以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、第2実施形態以降において、既に説明した実施形態の構成と同一又は類似する構成については、既に説明した実施形態の構成に付した符号を付すことがあり、また、説明を省略することがある。既に説明した実施形態の構成と類似(対応)する構成について、既に説明した実施形態の符号とは異なる符号を付した場合においても、特に断りがない事項については、既に説明した実施形態の構成と同様である。
<第1実施形態>
(ダイカストマシンの全体構成)
図1は、本発明の第1実施形態に係るダイカストマシン1の要部の構成を示す、一部に断面図を含む側面図である。
ダイカストマシン1は、溶解されて液状となった金属材料(溶湯)を金型101内(キャビティCa等の空間。以下同様。)へ射出し、溶湯を金型101内で凝固させることにより、ダイカスト品(成形品)を製造するものである。金属は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金である。
金型101は、例えば、固定金型103及び移動金型105を含んでいる。本実施形態の説明では、便宜上、固定金型103又は移動金型105の断面を1種類のハッチングで示すが、これらの金型は、直彫り式のものであってもよいし、入れ子式のものであってもよい。また、固定金型103及び移動金型105には、中子などが組み合わされてもよい。
ダイカストマシン1は、例えば、成形のための機械的動作を行うマシン本体3と、マシン本体3の動作を制御する制御ユニット5とを有している。
マシン本体3は、例えば、金型101の開閉及び型締めを行う型締装置7と、金型101内に溶湯を射出する射出装置9と、ダイカスト品を固定金型103又は移動金型105(図1では移動金型105)から押し出す押出装置11とを有している。マシン本体3において、射出装置9以外の構成(例えば型締装置7及び押出装置11の構成)は、公知の種々の構成と同様とされてよい。
成形サイクルにおいて、型締装置7は、移動金型105を固定金型103へ向かって移動させ、型閉じを行う。さらに、型締装置7は、タイバー(符号省略)の伸長量に応じた型締力を金型101に付与して型締めを行う。型締めされた金型101内には成形品と同一形状のキャビティCaが構成される。射出装置9は、そのキャビティCaへ溶湯を射出・充填する。キャビティCaに充填された溶湯は、金型101に熱を奪われて冷却され、凝固する。これにより、成形品が形成される。その後、型締装置7は、移動金型105を固定金型103から離れる方向へ移動させて型開きを行う。この際、又はその後、押出装置11は、移動金型105から成形品を押し出す。
制御ユニット5は、例えば、各種の演算を行って制御指令を出力する制御装置13(図2参照)と、画像を表示する表示装置15と、オペレータの入力操作を受け付ける入力装置17とを有している。また、別の観点では、制御ユニット5は、例えば、電源回路及び制御回路等を有する不図示の制御盤と、ユーザインターフェースとしての操作部19とを有している。
制御装置13は、例えば、不図示の制御盤及び操作部19に設けられている。制御装置13は、適宜に分割乃至は分散して構成されてよい。例えば、制御装置13は、型締装置7、射出装置9及び押出装置11毎の下位の制御装置と、この下位の制御装置間の同期を図るなどの制御を行う上位の制御装置とを含んで構成されてよい。
表示装置15及び入力装置17は、例えば、操作部19に設けられている。操作部19は、例えば、型締装置7の固定的部分に設けられている。表示装置15は、例えば、液晶表示ディスプレイ乃至は有機ELディスプレイを含んだタッチパネルによって構成されている。入力装置17は、例えば、機械式のスイッチ及び前記のタッチパネルによって構成されている。
(射出装置の構成)
射出装置9は、例えば、金型101内に通じるスリーブ21と、スリーブ21内を摺動可能なプランジャ23と、プランジャ23を駆動する射出駆動部25とを有している。なお、射出装置9の説明においては、金型101側を前方、その反対側を後方ということがある。
スリーブ21は、例えば、固定金型103に連結された筒状部材であり、上面には溶湯をスリーブ21内に受け入れるための供給口21aが開口している。プランジャ23は、スリーブ21内を前後方向に摺動可能なプランジャチップ23aと、先端がプランジャチップ23aに固定されたプランジャロッド23bとを有している。
型締装置7による金型101の型締めが完了すると、不図示の給湯装置によって1ショット分の溶湯が供給口21aからスリーブ21内へ注がれる。そして、プランジャ23が図示の位置からスリーブ21内を前方へ摺動することにより、スリーブ21内の溶湯が金型101内に押し出される(射出される)。
(射出駆動部の基本的な構成)
図2は、射出駆動部25の構成を示す模式図である。まず、射出駆動部25の基本的な構成を説明し、次に、ジャンピング防止のための構成について説明する。
図1及び図2に示すように、射出駆動部25は、例えば、液圧式のものであり、プランジャ23に連結された射出シリンダ27と、射出シリンダ27に対する作動液(例えば油)の供給等を行う液圧装置28(図2)とを有している。
図2に示すように、射出シリンダ27は、例えば、いわゆる直結形の増圧式シリンダによって構成されている。具体的には、例えば、射出シリンダ27は、シリンダ部29と、シリンダ部29の内部を摺動可能な射出ピストン31及び増圧ピストン33と、射出ピストン31に固定され、シリンダ部29から延び出る前側ロッド35とを有している。
シリンダ部29は、例えば、小径シリンダ部29aと、小径シリンダ部29aの後端(前側ロッド35の延び出る側とは反対側)に接続された大径シリンダ部29bとを有している。小径シリンダ部29a及び大径シリンダ部29bは、例えば、内部の断面形状が円形の筒状体である。大径シリンダ部29bは、小径シリンダ部29aよりも径(断面積)が大きい。なお、図2では、便宜上、シリンダ部29の前端部及び外周部を一のハッチングで示すとともにシリンダ部29の後端部を一のハッチングで示しているが、シリンダ部29を構成する部材の数及びその分割位置は適宜に設定されてよい。
射出ピストン31は、小径シリンダ部29a内に摺動可能に配置されている。小径シリンダ部29aの内部は、射出ピストン31により、前側ロッド35が延び出る側のロッド側室29rと、その反対側のヘッド側室29hとに区画されている。ヘッド側室29h及びロッド側室29rに選択的に作動液が供給されることにより、射出ピストン31は小径シリンダ部29a内を前後方向に移動する。
増圧ピストン33は、小径シリンダ部29aを摺動可能な小径ピストン部33aと、大径シリンダ部29bを摺動可能な大径ピストン部33bとを有している。大径シリンダ部29bの内部は、大径ピストン部33bにより、小径シリンダ部29a側の前側室29fと、その反対側の後側室29eとに区画されている。別の観点では、シリンダ部29の内部は、増圧ピストン33により、ヘッド側室29hと、その反対側の後側室29eとに区画されている。
従って、前側室29fの圧抜きを行うと、増圧ピストン33(小径ピストン部33a)のヘッド側室29hにおける受圧面積に対して増圧ピストン33(大径ピストン部33b)の後側室29eにおける受圧面積が大きいことから、増圧ピストン33は、後側室29eの作動液から受ける圧力よりも高い圧力をヘッド側室29hの作動液に加えることが可能である。これにより、射出シリンダ27は、増圧機能を発揮する。
なお、本実施形態の説明でいうピストンの受圧面積は、作動液の圧力がピストンに作用する面積をピストンの移動方向(軸方向)に投影した面積である。従って、受圧面積は、ピストンの、シリンダ室に露出する面の凹凸に基本的に影響されない。また、ピストンの形状が特異なものでない限り、受圧面積は、ピストンの断面積と概ね同一である。ピストンが直径dの円柱状であれば、受圧面積は、π×(d/2)2である。
増圧ピストン33は、例えば、小径ピストン部33aから前方に突出して射出ピストン31の後端面に当接可能な突出部33c(符号は図3)を有していてもよい。突出部33cは、小径ピストン部33aよりも径が小さい。このような突出部33cは、例えば、ロッド側室29rに作動液を供給して射出ピストン31を後退させ、射出ピストン31によって増圧ピストン33を後方へ押して増圧ピストン33を後方へ移動させる場合に、両ピストンの位置を好適なものとしたり、両ピストンの間に作動液が入り込む隙間を確保したりすることに役立つ。
ただし、突出部33cは省略されてもよい。また、突出部33cが射出ピストン31から離れている状態では、突出部33cの存在は、増圧ピストン33のヘッド側室29hにおける受圧面積に影響を及ぼさない。従って、本実施形態の説明では、基本的に、突出部33cを無視するものとする。例えば、小径ピストン部33aのヘッド側室29hにおける受圧面積という場合、基本的に、増圧ピストン33全体のヘッド側室29hにおける受圧面積を指す。
増圧ピストン33は、例えば、小径ピストン部33aと大径ピストン部33bとの間に、小径ピストン部33aよりも小径の中間部33e(符号は図3)を有している。このような中間部33eを設けることによって、例えば、増圧ピストン33(小径ピストン部33a)と小径シリンダ部29aとの摺動面積を低減することができる。ただし、このような中間部33eが設けられずに、小径ピストン部33aが直接に大径ピストン部33bに固定されていてもよい。
図1に示すように、射出シリンダ27は、プランジャ23に対して同軸的に配置されている。そして、前側ロッド35は、その先端がプランジャ23の後端にカップリング(符号省略)を介して連結されている。シリンダ部29は、不図示の型締装置などに対して固定的に設けられている。従って、射出ピストン31のシリンダ部29に対する移動により、プランジャ23はスリーブ21内を前進又は後退する。
液圧装置28(図2)は、例えば、作動液を貯留するタンク37と、タンク37の作動液を送出可能なポンプ39と、蓄圧された作動液を放出可能なアキュムレータ41と、これら及び射出シリンダ27を互いに接続する複数の流路(43A〜43F等)と、当該複数の流路における作動液の流れを制御する複数のバルブ(45、47、49、51、53及び55等)とを有している。なお、図2等では、図示の都合上、複数個所にタンク37を示すことがあるが、実際には、複数個所に示されたタンク37は、一つのタンク37に統合されてよい。
タンク37は、例えば、開放タンクであり、大気圧下で作動液を保持している。タンク37は、例えば、ポンプ39及びアキュムレータ41を介して射出シリンダ27に作動液を供給し、また、射出シリンダ27から排出された作動液を収容する。
ポンプ39は、ポンプ用電動機40によって駆動され、作動液を送出する。ポンプ39は、ロータリポンプ、プランジャポンプ、定容量ポンプ、可変容量ポンプ、1方向ポンプ、双方向(2方向)ポンプ等の適宜な方式のものとされてよい。ポンプ用電動機40は、直流モータ、交流モータ、誘導モータ、同期モータ、サーボモータ等の適宜な方式のものとされてよい。ポンプ39(ポンプ用電動機40)は、ダイカストマシン1の稼働中において常時駆動されてもよいし、必要なときだけ駆動されてもよい。ポンプ39は、例えば、アキュムレータ41に対する作動液の供給(アキュムレータ41の蓄圧)、及び射出シリンダ27に対する作動液の供給に寄与する。
アキュムレータ41は、例えば、重量式、ばね式、気体圧式(空気圧式含む)、シリンダ式又はプラダ式のものである。図示の例では、アキュムレータ41は、シリンダ式のものであり、シリンダ部41aと、シリンダ部41aを液体室41eと気体室41fとに区画するピストン41bとを有している。液体室41eには作動液が収容され、気体室41fには気体(例えば空気又は窒素)が充填される。液体室41eに作動液が供給され、ピストン41bが気体室41f側へ移動することにより、気体室41fの気体が圧縮され、アキュムレータ41は蓄圧される。また、その気体の圧力を利用して、液体室41eから作動液が放出される。アキュムレータ41は、例えば、射出シリンダ27に対する作動液の供給に寄与する。
第1流路43Aは、ポンプ39とアキュムレータ41(液体室41e)とを接続している。これにより、例えば、ポンプ39からアキュムレータ41へ作動液を供給してアキュムレータ41を蓄圧することができる。
第2流路43Bは、アキュムレータ41(液体室41e)とヘッド側室29hとを接続している。これにより、例えば、アキュムレータ41からヘッド側室29hへ作動液を供給して、射出ピストン31を前進させることができる。
第3流路43Cは、アキュムレータ41(液体室41e)と後側室29eとを接続している。これにより、例えば、アキュムレータ41から後側室29eへ作動液を供給して、増圧ピストン33によってヘッド側室29hの作動液を加圧することができる。
第4流路43Dは、ロッド側室29rとタンク37とを接続している。これにより、例えば、射出ピストン31の前進に伴って容積が縮小するロッド側室29rの作動液をタンク37へ排出することができる。
第5流路43Eは、一端がロッド側室29rに接続されており、他端が後述する動作用バルブ51によってポンプ39又はタンク37に接続される。
第6流路43Fは、一端がヘッド側室29hに接続されており、他端が後述する動作用バルブ51によってポンプ39又はタンク37に接続される。
複数の流路(43A〜43F等)は、例えば、鋼管、可撓性のホース又は金属ブロックにより構成されている。複数の流路は、適宜に一部が共通化されてよい。例えば、図1の例では、第1流路43A〜第3流路43Cは、アキュムレータ41側の一部が共通化され、第4流路43D及び第5流路43Eは、ロッド側室29r側の一部が共通化されている。
射出用バルブ45は、例えば、第2流路43B(そのうち他の流路(43A及び43C)と共通化されていない部分)に設けられており、アキュムレータ41からヘッド側室29hへの作動液の流れを許容又は禁止する。射出用バルブ45は、例えば、パイロット式の逆止弁により構成されており、パイロット圧が導入されていないときは、アキュムレータ41からヘッド側室29hへの作動液の流れを許容するとともに、その反対方向の流れを禁止し、パイロット圧が導入されているときは、双方の流れを禁止する。なお、射出用バルブ45は、ヘッド側室29hからの作動液の逆流防止にも寄与する。
増圧用バルブ47は、例えば、第3流路43C(そのうち他の流路(43A及び43B)と共通化されていない部分)に設けられており、アキュムレータ41から後側室29eへの作動液の流れを許容又は禁止する。増圧用バルブ47は、例えば、流量制御弁によって構成されている。増圧用バルブ47は、圧力補償を行うもの(流量調整弁)であってもよし、圧力補償を行わないものであってもよい。また、増圧用バルブ47の制御方式は、例えば、ばね式、電磁式及びパイロット式並びにこれらの2つ以上の組み合わせのいずれであってもよい。増圧用バルブ47は、フィードバック制御がなされるサーボバルブであってもよいし、オープン制御がなされる比例弁であってもよい。図2では、増圧用バルブ47として、ばねによりノーマル位置で閉位置とされ、電磁力とパイロット圧力とが順次作動して開かれる流量調整弁が図示されている。
速度用バルブ49は、例えば、第4流路43D(そのうち他の流路(43E)と共通化されていない部分)に設けられており、例えば、ロッド側室29rからタンク37へ排出される作動液の流量の制御に寄与する。この流量の制御により、射出ピストン31の前進速度が制御される。すなわち、速度用バルブ49は、いわゆるメータアウト回路を構成している。速度用バルブ49は、圧力補償を行うもの(流量調整弁)であってもよし、圧力補償を行わないものであってもよい。また、速度用バルブ49の制御方式は、例えば、ばね式、電磁式及びパイロット式並びにこれらの2つ以上の組み合わせのいずれであってもよい。速度用バルブ49は、フィードバック制御がなされるサーボバルブであってもよいし、オープン制御がなされる比例弁であってもよい。図2では、速度用バルブ49として、ばねによりノーマル位置で閉位置とされ、電磁力とパイロット圧力とが順次作動して開かれる流量調整弁が図示されている。
動作用バルブ51は、例えば、4ポート3位置の切換弁によって構成されている。動作用バルブ51は、紙面中央に示す位置(中立位置及び/又はノーマル位置)では、4ポートの接続を遮断する。
また、動作用バルブ51は、紙面左側に示す位置では、第5流路43E(ロッド側室29r)とポンプ39とを接続し、第6流路43F(ヘッド側室29h)とタンク37とを接続する。これにより、ポンプ39からロッド側室29rに作動液を供給して、射出ピストン31を後退させることができる。
また、動作用バルブ51は、紙面右側に示す位置では、第5流路43E(ロッド側室29r)とタンク37とを接続し、第6流路43F(ヘッド側室29h)とポンプ39とを接続する。これにより、ポンプ39からヘッド側室29hに作動液を供給して、射出ピストン31を前進させることができる。ただし、本実施形態では、この作動液の流れは成形サイクル中の動作に必須ではなく、動作用バルブ51は、紙面中央の位置と紙面左側の位置との2位置弁であってもよい。
動作用バルブ51の制御方式は、例えば、ばね式、電磁式及びパイロット式並びにこれらの2つ以上の組み合わせのいずれであってもよい。図2では、動作用バルブ51として、ばねによりノーマル位置で閉位置(紙面中央の位置)とされ、電磁力とパイロット圧力とが順次作動して制御されるものが図示されている。
なお、特に図示しないが、前側室29fは、適宜な流路を介してタンク37と接続されている。従って、前側室29fは、増圧ピストン33の前進に伴って作動液をタンク37に排出可能である。また、前側室29fは、増圧ピストン33の後退に伴って負圧によって作動液をタンク37から補給可能である。ポンプ39によって前側室29fに作動液が補給されてもよい。また、前側室29fは、作動液が満たされるのではなく、大気開放されてもよい。
この他、液圧装置28は、例えば、ポンプ39への逆流を防止するために設けられた逆止弁からなるバルブ53及び55、タンク37からポンプ39への作動液を濾過するフィルタ57、速度用バルブ49を介してタンク37へ流れる作動液を冷却する冷却器59等を有している。
(ジャンピング抑制のための構成)
上記のような構成においては、例えば、射出用バルブ45が開かれ、アキュムレータ41からヘッド側室29hへ作動液が供給されて射出が行われる。ロッド側室29rからの作動液の排出は、例えば、速度用バルブ49のみによって許容され、射出ピストン31の速度は、速度用バルブ49の流量制御によって制御される。
このような場合において、既に述べたように、アキュムレータ41からヘッド側室29hへ作動液の供給を開始したときに、ロッド側室29rにおける作動液の圧縮に起因して、ロッド側室29rから排出される作動液の流量に相当する速度を超える速度で射出ピストン31が駆動される(ジャンピングが生じる)おそれがある。
ここで、射出ピストン31のロッド側室29rにおける受圧面積は、前側ロッド35によって減じられている。従って、公知の構成においては、射出ピストン31は、ロッド側室29rにおける受圧面積よりもヘッド側室29hにおける受圧面積が大きい。その結果、射出ピストン31は、ヘッド側室29hの圧力を増圧してロッド側室29rに付与する増圧作用を生じ得る。この増圧作用もジャンピングを生じさせる一因である。
そこで、本実施形態では、例えば、射出ピストン31のヘッド側室29hにおける受圧面積を減じ、ジャンピングが生じるおそれを低減する。具体的には、以下のとおりである。
図3は、図2の一部(射出シリンダ27の後方部分)を拡大して示す図である。
射出シリンダ27は、射出ピストン31から後方(前側ロッド35とは反対側)へ延びる後側ロッド61を有している。従って、後側ロッド61の断面積の分だけ、射出ピストン31のヘッド側室29hにおける受圧面積は減じられている。また、後側ロッド61は、ヘッド側室29hから延び出ており、端面(前側ロッド35とは反対側の面)がヘッド側室29hの作動液から隔離されている。すなわち、後側ロッド61は、先に定義した意味での受圧面積をヘッド側室29hに有していない。従って、射出ピストン31及び後側ロッド61の全体についても、後側ロッド61の断面積(端面の面積)の分だけ、ヘッド側室29hにおける受圧面積が減じられている。
従って、例えば、後側ロッド61の端面に圧力を付与していない状態であれば、射出ピストン31のヘッド側室29hにおける受圧面積が減じられた分だけ、射出ピストン31の増圧作用が減じられる。ひいては、ジャンピングが生じるおそれが低減される。
後側ロッド61の断面積(直径)は、例えば、前側ロッド35の断面積(直径)と同一である。換言すれば、射出ピストン31は、ロッド側室29rにおける受圧面積とヘッド側室29hにおける受圧面積が同一である。ジャンピングを確実に抑制する観点からは、射出ピストン31のロッド側室29rにおける断面積は、射出ピストン31のヘッド側室29hにおける断面積よりも大きいことが好ましい。すなわち、後側ロッド61の断面積は、前側ロッド35の断面積よりも大きいことが好ましい。ただし、逆に、後側ロッド61の断面積が前側ロッド35の断面積よりも小さくてもよい。
後側ロッド61は、例えば、増圧ピストン33に摺動可能に挿通されることによって端面がヘッド側室29hから隔離されている。すなわち、増圧ピストン33は、孔部33hを有しているとともに、孔部33hの内周面に後側ロッド61の外周面に摺動する摺動部33sを有しており、摺動部33sと後側ロッド61の外周面との間における作動液の流れは基本的に規制されている。
摺動部33sには、特に図示しないが、Oリング等が適宜に配置されてよい。また、摺動部33sの、増圧ピストン33における前後方向の位置及び範囲は、適宜に設定されてよい。図3の例では、摺動部33sは、増圧ピストン33の前側の一部(例えば突出部33c)に設けられている。すなわち、孔部33hは、摺動部33sよりも後方においては、後側ロッド61よりも径が大きくされている。そして、孔部33hの後方部分の内周面と後側ロッド61の外周面との間には作動液が流入可能な隙間が構成されている。
孔部33hは、例えば、増圧ピストン33を前後方向に貫通している。そして、孔部33hのうち摺動部33sよりも後方における、後側ロッド61と孔部33hとの間の隙間は、後側室29eに通じている。別の観点では、当該隙間は後側室29eの一部である。従って、当該隙間の有無に関わらず、増圧ピストン33の後側室29eにおける受圧面積は、大径ピストン部33bの断面積から後側ロッド61の断面積(摺動部33sの開口面積)を引いた面積となっている。
孔部33hが後側室29eに通じていることにより、後側ロッド61の端面は、後側室29eに露出しており、後側室29eの作動液から圧力を受ける。すなわち、後側ロッド61は、後側室29eにおいて先に定義した意味での受圧面積を有している。
従って、例えば、後側室29eを比較的低い圧力(例えばタンク圧)とすることによって、上述した射出ピストン31の増圧作用の低減によるジャンピング抑制の効果を得ることができる。その一方で、後側室29eに圧力を付与するときに、増圧ピストン33だけでなく、後側ロッド61の端面にも後側室29eの圧力を付与することができる。その結果、射出ピストン31のヘッド側室29hにおける受圧面積の減少の一部を補償することができる。
後側ロッド61は、例えば、増圧ピストン33が後退限に位置した状態で、射出ピストン31が前進限又はその付近に到達しても、増圧ピストン33から完全には引き抜かれない長さを有している。これにより、上述したような後側ロッド61による効果は、射出ピストン31の全ストロークに亘って奏される。なお、このような長さを有する後側ロッド61は、前側ロッド35と概ね同等の長さを有している。
また、後側ロッド61は、例えば、増圧ピストン33よりも長い。従って、図示のように、射出ピストン31が増圧ピストン33(突出部33c)に当接する位置にあるときは、後側ロッド61は、増圧ピストン33から後方に延び出る。ただし、増圧ピストンが比較的長く形成されることによって、そのように延び出ないようにされてもよい。
後側ロッド61は、増圧ピストン33から後方に延び出ることから、ひいては、増圧ピストン33の後退限を規定するストッパ29cよりも後方に突き出る。後側室29eは、例えば、ストッパ29cよりも後方においては、後側ロッド61を収容する必要最小限の大きさとされている。例えば、後側室29eの、ストッパ29cよりも後方部分の断面積は、少なくとも増圧ピストン33よりも小径で、好ましくは、孔部33hの後方部分と同程度の断面積とされている。これにより、後側室29eは、作動液の必要量が少なくされている。
(制御装置の機能部及びセンサ)
制御装置13は、例えば、特に図示しないが、CPU、RAM、ROM及び外部記憶装置を含むコンピュータによって構成されている。CPUがROM及び外部記憶装置に記憶されたプログラムを実行することにより、種々の制御乃至は演算を担う複数の機能部が構成される。複数の機能部は、例えば、図2に示すように、ロッド側圧力制御部13a、射出制御部13b及びプランジャ後退制御部13cである。
ロッド側圧力制御部13aは、射出開始直前等においてロッド側室29rの圧力を制御する。具体的には、例えば、ロッド側圧力制御部13aは、入力装置17及び/又は各種のセンサ等からの信号に基づいて、ポンプ用電動機40を駆動する不図示のドライバ及び動作用バルブ51を駆動する不図示のドライバへ制御信号を出力する。
射出制御部13bは、射出開始から保圧完了までの射出駆動部25の制御を行う。具体的には、例えば、射出制御部13bは、入力装置17及び/又は各種のセンサ等からの信号に基づいて、ポンプ用電動機40を駆動する不図示のドライバ、射出用バルブ45へパイロット圧力を導入する不図示の液圧回路、増圧用バルブ47を駆動する不図示のドライバ、速度用バルブ49を駆動する不図示のドライバ及び動作用バルブ51を駆動する不図示のドライバへ制御信号を出力する。
プランジャ後退制御部13cは、保圧完了後においてプランジャ23を後退させるように射出駆動部25の制御を行う。具体的には、例えば、プランジャ後退制御部13cは、入力装置17及び/又は各種のセンサ等からの信号に基づいて、ポンプ用電動機40を駆動する不図示のドライバ、射出用バルブ45へパイロット圧力を導入する不図示の液圧回路及び動作用バルブ51を駆動する不図示のドライバへ制御信号を出力する。
制御装置13へ信号を入力するセンサは、例えば、プランジャ23の位置を検出する位置センサ63(図2)、及びアキュムレータ41の圧力を検出する圧力センサ65(図2)である。
位置センサ63は、例えば、リニアエンコーダを構成している。例えば、位置センサ63は、不図示のスケール部に対して当該スケール部の軸方向に直交する方向において対向し、スケール部との軸方向における相対移動に応じてパルスを生成する。そして、位置センサ63及び/又は制御装置13は、生成されたパルスの数を積算することによって位置センサ63とスケール部との相対位置を特定可能であり、また、時間当たりのパルスの数を特定することによって速度を特定可能である。
そして、位置センサ63は、シリンダ部29に対して固定的に設けられ、スケール部は、前側ロッド35又は前側ロッド35に固定的な部材に設けられる。従って、前側ロッド35の位置及び/又は速度が検出されることによって、間接的にプランジャ23の位置及び/又は速度が検出される。
なお、位置センサ63は、パルスを出力するだけであってもよいし、位置及び/又は速度を特定し、その特定した位置及び/又は速度に応じた信号を出力してもよい。前者であっても、位置に応じてパルスの総数が異なるから位置に応じた信号を出力しているといえ、また、速度に応じて単位時間当たりのパルス数が異なるから速度に応じた信号を出力しているといえる。後者の場合の信号は、例えば、位置及び/又は速度の変化に応じて信号レベルが変化する信号である。
位置センサ63は、上記のようなリニアエンコーダの他、例えば、シリンダ部29に対して固定的に設けられ、前側ロッド35又は前側ロッド35に対して固定的な部材との距離を測定するレーザ測長器であってもよい。
圧力センサ65は、例えば、液体室41eの圧力に応じた信号を出力する。圧力に応じた信号は、例えば、圧力の変化に対応して信号レベルが変化する信号である。圧力センサ65は、ダイヤフラム式など、公知の適宜なものが用いられてよい。また、圧力センサ65として、液体室41eの圧力を検出するものに加えて、又は代えて、気体室41fの圧力を検出するものが用いられてもよい。
(射出装置の動作)
図4は、射出装置9の動作を説明するためのタイミングチャートである。
図4の上部は、射出速度V(プランジャ23の前進速度)及び射出圧力P(プランジャ23が溶湯に付与する圧力)の経時変化を示している。この図4の上部において、横軸は時間tを示し、縦軸は、射出速度V及び射出圧力Pを示している。線LV及びLPは、それぞれ時間tの経過に対する射出速度V及び射出圧力Pの変化を示している。
図4の下部は、図4の上部の時間経過に対応する射出用バルブ45、増圧用バルブ47、速度用バルブ49及び動作用バルブ51の動作を示している。図4の下部において、実線は本実施形態における動作を示しており、2点鎖線は後述する変形例について示している。増圧用バルブ47及び速度用バルブ49の「開」は、これらのバルブが開かれているとともに開度が適宜に制御されている状態を示している。動作用バルブ51の「開」は、動作用バルブ51が図2の紙面左側の位置(ポンプ39とロッド側室29rとを接続し、ヘッド側室29hとタンク37とを接続する位置)とされていることを示し、動作用バルブ51の「閉」は動作用バルブ51が図2の紙面中央の位置(閉位置)とされていることを示している。なお、制御装置13が制御信号を出力するタイミングは、バルブの制御遅れ等を考慮して、図示のタイミングよりも早くされてもよい。
まず、射出装置9の基本的な動作を説明し、次に、ジャンピング防止のための動作について説明する。
射出装置9は、基本的な動作として、例えば、低速射出(概ね時点t0〜t1)、高速射出(概ね時点t1〜t2)、及び増圧(昇圧、概ね時点t3〜)を順に行う。これらの工程の動作は、例えば、以下のとおりである。
(低速射出)
射出開始前において、射出装置9は、例えば、図2に示すような状態とされている。すなわち、射出ピストン31及び増圧ピストン33は、例えば、後退限に位置している。アキュムレータ41は、例えば、所定の圧力まで充填が完了している。ポンプ39は、既に述べたように、常時駆動されていてもよいし、必要なときだけ駆動されてもよく、後者の場合においては、例えば、停止されている。射出用バルブ45は、パイロット圧力が導入されて閉じられている。増圧用バルブ47、速度用バルブ49及び動作用バルブ51は、閉位置とされている。
制御装置13は、射出開始条件が満たされると(時点t0)、プランジャ23の前進を開始し、比較的低速の低速射出速度VLでプランジャ23を前進させる。これにより、溶湯による空気の巻き込みが抑制されつつ、スリーブ21内の溶湯がキャビティCaへ向かって押し出されていく。
射出開始条件は、例えば、型締装置7によって固定金型103及び移動金型105の型締めが完了し、不図示の給湯装置によるスリーブ21への溶湯の供給が完了したことである。また、後述するジャンピング抑制のための動作が完了したことが射出開始条件として加えられてもよい。
低速射出速度VLは、適宜に設定されてよいが、例えば、1m/s未満である。低速射出速度VLは、例えば、一定の値である。ただし、適宜な変速制御がなされてもよい。低速射出において、射出圧力は、射出速度が比較的低速であることから、比較的低圧である。
上記のような動作のために、制御装置13は、具体的には、例えば、射出用バルブ45への閉じるパイロット圧力の導入を停止することにより、アキュムレータ41からヘッド側室29hへ作動液を供給する。また、制御装置13は、例えば、速度用バルブ49を適宜な開度で開き、ロッド側室29rからタンク37への作動液の排出を許容する。これにより、射出ピストン31は前進し、ひいてはプランジャ23が前進する。
この際、プランジャ23の速度は、例えば、速度用バルブ49の開度を制御することによって制御される。この速度制御は、オープン制御であってもよいし、位置センサ63の検出する速度に基づくフィードバック制御であってもよい。速度フィードバック制御は、速度自体の偏差に基づくものであってもよいし、速度の目標値から求められる時々刻々の(経過時間毎の)目標位置と、検出された位置との偏差に基づき、時々刻々と位置フィードバック制御を行うことによって実質的に速度フィードバック制御を行うものであってもよい。
本実施形態では、後側ロッド61の端面が後側室29eに露出しているから、公知の構成とは異なり、射出ピストン31の前進に伴って後側室29e(孔部33h含む)の容積が拡大する。この後側室29eへの作動液の補給は、適宜になされてよい。例えば、容積の拡大に伴って生じる負圧によってタンク37から不図示の流路を介して作動液を補給してもよいし、不図示の流路を介してポンプ39から作動液を補給してもよいし、比較低圧の不図示のアキュムレータから不図示の流路を介して作動液を補給してもよい。なお、ポンプ39又はアキュムレータから作動液を補給する場合においては、例えば、後側室29eの圧力を増圧ピストン33の増圧比で増圧した圧力がヘッド側室29hの圧力以下となる流量で作動液が補給される。
(高速射出)
プランジャ23が所定の高速切換位置に到達すると(時点t1)、制御装置13は、比較的高速の高速射出速度VHでプランジャ23を前進させる。これにより、例えば、溶湯の凝固に遅れずに速やかに溶湯がキャビティCaに充填される。高速射出速度VHは適宜に設定されてよいが、例えば、1m/s以上である。高速射出速度VHは、例えば、一定の値である。ただし、適宜な変速制御がなされてもよい。高速射出において、射出圧力は、射出速度が比較的高速であることから、低速射出のときの圧力よりも高い圧力となる。
上記のような動作のために、制御装置13は、具体的には、例えば、低速射出から引き続いてアキュムレータ41からヘッド側室29hへの作動液の供給を継続しつつ、速度用バルブ49の開度を大きくする。このように速度用バルブ49の開度を大きくするだけの場合、制御装置13は、例えば、低速射出から引き続いてオープン制御又はフィードバック制御を行い、単に速度の目標値を低速射出のものから高速射出のものへ変化させるだけでよい。
制御装置13は、例えば、プランジャ23の移動範囲を複数に分けた区間毎に設定された目標速度を経過時間毎のプランジャ23の位置の目標値に変換して位置フィードバック制御(実質的な速度フィードバック制御)を行っており、プランジャ23が高速切換位置に到達したか否か検知しない。ただし、制御装置13は、位置センサ63からの信号に基づいてプランジャ23が所定の高速切換位置に到達したことを検知して速度の目標値を切り換えてもよい。
なお、後側室29eへの作動液の補給が適宜になされてよいことは、低速射出と同様である。
(減速、増圧及び保圧)
高速射出の結果、キャビティCaに溶湯が概ね充填されると(時点t2)、溶湯の圧力は上昇し、これによりプランジャ23は減速する。なお、適宜な時期に、速度用バルブ49の開度を絞ることによって減速制御が行われてもよい。減速の結果、プランジャ23は概ね停止する(時点t4)。図示の例のように、プランジャ23が概ね停止した後も溶湯が昇圧されてもよい。その後、溶湯の圧力は、鋳造圧力(終圧)に到達する。このようにして、減速及び増圧が行われる。その後、鋳造圧力が維持される(保圧工程)。
上記のような動作のために、制御装置13は、具体的には、例えば、適宜な時期(t3)に増圧用バルブ47を開く。これにより、アキュムレータ41から後側室29eに作動液が供給され、増圧された圧力がヘッド側室29hへ付与され、ひいては、増圧が行われる。射出用バルブ45は、ヘッド側室29hの圧力がアキュムレータ41の圧力よりも高くなることによって自閉する。ただし、射出用バルブ45は、適宜な時期に閉じるパイロット圧力が導入されて閉じられてもよい。また、制御装置13は、適宜な昇圧曲線が得られるように、速度用バルブ49の開度を増圧用の適宜な開度とする。
本実施形態では、後側ロッド61が後側室29eに露出していることから、公知の構成とは異なり、射出ピストン31は、ヘッド側室29hの圧力だけでなく、後側ロッド61を介して後側室29eの圧力も受ける。従って、既に述べたように、射出ピストン31のヘッド側室29hにおける受圧面積の減少の一部が補償される。
その後、射出ピストン31がヘッド側室29h等の作動液から受ける力と、プランジャ23が溶湯から受ける力とが釣り合うことによって、射出圧力は一定となる(鋳造圧力となる。)。このとき、ロッド側室29rの圧力は、例えば、タンク圧とされる(概ね0とされる。)。なお、適宜な時期に速度用バルブ49を閉じることなどによってロッド側室29rからの作動液の排出を禁止し、ロッド側室29rの圧力をタンク圧よりも高い適宜な圧力とし、これにより、任意の鋳造圧力を得てもよい。制御装置13は、保圧工程においては、鋳造圧力が得られたときの状態を維持する。例えば、増圧用バルブ47及び速度用バルブ49は開かれたままとされる。
(押出追従、プランジャ後退及びアキュムレータ充填)
キャビティCaに充填された溶湯が凝固すると、特に図示しないが、制御装置13は、型締装置7による型開きに追従して、プランジャ23を前進させる。これにより、ビスケットが押され、成形品が固定金型103から離れる。具体的には、例えば、制御装置13は、アキュムレータ41若しくはポンプ39からヘッド側室29h若しくは後側室29eへ作動液を供給するように液圧装置28を制御する。
押出追従の後(時点t5)、制御装置13は、プランジャ23を後退させるように射出駆動部25を制御する。具体的には、制御装置13は、動作用バルブ51を紙面左側の位置にするように制御する。すなわち、制御装置13は、ポンプ39とロッド側室29rとを接続し、ヘッド側室29hとタンク37とを接続する。また、制御装置13は、射出用バルブ45、増圧用バルブ47及び速度用バルブ49を閉じる。さらに、制御装置13は、ポンプ用電動機40を駆動する。従って、ポンプ39からロッド側室29rへ作動液が供給されて射出ピストン31が後退し、ひいては、プランジャ23が後退する。
本実施形態では、後側ロッド61が後側室29eに露出しているから、射出ピストン31の後退に伴って後側室29eの容積が縮小する。この際、後側室29eの作動液は、例えば、不図示の流路を介してタンク37へ排出される。後側室29eから排出された作動液を増圧用バルブ47を介してアキュムレータ41に充填してもよい。
また、射出ピストン31がある程度の位置まで後退すると、増圧ピストン33は、射出ピストン31によって押されて射出ピストン31と共に後退する。後側室29eの作動液の排出については、例えば、上記と同様である。なお、増圧ピストン33は、射出ピストン31に押されるのではなく、ヘッド側室29hからの作動液の排出を禁止して射出ピストン31を後退させることによって後退させたり、ヘッド側室29h又は前側室29fに作動液を供給することによって後退させたりしてもよい。
プランジャ23の後退が完了した後、制御装置13は、射出用バルブ45、増圧用バルブ47及び動作用バルブ51等を閉じた状態で、ポンプ39を駆動する。これにより、ポンプ39からアキュムレータ41へ作動液が供給され、アキュムレータ41が充填される。そして、制御装置13は、圧力センサ65の検出する圧力が所定の設定圧力に到達すると、例えば、ポンプ39の駆動を停止する。
(ジャンピング抑制のための動作)
制御装置13は、低速射出の開始前(時点t0前)の適宜な時期に、動作用バルブ51を図2の紙面左側の位置にする。すなわち、制御装置13は、ポンプ39とロッド側室29rとを接続し、ヘッド側室29hとタンク37とを接続する。また、制御装置13は、射出用バルブ45、増圧用バルブ47及び速度用バルブ49を閉じる。さらに、制御装置13は、ポンプ用電動機40を駆動する。従って、ポンプ39からロッド側室29rに圧力が付与される。ひいては、ロッド側室29rの作動液が圧縮される。なお、この動作の制御は、基本的にプランジャ23を後退させるときの制御と同様である。
その後、制御装置13は、動作用バルブ51を図2の紙面中央の位置(閉位置)とする。ポンプ39からロッド側室29rへの圧力の付与を停止しても、ロッド側室29rからの作動液の排出が禁止されている限り、ロッド側室29rにおける作動液の圧縮は基本的には維持される。そして、射出用バルブ45及び速度用バルブ49が開かれると(時点t0)、ヘッド側室29hの圧力が上昇するとともにロッド側室29rの圧力が低下することによって射出ピストン31は前進を開始する。
このとき、ロッド側室29rの作動液は予め圧縮されていることから、アキュムレータ41からヘッド側室29hへ作動液を供給しても、ロッド側室29rの作動液の圧縮は生じず、又は抑制され、ジャンピングが生じるおそれが低減される。
ロッド側室29rに圧力を付与する時間(ポンプ39からロッド側室29rへ作動液を供給しようとする時間)は、ロッド側室29rの作動液の圧縮が完了するように、又は圧縮がある程度進むように、適宜に設定されてよい。
ロッド側室29rへ圧力を付与する開始タイミングは、低速射出の開始前の適宜な時点とされてよい。例えば、ヘッド側室29hへ作動液が供給される前に、上記の予圧時間が確保される時点とされてよい。また、開始タイミングは、型締め完了の前であってもよいし、後であってもよいし、溶湯のスリーブ21への供給前であってもよいし、後であってもよい。
なお、プランジャ23、前側ロッド35、射出ピストン31及び後側ロッド61の質量及び摺動抵抗が比較的大きかったり、射出用バルブ45が徐々に開かれる構成及び制御とされたりする場合においては、ロッド側室29rへ作動液を供給することによるロッド側室29rへの圧力の付与が、ヘッド側室29hへの圧力の付与に対して同時とされたり、若干遅れたりしても、ジャンピング抑制の効果はある程度得られる。従って、ロッド側室29rへ作動液を供給しようとすることによる圧力付与の開始タイミングは、射出用バルブ45を開くタイミングに対して、基本的には前の時点であるが、同時又は僅かに後の時点とされてもよい。また、制御装置13が動作用バルブ51及び射出用バルブ45へ制御信号を出力する時期は、両バルブの制御遅れの相違等を考慮して設定されてよく、必ずしも両バルブを開く順で両バルブへの制御信号が出力されなくてもよい。
ロッド側室29rへ圧力を付与する終了タイミングは、射出の開始前であってもよいし、射出の開始と同時であってもよいし、射出の開始後であってもよい。ただし、終了タイミングが射出開始に対して早過ぎると、例えば、ロッド側室29rの圧力が作動液の漏れ等によって低下し、ジャンピング抑制の効果が低下するおそれがある。終了タイミングが射出開始に対して遅いと、ロッド側室29rに付与する圧力の大きさにもよるが、速度用バルブ49を開いてからロッド側室29rの圧力が低下し始めるまでに遅れが生じ、ひいては、プランジャ23の前進開始が遅れる。また、本実施形態では、動作用バルブ51は、ポンプ39とロッド側室29rとを接続する一方で、ヘッド側室29hとタンク37とを接続することから、アキュムレータ41からの作動液が無駄にタンク37に排出され、ヘッド側室29hの圧力が上昇しない。従って、終了タイミングは、射出開始と概ね同時であることが好ましい。また、終了タイミングは、ロッド側室29rの圧力を検出する不図示のセンサの検出値が所定の圧力に到達したときとされてもよい。
ロッド側室29rは、適宜な圧力まで昇圧されてよい。例えば、ロッド側室29rは、アキュムレータ41の射出開始直前の圧力(蓄圧完了圧力)と同程度まで昇圧されてよい。また、例えば、ロッド側室29rは、射出(例えば低速射出又は高速射出)においてヘッド側室29hに送出される作動液の圧力(液圧源の吐出圧力)の半分以上又は同程度の圧力まで昇圧されてよい。ただし、ロッド側室29rの圧力がタンク圧(概ね大気圧)よりも多少なりとも大きければ、ジャンピングが生じるおそれの低減の効果は、多少なりとも奏される。
(第1変形例)
特に図示しないが、ポンプ39からヘッド側室29hへ作動液を供給しつつ、ロッド側室29rから速度用バルブ49を介してタンク37へ作動液を排出できるように液圧装置28を変形してもよい。例えば、動作用バルブ51を、図2の紙面右側の位置において、ポンプ39と第6流路43Fとを接続し、第5流路43Eとタンク37とを遮断するように構成する。
そして、低速射出においては、ポンプ39からヘッド側室29hへ作動液を供給して射出ピストン31を前進させ、速度用バルブ49によってロッド側室29rのプランジャ23の速度を制御する。また、図3の射出用バルブ45に係る線図において2点鎖線で示すように、射出用バルブ45は、高速射出の開始時に開かれる。
このようにポンプ39からヘッド側室29hへ作動液を供給する場合においても、予めロッド側室29rの作動液を圧縮しておくことにより、ジャンピングが抑制される。
(第2変形例)
特に図示しないが、プランジャ23の後退において、射出ピストン31が後退限に到達した後も、ポンプ39からロッド側室29rへ作動液を供給するための制御を継続し、これによりロッド側室29rの圧力を上昇させ、その後、動作用バルブ51を閉じてもよい。そして、射出開始直前において動作用バルブ51を図2の紙面左側の位置とする動作を省略してもよい。
この場合であっても、動作用バルブ51を閉じてからのロッド側室29rの圧力低下が大きくなければ、ジャンピングが生じるおそれが低減される。すなわち、射出駆動部25は、射出開始直前にロッド側室29rの圧力がタンク圧よりも大きい所定の圧力になっていればよいのであり、ロッド側室29rの圧力を上昇させるための動作自体は、射出開始直前でなくてもよい。
以上のとおり、本実施形態では、射出装置9は、射出シリンダ27と、射出シリンダ27に作動液を供給可能な液圧装置28と、液圧装置28を制御する制御装置13を有している。射出シリンダ27は、金型101内に通じるスリーブ21内を摺動可能なプランジャ23に連結される前側ロッド35、前側ロッド35に固定されている射出ピストン31、及び射出ピストン31を摺動可能に収容しているシリンダ部29を有している。シリンダ部29の内部は、射出ピストン31によって前側ロッド35が延び出る側のロッド側室29rと、その反対側のヘッド側室29hとに区画されている。射出シリンダ27は、射出ピストン31から前側ロッド35とは反対側へ延びて端面がヘッド側室29hから隔離されている後側ロッド61を更に有している。制御装置13は、射出開始直前におけるロッド側室29rの圧力をタンク圧よりも高くするように液圧装置28を制御するロッド側圧力制御部13aを有している。
従って、例えば、上述のように、予めロッド側室29rの作動液が圧縮されることによって、ジャンピングが生じるおそれが低減される。また、後側ロッド61によって射出ピストン31の増圧作用を減じている(無くす場合を含む)、又は逆方向に増圧作用を生じさせることによって、ヘッド側室29hに作動液を供給したときに、比較的大きな圧力がロッド側室29rに付与されるおそれを低減し、より確実にジャンピングが生じるおそれを低減できる。別の観点では、ジャンピング抑制のために比較的高い圧力をロッド側室29rに付与する必要性が低減され、ひいては、ポンプ39を高圧のものにしたり、又はロッド側室29rに圧力を付与するためにポンプ39とは別に高圧の液圧源を設けたりする必要性が低減される。
なお、ここでいう射出開始直前におけるロッド側室29rの圧力がタンク圧よりも高いという場合の射出開始直前は、射出ピストン31が実際に前進を開始する直前であればよい。既に述べたように、射出ピストン31等の質量及び摺動抵抗並びに液圧系の制御遅れ等によっては、ヘッド側室29hへ作動液を供給するように制御装置13から制御信号が出力されて即座に射出ピストン31が前進するわけではない。従って、例えば、ロッド側室29rの圧力がタンク圧よりも高くなる若干前又は同時に、ヘッド側室29hへ作動液を供給するための制御信号が出力されてもよい。
また、本実施形態では、後側ロッド61の断面積は、前側ロッド35の断面積以上である。従って、例えば、射出ピストン31の増圧作用を無くし、又は逆方向に増圧作用を生じさせることができ、より確実にジャンピングが生じるおそれを低減できる。
また、本実施形態では、液圧装置28は、ポンプ39(液圧源)と、ポンプ39とロッド側室29rとを接続する第5流路43Eと、を有している。制御装置13は、ポンプ39から第5流路43Eを介してロッド側室29rへ作動液を供給してプランジャ23を後退させるように液圧装置28を制御するプランジャ後退制御部13cを有している。ロッド側圧力制御部13aは、プランジャ後退制御部13cと同様に、ポンプ39から第5流路43Eを介してロッド側室29rへ圧力を付与するように液圧装置28を制御する。
従って、例えば、プランジャ23の後退のための構成をそのまま射出開始前におけるロッド側室29rの昇圧に利用することができる。すなわち、構成が簡素化される。また、第2変形例で述べたように、プランジャ23の後退に引き続いてロッド側室29rの昇圧を行ってもよく、動作の簡略化も可能である。
また、本実施形態では、射出シリンダ27は、射出ピストン31に対して前側ロッド35とは反対側にてシリンダ部29に摺動可能に収容されており、シリンダ部29の内部をヘッド側室29hとその反対側の後側室29eとに区画しており、後側室29eにおける受圧面積がヘッド側室29hにおける受圧面積よりも大きい増圧ピストン33を有している。後側ロッド61は、増圧ピストン33に摺動可能に挿通されて端面が後側室29eに露出している。
従って、例えば、後側ロッド61を設けることによって射出開始時のジャンピングが生じるおそれを低減する一方で、増圧においては後側ロッド61を設けたことによる射出ピストン31の受圧面積の低減の一部を補償することができる。すなわち、射出から増圧に亘る全体として、好適な動作が可能となり、ひいては、成形品の品質が向上する。
なお、第1実施形態において、ダイカストマシン1は成形機の一例であり、ポンプ39は液圧源の一例であり、第5流路43Eは液圧源に接続される流路の一例である。
<第2実施形態>
図5は、第2実施形態に係る射出装置209の構成を模式的に示す、図2に相当する図である。
第1実施形態の射出駆動部25では、射出開始前においてポンプ39からロッド側室29rに圧力を付与した。これに対して、本実施形態の射出駆動部225では、射出開始前においてアキュムレータ41からロッド側室29rに圧力を付与する。本実施形態のその他の構成は、第1実施形態の構成と同様である。
具体的には、射出駆動部225の液圧装置228は、第1実施形態の液圧装置28の構成に加えて、アキュムレータ41とロッド側室29rとを接続する第7流路243Gと、第7流路243Gに設けられた圧縮用バルブ267とを有している。
なお、第7流路243Gのアキュムレータ41側の一部は、例えば、アキュムレータ41と接続される他の流路(43A、43B及び43C)の一部と共通化され、第7流路243Gのロッド側室29r側の一部は、例えば、ロッド側室29rと接続される他の流路(43D及び43E)の一部と共通化されている。
圧縮用バルブ267は、アキュムレータ41からロッド側室29rへの作動液の流れを許容及び禁止できれば、適宜な構成とされてよい。図示の例では、圧縮用バルブ267は、パイロット式の逆止弁によって構成されており、パイロット圧が導入されていないときは、アキュムレータ41からロッド側室29rへの作動液の流れを禁止し、その逆方向の流れを許容し、パイロット圧が導入されているときは、双方の流れを許容する。
射出駆動部225の動作(制御装置13の制御)は、ロッド側室29rへの作動液の送出によってロッド側室29rに圧力を付与するときに、ポンプ39からの作動液の供給に代えて、アキュムレータ41からの作動液の供給が行われることを除いて、第1実施形態の射出駆動部25の動作と同様である。すなわち、図4の時点t0の直前においては、動作用バルブ51が図5の紙面左側の位置にされる代わりに、圧縮用バルブ267にパイロット圧が導入される。
本実施形態においても、射出シリンダ27が両ロッド式とされるとともに、射出開始直前のロッド側室29rの圧力がタンク圧よりも大きくされることによって、第1実施形態と同様の効果が奏される。例えば、ジャンピングが生じるおそれが低減される。
<第3実施形態>
(射出駆動部の構成)
図6は、本発明の第3実施形態に係る射出装置309の構成を示す模式図である。
第1実施形態の射出駆動部25は、液圧式のものであった。これに対して、本実施形態の射出駆動部325は、液圧式と電動式とを組み合わせた、いわゆるハイブリッド式とされている。また、この相違に対応して、本実施形態の射出駆動部325の制御も、第1実施形態のものとは異なっている。なお、本実施形態のその他の構成は、第1実施形態と同様である。
具体的には、射出駆動部325は、第1実施形態と同様の射出シリンダ27に加えて、電動式駆動部381を有している。
第1実施形態の説明では省略したが、プランジャ23の後端と、前側ロッド35の先端とは、例えば、カップリング24によって連結されている。カップリング24は、例えば、プランジャ23の後端及び前側ロッド35の先端を収容するケース部材(符号省略)を有しており、ケース部材は、プランジャ23及び前側ロッド35の間にこれらに対して拡径する部分を構成している。
電動式駆動部381は、例えば、回転式の駆動用電動機383と、駆動用電動機383の回転を伝達する伝達機構385と、伝達機構385から伝達される回転を並進運動に変換する変換機構387と、変換機構387からの駆動力によってプランジャ23の移動方向に駆動される被駆動部391とを有している。そして、被駆動部391からプランジャ23へ駆動力が伝達されることによって、プランジャ23は駆動される。
駆動用電動機383は、例えば、特に図示しないが、公知のように、電機子又は界磁の一方を構成するステータと、電機子又は界磁の他方を構成するロータとを有している。駆動用電動機383の配置位置及び向きは適宜に設定されてよい。図示の例では、駆動用電動機383は、出力軸383aが前側ロッド35に平行になるように配置されている。
駆動用電動機383は、直流モータでも交流モータでもよいし、誘導モータでも同期モータでもよい。駆動用電動機383は、ブレーキ付きの電動機であってもよい。駆動用電動機383は、例えば、サーボモータとして構成されており、駆動用電動機383の回転を検出するエンコーダ383bと、駆動用電動機383に電力を供給する不図示のサーボドライバと共にサーボ機構を構成している。
伝達機構385は、例えば、プーリ・ベルト機構により構成されており、駆動用電動機383の出力軸383aに固定された第1プーリ385aと、変換機構387に固定された第2プーリ385bと、第1プーリ385a及び第2プーリ385bに架け渡されたベルト385cとを有している。従って、駆動用電動機383が回転されると、その回転は伝達機構385を介して変換機構387に伝達される。
変換機構387は、例えば、ボールねじ機構により構成されており、ねじ軸387aと、ねじ軸387aに不図示のボールを介して螺合するナット387bとを有している。
ねじ軸387aは、前側ロッド35に平行に配置されている。また、ねじ軸387aは、軸方向の移動が規制されているとともに軸回りの回転が許容されている。一方、ナット387bは、軸方向の移動が許容されるとともに軸回りの回転が規制されている。従って、ねじ軸387aが回転されると、ナット387bは前側ロッド35に平行な方向において移動する。
上述の第2プーリ385bは、ねじ軸387aと同心又は同軸に固定されている。従って、駆動用電動機383から伝達機構385を介して伝達された回転は、ねじ軸387aに伝達される。ひいては、駆動用電動機383の駆動力によってナット387bが前側ロッド35に平行な方向において移動する。
被駆動部391は、係合及び/又は着脱等によって、前側ロッド35に対する相対的な前進が規制されるとともに、前側ロッド35に対する相対的な後退が許容されるものである。なお、前側ロッド35とプランジャ23とは連結されているから、ここでいう前側ロッド35に対する相対的な前進の規制及び後退の許容は、プランジャ23に対する相対的な前進の規制及び後退の許容と同義である。
具体的には、例えば、被駆動部391は、基部391aと、基部391aに揺動可能に支持されたフック391bと、フック391bを駆動する不図示のアクチュエータとを有している。
基部391aは、例えば、ナット387bに固定されている。また、基部391aは、例えば、カップリング24(被当接部)に対して後方から当接可能である。従って、基部391aは、カップリング24に対する当接により、前側ロッド35に対する相対的な前進が規制されるとともに、その当接位置から後方における前側ロッド35に対する相対的な後退が許容される。
従って、基部391aがカップリング24に対して当接した状態で基部391aを前進させることにより、プランジャ23を前進させることができる。すなわち、駆動用電動機383の駆動力によりプランジャ23を前進させることができる。また、ヘッド側室29hへ作動液を供給して前側ロッド35を比較的高速に移動させることなどにより、プランジャ23を基部391aに対して相対的に前進させることが可能である。
フック391bは、例えば、概ねL字状に形成されるとともに、一端が基部391aによって回転可能に支持されている。そして、フック391bは、カップリング24(被当接部、被係合部)に対してプランジャ23の後退方向に係合可能な位置(図示の位置)と、当該係合が解除される位置(図示の位置から紙面下方へ移動した位置)との間で移動可能である。なお、フック391bは、係合位置において、基部391aとでカップリング24を挟持可能である。
フック391bが係合されることにより、プランジャ23の被駆動部391に対する相対的な前進が規制される。従って、例えば、電動式駆動部381によってプランジャ23を前進させているときに減速制御を行ったり、射出後のプランジャ23の後退を電動式駆動部381によって行ったりすることができる。
フック391bを駆動する不図示のアクチュエータは、エアシリンダ又はリニアモータ等の適宜なものによって実現されてよい。なお、フック391b及びアクチュエータは設けられなくてもよい。また、被駆動部391は、基部391aの係合に加えて、又は代えて、例えば、電磁石で前側ロッド35と着脱されたり、前側ロッド35の径方向における挟持(ひいては摩擦抵抗)によって着脱されたりしてもよい。
特に図示しないが、射出駆動部325は、電動式駆動部381を左右対称又は上下対称に1対有していてもよい。また、1対の電動式駆動部381は、1つの駆動用電動機383を共用していてもよい。伝達機構385を省略して駆動用電動機383の回転を直接的にねじ軸387aに伝達してもよい。また、図示の例とは逆に、ナット387bが軸方向に移動不可能かつ軸回りに回転可能とされ、ねじ軸387aが軸方向に移動可能かつ軸回りに回転不可能とされ、被駆動部391がねじ軸387aに固定され、駆動用電動機383の回転がナット387bに伝達されてもよい。
(液圧系の構成)
図7は、射出駆動部325の液圧系の構成を模式的に示す、図2に相当する図である。
射出駆動部325の液圧装置328は、例えば、いわゆるランアラウンド回路369が設けられている点のみが第1実施形態の射出駆動部25の液圧装置28と相違する。
ランアラウンド回路369は、ロッド側室29rとヘッド側室29hとを接続する第8流路343Hと、第8流路343Hを開閉するランアラウンド用バルブ371とを有している。
なお、第8流路343Hのロッド側室29r側の一部は、ロッド側室29rに接続されている他の流路(43D及び43E)の一部と共通化され、ヘッド側室29h側の一部は、ヘッド側室29hに接続されている他の流路(43F)の一部と共通化されている。
ランアラウンド用バルブ371は、第8流路343Hを開閉できれば、適宜な構成とされてよい。図示の例では、ランアラウンド用バルブ371は、パイロット式の逆止弁によって構成されており、パイロット圧が導入されていないときは、ロッド側室29rからヘッド側室29hへの作動液の流れを許容し、その逆方向の流れを禁止し、開くパイロット圧が導入されているときは、双方の流れを許容し、閉じるパイロット圧が導入されているときは双方の流れを禁止する。
なお、制御装置13(射出制御部13b及びプランジャ後退制御部13c)は、便宜上、第1実施形態と同様の符号を用いているが、液圧装置228に加えて、電動式駆動部381の制御を行う。
(射出装置の動作)
図8は、射出装置309の動作を説明するためのタイミングチャートであり、第1実施形態の図4に対応する図である。
図8の横軸及び縦軸等は、図4のものと同様である。ただし、図8では、図4で示した制御対象に加えて、駆動用電動機383及びランアラウンド用バルブ371が追加されている。
まず、射出装置309の基本的な動作を説明し、次に、ジャンピング防止のための動作について説明する。射出装置309は、基本的な動作として、例えば、第1実施形態と同様に、低速射出(概ね時点t0〜t1)、高速射出(概ね時点t1〜t2)、及び増圧(昇圧、概ね時点t3〜)を順に行う。
(低速射出)
射出開始前において、射出装置309の液圧系の状態は、第1実施形態の射出開始前の状態と同様である。すなわち、各種のピストン(31、33)は後退限に位置し、各種バルブ(45、47、49、51及び371)は基本的に閉じられ、アキュムレータ41は充填が完了している。また、電動式駆動部381の基部391aは、後退限に位置する前側ロッド35に後方から係合しており、また、フック391bは係合位置とされている。
そして、制御装置13は、第1実施形態と同様に、射出開始条件が満たされると(時点t0)、低速射出を開始する。ただし、第1実施形態とは異なり、低速射出は、電動式駆動部381の駆動力によって行われる。
具体的には、制御装置13は、駆動用電動機383のドライバへ制御信号を出力して駆動用電動機383を駆動する。駆動用電動機383の駆動力は、伝達機構385、変換機構387及び被駆動部391を介してカップリング24に伝達される。これにより、プランジャ23及び前側ロッド35が前進する。
この際、ランアラウンド用バルブ371にはパイロット圧が導入されて開かれる。そして、射出ピストン31の前進に伴って容積が縮小するロッド側室29rの作動液は、射出ピストン31の前進に伴って容積が拡大するヘッド側室29hに還流される。前側ロッド35の断面積と後側ロッド61の断面積とが同等の場合においては、作動液の過不足は基本的に生じない。前側ロッド35の断面積が後側ロッド61の断面積よりも小さい場合においては、作動液が余剰になる。その余剰分は、例えば、第8流路343Hに設けられた不図示のリリーフ弁を介してタンク37に排出されてよい。前側ロッド35の断面積が後側ロッド61の断面積よりも大きい場合においては、作動液が不足する。その不足分は、例えば、負圧によってタンク37から補給されてもよいし、ポンプ39又は低圧の不図示のアキュムレータから補給されてもよい。
なお、射出用バルブ45及び速度用バルブ49は、第1実施形態と異なり、低速射出では閉じられた状態が維持される。後側室29eへの作動液の補給については第1実施形態と同様である。
プランジャ23の速度は、駆動用電動機383の回転数の調整により制御される。具体的には、制御装置13(射出制御部13b)は、位置センサ63からの信号に基づいて駆動用電動機383の回転数をフィードバック制御する。なお、この速度フィードバック制御が、速度自体を偏差とするものであってもよいし、時々刻々の位置フィードバック制御であってもよいことは、第1実施形態と同様である。
なお、低速射出において、フック391bは、カップリング24に係合していてもよいし、係合していなくてもよい。係合している場合においては、例えば、減速を含む多段制御を行ったときに、慣性力によってプランジャ23が基部391aから離間して前進してしまうおそれを低減できる。
(高速射出)
高速射出は、第1実施形態と同様に行われる。すなわち、射出用バルブ45が開かれてアキュムレータ41からヘッド側室29hへ作動液が供給されるとともに、速度用バルブ49が開かれてロッド側室29rからタンク37への作動液の排出が許容される。プランジャ23の速度は、速度用バルブ49における流量によって制御され、また、位置センサ63からの信号に基づいてフィードバック制御される。なお、ランアラウンド用バルブ371は閉じられる。
高速射出において、フック391bは、係合が解除される位置とされる。従って、射出シリンダ27によって駆動されたプランジャ23は、被駆動部391を置き去りにして前進する。これにより、電動式駆動部381は、プランジャ23の前進を妨げる負荷とはならない。
電動式駆動部381は、高速射出において、例えば、低速射出に引き続き、被駆動部391を前進させる方向への回転を継続する。後述するプランジャ後退等に寄与するためである。このときの速度は、低速射出のときと同等であってもよいし、これより低くてもよい。
(減速、増圧、保圧、押出追従及びプランジャ後退)
減速、増圧、保圧及び押出追従は、第1実施形態と同様に行われてよい。なお、低速射出に引き続いて前進した被駆動部391は、減速及び停止したプランジャ23に追いつき、再度プランジャ23に対して係合可能となる。従って、電動式駆動部381を増圧、保圧及び押出追従のいずれかに寄与させてもよい。
また、プランジャ後退は、例えば、電動式駆動部381の駆動力によって行われる。具体的には、フック391bをカップリング24に係合させて、被駆動部391を後退させる方向へ駆動用電動機383を回転させる。
この際、例えば、ランアラウンド用バルブ371が開かれ、容積が縮小されるヘッド側室29hの作動液は、ロッド側室29rへ還流される。なお、低速射出時と同様に、前側ロッド35の断面積と後側ロッド61の断面積とが同等の場合においては、作動液の過不足は基本的には生じない。過不足が生じるときは、低速射出時と同様に、適宜に余剰分の排出又は不足分の補給がなされてよい。後側室29eからの作動液の排出については、第1実施形態と同様である。
なお、プランジャ23の後退は、第1実施形態と同様に、ポンプ39から動作用バルブ51を介してロッド側室29rに作動液を供給することによって行われてもよい。この場合、ランアラウンド用バルブ371は閉じられる。また、電動式駆動部381は、低速射出時に停止又は後退し、次のサイクルに備えてよい。
(ジャンピング抑制のための動作)
上記のように、高速射出においては、アキュムレータ41からヘッド側室29hへ作動液が供給され、また、射出速度は、ロッド側室29rから排出される作動液の流量の制御によって制御される。従って、高速射出の開始時においては、ジャンピングが生じるおそれがある。
そこで、例えば、前側ロッド35の断面積が後側ロッド61の断面積以下の場合においては、射出装置309は、以下のような動作を行う。
まず、射出装置309は、第1実施形態と同様に、射出開始前にポンプ39から動作用バルブ51を介してロッド側室29rに圧力を付与し、ロッド側室29rの作動液を圧縮する。この際、図8に2点鎖線で示すように、ランアラウンド用バルブ371を開いてロッド側室29r及びヘッド側室29hの双方の作動液を圧縮することが好ましい。
前側ロッド35の断面積が後側ロッド61の断面積と同等の場合、電動式駆動部381の駆動力によって低速射出が行われている間、作動液の射出開始前の圧縮状態は基本的に維持される。また、前側ロッド35の断面積が後側ロッド61の断面積よりも小さい場合、電動式駆動部381の駆動力によって低速射出が行われると、例えば、第8流路343Hに設けられた不図示のリリーフ弁の設定圧まで作動液の圧力は上昇し、その圧力で圧縮状態が維持される。
そして、高速射出の開始時においては、アキュムレータ41からヘッド側室29hへ作動液が供給されても、ロッド側室29rの作動液が圧縮されていることから、ジャンピングが生じるおそれが低減される。
また、例えば、前側ロッド35の断面積及び後側ロッド61の断面積の相対的な大きさに関わらず、低速射出の間、ランアラウンド用バルブ371を開いた状態で、ポンプ39等の液圧源からロッド側室29r及びヘッド側室29hへ圧力を付与し続けてもよい。
この場合、例えば、前側ロッド35の断面積及び後側ロッド61の断面積が概ね同等の場合においては、射出ピストン31においては、ロッド側室29rの作動液から受ける力と、ヘッド側室29hから受ける力とが概ね釣り合い、結局、電動式駆動部381の駆動力によってプランジャ23を駆動することができる。そして、低速射出の間、ロッド側室29rの作動液の圧縮状態が維持されることから、高速射出開始時のジャンピングが抑制される。
また、前側ロッド35の断面積と後側ロッド61の断面積とが異なっている場合においても、その差が比較的小さいときは、上記と同様に、ロッド側室29rの作動液の圧縮状態を維持しつつ、主として電動式駆動部381の駆動力によってプランジャを駆動することができる。断面積の差が比較的大きくても、ロッド側室29rに付与する圧力を抑えることなどによって、ロッド側室29rの作動液の圧縮状態を維持しつつ、主として電動式駆動部381の速度制御によってプランジャ23の速度制御を行うことができる。
以上のとおり、本実施形態においても、射出シリンダ27が両ロッド式とされるとともに、射出開始直前又は低速射出中のロッド側室29rの圧力がタンク圧よりも大きくされることによって、好適な効果が奏される。例えば、高速射出開始時においてジャンピングが生じるおそれが低減される。
なお、ロッド側室29rへの圧力の付与は、第2実施形態と同様に、ポンプ39に代えてアキュムレータ41によってなされてもよい。本実施形態では、適宜にリリーフ弁に言及したが、後述の第4実施形態におけるリリーフ弁473の構成及び設定圧についての説明は、本実施形態のリリーフ弁にそのまま適用してよい。
<第4実施形態>
(射出駆動部の構成)
図9は、第4実施形態に係る射出装置409の液圧系の構成を模式的に示す、図2に相当する図である。
射出装置409の射出駆動部425は、第3実施形態と同様に、ハイブリッド式のものである。従って、射出駆動部425は、射出シリンダ27と、図6を参照して説明した電動式駆動部381とを有している。ただし、ここでは、電動式駆動部381の図示は省略する。
射出駆動部425の液圧装置428は、例えば、第9流路443I及びリリーフ弁473が設けられている点のみが第1実施形態の液圧装置28と相違する。なお、液圧装置428は、第3実施形態の液圧装置328が有したランアラウンド回路369は有していない。
第9流路443Iは、ロッド側室29rとタンク37とを接続している。なお、第9流路443Iのロッド側室29r側の一部は、ロッド側室29rに接続されている他の流路(43D及び43E)の一部と共通化されている。第9流路443Iのタンク37側の一部は、タンク37に接続されている他の流路(43D)の一部と共通化されている。
リリーフ弁473は、第9流路443Iに設けられている。リリーフ弁473は、ロッド側室29rの圧力が所定の設定圧を超えるとロッド側室29rからタンク37への作動液の流れを許容する。これにより、ロッド側室29rの圧力は所定の設定圧以下に維持される。リリーフ弁473は、ロッド側室29rの圧力が弁体に直接に作用するものであってもよいし、ロッド側室29rの圧力がパイロット圧として利用されるものであってもよい。また、リリーフ弁473は、設定圧が手動で調整されるものであってもよいし、ソレノイド等によって調整されるものであってもよい。
リリーフ弁473の設定圧は、適宜に設定されてよい。例えば、アキュムレータ41からヘッド側室29hへ作動液を供給するとともにロッド側室29rから速度用バルブ49を介して排出される作動液の流量を高速射出用の流量としたと仮定したときにロッド側室29rに生じる圧力と同程度とされてよい。また、これよりも高い圧力とされてもよいし、低い圧力とされてもよい。
(射出駆動部の動作)
本実施形態において制御装置13が行う制御は、ランアラウンド回路369の制御が行われないことを除いては、基本的に、第3実施形態において制御装置13が行う制御と同様である。以下では、リリーフ弁473が設けられていることなどよる、第3実施形態の動作とは異なる動作について説明する。なお、特に断りがない事項は、他の実施形態(基本的には第3実施形態)と同様である。
他の実施形態と同様に、射出開始前に動作用バルブ51によってポンプ39とロッド側室29rとが接続されると、ロッド側室29rの圧力は上昇する。ただし、リリーフ弁473が設けられていることから、ロッド側室29rの圧力は、リリーフ弁473の設定圧を超える圧力とはならない。
低速射出においては、第3実施形態と同様に、電動式駆動部381によってプランジャ23が前進駆動される。このとき、速度用バルブ49は、第3実施形態と同様に閉じられている。従って、射出ピストン31の前進に伴って、ロッド側室29rの圧力は高くなろうとする。しかし、リリーフ弁473が設けられていることによって、ロッド側室29rの圧力は、リリーフ弁473の設定圧(一定の圧力)に維持される。なお、ヘッド側室29h及び後側室29eへの作動液の補給は、他の実施形態と同様に適宜になされてよい。
高速射出は、他の実施形態と同様に行われる。そして、ロッド側室29rの圧力は、低速射出の間、リリーフ弁473の設定圧に維持されているから、アキュムレータ41からヘッド側室29hへ作動液が供給されたとき、ジャンピングが生じるおそれが低減される。
以上のとおり、本実施形態においても、射出シリンダ27が両ロッド式とされるとともに、射出開始直前又は低速射出中のロッド側室29rの圧力がタンク圧よりも大きくされることによって、好適な効果が奏される。例えば、高速射出開始時においてジャンピングが生じるおそれが低減される。
また、本実施形態では、リリーフ弁473によって低速射出中におけるロッド側室29rの圧力変動が抑制されるから、電動式駆動部381によるプランジャ23の速度制御が好適に行われる。なお、射出開始直前においてロッド側室29rの圧力をタンク圧よりも高くしておく動作は、低速射出開始時の圧力上昇(圧力変動)の抑制に寄与する。
なお、ロッド側室29rへの圧力の付与は、第2実施形態と同様に、ポンプ39に代えてアキュムレータ41によってなされてもよい。
<後側ロッドの延出に係る変形例>
後側ロッド61は、射出ピストン31のヘッド側室29hにおける受圧面積を減じることができればよい。従って、例えば、後側ロッド61の端面は、後側室29eに露出するのではなく、大気開放されてもよい。例えば、以下の構成とされてよい。
(第3変形例)
図10(a)は、後側ロッド61の端面を大気開放させる場合の例を示す、図3に相当する模式図である。
この変形例において、増圧ピストン501は、実施形態の増圧ピストン33と同様の構造を有するとともに、大径ピストン部501b(33bに相当)の後端面から後方へ延びる延出部501eを有している。延出部501eは、シリンダ部503(29に相当)の外部(後側室29eの外部)へ延び出ている。シリンダ部503の後端部における、延出部501eが挿通される開口の内周面と、延出部501eの外周面との間は基本的に作動液の流れが規制されている(シールされている)。
また、後側ロッド61を収容する孔部501h(33hに相当)は、延出部501eを含む増圧ピストン501全体を貫通している。従って、孔部501hは、大気開放されている。ひいては、後側ロッド61の端面は、大気開放されている。
(第4変形例)
図10(b)は、後側ロッド61の端面を大気開放させる場合の他の例を示す模式図である。
この変形例に係る射出シリンダ509は、射出ピストン31及び増圧ピストン513(33に相当)と、これらを収容するシリンダ部511(29に相当)とを有している。
シリンダ部511は、射出ピストン31を摺動可能に収容する射出シリンダ部511aと、増圧ピストン513を摺動可能に収容する増圧シリンダ部511bとを有している。
射出シリンダ部511aの内部は、射出ピストン31によって前側ロッド35側のロッド側室511rと、その反対側のヘッド側室511hとに区画されている。
増圧シリンダ部511bは、ヘッド側室511hに通じる小径シリンダ部511baと、小径シリンダ部511baに通じ、小径シリンダ部511baよりも大径の大径シリンダ部511bbとを有している。増圧ピストン513は、小径シリンダ部511baを摺動可能な小径ピストン部513aと、大径シリンダ部511bbを摺動可能な大径ピストン部513bとを有している。
なお、作動液の圧力の観点からは、ヘッド側室511hと、小径シリンダ部511baの内部とは同一視してよいから、ヘッド側室511hは、小径シリンダ部511baの内部を含んで定義されてよく、以下の説明でも、そのような定義に沿った表現を用いることがある。
大径シリンダ部511bbの内部は、大径ピストン部513bにより、小径シリンダ部511ba側の前側室511fと、その反対側の後側室511eとに区画されている。別の観点では、シリンダ部511の内部は、増圧ピストン513により、ヘッド側室29hと、その反対側の後側室511eとに区画されている。
従って、前側室511fの圧抜きを行うと、増圧ピストン513(小径ピストン部513a)のヘッド側室511hにおける受圧面積に対して増圧ピストン513(大径ピストン部513b)の後側室511eにおける受圧面積が大きいことから、増圧ピストン513は、後側室511eの作動液から受ける圧力よりも高い圧力をヘッド側室511hの作動液に加えることが可能である。これにより、射出シリンダ509は、増圧機能を発揮する。
なお、小径シリンダ部511ba及び大径シリンダ部511bbの断面積(径)は、射出シリンダ部511aの断面積(径)に対して、小さくてもよいし、同等でもよいし、大きくてもよい。好適には、図示の例のように、小径シリンダ部511baの径は射出シリンダ部511aの径よりも小さく、大径シリンダ部511bbの径は、射出シリンダ部511aの径よりも大きい。
増圧シリンダ部511bは、射出シリンダ部511aに対して、交差(例えば直交)するように配置されている。そして、後側ロッド61は、増圧シリンダ部511b(増圧ピストン513)を通過せずに、射出シリンダ部511a(ヘッド側室511h)からその外部へ延び出ている。これによって、後側ロッド61の端面は大気開放されている。
本発明は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
成形機は、ダイカストマシンに限定されない。例えば、成形機は、他の金属成形機であってもよいし、樹脂を成形する射出成形機であってもよいし、木粉に熱可塑性樹脂等を混合させた材料を成形する成形機であってもよい。成形材料は、液状のものに限定されず、ある程度の粘度を有するものであってもよい。例えば、金属材料は、固液共存金属(半凝固金属又は半溶融金属)であってもよい。
また、成形機は、横型締横射出に限定されず、例えば、縦型締縦射出、横型締縦射出、縦型締横射出であってもよい。成形機がダイカストマシンである場合において、ダイカストマシンは、コールドチャンバマシンに限定されず、ホットチャンバマシンであってもよい。
型締装置等の射出装置以外の構成は、公知の種々の構成とされてよい。例えば、実施形態では、型締装置としてトグル式のものを示したが、型締装置は、型開閉と型締めとで別個の駆動源を用いる複合式のものであってもよい。また、例えば、型締装置は、全電動式であってもよいし、全液圧式であってもよい。
射出シリンダは、増圧式のものに限定されず、増圧機能を有さない、いわゆる単胴式(単動式)のものであってもよい。また、増圧式射出シリンダは、直結形に限定されず、射出ピストンを収容するシリンダ部と、増圧ピストンを収容するシリンダ部とが分離された分離形のものであってもよい。
図10(b)の変形例に示したように、増圧ピストンは、小径ピストン部の径に対して大径ピストン部の径が大きければよく、必ずしも小径ピストン部の径が射出ピストンの径と同等である必要はない。例えば、図2に示したように射出ピストンと増圧ピストンとが同軸上に配置される場合においても、図10(b)に示した変形例のように、射出ピストンの後方に小径ピストン部が摺動する射出ピストンよりも径が小さいシリンダ室を形成してよい。
ロッド側室に圧力を付与するための液圧源は、ポンプ又はアキュムレータに限定されない。例えば、液圧源は、電動機によってピストン及びシリンダ部が相対的に駆動されて作動液を送出する液圧シリンダが用いられてもよい。また、通常の射出動作自体を行うためのポンプ(39)又はアキュムレータ(41)とは別個に液圧源が設けられてもよい。ただし、既に述べたように、両ロッド式の射出シリンダは、そのような別個の液圧源の必要性を低減する。
実施形態で示した構成は、メータアウト回路によってロッド側室から排出される作動液の流量が制限される場合において生じるジャンピングの抑制という課題から着想されている。ただし、その課題を解決するために得られた構成は、メータアウト回路を前提としないし、ジャンピングの抑制という用途に用いられなくてもよい。例えば、第4実施形態の低速射出の動作から理解されるように、ロッド側室にリリーフ弁が接続されているような状態においては、射出開始前のロッド側室の予圧は、射出開始後のロッド側室の圧力上昇(圧力変動)を抑制して、電動式駆動装部による速度制御の精度向上に寄与する。
また、実施形態からは、後側ロッドの端面を後側室に露出させることを特徴とする発明を抽出可能である。この発明においては、射出開始直前にロッド側室の圧力をタンク圧よりも高くする動作は必須の要件ではない。