JP2016056264A - 発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物および発泡成形体 - Google Patents

発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物および発泡成形体 Download PDF

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晃 尾畑
貴也 杉本
Takaya Sugimoto
貴也 杉本
尚一 福永
Shoichi Fukunaga
尚一 福永
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Toyokazu Endo
豊和 遠藤
慎也 橋本
Shinya Hashimoto
慎也 橋本
祐介 三ツ井
Yusuke Mitsui
祐介 三ツ井
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Abstract

【課題】曲面や開口部を有する形状が複雑な金型で使用した場合において、黒スジやディンプルといった表面外観性能に優れ、流動性や剛性といった物性のバランスが良く、大幅な軽量化が可能で、かつリサイクル性にも優れ、環境適応性も良好な発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物および発泡成形体を提供する。
【解決手段】特性(A−i)〜(A−v)を満足するプロピレン・エチレンブロック共重合体(A)84〜93重量部と、特性(B−i)〜(B−iii)を満足するプロピレン・エチレンブロック共重合体(B)3〜8重量部と、特性(C−i)〜(C−iii)を満足するエチレン・オクテン共重合体エラストマー(C)1〜8重量部と、成分Aと成分Bと成分Cとの合計100重量部に対し、造核剤(D)0.05〜1重量部と、有機過酸化物(E)0.01〜1重量部とを、混合し、溶融、混練してなることを特徴とする発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物など。
【選択図】なし

Description

本発明は、発泡成形に好適なポリプロピレン系樹脂組成物および発泡成形体に関し、詳しくは、表面外観に優れ、物性バランスが良く、大幅な軽量化が可能で、かつリサイクル性にも優れ、環境適応性も良好な発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物および発泡成形体に関する。
従来、自動車部品分野における各種成形品、例えば、バンパー、ドアトリム、インストルメントパネル等の原料として、ポリプロピレン系樹脂組成物がその優れた成形性、機械的強度や経済性の特徴を活かし、多く実用に供されてきている。
近年、自動車用部品は、燃費向上を目的に軽量化が進められている。軽量化の最も一般的な方法は、肉減らし(薄肉化)である。製品を薄肉化すると、強度や剛性が低下するため、リブ等で補強することが必要になる。
しかし、高外観が要求される自動車内装部品においては、リブ裏に生じるヒケが問題になりやすく、リブによる補強ができない場合も多い。また、剛性低下を補うため、素材であるポリプロピレン系樹脂組成物をタルクやガラス繊維といった無機フィラーで強化する取り組みも、行われている。しかしながら、無機フィラーの比重が高く、重量増を招くため、十分な軽量化効果が得られ難いという問題点がある。
また、別の軽量化方法として、発泡成形が挙げられる。軽量化前の元となる製品に対して、樹脂材料の使用量を減らし、製品重量を下げつつ、これを発泡(各種ガスを注入し微細なセルに分散)させ、厚みは元の厚み以上とさせる。発泡品は、ソリッドに比べ、単位体積あたりの剛性は低いが、厚みを増すことで、製品としての剛性を維持できるのである。このように、発泡成形は、製品の剛性を維持した軽量化を可能にするため、近年注目されつつある。
ポリプロピレン系樹脂の発泡成形は、黒スジやディンプルといった本工法特有の外観不良現象を生じることがある。外観性能の改良は、樹脂組成物の基本的な性能(流動性、剛性、低光沢性、耐傷付き性)と、トレードオフの関係にあり、特に高い外観が要求される自動車内装部品の樹脂材料開発において、要求される各種性能のバランス取りが難しい課題になっている。
例えば、特許文献1では、直鎖状プロピレン重合体部分及び直鎖状エチレン・プロピレンランダム共重合体部分からなる直鎖状プロピレン・エチレンブロック共重合体と、その他のプロピレン系重合体からなるポリプロピレン系樹脂と、発泡剤を含有し、且つ前記直鎖状プロピレン重合体部分のメルトフローレートなどが特定の範囲にある直鎖状プロピレン・エチレンブロック共重合体とした直鎖状ポリプロピレン系樹脂組成物が開示され、この直鎖状ポリプロピレン系樹脂組成物を射出発泡成形体に用いた場合、表面外観に優れ、射出発泡成形性が良好で、発泡倍率が高く、大幅な軽量化が可能であり、リサイクル性にも優れ、剛性などの物性も向上させている。
しかし、特許文献1の実施例における表面外観の評価結果は、シンプルな平板金型を用いて行われたものであり、特許文献1に記載の樹脂組成物を曲面や開口部を有する形状がより複雑な実用的な自動車内装部品金型で使用した場合、黒スジやディンプルといった表面外観性能は、必ずしも十分ではなかった。
特開2010−150509号公報
本発明の目的は、従来技術の現状に鑑み、曲面や開口部を有する形状が複雑な金型で使用した場合において、黒スジやディンプルといった表面外観性能に優れ、流動性や剛性といった物性のバランスが良く、大幅な軽量化が可能で、かつリサイクル性にも優れ、環境適応性も良好な発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物および発泡成形体を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意研究を重ねた結果、成分Aとして、特性(A−i)〜(A−v)を満足するプロピレン・エチレンブロック共重合体(A)84〜93重量部と、成分Bとして、特性(B−i)〜(B−iii)を満足するプロピレン・エチレンブロック共重合体(B)3〜8重量部と、成分Cとして、特性(C−i)〜(C−iii)を満足するエチレン・オクテン共重合体エラストマー(C)1〜8重量部と(但し、成分Aと成分Bと成分Cの合計は100重量部である。)、成分Aと成分Bと成分Cとの合計100重量部に対して、成分Dの造核剤(D)0.05〜1重量部と、成分Eの有機過酸化物(E)0.01〜1重量部とを、混合し、溶融、混練してなるポリプロピレン系樹脂組成物を、発泡成形に用いると、曲面や開口部を有する形状がより複雑な実用的な金型での使用において、黒スジやディンプルといった表面外観に優れ、流動性や剛性などの物性バランスも良く、低光沢や耐傷付性などの実用性能に優れ、大幅な軽量化が可能になることを見出し、これらの知見に基づき、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、下記の特性(A−i)〜(A−v)を満足するプロピレン・エチレンブロック共重合体(A)(成分A)84〜93重量部と、下記の特性(B−i)〜(B−iii)を満足するプロピレン・エチレンブロック共重合体(B)(成分B)3〜8重量部と、下記の特性(C−i)〜(C−iii)を満足するエチレン・オクテン共重合体エラストマー(C)(成分C)1〜8重量部と(但し、成分Aと成分Bと成分Cの合計は、100重量部である。)、成分Aと成分Bと成分Cとの合計100重量部に対し、造核剤(D)(成分D)0.05〜1重量部と、有機過酸化物(E)(成分E)0.01〜1重量部とを、混合し、溶融、混練してなることを特徴とする発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物が提供される。
特性(A−i):プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)は、プロピレン重合体部分(A−1)40〜97重量%、及びプロピレン・エチレンランダム共重合体部分(A−2)3〜60重量%からなる(但し、プロピレン重合体部分(A−1)とプロピレン・エチレンランダム共重合体部分(A−2)との合計を100重量%とする。)。
特性(A−ii):プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)全体のメルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が50〜300g/10分である。
特性(A−iii):プロピレン・エチレンランダム共重合体部分(A−2)のメルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が0.8〜55g/10分であり、且つ、プロピレン・エチレンランダム共重合体部分(A−2)のエチレン含量が35〜60重量%である(但し、プロピレン・エチレンランダム共重合体部分(A−2)のプロピレン含量とエチレン含量の合計を100重量%とする。)。
特性(A−iv):プロピレン重合体部分(A−1)のメルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が100〜1500g/10分であり、且つ、プロピレン重合体部分(A−1)の分子量分布値(Mw/Mn)が3.5以下である。
特性(A−v):プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)全体を180℃キャピラリーレオメータにおける剪断速度400〜10000/sで押出した時の押出溶融体の測定値(直径D1)とオリフィス径(D0)とから計算されるD1/D0(ダイスウェル比)は、剪断速度(対数)に対して、直線性を示す(変曲点を有しない。)。
特性(B−i):プロピレン・エチレンブロック共重合体(B)は、プロピレン重合体部分(B−1)15〜55重量%、及びプロピレン・エチレンランダム共重合体部分(B−2)45〜85重量%からなる(但し、プロピレン重合体部分(B−1)とプロピレン・エチレンランダム共重合体部分(B−2)との合計を100重量%とする。)。
特性(B−ii):プロピレン・エチレンブロック共重合体(B)全体のメルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が0.1〜40g/10分である。
特性(B−iii):プロピレン・エチレンランダム共重合体部分(B−2)のエチレン含量が30重量%以上である(但し、プロピレン・エチレンランダム共重合体部分(B−2)のプロピレン含量とエチレン含量の合計を100重量%とする。)。
特性(C−i):エチレン・オクテン共重合体エラストマー(C)は、下記特性(C−ii)を満足するエチレン・オクテン共重合体エラストマー(C−1)と、下記特性(C−iii)を満足するエチレン・オクテン共重合体エラストマー(C−2)とを含み、且つ、その割合((C−1)/(C−2))が3/1〜1/1の範囲にある。
特性(C−ii):エチレン・オクテン共重合体エラストマー(C−1)のメルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が5g/10分以上であり、且つ、密度が0.870〜0.874g/cm未満である。
特性(C−iii):エチレン・オクテン共重合体エラストマー(C−2)のメルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が5g/10分未満であり、且つ、密度が0.870〜0.874g/cm未満である。
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明に係る発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物に、発泡剤(F)(成分F)を加え、発泡成形してなる発泡成形体が提供される。
さらに、本発明の第3の発明によれば、第2の発明において、発泡剤(F)(成分F)が化学発泡剤である発泡成形体が提供される。
本発明の発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物および発泡成形体は、架橋変性などを行わないにもかかわらず、曲面や開口部を有する形状が複雑な、実用的な金型での使用において、黒スジやディンプルといった表面外観性能が優れ、流動性や剛性などの物性バランスが良く、低光沢や耐傷付性などの実用性能に優れ、大幅な軽量化が可能であり、また、架橋変性などを行わないため、リサイクル性にも優れ、環境適応性も良好である。
そのため、本発明の発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物および発泡成形体は、トリム類、天井材、トランク周りなど自動車内装部品をはじめとする成形部品用途に、好適に用いることができる。
図1は、2種類のプロピレン・エチレンブロック共重合体(A)を用い、キャピラリーレオメータによる押出溶融体の直径(D1)とオリフィス径(D0)から計算されるD1/D0(ダイスウェル比)の剪断速度依存性(変曲点の有無)を説明する図であり、下の線が特性(A−v)を満たすものである。
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
以下、項目毎に、詳細に述べる。
I.プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)(成分A)
本発明の発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物(以下、ポリプロピレン系樹脂組成物または樹脂組成物ともいう。)において、成分Aとして、下記の特性(A−i)〜(A−v)を満足するプロピレン・エチレンブロック共重合体(A)が用いられる。
1.成分Aの特性
(1)特性(A−i)
プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)は、プロピレン重合体部分(A−1)40〜97重量%、及びプロピレン・エチレンランダム共重合体部分(A−2)3〜60重量%からなる(但し、プロピレン重合体部分(A−1)とプロピレン・エチレンランダム共重合体部分(A−2)との合計を100重量%とする。)。
(2)特性(A−ii)
プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)全体のメルトフローレート(MFR)(230℃、2.16kg荷重)が50〜300g/10分である。MFRが好ましくは60〜250g/10分、より好ましくは65〜200g/10分である。
MFRが50g/10分未満であると、ポリプロピレン系樹脂組成物の発泡成形体への成形時に、ショートショットが生じたり、大型の発泡成形体が得られなくなったりする。さらに、発泡性も阻害され、発泡倍率が低くなる。一方、MFRが300g/10分を超えると、メルトフロントにおける乱流や泡の巻き込みが生じ易くなるなどにより、シルバーストリークが発生するなど表面外観が悪化(低下)する他、衝撃強度が低下する。また、過充填による成形バリも生じ易くなる。
MFRを上記の範囲に調整する具体的な方法として、例えば、重合時に添加する水素の量を変更する方法を挙げることができる。水素は、プロピレンの重合において、連鎖移動剤として作用するため、水素の添加量を増やせばMFRが上がり、逆に添加量を下げればMFRを下げることができる。重合槽内部の水素濃度に対するMFRの値は、使用する触媒や他の重合条件によって異なるが、触媒種やその他の重合条件に応じて事前に水素濃度とMFRの関係を把握し、望みのMFRの値となるよう水素濃度を調整することは当業者にとって極めて容易なことである。
なお、本発明におけるMFRは、JIS K7210:1999「プラスチック―熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)およびメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」のA法、条件M(230℃、2.16kg荷重)に準拠して測定した値である。
(3)特性(A−iii)
プロピレン・エチレンランダム共重合体部分(A−2)のメルトフローレート(MFR)(230℃、2.16kg荷重)が0.8〜55g/10分であり、且つ、プロピレン・エチレンランダム共重合体部分(A−2)のエチレン含量が35〜60重量%である(但し、プロピレン・エチレンランダム共重合体部分(A−2)のプロピレン含量とエチレン含量の合計を100重量%とする。)。
本発明に用いられる成分Aにおける、成分A−2のMFRは、0.8〜55g/10分、好ましくは1〜40g/10分、より好ましくは1.5〜20g/10分であり、且つ、成分A−2において、プロピレン含量とエチレン含量の合計を100重量%とした際のエチレン含量は、35〜60重量%、好ましくは39〜55重量%、より好ましくは40〜50重量%である。
成分A−2のMFRが0.8g/10分未満であると、ポリプロピレン系樹脂組成物の発泡成形体への成形時に、メルトフロントにおける乱流や泡の巻き込みが生じ易くなるなどにより、表面外観が悪化する。一方、MFRが55g/10分を超えると、べたつき触感が生じたり、衝撃強度が低下する。
また、成分A−2中のMFRが0.1g/10分未満の成分は、成分Aに対して、10重量%以上であると、発泡成形体のゲート近傍やリブ部での流速が変化する箇所に黒いスジ状の外観不良が発生する。
なお、この成分A−2のMFR値は、直接測定することは不可能のため、成分A−1のMFR、成分A全体のMFRを測定し、以下の式により算出する。
log(成分A全体のMFR)=(100−Wc)/100×log(成分A−1のMFR)+Wc/100×log(成分A−2のMFR)
ここで、Wcは、成分A中の成分A−2の割合であり、後記する方法により求められる。
また、成分A−2中のMFRが0.1g/10分未満の成分量は、あらかじめ前述の式を用いて、プロピレン・エチレンランダム共重合体のMFRが0.1g/10分未満であるプロピレン・エチレンブロック共重合体を準備し、MFRが0.1g/10分未満の量とプロピレン・エチレンブロック共重合体添加量の積から算出した。
さらに、成分A−2において、プロピレン含量とエチレン含量の合計を100重量%とした際のエチレン含量が35重量%未満であると、ポリプロピレン系樹脂組成物の発泡成形体への成形時に、成分A−2と成分A−1の相溶性変化などにより、成分A−2の分散形態がいわゆる玉状から扁平状などに変化したり、粘度挙動が変化するなどのため、メルトフロントにおける乱流や泡の巻き込みが生じ易くなるなどにより、シルバーストリークが発生するなど表面外観が悪化し、加えて衝撃強度が低下する。また、エチレン含量が60重量%を超えると、この場合も、表面外観が低下する。
(4)特性(A−iv)
プロピレン重合体部分(A−1)のメルトフローレート(MFR)(230℃、2.16kg荷重)が100〜1500g/10分であり、且つ、プロピレン重合体部分(A−1)の分子量分布値(Mw/Mn)が3.5以下である。
本発明に用いられる成分Aにおける、成分A−1のMFRは、100〜1500g/10分、好ましくは150〜1200g/10分、より好ましくは200〜600g/10分であり、且つ、成分A−1の分子量分布値(Mw/Mn)は、3.5以下、好ましくは3以下、より好ましく2〜3である。
成分A−1のMFRが100g/10分未満であると、ポリプロピレン系樹脂組成物の発泡成形体への成形時に、ショートショットが生じたり、大型の発泡成形体が得られなくなったりする。さらに、発泡性も阻害され、発泡倍率が低くなる。一方、成分A−1のMFRが1500g/10分を超えると、メルトフロントにおける乱流や泡の巻き込みが生じ易くなるなどにより、シルバーストリークが発生するなど表面外観が悪化する他、衝撃強度も低下する。また、過充填による成形バリも生じ易くなる。
また、成分A−1の分子量分布値(Mw/Mn)が3.5を超えると、メルトフロントにおける乱流や泡の巻き込みが生じ易くなるなどにより、シルバーストリークが発生するなど表面外観が悪化したり、べたつき触感が生じ易くなる。
なお、MFR、分子量分布値(Mw/Mn)、プロピレン・エチレンランダム共重合体部分(成分A−2)の含量及びエチレン含量は、MFR計、クロス分別装置、フーリエ変換型赤外線吸収スペクトル分析、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定する値である。主な項目の測定条件などは、実施例において、後記する。
(5)特性(A−v)
プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)全体を180℃キャピラリーレオメータにおける剪断速度400〜10000/sで押出した時の押出溶融体の測定値(直径D1)とオリフィス径(D0)とから計算されるD1/D0(ダイスウェル比)は、剪断速度(対数)に対して、直線性を示す(変曲点を有しない。)。
本発明に用いられる成分Aは、180℃キャピラリーレオメータにおける剪断速度400〜10000/sで押出した時の押出溶融体の直径(D1)とオリフィス径(D0)から計算されるD1/D0(ダイスウェル比)が、剪断速度を横軸(対数)とした時に、図1の下の線のように、直線性を示す(変曲点を有しない)ことが必要である。
ここで、図1の上の線のように、剪断速度を横軸(対数)とした時に直線性を示さない(変曲点を有する)場合は、ポリプロピレン系樹脂組成物及びその発泡成形体において、成分A−2の分散粒子径が大きくなり易く、メルトフロントにおける乱流や泡の巻き込みが生じ易くなるなどにより、シルバーストリークが発生するなど表面外観が悪化するので、好ましくない。
ここで、直線性を示すか否か(変曲点を有するか否か)の評価を行う方法に関しては、キャピラリーレオメータを用いて、180℃における成分AのD1/D0(ダイスウェル比)の剪断速度依存性を測定し、そのプロット線における直線性(変曲点の有無)を判定する。具体的な測定条件などは、実施例にて後記する。
2.成分Aの含有量、配合量比
本発明の発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物では、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)の含有量は、84〜93重量部である(但し、成分Aと成分Bと成分Cの合計は、100重量部である。)。
また、本発明に用いられるプロピレン・エチレンブロック共重合体(A)として使用可能なポリプロピレン樹脂は、種々の製品が多くの会社から市販されており、これら市販の製品から所望の物性を有する製品を購入し、使用することが、可能である。
II.プロピレン・エチレンブロック共重合体(B)(成分B)
本発明の発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物においては、成分Bとして、下記の特性(B−i)〜(B−iii)を満足するプロピレン・エチレンブロック共重合体(B)が用いられる。
1.成分Bの特性について
(1)特性(B−i)
プロピレン・エチレンブロック共重合体(B)は、プロピレン重合体部分(B−1)15〜55重量%、及びプロピレン・エチレンランダム共重合体部分(B−2)45〜85重量%からなる(但し、プロピレン重合体部分(B−1)とプロピレン・エチレンランダム共重合体部分(B−2)との合計を100重量%とする。)。
プロピレン・エチレンブロック共重合体(B)は、プロピレン重合体部分(B−1)15〜55重量%、好ましくは18〜52重量%、特に好ましくは20〜50重量%と、プロピレン・エチレンランダム共重合体部分(B−2)45〜85重量%、好ましくは48〜82重量%、特に好ましくは50〜80重量%を含有してなる。
(2)特性(B−ii)
プロピレン・エチレンブロック共重合体(B)全体のメルトフローレート(MFR)(230℃、2.16kg荷重)が0.1〜40g/10分である。MFRが好ましくは0.2〜35g/10分、特に好ましくは0.5〜30g/10分である。
(3)特性(B−iii)
プロピレン・エチレンランダム共重合体部分(B−2)のエチレン含量が30重量%以上である(但し、プロピレン・エチレンランダム共重合体部分(B−2)のプロピレン含量とエチレン含量の合計を100重量%とする。)。エチレン含量が好ましくは35重量%以上、特に好ましくは40重量%以上である。
2.成分Bの含有量、配合量比
本発明の発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物では、プロピレン・エチレンブロック共重合体(B)の含有量は、3〜8重量部である(但し、成分Aと成分Bと成分Cの合計は、100重量部である。)。
また、本発明に用いられるプロピレン・エチレンブロック共重合体(B)として使用可能なポリプロピレン樹脂は、種々の製品が多くの会社から市販されており、これら市販の製品から所望の物性を有する製品を購入し、使用することが、可能である。
III.エチレン・オクテン共重合体エラストマー(C)(成分C)
本発明の発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物においては、成分Cとして、下記の特性(C−i)〜(C−iii)を満足するエチレン・オクテン共重合体エラストマー(C)が用いられる。
1.成分Cの特性
(1)特性(C−i)
エチレン・オクテン共重合体エラストマー(C)は、下記特性(C−ii)を満足するエチレン・オクテン共重合体エラストマー(C−1)と、下記特性(C−iii)を満足するエチレン・オクテン共重合体エラストマー(C−2)とを含み、且つ、その割合((C−1)/(C−2))が3/1〜1/1の範囲にある。
(2)特性(C−ii)
エチレン・オクテン共重合体エラストマー(C−1)のメルトフローレート(MFR)(230℃、2.16kg荷重)が5g/10分以上であり、且つ、密度が0.870〜0.874g/cm未満である。
(3)特性(C−iii):
エチレン・オクテン共重合体エラストマー(C−2)のメルトフローレート(MFR)(230℃、2.16kg荷重)が5g/10分未満であり、且つ、密度が0.870〜0.874g/cm未満である。
本発明の主要用途が自動車内装部材であることを考慮した場合、成分(C−1)と(C−2)のMFRは、上記の範囲であるものが、表面外観及び物性バランスが良好なポリプロピレン系樹脂組成物及びその発泡成形体を得られる場合が多い。
2.成分Cの含有量、配合量比
本発明の発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物では、エチレン・オクテン共重合体エラストマー(C)の含有量は、1〜8重量部である(但し、成分Aと成分Bと成分Cの合計は、100重量部である。)。
また、本発明に用いられるエチレン・オクテン共重合体エラストマー(C−1,C−2)は、種々の製品が多くの会社から市販されており、これら市販の製品から所望の物性を有する製品を購入し、使用することが、可能である。
IV.造核剤(D)(成分D)
1.造核剤(D)の種類
本発明の発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物においては、成分Dとして、造核剤(D)が用いられる。
本発明で使用する造核剤は、特に限定はしないが、リン酸2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ナトリウムが剛性向上とコストのバランスから好適である。
また、他の造核剤として、例えば、無機系、ソルビトール系、カルボン酸金属塩系や有機リン酸塩系などは、ポリプロピレン系樹脂組成物及びその発泡成形体の剛性、耐熱性や硬度、発泡成形性などの付与、向上などに有効である。
具体例としては、無機系として、タルク;シリカなどが挙げられ、ソルビトール系として、1,3,2,4−ジベンジリデン−ソルビトール;1,3,2,4−ジ−(p−メチル−ベンジリデン)ソルビトール;1,3,2,4−ジ−(p−エチル−ベンジリデン)ソルビトール;1,3,2,4−ジ−(2’,4’−ジ−メチル−ベンジリデン)ソルビトール;1,3−p−クロロベンジリデン−2,4−p−メチル−ベンジリデン−ソルビトール;1,3,2,4−ジ−(p−プロピルベンジリデン)ソルビトールなどが挙げられ、カルボン酸金属塩系として、アルミニウム−モノ−ヒドロキシ−ジ−p−t−ブチルベンゾエート;安息香酸ナトリウム;モンタン酸カルシウムなどが挙げられ、さらに、有機リン酸塩系として、ソジウムビス(4−t−ブチルフェニル)フォスフェート;ソジウム−2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート;リチウム−2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェートなどが挙げられる。
2.成分Dの含有量、配合量比
また、本発明の発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物では、造核剤(D)の含有量は、上記成分Aと成分Bと成分Cとの合計100重量部に対し、0.05〜1重量部である。
V.有機過酸化物(E)(成分E)
本発明の発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物の製造において、該樹脂組成物の流動性、発泡成形性、発泡成形体の表面外観及び発泡倍率の向上などを図るなどのため、分子量降下剤として有機過酸化物(E)を配合して、混合・溶融・混練・造粒する。すなわち、成分A〜成分Dの配合物を、混合・溶融・混練・造粒する際、同時に、有機過酸化物(E)を、適量配合して、混合・溶融・混練・造粒する。
1.種類
有機過酸化物(E)としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーベンゾエート、t−ブチルパーアセテート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5−ジ−メチル−2,5−ジ−(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジ−メチル−2,5−ジ−(ベンゾイルパーオキシ)ヘキシン−3、t−ブチル−ジ−パーアジペート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、メチル−エチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジキュミルパーオキサイド、2,5−ジ−メチル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジ−メチル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス−(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、t−ブチルキュミルパーオキサイド、1,1−ビス−(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス−(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス−t−ブチルパーオキシブタン、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジ−イソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、キュメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、p−サイメンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラ−メチルブチルハイドロパーオキサイド及び2,5−ジ−メチル−2,5−ジ−(ハイドロパーオキシ)ヘキサンのグループから選ばれる1種または2種以上からなるものを挙げることができる。なお、これらに限定されるものではない。
2.成分Eの含有量、配合量比
本発明において、有機過酸化物(E)の配合量は、前記成分Aと成分Bと成分Cとの合計100重量部に対し、0.01〜1重量部である。有機過酸化物(E)が0.01重量部未満の場合には、分子量低下効果に乏しく、1重量部を超える場合には、発泡成形体の表面外観が悪化する(シルバーストリークが生じたり、エラストマー成分などがブリードアウト現象を生ずるなど)ことがある。
VI.発泡剤(F)(成分F)
本発明で用いられる発泡剤(F)は、化学発泡剤、物理発泡剤及びマイクロカプセルなどであり、ポリプロピレン系樹脂組成物及びその発泡成形体において、発泡倍率を高め、良好な表面外観を発現させる機能を有する。
1.種類、機能など
成分Fの種類としては、例えば、化学発泡剤、物理発泡剤及びマイクロカプセルなどが挙げられ、発泡成形に、通常使用できるものであれば、特に制限なく、用いることができる。中でも、化学発泡剤は、高外観が得やすいので、好ましい。
化学発泡剤としては、例えば、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウムなどの無機系化学発泡剤や、アゾジカルボンアミド(ADCA)、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、ベンゼンスルホニルヒドラジド、4,4’−ジフェニルジスルホニルアジドなどの有機系化学発泡剤が挙げられる。
これらの化学発泡剤には、発泡成形体の気泡を安定的に均一微細にするなどのために、必要に応じて、気体の発生を促すクエン酸の様な有機酸や、クエン酸ナトリウムの様な有機酸金属塩などを使用、併用添加することもできる。
化学発泡剤としては、通常の各種の化学発泡剤が安全に使用でき、成形体において、均一微細な気泡が得られ易いなどの点から、無機系が好ましい。
前記の様に、化学発泡剤は、無機系、有機系など種々挙げられるが、好ましいものとしては、重炭酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム及びこれら二種以上の混合体が挙げられ、さらに好ましいものとして、重炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウムとクエン酸ナトリウムの組み合わせ、重炭酸ナトリウムとクエン酸の組み合わせが挙げられる。
これら化学発泡剤は、例えば、平均粒径1〜100μmの粒子に加工し、発泡成形時に、本発明の樹脂組成物に、まぶして混合するなどしてから、各種成形機、例えば射出成形機に供給したり、射出成形する際に、射出成形機のシリンダーの途中から注入したりして、シリンダー内などで分解して二酸化炭素などの気体を発生するものである。
また、化学発泡剤は、取り扱い性、貯蔵安定性、樹脂組成物中への分散性などの点から、ポリオレフィン系樹脂を基材としたマスターバッチとして、造粒加工した後に、使用することもできる。これにより成形機のホッパーの汚染、成形体表面への粉の付着を抑制することができる。この場合、通常10〜50重量%濃度のポリオレフィン系樹脂のマスターバッチとして使用されるのが好ましい。
また、一度化学発泡剤を添加し、ペレット化により化学発泡剤を分解させたものであってもよく、さらに、予め高濃度の化学発泡剤を分解させ、その残渣を添加してもよい。化学発泡剤は、成形機のシリンダー中で分解し、その発泡残渣が発泡核剤となり得る。
また、物理発泡剤としては、例えば、不活性ガス、低沸点有機溶剤の蒸気、ハロゲン系不活性溶剤の蒸気、空気などが挙げられる。
不活性ガスとしては、例えば、二酸化炭素、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、アスタチンなどが挙げられ、低沸点有機溶剤の蒸気としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパン、ブタン、ペンタンなどが挙げられ、ハロゲン系不活性溶剤の蒸気としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、フロン、三フッ化窒素などが挙げられる。これらの中で、蒸気にする必要が無く、安価で、環境汚染、火災の危険性が極めて少ないことから、不活性ガスを使用することが好ましく、中でも二酸化炭素、窒素、アルゴン、ヘリウムが好ましく、二酸化炭素、窒素がより好ましい。
さらに、物理発泡剤は、超臨界状態であることが好ましく、これにより樹脂中へのガス溶融が容易になる利点がある。
物理発泡剤は、各種成形機、例えば射出成形機のシリンダー内などの本発明の樹脂組成物にガス状または超臨界流体として注入され、分散または溶解されるもので、金型内に射出後、圧力開放されることによって、発泡剤として機能するものである。
成分Fとして、物理発泡剤を用いる場合は、ポリプロピレン系樹脂組成物及びその発泡成形体において、発泡成形体の表面外観をより良好にするため、さらに、より発泡倍率を高めるためなどの点から、化学発泡剤と物理発泡剤とを併用することが更に好ましく、無機系化学発泡剤と、物理発泡剤としての炭酸ガスや窒素とを併用するのがより好ましい。
また、マイクロカプセルは、種々の熱可塑性樹脂からなるシェル内に、発泡剤(膨張剤)を内包したものである。発泡剤(膨張剤)としては、例えば、トリクロロフルオロメタン、ジクロロフルオロメタン、ジクロロフルオロエタンの様な特定フレオン類や代替フレオン類、n−ペンタン、イソペンタン、イソブタン、石油エーテルの様な炭化水素類、塩化メチル、塩化メチレン、ジクロロエチレンの様な塩素化炭化水素などが挙げられる。マイクロカプセル状発泡剤の平均粒径は、通常は2〜50μmである。
これらマイクロカプセルは、通常、前記成分Aと、または前記成分Aと後記成分Cなどとの混練、造粒物などと予め混合するなどしてから射出成形機などの各種成形機に供給され、使用される。
2.成分Fの配合量比
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物における成分Fの配合割合は、発泡剤の種類、発泡倍率、発泡成形の成形条件などを考慮して、適宜、設定すればよい。
例えば、化学発泡剤を用いる場合は、前記成分Aと成分Bと成分Cとの合計100重量部に対して、通常0.001〜10重量部、好ましくは0.01〜8重量部、より好ましくは0.1〜6重量部である。
この場合の配合割合は、発泡剤の実質濃度であり、例えば、発泡剤とポリオレフィン樹脂とのマスターバッチを用いる場合は、マスターバッチ中に含有する発泡剤濃度に基づき算出される。成分Fの配合割合が0.001重量部未満であると、ポリプロピレン系樹脂組成物が十分に発泡せず、一方、配合割合が10重量部を超えると、ポリプロピレン系樹脂組成物及びその発泡成形体の衝撃強度などの機械的強度が低下したり、二次発泡現象(過剰に残存した発泡ガスによって発泡成形体の表面が火膨れ状に膨れる現象)を生じたり、さらに経済的にも不利となる。
また、物理発泡剤を用いる場合は、例えば、用いるガスの注入圧力を調整することで、注入量を適宜設定する。ガスの注入圧力が不足したり、過剰であったりすると、前記の化学発泡剤の場合と同様に、ポリプロピレン系樹脂組成物が十分に発泡しなかったり、発泡成形体の機械的強度などが低下する。なお、発泡剤は、2種類以上を併用することもできる。
VII.その他の添加剤などの任意添加成分(G)
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物においては、前記成分A〜成分F以外に、さらに、必要に応じ、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、例えば、発明効果を一層向上させたり、他の効果を付与するなどのため、任意添加成分(成分G、以下、単に成分Gともいう。)を配合することができる。
具体的には、ヒンダードアミン系などの光安定剤、ベンゾトリアゾール系などの紫外線吸収剤、顔料などの着色剤、フェノール系、リン系などの酸化防止剤、非イオン系などの帯電防止剤、無機化合物などの中和剤、チアゾール系などの抗菌・防黴剤、ハロゲン化合物などの難燃剤、プロセスオイル(配合油)、可塑剤、有機金属塩系などの分散剤、脂肪酸アミド系などの滑剤、窒素化合物などの金属不活性剤、非イオン系などの界面活性剤や、前記成分A〜成分E以外のポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミドやポリエステルなどの熱可塑性樹脂、フィラーなどを挙げることができる。
これらの成分Gは、2種以上を併用してもよく、組成物に添加してもよいし、成分A〜成分Fの各成分に、添加されていてもよく、夫々の成分においても2種以上併用することもできる。
光安定剤や紫外線吸収剤として、例えば、ヒンダードアミン化合物、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系やサリシレート系などは、ポリプロピレン系樹脂組成物及びその発泡成形体の耐候性や耐久性などの付与、向上に有効である。
具体例としては、ヒンダードアミン化合物として、コハク酸ジメチルと1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンとの縮合物;ポリ〔〔6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル〕〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕ヘキサメチレン〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕〕;テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート;テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート;ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート;ビス−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルセバケートなどが挙げられ、ベンゾトリアゾール系としては、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール;2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールなどが挙げられ、ベンゾフェノン系としては、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン;2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノンなどが挙げられ、サリシレート系としては、4−t−ブチルフェニルサリシレート;2,4−ジ−t−ブチルフェニル3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエートなどが挙げられる。
また、着色剤として、例えば、無機系や有機系の顔料などは、ポリプロピレン系樹脂組成物及びその発泡成形体の着色外観、見映え、風合い、商品価値、耐候性や耐久性などの付与、向上などに有効である。
具体例として、無機系顔料としては、酸化チタン;酸化鉄(ベンガラなど);クロム酸(黄鉛など);モリブデン酸;硫化セレン化物;フェロシアン化物及びカーボンブラックなどが挙げられ、有機系顔料としては、難溶性アゾレーキ;可溶性アゾレーキ;不溶性アゾキレート;縮合性アゾキレート;その他のアゾキレートなどのアゾ系顔料;フタロシアニンブルー;フタロシアニングリーンなどのフタロシアニン系顔料;アントラキノン;ペリノン;ペリレン;チオインジゴなどのスレン系顔料;染料レーキ;キナクリドン系;ジオキサジン系;イソインドリノン系などが挙げられる。また、メタリック調やパール調にするには、アルミフレーク;パール顔料を含有させることができる。また、染料を含有させることもできる。
また、酸化防止剤として、例えば、フェノール系、リン系やイオウ系などの酸化防止剤は、ポリプロピレン系樹脂組成物及びその発泡成形体の、耐熱安定性、加工安定性、耐熱老化性などの付与、向上などに有効である。
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール;テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]−メタン;トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)イソシアヌレートなどが挙げられる。
また、リン系酸化防止剤としては、例えば、ジステアリルペンタエリスリトールジフォスファイト;トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト;トリス(2−t−ブチル−4−メチルフェニル)フォスファイトなどが挙げられる。
また、イオウ系酸化防止剤としては、例えば、ジステアリルチオジプロピオネートなどが挙げられる。
また、帯電防止剤として、例えば、非イオン系やカチオン系などの帯電防止剤は、ポリプロピレン系樹脂組成物及びその発泡成形体の帯電防止性の付与、向上に有効である。
具体例としては、ポリオキシエチレンアルキルアミン;ポリオキシエチレンアルキルアミド;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル;ステアリン酸モノグリセリド;アルキルジエタノールアミン;アルキルジエタノールアミド;アルキルジエタノールアミン脂肪酸モノエステル;テトラアルキルアンモニウム塩などが挙げられる。
VIII.発泡成形体とその製造方法及び用途
本発明における発泡成形体の製造方法としては、特に制限されず、例えば、射出成形機、射出圧縮成形機、押出成形機、シート成形機及び中空成形機などを用いる発泡成形法が挙げられる。この内、射出成形機または射出圧縮成形機を用いる射出発泡成形法が好ましい製造方法である。
本発明におけるポリプロピレン系樹脂組成物を用いた発泡成形体の製造に際して、成形体の形状や大きさは、特に限定されず、比較的複雑な形状から単純平板まで使用できる。すなわち、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、曲面や開口部を有する形状が複雑な、実用的な金型での使用において、黒スジやディンプルといった表面外観性能が優れ、流動性や剛性などの物性バランスが良く、低光沢や耐傷付性などの実用性能に優れ、大幅な軽量化が可能であり、リサイクル性にも優れ、環境適応性も良好だからである。
また、例えば、化学発泡剤である成分Fの全部または一部を除いた成分から成るポリプロピレン系樹脂組成物を射出成形機に供給し、同じく前記の物理発泡剤である成分Fを、圧縮ガス状或いは超臨界状態で直接成形機に加えて、金型内に射出し、射出発泡成形体を成形する方法が挙げられる。
すなわち、化学発泡剤を含有したポリプロピレン系樹脂組成物を射出成形機に供給し、同時に物理発泡剤を同成形機に直接制御しつつ導入して、成形する方法は、可動型を後退させながら、射出充填してスキン層を形成させた後、可動型を後退させてコア層を発泡させる成形方法などにおいても、用いることができる。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物を用いた発泡成形体の用途としては、自動車部品、テレビなどの家電機器、電子製品の部品などを含む工業部品、建材部品、好ましくは自動車用内外装部品、より好ましくはトリム類、天井材、トランク周り、インストルメントパネル、ピラーなどの自動車内装部品が挙げられる。
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。なお、各成分の分析、物性の評価方法及び用いた原材料成分は、次の通りである。
1.各成分の分析、諸物性の測定方法など
(1)メルトフローレート(MFR):
JIS K7120に準拠して、230℃、2.16kg荷重の条件で測定した。該MFRは、主に成形性を表す指標であって、数値が大きい程、成形性(流動性)が良好であるとされている。
(2)曲げ弾性率(剛性):
JIS K7203に準拠し、23℃にて、曲げ速度2mm/分で曲げ弾性率を測定した。
(3)発泡成形体の成形方法、射出成形機、金型の仕様
実施例、比較例で使用した射出成形機、金型の仕様を、下記に記す。
(a)射出成形機:
型締力1100tで、コアバック機能およびシャットオフノズルを有する縦型の射出圧縮成形機。
(b)金型:
固定型、型締め後の微上昇(型開き)および微下降(型締め)の制御が可能な可動型から構成された金型。
自動車ドアトリムの金型で製品部の寸法は、縦550mm×横950mm×高さ100mmで、製品意匠面の全面には、深さ100μmの皮シボ模様が、施工されている。
(c)発泡成形体の成形方法:
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物に、発泡剤(F)として化学発泡剤を事前混合し、温度を220℃に設定した射出成形機シリンダーに供給し、可塑化しておく。
金型内部にエアーを注入し加圧した後、樹脂を注入する。その後、可動型を所定の製品厚みが得られるよう、微上昇させ、冷却した後、製品を取り出した。
(4)黒スジ:
上記で示した方法で成形した発泡成形体の意匠面を観察し、黒スジの程度を1〜5の5段階で評価した。評価基準は以下のとおり。5が最も良く、1が最も悪い。
5:黒スジが全く無い状態。
4:黒スジが一部に僅かだが認められる状態。
3:黒スジの発生が明らかに認められる状態。
2:評価1と3の間の状態。
1:黒スジが製品の各所に発生している状態。
(5)ディンプル:
上記で示した方法で成形した発泡成形体の意匠面を観察し、ディンプルの程度を1〜5の5段階で評価した。評価基準は以下のとおり。5が最も良く、1が最も悪い。
5:ディンプルが全く無い状態。
4:ディンプルが一部に僅かだが認められる状態。
3:ディンプルの発生が明らかに認められる状態。
2:評価1と3の間の状態。
1:ディンプルが製品の各所に発生している状態。
(6)光沢度:
成形した射出成形試験片の鏡面側の光沢度を、JIS K7105に準拠し、入射角60度で測定した。
(7)耐傷付性
成形した射出成形試験片を80mm×80mmの大きさに切断し、シボ表側に175gの荷重を載せた引掻き針(先端アール0.25mm)にて、引掻き速度500mm/分、0.75mmピッチで20本引掻き傷を付ける。この後、測色計(日本電色工業社製SE−200)にて、傷付の白化度合としての色差を標準光源D65、拡散照明8度にて測色する。この色差(ΔE)が小さいほど、耐傷付性は優れる。
(8)プロピレン・エチレンランダム共重合体部分(A−2)の含量及びエチレン含量
(i)使用する分析装置:
(a)クロス分別装置;
ダイヤインスツルメンツ社製CFC T−100(以下、CFCと略す)
(b)フーリエ変換型赤外線吸収スペクトル分析;
FT−IR、パーキンエルマー社製1760X
CFCの検出器として取り付けられていた波長固定型の赤外分光光度計を取り外して、代わりにFT−IRを接続し、このFT−IRを検出器として使用した。CFCから溶出した溶液の出口からFT−IRまでの間のトランスファーラインは1mの長さとし、測定の間を通じて140℃に温度保持した。FT−IRに取り付けたフローセルは、光路長1mm、光路幅5mmφのものを用い、測定の間を通じて140℃に温度保持した。
(c)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC);
CFC後段部分のGPCカラムは、昭和電工社製AD806MSを3本直列に接続して使用した。
(ii)CFCの測定条件:
(a)溶媒;オルトジクロロベンゼン(以下、ODCBともいう。)
(b)サンプル濃度;4mg/mL
(c)注入量;0.4mL
(d)結晶化;140℃から40℃まで約40分かけて降温した。
(e)分別方法;
昇温溶出分別時の分別温度は、40、100、140℃とし、全部で3つのフラクションに分別した。
なお、40℃以下で溶出する成分(フラクション1)、40〜100℃で溶出する成分(フラクション2)、100〜140℃で溶出する成分(フラクション3)の溶出割合(単位:重量%)を各々W40、W100、W140と定義した。W40+W100+W140=100である。また、分別した各フラクションは、そのままFT−IR分析装置へ自動輸送された。
(f)溶出時溶媒流速;1mL/分
(iii)FT−IRの測定条件:
CFC後段のGPCから試料溶液の溶出が開始した後、以下の条件でFT−IR測定を行い、前記した各フラクション1〜3について、GPC−IRデータを採取した。
(a)検出器;MCT
(b)分解能;8cm−1
(c)測定間隔;0.2分(12秒)
(d)一測定当たりの積算回数;15回
(iv)測定結果の後処理と解析:
各温度で溶出した成分の溶出量と分子量分布は、FT−IRによって得られる2945cm−1の吸光度をクロマトグラムとして使用して求めた。溶出量は、各溶出成分の溶出量の合計が100%となる様に規格化した。保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行った。
使用した標準ポリスチレンは、いずれも東ソー(株)製の以下の銘柄である。
F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000。
各々が0.5mg/mLとなる様に、ODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.4mL注入して較正曲線を作成した。較正曲線は、最小二乗法で近似して得られる三次式を用いた。分子量への換算は、森定雄著「サイズ排除クロマトグラフィー」(共立出版)を参考に汎用較正曲線を用いた。その際使用する粘度式([η]=K×Mα)には、以下の数値を用いた。
(a)標準ポリスチレンを使用する較正曲線作成時;
K=0.000138、α=0.70
(b)成分Aのサンプル測定時;
K=0.000103、α=0.78
各溶出成分のエチレン含有量分布(分子量軸に沿ったエチレン含有量の分布)は、FT−IRによって得られる2956cm−1の吸光度と2927cm−1の吸光度との比を用い、ポリエチレンやポリプロピレンや13C−NMR測定などによりエチレン含有量が既知となっているエチレン−プロピレンラバー(EPR)及びそれらの混合物を使用して予め作成しておいた検量線により、エチレン含有量(重量%)に換算して求めた。
(v)プロピレン・エチレンランダム共重合体部分(A−2)の含量:
本発明に用いられる成分A中の成分A−2の含量(Wc)は、下記式(I)で理論上は定義され、以下の様な手順で求めた。
Wc(重量%)=W40×A40/B40+W100×A100/B100 …(I)
式(I)中、W40、W100は、上述した各フラクションでの溶出割合(単位:重量%)であり、A40、A100は、W40、W100に対応する各フラククションにおける実測定の平均エチレン含有量(単位:重量%)であり、B40、B100は、各フラクションに含まれる成分A−2のエチレン含有量(単位:重量%)である。A40、A100、B40、B100の求め方は、後記した。
(I)式の意味は、以下の通りである。
すなわち、(I)式右辺の第一項は、フラクション1(40℃に可溶な部分)に含まれる成分A−2の量を算出する項である。フラクション1が成分A−2のみを含み、プロピレン重合体(成分A−1)を含まない場合には、W40がそのまま全体の中に占めるフラクション1由来の成分A−2含有量に寄与するが、フラクション1には、成分A−2由来の成分のほかに少量の成分A−1由来の成分(極端に分子量の低い成分及びアタクチックポリプロピレン)も含まれるため、その部分を補正する必要がある。そこでW40にA40/B40を乗ずることにより、フラクション1のうち、成分A−2由来の量を算出した。例えば、フラクション1の平均エチレン含有量(A40)が30重量%であり、フラクション1に含まれる成分A−2のエチレン含有量(B40)が40重量%である場合、フラクション1の30/40=3/4(即ち75重量%)は、成分A−2由来、1/4は成分A−1由来ということになる。この様に右辺第一項でA40/B40を乗ずる操作は、フラクション1の重量%(W40)から成分A−2の寄与を算出することを意味する。右辺第二項も同様であり、各々のフラクションについて、成分A−2の寄与を算出して加え合わせたものが成分A−2含有量となる。
(a)前記した様に、CFC測定により得られるフラクション1〜2に対応する平均エチレン含有量をそれぞれA40、A100とした(単位はいずれも重量%である)。
平均エチレン含有量の求め方は後記した。
(b)フラクション1の微分分子量分布曲線におけるピーク位置に相当するエチレン含有量をB40とした(単位は重量%である)。フラクション2については、ゴム部分が40℃ですべて溶出してしまうと考えられ、同様の定義で規定することができないので、本発明では、実質的にB100=100と定義した。B40、B100は、各フラクションに含まれる成分A−2のエチレン含有量であるが、この値を分析的に求めることは実質的には不可能である。その理由はフラクションに混在する成分A−1と成分A−2を完全に分離・分取する手段がないからである。
種々のモデル試料を使用して検討を行った結果、B40は、フラクション1の微分分子量分布曲線のピーク位置に相当するエチレン含有量を使用すると、材料物性の改良効果をうまく説明することができることがわかった。また、B100は、エチレン連鎖由来の結晶性を持つこと、及びこれらのフラクションに含まれる成分A−2の量がフラクション1に含まれる成分A−2の量に比べて相対的に少ないことの2点の理由により、100と近似する方が、実態にも近く、計算上も殆ど誤差を生じない。そこで、B100=100として解析を行うこととした。
(c)上記の理由から、プロピレン・エチレンランダム共重合体部分(成分A−2)の含量(Wc)を以下の式に従い、求めた。
Wc(重量%)=W40×A40/B40+W100×A100/100 …(II)
つまり、(II)式右辺の第一項であるW40×A40/B40は、結晶性を持たない成分A−2含有量(重量%)を示し、第二項であるW100×A100/100は、結晶性を持つ成分A−2含有量(重量%)を示す。
ここで、B40及びCFC測定により得られる各フラクション1及び2の平均エチレン含有量A40、A100は、次の様にして求めた。
微分分子量分布曲線のピーク位置に対応するエチレン含有量がB40となる。また、測定時にデータポイントとして取り込まれる、各データポイント毎の重量割合と各データポイント毎のエチレン含有量の積の総和がフラクション1の平均エチレン含有量A40となる。
フラクション2の平均エチレン含有量A100も同様に求めた。
なお、上記3種類の分別温度を設定した意義は、次の通りである。
本発明のCFC分析においては、40℃とは結晶性を持たないポリマー(例えば、成分A−2の大部分、若しくは成分A−1の中でも極端に分子量の低い成分及びアタクチックな成分)のみを分別するのに必要十分な温度条件である意義を有する。100℃とは、40℃では不溶であるが100℃では可溶となる成分(例えば、成分A−2中、エチレン及び/又はプロピレンの連鎖に起因して結晶性を有する成分、及び結晶性の低い成分A−1)のみを溶出させるのに必要十分な温度である。140℃とは、100℃では不溶であるが140℃では可溶となる成分(例えば、成分A−1中特に結晶性の高い成分、及び成分A−2中の極端に分子量が高く且つ極めて高いエチレン結晶性を有する成分)のみを溶出させ、且つ分析に使用するプロピレン・エチレンブロック共重合体(成分A)の全量を回収するのに必要十分な温度である。なお、W140には、成分A−2は全く含まれないか、存在しても極めて少量であり、実質的には無視できることから、成分A−2の含量や成分A−2のエチレン含有量の計算からは排除した。
(vi)プロピレン・エチレンランダム共重合体部分(成分A−2)のエチレン含量:
本発明に用いられる成分Aにおける成分A−2のエチレン含量は、前述で説明した値を用い、次式から求めた。
成分A−2のエチレン含量(重量%)=(W40×A40+W100×A100)/Wc
[但し、Wcは、先に求めた成分A−2の比率(重量%)である。]
(9)プロピレン重合体部分(成分A−1)の分子量分布値(Mw/Mn):
本発明に用いられる成分A−1の分子量分布値(Mw/Mn)は、前記クロス分別におけるゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定の140℃可溶分の分子量分布曲線より求めた。
この分子量分布曲線から重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を算出する方法は、公知の方法に従い、Mw/Mnをもって分子量分布値(Q値と称される場合もある)とした。
(10)押出溶融体の直径(D1)とオリフィス径(D0)の比(D1/D0(ダイスウェル比))の直線性(変曲点の有無):
下記に示す内容で、キャピラリーフロー特性を測定し、その測定結果グラフ(縦軸:D1/D0(ダイスウェル比)、横軸:剪断速度(対数))上において、そのD1/D0(ダイスウェル比)のプロット線の直線性(変曲点の有無)を判定した。
(i)使用装置;キャピラリーレオメータ(東洋精機製作所社製キャピログラフIC)
(ii)オリフィス径(D0);0.5mm(長さ5mm、フラットタイプ)
(iii)バレル径;9.55mm
(iv)押出溶融体の直径D1の検出方式:レーザー
(v)測定温度;180℃
(vi)ピストン速度;5〜500mm/分
(vii)剪断速度;486/s、972/s、1945/s、4864/s、9728/s、19456/s、48641/s
(viii)直線性判定の剪断速度域;400〜10000/s
図1は、2種類のプロピレン・エチレンブロック共重合体を用い、キャピラリーレオメータによる押出溶融体の直径(D1)とオリフィス径(D0)から計算されるD1/D0(ダイスウェル比)の剪断速度依存性(変曲点の有無)を調べた結果を示すグラフである。ここで、下の線が特性(A−v)を満たすものである。
2.使用材料、原料
[成分(A1)〜成分(E1)およびその他の添加剤]
実施例および比較例で用いた原料は、次に示す通りである。但し、成分(A1、B1、C1、C2)は、酸化防止剤と中和剤を含有。
(1)成分(A1):プロピレン・エチレンブロック共重合体
密度が0.9092g/cmのプロピレン重合体部分(A−1)73重量%と、エチレン含量が56重量%、Mwが450,000のエチレン・プロピレンランダム共重合体部分(A−2)27重量%(但し、プロピレン重合体部分とエチレン・プロピレンランダム共重合体部分の合計を100重量%とする)を各々含有し、(A−1)のMFRが390g/10分、(A−2)のMFRが1.1g/10分、(A−1)の分子量分布(Mw/Mn)が2.8であり、D1/D0(ダイスウェル比)は、剪断速度(対数)に対して、直線性を示し(変曲点を有しない)、且つ、全体のMFRが89g/10分である気相重合で製造したプロピレン−エチレンブロック共重合体(ペレット)。
(2)成分(B1):プロピレン・エチレンブロック共重合体
密度が0.9092g/cmの結晶性プロピレン重合体部分49重量%と、エチレン含量が56重量%、Mwが450,000のエチレン−プロピレンランダム共重合体を51重量%(但し、結晶性プロピレン重合体部分とエチレン−プロピレンランダム共重合体部分の合計を100重量%とする)を各々含有し、且つ全体のMFRが0.9g/10分である気相重合で製造したプロピレン−エチレンブロック共重合体(ペレット)。
(3)成分(C1):エチレン・オクテン共重合体エラストマー
ダウケミカル日本社製、製品名「エンゲージ8137」(MFR30g/10分、密度0.872g/cm、オクテン含量42重量%)。
(4)成分(C2):エチレン・オクテン共重合体エラストマー
ダウケミカル日本社製、製品名「エンゲージ8100」(MFR2g/10分、密度0.872g/cm、オクテン含量42重量%)。
(5)成分(D1):造核剤
旭電化工業(ADK)社製、「NA11」、リン酸2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ナトリウム。
(6)成分(E):有機過酸化物(分子量降下剤)
化薬アグゾ株式会社製「パーカドックス14」、1,3−ビス−(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、分子量が338。
(7)成分(F):化学発泡剤
化学発泡剤マスターバッチ(永和化成社製「ポリスレンEE25C」、低密度ポリエチレンベースで発泡剤濃度は20重量%)。
(8)その他の添加剤:
(a)ヒンダードフェノール系酸化防止剤
イルガノックス1010(IR1010;BASF社製);テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシルフェニル)プロピオネート]メタン。
(b)リン系酸化防止剤
イルガフォス168(IF168;BASF社製);トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)フォスファイト。
(c)中和剤
ステアリン酸カルシウム(CAST;日油(株)社製商品名。)
(d)高密度ポリエチレン
日本ポリエチレン社製、ノバテックHD(HJ490)。
(e)タルク
富士タルク工業社製(MP−A25)。
3.混合、混練および樹脂組成物の調製
[実施例1および比較例1、2]
成分(A)〜(E)及びその他の各成分を、表1に示す割合で配合し、スーパーフローターにより5分間混合した。
得られた混合物を200℃にスクリュー回転数毎分800回転に設定した神戸製鋼所製、高速二軸押出機KCM65型二軸押出機を用いて混練し、実施例1及び比較例1、2の組成のペレット状の樹脂組成物を調製し、前述の方法にて各評価を行った。
評価結果を表1に示す。
Figure 2016056264
[実施例と比較例の評価結果の対比]
実施例1の樹脂組成物は、良好な流動性(メルトフローレート)、良好な製品外観(黒スジ、ディンプル、光沢度)および良好な実用性能(耐傷付性、剛性)を示した。
一方、比較例1〜2では、これらの性能バランスが不良であった。比較例1は、成分C2、D1を配合せずに、高密度ポリエチレンとタルクを配合したが、黒スジやディンプル、耐傷付性が悪い。また、比較例2は、B1を配合せずに、C1,C2の量を実施例1の倍量を配合したが、耐傷付性も悪く、光沢も高(悪)い。さらに、剛性(曲げ弾性率)や黒スジやディンプルが不十分である。
本発明の発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物および発泡成形体はは、曲面や開口部を有する形状が複雑な、実用的な金型での使用において、黒スジやディンプルといった表面外観性能が優れ、流動性や剛性などの物性バランスが良く、低光沢や耐傷付性などの実用性能に優れ、大幅な軽量化が可能であり、また、このような優れた性能を有するため、トリム類、天井材、トランク周りなど自動車内装部品をはじめとする成形部品用途に、好適に用いることができる。

Claims (3)

  1. 下記の特性(A−i)〜(A−v)を満足するプロピレン・エチレンブロック共重合体(A)(成分A)84〜93重量部と、下記の特性(B−i)〜(B−iii)を満足するプロピレン・エチレンブロック共重合体(B)(成分B)3〜8重量部と、下記の特性(C−i)〜(C−iii)を満足するエチレン・オクテン共重合体エラストマー(C)(成分C)1〜8重量部と(但し、成分Aと成分Bと成分Cの合計は、100重量部である。)、成分Aと成分Bと成分Cとの合計100重量部に対し、造核剤(D)(成分D)0.05〜1重量部と、有機過酸化物(E)(成分E)0.01〜1重量部とを、混合し、溶融、混練してなることを特徴とする発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物。
    特性(A−i):プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)は、プロピレン重合体部分(A−1)40〜97重量%、及びプロピレン・エチレンランダム共重合体部分(A−2)3〜60重量%からなる(但し、プロピレン重合体部分(A−1)とプロピレン・エチレンランダム共重合体部分(A−2)との合計を100重量%とする。)。
    特性(A−ii):プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)全体のメルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が50〜300g/10分である。
    特性(A−iii):プロピレン・エチレンランダム共重合体部分(A−2)のメルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が0.8〜55g/10分であり、且つ、プロピレン・エチレンランダム共重合体部分(A−2)のエチレン含量が35〜60重量%である(但し、プロピレン・エチレンランダム共重合体部分(A−2)のプロピレン含量とエチレン含量の合計を100重量%とする。)。
    特性(A−iv):プロピレン重合体部分(A−1)のメルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が100〜1500g/10分であり、且つ、プロピレン重合体部分(A−1)の分子量分布値(Mw/Mn)が3.5以下である。
    特性(A−v):プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)全体を180℃キャピラリーレオメータにおける剪断速度400〜10000/sで押出した時の押出溶融体の測定値(直径D1)とオリフィス径(D0)とから計算されるD1/D0(ダイスウェル比)は、剪断速度(対数)に対して、直線性を示す(変曲点を有しない。)。
    特性(B−i):プロピレン・エチレンブロック共重合体(B)は、プロピレン重合体部分(B−1)15〜55重量%、及びプロピレン・エチレンランダム共重合体部分(B−2)45〜85重量%からなる(但し、プロピレン重合体部分(B−1)とプロピレン・エチレンランダム共重合体部分(B−2)との合計を100重量%とする。)。
    特性(B−ii):プロピレン・エチレンブロック共重合体(B)全体のメルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が0.1〜40g/10分である。
    特性(B−iii):プロピレン・エチレンランダム共重合体部分(B−2)のエチレン含量が30重量%以上である(但し、プロピレン・エチレンランダム共重合体部分(B−2)のプロピレン含量とエチレン含量の合計を100重量%とする。)。
    特性(C−i):エチレン・オクテン共重合体エラストマー(C)は、下記特性(C−ii)を満足するエチレン・オクテン共重合体エラストマー(C−1)と、下記特性(C−iii)を満足するエチレン・オクテン共重合体エラストマー(C−2)とを含み、且つ、その割合((C−1)/(C−2))が3/1〜1/1の範囲にある。
    特性(C−ii):エチレン・オクテン共重合体エラストマー(C−1)のメルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が5g/10分以上であり、且つ、密度が0.870〜0.874g/cm未満である。
    特性(C−iii):エチレン・オクテン共重合体エラストマー(C−2)のメルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が5g/10分未満であり、且つ、密度が0.870〜0.874g/cm未満である。
  2. 請求項1に記載の発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物に、発泡剤(F)(成分F)を加え、発泡成形してなる発泡成形体。
  3. 発泡剤(F)(成分F)が化学発泡剤である請求項2に記載の発泡成形体。
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