以下、図面を参照しながら、本発明に係る排水配管システムの実施の形態について説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、本発明の一実施形態に過ぎず、当然ながら本発明を限定することを意図したものではない。
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る排水配管システム1を模式的に示した平面図である。図2および図3は、排水配管システム1を模式的に示した正面図である。図3では、排水配管システム1に仮設トイレ4が設置された状態が示されている。
図1に示すように、本実施形態に係る排水配管システム1は、通常時には、建物5内の排水設備6から下水本管8に向かって排水を排出する。地震などの災害時には、排水配管システム1は、図3に示すように、仮設トイレ4が設置されたシステムとして使用され、仮設トイレ4から排出された汚水を下水本管8などに排出する。
ここで、排水には、トイレ、台所の流し台、風呂などの、生活において排出される汚水や、雨水が含まれる。上記の排水設備6は、排水を排出する設備であり、例えばトイレ、風呂、台所の流し台などである。なお、本実施形態では、図1に示すように、排水設備6は、建物5内に配置されているが、建物5に配置されておらず、屋外(例えば公園)などに配置されていてもよい。
図1に示すように、排水配管システム1は、本管10と、枝管20と、配管部材30A~30Eと、給水タンク40と、給水開閉ゲート50と、切替ます70と、逆流防止ます90と、貯留槽100と、を備えている。
本管10は、地中に埋設されている。本管10の上流端は、給水開閉ゲート50を介して給水タンク40に接続され、本管10の下流端は、下水本管8に接続されている。
以下の説明において、本管10の上流側とは、給水タンク40側のことをいい、本管10の下流側とは、下水本管8側のことをいう。本実施形態では、本管10は、上流側本管11と、下流側本管12とを有している。上流側本管11は、配管部材30Aよりも上流側に配置されている。上流側本管11の上流端は、給水開閉ゲート50に接続されている。上流側本管11の下流端は、配管部材30Aに接続されている。なお、上流側本管11は、1つの管によって構成されていてもよいし、複数の管と、2つの管を繋ぐ継手によって構成されていてもよい。
下流側本管12は、上流側本管11よりも下流側に配置され、かつ、配管部材30Aよりも下流側に配置されている。下流側本管12は、配管部材30Aと下水本管8とに接続されている。本実施形態では、下流側本管12は、第1下流側本管13A~第8下流側本管13Hを有している。ここでは、本管10の上流から下流に向かって、第1下流側本管13A~第8下流側本管13Hの順に配置されている。言い換えると、配管部材30Aから下水本管8に向かって、第1下流側本管13A~第8下流側本管13Hの順に並んで配置されている。なお、第1下流側本管13A~第8下流側本管13Hは、それぞれ1つの管によって構成されていてもよいし、複数の管と、2つの管を繋ぐ継手によって構成されていてもよい。
枝管20は、排水設備6と本管10とを繋ぐものである。なお、枝管20の数は特に限定されず、例えば排水設備6の数や、配管部材30A~30Eの数に応じて決定されるものである。本実施形態では、排水設備6の数、および、配管部材30A~30Eの数は、共に5つである。そのため、枝管20の数も5つである。
ここでは、枝管20の上流側とは、排水設備6側のことをいい、枝管20の下流側とは、本管10側(言い換えると、配管部材30A~30E側)のことをいう。5つの枝管20の上流端は、排水設備6に接続されている。5つの枝管20の下流端は、本管10に接続されている。詳しくは、5つの枝管20の下流端は、それぞれ配管部材30A~30Eに接続され、配管部材30A~30Eを介して本管10に間接的に接続されている。なお、各枝管20は、1つの管によって構成されていてもよいし、複数の管と、2つの管を繋ぐ継手によって構成されていてもよい。
配管部材30A~30Eは、本管10の途中部分に設けられている。配管部材30A~30の数は特に限定されないが、ここでは5つである。本実施形態では、本管10の上流から下流に向かって、配管部材30A、30B、30C、30D、30Eの順に配置されている。詳しくは、配管部材30Aは上流側本管11と第1下流側本管13Aとの間に配置され、配管部材30Bは第1下流側本管13Aと第2下流側本管13Bとの間に配置されている。なお、本実施形態では、配管部材30Bは、本発明の他の配管部材の一例である。また、配管部材30Cは第2下流側本管13Bと第3下流側本管13Cとの間に配置され、配管部材30Dは第3下流側本管13Cと第4下流側本管13Dとの間に配置され、配管部材30Eは第4下流側本管13Dと第5下流側本管13Eとの間に配置されている。なお、配管部材30A~30Eは、同じ構成を有している。そのため、以下では、最も上流側に配置された配管部材30Aの構成について説明する。
図4は、配管部材30Aの正面断面図である。図4に示すように、配管部材30Aは、排水ます31と、立管38とを備えている。排水ます31は、上方に開口した有底の部材によって形成されている。この上方に開口した部分が点検口32である。排水ます31は、第1流入口33と、第2流入口34と、流出口35とを有している。第1流入口33、第2流入口34および流出口35は、それぞれ側方に開口している。第1流入口33および流出口35には、本管10が接続されている。詳しい図示は省略するが、第2流入口34には、枝管20(図1参照)の下流端が接続されている。
図4に示すように、例えば配管部材30Aでは、第1流入口33には、上流側本管11の下流端が接続されている。詳しくは、第1流入口33には、後述する接続継手25を介して上流側本管11が間接的に接続されている。本実施形態では、第1流入口33は、本発明の流入口の一例である。配管部材30Aでは、流出口35には、第1下流側本管13Aの上流端が接続されている。図5は、配管部材30B~30Eの正面断面図である。図5に示すように、配管部材30B~30Eでは、それぞれ第1流入口33には、図4に示すような接続継手25は接続されておらず、本管10の下流側本管12が直接接続されている。例えば配管部材30Bでは、第1流入口33には、第1下流側本管13Aの下流端が接続されており、流出口35には、第2下流側本管13Bの上流端が接続されている。
本実施形態では、図4に示すように、第1流入口33と、第2流入口34と、流出口35との大きさは、同じである。すなわち、第1流入口33の直径D31、第2流入口34の直径D32、および、流出口35の直径D33は、同じである。ただし、第1流入口33、第2流入口34および流出口35のうちの何れか一方が他方と大きさが異なってもよい。
ここでは、第1流入口33と流出口35とは、上下方向で同じ位置である。言い換えると、第1流入口33の下端33aと流出口35の下端35aとは、上下方向で同じ位置である。第2流入口34は、第1流入口33および流出口35よりも高い位置に配置されている。言い換えると、第2流入口34の下端34aの上下方向の位置は、第1流入口33の下端33aの上下方向の位置、および、流出口35の下端35aの上下方向の位置よりも高い。ただし、第2流入口34の下端34aは、第1流入口33および流出口35の下端33a、35aと上下方向で同じ位置であってもよい。
本実施形態では、排水ます31の底面には、インバート36が形成されている。インバート36は、第1流入口33と流出口35とを繋ぐものである。ここでは、インバート36の下端36aと、第1流入口33の下端33aと、流出口35の下端35aとは、上下方向で同じ位置である。インバート36の下端33aは、第2流入口34の下端34aよりも下方に位置している。
立管38は、上下に延びており、排水ます31の点検口32に接続されている。立管38は、点検口32から上方に向かって延びている。立管38は、上方に向かって開口し、かつ、下方に向かって開口している。本実施形態では、立管38の上方に向かって開口した部分が取付口39である。取付口39には、蓋3および仮設トイレ4の便器4a(図3参照)を選択的に取り付けることが可能である。例えば災害時以外の通常時には、取付口39には蓋3が取り付けられている。災害時には、蓋3が取付口39から取り外され、取付口39には、仮設トイレ4の便器4aが取り付けられる。
図2に示すように、給水タンク40は、本管10に流す水が貯留されているタンクである。給水タンク40は、本管10の上流側本管11の上流端と繋がり、上流側本管11の上流端から上流側本管11内に給水するものである。給水タンク40には、例えば雨水が溜められている。しかしながら、給水タンク40には、水が溜められていればよく、例えば異物が混在されていない比較的にきれいな水であってもよい。給水タンク40は、排水設備6とは異なるものであり、汚水を溜めるものではない。図1に示すように、給水タンク40には、内部の水が排出されるタンク給水口41が形成されている。給水タンク40は、地中に埋設されていてもよいし、地上に配置されていてもよい。
給水開閉ゲート50は、本管10の上流側本管11の上流端を開閉可能なものである。給水開閉ゲート50によって上流側本管11の上流端が閉鎖されることで、給水タンク40内の水が本管10に流れることを塞き止める。一方、給水開閉ゲート50によって上流側本管11の上流端が開放されることで、給水タンク40内の水を本管10に流すことができる。なお、給水開閉ゲート50の構成は特に限定されない。
図6および図7は、給水開閉ゲート50の正面断面図である。本実施形態では、図6に示すように、給水開閉ゲート50は、貯留容器51と、貯留容器51の内部に配置される開閉機構60とを有している。貯留容器51は、給水タンク40からの水が一時的に貯留される容器である。貯留容器51には、上方に開口した点検口52が形成されている。点検口52には、上下に延びた立管59が接続されている。
なお、貯留容器51は、1つの部材によって構成されていてもよいし、複数の部材を組み付けたものであってもよい。本実施形態では、貯留容器51は、上下に延びた筒状の容器筒部51aと、容器筒部51aの下方に配置され、容器筒部51aの下端を覆う受け部51bとを有している。
貯留容器51には、側方に開口した給水口53が形成されている。給水口53は、上流側本管11に貯留容器51の水を流す口である。給水口53は、給水部の一例である。給水口53には、上流側本管11の上流端が接続されている。給水タンク40から貯留容器51に貯留された水は、給水口53から上流側本管11に流れ込む。ここでは、給水口53には、貯留容器51の内部に向かって突出した筒状の突出筒部55が嵌め込まれている。
開閉機構60は、貯留容器51の給水口53を開閉するものである。ここでは、開閉機構60は、給水口53を開閉することで、上流側本管11の上流端を開閉することができる。ここでは、開閉機構60は、貯留容器51内において上下に移動することで、給水口53を開閉することができる。なお、開閉機構60の構成は特に限定されない。
本実施形態では、開閉機構60は、縦筒部62と、横筒部61とを有している。縦筒部62は、貯留容器51内に配置されており、上下に延びた筒状のものである。縦筒部62は、上方に開口した上部開口65と、下方に開口した下部開口66とを有している。上部開口65には、給水タンク40のタンク給水口41(図2参照)が接続されている。ここでは、図2に示すように、タンク給水口41には、給水管45の上流端が接続されており、図6に示すように、給水管45の下流端が上部開口65に挿入されている。図1に示すように、給水管45の途中部分には、汲み上げポンプ46が設けられている。
図6に示すように、下部開口66は、貯留容器51内に向かって開口しており、給水タンク40内の水が縦筒部62を通じて貯留容器51内に一度排出される。
本実施形態では、縦筒部62の側部に横筒部61が設けられている。横筒部61は、縦筒部62の側部から給水口53側に向かって延びている。横筒部61は水平方向に延びている。横筒部61は、縦筒部62と一体となって上下に移動可能である。ここでは、横筒部61には、作業者が操作するための取っ手64が設けられている。
また、横筒部61の給水口53側の端(図6では右側の端)の上部には、給水口53側に向かって突出した突起63が形成されている。この突起63は、給水口53に嵌め込まれた突出筒部55と当接可能である。ここでは、開閉機構60における下方への移動は、突起63が突出筒部55に当接することで規制される。突起63と突出筒部55とが当接したとき、横筒部61と給水口53は連通した状態となる。
本実施形態では、開閉機構60は、開放位置P1(図7参照)と、閉鎖位置P2(図6参照)との間で移動可能である。開放位置P1とは、図7に示すように、横筒部61が給水口53よりも上方に位置するような開閉機構60の位置である。開放位置P1のとき、給水口53は、開放された状態となる。開放位置P1のとき、給水タンク40内の水は、縦筒部62の下部開口66を通じて貯留容器51内に一度排出される。そして、貯留容器51内の水位が給水口53の高さまで達したとき、給水口53から本管10に向かって水が流れる。よって、開放位置P1のとき、給水タンク40内の水を、本管10に流すことができる。
閉鎖位置P2とは、図6に示すように、横筒部61の突起63と、給水口53に嵌め込まれた突出筒部55とが当接したときの開閉機構60の位置である。閉鎖位置P2のとき、給水口53は、開閉機構60によって閉鎖されている。そのため、給水タンク40内の水を、本管10に流すことができない。閉鎖位置P2のとき、貯留容器51には、給水タンク40からの水が一時的に貯められる。以上のように、給水開閉ゲート50によって上流側本管11の上流端を開閉することができる。
図1に示す切替ます70は、排水の流路を切り替えることが可能なますである。なお、切替ます70は、排水の流路を切り替えることが可能な管継手に代用可能である。切替ます70は、配管部材30A~30Eよりも下流側の本管10の部分に設けられ、本管10内の排水の流路を切り替えるものである。本実施形態では、切替ます70は、下流側本管12の第5下流側本管13Eと第6下流側本管13Fとの間に配置され、第5下流側本管13E、第6下流側本管13Fおよび貯留槽100に接続されている。
切替ます70は、第5下流側本管13Eから第6下流側本管13Fに排水を流す第1の状態と、第5下流側本管13Eから貯留槽100に排水を流す第2の状態とに切り替え可能なものである。なお、切替ます70の具体的な構成は特に限定されない。
図8は、切替ます70の平面図である。図9は、図8のIX-IX線に沿った切替ます70の断面図である。図8および図9に示すように、切替ます70は、ます本体71と、閉鎖体72とを備えている。ます本体71は、内部に空間を有し、上方に向かって開口している。図9に示すように、ます本体71には、上方に開口した点検口81と、側方に開口した流入口82と、側方に開口した第1流出口83と、下方に開口した第2流出口84が形成されている。点検口81には、点検筒79(図2参照)が接続されている。図9に示すように、流入口82には、下流側本管12の第5下流側本管13Eの下流端が接続されている。第1流出口83には、第6下流側本管13Fの上流端が接続されている。第2流出口84には、貯留槽100(図2参照)が接続されている。ここでは、第2流出口84には、流出管89の上流端が接続されており、流出管89を介して貯留槽100が間接的に接続されている。
図9に示すように、閉鎖体72は、第2流出口84を閉鎖可能なものである。閉鎖体72は、排水が流れるインバート85(図8参照)と、第2流出口84と嵌合可能な嵌合部86とを有している。本実施形態では、閉鎖体72の嵌合部86を第2流出口84に嵌め込んだ状態が、第1の状態である。第1の状態では、第5下流側本管13E内の排水は、流入口82を通じてます本体71内に流入する。そして、ます本体71内に流入した排水は、インバート85を通り、第1流出口83から第6下流側本管13Fへ流出する。
本実施形態では、閉鎖体72を取り外した状態が第2の状態である。第2の状態では、第5下流側本管13E内の排水は、流入口82を通じてます本体71内に流入する。ます本体71内に流入した排水は、第1流出口83へ到達する前に第2流出口84を通じて貯留槽100に排出される。
図3に示す貯留槽100は、例えば仮設トイレ4から排出された汚水、または、排水を貯留する槽である。上述のように、貯留槽100は、流出管89を介して切替ます70の第2流出口84(図9参照)に接続されている。貯留槽100は、内部に密封された空間を有している。貯留槽100が密封式であることにより、貯留槽100内の汚水などの排水から発生する悪臭が外部に漏れないようにすることができる。本実施形態では、貯留槽100は地中に埋設されている。しかしながら、貯留槽100は、地上に配置されていてもよい。
逆流防止ます90は、排水が逆流するのを防止するためのものである。図2に示すように、逆流防止ます90は、切替ます70よりも下流側に設けられている。詳しくは、逆流防止ます90は、下流側本管12の第6下流側本管13Fと第7下流側本管13Gとの間に配置されている。そのため、逆流防止ます90は、第7下流側本管13G内の排水が第6下流側本管13Fに流れることを抑制する。なお、逆流防止ます90の構成は特に限定されない。
図10は、逆流防止ます90の正面断面図である。図10に示すように、逆流防止ます90は、有底筒状の部材であり、上部には、上方に開口した点検口91が形成されている。点検口91には、例えば立管95が接続されている。立管95は、上下に延びている。
逆流防止ます90は、流入口92と、流出口93とを有している。流入口92と流出口93は、側方に向かって開口している。流入口92と流出口93は対向している。流入口92および流出口93には、下流側本管12が接続されている。詳しくは、流入口92には、第6下流側本管13Fの下流端が接続されている。流出口93には、第7下流側本管13Gの上流端が接続されている。
本実施形態では、流入口92は、流出口93よりも高い位置に配置されている。言い換えると、流入口92の下端92aは、流出口93の下端93aよりも上方に位置している。そのため、仮に第7下流側本管13G内の排水が逆流して逆流防止ます90内に流れ込んだ場合であっても、逆流防止ます90内に排水が溜まり、流入口92から第6下流側本管13Fへ排水が逆流し難くなる。
本実施形態では、図1に示すように、下流側本管12の途中部分には、公共ます110が設けられている。詳しくは、公共ます110は、下流側本管12の第7下流側本管13Gと第8下流側本管13Hとの間に配置されている。公共ます110は、第7下流側本管13Gの下流端、および、第8下流側本管13Hの上流端に接続されている。第8下流側本管13Hの下流端は下水本管8に接続されている。なお、公共ます110は、従来公知のものを採用することができるため、ここでの説明は省略する。
以上、本実施形態に係る排水配管システム1の構成について説明した。次に、排水配管システム1の使用方法について説明する。排水配管システム1は、通常時と、災害時とで使用方法が異なる。通常時、排水配管システム1は、図1に示すように、排水設備6から排出された排水を、下水本管8に流すように構成されている。図3に示すように、災害時、排水配管システム1は、仮設トイレ4から排出された汚水を、下水本管8または貯留槽100に選択的に流すように構成されている。
まず通常時における排水配管システム1の使用方法について説明する。通常時、給水タンク40は使用されない。そのため、給水開閉ゲート50の開閉機構60は、閉鎖位置P2(図6参照)に配置され、給水開閉ゲート50によって上流側本管11の上流端は閉鎖された状態となる。切替ます70は第1の状態であり、図9に示すように、閉鎖体72の嵌合部86は、第2流出口84に嵌め込まれている。通常時では、図2に示すように、配管部材30A~30Eの取付口39には、仮設トイレ4が取り付けられておらず、蓋3(図4および図5参照)が取り付けられている。
通常時、排水設備6から排出された排水は、枝管20を通じて配管部材30A~30Eに排出されて、排水ます31の流出口35から下流側本管12の下流側に向かって流れる。その後、排水は、切替ます70のます本体71内に排出される。通常時では、切替ます70の閉鎖体72が第2流出口84に嵌め込まれているため、切替ます70のます本体71内に排出された排水は、第1流出口83から排出され、公共ます110を通じて下水本管8に排出される。
次に、災害時における排水配管システム1の使用方法について説明する。災害時には、仮設トイレ4(図3参照)が使用される。そのため、配管部材30A~30Eのそれぞれの取付口39から蓋3が取り外され、取付口39には、仮設トイレ4の便器4aが取り付けられる。災害時において、給水タンク40内の水は適宜使用され、給水タンク40内の水を本管10に流す際には、給水開閉ゲート50は上流側本管11の上流端を開放する。
災害時において、仮設トイレ4が設置されたとき、給水開閉ゲート50によって上流側本管11の上流端は閉鎖された状態である。そのため、仮設トイレ4から排出された汚水は、配管部材30A~30Eを通じて下流側本管12に排出され、下流側本管12および配管部材30A~30Eの排水ます31内に一時的に溜められた状態となる。
このように、下流側本管12および配管部材30A~30Eの排水ます31内に汚水がある程度溜められた後、下流側本管12の下流側に向かって汚水を排出させる。このとき、上流側本管11の上流端から水を流すために、給水開閉ゲート50の開閉機構60の位置を開放位置P1(図7参照)にする。このことで、給水開閉ゲート50によって上流側本管11の上流端が開放される。
このとき、給水開閉ゲート50の貯留容器51に溜められていた水が給水口53を通じて本管10に流れる。このことで、下流側本管12および配管部材30A~30Eの排水ます31内に一時的に溜められた汚水は、貯留容器51からの水の流れによって、下流側本管12の下流側に向かって排出される。仮設トイレ4から排出された汚水を下流側本管12の下流側へ流した後、給水開閉ゲート50の開閉機構60の位置を閉鎖位置P2(図6参照)に戻すことで、上流側本管11の上流端を閉鎖する。なお、貯留容器51に溜められた水が少なくなった場合には、汲み上げポンプ46を操作して、給水タンク40内の水を貯留容器51内に流すとよい。
なお、災害時において、仮設トイレ4から排出された汚水は、下水本管8に排出されてもよいし、貯留槽100に排出されてもよい。例えば、災害時に下水本管8が破損していない場合には、仮設トイレ4から排出された汚水は、下水本管8に排出される。このとき、切替ます70において、図9に示すように、閉鎖体72の嵌合部86を第2流出口84に嵌め込む。このことで、第2流出口84が閉鎖され、仮設トイレ4から排出された汚水は、切替ます70の第1流出口83を通じて下水本管8に排出される。
一方、災害時に下水本管8が破損した場合には、仮設トイレ4から排出された汚水を、貯留槽100に排出させる。このとき、切替ます70において、閉鎖体72の嵌合部86を第2流出口84から取り外す。このことで、第2流出口84は開放され、仮設トイレ4から排出された汚水は、切替ます70の第2流出口84を通じて貯留槽100に排出される。
ところで、従来では、災害時に、上流側本管の上流端を開放して水を流して、下流側本管内に溜まった仮設トイレからの汚水を下水本管などに排出する際、当該汚水を排出してからの時間の経過と共に、下流側本管に到達するまでに水が減速してしまい、下流側本管内に溜まった汚水を適切に排出できないことがあった。そこで、本発明者は、下流側本管に到達するまでに水が減速し難い構造について検討した。
次に、本発明者が考える水が減速する仕組みについて説明する。以下、当該仕組みに関する説明では、本実施形態の説明で使用している用語および符号を用いることとする。まず、上流側本管11の上流端が閉鎖されているとき、給水開閉ゲート50の貯留容器51には、水が溜められる。このとき、貯留容器51内では水頭圧が発生する。下流側本管12に水を流す際、給水開閉ゲート50によって上流側本管11の上流端が開放されることで、貯留容器51内の水が上流側本管11を通じて下流側本管12へと流れることになる。
このとき、上流側本管11の上流端が開放された直後では、貯留容器51内の水頭圧が高いため、貯留容器51内の水が上流側本管11へ勢いよく流れ、水の流速が速い。しかしながら、時間の経過と共に、貯留容器51内の水の量が減って水頭圧が急に下がることで、貯留容器51から上流側本管11へ流れる水の勢いが弱まり、上流側本管11内において水の流速が遅くなる。更に、上流側本管11内を水が流れるとき、上流側本管11の内周面と水とが接触することや上流側本管11内の気体の流れによって、水の流速低下が起こり、水の流れが遅くなる。これらのことで、下流側本管12に到達する水の流速が遅くなり、その結果、下流側本管12内の汚水を適切に下水本管8などに排出することができないと考えられる。
そこで、本発明者は、上流側本管11の上流端を開放してから時間が経過した場合であっても、下流側本管12に流れる水の流速を確保することができる構成について検討した。検討の結果、本発明者は、上流側本管11の内径に着目し、上流側本管11の内径を、第1下流側本管13Aの内径よりも小さくする、すなわち上流側本管11を第1下流側本管13Aよりも細くすることで、時間が経過した後であっても、水の流速を確保することができることを見出した。
ただし、本発明者は、上流側本管11を第1下流側本管13Aよりも細くしたことによって水の流速が確保できた仕組みについて、正確には解明できていない。しかしながら、以下のような仕組みであると推察される。
上流側本管11を細くすることで、上流側本管11内に流れ込む水の量が制限されるため、貯留容器51の水量の減る度合いが小さくなる。そのため、時間の経過と共に水頭圧の低下度合いが小さくなるため、上流側本管11内において水の流速が遅くなり難い。
また、上流側本管11を細くすることで、貯留容器51内の水が上流側本管11に流れるとき、上流側本管11内が水で満たされた状態、すなわち満管状態になり易い。上流側本管11が満管状態で水が流れることで、上流側本管11内の気体が0または僅かな量となる。そのため、上流側本管11内を水が流れる際、気体の流れによる水の流速低下を抑えることができる。そのため、上流側本管11内の水の流れが遅くなり難い。その結果、上流側本管11の上流端を開放してから時間が経過したときにでも、下流側本管12に流れる水の流速を確保することができると推察される。
更に、上流側本管11を満管状態とすることで、いわゆるサイフォンの原理を利用することができる。本実施形態では、上流側本管11を満管状態にすることで、貯留容器51内の水を引き込む力を大きくすることができる。当該引き込む力が大きくなることで、上流側本管11に入り込む水の量が多くなり、その結果、上流側本管11内の水の流速を速くすることができる。このようにサイフォンの原理を利用することでも、下流側本管12に流れる水の流速を確保することができると推察される。
次に、本実施形態に係る排水配管システム1において、本管10内を流れる排水および水の流速を確保する構成について説明する。本実施形態では、本管10の一部には、満管発生手段15が設けられている。満管発生手段15は、本管10の一部を、当該一部以外の他の一部に比べて排水や水で満たされた状態、すなわち満管状態にし易くするものである。満管発生手段15は、本管10の一部内における単位当たりの水の量を、本管10の他の一部内における単位当たりの水の量よりも多くする。ここで、単位当たりとは、例えば単位容量当たりのことである。
本実施形態では、満管発生手段15は、本管10の上流側本管11に設けられている。本実施形態では、上流側本管11が本管10の一部であり、下流側本管12が本管10の他の一部である。そのため、上流側本管11は、下流側本管12よりも満管状態になる時間が早く、満管状態になり易い。言い換えると、上流側本管11の単位当たりの排水および水の量は、下流側本管12の単位当たりの排水および水の量よりも多い。
なお、満管状態になり易いようにする満管発生手段15の具体的な構成は特に限定されない。本実施形態では、満管発生手段15は、本管10の一部、ここでは上流側本管11を細くすることで実現する。ここでは、図4に示すように、上流側本管11は、第1下流側本管13Aよりも細い。すなわち、上流側本管11の内径D1は、第1下流側本管13Aの内径D2よりも小さい。
ここで、上流側本管11の内径D1は、第1下流側本管13Aの内径D2の2/3以下である。ただし、上流側本管11の内径D1と第1下流側本管13Aの内径D2との比率は特に限定されない。例えば、上流側本管11の内径D1は、第1下流側本管13Aの内径D2の3/4以下であってもよいし、1/2以下であってもよいし、1/3以下であってもよい。また、本実施形態では、上流側本管11の内径D1は、第1下流側本管13Aの内径D2の1/6以上である。ただし、上流側本管11の内径D1は、第1下流側本管13Aの内径D2の1/5以上であってもよいし、1/4以上であってもよい。例えば、上流側本管11の内径D1は100mmであり、第1下流側本管13Aの内径D2は150mmである。
本実施形態では、上流側本管11の横断方向の流路断面積は、第1下流側本管13Aの横断方向の流路断面積よりも小さい。ここで、上流側本管11の流路断面積は、第1下流側本管13Aの流路断面積の1/2以下である。ただし、上流側本管11の流路断面積と第1下流側本管13Aの流路断面積との比率は特に限定されない。例えば、上流側本管11の流路断面積は、第1下流側本管13Aの流路断面積の3/4以下であってもよいし、2/3以下であってもよいし、1/3以下であってもよい。また、本実施形態では、上流側本管11の流路断面積は、第1下流側本管13Aの流路断面積の1/6以上である。ただし、上流側本管11の流路断面積は、第1下流側本管13Aの流路断面積の1/5以上であってもよいし、1/4以上であってもよい。
なお、本実施形態では、上流側本管11の内径および流路断面積は、上流から下流に向かうどの位置でも同じであるが、異なっていてもよい。同様に、下流側本管12(例えば第1下流側本管13A)の内径および流路断面積は、上流から下流に向かうどの位置でも同じであるが、異なっていてもよい。上流側本管11、および、下流側本管12のそれぞれの内径および流路断面積は、上流から下流に向かうに連れて徐々に大きくなってもよいし、小さくなってもよい。言い換えると、上流側本管11、および、下流側本管12は、上流から下流に向かうに連れて拡径してもよし、縮径してもよい。ここでは、上流側本管11、および、下流側本管12のそれぞれの内径および流路断面積が上流から下流に向かうに連れて異なる場合、内径とは最も小さい径のことをいい、流路断面積とは最も小さい流路断面積のことをいう。
本実施形態では、図4に示すように、上流側本管11の内径D1は、配管部材30Aの排水ます31の第1流入口33の直径D31(図4参照)よりも小さい。ここで、上流側本管11の内径D1は、第1流入口33の直径D31の2/3以下である。ただし、上流側本管11の内径D1は、第1流入口33の直径D31の3/4以下であってもよいし、1/2以下であってもよいし、1/3以下であってもよい。
このように、本実施形態では、上流側本管11の内径D1が、配管部材30Aの第1流入口33の直径D31よりも小さいため、上流側本管11の下流端を配管部材30Aの第1流入口33に直接接続した場合、隙間が生じる。そのため、ここでは、上流側本管11の下流端と配管部材30Aの第1流入口33とは、接続継手25を介して互いに接続する。
接続継手25は、上流側本管11と配管部材30Aとの間に配置され、上流側本管11と配管部材30Aの第1流入口33とを繋ぐものである。接続継手25は、第1接続口26と、第2接続口27と、接続筒部28とを有している。第1接続口26には、上流側本管11の下流端が接続される。第2接続口27には、配管部材30Aの排水ます31が接続され、第1流入口33と連通する。接続筒部28は、第1接続口26と第2接続口27とを繋ぐものであり、筒状のものである。
本実施形態では、接続継手25は、異径継手である。接続継手25において、第1接続口26は第2接続口27よりも小さい。言い換えると、第1接続口26の直径は、第2接続口27の直径よりも小さい。第1接続口26の下端26aと、第2接続口27の下端27aとは、上下方向で同じ位置である。第1接続口26の上端26bは、第2接続口27の上端27bよりも下方に位置している。
本実施形態では、第1接続口26の下端26aと第2接続口27の下端27aとが上下方向で同じ位置であるため、接続筒部28の底面28aは、水平方向に延びている。一方、第1接続口26の上端26bが第2接続口27の上端27bよりも下方に位置しているため、接続筒部28の上面28bは、第2接続口27に向かうに連れて上方に傾斜している。接続筒部28は、第1接続口26から第2接続口27に向かうに従って、内径は大きくなり、流路断面積も大きくなっている。
詳しい図示は省略するが、下流側本管12の第1下流側本管13A~第8下流側本管13Hのそれぞれの内径は、同じである。よって、上流側本管11の内径D1は、第2下流側本管13B~第8下流側本管13Hのそれぞれの内径よりも小さい。また、上流側本管11の内径D1は、配管部材30Aの排水ます31の点検口52、第2流入口34、流出口35、および、立管38の取付口39のそれぞれの直径よりも小さい。上流側本管11の内径D1は、各枝管20の内径よりも小さい。
本実施形態では、上述のように、配管部材30Aにおいて、第1流入口33の下端33aと、流出口35の下端35aとの上下方向の位置は同じである。そのため、配管部材30Aの第1流入口33に接続された上流側本管11の管底の高さと、配管部材30Aの流出口35に接続された第1下流側本管13Aの管底の高さとは、同じである。言い換えると、上流側本管11の下端11aの上下方向の位置は、第1下流側本管13Aの下端13Aaの上下方向の位置は同じである。本実施形態では、上流側本管11の管頂の高さは、第1下流側本管13Aの管頂の高さよりも低い。言い換えると、上流側本管11の上端の上下方向の位置は、第1下流側本管13Aの上端の上下方向の位置よりも上方の位置である。
なお、上流側本管11および下流側本管12(例えば第1下流側本管13A)は、水平方向に延びていてもよいし、下流側に向かうにしたがって下方に傾斜するように多少の勾配が付けられていてもよい。このように上流側本管11および第1下流側本管13Aに勾配が付けられている場合、上流側本管11の下流端部の管底の高さと、第1下流側本管13Aの上流端部の管底の高さとが同じになる。
なお、上流側本52管11の管底の高さは、第1下流側本管13Aの管底の高さよりも高くてもよい。ここでは、上流側本管11の管頂の高さは、第1下流側本管13Aの管頂の高さと同じであってもよいし、第1下流側本管13Aの管頂の高さよりも高くてもよい。この場合、接続継手25の接続筒部28の底面28aには、段差部が設けられる。この段差部によって、上流側本管11から第1下流側本管13Aへ水が流れる際の水を加速させることができる。また、当該段差部によって、第1下流側本管13Aから上流側本管11に向かって排水や水が逆流することを防止することができるため、当該段差部は、逆流防止の機能を有する。
本実施形態では、図1に示すように、上流側本管11の管軸方向の長さL1は、第1下流側本管13Aの管軸方向の長さL2よりも短い。ここで管軸方向とは、長手方向であり、縦断方向である。詳しい図示は省略するが、上流側本管11の管軸方向の長さL1は、第2下流側本管13B、第3下流側本管13Cおよび第4下流側本管13Dのそれぞれの管軸方向の長さよりも短い。言い換えると、平面視において、給水開閉ゲート50と配管部材30Aとの距離は、配管部材30A~30Eのうち隣り合う2つの配管部材の距離よりも短い。更に言い換えると、配管部材30A~30Eに仮設トイレ4を取り付けた場合において、平面視において、給水開閉ゲート50と配管部材30Aに取り付けられた仮設トイレ4との距離は、隣り合う2つの仮設トイレ4の距離よりも短い。
本実施形態では、給水開閉ゲート50の貯留容器51に貯留される水の最大容量は、上流側本管11の最大容量よりも多い。ここで、貯留容器51の最大容量とは、例えば貯留容器51の上端まで水が溜められたときの水の容量である。上流側本管11の最大容量とは、上流側本管11が満管状態のときの水の容量のことをいう。本実施形態では、上流側本管11の最大容量は、第1下流側本管13A~第8下流側本管13Hのそれぞれの最大容量よりも少ない。また、上流側本管11の最大容量は、各枝管20の最大容量よりも少ない。
以上のように、本実施形態では、図4に示すように、満管発生手段15が設けられた本管10の一部である上流側本管11では、下流側本管12よりも水で満たされた状態、すなわち満管状態になり易い。このことで、上流側本管11内の気体の量を少なくすることができるため、気体の流れによる水の流速低下を抑えることができる。更に、本実施形態のように満管発生手段15によって、上流側本管11を満管状態にすることで、サイフォンの原理を利用して、貯留容器51から上流側本管11内に水を引き込む力を大きくすることができる。そのため、満管発生手段15が設けられた上流側本管11内の水の流れが遅くなり難い。よって、上流側本管11から下流側に流れる水の流速を確保することができる。したがって、仮設トイレ4から排出された汚水を、下水本管8などに流し易い。
本実施形態のように満管発生手段15を上流側本管11に設けることで、貯留容器51の給水口53が開放されて上流側本管11に水が流れるときに、満管発生手段15によって上流側本管11が水で満たされた状態になり易い。よって、仮設トイレ4が配置される最上流の配管部材30Aよりも上流側において、水の流速を確保することができる。したがって、最上流の配管部材30Aに取り付けられた仮設トイレ4から排出された汚水を下流へ向かって適切に流すことができる。
本実施形態では、満管発生手段15は、上流側本管11の内径D1を第1下流側本管13Aの内径D2よりも小さくすることで実現される。このように、上流側本管11の内径D1を小さくするという簡単な構成で、上流側本管11を水で満管状態にし易くすることができる。よって、上流側本管11内径D1を小さくするという簡単な構成で、満管発生手段15を実現することができる。
上流側本管11の内径D1を小さくし過ぎると、上流側本管11内に流れ込む水の量が少なくなるため、下流側本管12に溜まった汚水を流すために必要な水の量を確保するのに時間を要する。一方、上流側本管11の内径D1を大きくすると、上流側本管11に水を流すときに、上流側本管11内が水で満たされ難くなる。その結果、上流側本管11内の気体が多くなり、気体の流れによる水の流速低下が起こり易くなる。そこで、本実施形態では、上流側本管11の内径D1を、第1下流側本管13Aの内径D2の2/3以下とする。例えば上流側本管11の内径D1を、第1下流側本管13Aの内径D2の1/6以上とする。このことで、下流側本管12に溜まった汚水を流すために必要な水の量を適度な時間で確保しつつ、第1下流側本管13Aに流れ込む水の流速を確保することができる。
同様に、上流側本管11の流路断面積を小さくし過ぎると、下流側本管12に溜まった汚水を流すために必要な水の量を確保するのに時間を要する。一方、上流側本管11の流路断面積を大きくすると、上流側本管11に水を流すときに、上流側本管11内の気体が多くなるため、気体の流れによる水の流速低下が起こり易くなる。そこで、本実施形態では、上流側本管11の流路断面積を、第1下流側本管13Aの流路断面積の1/2以下にする。例えば上流側本管11の流路断面積を、第1下流側本管13Aの流路断面積の1/6以上にする。このことで、下流側本管12に溜まった汚水を流すために必要な水の量を適度な時間で確保しつつ、第1下流側本管13Aに流れ込む水の流速を確保することができる。
本実施形態では、給水開閉ゲート50の貯留容器51(図6参照)に貯留される水の最大容量は、上流側本管11の最大容量よりも多い。このことによって、貯留容器51に多くの水が貯留された状態で上流側本管11の上流端が開放されることで、貯留容器51内の水頭圧によって、貯留容器51内の水が上流側本管11へ勢いよく流すことができる。よって、水の流速を速くすることができるため、下流側本管12に溜められた汚水をより確実に下流へ流すことができる。
本実施形態では、上流側本管11の管底の高さと、第1下流側本管13Aの管底の高さとは同じである。このことによって、上流側本管11と第1下流側本管13Aとの間において段差が形成されない。よって、上流側本管11から第1下流側本管13Aに水を滑らかに流すことができるため、第1下流側本管13Aに到達した水の流速が低下し難い。
本実施形態では、図1に示すように、上流側本管11の管軸方向の長さL1は、第1下流側本管13Aの管軸方向の長さL2よりも短い。このことによって、配管部材30Aに取り付けられた仮設トイレ4から給水開閉ゲート50までの距離を短くすることができる。よって、仮設トイレ4付近にいる作業者が給水開閉ゲート50に移動する時間を短縮することができる。
本実施形態では、図4に示すように、上流側本管11の下流端と、配管部材30Aの第1流入口33とは、接続継手25によって繋がっている。このことによって、上流側本管11の内径D1と、第1流入口33の直径D31が異なる場合であっても、接続継手25で互いを繋げることができる。よって、第1流入口33の大きさを変更することなく、上流側本管11と第1流入口33とを繋げることができる。
本実施形態では、接続継手25は、上流側本管11と連通する第1接続口26と、第1流入口33と連通する第2接続口27とを有している。第1接続口26の下端26aの高さと、第2接続口27の下端27aの高さとは同じ位置である。このことによって、接続継手25の内周面の下部には段差が形成されていない。よって、接続継手25内で水が留まり難くすることができる。
<第2実施形態>
上記実施形態では、満管発生手段15は、本管10の一部である上流側本管11の内径D1を小さくすることで、上流側本管11を満管状態にし易くしていた。ただし、満管発生手段15の構成は、管の内径を小さくすることに限定されない。図11は、第2実施形態に係る排水配管システム1Aの上流側本管111を模式的に示した平面図である。
図11に示すように、排水配管システム1Aは、上流側本管111を備えている。上流側本管111の内径は、下流側本管12(例えば第1下流側本管13A)の内径と同じである。上流側本管111には、満管発生手段15Aが設けられている。本実施形態では、満管発生手段15Aは、上流側本管111の一部を曲げる、言い換えると上流側本管111に曲部を設けることで実現する。
ここでは、上流側本管111は、第1上流管111Aと、第1上流管111Aよりも下流側に配置された第2上流管111Bと、第2上流管111Bよりも下流側に配置された第3上流管111Cと、を有している。第2上流管111Bの管軸方向は、平面視において第1上流管111Aの管軸方向と交差する。ここでは、第2上流管111Bと第1上流管111Aとが成す角度は、直角である。しかしながら、第2上流管111Bと第1上流管111Aとが成す角度は、鋭角であってもよいし、鈍角であってもよい。
第3上流管111Cの管軸方向は、平面視において第2上流管111Bの管軸方向と交差する。ここでは、第3上流管111Cと第2上流管111Bとが成す角度は、直角であるが、鋭角であってもよいし、鈍角であってもよい。第3上流管111Cの管軸方向と、第1上流管111Aの管軸方向とは、平行であるが、交差していてもよい。
本実施形態では、第1上流管111Aと第2上流管111Bとの間には、ます111Dが配置されており、ます111Dは、第1上流管111Aの下流端、および、第2上流管111Bの上流端に接続されている。第2上流管111Bと第3上流管111Cとの間には、ます111Eが配置されており、ます111Eは、第2上流管111Bの下流端、および、第3上流管111Cの上流端に接続されている。なお、ます111D、111Eは、曲部を有する継手であってもよい。本実施形態では、ます111D、111Eが、上流側本管111の曲部となる。
このように、満管発生手段15Aとして、上流側本管111の一部が曲がっている場合、上流側本管111において、流速は、ます111D、111Eで水の流れる向きが変わることで低下する。その結果、上流側本管111内の水の流れが一時的に遅くなり、上流側本管111内の水位が上昇し、上流側本管111は、満管状態となる。このように、上流側本管111を満管状態にすることで、サイフォンの原理を利用して、貯留容器51から上流側本管111内に水を引き込む力を大きくすることができる。そのため、満管発生手段15Aが設けられた上流側本管111内の水の流れが遅くなり難く、上流側本管111から下流側に流れる水の流速を確保することができる。このように、上流側本管111の一部を曲げることで、満管発生手段15Aを実現することができ、上記実施形態と同様の効果が得られる。
なお、本実施形態では、上流側本管111の曲部の数、すなわちます111D、111Eの数は2つであったが、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
<第3実施形態>
第1、2実施形態では、満管発生手段15、15Aは、本管10の上流側本管11、111に設けられていた。しかしながら、満管発生手段が設けられる位置は、上流側本管11、111に限定されない。図12は、第3実施形態に係る排水配管システム1Bの下流側本管212の一部を模式的に示した平面図である。
図12に示すように、排水配管システム1Bは、下流側本管212を備えており、下流側本管212は、最下流に配置された配管部材30Eと切替ます70とを接続する第5下流側本管213Eを有している。ここでは、第5下流側本管213Eに、満管発生手段15Bが設けられている。本実施形態では、満管発生手段15Bは、第2実施形態の満管発生手段15Aに対応した構成を有しており、第5下流側本管213Eに曲部を設けることで実現する。
ここでは、第5下流側本管213Eは、第1下流管214Aと、第1下流管214Aよりも下流側に配置された第2下流管214Bと、第2下流管214Bよりも下流側に配置された第3下流管214Cとを有している。第2下流管214Bの管軸方向は、平面視において第1下流管214Aの管軸方向と交差し、かつ、第3下流管214Cの管軸方向と交差する。ここでは、第2下流管214Bと第1下流管214Aとが成す角度は、直角であるが、鋭角であってもよいし、鈍角であってもよい。同様に、第2下流管214Bと第3下流管214Cとが成す角度は、直角であるが、鋭角であってもよいし、鈍角であってもよい。第3下流管214Cの管軸方向と、第1下流管214Aの管軸方向とは、平行であるが、交差していてもよい。
本実施形態では、第1下流管214Aと第2下流管214Bとの間には、ます214Dが配置されており、第2下流管214Bと第3下流管214Cとの間には、ます214Eが配置されている。ます214Dは、第1下流管214Aの下流端、および、第2下流管214Bの上流端に接続されている。ます214Eは、第2下流管214Bの下流端、および、第3下流管214Cの上流端に接続されている。なお、ます214D、214Eは、曲部を有する継手であってもよい。
このように、満管発生手段15Bとして、第5下流側本管213Eの一部が曲がっている場合、第5下流側本管213Eにおいて、排水の流速は、ます111D、111Eで水の流れる向きが変わることで低下する。そのため、第5下流側本管213Eは満管状態となり易くなり、サイフォンの原理を利用して、第5下流側本管213Eより上流側からの排水を引き込む力を大きくすることができる。そのため、満管発生手段15Bが設けられた第5下流側本管213E内の排水の流れが遅くなり難く、第5下流側本管213Eから下流側に流れる排水の流速を確保することができる。よって、上記各実施形態と同様の効果が得られる。
なお、本実施形態であっても、第5下流側本管213Eの曲部の数、すなわち、ます214D、214Eの数は2つであったが、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
なお、本実施形態では、満管発生手段15Bは、第1実施形態と同様に、第5下流側本管213Eの内径を小さくする、例えば上流側本管11の内径D1(図4参照)よりも小さくすることで実現されてもよい。また、満管発生手段15Bは、第5下流側本管213E以外の本管10の一部(例えば第1実施形態でいう第1下流側本管13Aや第2下流側本管13Bなど)に設けられていてもよい。
ここでは、第1~第3実施形態を適宜組み合わせることが可能である。例えば第1実施形態において、本管10の上流側本管11に、第1実施形態に係る満管発生手段15を設け、本管10の第5下流側本管13Eに第3実施形態に係る満管発生手段15Bを設けてもよい。
<変形例>
上記実施形態では、給水開閉ゲート50において、開閉機構60は、貯留容器51内に配置され、貯留容器51の内部から給水口53を開閉していた。しかしながら、開閉機構60は、貯留容器51の外部に配置されていてもよく、貯留容器51の外部から給水口53を開閉するように構成されていてもよい。
上記実施形態では、給水タンク40から給水開閉ゲート50の貯留容器51に水が供給されていた。しかしながら、給水タンク40に限定されず、水が貯留され、かつ、貯留容器51に向かって水が供給できるものであればよい。例えば給水タンク40は、地下に配置された地下水設備であってもよい。この場合、地下水設備内の地下水などの水が、例えばホースなどを介して貯留容器51に供給されるとよい。また、貯留容器51に供給される水には、雨水が含まれる。そのため、給水タンク40は、雨水が貯留された雨水槽であってもよい。また、給水タンク40は、川、海、池などであってもよく、この場合、川、海、池などの水がホースなどを介して貯留容器51に供給されるとよい。また、給水タンク40は、固定式のものに限定されず、移動式のものであってもよい。給水タンク40は、水が貯留された給水車であってもよい。