本発明は、電子写真法、静電記録法、トナージェット方式記録法の如き方法によって形成される静電潜像を現像してトナー画像を形成するために用いるトナーに関するものである。
電子写真法による画像形成方法としては種々の方法が知られている。一般には光導電性物質を利用し、種々の手段によって静電荷像担持体(以下、「感光体」ともいう)上に静電潜像を形成する。次いでトナーを用いて該静電潜像を現像してトナー画像を形成し、必要に応じて紙の如き転写材にトナー画像を転写した後、熱あるいは圧力により該転写材上にトナー画像を定着して複写物またはプリントを得るものである。このような画像形成装置としては、プリンターや複写機がある。
近年、これらプリンターや複写機は、デジタル化による画像の高精細化と同時に、印字または複写速度の高速化、あるいは装置の小型化による省スペース化、低消費電力化が要求されるようになっている。
プリンターや複写機に用いる定着装置としては種々の方式のものが実用に付されているが、最も一般的な方式は熱ローラーによる加熱圧着方式である。この方式は、トナーに対して離型性を有する材料で表面を形成した熱ローラーとこれを加圧する加圧ローラーとの間に、トナー画像が転写された転写材を該転写材のトナー画像面が熱ローラー側に当接されるように通過させることによって定着を行うものである。この方式では、熱ローラーの表面と転写材のトナー画像面とが加圧下で接触するため、トナーが転写材上に融着する際の熱効率に優れることから、特に高速度が要求される用途に好適に用いられている。
また、低消費電力化が要求される用途に用いられる方式としては、代表的なものとしてフィルム定着方式が挙げられる。この方式は、前記熱ローラーに代えて加熱装置を備えたフィルムユニットを用いるもので、該フィルムと加圧ローラーとの間に、トナー画像が転写された転写材を比較的低い圧力下で通過させて定着を行うものである。この方式では、フィルムの熱容量が小さく、ウエイト時間も短縮できるため、電力の消費量を低減することができる。
上記した高速化や低消費電力化の要求を満たすため、トナー自身の定着性能の改善も求められるようになっている。すなわち、より低い温度で定着させることのできるトナーの実現が望まれている。
一般にトナーは、結着樹脂と染料、顔料、カーボンブラック、磁性体の如き着色剤を主構成材料とする、粒径5乃至30μm程度の微粒子であり、粉砕法に代表される乾式製法や、懸濁重合法に代表される湿式製法によって製造されている。
粉砕法によるトナーは、結着樹脂としての熱可塑性樹脂中に、上記着色剤や必要に応じて荷電制御剤、離型剤を溶融混合して均一に分散させた後、得られた樹脂組成物を微粉砕し、分級することによって得られる。
一方、懸濁重合法によるトナーは、まず重合性単量体に上記着色剤や必要に応じて多官能性単量体、連鎖移動剤、荷電制御剤や離型剤を重合性単量体に溶解あるいは分散させて重合性単量体組成物を得る。その後、重合開始剤とともに分散安定剤を含有する水系媒体中に懸濁させて造粒を行い、加熱しながら重合性単量体を重合することによって、所望の粒径を有する重合体粒子としたものである。
これらトナーの低温定着性を改善するための一般的な方法としては、トナーを構成する結着樹脂のガラス転移温度を低くする方法が知られている。しかし、単にガラス転移温度を低くしただけではトナーの耐熱保存性が低下し、高温環境下での使用では、互いに接触するトナー間で凝集が生じて塊状となるブロッキング現象を起こしやすくなるという問題を生じる。
また、通常の温度環境下であっても、長期にわたる使用中に離型剤の染み出しが生じることにより、トナー担持体の汚染や感光体へのフィルミングの如き各部材の汚染が発生しやすくなって、画質の低下を引き起こすという問題も生じる。
こうした問題点を解決するため、ガラス転移温度の低い樹脂を含む芯粒子と、該芯粒子の表面を被覆するように形成したガラス転移温度の高い樹脂を含む外殻から構成される、カプセル構造(コアシェル構造)を有するトナーが考案されている。
例えば、懸濁重合で得られたポリマー粒子(芯粒子)に対し、乳化重合またはソープフリー乳化重合で得られた樹脂微粒子の水分散液を加えることによって該ポリマー粒子の表面の95%以上を該微粒子で被覆させた後、該ポリマー粒子のガラス転移温度以上に加熱して実質的に隆起のない表面にしたトナーが提案されている(特許文献1参照)。
また、ポリマー粒子(芯粒子)の水分散液に、酸性基含有樹脂を塩基性中和剤の存在下で水性媒体と混合し転相乳化して得られる樹脂微粒子を混合して、続いて酸により該ポリマー粒子表面に該樹脂微粒子を析出させ、液媒体を除去した後に乾燥した粉体を加熱下で攪拌混合処理することにより、ポリマー粒子の表面に酸性基含有樹脂(樹脂微粒子)が固着されたトナーが提案されている(特許文献2参照)。
また、トナー内核粒子(芯粒子)の表面に該トナー内核粒子と逆の帯電性を有する中間層を形成させ、該中間層の表面に中間層と逆の帯電性を有する樹脂(樹脂微粒子)で外殻層を形成させる方法が提案されている(特許文献3参照)。
上記した従来例の内、特許文献1に開示されたトナーでは、芯粒子への樹脂微粒子の付着は単に媒質である水のpH調整によってのみ行われており、微粒子同士の凝集を起こしやすいため、必ずしも十分に均一な被覆層を形成することが出来なかった。そして、このような状態で加熱を行って隆起のない表面を得ようとすると、内包させた離型剤の一部が染み出すことがあり、結果として各部材の汚染による画質の低下が起こりやすいという問題があった。
また、上記した特許文献2に開示されたトナーは、水性分散液に酸を加えて樹脂微粒子の酸性基を未中和の状態に戻すことで、この樹脂微粒子を芯粒子表面に析出させて外殻層を形成している。しかしこの方法では樹脂微粒子同士が凝集しやすく、芯粒子表面への析出状態は必ずしも均一とは言えない。さらに加熱を行わないまま濾過、乾燥を行っているため、析出した樹脂微粒子が脱落することがあり、この状態で加熱、攪拌混合を行うと、粒子の表面に離型剤が染み出す恐れがあった。その結果、各部材の汚染による画質の低下が起こりやすいだけでなく、充分な耐熱保存性を得ることが出来なかった。
また、上記した特許文献3に開示されたトナーでは、特に中間層として無機微粒子を用いた場合は被覆層の固着強度が十分でないため、緻密な被覆層を形成することは出来ず、結果として十分に離型剤の染み出しを抑制することが出来なかった。
以上、説明したように、ガラス転移温度の低い芯粒子とガラス転移温度の高い外殻から構成されるカプセル構造を有するトナーにおいて、離型剤の染み出しを抑制するために、より緻密な被覆層を持ち、且つ良好な定着性と耐熱保存性を兼ね備えたトナーが待望されている。
特開2000−112174号公報
特開2000−347455号公報
特開2003−91093号公報
本発明の目的は、上述した従来の問題点を解決したトナーを提供することにある。
すなわち、本発明の目的は、優れた低温定着性を有し、耐熱保存性にも優れ、長期にわたる使用においても離型剤の染み出しによる各部材の汚染が起こりにくく、画質の低下が起こりにくいトナーを提供することにある。
本発明は、結着樹脂と着色剤と離型剤を少なくとも含有する芯粒子の表面に被覆層が形成されているコアシェル構造を有するトナー粒子を有するトナーであって、
該芯粒子のガラス転移温度Tg1(℃)が20乃至55℃であり、該被覆層のガラス転移温度Tg2(℃)が60乃至100℃であり、
該トナー粒子のメタノール/水混合溶媒に対する濡れ性試験において、温度25.0℃の条件下で測定した光の透過率が50%になるときのメタノール濃度Vini(体積%)が0.5乃至20.0%であり、
該トナー粒子を温度35.0乃至60.0℃の範囲で、温度2.5℃ごとの温度条件下で3日間加熱処理した後に温度25.0℃の条件下で、メタノール/水混合溶媒に対する濡れ性試験における光の透過率が50%になるときのメタノール濃度V35.0、V37.5、V40.0、V42.5、V45.0、V47.5、V50.0、V52.5、V55.0、V57.5、V60.0(体積%)を測定し、
各温度におけるメタノール濃度V35.0乃至V60.0からメタノール濃度Viniを差し引いて変化量を求め、各変化量を、縦軸が該変化量であり、横軸が加熱処理温度である座標にプロットし、各プロットを直線で結ぶことにより形成したグラフにおいて、
変化量が10%となるときの温度をT10(℃)とし、変化量が30%となるときの温度をT30(℃)としたとき、
T10(℃)及びT30(℃)が以下の関係式(1)及び(2)
(1) T10(℃)>Tg1(℃)
(2) T30(℃)−T10(℃)<5.0(℃)
を満足することを特徴とするトナーに関する。
本発明によれば、優れた低温定着性を有し、耐熱保存性にも優れ、長期にわたる使用においても離型剤の染み出しによる各部材の汚染が起こりにくく、画質の低下が起こりにくいトナーを提供することができる。
トナー粒子に含有される離型剤は、トナー粒子の表面に露出することなく完全に内包化されていて、定着時には速やかにトナー粒子表面に染み出すのが望ましい。トナー表面に離型剤が存在する場合、トナー担持体の汚染や感光体へのフィルミングの如き各部材の汚染が発生する原因となり、画質の低下を引き起こすことがある。
また、高温環境下での使用や長期にわたる使用では、トナー粒子に内包されていた離型剤が徐々に染み出すことがあり、結果として各部材の汚染の原因となり、画質の低下を引き起こすことがあった。
一方、メタノール/水混合溶媒に対する濡れ性試験は、トナー粒子の表面状態を評価する手段として、多用される方法である。メタノール/水混合溶媒に対する濡れ性に影響を与えるトナー原材料としては、離型剤、着色剤、荷電制御剤が挙げられる。この中でも特に離型剤は疎水性が高いため、トナー粒子の表面に離型剤が存在する場合は、該混合溶媒中のメタノール濃度が高くないと濡れにくくなる。
本発明者らは、トナー粒子中の離型剤の染み出しやすさを定量的に表す指標として、トナー粒子を加熱処理した時のメタノール/水混合溶媒に対する濡れ性試験における、光の透過率が50%になるときのメタノール濃度(体積%)の変化量に着目した。
すなわち、本発明者らは、該変化量が特定の条件を満たすことにより、高温環境下での使用や、長期にわたる使用においても離型剤の染み出しによる各部材の汚染が起こりにくく、良好な画像が得られ、且つ、優れた低温定着性と耐熱保存性を持つトナーを得ることが可能になることを見出し、本発明を完成するに至った。
詳しくは、トナー粒子のメタノール/水混合溶媒に対する濡れ性試験において、温度25.0℃の条件下で測定した光の透過率が50%になるときのメタノール濃度Vini(体積%)が0.5乃至20.0%であり、
該トナー粒子を温度35.0乃至60.0℃の範囲で、温度2.5℃ごとの温度条件下で3日間加熱処理した後に温度25.0℃の条件下で、メタノール/水混合溶媒に対する濡れ性試験における光の透過率が50%になるときのメタノール濃度V35.0、V37.5、V40.0、V42.5、V45.0、V47.5、V50.0、V52.5、V55.0、V57.5、V60.0(体積%)を測定し、
各温度におけるメタノール濃度V35.0乃至V60.0からメタノール濃度Viniを差し引いて変化量を求め、各変化量を、縦軸が該変化量であり、横軸が加熱処理温度である座標にプロットし、各プロットを直線で結ぶことにより形成したグラフにおいて、
変化量が10%となるときの温度をT10(℃)とし、変化量が30%となるときの温度をT30(℃)としたとき、
T10(℃)及びT30(℃)が以下の関係式(1)及び(2)
(1) T10(℃)>Tg1(℃)
(2) T30(℃)−T10(℃)<5.0(℃)
の条件を満足することである。
以下、メタノール/水混合溶媒に対する濡れ性試験において、光の透過率が50%になるときのメタノール濃度(体積%)を単にメタノール濃度とも記載する。
本発明において、25.0℃の条件下で測定したときのメタノール濃度が0.5乃至20.0%であることは、トナー粒子表面に実質的に離型剤が存在しないことを意味する。
また、トナー粒子に加熱処理を行ったときのメタノール濃度と、25.0℃条件下で測定したときのメタノール濃度との変化量が10%よりも少ないときは、離型剤の染み出しが充分に抑えられていると考えている。本発明において、加熱処理によるメタノール濃度の変化量が10%となるときの加熱温度T10(℃)が、芯粒子(コアシェル構造のコア)のガラス転移温度Tg1(℃)よりも高いことは、高温環境下での使用や、長期にわたっての使用による離型剤の染み出しを十分に抑えることが可能であることを意味する。
したがって、上記の条件を満たすトナー粒子では、高温環境下での使用や、長期にわたる使用でも、各部材の汚染が起こりにくく、良好な画像を得ることが出来る。
一方、優れた定着性を得るためには、定着温度領域において、内包した離型剤がトナー粒子表面に速やかに染み出す必要がある。本発明において、加熱処理によるメタノール濃度の変化量が30%を超えるとき、トナー粒子表面に十分な量の離型剤が染み出していると考えている。加熱処理によるメタノール濃度の変化量が30%となるときの加熱温度T30(℃)と前記T10(℃)との差が5.0℃以内であるということは、速やかに離型剤がトナー粒子表面に染み出すことを意味する。これにより良好な定着性を得ることが出来る。
上記したような、離型剤の染み出しを抑制することと、速やかに離型剤がトナー表面に染み出すことは、相反する挙動であり、従来のコアシェル構造トナーでは到底達成できないものであった。本発明では、被覆層(コアシェル構造のシェル)を極めて緻密に、かつ薄く形成することにより、上記したような相反する挙動を同時に達成可能である。
本発明において、上述のT30(℃)とT10(℃)の差は3.0℃よりも小さいことがより好ましい。
本発明のトナー粒子における前記芯粒子のガラス転移温度Tg1(℃)は20乃至55℃である。これにより、優れた低温定着性を得ることが可能となる。該芯粒子のガラス転移温度Tg1(℃)が20℃より低い場合は、十分な耐熱保存性を得ることが出来ず、また画像としての積載性の低下が生じる恐れがあるため実用的ではない。該芯粒子のガラス転移温度Tg1(℃)が55℃より高い場合は、十分な低温定着性が得られない。
一方、耐熱保存性を向上させる目的において、被覆層のガラス転移温度Tg2(℃)は60乃至100℃であることが必要である。該被覆層のガラス転移温度Tg2(℃)が60℃より低い場合、十分な耐熱保存性が得られない。該被覆層のガラス転移温度Tg2(℃)が100℃より高い場合は、芯粒子の定着性を阻害し、結果として十分な低温定着性が得られない恐れがある。
また本発明において、該芯粒子のガラス転移温度Tg1(℃)と該被覆層のガラス転移温度Tg2(℃)の差は、15乃至50℃の範囲であることが望ましい。ガラス転移温度の差が15℃より小さいと充分な耐熱保存性の改善効果が得られなくなり、50℃より大きいと低温定着性が損なわれるため好ましくない。
本発明において、前述のトナーの濡れ性は、下記のようにして得たメタノール濃度と光の透過率の関係を示す曲線から求める。
まず、水60mlを、直径5cm、厚さ1.75mmの円筒型ガラス容器中に入れ、その測定用サンプル中の気泡等を除去するために超音波分散器で5分間分散を行う。
次いで、トナー粒子0.1gを精秤して、上記水が入れられた容器の中に添加し、測定用サンプル液を調製する。
そして、測定用サンプル液を粉体濡れ性試験機「WET−100P」(レスカ社製)にセットする。この測定用サンプル液を、マグネティックスターラーを用いて、350rpmの速度で攪拌する。尚、マグネティックスターラーの回転子として、フッ素樹脂コーティングされた、長さ25mm、最大胴径8mmの紡錘型回転子を用いる。
次に、この測定用サンプル液中に、上記装置を通して、メタノールを0.8ml/minの滴下速度で連続的に添加しながら波長780nmの光の透過率を測定し、メタノール滴下透過率曲線を作成する(図1参照)。
本発明における前記芯粒子は、少なくとも重合性単量体と着色剤と離型剤を含有する重合性単量体組成物を水系媒体中に分散させ、該重合性単量体を重合して得られたものであることが好ましい。
具体的な製法を説明すると、まず、芯粒子の主構成材料となる重合性単量体に、少なくとも着色剤と離型剤を加え、ホモジナイザー、ボールミル、コロイドミル、超音波分散機の如き分散機を用いてこれらを均一に溶解あるいは分散させた重合性単量体組成物を調製する。このとき、上記重合性単量体組成物中には、必要に応じて多官能性単量体や連鎖移動剤、また荷電制御剤や可塑剤、さらに他の添加剤(例えば、顔料分散剤や離型剤分散剤)を適宜加えることが出来る。
次いで、上記重合性単量体組成物を、予め用意しておいた分散安定剤を含有する水系媒体中に投入し、高速攪拌機もしくは超音波分散機の如き高速分散機を用いて懸濁させ、造粒を行う。
重合開始剤は、重合性単量体組成物を調製する際に他の添加剤とともに混合してもよく、水系媒体中に懸濁させる直前に重合性単量体組成物中に混合してもよい。また、造粒中や造粒完了後、すなわち重合反応を開始する直前に、必要に応じて重合性単量体や他の溶媒に溶解した状態で加えることも出来る。
重合反応は、造粒後の懸濁液を温度50乃至90℃に加熱し、懸濁液中の重合性単量体組成物の粒子が粒子状態を維持し、且つ粒子の浮遊や沈降が生じることがないよう、撹拌しながら行う。
上記重合開始剤は、加熱によって容易に分解し、遊離基(ラジカル)を生成する。生成したラジカルは重合性単量体の不飽和結合に付加し、付加体のラジカルを新たに生成する。そして、生成した付加体のラジカルはさらに重合性単量体の不飽和結合に付加する。このような付加反応を連鎖的に繰り返すことによって重合反応が進行し、前記重合性単量体を主構成材料とする芯粒子が形成される。
重合反応の後半あるいは重合反応終了後に、減圧や昇温の如き公知の方法を用いて蒸留を行ってもよい。蒸留工程を行うことで、残存する未反応の重合性単量体を除去することが出来る。
前記被覆層の形成方法として、具体的には樹脂微粒子を前記芯粒子の表面に付着させる方法が挙げられる。芯粒子の表面に樹脂微粒子を付着させる場合、通常、これらを水系媒体中に分散させた状態で行う。芯粒子と樹脂微粒子の極性が大きく異なる場合は、電気的な吸引力によって付着させることができるが、そうでない場合には、外的な手段を用いて樹脂微粒子の分散状態を制御する必要がある。具体的な方法としては、水系媒体のpHを調整する方法や、水系媒体中に無機塩を添加する方法が挙げられる。いずれの場合も、樹脂微粒子の分散状態を急激に変化させると、樹脂微粒子同士が単独凝集を起こして均一に付着させることできなくなるため、これらの操作は徐々に行うことが好ましい。
また、樹脂微粒子を付着させた後は、容易に剥離・脱落を起こさないよう、固着または融着を行う。具体的な方法としては、水系媒体中に分散させた状態のままで加熱処理する方法や、樹脂微粒子を溶解あるいは膨潤する溶剤を加えて吸収させ、皮膜化した後に溶剤を除去する方法がある。また、ろ過および乾燥を行って取り出した粉体を、加熱下で撹拌混合処理する方法が挙げられる。これらの方法の中でも、水系媒体中で加熱処理する方法が、より均一で且つ強固に固着できる点、および操作が簡便である点で好ましい。
本発明を達成するための、樹脂微粒子の付着および固着方法として、特に好ましい一例を以下に説明する。
まず、上述の方法に従って、懸濁重合法による芯粒子を製造する。このとき、分散安定剤には、例えばリン酸三カルシウムのような芯粒子に対する極性が大きく異なる無機分散剤を使用し、重合完了後も芯粒子表面に付着した分散安定剤の除去は行わず、そのまま撹拌を続ける。
次いで、分散安定剤が付着した状態の芯粒子分散液に、該分散安定剤に対する極性が芯粒子と同じであり、且つ該芯粒子よりも高いガラス転移温度を有する樹脂微粒子の水系分散体を添加する。これにより、芯粒子の表面に分散安定剤が介在した状態で、樹脂微粒子が均一に付着する。
このとき、該樹脂微粒子がカルボキシル基及び/またはスルホン酸基を有する自己分散性の樹脂微粒子であることが好ましい。カルボキシル基及び/またはスルホン酸基を有する自己分散性の樹脂微粒子は水中で負に帯電するため、上述の方法に適している。
特に該樹脂微粒子がスルホン酸基を有する自己分散性の樹脂微粒子であることがより好ましい。スルホン酸基を有する自己分散性の樹脂微粒子は、カルボキシル基を有する自己分散性の樹脂微粒子よりも、水中でより大きく負に帯電する。したがって前記芯粒子の表面に付着している正帯電性の分散安定剤との電気的引力が大きくなり、より均一で緻密な被覆層を形成することが出来る。
次いで、この分散液を、前記芯粒子のガラス転移温度以上になるまで加熱する。
そして、分散液の温度を、前記芯粒子のガラス転移温度から前記樹脂微粒子のガラス転移温度までの温度範囲内に保ちながら、これに酸を添加して前記分散安定剤を溶解させる。分散安定剤が取り除かれると、それと同時に樹脂微粒子が芯粒子の表面と接触し、固着される。
このとき、分散液のpHが一定速度で変化するように酸を添加することが好ましい。pH変化速度を一定にすることで、前記分散安定剤の溶解が緩やかに行われ、その結果、樹脂微粒子の剥離・脱落が起こりにくく、より緻密な被覆層を形成することが出来る。
また、このとき使用する芯粒子の表面には、実質的に離型剤が存在しないことが好ましい。芯粒子の表面に実質的に離型剤が存在しないことで、芯粒子と樹脂微粒子の密着性が上がり、より緻密な被覆層を形成することが出来る。
また、本発明において使用する被覆層の構成材料としての樹脂微粒子は、如何なる方法で製造されたものであってもよく、乳化重合法やソープフリー乳化重合法、転相乳化法の如き公知の方法によって製造されたものを用いることができる。これらの製法の中でも、転相乳化法は、乳化剤や分散安定剤を必要とせず、より小粒径の樹脂微粒子が容易に得られるため、特に好適である。
転相乳化法では、自己分散性を有する樹脂、あるいは中和によって自己分散性を発現し得る樹脂を使用する。ここで、自己水分散性有する樹脂とは、水系媒体中で自己分散が可能な官能基を分子内に含有する樹脂であって、具体的にはカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、もしくはこれらの塩を含有する樹脂である。また、中和によって自己分散性が発現し得る樹脂とは、中和によって親水性が増大し、水系媒体中での自己分散が可能となり得る官能基を、分子内に含有する樹脂である。
これらの樹脂を有機溶剤に溶解し、必要に応じて中和剤を加え、攪拌しながら水系媒体と混合すると、前記樹脂の溶解液が転相乳化を起こして微小な粒子を生成する。該有機溶剤は、転相乳化後に加熱、減圧の如き方法を用いて除去する。
このように、転相乳化法によれば、実質的に乳化剤や分散安定剤を用いることなく、安定した樹脂微粒子の水系分散体を得ることが出来る。
該樹脂の材質としては、トナーの結着樹脂として使用し得るものであれば良く、ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等が用いられるが、中でもポリエステル樹脂は、シャープメルト性を有するため、芯粒子の低温定着性を阻害することが少なく好ましい。
また、前記被覆層は被覆量が、前記芯粒子に対して質量比で1.0乃至10.0%であることが好ましい。被覆量が1.0%未満であると、芯粒子を均一に覆うことが出来ず、離型剤の染み出しを十分に抑制できないばかりか、耐熱保存性が低下する。被覆量が10.0%を超える場合は、定着時に速やかに離型剤がトナー粒子の表面に移行せず、トナーの定着性が低下する場合がある。
尚、被覆量は、該被覆層に固有の元素(例えば、スルホン酸基に由来するS元素)を含有する場合には、例えば蛍光X線分析装置(XRF)を用いてトナー中に含まれる該元素の定量分析を行い、計算によって求めることができる。
また、本発明において、前記離型剤の含有量が前記結着樹脂に対して質量比で3.0乃至30.0%であることが好ましい。離型剤の含有量が3.0%未満であると、定着性が低下する場合がある。離型剤の含有量が30.0%を超える場合は、前記芯粒子内に離型剤を完全に内包することが出来ない場合がある。芯粒子表面に離型剤が存在した状態で被覆層を形成すると、芯粒子と被覆層の密着性が下がり、緻密な被覆層を形成することが出来なくなる。そのため、高温環境下や長期にわたる使用中に、離型剤の染み出しが起こりやすくなる恐れがある。
本発明に用いられる離型剤に使用可能なものとしては、以下のものが挙げられる。パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタムの如き石油系ワックスおよびその誘導体;モンタンワックスおよびその誘導体;フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックスおよびその誘導体;ポリエチレンに代表されるポリオレフィンワックスおよびその誘導体;カルナバワックス、キャンデリラワックスの如き天然ワックスおよびその誘導体。誘導体には、酸化物やビニル系モノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物が含まれる。さらに、高級脂肪族アルコール、ステアリン酸、パルミチン酸の如き脂肪酸、あるいはその化合物、酸アミドワックス、エステルワックス、ケトン、硬化ヒマシ油およびその誘導体、植物系ワックス、動物性ワックスも使用できる。
これらの離型剤の中でも、より芯粒子に内包されやすいパラフィンワックスが特に好ましい。
ここで、上記芯粒子の主構成材料として用いることが出来る重合性単量体としては、以下のものが挙げられる。
スチレン;α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチル、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレンの如きスチレン系単量体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニル、アクリル酸−2−ヒドロキシエチルの如きアクリル酸エステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルの如きメタクリル酸エステル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド。
これらの重合性単量体の中でも、スチレンまたはスチレン誘導体と他の重合性単量体とを混合して使用することが、トナーの現像特性および耐久性の点から好ましい。そして、これら重合性単量体の混合比率は、所望するコアのガラス転移温度を考慮して、適宜選択すればよい。
上記芯粒子の製造において使用する重合開始剤は、特に限定されるものではなく、公知の過酸化物系重合開始剤やアゾ系重合開始剤を用いることができる。
過酸化物系重合開始剤として、以下のものが挙げられる。t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソノナノエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−アミルパーオキシネオデカノエート、t−アミルパーオキシピバレート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシアセテート、t−アミルパーオキシイソノナノエート、t−アミルパーオキシベンゾエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、α−クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(m−トルオイルパーオキシ)ヘキサンの如きパーオキシエステル系重合開始剤;ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−ブチルパーオキシジカーボネート、ジ−n−ペンチルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、 ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、ジ(3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネートの如きパーオキシジカーボネート系重合開始剤;ジイソブチリルパーオキサイド、ジイソノナノイルパーオキサイド、ジ−n−オクタノイルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、ジステアロイルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、ジ−m−トルオイルパーオキサイド、ベンゾイル−m−トルオイルパーオキサイドの如きジアシルパーオキサイド系重合開始剤;t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシアリルモノカーボネートの如きパーオキシモノカーボネート系重合開始剤;1,1−ジ−t−ヘキシルパーオキシシクロヘキサン、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、2,2−ジ−t−ブチルパーオキシブタンの如きパーオキシケタール系重合開始剤;ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイドの如きジアルキルパーオキサイド系重合開始剤。
アゾ系重合開始剤として、以下のものが挙げられる。2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル。
これらの重合開始剤の中でも、過酸化物系重合開始剤は分解物の残留が少ないため好適である。また、これら重合開始剤は、必要に応じて2種以上同時に用いることもできる。この際、使用される重合開始剤の好ましい使用量は、単量体100質量部に対し0.1乃至20質量部である。
また、上記芯粒子の製造においては、分子量の調整を目的として、連鎖移動剤を使用することができる。連鎖移動剤としては、以下のものが挙げられる。n−ペンチルメルカプタン、イソペンチルメルカプタン、2−メチルブチルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン、n−ヘプチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、t−オクチルメルカプタン、t−ノニルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、t−テトラデシルメルカプタン、n−ペンタデシルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタン、t−ヘキサデシルメルカプタン、ステアリルメルカプタンの如きアルキルメルカプタン類;チオグリコール酸のアルキルエステル類;メルカプトプロピオン酸のアルキルエステル類;クロロホルム、四塩化炭素、臭化エチレン、四臭化炭素の如きハロゲン化炭化水素類;α−メチルスチレンダイマー。
これらの連鎖移動剤は必ずしも使用する必要はないが、使用する場合の好ましい添加量としては、重合性単量体100質量部に対して0.05乃至3質量部である。
また、上記芯粒子の製造においては、耐高温オフセット性の改善を目的として、少量の多官能性単量体を併用することができる。尚、高温オフセットとは、定着時において溶融したトナーの一部が上述した熱ローラーや定着フィルムの表面に付着し、これが後続の被定着シートを汚染する現象をいう。多官能性単量体としては、主として2個以上の重合可能な二重結合を有する化合物が用いられ、以下のものが挙げられる。ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレンの如き芳香族ジビニル化合物;エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレートの如き二重結合を2個有するカルボン酸エステル;ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルスルフィド、ジビニルスルホンの如きジビニル化合物;3個以上のビニル基を有する化合物。
これらの多官能性単量体は必ずしも使用する必要はないが、使用する場合の好ましい添加量は、重合性単量体100質量部に対して0.01乃至1質量部である。
また、上記芯粒子の製造において、水系媒体中に添加する分散安定剤としては、公知の界面活性剤や有機分散剤、無機分散剤を使用することができる。これらの中でも無機分散剤は超微粉が生成しにくく、重合温度を変化させても安定性が崩れにくく、洗浄も容易でトナーに悪影響を与えにくいため、好適に使用することができる。こうした無機分散剤として、以下のものが挙げられる。リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛の如きリン酸多価金属塩;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩、メタ硅酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウムの如き無機塩;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、シリカ、ベントナイト、アルミナの如き無機酸化物。
これらの無機分散剤を用いる場合、そのまま水系媒体中に添加して用いてもよいが、より細かい粒子を得るため、無機分散剤粒子を生成し得る化合物を用いて水系媒体中で調製して用いることもできる。例えば、リン酸三カルシウムの場合、高速撹拌下、リン酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液とを混合して、水不溶性のリン酸三カルシウムを生成させることができ、より均一で細かな分散が可能となる。これらの無機分散剤は、重合終了後に酸あるいはアルカリを加えて溶解することにより、ほぼ完全に取り除くことができる。
また、これらの無機分散剤は、重合性単量体100質量部に対して0.2乃至20質量部を単独で使用することが望ましいが、必要に応じて、0.001乃至0.1質量部の界面活性剤を併用してもよい。界面活性剤としては、以下のものが挙げられる。ドデシルベンゼン硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム。
また、本発明においては、上述した重合性単量体組成物中に樹脂を添加して重合を行ってもよい。
例えば、ポリエステル樹脂はエステル結合を数多く含む、比較的極性の高い樹脂である。このポリエステル樹脂を重合性単量体組成物中に溶解させて重合を行った場合、水系媒体中では樹脂が液滴の表面層に移行する傾向を示し、重合の進行とともに粒子の表面部に偏在しやすくなるため、造粒性が向上し、また、前述した離型剤の内包化が容易となる。
前記ポリエステル樹脂としては、多価アルコール成分と多価カルボン酸成分を公知の方法で重縮合させたものを使用することができる。
2価のアルコールとして、以下のものが挙げられる。エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2,2,4−トリメチルペンタン−1,3−ジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、または下記一般式(I)で表されるビスフェノール誘導体、また、下記式(II)で示されるジオール。
(式中、Rはエチレン又はプロピレン基であり、x及びyはそれぞれ1以上の整数であり、且つx+yの平均値は2乃至10である。)
(式中、R’は−CH
2CH
2−、−CH
2CH(CH
3)−、または−CH
2−C(CH
3)
2−である。)
3価以上のアルコールとして、以下のものが挙げられる。ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン。
これらのアルコール成分は、単独で使用してもよいし、混合状態で使用してもよい。
2価のカルボン酸として、以下のものが挙げられる。ナフタレンジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸の如きジカルボン酸;無水フタル酸、無水マレイン酸の如きジカルボン酸無水物;テレフタル酸ジメチル、マレイン酸ジメチル、アジピン酸ジメチルの如きジカルボン酸の低級アルキルエステル。
また、3価以上のカルボン酸を用いることにより、架橋させてもよい。3価以上のカルボン酸として、以下のものが挙げられる。トリメリット酸、1,2,4−トリカルボン酸トリn−エチル、1,2,4−トリカルボン酸トリn−ブチル、1,2,4−トリカルボン酸トリn−ヘキシル、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸トリイソブチル、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸トリn−オクチル、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸トリ2−エチルヘキシル、およびトリカルボン酸の低級アルキルエステル。
また、ポリエステル樹脂の特性を損なわない程度に、1価のカルボン酸成分や1価のアルコ−ル成分を用いてもよい。1価のカルボン酸成分として、以下のものが挙げられる。安息香酸、ナフタレンカルボン酸、サリチル酸、4−メチル安息香酸、3−メチル安息香酸、フェノキシ酢酸、ビフェニルカルボン酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、ステアリン酸。1価のアルコ−ル成分として、以下のものが挙げられる。n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、n−ヘキサノール、n−オクタノール、ラウリルアルコール、2−エチルヘキサノール、デカノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ドデシルアルコール。
樹脂の添加量としては、重合性単量体100質量部に対して、1乃至20質量部の範囲であることが好ましい。1質量部未満では添加効果が小さく、20質量部を超えて添加するとトナーの種々の物性設計が難しくなる。
本発明のトナーにおいて使用される着色剤としては、公知のものが使用でき、黒色着色剤としてのカーボンブラック、磁性粉体、また、以下に示すイエロー/マゼンタ/シアン着色剤が挙げられる。
イエロー着色剤としては、以下のものが挙げられる。縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アンスラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物。具体的には、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、109、110、111、128、129、147、168、180が好適に用いられる。
マゼンタ着色剤としては、以下のものが挙げられる。縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アンスラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物。具体的には、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、166、169、177、184、185、202、206、220、221、254が好適に用いられる。
シアン着色剤としては、以下のものが挙げられる。銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アンスラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物。具体的には、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66が好適に用いられる。
これらの着色剤は単独または混合し、更には固溶体の状態で用いることができる。黒色着色剤として磁性粉体を用いる場合、その添加量は重合性単量体100質量部に対して40乃至150質量部であることが好ましい。黒色着色剤としてカーボンブラックを用いる場合、その添加量は重合性単量体100質量部に対して1乃至20質量部であることが好ましい。また、カラートナーの場合、色相角、彩度、明度、耐候性、OHP透明性、トナー中への分散性の点から選択され、その好ましい添加量は、重合性単量体100質量部に対して1乃至20質量部である。
これらの着色剤は、重合阻害性や水相移行性にも注意を払う必要があり、必要に応じて、疎水化処理の如き表面改質を施すことが好ましい。例えば、染料系の着色剤を表面処理する好ましい方法としては、予め染料の存在下に重合性単量体を重合させる方法が挙げられ、得られた着色重合体を単量体組成物に添加する。カーボンブラックについては、上記染料と同様の処理の他に、カーボンブラックの表面官能基と反応する物質、例えば、ポリオルガノシロキサンでグラフト処理を行ってもよい。
また、磁性粉体は、四三酸化鉄、γ−酸化鉄等の酸化鉄を主成分とするものであり、一般に親水性を有しているため、分散媒としての水との相互作用によって磁性粉体が粒子表面に偏在しやすい。そのため、得られるトナー粒子は表面に露出した磁性粉体のために流動性および摩擦帯電の均一性に劣るものとなる。したがって、磁性粉体はカップリング剤によって表面を均一に疎水化処理することが好ましい。使用できるカップリング剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤が挙げられ、特にシランカップリング剤が好適に用いられる。
また、本発明のトナーは、荷電特性の安定化を目的として、必要に応じて荷電制御剤を含有させることができる。含有させる方法としては、トナー粒子の内部に添加する方法と外添する方法がある。荷電制御剤としては公知のものを利用することができるが、内部に添加する場合には重合阻害性が低く、水系分散媒体への可溶化物を実質的に含まない荷電制御剤が特に好ましい。具体的な化合物としては、ネガ系荷電制御剤として、以下のものが挙げられる。サリチル酸、アルキルサリチル酸、ジアルキルサリチル酸、ナフトエ酸、ダイカルボン酸等の芳香族カルボン酸の金属化合物;アゾ染料あるいはアゾ顔料の金属塩または金属錯体;スルホン酸またはカルボン酸基を側鎖に持つ高分子型化合物;ホウ素化合物、尿素化合物、ケイ素化合物、カリックスアレーン。また、ポジ系荷電制御剤として、四級アンモニウム塩、該四級アンモニウム塩を側鎖に有する高分子型化合物、グアニジン化合物、ニグロシン系化合物、イミダゾール化合物が挙げられる。
これらの荷電制御剤の使用量としては、結着樹脂の種類、他の添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法によって決定される。そのため、一義的に限定されるものではないが、内部添加する場合は、好ましくは結着樹脂100質量部に対して0.1乃至10質量部、より好ましくは0.1乃至5質量部の範囲で用いられる。また、外部添加する場合は、好ましくはトナー100質量部に対して0.005乃至1.0質量部、より好ましくは0.01乃至0.3質量部である。
そして、本発明のトナーには、流動性向上剤が外部添加されていることが画質向上のために好ましい。流動性向上剤としては、ケイ酸微粉体、酸化チタン、酸化アルミニウムの如き無機微粉体が好適に用いられる。これら無機微粉体は、シランカップリング剤、シリコーンオイルまたはそれらの混合物の如き疎水化剤で疎水化処理されていることが好ましい。
本発明のトナーは、そのまま一成分系現像剤として、あるいは磁性キャリアと混合して二成分系現像剤として使用することができる。特に一成分系現像方法では、現像剤と各部材が直接接触する機会が多いため、現像剤による各部材の汚染が生じやすい。そのため、離型剤が染み出しにくく、各部材の汚染を起こしにくい本発明のトナーは、一成分系現像剤として特に優れている。二成分系現像剤として用いる場合、混合するキャリアの平均粒径は、10乃至100μmであることが好ましく、現像剤中のトナー濃度は、2乃至15質量%であることが好ましい。
また、前述のガラス転移温度は、示差走査熱量分析装置「Q1000」(TA Instruments社製)を用いてASTM D3418−82に準じて測定する。装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
まず、試料約5mgをアルミパンに精秤し、空のアルミパンをリファレンスパンとして用意し、窒素雰囲気下、測定温度範囲20乃至140℃で、昇温速度2℃/分、モジュレーション振幅±0.6℃、周波数1回/分の条件で測定を行う。
測定によって得られた昇温時のリバーシングヒートフロー曲線から、吸熱を示す曲線と前後のベースラインとの接線を描き、それぞれの接線の交点を結ぶ直線の中点を求めて、これをガラス転移温度とする。
以下、本発明の製造方法について、実施例を用いて具体的に説明する。
<合成例1:樹脂微粒子分散液(a)>
(ポリエステル樹脂の作製)
撹拌機、コンデンサー、温度計、窒素導入管を備えた反応容器に下記の単量体を仕込み、エステル化触媒としてテトラブトキシチタネート0.03質量部を添加し、窒素雰囲気下、温度220℃に昇温して、撹拌しながら5時間反応を行った。
ビスフェノールA−プロピレンオキサイド2モル付加物: 49.6質量部
エチレングリコール: 8.9質量部
テレフタル酸: 22.4質量部
イソフタル酸: 15.2質量部
5−ナトリウムスルホイソフタル酸: 3.9質量部
次いで、反応容器内を5乃至20mmHgに減圧しながら、さらに5時間反応を行い、ポリエステル樹脂を得た。
(樹脂微粒子分散液の作製)
撹拌機、コンデンサー、温度計、窒素導入管を備えた反応容器に、得られたポリエステル樹脂100.0質量部とメチルエチルケトン45.0質量部、テトラヒドロフラン45.0質量部を仕込み、温度80℃に加熱して溶解した。
次いで、撹拌下、温度80℃のイオン交換水300.0質量部を添加して水分散させた後、得られた水分散体を蒸留装置に移し、留分温度が100℃に達するまで蒸留を行った。
冷却後、得られた水分散体にイオン交換水を加え、分散液中の樹脂濃度が20%になるように調整した。これを、樹脂微粒子分散液(a)とした。
<合成例2:樹脂微粒子分散液(b)>
(ポリエステル樹脂の作製)
合成例1において、単量体の仕込み量を下記のように変更した以外は、合成例1と同様にして反応を行い、ポリエステル樹脂を得た。
ビスフェノールA−プロピレンオキサイド2モル付加物: 49.9質量部
エチレングリコール: 9.0質量部
テレフタル酸: 20.5質量部
イソフタル酸: 13.7質量部
無水トリメリット酸: 7.0質量部
(樹脂微粒子分散液の作製)
撹拌機、コンデンサー、温度計、窒素導入管を備えた反応容器に、得られたポリエステル樹脂100.0質量部とブチルセロソルブ75.0質量部を仕込み、90℃に加熱して溶解した後、70℃まで冷却した。
次いで、1モル/リットルのアンモニア水溶液18.0質量部を加え、蒸気温度を保持しながら30分間撹拌を行った後、70℃のイオン交換水300.0質量部を添加して水分散させた。得られた水分散体を蒸留装置に移し、留分温度が100℃に達するまで蒸留を行った。
冷却後、得られた水分散体にイオン交換水を加え、分散液中の樹脂濃度が20%になるように調整した。これを、樹脂微粒子分散液(b)とした。
<合成例3:樹脂微粒子分散液(c)>
合成例1において、単量体混合物を下記のように変更した以外は、合成例1と同様にしてポリエステル樹脂の水分散体を得た。これを、樹脂微粒子分散液(c)とした。
ビスフェノールA−プロピレンオキサイド2モル付加物: 62.4質量部
エチレングリコール: 7.5質量部
テレフタル酸: 12.4質量部
イソフタル酸: 12.3質量部
フマル酸: 8.8質量部
5−ナトリウムスルホイソフタル酸: 5.4質量部
<合成例4:樹脂微粒子分散液(d)>
撹拌機、コンデンサー、温度計、窒素導入管を備えた反応容器に、イオン交換水350.0質量部とドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5質量部を仕込み、窒素雰囲気下、温度90℃に昇温して、2%過酸化水素水溶液8質量部、および2%アスコルビン酸水溶液8質量部を添加した。
次いで、下記の単量体混合物と乳化剤水溶液および重合開始剤水溶液を、撹拌しながら5時間かけて滴下した。
(単量体)
スチレン: 95.9質量部
メチルメタクリレート: 2.3質量部
アクリル酸: 1.8質量部
ブロモトリクロロメタン: 0.5質量部
t−ドデシルメルカプタン: 0.05質量部
(乳化剤)
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム: 0.3質量部
ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル: 0.01質量部
イオン交換水: 20.0質量部
(重合開始剤)
2%過酸化水素水溶液: 40質量部
2%アスコルビン酸水溶液: 40質量部
滴下後、上記温度を保持しながら、さらに2時間重合反応を行い、冷却してスチレン/アクリル系樹脂の水分散体を得た。
得られた水分散体にイオン交換水を加え、分散液中の樹脂濃度が20%になるように調整した。これを、樹脂微粒子分散液(d)とした。
こうして得られた樹脂微粒子分散液(a)乃至(d)について、各分散液に使用した樹脂のガラス転移温度を上述の方法で測定した。樹脂微粒子分散液(d)については、分散液の一部を洗浄して乾燥し、固形分として取り出したものを測定した。
また、各樹脂の酸価について、以下の方法にて測定した。
酸価は試料1gに含まれる酸を中和するために必要な水酸化カリウムの質量(mg)で表される。尚、スルホン酸基を有する樹脂微粒子分散液(a)および(c)の酸価は、各樹脂中のS元素量を蛍光X線分析装置(XRF)を用いて測定し、計算によって求めたものである。(b)および(d)の酸価は、JIS K 0070−1966に準じて測定したが、具体的には、以下の手順に従って測定する。
(1)試薬の準備
フェノールフタレイン1.0gをエチルアルコール(95体積%)90mlに溶かし、イオン交換水を加えて100mlとし、「フェノールフタレイン溶液」を得る。
特級水酸化カリウム7gを5mlの水に溶かし、エチルアルコール(95体積%)を加えて1lとする。炭酸ガス等に触れないように、耐アルカリ性の容器に入れて3日間放置後、ろ過して、「水酸化カリウム溶液」を得る。得られた水酸化カリウム溶液は、耐アルカリ性の容器に保管する。標定はJIS K 0070−1996に準じて行う。
(2)操作
(A)本試験
試料2.0gを200mlの三角フラスコに精秤し、トルエン/エタノール(2:1)の混合溶液100mlを加え、5時間かけて溶解する。次いで、指示薬として前記フェノールフタレイン溶液を数滴加え、前記水酸化カリウム溶液を用いて滴定する。尚、滴定の終点は、指示薬の薄い紅色が約30秒間続いたときとする。
(B)空試験
試料を用いない(すなわちトルエン/エタノール(2:1)の混合溶液のみとする)以外は、上記操作と同様の滴定を行う。
(3)得られた結果を下記式に代入して、酸価を算出する。
A=[(B−C)×f×5.61]/S
ここで、A:酸価(mgKOH/g)、B:空試験の水酸化カリウム溶液の添加量(ml)、C:本試験の水酸化カリウム溶液の添加量(ml)、f:水酸化カリウム溶液のファクター、S:試料(g)である。
結果を、それぞれ表1にまとめて示した。
<合成例5:芯粒子分散液(A)>
(顔料分散ペーストの作製)
スチレン: 212.9質量部
Cuフタロシアニン(Pigment Blue 15:3): 19.7質量部
上記材料を容器中で十分プレミクスした後、これを温度20℃以下に保ったままアトライター(三井三池化工機製)を用いて約4時間均一に分散混合し、顔料分散ペーストを作製した。
(芯粒子分散液の作製)
イオン交換水1152.0質量部に0.1モル/リットル−Na3PO4水溶液390.0質量部を投入し、クレアミックス(エム・テクニック社製)を用いて撹拌しながら、温度60℃に加温した後、1.0モル/リットル−CaCl2水溶液58.0質量部を添加してさらに撹拌を続け、Ca3(PO4)2からなる分散安定剤を含む水系媒体を調製した。
一方、上記顔料分散ペーストに以下の材料を加え、アトライター(三井三池化工機製)を用いて分散混合し、重合性単量体組成物を調製した。
n−ブチルアクリレート: 114.7質量部
非晶性ポリエステル: 15.1質量部
(プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAとイソフタル酸との重縮合物、ガラス転移温度Tg=58℃、Mw=7800、酸価13)
サリチル酸アルミニウム化合物: 3.1質量部
(ボントロンE−88: オリエント化学社製)
ジビニルベンゼン: 0.049質量部
上記単量体組成物を60℃に加温し、これにパラフィンワックス(m.p.=70℃)32.8質量部を添加して混合溶解した。
次いで、重合開始剤として、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)7.8質量部をさらに添加して溶解した。
これを前記水系媒体中に投入し、クレアミックス(エム・テクニック社製)を用いて、温度60℃、窒素雰囲気下にて、10,000rpmで10分間撹拌して造粒を行った。
さらに、得られた懸濁液を、パドル撹拌翼で撹拌しつつ、温度60℃にて5時間反応させ、さらに温度を75℃に上げて5時間維持し、重合を行った。次いで、減圧下のもと75℃の温度条件下で2時間蒸留を行い、残存するスチレンを除去した。
重合終了後、得られた重合体粒子の分散液を冷却し、イオン交換水を加えて分散液中の重合体粒子濃度が20%になるように調整した。これを、芯粒子分散液(A)とした。
<合成例6:芯粒子分散液(B)>
合成例5において、スチレン212.7質量部を、173.6質量部に、n−ブチルアクリレート114.9質量部を、154.1質量部に変えた以外は合成例5と同様にして、芯粒子分散液(B)を作製した。
<合成例7:芯粒子分散液(C)>
合成例5において、スチレン212.7質量部を、229.2質量部に、n−ブチルアクリレート114.9質量部を、98.3質量部に変えた以外は合成例5と同様にして、芯粒子分散液(C)を作製した。
<合成例8:芯粒子分散液(D)>
合成例5において、パラフィンワックス(m.p.=70℃)32.8質量部を、16.4質量部に変えた以外は合成例5と同様にして、芯粒子分散液(D)を作製した。
<合成例9:芯粒子分散液(E)>
合成例5において、パラフィンワックス(m.p.=70℃)32.8質量部を、91.7質量部に変えた以外は合成例5と同様にして、芯粒子分散液(E)を作製した。
<合成例10:芯粒子分散液(F)>
合成例5において、パラフィンワックス(m.p.=70℃)に代えて、ステアリン酸ステアリルの構造をもったエステルワックス(m.p.=60℃)を用いた以外は合成例5と同様にして、芯粒子分散液(F)を作製した。
<合成例11:芯粒子分散液(G)>
合成例5において、蒸留温度を75℃から85℃に、蒸留時間を2時間から5時間に変えた以外は合成例5と同様にして、芯粒子分散液(G)を作製した。
<合成例12:芯粒子分散液(H)>
合成例5において、パラフィンワックス(m.p.=70℃)32.8質量部を、3.3質量部に変えた以外は合成例5と同様にして、芯粒子分散液(H)を作製した。
<合成例13:芯粒子分散液(I)>
合成例5において、パラフィンワックス(m.p.=70℃)32.8質量部を、114.7質量部に変えた以外は合成例5と同様にして、芯粒子分散液(I)を作製した。
こうして得られた芯粒子分散液(A)乃至(I)について、各分散液の一部を抜き取り、pHが1.5になるまで希塩酸を加えろ過し、水洗および乾燥して各粉体粒子を得た。
こうして得られた各粉体粒子のガラス転移温度と、メタノール/水混合溶媒に対する濡れ性試験における、光の透過率が50%になるときのメタノール濃度(体積%)を測定した。
結果を、それぞれ表2にまとめて示した。離型剤の添加量は結着樹脂に対する質量部数で示した。また、表中のメタノール濃度(%)は、各粉体粒子のメタノール/水混合溶媒に対する濡れ性試験における、光の透過率が50%になるときのメタノール濃度(体積%)である。
<実施例1>
(トナー粒子の作製)
合成例5で得られた芯粒子分散液(A)500.0質量部(固形分100.0質量部)に、撹拌下、合成例1で得られた樹脂微粒子分散液(a)25.0質量部(固形分5.0質量部)を添加し、30分間撹拌を続けた後、温度55℃に昇温した。
次いで、上記分散液のpHが毎分0.1下がるように0.2モル/リットルの塩酸水溶液を滴下し、上記分散液のpHを1.5とした。
上記温度を保持しながら、さらに2時間撹拌を続けた後、攪拌下、1モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を10.0質量部/分の滴下速度で、上記分散液のpHが7.2になるまで滴下した。
この分散液を樹脂微粒子のガラス転移温度以上の温度である70℃に加熱し、さらに2時間攪拌した。上記分散液を20℃まで冷却した後、pHが1.5になるまで希塩酸を加えろ過し、水洗および乾燥してトナー粒子を得た。
(トナーの作製)
シリカ微粉体100質量部を、10質量部のヘキサメチルジシラザンで処理し、さらに10質量部のシリコーンオイルで処理して、一次粒径12nm、BET比表面積が120m2/gの疎水性シリカ微粉体を調製した。次いで、上記トナー粒子100.0質量部に対して、該疎水性シリカ微粉体1.0質量部を加え、ヘンシェルミキサー(三井三池化工機製)を用いて混合した。こうして、本発明のトナーを作製した。
<実施例2>
実施例1において、芯粒子分散液(A)に代えて、芯粒子分散液(B)を用いた以外は実施例1と同様にして、本発明のトナーを作製した。
<実施例3>
実施例1において、芯粒子分散液(A)に代えて、芯粒子分散液(C)を用いた以外は実施例1と同様にして、本発明のトナーを作製した。
<実施例4>
実施例1において、樹脂微粒子分散液(a)の添加量を25.0質量部(固形分5.0質量部)から10.0質量部(固形分2.0質量部)に変えた以外は実施例1と同様にして、本発明のトナーを作製した。
<実施例5>
実施例1において、樹脂微粒子分散液(a)の添加量を25.0質量部(固形分5.0質量部)から50.0質量部(固形分10.0質量部)に変えた以外は実施例1と同様にして、本発明のトナーを作製した。
<実施例6>
実施例1において、芯粒子分散液(A)に代えて、芯粒子分散液(D)を用いた以外は実施例1と同様にして、本発明のトナーを作製した。
<実施例7>
実施例1において、芯粒子分散液(A)に代えて、芯粒子分散液(E)を用いた以外は実施例1と同様にして、本発明のトナーを作製した。
<実施例8>
実施例1において、芯粒子分散液(A)に代えて、芯粒子分散液(F)を用いた以外は実施例1と同様にして、本発明のトナーを作製した。
<実施例9>
実施例1において、芯粒子分散液(A)に代えて、芯粒子分散液(G)を用いた以外は実施例1と同様にして、本発明のトナーを作製した。
<比較例1>
実施例1において、樹脂微粒子分散液(a)に代えて、樹脂微粒子分散液(b)を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例のトナーを作製した。
<比較例2>
実施例1において、樹脂微粒子分散液(a)に代えて、樹脂微粒子分散液(c)を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例のトナーを作製した。
<比較例3>
実施例1において、樹脂微粒子分散液(a)に代えて、樹脂微粒子分散液(d)を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例のトナーを作製した。
<比較例4>
実施例1において、樹脂微粒子分散液(a)の添加量を25.0質量部(固形分5.0質量部)から75.0質量部(固形分15.0質量部)に変えた以外は実施例1と同様にして、比較例のトナーを作製した。
<比較例5>
実施例1において、芯粒子分散液(A)に代えて、芯粒子分散液(H)を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例のトナーを作製した。
<比較例6>
実施例1において、芯粒子分散液(A)に代えて、芯粒子分散液(I)を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例のトナーを作製した。
<比較例7>
(トナー粒子の作製)
合成例7で得られた芯粒子分散液(C)に、希塩酸を加えて分散安定剤を溶解した後、ろ過し、水洗および乾燥してトナー粒子を得た。
(トナーの作製)
得られたトナー粒子に、実施例1と同様の方法で疎水性シリカ微粉体を外添して、比較例のトナーを作製した。
<比較例8>
(トナー粒子の作製)
合成例5で得られた芯粒子分散液(A)にpHが1.5になるまで希塩酸を加え分散安定剤を溶解した後、ろ過し、水洗および乾燥して粉体粒子を得た。
次いで、イオン交換水400.0質量部に、合成例1で得られた樹脂微粒子分散液(a)60.0質量部(固形分12.0質量部)を加え、攪拌しながら、上記粉体粒子100.0質量部を徐々に添加して均一に分散させた。
これに、1モル/リットルの塩酸水溶液を加えて分散液のpHを1.5に調製し、1時間攪拌した後、分散液の温度を55℃に昇温して、さらに2時間攪拌を行った。
その後、冷却し、ろ過し、水洗及び乾燥してトナー粒子を得た。
(トナーの作製)
得られたトナー粒子に、実施例1と同様の方法で疎水性シリカ微粉体を外添して、比較例のトナーを作製した。
<比較例9>
(トナー粒子の作製)
合成例5で得られた芯粒子分散液(A)500.0質量部(固形分100.0質量部)に、撹拌下、合成例1で得られた樹脂微粒子分散液(a)25.0質量部(固形分5.0質量部)を添加し、30分間撹拌を続けた後、温度55℃に昇温した。
次いで、分散液の温度を70℃に昇温して、さらに2時間攪拌を行った後、冷却し、ろ過し、水洗および乾燥してトナー粒子を得た。
(トナーの作製)
得られたトナー粒子に、実施例1と同様の方法で疎水性シリカ微粉体を外添して、比較例のトナーを作製した。
上記実施例1乃至9および比較例1乃至9で得られた各トナーに用いたトナー粒子について、温度25.0℃の条件下で測定した光の透過率が50%になるときのメタノール濃度Vini(体積%)を測定した。さらに、各トナーに用いたトナー粒子を、温度35.0乃至60.0℃の範囲で、温度2.5℃ごとの温度条件下で3日間加熱処理した後、同様にしてメタノール濃度V35.0、V37.5、V40.0、V42.5、V45.0、V47.5、V50.0、V52.5、V55.0、V57.5、V60.0(体積%)を測定した。
各温度におけるメタノール濃度V35.0乃至V60.0とメタノール濃度Viniとの変化量を求め、各変化量を、縦軸が該変化量であり、横軸が加熱処理温度である座標にプロットし、各プロットを直線で結ぶことによりグラフを作製した。図2は、実施例1と比較例7について作成されたグラフを示す。
さらに得られたグラフから、変化量が10%になるときの加熱処理温度を求めT10(℃)とし、変化量が30%になるときの加熱処理温度を求めT30(℃)とした。
以上の結果から各トナー粒子における、Vini(%)、T10−Tg1(℃)、T30−T10(℃)をそれぞれ求めた。その結果を表3にまとめて示した。
また、耐ブロッキング性、低温定着性、および耐久性の評価を、以下に述べる要領にしたがって行った。結果を、表4にまとめて示した。
<耐ブロッキング性>
トナー10gを容積100mlのポリカップに量り採り、これを内部温度50℃の恒温槽に入れて7日間放置する。その後、ポリカップを取り出して、中のトナーの状態変化を目視にて評価する。判定基準は以下の通りである。
A:変化なし
B:凝集体があるが、すぐにほぐれる
C:凝集体がやや多いが、衝撃を与えるとほぐれる
D:凝集体が多く、容易にはほぐれない
E:全くほぐれない
<低温定着性>
トナーと、シリコーン樹脂で表面被覆した磁性微粒子分散型樹脂キャリア(平均粒径35μm)を、トナー濃度が7.0質量%になるように混合して二成分現像剤を調製する。
次いで、この二成分現像剤を、高温高湿下(30℃/80%)で7日間放置した後、常温常湿下(23℃/60%)でさらに3日間放置し、初期混合による帯電をリセットする。
試験機には、市販のフルカラー複写機(CLC−700,キヤノン製)の改造機を使用し、受像紙(80g/m2)上に未定着のトナー画像(単位面積当たりのトナー載り量0.6mg/cm2)を形成する。
定着試験は、上記複写機から取り外し、定着温度が調節できるように改造した、定着ユニットを用いて行う。具体的な評価方法は、以下の通りである。
常温常湿環境下(23℃,60%RH)にて、プロセススピードを180mm/sに設定し、初期温度を120℃として設定温度を5℃ずつ順次昇温させながら、各温度で上記未定着画像の定着を行う。
本発明において、低温定着性は、低温オフセットが観察されず、且つ、得られた定着画像を4.9kPa(50g/cm2)の荷重をかけたシルボン紙で復摺擦したときに、摺擦前後の濃度低下率が5%以下となる温度を低温側定着開始点とした。低温定着性能の評価基準は以下の通りである。
A:低温側開始点が120℃ (低温定着性能が特に優れている)
B:低温側開始点が125℃ (低温定着性能が良好である)
C:低温側開始点が130℃ (低温定着性能が問題ないレベルである)
D:低温側開始点が135℃ (低温定着性能がやや劣る)
E:低温側開始点が140℃ (低温定着性能が劣る)
<耐久性>
市販のカラーレーザープリンター(LBP−5900SE,キヤノン製)を使用し、シアンカートリッジのトナーを取り出して、これに作製したトナーを150g充填した。該カートリッジをプリンターのシアンステーションに装着し、常温常湿下(23℃、60%RH)、受像紙(キヤノン製オフィスプランナー 64g/m2)を用いて、印字率2%チャートを5000枚連続して画出しした。
画出しの前後での画像濃度をマクベス濃度計によって測定し、下記の評価基準に従って画像濃度の低下について評価した。
A:画出し後の画像濃度の低下が、5%より小さい(画像濃度の低下が非常に少ない)
B:画出し後の画像濃度の低下が、5%より大きく、10%より小さい(画像濃度の低下 が少ない)
C:画出し後の画像濃度の低下が、10%より大きく、15%より小さい(画像濃度の低 下に問題はない)
D:画出し後の画像濃度の低下が、15%より大きく、20%より小さい(画像濃度の低 下が大きい)
E:画出し後の画像濃度の低下が、20%より大きい(画像濃度の低下が非常に大きい)
また、得られた画質について、下記の評価基準に従って評価した。
A:画像不良が発生せず、画質が特に優れている (耐久性が特に優れている)
B:画像不良が発生せず、画質が優れている (耐久性が優れている)
C:画像不良が発生せず、画質が良好である (耐久性が良好である)
D:画像不良が発生しないが、画質がCよりも劣る(耐久性がCよりも劣る)
E:画像不良が発生、或いは、画質がDよりも劣る(耐久性がDよりも劣る)
また、5000枚の画出しの後にトナー担持体を取り外し、トナーを拭き取った後に表面の汚染状態を顕微鏡により観察し、以下の基準で判定を行った。
A:特に汚染は見られない
B:付着物は非常に少ない
C:若干の付着物が見られる
D:多数の付着物が見られる
E:トナーの融着が見られる
結果をまとめて表4に示した。
表4から、実施例のトナーは、耐ブロッキング性、低温定着性に優れたものであり、且つ、耐久性にも優れていた。
実施例1と実施例2を比較すると、本発明の特徴を持つトナーであれば、芯粒子のガラス転移温度が30℃の場合でも、離型剤の染み出しは抑えられており、優れた耐久性を発揮できることがわかる。また、実施例3の結果からは、芯粒子のガラス転移温度に応じて定着温度が上がるが、十分な低温定着性と耐ブロッキング性及び耐久性を両立できることがわかる。
実施例4及び5の結果から、被覆量が若干少ない場合や若干多い場合でも、良好な耐ブロッキング性と低温定着性及び耐久性が得られることがわかる。
実施例6の結果から、離型剤の添加量が少ないときには定着性に影響が生じるが、十分良好な定着性が得られることがわかる。
また、実施例7乃至9の結果から、芯粒子の内部に離型剤が内包されにくい条件のときには若干の画質低下が見られたが、十分良好な耐ブロッキング性、低温定着性及び耐久性が得られていることがわかる。
実施例1と比較例1の結果から、被覆層として用いる樹脂微粒子がスルホン酸基を有する場合、より均一であり緻密な被覆層を形成できることがわかる。
比較例2乃至6の結果から、被覆層や離型剤の条件が本発明の指定する条件からはずれる場合には、本発明の特徴が得られず、耐ブロッキング性、低温定着性及び耐久性の両立が達成できないことがわかる。
比較例7の結果から、被覆層を形成しない場合には、本発明の特徴が得られないことがわかる。
比較例8及び9の結果から、異なる被覆層の形成手段を用いた場合には、種々の性能において著しく低下することがわかる。
本発明のメタノール/水混合溶媒に対する濡れ性試験によって得られるメタノール濃度と光の透過率の関係を示す図である。
トナー粒子のメタノール/水混合溶媒に対する濡れ性試験における、温度25.0℃の条件下で測定した光の透過率が50%になるときのメタノール濃度と、トナー粒子を温度35.0乃至60.0℃の範囲で、3日間加熱処理した後に温度25.0℃の条件下でメタノール濃度を測定したときの、各温度におけるメタノール濃度の変化量と加熱処理温度との関係を示す図である。