5%以上1.2%以下のSiと、0.01%以上1.0%未満のMnと、0.1%以上1.0%以下のCuと、0.1%以上0.5%以下のMgとを含有するアルミニウム合金からなる芯材2aの両面に、ろう材層2bを所定のクラッド率で貼り合わせることにより、Znと、Siとを含有するアルミニウム合金からなるろう材層2bを形成することによって得られる。
次いで、このようにして得られた熱交換器用ブレージングシートを用いて、図1に示すチューブ10及びフィン22を形成する。
なお、ここで用いられる熱交換器用ブレージングシート2は、150℃での強度が80MPa以上であり、ろう材層2bの初晶と共晶のα相との固溶Si濃度の差が、0.05質量%以下であり、ろう材層2bの電位勾配が、最表面の電位が最も卑であり最表面から厚み方向に0.5mV/μm以上貴であるものではなく、後述する加熱ろう付け、冷却工程、加熱工程を行うことにより、上記の強度、固溶Si濃度の差、電位勾配を有する図2に示す本実施形態の熱交換器用ブレージングシート2とされる。
また、図1に示す本実施形態の熱交換器1は、本実施形態の熱交換器用ブレージングシート2が用いられてなるものであるので、高温環境下での機械的強度および外部耐食性に優れ、高温環境下での使用に好適なものとなる。
例えば、上述した実施形態では、熱交換器用ブレージングシート2として、芯材2aの両面にろう材層2bを有するものを例に挙げて説明したが、芯材2aの片面にろう材層を有する熱交換器用ブレージングシートであってもよい。
以下、本発明の実施例および比較例について説明する。
表1に示す成分を含有するアルミニウム合金からなる芯材の両面に、表1に示す成分を含有するアルミニウム合金からなるろう材層を形成することによって、表1に示す合金成分の総厚みが0.5mm、ろう材の片面クラッド率が10%の熱交換器用ブレージングシートを形成した。
続いて、得られた熱交換器用ブレージングシートを窒素雰囲気中で600℃の温度で5分間加熱してろう材層を溶解させることにより、加熱ろう付けと同様の熱処理を行なった。
その後、熱処理後の熱交換器用ブレージングシートに、表2に示す条件で、冷却工程、加熱工程を行うことにより、実施例1〜実施例25の熱交換器用ブレージングシートを得た。同様に、表3に示す条件で、冷却工程、加熱工程を行うことにより、比較例1〜比較例12の熱交換器用ブレージングシートを得た。
その結果をそれぞれ表2及び表3に示す。
実施例1〜実施例25、比較例1〜比較例12の熱交換器用ブレージングシートを用いて、EPMA(Electron Probe Micro Analyzed)分析により、ろう材層2bの初晶と共晶のα相との固溶Si濃度の差(表2及び表3中には、「初晶と共晶のSi濃度差(%)」と記す)を調べた。
実施例1〜実施例25、比較例1〜比較例12の熱交換器用ブレージングシートを用いて、アノード分極測定を実施し、ろう材層2bの電位分布から電位勾配を測定した(表2及び表3中には、「ろう材層の電位勾配(mV/μm)」と記す)。アノード分極には飽和カロメル電極を用い、窒素ガスの吹き込みにより脱気した40℃の2.67%AlCl3溶液中で電位掃引速度0.5mV/sで測定した。孔食電位分布は、50℃の5%NaOH水溶液中に浸漬して表面から所定の厚さを溶解除去した後に測定した。
実施例1〜実施例25、比較例1〜比較例12の熱交換器用ブレージングシートを用いて、JIS H 4000に基づいて引張試験片を作製し、これら試験片を用いて高温槽中で引張試験を行うことにより、基材の実態温度が150℃の時の高温強度を測定した(表2及び表3中には、「高温強度(MPa)」と記す)。
実施例1〜実施例25、比較例1〜比較例12の熱交換器用ブレージングシートに対し、SWAAT(Sea Water Acetic Acid Test、人工海水噴霧試験)試験を行なった(表2及び表3中には、「耐食性」と記す)。
試験方法は、ASTM(G85−85)規格に則り、以下の条件で(1)および(2)を2サイクル行い実施した。
(1)人工海水(pH=3)噴霧:50℃、0.5時間(2)湿潤:50℃、1.5時間
そして、SWAAT試験による貫通寿命が30日以上である場合を「◎」とし、20日以上30日未満である場合を「○」とし、20日未満を「×」として評価した。
実施例1〜実施例25、比較例1〜比較例12の熱交換器用ブレージングシートをチューブ材およびヘッダープレート材に用いて作製した熱交換器において、熱交換器内部に2秒毎に300kPaの圧力を繰り返し負荷する耐圧試験を実施し、熱交換器の破壊寿命を測定した(表2及び表3中には、「熱交換機の耐圧強度」と記す)。
そして、破壊寿命が10万回以上を「◎」とし、5万回以上10万回未満を「○」とし、5万回未満を「×」として評価した。
Claims (4)
- 0.5%以上1.2%以下(質量%、以下同様)のSiと、0.01%以上1.0%未満のMnと、0.1%以上1.0%以下のCuと、0.1%以上0.5%以下のMgとを含有するアルミニウム合金からなる芯材と、前記芯材の片面または両面に設けられ、Znと、Siとを含有するアルミニウム合金からなるろう材層とを有し、
ろう付後の基材の実態温度が150℃の時の引張強度が80MPa以上であり、
前記ろう材層の初晶と共晶のα相との固溶Si濃度の差が、0.05質量%以下であり、
前記ろう材層の電位勾配が、最表面の電位が最も卑であり最表面から厚み方向に0.5mV/μm以上貴であることを特徴とする熱交換器用ブレージングシート。 - 前記芯材が、0.05%以上1.0%以下のFeと、0.05%以上1.0%以下のNiと、0.1%以上0.3%以下のTiと、0.1%以上0.3%以下のZrとから選ばれる少なくとも1種をさらに含有するものであることを特徴とする請求項1に記載の熱交換器用ブレージングシート。
- 前記ろう材層が、0.5%以上3.0%以下のZnを含有するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱交換器用ブレージングシート。
- 請求項1乃至3のいずれか一項に記載の熱交換器用ブレージングシートが用いられていることを特徴とする熱交換器。
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JPN6013043040; 日本規格協会: JIS用語辞典 V 金属・化学・窯業編 , 19781101, 第519、531頁, 財団法人日本規格協会 * |
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