<第1の実施形態>
図1は、本発明の実施形態に係るダイカストマシンDC1の射出装置1の要部の構成を示す図である。
射出装置1は、マシン本体111に保持された固定金型101及び移動金型103により形成されたキャビティ105に溶湯を射出・充填する装置である。
マシン本体111は、ベース、若しくは、設置施設に対して、固定的な部分である。また、金型を基準として見れば、マシン本体111は、ダイカストマシンDC1において、型閉じされた固定金型101及び移動金型103に対して固定的な部分である。
マシン本体111は、例えば、型締装置113を含んでいる。型締装置113は、ベース115と、ベース115上に固定的に設けられ、固定金型101を保持する固定ダイプレート117と、ベース115上に移動可能に設けられ、移動金型103を保持する移動ダイプレート119とを有している。
射出装置1は、キャビティ105に連通する射出スリーブ3と、射出スリーブ3内において溶湯(溶融状態の金属材料)をキャビティ105へ押し出す射出プランジャ5と、射出プランジャ5を駆動する射出シリンダ装置7とを有している。
また、射出装置1は、射出シリンダ装置7に作動液(例えば油)を供給する変換シリンダ装置9と、変換シリンダ装置9を駆動する駆動装置11と、駆動装置11等の制御を行う制御装置13とを有している。
射出スリーブ3は、例えば、固定金型101に挿通されるように設けられている。射出プランジャ5は、射出スリーブ3を摺動するプランジャチップ5aと、プランジャチップ5aに固定されたプランジャロッド5bとを有している。射出スリーブ3に形成された給湯口3aから溶湯が射出スリーブ3に供給された状態で、プランジャチップ5aが射出スリーブ3内をキャビティ105に向かって摺動することにより、溶湯はキャビティ105に射出、充填される。
なお、以下では、射出プランジャ5の軸方向を軸方向AXといい、射出プランジャ5がキャビティ105に向かって移動する(前進する)側を軸方向AXの前側AXfといい、その反対側を軸方向AXの後側AXbということがある。
射出シリンダ装置7は、射出シリンダチューブ15と、射出シリンダチューブ15の内部を摺動可能な射出ピストン17と、射出ピストン17に固定され、射出シリンダチューブ15から延び出る射出ピストンロッド19とを有している。なお、射出ピストン17及び射出ピストンロッド19は、それぞれ別個に形成されて互いに固定されていてもよいし、一体的に形成されて互いに固定されていてもよい。
射出シリンダチューブ15は、例えば、内部の断面形状が円形の筒状体である。射出シリンダチューブ15の内部は、射出ピストン17により、射出ピストンロッド19が延び出る側の射出ロッド側室15rと、その反対側の射出ヘッド側室15hとに区画されている。射出ロッド側室15r及び射出ヘッド側室15hに選択的に作動液が供給されることにより、射出ピストン17は射出シリンダチューブ15内を摺動する。
射出シリンダ装置7は、軸方向AXを伸縮方向(駆動方向)として配置されている。より具体的には、射出シリンダ装置7は、射出プランジャ5に対して同軸的に配置されている。そして、射出ピストンロッド19は、射出プランジャ5にカップリングを介して連結されている。射出シリンダチューブ15は、マシン本体111に固定されている。従って、射出シリンダ装置7の伸縮により、射出プランジャ5は前進又は後退する。
変換シリンダ装置9は、変換シリンダチューブ21と、変換シリンダチューブ21の内部を摺動可能な変換ピストン23と、変換ピストン23に固定され、変換シリンダチューブ21から延び出る変換ピストンロッド25とを有している。なお、変換ピストン23及び変換ピストンロッド25は、それぞれ別個に形成されて互いに固定されていてもよいし、一体的に形成されて互いに固定されていてもよい。
変換シリンダチューブ21は、例えば、内部の断面形状が円形の筒状体である。変換シリンダチューブ21は、変換ピストン23が摺動可能なチューブ本体部21aと、チューブ本体部21aよりも小径で変換ピストン23が摺動不可能なチューブ延長部21bとを有している。チューブ延長部21bは、チューブ本体部21aに対して、変換ピストンロッド25が延び出る側に接続されている。
変換シリンダチューブ21の内部は、変換ピストン23により、変換ピストンロッド25が延び出る側の変換ロッド側室21rと、その反対側の変換ヘッド側室21hとに区画されている。変換ピストン23が変換シリンダチューブ21内を摺動すると、変換ロッド側室21r又は変換ヘッド側室21hに収容されている作動液は、変換ピストン23に押し出されて、変換シリンダチューブ21から流出する。
変換ヘッド側室21hと射出ヘッド側室15hとは、後側流路27により連通されている。また、変換ロッド側室21rと射出ロッド側室15rとは前側流路29により連通されている。従って、変換シリンダ装置9の伸縮により、射出シリンダ装置7に作動液が供給され、射出シリンダ装置7は伸縮する。
チューブ本体部21aは、大径シリンダ部21aaと、小径シリンダ部21abとを有している。小径シリンダ部21abは、大径シリンダ部21aaよりも径が小さく、大径シリンダ部21aaに対してチューブ延長部21bとは反対側に接続されている。
変換ヘッド側室21hは、大径シリンダ部21aaにおける大径室21haと、小径シリンダ部21abにおける小径室21hbとから構成されている。後側流路27は、小径室21hbに接続されている。
一方、変換ピストン23は、大径シリンダ部21aaを摺動可能な大径ピストン部23aと、小径シリンダ部21abを摺動可能な小径ピストン部23bとを有している。なお、上述した変換ロッド側室21rと変換ヘッド側室21hとは、大径ピストン部23aにより区画されている。
変換ピストン23は、小径ピストン部23bが小径室21hbに挿入されていない位置と、小径ピストン部23bが小径室21hbに挿入された位置との間で移動可能である。小径ピストン部23bが小径室21hbに挿入されることにより、大径室21haと小径室21hbとは、互いに連通された状態から互いに隔離された状態となる。
従って、変換ピストン23により変換ヘッド側室21hの作動液を押し出し、小径室21hbに接続されている後側流路27を介して射出ヘッド側室15hに作動液を供給する場合において、小径ピストン部23bが小径室21hbに挿入されていない状態では、大径室21haの断面積(πd12/4)で作動液が供給される。また、小径ピストン部23bが小径室21hbに挿入された状態では、小径室21hbの断面積(πd22/4)で作動液が供給される。
ただし、大径室21haは、バイパス流路47により後側流路27に接続されており、小径ピストン部23bが小径室21hbに挿入された場合でも、作動液を射出ヘッド側室15hに供給可能となっている。なお、バイパス流路47は、小径室21hb又は射出ヘッド側室15hに接続されていてもよい。
バイパス流路47には、バイパス流路47を開閉可能なバイパス弁49が設けられている。バイパス弁49は、例えば、圧力補償付流量調整弁の機能を有するパイロットチェック弁により構成されている。
具体的には、バイパス弁49は、パイロット圧力が導入されていないときには、大径室21haから射出ヘッド側室15hへの作動液の流れを許容するとともに、その逆方向の流れを禁止する。また、バイパス弁49は、パイロット圧力が導入されると双方向の流れを禁止する。また、バイパス弁49は、作動液の流れを許容するときには、圧力によらず流量を一定とする。
バイパス弁49にパイロット圧力が導入され、大径室21haから射出ヘッド側室15hへの作動液の流れが禁止されることにより、上述のように、射出ヘッド側室15hへは、小径室21hbの断面積(πd22/4)で作動液が押し出される。
大径室21haは、前後流路51により変換ロッド側室21rと連通されている。なお、前後流路51は、変換ロッド側室21r側の一部の流路を前側流路29と共用している。また、前後流路51には、前後流路51を開閉する前後弁53が設けられている。
前後弁53は、例えば、パイロットチェック弁により構成されている。具体的には、前後弁53は、パイロット圧力が導入されていないときには、変換ロッド側室21rから大径室21haへの作動液の流れを許容するとともに、その逆方向の流れを禁止する。また、前後弁53は、閉じるパイロット圧力が導入されると双方向の流れを禁止し、開くパイロット圧力が導入されると双方向の流れを許容する。
上述のように、大径室21haの断面積(πd12/4)で作動液を射出ヘッド側室15hに供給するときは、前後弁53は、パイロット圧力が導入されず、又は、閉じるパイロット圧力が導入される。これにより、変換ヘッド側室21hの作動液は全て射出ヘッド側室15hに供給される。
また、上述のように、小径ピストン部23bが小径室21hbに挿入され、小径室21hbの断面積(πd22/4)で作動液を射出ヘッド側室15hに供給するときは、前後弁53は、開くパイロット圧力が導入される。これにより、大径室21haの作動液は、変換ロッド側室21rに排出される。
このとき、大径室21haは実質的に圧抜きが行われた状態となるから、変換ピストン23の作用面積は、πd12/4からπd22/4に遷移することになる。従って、変換ピストン23から作動液に一定の力が加えられていると仮定すると、作用面積の減少に伴って作動液に加えられる圧力は上昇する。
大径室21haの断面積(πd12/4)は、射出ヘッド側室15hの断面積(πd32/4)よりも大きい。従って、大径室21haの断面積(πd12/4)で作動液を射出ヘッド側室15hに供給するときにおいて、射出ピストン17は、変換ピストン23よりも高速に移動可能である。具体的には、射出ピストン17は、変換ピストン23の(d12/d32)の速度で移動可能である。
なお、好適には、大径室21haの断面積(πd12/4)で作動液を射出ヘッド側室15hに供給するときにおいて、射出ピストン17により射出ロッド側室15rから押し出される作動液は、過不足なく、変換ロッド側室21rに供給される。このように過不足のない供給が行われるためには、変換ピストンロッド25の直径をd4、射出ピストンロッド19の直径をd5とすると、以下の式が成り立てばよい。
(d12−d42)=(d32−d52)×(d12/d32)
上式より、d4/d1=d5/d3
すなわち、好適には、射出ピストン17の断面積と射出ピストンロッド19の断面積との比と、変換ピストン23(大径ピストン部23a)の断面積と変換ピストンロッド25の断面積との比とは同一になるように設定される。
変換ピストンロッド25は、マシン本体111に設けられた固定部111aに固定されている。従って、変換シリンダチューブ21がマシン本体111に対して駆動されることにより、変換シリンダ装置9の伸縮がなされ、射出シリンダ装置7に作動液が供給され、射出シリンダ装置7の伸縮が生じる。
変換シリンダ装置9は、水平方向を伸縮方向として配置されている。本実施形態では、変換シリンダ装置9が、軸方向AXを伸縮方向として配置された場合を例示している。
駆動装置11は、回転式のモータ(電動機)33と、モータ33の回転を並進運動に変換するネジ機構35と、変換シリンダ装置9を支持し、ネジ機構35の並進運動が伝達されて軸方向AXに駆動される移動テーブル37とを有している。
モータ33は、直流モータでも交流モータでもよい。また、モータ33は、誘導モータや同期モータ等の適宜なモータにより構成されてよい。モータ33は、例えば、サーボモータとして構成されており、モータ33の回転を検出するエンコーダ39と、モータ33に電力を供給するサーボドライバ(サーボアンプ)41と共にサーボ機構を構成している。
ネジ機構35は、ネジ軸43と、ネジ軸43に螺合されたナット45とを有している。ネジ軸43は、軸方向AXに平行に且つ回転可能に設けられている。また、ネジ軸43は、カップリングを介してモータ33の出力軸に同軸的に連結されている。一方、ナット45は、移動テーブル37に対して固定されている。
移動テーブル37は、変換シリンダ装置9の伸縮方向(本実施形態では軸方向AX)において移動可能に設けられている。例えば、移動テーブル37は、軸方向AXに延びる摺動面に摺動可能に載置されたり、又は、軸方向AXに延びるレール上にボールベアリング若しくは車輪を介して載置されている。移動テーブル37には、変換シリンダチューブ21が直接的に又は他の部材を介して間接的に載置され、固定されている。
モータ33が回転すると、ネジ軸43はナット45に対して回転し、ナット45は、ネジ軸43に沿って移動する。これにより、モータ33の回転は、並進運動に変換される。そして、並進運動が移動テーブル37に伝達されることにより、移動テーブル37に支持されている変換シリンダチューブ21は、軸方向AXにおいて移動する。
制御装置13は、例えば、CPU61、ROMやRAM等のメモリ63、入力回路65、及び、出力回路67を含んで構成されている。CPU61は、メモリ63に記憶されたプログラムを実行し、入力回路65を介して入力される入力信号に基づいて、モータ33や各種の弁を制御するための制御信号を出力回路67を介して出力する。
入力回路65に信号を入力するのは、例えば、ユーザの入力操作を受け付ける入力装置69、射出ピストンロッド19の位置を検出する第1位置センサ71、移動テーブル37の位置を検出する第2位置センサ73、射出ヘッド側室15hの圧力を検出するヘッド側圧力センサ75、及び、射出ロッド側室15rの圧力を検出するロッド側圧力センサ76である。
出力回路67が信号を出力するのは、例えば、ユーザに情報を表示する表示器77、サーボドライバ41、及び、パイロットチェック弁(47、53)へのパイロット圧力の導入を制御する不図示の液圧回路である。
第1位置センサ71は、マシン本体111に対する射出ピストンロッド19の位置を検出するものであり、射出プランジャ5の位置を間接的に検出するものである。第1位置センサ71は、例えば、射出ピストンロッド19に設けられ、軸方向AXに延びる不図示のスケール部とともにリニアエンコーダを構成している。なお、第1位置センサ71、又は、制御装置13は、検出した位置を微分することにより、速度を検出することが可能である。
第2位置センサ73は、マシン本体111に対する移動テーブル37の位置を検出するものである。第2位置センサ73は、例えば、移動テーブル37に設けられ、軸方向AXに延びる不図示のスケール部とともにリニアエンコーダを構成している。なお、第2位置センサ73、又は、制御装置13は、検出した位置を微分することにより、速度を検出することが可能である。
ヘッド側圧力センサ75及びロッド側圧力センサ76は、溶湯をキャビティ105に射出するときに射出プランジャ5が溶湯に加える圧力(射出圧力)等の射出プランジャ5が溶湯に加える圧力を間接的に検出するものである。すなわち、ヘッド側圧力センサ75の検出した圧力と射出ピストン17の射出ヘッド側室15hにおける作用面積との積と、ロッド側圧力センサ76の検出した圧力と射出ピストン17の射出ロッド側室15rにおける作用面積との積との差により、射出プランジャ5が溶湯に加えている力を算出することができ、ひいては、射出圧力等を検出できる。
以上の構成を有する射出装置1の動作を説明する。
図2は、射出装置1における射出圧力P及び射出速度Vの変化を示すグラフである。
射出装置1は、概観すると、低速射出、高速射出、及び、増圧を順に行う。すなわち、射出装置1は、射出の初期段階においては、溶湯の空気の巻き込みを防止するために比較的低速で射出プランジャを前進させ、次に、溶湯の凝固に遅れずに溶湯を充填するため等の観点から比較的高速で射出プランジャを前進させる。その後、射出装置1は、成形品のヒケをなくすために、射出プランジャの前進する方向の力によりキャビティ内の溶湯を増圧する。具体的には、以下のとおりである。
(低速射出)
低速射出の開始直前において、射出装置1は、図1に示す状態となっている。すなわち、変換ピストン23及び射出ピストン17は後退限等の初期位置に位置し、小径ピストン部23bは、小径シリンダ部21abに挿入されていない。また、モータ33は停止している。なお、バイパス弁49及び前後弁53は適宜な状態とされてよいが、例えば、パイロット圧が導入されて閉じられている。
固定金型101及び移動金型103の型締が終了し、溶湯が射出スリーブ3に供給されるなど、所定の低速射出開始条件が満たされると、制御装置13は、変換ヘッド側室21hから前後流路51への作動液の流出を禁止する。すなわち、前後弁53にパイロット圧力を導入せず、又は、前後弁53に閉じるパイロット圧力を導入する。また、制御装置13は、比較的低い回転数で、変換シリンダチューブ21を軸方向AXの前側AXfへ移動させる方向へ、モータ33を回転させる。
これにより、上述したように、大径室21haの断面積で、変換ヘッド側室21hから射出ヘッド側室15hに作動液が供給され、射出シリンダ装置7は、変換シリンダ装置9の縮む速度(変換ピストン23が変換シリンダチューブ21に対して軸方向AXの後側AXbへ移動する速度)の(d12/d32)倍の速度で伸びる(射出ピストン17は射出シリンダチューブ15に対して軸方向AXの前側AXf側へ移動する)。換言すれば、射出プランジャ5は、移動テーブル37の速度の(d12/d32)倍の速度(ここでは図2に示す低速射出速度VL)で移動する。
なお、このときの射出圧力は、図2に示すように、比較的低圧のPLである。バイパス弁49は、パイロット圧力が導入されていない。ただし、後述する減速制御が開始されるまでは、パイロット圧力が導入されていてもよい。
(高速射出)
制御装置13は、第1位置センサ71の検出値に基づく射出プランジャ5の位置が所定の高速切換位置に到達すると、モータ33の回転数を比較的高速な回転数に切り換える。また、バイパス弁49及び前後弁53は、低速射出時と同様の状態が維持される。
従って、射出プランジャ5の速度は、モータ33の回転数の変化率と同じ変化率で変化し、図2に示す高速射出速度VHとなる。なお、このときの射出圧力は、図2に示すように、低速射出時の射出圧力PLよりは高いPHとなる。
なお、低速射出及び高速射出において、モータ33は、エンコーダ39により検出される回転数が低速射出速度VL及び高速射出速度VHに応じて予め定められた回転数になるように制御されてもよいし、第1位置センサ71及び/又は第2位置センサ73により検出される射出プランジャ5の速度が低速射出速度VL及び高速射出速度VHになるように制御されてもよい。
(減速射出)
減速射出は、適宜な事象の発生により開始される。例えば、減速射出は、溶湯がキャビティ105にある程度充填され、その充填された溶湯から射出プランジャ5が反力を受けて減速されることにより開始される。若しくは、減速射出は、小径ピストン部23bが小径シリンダ部21abへ挿入され、大径室21haからの作動液の排出がバイパス流路47のみとなり(大径室21haからの作動液の排出が抑制され)、開始される。若しくは、減速射出は、射出プランジャ5が所定の減速位置に到達するなど所定の減速開始条件が満たされたときに、モータ33が減速制御されることにより、開始される。又は、上記に例示した事象が2以上同時に発生することにより開始される。なお、上記に例示した事象は、いずれが先に生じてもよいが、概ね同時に生じるように、1回の射出における溶湯の量等が調整されることが好ましい。
減速射出動作では、射出速度は、高速射出速度VHから減速されて速度Vdとなる。ただし、キャビティ105には、ある程度溶湯が充填されていることから、射出圧力は、高速射出における高速射出圧力PHから上昇して圧力Pdとなる。なお、バイパス弁49及び前後弁53は、高速射出時と同様の状態が維持される。
(増圧)
所定の増圧開始条件が満たされると、制御装置13は、バイパス弁49にパイロット圧力を導入してバイパス弁49を閉じる。また、制御装置13は、前後弁53に開くためのパイロット圧力を導入して前後弁53を開く。
従って、上述したように、小径室21hbの断面積で、変換ヘッド側室21hから射出ヘッド側室15hに作動液が供給されることになり、射出ヘッド側室15hにおける圧力は上昇する。
また、制御装置13は、所望の昇圧カーブ及び鋳造圧力(終圧、図2のPmax)が得られるように、ヘッド側圧力センサ75及びロッド側圧力センサ76の検出値に基づき、モータ33を制御する。
そして、射出圧力は、圧力Ptを経てPmaxに到達する。また、射出速度は、キャビティ105に溶湯が完全に充填されることにより、速度Vtを経て0となる。
なお、増圧開始条件は、例えば、ヘッド側圧力センサ75及びロッド側圧力センサ76により検出される射出圧力が所定の値に到達したこと、又は、射出プランジャ5が所定の位置に到達したことである。また、射出ロッド側室15r、変換ロッド側室21r及び大径室21haにおける作動液の余剰分は、例えば、不図示のタンクなどへ適宜に排出される。
(保圧)
射出圧力が所定の鋳造圧力(終圧)Pmaxに到達すると、その鋳造圧力Pmaxが保たれるように保圧動作が行われる。例えば、制御装置13は、ヘッド側圧力センサ75及びロッド側圧力センサ76により検出される射出圧力が一定に保たれるように、モータ33のトルク制御を行う。なお、バイパス弁49及び前後弁53は、増圧時と同様の状態が維持される。
(射出プランジャ後退)
溶湯が凝固すると、制御装置13は、モータ33の回転を逆転し、変換シリンダチューブ21を軸方向AXの後側AXbへ移動させる。これにより、変換ロッド側室21rの作動液が射出ロッド側室15rに排出され、射出プランジャ5は軸方向AXの後側AXbへ移動する。
なお、制御装置13における、溶湯が凝固したか否かの判定は、例えば、鋳造圧力Pmaxに達した時点等の所定の基準時点から、所定の時間が経過したか否かにより行われる。
また、バイパス弁49及び前後弁53は、変換ピストン23及び射出ピストン17が好適に後退するように、適宜に制御される。
例えば、変換ピストン23の後退開始時において、バイパス弁49は、閉じるパイロット圧力が導入される。すなわち、バイパス流路47を介した大径室21haから小径室21hbへの流れは禁止される。これにより、射出ヘッド側室15hに負圧が生じ、射出ピストン17は後退し易くなる。
また、例えば、前後弁53は、射出ロッド側室15rへの作動液の補給を大径室21haへの作動液の補給よりも優先させるように、閉じるパイロット圧が適宜なタイミングで適宜な時間で導入される。そして、射出ピストン17が変換ピストン23よりも先に後退限に到達する。その後、更に変換シリンダチューブ21を軸方向AXの後側AXbへ駆動することにより、増圧時に排出した余剰分に相当する不足分を不図示のタンクなどから負圧により変換ロッド側室21rに補給する。
以上の実施形態によれば、ダイカストマシンDC1の射出装置1は、射出プランジャ5を駆動する射出シリンダ装置7と、変換ピストンロッド25がマシン本体111に固定され、変換シリンダチューブ21が射出シリンダ装置7の射出シリンダチューブ15に連通された変換シリンダ装置9と、変換シリンダチューブ21をマシン本体111に対して変換シリンダ装置9の伸縮方向に駆動可能な駆動装置11とを有する。
従って、駆動装置11の駆動により射出シリンダ装置7に作動液を供給可能であり、射出シリンダ装置7の駆動にアキュムレータ又はポンプを必要としない。また、射出プランジャ5の速度は、駆動装置11の速度制御(モータ33の回転数の制御)のみによって制御可能である。このように、構成の簡素化が図られる。
駆動装置11は、回転式のモータ33と、モータ33の回転を並進運動に変換するネジ機構35と、変換シリンダチューブ21を支持し、ネジ機構35の並進運動が伝達されて軸方向AXに駆動される移動テーブル37とを有する。
従って、簡素な構成で変換シリンダチューブ21の移動が実現される。また、比較的小型なモータで十分なトルクを得るとともに、移動テーブル37の正確な位置制御を行うことができる。
変換シリンダ装置9の、溶湯を押し出すときに射出シリンダ装置7に作動液を供給する変換ヘッド側室21hにおける変換ピストン23の最大の作用面積(πd12/4)は、射出シリンダ装置7の、溶湯を押し出すときに作動液が供給される射出ヘッド側室15hにおける射出ピストン17の作用面積(πd32/4)よりも大きい。
従って、駆動装置11(移動テーブル37)の速度を増速することができ、高速射出を好適に行うことができる。
変換シリンダ装置9の変換シリンダチューブ21は、射出シリンダ装置7の射出シリンダチューブ15の、溶湯を押し出すときに作動液が供給される射出ヘッド側室15hに連通された小径シリンダ部21abと、小径シリンダ部21abに接続され、小径シリンダ部21abよりも大径の大径シリンダ部21aaとを有する。また、変換シリンダ装置9の変換ピストン23は、小径シリンダ部21abを摺動可能な小径ピストン部23bと、大径シリンダ部21aaを摺動可能な大径ピストン部23aとを有する。
従って、変換ピストン23の作用面積を大径シリンダ部21aaの断面積から小径シリンダ部21abの断面積に遷移させることにより、変換ピストン23に加えられる力に対する作動液の圧力を相対的に大きくし、好適に増圧を行うことができる。
なお、以上の実施形態において、ダイカストマシンDC1は本発明の成形機の一例であり、溶湯は本発明の成形材料の一例であり、固定金型101及び移動金型103は本発明の金型の一例であり、変換ヘッド側室21hは本発明の変換シリンダ装置の、成形材料を押し出すときに射出シリンダ装置に作動液を供給するシリンダ室の一例であり、射出ヘッド側室15hは本発明の射出シリンダ装置の成形材料を押し出すときに作動液が供給されるシリンダ室の一例である。
<第2の実施形態>
図3は、第2の実施形態に係るダイカストマシンDC2の射出装置201の要部の構成を示す図である。
なお、第2の実施形態において、第1の実施形態と同様の構成については、第1の実施形態と同様の符号を付し、説明を省略する。
第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様に、駆動装置11により変換シリンダ装置209が駆動され、変換シリンダ装置209の伸縮により射出シリンダ装置207に作動液が供給され、射出シリンダ装置207の伸縮により射出プランジャ5が駆動される。また、変換シリンダ装置209は、第1の実施形態と同様に、変換ピストンロッド25がマシン本体111に固定され、変換シリンダチューブ211が駆動装置11によりマシン本体111に対して移動される。
ただし、第1の実施形態においては、射出シリンダ装置7は、増圧機能を有さない、いわゆる単動式シリンダ装置により構成されたのに対して、第2の実施形態の射出シリンダ装置207は、増圧式シリンダ装置により構成されている。また、第1の実施形態においては、変換シリンダ装置9は、増圧機能を有する構成とされたのに対し、第2の実施形態の変換シリンダ装置209は、増圧機能を有さない構成とされている。具体的には、以下のとおりである。
射出シリンダ装置207の射出シリンダチューブ215は、射出シリンダ部215aと、射出シリンダ部215aに接続された増圧シリンダ部215bとを有している。
射出シリンダ部215aは、第1の実施形態の射出シリンダチューブ15と概ね同様の構成である。そして、第1の実施形態と同様に、射出シリンダ部215aの内部には、射出ピストン17が摺動可能に収容され、射出シリンダ部215aの内部は、射出ロッド側室215rと射出ヘッド側室215hとに区画されている。
増圧シリンダ部215bは、射出シリンダ部215aの射出ヘッド側室215h側に接続され、また、射出シリンダ部215aよりも大径に形成されている。
射出シリンダ装置207は、射出シリンダチューブ215に収容される増圧ピストン218を有している。増圧ピストン218は、射出シリンダ部215aの内部(射出ヘッド側室215h)を摺動可能な小径部218aと、増圧シリンダ部215bの内部を摺動可能な大径部218bとを有している。増圧シリンダ部215bの内部は、大径部218bにより、射出シリンダ部215a側の増圧ロッド側室215fと、その反対側の増圧ヘッド側室215gとに区画されている。
従って、増圧ロッド側室215fの圧抜きを行うと、小径部218aの射出ヘッド側室215hにおける作用面積(πd32/4)と、大径部218bの増圧ヘッド側室215gにおける作用面積(πd62/4)との差に起因して、増圧ピストン218は、増圧ヘッド側室215gの作動液から受ける圧力よりも高い圧力を射出ヘッド側室215hの作動液に加えることが可能である。すなわち、射出シリンダ装置207は、増圧機能を有している。
変換シリンダ装置209の変換シリンダチューブ211は、第1の実施形態の変換シリンダチューブ21において小径シリンダ部21abを省略した構成である。換言すれば、変換シリンダチューブ211のチューブ本体211aは、第1の実施形態の大径シリンダ部21aaのみにより構成されており、軸方向AXにおいて一定の直径である。
また、変換シリンダ装置209の変換ピストン223は、第1の実施形態の変換ピストン23において小径ピストン部23bを省略した構成である。換言すれば、変換ピストン223は、第1の実施形態の大径ピストン部23aのみにより構成されており、軸方向AXにおいて一定の直径である。
従って、変換シリンダ装置209は、第1の実施形態の変換シリンダ装置9のような増圧機能は有していない。なお、変換シリンダチューブ211の内部は、第1の実施形態と同様に、変換ピストン223により、変換ロッド側室221rと、変換ヘッド側室221hとに区画されている。
第1の実施形態と同様に、射出ヘッド側室215hと変換ヘッド側室221hとは、後側流路27により連通されている。また、第1の実施形態と同様に、射出ロッド側室215rと変換ロッド側室221rとは、前側流路29により連通されている。従って、第1の実施形態と同様に、変換シリンダ装置209の伸縮により、射出ピストン17を射出シリンダチューブ215に対して駆動可能である。
射出装置201は、更に、後側流路27を開閉可能な射出弁250と、変換ヘッド側室221hと増圧ヘッド側室215gとを連通する増圧流路228と、増圧流路228を開閉可能な増圧弁252と、増圧ロッド側室215fと変換ロッド側室221rとを連通する排出流路230とを有している。
なお、増圧流路228は、変換ヘッド側室221h側の一部の流路を後側流路27と共用している。また、排出流路230は、変換ロッド側室221r側の一部の流路を前側流路29と共用している。ただし、これらの流路は、一部が共用されないように形成されてもよい。
射出弁250は、例えば、パイロットチェック弁により構成されている。具体的には、射出弁250は、パイロット圧力が導入されていないときには、変換ヘッド側室221hから射出ヘッド側室215hへの作動液の流れを許容するとともに、その逆方向の流れを禁止する。また、射出弁250は、閉じるパイロット圧力が導入されると双方向の流れを禁止し、開くパイロット圧力が導入されると双方向の流れを許容する。
増圧弁252は、例えば、パイロットチェック弁により構成されている。具体的には、増圧弁252は、パイロット圧力が導入されていないときには、変換ヘッド側室221hから増圧ヘッド側室215gへの作動液の流れを許容するとともに、その逆方向の流れを禁止する。また、増圧弁252は、閉じるパイロット圧力が導入されると双方向の流れを禁止し、開くパイロット圧力が導入されると双方向の流れを許容する。
従って、射出弁250及び増圧弁252を選択的に開閉することにより、変換ヘッド側室221hの作動液を射出ヘッド側室215h及び増圧ヘッド側室215gに選択的に供給することができる。また、増圧ヘッド側室215gに作動液を供給して増圧を行うときには、増圧ロッド側室215fの作動液は、変換ロッド側室221rに排出される。
射出装置201では、射出ヘッド側室215hの圧力を検出するヘッド側圧力センサ75のみが設けられている。ただし、射出装置201においても、第1の実施形態と同様に、射出ロッド側室215rの圧力を検出するロッド側圧力センサ76が設けられてもよい。
以上の構成を有する射出装置201の動作を説明する。
射出装置201においても、第1の実施形態の射出装置1と同様に、図2に示す、低速射出、高速射出、及び、増圧等が順に行われる。具体的には、以下のとおりである。
(低速射出)
低速射出の開始直前において、射出装置201は、図3に示す状態となっている。すなわち、変換ピストン223、射出ピストン217及び増圧ピストン218は、後退限等の初期位置に位置している。また、モータ33は停止している。なお、射出弁250及び増圧弁252は適宜な状態とされてよいが、例えば、閉じるパイロット圧が導入されて閉じられている。
所定の低速射出開始条件が満たされると、制御装置13は、射出弁250へパイロット圧力を導入せず、又は、開くパイロット圧力を導入し、変換ヘッド側室221hから射出ヘッド側室215hへの作動液の供給を許容する。また、制御装置13は、増圧弁252へ閉じるパイロット圧力を導入し、変換ヘッド側室221hから増圧ヘッド側室215gへの作動液の供給を禁止する。また、第1の実施形態と同様に、制御装置13は、比較的低い回転数で、変換シリンダチューブ221を軸方向AXの前側AXfへ移動させる方向へ、モータ33を回転させる。
これにより、第1の実施形態の低速射出と同様の動作が実現される。すなわち、射出プランジャ5は、移動テーブル37の速度の(d12/d32)倍の速度(ここでは、図2に示す低速射出速度VL)で移動する。
(高速射出)
このときの動作は、第1の実施形態と同様である。すなわち、モータ33の回転数を比較的高速な回転数に切り換える制御のみが行われ、射出弁250及び増圧弁252は、低速射出時と同様の状態が維持される。
(減速射出)
このときの動作は、第1の実施形態における、小径ピストン部23bが小径シリンダ部21abへ挿入されることによる減速が生じない以外は、第1の実施形態と同様である。すなわち、減速射出は、ある程度充填された溶湯から射出プランジャ5が反力を受けることにより、及び/又は、モータ33が減速制御されることにより、開始される。射出弁250及び増圧弁252は、高速射出時と同様の状態が維持される。
(増圧)
所定の増圧開始条件が満たされると、制御装置13は、射出弁250へ閉じるパイロット圧力を導入し、変換ヘッド側室221hから射出ヘッド側室215hへの作動液の供給を禁止する。また、制御装置13は、増圧弁252へパイロット圧力を導入せず、又は、開くパイロット圧力を導入し、変換ヘッド側室221hから増圧ヘッド側室215gへの作動液の供給を許容する。
これにより、上述したように、増圧ピストン218の増圧機能により、変換ヘッド側室221hの作動液の圧力よりも高い圧力を射出ヘッド側室215hに生じさせ、増圧を行うことができる。
なお、モータ33の制御が第1位置センサ71及び第2位置センサ73に基づく位置制御から、ヘッド側圧力センサ75に基づくトルク制御に切り換えられることは第1の実施形態と同様である。
また、射出弁250は、射出ヘッド側室215hの圧力の上昇により自閉するので、閉じるパイロット圧力が導入されなくてもよい。射出ロッド側室215r、増圧ロッド側室215f及び変換ロッド側室221rにおける作動液の余剰分は、不図示のタンクなどへ適宜に排出される。
(保圧)
このときの動作は、第1の実施形態と同様である。すなわち、鋳造圧力Pmaxが保たれるようにモータ33のトルク制御が行われる。なお、射出弁250及び増圧弁252は、増圧時と同様の状態が維持される。
(射出プランジャ後退)
溶湯が凝固すると、制御装置13は、射出弁250及び増圧弁252に開くパイロット圧力を導入する。また、第1の実施形態と同様に、制御装置13は、モータ33の回転を逆転し、変換シリンダチューブ221を軸方向AXの後側AXbへ移動させる。
これにより、変換ロッド側室221rの作動液が射出ロッド側室215r及び増圧ロッド側室215fに排出され、射出ピストン17及び増圧ピストン218は軸方向AXの後側AXbへ移動する。
なお、射出弁250及び増圧弁252を開くタイミングは、射出ピストン217及び増圧ピストン218が好適に後退するように、適宜にずらされてもよい。また、増圧時に排出した余剰分に相当する不足分は不図示のタンクなどから負圧を利用することなどにより適宜に補給されてよい。
以上の第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果が得られる。すなわち、射出シリンダ装置7の駆動にアキュムレータ等を必要としないことなどにより、構成の簡素化が図られる。
射出シリンダ装置207において、射出シリンダチューブ215は、射出シリンダ部215aと、射出シリンダ部215aの、成形材料を押し出すときに作動液が供給される側に接続され、射出シリンダ部215aよりも大径の増圧シリンダ部215bとを有する。また、射出シリンダ装置207は、射出ピストンロッド19を介して射出プランジャ5に固定され、射出シリンダ部215aを摺動可能な射出ピストン17と、増圧ピストン218とを有する。増圧ピストン218は、射出シリンダ部215aを摺動可能な小径部218a、及び、増圧シリンダ部215bを摺動可能な大径部218bを有する。
従って、増圧式の射出シリンダ装置207との組み合わせにより、簡素な構成の変換シリンダ装置209が実現される。また、既設の増圧式の射出シリンダ装置207に対して変換シリンダ装置209を組み合わせ、全体として安価に設備を構築することができる。
本発明は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
成形機は、ダイカストマシンに限定されない。例えば、成形機は、他の金属成形機であってもよいし、プラスチック射出成形機であってもよいし、木粉に熱可塑性樹脂等を混合させた材料を成形する成形機であってもよい。また、射出装置は、横型締横射出に限定されず、例えば、縦型締縦射出、横型締縦射出であってもよい。作動液は、油に限定されず、例えば水でもよい。
射出プランジャ、射出シリンダ装置及び変換シリンダ装置の相対位置は適宜に設定されてよい。変換シリンダ装置の配置は、伸縮方向を水平方向とする配置に限定されない。例えば、変換シリンダ装置は、上下方向を伸縮方向とし、変換シリンダチューブの自重が高速射出や増圧に利用されてもよい。変換シリンダ装置は、実施形態とは逆に、変換ロッド側室が射出シリンダ装置の射出ヘッド側室に連通されてもよい。
射出シリンダ装置及び変換シリンダ装置は、シリンダチューブ同士が互いに連結されていてもよい。この場合、射出プランジャの速度は、シリンダチューブの移動速度と、射出シリンダ装置の伸縮速度とを足し合わせた速度となる。
駆動源(実施形態ではモータ33)、伝達機構(実施形態ではネジ機構35)、射出シリンダ装置及び変換シリンダ装置の数は、1個に限定されず、また、互いに同一でなくてもよい。例えば、複数組の駆動源及び伝達機構により、1本の変換シリンダ装置及び1本の射出シリンダ装置を駆動したり、複数組の駆動源、伝達機構及び変換シリンダ装置により、1本の射出シリンダ装置を駆動したりしてもよい。
電動機は、回転式のものに限定されない。また、電動機の動力を変換シリンダチューブに伝達する伝達機構(実施形態ではネジ機構35)は、省略されてもよい。例えば、電動機としてリニアモータを利用し、電動機により直接的に変換シリンダチューブを駆動してもよい。
回転式の電動機が用いられる場合において、回転運動を並進運動に変換する変換機構は、ネジ機構に限定されない。例えば、変換機構は、ラックピニオン機構であってもよい。また、電動機から変換シリンダチューブまでの伝達機構には、歯車機構やプーリ・ベルト機構などの適宜な増速機構が含まれてもよい。
電動機及び伝達機構(ネジ機構)の配置位置は、適宜に変更可能である。例えば、電動機は、マシン本体ではなく、移動テーブルに設けられてもよい。また、例えば、ネジ軸が回転不可能に、ナットが回転可能に設けられてもよい。
変換シリンダ装置及び射出シリンダ装置を連通するとともに、その両者の間の流れを制御する液圧回路は、適宜に構成されてよい。例えば、実施形態の前側流路29に流量を調整可能なサーボ弁を設け、サーボ弁の制御により所望の減速カーブが得られるように減速制御を行ってもよい。
実施形態では、変換シリンダ装置及び射出シリンダ装置において、高速射出時に作動液が過不足なく還流され、増圧時に少量の作動液の余剰分が発生する場合を例示した。作動液の過不足の発生は、このような態様に限定されない。例えば、変換ロッド側室から射出ヘッド側室に作動液を供給して射出プランジャを前進させ、射出ロッド側室から押し出された作動液を変換ヘッド側室に排出する構成とするともに、高速射出において、変換ヘッド側室に作動液の不足分に応じた真空の空間が形成されるようにしてもよい。
本発明は、アキュムレータ又はポンプを省略することを可能とするが、これらの構成要素が設けられていてもよい。