JP2010150509A - 直鎖状ポリプロピレン系樹脂組成物、射出発泡成形体およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】特性(i)〜(vi)を有する直鎖状プロピレン・エチレンブロック共重合体(A−1)とプロピレン系重合体(A−2)からなるポリプロピレン系樹脂(A)と、発泡剤(B)を含有することを特徴とする直鎖状ポリプロピレン系樹脂組成物等。
特性(i):直鎖状プロピレン重合体部分のMFRが150g/10分以上。
特性(ii):直鎖状ランダム共重合体部分の成分A−1に対する割合が2〜50重量%。
特性(iii):直鎖状ランダム共重合体部分の固有粘度[η]が5.3〜10.0dl/g。
特性(iv):MFRが100g/10分を超える。
特性(v):ダイスウエル比が1.2〜2.5。
特性(vi):180℃伸張粘度測定において歪硬化性を示す。
【選択図】なし
Description
上記ポリプロピレン系樹脂の射出成形において、軽量化、コストダウン、成形体の反り・ヒケ防止を目的に、発泡を行ういわゆる射出発泡成形が従来から行われてきた(例えば、特許文献1参照。)。また、近年、自動車分野においては、燃費向上(CO2排出低減)のために、さらなる軽量化が図られており、大幅な薄肉化、例えば1〜2mm程度の薄肉部分を有する製品の成形が必要である。
しかし、ポリプロピレン系樹脂は、メルトテンション(溶融張力)が低く、気泡が破壊されやすい。その結果、内部にボイドが発生しやすく、発泡倍率を高くすることが困難であった。また、気泡が不均一で大きいために、得られた成形体の剛性も充分でなかった。なお、ここでいうボイドとは、内部の気泡が連通化するなどして生じる粗大な気泡で、実質その径が1.0mmを超える気泡のことをいう。
この様なHMS−PPを基材樹脂として射出発泡成形に使用することで発泡成形体が得られることも、知られている(特許文献4参照。)。
通常、剛性を維持した上で大幅な軽量化を達成するには、軽量化前の非発泡射出成形体に対して、射出充填時の金型キャビティ・クリアランス厚み(発泡前厚み)を大幅に薄くし、高発泡させることが必要になる。しかし、ここで使用されているHMS−PPは、メルトフローレートが4g/10分程度しかなく、溶融時の流動性が低いために、大幅な薄肉化、例えば1〜2mm程度の薄肉部分を有する成形においては、ショートショットになり易い問題がある。また、架橋構造を有する熱可塑性樹脂は、再度溶融加工することが困難な傾向にあり、発泡体のコストや廃棄物の量や資源のリサイクルという観点でも、問題がある。
しかし、これらの方法で得られる発泡成形体は、いずれも2倍未満の低発泡倍率のもので、高発泡倍率のものは例示されていない。
しかし、該成形体が大型化、複雑化、薄肉化するに連れ、ショートショットになり易かったり、外観や発泡倍率、およびリサイクル性が不充分となる場合が多い。
因みに、本明細書で、表面外観に優れるとは、シルバーストリークの発生を抑制した良好な外観を呈すことを意味し、射出発泡成形性が良好とは、面張りが良好であり、設定発泡倍率通りに発泡し、セル形態としてセル径が均一であることを意味する。なお、面張りとは、成形体の表面における面の均一性を表し、また、面張りが良好であるということは、成形体表面全体に凹凸が無く、部分的にも微細な凹みや膨らみが無い状態を示すことである。
特性(i):直鎖状プロピレン重合体部分のメルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が150g/10分以上である。
特性(ii):直鎖状エチレン・プロピレンランダム共重合体部分の直鎖状プロピレン・エチレンブロック共重合体(成分A−1)全体に対する割合が2〜50重量%である。
特性(iii):直鎖状エチレン・プロピレンランダム共重合体部分の固有粘度[η]copolyが5.3〜10.0dl/gである。
特性(iv):メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が100g/10分を超える。
特性(v):ダイスウエル比が1.2〜2.5である。
特性(vi):180℃伸張粘度測定において歪硬化性を示す。
さらに、本発明の第5の発明によれば、第4の発明において、フィラー(成分C)は、タルク、ポリエステル繊維、ウィスカー、ガラス繊維または炭素繊維から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする直鎖状ポリプロピレン系樹脂組成物が提供される。
さらに、本発明の第8の発明によれば、金型が固定型と前進および後退が可能な可動型とから構成され、最終製品の形状位置に相当する金型キャビティ・クリアランス(T1)よりも小さい金型キャビティ・クリアランス(T0)を有する金型キャビティに、溶融状態又は半溶融状態の直鎖状ポリプロピレン系樹脂組成物を射出充填する射出工程と、金型キャビティ・クリアランス(T1)まで可動型を後退させ、発泡剤による膨張圧力によって金型キャビティの空隙を充填せしめる発泡工程とからなる型開き射出成形法で、直鎖状ポリプロピレン系樹脂組成物からなる射出発泡成形体を製造する方法であって、直鎖状ポリプロピレン系樹脂組成物を射出充填する射出工程において、発泡前成形体充填容積100%に対する射出率が20%/秒以上の条件で成形することを特徴とする第7の発明に係る射出発泡成形体の製造方法が提供される。
(1)第1の発明において、発泡剤(成分B)は、(i)重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、アゾジカルボンアミド(ADCA)、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、ベンゼンスルホニルヒドラジド若しくは4,4’−ジフェニルジスルホニルアジドから選ばれる化学発泡剤、(ii)炭酸ガス、窒素、アルゴン、ヘリウム若しくは空気から選ばれる物理発泡剤または(iii)発泡剤(膨張剤)を内包したマイクロカプセルであることを特徴とする直鎖状ポリプロピレン系樹脂組成物。
(2)上記(1)の発明において、発泡剤(成分B)の配合量は、化学発泡剤の場合、ポリプロピレン系樹脂(成分A)100重量部に対し、0.001〜10重量部であり、物理発泡剤の場合、超臨界状態を呈する量であることを特徴とする直鎖状ポリプロピレン系樹脂組成物。
(3)第1の発明において、直鎖状プロピレン・エチレンブロック共重合体(成分A−1)の直鎖状プロピレン重合体部分は、多段重合法、好ましくは二段重合法により重合されたものであることを特徴とする、直鎖状ポリプロピレン系樹脂組成物。
(4)第1の発明において、直鎖状プロピレン・エチレンブロック共重合体(成分A−1)は、180℃伸張粘度測定における歪硬化性を有し、180℃伸張粘度測定において、歪速度が1.0/secにおける歪硬化度(λmax)の値が2.0以上であることを特徴とする直鎖状ポリプロピレン系樹脂組成物。
(5)第7の発明において、平均気泡径が500μm以下の発泡層と、厚みが10〜1000μmの非発泡層とを有することを特徴とする射出発泡成形体。
(6)第7の発明において、発泡倍率が1.8〜10倍、好ましくは2.0〜10倍であることを特徴とする射出発泡成形体。
以下、直鎖状ポリプロピレン系樹脂組成物の各成分、直鎖状ポリプロピレン系樹脂組成物の製造、および射出発泡成形体の製造などについて、詳細に説明する。
1.ポリプロピレン系樹脂(成分A)
本発明の直鎖状ポリプロピレン系樹脂組成物で用いられるポリプロピレン系樹脂(成分A)は、以下に述べる、直鎖状プロピレン・エチレンブロック共重合体(成分A−1)30〜100重量%、好ましくは40〜100重量%、とりわけ好ましくは50〜100重量%と、その他のプロピレン系重合体(成分A−2)0〜70重量%、好ましくは0〜60重量%、とりわけ好ましくは0〜50重量%とからなるものである。
ここで、成分A−1が30重量%未満であると、本発明の直鎖状ポリプロピレン系樹脂組成物およびその射出発泡成形体の表面外観および射出発泡成形性が低下する。
なお、本発明の直鎖状ポリプロピレン系樹脂組成物における各成分の配合割合は、特に記載がない場合、成分Aの配合割合100重量部を基準とする。
本発明の直鎖状ポリプロピレン系樹脂組成物で用いられる直鎖状プロピレン・エチレンブロック共重合体(成分A−1)は、直鎖状プロピレン重合体部分と、直鎖状エチレン・プロピレンランダム共重合体部分からなる直鎖状プロピレン・エチレンブロック共重合体である。
成分A−1は、下記特性(i)〜(vi)を有し、直鎖状ポリプロピレン系樹脂組成物において、優れた表面外観、および高度な射出発泡成形性(面張り、発泡倍率、セル形態)を発現することに寄与する特徴を有する。
特性(i):直鎖状プロピレン重合体部分のメルトフローレート(以下MFRと記す。)(230℃、2.16kg荷重)が150g/10分以上である。
特性(ii):直鎖状エチレン・プロピレンランダム共重合体部分の成分A−1全体に対する割合が2〜50重量%である。
特性(iii):直鎖状エチレン・プロピレンランダム共重合体部分の固有粘度[η]copolyが5.3〜10.0dl/gである。
特性(iv):MFR(230℃、2.16kg荷重)が100g/10分を超える。
特性(v):ダイスウエル比が1.2〜2.5である。
特性(vi):180℃伸張粘度測定において歪硬化性を示す。
例えば、13C−NMR分析により、分岐炭素に基づく31.5〜31.7ppmにピークが観測されないことで確認できる(Macromol.chem.phys.2003年、Vol.204、1738頁参照。)。
また、一種の網目状に近似した状態を呈していることにより、直鎖状プロピレン重合体部分と、直鎖状エチレン・プロピレンランダム共重合体部分との相溶性がより一段と高められていると、考察されている。
本発明の直鎖状ポリプロピレン系樹脂組成物に用いられる直鎖状プロピレン・エチレンブロック共重合体(成分A−1)の製造法は、上記特性(i)〜(vi)を有している限り、特に限定されるものではなく、公知の方法、条件の中から適宜に選択される。
プロピレンの重合触媒としては、通常、高立体規則性触媒が用いられる。例えば、四塩化チタンを有機アルミニウム化合物で還元し、更に各種の電子供与体及び電子受容体で処理して得られた三塩化チタン組成物と有機アルミニウム化合物及び芳香族カルボン酸エステルを組み合わせた触媒(特開昭56―100806号、特開昭56−120712号、特開昭58−104907号の各公報参照。)、及び、ハロゲン化マグネシウムに四塩化チタンと各種の電子供与体を接触させた担持型触媒(特開昭57−63310号、同63−43915号、同63−83116号の各公報参照。)等を例示することができる。
直鎖状プロピレン重合体部分の多段重合法としては、以下に示す工程(1)と工程(2)による二段重合法を、例示することができる。
工程(1):プロピレンを、分子量調節剤としての水素の存在下で重合する。分子量が大きすぎる重合体の生成を抑制するためである。水素は、直鎖状プロピレン重合体部分のMFRが150g/10分以上になるように、添加される。水素濃度としては、全モノマー量に対して通常0.1〜40モル%の範囲から選択される。また、重合温度は通常40〜90℃、圧力は通常0.1〜5MPaの範囲から選択される。この工程(1)で得られる重合体の量は、通常全重合量の80〜99重量%となるように調整される。工程(1)で製造される重合体の量が80重量%未満であると、工程(2)で製造される高分子量のプロピレン重合体が多くなり過ぎ、成形性を損なう。
直鎖状エチレン・プロピレンランダム共重合体部分の重合は、高分子量の重合体を重合するために、なるべく低濃度の水素雰囲気下もしくは、実質上水素の存在しない状態で重合することが好ましい。重合は、直鎖状プロピレン重合体部分重合工程で生成したプロピレン重合体及び触媒の存在下、引き続いて行われる。重合温度は通常40〜90℃、圧力は通常0.1〜5MPaの範囲から選択される。
特性(i):
本発明の直鎖状ポリプロピレン系樹脂組成物に用いられる成分A−1中の直鎖状プロピレン重合体部分のMFR(230℃、2.16kg荷重)は、150g/10分以上、好ましくは250〜3000g/10分、さらに好ましくは550〜2000g/10分である。MFRが150g/10分未満であると、直鎖状ポリプロピレン系樹脂組成物および射出発泡成形体の表面外観、射出発泡成形性がそれぞれ悪化する。
該MFRは、直鎖状プロピレン重合体部分の重合を終えた時のMFRであり、多段重合を行う場合には、最終の重合槽から取り出される直鎖状プロピレン重合体部分のMFRである。
本発明の直鎖状ポリプロピレン系樹脂組成物に用いられる成分A−1中の直鎖状エチレン・プロピレンランダム共重合体部分の成分A−1全体に対する構成割合は、2〜50重量%であり、好ましくは5〜40重量%であり、より好ましくは7〜20重量%である。
すなわち、直鎖状プロピレン重合体部分の成分A−1全体に対する割合は、50〜98重量%、好ましくは60〜95重量%、より好ましくは80〜93重量%である。直鎖状エチレン・プロピレンランダム共重合体部分が2重量%未満である(すなわち、直鎖状プロピレン重合体部分が98重量%を超える)と、直鎖状ポリプロピレン系樹脂組成物および射出発泡成形体の射出発泡成形性や衝撃強度が悪化する。一方、直鎖状エチレン・プロピレンランダム共重合体部分の割合が50重量%を超える(すなわち、直鎖状プロピレン重合体部分が50重量%未満である)と、表面外観、射出発泡成形性や剛性が悪化する。
本発明の直鎖状ポリプロピレン系樹脂組成物に用いられる成分A−1中の直鎖状エチレン・プロピレンランダム共重合体部分の固有粘度[η]copolyは、5.3〜10.0dl/g、好ましくは6.0〜10.0dl/g、より好ましくは6.5〜9.5dl/gである。固有粘度[η]copolyが5.3dl/g未満であると、直鎖状ポリプロピレン系樹脂組成物および射出発泡成形体の射出発泡成形性が悪化する。また、固有粘度[η]copolyが10.0dl/gを超えると、表面外観および衝撃強度が悪化する。
本発明の直鎖状ポリプロピレン系樹脂組成物に用いられる成分A−1全体のMFR(230℃、2.16kg荷重)は、100g/10分を超える必要があり、好ましくは105g/10分以上、より好ましくは135〜500g/10分、さらに好ましくは140〜300g/10分である。MFRが100g/10分以下であると、ポリプロピレン系樹脂組成物および射出発泡成形体の表面外観および射出発泡成形性が悪化するほか、例えば、発泡前の金型キャビティクリアランスが1〜2mm程度の薄肉部分を有する成形において、ショートショットが発生して安定した成形が行えない場合が生ずる。
本発明の直鎖状ポリプロピレン系樹脂組成物に用いられる成分A−1全体のダイスウエル比は、1.2〜2.5、好ましくは1.3〜2.4であり、より好ましくは1.4〜2.3である。ダイスウエル比が1.2未満であると、直鎖状プロピレン系樹脂組成物が高倍率において良好なセル形態を保てず、射出発泡成形性が悪化する。一方、ダイスウエル比が2.5を超えるものは、工業的に製造が難しいので実用性が小さい。
本発明の直鎖状ポリプロピレン系樹脂組成物に用いられる成分A−1は、180℃伸張粘度測定において歪硬化性を示すものである。この180℃伸張粘度測定において歪硬化性を示すことの効果は、本発明の直鎖状ポリプロピレン系樹脂組成物において、射出成形時の溶融樹脂流動先端部(フローフロント)での破泡等に起因するシルバーストリークが出難くなり、表面外観が美麗になり易く、また、高倍率で、均一微細な気泡を有する発泡成形体が得られ易くなることである。
ここでいう歪硬化性を示すとは、溶融物の延伸歪み量が大きくなるにしたがって、伸長粘度がしだいに大きくなり、ある歪み量のとき、それまでに比べ、伸長粘度の増加率が急激に増大する場合である。
本発明の直鎖状ポリプロピレン系樹脂組成物に用いられる成分A−1全体の、分子量分布を表す重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Q値:Mw/Mn)は、7〜13が好ましく、より好ましくは8〜12である。Q値が7未満であると、直鎖状ポリプロピレン系樹脂組成物が良好なセル形態を保てず、高倍率な発泡成形体が得られなくなる傾向がある。一方、Q値が13を超えると、製造が極めて困難になるので好ましくない。
本発明の直鎖状ポリプロピレン系樹脂組成物における成分A−1の配合割合は、成分A100重量%に対して、30〜100重量%、好ましくは40〜100重量%、とりわけ好ましくは50〜100重量%である。成分A−1が30重量%未満であると、本発明の直鎖状ポリプロピレン系樹脂組成物およびその射出発泡成形体の表面外観および射出発泡成形性が低下する。
本発明の直鎖状ポリプロピレン系樹脂組成物で用いられるその他のプロピレン系重合体(成分A−2)は、プロピレン単独重合体、プロピレン・エチレンランダム共重合体やプロピレン・エチレンブロック共重合体などのプロピレンとプロピレンを除くα−オレフィンとの共重合体、プロピレンとビニル化合物との共重合体、プロピレンとビニルエステルとの共重合体、プロピレンと不飽和有機酸またはその誘導体との共重合体、プロピレンと共役ジエンとの共重合体、プロピレンと非共役ポリエン類との共重合体およびこれらの混合物などである。
なかでも、プロピレンとエチレンとの共重合体が好ましく、とりわけプロピレン・エチレンブロック共重合体が好ましい。
成分A−2は、本発明の直鎖状ポリプロピレン系樹脂組成物において、表面外観、射出発泡成形性、剛性、衝撃強度などの物性および生産性および経済性などを維持、向上することに寄与する特徴を有する。
本発明の直鎖状ポリプロピレン系樹脂組成物に用いられる成分A−2の製造法は、特に限定されるものではなく、公知の方法、条件の中から適宜に選択される。
プロピレンの重合触媒としては、通常、高立体規則性触媒が用いられ、例えば、チーグラー系触媒やメタロセン系触媒等を例示することができる。
前記触媒の存在下、気相重合法、液相塊状重合法、スラリー重合法等の製造プロセスを適用することにより得られる。
プロピレン・α−オレフィン共重合体におけるα−オレフィンは、プロピレンを除く炭素数2〜20のα−オレフィンが挙げられ、例えば、エチレン、ブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1等を例示できる。プロピレンとビニル化合物との共重合体におけるビニル化合物は、例えばスチレン、ビニルシクロペンテン、ビニルシクロヘキサン等を例示できる。プロピレンとビニルエステルとの共重合体におけるビニルエステルは、例えば酢酸ビニル等を例示できる。プロピレンと不飽和有機酸またはその誘導体との共重合体における不飽和有機酸またはその誘導体は、例えば無水マレイン酸等を例示できる。
プロピレンと共重合されるα−オレフィンや上記ビニル化合物等は、一種類でも二種類以上用いてもよい。このうちエチレン、ブテン−1が好ましい。
本発明の直鎖状ポリプロピレン系樹脂組成物に用いられる成分A−2全体のMFR(230℃、2.16kg荷重)は、好ましくは0.1〜300g/10分、より好ましくは3〜200g/10分、さらに好ましくは10〜100g/10分、とりわけ好ましくは20〜60g/10分である。MFRが0.1g/10分未満であると、直鎖状ポリプロピレン系樹脂組成物および射出発泡成形体の表面外観および射出発泡成形性が悪化する傾向があるほか、例えば、発泡前の金型キャビティクリアランスが1〜2mm程度の薄肉部分を有する成形において、ショートショットが発生して安定した成形が行えない場合が生ずる。
本発明の直鎖状ポリプロピレン系樹脂組成物に用いられる成分A−2の配合割合は、成分A100重量%に対して、0〜70重量%、好ましくは0〜60重量%、とりわけ好ましくは0〜50重量%である。成分A−2が70重量%を超えると、本発明の直鎖状ポリプロピレン系樹脂組成物およびその射出発泡成形体の表面外観と射出発泡成形性が低下する。
本発明の直鎖状ポリプロピレン系樹脂組成物に用いられる発泡剤(成分B)は、化学発泡剤、物理発泡剤およびマイクロカプセルなどであり、直鎖状ポリプロピレン系樹脂組成物において、良好な射出発泡成形性(面張り、発泡倍率、セル形態)を発現させるなどの目的で用いられる。
発泡剤の種類としては、例えば、化学発泡剤、物理発泡剤およびマイクロカプセルなどが挙げられ、射出発泡成形に通常使用できるものであれば、特に制限なく、用いることができ、これら発泡剤は、単独または2種以上混合して、使用することもできる。
化学発泡剤としては、例えば、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウムなどの無機系化学発泡剤や、アゾジカルボンアミド(ADCA)、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、ベンゼンスルホニルヒドラジド、4,4’−ジフェニルジスルホニルアジドなどの有機系化学発泡剤が挙げられる。
また、化学発泡剤は、取扱性、貯蔵安定性、ポリプロピレン系樹脂への分散性などの点から、ポリオレフィン系樹脂を基材としたマスターバッチとして造粒加工した後に、使用することもできる。これにより成形機のホッパーの汚染、成形体表面への粉の付着を抑制することができる。この場合、通常10〜50重量%濃度のポリオレフィン系樹脂のマスターバッチとして使用されるのが好ましい。
また、一度化学発泡剤を添加し、ペレット化により化学発泡剤を分解させたものであっても良く、さらに予め、高濃度の化学発泡剤を分解させ、その残渣を添加しても良い。化学発泡剤は、射出成形機のシリンダー中で分解し、その発泡残渣が発泡核剤となりうる。
不活性ガスとしては、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、アスタチンなどが挙げられ、低沸点有機溶剤の蒸気としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパン、ブタン、ペンタンなどが挙げられ、ハロゲン系不活性溶剤の蒸気としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、フロン、三フッ化窒素などが挙げられる。これらの中で、蒸気にする必要が無く、安価で、環境汚染、火災の危険性が極めて少ないことから、不活性ガスや炭酸ガス、空気を使用することが好ましく、なかでも炭酸ガス、窒素、アルゴン、ヘリウムが好ましく、とりわけ、炭酸ガス、窒素が好ましい。
さらに、物理発泡剤は、超臨界状態であることが好ましく、これにより樹脂中へのガス溶融が容易になる利点がある。
物理発泡剤は、射出成形機のシリンダー内などの前記成分Aなどに、ガス状または超臨界流体として注入され、分散または溶解されるもので、金型内に射出後、圧力開放されることによって、発泡剤として機能するものである。
これらマイクロカプセルは、通常、前記成分Aなどと予め混合するなどしてから射出成形機などに供給され、使用される。
本発明の直鎖状ポリプロピレン系樹脂組成物における発泡剤(成分B)の配合割合は、発泡剤の種類、発泡倍率、射出発泡成形条件などを鑑み、適宜設定すればよい。例えば、化学発泡剤を用いる場合は、成分A100重量部当たり、0.001〜10重量部が好ましく、より好ましくは0.01〜8重量部、さらに好ましくは0.1〜5重量部である。
この場合の配合割合は、発泡剤の実質濃度であり、例えば、発泡剤とポリオレフィン樹脂とのマスターバッチを用いる場合は、マスターバッチ中に含有する発泡剤濃度に基づき算出される。成分Bの配合割合が0.001重量部未満であると、直鎖状ポリプロピレン系樹脂組成物が充分に発泡せず、一方、配合割合が10重量部を超えると、直鎖状ポリプロピレン系樹脂組成物および射出発泡成形体の衝撃強度などの機械的強度が低下したり、二次発泡現象(過剰に残存した発泡ガスによって射出発泡成形体の表面が火膨れ状に膨れる現象)を生じたり、経済的にも不利となる。
また、物理発泡剤を用いる場合は、例えば用いるガスの注入圧力を調整することで、適宜設定する。ガスの注入圧力が不足したり、過剰であったりすると、前記の化学発泡剤の場合と同様に、直鎖状ポリプロピレン系樹脂組成物が充分に発泡しなかったり、射出発泡成形体の機械的強度などが低下する。
本発明の直鎖状ポリプロピレン系樹脂組成物において、必要に応じて配合される、フィラー(成分C)は、無機または有機のフィラーである。成分Cは、直鎖状ポリプロピレン系樹脂組成物および射出発泡成形体の射出発泡成形性、剛性などの物性、寸法安定性(線膨張係数の低減)、環境適応性の各向上などの目的で用いられる。
成分Cの具体例として、例えば無機フィラーとして、シリカ、ケイ藻土、バリウムフェライト、酸化ベリリウム、軽石、軽石バルンなどの酸化物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウムなどの水酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト、ドーソナイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸アンモニウム、亜硫酸カルシウムなどの硫酸塩又は亜硫酸塩、タルク、クレー、マイカ、ガラス繊維、ガラスバルーン、ガラスビーズ、ケイ酸カルシウム、ワラストナイト、モンモリロナイト、ベントナイトなどのケイ酸塩、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素中空球などの炭素類や、硫化モリブデン、ボロン繊維、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウム、塩基性硫酸マグネシウム繊維(マグネシウムオキシサルフェイト)、チタン酸カリウム繊維、ホウ酸アルミニウム繊維、ケイ酸カルシウム繊維、炭酸カルシウム繊維、各種金属繊維などを挙げることができる。
一方、有機フィラーとしては、例えばモミ殻などの殻繊維、木粉、木綿、ジュート、紙細片、セロハン片、ポリアミド繊維、セルロース繊維、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、各種合成繊維、熱硬化性樹脂粉末などを挙げることができる。
中でも板状、繊維状、ウィスカー状のものは、寸法安定性や物性などのバランスに優れた本発明の直鎖状プロピレン系樹脂組成物および射出発泡成形体が得られやすい点で好ましい。また、ポリマー用フィラーとして市販されているものは、いずれも使用できる。
これらは、一般的な粉末状の外に、取り扱いの利便性などを高めた、圧縮魂状、ペレット(造粒)状、顆粒状、チョップドストランド状などの形態で製造されることが多いが、いずれも使用することができる。なかでも粉末状、圧縮魂状、顆粒状が好ましい。
なお、ここで言うウィスカーとは、塩基性硫酸マグネシウム繊維、チタン酸カリウム繊維、ホウ酸アルミニウム繊維、ケイ酸カルシウム繊維、炭酸カルシウム繊維、極細炭素繊維などの極細(概ね2μmφ以下、とりわけ1μmφ以下)繊維状のものである。
この平均粒径は、レーザー回折散乱方式粒度分布計などを用いて測定した値であり、測定装置としては、例えば、堀場製作所LA−920型が挙げられる。また、タルクは、平均アスペクト比が4以上、特に5以上のものがより好ましい。タルクのアスペクト比の測定は、顕微鏡などにより測定された値より求められる。
これらの成分Cの製造方法は、特に限定されたものではなく、公知の各種製造方法などにて製造される。例えばタルクの場合、天然に産出されたものを機械的に微粉砕化することにより得られたものを、さらに精密に1回又は複数回分級することによって得られる。
粉砕機としては、例えばジョークラシャ−、ハンマークラシャ−、ロールクラシャー、スクリーンミル、ジェット粉砕機、コロイドミル、ローラーミル、振動ミル等を用いることができる。これらの粉砕されたタルクは、本発明で示される平均粒径に調節するために、例えばサイクロン、サイクロンエアセパレーター、ミクロセパレーター、サイクロンエアセパレーター、シャープカットセパレター、などの装置で1回又は繰り返し湿式又は乾式分級する。特定の粒径に粉砕した後、シャープカットセパレターにて、分級操作を行うことが好ましい。
本発明の直鎖状ポリプロピレン系樹脂組成物において、必要に応じて配合される成分Cの配合割合は、成分A100重量部に対して、1〜70重量部、好ましくは5〜50重量部、より好ましくは10〜35重量部である。成分Cの配合割合が、1重量部未満であると、直鎖状ポリプロピレン系樹脂組成物および射出発泡成形体の剛性や寸法安定性が低下し易く、一方、70重量部を超えると、衝撃強度や外観が低下する傾向がある。なお、成分Cは、二種以上併用してもよい。
本発明の直鎖状ポリプロピレン系樹脂組成物において、必要に応じて配合されるエラストマー(成分D)は、エチレン・α−オレフィン共重合体エラストマーなどであり、直鎖状ポリプロピレン系樹脂組成物および射出発泡成形体において、高い衝撃強度や、優れた寸法安定性などを発現させる目的で用いられる。
成分Dとしては、例えば、エチレン・プロピレン共重合体エラストマー(エチレンプロピレンゴム;EPR)、エチレン・ブテン共重合体エラストマー(EBR)、エチレン・ヘキセン共重合体エラストマー(EHR)、エチレン・オクテン共重合体エラストマー(EOR)などのエチレン・α−オレフィン共重合体エラストマー;エチレン・プロピレン・エチリデンノルボルネン共重合体、エチレン・プロピレン・ブタジエン共重合体、エチレン・プロピレン・イソプレン共重合体などのエチレン・α−オレフィン・ジエン三元共重合体エラストマー;スチレン・ブタジエン・スチレントリブロック体(SBS)、スチレン・ブタジエン・スチレントリブロック体の水素添加物(SEBS)、スチレン・イソプレン・スチレントリブロック体(SIS)、スチレン・イソプレン・スチレントリブロック体の水素添加物(SEPS)などのスチレン系エラストマーなどが挙げられる。
これらのエラストマーは、2種類以上を混合して使用することもできる。
エチレン・α−オレフィン共重合体エラストマーや、エチレン・α−オレフィン・ジエン三元共重合体エラストマーなどは、各モノマーを触媒の存在下、重合することにより製造される。触媒としては、ハロゲン化チタンのようなチタン化合物、アルキルアルミニウム−マグネシウム錯体のような有機アルミニウム−マグネシウム錯体、アルキルアルミニウム、又はアルキルアルミニウムクロリドなどのいわゆるチーグラー型触媒、WO91/04257号公報等に記載のメタロセン化合物触媒等を使用することができる。重合法としては、気相流動床法、溶液法、スラリー法などの製造プロセスを適用して重合することができる。
成分DのMFR(190℃、2.16kg荷重)は、0.5g/10分以上が好ましい。本発明の主要用途である自動車部材を考慮した場合、MFRが上記の範囲であるものが、衝撃強度が良好な直鎖状ポリプロピレン系樹脂組成物および射出発泡成形体を得られる場合が多いので、好ましい。
本発明の直鎖状ポリプロピレン系樹脂組成物において、必要に応じて配合される成分Dの配合割合は、成分A100重量部に対して、1〜50重量部、好ましくは5〜45重量部、より好ましくは10〜40重量部である。成分Dの配合割合が1重量部未満であると、直鎖状ポリプロピレン系樹脂組成物および射出発泡成形体の衝撃強度や寸法安定性が低下し易く、一方、配合割合が40重量部を超えると、剛性が低下する傾向がある。
本発明の直鎖状プロピレン系樹脂組成物においては、上記成分A、成分B、および成分C、成分D以外に、さらに必要に応じ、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、たとえば発明の効果をさらに向上させたり、他の効果を付与するなどのため、任意添加成分(成分E)を配合することができる。
具体的には、ヒンダードアミン系などの光安定剤、ベンゾトリアゾール系などの紫外線吸収剤、ソルビトール系などの造核剤、顔料などの着色剤、フェノール系、リン系などの酸化防止剤、非イオン系などの帯電防止剤、無機化合物などの中和剤、チアゾール系などの抗菌・防黴剤、ハロゲン化合物などの難燃剤、プロセスオイル(配合油)、可塑剤、非イオン系などの帯電防止剤、有機金属塩系などの分散剤、脂肪酸アミド系などの滑剤、窒素化合物などの金属不活性剤、非イオン系などの界面活性剤や、上記成分A〜成分D以外のポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミドやポリエステルなどの熱可塑性樹脂、フィラー、エラストマーなどを挙げることができる。これらの成分は、二種以上併用しても良く、組成物に添加しても良いし、各成分に添加されていても良く、それぞれの成分においても二種以上併用しても良い。
具体例としては、ヒンダードアミン化合物として、コハク酸ジメチルと1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンとの縮合物;ポリ〔〔6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル〕〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕ヘキサメチレン〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕〕;テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート;テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート;ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート;ビス−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルセバケートなどが挙げられ、ベンゾトリアゾール系としては、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール;2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールなどが挙げられ、ベンゾフェノン系としては2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン;2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノンなどが挙げられ、サリシレート系としては、4−t−ブチルフェニルサリシレート;2,4−ジ−t−ブチルフェニル3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエートなどが挙げられる。
具体例としては、無機系としてタルク;シリカなどが挙げられ、ソルビトール系として、1,3:2,4−ジベンジリデン−ソルビトール;1,3:2,4−ジ−(p−メチル−ベンジリデン)ソルビトール;1,3:2,4−ジ−(p−エチル−ベンジリデン)ソルビトール;1,3:2,4−ジ−(2’,4’−ジ−メチル−ベンジリデン)ソルビトール;1,3−p−クロロベンジリデン−2,4−p−メチル−ベンジリデン−ソルビトール;1,3:2,4−ジ−(p−プロピルベンジリデン)ソルビトールなどが挙げられ、カルボン酸金属塩系として、アルミニウム−モノ−ヒドロキシ−ジ−p−t−ブチルベンゾエート;安息香酸ナトリウム;モンタン酸カルシウムなどが挙げられ、さらに、有機リン酸塩系として、ソジウムビス(4−t−ブチルフェニル)フォスフェート;ソジウム−2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート;リチウム−2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェートなどが挙げられる。
具体例として、無機系顔料としては、酸化チタン;酸化鉄(ベンガラ等);クロム酸(黄鉛など);モリブデン酸;硫化セレン化物;フェロシアン化物およびカーボンブラックなどが挙げられ、有機系顔料としては、難溶性アゾレーキ;可溶性アゾレーキ;不溶性アゾキレート;縮合性アゾキレート;その他のアゾキレートなどのアゾ系顔料;フタロシアニンブルー;フタロシアニングリーンなどのフタロシアニン系顔料;アントラキノン;ペリノン;ペリレン;チオインジゴなどのスレン系顔料;染料レーキ;キナクリドン系;ジオキサジン系;イソインドリノン系などが挙げられる。また、メタリック調やパール調にするには、アルミフレーク;パール顔料を含有させることができる。また、染料を含有させることもできる。
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール;テトラキス[メチレン−3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]−メタン;トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)イソシアヌレートなどが挙げられる。
また、リン系酸化防止剤としては、例えば、ジステアリルペンタエリスリトールジフォスファイト;トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト;トリス(2−t−ブチル−4−メチルフェニル)フォスファイトなどが挙げられる。
また、イオウ系酸化防止剤としては、例えば、ジステアリルチオジプロピオネートなどが挙げられる。
具体例としては、ポリオキシエチレンアルキルアミン;ポリオキシエチレンアルキルアミド;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル;ステアリン酸モノグリセリド;アルキルジエタノールアミン;アルキルジエタノールアミド;アルキルジエタノールアミン脂肪酸モノエステル;テトラアルキルアンモニウム塩などが挙げられる。
本発明の直鎖状ポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法としては、上記成分A、成分B、さらに必要に応じ、成分C、成分Dおよび成分Eを、上記配合割合で配合して、まぶしたり、ハンドブレンドするなどドライブレンドする方法、Vブレンダー、タンブラーミキサーなど各種のブレンダー、ミキサーなどを用いて混合する方法、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ロールミキサー、ブラベンダープラストグラフ、ニーダーなど通常の混練機を用いて混練・造粒する方法、および、前記各成分を各々別個に(または一部をブレンドして)そのまま射出成形機に直接供給する方法などを挙げることができる。
射出発泡成形方法としては、例えば金型キャビティ内に、成分Bを少なくとも一部に含有する直鎖状ポリプロピレン系樹脂組成物を、発泡圧力以上の圧力で可動型を後退させながら射出充填して、スキン層を形成させた後、充填完了後さらに可動型を後退させてコア層を発泡させる方法が挙げられる。
この成形方法は、直鎖状ポリプロピレン系樹脂組成物および射出発泡成形体の表面外観および射出発泡成形性を高い水準で発現できるため、好ましい。中でも、該成形方法において、直鎖状ポリプロピレン系樹脂組成物を射出充填する射出工程における、発泡前成形体充填容積100%に対する射出率が20%/秒以上の条件で成形するのが好ましく、50%/秒以上がより好ましく、100%/秒以上がさらに好ましく、200%/秒以上がとりわけ好ましい。これらの条件で成形する方法が、前記の射出発泡成形性と表面外観をより一層高い水準で発現できる。
なお、実施例で用いた評価法、分析の各法および材料は、以下の通りである。
(1)表面外観:
(a)シルバーストリーク:
発泡成形体のシルバーストリークの発生程度を、別途作製した非発泡成形体と比較して、次の3段階で評価した。
非発泡成形品と全く同レベルのもの・・・・・・・・・・・・○
成形体表面にシルバーストリークが部分的に若干あるもの・・△
成形体全面にシルバーストリークが多いもの・・・・・・・・×
この場合、○および△が実用性を有すると、判断されるレベルである。
(a)面張り:
発泡成形体の面張りの程度を、別途作製した非発泡成形体と比較して、次の3段階で評価した。
非発泡成形品と全く同レベルのもの・・・・・○
成形体表面に凹凸が部分的に若干あるもの・・△
成形体全面に凹凸が多いもの・・・・・・・・×
この場合、○および△が実用性を有すると、判断されるレベルである。
発泡成形体の板厚/初期肉厚により求めた。コアバック後のキャビティクリアランス/初期のキャビティクリアランス=1.9、2.7、3.1各倍のコアバック量の条件にて得られた成形体の厚みを評価した。評価基準は、次の3段階である。
但し、初期のキャビティクリアランス=1.3mmである。従って、それぞれのコアバック後のキャビティクリアランスは、2.5、3.5、4.0各mmである。
成形体全体の厚みがコアバック後のキャビティクリアランスと全く同じ厚み・・○
成形体の厚みがコアバック後のキャビティクリアランスに対し部分的に薄い箇所が若干ある・・△
成形体の厚みがコアバック後のキャビティクリアランスに対し全体的に薄い・・×
この場合、○および△が実用性を有すると、判断されるレベルである。
発泡成形体を厚み方向に切断した断面の顕微鏡写真を目視で観察し、評価した。評価基準は、次の3段階である。
セル径が細かく全体に均一であるもの・・・・・・・・・・・・・・・○
セル径が細かく一部不均一であるもの・・・・・・・・・・・・・・・△
セル径が全体に不均一であるもの、または完全に剥離しているもの・・×
この場合、○および△が実用性を有すると、判断されるレベルである。
下記の曲げ試験を行い、歪み量=10mmにおける、荷重値(N)を求めた。この荷重値(N)が大きいほど剛性が高い。
(a)試験装置:島津製作所製オートグラフAG1000
(b)支持台 :スパン=100mm、支持部分の先端半径=10mm
(c)圧子 :先端半径=10mm
(d)試験片 :発泡肉厚(2.5mm、3.5mm)の成形体からの切出片(50mm×150mm×肉厚)
(e)試験速度:50mm/分
(f)試験温度:23℃
JIS K7210準拠。試験温度:230℃、荷重:2.16kg。
(a)使用する分析装置:
(a−1)クロス分別装置:
ダイヤインスツルメンツ社製CFC T−100(CFCと略す)
(a−2)フーリエ変換型赤外線吸収スペクトル分析:
FT−IR、パーキンエルマー社製 1760X
CFCの検出器として取り付けられていた波長固定型の赤外分光光度計を取り外して、代わりにFT−IRを接続し、このFT−IRを検出器として使用する。CFCから溶出した溶液の出口からFT−IRまでの間のトランスファーラインは1mの長さとし、測定の間を通じて140℃に温度保持する。FT−IRに取り付けたフローセルは、光路長1mm、光路幅5mmφのものを用い、測定の間を通じて140℃に温度保持する。
(a−3)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC):
CFC後段部分のGPCカラムは、昭和電工社製AD806MSを3本直列に接続して使用する。
(b−1)溶媒:オルトジクロルベンゼン(ODCB)
(b−2)サンプル濃度:4mg/mL
(b−3)注入量:0.4mL
(b−4)結晶化:140℃から40℃まで約40分かけて降温する。
(b−5)分別方法:
昇温溶出分別時の分別温度は、40、100、140℃とし、全部で3つのフラクションに分別する。なお、40℃以下で溶出する成分(フラクション1)、40〜100℃で溶出する成分(フラクション2)、100〜140℃で溶出する成分(フラクション3)の溶出割合(単位:重量%)を各々W40、W100、W140と定義する。W40+W100+W140=100である。また、分別した各フラクションは、そのままFT−IR分析装置へ自動輸送される。
(b−6)溶出時溶媒流速:1mL/分
CFC後段のGPCから試料溶液の溶出が開始した後、以下の条件でFT−IR測定を行い、上述した各フラクション1〜3について、GPC−IRデータを採取する。
(c−1)検出器:MCT
(c−2)分解能:8cm−1
(c−3)測定間隔:0.2分(12秒)
(c−4)一測定当たりの積算回数:15回
各温度で溶出した成分の溶出量と分子量分布は、FT−IRによって得られる2945cm−1の吸光度をクロマトグラムとして使用して求める。溶出量は、各溶出成分の溶出量の合計が100%となるように規格化する。保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行う。
使用する標準ポリスチレンは、何れも東ソー(株)製の以下の銘柄である。
F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000。
各々が0.5mg/mLとなるように、ODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.4mL注入して較正曲線を作成する。較正曲線は、最小二乗法で近似して得られる三次式を用いる。分子量への換算は、森定雄著「サイズ排除クロマトグラフィー」(共立出版)を参考に汎用較正曲線を用いる。その際使用する粘度式([η]=K×Mα)には、以下の数値を用いる。
(d−1)標準ポリスチレンを使用する較正曲線作成時:
K=0.000138、α=0.70
(d−2)成分A−1のサンプル測定時:
K=0.000103、α=0.78
各溶出成分のエチレン含有量分布(分子量軸に沿ったエチレン含有量の分布)は、FT−IRによって得られる2956cm−1の吸光度と2927cm−1の吸光度との比を用い、ポリエチレンやポリプロピレンや13C−NMR測定等によりエチレン含有量が既知となっているエチレン−プロピレンラバー(EPR)及びそれらの混合物を使用して予め作成しておいた検量線により、エチレン含有量(重量%)に換算して求める。
本発明に用いられる成分A−1中のエチレン・プロピレンランダム共重合体部分の含量(Wc)は、下記式(I)で理論上は定義され、以下のような手順で求められる。
Wc(重量%)=W40×A40/B40+W100×A100/B100 ・・・(I)
式(I)中、W40、W100は、上述した各フラクションでの溶出割合(単位:重量%)であり、A40、A100は、W40、W100に対応する各フラククションにおける実測定の平均エチレン含有量(単位:重量%)であり、B40、B100は、各フラクションに含まれる直鎖状エチレン・プロピレンランダム共重合体部分のエチレン含有量(単位:重量%)である。A40、A100、B40、B100の求め方は後述する。
すなわち、(I)式右辺の第一項はフラクション1(40℃に可溶な部分)に含まれる直鎖状エチレン・プロピレンランダム共重合体部分の量を算出する項である。フラクション1が直鎖状エチレン・プロピレンランダム共重合体のみを含み、直鎖状プロピレン重合体を含まない場合には、W40がそのまま全体の中に占めるフラクション1由来の直鎖状エチレン・プロピレンランダム共重合体部分含有量に寄与するが、フラクション1には、直鎖状エチレン・プロピレンランダム共重合体由来の成分のほかに少量の直鎖状プロピレン重合体由来の成分(極端に分子量の低い成分及びアタクチックポリプロピレン)も含まれるため、その部分を補正する必要がある。そこでW40にA40/B40を乗ずることにより、フラクション1のうち、直鎖状エチレン・プロピレンランダム共重合体部分由来の量を算出する。例えば、フラクション1の平均エチレン含有量(A40)が30重量%であり、フラクション1に含まれる直鎖状エチレン・プロピレンランダム共重合体のエチレン含有量(B40)が40重量%である場合、フラクション1の30/40=3/4(即ち75重量%)は、直鎖状エチレン・プロピレンランダム共重合体由来、1/4は直鎖状プロピレン重合体由来ということになる。このように右辺第一項でA40/B40を乗ずる操作は、フラクション1の重量%(W40)から直鎖状エチレン・プロピレンランダム共重合体の寄与を算出することを意味する。右辺第二項も同様であり、各々のフラクションについて、直鎖状エチレン・プロピレンランダム共重合体の寄与を算出して加え合わせたものが直鎖状エチレン・プロピレンランダム共重合体部分含有量となる。
種々のモデル試料を使用して検討を行った結果、B40はフラクション1の微分分子量分布曲線のピーク位置に相当するエチレン含有量を使用すると、材料物性の改良効果をうまく説明することができることがわかった。また、B100はエチレン連鎖由来の結晶性を持つこと、および、これらのフラクションに含まれる直鎖状エチレン・プロピレンランダム共重合体の量がフラクション1に含まれる直鎖状エチレン・プロピレンランダム共重合体の量に比べて相対的に少ないことの2点の理由により、100と近似する方が、実態にも近く、計算上も殆ど誤差を生じない。そこでB100=100として解析を行うことと、している。
Wc(重量%)=W40×A40/B40+W100×A100/100 ・・・(II)
つまり、(II)式右辺の第一項であるW40×A40/B40は、結晶性を持たない直鎖状エチレン・プロピレンランダム共重合体含有量(重量%)を示し、第二項であるW100×A100/100は、結晶性を持つ直鎖状エチレン・プロピレンランダム共重合体部分含有量(重量%)を示す。
ここで、B40およびCFC測定により得られる各フラクション1および2の平均エチレン含有量A40、A100は、次のようにして求める。
微分分子量分布曲線のピーク位置に対応するエチレン含有量がB40となる。また、測定時にデータポイントとして取り込まれる、各データポイント毎の重量割合と各データポイント毎のエチレン含有量の積の総和がフラクション1の平均エチレン含有量A40となる。フラクション2の平均エチレン含有量A100も同様に求める。
本発明のCFC分析においては、40℃とは結晶性を持たないポリマー(例えば、直鎖状エチレン・プロピレンランダム共重合体の大部分、もしくは直鎖状プロピレン重合体部分の中でも極端に分子量の低い成分およびアタクチックな成分)のみを分別するのに必要十分な温度条件である意義を有する。100℃とは、40℃では不溶であるが100℃では可溶となる成分(例えば直鎖状エチレン・プロピレンランダム共重合体中、エチレン及び/またはプロピレンの連鎖に起因して結晶性を有する成分、および結晶性の低い直鎖状プロピレン重合体)のみを溶出させるのに必要十分な温度である。140℃とは、100℃では不溶であるが140℃では可溶となる成分(例えば、直鎖状プロピレン重合体中特に結晶性の高い成分、および直鎖状エチレン・プロピレンランダム共重合体中の極端に分子量が高くかつ極めて高いエチレン結晶性を有する成分)のみを溶出させ、かつ分析に使用するプロピレン・エチレンブロック共重合体の全量を回収するのに必要十分な温度である。なお、W140には直鎖状エチレン・プロピレンランダム共重合体部分は全く含まれないか、存在しても極めて少量であり、実質的には無視できることから、直鎖状エチレン・プロピレンランダム共重合体の含量や直鎖状エチレン・プロピレンランダム共重合体のエチレン含有量の計算からは排除する。
本発明に用いられる成分A−1における直鎖状エチレン・プロピレンランダム共重合体部分のエチレン含量は、前述で説明した値を用い、次式から求められる。
直鎖状エチレン・プロピレンランダム共重合体部分のエチレン含量(重量%)=(W40×A40+W100×A100)/Wc
[但し、Wcは、先に求めた直鎖状エチレン・プロピレンランダム共重合体部分の比率(重量%)である。]
本発明に用いられる成分A−1における直鎖状エチレン・プロピレンランダム共重合体部分の固有粘度[η]copolyは、次の様に求められる。
まず、直鎖状プロピレン重合体部分の重合終了後、一部を重合槽よりサンプリングし、該部分の固有粘度[η]homoを測定する。次に、直鎖状プロピレン重合体部分を重合した後、直鎖状エチレン・プロピレンランダム共重合体部分を重合して得られた最終重合物(F)の固有粘度[η]Fを測定する。この測定は、ウベローデ型粘度計を用いてデカリンを溶媒として温度135℃で行う。[η]copolyは、以下の関係から求める。
[η]F=(100−Wc)/100×[η]homo+Wc/100×[η]copoly
本発明に用いられる成分A−1のダイスウエル比は、下記の方法で求める値である。
MFR計のシリンダー内温度を190℃に設定する。オリフィスは長さ8.00mm、径1.00mmφ、L/D=8を用いる。また、オリフィス直下にエチルアルコールを入れたメスシリンダーを置く(オリフィスとエチルアルコール液面との距離は、20±2mmにする。)。この状態でサンプルをシリンダー内に投入し、1分間の押出量が0.10±0.03gになるように荷重を調節する。6分後から7分後の押出物をエタノール中に落とし、固化してから採取する。採取した押出物のストランド状サンプルの直径を上端から1cm部分と、下端から1cm部分、及び中央部分の3箇所で最大値、最小値を測定し、計6箇所測定した直径の平均値をもってダイスウェル比とする。
成分A−1のダイスウエル比は、例えば、構成する直鎖状エチレン・プロピレンランダム共重合体部分の重合時において、なるべく低濃度の水素雰囲気下もしくは、実質的に水素の存在しない状態で重合を行い、分子量を高く制御することにより、調整することができる。
本発明に用いられる成分A−1の歪硬化性は、下記の方法で測定する。
(a)装置:Rheometorics社製 Ares
(b)冶具:ティーエーインスツルメント社製 Extentional Viscosity Fixture
(c)試験温度:180℃
(d)歪み速度:1.0/sec
(e)サンプル試験片:15mm×10mm、厚さ0.5mmのプレス成形シート
歪み速度1.0/secの場合の伸長粘度を、横軸に歪み量、縦軸に伸長粘度ηE(Pa・s)の両対数グラフでプロットする。歪み量が大きくなるにしたがって、伸長粘度がしだいに大きくなり、ある歪み量のときから、それまでに比べ伸長粘度の増加率が急激に増大するときが、歪硬化性を示す場合であり、このケースを歪硬化性「有」とした。一方、上述現象が実質認められない場合を歪硬化性「無」とした。
(g)歪硬化度(λmax)の算出方法:
上記の両対数グラフ上で、歪み硬化を起こす直前の粘度を直線で近似し、歪み量が4.0となるまでの伸長粘度ηEの最大値(ηmax)を求め、また、その歪み量までの近似直線上の粘度をηlinとする。ηmax/ηlinを、λmaxと定義する。
なお、歪速度は、0.001/sec〜10.0/secの範囲で測定可能であり、歪硬化度は歪速度の違いで変化する。
本発明に用いられる成分A−1のQ値は、前述のクロス分別装置におけるゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定のフラクション1〜3の分子量分布曲線を合成処理して作成した成分A−1全体の分子量分布曲線より求める。この分子量分布曲線から重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を算出する方法は、公知の方法に従い、Mw/MnをもってQ値とする。
(1)成分A
(A−1a):チーグラー系触媒で重合され、直鎖状プロピレン重合体部分のMFR(230℃、2.16kg荷重)が300g/10分、直鎖状エチレン・プロピレンランダム共重合体部分の成分A−1全体に対する割合が7.4重量%、直鎖状エチレン・プロピレンランダム共重合体部分の固有粘度[η]copolyが7.2dl/g、成分A−1全体のMFR(230℃、2.16kg荷重)が105g/10分、成分A−1全体のダイスウェル比が1.6であり、180℃伸張粘度測定において歪硬化性を示し(歪硬化性「有」)、その歪硬化度(λmax)が3.73であり、さらに、成分A−1全体のQ値が8.1、直鎖状エチレン・プロピレンランダム共重合体部分のエチレン含量が35重量%(クロス分別法測定)、直鎖状エチレン・プロピレンランダム共重合体部分のMwが124万(クロス分別GPC測定)の直鎖状プロピレン・エチレンブロック共重合体(酸化防止剤・中和剤、添加済ペレット)。
(B−1):化学発泡剤マスターバッチ(永和化成社製ポリスレンEE25C、発泡剤濃度20%、発生ガス量75〜90ml/2.5g(220℃恒温下×20min))…重炭酸ナトリウム・クエン酸系、低密度ポリエチレンベース。
(B−2):炭酸ガス。
(B−3):窒素ガス。
(C−1):タルク(富士タルク工業社製、平均粒径5.1μm、平均アスペクト比6)。
(C−2):ウィスカー[塩基性硫酸マグネシウム繊維・・・ウィスカー状のものを顆粒状に固めたもの。宇部マテリアルズ社製(平均繊維直径=0.5μm、平均繊維長さ=10μm、真比重=2.3)]。
各成分A、成分Bおよび成分Cを、表1および表3に示す割合で配合ブレンドし、下記の条件で成形したものについて性能評価を行った。評価結果を表2および表4に示す。
(1)射出成形機:FANUC社製「α−300」。
(2)金型:縦400mm×横200mmで可動型の位置調整により厚さ可変の平板形状のキャビティを有し、その初期キャビティクリアランス(T0)が1.3mmのもの。
(3)成形条件:シリンダー温度210℃、金型温度40℃、射出速度25〜220mm/秒、冷却時間30秒。
(4)成形方法:初期キャビティクリアランス(T0)が1.3mmであって、コアバック後キャビティクリアランス(T1)を、2.5mm、3.5mmおよび4.0mm、とする型開き射出発泡成形。
(1)射出成形機:日本製鋼所社製「J35−AD」。
(2)金型:縦80mm×横50mmで可動型の位置調整により厚さ可変の平板形状のキャビティを有し、その初期キャビティクリアランス(T0)が1.3mmのもの。
(3)成形条件:シリンダー温度210℃、金型温度40℃、射出速度100mm/秒、冷却時間30秒、ガス注入圧力25MPa(超臨界状態)。
(4)成形方法:前記の実施例1〜3と同様の射出発泡成形。
各成分Aと成分Bを、表1に示す割合で配合ブレンドし、実施例1〜3と同様の条件で成形したものについて、性能評価を行った。評価結果を表2に示す。
なお、実施例2の剛性、すなわち歪み量10mmにおける荷重値は、設定発泡倍率1.9倍の場合、35.1Nであり、設定発泡倍率2.7倍の場合、55.8Nであった。
また、実施例7の同荷重値は、設定発泡倍率1.9倍の場合、32.9Nであり、設定発泡倍率2.7倍の場合、54.6Nであった。
これら実施例1〜10に示す組成を持った直鎖状ポリプロピレン系樹脂組成物および射出発泡成形体は、いずれも大幅な軽量化が可能であり、リサイクル性や環境適応性にも優れ、自動車部品、テレビ等の家電機器、電子製品の部品等を含む工業部品、建材部品、好ましくは自動車部品、とりわけトリム類、天井材、トランク周り、インストルメントパネル、ピラーなどの自動車内装部品等に適する性能を有していることが明白になっている。
例えば、成分Aとして(A−1c)を用いた比較例1において、射出発泡成形体の表面外観は、実施例2と同じであるにもかかわらず、直鎖状ポリプロピレン系樹脂組成物の射出発泡成形性に、実施例2と著しい差異が生じた。
これは、成分Aの差異により、射出発泡成形性の向上効果が著しく異なり、成分Aが本発明の要件を満たすことが必須であることを示している。
また、成分Aとして(A−1d)、(A−1e)、(A−1f)を用いた比較例2、比較例3および比較例4において、成分Bや成形条件が実施例2と同じであるにもかかわらず、表面外観および射出発泡成形性に、実施例2と著しい差異が生じた。
これは、成分Aの差異により、表面外観および射出発泡成形性の向上効果が著しく異なり、成分Aが本発明の要件を満たすことが必須であることを示している。
さらに、成分Aとして、その全量に対して85重量%の(A−2a)と同15重量%の(A−1a)を用いた比較例5において、成分Bや成形条件が実施例2および実施例7と同じであるにもかかわらず、表面外観および射出発泡成形性に、実施例2および実施例7と著しい差異が生じた。
これは、成分Aの差異により、表面外観および射出発泡成形性の向上効果が著しく異なり、成分Aが本発明の要件を満たすことが必須であることを示している。
Claims (8)
- 直鎖状プロピレン重合体部分および直鎖状エチレン・プロピレンランダム共重合体部分からなり、且つ下記の特性(i)〜(vi)を有する直鎖状プロピレン・エチレンブロック共重合体(成分A−1)30〜100重量%と、その他のプロピレン系重合体(成分A−2)0〜70重量%からなるポリプロピレン系樹脂(成分A)と、発泡剤(成分B)を含有することを特徴とする直鎖状ポリプロピレン系樹脂組成物。
特性(i):直鎖状プロピレン重合体部分のメルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が150g/10分以上である。
特性(ii):直鎖状エチレン・プロピレンランダム共重合体部分の直鎖状プロピレン・エチレンブロック共重合体(成分A−1)全体に対する割合が2〜50重量%である。
特性(iii):直鎖状エチレン・プロピレンランダム共重合体部分の固有粘度[η]copolyが5.3〜10.0dl/gである。
特性(iv):メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が100g/10分を超える。
特性(v):ダイスウエル比が1.2〜2.5である。
特性(vi):180℃伸張粘度測定において歪硬化性を示す。 - 直鎖状プロピレン・エチレンブロック共重合体(成分A−1)全体の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Q値:Mw/Mn)が7〜13であることを特徴とする請求項1に記載の直鎖状ポリプロピレン系樹脂組成物。
- 直鎖状プロピレン・エチレンブロック共重合体(成分A−1)における、直鎖状エチレン・プロピレンランダム共重合体部分のエチレン含量は、直鎖状エチレン・プロピレンランダム共重合体全量に対し、15〜80重量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の直鎖状ポリプロピレン系樹脂組成物。
- ポリプロピレン系樹脂(成分A)100重量部に対して、フィラー(成分C)を1〜70重量部含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の直鎖状ポリプロピレン系樹脂組成物。
- フィラー(成分C)は、タルク、ポリエステル繊維、ウィスカー、ガラス繊維または炭素繊維から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項4に記載の直鎖状ポリプロピレン系樹脂組成物。
- ポリプロピレン系樹脂(成分A)100重量部に対して、エラストマー(成分D)を1〜50重量部含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の直鎖状ポリプロピレン系樹脂組成物。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の直鎖状ポリプロピレン系樹脂組成物からなることを特徴とする射出発泡成形体。
- 金型が固定型と前進および後退が可能な可動型とから構成され、最終製品の形状位置に相当する金型キャビティ・クリアランス(T1)よりも小さい金型キャビティ・クリアランス(T0)を有する金型キャビティに、溶融状態又は半溶融状態の直鎖状ポリプロピレン系樹脂組成物を射出充填する射出工程と、金型キャビティ・クリアランス(T1)まで可動型を後退させ、発泡剤による膨張圧力によって金型キャビティの空隙を充填せしめる発泡工程とからなる型開き射出成形法で、直鎖状ポリプロピレン系樹脂組成物からなる射出発泡成形体を製造する方法であって、直鎖状ポリプロピレン系樹脂組成物を射出充填する射出工程において、発泡前成形体充填容積100%に対する射出率が20%/秒以上の条件で成形することを特徴とする請求項7に記載の射出発泡成形体の製造方法。
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