図1は、本発明の実施形態に係るダイカストマシンの射出装置1の構成を示す図である。
射出装置1は、固定金型101及び移動金型103により形成されたキャビティ105に溶湯を射出・充填する装置である。なお、固定金型101及び移動金型103は、ダイカストマシンの不図示の型締装置により型開閉及び型締がなされる。
射出装置1は、キャビティ105に連通する射出スリーブ3と、射出スリーブ3内を摺動可能な射出プランジャ5と、射出プランジャ5を駆動する射出シリンダ装置7と、射出シリンダ装置7に連通する変換シリンダ装置9とを有する。また、射出装置1は、作動液(例えば油)を送出可能なアキュムレータ11と、作動液を貯蓄するタンク13と、アキュムレータ11を蓄圧するポンプ15と、作動液の流れを制御する液圧回路17と、液圧回路17等を制御する制御装置19とを有している。
射出スリーブ3は、例えば、固定金型101に挿通されるように設けられている。射出プランジャ5は、射出スリーブ3を摺動するプランジャチップ5aと、プランジャチップ5aに固定されたプランジャロッド5bとを有している。射出スリーブ3に形成された不図示の給湯口から溶湯が射出スリーブ3に供給された状態で、プランジャチップ5aが射出スリーブ3内をキャビティ105に向かって摺動することにより、溶湯はキャビティ105に射出、充填される。
射出シリンダ装置7は、射出プランジャ5のプランジャロッド5bにカップリングを介して連結された射出ピストンロッド21、射出ピストンロッド21が固定された射出ピストン23、及び、射出ピストン23を摺動可能に収容する射出シリンダチューブ25を有している。なお、射出ピストンロッド21及び射出ピストン23は、それぞれ別個に形成されて互いに固定されていてもよいし、一体的に形成されて互いに固定されていてもよい。
射出シリンダチューブ25は、例えば、断面円形である。射出シリンダチューブ25の内部は、射出ピストン23により、射出ピストンロッド21が延出する側のロッド側室25rと、その反対側のヘッド側室25hとに区画されている。ロッド側室25r及びヘッド側室25hに選択的に作動液が供給されることにより、射出ピストン23は射出シリンダチューブ25内を摺動する。
変換シリンダ装置9は、ヘッド側室25hに連通する変換シリンダチューブ27、及び、変換シリンダチューブ27内に摺動可能に収容された変換ピストン29を有している。変換シリンダ装置9は、変換ピストン29の前進(図1の紙面下方への移動)により、ヘッド側室25hに作動液を供給して、射出ピストン23を前進(図1の紙面左側への移動)させることが可能に構成されている。また、変換シリンダ装置9は、射出ピストン23が後退(図1の紙面右側への移動)すると、ヘッド側室25hから変換シリンダチューブ27に作動液が供給されて変換ピストン29が後退(図1の紙面上方への移動)するように構成されている。
変換シリンダチューブ27は、例えば、断面が円形に、また、前側(図1の紙面下方側)及び後側(図1の紙面上方側)に凸となるように形成されている。すなわち、変換シリンダチューブ27は、ヘッド側室25hに連通する前側小径シリンダ部27aと、前側小径シリンダ部27aに連通し、前側小径シリンダ部27aよりも大径の大径シリンダ部27bと、大径シリンダ部27bに連通し、大径シリンダ部27bよりも小径の後側小径シリンダ部27cとを有している。
前側小径シリンダ部27aの径d3、大径シリンダ部27bの径d2、後側小径シリンダ部27cの径d1、射出シリンダチューブ25の径d4は、所望の効果を得ることができる範囲で適宜に設定されてよいが、例えば、d1<d3=d4<d2、d12<d22−d12である。
変換ピストン29も、変換シリンダチューブ27の形状に対応して、前側及び後側に凸となるように形成されている。すなわち、変換ピストン29は、前側小径シリンダ部27aを摺動可能な前側小径部29aと、大径シリンダ部27bを摺動可能な大径部29bと、後側小径シリンダ部27cを摺動可能な後側小径部29cとを有している。
変換ピストン29は、2点鎖線で示すように、前側小径部29aを前側小径シリンダ部27aに挿入した状態と、前側小径部29aを前側小径シリンダ部27aから引き抜いた状態との間で移動可能である。すなわち、変換ピストン29は、前側小径部29aを大径シリンダ部27b側から前側小径シリンダ部27aに出し入れ可能に変換シリンダチューブ27に収容されている。
なお、後側小径部29cは、変換ピストン29が前進したときに、後側小径シリンダ部27cから引き抜かれても引き抜かれなくてもよい。ただし、後述するように、高速射出動作は後側小径部29cが後側小径シリンダ部27cに挿入された状態で行われ、高速射出動作の後の増圧動作は前側小径部29aが前側小径シリンダ部27aに挿入された状態で行われるから、前側小径部29aが前側小径シリンダ部27a内に到達するまでは、後側小径シリンダ部27cから引き抜かれない長さであることが好ましい。
後側小径シリンダ部27cの、後側小径部29cに対して大径シリンダ部27bとは反対側(図1の紙面上方側)となる小径後側室27ch、及び/又は、大径シリンダ部27bの、大径部29bに対して後側小径シリンダ部27c側となる大径後側室27bhに作動液が供給されることにより、変換ピストン29は前進する。また、前側小径シリンダ部27aの、前側小径部29aに対して大径シリンダ部27bとは反対側(図1の紙面下方側)となる小径前側室27ar、及び/又は、大径シリンダ部27bの、大径部29bに対して前側小径シリンダ部27a側となる大径前側室27brに作動液が供給されることにより、変換ピストン29は後退する。
ここで、後側小径シリンダ部27cは、径が比較的小さく形成されているから、小径後側室27chのみに作動液を供給して変換ピストン29を前進させる場合、比較的少量の作動液で高速に変換ピストン29を前進させることができる。
また、変換ピストン29の前進時において前側小径部29aが前側小径シリンダ部27aに挿入された後は、大径前側室27brの作動液を排出可能とすれば、大径部29bの大径後側室27bhにおける受圧面積(若しくは、この受圧面積に後側小径部29cの小径後側室27chにおける受圧面積を加算した受圧面積)と、前側小径部29aの小径前側室27arにおける受圧面積の差に起因する増圧効果により、高い圧力の作動液をヘッド側室25hに供給することができる。
なお、ヘッド側室25hと小径前側室27arとは、適宜な構成により連通されてよい。例えば、射出シリンダチューブ25と変換シリンダチューブ27とが互いに固定されることにより直接的に連通されてもよいし、剛体の部材により形成された流路を介して連通されてもよいし、可撓性を有する部材により形成された流路を介して連通されてもよい。
また、射出シリンダチューブ25及び変換シリンダチューブ27の相対位置、これらのシリンダチューブの重力方向に対する向きは適宜に設定されてよい。図1では、射出シリンダチューブ25が水平に配置されるとともに、変換シリンダチューブ27が、射出シリンダチューブ25のヘッド側室25h側の端部から上方側に延びるように配置された場合を例示している。
アキュムレータ11は、いわゆるガス式のアキュムレータであり、蓄圧シリンダチューブ31と、蓄圧シリンダチューブ31内を摺動可能な蓄圧ピストン33とを有している。蓄圧シリンダチューブ31内は、蓄圧ピストン33によりガス室31gと液室31oとに区画されている。ガス室31gには、ガス(例えば空気や窒素)が圧縮されて保持されている。液室31oには、射出シリンダ装置7や変換シリンダ装置9に供給される作動液が保持されている。
液室31oは、ロッド側室25r、大径後側室27bh及び小径後側室27chに連通されている。従って、アキュムレータ11は、ロッド側室25r、大径後側室27bh及び小径後側室27chに選択的に作動液を供給し、射出シリンダ装置7及び変換シリンダ装置9を駆動することが可能である。
なお、特に図示しないが、アキュムレータ11には、ガス室31gの圧力を所定の圧力に保つように、ガス室31gと大気とを連通する流路、当該流路を開閉するコック、ガス室31gの圧力を検出する圧力計等が設けられている。
タンク13は、作動液を大気圧下で貯蓄する。タンク13は、ロッド側室25r、大径前側室27br及び大径後側室27bhと連通されており、これらのシリンダ室への作動液の補給及びこれらのシリンダ室から排出された作動液の受け入れが可能である。タンク13は、例えば、大径前側室27br及び大径後側室27bhよりも上方側に配置されており、作動液の自重を利用して、これらのシリンダ室に作動液を供給可能になっている。
ポンプ15は、タンク13の作動液を吸引して吐出口15aから送出する。ポンプ15は、ピストンポンプ、歯車ポンプ、ベーンポンプ等の適宜なポンプにより構成されてよい。ポンプ15は、モータ35により回転駆動される。モータ35は、直流モータでも交流モータでもよい。また、モータ35は、誘導モータや同期モータ等の適宜なモータにより構成されてよい。
液圧回路17は、アキュムレータ11に接続されたアキュムレータ流路37と、アキュムレータ流路37及び小径後側室27chに接続された小径後側流路39と、アキュムレータ流路37及び大径後側室27bhに接続された大径後側流路41と、アキュムレータ流路37及びロッド側室25rに接続されたロッド側流路43とを有している。
また、液圧回路17は、アキュムレータ流路37に設けられたサーボバルブ45と、小径後側流路39に設けられた小径後側弁VLaと、大径後側流路41に設けられた大径後側弁VLbと、ロッド側流路43に設けられたロッド側弁VLcとを有している。
従って、小径後側室27ch、大径後側室27bh及びロッド側室25rは、アキュムレータ11からの作動液の供給が、小径後側弁VLa、大径後側弁VLb及びロッド側弁VLcによって、個別に許容又は禁止される。その一方で、小径後側室27ch、大径後側室27bh及びロッド側室25rは、アキュムレータ11から供給される作動液の流量が、サーボバルブ45によって共通に制御される。
サーボバルブ45は、サーボ機構のなかで使用され、電気その他の入力信号に応じて流量を無段階に変調可能な制御弁である。サーボバルブ45は、例えば、複コイル形の電磁方式の流量制御弁によって構成されている。サーボバルブ45は、制御装置19により入力された制御信号に応じた開度で開かれる。また、サーボバルブ45は、開度を示す検出信号を制御装置19に出力する。検出信号は、例えば、スプールの位置を示す信号である。そして、サーボバルブ45は、制御装置19により、所望の開度で開かれるようにフィードバック制御される。
小径後側弁VLaは、例えば、閉状態とするパイロット圧力と、開状態とするパイロット圧力とを導入可能なパイロット式の逆止弁(チェック弁)により構成されている。小径後側弁VLaは、パイロット圧力が導入されていないときは、アキュムレータ11から小径後側室27chへの流れを阻止するとともに、その反対方向の流れを許容する。
大径後側弁VLbは、例えば、閉状態とするパイロット圧力と、開状態とするパイロット圧力とを導入可能なパイロット式の逆止弁により構成されている。大径後側弁VLbは、パイロット圧力が導入されていないときは、アキュムレータ11から大径後側室27bhへの流れを阻止するとともに、その反対方向の流れを許容する。
ロッド側弁VLcは、例えば、閉状態とするパイロット圧力と、開状態とするパイロット圧力とを導入可能なパイロット式の逆止弁により構成されている。ロッド側弁VLcは、パイロット圧力が導入されていないときは、アキュムレータ11からロッド側室25rへの流れを阻止するとともに、その反対方向の流れを許容する。
液圧回路17は、変換シリンダ装置9の大径前側室27brと、小径前側室27arとを連通するバイパス流路47を有している。バイパス流路47には、バイパス流路47を開閉可能なバイパス弁VLdが設けられている。
バイパス流路47は、前側小径部29aが前側小径シリンダ部27aに挿入されている状態においても、大径前側室27brと小径前側室27arとが連通されるように設けられている。なお、バイパス流路47の小径前側室27arに連通する部分は、射出シリンダ装置7のヘッド側室25hや、ヘッド側室25hと小径前側室27arとを連通する連通路等に開口することにより、間接的に小径前側室27arに連通していてもよい。
バイパス弁VLdは、例えば、パイロット式の逆止弁により構成されている。バイパス弁VLdは、パイロット圧力が導入されると閉じられる。また、バイパス弁VLdは、パイロット圧力が導入されていないときは、小径前側室27arから大径前側室27brへの流れを阻止するとともに、その反対方向の流れを許容する。
従って、前側小径部29aが小径前側室27arに挿入されている状態で変換ピストン29が前進している場合、パイロット圧力が導入されていないときは、大径前側室27brの作動液はバイパス流路47を介して小径前側室27arに流れ込み、パイロット圧力が導入されているときは、小径前側室27arは密閉される。また、前側小径部29aが小径前側室27arに挿入されている状態で変換ピストン29が後退している場合、小径前側室27arは密閉される。
液圧回路17は、射出シリンダ装置7及び変換シリンダ装置9からタンク13への作動液の排出、及び、タンク13から変換シリンダ装置9への作動液の補給を可能とするために、以下の構成を有している。
液圧回路17は、ロッド側室25rとタンク13とを連通するタンクロッド側流路49と、大径前側室27brとタンク13とを連通するタンク大径前側流路51と、大径後側室27bhとタンク13とを連通するタンク大径後側流路53とを有している。
また、液圧回路17は、タンクロッド側流路49に設けられたタンクロッド側弁VLeと、タンク大径前側流路51に設けられたタンク大径前側弁VLfと、タンク大径後側流路53に設けられたタンク大径後側弁VLgとを有している。
タンクロッド側弁VLeは、例えば、パイロット式の逆止弁により構成されている。タンクロッド側弁VLeは、パイロット圧力が導入されると閉じられる。また、タンクロッド側弁VLeは、パイロット圧力が導入されていないときは、タンク13からロッド側室25rへの流れを阻止するとともに、その反対方向の流れを許容する。
タンク大径前側弁VLfは、例えば、閉状態とするパイロット圧力と、開状態とするパイロット圧力とを導入可能なパイロット式の逆止弁により構成されている。タンク大径前側弁VLfは、パイロット圧力が導入されていないときは、大径前側室27brからタンク13への流れを阻止するとともに、その反対方向の流れを許容する。
タンク大径後側弁VLgは、例えば、閉状態とするパイロット圧力と、開状態とするパイロット圧力とを導入可能なパイロット式の逆止弁により構成されている。タンク大径後側弁VLgは、パイロット圧力が導入されていないときは、大径後側室27bhからタンク13への流れを阻止するとともに、その反対方向の流れを許容する。
なお、タンク大径前側流路51及びタンク大径後側流路53は、タンク13側において共通化されている。ただし、これらは共通化されていなくてもよい。
液圧回路17は、ポンプ15の吐出口15aとアキュムレータ11の液室31oとを連通する蓄圧用流路59と、蓄圧用流路59に設けられた蓄圧用弁61とを有している。なお、蓄圧用流路59は、図示の都合上、図1において2ヶ所に示す(1)間の部分を省略して示している。蓄圧用弁61は、例えば、ポンプ15からアキュムレータ11への流れを許容するとともに、その反対方向の流れを阻止する逆止弁により構成されている。
液圧回路17は、タンク63と、タンク63と小径後側室27chとを連通するタンク小径後側流路65と、タンク小径後側流路65に設けられたタンク小径後側弁67とを有している。これらは、小径後側室27chからの作動液の排出や小径後側室27chへの作動液の補給を可能とするためのものである。なお、タンク63は、タンク13と共通化されていてもよい。
タンク小径後側弁67は、例えば、パイロット圧力が導入されると開かれるパイロット式の逆止弁により構成されている。タンク小径後側弁67は、パイロット圧力が導入されていないときは、小径後側室27chからタンク63への流れを阻止するとともに、その反対方向の流れを許容する。タンク小径後側弁67は、図示は省略するが、パイロット圧力として、ロッド側室25rの圧力が導入されている。なお、ロッド側室25rの圧力は、ロッド側流路43を介して導入されてもよい。
制御装置19は、例えば、CPU71、ROMやRAM等のメモリ73、入力回路75、及び、出力回路77を含んで構成されている。CPU71は、メモリ73に記憶されたプログラムを実行し、入力回路75を介して入力される入力信号に基づいて、各種の弁やモータ35を制御するための制御信号を出力回路77を介して出力する。
入力回路75に信号を入力するのは、例えば、サーボバルブ45、ユーザの入力操作を受け付ける入力装置79、射出プランジャ5の位置を検出する測長センサ81、変換ピストン29が後退限に到達したか否かを検出する後退限検出器83である。
出力回路77が信号を出力するのは、例えば、サーボバルブ45、ユーザに情報を表示する表示器85、パイロット式の弁(VLa〜VLg)にパイロット圧力を導入するための不図示の液圧回路である。
測長センサ81は、例えば、射出シリンダ装置7に設けられ、射出ピストンロッド21の射出シリンダチューブ25に対する変位量を測定するものであり、射出プランジャ5の位置を間接的に検出するものである。なお、射出シリンダ装置7は、測長機能付きのシリンダ装置により構成されていると捉えられることができる。
測長センサ81は、例えば、射出ピストンロッド21の延びる方向に沿って射出ピストンロッド21に設けられたスケール部87と、スケール部87に対向配置され、スケール部87の移動を検出するセンサ部89とを有するリニアエンコーダにより構成されている。リニアエンコーダとしては、磁気式、光学式等の適宜な方式のものが選択されてよい。
後退限検出器83は、例えば、レバー式のスイッチにより構成されている。変換ピストン29には、変換シリンダチューブ27の後側小径シリンダ部27cから延出する操作部材91が固定されている。変換ピストン29が後退限に到達すると、操作部材91が後退限検出器83のレバーに当接し、後退限検出器83はオン状態とされる。変換ピストン29が後退限から前進すると、操作部材91がレバーから離間し、後退限検出器83はオフ状態とされる。
射出装置1は、以上に説明した構成の他に、ヘッド側室25hの圧力を検出する圧力センサ等を有していてもよい。なお、ヘッド側室25hの圧力は、概ね、溶湯をキャビティ105に射出するときに射出プランジャ5が溶湯に加える圧力(射出圧力)等の射出プランジャ5が溶湯に加える圧力に比例する。
以上の構成を有する射出装置1の動作を説明する。
図2は、射出装置1における射出圧力P及び射出速度Vの変化を示すグラフである。
射出装置1は、概観すると、射出プランジャ5を比較的低速で前進させる低速射出制御、射出プランジャ5を比較的高速で前進させる高速射出制御、射出プランジャ5によりキャビティ105内の溶湯を増圧する増圧制御を順に行う。
図3は、図2の動作を実現する、各種の弁(VLa〜VLg)、サーボバルブ45、アキュムレータ11、変換ピストン29、射出ピストン23及びモータ35の動作を示す図表である。
図3において、各行は、上方側から下方側への順が時系列順になっている。図3の最も左側の「射出動作」の欄は、各行の動作の概略を説明している。「射出速度」及び「射出圧力」の欄は、図2に付した符号を示すことにより、図3と図2との対応関係を示している。ただし、溶湯の凝固後、射出ピストン23や変換ピストン29が後退するときにおける速度や圧力については、図3において記載されているのみである。
「パイロットチェック弁」の欄では、各種の弁の符号VLa〜VLgからVLを省略して、各種の弁(VLa〜VLg)に対応する「a」〜「g」の欄が設けられている。「パイロットチェック弁」の欄において、「N」は、パイロット圧力が導入されていない状態を示し、「C」は、閉じるパイロット圧力が導入されていることを示し、「O」は、開くパイロット圧力が導入されていることを示している。
「サーボバルブ」の欄は、サーボバルブ45における流量(開度と捉えられてもよい)を示している。
「アキュムレータ」の「放出」の欄では、アキュムレータ11から作動液が放出されることを丸(○)により、アキュムレータ11から作動液が放出されないことをバツ(×)により示している。「アキュムレータ」の「充填」の欄では、アキュムレータ11に作動液が充填されることを丸(○)により、アキュムレータ11に作動液が充填されないことをバツ(×)により示している。
「変換ピストン位置」の欄は、後退限検出器83がオンとされることを「ON」で示し、オフされていることを「−」で示している。
「射出ピストン後退限」の欄は、射出ピストン23が後退限に位置することを丸(○)により、後退限に位置しないことを「−」により示している。
「モータ」の欄は、モータ35が駆動されることを丸(○)により、モータ35が駆動されないことをバツ(×)により示している。
以下、図3の時系列に沿って(図3の上方側から下方側へ)、射出装置1の動作を説明する。
(低速射出動作)
低速射出動作の開始前において、変換ピストン29及び射出ピストン23は後退限に位置している。従って、前側小径部29aは、前側小径シリンダ部27aに挿入されておらず、大径前側室27brと小径前側室27arとは直接的に連通されている。なお、変換ピストン29及び射出ピストン23を後退限以外の適宜な位置に配置した状態で、低速射出動作を開始することも可能である。
固定金型101及び移動金型103の型締が終了し、溶湯が射出スリーブ3に供給されると、制御装置19は、アキュムレータ11が蓄圧している作動液を大径後側室27bhのみに供給するように、液圧回路17を制御する。
すなわち、制御装置19は、サーボバルブ45を、流量VLPに対応する開度で開く。また、制御装置19は、小径後側弁VLaに閉じるパイロット圧力を導入し、若しくは、パイロット圧力を導入せず、大径後側弁VLbに開くパイロット圧力を導入し、ロッド側弁VLcに閉じるパイロット圧力を導入し、若しくは、パイロット圧力を導入しない。
作動液が大径後側室27bhに供給されると、大径後側室27bhにおける大径部29bの受圧面積は比較的大きく設定されているから、変換ピストン29は、比較的低速で前進する。
変換ピストン29が比較的低速で前進することにより、変換シリンダチューブ27から射出シリンダチューブ25のヘッド側室25hへ、比較的緩やかに作動液が供給され、射出ピストン23も比較的低速で前進する。
ただし、大径シリンダ部27bの径d2は、ヘッド側室25hの径d4よりも大きく設定されているから、射出ピストン23は、変換ピストン29よりも高速(d22/d42倍)で前進する。射出ピストン23の前進により、射出プランジャ5は、比較的低速の速度VLで前進し、射出圧力はPLとなる。
なお、小径後側室27chには、変換ピストン29が前進することにより小径後側室27chに生じる負圧により、タンク63の作動液がタンク小径後側弁67を介して供給される。
制御装置19は、予め設定された開度になるように、サーボバルブ45からのフィードバック信号に基づいて、サーボバルブ45の開度を制御してもよいし、測長センサ81の検出結果に基づく射出プランジャ5の速度が、予め設定された速度になるように、サーボバルブ45の開度を制御してもよい。また、制御装置19は、予め設定された開度になるようにサーボバルブ45の開度を制御した後、予め設定された速度になるようにサーボバルブ45の開度を制御してもよい。開度のフィードバックループを射出プランジャ5の速度フィードバックループにマイナーループとして組み込んでもよい。後述する、高速射出や減速射出においても同様である。以下では、制御装置19は、予め設定された開度になるように、サーボバルブ45を制御するものとして説明する。
バイパス弁VLdは、パイロット圧力が導入されても、パイロット圧力が導入されていなくてもよい。低速射出及び後述する高速射出においては、前側小径部29aは前側小径シリンダ部27aに挿入されておらず、大径前側室27brと小径前側室27arとは直接的に連通されているからである。
タンクロッド側弁VLeは、パイロット圧力が導入されない。従って、射出ピストン23により押し出されるロッド側室25rの作動液はタンク13へ排出される。
タンク大径前側弁VLfは、閉じるパイロット圧力が導入され、若しくは、パイロット圧力が導入されない。従って、変換ピストン29により押し出される大径前側室27brの作動液は、タンク13には流れず、全て射出ピストン23に圧力を付与することに利用される。
タンク大径後側弁VLgは、閉じるパイロット圧力が導入され、若しくは、パイロット圧力が導入されない。従って、アキュムレータ11から大径後側室27bhに供給された作動液は、タンク13には流れず、全て変換ピストン29に圧力を付与することに利用される。
モータ35は、後述する射出ピストンの後退が終了するまで、駆動されない。従って、アキュムレータ11では、後述する射出ピストンの後退までは、作動液の放出のみが行われ、作動液の充填は行われない。
(高速射出動作)
制御装置19は、測長センサ81の検出値に基づく射出プランジャ5の位置が所定の高速切換位置に到達すると、アキュムレータ11からの作動液の供給先を、大径後側室27bhから小径後側室27chに切り換える。すなわち、制御装置19は、小径後側弁VLaに開くパイロット圧力を導入するとともに、大径後側弁VLbに閉じるパイロット圧力を導入し、若しくは、パイロット圧力を導入しない。
作動液の供給先が切り換えられると、小径後側室27chの断面積は、大径後側室27bhの、後側小径部29cを除く断面積よりも小さいから、変換ピストン29は、比較的高速で前進し、ひいては、射出ピストン23も比較的高速で前進する。これにより、射出プランジャ5は、比較的高速の速度VHで前進し、射出圧力は上昇してPHとなる。
サーボバルブ45の開度は、流量VHPに対応する開度とされる。流量VHPは流量VLPと同一であってもよいし、大きくてもよい。換言すれば、サーボバルブ45は、低速射出から高速射出にかけて、開度が変更されてもよいし、変更されなくてもよい。サーボバルブ45の開度が一定であっても、上述のように、変換シリンダ装置9における受圧面積の変更により、低速から高速への切り換えはなされる。また、低速射出から高速射出にかけて、サーボバルブ45の開度を大きくした場合には、射出プランジャ5の更なる増速がなされる。
タンク大径後側弁VLgは、開くパイロット圧力が導入される。従って、大径後側室27bhには、タンク13から作動液が補給される。上述のように、タンク13は、大径後側室27bhよりも上方に配置されており、タンク13の作動液は自重により大径後側室27bhへ流入可能となっている。従って、変換ピストン29の前進に伴って大径後側室27bhに生じる負圧のみによりタンク13から作動液を補給する場合に比較して、効率的に作動液の補給がなされる。
なお、ロッド側弁VLc、バイパス弁VLd、タンクロッド側弁VLe及びタンク大径前側弁VLfは、低速射出動作時における状態のままである。
(減速射出動作)
減速射出動作は、適宜な事象の発生により開始される。
例えば、減速射出動作は、溶湯がキャビティ105にある程度充填され、射出プランジャ5がキャビティ105に充填された溶湯から反力を受けて減速されることにより開始される。
若しくは、減速射出動作は、後述するように、前側小径部29aが前側小径シリンダ部27aへ挿入され、射出ピストン23が減速されることにより、開始される。
若しくは、減速射出動作は、後述するように、所定の減速開始条件が満たされたときに、アキュムレータ11の作動液の供給先が、小径後側室27chから大径後側室27bhへ切り換えられることにより開始される。なお、減速開始条件は、例えば、射出プランジャ5が所定の減速位置に到達したことなどである。
若しくは、減速射出動作は、後述するように、所定の減速開始条件が満たされたときに、サーボバルブ45の開度が小さくされることにより開始される。
又は、上記に例示した事象が2以上同時に発生することにより開始される。
なお、上記に例示した事象は、いずれが先に生じてもよいが、概ね同時に生じるように、1回の射出における溶湯の量等が調整されることが好ましい。
減速射出動作では、射出速度は、高速射出速度VHから減速されて速度Vdとなる。ただし、キャビティ105には、ある程度溶湯が充填されていることから、射出圧力は、高速射出における高速射出圧力PHから上昇して圧力Pdとなる。
前側小径部29aが前側小径シリンダ部27aに挿入されることにより、大径前側室27brと前側小径シリンダ部27aとは、直接的には遮断される。一方、バイパス弁VLdにはパイロット圧力が導入されず、バイパス流路47においては、大径前側室27brから前側小径シリンダ部27aへの作動液の流れが許容される。しかし、バイパス流路47の断面積は、前側小径シリンダ部27aの断面積より小さいことから、バイパス流路47における流量は、大径前側室27brから前側小径シリンダ部27aへ直接的に作動液が流れるときの流量よりも少ない。従って、変換シリンダチューブ27からヘッド側室25hに供給される作動液が減少し、射出ピストン23は減速される。
制御装置19は、アキュムレータ11の作動液の供給先を、小径後側室27chから大径後側室27bhへ切り換える。すなわち、制御装置19は、小径後側弁VLaに閉じるパイロット圧力を導入し、若しくは、パイロット圧力を導入せず、大径後側弁VLbに開くパイロット圧力を導入する。これにより、低速射出のときと同様に、変換ピストン29の速度は低速となり、ひいては、射出プランジャ5は減速される。
サーボバルブ45の開度は、流量VdPに対応する開度とされる。流量VdPは流量VLPと同一であってもよいし、小さくてもよい。換言すれば、サーボバルブ45は、高速射出から減速射出にかけて、開度が変更されてもよいし、変更されなくてもよい。サーボバルブ45の開度が一定であっても、上述のように、変換シリンダ装置9における受圧面積の変更により、高速から低速への切り換えはなされる。また、高速射出から減速射出にかけて、サーボバルブ45の開度を小さくした場合には、射出プランジャ5の更なる減速がなされる。
なお、ロッド側弁VLc、タンクロッド側弁VLe及びタンク大径前側弁VLfは、高速射出動作時における状態のままである。また、タンク大径後側弁VLgは、閉じるパイロット圧力が導入され、若しくは、パイロット圧力が導入されない。すなわち、タンク大径後側弁VLgは、低速射出動作時と同様に、アキュムレータ11から大径後側室27bhに流入した作動液が、タンク13へ流出することを禁止する。
(増圧動作)
制御装置19は、所定の増圧開始条件が満たされると、バイパス弁VLdにパイロット圧力を導入してバイパス弁VLdを閉じる。これにより、大径前側室27brから小径前側室27arへの作動液の流れが遮断される。また、タンク大径前側弁VLfは、開くパイロット圧力が導入される。これにより、大径前側室27brからタンク13への作動液の流れが許容される。小径後側弁VLa、大径後側弁VLb、ロッド側弁VLc、タンクロッド側弁VLe及びタンク大径後側弁VLgは、減速射出動作における状態のままとされる。
変換ピストン29は、大径前側室27brの作動液をタンク13に排出しつつ前進する。また、変換ピストン29は、大径部29bの大径後側室27bhにおける受圧面積と前側小径部29aの小径前側室27arにおける受圧面積との比に応じた増圧比((d22−d12)/d32)で、大径後側室27bhの作動液の圧力を増幅し、その増圧した圧力を小径前側室27arの作動液に付与する。これにより、射出圧力は、圧力Ptを経てPmaxに到達する。また、射出速度は、速度Vtを経て0となる。
なお、増圧開始条件は、例えば、不図示の圧力センサにより検出されるヘッド側室25hの圧力(射出圧力)が所定の値に到達したこと、又は、射出プランジャ5が所定の位置に到達したことである。
サーボバルブ45の開度は、流量VtPに対応する開度とされる。流量VtPは、適宜に設定されてよく、射出動作における流量に対して、同一でもよいし、大きくてもよいし、小さくてもよい。また、サーボバルブ45が、流量だけでなく、圧力も制御できるものである場合、圧力は、射出動作時と同一であってもよいし、射出動作時よりも高くされてもよい。サーボバルブ45における作動液の圧力が射出動作から増圧動作にかけて一定であっても、上述のように、変換シリンダ装置9における受圧面積の変更により、増圧を行うことができる。また、射出動作から増圧動作にかけて、サーボバルブ45における圧力を高くした場合には、更なる増圧がなされる。
増圧動作の後、射出装置1は、保圧動作を行う。すなわち、射出装置1は、射出圧力をPmaxに保持する。
(射出ピストン後退)
制御装置19は、適宜な方法により、溶湯が凝固したか否かを判定する。例えば、制御装置19は、射出圧力がPmaxに到達した時点等の適宜な時点からの経過時間が所定の設定値を越えたか否かを判定することにより、溶湯が凝固したか否かを判定する。
制御装置19は、溶湯が凝固したと判定すると、アキュムレータ11からの作動液の供給先を、大径後側室27bhからロッド側室25rに切り換える。すなわち、制御装置19は、大径後側弁VLbに閉じるパイロット圧力を導入し、若しくは、パイロット圧力を導入せず、ロッド側弁VLcに開くパイロット圧力を導入する。
ロッド側室25rに作動液が供給されることにより、射出ピストン23は後退を開始する。射出ピストン23の後退により、ヘッド側室25hの作動液は、小径前側室27arに押し出され、変換ピストン29も後退する。
サーボバルブ45の開度は、流量VbPに対応する開度とされる。流量VbPは、適宜に設定されてよく、射出動作や増圧動作における流量に対して、同一でもよいし、大きくてもよいし、小さくてもよい。
小径後側弁VLaは、閉じるパイロット圧力が導入され、若しくは、パイロット圧力が導入されない。従って、アキュムレータ11から小径後側室27chへの作動液の供給は禁止されている。
バイパス弁VLdは、パイロット圧力が導入されていても、パイロット圧力が導入されていなくてもよい。いずれにせよ、前側小径部29aが前側小径シリンダ部27aに挿入された状態においては、射出ピストン23により押し出されるヘッド側室25h(小径前側室27ar)の作動液は、大径前側室27brに流入することが禁止される。また、いずれにせよ、前側小径部29aが前側小径シリンダ部27aから引き抜かれた状態においては、小径前側室27arと大径前側室27brとが直接的に連通されることから、射出ピストン23により押し出されるヘッド側室25h(小径前側室27ar)の作動液は、大径前側室27brに流入する。
タンクロッド側弁VLeは、パイロット圧力が導入されて閉じられる。従って、アキュムレータ11からロッド側室25rに供給された作動液は、タンク13には流れず、全て射出ピストン23に圧力を付与することに利用される。
タンク大径前側弁VLfは、前側小径部29aが前側小径シリンダ部27aから引き抜かれるまでは、開くパイロット圧力が導入され、若しくは、パイロット圧力が導入されない。従って、大径前側室27brにはタンク13から作動液が補給される。なお、上述のように、タンク13は、大径前側室27brよりも上方に配置されており、タンク13の作動液は自重により大径前側室27brへ流入可能となっている。従って、変換ピストン29の後退に伴って大径前側室27brに生じる負圧のみによりタンク13から作動液を補給する場合に比較して、効率的に作動液の補給がなされる。
また、タンク大径前側弁VLfは、前側小径部29aが前側小径シリンダ部27aから引き抜かれた後は、閉じるパイロット圧が導入され、若しくは、パイロット圧力が導入されない。従って、射出ピストン23により小径前側室27arから大径前側室27brに押し出された作動液は、タンク13へ流れない。
なお、前側小径部29aが前側小径シリンダ部27aから引き抜かれたか否かは、例えば、操作部材91によって操作される不図示のスイッチにより検出される。
タンク大径後側弁VLgは、開くパイロット圧力が導入される。従って、大径後側室27bhの作動液は、変換ピストン29の後退に伴って、タンク13に排出される。
タンク小径後側弁67は、アキュムレータ11からロッド側室25rに作動液が供給され、パイロット圧力として導入されているロッド側室25rの圧力が上昇することにより開かれる。従って、小径後側室27chの作動液は、変換ピストン29の後退に伴って、タンク63に排出される。
(射出ピストン後退限及び変換ピストン後退限)
制御装置19は、測長センサ81の検出結果に基づいて、射出ピストン23が後退限に到達したことを検出する。また、制御装置19は、後退限検出器83からのオン信号に基づいて、変換ピストン29が後退限に到達したことを検出する。
なお、上述のように、射出動作においては、大径前側室27br、小径前側室27ar及びヘッド側室25hは密閉される。また、増圧動作においては、大径前側室27brの作動液はタンク13へ排出される。増圧動作は、概ね、前側小径部29aが前側小径シリンダ部27aに挿入される頃に開始される。
一方、射出ピストン23の後退動作においては、前側小径部29aが前側小径シリンダ部27aから引き抜かれるまでは、タンク13から大径前側室27brに作動液が補給される。また、前側小径部29aが前側小径シリンダ部27aから引き抜かれた後は、大径前側室27br、小径前側室27ar及びヘッド側室25hは密閉される。
すなわち、射出ピストン23の後退動作は、射出ピストン23と変換ピストン29との間における作動液の流入出が、概ね、射出動作及び増圧動作と逆になっている。換言すれば、射出ピストン23と変換ピストン29との間における作動液の量は、変換ピストン29の前進時において前側小径部29aが前側小径シリンダ部27aに挿入される前と、変換ピストン29の後退時において前側小径部29aが前側小径シリンダ部27aから引き抜かれた後とで、概ね同じである。従って、射出ピストン23及び変換ピストン29は、概ね同時に、それぞれの初期位置(後退限)に到達する。
なお、厳密には、増圧動作等において、射出ピストン23及び変換ピストン29の間の作動液は漏れる。従って、射出ピストン23が先に後退限に到達することが生じ得る。
しかし、減速射出動作においては、前側小径部29aが前側小径シリンダ部27aに挿入された後も、バイパス流路47が閉じられるまでは、大径前側室27brからタンク13への作動液の排出は行われない。これに対し、射出ピストン23及び変換ピストン29の後退においては、前側小径部29aが前側小径シリンダ部27aから引き抜かれるまで、タンク13から大径前側室27brに作動液が補給される。従って、変換ピストン29の前進時においてバイパス弁VLdを閉じるタイミングを遅らせるほど、後退時におけるタンク13からの補給量よりも前進時におけるタンク13への排出量を少なくすることができる。すなわち、射出ピストン23と変換ピストン29との間の作動液の漏れを補償して、射出ピストン23の後退限への到達を変換ピストン29の後退限への到達に対して相対的に遅くし、両者の後退限への到達のタイミングを合わせることができる。
変換ピストン29が先に後退限に到達した場合には、タンク大径前側弁VLfに開くパイロット圧力を導入する。すなわち、射出ピストン23と変換ピストン29との間の作動液のタンク13への排出を可能とする。そして、アキュムレータ11からロッド側室25rに作動液を供給し、射出ピストン23を後退させればよい。
射出ピストン23及び変換ピストン29が後退限に到達すると、制御装置19は、モータ35を駆動して、ポンプ15からアキュムレータ11に作動液を送出し、アキュムレータ11の充填を行う。
なお、アキュムレータ11の充填は、これよりも早い適宜な時期に行われてもよい。例えば、射出ピストン23及び変換ピストン29の後退と並行してアキュムレータ11を充填し、射出ピストン23及び変換ピストン29が後退限に到達した直後にアキュムレータ11の充填が完了するようにしてもよい。
(次サイクル準備)
制御装置19は、射出ピストン23及び変換ピストン29が後退限に到達すると、次サイクルの準備を行う。例えば、サーボバルブ45は閉じられ、また、各種の弁(VLa〜VLg)は、閉じるパイロット圧が導入され、若しくは、パイロット圧が導入されない。すなわち、射出装置1は、基本的に、作動液の流れが停止された状態に維持される。また、モータ35は停止される。
以上の実施形態によれば、射出装置1は、射出シリンダ装置7と、射出シリンダ装置7に連通された変換シリンダ装置9と、アキュムレータ11と、アキュムレータ11から変換シリンダ装置9への作動液の流れを制御可能な液圧回路17と、を有する。変換シリンダチューブ27は、大径シリンダ部27bと、大径シリンダ部27bの、ヘッド側室25hとは反対側に連通し、大径シリンダ部27bよりも小径の後側小径シリンダ部27cとを有する。変換ピストン29は、大径シリンダ部27bを摺動可能な大径部29bと、後側小径シリンダ部27cを摺動可能な後側小径部29cとを有する。液圧回路17は、アキュムレータ11からの作動液の流量を制御可能なサーボバルブ45を有する。また、液圧回路17は、サーボバルブ45を通過した作動液を、大径後側室27bh及び小径後側室27chに供給可能であり、且つ、サーボバルブ45を通過した作動液の、大径後側室27bhへの供給及び小径後側室27chへの供給の双方を個別に禁止可能に構成されている。
従って、断面積の大きい大径後側室27bhに作動液を供給することにより、低速射出及び増圧を行うことができる一方で、断面積の小さい小径後側室27chに作動液を供給することにより、高速で射出を行うことができる。アキュムレータ11から作動液が供給されるシリンダ室の断面積を小さくすることにより高速化を実現していることから、アキュムレータ11の作動液の供給量を少なくすることができ、ひいては、アキュムレータ11やサーボバルブ45の小型化を図ることができる。さらに、作動液の供給先を切り換えることによる変速動作と、サーボバルブ45による流量調整による変速動作とを組み合わせることができることから、低速時と高速時との差を大きくしたり、射出速度を多段変速させたりすることができる。
液圧回路17は、サーボバルブ45からロッド側室25rへの作動液の流れを許容又は禁止可能なロッド側弁を有している。従って、射出プランジャ5の前進速度を制御するためのサーボバルブ45により、射出プランジャ5の後退速度も制御することができる。また、射出ピストン23の後退により、変換ピストン29を後退させることができる。
射出装置1は、作動液を貯蓄可能なタンク13を有し、液圧回路17は、タンク13と大径後側室27bhとの間の作動液の流れを許容又は禁止可能なタンク大径後側弁VLgを有し、タンク13は、大径後側室27bhよりも上方に配置されている。従って、上述したように、高速射出において、大径後側室27bhに生じる負圧のみにより大径後側室27bhに作動液を補給するよりも、作動液の自重を利用して、効率的に作動液の補給を行うことができる。
本発明は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
成形機は、ダイカストマシンに限定されない。例えば、成形機は、他の金属成形機であってもよいし、プラスチック射出成形機であってもよいし、木粉に熱可塑性樹脂等を混合させた材料を成形する成形機であってもよい。また、射出装置は、横型締横射出に限定されず、縦型締縦射出、横型締縦射出であってもよい。作動液は、油に限定されず、例えば水でもよい。
前側小径シリンダ部は、設けられなくてもよい。この場合であっても、後側小径シリンダ部と大径シリンダ部とが設けられることにより、受圧面積の切り換えが可能となり、ひいては、射出プランジャの好適な変速が可能である。
前側小径シリンダ部の径(d3)、大径シリンダ部の径(d2)、後側小径シリンダ部の径(d1)は、適宜に設定されてよい。
例えば、後側小径シリンダ部の径(d1)は、大径シリンダ部の径(d2)よりも小さければ、従来の後側小径シリンダ部(27c)がない構成のものに比較して、又は、変換シリンダ装置(9)がない構成のものに比較して、少量の作動液で変換ピストン(29)を前進させることができるという効果を奏するのであるから、射出シリンダチューブの径(d4)や前側小径シリンダ部の径(d3)よりも小さくなくてもよい。また、例えば、大径シリンダ部の径(d2)は、射出シリンダチューブの径(d4)よりも大きくなくてもよいし、前側小径シリンダ部の径(d3)は、射出シリンダチューブの径(d4)よりも大きくても小さくてもよい。
なお、実施形態のように、増圧時に、大径後側室(27bh)にのみ作動液を供給し、後側小径室(27ch)に作動液を供給していない場合には、増圧比ρ=(d22−d12)/d32であるから、d22−d12>d32を満たすように、d1〜d3が決定されなければならない。すなわち、大径部(29b)の大径後側室(27bh)における受圧面積が前側小径部(29a)の小径前側室(27ar)における受圧面積よりも大きくなければならない。しかし、大径後側室(27bh)及び後側小径室(27ch)の双方に作動液を供給して増圧を行うのであれば、増圧比ρ=d22/d32であり、d2>d3を満たせばよい。
また、実施形態では、d12<d22−d12であるから、小径後側室(27ch)に作動液を供給した場合に、大径後側室(27bh)に作動液を供給する場合よりも高速となった。しかし、d12>d22−d12となるように変換シリンダチューブ(27)を構成し、小径後側室(27ch)に作動液を供給して低速射出、減速射出及び増圧を行い、大径後側室(27bh)に作動液を供給して高速射出を行ってもよい。ただし、d12<d22−d12としたほうが、後側小径シリンダ部(27c)の径d1が小さくなり、変換シリンダ装置9の小型化が図られ、また、後側小径部(29c)の摺動面積を小さくして摺動抵抗を低減できる。
前側小径部(29a)は、前側小径シリンダ部(27a)に挿入されたままでもよい。この場合でも、実施形態のように、大径前側室(27br)からバイパス流路(73)を介してヘッド側室(25h)に作動液を供給することができる。ただし、実施形態のように、前側小径部(29a)が前側小径シリンダ部(27a)に挿入されていない状態で、大径前側室(27br)からヘッド側室(25h)へ作動液を押し出した方が作動液に加えられる抵抗を少なくして、確実に高速射出動作を行うことができる。
実施形態では、液圧回路は、流量制御弁(45)を通過した作動液の、大径後側室(27bh)への供給及び小径後側室(27ch)への供給の双方を個別に禁止可能に構成された。しかし、液圧回路は、大径後側室への供給及び小径後側室への供給の一方を他方とは個別に禁止可能に構成されてもよい。
例えば、実施形態において、大径後側弁VLbを省略する。すなわち、液圧回路を、サーボバルブ45を通過した作動液の、小径後側室27chへの供給を大径後側室27bhへの供給とは個別に禁止可能に構成する。また、ロッド側流路43を、小径後側流路39及び大径後側流路41及びアキュムレータ側流路37とは別個に設ける。すなわち、ロッド側流路43を、アキュムレータ側流路37ではなく、アキュムレータ11に直接接続する。このような液圧回路では、サーボバルブ45を開くと、大径後側室27bhに作動液が供給されて低速射出が行われる。さらに、実施形態と同様に、小径後側弁VLa及びタンク大径後側弁VLgを開くと、小径後側室27chに作動液が供給され、高速射出が開始される。ただし、小径後側室27chへの作動液の供給による変換ピストン29の前進速度が、アキュムレータ11からの作動液が大径後側室27bhを満たす速度に対して早くなるように、小径後側室27chの断面積を十分に小さくすることなどが必要である。
液圧源は、アキュムレータに限定されない。例えば、ポンプであってもよい。ただし、ポンプは、それ自体が流量を調整する機能を有するから、油圧源がポンプである場合には、流量制御弁が設けられている意義は低い。流量制御弁は、サーボバルブに限定されない。例えば、比例電磁式制御弁であってもよい。ただし、サーボバルブの使用により、高応答の変速が可能となる。
各種の方向制御弁(VLa〜VLg、67)は、逆止弁に限定されない。例えば、方向制御弁は、切換弁であってもよい。また、小径後側弁(VLa)及び大径後側弁(VLb)を2ポート2位置の切換弁により構成するなど、各種の方向制御弁は、共通化されてもよい。各種の方向制御弁が逆止弁により構成される場合には、閉じるパイロット圧力を導入可能なもの、開くパイロット圧力を導入可能なもの、閉じるパイロット圧力及び開くパイロット圧力の双方を導入可能なもの、パイロット式でないものが適宜に用いられてよい。
1…射出装置、5…射出プランジャ、7…射出シリンダ装置、9…変換シリンダ装置、11…アキュムレータ(液圧源)、17…液圧回路、21…射出ピストンロッド、23…射出ピストン、25…射出シリンダチューブ、25r…ロッド側室、25h…ヘッド側室、27…変換シリンダチューブ、27b…大径シリンダ部、27c…後側小径シリンダ部、27bh…大径後側室、27ch…小径後側室、29…変換ピストン、29b…大径部、29c…後側小径部、45…サーボバルブ(流量制御弁)、105…キャビティ。