JP2010146893A - 有機エレクトロルミネッセンス素子、及びその製造方法 - Google Patents

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一史 渡辺
Yoshinobu Ono
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Abstract

【課題】光取り出し効率を高くし、発光性能のより優れたマルチフォトン型の有機EL素子、その製造方法、照明装置、面状光源および表示装置を提供する。
【解決手段】有機EL素子10は、陽極14と、陰極16と、陽極14と陰極16との間に設けられ、有機発光層を含む第1の発光ユニット11及び第2の発光ユニット12と、第1及び第2の発光ユニット11、12に挟持される電荷発生層13と、第1及び第2の発光ユニット11、12を基準にして陽極14側の最外層に配置されたフィルム19とを含み、電荷発生層13は、仕事関数が3.0eV以下の金属およびその化合物から成る群(A)から選ばれるものの1種類以上と、仕事関数が4.0eV以上の化合物(B)の1種類以上とを含み、フィルム19は、第1及び第2の発光ユニット11、12側とは反対側の表面が凹凸状であり、ヘイズ値が70%以上であり、かつ全光線透過率が80%以上である。
【選択図】図1

Description

本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子、その製造方法、照明装置、面状光源、及び表示装置に関する。
有機EL素子は一対の電極と該電極間に設けられる有機化合物を含む発光層(以下、有機発光層という場合がある)を含んで構成される。有機EL素子に電圧を印加すると、陽極から正孔が注入されるとともに、陰極から電子が注入され、これら正孔と電子とが有機発光層において再結合することによって発光する。
有機EL素子は、通常、有機発光層を1層含んで構成されるが、注入する電流に対する発光効率を向上させるために、有機発光層を含む発光ユニットを複数段積層した構成の有機EL素子が提案されている。このような有機EL素子には発光ユニット間に電荷発生層が設けられている(例えば、特許文献1参照)。
有機EL素子は、一対の電極の一方を透明電極として、有機発光層から放射される光を透明電極側から取り出している。しかしながら有機EL素子の内部で発生した光は、電極などでの全反射や、内部での光吸収などにより素子内部に閉じ込められるために、その大部分が有効に利用されてないのが現状である。
光取り出し効率が低いと、結果として素子全体の発光効率が低くなるため、例えば有機EL素子が設けられる透明の基板と有機EL素子の電極との間に光散乱層を設けて、光の全反射を抑制し、光取り出し効率および発光効率の向上を図っているものがある(例えば、特許文献2参照)。
特開2003−272860号公報 特開2007−035550号公報
上記の通り、発光効率を向上させるために様々な観点から有機EL素子を改良する試みがなされているが、発光効率のさらなる向上が求められている。
本発明は、上記従来技術における問題点に鑑みてなされたものであり、その課題は、光取り出し効率を高くし、発光効率のより優れたマルチフォトン型の有機EL素子、その製造方法、照明装置、面状光源および表示装置を提供することにある。
上記の課題を解決するため、本発明では、下記の構成を採用した。
[1] 陽極および陰極のうちのいずれか一方の電極であり、光透過性を有する第1電極と、
前記第1電極に対向して配置され、前記陽極および陰極のうちの他方の電極である第2電極と、
前記第1電極および第2電極間に設けられ、かつそれぞれが有機化合物を含む発光層を有する複数の発光ユニットと、
前記発光ユニットに挟持されて配置される電荷発生層と、
前記発光ユニットを基準にして前記第1電極側の最外層に配置されたフィルムと、を備え、
前記電荷発生層は、仕事関数が3.0eV以下の金属およびその化合物から成る群(A)から選ばれるものの1種類以上と、仕事関数が4.0eV以上の化合物(B)の1種類以上とを含み、
前記フィルムは、前記発光ユニット側とは反対側の表面が凹凸状であり、ヘイズ値が70%以上であり、かつ全光線透過率が80%以上である、
有機エレクトロルミネッセンス素子。
[2] 前記発光層が、高分子有機化合物を含む、上記[1]に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
[3] 前記電荷発生層が、前記金属又はその化合物から成る群(A)から選ばれるものの1種類以上を含む第1の層と、前記化合物(B)の1種類以上を含む第2の層とを含んでなり、前記第1の層が、前記第2の層よりも陽極寄りに配置される、上記[1]または[2]に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
[4] 前記電荷発生層は、前記金属又はその化合物から成る群(A)から選ばれるものの1種類以上と、前記化合物(B)の1種類以上とが混合されてなる層である、上記[1]または[2]に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
[5] 前記仕事関数が3.0eV以下の金属が、アルカリ金属、及びアルカリ土類金属から成る群から選択される、上記[1]から[4]のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
[6] 前記化合物(B)が、遷移金属酸化物である、上記[1]から[5]のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
[7] 前記遷移金属酸化物が、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Tc、及びReからなる群から選ばれる1種類以上の金属の酸化物である、上記[6]に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
[8] 前記仕事関数が3.0eV以下の金属がLiであり、前記仕事関数が4.0eV以上の化合物がV25である、上記[1]から[7]のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
[9] 前記フィルムの前記発光ユニット側とは反対側の表面は、複数の凹部が設けられている、上記[1]から[8]のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
[10] 陽極および陰極のうちのいずれか一方の電極であり、光透過性を有する第1電極と、前記第1電極に対向して配置され、前記陽極および陰極のうちの他方の電極である第2電極と、前記第1電極および第2電極間に設けられ、かつそれぞれが有機化合物を含む発光層を有する複数の発光ユニットと、前記発光ユニットに挟持されて配置される電荷発生層と、前記発光ユニットを基準にして前記第1電極側の最外層に配置されたフィルムと、を備える有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、
前記第1電極を形成する工程と、前記第2電極を形成する工程と、前記第1及び第2電極間に複数の発光ユニットを形成する工程と、発光ユニット間に電荷発生層を形成する工程と、発光ユニット側とは反対側の表面が凹凸状であり、ヘイズ値が70%以上、かつ全光線透過率が80%以上の前記フィルムを前記最外層に設けるフィルム設置工程とを含み、
前記フィルム設置工程では、前記フィルムが形成される被形成面上に、前記フィルムとなる材料を含む溶液を、前記フィルムの厚みが100μm〜200μmの範囲となるように塗布し、塗布された前記溶液を湿度が80%〜90%の雰囲気に保持した後に乾燥し、フィルム化する、有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
[11] 上記[1]から[9]のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を備える照明装置。
[12] 上記[1]から[9]のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を備える面状光源。
[13] 上記[1]から[9]のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を備える表示装置。
本発明によれば、有機発光層を備える発光ユニットが複数段積層されたマルチフォトン型の有機EL素子を構成するとともに、特定の3層から成る第2電極を用いることによりトップエミッション型の有機EL素子を構成することができる。
マルチフォトン型の有機EL素子は、素子全体として取出される光を各発光ユニットが分担して放出することになるため、結果として有機EL素子全体に加わる負荷を各発光ユニットに分散させることができる。そのため、1層の有機発光層のみからなるシングルフォトン型の有機EL素子とマルチフォトン型の有機EL素子とを輝度が同じ条件で駆動させた場合、シングルフォトン型の有機EL素子の有機発光層に加わる負荷に比べて、マルチフォトン型の有機EL素子の各有機発光層に加わる負荷を軽くすることができる。このように、マルチフォトン型の有機EL素子は、各有機発光層に加わる負荷を軽くすることができるので、素子の長寿命化を図ることができる。このようなマルチフォトン型の有機EL素子の最外層に、前記発光ユニット側とは反対側の表面を凹凸状とし、ヘイズ値が70%以上、かつ全光線透過率が80%以上のフィルムを設けることにより、光取り出し効率を高くすることができる。これによって発光効率(有機EL素子に入力される電力に対して、外に取出される光の割合)の高いマルチフォトン型の有機EL素子を実現することができる。さらに、光取出し効率が向上することにより、有機EL素子内部で生じさせるべき光量を抑制することができ、結果として有機EL素子の負荷を軽減することができるため、発光性のより優れたマルチフォトン型の有機EL素子を実現することができる。
したがって、本発明の有機EL素子は、照明装置、面状光源、フラットパネルディスプレイ等の表示装置として好適に使用することができる。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお理解の容易のため、図面における各部材の縮尺は実際とは異なる場合がある。また本発明は以下の記述によって限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。有機EL素子を搭載した有機EL装置においては、電極のリード線等の部材も存在するが、本発明の説明にあっては直接的に要しないため記載を省略している。層構造等の説明の便宜上、下記に示す例においては基板を下に配置した図と共に説明がなされるが、本発明の有機EL素子およびこれを搭載した有機EL装置は、必ずしもこの配置で、製造または使用等がなされるわけではない。なお以下の説明において支持基板の厚み方向の一方を上または上方といい、支持基板の厚み方向の他方を下または下方という場合がある。
1.本発明の有機EL素子
本発明にかかる有機EL素子は、陽極および陰極のうちのいずれか一方の電極であり、光透過性を有する第1電極と、前記第1電極に対向して配置され、前記陽極および陰極のうちの他方の電極である第2電極と、前記第1電極および第2電極間に設けられ、かつそれぞれが有機発光層を含む複数の発光ユニットと、前記発光ユニットに挟持されて配置される電荷発生層と、前記発光ユニットを基準にして前記第1電極側の最外層に配置されたフィルムと、を備え、前記電荷発生層は、仕事関数が3.0eV以下の金属およびその化合物から成る群(A)から選ばれるものの1種類以上と、仕事関数が4.0eV以上の化合物(B)の1種類以上とを含み、前記フィルムは、前記発光ユニット側とは反対側の表面が凹凸状であり、ヘイズ値が70%以上であり、かつ全光線透過率が80%以上であることを、特徴としている。
有機EL素子は、2個以上の発光ユニットを備え、複数の発光ユニットが電荷発生層を介して複数段積層された構成のマルチフォトン型の有機EL素子である。有機EL素子のとりうる素子構成を以下に示す。
(i)陽極/第1の発光ユニット/電荷発生層/第2の発光ユニット/陰極
(ii)陽極/発光ユニット/(電荷発生層/発光ユニット)x/陰極
ここで記号「/」は、記号「/」を挟む層が隣接して積層されていることを表す。また記号「x」は、2以上の整数を表し、「(電荷発生層/発光ユニット)x」は、電荷発生層と発光ユニットとから成る積層体が、x段積層されていることを表す。
[第1の実施形態]
図1を参照しつつ、有機EL素子の第1の実施形態およびその変形例について説明する。図1は、本発明の有機EL素子の第1の実施形態を示す正面図である。
本実施形態における有機EL素子10は、それぞれが有機発光層を含む第1の発光ユニット11及び第2の発光ユニット12の2個の発光ユニットを備え、これら第1の発光ユニット11及び第2の発光ユニット12に挟持される電荷発生層13を備える。第1の発光ユニット11は、第1の有機発光層11aと正孔注入層11bで構成されている。第2の発光ユニット12は、第2の有機発光層のみで構成されている。有機EL素子10は、通常、前述した(i)または(ii)の構成において、光透過性を有する第1電極として陽極14を最も支持基板15寄りに配置するようにして支持基板15上に設けられる。また支持基板15は、第1主面15aおよび第2主面15bを有し、陽極14、第1の発光ユニット11、電荷発生層13、第2の発光ユニット12及び陰極16を含む発光機能部17は、支持基板15に、第1主面15a寄りからこの順に積層されて構成される。このように、本実施形態では、第1の発光ユニット11及び第2の発光ユニット12が電荷発生層13を介して積層された構成のマルチフォトン型の素子10が構成される。
また発光機能部17を保護するために、発光機能部17全体を保護する封止基板(上部封止膜という場合がある)18が通常設けられる。また有機EL素子10は、第1の発光ユニット11及び第2の発光ユニット12を基準にして陽極14側の最外層にフィルム19を備え、本実施の形態では支持基板15の第2主面15bにフィルム19が設けられる。すなわち陽極14とフィルム19との間に、支持基板15が介在し、発光機能部17が、第1主面15a側に配置され、第2主面15b側にフィルム19が接して設けられている。
なおここでいう最外層とは、有機EL素子10を構成する要素のうち、第1の発光ユニット11及び第2の発光ユニット12を基準にして陽極14側の最も外側に設けられている層をいい、本実施形態では、フィルム19が最外層となる。また本明細書では「光透過性を有する支持基板」、「光透過性を有する電極」とは、入射した光の少なくとも一部が透過する支持基板、電極をそれぞれ意味する。
なお本実施形態では、光透過性を有する第1電極14が陽極であり、第2電極16が陰極であるが、発光機能部17の積層順を逆順にして、光透過性を有する第1電極が陰極であり、第2電極が陽極である有機EL素子であっても本発明を好適に適用することができる。
<複数の発光ユニットを含む発光機能部>
第1の発光ユニット11及び第2の発光ユニット12を含む発光機能部17は、上述の通り、陽極(第1電極)14、陰極(第2電極)16、第1の発光ユニット11、第2の発光ユニット12およびこれら第1の発光ユニット11と第2の発光ユニット12との間に位置する電荷発生層13を備える。
以下に、まず、第1の発光ユニット11、第2の発光ユニット12、電荷発生層13、フィルム19について説明する。その後、有機EL素子の他の構成要素について説明する。
<A>発光ユニット
発光ユニットは有機発光層を含んで構成される。また発光ユニットは、1層の有機発光層から構成されていてもよいし、複数の有機発光層により構成されていてもよい。また、発光ユニットは有機発光層のみによって構成されていてもよく、無機層を含んでいてもよい。発光ユニットは、マルチフォトン型ではない有機EL素子、すなわち1層の有機発光層を有する有機EL素子のうちの、陽極と陰極とに挟持された部分と同様の構成を有する。図1に示す有機EL素子10においては、第1の発光ユニット11は第1の有機発光層11aと正孔注入層11bとで構成され、第2の発光ユニット12は第2の有機発光層のみで構成されている。
また発光ユニットは発光層を形成する材料(以下、発光材料という場合がある)を含む溶液を塗布し、乾燥することにより形成された有機発光層を少なくとも一層含むものとしてもよい。図1に示す有機EL素子10においては、第1の有機発光層11a、第2の有機発光層12は発光材料を含む溶液を塗布し、乾燥することにより形成してもよい。また第1の発光ユニット11及び第2の発光ユニット12には各々第1の有機発光層11a、第2の有機発光層12を一つしか含んでいないが、複数の有機発光層を有するようにしてもよい。
発光層は発光材料を含む層であり、有機発光層は発光材料として有機化合物を含む層である。有機発光層には、主として蛍光および/または燐光を発光する有機物(低分子化合物および/または高分子化合物)が含まれる。この蛍光および/または燐光を発光する有機化合物として用いられる低分子化合物および高分子化合物が発光材料として用いられる。なお、本明細書において、高分子化合物とは、ポリスチレン換算の数平均分子量が103以上のものである。本発明に関し、数平均分子量の上限を規定する特段の理由はないが、通常、ポリスチレン換算の数平均分子量の上限は、108以下である。また、有機発光層は、さらにドーパント材料を含んでいてもよい。本発明において用いることができる発光層を形成する材料としては、例えば、以下の色素系材料、金属錯体系材料、高分子系材料、およびドーパント材料などが挙げられる。
<A−1>色素系材料
色素系材料としては、例えば、シクロペンダミン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体化合物、トリフェニルアミン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、ピロール誘導体、チオフェン環化合物、ピリジン環化合物、ペリノン誘導体、ペリレン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、オキサジアゾールダイマー、ピラゾリンダイマー、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体などが挙げられる。
<A−2>金属錯体系材料
金属錯体系材料としては、例えば、イリジウム錯体、白金錯体等の三重項励起状態からの発光を有する金属錯体、アルミキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾリル亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポルフィリン亜鉛錯体、ユーロピウム錯体などを挙げることができる。さらに金属錯体系材料の他の例として、中心金属に、Al、Zn、BeなどまたはTb、Eu、Dyなどの希土類金属を有し、配位子にオキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダゾール、キノリン構造などを有する金属錯体などを挙げることができる。
<A−3>高分子系材料
高分子系材料としては、例えば、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、上記色素体や金属錯体系発光材料を高分子化したものなどが挙げられる。
上記発光性材料のうち、青色に発光する材料としては、例えば、ジスチリルアリーレン誘導体、オキサジアゾール誘導体、およびそれらの重合体、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体などを挙げることができる。なかでも高分子材料のポリビニルカルバゾール誘導体、ポリパラフェニレン誘導体やポリフルオレン誘導体などが好ましい。
また、緑色に発光する材料としては、例えば、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体、およびそれらの重合体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体などを挙げることができる。なかでも高分子材料のポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体などが好ましい。
また、赤色に発光する材料としては、例えば、クマリン誘導体、チオフェン環化合物、およびそれらの重合体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリフルオレン誘導体などを挙げることが出来る。なかでも高分子材料のポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリフルオレン誘導体などが好ましい。
<A−4>ドーパント材料
発光層中に発光効率の向上や発光波長を変化させるなどの目的で、ドーパントを添加してもよい。このようなドーパントとしては、例えば、ペリレン誘導体、クマリン誘導体、ルブレン誘導体、キナクリドン誘導体、スクアリウム誘導体、ポルフィリン誘導体、スチリル系色素、テトラセン誘導体、ピラゾロン誘導体、デカシクレン、フェノキサゾンなどを挙げることができる。なお、このような発光層の厚さは、通常約2nm以上、2000nm以下である。
<A−5>発光層の成膜方法
発光層の成膜方法としては、有機発光層が積層される下地層上に発光材料を含む溶液を塗布する方法、真空蒸着法、転写法などを用いることができる。溶液からの成膜に用いられる溶媒としては、発光層を主に構成する発光材料を溶解するものであればよく、例えば、水、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタンなどの塩素系溶媒、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテートなどのエステル系溶媒を挙げることができる。
有機発光層が積層される下地層上に発光材料を含む溶液を塗布する方法としては、例えば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スリットコート法、キャピラリーコート法、スプレーコート法、ノズルコート法などのコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法、インクジェットプリント法等の印刷法等の塗布法を用いることができる。パターン形成や多色の色分けが容易であるという点で、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法、インクジェットプリント法等の印刷法が好ましい。また、昇華性の低分子化合物の場合は、真空蒸着法を用いることができる。さらには、レーザーまたは摩擦による転写や熱転写により、所望のところのみに有機発光層を形成する方法も用いることができる。
また発光ユニットは、必要に応じて有機発光層以外の層を有している場合がある。発光ユニットを構成する層のうちで、有機発光層を基準にして陽極側に設けられる層としては、正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロック層などを挙げることができる。
また発光ユニットを構成する層のうちで、有機発光層を基準にして陰極側に設けられる層としては、電子注入層、電子輸送層、正孔ブロック層などを挙げることができる。
これら正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロック層、電子注入層、電子輸送層、正孔ブロック層については、任意の層として後述する。
<B>電荷発生層
電荷発生層は、発光ユニットに挟持されて配置されている。電荷発生層は、陽極と陰極とに電圧を印加したときに、電荷(正孔と電子)を発生し、電荷発生層に対して陽極側に隣接する発光ユニットに電子を注入するとともに、電荷発生層に対して陰極側に隣接する発光ユニットに正孔を注入する層として機能する。陽極および陰極から注入される電荷に、電荷発生層で発生した電荷が加わることにより、注入した電流に対する発光効率(電流効率)が向上する。
本実施形態の有機EL素子10においては、図1に示すように、この電荷発生層13が第1の発光ユニット11及び第2の発光ユニット12に挟持され、これら第1の発光ユニット11及び第2の発光ユニット12を仕切っている。これによってマルチフォトン型の有機EL素子が構成される。マルチフォトン型の有機EL素子では、マルチフォトン型の有機EL素子では、各発光ユニットに負荷を分散させ、各発光ユニットから放射される光を重ね合わした光が取出される。
このため、1層の有機発光層のみからなるシングルフォトン型の有機EL素子と第1の発光ユニット11と第2の発光ユニット12とを積層したマルチフォトン型である本実施の形態の有機EL素子10とから取出される光の強度を同じにして比較したとき、マルチフォトン型である有機EL素子10の方がシングルフォトン型の有機EL素子より第1の有機発光層11aおよび第2の有機発光層12に加わる電力を小さくした状態で第1の有機発光層11a及び第2の有機発光層12を発光させることができ、マルチフォトン型の有機EL素子10全体としてはシングルフォトン型の有機EL素子と同じ光量とすることができる。
したがってマルチフォトン型である有機EL素子10全体としてはシングルフォトン型の有機EL素子と同じ光量となるように駆動させたとしても、本実施の形態の有機EL素子10は、シングルフォトン型の有機EL素子より第1の有機発光層11a及び第2の有機発光層12に加わる負荷を小さくした状態で発光させることができるため、素子の長寿命化を図ることができる。
本実施形態における電荷発生層13は、仕事関数が3.0eV以下の金属およびその化合物から成る群(A)から選ばれるものの1種類以上と、仕事関数が4.0eV以上の化合物(B)の1種類以上とを含む。電荷発生層13は、仕事関数が3.0eV以下の金属およびその化合物から成る群(A)から選ばれるものの1種類以上を単独で用いるよりも、仕事関数が4.0eV以上の化合物(B)の1種類以上と組合せて用いることにより、電荷を効率的に発生することができる。
なお、仕事関数が3.0eV以下の金属およびその化合物から成る群(A)から選ばれるものの仕事関数の上限値としては3.0eVが好ましく、下限値としては1.5eVが好ましい。また、仕事関数が4.0eV以上の化合物(B)の仕事関数の下限値としては4.0eVが好ましく、上限値としては7.5eVが好ましい。
仕事関数が3.0eV以下の金属の化合物とは、金属の仕事関数が3.0eV以下であり、かつ化合物自体の仕事関数が3.0eV以下である化合物をさす。電荷発生層13に仕事関数が前記範囲を満たす材料が含まれていない場合、有効な電荷注入が起こりにくくなり本発明の効果が十分に得られないので好ましくない。
電荷発生層を構成する仕事関数が3.0eV以下の金属は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、及び希土類金属から成る群から選択することができる。中でもアルカリ金属及びアルカリ土類金属が好ましい。アルカリ金属としては、リチウム(Li)(2.93eV)、ナトリウム(Na)(2.36eV)、カリウム(K)(2.28eV)、ルビジウム(Rb)(2.16eV)、及びセシウム(Ce)(1.95eV)が好ましく、アルカリ土類金属としては、カルシウム(Ca)(2.9eV)及びバリウム(Ba)(2.52eV)が好ましい(カッコ内は仕事関数を示す。)。これらの中では、Liがより好ましい。また、電荷発生層を構成する仕事関数が3.0eV以下の金属の化合物としては、前記の金属の酸化物、ハロゲン化物、フッ化物、ホウ化物、窒化物、炭化物等が挙げられる。
仕事関数が4.0eV以上の化合物(B)としては、仕事関数が4.0eV以上の無機又は有機化合物が選ばれる。仕事関数が4.0eV以上の無機化合物としては、遷移金属酸化物が望ましく、遷移金属酸化物の中でも、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、マンガン(Mn)、テクネチウム(Tc)、レニウム(Re)などの酸化物が好ましく、V25がより好ましい。
仕事関数が4.0eV以上の有機化合物としては、後の工程で用いられる塗布液に溶解しにくく、かつ仕事関数が3.0eV以下の金属およびその化合物から成る群(A)から選ばれるものから電子を受け取りやすい電子受容性を示すものが好ましく、さらに好ましくは、仕事関数が3.0eV以下の金属およびその化合物から成る群(A)から選ばれるものと電荷移動錯体を形成するものが好ましい。このような材料の例として、テトラフルオロ−テトラシアノキノジメタン(4F−TCNQ)が挙げられる。
電荷発生層は、以下の2通りの構造をとり得る。
(i)電荷発生層13が、前記金属およびその化合物から成る群(A)から選ばれるものを1種類以上含む第1の層13−1と、前記化合物(B)を1種類以上含む第2の層13−2とを含む(積層構造:図1参照)。
(ii)電荷発生層が、一つの層に、前記金属およびその化合物から成る群(A)から選ばれるものの1種類以上と前記化合物(B)の1種類以上とを含む混合層である(混合層)。
前記積層構造の場合には、図1に示すように、第1の層13−1を、第2の層13−2よりも陽極寄りに配置することが好ましい。
前記混合層の場合には、共蒸着などの手法により、2種類の材料が混合した層を一度に形成する方法や、第1の層を構成する材料を極めて薄く形成することにより、連続膜になる前の島状の離散的な構造を形成し、この構造の上に第2の層を形成することにより混合層とする方法、などを用いて混合層を形成することができる。
第1の層13−1の厚さは、本発明の効果を十分に得るためには、0.1nm以上、10nm以下が好ましく、より好ましくは0.1nm以上、6nm以下である。
第2の層13−2の厚さは、2nm以上、100nm以下が好ましく、より好ましくは4nm以上、80nm以下である。
また本実施形態の電荷発生層は、第3の層として透明導電性薄膜をさらに含んでいてもよい。透明導電性薄膜としては、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、およびインジウムスズ酸化物(ITO)などを用いることができる。
本実施形態の電荷発生層の光透過率は、有機発光層から放出される光に対して高い透過率を有することが望ましい。十分に光を取り出し、十分な輝度を得るためには、波長550nmでの光の透過率が30%以上であることが好ましく、さらに好ましくは50%以上である。
本実施形態の有機EL素子10によれば、同時に発光する第1の発光ユニット11及び第2の発光ユニット12を含み、1層の有機発光層のみからなるシングルフォトン型の有機EL素子と第1及び第2の発光ユニット11、12を積層したマルチフォトン型の有機EL素子10とから取出される光の強度を同じにして比較したとき、マルチフォトン型の有機EL素子10の方がシングルフォトン型の有機EL素子より第1及び第2の有機発光層11a、12に加わる電力を小さくした状態で発光させ、マルチフォトン型の有機EL素子10全体としてはシングルフォトン型の有機EL素子と同じ光量とすることができる。よって、マルチフォトン型である有機EL素子10全体としてはシングルフォトン型の有機EL素子と同じ光量となるように駆動させたとしても、有機EL素子10は、シングルフォトン型の有機EL素子より第1及び第2の有機発光層11a、12に加わる負荷を小さくした状態で発光させることができるため、素子の長寿命化を図ることができる。これにより、信頼性の高い有機EL素子を実現することができる。
(混色、白色)
また本実施形態の有機EL素子10は、同時に発光する第1の発光ユニット11及び第2の発光ユニット12を含むため、第1の発光ユニット11の第1の有機発光層11a及び第2の発光ユニット12の第2の有機発光層12の発光波長を互いに異なるようにすることによって、混色により有機EL素子10から取出される光の色を、第1の発光ユニット11及び第2の発光ユニット12からそれぞれ発せられる光の色とは別の色とすることが可能である。例えば補色の関係にある2色の組合せや、RGBなど3色の混色、又は4色以上の混色によって、取出される光の色を白色とすることができる。例えば本実施の形態の第1の有機発光層11a、第2の有機発光層12の発光色を互いに異ならせることによって、所期の発光色で発光する有機EL素子を実現することができるため、設計の自由度を向上させることができる。
(キャビティ効果)
また積層する層の順番や数、及び各層の厚さについては、発光効率や素子寿命を勘案して適宜用いることができるが、キャビティ効果(光の干渉効果)を考慮することが好ましい。具体的には、陽極14と陰極16とに挟持された構造物の厚さが、第1の発光ユニット11及び第2の発光ユニット12から発生する光の波長を前記構造物の平均屈折率で割った値の1/4の整数倍であることが好ましい。このような関係が満足される構成では、光の干渉効果により光取り出し効率が最大となるためである。この関係は厳密に成立しているときに効果が最大となるが、誤差はあっても効果は認められ、おおむね構造物の厚さが、発光波長を平均屈折率で割った値の1/4の整数倍の±20%以内であればよい。さらに実質的に発光している部位と、光を反射する方の反射性電極(本実施形態では陰極16)との距離が、発光波長を平均屈折率で割った値の1/4の整数倍となる場合に光の干渉効果が最大となるので好ましい。有機EL素子10が、発光色が異なる複数の発光ユニットからなる場合は、どれか一つの波長に対して前記の関係が成り立つように膜厚を制御することが好ましい。あるいは2つの波長に対して前記層厚の関係が同時に成り立つように層厚を制御してもよい。
<C>フィルム
フィルムは、有機発光層を基準にして陽極側の最外層に設けられる。本実施形態の有機EL素子10においては、図1に示すように、フィルム19は、第2主面15b側の表面が平面状であり、第1の発光ユニット11及び第2の発光ユニット12側とは反対側の表面に凹凸形状を有し、このフィルム19のヘイズ値が70%以上、かつこのフィルム19の全光線透過率が80%以上である。
図4にフィルムの断面を模式的に示す。なお図4ではフィルムの凹凸形状の形成された表面部分を上側とする。図4に示すように、第1の発光ユニット11及び第2の発光ユニット12側とは反対側のフィルム19の表面部に複数の凸部19aが形成され、その凸部19a間の窪みに凹部19bが形成される。
フィルム19は、平面状の表面19cが支持基板15の第2主面15bに貼り合わされることにより最外層に設けられている。フィルム19は、たとえば熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、接着剤および粘着材などの貼合剤を用いて支持基板15に貼り付けられる。熱硬化性樹脂を用いる場合には、フィルム19を支持基板15に貼り合わせた後に、所定の温度で加熱することによって、フィルム19を支持基板15に接着させる。また光硬化性樹脂を用いる場合には、フィルム19を支持基板15に貼り合わせた後に、フィルム19に例えば紫外線を照射することによって、フィルム19を支持基板15に接着させる。なお支持基板15上にフィルム19を直接形成する場合およびフィルム19に貼合剤が予め設けられている場合などには、前記貼合剤を用いなくてもよい。
フィルム19と支持基板15との間に空気の層が形成されると、この空気の層の界面で反射が生じるので、フィルム19と支持基板15との間に空気の層が形成されないようにフィルム19の貼り合わせを行うことが好ましい。フィルム19の屈折率、貼合剤の屈折率、およびフィルム19が貼り合わされる層(本実施形態では支持基板15)の屈折率のうちで最大となる屈折率と、最小となる屈折率との差は、小さい方が貼り合せ面での反射を抑制できるので好ましく、具体的には0.2以内が好ましく、さらに好ましくは0.1以内である。
本実施形態のフィルム19は、該フィルム19の一方の表面(フィルム19が支持基板15の外表面に貼り付けられた後では、第1の発光ユニット11及び第2の発光ユニット12側とは反対側の表面)が凹凸形状に形成され、ヘイズ値が70%以上、かつ全光線透過率が80%以上である。ヘイズ値が70%未満であれば、十分な光散乱効果が得られない場合があり、全光線透過率が80%未満であれば、十分な光を取り出すことができない場合があるので、このようなフィルム19を有機EL素子に用いた場合、十分な光取り出し効率を実現できないおそれがある。したがって、ヘイズ値が70%以上、かつ全光線透過率が80%以上のフィルム19を用いることによって、高い光取り出し効率の有機EL素子を実現することができる。
ヘイズ値は、以下の式で表される。
ヘイズ値(曇価)=(拡散透過率(%)/全光線透過率(%))×100(%)。
なお拡散透過率は、物体に入射した放射束又は光束に対する、拡散透過した放射束または光束の比を意味し、ヘイズ値は、JIS K 7136「プラスチック−透明材料のヘイズの求め方」に記載の方法で測定することができる。
全光線透過率は、JIS K 7361−1「プラスチック−透明材料の全光線透過率の試験方法」に記載の方法で測定することができる。
フィルム19の厚み方向に垂直な幅方向の凸部19aまたは凹部19bの大きさ(幅)は、大きすぎると、フィルム19の表面での輝度が不均一になり、小さすぎると、フィルム19の作製コストが高くなるので、好ましくは0.5μm〜20μmであり、さらに好ましくは1μm〜2μmである。またフィルム19の厚み方向の凸部19aまたは凹部19bの高さは、前記幅方向の凸部19aまたは凹部19bの大きさ(幅)や、凹凸形状が形成される周期により決定され、通常、前記幅方向の凹部19bまたは凸部19aの大きさ(幅)以下、または凹凸形状が形成される周期以下が好ましく、0.25μm以上、10μm以下であり、好ましくは0.5μm以上、1.0μm以下である。
凸部19aまたは凹部19bの形状に制限は特にないが、曲面を有するものが好ましく、たとえば半球形状が好ましい。このときのフィルム19の断面の模式図を図5に示す。なお図5では、フィルムの凹凸形状の形成された表面部分を上側とする。図5に示すように、フィルム19の第1の発光ユニット11及び第2の発光ユニット12側とは反対側の表面19dには、複数の凹部19eが設けられている。すなわち、フィルム19の平滑面である表面19dが凸部となり、凸部19d間に形成される窪みが凹部19eとなる。
また、凸部19a、19dまたは凹部19b、19eは、規則的に配置されることが好ましく、たとえば碁盤の目状に配置されることが好ましい。またフィルム19の表面のうちで、凸部19a、19dと凹部19b、19eとが形成される領域の面積は、フィルム19の表面の面積の60%以上が好ましい。
フィルム19を構成する材料は、フィルム19に成形した時、上述したヘイズ値、全光線透過率を満たし得る材料であればよく、特に制限はない。フィルム19を構成する材料としては、たとえば高分子材料およびガラスなどを用いても良い。フィルム19を構成する高分子材料としては、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリシクロオレフィン、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンスルホン酸、およびポリエチレンテレフタレートなどを挙げることができる。またフィルム19は、たとえば前記高分子材料およびガラスなどから成る支持体と、この支持体の表面上に形成され、支持体に接する表面とは反対側の表面が凹凸形状に形成される薄膜との積層体によって構成されてもよい。フィルム19の厚みは、特に制限はないが、薄すぎると取り扱いが難しくなり、厚すぎると全光線透過率が低くなるので、20μm以上、1000μm以下が好ましい。
<C−1>フィルムの形成方法
次に、フィルム19の形成方法について説明する。本実施形態のフィルム19は、フィルム19が積層される基台の表面上に、フィルム19となる材料を含む溶液を、フィルム19の厚みが100μm〜200μmの範囲となるように塗布し、前記基台の表面上に塗布された溶液を、湿度が80%〜90%の雰囲気に保った後に乾燥し、成膜化することによりフィルム19を形成する工程により製造される。表面に形成される凹凸形状の大きさは、光の波長と同程度、またはそれよりも大きく、0.1μm以上、100μm以下が好ましい。
ガラスなどの無機材料から成るフィルム19では、たとえば凹凸形状を形成しない領域にフォトレジストを硬化させた保護膜を予め形成し、化学的なエッチングまたは気相エッチングを施すことによって凹凸面を形成することができる。また高分子材料から成るフィルム19では、表面が凹凸形状の金属板を加熱されたフィルムに押し付けることによって、金属板の凹凸面を転写する方法、表面が凹凸形状のロールを用いて、高分子シートまたはフィルムを圧延する方法、凹凸形状を有するスリットから高分子シートを押し出して成形する方法、表面が凹凸形状の基台上に、高分子材料を含む溶液または分散液を滴下(以下、キャストという場合がある)して成膜する方法、モノマーから成る膜を形成した後に、当該膜の一部を選択的に光重合し、未重合部分を除去する方法、高湿度条件下において高分子溶液を基台にキャストし、水滴構造を表面に転写する方法などによって凹凸面を形成することができる。
なお本明細書において、基台としては、前述した前記高分子材料およびガラスなどから成る基板などを挙げることができる。
これらの方法のうち、高分子材料では、作製の容易さから高湿度条件下において、高分子溶液を基台にキャストし、水滴構造を表面に転写する方法が好適に用いられる。この方法は、自己組織化の一種である散逸過程を応用した既知の構造作製法である(例えばG.Widawski,M.Rawiso,B.Francois,Nature,p.369−p.387(1994)参照)。
まず、上述したフィルム19となる高分子材料を溶媒に溶解して、フィルム19用の溶液を調合する。該溶媒としては、たとえばジクロロメタン、クロロホルムなどを挙げることができる。フィルム19用の溶液としては、粘度の高いものが好ましい。またフィルム19用の溶液としては、フィルム19となる高分子材料の濃度が高いものが好ましく、フィルム19となる高分子材料の溶液に対する濃度が、10wt%以上のものが好ましい。また凹凸形状の大きさや形の均一性を向上させるために、フィルム19用の溶液にノニオン系界面活性剤などの界面活性剤を少量添加してもよい。
次に、フィルム19が表面上に形成される下地となる基台の一表面上に、フィルム19となる材料を含む溶液を塗布する塗布工程を行う。具体的には、前記調合したフィルム19用の溶液を、高湿度下で基台の一表面上にキャストして、フィルム19用の溶液から成る液膜を形成する。
基台としては、後述するような高分子材料およびガラスなどからなる支持基板15を挙げることができる。
次に、前記基台の一表面上に塗布された液膜を、湿度が80%以上、90%以下の雰囲気に保った後に乾燥し、成膜化する成膜工程を行う。液膜を高湿度下で放置すると、雰囲気中の水蒸気が液化して、液膜の表面に複数の液滴が形成される。液滴は、略球状であって、液膜の表面において離散的に形成される。液膜の表面に形成される液滴は、水蒸気がさらに液化することによって時間経過とともに径が大きくなり、自重によって略半分が液膜中に沈み込む。また時間経過とともに液膜中の溶媒が蒸発するので、乾燥時に液滴の形状がフィルム19に転写される。
このようにして形成されるフィルム19は、表面に複数の凹面が設けられて、凹凸形状に形成される。具体的には径が1μm以上、100μm以下の複数の半球状の窪みがフィルム19の表面に形成される。
なお湿度が80%以上、90%以下の範囲においてフィルム19を保持することによって、表面に半球状の窪みが形成された後に、さらに湿度の低い雰囲気においてフィルムを乾燥してもよく、また80%以上、90%以下の範囲においてフィルムを長時間保持することによってフィルムを乾燥してもよい。
前述したフィルム19を作製する方法では、フィルム19の膜厚が所定の値になるようにフィルム19用の溶液の塗布を制御するとともに、液膜を乾燥させるときの湿度を調整することによって、作製されるフィルム19のヘイズ値を制御することができる。具体的には成膜工程を経て成膜されたフィルム19の膜厚が、100μm以上、200μm以下の範囲内において所定の膜厚となるように乾燥開始時の液膜の膜厚を制御するとともに、80%以上、90%以下の範囲内において所定の湿度となるように湿度を制御することによって、ヘイズ値が70%以上であり、かつ所期のヘイズ値を示すフィルム19を形成することができる。
湿度と膜厚とを制御することによってフィルム19のヘイズ値を制御できるのは、湿度と膜厚とを変えると、フィルム19となる高分子材料の溶液中での濃度などに応じて液膜の表面が乾燥するまでの時間が変わり、これによって凹凸形状の大きさや形成される凹面の密度が変わるからであり、また湿度は、凹面の配置の規則性向上など、形成される凹面の構造構築に大きな影響を与えるからであると推測される。
なお作製されるフィルム19の膜厚は、乾燥開始時の液膜の膜厚を調整することによって制御できる。
また溶媒の蒸発速度および溶媒の沸点などによって液膜の表面が乾燥するまでの時間が変わるので、用いる溶媒を変えることによって、フィルム19のヘイズ値を制御することもできる。
このような方法によって、簡易な制御で、かつ安価に、意図する光学的特性を示す大面積のフィルム19を容易に作製することができる。
なお支持基板15の表面上にフィルム19用の溶液をキャストすることによって、支持基板15上に直接的にフィルム19を形成することもできる。
本実施形態の有機EL素子10のように、有機EL素子の光取り出し側の最表面部に、フィルム19が配置され、フィルム19は、第1の発光ユニット11及び第2の発光ユニット12側とは反対側の表面が、凹凸形状に形成されているので、有機EL素子の光取り出し側の最表面の少なくとも一部が凹凸形状に形成される。このため、第1の発光ユニット11及び第2の発光ユニット12の第1の有機発光層11aと第2の有機発光層12から発生する光の一部は、フィルム19に入射し、凹凸形状に形成された表面で回折されて、たとえば空気などの雰囲気に出射する。フィルム19の第1の発光ユニット11及び第2の発光ユニット12側とは反対側の表面が平面の場合、有機EL素子の表面で生じる全反射によって第1の発光ユニット11及び第2の発光ユニット12の第1の有機発光層11a及び第2の有機発光層12において発生した光の多くが外に取り出されない。これに対して、光が取出される側の表面を凹凸形状に形成することによって、最表面への入射角を変更したり、回折効果を利用して全反射を抑制し、光を効率的に取り出すことができる。特にヘイズ値が70%以上、かつ全光線透過率が80%以上のフィルムが設けられるので、光の取り出し効率を向上させることができ、高い発光効率を有する有機EL素子を実現することができる。
また第1の発光ユニット11及び第2の発光ユニット12側とは反対側のフィルム19の表面には複数の凹面が設けられるので、この凹面が凹レンズと似た機能を発揮する。このようなフィルム19を設けることによって、有機EL素子から放射される光の放射角を広げることができる。
また本実施形態の有機EL素子10に用いられるフィルム19は、所定の基台の一表面上に、フィルム19となる材料を含む溶液を塗布する塗布工程と、塗布された液膜を乾燥させて成膜化する成膜工程とによって形成される。特に成膜工程後のフィルム19の厚みが、100μm以上、200μm以下となるように、フィルム19となる材料を含む溶液を塗布し、さらに湿度が80%以上、90%以下の範囲において保った後に乾燥し、成膜することによって、表面が凹凸形状に形成され、ヘイズ値が70%以上、かつ全光線透過率が80%以上のフィルム19を製造できるので、例えば溶液の塗布量および湿度を調整するという簡易な制御で、意図する光学特性を有するフィルム19を容易に製造することができる。
そして、フィルム19を支持基板15の第1の発光ユニット11及び第2の発光ユニット12側とは反対側の表面に付ける。
以上のように、有機EL素子に用いるフィルム19を簡易な制御で容易に作製することができるので、光取り出し効率の高い有機EL素子を容易に製造することができる。
なお他の実施の形態として、第2電極としての陰極16が基板の表面上に形成される形態を挙げることができ、基板上において陰極16、第1の発光ユニット11、電荷発生層13、第2の発光ユニット12および第1電極としての陽極14がこの順で配置されるトップエミッション型の有機EL素子では、例えば陽極14の第1の発光ユニット11及び第2の発光ユニット12側とは反対側の表面にフィルム19が設けられる。
以上説明した本実施形態の有機EL素子によれば、同時に発光する第1の発光ユニット11及び第2の発光ユニット12を含み、1層の有機発光層のみからなるシングルフォトン型の有機EL素子と第1及び第2の発光ユニット11、12を積層したマルチフォトン型の有機EL素子10とから取出される光の強度を同じにして比較したとき、マルチフォトン型の有機EL素子10の方がシングルフォトン型の有機EL素子より第1及び第2の有機発光層11a、12に加わる電力を小さくした状態で発光させ、マルチフォトン型の有機EL素子10全体としてはシングルフォトン型の有機EL素子と同じ光量とすることができる。よって、マルチフォトン型である有機EL素子10全体としてはシングルフォトン型の有機EL素子と同じ光量となるように駆動させたとしても、有機EL素子10は、シングルフォトン型の有機EL素子より第1及び第2の有機発光層11a、12に加わる負荷を小さくした状態で発光させることができるため、素子の長寿命化を図ることができる。これにより、信頼性の高い有機EL素子を実現することができる。
また、第1及び第2の発光ユニット11、12を基準に陽極14側の最外層にフィルム19を設け、第1及び第2の発光ユニット11、12側とは反対側の表面を凹凸状とし、ヘイズ値が70%以上、かつ全光線透過率が80%以上であるため、光取り出し効率を高くすることができる。
そのため、本実施形態によって、素子の長寿命化を図ると共に、光取り出し効率を高くすることで、発光性能のより優れたマルチフォトン型の有機EL素子を実現することができる。
したがって、本発明の有機EL素子は、照明装置、バックライトおよびスキャナなどの光源としての面状光源、フラットパネルディスプレイ等の表示装置として好適に使用することができる。
本実施形態に係る有機EL素子10は、上述のような発光ユニットの作製方法と、フィルム19の製造方法を用いて次のような工程による製造方法により製造される。
すなわち本実施形態の有機EL素子の製造方法は、陽極および陰極のうちのいずれか一方の電極であり、光透過性を有する第1電極と、前記第1電極に対向して配置され、前記陽極および陰極のうちの他方の電極である第2電極と、前記第1電極および第2電極間に設けられ、かつそれぞれが有機化合物を含む発光層を有する複数の発光ユニットと、前記発光ユニットに挟持されて配置される電荷発生層と、前記発光ユニットを基準にして前記第1電極側の最外層に配置されたフィルムと、を備える有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、前記第1電極を形成する工程と、前記第2電極を形成する工程と、前記第1及び第2電極間に複数の発光ユニットを形成する工程と、発光ユニット間に電荷発生層を形成する工程と、発光ユニット側とは反対側の表面が凹凸状であり、ヘイズ値が70%以上、かつ全光線透過率が80%以上の前記フィルムを前記最外層に形成するフィルム形成工程とを含み、前記フィルム形成工程では、前記フィルムが形成される被形成面上に、前記フィルムとなる材料を含む溶液を、前記フィルムの厚みが100μm〜200μmの範囲となるように塗布し、塗布された前記溶液を湿度が80%〜90%の雰囲気に保持した後に乾燥し、フィルム化する。
続いてこれら第1の発光ユニット11及び第2の発光ユニット12、電荷発生層13およびフィルム19以外の有機EL素子の構成要素について、以下に詳しく説明する。
<D>支持基板
支持基板15としては、有機EL素子を形成する工程において変化しないもの、発光機能部17を形成する際に変化しないものであればよく、リジッド基板でも、フレキシブル基板でもよく、例えば、ガラス板、プラスチック板、高分子フィルムおよびシリコン板、並びにこれらを積層した積層板などが好適に用いられる。さらにプラスチック、高分子フィルムなどに低透水化処理を施したものを用いることもできる。支持基板15としては、市販のものが使用可能である。また支持基板15を公知の方法により製造することもできる。
図1に示すような第1の発光ユニット11及び第2の発光ユニット12からの光を支持基板15側から取出すいわゆるボトムエミッション型の有機EL素子では、支持基板15は、可視光領域の光の透過率が高いものが好適に用いられる。
なお後述の第2の実施形態にて示すような第1の発光ユニット11及び第2の発光ユニット12からの光を陰極16側から取出すトップエミッション型の有機EL素子では、支持基板は、透明のものでも、不透明のものでもよい。
<E>第1電極
第1電極は、陽極および陰極のうちのいずれか一方の電極であり、光透過性を有する電極である。本実施形態における第1電極は、第1の発光ユニット11及び第2の発光ユニット12の第1の有機発光層11a及び第2の有機発光層12からの光を透過させる光透過性を有する透明電極であって、本実施形態の有機EL素子10の陽極14となるものである。陽極14には、電気伝導度の高い金属酸化物、金属硫化物や金属の薄膜を用いることができ、透過率が高いものが好適に利用でき、第1の有機発光層11a、第2の有機発光層12の構成材料に応じて適宜選択して用いることができる。また後述のように、光透過性を有する第1電極を陰極として用いる構成の有機EL素子も可能である。
陽極14の材料としては、例えば、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ITO(Indium Tin Oxide:インジウムスズ酸化物)、IZO(Indium Zinc Oxide:インジウム亜鉛酸化物)、金、白金、銀、銅等の薄膜が用いられる。これらの中でも、ITO、IZO、酸化スズが好ましい。
また陽極14の構成材料として、ポリアニリンもしくはその誘導体、ポリチオフェンもしくはその誘導体等の有機物の透明導電膜を用いてもよい。
また第1の発光ユニット11への電荷注入を容易にするという観点から、陽極14の第1の発光ユニット11側の表面上に、フタロシアニン誘導体、ポリチオフェン誘導体等の導電性高分子、Mo酸化物、アモルファスカーボン、フッ化カーボン、ポリアミン化合物等の1nm以上、200nm以下の層、或いは金属酸化物や金属フッ化物、有機絶縁材料等からなる平均膜厚10nm以下の層を設けてもよい。
このような陽極14の膜厚は、光の透過性と電気伝導度とを考慮して適宜選択することができ、例えば5nm以上、10μm以下であり、好ましくは10nm以上、1μm以下であり、より好ましくは20nm以上、500nm以下である。
上述の陽極14を形成させる方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法等が挙げられる。
また陽極14を電気的に分離させた複数のセルに仕切る方法としては、例えば、第1電極を形成した後に、フォトレジストを用いたエッチング法によりパターン形成する方法が挙げられる。
<F>第2電極
第2電極は、第1電極に対向して配置され、前記陽極および陰極のうちの他方の電極である。本実施形態における第2電極は、陽極14に対向して配置される電極であって、本実施形態の有機EL素子10の陰極16となるものである。このような陰極の材料としては、仕事関数が小さく、有機発光層への電子注入が容易な材料が好ましい。また陰極の材料としては電気伝導度が高く、可視光反射率の高い材料が好ましい。かかる陰極材料としては、具体的には、金属、金属酸化物、合金、グラファイトまたはグラファイト層間化合物、酸化亜鉛(ZnO)等の無機半導体などを挙げることができる。また第2電極を陽極として用いる構成の有機EL素子も可能である。
上記金属としては、アルカリ金属やアルカリ土類金属、遷移金属や周期表の13族金属等を用いることができる。これら金属の具体例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、錫、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウム等を挙げることができる。
また合金としては、上記金属の少なくとも一種を含む合金を挙げることができ、具体的には、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、インジウム−銀合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金、カルシウム−アルミニウム合金等を挙げることができる。
陰極16は、例えば陰極側から光を取出す場合などのように、必要に応じて光透過性を有する電極とされる。このような光透過性を有する陰極の材料としては、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ITO、IZOなどの導電性金属酸化物、ポリアニリンもしくはその誘導体、ポリチオフェンもしくはその誘導体などの導電性有機物を挙げることができる。
なお陰極16を2層以上の積層構造としてもよい。また電子注入層が陰極として用いられる場合もある。
陰極16の膜厚は、電気伝導度や耐久性を考慮して、適宜選択することができるが、例えば10nm以上、10μm以下であり、好ましくは20nm以上、1μm以下であり、さらに好ましくは50nm以上、500nm以下である。
陰極16を形成させる方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、また金属薄膜を熱圧着するラミネート法等が挙げられる。
<G>封止基板
上述のように陰極16が形成された後、基本構造として陽極14−第1の発光ユニット11−電荷発生層13−第2の発光ユニット12−陰極16を有してなる発光機能部17を保護するために、該発光機能部17を封止する封止基板(上部封止膜)18が形成される。この封止基板18は、通常、少なくとも一つの無機層と少なくとも一つの有機層を有する。積層数は、必要に応じて決定され、基本的には、無機層と有機層は交互に積層される。
封止基板18の形状は、支持基板15と貼り合わせて、発光機能部17を封止できるものであればよく、図1に示すように箱状であってもよいし、平板状であってもよい(不図示)。図1に示す例では、封止基板18と発光機能部17との間に空隙が生じていないが、封止基板18と発光機能部17との間に空隙が生じている場合には、この空隙に樹脂などの充填剤を設けてもよい。この封止基板18は、リジッド基板でも、フレキシブル基板でもよい。また封止基板18は、支持基板15について例示した例と同様のものを採用してもよい。
なおプラスチック基板はガラス基板に比べて、ガスおよび液体の透過性が高く、また第1の発光ユニット11及び第2の発光ユニット12を構成する第1の有機発光層11a及び第2の有機発光層12などの発光物質は酸化されやすく、水と接触することにより劣化しやすいため、支持基板15としてプラスチック基板が用いられる場合には、支持基板15および封止基板18により発光機能部17が被包されていても経時変化し易いので、ガスバリア性を高めるための処理をプラスチック基板に予め施すことが好ましい。例えばプラスチック基板上にガスおよび液体などに対するバリア性の高い下部封止膜を積層し、その後、この下部封止膜の上に発光機能部を積層することが好ましい。この下部封止膜は、通常、封止基板(上部封止膜)18と同様の構成、同様の材料にて形成される。
<H>任意の層
図1に示す有機EL素子10では、陽極14と陰極16との間に、第1の発光ユニット11、第2の発光ユニット12及び電荷発生層13が設けられた形態を示している。しかし、陽極14と電荷発生層13との間、電荷発生層13と陰極16との間に設けられる層の構成としては、図1に示す構成例に限られるわけではない。陽極14と陰極16との間には必須の構成として第1の有機発光層11a、第2の有機発光層12及び電荷発生層13が設けられればよく、第1の発光ユニット11の正孔注入層11bのように、第1の発光ユニット11及び第2の発光ユニット12には第1の有機発光層11a及び第2の有機発光層12の他にさらに他の機能層を1または2以上設けてもよい。第1の発光ユニット11及び第2の発光ユニット12の一部として付属し得る層としては、上述のように例えば正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロック層、電子注入層、電子輸送層、正孔ブロック層等が挙げられる。
陽極14と第1の有機発光層11aとの間、電荷発生層13と第2の有機発光層12との間に設け得る層としては、正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロック層等が挙げられる。陽極14と第1の有機発光層11aとの間、電荷発生層13と第2の有機発光層12との間に、正孔注入層と正孔輸送層との両方が設けられる場合、電荷発生層または陽極に接する層を正孔注入層といい、この正孔注入層を除く層を正孔輸送層という。
第1の有機発光層11aと電荷発生層13との間、第2の有機発光層12と陰極16との間に設け得る層としては、電子注入層、電子輸送層、正孔ブロック層等が挙げられる。第1の有機発光層11aと電荷発生層13との間、第2の有機発光層12と陰極16との間に、電子注入層と電子輸送層との両方が設けられる場合、電荷発生層または陰極に接する層を電子注入層といい、この電子注入層を除く層を電子輸送層という。
なお正孔注入層および電子注入層を総称して電荷注入層ということがある。正孔輸送層および電子輸送層を総称して電荷輸送層ということがある。また電子ブロック層および正孔ブロック層を総称して電荷ブロック層ということがある。
電荷輸送層は、それぞれ独立に2層以上用いてもよい。
以下、正孔注入層11bを含め、任意の機能層(不図示)について説明する。
発光ユニットを構成する任意の層として、上述の通り、正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロック層、電子注入層、電子輸送層、正孔ブロック層を設けても良い。
<H−1>正孔注入層
正孔注入層は、陽極または電荷発生層からの正孔注入効率を改善する機能を有する層である。正孔注入層は、陽極14と正孔輸送層との間、陽極14と第1の有機発光層11aとの間、電荷発生層13と第2の有機発光層12との間、第2の有機発光層12と正孔輸送層との間に設けることができる。正孔注入層を構成する材料としては、該正孔注入層の一方の表面、および他方の表面に隣接して設けられる2層の各イオン化ポテンシャルの間となるイオン化ポテンシャルを有する材料が好ましい。具体的には、陽極14のイオン化ポテンシャルと第1の有機発光層11aの陽極14側の表面部のイオン化ポテンシャルとの間となるイオン化ポテンシャルを有する材料、電荷発生層13のイオン化ポテンシャルと第2の有機発光層12の電荷発生層13側の表面部のイオン化ポテンシャルとの間となるイオン化ポテンシャルを有する材料などである。例えば、フタロシアニン誘導体、ポリチオレン誘導体等の導電性高分子、モリブデン酸化物、アモルファスカーボン、フッ化カーボン、ポリアミン化合物などの厚さ1〜200nmの層、又は金属酸化物や金属フッ化物、有機絶縁材料等の厚さ2nm以下の層が望ましい。
導電性高分子材料としては、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリチエニレンビニレン及びその誘導体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、芳香族アミン構造を主鎖又は側鎖に含む重合体などが挙げられる。
該導電性高分子の電気伝導度は、10-7S/cm以上103S/cm以下であることが好ましく、有機EL素子が表示装置の画素として機能する場合には、画素間のリーク電流を小さくするためには、10-5S/cm以上102S/cm以下がより好ましく、10-5S/cm以上101S/cm以下がさらに好ましい。通常は該導電性高分子の電気伝導度を10-5S/cm以上103S/cm以下として正孔注入性を上げるために、該導電性高分子に適量のアニオンをドープする。アニオンの例としては、ポリスチレンスルホン酸イオン、アルキルベンゼンスルホン酸イオン、樟脳スルホン酸イオンなどが好適に用いられる。
正孔注入層の成膜方法としては、上述の第1の有機発光層11a及び第2の有機発光層12を成膜する方法と同様の方法によって形成することができる。具体的には、有機発光層を主に構成する発光材料を溶解する溶媒と同様の溶媒に、正孔注入層となる材料(正孔注入材料)を溶解した塗布液を、慣用の塗布法によって塗布することで成膜することができる。
また正孔注入層の膜厚としては、用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように適宜設定され、少なくともピンホールが発生しないような厚さが必要であり、あまり厚いと、素子の駆動電圧が高くなるので好ましくない。従って正孔注入層の膜厚は、例えば1nm以上、1μm以下であり、好ましくは2nm以上、500nm以下であり、さらに好ましくは5nm以上、200nm以下である。
<H−2>正孔輸送層
正孔輸送層は、陽極14、電荷発生層13、正孔注入層または陽極14により近い正孔輸送層からの正孔注入を改善する機能を有する層である。
正孔輸送層を構成する材料としては、特に制限はないが、例えば、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(3−メチルフェニル)4,4’−ジアミノビフェニル(TPD)、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(NPB)等の芳香族アミン誘導体、ポリビニルカルバゾールもしくはその誘導体、ポリシランもしくはその誘導体、側鎖もしくは主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体、ポリアニリンもしくはその誘導体、ポリチオフェンもしくはその誘導体、ポリアリールアミンもしくはその誘導体、ポリピロールもしくはその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)もしくはその誘導体、またはポリ(2,5−チエニレンビニレン)もしくはその誘導体などが例示される。
これらの中でも、正孔輸送層に用いる正孔輸送材料としては、ポリビニルカルバゾールもしくはその誘導体、ポリシランもしくはその誘導体、側鎖もしくは主鎖に芳香族アミン化合物基を有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリンもしくはその誘導体、ポリチオフェンもしくはその誘導体、ポリアリールアミンもしくはその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)もしくはその誘導体、またはポリ(2,5−チエニレンビニレン)もしくはその誘導体等の高分子正孔輸送材料が好ましく、さらに好ましくはポリビニルカルバゾールもしくはその誘導体、ポリシランもしくはその誘導体、側鎖もしくは主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体である。低分子の正孔輸送材料の場合には、高分子バインダーに分散させて用いることが好ましい。
正孔輸送層の成膜方法としては、特に制限はないが、低分子の正孔輸送材料では、高分子バインダーと正孔輸送材料とを含む混合液からの成膜を挙げることができ、高分子の正孔輸送材料では、正孔輸送材料を含む溶液からの成膜を挙げることができる。
溶液からの成膜に用いられる溶媒としては、正孔輸送材料を溶解させるものであれば特に制限はなく、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタンなどの塩素系溶媒、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテートなどのエステル系溶媒などを挙げることができる。
溶液からの成膜方法としては、前述した正孔注入層の成膜法と同様の塗布法を挙げることができる。
混合する高分子バインダーとしては、電荷輸送を極度に阻害しないものが好ましく、また可視光に対する吸収の弱いものが好適に用いられ、例えばポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリシロキサンなどを挙げることができる。
正孔輸送層の膜厚としては、用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択すればよいが、少なくともピンホールが発生しないような厚さが必要であり、あまり厚いと、素子の駆動電圧が高くなり好ましくない。従って、該正孔輸送層の膜厚としては、例えば1nmから1μmであり、好ましくは2nm以上、500nm以下であり、さらに好ましくは5nm以上、200nm以下である。
<H−3>電子ブロック層
電子ブロック層は、電子の輸送を堰き止める機能を有する層である。なお正孔注入層および/または正孔輸送層が電子の輸送を堰き止める機能を有する場合には、これらの層が電子ブロック層を兼ねることがある。
電子ブロック層が電子の輸送を堰き止める機能を有することは、例えば、電子電流のみを流す素子を作製し、その電流値の減少で堰き止める効果を確認することが可能である。
電子ブロック層としては、例えば上記正孔注入層または正孔輸送層の材料として例示した各種材料を用い得る。
<H−4>電子注入層
電子注入層は、陰極16または電荷発生層13からの電子注入効率を改善する機能を有する層である。電子注入層は、第1の有機発光層11aと電荷発生層13との間、電子輸送層と電荷発生層13との間、第2の有機発光層12と陰極16との間、または電子輸送層と陰極16との間に設けられる。電子注入層を形成する材料としては、該電子注入層の一方の表面、および他方の表面に隣接して設けられる2層の各電子親和力の間となる電子親和力を有する材料が好ましい。具体的には、電荷発生層13の電子親和力と第1の有機発光層11aの電荷発生層13側の表面部の電子親和力との間となる電子親和力を有する材料、陰極16の電子親和力と第2の有機発光層12の陰極16側の表面部の電子親和力との間となる電子親和力を有する材料などである。電子注入層としては、有機発光層の種類に応じて、例えば、金属フッ化物や金属酸化物、又は有機絶縁材料等が挙げられ、中でもアルカリ金属又はアルカリ土類金属等の金属フッ化物や金属酸化物が好ましい。また導電性高分子材料も用いられる。
該導電性高分子の材料としては、正孔注入材料で説明した電気伝導度の高分子材料を用いればよいが、電子注入性を向上させるためには、適量のカチオンをドープする。カチオンの例としては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオンなどが用いられる。
アルカリ金属またはその酸化物、ハロゲン化物、炭酸化物の例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、酸化リチウム、フッ化リチウム、酸化ナトリウム、フッ化ナトリウム、酸化カリウム、フッ化カリウム、酸化ルビジウム、フッ化ルビジウム、酸化セシウム、フッ化セシウム、炭酸リチウム等が挙げられる。
前記アルカリ土類金属またはその酸化物、ハロゲン化物、炭酸化物の例としては、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム、酸化カルシウム、フッ化カルシウム、フッ化カルシウム、酸化バリウム、フッ化バリウム、酸化ストロンチウム、フッ化ストロンチウム、炭酸マグネシウムなどが挙げられる。
さらに金属、金属酸化物、金属塩をドーピングした有機金属化合物および有機金属錯体化合物、またはこれらの混合物も、電子注入層の材料として用いることができる。
この電子注入層は、2層以上を積層した積層構造を有していても良い。具体的には、Li/Caなどが挙げられる。この電子注入層は、蒸着法、スパッタリング法、印刷法などにより形成される。
この電子注入層の膜厚としては、1nm以上、1μm以下程度が好ましい。
<H−5>電子輸送層
電子輸送層は、陰極、電荷発生層、電子注入層または陰極により近い電子輸送層からの電子注入を改善する機能を有する層であり、電子輸送層とは電子を輸送する機能を有する層である。
電子輸送層を形成する材料としては、公知のものが使用でき、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタンもしくはその誘導体、ベンゾキノンもしくはその誘導体、ナフトキノンもしくはその誘導体、アントラキノンもしくはその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタンもしくはその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレンもしくはその誘導体、ジフェノキノン誘導体、または8−ヒドロキシキノリンもしくはその誘導体の金属錯体、ポリキノリンもしくはその誘導体、ポリキノキサリンもしくはその誘導体、ポリフルオレンもしくはその誘導体等が例示される。
これらのうち、オキサジアゾール誘導体、ベンゾキノンもしくはその誘導体、アントラキノンもしくはその誘導体、または8−ヒドロキシキノリンもしくはその誘導体の金属錯体、ポリキノリンもしくはその誘導体、ポリキノキサリンもしくはその誘導体、ポリフルオレンもしくはその誘導体が好ましく、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、ベンゾキノン、アントラキノン、トリス(8−キノリノール)アルミニウム、ポリキノリンがさらに好ましい。
電子輸送層の成膜法としては、特に制限はないが、低分子電子輸送材料では、粉末からの真空蒸着法、または溶液若しくは溶融状態からの成膜による方法などが例示される。また高分子電子輸送材料では、溶液または溶融状態からの成膜による方法などが例示される。
また溶液または溶融状態からの成膜時には、高分子バインダーを併用してもよい。
溶液から電子輸送層を成膜する方法としては、前述の溶液から正孔注入層を成膜する方法と同様の成膜法が挙げられる。
電子輸送層の膜厚としては、用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択すればよいが、少なくともピンホールが発しないような厚さが必要であり、あまり厚いと、素子の駆動電圧が高くなり好ましくない。従って、該電子輸送層の膜厚としては、例えば1nm以上、1μm以下であり、好ましくは2nm以上、500nm以下であり、さらに好ましくは5nm以上、200nm以下である。
<H−6>正孔ブロック層
正孔ブロック層は、正孔の輸送を堰き止める機能を有する層である。なお電子注入層および/または電子輸送層が正孔の輸送を堰き止める機能を有する場合には、これらの層が正孔ブロック層を兼ねることがある。
正孔ブロック層が正孔の輸送を堰き止める機能を有することは、例えばホール電流のみを流す素子を作製し、その電流値の減少で堰き止める効果を確認することが可能である。
<I>発光ユニットの層構成の組合せ
上記のように、発光機能部に含まれる発光ユニットは、その実施形態として、様々な層構成を採用し得る。発光ユニットのとり得る層構成を具体的な例を以下に示す。
a)有機発光層
b)正孔注入層/有機発光層
c)有機発光層/電子注入層
d)正孔注入層/有機発光層/電子注入層
e)正孔注入層/正孔輸送層/有機発光層
f)有機発光層/電子輸送層/電子注入層
g)正孔注入層/有機発光層/電子輸送層/電子注入層
h)正孔注入層/正孔輸送層/有機発光層/電子注入層
i)正孔注入層/正孔輸送層/有機発光層/電子輸送層/電子注入層
(ここで、記号「/」は、記号「/」を挟む各層が隣接して積層されていることを示す。以下同じ。)
なお以上のa)〜i)の構成では、左側が陽極寄りの層であり、右側が陰極寄りの層である。
有機EL素子が有する複数の発光ユニットは、互いに同じ層構成であってもよく、また互いに異なる層構成であってもよい。図1に示す本実施形態の第1の発光ユニット11は、b)の構成、すなわち正孔注入層11bと第1の有機発光層11aが積層された構成を有し、第2の発光ユニット12は、前記a)の構成、すなわち第2の有機発光層のみから構成されている。
本発明にかかる有機EL素子は、複数の発光ユニットが電荷発生層を介して複数段積層された構成のマルチフォトン型の有機EL素子である。図1に示す本実施形態の有機EL素子10では、上述の通り、2組の発光ユニットを用い、第1の発光ユニット11及び第2の発光ユニット12が電荷発生層13を介して積層されている。さらに、その変形例として、3組以上の発光ユニットを電荷発生層を介して積層させた構成のマルチフォトン型の有機EL素子も採用し得る。
有機EL素子においては、通常基板側に陽極が配置されるが、基板側に陰極を配置するようにしてもよい。
また、他の任意の機能層として、例えば電極との密着性向上や電極からの電荷注入性の改善のために、電極に隣接して膜厚2nm以下の絶縁層を設けてもよい。さらに他の任意の機能層として界面の密着性向上や混合の防止などのために、前述した各層間に薄いバッファー層を挿入してもよい。
図1に示す実施形態では、支持基板15上に陽極14を設ける形態を示している。これらの場合、上記a)からi)の各形態では、左側(陽極側)に示された層から順に支持基板15上に配置されることになる。
他方、本発明の有機EL素子としては、支持基板上に陰極を配置する形態も採用し得る。この場合、上記a)からi)の各形態では、右側(陰極側)に示された層から順に支持基板上に配置されることになる。
[第2の実施形態]
次に、本発明に係る有機EL素子の第2の実施形態を、図2を参照して説明する。図2は、本発明の有機EL素子の第2の実施形態を示す正面図である。図2中、第1の実施形態と同様である部材については、図1と同一符号を付して重複した説明は省略する。以下、第1の実施形態と異なる点を主として説明する。
第1の実施形態の有機EL素子10は、第1の発光ユニット11及び第2の発光ユニット12からの光を光透過性を有する陽極14を透過させて光透過性を有する支持基板15から外部へ出射するボトムエミッション型の素子であったのに対し、第2の実施形態の有機EL素子20は、第1の発光ユニット11及び第2の発光ユニット12からの光を光透過性を有する陰極(第1電極)21を透過させて光透過性を有する封止基板18から外部へ出射するトップエミッション型の素子である。
本実施形態では、第1の発光ユニット11及び第2の発光ユニット12からの光を透過させる光透過性を有する第1電極が陰極21である。陰極21、第2の発光ユニット12、電荷発生層13、第1の発光ユニット11および陽極(第2電極)22を含む発光機能部23が、封止基板18の第1主面18a寄りからこの順で支持基板15上に積層されている。フィルム19は光の取り出し方向の最外層に設けられ、本実施形態では封止基板18に設けられる。すなわち陰極21とフィルム19との間に封止基板18が介在し、第2主面18bにフィルム19が接して設けられている。
さらに、本実施形態における陰極21には、例えば透明陽極である第1電極として例示した金属薄膜を透明陰極として用いることができる。陰極21に用いられる金属薄膜は、光が透過可能な程度に薄膜に形成されるので、シート抵抗が高くなる。したがって、陰極21は、金属薄膜状にITO薄膜などの透明電極を積層させた積層体によって構成されることが好ましい。また陽極22と支持基板15との間に、例えば銀などの反射率の高い反射膜を設けることが好ましく、このような反射膜を設けることによって、支持基板15側に向かう光を陰極21側に反射することができ、光の取出し効率を向上させることができる。
本実施形態に係る有機EL素子20においても、第1の実施形態に係る有機EL素子と同様の作用、効果を得ることができる。マルチフォトン型である有機EL素子20全体としてはシングルフォトン型の有機EL素子と同じ光量となるように駆動させたとしても、有機EL素子20は、シングルフォトン型の有機EL素子より第1及び第2の有機発光層11a、12に加わる負荷を小さくした状態で発光させることができるため、素子の長寿命化を図ることができる。
また、第1及び第2の発光ユニット11、12を基準に陰極21側の最外層にフィルム19を設け、第1及び第2の発光ユニット11、12側とは反対側の表面を凹凸状とし、ヘイズ値が70%以上、かつ全光線透過率が80%以上であるため、光取り出し効率を高くすることができる。
よって、本実施形態に係る有機EL素子によっても、素子の長寿命化を図ると共に、光取り出し効率を高くすることができるため、発光性能のより優れたマルチフォトン型の有機EL素子を実現することができる。
2.本発明の有機EL素子を搭載した装置
以上説明した本発明の各実施形態の有機EL素子は、曲面状や平面状の照明装置、例えばスキャナの光源として用いられる面状光源、表示装置に好適に用いることができる。
有機EL素子を備える表示装置としては、アクティブマトリックス表示装置、パッシブマトリックス表示装置、セグメント表示装置、ドットマトリックス表示装置、および液晶表示装置などを挙げることができる。なお有機EL素子は、アクティブマトリックス表示装置、パッシブマトリックス表示装置、ドットマトリックス表示装置において、各画素を構成する発光素子として用いられる。また有機EL素子は、セグメント表示装置において、各セグメントを構成する発光素子として用いられる。また有機EL素子は、ドットマトリックス表示装置、および液晶表示装置において、バックライトとして用いられる。
また本発明の実施形態の有機EL素子は、前述したように、フィルム19の表面には、凹レンズと似た機能を発揮する窪みが設けられるので、放射角の広い照明を実現することができる。
以下、作製例および比較例に基づいて本発明についてより詳細に説明するが、本発明は下記作製例等に限定されるものではない。
<マルチフォトン型の有機EL素子の発光効率の検証>
作製例1−1、1−2及び比較例1−1〜1−4では、2つの発光ユニットを1つの電荷発生層で仕切った構造の有機EL素子を作製し、その効果を確認した。
<作製例1−1> 電荷発生層で仕切った構造の有機EL素子の作製
(作製例1−1の層構成:ITO/PEDOT/MEH−PPV/Li/V25/MEH−PPV/Al−Li合金)
作製例1−1における有機EL素子の作製例を、図1を参照しながら説明する。図1に示す有機EL素子10において支持基板に相当するガラス基板15に、陽極14として利用するITO膜を、スパッタ法により150nmの厚みで形成した基板を用意し、該基板にBYTRON製のPEDOT(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン))/PSS(ポリスチレンスルホン酸)溶液をスピンコート法により40nmの厚みで製膜し、窒素雰囲気下において200℃で熱処理して正孔注入層11bとした。ついで、これに発光材料としてAldrich社製の重量平均分子量が約20万のMEH−PPV(ポリ(2−メトキシ−5−(2’−エチル−ヘキシロキシ)−パラ−フェニレンビニレン)の1重量%トルエン溶液を作製し、これをPEDOT/PSSが製膜された基板上にスピンコートして90nmの膜厚で第1の有機発光層11aを製膜した。正孔注入層11bと第1の有機発光層11aを併せて第1の発光ユニット11とする。
この上に真空蒸着法により、電荷発生層13としてLi(仕事関数:2.93eV)、V25(酸化バナジウム)(仕事関数:4eV以上)を順次それぞれ、2nm、20nmの厚みで形成し、第1の層13−1、第2の層13−2とした。ここでLiの蒸着はAl−Li合金(Li含有率0.05%)を用い、Alが飛びはじめる前の数十秒間、先に飛ぶLiのみを蒸着することで行い、その直後にV25の蒸着を行った。
さらに、V25膜上に、MEH−PPVの1重量%トルエン溶液をスピンコートして、90nmの膜厚で第2の有機発光層(第2の発光ユニット)12を製膜した。さらにこの上に真空蒸着法により陰極16としてAl−Li合金を100nm形成した。以上により2つの発光ユニットを1つの電荷発生層で仕切った構造の有機EL素子を作製した。
得られた素子に直流電圧を印加したところ、発光開始電圧12V、最大輝度80cd/m2であった。
電流効率は0.072cd/Aであり、下記の比較例1−1の素子(0.037cd/A)に比べて1.95倍に増大した。
<比較例1−1> 有機EL素子の作製
(比較例1−1の層構成:ITO/PEDOT/MEH−PPV/Al−Li合金)
比較のために、作製例1−1において電荷発生層13と第2の有機発光層(第2の発光ユニット)12を設けないこと以外は作製例1−1と同様にして、図3に示すように発光ユニット11が1つだけの有機EL素子30を作製した。なお、図3中、図1におけるものと同一部材については同一符号を付している。
比較例1−1における有機EL素子30に直流電圧を印加したところ、発光開始電圧5.5V、最大輝度52cd/m2であった。電流効率は0.037cd/Aであった。
<比較例1−2> 有機EL素子の作製
(比較例1−2の層構成:ITO/PEDOT/MEH−PPV/V25/MEH−PPV/Al−Li合金)
電荷発生層として、膜厚30nmのV25の1層のみからなるものを用いたことを除いて、比較例1−1と同様にして有機EL素子を作製した。得られた素子は40V印加しても発光しなかった。
<作製例1−2> 異なる色の発光ユニットの積層からなる混色素子
(作製例1−2の層構成:ITO/PEDOT/F8−TPA−BT/Li/V25/PEDOT/PSS/F8−TPA−PDA/Al−Li合金)
作製例1−1における有機発光層であるMEH−PPVの代わりに、緑色の光を発光する下記構造式(1)で示す高分子発光材料31(略称F8(poly(9,9-dioctylfluorene))−TPA(トリフェニルアミン)−BT(ポリピスアミドトリアゾール))からなる高分子発光層を含む第1の発光ユニット11と、電荷発生層13とを形成した後、PEDOT/PSS層を形成し、引き続いて青色の光を発光する下記構造式(2)で示す高分子発光材料32(略称F8−TPA−PDA(p-フェニェレンジアミン))からなる高分子発光層を含む第2の発光ユニット12を製膜した後、作製例1−1と同様にして陰極を形成して、二つの発光ユニットからの発光波長が異なる発光素子を作製した。
高分子発光材料31
Figure 2010146893
高分子発光材料32
Figure 2010146893
<比較例1−3、1−4> 作製例1−2の比較、緑と青の有機発光層のみからなる単一素子
(比較例1−3の層構成:ITO/PEDOT/F8−TPA−BT/Al−Li合金)
(比較例1−4の層構成:ITO/PEDOT/F8−TPA−PDA/Al−Li合金)
作製例1−2との比較のため、比較例1−2と同様にITO/PEDOT/有機発光層/Al−Li合金の構造の発光ユニット1つからなる素子を作製した。ここで比較例1−3では、有機発光層に緑色発光層材料F8−TPA−BTを用い、比較例1−4では、有機発光層に青色発光材料F8−TPA−PDAを用いた。
比較例1−3、1−4の駆動電圧はそれぞれ3.6V、5.4Vであるのに対し、作製例1−2では8.0Vとなり2つのユニットを積層した素子の予想に近い電圧を示した。また作製例1−2の素子では2つの層からの混色により、スペクトルが広くなり白がかった緑色の発光が得られた。
次に、以下の作製例2−1、2−2および比較例2−1〜2−3では、透明支持基板の外表面にフィルムを設けることにより光取り出し効率を制御できることを確認した。
<作製例2−1>フィルムを有する有機EL素子の作製
以下のようにしてフィルムを有する有機EL素子を作製した。光透過性を有する透明支持基板として、30mm×30mmのガラス基板を用いた。次に、スパッタリング法によって厚みが150nmのITOから成る導電体膜を支持基板の表面上に蒸着した。次に、この導電体膜の表面上にフォトレジストを塗布し、フォトマスクを介して所定の領域を露光し、さらに洗浄することによって、所定のパターン形状の保護膜を形成した。さらにエッチングを施した後、水、NMP(n−methylpyrrolidone)でリンスを施し、所定のパターン形状のITO膜から成る陽極を形成した。次に、陽極上のレジスト残渣を除去するために、酸素プラズマ処理を30Wのエネルギーで2分間行い、UV/O3洗浄を20分間行った。
次に、ポリ(3,4)エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸(スタルクヴィテック社製、商品名:BaytronP CH8000)の懸濁液に、2段階の濾過を行い、正孔注入層用の溶液を得た。第1段階目の濾過では、0.45μm径のフィルターを用い、第2段階目の濾過では、0.2μm径のフィルターを用いた。濾過して得られた溶液を用いて、スピンコート法によって薄膜を製膜し、大気雰囲気下において、ホットプレート上で200℃、15分間熱処理することによって、厚みが70nmの正孔注入層を形成した。
次に、Lumation WP1330(SUMATION社製)とキシレンとを混合してキシレン溶液を作製した。キシレン溶液におけるLumation WP1330の濃度を1.2質量%とした。作製した溶液を用いて、正孔注入層の表面上にスピンコート法によって薄膜を成膜した後、窒素雰囲気下においてホットプレート上で130℃、60分間熱処理し、厚みが80nmの有機発光層を形成した。
次に、有機発光層が形成された支持基板を真空蒸着機に導入し、Ba、Alをそれぞれ5nm、80nmの厚みで順次蒸着し、陰極を形成した。なお真空度が1×10-4Pa以下に到達した後に、金属の蒸着を開始した。
次に、フィルムを作製するために、まずフィルム用の溶液を作製した。ポリカーボネート6.32gをジクロロメタン20.7gに溶解し、23.4wt%の溶液を作製した。次に、この溶液にフッ素系界面活性剤であるノベック(住友3M社製)を混合した。混合した溶液におけるノベックの濃度を0.8wt%とし、フィルム用の溶液を得た。湿度85%の恒温恒湿槽中において、成膜後のフィルムの膜厚が150μm程度になるように、得られたフィルム用の溶液をガラスの基台上にキャストした。湿度85%の雰囲気中で5分間放置した後、窒素フローによりフィルムを乾燥し、表面に凹凸形状を有する20mm×20mmのフィルム(フィルムA)を得た。
次に、支持基板の上記有機発光層が形成されている側の表面とは反対側の表面に粘着剤としてグリセリンを塗布し、フィルムAを貼り合せて、有機EL素子を作製した。支持基板の屈折率は、1.50であり、粘着剤の屈折率は、1.45であり、フィルムAの屈折率は、1.58である。またフィルムAの平均膜厚は230μmである。
<作製例2−2>フィルムを有する有機EL素子の作製
作製例2−1の有機EL素子とはフィルムのみが異なる有機EL素子を作製した。本作製例2−2では、高いヘイズ値(82%)を示す市販品のフィルム(フィルムB)を用いた。フィルムBは、粘着層を有しているので、粘着剤などを用いずにそのまま支持基板に貼付けて有機EL素子を作製した。
<比較例2−1>フィルムを有する有機EL素子の作製
作製例2−1の有機EL素子とは、フィルムのみが異なる有機EL素子を作製した。
フィルム用の溶液には、作製例2−1の溶液と同じものを用いた。湿度50%の恒温恒湿槽中において、成膜後のフィルムの膜厚が220μm程度となるように、フィルム用の溶液をガラスの基台上にキャストした。湿度50%の雰囲気中で5分間放置した後、窒素フローによりフィルムを乾燥し、20mm×20mmのフィルム(フィルムC)を得た。このフィルムCを、作製例2−1と同じ粘着剤を用いて作製例2−1と同様に支持基板に貼り付けて有機EL素子を作製した。
<比較例2−2>フィルムを有する有機EL素子の作製
作製例2−1の有機EL素子とはフィルムのみが異なる有機EL素子を作製した。
フィルム用の溶液には、作製例2−1の溶液と同じものを用いた。湿度85%の恒温恒湿槽中において、成膜後のフィルムの膜厚が220μm程度となるように、フィルム用の溶液をガラスの基台上にキャストした。湿度85%の雰囲気中で5分間放置した後、窒素フローによりフィルムを乾燥し、表面に凹凸形状を有する20mm×20mmのフィルム(フィルムD)を得た。得られたフィルムDを、作製例2−1と同じ粘着剤を用いて作製例2−1と同様に支持基板に貼り付けて有機EL素子を作製した。
<比較例2−3>フィルムを有する有機EL素子の作製
作製例2−1の有機EL素子とはフィルムのみが異なる有機EL素子を作製した。
フィルム用の溶液には、作製例2−1の溶液と同じものを用いた。湿度85%の恒温恒湿槽中において、成膜後のフィルムの膜厚が360μm程度となるように、フィルム用の溶液をガラスの基台上にキャストした。湿度85%の雰囲気中で5分間放置した後、窒素フローによりフィルムを乾燥し、表面に凹凸形状を有する20mm×20mmのフィルム(フィルムE)を得た。このフィルムEを、作製例2−1と同じ粘着剤を用いて作製例2−1と同様に支持基板に貼り付けて有機EL素子を作製した。
<フィルムの表面の観察>
作製例2−1、2−2および比較例2−1〜2−3で用いたフィルムの表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。
図6は、作製例2−1において作製したフィルムAの断面を模式的に示す図であり、図7は、作製例2−2で用いたフィルムBの断面を模式的に示す図であり、図8は、比較例2−1において作製したフィルムCの断面を模式的に示す図である。
図6に示すように、作製例2−1において作製したフィルムAでは、フィルムの表面に平均直径が2μmの半球状の凹部が形成されていることを確認した。凹部は、フィルムAの表面の全面に渡って形成されていることを確認した。
また図7に示すように、作製例2−2に用いたフィルムBでは、フィルムの表面が凹凸形状に形成されていることを確認した。凹部は、フィルムBの表面の全面に渡って形成されていることを確認した。
また図8に示すように、比較例2−1において作製したフィルムCでは、表面に凹部が形成されずに、表面が平面であることを確認した。
また比較例2−2において作製したフィルムDでは、フィルムの表面に、平均直径が3μmの半球状の凹面が形成されていることを確認した。凹面の配置の規則性は比較的低かったが、凹面は、フィルムDの表面の全面に渡って形成されていることを確認した。
また比較例2−3において作製したフィルムEでは、フィルムの表面に、平均直径が4μmの半球状の凹面が形成されていることを確認した。凹面の配置の規則性は比較的低かったが、凹面は、フィルムEの表面の全面に渡って形成されていることを確認した。
表1に、作製例2−1および比較例2−1〜2−3においてフィルムを作製したときの湿度と、作製例2−1、2−2および比較例2−1〜2−3で用いたフィルムの特性とを示す。
Figure 2010146893
表1に示すように、湿度と、作製されるフィルムの膜厚とを制御することによって、高いヘイズ値のフィルムを作製できることが確認された。また作製されるフィルムの膜厚が厚くなると、凹面の径が大きくなることを確認した。
<有機EL素子の光取り出し効率>
作製例2−1、2−2および比較例2−1〜2−3で作製したフィルムが貼り合わされた有機EL素子の光強度と、フィルムが貼り合わされていない有機EL素子の光強度とを比較した。フィルムが貼り合わされた有機EL素子の光強度を、フィルムが貼り合わされていない有機EL素子の光強度で割った光取り出し効率の比を表2に示す。光強度は、有機EL素子に0.15mAの電流を流し、そのときの発光強度の角度依存性を測定し、全ての角度での発光強度を積分することによって測定した。
Figure 2010146893
作製例2−1の有機EL素子は、フィルムAを貼り合せる前に比べて、光取り出し効率が1.5倍上昇した。さらに作製例2−1のフィルムAと光学的特性の近いフィルムBが貼り合わされた作製例2−2の有機EL素子も、作製例2−1の有機EL素子と同様に、光取り出し効率が大きく上昇した。しかしながら、比較例2−1の有機EL素子に用いたフィルムCは、光散乱がほぼ無いので、光取り出し効率の向上は見られなかった。また比較例2−2、2−3も、大きな光取り出し効率の向上は見られなかった。
このことから、全光線透過率が高く、ヘイズ値の高いフィルムが光取り出し効率の向上に寄与していることが明らかとなった。特にフィルムのヘイズ値が70%以上になると、光取り出し効率が大きく向上することがわかった。このように所定の光学特性を示すフィルムを設けることによって、光の取り出し効率が向上することを確認した。
本発明の有機EL素子の第1の実施形態を示す正面図である。 本発明の有機EL素子の第2の実施形態を示す正面図である。 従来の有機EL素子の構成を示す正面図である。 フィルムの断面を模式的に示す図である。 フィルムの他の断面を模式的に示す図である。 作製例2−1において作製したフィルムAの断面を模式的に示す図である。 作製例2−2で用いたフィルムBの断面を模式的に示す図である。 比較例2−1において作製したフィルムCの断面を模式的に示す図である。
符号の説明
10、20 有機EL素子
11 第1の発光ユニット
11a 第1の有機発光層
11b 正孔注入層
12 第2の発光ユニット(第2の有機発光層)
13 電荷発生層
13−1 第1の層
13−2 第2の層
14 陽極(第1電極)
15 支持基板
16 陰極(第2電極)
17、23 発光機能部
18 封止基板(上部封止膜)
19 フィルム
19a、19d 凸部
19c 平面状の表面
19b、19e 凹部
21 陰極(第1電極)
22 陽極(第2電極)
A 作製例2−1に用いたフィルム
B 作製例2−2に用いたフィルム
C 比較例2−1に用いたフィルム

Claims (13)

  1. 陽極および陰極のうちのいずれか一方の電極であり、光透過性を有する第1電極と、
    前記第1電極に対向して配置され、前記陽極および陰極のうちの他方の電極である第2電極と、
    前記第1電極および第2電極間に設けられ、かつそれぞれが有機化合物を含む発光層を有する複数の発光ユニットと、
    前記発光ユニットに挟持されて配置される電荷発生層と、
    前記発光ユニットを基準にして前記第1電極側の最外層に配置されたフィルムと、を備え、
    前記電荷発生層は、仕事関数が3.0eV以下の金属およびその化合物から成る群(A)から選ばれるものの1種類以上と、仕事関数が4.0eV以上の化合物(B)の1種類以上とを含み、
    前記フィルムは、前記発光ユニット側とは反対側の表面が凹凸状であり、ヘイズ値が70%以上であり、かつ全光線透過率が80%以上である、
    有機エレクトロルミネッセンス素子。
  2. 前記発光層が、高分子有機化合物を含む、請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  3. 前記電荷発生層が、前記金属又はその化合物から成る群(A)から選ばれるものの1種類以上を含む第1の層と、前記化合物(B)の1種類以上を含む第2の層とを含んでなり、前記第1の層が、前記第2の層よりも陽極寄りに配置される、請求項1または2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  4. 前記電荷発生層は、前記金属又はその化合物から成る群(A)から選ばれるものの1種類以上と、前記化合物(B)の1種類以上とが混合されてなる層である、請求項1または2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  5. 前記仕事関数が3.0eV以下の金属が、アルカリ金属、及びアルカリ土類金属から成る群から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  6. 前記化合物(B)が、遷移金属酸化物である、請求項1から5のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  7. 前記遷移金属酸化物が、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Tc、及びReからなる群から選ばれる1種類以上の金属の酸化物である、請求項6に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  8. 前記仕事関数が3.0eV以下の金属がLiであり、前記仕事関数が4.0eV以上の化合物がV25である、請求項1から7のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  9. 前記フィルムの前記発光ユニット側とは反対側の表面は、複数の凹部が設けられている、請求項1から8のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  10. 陽極および陰極のうちのいずれか一方の電極であり、光透過性を有する第1電極と、前記第1電極に対向して配置され、前記陽極および陰極のうちの他方の電極である第2電極と、前記第1電極および第2電極間に設けられ、かつそれぞれが有機化合物を含む発光層を有する複数の発光ユニットと、前記発光ユニットに挟持されて配置される電荷発生層と、前記発光ユニットを基準にして前記第1電極側の最外層に配置されたフィルムと、を備える有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、
    前記第1電極を形成する工程と、前記第2電極を形成する工程と、前記第1及び第2電極間に複数の発光ユニットを形成する工程と、発光ユニット間に電荷発生層を形成する工程と、発光ユニット側とは反対側の表面が凹凸状であり、ヘイズ値が70%以上、かつ全光線透過率が80%以上の前記フィルムを前記最外層に設けるフィルム設置工程とを含み、
    前記フィルム設置工程では、前記フィルムが形成される被形成面上に、前記フィルムとなる材料を含む溶液を、前記フィルムの厚みが100μm〜200μmの範囲となるように塗布し、塗布された前記溶液を湿度が80%〜90%の雰囲気に保持した後に乾燥し、フィルム化する、有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
  11. 請求項1から9のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を備える照明装置。
  12. 請求項1から9のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を備える面状光源。
  13. 請求項1から9のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を備える表示装置。
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