以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るバランサ装置5が搭載された直列4気筒エンジンの要部を当該エンジンの本体部1の前面側から見た概略図を示している。このエンジン本体部1には、シリンダブロック11の下面にロアブロック21を介してオイルパン3が結合されている。このオイルパン3の内部には、ロアブロック21の下面に結合されたバランサ装置5や図示しないオイルポンプが収容されている。
エンジン本体部1は、同図に示す鉛直線Sに対して約10度傾いた状態で車両に搭載されている。このため、オイルパン3の内部に貯留されるオイルは、そのレベル面Lがオイルパン3とロアブロック21との接合面に対して約10度傾斜した状態でオイルパン3の略下半分を満たしている。
このエンジン本体部1の前面側には、クランク軸9の回転をバランサ装置5やオイルポンプに伝達して、これらを駆動する伝動機構が配設されている。この伝動機構は、クランク軸9の先端部に取り付けられた駆動スプロケット19、後述する駆動側バランサ軸15の先端部に取り付けられた従動スプロケット35、オイルポンプの従動スプロケット43、これらに巻き掛けられた伝導チェーン23、スプロケット15,35,43間を走行する伝導チェーン23のテンションを調整する不図示のテンショナ等で構成されている。
図2〜図5は、バランサ装置5の平面図、側面図、正面図及び背面図をそれぞれ示す。これらに示すように、バランサ装置5は、一つのユニットとして構成されており、それぞれクランク軸と平行な方向であるエンジン前後方向に延び且つエンジン左右(幅)方向(エンジン上下方向とエンジン前後方向とに直交する方向)に並ぶ駆動側及び従動側バランサ軸15,25(一対のバランサ軸)と、これら両バランサ軸15,25を収容するバランサハウジング7と、当該バランサハウジング7を上方から覆うハウジングカバー17と、当該バランサハウジング7の後端部を覆うスラストプレート27とを備えている。なお、以下の説明では、エンジン前後方向を前後方向と、エンジン前後方向前側(エンジン前後方向他方側)を前側と、エンジン前後方向後側(エンジン前後方向一方側)を後側と、エンジン左右方向を左右方向と、エンジン左右方向左側を左側と、エンジン左右方向右側を右側と、エンジン上下方向を上下方向という。
−バランサハウジング−
バランサハウジング7は、分割面を有しておらず、その全体が一体鋳造されたアルミダイキャスト品である。このバランサハウジング7は、図6に示すように、駆動側バランサ軸15の軸方向中間部(言い換えると、駆動側バランサ軸15の後述する延長部15fの後端部)及び従動側バランサ軸25の前端部を支持する前側軸受壁部37(第2軸受壁部、第3軸受壁部)と、各バランサ軸15,25の後端部を支持する後側軸受壁部47(第1軸受壁部)と、駆動側バランサ軸15の前端部(言い換えると、駆動側バランサ軸15の延長部15fの前端部)を支持する先端側軸受壁部57(第4軸受壁部)と、前側軸受壁部37と後側軸受壁部47との間に配置されるハウジング本体部67と、先端側軸受壁部57と前側軸受壁部37との間に配置されるハウジング延長部77と、後述する連動ギヤ75a,85aを収容するギヤ収容部87とを有している。
前側軸受壁部37には、図7に示すように、前後方向に延び、駆動側バランサ軸15の軸方向中間部(駆動側バランサ軸15の延長部15fの後端部)を回転自在に支持する左側軸受孔37a(第3軸受孔)と前後方向に延び、従動側バランサ軸25の前端部を回転自在に支持する右側軸受孔37b(第2軸受孔)とが左右方向に並んで貫通形成されている。駆動側バランサ軸15を支持する左側軸受孔37aの内径は、従動側バランサ軸25を支持する右側軸受孔37bの内径よりも大きく設定されている。各軸受孔37a,37bには、後述するニードルローラベアリング31,61(転がり軸受)が挿嵌されている。
また、前側軸受壁部37の左右方向両端部には、その上端から上方に突設する略円柱状の取付座37c,37dが形成されているとともに、この取付座37c,37dの中央部で前側軸受壁部37の端部を上下方向に貫通し、バランサハウジング7をロアブロック21の下面に締結するための締結ボルト(図示せず)が挿通される取付孔37e,37fが形成されている。なお、左側の取付孔37eには、円筒状のピン37gの略下半分が嵌入されている。このピン37gは、バランサハウジング7をロアブロック21に取り付ける際、ロアブロック21の下面に形成されたボルト挿通孔21kに挿通される位置決めピンとして用いられ、その内部を締結ボルトが貫通するようになっている。
前側軸受壁部37の右側の前端面には、図4に示すように、その開口を原則的にバランサハウジング7外のオイルと隔離するために、当該右側軸受孔37bにその前側開口端部からキャップ部材45が嵌合されている。このキャップ部材45は、後述する第3潤滑油路97の一部を構成している。
後側軸受壁部47には、図8に示すように、前後方向に延び、各バランサ軸15,25の後端部を回転自在に支持する2つの軸受孔47a,47b(第1軸受孔)が左右方向に並んで貫通形成されている。駆動側バランサ軸15を支持する左側軸受孔47aの内径は、従動側バランサ軸25を支持する右側軸受孔47bの内径と同じ値に設定されている。各軸受孔47a,47bには、前側軸受壁部37の各軸受孔37a,37bと同様に、ニードルローラベアリング41,41が挿嵌されている。
また、後側軸受壁部47の左右方向両端部には、その上端から突設する略円柱状の取付座47c,47dが形成されているとともに、この取付座47c,47dの中央部を上下方向に貫通し、バランサハウジング7締結用の締結ボルトが挿通される取付孔47e,47fが形成されている。なお、右側の取付孔47fには、前側軸受壁部37と同様に、ロアブロック21の下面に形成されたボルト挿通孔21lに挿通される位置決め用のピン47gの略下半分が嵌入されている。また、後側軸受壁部47は高さ寸法が、前側軸受壁部37の高さの寸法よりも大きくなっており、その下端が当該前側軸受壁部37の下端よりも下方に位置している。
先端側軸受壁部57には、図9に示すように、前後方向に延び、駆動側バランサ軸15の前端部(駆動側バランサ軸15の延長部15fの前端部)を回転自在に支持する軸受孔57a(第4軸受孔)が形成されている。この軸受孔57aには、ニードルローラベアリング51(転がり軸受)が挿嵌されている。先端側軸受壁部57の左右方向両端部には、その上端から上方に突設する略円柱状の取付座57b,57cが形成されているとともに、この取付座57b,57cの中央部で先端側軸受壁部57の端部を上下方向に貫通し、バランサハウジング7締結用の締結ボルトが挿通される取付孔57d,57eが形成されている。
駆動側バランサ軸15を支持する各軸受孔37a,47a,57aは、図7〜図9に示すように、先端側軸受壁部57の軸受孔57aの内径が最も小さく、後側軸受壁部47の軸受孔47aの内径が最も大きくなるように設定されている。一方、従動側バランサ軸25を支持する軸受孔37b,47bは、前側軸受壁部37の軸受孔37bの内径が後側軸受壁部47の軸受孔47bの内径よりも小さくなるように設定されている。
ハウジング本体部67は、前側軸受壁部37と後側軸受壁部47とを連結するように前後方向に延びており、図10に示すように、底壁部67aと、この底壁部67aの左右方向両端部から立ち上がる側壁部67b,67cとを有していて、その上面が開放している(開放部分67oを有している)。
底壁部67aは、エンジン正面視で下方に膨らむ二こぶ状をなすように形成されていて、その左右方向両端部が各側壁部67b,67cと滑らかに連結されている。これにより、ハウジング本体部67の内部には、左右方向に並び、各バランサ軸15,25の後述するメインウエイト部15d,25cを収容する2つのメインウエイト収容部67d,67eが形成されている。
駆動側バランサ軸15のメインウエイト部15dを収容する左側メインウエイト収容部67dは、従動側バランサ軸25のメインウエイト部25cを収容する右側メインウエイト収容部67eよりも大きな容積を有している。なお、底壁部67aには、メインウエイト収容部67d,67eに溜まった潤滑油(オイル)を重力排出するための排出用油穴67f,67g,67hが3つ形成されている(図6参照)。また、底壁部67aは、前側軸受壁部37の下端よりも下方に膨出していて、その下端(左側のこぶの頂点)が後側軸受壁部47の下端と略同じ高さとなっている。
一方、側壁部67b,67cの上端は、前側及び後側軸受壁部37,47の上端よりも低い位置に設定されている。なお、各側壁部67b,67cの上端面には、ハウジングカバー17を取り付けるためのボス部67i,67j,67k,67lが前後方向に離間して2つずつ突設されているとともに(図6参照)、左右方向内側の側縁に前後方向に延びる突条部67m,67nが形成されている。この突条部67m,67nの上端はボス部67i,67j,67k,67lの上端よりも低く設定されている。
ハウジング延長部77は、先端側軸受壁部57と前側軸受壁部37とを連結するように前後方向に延びており、図11に示すように、略円筒状に形成されている。ハウジング延長部77の内部には、駆動側バランサ軸15の後述する延長部15fのサブウエイト部15eを収容するサブウエイト収容部77eが形成されている。
このハウジング延長部77の前端部には、その頂部付近を上下方向に貫通する供給用油穴77bが形成されている。また、ハウジング延長部77の外周面の上半分には、供給用油穴77bを囲むように平面視でL字状の空間を形成し、上方に延びる壁77aが形成されている。この壁77aに囲まれた平面視L字型の空間が、上方に開口する、エンジン本体部1から落下してくるオイルを捕集するための油捕集部77cを構成している。そして、供給用油穴77bが、この油捕集部77cの内部とハウジング延長部77の内部とを連通する、当該油捕集部77cに捕集されたオイルを前側軸受壁部37及び先端側軸受壁部57の軸受孔37a,57aに嵌挿されるニードルローラベアリング31,51に供給するための油供給孔を構成している。これら供給用油穴77b及び壁77aは、後述する第1潤滑油路93の一部を構成している。
サブウエイト収容部77eには、先端側軸受壁部57及び前側軸受壁部37の軸受孔57a,37aに設けられたニードルローラベアリング51,31の前後方向の間隔を保持する略円筒状のスぺーサ91が嵌挿されている。このスペーサ91には、供給用油穴77bに対応する前後方向位置に、その外周面を全周に亘って凹ませた環状溝部91aと、当該スぺーサ91を上下左右に貫通する4つの供給用貫通孔91b,91c,91d,91eとが形成されている。これら供給用貫通孔91b,91c,91d,91eのうちスぺーサ91を上下に貫通する上下の供給用貫通孔91b,91dは、平面視で供給用油穴77bと一部重なるように上下方向に並んでいる。なお、これら環状溝部91a及び供給用貫通孔91b,91c,91d,91eも、第1潤滑油路93の一部を構成している。
ギヤ収容部87は、後側軸受壁部47の後端面からさらに後方に延びることにより、バランサハウジング7の後端部に設けられており、図12に示すように、エンジン正面視で下方に膨らむ二こぶ状をなすように形成されていて、各バランサ軸15,25に設けられた、両バランサ軸15,25を同期回転させるための連動ギヤ75a,85aの略下半分を収容するようになっている。このギヤ収容部87の後端部には、スラストプレート27を取り付けるための3つのボルト挿通孔87a,87b,87bが左右両端部と中央部に形成されている。そして、図16に示すように、スラストプレート27をギヤ収容部87の後端部(開口端部)87cに取り付けることにより、上方に開口して連動ギヤ75a,85aの略下半分を覆うギヤ収容室87dが形成される。
バランサハウジング7を形成する各部を以上のような構成とすることにより、バランサハウジング7全体としては、その上面に開放部分67oを有するとともにその後端が開放された略箱状に形成されている。そして、ギヤ収容部87の左側部分、後側軸受壁部47の左側軸受孔47a、左側メインウエイト収容部67d、前側軸受壁部37の左側軸受孔37a、サブウエイト収容部77e及び先端側軸受壁部57の軸受孔57aが駆動側バランサ軸15の収容空間を構成している。一方、ギヤ収容部87の右側部分、後側軸受壁部47の右側軸受孔47b、右側メインウエイト収容部67e、前側軸受壁部37の右側軸受孔37bが従動側バランサ軸25の収容空間を構成している。
バランサハウジング7は、その各軸受壁部37,47,57がロアブロック21(エンジン本体部1)に設けられたクランク軸9用の軸受壁部21e,21f,21g(図13参照)に取り付けられることで、エンジン本体部1の下方に取り付けられている。より具体的には、先端側軸受壁部57は、その取付孔57d,57eに挿通された締結ボルトを、ロアブロック21の下面に形成されたボルト挿通孔21h,21iに締結することで、第1気筒21aの前側に位置する軸受壁部21eに取り付けられている。また、前側軸受壁部37は、その取付孔37e,37fに挿通された締結ボルトを、ロアブロック21の下面に形成されたボルト挿通孔21k,21jに締結することで、第1気筒21aと第2気筒21bとの間に位置する軸受壁部21fに取り付けられている。さらに、後側軸受壁部47は、その取付孔47e,47fに挿通された締結ボルトを、ロアブロック21の下面に形成されたボルト挿通孔21m,21lに締結することで、第3気筒21cと第4気筒21dとの間に位置する軸受壁部21g(相隣り合う2つの気筒の間のクランク軸用の軸受壁部)に取り付けられている。
このように、前側及び後側軸受壁部37,47を、相隣り合う2つの気筒(第2及び第3気筒21b,21c)の前後に位置する軸受壁部21f,21gに取り付けることから、バランサハウジング7の開放部分67oは、図14に示すように、第2及び第3気筒21b,21cに跨るようになっている。
−バランサ軸−
駆動側及び従動側バランサ軸15,25は、図15〜図17に示すように、バランサハウジング7の内部に前後方向に延びるように配置されている。駆動側バランサ軸15は、前側軸受壁部37、後側軸受壁部47及び先端側軸受壁部57に形成された各軸受孔37a,47a,57aに回転自在に支持されている一方、従動側バランサ軸25は、前側軸受壁部37及び後側軸受壁部47に形成された各軸受孔37b,47bに回転自在に支持されている。駆動側バランサ軸15は、その前端部が従動側バランサ軸25の前端部よりもさらに前側に延長されている。換言すると、駆動側バランサ軸15は、従動側バランサ軸25よりもさらに前側に延びる延長部15fを有している。両バランサ軸15,25の軸心は、クランク軸9の軸心を通る垂直面に関して同一水平面内で左右対称になるよう互いに平行に配置されている。
駆動側バランサ軸15は、先端側ジャーナル部15aと、前側ジャーナル部15bと、後側ジャーナル部15cと、メインウエイト部15dと、サブウエイト部15eと、連動ギヤ75aとを有していて、先端側ジャーナル部15aよりもさらに前側の部分(先端部)に従動スプロケット(駆動力伝達部)35が取り付けられている。駆動側バランサ軸15は、この従動スプロケット35を介しクランク軸9からの駆動力を受けて駆動するようになっている。
先端側、前側及び後側ジャーナル部15a,15b,15cは、その外周にニードルローラベアリング51,31,41が介装された状態でそれぞれ先端側、前側及び後側軸受壁部57,37,47に形成された各軸受孔57a,37a,47aに支持されている。このように、駆動側バランサ軸15を従動スプロケット35の近傍(先端側ジャーナル部15a)で支持することで、延長部15fの軸曲がりを抑えて従動スプロケット35の振動を抑制することができる。なお、先端側、前側及び後側ジャーナル部15a,15b,15cは、先端側ジャーナル部15aの外径が最も小さく、後側ジャーナル部15cの外径が最も大きくなるように形成されている。
各ニードルローラベアリング31,41,51は、各軸受孔37a,47a,57aの内周面に対して回転不能に内嵌固定された環状のアウターレース31a,41a,51aと、各ジャーナル部15b,15c,15aの外周面に対して回転不能に内嵌固定された環状のインナーレース31b,41b,51bと、アウターレース31a,41a,51aとインナーレース31b,41b,51bとの間に設けられた複数のニードルローラ31c,41c,51cと、これらのニードルローラ31c,41c,51cを周方向に転動可能に保持する環状のホルダー31d,41d,51dとからなる。
ホルダー31d,41d,51dは、ニードルローラ31c,41c,51cの転動に応じて各軸受孔内37a,47a,57aで回転するようになっている。なお、3つのニードルローラベアリング31,41,51のうち先端側ジャーナル部15aに介装されたニードルローラベアリング51のみ、アウターレース51aが断面コ字状となっており、その内方にニードルローラ51cとホルダー51dとが予め組み込まれたものとなっている。
一方、前側及び後側ジャーナル部15b,15cに介装されるニードルローラベアリング31,41は、アウターレース31a,41aが単純に円筒形状となっており、それらに対応するニードルローラ31c,41cとホルダー31d,41dの予備組み体が図15に示すようにアウターレース31a,41aと別扱いとなっている。また、後側ジャーナル部15cに介装されたニードルローラベアリング41は、そのアウターレース41aがインナーレース41b及びホルダー41dよりも後側に延びていて、連動ギヤ75aの前端部を全周に亘って囲むように構成されている。
メインウエイト部15dは、前側ジャーナル部15bと後側ジャーナル部15cとの間に形成されていて、ハウジング本体部67の左側メインウエイト収容部67dに収容されている。このメインウエイト部15dは、図10に示すように、エンジン正面視で、駆動側バランサ軸15の軸心を通る垂直面に関して左右対称になるように当該駆動側バランサ軸15の外周面を略半円の領域にて窪ませることで重心がアンバランスとなるように略半円型に形成されている。換言すると、メインウエイト部15dは、重心が軸心から偏心した略半円柱形状のマス部15gを有している。
なお、メインウエイト部15dの前側ジャーナル部15bの近傍部15iには、偏心形状部(マス部15g)が形成されていない。このため、メインウエイト部15dは、前側ジャーナル部15bと後側ジャーナル部15cとの間に亘って偏心形状部が形成されたものよりも、その重心G2が後側に位置している(図15参照)。
また、メインウエイト部15dは、その回転軌跡の外径が前側及び後側ジャーナル部15b,15cの外径よりも大きくなるように形成されている。より詳しくは、メインウエイト部15dの回転軌跡の外径は、前側ジャーナル部15bに嵌装されたニードルローラベアリング31のインナーレース31bの外径よりも大きく設定されている一方、後側ジャーナル部15cに嵌装されたニードルローラベアリング41のアウターレース41aの内径よりも小さく設定されている。
サブウエイト部15eは、先端側ジャーナル部15aと前側ジャーナル部15bとの間に形成されていて、ハウジング本体部67のサブウエイト収容部77eに収容されている。このサブウエイト部15eは、エンジン正面視で、駆動側バランサ軸15の軸心を通る垂直面に関して左右対称になるように当該駆動側バランサ軸15の外周面を略半円の領域にて窪ませることで重心がアンバランスとなるように略半円型に形成されている。換言すると、サブウエイト部15eは、重心が軸心から偏心した略半円柱形状のマス部15hを有している。
このサブウエイト部15eの回転軌跡の外径は、メインウエイト部15dの回転軌跡の外径よりも小さく設定されている一方、先端側及び前側ジャーナル部15a,15bの外径とほぼ同じとなるように設定されている。
連動ギヤ75aは、メインウエイト部15dの後側である駆動側バランサ軸15の後端部に駆動側バランサ軸15のニードルローラベアリング41(一方側転がり軸受)の後側に隣接するように設けられており、当該駆動側バランサ軸15に嵌合しているギヤ本体部75cと、このギヤ本体部75cの前端面からニードルローラベアリング41のアウターレース41aの内部まで前側に延びる前側円筒部75b(移動制限部)と、このギヤ本体部75cの後端面から後側に延びる後側円筒部75gとを有している。
ギヤ本体部75cは、ヘリカルギヤからなっており、従動側バランサ軸25の後述するギヤ本体部85c(ヘリカルギヤ)と互いに噛み合うようになっている。このギヤ本体部75cの後側面には、エンジン背面視で後側円筒部75gを囲む円環状の段差部75hが形成されている。
前側円筒部75bの外周面には、その前端部に径方向外側に突起する環状凸部75dが形成されている一方、後側円筒部75gの外周面には、その後端部に径方向外側に延びる環状鍔部75eが形成されている。
環状凸部75dは、後側ジャーナル部15cの前端縁に配置されたリングプレート100aとともにその間の前後方向のスペースを確保し、当該後側ジャーナル部15cに介装されたニードルローラベアリング41のホルダー41dの前後方向の移動を制限している。また、この環状凸部75dは、その径方向の先端部(外周面)が当該ニードルローラベアリング41のアウターレース41aの内周面に近接することにより、当該連動ギヤ75aの回転に伴って飛散したオイルが、当該ニードルローラベアリング41に過剰に供給されるのを制限している。
環状鍔部75eは、その外周面の位置がエンジン背面視で段差部75hの外周面の位置と略一致していて、当該段差部75h及び後側円筒部75gとともに環状のスラスト規制溝75fを形成している。このスラスト規制溝75fには、後述するスラストプレート27のスラスト規制部27aが嵌装されており、当該スラスト規制溝75fはスラスト規制部27aに対し擦動自在となっている。
また、前側ジャーナル部15bを支持するニードルローラベアリング31のホルダー31dは、その前側ジャーナル部15bに内嵌固定されたインナーレース31bの前後方向両側に配置固定されたリングプレート100a,100bによりその前後方向の移動を規制されている。
一方、従動側バランサ軸25は、前側ジャーナル部25aと、後側ジャーナル部25bと、メインウエイト部25cと、連動ギヤ85aとを有している。
前側及び後側ジャーナル部25a,25bは、その外周にニードルローラベアリング61,41が介装された状態でそれぞれ前側及び後側軸受壁部37,47に形成された軸受孔37b,47bに支持されている。なお、これらジャーナル部25a,25bは、前側ジャーナル部25aの外径よりも後側ジャーナル部25bの外径の方が大きく形成されている。
各ニードルローラベアリング61,41は、駆動側バランサ軸15に設けられた各ニードルローラベアリング31,41,51と同様に、環状のアウターレース61a,41aと、環状のインナーレース61b,41bと、複数のニードルローラ61c,41cと、環状のホルダー61d,41dとからなる。なお、前側ジャーナル部25aに介装されたニードルローラベアリング61は、アウターレース61aとホルダー61dとが一体形成されている。また、後側ジャーナル部25bに介装されたニードルローラベアリング41は、そのアウターレース41aがインナーレース41b及びホルダー41dよりも後側に延びていて、連動ギヤ85aの前端部を全周に亘って囲むように構成されている。
メインウエイト部25cは、前側ジャーナル部25aと後側ジャーナル部25bとの間に形成されていて、ハウジング本体部67の右側メインウエイト収容部67eに収容されている。このメインウエイト部25cは、駆動側バランサ軸15のメインウエイト部15dと同様に、当該従動側バランサ軸25の外周面を略半円の領域にて窪ませることで重心がアンバランスとなるように略半円型に形成されている。換言すると、メインウエイト部25cは、重心が軸心から偏心した略半円柱形状のマス部25eを有している。
メインウエイト部25cは、その回転軌跡の外径が前側及び後側ジャーナル部25a,25bの外径よりも大きくなるように形成されている。より詳しくは、メインウエイト部25cの回転軌跡の外径は、前側ジャーナル部25aに嵌装されたニードルローラベアリング61のインナーレース61bの外径よりも大きく設定されている一方、後側ジャーナル部25bに嵌装されたニードルローラベアリング41のアウターレース41aの内径よりも小さく設定されている。
なお、駆動側および従動側バランサ軸15,25の前側ジャーナル部15b,25aと後側ジャーナル部15c,25bとの間にはメインウエイト部15d,25cに並んで補強リブ部15j,25fが一体に成形され、また、駆動側バランサ軸15の先端側ジャーナル部15aと前側ジャーナル部15bとの間にはサブウエイト部15eに並んで補強リブ部15kが一体に成形され、各ジャーナル部間での軸曲がりに対する補強を行っている。
連動ギヤ85aは、メインウエイト部25cの後側である従動側バランサ軸25の後端部に従動側バランサ軸25のニードルローラベアリング41の後側に隣接するように設けられており、駆動側バランサ軸15の連動ギヤ75aと同様に、ギヤ本体部85cと、前側円筒部85b(移動制限部)と、後側円筒部85gとを有している。
ギヤ本体部85cは、駆動側バランサ軸15のギヤ本体部75cと同径且つ当該ギヤ本体部75cと噛み合うヘリカルギヤからなっている。このように、駆動側及び従動側バランサ軸15,25のギヤ本体部75c,85cを共にヘリカルギヤとすることにより、両バランサ軸15,25が回転する際の騒音が低減される。また、このギヤ本体部85cの後側面には、エンジン背面視で後側円筒部85gを囲む円環状の段差部85hが形成されている。
前側円筒部85bの外周面には、その前端部に径方向外側に突起する環状凸部85dが形成されている一方、後側円筒部85gの外周面には、その後端部に径方向外側に延びる環状鍔部85eが形成されており、これら環状凸部85d及び環状鍔部85eは、駆動側バランサ軸15の環状凸部75d及び環状鍔部75eと同様の機能を果たす。なお、従動側バランサ軸25の後端部における、ニードルローラベアリング41の配置構造は、リングプレート100aを含め、駆動側バランサ軸15のニードルローラベアリング41と同様の構造となっており、説明を省略する。
以上のように構成された駆動側及び従動側バランサ軸15,25は、従動スプロケット35を介しクランク軸9からの駆動力を受けて駆動側バランサ軸15が駆動すると、駆動側バランサ軸15の連動ギヤ75aと従動側バランサ軸25の連動ギヤ85aとが互いに噛み合って同期回転するとともに互いに前後逆方向のスラスト力を与える。
このように、駆動側バランサ軸15と従動側バランサ軸25とが同期回転を行うことにより、駆動側バランサ軸15のメインウエイト部15dのマス部15gと従動側バランサ軸25のメインウエイト部25cのマス部25eとは、常に同じ高さに位置するように同期して逆向きに回転する。また、各バランサ軸15,25が、図12の矢印線で示す向きに高速で回転することから、左右のメインウエイト収容部67d,67eに浸入したオイルはマス部15g,25eによって左右斜め上方に掻き揚げられる。
なお、駆動側バランサ軸15の従動スプロケット35はクランク軸9の駆動スプロケット19の1/2の歯数の小径ギヤとされており、このことで駆動側及び従動側バランサ軸15,25は、エンジン回転数の2倍の回転数で回転する。
ところで、上述の如く、駆動側バランサ軸15は、従動側バランサ軸25よりもさらに前側に延びる延長部15fを有していて、当該延長部15f先端の従動スプロケット35を介しクランク軸9からの駆動力を受けて駆動するが、当該延長部(先端側ジャーナル部と前側ジャーナル部との間)を単なる軸部とし前側ジャーナル部と後側ジャーナル部との間にのみウエイト部を形成した従来のバランサ装置では、軸方向における偏った荷重の影響で当該延長部15fの回転バランスが悪くなり、駆動側バランサ軸の延長部15fに新たに軸曲がりが生じるという問題があった。特に、駆動側バランサ軸15の中間位置での軸受けとなる前側ジャーナル部15bとニードルローラベアリング31の関係においては、従来のメタル軸受のように面接触でなく線接触となり、軸曲がりによる傾きを伴う回転では偏った荷重分布となり、軸受け形態として新たな問題となり兼ねない。
これに対し、上記バランサ装置5では、延長部15fにサブウエイト部15eが形成されていることから、軸方向の荷重のアンバランスが改善されているので、駆動側バランサ軸15の軸曲がりを抑えることができる。
一方、延長部15fにサブウエイト部15eを設けると、駆動側バランサ軸15のウエイト部の重心(サブ及びメインウエイト部15d,15eを合わせた重心)が、従来のバランサ装置のウエイト部(メインウエイト部のみ)の重心よりも前側に移動し、駆動側バランサ軸15のウエイト部15d,15eの重心と従動側バランサ軸25のメインウエイト部25cの重心G1とにずれが生じ、クランク軸9の回転アンバランスに起因する振動を抑えることが困難になる。
そこで、図15に示すように、上記バランサ装置5では、駆動側バランサ軸15のウエイト部15d,15eの重心と従動側バランサ軸25のメインウエイト部25cの重心G1とを一致させるべく、駆動側バランサ軸15のメインウエイト部15dの重心G2の位置を調整している。
具体的には、上述の如く、駆動側バランサ軸15のメインウエイト部15dには、前側ジャーナル部15bと後側ジャーナル部15cとの間における前側ジャーナル部15bの近傍部15iに偏心形状部を形成していない。このため、駆動側バランサ軸15のメインウエイト部15dは、前側ジャーナル部25aと後側ジャーナル部25bとの間に亘って偏心形状部が形成された従動側バランサ軸25のメインウエイト部25cの重心G1よりも、その重心G2が後側に位置している。
すなわち、上記バランサ装置5では、駆動側バランサ軸15のメインウエイト部15dの重心G2を従動側バランサ軸25のメインウエイト部25cの重心G1よりも後側に位置させることで、ウエイト部15d,15eの重心の前側への移動を抑え、駆動側バランサ軸15のウエイト部15d,15eの重心を従動側バランサ軸25のメインウエイト部25cの重心G1と一致させている。
これにより、駆動側バランサ軸15の軸曲がりを抑えつつクランク軸9の回転アンバランスに起因する振動を抑制することが可能となる。
−ハウジングカバー−
ハウジングカバー(カバー部材)17は、鋼板のプレス加工品からなり、図3に示すように、ハウジング本体部67の開放部分67oを覆うように、ハウジング本体部67の側壁部67b,67cの上端に突設されたボス部67i,67j,67k,67lにボルト49,49,…で締結されていて、取付座37c,37d,47c,47dの上端よりも低い位置に配設されている。このように、ハウジングカバー17を設けることにより、メインウエイト収容部67d,67eを構成するハウジング本体部67の上面が開放し且つ当該開放部分67oが第2及び第3気筒21b,21cに跨るように形成されていても、クランク軸9の軸受部(図示せず)に供給された、あるいはピストン冷却に供されたオイルがメインウエイト収容部67d,67eに不必要に流れ落ちるのを抑えることができる。
このハウジングカバー17は、ハウジング本体部67を構成する部材よりも肉厚の薄い板状をなしており、前後方向及び左右方向に延びる複数の突状リブ17a,17b,…を形成することでその剛性が高められている。また、ハウジングカバー17は、図10に示すように、メインウエイト部15d,25cの回転軌跡の外径に沿うような断面形状を有している。換言すると、ハウジングカバー17は、エンジン正面視で上方に膨らむ二こぶ状をなすように形成されている。これにより、ハウジングカバー17をメインウエイト部15d,25cに近づけた状態で配置できるので、その肉厚の薄さと相俟って、バランサハウジング7の高さ寸法を抑えることができ、それだけ、バランサ軸15,25の軸心位置をよりエンジン側に近づけることができる。
さらに、ハウジングカバー17は、ハウジング本体部67の開放部分67oの左右方向の両端部よりもさらに左右外側に延びている。より詳しくは、ハウジングカバー17は、ハウジング本体部67の両側壁部67b,67cの内側側縁部に形成された突条部67m,67nを超え、両側壁部67b,67cの外側側縁部近傍まで延びており、その両端部が下向きに屈曲した屈曲部17c,17cを有している。
また、ハウジングカバー17は、先に説明したボス部67i,67j,67k,…の介在によって、突条部67m,67nとの間に上下方向に隙間29,29を空けて配設されており、その隙間29,29を介してハウジング本体部67の内部はその外部と連通している。
これらにより、メインウエイト収容部67d,67e内でメインウエイト部15d,25cの回転によって掻き揚げられたオイルは、隙間29,29を通ってバランサハウジング7の外部に排出される。より詳しくは、メインウエイト収容部67d,67eに浸入したオイルは上述の如くマス部15g,25eによって左右斜め上方に掻き揚げられ、隙間29,29を通ってハウジングカバー17の下面に当たる。そして、ハウジングカバー17の下面に当たったオイルは屈曲部17c,17cに誘導されてバランサハウジング7の外部に排出される。なお、隙間29,29を通り抜けたオイルは、突条部67m,67nによって、メインウエイト収容部67d,67eへの戻りが抑制される。以上により、バランサハウジング7内に浸入したオイルは溜まる間もなく排出されることとなる。
また、ハウジングカバー17は、その前後方向の両端部が上向きに屈曲した屈曲部17d,17eを有している。この前側屈曲部17dの前面は前側軸受壁部37の後端面に、また後側屈曲部17eの後面は後側軸受壁部47の前端面にそれぞれ近接している。これにより、ハウジングカバー17の上面に溜まったオイルのメインウエイト収容部67d,67eへの浸入が防がれている。
−スラストプレート−
スラストプレート(エンド部材)27は、バランサハウジング7の外部からのオイルの浸入を抑制するために、バランサハウジング7の後側の開口端部87cを構成するギヤ収容部87の後端部に設けられており、当該開口端部87cにおける両バランサ軸15,25の中心を結んだ直線の下側の領域を覆っている(図5参照)。
このスラストプレート27は、耐摩耗性に優れた金属素材からなるプレス加工品であり、丸みを帯びた逆台形状に形成されていて、その直線状の頂部27bにその上部が開放された略半円状の切欠き部が2つ形成されている。また、スラストプレート27には、ギヤ収容部87の3つのボルト挿通孔87a,87b,87bに対応する位置に貫通孔27c,27c,27cが形成されている。
そして、スラストプレート27は、当該スラストプレート27に形成されている一対の切欠き部の周縁部(以下、スラスト規制部ともいう)27a,27aが連動ギヤ75a,85aのスラスト規制溝75f,85fに嵌装された状態で、貫通孔27c,27c,27cに挿通されたボルト39,39,39をギヤ収容部87のボルト挿通孔87a,87b,87bに螺合させることでバランサハウジング7に取り付けられている。
このようにスラストプレート27を設けることにより、両バランサ軸15,25が前後方向に変位しようとしても、ギヤ本体部75c,85cの段差部75h,85hがスラスト規制部27a,27aの前面に当接し、環状鍔部75e,85eの前端面がスラスト規制部27a,27aの後面に当接して、各バランサ軸15,25の前後両側から加わるスラスト力によるスラスト変位が規制される。
また、スラストプレート27には、その前面に開口する2条の供給油溝27d,27dと、その後面に開口する2条の供給油溝27e,27eとが形成されている。これら供給油溝27d,27e,…は、切欠き部の周縁部27a,27aからギヤ本体部75c,85cの下端に対応する位置まで下方に延びている。ギヤ収容部87内に溜まったオイルは、両連動ギヤ75a,85aの回転に伴いギヤ本体部75c,85cの後端面とスラストプレート27の前面との間に供給油溝27d,27dを介して円滑に供給されるようになっている。なお、前側の供給油溝27dと後側の供給油溝27eは表裏対称に形成されていて、スラストプレート27をギヤ収容部87に表裏逆に取り付けてもオイルの供給路として機能するようになっている。
−バランサ軸のバランサハウジングへの組み付け−
各バランサ軸15,25は、バランサハウジング7の後側の開口端部87cから挿入されて当該バランサハウジング7の内部に装着される。具体的には、駆動側バランサ軸15は、その延長部15f側から、ギヤ収容部87の左側部分、後側軸受壁部47の左側軸受孔47a、左側メインウエイト収容部67d、前側軸受壁部37の左側軸受孔37a、サブウエイト収容部77e及び先端側軸受壁部57の軸受孔57aの順に挿入され、また、従動側バランサ軸25は、その前側ジャーナル部25a側から、ギヤ収容部87の右側部分、後側軸受壁部47の右側軸受孔47b、右側メインウエイト収容部67e、前側軸受壁部37の右側軸受孔37bの順に挿入される。
これに先立ち、駆動側バランサ軸15においては、先ず駆動側バランサ軸15の先端側ジャーナル部15aに、ニードルローラベアリング51のインナーレース51bと該インナーレース51bに対するストッパーリング100cとを圧入嵌合する。また、駆動側バランサ軸15の前側及び後側ジャーナル部15b,15cには、リングプレート100a,100bを始めニードルローラベアリング31,41のインナーレース31b,41bを圧入嵌合するとともに、これにホルダー31d,41d及びニードルローラ31c,41cを取り付け、その後に、連動ギヤ75aを軸後端側に圧入嵌合する。
同様に、従動側バランサ軸25においては、先ず従動側バランサ軸25の前側ジャーナル部25aに、ニードルローラベアリング61のインナーレース61bと該インナーレース61bに対するストッパーリング100dとを圧入嵌合する。また、従動側バランサ軸25の後側ジャーナル部25bには、リングプレート100aを始めニードルローラベアリング41のインナーレース41bを圧入嵌合するとともに、これにホルダー41d及びニードルローラ41cを取り付け、その後に、連動ギヤ85aを軸後端側に圧入嵌合する。これにより、図15のような組立て予備体が用意される。
これに対し、バランサハウジング7の方は、駆動側バランサ軸15に対応して、先端側軸受壁部57の軸受孔57aに、その内方にニードルローラ51c及びホルダー51dを装着した状態でアウターレース51aを圧入嵌合するとともに、スペーサ91を取り付ける。また、前側及び後側軸受壁部37,47の左側軸受孔37a,47aにはアウターレース31a,41aを圧入嵌合する。
その圧入前又は圧入後に、これらアウターレース31a,41aの位置規制又は抜け止めのためのストッパーピン101をバランサハウジング7の径方向の外方からアウターレース31a,41aの厚みを超えない範囲でバランサハウジング7に圧入固定する。なお、これらの作業の後に、両後側のアウターレース41a,41aの抜け止めのためのストッパープレート102をアウターレース31a,41aの厚みを超えない範囲でバランサハウジング7にボルトで取り付ける。
また、従動側バランサ軸25に対応して、前側軸受壁部37の右側軸受孔37bに、その内方にニードルローラ61c及びホルダー61dを装着した状態でアウターレース61aを圧入嵌合し、後側軸受壁部47の右側軸受孔47bにアウターレース41aを圧入嵌合する。
上記と同様に、その圧入前又は圧入後に、これらアウターレース61a,41aの位置規制又は抜け止めのためのストッパーピン101をバランサハウジング7の径方向の外方からアウターレース61a,41aの厚みを超えない範囲でバランサハウジング7に圧入固定する。
このような状態で、駆動側及び従動側バランサ軸15,25を連動ギヤ75a,85aを噛み合わせた状態でバランサハウジング7に挿入するが、上述の如く、駆動側バランサ軸15のメインウエイト部15dの回転軌跡の外径は、後側ジャーナル部15cに嵌装されたアウターレース41aの内径よりも小さく設定され、且つ、サブウエイト部15eの回転軌跡の外径は、メインウエイト部15dの回転軌跡の外径よりも小さく設定されているとともに先端側及び前側ジャーナル部15a,15bの外径とほぼ同じとなるように設定されているので、駆動側バランサ軸15を円滑に挿入することが可能となる。
また、従動側バランサ軸25のメインウエイト部25cの回転軌跡の外径は、後側ジャーナル部25bに嵌装されたアウターレース41aの内径よりも小さく設定されているので、従動側バランサ軸25を円滑に挿入することが可能となる。
そして、駆動側及び従動側バランサ軸15,25をバランサハウジング7に装着した後、連動ギヤ75a,85aのスラスト規制溝75f,85fに下方からスラスト規制部27a,27aを差し込むようにスラストプレート27を取り付けてバランサハウジング7の開口端部87cを塞ぐ。
−潤滑油路−
上述の如く、駆動側及び従動側バランサ軸15,25は、これらのジャーナル部15a,15b,15c,25a,25bがそれぞれニードルローラベアリング51,31,41,61,41を介して軸受孔57a,37a,47a,37b,47bに支持される。このため、ニードルローラベアリング51,31,41,61,41がオイルに浸かるような状態は避けなければならないが、ニードルローラベアリング51,31,41,61,41への適量なオイルの供給は必要となる。
そこで、バランサハウジング7には、図18及び図19に示すように、駆動側バランサ軸15の先端側及び前側ジャーナル部15a,15bにオイルを供給するための第1潤滑油路93と、駆動側バランサ軸15の後側ジャーナル部15cにオイルを供給するための第2潤滑油路95と、従動側バランサ軸25の前側ジャーナル部25aにオイルを供給するための第3潤滑油路97と、従動側バランサ軸25の後側ジャーナル部25bにオイルを供給するための第4潤滑油路99とが形成されている。なお、これらの潤滑油路93,95,97,99は、各ジャーナル部15a,15b,15c,25a,25bにオイルを強制給油するためのものではなく、クランク軸9のジャーナル部に供給されて落下したオイルの一部を導入するために形成されている。
第1潤滑油路93は、ハウジング延長部77の供給用油穴77bを通る経路(矢印93a)と、スペーサ91の内部又はその外周を通りスペーサ91の下端に至る経路(矢印93b)と、サブウエイト部15eとスペーサ91との隙間を通りニードルローラベアリング31(前側ジャーナル部15b)に至る経路(矢印93c)と、ニードルローラベアリング31から流れ出たオイルを排出用油穴67fからバランサハウジング7の外部へ重力排出するための経路(矢印93d)と、ニードルローラベアリング51から流れ出たオイルをバランサハウジング7の外部へ重力排出するための経路(矢印93e)とを含んでいる。
エンジン本体部1における第1気筒21aの前側の軸受壁部21e近傍から落下したオイルの一部は、ハウジング延長部77の壁77aに囲まれてなる平面視L字型の油捕集部77cに溜まり、供給用油穴77bからバランサハウジング7の内部に入る。そして、オイルは、スペーサ91の供給用貫通孔91bを通り、スペーサ91とサブウエイト部15eとの間を流下し、サブウエイト部15eとスペーサ91との間を前後に流れる。
ここで、スペーサ91のバランサハウジング7内部への組付けの際に、供給用油穴77bと上側供給用貫通孔91bとにずれが生じた場合にも、供給用油穴77bを通ったオイルは、スペーサ91の外周面に形成された環状溝部91aに沿って下方に流れ、スペーサ91の上側供給用貫通孔91bより下方にある下側供給用貫通孔91dなどからスペーサ91とサブウエイト部15eとの間に流入するようになっている。
後方に流れたオイルは、ニードルローラベアリング31に供給された後、排出用油穴67fからバランサハウジング7の外部へ重力排出される。一方、前方に流れたオイルは、ニードルローラベアリング51に供給された後、当該ニードルローラベアリング51から直接バランサハウジング7の外部へ重力排出される。
第2潤滑油路95は、主に、連動ギヤ75aのギヤ本体部75cの上方から直接的にギヤ収容部87に至る経路(矢印95a)と、連動ギヤ75aのギヤ本体部75cの前端面と後側軸受壁部47の上端部の後端面との隙間を通る経路(矢印95b)と、連動ギヤ75aのギヤ本体部75cの前端面と後側軸受壁部47の下端部の後端面との隙間を通る経路(矢印95c)と、オイルを排出用油穴67gからバランサハウジング7の外部へ重力排出するための経路(矢印95d)とを含んでいる。
すなわち、エンジン本体部1における第3気筒21cと第4気筒21dとの間の軸受壁部21g近傍から落下したオイルの一部は、ギヤ本体部75c上から、また、ギヤ本体部75cの前端面と後側軸受壁部47の上端部の後端面との間からともにギヤ収容部87に侵入するが、連動ギヤ75aのギヤ収容部87内での回転により攪拌されながら、ニードルローラベアリング41(後側ジャーナル部15c)に至る。このとき、連動ギヤ75aの環状凸部75dは、上述の如く、オイルがニードルローラベアリング41に過剰に供給されるのを制限する。
このようにギヤ本体部75c上から、また、ギヤ本体部75cの前端面と後側軸受壁部47の下端部の後端面との隙間から入ったオイルは、連動ギヤ75aの環状凸部75dによる供給制限を受けつつ、ニードルローラベアリング41に供給される。このようにしてニードルローラベアリング41に供給されたオイルは、ニードルローラベアリング41を潤滑しながら排出用油穴67gからバランサハウジング7の外部へ重力排出される。
第3潤滑油路97は、前側軸受壁部37の右側の前端面に設けられたキャップ部材45の開口部を通る経路(矢印97a)と、従動側バランサ軸25の先端面とキャップ部材45との隙間を通りニードルローラベアリング61(前側ジャーナル部25a)に至る経路(矢印97b)と、ニードルローラベアリング61からメインウエイト部25cとハウジング本体部67の底壁部67aとの隙間を通る経路(矢印97c)と、オイルを排出用油穴67hからバランサハウジング7の外部へ重力排出するための経路(矢印97d)とを含んでいる。
キャップ部材45は、図20に示すように、前側軸受壁部37の右側軸受孔37bに嵌合している円環部45aと、当該円環部45aの前端を覆うように形成され、径方向外方に突出する鍔状部分を有する円盤部45bとを有している。円盤部45bは、円環部45aの内空に対応する部分の略上半分が開放され、且つ当該円環部45aに対応する部分の左側略上半分の部分から鍔状部分が切り取られたような形状をした凹欠部45cを有している。このことにより、該凹欠部45cが図17,図19に示すように、バランサハウジング7の前側軸受壁部37の前面に面一で連なるようになる。そして、この凹欠部45cが、キャップ部材45の上部にバランサハウジング7の内部と外部とを連通するように形成された、エンジン本体部1から落下してくるオイルをバランサハウジング7の内部に案内するための油案内部を構成している。
そうして、エンジン本体部1における第1気筒21aと第2気筒21bとの間の軸受壁部21f近傍から落下したオイルの一部は、前側軸受壁部37の前面を流下して円盤部45bの凹欠部45cからバランサハウジング7内部に入り、従動側バランサ軸25の先端面と円盤部45bの後側面との間を通りニードルローラベアリング61に供給される。
ニードルローラベアリング61に供給されたオイルは、右側メインウエイト収容部67e内を後方に流れ、排出用油穴67hからバランサハウジング7の外部へ重力排出される。
第4潤滑油路99は、主に、連動ギヤ85aのギヤ本体部85cの上方からの直接的な至る経路(矢印99a)と、連動ギヤ85aのギヤ本体部85cの前端面と後側軸受壁部47の上端部の後端面との隙間を通る経路(矢印99b)と、連動ギヤ85aのギヤ本体部85cの前端面と後側軸受壁部47の下端部の後端面との隙間を通る経路(矢印99c)と、オイルを排出用油穴67hからバランサハウジング7の外部へ重力排出するための経路(矢印99d)とを含んでいる。この第4潤滑油路99におけるオイルの供給及び排出手順は、第2潤滑油路95と全く同様である。
上述の如く、本実施形態のバランサ装置5では、先ずハウジング本体部67の開放部分67oが相隣り合う2つの気筒21b,21cに跨るように形成されるので、メインウエイト部15d,25cが前後方向に長くなっている。これにより、メインウエイト部15d,25cを径方向に大きくすることなく、クランク軸9の回転アンバランスに起因する振動を打ち消せるので、バランサハウジング7がコンパクトになる。
また、バランサ装置5では、メインウエイト部15d,25cの回転軌跡の外径が、後側軸受壁部47のニードルローラベアリング41,41のアウターレース41a,41aの内径よりも小さく設定されている一方、前側軸受壁部37のニードルローラベアリング31,61のインナーレース31b,61bの外径よりも大きく設定されている。これにより、後側軸受壁部47の左側及び右側軸受孔47a,47b(アウターレース41a,41aを含む)の内径を、メインウエイト部15d,25cさえ通過できるような大きさに設定すれば、駆動側及び従動側バランサ軸15,25にインナーレース31b,61bを圧入嵌合し、バランサハウジング7にアウターレース41a,41aを圧入嵌合した状態で、各バランサ軸15,25をバランサハウジング7に挿入しても、各バランサ軸15,25が円滑に挿入される。したがって、メインウエイト部15d,25cの回転軌跡の外径を小さくすれば、それに伴ってバランサハウジング7がコンパクトになる。
加えて、バランサ装置5では、図16及び図17に示すように、メインウエイト部15d,25cの回転軌跡の外径は、各後側ジャーナル部15c,25bに嵌装されたアウターレース41a,41aの内径よりも僅かに小さく設定されている。このように、構造上メタル軸受の外径に比べて大きくなりやすいニードルローラベアリング41,41の外径を、メインウエイト部15d,25cの回転軌跡の外径よりも僅かに大きくなる程度に抑えて、ニードルローラベアリング41,41のコンパクト化を図っている。
さらに、各バランサ軸15,25をバランサハウジング7の開口端部87cから挿入することにより、従来のものように、バランサハウジング7を上下に分割する必要がない。このため、両バランサ軸15,25の左右方向の間隔が小さくなる。これにより、各バランサ軸15,25に設けられた連動ギヤ75a,85aが小さくなり、これを収容するバランサハウジング7がコンパクトになる。
また、バランサ装置5では、その連動ギヤ75a,85aを後側軸受壁部47よりもさらに後側に、すなわち、バランサ軸15,25において最も外径が大きくなる部分を当該バランサ軸15,25の挿入側とは反対側の端部に配置している。これにより、バランサ軸15,25の挿入のために前側及び後側軸受壁部37,47の軸受孔37a,37b,47a,47bを必要以上に大きくする必要がなくなり、バランサハウジング7がコンパクトになる。
さらに、スラストプレート27のスラスト規制部27a,27aを、バランサ軸15,25の端部に配置された連動ギヤ75a,85aのスラスト規制溝75f,85fに差し込むことによって、各バランサ軸15,25の前後両側から加わるスラスト力によるスラスト変位が規制されるので、スラストプレート27を例えばハウジング本体部67に形成したものと比較して、構造が簡単となってバランサハウジング7がコンパクトになる。
また、ハウジング本体部67は、その開放部分67oが当該ハウジング本体部67を構成する部材よりも肉厚の薄い板状のハウジングカバー17で覆われていることから、その上壁部の厚さが厚いバランサハウジングと比べて、その高さ寸法が抑えられてその軸心位置が高くなる。
以上の構成により、本実施形態のバランサ装置5は、上下方向にコンパクトに構成されており、オイルをフルレベルまでオイルパン3内に注入した場合でも、車両走行時においてその一部しかオイルに浸からないようになっている(図4のオイルレベル面L参照)。
以上に説明したように、本実施形態のバランサ装置5では、バランサハウジング7の高さ寸法を抑えてその軸心位置を高くすることにより、ニードルローラベアリング31,41,41,…がオイルに浸かり難くなる。これにより、ニードルローラベアリング31,41,41,…へのオイルの過剰供給が抑えられ、ニードルローラベアリング31,41,41,…の円滑な回転が確保される。したがって、バランサ軸15,25と各軸受孔37a,37b,47a,…とのフリクションを低減して燃費向上を図ることができる。
−効果−
以上により、本実施形態によれば、各バランサ軸15,25をバランサハウジング7の後側の開口端部87cから挿入するので、従来のもののように、バランサハウジングを上下に分割する必要がない。このため、両バランサ軸15,25同士の間隔を小さくすることができ、各バランサ軸15,25の連動ギヤ75a,85aを小さくすることができ、この結果、連動ギヤ75a,85aを収容するバランサハウジング7をコンパクトにすることができる。
また、各連動ギヤ75a,85aを各バランサ軸15,25の後端部、すなわち、各バランサ軸15,25の挿入側とは反対側の端部に設けているので、比較的大きい各連動ギヤ75a,85aをバランサハウジング7の軸受孔37a,37b,47a,47b,57aに挿通させる必要がなく、この結果、軸受孔37a,37b,47a,47b,57aを小さくすることができ、バランサハウジング7をより一層コンパクトにすることができる。
さらに、バランサハウジング7の後端部に上方に開口して各連動ギヤ75a,85aの略下半分を収容するギヤ収容部87を設けているので、エンジン本体部1から落下してくるオイルをギヤ収容部87に捕集することができ、そのギヤ収容部87に捕集されたオイルによって各連動ギヤ75a,85aを潤滑することができる。そして、ギヤ収容部87に捕集されたオイルは、各連動ギヤ75a,85aの回転に伴って飛散し、各連動ギヤ75a,85aの前側に隣接するように設けられた、各バランサ軸15,25の後端部のニードルローラベアリング41,41に供給され、そのオイルによって各ニードルローラベアリング41,41を潤滑することができる。これらのことにより、ニードルローラベアリング41,41及び連動ギヤ75a,85aを効率よく潤滑することができる。
以上により、バランサハウジング7をコンパクトにしながら、ニードルローラベアリング41,41及び連動ギヤ75a,85aを効率よく潤滑することができる。
また、各バランサ軸15,25の後端部を支持する2つの軸受孔47a,47bが貫通形成された後側軸受壁部47を、相隣り合う2つの気筒21c,21dの間のクランク軸9用の軸受壁部21gに取り付けているので、このクランク軸9用の軸受壁部21gから落下してくるオイルを後側軸受壁部47のニードルローラベアリング41,41や連動ギヤ75a,85aの潤滑に安定利用することができる。
さらに、各連動ギヤ75a,85aは、そのギヤ本体部75c,85cの前端面から各ニードルローラベアリング41,41のアウターレース41a,41a内まで前側に延びる、各ニードルローラベアリング41,41のホルダー41dの前後方向の移動を制限するための前側円筒部75b,85bを有しているので、ホルダー41dの前後方向の移動を制限することができる。
さらにまた、前側円筒部75b,85bは、各連動ギヤ75a,85aのギヤ本体部75c,85cの前端面から各ニードルローラベアリング41,41のアウターレース41a,41a内まで前側に延びているので、この前側円筒部75b,85bによって、各連動ギヤ75a,85aの回転に伴って飛散したオイルが各ニードルローラベアリング41,41に過剰に供給されるのを制限することができる。
また、従動側バランサ軸25の前端部を支持する軸受孔37bが貫通形成された前側軸受壁部37の軸受孔37bに、その前側の開口端部からキャップ部材45を嵌合しており、このキャップ部材45の上部に、バランサハウジング7の内外を連通する、エンジン本体部1から落下してくるオイルをバランサハウジング7内に案内するための油案内部45cを形成しているので、キャップ部材45を利用して、エンジン本体部1から落下してくるオイルを前側軸受壁部37の軸受孔37bに挿嵌されるニードルローラベアリング61に供給することができ、そのオイルによってそのニードルローラベアリング61を潤滑することができる。
さらに、駆動側バランサ軸15の延長部15fを収容するハウジング延長部77の上部に、上方に開口する、エンジン本体部1から落下してくるオイルを捕集するための油捕集部77cと、この油捕集部77c内とハウジング延長部77内とを連通する、油捕集部77cに捕集されたオイルをハウジング延長部77の前側及び先端側軸受壁部37,57の軸受孔37a,57aに挿嵌されるニードルローラベアリング31,51に供給するための供給用油穴77bとを設けているので、エンジン本体部1から落下してくるオイルをそれらのニードルローラベアリング31,51に供給することができ、そのオイルによってそれらのニードルローラベアリング31,51を潤滑することができる。
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態に限定されず、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく他の色々な形で実施することができる。
上記実施形態では、全体が一体鋳造されたアルミダイキャスト品のバランサハウジング7を用いたが、これに限らず、例えば、前後方向に分割するような分割面を有するバランサハウジングを用いてもよい。
さらに、上記実施形態では、ニードルローラベアリング31,41,51,61にインナーレース31b,41b,51b,61bを用いたが、バランサ軸15,25との摺接において影響がなければ、インナーレース31b,41b,51b,61bを省いてもよい。
また、上記実施形態では、バランサハウジング7にクランク軸9の軸受部に供給されて落下したオイルの一部を導入するための潤滑油路93,95,97,99のみを形成したが、ニードルローラベアリング31,41,41,…へのオイルの過剰供給が抑えられるようになっているのであれば、各ジャーナル部15a,15b,15c,25a,25bにオイルを強制給油するための潤滑油路に代えてもよい。
さらに、上記実施形態では、各ウエイト部15d,15e,25cを、エンジン正面視で略半円型に形成したが、クランク軸9の回転アンバランスに起因する振動を打ち消せるのであればどのような形状でもよい。
また、上記実施形態では、駆動側及び従動側バランサ軸15,25をバランサハウジング7の後側の開口端部87cから挿入するようにしたが、これに限らず、バランサハウジング7の前側の開口端部から挿入するようにしてもよい。
さらに、上記実施形態では、ヘリカルギヤからなるギヤ本体部75cを有する連動ギヤ85aを用いたが、これに限らず、例えば、ウォームギヤからなるギヤ本体部を有する連動ギヤを用いてもよい。
また、上記実施形態では、スラスト規制溝75f,85fを連動ギヤ75a,85aに形成したが、これに限らず、例えば各バランサ軸15,25に直接スラスト規制溝を形成してもよい。
さらに、上記実施形態では、バランサハウジング7の開放部分67oが相隣接する2つの気筒21c,21dに跨るように、前側及び後側軸受壁部37,47を軸受壁部21f,21gに取り付けたが、これに限らず、例えば、1つの気筒の前後に位置する軸受壁部に取り付けたり、3つ以上の気筒の前後に位置する軸受壁部に取り付けたりしてもよい。
また、転がり軸受は、ニードルローラベアリング31,41,51,61(針状ころ軸受)に限らず、円筒ころ軸受や玉軸受であってもよい。
さらに、ギヤ収容部87は、各連動ギヤ75a,85aの少なくとも略下半分を収容すればよく、例えば、各連動ギヤ75a,85aの略全部を収容してもよい。
このように、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。