JP2010145412A - マーカーワクチンとしての、組み換えニューカッスル病ウイルス核タンパク質の突然変異体 - Google Patents

マーカーワクチンとしての、組み換えニューカッスル病ウイルス核タンパク質の突然変異体 Download PDF

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Abstract

【課題】マーカーワクチン株として適したニューカッスル病ウイルス(NDV)突然変異体を用いて、家禽類のNDV感染を判定するための方法を提供する。
【解決手段】447〜455位のNPのアミノ酸領域中に位置する主要エピトープに反応性を示す抗体の有無について、動物の試料を検査するステップを含む、家禽類のNDV感染を判定するための方法であって、(i)抗NDV抗体を含む疑いがある試料を、唯一のエピトープ含有領域として447〜455位のアミノ酸領域を含むNPの断片と共にインキュベートするステップ、(ii)抗体−抗原複合体の形成を可能にするステップ、および(iii)抗体−抗原複合体の存在を検出するステップを含む。
【選択図】なし

Description

ニューカッスル病ウイルス(NDV)は、家禽類の最も破壊的な病気の1つの原因であり、家禽類産業に相当な経済的影響がある。ニワトリ、特に商業的に消費するために飼育されているニワトリのワクチン接種は、世界中で行われている。有効な生または不活化NDワクチンは現在利用可能であるが、ウイルスは商業用の群には依然として脅威であり続けている。
約15kbの長さである、NDVのマイナス鎖RNAウイルスゲノムは、6つの主要な構造タンパク質:核タンパク質(NP)、リンタンパク質(P)、マトリックスタンパク質(M)、融合タンパク質(F)、ヘマグルチニン−ノイラミニダーゼ(NH)およびRNA依存性RNAポリメラーゼ(L)をコードする6つの遺伝子を含む。RNAとNP、PおよびLタンパク質は、RNA合成用の鋳型として働くリボ核タンパク質複合体(RNP)形成する。すべてのマイナス鎖ウイルス(NSV)に共通する特徴は、RNPの形でのみそれらの遺伝情報が存在していることである。裸のRNAではなくRNPが、転写および複製用の鋳型として働く。
NPは、ポリメラーゼタンパク質、PおよびLと共に、RNAをキャプシドで包む際に、RNAを酵素による分解から防御する際に、優れた役割を果たす。さらにNPは、Pのみと、PおよびL(RNAポリメラーゼ)と、あるいはそれ自体(NP−NP相互作用)で相互作用することによって、ウイルスゲノムの転写および複製を調節する。センダイパラミクソウイルスについては、NPの保存されているN末端領域が、NP−RNAおよびNP−NP相互作用と関連があることが示され(Buchholz他、J.Virol.67、5803−5812、1993)、一方カルボキシ末端ドメインは、鋳型機能に必要とされることが示された(Curran他、J.Virol.67、4358−64)。したがってNPの大部分は、RNPの集合および生物学的活性においてNPが多種多様な関与をしているために、ウイルスの複製には絶対に必要である。
多くの国々では、NDVの大発生を制御するための法律が既に存在している。いくつかの国々では、感染した鳥を強制的に除去することによる根絶政策が実施されている。首尾の良い国際的な家禽類の貿易を続けるために、系統的なND制御対策を導入することが望ましい。しかしながら、現在使用されている完全にウイルスベースである生または不活化NDワクチンにはすべて、ワクチン接種した動物を、赤血球凝集阻止反応(HI)またはウイルス中和試験(VN)のような標準的な血清学的検査によって、感染した動物と区別することができないという重大な欠点がある。したがって、少なくとも1つの主要エピトープが欠けているNDVタンパク質を含む、NDVに免疫原性がある物質が必要とされている。エピトープとは、抗体と相互作用する抗原上の小さな構造領域である。エピトープは、ポリペプチドの少なくとも3つのアミノ酸からなっていてよいが、通常は5〜10個、またはある場合はそれを超えるアミノ酸を含む。
近年、「マーカーワクチン」と名付けられたワクチンが、特異的な病気の根絶が国家的または国際的な関心である獣医学の分野で人気を得ている。マーカーワクチンは、診断試験に関して、ワクチン接種した動物と感染した動物を血清学的に区別することができるワクチンとして定義される。
マーカーワクチンを開発するための手法は、1つまたは複数の不要ではあるが免疫原性がある遺伝子を欠失させることを含む。この手法は主に、いくつかの重要でない遺伝子を含むDNAウイルス(たとえばヘルペスウイルス)に適用できる。RNAウイルスについては、大部分の遺伝子が必須であるか、あるいは不要である遺伝子は免疫原性がない。NDV、マイナス鎖RNAウイルスは、6つの主要な構造遺伝子を含み、これらはすべてウイルスの増殖に必須である。1つまたは複数の遺伝子を欠失させることによって、生物学的活性の低下を引き起こすことが予想される。実際、動物中の他のウイルス感染病に関するこのような防疫計画が開発されているが、本発明より前には、NDの防疫計画に適合すると思われる、NDVワクチン株を主成分とするワクチンは記載されていない。
マーカーワクチンを開発するための代替的な手法は、「サブユニットワクチン」を使用することである。この手法は、2つの糖タンパク質、融合タンパク質(F)およびヘマグルチニン−ノイラミニダーゼ(NH)を特定することによりNDVに関して実施されており、感染防御免疫を誘導することに関する。NDVFおよび/またはHNを発現する七面鳥のヘルペスウイルス(HVT)および鶏痘ウイルス(FPV)などの組み換えベクターは、首尾よく構築されており、それらの安全性および効力は広く研究されている。
マイナス鎖RNAウイルス(NSV)の核タンパク質(NP)は、本来非常に免疫原性があり、診断用ELISAにおいて抗原として使用されている。これらは狂犬病ウイルス、はしかウイルス、牛疫ウイルス、水疱性口内炎ウイルス、およびNDVを含む。これらの試験は、ワクチン接種プログラムを監視するため主に使用された。NDV−HNサブユニットワクチンに関しては、NP系免疫測定法も、ワクチン接種した動物と感染した動物を区別する際の診断試験として記載された(Makkay他、Vet.Microbiol.66、209−222、1999)。しかしながら、全NSV系マーカーワクチン、特にNDVワクチンに関するNP免疫測定法は存在しない。それは主に、非常に重要な遺伝子を遺伝的に改変することにより、ウイルスの複製および感染性に有害な結果を与えることが予想されるという事実によるものである。
しかしながら、NDVサブユニットワクチンの欠点は、NDVFまたはHNタンパク質を発現する組み換えウイルスの効力が、商業用のニワトリでは母親由来抗体(MDA)の存在下で大幅に下がることである。対照的に、完全なウイルス調製物を主成分とする従来のNDワクチンは、MDAの存在下でさえも、完全な防御をもたらす。
いくつかの組み換えベクターの他の一般的な欠点は、感染防御免疫の開始が遅れることである。従来の生NDワクチンは一般に、ワクチン接種の6〜7日後に完全な防御をもたらし、一方、NDVFタンパク質を発現する組み換えHVTを主成分とするワクチンによって誘導される免疫の開始は、ワクチン接種後14日と21日の間に起こることが示された(Morgan他、Avian Dis.37、1032−1040、1993)。
NDサブユニットワクチンのこれらの欠点を鑑みると、そのFおよびHNタンパク質を本来の形で保持しており、野生型および伝統的なワクチンウイルスと血清学的に区別することができる完全なウイルスを主成分とする、NDマーカーワクチンが必要である。
国際出願WO99/66045は、NDVタンパク質上で主要エピトープが欠けている遺伝的に改変されたNDV突然変異体を主成分とする、NDVマーカーワクチンを開示している。しかしながらこのワクチンウイルスは、ハイブリッドHNタンパク質を含み、NDVからのこのHNタンパク質のわずか4分の1の部分はNDVから構成されるが、HNタンパク質の残り部分は関係の無い鳥類のパラミクソウイルスのタイプ2または4に由来するものである。NDVHN領域の大部分を除去することによって、NDV防御抗体を誘導する際にHNによって果たされる役割がおそらく減ると思われる。
現在利用可能な生NDVワクチンは、飲料水、エアロゾル、目薬によって、あるいは非経口的経路により、孵化したニワトリにのみ投与することができる。これらの施用法には、いくつか欠点がある。最も重要なのは、それらの施用に必要とされる労力のために、これらの方法が高くつくことである。近年、胚ワクチンとしてのワクチンの使用が、有効であり経済的であることが分かってきた(Sharma and Burmester、Avian Diseases26、134−149、1982およびSharma、Avian Diseases29、1155−1169、1985)。さらに、胚にワクチン投与することは、特異的な病気に対する初期の耐性があり、多数の注射ヘッドを有する半自動機器を使用してそれぞれの卵内に均一な用量のワクチンを投与するために、有利であることが分かった。
鳥類の孵化後のワクチン接種用に従来使用されている多くのワクチンは、卵内ワクチン接種用には使用することができなかったことに注意しなければならない。後期の胚は、生後1日の孵化した雛において安全に使用することができるワクチンウイルスを含めた、検査された大部分のワクチンウイルスに非常に感染しやすい。したがって、従来のワクチンを卵内投与用に使用することはできない。
現在、主に2つの最も穏やかな市販のNDVワクチン株:NDW(米国特許第5,149,530号)およびC2(米国特許第5,750,111号)に関して胚の死亡率が高レベルであるために、卵内に施用することができる適切な市販のNDワクチンは存在しない。
米国特許第5,427,791号(Regents of the University of Minnesota)は、後期の胚に病原性がないHitchner B1株のNDV突然変異体を生み出すための、化学的突然変異誘発剤の使用を開示している。エチルメタンスルホン酸(EMS)でB1株を化学的に処理することによって、突然変異体ウイルスNDV−B1−EMSが結果として生じ、これは胚形成18日目のニワトリの卵に安全に投与することができた。しかしながら不利なことに、この株のそれぞれの卵の継代ステップは、胚に安全ではない親B1株に戻る突然変異体の性質のために、突然変異誘発剤EMSの存在下で行わなければならない。
本発明の目的は、野生型NDVに感染した動物または従来のNDVワクチン株でワクチン接種した動物と、このNDV突然変異体を主成分とするワクチンで免疫性を与えた動物との区別を可能にするための、全ウイルス系のNDマーカーワクチンの活性成分として使用することができる、NDV突然変異体を提供することである。
本発明の他の目的は、孵化後の若鳥に投与することができるだけでなく、卵内に安全に投与することもできる、ワクチンの活性成分として使用することができるNDV突然変異体を提供することである。
ここに記載した本発明は、主要エピトープをNPから除去したために、知られているNDV(ワクチン)株とは異なる遺伝子工学的に処理したNDV突然変異体を提供することによって、これらの目的に見合うものとなっており、このエピトープは血清学的にNDV感染と非常に関連はあるが、その欠失は新たなNDV突然変異体の防御性に悪影響を与えることはない。
本発明は、NDV突然変異体が核タンパク質(NP)の領域内に位置するエピトープを欠いており、領域が配列番号1中に示すアミノ酸配列(447〜455)を有することを特徴とする、タンパク質をコードしている遺伝子の突然変異の結果として、NDVタンパク質上に主要エピトープが欠けているNDV突然変異体を提供する。
NDVゲノムのヌクレオチド1460〜1486によってコードされている、NPのアミノ酸配列(447〜455)Phe Leu Asp Leu Met Arg Ala Val Alaは、ND VNPの主要エピトープを含むことが分かっている。すなわち、NDVに感染したほぼすべてのニワトリから得られる抗血清は、この領域内に位置するエピトープと相互作用する。抗血清は前述のアミノ酸とは相互作用するが、この領域の側面に位置するアミノ酸とは実質的に相互作用しない。
さらに、生および不活化である従来のNDV株によって誘導されたニワトリの抗血清は、アミノ酸(443〜460)Gly Glu Thr Gln Phe Leu Asp Leu Met Arg Ala Val Ala Asn Ser Met Arg Glu(配列番号2)が広がっており、(447〜455)領域を含む18量体ペプチドと反応することが図2で実証されている。この領域を含むアミノ酸配列を比較することによって、velogenic Texas GB株、mesogenic Beaudette C株およびletogenic Clone−30株の中の100%のアミノ酸同一性が明らかになっている。したがって、マーカーワクチンを開発するための1つの重要な規準、すなわちニワトリの免疫系によって認識される、従来のNDV株のタンパク質によって発現されるエピトープの同定が実現する。
NDVゲノム上のヌクレオチド位置およびNDVタンパク質中のアミノ酸残基を同定するために、本明細書で使用する括弧内の番号付けは、Romer−Oberdorfer他、J.Gen Virol.80、2987−2995、1999、EMBL 受託番号Y18898)によって記載されたものである。
予想外なことに、NPはNDV複製に関する必須タンパク質であるという事実があるにもかかわらず、アミノ酸(447〜455)はウイルス複製に関して必要とされないことがさらに分かっている。この領域中に位置するNPエピトープを発現しない感染性の組み換えNDV突然変異体は、「逆遺伝的な」技術を使用して適切なプラスミドを用いてこれらの細胞をトランスフェクトした後に、細胞から首尾よく回収され、これはニワトリの卵内で効率良く増殖させることができた。
本発明によるND VNPタンパク質は、NP遺伝子の突然変異を導入し、その結果主要エピトープが、アミノ酸配列(443〜460)を有する18量体ペプチド中に位置するエピトープと反応性がある抗体を、ニワトリ中で誘導する能力を失わせたことによって作製した。実施例2および3は、(i)本発明によるND VNP突然変異体は、完全なウイルス抗原と反応するHI抗体およびポリクローナル性のニワトリの抗−NDV血清を誘導することができるが、(ii)これらの抗血清は18量体ペプチド中に位置するエピトープとは反応性がないことを実証している。
本発明によるND VNP突然変異体に対して生じたニワトリの抗−NDV血清は、抗血清と(447〜455)領域中に位置するエピトープの相互作用を調べることによって、天然に存在するNDV株および従来のNDVワクチン株に対して生じたニワトリの血清と区別することができるという観察により、このND VNP突然変異体はマーカーワクチンの適切な候補となる。詳細には本発明は、(447〜455)領域中に位置する主要エピトープが欠けているND VNP突然変異体も含み、この突然変異体は、この領域中に位置する主要エピトープと特異的に結合するモノクローナル抗体の存在下で、突然変異体抗血清と(447〜455)領域を含むペプチドの相互作用を調べることによって、従来のNDV株によって誘導された抗血清と区別することができる抗血清をニワトリ中で誘導する。後者の場合、通常その検査は免疫学的競合または遮断検査法である。
したがって、本発明による個々のND VNP突然変異体は、NPのアミノ酸領域(447〜455)中に位置する主要エピトープと反応する抗体が欠けている抗血清を、ニワトリ中で誘導することを特徴とする。
より好ましい実施形態では、配列番号2中に示すNPアミノ酸配列(443〜460)を有する18量体ペプチドと反応する抗体が欠けている抗血清を、ニワトリ中で誘導するND VNP突然変異体を提供する。
「〜と反応する抗体が欠けている抗血清をニワトリ中で誘導する」という語は、感染した/ワクチン接種したニワトリから得られる血清試料が、直接的または遮断的NP酵素結合免疫吸着検査法(ELISA)において陰性であると記録されることを意味する。
典型的には、陽性試料と陰性試料を区別するためのNPのELISAに関する、吸光度(OD)のカットオフ値は、SPFニワトリからの陰性対照試料の平均P/N比を超える3標準偏差に設定する(この場合、Pはキャリア分子に結合した関連ペプチドでコーティングされたウエルからの試料のOD、Nはキャリア分子でコーティングされたウエルからの試料のOD)。キャリア分子はキャリアタンパク質、BSA、オバルブミン、KLHなど、炭水化物鎖または合成アミノ酸鎖であってよい。
NP遺伝子は、NDVゲノム上のヌクレオチド位置56〜1801に位置している(NDV株Clone30(登録商標))。NDVのNPはアミノ酸489個の長さであり、lentogenic、mesogenicおよびvelogenic株内で充分に保存されている。このNDV株のNP遺伝子の、ヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、配列番号3および4中に示す。Clone30のNPの演繹アミノ酸配列と、NDVのvelogenic Texas GBおよびmesogenic Beaudette C株の対応する配列を比較することによって、100%および99.3%の同一性が明らかになっている。特定のNDV株Clone30からの特定のアミノ酸配列を参照することによって、あるポリペプチド領域を本明細書で定義する場合、この領域は、他のNDV株の異なったアミノ酸配列を有する対応する領域を含むとみなす。
突然変異は、「野生型」すなわち元のNPを発現することができる親NDV株の非改変型NP遺伝子の、遺伝情報の変化であると理解され、その結果NDV突然変異体によって発現されるNPは、NPの(447〜455)領域中に位置する主要エピトープが欠ける。
NP遺伝子において導入される突然変異の他の要件は、変異したNPが、NDVについて「逆遺伝的な」技術を使用し適切なプラスミドを用いてこれらの細胞をトランスフェクトした後に、細胞培養物から感染性NDVを回収することを可能になることである。実施例1および2では、変異したNPがNDV抗体を誘導する能力、および適切なプラスミドを用いてトランスフェクトした細胞培養物から回収可能な感染性ウイルスを生み出すための突然変異の許容度を決定するのに適した実験を記載する。
突然変異とは、たとえば核酸の置換、欠失、挿入、またはこれらの組合せである。
本発明の好ましい実施形態では、ND VNPの突然変異体は、配列番号1中に示すアミノ酸配列(447〜455)を有するNPの領域内の、1つまたは複数のアミノ酸の欠失または置換を含む。
主要エピトープのコード配列を含むNP遺伝子の領域中の、すべての欠失が許容されるわけではないことが分かった。NPアミノ酸443〜460に対応するヌクレオチドの欠失(NDV−Δ18突然変異体)は、適切なプラスミドを用いたトランスフェクトの後に、細胞培養物からの感染性NDV突然変異体の回収につながったが、NPアミノ酸444〜455(NDV−Δ12突然変異体)および442〜489(NDV−Δ48突然変異体)に対応するヌクレオチドの欠失では、そうはならなかった。
タンパク質の二次構造を分析することによって(Garnier−Osguthorpe−Robson分析)、NPのアミノ酸位置444〜459はαヘリックスを形成することが示された。完全なヘリックスおよび側面に位置するヌクレオチド(Δ443〜460)を除去することによって、生命力のある感染性組み換えNDVの生成が妨げられることはなく、一方でNPタンパク質の部分的なヘリックス構造または追加的な部分を除去することが、細胞培養物からの感染性NDVの回収につながらなかったことが分かっている。
したがって、本発明による好ましいNDV突然変異体は、アミノ酸443±1〜460±1の欠失を含む。
本発明のこの実施形態の特に好ましい態様では、アミノ酸443〜460の欠失を含む、ND VNP突然変異体を提供する。
本発明による特に有利なNDV突然変異体は、追加的な弱毒化した突然変異体を含む、前述のNDV突然変異体である。
このようなNDV突然変異体は、任意の従来のNDワクチン株に由来するものであってよい。市販のNDワクチン中に存在するこのような適切なNDVワクチン株の例はClone30(登録商標)、La Sota、Hitchner B1、NDW、C2およびAV4であり、Clone30(登録商標)が好ましいワクチン株である。
この実施形態の他の態様では、本発明は、前述のNDV突然変異体を主成分とする組み換えベクターウイルスを提供する。このような組み換えベクターウイルスは、NDVに対するワクチンを作製するためだけでなく、他の家禽類の感染病に対するワクチンを作製するためにも使用することができる。あるいは、このような組み換えベクターウイルスによって、診断試験においてさらなる安全性がもたらされる可能性もあり、組み換えウイルスは魅力的な二重性のマーカー候補となる。
NDVベクターは、前に定義したNPの主要エピトープをコードしている領域を、NP以外のポリペプチド、たとえば他の鳥類病原体のポリペプチドの主要エピトープをコードしている異種の核酸配列でインフレーム置換(全体的または部分的)することにより得ることができる。この主要エピトープは、あるポリペプチド(を含む組成物)によって誘導されるほぼすべての抗血清と相互作用するこのポリペプチドの領域を表す。
本発明による好ましいNDVベクターでは、NPのアミノ酸配列444〜459または444〜455をコードしているヌクレオチドは、異種のヌクレオチド配列によって、詳細にはそれぞれ16個または12個のアミノ酸をコードしている異種のヌクレオチド配列によって置換されている。
実施例5では、NDVと無関係なウイルスのB細胞エピトープを使用して、NDVのNP主要エピトープを交換することができることが示される。組み換えNDVベクターは、NP上の主要エピトープを対象とする抗体を誘導することなく、外来性のエピトープに対する特異的な抗体を誘導することができた。さらに、発現した外来性のエピトープは、対応する野生型ウイルスによる抗原投与(challenge)に対する防御を誘導することができることが示される。
NDVベクターは、他の鳥類病原体のポリペプチドをコードしている異種の核酸配列を、NDV突然変異体の非翻訳領域に挿入することによって得ることもできる。この目的に適した非翻訳領域は、NP遺伝子のゲノムプロモーターと開始部の間、NP/P、P/M、M/F、F/HNおよびHN/L遺伝子接合部、およびL遺伝子の端部とアンチゲノムプロモーターの間に位置している。異種の核酸配列は、感染性滑液包嚢病ウイルス、感染性気管支炎ウイルス、マレック病ウイルス、鳥類脳脊髄炎ウイルス、鳥レオウイルス、鳥インフルエンザウイルス、ニワトリ貧血ウイルスなどの鳥類病原体、Salmonella spp.、E.coli、およびEimeria spp.の抗原をコードしていてよい。
本発明によるND VNP突然変異体は、非分節状のマイナス鎖RNAウイルスの遺伝的改変を可能にする、充分に確立された「逆遺伝的な」方法によって作製することができる(Conzelmann、Annu.Rev.Genet.32、123−162、1998、およびRoberts and Rose、Virology247、1−6、1998によって概説されている)。
さらに、NDVに関するこのような方法は、Peeters他(J.Virology 73、5001−5009、1999)およびRomer−Oberdorfer他(J.Gen.Virol.80、2987−2995、1999)によっても記載されており、実施例1にこれを記載する。
望ましい突然変異は、当分野で一般的に知られているこの目的のための方法によって、NDVゲノム中に導入することができる。詳細には、突然変異は部位特定変異導入法によって導入する。このような方法を本明細書に記載するが、当分野においてもこれは一般的に使用されている(Peeters他、1999上記;Current Protocols in Molecular Biology、eds.:F.M.Ausubel他、Wiley N.Y.、1995版、ページ8.5.1.−8.5.9.およびKunkel他、Methods in Enzymology Vol.154、376−382、1987)。
本発明によるND VNP突然変異体が、天然に存在するNDV株によって誘導される応答と区別することができるニワトリの抗体応答を誘導することができるという予期せぬ発見に加えて、前述のND VNP突然変異体が、防御的免疫応答を誘導することができることも分かっている。
したがって、本発明の他の実施形態では、生または不活化形である前に定義したND VNP突然変異体、および薬剤として許容される担体または希釈剤を含む、家禽類のニューカッスル病に対するワクチンを提供する。
本発明によるワクチンは、市販の生または不活化NDVワクチンについて一般的に使用されている方法などの、従来の方法によって作製することができる。
簡潔には、感染しやすい基質をND VNP突然変異体に接種し、ウイルスが望ましい力価に複製するまで増殖させ、その後NDV含有物質を採取する。その後、採取した物質を、免疫性を有する薬剤調製物に調合する。
ニワトリ胚繊維芽細胞(CEF)またはニワトリ腎臓細胞(CK)などの初代(鳥類)細胞培養物、VERO細胞系またはベビーハムスターの腎臓(BHK)細胞系などの哺乳動物の細胞系を含めた、NDウイルスの複製を促進することができるそれぞれの基質を、本発明において使用することができる。
ND VNP突然変異体を増殖させることができる非常に適切な基質は、SPF胚含有卵である。卵1個当たり少なくとも102.0EID50を含む胚含有卵には、たとえば0.2mlのNDV含有尿膜腔液を接種することができる。
生後9〜11日の胚含有卵に約105.0EID50で接種し、その後37℃で2〜4日間培養することが好ましい。2〜4日後、好ましくは尿膜腔液を回収することによって、NDウイルスの生成物を採取することができる。その後この液体を2500gで10分間遠心分離し、次にフィルタ(100μm)を介して上澄みを濾過することができる。
本発明によるワクチンは、ND VNP突然変異体、およびこのような組成物に関して習慣的に使用される、薬剤として許容される担体または希釈剤を含む。
生ウイルスを含むワクチンを作製し、懸濁液の形か凍結乾燥させた形で市場に出すことができる。担体には安定剤、防腐剤および緩衝液がある。希釈剤には水、水性緩衝液およびポリオールがある。
望むならば、本発明による生ワクチンはアジュバントを含んでよい。アジュバント活性を有する適切な化合物および組成物の例は、不活化NDVワクチンについて以下に述べるものと同じである。
注射による投与、たとえば本発明による生ワクチンを筋肉内注射、皮下注射することは可能であるが、NDVワクチン接種に一般に使用される安価の大量施用技法によって、ワクチンを投与することが好ましい。NDVワクチン接種については、これらの技法には水を飲むこと、およびスプレー式のワクチン接種がある。
本発明によるND VNP突然変異体のさらなる予想外の性質は、ニワトリ胚に関するその毒性が、それを卵内投与することができるほど充分弱いことである。したがって本発明は、卵内ワクチン接種に使用することができる、前述のND VNP突然変異体を主成分とするワクチンも提供する。
ND VNP突然変異体を含むワクチンは、従来の卵内ワクチン接種法にしたがって、胚含有卵に注射することができる。通常は、胚形成の後期中に、一般には培養期間の最後の4分の1(第15〜21日)に、好ましくは培養期間の第18日または第19日に、ワクチンを胚含有卵に注射する。培養している卵への注射の機構は特に重要なわけではない。ただし、それは胚の組織および器官を過度に害することがないものとする。たとえば、殻の大きな端部に、注射器に取り付けられた針(1〜1.5インチ、約22ゲージ)によって、小さな穴をあけ、ワクチンを内殻膜および漿尿膜の下に注射する。その後、ワクチン接種した胚含有卵を、孵化のための培養器に移す(米国特許第4,458,630号、5,427,791号、WO98/56413およびWO95/35121)。胚のワクチン接種プロセスはすべて、市販のInovoject(登録商標)などの、自動式ワクチン接種システムを使用して行うことが好ましい。
本発明の他の態様では、不活化形であり、ND VNP突然変異体を含むワクチンを提供する。不活化ワクチンの主な利点は、その安全性、および誘導することができる長期の防御抗体が高レベルであることである。
増殖ステップ後に採取したウイルスを不活化させる目的は、ウイルスの繁殖を失くすことである。これは一般に、よく知られている化学的または物理的手段によって行うことができる。
本発明による不活化ND VNP突然変異体を含むワクチンは、たとえばこの目的に適した、1つまたは複数の前述の薬剤として許容される担体または希釈剤を含むことができる。
本発明による不活化ワクチンは、アジュバント活性を有する1つまたは複数の化合物を含むことが好ましい。この目的に適した化合物または組成物には、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウムまたは酸化アルミニウム、たとえば鉱油を主成分とする水中油型または油中水型エマルジョン、Bayol F(登録商標)またはMarcol 52(登録商標)など、ビタミンEアセテート、およびサポニンなどの植物油がある。
本発明によるワクチンは、活性成分としての有効用量のND VNP突然変異体、すなわち、ワクチン接種した鳥において毒性ウイルスによる抗原投与に対して免疫性を誘導するであろう一定量の免疫性NDV物質を含む。本明細書では免疫性を、ワクチン接種後に非ワクチン接種群と比べて、鳥類の個体群において斃死および臨床症状に対する非常に高レベルの防御を誘導することとして定義する。詳細には本発明によるワクチンは、ワクチン接種した動物の大群を、病気の臨床症状および斃死の発生に対して防御する。
典型的には、生ワクチンは、102.0−108.0の胚感染用量(EID50)、好ましくは104.0−107.0EID50の範囲の用量で投与することができる。不活化ワクチンは、104.0−109.0EID50の抗原相当物を含んでよい。
通常不活化ワクチンは、非経口的に、たとえば筋肉内注射または皮下注射によって投与する。
本発明によるNDVワクチンは、ニワトリに効果的に使用することができるが、七面鳥、ハト、ウズラ、キジ、ホロホロチョウおよびパートリッジなどの他の家禽類にも、このワクチンを接種することができる。ニワトリにはブロイラー用、繁殖用ストックおよび産卵用ストックがある。
本発明による生または不活化ワクチンを孵化後に与えた動物の年齢は、従来の生または不活化NDVワクチンを与えた動物の年齢と同じである。たとえばブロイラー、特にMDAのレベルが高いブロイラーには、生後1日齢または1〜3週齢でワクチン接種することができる。産卵用ストックまたは繁殖用ストックには、1〜10日齢でワクチン接種することができ、6〜12および16〜20週齢で生または不活化ワクチンを追加接種することができる。
本発明は、本発明によるND VNP突然変異体に加えて、NDおよび他の鳥類病原体に対する防御を誘導することができるワクチン株を含む、混合ワクチンも含む。
混合ワクチンは、マレック病ウイルス(MDV)、感染性気管支炎ウイルス(IBV)、ニューカッスル病ウイルス(NDV)、産卵低下症候群(EDS)ウイルス、七面鳥鼻気管炎ウイルス(TRTV)またはレオウイルスの、1つまたは複数のワクチン株をさらに含むことが好ましい。
混合ワクチン中の追加的なNDワクチン株は、NDVのFまたはHNタンパク質を発現することができる組み換え(ウイルス)ワクチンベクターであることが好ましい。このようなウイルスワクチンベクターはよく知られており、それらの安全性および効力は広く研究されている:Morgan他、Avian Diseases36、858−870、1992およびAvian Diseases37、1032−1040、1993;Heckert他、Avian Diseases40、770−777、1996;Sakaguchi他、Vaccine16、472−479、1998およびSonoda他、J.Virol.74、3217−3226、2000。
最も好ましい実施形態では、本発明による混合ワクチン中の組み換えワクチンベクターは、NDVのFまたはHNタンパク質を発現することができる組み換えHVTベクターである。
混合ワクチンが卵内経路によって投与される場合、追加のワクチン株は胚に安全なワクチン株でなければならない。すなわち、生ワクチン株は、胚形成の18日にSPF卵に接種される場合、胚含有卵の少なくとも70%の孵化率をもたらす結果となる。
前述のNDVマーカーワクチンは、診断法に関しては、それをワクチンを接種した動物と、自然界に存在するNDV株に感染した動物、または従来のNDワクチンを接種した動物を区別することができる。
本発明は、大規模な撲滅プログラムに適用した場合NDVの根絶につながる可能性がある、ND制御対策を監視するための非常に貴重なツールも提供する。このツールは、アミノ酸配列(447〜455)を有するNPの領域中に位置する主要エピトープと反応性がある抗体の有無について動物の試料を検査するステップを含む、家禽類のNDV感染を判定するための方法に関する。
この方法で使用する動物の試料は、その中にNDV抗体を検出することができる任意の試料、たとえば血液、血清または組織試料であってよく、血清試料が好ましい。
このような方法を使用する際の抗原としての抗原は、唯一のエピトープ含有領域として(447〜455)領域を含むNPの断片でできている。したがって、動物のNDV感染を判定するための好ましい方法は、以下のステップを含む:
(i)抗NDV抗体を含む疑いがある試料を、唯一のエピトープ含有領域としてアミノ酸領域(447〜455)を含むNPの断片と共に培養するステップ、
(ii)抗体−抗原複合体の形成を可能にするステップ、および
(iii)抗体−抗原複合体の存在を検出するステップ。
特に好ましい診断法では、NPの断片は、アミノ酸配列360〜470を有するポリペプチド、または領域(447〜455)を含むその一部分である。
最も好ましい診断法では、使用する抗原は、アミノ酸配列443〜460を有する18量体ペプチドである。
免疫測定法の設計は変わる可能性がある。たとえば免疫測定法は、競合的または直接的な反応に基づくものである。さらに、プロトコルは固形担体を使用することができ、あるいは細胞の物質を使用することができる。抗体−抗原複合体の検出は、標識した抗体の使用を含んでよく、標識体は、たとえば酵素、蛍光性分子、化学発光性分子、放射活性分子または染料分子であってよい。
試料中のNDV抗体を検出するのに適した方法には、酵素結合免疫吸着検査法(ELISA)、免疫蛍光試験(IFT)およびウエスタンブロット分析があり、ELISAが好ましい。
代表的なELISAでは、ポリスチレン製マイクロタイタープレートのウエルは、主要エピトープを含むNPの適切な断片でコーティングする。次に、コーティングされているプレートのウエルにニワトリの血清を充填し、一連の希釈液を作成する。培養後、関連のあるニワトリの抗NP血清の存在下あるいは不在下で、主要エピトープを対象とする抗体を、捕獲された抗NP抗体に結合する(試験血清中に存在する場合)、標識した(たとえばホースラディッシュペルオキシダーゼに結合した)検出用抗体によって決定する。NP断片に結合する、血清中に存在する関連のある抗体の量は、プレートを酵素基質と共に培養し、ミクロプレート自動読取装置の吸光度の値(OD)を読むことによって決定することができる。
診断法の代替的な実施形態では、ニワトリ血清中の特異的な抗体の存在を、(447〜455)領域内に位置するエピトープと特異的に反応するモノクローナル抗体の存在下で、血清および適切な抗原を培養することによって調べる。
NDV感染したニワトリとNDV(サブユニット)をワクチン接種したニワトリに関する、抗原としての全NP系の、抗体を検出することに基づくELISAは、Makkay他、(1999、上記)およびErrington他、(J.Virol.Methods55、357−365、1995)によって記載されており、したがって関連のある抗原を使用するときは、本明細書に記載した原理を適用することができる。
本発明の他の実施形態では、前述の本発明による診断法を行うのに適した、診断試験用キットを提供する。
詳細には、通常存在する成分に加えて、キャリア分子に結合していることが好ましい(望むならば固相上にコーティングされている)、前に定義した適切なNP断片、好ましくは18量体(443〜460)ペプチドを抗原反応物として含む、診断試験用キットを提供する。このような試験用キット中に通常存在する他の成分には、ビオチンまたはホースラディッシュペルオキシダーゼに結合した抗体、酵素基質、洗浄用緩衝液などがある。
組み換えNDV構築体を示し、マイナス鎖ゲノムRNA中の、NDV遺伝子配列の概略図である。 15匹のSPFニワトリに、3週齢で眼−鼻経路によってNDV−Δ18をワクチン接種し、5週齢でもう1度追加接種した結果を示す図である。 SPFニワトリ胚における、rNDVおよびNDV−Δ18の病原性を示す図である。 NDV−Δ18を単独で、あるいはこれをHVT−NDV/F、NDV融合タンパク質を発現するベクターワクチンと組み合わせて卵内ワクチン接種したSPFニワトリの血清学的応答を示す図である。 NDV−MHV1をワクチン接種したSPFニワトリの血清学的応答を示す図である。 NDV−MHV1をワクチン接種したSPFニワトリの血清学的応答を示す図である。 NDV−MHV2をワクチン接種したSPFニワトリの血清学的応答を示す図である。 NDV−MHV2をワクチン接種したSPFニワトリの血清学的応答を示す図である。 MHVエピトープに特異的な抗体を、ニワトリが産生することを示す図である。 MHVエピトープに特異的な抗体を、ニワトリが産生することを示す図である。 NDV−d18で免疫したニワトリの血清のELISA試験の結果を示す図である。
実施例1.
核タンパク質(NP)上に主要エピトープが欠けている組み換えNDVの作製
材料および方法
完全長であるNDVのcDNAへの突然変異の導入
突然変異体NDVを作製するために、lentogenic NDワクチン株、Clone30の完全長のアンチゲノムRNAを発現するプラスミドpflNDV(Romer−Oberdorfer他、J.Gen.Virol.80、2987−2995、1999)を使用して、突然変異を導入した。主要エピトープが位置する領域の内部欠失を、供給者の教示書(Stratagene)に従い、「急変部位特定変異導入キット」を使用して導入した。最初に、NDVゲノムのヌクレオチド77〜2289を含むDNA断片を、MlulでpflNDVを消化し、Klenowを充填し、Apalで処理することによって作製した。2.2kbまでのDNA断片を、ApalおよびEcoRIで消化したpSKT7Tベクターに連結させた。次いでPCR突然変異導入法を、以下のプライマーのセット(配列番号5〜10)を使用して前述の鋳型に行った:
ヌクレオチド1451〜1486を欠失させるために、NPアミノ酸444〜455に対応する以下のプライマー
P1A(5’−CCAGAAGCCGGGGATGGG/AATAGCATGAGGGAG−3’)および
P1B(5’−CTCCCTCATGCTATT/CCCATCCCCGGCTTCTGG−3’)
ヌクレオチド1448〜1501を欠失させるために、NPアミノ酸443〜460に対応する以下のプライマー
P2A(5’−CCAGAAGCCGGGGAT/GCGCCAAACTCTGCACAGG−3’)および
P2B(5’−CCTGTGCAGAGTTTGGCGC/ATCCCCGGCTTCTGG−3’)
ヌクレオチド1445〜1588を欠失させるために、NPアミノ酸442〜489に対応する以下のプライマー
P3A(5’−GGCAACCAGAAGCCGGG/TGATGGACAAAACCCAGC−3’)
P3B(5’−GCTGGGTTTTGTCCATCA/CCCGGCTTCTGGTTGCC−3’)
突然変異を導入したクローンをAatll/Apalによって消化し、pflNDVの同じ部位にクローン化した。導入された突然変異が存在することを、それぞれのクローンを配列決定することによって確認した。アミノ酸位置444〜455、443〜460、または442〜489に対応するNP遺伝子の欠失がある、生成した完全長のクローンを、それぞれNDV−Δ12、NDV−Δ18、およびNDV−Δ48と名付けた(図1)。
組み換えウイルスの回収
ファージT7RNAポリメラーゼを安定して発現する約1.5×10個のBSR−T7/5細胞を、直径3.2cmの培養皿中で90%の集合状態に一晩で増殖させた。哺乳動物トランスフェクション用キット(CaPOトランスフェクションプロトコル;Stratagene)を使用して、5μgのpCite−NP、2.5μgのpCite−P、2.5μgのpCite−L、および10μgの完全長クローンの1つを含むプラスミド混合物で、細胞をトランスフェクトした。トランスフェクションの3〜5日後に、上澄みを採取し、生後9〜11日の胚を含むSPFニワトリの卵の漿尿腔に接種した。培養の3〜4日後に、漿尿液中のウイルスの存在を、ニワトリの赤血球を使用する、迅速なプレート上の赤血球凝集反応(HA)試験によって決定した。
結果
NP遺伝子上の主要エピトープを欠失させるため、あるいはNPのC末端部分の発現を遮断するために、記載した物質および方法で改変を行った。それぞれの改変した完全長cDNAクローン、およびND VNP、PおよびLタンパク質を発現している3つのサポートプラスミドを、BSR−T7/5細胞にトランスフェクトした。培養の3〜5日後に、上澄みを採取し、生後9〜11日の胚を含むSPFニワトリの卵に接種した。培養の3〜4日後に、漿尿液試料を採取し、HA試験を施した。非改変型pflNDVでトランスフェクトした細胞からの上澄みを接種した卵内で、HAを検出した。驚くべきことに、さらに1回の卵の継代後にHA試験を使用して、NDV−Δ18を検出した。次いでNDV−Δ18を、胚含有SPF卵において合計8回の継代で、順次に継代させた。それぞれの継代時に感染させた細胞からRNAを単離し、RT−PCRを施した。すべての継代において、導入した欠失状態を保ち、組み換えウイルスの安定性が示された。NDV−Δ12およびNDV−Δ48のトランスフェクションから得た上澄みを接種した胚含有卵の漿尿液では、3回の連続した卵の継代後でも、感染性ウイルスは検出されなかった。
実施例2.
NDV−Δ18は、マーカーワクチンとして使用することができる
材料および方法
NDV−Δ18を用いたニワトリの免疫処置、および血清の分析
3週齢の15匹のSPFのニワトリに、0.2ml当たり6.5log10EID50の用量で眼−鼻経路によって、NDV−Δ18を用いて免疫性を与え、最初の免疫処置の5週間後に同じ用量を追加接種した。ワクチン接種の直前、最初の免疫処置の2、5および7週間後に、血清試料を回収した。次いで血清試料を、赤血球凝集反応阻害(HI)試験およびELISAにより試験して、血清変換のレベルを決定した。
酵素結合免疫吸着検査法(ELISA)
核タンパク質のアミノ酸配列(443〜460)を含む18量体合成ペプチド(配列番号1)を合成し、ウシ血清アルブミン(BSA)に結合させた。簡潔には、合成ペプチド(2mg)を、リン酸緩衝食塩水(PBS)中に溶かした20mMのグルタルアルデヒドを架橋剤として使用して、BSAに結合させた(それぞれモル比4:1)。これと平行して、陰性対照の抗原を、ペプチドを加えずにBSA混合物を架橋させることによって作製した。周囲温度で一晩培養した後、グリシンを含む安定化緩衝液を反応混合物に加えることによって、架橋反応を停止させた。BSA/ペプチド混合物を等分し、−20℃で保存した。
マイクロタイタープレートを、2〜8℃において一晩、コーティング緩衝液(炭酸緩衝液、pH9.6)中で、BSAに結合した合成ペプチド0.5μg、またはBSA単独でコーティングした。非結合抗原を、PBST溶液(PBS、Tween−20)でウエルを4回洗浄することによって除去した。試験前に、IB−EIA溶液(0.2M NaHPO4−2HO緩衝液、pH7.0、0.05% Tween−20、0.5M NaCl、0.1% BSA)に血清試料を50倍希釈し、コーティングしたウエルに加えた。湿気のある雰囲気中において37℃で1.5時間培養した後、ウエルをPBST溶液で洗浄し、IB−EIA溶液に希釈したホースラディッシュペルオキシダーゼ結合ウサギ抗ニワトリ免疫グロブリン100μlと共に培養した。37℃で45分間培養した後、ウエルをPBST溶液で洗浄し、基質としてTMBを加えることによって、抗原−抗体複合体を検出した。周囲温度で15分間培養した後、2Mの硫酸50μlをそれぞれのウエルに加えることによって、反応を停止させた。光学濃度を450nmで測定した。カットオフ値(COV)は、SPFニワトリからの陰性対照試料の平均P/N比を超える3標準偏差に設定した(この場合、Pはペプチドでコーティングしたウエルからの試料のOD、NはBSAでコーティングしたウエルからの試料のOD)。
試験した血清パネルの完全なNDV特異的抗体応答を測定するために、マイクロタイタープレートを、スクロース勾配精製したNDV Clone30抗原でコーティングした。簡潔には、40mMのリン酸緩衝液(PBS、pH7.2)中において0.5%のTriton X−100で処理したウイルス抗原(1.0μg/ml)で一晩、ウエルをコーティングした。PBSTで洗浄することにより非結合抗原を除去した後、PBS中において10%v/vドナーウマ血清でウエルをポストコーティングした。ポストコーティングした抗原のみを含むウエルを、陰性対照として使用した。試験した血清試料をIB−EIA溶液中で希釈し(1:150)、陽性および陰性対照ウエルの両方に加えた。ELISA手順の残りの培養ステップは、5%のドナーウマ血清を補った共役希釈溶液IB−EIAを除いて、前述のペプチド系ELISAと同一であった。カットオフ値(COV)は、SPFニワトリからの陰性対照試料の平均P/N比を超える3標準偏差に設定した。
結果
組み換えNDV−Δ18をワクチン接種した動物からの血清を第2、5および7週に回収し、HI試験およびELISAを施した。図2に示したように、最初の免疫処置後2、5および7週間の平均HI力価はそれぞれ4.7、4.9および7.7であった。全ウイルス系ELISAでは対応する高反応もあり、組み換えウイルスに対する相当な免疫応答の誘導が示された。対照的に、このELISAでは、ペプチドでコーティングした血清は反応せず、NDV−Δ18を用いて免疫性したニワトリは、追加的な免疫処置の後でも、NPタンパク質上の主要エピトープを対象とする抗体が完全に欠けていることが示された(第7週の血清)。従来の不活化または生ウイルスワクチンを接種した動物から得た血清を分析することによって、全ウイルスに対するELISAの反応性が示された。さらに、試験したすべての血清は、ペプチド系ELISAにおいて陽性であり(図2)、従来のNDワクチンを用いて免疫性した動物から回収した血清中の、NPの主要エピトープを対象とする抗体が存在することが示された。したがって、このペプチド系ELISAによって、組み換えNDV−Δ18に対する抗体応答と、従来のND株の抗体応答を区別することができる。
実施例3.
単独あるいは他のベクターワクチンと組み合わせて投与する、卵内マ―カーワクチンとしてのNDV−Δ18
材料および方法
胚含有卵中のウイルス増殖
ウイルスの力価および胚の死亡率を決定するために、組み換えNDV−Δ18ウイルスの一連の10倍希釈液を作製し、生後9〜11日の胚を含有するSPFニワトリの卵の、尿膜腔中に接種した。胚の死亡率について少なくとも7日間、これらの卵を毎日観察し、50%の胚の致死用量(ELD50)を、ReedおよびMuench(Am.J.Hyg.27、493−497、1938)の方法を使用して決定した。培養4日後の他のセットの卵にも、迅速なプレート上のHA試験を行い、50%の胚感染用量(EID50)として表される力価を、同じ方法を使用して計算した。
卵内ワクチン接種および抗原投与
生後18日の胚を含有するSPFニワトリの卵に、組み換えNDV−Δ18ウイルスを単独で、あるいはNDVFタンパク質を発現するHVTベクターと組み合わせて接種した(Morgan他、Avian Dis.37、1032−1040、1993)。23G針を使用して、卵の平滑端、気嚢膜の真下にあけた穴を介して、0.1mlのウイルス希釈液または陰性尿膜腔液を注射した。卵は、孵化するまでさらに培養した。孵化率を記録し、一般的な健康状態についてニワトリを毎日観察した。3週齢で、血液試料を採取し、NDV赤血球凝集反応阻害(HI)試験およびELISAで、NDV抗体について血清を調べた。3週齢で、毒性のNDV Herts株を筋肉内に投与することにより、すべての動物を抗原投与した。病気の臨床的徴候または斃死の発生について、10日間の間ニワトリを毎日観察した。
結果
NDV−Δ18は、ニワトリ胚の病原性を弱める。
NDV−Δ18によって引き起こされる胚の死亡率を決定するために、3代目のNDV−Δ18の一連の10倍希釈液を、生後11日の胚を含有するSPFニワトリの卵に接種し(0.2ml/卵)、1週間培養した。驚くべきことに、7日間の培養期間中に特異的な胚の死亡率は検出されず、NDV−Δ18が胚について大幅に弱毒化されたことが示された(図3)。親ウイルス、組み換えNDV(rNDV)を接種したニワトリ胚は、接種後3日目、4log10EID50/mlより高い用量で既に死に始めた。rNDVの50%感染用量と50%致死量の間の違いは、わずか0.3log10であった。対照的にこの違いは、NDV−Δ18については8.0log10にもおよび、これが大幅に弱毒化されたことが示された(図3)。
NDV−Δ18は、有効な卵内/マ―カーワクチンである。
NDV−Δ18は、生後9〜11日の胚に施すと、ニワトリ胚について大幅に弱毒化され、したがって卵内(胚)ワクチン接種実験を行って、NDV−Δ18の安全性および効力を決定した(図1)。卵内ワクチン接種した卵から孵化したニワトリを、NDVの速現性Herts株で抗原投与した。NDV−Δ18が単独で与えられるか、NDV−Fを発現するHVT組み換え体と組み合わせて与えられるかどうかに関係なく、NDV−Δ18を有する胚が高い抗体レベルに達し、致死的抗原投与に対する防御が100%であったときに、ニワトリにワクチン接種した(表1)。対照のニワトリはすべて、抗原投与した3日以内に死んだ。これらのデータによってNDV−Δ18は、生後18日のSPFニワトリ胚に投与すると、完全な防御を与えることができることが示される。
NDV−Δ18を卵内ワクチン接種した動物を、感染した動物または従来のワクチンを接種した動物と血清学的に区別することができるかどうかを決定するために、3週齢で血液試料を回収し、実施例2に記載したようにELISAを施した。予想通り、NDV−Δ18をワクチン接種した動物からの血清はすべて、NP遺伝子上の主要エピトープを含むペプチド系のELISAに関しては反応しなかったが、これらの血清はすべて、全ウイルスELISA、およびHI試験では反応した(図4)。このことは、NDV−Δ18の卵内投与が、NDV−Δ18をワクチン接種した動物と感染した動物を区別する可能性に影響を与えることはなかったことを示す。HVT−NDV/F、NDV融合(F)タンパク質を発現するベクターワクチンと組み合わせてNDV−Δ18を卵内投与したときに、NP遺伝子上の主要エピトープに対する応答が無いことも確認した(図4)。このことは、NDV核タンパク質のエピトープ領域を発現しない他のベクターワクチンと、NDV−Δ18を組み合わせることができることを示す。
Figure 2010145412
表1に示すように、高用量のNDV−Δ18を使用したときは特に、SPF動物の孵化率は低下した。母性由来抗体(MDA)の存在がNDV−Δ18の安全性を調節するかどうかを判定するために、商業用のニワトリにNDV−Δ18を単独で、あるいはこれをHVT−NDV/Fと組み合わせて卵内ワクチン接種した。胚を含有する商業用のニワトリの卵の孵化率は、NDV−Δ18単独の、あるいはこれをHVT−NDV/Fと組み合わせた卵内投与によって影響を受けることはまったくなく(表2)、MDAを有する動物におけるNDV−Δ18の安全性が実証された。
Figure 2010145412
さらに、胚形成の第18日または第19日に、NDV−Δ18の投与後に孵化率を比較した。表3に示すように、胚形成の第18日にワクチン接種した胚の76%と比べて、胚形成の第19日に卵内ワクチン接種したSPF胚の孵化率は100%であった。
Figure 2010145412
実施例4.
有効な孵化後のマーカーワクチンとしてのNDV−Δ18
材料および方法
孵化後のワクチンとしてのNDV−Δ18の安全性および効力を判定するために、生後1日のSPFニワトリに、雛1匹当たり6log10EID50の用量で点眼経路によりワクチン接種した。3週齢で、臨床的徴候についてニワトリを毎日観察し、血液試料を採取し、毒性のNDV Herts株を筋肉内に投与することにより、すべての動物に抗原投与した。NDVの赤血球凝集反応阻害(HI)試験およびELISAで、NDV抗体について血清を調べた。抗原投与後の2週間の間に、病気の臨床的徴候または斃死の発生について、ニワトリを毎日観察した。
結果
孵化後にNDV−Δ18をワクチン接種したニワトリではNDVに特異的な抗体が発生し、致死的な抗原投与に対する防御はこの投与量で90%を超えた(表4)。対照のニワトリはすべて、抗原投与の3日以内に死んだ。抗原投与前の観察期間中は、ワクチン接種関連の悪い徴候は検出されなかった。NDV−Δ18をワクチン接種した動物を、感染した動物または従来のワクチンを接種した動物と血清学的に区別することができるかどうかを決定するために、抗原投与の直前に血液試料を回収し、実施例2に記載したようにELISAを施した。予想通り、すべての血清は全ウイルスELISA、およびHI試験では反応したが、NP遺伝子上の主要エピトープを含むペプチド系ELISAに関しては反応しなかった。まとめて考えると、これらのデータによって、NDV−Δ18は卵内ワクチン接種に適しているだけでなく、安全で有効な孵化後のマーカーワクチンであることも実証される。
Figure 2010145412
実施例5.
外来性エピトープを発現するマーカーワクチン
材料および方法
組み換えウイルスの構築および作製
組み換えNDVによって外来性エピトープが発現される可能性を判定するために、マウスヘルペスウイルス(MHV)のS2糖タンパク質の、充分に特徴付けられているB細胞エピトープ(Talbot他、Virology、132、250−260、1984;Luytjes他、J.Virol.63、1408−1415、1989)を選択して、NDVのNP主要エピトープを交換した。インフレーム置換によって、いずれか16個のアミノ酸(NPのアミノ酸444〜459に対応する、ヌクレオチド位置1451〜1499)、または12個のアミノ酸(NPのアミノ酸444〜455に対応する、ヌクレオチド位置1451〜1486)を、MHVのS2糖タンパク質上のエピトープを含む、アミノ酸16個(MHVエピトープ−1)、またはアミノ酸10個(MHVエピトープ−2)の2つの重複配列でそれぞれ置換した。
MHVエピトープ−1の配列(受託番号NCBI NC 001846;完全なゲノムのヌクレオチド26464〜26511;S2タンパク質のアミノ酸845〜860):
Figure 2010145412
MHVエピトープ−2の配列(受託番号NCBI NC 001846;完全なゲノムのヌクレオチド26470〜26499;S2タンパク質のアミノ酸847〜856):
Figure 2010145412
PCR突然変異を、適切なプライマーの対を使用して、実施例1に記載した2.2kbのMlul/Apalサブクローンに行った:
突然変異を導入したクローンをAatll/Apalによって消化し、pflNDVの同じ部位にクローン化した。導入された突然変異が存在することを、それぞれのクローンを配列決定することによって確認した。NPアミノ酸444〜459がMHVエピトープ−1の配列に置換されており、NPアミノ酸444〜455がMHVエピトープ−2の配列に置換されている、生成した完全長のクローンを、それぞれNDV−MHV1およびNDV−MHV2と名付けた。ウイルスのトランスフェクションおよび回収は、実施例1に記載したように行った。トランスフェクション後の3〜5日目に、上澄みを採取し、生後9〜11日の胚を含むSPFニワトリの卵の漿尿腔に接種した。培養の3〜4日後に、漿尿腔液中のウイルスの存在を、ニワトリの赤血球を使用する、迅速なプレート上の赤血球凝集反応(HA)試験によって決定した。
免疫蛍光性の分析
導入したMHVエピトープの発現を判定するため、親組み換え体Clone30、NDV−Δ18、NDV−MHV1およびNDV−MHV2を用いて、BSR−T7細胞を0.01の感染多重度(moi)で感染させた。24時間培養した後、感染させた細胞を室温で1時間、冷たいエタノール(96%)で固定した。PBSで3回洗浄した後、Fタンパク質、NPタンパク質の主要エピトープ、またはMHVエピトープを対象とするモノクローナル抗体と共に細胞を培養した。細胞を洗浄し、抗マウス抗体と結合したFITCで染色し、蛍光顕微鏡によって調べた。
NDV−MHV1またはNDV−MHV2を用いたニワトリの免疫処置、および血清の分析
3週齢のそれぞれ10匹のSPFのニワトリの2群に、0.2ml当たり6.0log10EID50の用量で眼−鼻経路によって、NDV−MHV1またはNDV−MHV2を用いて免疫し、最初の免疫処置の5週間後に同じ用量を追加接種した。ワクチン接種の直前、最初の免疫処置の2、5および7週間後に、血清試料を回収した。血清試料を赤血球凝集反応阻害(HI)試験およびELISAにより試験して、血清変換のレベルを決定した。
酵素結合免疫吸着検査法(ELISA)
NDV−MHV1およびNDV−MHV2ウイルスで免疫性を与えたニワトリが、発現されるMHVエピトープに対する特異的な抗体が発生させたかどうかを判定するために、ELISAプレートを、スクロース勾配精製したMHV株A59抗原でコーティングした。40mMのリン酸緩衝液(PBS、pH7.2)中において1%のTriton X−100で処理したウイルス抗原で一晩、ウエルをコーティングした。非結合抗原の除去、ELISA手順の遮断および残りの培養ステップは、実施例2に記載した全NDV系ELISAと同一であった。NPエピトープに対する応答が無いことを判定するために、NP主要エピトープを含む18量体合成ペプチドを使用するELISAを、実施例2に記載したように行った。同様に、完全なNDV特異的抗体応答を、実施例2に記載したように、スクロース勾配精製したNDV Clone30抗原でコーティングしたELISA用プレートにおいて測定した。
マウスの免疫処置および抗原投与
NDVによって発現されるMHVエピトープの防御能力を判定するために、4週齢のBalb/cメスMHV血清陰性マウスの群を、免疫処置用および抗原投与実験用に使用した。それぞれ10匹のマウスの2群に、マウス1匹当たり6.0log10EID50の用量で、NDV−MHV1またはNDV−MHV2を用いて免疫し、4週間後に同じ用量を追加接種した。免疫処置したマウスならびに同様の週齢の10匹の対照マウスを、10週齢時に(追加免疫処置の2週間後)、腹膜内経路によりマウス1匹当たり10LD50の用量で、野生型MHV A59株を用いて抗原投与した。抗原投与後の2週間の間に、MHVによる臨床的徴候または斃死について、ニワトリを観察した。
結果
トランスフェクトした細胞からの上澄みを採取し、生後9〜11日の胚を含有するSPFニワトリの卵に2回継代した。次いで尿膜腔液試料を採取し、HA試験を施した。NDV−MHV1およびNDV−MHV2組み換え体でトランスフェクトした細胞からの上澄みを接種した卵中で、HAを検出した。さらに、回収したウイルスを、胚含有卵においてさらに2回継代した。これらの組み換えウイルスの回収によって、NP主要エピトープはウイルス複製には必須ではないだけでなく、これを完全に外来性である配列またはエピトープで置換することもできることが示される。
組み換えウイルスが新たに導入されたエピトープを発現するかどうかを判定するために、BSR細胞を記載した材料および方法で感染させ、免疫蛍光性の分析を施した。融合タンパク質を対象とするモノクローナル抗体(Mab)を使用すると、Fタンパク質の発現は、すべてのウイルスで区別できなかった。対照的に、NP主要エピトープを対象とするMabは、親ウイルスClone30とのみ反応した。予想通り、MHVエピトープを対象とするMabは、NDV−MHV1またはNDV−MHV2で感染させた細胞とのみ反応し、NP遺伝子のオープンリーディングフレーム内で、エピトープがきちんと発現されることが示された。
免疫処置直前(T=0)および最初の免疫処置の7週間後(T=7)に回収した血清に、次いでHI試験および全NDV ELISAを施した。図面中に示すように、ワクチン接種7週間後のすべてのニワトリのHI力価は、6logHI単位を超えており、全NDV系のELISAにおいて測定した反応値も、非常に高かった(図5〜8)。興味深いことに、NDV−MHV1またはNDV−MHV2で免疫された80%〜90%のニワトリが、MHV全ウイルス抗原系のELISAにおいて陽性に反応し、組み換えNDVによって発現されるMHVエピトープに対する特異的な抗体を、ニワトリが産生することが示された(図9〜11)。対照的に、18量体ペプチドでコーティングされた血清はELISAにおいて反応せず、NDV−MHV1またはNDV−MHV2で免疫されたニワトリは、NP上の主要エピトープを対象とする抗体が完全に欠けていることが示された。この性質により、陽性および陰性マーカーとしての診断試験におけるさらなる安全性が与えられ、組み換えウイルスが魅力的な二重性のマーカー候補になる。
導入したエピトープの致死的な抗原投与に対する防御の能力をさらに示すために、組み換えウイルスを用いてマウスに免疫性を与え、最初の免疫処置の6週間後にそれらを抗原投与した。マウスはNDVの本来の宿主ではないが、免疫されたマウスでは、致死的なMHVの抗原投与に対する相当なレベルの防御が得られた(表5)。したがって、これらの組み換えウイルスは、マーカーワクチンとしてだけでなく、無関係な病原体に対して防御するための、外来性のエピトープを発現させるためのベクターとして魅力的である。
Figure 2010145412
図面の説明
図1は、組み換えNDV構築体を示す図である。マイナス鎖ゲノムRNA中の、NDV遺伝子配列の概略図である。NP遺伝子上の主要エピトープの周辺の配列(位置1442〜1501、NPアミノ酸441〜460)は、陽性の意味で表す。破線は、NDV−Δ12およびNDV−Δ18中の12個または18個のアミノ酸の欠失をそれぞれ示す。NDV−Δ48は、最後のアミノ酸の次の停止コドン(*)のサインによって示される、C末端切断型NP(48残基)を有している。
図2は、15匹のSPFニワトリに、3週齢で眼−鼻経路によってNDV−Δ18をワクチン接種し、5週齢でもう1度追加接種したことを示す図である。ワクチン接種直前(D18 0W)、最初のワクチン接種の2週間(D18 2W)、5週間(D18 5W)、および7週間(D18 7W)後に回収した血清試料に、物質および方法のセクションに記載したELISAおよびHI試験を施した。生の商業用NDワクチン、Clone−30に対する血清学的応答を、1週齢でワクチン接種し4週間後に採血した19匹のSPFニワトリと同様に評価した。NEWCAVAC群については、不活化商業用ワクチンを3週齢で21匹のSPFニワトリに接種し、免疫処置の3週間後に回収した血清試料に、同様の血清学的検査を行った。(D18=NDV−Δ18)。
図3は、SPFニワトリ胚における、rNDVおよびNDV−Δ18の病原性を示す図である。生後11日の胚を含有するSPFニワトリの卵に、親rNDVまたは突然変異体NDV−Δ18を接種し、7日間すなわち胚の死が起こるまで培養した。NDV−Δ18が、7日間の間に示した用量で胚の斃死を引き起こすことはなかったが、一方でrNDVは1EID50/mlという低い用量でも致死性であった(死亡率約10%)。rNDVを接種した胚は、高用量での接種後早くも3日間で死に始めた。
図4は、NDV−Δ18を単独で、あるいはこれをHVT−NDV/F、NDV融合タンパク質を発現するベクターワクチンと組み合わせて卵内ワクチン接種したSPFニワトリの血清学的応答を示す図である。動物には胚形成の第18日にワクチン接種し、3週齢で回収した血清試料に、物質および方法のセクションに記載したようにHI試験およびELISAを行った(D18=NDV−Δ18)。
図5〜8は、NDV−MHV1またはNDV−MHV2をワクチン接種したSPFニワトリの血清学的応答を示す図である。免疫処置直前(T=0)および最初の免疫処置の7週間後(T=7)に回収した血清試料に、HI試験および全NDV抗原系ELISAを施した。
図9〜11は、MHVエピトープに特異的な抗体を、ニワトリが産生することを示す図である。図5(NDV−MHV1およびNDV−MHV2に関する)または図2(NDV−Δ18に関する)に記載したのと同じ血清に、全MHV抗原系ELISAを施した。

Claims (4)

  1. 447〜455位のNPのアミノ酸領域中に位置する主要エピトープに反応性を示す抗体の有無について、動物の試料を検査するステップを含む、家禽類のNDV感染を判定するための方法。
  2. (i)抗NDV抗体を含む疑いがある試料を、唯一のエピトープ含有領域として447〜455位のアミノ酸領域を含むNPの断片と共にインキュベートするステップ、
    (ii)抗体−抗原複合体の形成を可能にするステップ、および
    (iii)抗体−抗原複合体の存在を検出するステップ
    を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. NP断片が443〜460位のアミノ酸配列を有する18量体ペプチドであることを特徴とする請求項2に記載の方法。
  4. 447〜455位のアミノ酸領域、好ましくは443〜460位のアミノ酸領域を含むNP断片を含んだ、請求項1から3に記載の方法を行うのに適した診断試験用キット。
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