JP2010133201A - 排水管路構造及びこれに用いる管継手 - Google Patents

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Abstract

【課題】通気管や吸気弁を不要とし、排水中の固形物が引っ掛かる恐れのない一時的な排水滞留手段を採用することにより、排水管路内での負圧の発生を抑制して排水トラップの封水破壊を防止できるようにした排水管路構造と、これに用いる管継手を提供することにある。
【解決手段】縦排水管4とその下流側の横排水管5との接続部分に、縦排水管を流下してきた排水を一時的に滞留させて横排水管に流す中空ポケット部6aが形成された排水管路構造とする。中空ポケット部6aに排水を一時的に滞留させることにより、水勢の減衰作用、流速の減速作用、器具排水流量のピーク緩和作用を発揮させ、排水管路の閉塞及び負圧の発生を抑制して、排水トラップの封水破壊を防止する。管継手6は、縦排水管接続口6bと、横排水管接続口6cと、中空ポケット部6aとを備えた構成とする。
【選択図】図1

Description

本発明は排水管路構造、特に、縦排水管とその下流側の横排水管との接続部分で排水の水勢を減衰させ、衛生器具設備の単位時間当たりの排水流量(以下、器具排水流量という)のピークを緩和させて排水管路内に負圧が生じないように改良した排水管路構造と、これに用いる管継手に関する。
衛生器具設備から多量の排水を排水管路に勢いよく流すと、排水管路が排水によって閉塞されやすくなり、このように排水が排水管路を閉塞したまま流れると、閉塞部分より上流側の排水管路内に負圧が発生して、衛生器具設備に設けられた排水トラップの封水破壊を生じる恐れがあった。特に、器具排水流量の多い水洗トイレからの排水管路に手洗いなどからの雑排水管が接続されている場合に上記の現象は起こりやすく、これを防止するために、水洗トイレからの排水管路の途中に通気管を設けて該通気管の上端に臭気逆流防止用のドルゴ弁を設ける等の手段が採られている(特許文献1参照)。
一方、多層建築物の各階を縦方向に貫いて配管された排水立て管と、この排水立て管に対して各階ごとに配設された排水集合管継手と、この排水集合管継手とトイレなどの衛生器具設備との間に接続された複数本の横枝管とから構成され、これらの横枝管のうちの2本が排水集合管継手に対向状態で接続された多層建築物の排水システムにおいて、左右の側壁が外側に膨出し且つ内部に起立片状の水衝部を備えた排水減速部材を上記横枝管の水平部に設けることにより、排水減速部材に流入した排水を水衝部に衝突させて左右に分流させ、分流させた左右の排水を水衝部の背面側で衝突させながら合流させて流出させるようにした排水システムが提案されている(特許文献2参照)。
また、室内衛生器具設備からの排水を落下させる落下部と、この落下部からの排水を排水集合管継手へ導く水平部と、上記落下部の下端と上記水平部の一端を接続する屈曲部とを有する横枝管が、他の横枝管と対向状態または対向状態に近い状態で排水集合管継手に接続された多層建築物の排水システムにおいて、前記屈曲部に、前記落下部からの排水が前記水平部の管壁に沿って旋回しながら流れるのを抑制する旋回流抑制手段を設け、この旋回流抑制手段に、外側へ膨出する排水衝突手段を設けた排水システムも提案されている(特許文献3参照)。
特開2003−96892号公報 特開2008−157000号公報 特開2008−81925号公報
しかしながら、前記特許文献1のような手段で水洗トイレの封水破壊を防止する場合は、排水管路の途中に通気管を接続、配管する作業が面倒であり、ドルゴ弁などの吸気弁も必要になることから、コストアップを招くという問題がある。
一方、前記特許文献2の排水システムは、横枝管を流れる排水の勢いを排水減速部材で弱めることによって、排水が排水集合管継手を飛び越えて対向する横枝管に流入しないように図ったものであり、横枝管内での負圧の発生を抑制して衛生器具設備の排水トラップの封水破壊を防止しようとしたものではないが、排水減速部材の流水断面積が横枝管の流水断面積より大きい場合には、排水減速部材によって排水の流れが停滞しても、停滞した排水が排水減速部材に貯水されて横枝管が満水状態になりにくいため、横枝管内が満水状態となってサイフォン現象により衛生器具設備の排水トラップが破封されるのを防止することができる。しかしながら、この排水減速部材のように、左右の側壁が外側に膨出し、且つ、内部に起立片状の水衝部が設けられたものは、排水中の固形物が水衝部に引っ掛かって排水減速部材の内部に残留しやすいため、残留固形物が臭気や虫の発生源となったり横枝管の閉塞の原因になったりする等の問題があり、排水を減速させる手段として好ましいとは言い難い。
また、前記特許文献3の排水システムは、横枝管の屈曲部に設けた旋回流抑制手段によって、排水が水平部を旋回しながら流れるのを抑制し、排水集合管継手を飛び越えて対向する横枝管に流入しないように図ったものであり、旋回流抑制手段には、外側へ膨出する排水衝突手段が設けられているが、この排水衝突手段は、横枝管の落下部下端の排水案内手段で導かれた排水と排水衝突手段で跳ね返った排水を膨出部分で衝突させることにより、水勢を弱めるものであって、膨出部分に排水を一時的に滞留させる機能を有するものではない。
本発明は上記事情の下になされたもので、その解決しようとする課題は、従来の通気管や吸気弁を不要とし、排水中の固形物が引っ掛かる恐れのない一時的な排水滞留手段を採用することにより、排水管路内での負圧の発生を抑制して排水トラップの封水破壊を防止できるようにした排水管路構造と、これに用いる管継手を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明に係る排水管路構造は、縦排水管とその下流側の横排水管との接続部分に、縦排水管を流下してきた排水を一時的に滞留させて横排水管に流す中空ポケット部が形成されていることを特徴とするものである。
本発明の排水管路構造においては、中空ポケット部が縦排水管の下端から横排水管と反対方向に突き出して形成されていることが好ましい。そして、中空ポケット部をその中心線に対して垂直方向に切断したときの開口面積が、横排水管をその中心線に対して垂直方向に切断したときの開口面積よりも大きいことが好ましい。また、中空ポケット部の底面が横排水管の上流側端に近づくほど低くなるように中空ポケット部の底面に勾配がつけられ、この勾配が横排水管の流れ勾配と同一もしくはそれよりも大きいことが好ましい。
更に、本発明の排水管路構造においては、縦排水管の少なくとも下部が中空ポケット部側に傾いていることが好ましく、また、中空ポケット部が一端を閉塞した横向きの円筒状中空ポケット部に形成され、この円筒状中空ポケット部に連なる縦排水管の下端が円筒状中空ポケット部の中心線から片側へ偏位していることが好ましい。ここに、「円筒状」とは、横断面が真円形の円筒状の場合と、横断面が楕円形の円筒状の場合の双方を意味する。
本発明に係る管継手は、上記の排水管路構造に用いられる管継手であって、縦排水管の下端が接続される縦排水管接続口と、横排水管の上流側端が接続される横排水管接続口と、縦排水管から流入した排水を一時的に滞留させて横排水管へ流出させる中空ポケット部とを備えていることを特徴とするものである。
本発明に係る排水管路構造のように、縦排水管とその下流側の横排水管との接続部分に中空ポケット部を形成し、縦排水管を流下してきた排水を該中空ポケット部に一時的に滞留させて横排水管に流出させると、水勢が減衰され、流速が弱められ、器具排水流量が適度に均されて器具排水流量のピークが緩和されるため、水洗トイレなどの衛生器具設備から一度に多量の排水を勢いよく流しても排水管路が閉塞し難くなる。従って、排水管路内での負圧の発生が抑制されるので、排水管路に接続されている衛生器具設備の排水トラップが負圧によって封水破壊されるのを防止することができる。
このように、本発明の排水管路構造は、縦排水管と横排水管との接続部分に、縦排水管を流下してきた排水を一時的に滞留させて横排水管に流す中空ポケット部を設けることによって、排水管路の閉塞および負圧の発生を抑制し、排水トラップの封水破壊を防止するものであるから、前記特許文献1に記載されているような封水破壊防止用の通気管や吸気弁が全く不要であり、しかも、前記特許文献2の排水システムのように排水中の固形物が起立片状の水衝部に引っ掛かって残留し、臭気や虫の発生源となったり排水管路の閉塞の原因になる等の問題を解決することができる。また、縦排水管とその下流側の横排水管との接続部分に中空ポケット部を設けていると、縦排水管を流下した排水を下流側の横排水管の方向とは異なる所望の方向へ案内することが容易に可能となり、排水管路構造の設計の自由度が増すというメリットもある。
本発明の排水管路構造において、中空ポケット部が縦排水管の下端から横排水管と反対方向に突き出して形成されているものは、縦排水管を流下した排水が該中空ポケット部により横排水管と反対方向に導かれて一時的に滞留した後、反転して横排水管へ流出するため、水勢の減衰作用、流速の減速作用、器具排水流量のピーク緩和作用が良好であり、排水管路の閉塞及び負圧の発生を充分抑制することができる。そして、中空ポケット部から排水が流出する方向と横排水管の方向が一致するため、排水に含まれる固形物もスムーズに横排水管へ流出するようになる。
また、本発明の排水管路構造において、中空ポケット部をその中心線に対して垂直方向に切断したときの開口面積が、横排水管をその中心線に対して垂直方向に切断したときの開口面積よりも大きいものは、中空ポケット部における排水の一時的な滞留量が増加するので、一層良好な水勢の減衰作用、流速の減速作用、器具排水流量のピーク緩和作用が発揮され、排水管路の負圧抑制効果及び閉塞防止効果が向上する。
更に、本発明の排水管路構造において、中空ポケット部の底面が横排水管の上流側端に近づくほど低くなるように中空ポケット部の底面に勾配がつけられ、この勾配が横排水管の流れ勾配と同一もしくはそれより大きいものは、中空ポケット部に一時的に滞留した排水が、勾配のついた中空ポケット部の底面上をスムーズに流れて横排水管へ流出し、排水や固形物が中空ポケット部に残留する恐れが皆無に等しくなるので、メンテナンスが実質的に不要となる。
また、本発明の排水管路構造において、縦排水管の少なくとも下部が中空ポケット部側に傾いているものは、縦排水管を流下した排水が縦排水管の傾いた少なくとも下部を通って中空ポケット部の方へ案内され、中空ポケット部にスムーズに導入されて滞留量が増すため、更に良好な水勢の減衰作用、流速の減速作用、器具排水流量のピーク緩和作用が発揮され、排水管路の負圧抑制効果及び閉塞防止効果が一層向上する。
そして、本発明の排水管路構造において、中空ポケット部が一端を閉塞した横向きの円筒状中空ポケット部に形成され、この円筒状中空ポケット部に連なる縦排水管の下端が円筒状中空ポケット部の中心線から片側へ偏位しているものは、縦排水管の下端から円筒状中空ポケット部に流入した排水が、円筒状中空ポケット部の内周面に沿って旋回しながら円筒状中空ポケット部の奥まで達して滞留量が増すため、優れた水勢の減衰作用、流速の減速作用、器具排水流量のピーク緩和作用が発揮され、排水管路の負圧抑制効果及び閉塞防止効果が顕著になる。
また、本発明の管継手を使用し、その縦排水管接続口と横排水管接続口に縦排水管の下端と横排水管の上流側端をそれぞれ差込んで縦排水管と横排水管を接続すると、縦排水管と横排水管との接続箇所に中空ポケット部が形成された本発明の排水管路構造を簡単に施工することができる。
以下、図面を参照して本発明の具体的な実施形態を詳述する。
図1は本発明の一実施形態に係る排水管路構造の説明図、図2の(a)(b)(c)はそれぞれ同排水管路構造に用いられる本発明の管継手の平面図、正面図、左側面図、図3は同管継手の作用説明図、図4の(a)(b)(c)はそれぞれ本発明の他の実施形態に係る管継手の平面図、正面図、左側面図、図5の(a)(b)(c)はそれぞれ本発明の更に他の実施形態に係る管継手の平面図、正面図、左側面図である。
図1は水洗便器からの排水管路構造を例示したものであって、1はトイレの床面2に設置された洋式の水洗便器を示しており、この便器1の内部には、便鉢部1aと、臭気の逆流を防止する排水トラップ部1bと、その下流側の排水通路部1cが連続して形成されている。この排水通路部1cの下端には、床面2に取付けられた接続アダプタ3を介して、床下の縦排水管4が接続されており、この縦排水管4と床下に配管された下流側の横排水管5は、中空ポケット部6aを備えた管継手6を介して接続されている。従って、この排水管路構造は、縦排水管4とその下流の横排水管5との接続部分に中空ポケット部6aが形成された構造となっており、便器1の排水通路部1cから縦排水管4を流下してきた排水の一部又は大半が中空ポケット部6aに導入され、一時的に滞留して下流側の横排水管5へ流出するようになっている。そのため、この排水管路を流れる排水は、中空ポケット部6aによって水勢が減衰され、流速が減速され、器具排水流量が適度に均されて器具排水流量のピークが緩和されるようになっており、便器1から一度に多量の排水が流れても排水管路は閉塞し難くなっている。なお、この排水管路構造の横排水管5には、手洗い7などの他の衛生器具設備からの雑排水管8も接続されている。
上記の縦排水管4は、エルボ継手4bを介して接続された下部の短管4aが中空ポケット部6a側へ傾いており、この傾斜した縦排水管下部の短管4aによって、縦排水管4を流下した排水が中空ポケット部6aの方に案内されてスムーズに中空ポケット部6aに導入されるため、中空ポケット部6aに一時的に滞留する排水の量が増して、良好な水勢の減衰作用、流速の減速作用、器具排水流量のピーク緩和作用が発揮されるようになっている。
縦排水管下部の短管4aの傾斜角(鉛直線方向に対する傾斜角)は、中空ポケット部6aへの排水の導入効率を勘案すると、5°〜60°の範囲が適当であり、特に10°〜30°の範囲が好ましい。従って、この傾斜角に見合ったエルボ継手4bを用いて、縦排水管下部の短管4aを接続することが望ましい。
尚、この実施形態の排水管路構造では、縦排水管下部の短管4aのみを傾斜させているが、縦排水管4の全体を中空ポケット部6aの方へ傾斜させるように構成してもよい。
縦排水管4と横排水管5を接続する管継手6は、図2の(a)(b)(c)に示すように、縦排水管4の下端(下部の短管4a)が接続される縦排水管接続口6bと、横排水管5の上流側端が接続される横排水管接続口6cと、縦排水管4から流入した排水を一時的に滞留させて横排水管5へ流出させる中空ポケット部6aとを備えたものであって、中空ポケット部6aから横排水管接続口6cに至る部分は縮径部6dとされており、縦排水管接続口6bから中空ポケット部6aに通じる流入筒部6eは縦排水管下部の短管4aと同じ傾斜角で中空ポケット部6a側に傾斜している。
この管継手6の縦排水管接続口6b及び横排水管接続口6cは、いずれも雌型(ソケット型)の接続口に形成され、縦排水管4の下端(下部の短管4a)と横排水管5の上流側端がそれぞれ差込み接続されるようになっているが、これらの接続口6b,6cを雄型(筒型)の接続口とし、直管継手を用いて縦排水管及び横排水管とそれぞれ接続するようにしてもよい。
この管継手6の中空ポケット部6aは、その中心線CLに対して垂直方向に切断したときの開口面積が、横排水管5をその中心線に対して垂直に切断したときの開口面積よりも大きい、一端が閉塞された横向きの円筒状中空ポケット部に構成されており、この中空ポケット部6aは縦排水管接続口6b及び流入筒部6eを境にして横排水管接続口6cと反対方向に突き出して形成されている。そのため、中空ポケット部6aの内容積が増して排水の一時的な滞留量が多くなり、しかも、排水が横排水管5と反対方向に突き出す中空ポケット部6aに導かれて一時的に滞留した後、反転して横排水管5へ流出することになるので、良好な水勢の減衰作用、流速の減速作用、器具排水流量のピーク緩和作用が発揮される。そして、この中空ポケット部6aから排水が流出する方向と横排水管5の方向が一致するため、排水に含まれる固形物がスムーズに横排水管5へ流出し、中空ポケット部6aに残留し難くなる。
また、この管継手6は、円筒状の中空ポケット部6aを斜めに設けることによって、中空ポケット部6aの底面が横排水管接続口6cに近づくほど低くなるように勾配がつけられており、この底面の勾配は横排水管5の流れ勾配(通常2/100程度)よりも大きくなっている。従って、中空ポケット部6aに一時的に滞留した排水は、勾配のついた底面の上を一層スムーズに流れて横排水管5へ流出するので、排水に含まれる固形物が中空ポケット部6aに残留する恐れは解消される。この底面の勾配の大きさは特に限定されないが、3/100〜50/100程度の勾配とすることが好ましく、5/100〜15/100程度の勾配とすれば更に好ましい。勾配が50/100より大きくなると、中空ポケット部6aの排水の滞留量が少なくなり、水勢の減衰作用、流速の減速作用、器具排水流量のピーク緩和作用が低下するという不都合が生じる。尚、中空ポケット部6aの底面の勾配は、必ずしも横排水管5の流れ勾配より大きくする必要はないが、流れ勾配よりも小さくなると、排水中の固形物が中空ポケット部6aに残留する恐れが生じるので、底面の勾配は少なくとも横排水管5の流れ勾配と同一にする必要がある。
また、縮径部6dの底面の勾配は、本実施形態では横排水管5の流れ勾配と同一にしているが、中空ポケット部6aの底面の勾配と同一にしてもよいし、横排水管5の流れ勾配より大きく中空ポケット部6aの底面の勾配より小さい勾配にしてもよい。
この管継手6の縦排水管接続口6bと流入筒部6eは、図2の(a)に示すように円筒状中空ポケット部6aの中心線CLから片側(図2では左側)へ偏位して形成されており、また、図2の(c)に示すように縦排水管下部の短管4aと同じ傾斜角で中空ポケット部6a側に傾斜している。そして、流入筒部6eは、図2の(b)に示すように、中空ポケット部6aの側部から底部へ回りこむように湾曲して形成されている。このため、排水は、図3に示すように、流入筒部6eから円筒状空ポケット部6aに向かって斜め方向に流入し、円筒状中空ポケット部6aの内周面に沿って旋回しながら円筒状中空ポケット部6aの奥まで到達して一時的に滞留し、水勢が減衰され流速が減速されて横排水管接続口6cから横排水管5へ流出するようになっている。
この管継手6は、中空ポケット部6aを横断面が真円形の円筒状に形成することによって、流入した排水が内周面に沿ってスムーズに旋回できるようにしているが、横断面が楕円形の円筒状に形成してもよい。このような楕円形の横断面形状を有する円筒状中空ポケット部も、排水が旋回しながら奥まで到達して多量に滞留するため、横断面が真円形の円筒状中空ポケット部6aと遜色のない作用効果を発揮することができる。
中空ポケット部6aは、便器1などの衛生器具設備から一度に排水される総排水量の5%以上、好ましくは10〜80%を一時的に滞留させることが可能な内容積とすることが重要であり、そのような内容積の中空ポケット部6aであると、器具排水流量のピーク緩和作用、即ち、器具排水流量が極大となるピーク時の流量を減少させて器具排水流量を適度に均す作用を確実に発揮し、水勢減衰作用、減速作用と相乗して、排水管路の閉塞を充分防止することができる。中空ポケット部6aの内容積が総排水量の5%より小さくなると、排水の一時的な滞留量が少なくなり過ぎるため、上記の諸作用が低下し、一方、80%を超えると、一時的な滞留量が多くなりすぎるため、器具排水流量のピーク緩和作用が却って低下するようになる。中空ポケット部6aの更に好ましい内容積は、総排水量の20〜60%である。
また、中空ポケット部6aの内部空間の上部には、排水や排水中の固形物が衝突する衝突部6fを設けてもよい。このような衝突部6fを設けると、排水の旋回は多少妨げられるが、流入筒部6eから中空ポケット部6aに流入して巻上がる排水が衝突部6fに衝突することによって水勢が充分減衰され、排水の一部は横排水管5に向かって流れる一方、残りの排水は中空ポケット部6aの奥の方へ流れて一時的に滞留するため、器具排水流量のピーク緩和作用が一層向上し、また、排水中の固形物も衝突により細かく砕かれたり、引き裂かれたりするので、排水管路が更に閉塞し難くなる利点がある。特に、排水中のペーパー類は落差の大きい縦管を流下する際に縦管を塞ぐように広がって流下することがあり、排水量が少なく排水だけでは閉塞しないような場合にも縦管を閉塞して流下してしまう恐れがあるため、排水中の固形物を衝突により細かく砕いたり引き裂いたりすることは、管路の閉塞を防止するために非常に有効である。しかも、衝突部6fは中空ポケット部6aの内部空間の上部に設けられているので、固形物が引掛かって中空ポケット部6aの底面に残留する心配も生じない。衝突部6fを設ける箇所は中空ポケット部6aの内部空間の上部に限られず、空間の底部を避けて設ければよい。また、衝突部6fはどのような形状のものでもよいが、例えば、中空ポケット部6aの上部内面から内側に突き出す凸形状の衝突部6fであって、その下面(衝突面)に固形物粉砕用又は固形物引裂き用の凹凸を形成したものなどが好適である。尚、理解を容易にするために、図2の管継手6において衝突部6fを鎖線で表したが、実際には、この図2の管継手6に衝突部6fは形成されていない。
このような管継手6は、熱可塑性合成樹脂で一体成形してもよいし、例えば中空ポケット部6aと他の部分を別々に成形して接合一体化してもよい。また、管継手6全体又は中空ポケット部6aのみを透明な合成樹脂で成形し、中空ポケット部6aの適所に蓋付きのメンテナンス用開口部(不図示)を設けて、メンテナンスを容易に行えるようにしてもよい。
以上のような構成の管継手6を用いて、その縦排水管接続口6bに縦排水管4の下端(下部の短管4a)を接続し、横排水管接続口6cに横排水管5の上流側端を接続して施工される排水管路は、図1に示すように、縦排水管4と横排水管5との接続部分に、一端が閉塞された円筒状の中空ポケット部6aが縦排水管4の下端(下部の短管4a)から横排水管5と反対方向に突き出して形成された構造となっており、既述したように、中空ポケット部6aは、その中心線と垂直に切断した開口面積が横排水管5の開口面積よりも大きく、中空ポケット部6aの底面は横排水管5の流れ勾配と同一もしくはそれより大きい勾配を有し、縦排水管4の下部の短管4aは中空ポケット部6a側に傾いて中空ポケット部6aの中心線から片側へ偏位している。
斯かる排水管路構造では、縦排水管4を流下してきた排水が、傾斜した縦排水管下部の短管4aによって横排水管5と反対側の中空ポケット部6aの方へ案内され、総排水量の5%以上、好ましくは10〜80%、更に好ましくは20〜60%が中空ポケット部6aに流入して旋回しながら中空ポケット部6aの奥まで到達して一時的に滞留した後、中空ポケット部6aの勾配の付いた底面をスムーズに流れて下流側の横排水管5へ流出するため、既述したように水勢が減衰され、流速が減速され、器具排水流量が適度に均されて器具排水流量のピークが緩和される。従って、便器1などの衛生器具設備から一度に多量の排水を勢いよく流しても排水管路は閉塞され難いので、排水管路内での負圧の発生が抑制され、負圧による便器1や手洗い7の排水トラップ部1b,7aの封水破壊を防止することができる。
上記のように、本実施形態の排水管路構造は、縦排水管4と横排水管5との接続部分に中空ポケット部6aを設けることによって、排水管路の閉塞および負圧の発生を抑制し、排水トラップの封水破壊を防止するものであるから、従来の封水破壊防止用の通気管や吸気弁が全く不要であり、前記の管継手6を用いて簡単且つ安価に施工することができる。また、中空ポケット部6aには従来の起立片状の水衝部などの障害物が底面から立設されていないので、排水中の固形物が障害物に引掛かって中空ポケット部6aに残留し、臭気や虫の発生源となったり排水管路の閉塞の原因となったりする等の問題が生じることもない。
本実施形態の排水管路構造は、既述したように縦排水管4の下部の短管4aを中空ポケット部6a側へ傾斜させているが、縦排水管4は鉛直線方向に真っ直ぐに配管してもよい。
図4はそのように縦排水管4を鉛直線方向に真っ直ぐに配管した他の実施形態に係る排水管路構造の説明図であって、図示のように、縦排水管4が鉛直線方向に真っ直ぐに配管されて、その下端が管継手60の縦排水管接続口6bに差込み接続されており、この管継手60の縦排水管接続口6bから中空ポケット部6aに通じる流入筒部6eは中空ポケット部6a側に湾曲して形成されている。その他の構成は、前述した図1の排水管路構造と同様であるので、図4において同一部材に同一符号を付すに止め、重複説明を省略する。
このような排水管路構造では、縦排水管4を真っ直ぐ下方に流下した排水が、管継手60の湾曲した流入筒部6eで中空ポケット部6aの方へ案内され、スムーズに中空ポケット部6aに流入して旋回しながら中空ポケット部6aの奥まで到達して一時的に滞留した後、横排水管5へ流出するので、中空ポケット部6aへの導入量(滞留量)が多くなり、図1の排水管路構造に比べて遜色のない水勢の減衰作用、流速の減速作用、器具排水流量のピーク緩和作用が発揮される。従って、この排水管路構造も閉塞が生じ難くなり、図1の排水管路構造と同等の負圧抑制効果及び封水破壊防止効果が奏される。尚、管継手60の流入筒部6eも湾曲させずに真っ直ぐに形成されている場合には、流入筒部6eの流入開口部に案内用の案内用の羽根を設ける等して排水を中空ポケット部6aの方へ案内してもよい。
図5の(a)(b)(c)はそれぞれ本発明の他の実施形態に係る管継手の平面図、正面図、左側面図であり、図6の(a)(b)(c)はそれぞれ本発明の更に他の実施形態に係る管継手の平面図、正面図、左側面図である。
図5の管継手61は、中空ポケット部6aが箱形に形成されており、この箱形の中空ポケット部6aの上面中央から真上に向かって流入筒部6eと縦排水管接続口6bが突設されている。そして、中空ポケット部6aの膨出した一側面には横排水管接続口6cが形成されており、中空ポケット部6aの底面には横排水管5の流れ勾配よりも大きい勾配が付けられている。また、中空ポケット部6aの中心線と垂直に切断した開口面積は、横排水管5の開口面積より大きくなっている。
このような管継手61は、縦排水管4から流入筒部6eを通って中空ポケット部6aに流入した排水が、中空ポケット部6aの底面上を放射状に流れ、横排水管接続口6cと反対側に流れた排水や左右両側に流れた排水は、中空ポケット部6aに一時的に滞留した後、方向を変えて横排水管5へ流出する。従って、この管継手61を用いて縦排水管4と横排水管5を接続した排水管路構造も、水勢の減衰作用、流速の減速作用、器具排水流量のピーク緩和作用が良好であり、排水管路の閉塞及び負圧の発生を抑制して、排水トラップの封水破壊を防止することができる。流入筒部6eを通って中空ポケット部6aに流入する排水が横排水管接続口6cと反対側に流入するように流入筒部6eを湾曲させて流入する排水を案内するようにしてもよいことは言うまでもない。
また、図6の管継手62は、中空ポケット部6aがL形に屈曲した円筒形(一端が閉鎖された円筒形)に形成されており、その外側コーナー部から真上に向かって流入筒部6eと縦排水管接続口6bが突設されている。そして、中空ポケット部6aの他端の縮径部6dには横排水管接続口6cが形成されており、中空ポケット部6aの底面には横排水管5の流れ勾配よりも大きい勾配が付けられている。中空ポケット部6aの底面の勾配は、L形に屈曲した円筒形の全体に亘って均一でもよいが、閉鎖された一端側の底面の流れ勾配を、横排水管接続口6cのある他端側の底面の流れ勾配よりも大きくする方が、固形物の残留を確実に防止する観点から好ましい。また、この中空ポケット部6aのL形の中心線と垂直に切断した開口面積は、横排水管5の開口面積より大きくなっている。
このような管継手62は、縦排水管4から流入筒部6eを通って中空ポケット部6aに流入した排水が、中空ポケット部6aの内部を、閉鎖された一端側と横排水管接続口6cのある他端側に分かれて流れ、一端側に流れた排水は中空ポケット部6aに一時的に滞留した後、方向を変えて横排水管5へ流出する。従って、この管継手62を用いて縦排水管4と横排水管5を接続した排水管路構造も、水勢の減衰作用、流速の減速作用、器具排水流量のピーク緩和作用が良好であり、排水管路の閉塞及び負圧の発生を抑制して、排水トラップの封水破壊を防止することができる。
尚、これらの管継手61,62においては、中空ポケット部6aの底面に、横排水管5の流れ勾配に等しい勾配を付けてもよいことは言うまでもない。
上記のように、本発明の管継手は、縦排水管接続口と、横排水管接続口と、縦排水管から流入した排水を一時的に滞留させて横排水管へ流出させる中空ポケット部を備え、水勢の減衰作用、流速の減速作用、器具排水流量のピーク緩和作用を発揮できるものであれば、中空ポケット部の形状や全体の構成に特別な制限を受けるものではなく、種々の形状、構成とすることができるものである。
本発明の一実施形態に係る排水管路構造の説明図である。 (a)(b)(c)はそれぞれ同排水管路構造に用いられる本発明の管継手の平面図、正面図、左側面図である。 同管継手の作用説明図である。 本発明の他の実施形態に係る排水管路構造の説明図である。 (a)(b)(c)はそれぞれ本発明の他の実施形態に係る管継手の平面図、正面図、左側面図である。 (a)(b)(c)はそれぞれ本発明の更に他の実施形態に係る管継手の平面図、正面図、左側面図である。
符号の説明
1 便器
4 縦排水管
4a 縦排水管下部の短管
5 横排水管
6,60,61,62 管継手
6a 中空ポケット部
6b 縦排水管接続口
6c 横排水管接続口
6e 流入筒部
CL 中空ポケット部の中心線

Claims (7)

  1. 縦排水管とその下流側の横排水管との接続部分に、縦排水管を流下してきた排水を一時的に滞留させて横排水管へ流出させる中空ポケット部が形成されていることを特徴とする排水管路構造。
  2. 中空ポケット部が、縦排水管の下端から横排水管と反対方向に突き出して形成されていることを特徴とする請求項1に記載の排水管路構造。
  3. 中空ポケット部をその中心線に対して垂直方向に切断したときの開口面積が、横排水管をその中心線に対して垂直方向に切断したときの開口面積よりも大きいことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の排水管路構造。
  4. 中空ポケット部の底面が横排水管の上流側端に近づくほど低くなるように中空ポケット部の底面に勾配がつけられ、この勾配が横排水管の流れ勾配と同一もしくはそれよりも大きいことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の排水管路構造。
  5. 縦排水管の少なくとも下部が中空ポケット部側に傾いていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の排水管路構造。
  6. 中空ポケット部が一端を閉塞した横向きの円筒状の中空ポケット部に形成され、この円筒状中空ポケット部に連なる縦排水管の下端が円筒状中空ポケット部の中心線から片側へ偏位していることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の排水管路構造。
  7. 請求項1ないし請求項6のいずれかの排水管路構造に用いられる管継手であって、縦排水管の下端が接続される縦排水管接続口と、横排水管の上流側端が接続される横排水管接続口と、縦排水管から流入した排水を一時的に滞留させて横排水管へ流出させる中空ポケット部とを備えていることを特徴とする管継手。
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